(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2017年3月23日
【発行日】2017年12月7日
(54)【発明の名称】垂直磁気記録媒体
(51)【国際特許分類】
G11B 5/65 20060101AFI20171110BHJP
G11B 5/66 20060101ALI20171110BHJP
【FI】
G11B5/65
G11B5/66
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】27
【出願番号】特願2017-540463(P2017-540463)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2016年7月29日
(31)【優先権主張番号】特願2015-184473(P2015-184473)
(32)【優先日】2015年9月17日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内田 真治
(72)【発明者】
【氏名】島津 武仁
【テーマコード(参考)】
5D006
【Fターム(参考)】
5D006BB05
5D006BB07
5D006BB08
5D006DA08
5D006FA09
(57)【要約】
本発明は、Tcの低下が期待でき、従来の磁気特性を維持しながら、所望の膜厚を有する磁気記録層を含む垂直磁気記録媒体を提供する。磁気記録媒体は、非磁性基板及び磁気記録層を少なくとも含み、前記磁気記録層は、第1磁気記録層からなるか、又は、少なくとも第1磁気記録層及び第2磁気記録層を含む複数層からなり、前記第1磁気記録層は、第1磁性結晶粒と第1非磁性結晶粒界とを含むグラニュラー構造を有し、前記第1磁性結晶粒はFe、Pt及びRhを有する規則合金からなり、前記第1非磁性結晶粒界は炭素、ホウ素又はこれらの組み合わせからなり、前記第2磁気記録層は、第2磁性結晶粒と第2非磁性結晶粒界とを含むグラニュラー構造を有し、前記第2磁性結晶粒はFePt規則合金又はFe、Pt及びRhを有する規則合金からなり、前記第2非磁性結晶粒界は炭素を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非磁性基板及び磁気記録層を少なくとも含む垂直磁気記録媒体であって、
前記磁気記録層は、第1磁性結晶粒と、前記第1磁性結晶粒を取り囲む第1非磁性結晶粒界とを含むグラニュラー構造を有し、前記第1磁性結晶粒はFe、Pt及びRhを有する規則合金からなり、前記第1非磁性結晶粒界は炭素、ホウ素又はこれらの組み合わせからなることを特徴とする垂直磁気記録媒体。
【請求項2】
非磁性基板及び磁気記録層を少なくとも含む垂直磁気記録媒体であって、
前記磁気記録層は、少なくとも第1磁気記録層及び第2磁気記録層を含む複数層からなり、
前記第1磁気記録層は、第1磁性結晶粒と、前記第1磁性結晶粒を取り囲む第1非磁性結晶粒界とを含むグラニュラー構造を有し、前記第1磁性結晶粒はFe、Pt及びRhを有する規則合金からなり、前記第1非磁性結晶粒界は炭素、ホウ素又はこれらの組み合わせからなり、
前記第2磁気記録層は、第2磁性結晶粒と、前記第2磁性結晶粒を取り囲む第2非磁性結晶粒界とを含むグラニュラー構造を有し、前記第2磁性結晶粒はFePt規則合金又はFe、Pt及びRhを有する規則合金からなり、前記第2非磁性結晶粒界は炭素を含むことを特徴とする垂直磁気記録媒体。
【請求項3】
前記Fe、Pt及びRhを有する規則合金はL10型規則合金であることを特徴とする請求項1又は2に記載の垂直磁気記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、垂直磁気記録媒体に関する。特に、本発明は、Tcの低減を期待できるFePtRhを規則合金として含むグラニュラー構造を有する磁気記録層を含む垂直磁気記録媒体において、該磁気記録層を厚膜化したもの
【背景技術】
【0002】
近年、磁気記録の高密度化の要請が著しい。磁気記録の高密度化を実現する技術として、垂直磁気記録方式が採用されている。この方式に基づいた垂直磁気記録媒体は、非磁性基板と、硬質磁性材料を含む磁気記録層を少なくとも含む。垂直磁気記録媒体は、前記要素に加え、軟磁性材料から形成され、磁気ヘッドが発生する磁束を磁気記録層に集中させる役割を担う軟磁性裏打ち層、磁気記録層の硬質磁性材料を目的の方向に配向させるための下地層、磁気記録層の表面を保護する保護膜などを、任意選択的に、更に含んでいてもよい。
【0003】
垂直磁気記録媒体の磁気記録層を形成するための材料として、グラニュラー磁性材料が用いられる。このグラニュラー磁性材料は、磁性材料と非磁性材料から構成され、磁性結晶粒と、磁性結晶粒の周囲を取り囲むように偏析した非磁性材料から構成されるグラニュラー構造をもたらす。磁性材料は、近年では例えばFePtなどの規則合金が注目されており、非磁性材料には、炭素などの単一の元素、又は、炭素を含む化合物、酸化物、窒化物等が知られている(例えば、特許文献1等を参照)。
【0004】
垂直磁気記録媒体では、グラニュラー磁性材料として各種材料が提案されている。これらの材料では、磁性結晶粒としての規則合金と、非磁性材料との組み合わせによっては、磁気記録層の膜厚が大きくなると、非磁性材料が磁性結晶粒の粒界のみならず磁性結晶粒の表面にも析出し、磁性結晶粒の成長を妨げるという現象が起こることがある(非特許文献1参照)。このような表面への析出が起こった後に、更に磁気記録層の膜厚を厚くしていくと、磁性結晶粒の表面に析出した非磁性材料上に磁性結晶粒子が成長する、所謂二次成長が起こる。このような二次成長は、結果的に、垂直磁気記録媒体の磁気異方性を低下させることになる。
【0005】
このため、グラニュラー磁性材料に含まれる非磁性材料についても種々の材料が検討されている。例えば、特許文献2は、B
4Cを非磁性材料として用いた磁気記録層を含む垂直磁気記録媒体を開示している。特許文献2は、高い熱安定性、高い磁気異方性定数(Ku)等を実現できること、及びDCスパッタリング法により成膜が行えることを報告している。しかし、特許文献2は、規則合金と組み合わせてB
4Cを用いることの言及はない。
【0006】
特許文献3は、二層構造の磁性層を有する熱アシスト磁気記録媒体を開示している。第一の磁性層は、L1
0型の結晶構造を有する規則合金にSiO
2等の酸化物を非磁性材料として添加したグラニュラー磁性材料である。また、第二の磁性層は、第一の磁性層のような酸化物を含まない連続層(CAP層)である。特許文献3の発明では、第1の磁性層中の非磁性材料の含有率が、基板側から第2の磁性層側に向かって減少していることを特徴としている。このような構成にすることによって、引用文献3の発明では、過剰な非磁性材料が規則合金の結晶粒の上部に析出して、結晶粒の成長が垂直方向に分断されることを防いでいる。また、これによって、粒径が微細で、且つ、基板面に対して垂直な方向に連続成長した規則合金の結晶粒を実現している。
【0007】
また、グラニュラー磁性材料の上述のような研究に加え、磁気記録の高密度化のためには、高い熱安定性を得るために、FePtなどの高い磁気異方性を有する材料で構成された磁気記録層が必要とされている。しかしながら、FePtは、室温での保磁力が高く、通常の記録ヘッドでは磁場が足りず記録を行うことができない。そこで熱アシスト磁気記録方式が提案されている。
【0008】
熱アシスト磁気記録方式は、磁気記録層にレーザ等を照射して加熱することで保磁力を低下させ、その状態で記録用の磁場を印加して磁化を反転させる記録方式である。熱アシスト磁気記録方式では磁性材料のキュリー温度近傍まで加熱して記録する。例えば、FePtのキュリー温度(Tc)は450℃程度であることが知られている。
【0009】
一方、高温での記録は、磁気記録層を保護するためのカーボン保護膜や保護膜上の潤滑剤の劣化をもたらし、記録ヘッド自体の劣化の原因ともなるため、磁気記録装置の信頼性が大きく低下する要因となる。このため、できるだけ低温で記録を行うことが望まれる。
【0010】
特許文献4は、複数の磁性層を設け、それぞれの磁性層において異なる磁気異方性定数(Ku)とTcを設定することで、KuとTcとの相関を緩和することを提案している。具体的には、特許文献4の提案は、磁気記録層が、キュリー温度Tc1を有する第1磁性層とキュリー温度Tc2を有する第2磁性層を含み、Tc1>Tc2の関係を満たすようにする。これにより、Tc2よりも高い温度に磁気記録層を加熱した場合、第1磁性層と第2磁性層の交換結合が解消され、第1磁性層への記録が可能となる、というものである。また、特許文献4ではTcを低下させるためFePtにCu等を添加することを提案している。
【0011】
特許文献5は、非磁性基板上の堆積された磁気記録層が、面内方向について、互いに反磁性領域で分離された複数の強磁性領域を含む磁気記録媒体を開示している。引用文献5は、強磁性領域及び反磁性領域にFePtRhを主成分とした合金を使用して、高密度化及び磁気ビット間の磁気分離が可能であり、且つ表面の劣化が抑制できることを開示している。しかし、引用文献5の媒体はパターンド媒体であり、且つ磁性材料のTcの低下についての提案はない。
【0012】
また、磁性材料のTcの低下に関しては、例えば、特許文献6には、基板と、該基板上に形成された複数の下地層と、L10構造を有する合金を主成分とする磁性層を含む磁気記録媒体において、該磁性層が、L10構造を有するFePt合金と炭素(C)からなる第1の磁性層と、L10構造を有するFePt合金とCr
2O
3、Y
2O
3もしくはTa
2O
5からなる第2の磁性層を含むことを特徴とする磁気記録媒体が開示されている。特許文献6では、第1の磁性層、もしくは第2の磁性層中のFePt合金に、Niを添加してもよく、これにより、キュリー温度が低下し、記録温度を低く設定できることが開示されている。
【0013】
また、特許文献7には、Ge酸化物を含む非磁性結晶粒界とL1
0型の規則合金を含む磁性層を含む磁気記録媒体において、Mnが添加された磁性結晶粒と、Ge酸化物を含む非磁性結晶粒界とを有する磁気記録層を採用すると、キュリー温度の低下により反転磁界が低下して、熱アシスト記録が容易となることが開示されている。
【0014】
更に、特許文献8には、第1磁気記録層及び第2磁気記録層を含む複数の磁気記録層を含む垂直磁気記録媒体が開示されており、この第1及び第2磁気記録層にNi、Mn、Crを添加することにより、磁気的相互作用が低減して磁気異方性やキュリー温度などの磁気特性が変化して、規則化温度を低減できることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開平08−083418号公報
【特許文献2】特開2008−097824号公報
【特許文献3】特開2011−154746号公報
【特許文献4】特開2009−059461号公報
【特許文献5】特開2009−151899号公報
【特許文献6】特開2012−221542号公報
【特許文献7】国際公開第2014/087665号
【特許文献8】国際公開第2014/087672号
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】Appl. Phys. Express, 101301, 2008
【非特許文献2】富士時報 vol.83,No.4 2010年,257〜260頁
【非特許文献3】R. F. Penoyer, Rev. Sci. Instr. 30(1959) p711
【非特許文献4】強磁性体の物理(下)近角聰信 裳華房 10〜21頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
垂直磁気記録媒体においては、高い磁気異方性を維持する必要がある。また、垂直磁気記録媒体では、グラニュラー構造中の規則合金の粒径を微細化することが望まれる(特許文献3参照)。更に、熱アシスト式、マイクロ波アシスト式等のエネルギーアシスト式の磁気記録媒体では、磁気記録層がある程度の膜厚を有することが有利であることが、本発明者らの研究で分かってきた。このように、垂直磁気記録媒体の磁気記録層には、高い磁気異方性を維持しながら微細な規則合金で所定の膜厚を持たせるという要請が存在する。
【0018】
更に、熱アシスト式磁気記録媒体では、できるだけ低温で記録を行うことが望まれるが、特許文献4に開示されているようなCuを添加したFePt規則合金であっても、そのTcは比較的高い。例えば、Cuを10at%添加した場合でもTcは約380℃である。従って、磁気記録媒体の磁性材料の更なるTcの低減が望まれる。
【0019】
しかし、従来から用いられている規則合金−非磁性材料の組み合わせでは、単層として十分な膜厚を実現することはできなかった。また、複数層のグラニュラー磁性材料で構成される磁気記録層を含む磁気記録媒体においても、これまで十分に高い磁気異方性を維持しながら、所定の膜厚を実現した磁気記録媒体は得られていなかった。更に、従来から用いられている規則合金−非磁性材料についても、更なるTcの低下を実現できる材料が望まれている。
【0020】
従って、本発明は、高い磁気異方性を維持し、所望の膜厚を有し、Tcの低下をもたらしうる磁気記録層を含む垂直磁気記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
磁気記録媒体は、非磁性基板及び磁気記録層を少なくとも含み、前記磁気記録層は、第1磁性結晶粒と、前記第1磁性結晶粒を取り囲む第1非磁性結晶粒界とを含むグラニュラー構造を有し、前記第1磁性結晶粒はFe、Pt及びRhを有する規則合金からなり、前記第1非磁性結晶粒界は炭素、ホウ素又はこれらの組み合わせからなる。
【0022】
磁気記録媒体は、非磁性基板及び磁気記録層を少なくとも含み、前記磁気記録層は、少なくとも第1磁気記録層及び第2磁気記録層を含む複数層からなり、前記第1磁気記録層は、第1磁性結晶粒と、前記第1磁性結晶粒を取り囲む第1非磁性結晶粒界とを含むグラニュラー構造を有し、前記第1磁性結晶粒はFe、Pt及びRhを有する規則合金からなり、前記第1非磁性結晶粒界は炭素、ホウ素又はこれらの組み合わせからなり、前記第2磁気記録層は、第2磁性結晶粒と、前記第2磁性結晶粒を取り囲む第2非磁性結晶粒界とを含むグラニュラー構造を有し、前記第2磁性結晶粒はFePt規則合金又はFePtRh規則合金からなり、前記第2非磁性結晶粒界は炭素を含む。
【発明の効果】
【0023】
磁気記録媒体は、従来の磁気特性を維持し、所定の膜厚を有し、Tcを低下させうる磁気記録層を含む垂直磁気記録媒体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】磁気記録媒体の1つの構成例を示す断面図である。
【図2】磁気記録媒体の別の構成例を示す断面図である。
【図3】実施例及び比較例について、磁気記録媒体の第1磁気記録層の膜厚に対して、基板面に対して垂直な方向の保磁力(Hc)の値をプロットした図である。
【図4】実施例及び比較例について、磁気記録媒体の第1磁気記録層の膜厚に対して磁化曲線の傾き(α)の値をプロットした図である。
【図5】実施例及び比較例について、磁気記録媒体の第1磁気記録層の膜厚に対して磁気異方性定数(Ku)の値をプロットした図である。
【図6】実施例及び比較例について、磁気記録媒体の第1磁気記録層の膜厚に対して、FePtの(001)ピークの積分強度(規格化)の値をプロットした図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
磁気記録媒体は非磁性基板及び磁気記録層を少なくとも含む。磁気記録媒体は、基板と磁気記録層との間に、密着層、軟磁性裏打ち層、ヒートシンク層、下地層及び/又はシード層のような当該技術において知られている任意選択的な層をさらに含んでもよい。加えて、磁気記録媒体は、磁気記録層の上に、保護層及び/又は液体潤滑剤層のような当該技術において知られている任意選択的な層をさらに含んでもよい。磁気記録媒体の一例として、図1に磁気記録媒体の1つの構成例を示した。図1に示す例は、基板10、密着層20、下地層30、シード層40、磁気記録層50、及び保護層60を含む磁気記録媒体100である。
【0026】
また、図2に、磁気記録媒体の別の構成例を示した。図2に示されるように、磁気記録媒体100’は、基板10、密着層20、下地層30、シード層40、磁気記録層50、及び保護層60を含み、磁気記録層50は、少なくとも第1磁気記録層52と第2磁気記録層54を含む複数層で構成される。図2には、第1磁気記録層52及び第2磁気記録層54の二層構造を示した。
【0027】
更に、第1磁気記録層は、第1磁性結晶粒、及びこの第1磁性結晶粒を取り囲む第1非磁性結晶粒界から構成され、第2磁気記録層は、第2磁性結晶粒、及びこの第2磁性結晶粒を取り囲む第2非磁性結晶粒界から構成される。
【0028】
磁気記録媒体は、例えば熱アシスト式、マイクロ波アシスト式等のエネルギーアシスト式の磁気記録媒体を含めた、種々の垂直磁気記録媒体に適用可能である。
【0029】
磁気記録媒体の1つの態様は、非磁性基板及び磁気記録層を少なくとも含む磁気記録媒体であり、前記磁気記録層が、第1磁性結晶粒と、前記第1磁性結晶粒を取り囲む第1非磁性結晶粒界とを含むグラニュラー構造を有し、前記第1磁性結晶粒はFe、Pt及びRhを有するFePtRh規則合金からなり、前記第1非磁性結晶粒界は炭素、ホウ素又はこれらの組み合わせからなる。第1磁性結晶粒はL1
0型の規則合金であることが好ましい。本明細書では、前記Fe、Pt及びRhを有する規則合金を単にFePtRh規則合金とも称する。また、本明細書において、FePtY(Y=Rh、Mn、Niなど)、FePtY−X(X=C、B、酸化物、これらの組み合わせなど、Y=Rh、Mn、Niなど)、FePtなどの、元素により表された合金又は材料の表記は、単に当該元素を構成要素として有することを意味し、当該元素間の組成を規定しない。従って、例えばFePtRhとの記載は、当該規則合金の構成元素がFe、Pt及びRhであることを示すのみであり、これらの構成元素の比が1:1:1であることを意味しない。更に、本明細書において、「FePtRh
からなる(consisting of)」、「FePtRh−X(X=C、B、酸化物、これらの組み合わせなど)
からなる(consisting of)」などの用語が材料自体を表す場合、これらの用語は、表記された元素を構成要素として有することを意味し、構成要素である元素間の比率を規定しない。従って、例えば「FePtRhからなる」とは、この材料が、Fe、Pt及びRhの元素のみで構成されることを意味し、これらの元素の比が1:1:1であることを意味しない。本明細書において、元素の割合を化学式によって示す場合は、例えば「70vol%(50at%Fe45at%Pt5at%Rh)−30vol%C」、「50at%Fe45at%Pt5at%Rh」などのように規則合金と非磁性粒界材料の間の組成を体積%で表し、規則合金の間の組成を原子%(at%)で表す。
【0030】
本発明者らは、FePtRh規則合金からなる磁気記録層を含む磁気記録媒体において、高いKu値を維持し、且つTcを低下できることを見出した。このFePtRh規則合金を磁性結晶粒として含むグラニュラー構造を有する磁性材料でも、同様にTcの低下が期待できる。更に、本発明者らは、FePtRh規則合金を磁性結晶粒として含み、炭素、ホウ素又はこれらの組み合わせからなる材料を非磁性結晶粒界として含む磁性材料が磁気記録層の材料として優れることを見出した。
【0031】
磁気記録媒体の別の態様は、非磁性基板及び磁気記録層を少なくとも含む磁気記録媒体であり、前記磁気記録層が、少なくとも第1磁気記録層及び第2磁気記録層を含む複数層からなり、前記第1磁気記録層は、第1磁性結晶粒と、前記第1磁性結晶粒を取り囲む第1非磁性結晶粒界とを含むグラニュラー構造を有し、前記第1磁性結晶粒はFePtRh規則合金からなり、前記第1非磁性結晶粒界は炭素、ホウ素又はこれらの組み合わせからなり、前記第2磁気記録層は、第2磁性結晶粒と、前記第2磁性結晶粒を取り囲む第2非磁性結晶粒界とを含むグラニュラー構造を有し、前記第2磁性結晶粒はFePt規則合金又はFePtRh規則合金からなり、前記第2非磁性結晶粒界は炭素を含むものである。第1磁性結晶粒或いは第2磁性結晶粒はL1
0型の規則合金であることが好ましい。
【0032】
本発明者らは、複数層の磁気記録層を含む磁気記録媒体において、テンプレート層としてFePt−C又はFePtRh−Cからなる層を形成することにより、このテンプレート層上にFePtRh−X(Xは、C、B又はこれらの組み合わせ)がグラニュラー構造を形成して成長でき、所望の膜厚で磁気記録層を形成できることを新たに見出した。また、このような磁気記録層を含む垂直磁気記録媒体は高い磁気異方性を有することも明らかとなった。複数層の磁気記録層を含む磁気記録媒体では、テンプレート層は第2磁気記録層である。
【0033】
磁気記録媒体は、の各知見に基づくものであり、グラニュラー構造を有する磁気記録層で、高い磁気異方性を維持しながら磁気記録層の厚膜化を実現でき、且つ磁気記録層の磁性材料のTcの低下が期待できるものである。
【0034】
以下に磁気記録媒体の各構成要素について説明する。
【0035】
基板10は、表面が平滑である様々な基板であってもよい。例えば、磁気記録媒体に一般的に用いられる材料を用いて、基板10を形成することができる。用いることができる材料は、NiPメッキを施したAl合金、MgO単結晶、MgAl
2O
4、SrTiO
3、強化ガラス、結晶化ガラス等を含む。
【0036】
任意選択的に設けてもよい密着層20は、密着層20の上に形成される層と密着層20の下に形成される層との密着性を高めるために用いられる。密着層20の下に形成される層としては基板10を含む。密着層20を形成するための材料はNi、W、Ta、Cr、Ruなどの金属、前述の金属を含む合金を含む。密着層20は、単一の層であってもよいし、複数の層の積層構造を有してもよい。
【0037】
任意選択的に設けてもよい軟磁性裏打ち層(不図示)は、磁気ヘッドからの磁束を制御して、磁気記録媒体の記録及び再生の特性を向上させる。軟磁性裏打ち層を形成するための材料は、(i)NiFe合金、センダスト(FeSiAl)合金、CoFe合金などの結晶質材料、(ii)FeTaC,CoFeNi,CoNiPなどの微結晶質材料、又は(iii)CoZrNb、CoTaZrなどのCo合金を含む非晶質材料を含む。軟磁性裏打ち層の膜厚の最適値は、磁気記録に用いる磁気ヘッドの構造及び特性に依存する。他の層と連続成膜で軟磁性裏打ち層を形成する場合、生産性との兼ね合いから、軟磁性裏打ち層が10nm〜500nmの範囲内(両端を含む)の膜厚を有することが好ましい。
【0038】
本発明の磁気記録媒体を熱アシスト磁気記録方式において使用する場合、ヒートシンク層(不図示)を設けてもよい。ヒートシンク層は、熱アシスト磁気記録時に発生する磁気記録層50の余分な熱を効果的に吸収するための層である。ヒートシンク層は、熱伝導率及び比熱容量が高い材料を用いて形成することができる。そのような材料は、Cu単体、Ag単体、Au単体、又はそれらを主体とする合金材料を含む。ここで、「主体とする」とは、当該材料の含有量が50wt%以上であることを指す。また、強度などの観点から、Al−Si合金、Cu−B合金などを用いて、ヒートシンク層を形成することができる。さらに、センダスト(FeSiAl)合金、軟磁性のCoFe合金などを用いてヒートシンク層を形成することができる。軟磁性材料を用いることによって、ヘッドの発生する垂直方向の磁界を磁気記録層50に集中させる機能をヒートシンク層に付与し、軟磁性裏打ち層の機能を補完することもできる。ヒートシンク層の膜厚の最適値は、熱アシスト磁気記録時の熱量及び熱分布、ならびに磁気記録媒体の各層の構成及び各層の厚さによって変化する。ヒートシンク層を他の層と連続成膜で形成する場合などは、生産性との兼ね合いから、ヒートシンク層の膜厚は10nm以上100nm以下であることが好ましい。ヒートシンク層は、スパッタ法、真空蒸着法などの当該技術において知られている任意の方法を用いて形成することができる。通常の場合、ヒートシンク層は、スパッタ法を用いて形成される。ヒートシンク層は、磁気記録媒体に求められる特性を考慮して、基板10と密着層20との間、密着層20と下地層30との間などに設けることができる。
【0039】
下地層30は、上方に形成されるシード層40の結晶性及び/又は結晶配向を制御するための層である。下地層30は単層であっても多層であってもよい。下地層30は、非磁性であることが好ましい。下地層30の形成に用いられる非磁性材料は、(i)Pt金属、Cr金属などの単金属、又は(ii)主成分であるCrにMo、W、Ti、V、Mn、Ta、及びZrからなる群から選択される少なくとも1種の金属が添加された合金を含む。下地層30は、スパッタ法などの当該技術において知られている任意の方法を用いて形成することができる。
【0040】
シード層40の機能は、上層である磁気記録層50中の磁性結晶粒の粒径及び結晶配向を制御することである。シード層40に、シード層40の下にある層と磁気記録層50との間の密着性を確保する機能を持たせてもよい。また、シード層40と磁気記録層50の間に中間層等の他の層を配置してもよい。中間層等を配置する場合は、中間層等の結晶粒の粒径及び結晶配向を制御することにより磁気記録層50の磁性結晶粒の粒径及び結晶配向を制御する。シード層40は非磁性であることが好ましい。シード層40の材料は、磁気記録層50の材料に合わせて適宜選択される。より具体的には、シード層40の材料は、磁気記録層の磁性結晶粒の材料に合わせて選択される。例えば、磁気記録層50の磁性結晶粒がL1
0型規則合金で形成される場合、NaCl型の結晶構造の化合物を用いてシード層40を形成することが好ましい。特に好ましくは、MgO、SrTiO
3などの酸化物、又はTiNなどの窒化物を用いてシード層40を形成することができる。また、の材料を含む複数の層を積層して、シード層40を形成することもできる。例えば、ZnO上にMgOを積層させた二層構造である。磁気記録層50の磁性結晶粒の結晶性の向上、及び生産性の向上の観点から、シード層40は、1nm〜60nm、好ましくは1nm〜20nmの膜厚を有することが好ましい。シード層40は、スパッタ法などの当該技術において知られている任意の方法を用いて形成することができる。
【0041】
磁気記録層50は、単層からなる磁気記録層か、又は、少なくとも2つの層、即ち第1磁気記録層52及び第2磁気記録層54を含む磁気記録層である。
【0042】
(単層の磁気記録層の場合)
1つの形態である単層の磁気記録層50は、磁性結晶粒を構成するFePtRhからなる規則合金と、これを取り囲む非磁性結晶粒界を構成する元素からなる材料を含む。前記非磁性結晶粒界を構成する元素は、C、B又はこれらの組み合わせである。
【0043】
磁気記録層50はFePtRh−X(但し、Xは非磁性結晶粒界材料でC、B又はこれらの組み合わせである)を用いて形成でき、この場合、FePtRh規則合金中のFe、Pt及びRhの含有量は、FePtRhの全原子を基準として、Feが30〜70原子%、Ptが30〜70原子%、Rhが1〜25原子%であることが好ましい。また、FePtRhと元素Xの量は、FePtRh−Xの全量を基準としてFePtRhが50〜90vol%、元素Xが10〜50vol%であることが好ましい。なお、本明細書、並びに、添付の特許請求の範囲、及び図面において、「原子%」を「at%」と記載する場合もある。また、先に説明したとおり、本明細書では、磁気記録層の材料の組成に関し、Fe、Pt及びRhを有する規則合金の組成については、これら元素の組成を原子%で表し、磁気記録層材料の磁性結晶粒と非磁性結晶粒界の組成はVol%で表す。
【0044】
単層の磁気記録層50は、FePtRh規則合金の構成元素及びX元素をスパッタ法を用いて堆積させることにより形成できる。
【0045】
本明細書における「スパッタする」とは、高エネルギーイオンの衝突によりターゲットから原子、クラスター又はイオンを射出させる段階のみを意味し、射出された原子、クラスター又はイオンに含まれる元素の全てが被成膜基板上に固定されることを意味しない。言い換えると、本明細書における「スパッタする」工程で得られる薄膜は、被成膜基板に到達した元素を必ずしも到達量の比で含有しない。単層の磁気記録層50の形成において用いるターゲットは、規則合金の構成元素と元素Xを全て含むターゲットを所望の構成割合で含むものを用いることができる。或いはまた、規則合金の各構成元素と、元素Xとを、全て別々のターゲットとして用いることもできる。更には、規則合金の構成元素を所定の割合で含むターゲットと、元素Xのターゲットを用いてもよい。いずれの場合においても、それぞれのターゲットに印加する電力を調整して磁性結晶粒及び非磁性結晶粒界の構成比率を制御することができる。具体的には、例えば、Fe、Pt、Rh、B及びCの各ターゲットを用いたコスパッタ法により単層の磁気記録層を成膜することができる。
【0046】
単層の磁気記録層50を形成する際に基板を加熱する。この加熱の際の基板温度は、300℃〜700℃の範囲内である。この範囲内の基板温度を採用することによって、単層の磁気記録層50中の規則合金の規則度を向上させることができる。
【0047】
また、単層の磁気記録層50は、1〜10nm、好ましくは2〜4nmの膜厚を有することが好ましい。
【0048】
(複数の磁気記録層を含む場合)
磁気記録媒体は、磁気記録層50が複数層から構成されていてもよい。好ましくは、磁気記録層50は、少なくとも第1磁気記録層52と第2磁気記録層54の2層を含む。
【0049】
以下の説明では、図2に示す第1磁気記録層52と第2磁気記録層54の2層を含む場合を例に取り、複数の磁気記録層を含む場合を説明する。
【0050】
第1磁気記録層52は、第1磁性結晶粒とこの第1磁性結晶粒を取り囲む第1非磁性結晶粒界を含むグラニュラー構造を有し、第2磁気記録層54は、第2磁性結晶粒とこの第2磁性結晶粒を取り囲む第2非磁性結晶粒界を含むグラニュラー構造を有する。
【0051】
複数層の磁気記録層を有する磁気記録媒体では、第1磁気記録層52は、上述の単層の磁気記録層と同様の構成を有する。従って、第1磁気記録層は、FePtRh規則合金からなる第1磁性結晶粒、及びC、B又はこれらの組み合わせからなる第1非磁性結晶粒界から構成されるグラニュラー構造を有する。第1磁気記録層52は、単層のFePtRh−X(X=B、C又はこれらの組み合わせ)で説明した方法と同様の方法を用いて成膜することができる。
【0052】
第2磁気記録層54は、第1磁気記録層のテンプレートとなる層である。第2磁気記録層54は、FePt規則合金又はFePtRh規則合金からなる第2磁性結晶粒、及び炭素(C)からなる第2非磁性結晶粒界から構成されるグラニュラー構造を有する。第2磁気記録層54は、第1磁気記録層と同様の方法を用いて成膜することができる。成膜の際、Fe、Pt、Rh及びCを適宜組み合わせたスパッタのターゲットを用いればよい。例えば、Fe、Pt、Rh及びCの各ターゲットを用いたコスパッタ法により第2磁気記録層を成膜することができる。
【0053】
第1磁気記録層52は、単層の磁気記録層と同様に、FePtRh−X(但し、XはC、B又はこれらの組み合わせである)を用いて形成でき、この場合、FePtRh規則合金中のFe、Pt及びRhの含有量は、FePtRhの全原子を基準として、Feが30〜70原子%、Ptが30〜70原子%、Rhが1〜25原子%であることが好ましい。また、FePtRhと元素Xの量は、FePtRh−Xの全量を基準としてFePtRhが50〜90vol%、元素Xが10〜50vol%であることが好ましい。
【0054】
第2磁気記録層54は、FePt−C又はFePtRh−Cを用いて形成できる。FePt−Cを第2磁気記録層54に用いる場合、FePt規則合金中のFePt規則合金中のFe及びPtの含有量は、FePtの全原子を基準として、Feが30〜70原子%、Ptが30〜70原子%であることが好ましい。また、FePt−C中のFePtとCの含有量は、FePt−Cの全量を基準として、それぞれ、FePtが50〜90vol%、Cが10〜50vol%であることが好ましい。また、FePtRh−Cを第2磁気記録層54として用いる場合、FePtRh規則合金中のFe、Pt及びRhの含有量は、FePtRhの全原子を基準として、Feが30〜70原子%、Ptが30〜70原子%、Rhが1〜25原子%であることが好ましい。また、FePtRh−C中のFePtRhとCの含有量は、FePtRh−Cの全量を基準として、それぞれ、FePtRhが50〜90vol%、Cが10〜50vol%であることが好ましい。
【0055】
複数の層を含む形態の磁気記録層50において、第2磁気記録層54の、第2非磁性結晶粒を取り囲む第2非磁性材料はCである。この第2非磁性材料上に、第1非磁性材料であるFePtRh−X(但し、XはC、B又はこれらの組み合わせである)のグラニュラー磁性材料を用いて第1磁気記録層52を形成することで、第2磁気記録層のグラニュラー構造にならったグラニュラー構造の第1磁気記録層52を効率よく形成でき、磁気記録層の厚膜化を実現できる。
【0056】
磁気記録媒体では、単層又は複数層の磁気記録層50は更に多くの磁気記録層が積層された構造を有していてもよい。例えば、磁気記録層50は、の単層の磁気記録層を複数積層した構造を有することができる。或いは、第1磁気記録層及び第2磁気記録層を1組として、これらが複数積層された構造を有してもよく、の単層の磁気記録層、又は、第1磁気記録層若しくは第2磁気記録層上に、これらの磁気記録層とは組成又は構成元素の異なる材料からなる磁気記録層を更に積層した構造を有していてもよい。また、磁気記録層50は、第2磁気記録層、第1磁気記録層、第2磁気記録層の順に積層された構造を有してもよい。更に、磁気記録層50にCAP層のような追加の層を設けてもよい。
【0057】
このように、FePt−C又はFePtRh−Cを磁性材料として使用した第2磁気記録層54をテンプレート層として形成し、この第2磁気記録層54上にFePtRh−X(但し、XはC、B又はこれらの組み合わせである)のグラニュラー磁性材料の第1磁気記録層52を形成することで、高い磁気異方性を維持しながら、磁気記録層50全体の厚膜化を実現することができる。
【0058】
磁気記録媒体では、第2磁気記録層の膜厚は、4nm以下、好ましくは2〜4nmである。膜厚が4nmを越えると、規則合金の成長阻害及び二次成長が起こる。高い磁気異方性を維持する観点から、第1磁気記録層の膜厚は3nm以上であることが好ましく、3〜9nmであることがより好ましい。
【0059】
複数層からなる磁気記録層50の膜厚は、特に限定されるものではない。しかしながら、高い生産性および高い記録密度を両立させる観点から、磁気記録層50は、少なくとも5nm以上、好ましくは8nm以上の膜厚を有することが望ましい。磁気記録層50としての好ましい膜厚は、6〜16nm、より好ましくは、8〜11nmである。
【0060】
更に、磁気記録層50は、単層及び複数層の場合を含め、Tcを低下することができるFePtRh規則合金を含むグラニュラー磁性材料で構成される。このため、この磁性材料を含む磁気記録媒体では、同様にTcの低下が期待できる。
【0061】
磁気記録層50は、第1磁気記録層52及び第2磁気記録層54に加えて、1つ又は複数の追加の磁気記録層をさらに含んでもよい。1つ又は複数の追加の磁気記録層のそれぞれは、グラニュラー構造又は非グラニュラー構造のいずれを有してもよい。例えば、第1磁気記録層52及び第2磁気記録層54からなる積層構造と、追加の磁気記録層とで、Ruなどの結合層を挟んで積層したECC(Exchange−coupled Composite)構造を形成してもよい。あるいはまた、連続層として、グラニュラー構造を含まない磁気記録層を、第1磁気記録層52及び第2磁気記録層54からなる積層構造の上部に設けてもよい。連続層としては、いわゆるCAP層を含む。
【0062】
保護層60は、磁気記録媒体の分野で慣用的に使用されている材料を用いて形成することができる。具体的には、Pt、Taなどの非磁性金属、ダイアモンドライクカーボンなどのカーボン系材料、あるいは窒化シリコンなどのシリコン系材料を用いて、保護層60を形成することができる。また、保護層60は、単層であってもよく、積層構造を有してもよい。積層構造の保護層60は、例えば、特性の異なる2種のカーボン系材料の積層構造、金属とカーボン系材料との積層構造、又は金属酸化物膜とカーボン系材料との積層構造であってもよい。保護層60は、CVD法、スパッタ法(DCマグネトロンスパッタリング法などを含む)、真空蒸着法などの当該技術において知られている任意の方法を用いて形成することができる。
【0063】
また、任意選択的に、本発明の磁気記録媒体は、保護層60の上に液体潤滑剤層(不図示)をさらに設けてもよい。液体潤滑剤層は、磁気記録媒体の分野で慣用的に使用されている材料を用いて形成することができる。液体潤滑剤層の材料は、例えば、パーフルオロポリエーテル系の潤滑剤などを含む。液体潤滑剤層は、例えば、ディップコート法、スピンコート法などの塗布法を用いて形成することができる。
【0064】
(実施例)
以下に実施例により、本発明を説明するが、以下の実施例は本発明を限定することを意図するものではない。
【0065】
(Tc及び磁気特性の測定)
以下に示す手順により、実施例に記載の磁気記録媒体のTc及び磁気特性を評価した。
【0066】
振動試料型磁力計(VSM)を用いて、得られた磁気記録媒体の飽和磁化Msを測定した。また、得られた磁気記録媒体を室温(RT:25℃)から177℃に加熱して、振動試料型磁力計(VSM)を用いて、室温から177℃における飽和磁化Msを測定した。また、室温及び177℃の温度を含む複数の測定温度Tと飽和磁化の二乗Ms
2(T)をプロットし、最小二乗法により回帰直線を得た。得られた回帰直線をMs
2=0の点まで外挿し、キュリー温度Tcを求めた。
【0067】
PPMS装置(Quantum Design社製;Physical Property Measurement System)により、得られた磁気記録媒体のM−Hヒステリシスループを測定した。得られたM−Hヒステリシスループから、飽和磁化Ms、基板面に対して垂直な方向の保磁力Hc、およびM−Hヒステリシスループのα値を決定した。α値は、1に接近した値を有することが望ましい。α値は、保磁力付近(H=Hc)における磁化曲線の傾きを意味し、α=4π×(dM/dH)の式で求められる。α値の決定においては、Mの単位として「emu/cm
3」を用い、Hの単位として「Oe」を用いる。磁気記録層50中の磁性結晶粒が磁気的に良好に分離されていない場合、α値が増大する。一方、たとえば二次成長による結晶粒が存在する場合のような、磁性結晶粒の磁気特性のバラツキが大きい場合、α値が減少する。なお、αは0.6以上、2.5以下を良好な範囲とした。なお、本明細書において、基板面に対して垂直な方向の保磁力Hcを単に保磁力Hcとも称する。
【0068】
また、PPMS装置を用いて自発磁化の磁場印加角度依存性を評価し、磁気異方性定数Kuを決定した。磁気異方性定数Kuの決定には、R. F. Penoyer、「Automatic Torque Balance for Magnetic Anisotropy Measurements」、The Review of Scientific Instruments、1959年8月、第30巻第8号、711−714、ならびに近角聰信、強磁性体の物理(下) 裳華房、10−21に記載の手法を用いた(非特許文献3および4参照)。ここで、磁気異方性定数Kuは、磁性結晶粒および非磁性結晶粒界の総体積あたりのエネルギー値として測定される。ここで、磁気特性は、総体積当たりのKu[film]に加え、磁性結晶粒の正味の磁気異方性定数Ku[grain]を算出した。また、飽和磁化Msについても、同様に、総体積当たりのMs[film]、及び正味の飽和磁化Ms[grain]を求めた。[film]と記された磁気特性は、膜全体でみた時の総体積当たりの特性値であり、[grain]と記された磁気特性は、膜全体から非磁性粒界材料であるB、C、SiO
2などの体積分を除いた磁性材料正味の値である。また、X線回折(XRD)分析から、FePtの(001)ピークの積分強度を測定した。
【0069】
1.実験例1及び実験例2
1.1 実験例1
基板と、単層のFePtRh規則合金からなる磁気記録層を含む磁気記録媒体を調製した。
【0070】
平滑な表面を有する化学強化ガラス基板(HOYA社製N−10ガラス基板)を洗浄し、基板10を準備した。洗浄後の基板10を、インライン式のスパッタ装置内に導入した。圧力0.5PaのArガス中で純Taターゲットを用いたDCマグネトロンスパッタ法により、膜厚5nmのTa密着層20を形成した。Ta密着層形成時の基板温度は室温(25℃)であった。Ta密着層形成時のスパッタ電力は100Wであった。
【0071】
次に、圧力0.5PaのArガス中で純Crターゲットを用いたDCマグネトロンスパッタ法により、膜厚20nmのCr下地層30を得た。Cr下地層30形成時の基板温度は室温(25℃)であった。Cr下地層30形成時のスパッタ電力は300Wであった。
【0072】
次に、圧力0.1PaのArガス中でMgOターゲットを用いたRFマグネトロンスパッタ法により膜厚5nmのMgOシード層40を形成した。MgOシード層40形成時の基板温度は、室温(25℃)であった。MgOシード層40形成時のスパッタ電力は200Wであった。
【0073】
次に、FePtRh層は、MgOシード層40を形成した積層体を430℃に加熱し、圧力1.5PaのArガス中でFePtターゲットと、Rhターゲットを用いたDCマグネトロンスパッタ法により、FePtRhからなる層を形成して、磁気記録層を得た。FePtRhからなる層の形成時の各ターゲットに印加した電力は、それぞれ、300W(FePt)、130W(Rh)であった。FePtRhからなる層の各元素の含有量(原子%)を第1表に記載した。
【0074】
最後に、圧力0.5PaのArガス中でPtターゲットを用いたDCスパッタ法により膜厚5nmのPt保護層60を形成して、磁気記録媒体を得た。保護層形成時の基板温度は、室温(25℃)であった。Pt保護層60の形成時のスパッタ電力は50Wであった。
【0075】
1.2 実験例2
実験例2としてFePt規則合金からなる磁気記録層を含む磁気記録媒体を調製した。
【0076】
単層のFePt規則合金からなる磁気記録層を含む磁気記録媒体は、以下の通りに調製した。実験例1と同様にしてMgOシード層40を形成した積層体を得た。これを430℃に加熱し、圧力1.5PaのArガス中でFePtターゲットを用いたDCマグネトロンスパッタ法により、FePtからなるFePt層を形成した。FePt層の膜厚は10nmであった。FePt層形成時のターゲットに印加した電力は、300W(FePt)であった。FePtからなる層の各元素の含有量(原子%)を第1表に記載した。
【0077】
1.3 評価
実験例1及び実験例2のTc、Ms及びKuを測定した。結果を表1に示す。
【0079】
表1に示されるように、FePtRh規則合金は、RTにおいて磁気特性を大きく低下することなく、Tcの低下を実現した。
【0080】
2.実施例1及び比較例1〜2
2.1 実施例1
この実施例は、図1に示すような単層の磁気記録層を含む磁気記録媒体の例である。
【0081】
この実施例では、非磁性基板と、その上に順次Ta層、Pt層、ZnO層、MgO層、FePtRh−C磁気記録層、及びPt層を形成した垂直磁気記録媒体を作製した。
【0082】
非磁性基板として、化学強化ガラス基板(HOYA社製N−10ガラス基板)を準備した。非磁性基板を、スパッタ装置内に導入した。Ta層から、最上層のPt保護層までの成膜は、大気解放することなく、インライン式の成膜装置で成膜した。Ta層は、純Taターゲットを用いて、0.3Paの圧力のAr雰囲気中でDCマグネトロンスパッタ法により、膜厚5nmで成膜した。次に、Pt層は、純Ptターゲットを用いて、0.3Paの圧力のAr雰囲気中でDCマグネトロンスパッタ法により、膜厚10nmで成膜した。また、ZnO層は、ZnOターゲットを用いて、0.3Paの圧力のAr雰囲気中でRFマグネトロンスパッタ法により、膜厚2nmで成膜した。
【0083】
次に、基板を400℃に加熱し、MgOターゲットを用いて、0.016Paの圧力のAr雰囲気中でRFスパッタリング法により、膜厚5nmのMgO層を成膜した。
【0084】
次に、磁気記録層を成膜した。磁気記録層はFePtRh−C層である。まず、の各層を成膜した基板を480℃に加熱し、1.0PaのArガス雰囲気中でDCマグネトロンスパッタ法により、4nmの膜厚の磁気記録層を成膜した。ターゲットは、成膜時の組成が表2に記載のFePtRh−Cとなるように、Fe、Pt、Rh及びCの各ターゲットを用いた。なお、表2では、規則合金のFe、Pt及びRhの組成は原子%で表し、磁気記録層材料の磁性結晶粒と非磁性結晶粒界の組成はVol%で表した。
【0085】
最後に、圧力1.0PaのArガス中でPtターゲットを用いたDCスパッタ法により膜厚5nmのPt保護層を形成して、磁気記録媒体を得た。保護層形成時の基板温度は、室温(25℃)であった。
【0086】
2.2 比較例1
FePtRhを磁性材料として用い、実施例1と同様にして、磁気記録媒体を作成した。磁気記録層の成膜の条件は、MgOまでの各層を成膜した基板を480℃に加熱し、1.0PaのArガス雰囲気中でDCマグネトロンスパッタ法により、4nmの膜厚の磁気記録層を成膜した。ターゲットは、成膜時の組成が表2に記載のFePtRhとなるように、Fe、Pt及びRhの各ターゲットを用いた。なお、表2では、規則合金のFe、Pt及びRhの組成は原子%で表した。
【0087】
2.3 比較例2
FePtRh−SiO
2を磁性材料として用い、実施例1と同様にして、磁気記録媒体を作成した。磁気記録層の成膜の条件は、MgOまでの各層を成膜した基板を480℃に加熱し、1.0PaのArガス雰囲気中でDCマグネトロンスパッタ法により、4nmの膜厚の磁気記録層を成膜した。ターゲットは、成膜時の組成が表2に記載のFePtRh−SiO
2となるように、Fe、Pt、Rh及びSiO
2の各ターゲットを用いた。なお、表2では、規則合金のFe、Pt及びRhの組成は原子%で表し、磁気記録層材料の磁性結晶粒と非磁性結晶粒界の組成はVol%で表した。
【0089】
2.4 実施例1及び比較例1〜2の評価
の実施例1及び比較例1〜2で調製した磁気記録媒体のMs[film](emu/cm
3)、Ms[grain](emu/cm
3)、基板面に対して垂直な方向の保磁力Hc(kOe)、α、Ku[film](erg/cm
3)及びKu[grain](erg/cm
3)を測定した。[film]は、膜全体でみた時の総体積当たりの特性値であり、[grain]は、膜全体から非磁性材料であるC又はSiO
2の体積分を除いた磁性材料正味の値である。また、X線回折(XRD)分析から、FePtの(001)ピークの積分強度を測定した。これらの結果を表3に示した。
【0091】
比較例1のFePtRhの飽和磁化Msの値は、863emu/cm
3であった。これに対して、実施例1のFePtRh−Cの場合は、磁性材料正味のMs[grain]の値は863/cm
3であり、低下しなかった。一方、比較例2のFePtRh−SiO
2では、磁性材料正味のMs[grain]の値は769/cm
3と低下しており、磁気特性が悪化していることがわかる。
【0092】
比較例1のFePtRhでは、基板面に対して垂直な方向の保磁力Hcが、15.8kOeと小さく、また、磁化曲線の傾きαが1.48と大きい。このことから、FePtRhを用いた磁気記録層では、グラニュラー構造としての磁気的な粒分離が得られていないことがわかる。これに対し、実施例1のFePtRh−Cを用いた磁気記録層は、Hcが20.1kOeの値を示し、比較例1に比べHcが向上した。また、実施例1では、α値が0.60であった。この値は、磁性材料が磁気記録層においてグラニュラー構造を有するか否かの目安となるα値=1.0以下の値であり、実施例1のFePtRh−Cを用いた磁気記録層では、グラニュラー構造としての磁気的な粒分離が実現されていると推察される。一方、比較例2のFePtRh−SiO
2では、Hcが1.4kOeと小さく、α値は1.79と大きい。このことから、比較例2の磁気記録媒体では、磁気特性が大幅に悪化し、且つ、磁気記録層の粒分離が得られていないことがわかる。
【0093】
次に、比較例1のFePtRhを用いた場合の磁気異方性定数Kuを見ると、Kuは2.1E+07erg/cm
3であった。これに対し、実施例1のFePtRh−Cを用いた場合は、磁性材料の正味のKu値であるKu[grain]は2.4E+07erg/cm
3であり、比較例1と比べてKuの値は低下していない。一方、比較例2のFePRh−SiO
2を用いた場合では、Ku[grain]が7.7E+06erg/cm
3となっており、Kuの値は大幅に低下している。このことから、比較例2では、磁気異方性エネルギーも大幅に悪化していることがわかる。
【0094】
次に、X線回折(XRD)分析から得られた、FePtの(001)ピークの積分強度を見ると、比較例1のFePtRhを用いた場合が4379であるのに対して、実施例1のFePtRh−Cを用いた場合は3018であった。これは、FePtRhの体積換算(3018/0.7=4311)で見ると、ほぼ同等である。
【0095】
このことから、FePtRhにCを添加しても、FePtRh規則合金の磁気特性は維持され、規則度はほとんど悪影響を受けないことがわかる。従って、FePtRh−Cは、FePtRh規則合金と同様に、Tcの低下が期待できる。なお、前記規則度は、L1
0型の結晶の基板面に対してFe面、Pt面が交互に並び合う規則性の度合いを表す指標であり、(001)面の配向性が同等であることから規則度も同等であると考えられる。
【0096】
一方、比較例2のFePtRh−SiO
2を用いた場合では、FePtの(001)ピークの積分強度は366と大幅に低下した。このことから、比較例2のFePtRh−SiO
2は、ほとんど規則合金化していないことがわかる。
【0097】
以上の結果から、FePtRh合金を磁気的に粒分離させてグラニュラー化させるためには、Cを添加することが有効である。FePtRh合金にCを添加しても、規則度の低下、及び磁気特性の低下は見られない。一方、SiO
2を非磁性粒界の材料として添加した場合、FePtRh合金をグラニュラー化できないだけでなく、規則度が大幅に低下し、且つ磁気特性も大幅に悪化した。
【0098】
3.実施例2、比較例3〜4、及び、参考例1
この実施例は、複数層からなる磁気記録層の例である。
【0099】
3.1 実施例2
非磁性基板と、その上に順次設けられるTa層、Pt層、ZnO層、MgO層、第2磁気記録層(FePt−C)、第1磁気記録層(FePtRh−BC)、Pt及びTa保護層を有する垂直磁気記録媒体を作製した。
【0100】
非磁性基板として、化学強化ガラス基板(HOYA社製N−10ガラス基板)を準備した。非磁性基板を、スパッタ装置内に導入した。Ta層から、最上層のPt及びCr保護層までの成膜は、大気解放することなく、インライン式の成膜装置で成膜した。Ta層は、純Taターゲットを用いて、0.3Paの圧力のAr雰囲気中でDCマグネトロンスパッタ法により、膜厚5nmで成膜した。次に、Pt層は、純Ptターゲットを用いて、0.3Paの圧力のAr雰囲気中でDCマグネトロンスパッタ法により、膜厚10nmで成膜した。また、ZnO層は、ZnOターゲットを用いて、0.3Paの圧力のAr雰囲気中でRFマグネトロンスパッタ法により、膜厚2nmで成膜した。
【0101】
次に、基板を400℃に加熱し、MgOターゲットを用いて、0.016Paの圧力のAr雰囲気中でRFスパッタリング法により、膜厚5nmのMgO層を成膜した。
【0102】
次に、磁気記録層を成膜した。第2磁気記録層はFePt−C層である。まず、の各層を成膜した基板を480℃に加熱し、1.0PaのArガス雰囲気中でDCマグネトロンスパッタ法により、2nmの膜厚の磁気記録層を成膜した。ターゲットは、成膜時の組成が表4に記載のFePt−Cとなるように、Fe、Pt、Rh及びCの各ターゲットを用いた。なお、表4では、規則合金のFe及びPtの組成は原子%で表し、磁気記録層材料の磁性結晶粒と非磁性結晶粒界の組成はVol%で表した。
【0103】
次に、第1磁気記録層を成膜した。この実施例の第1磁気記録層はFePtRh−BC層である。成膜は以下の通りに行った。のように第2磁気記録層を成膜した基板を480℃に加熱し、B以外の元素についてはDCマグネトロンスパッタ法により、そして、BについてはRFマグネトロンスパッタ法により、表5に示した膜厚の第1磁気記録層を成膜した。FePtRh−BC層は、真空度1.0PaのArガス雰囲気中で成膜した。ターゲットは、Fe、Pt、Rh、B及びCの各ターゲットを用いた。
【0104】
最後に、圧力1.0PaのArガス中でPtターゲットを用いたDCスパッタ法により膜厚5nmのPt及び膜厚5nmのTaの保護層を形成して、磁気記録媒体を得た。保護層形成時の基板温度は、室温(25℃)であった。磁気記録層の組成を表4に示す。なお、表4では、規則合金のFe、Pt及びRhの組成は原子%で表し、磁気記録層材料の磁性結晶粒と、非磁性結晶粒界の各元素の組成はVol%で表した。また、実施例2の第1磁気記録層の膜厚を表5に示した。
【0105】
3.2 (比較例3〜4)
比較例3として、第1磁気記録層の材料にFePtMn−BCを使用した磁気記録媒体を作製した。また、比較例4として、第1磁気記録層の材料にFePtNi−BCを使用した磁気記録媒体を作製した。これらの材料を用いた磁気記録媒体は、実施例2において第1磁気記録層のRhターゲットをそれぞれMnターゲット又はNiターゲットに置き換えた以外、同様の手順で得ることができる。なお、成膜時の組成を表4に示した。なお、表4では、規則合金のFe、Pt、及びMn若しくはNiの組成は原子%で表し、磁気記録層材料の磁性結晶粒と、非磁性結晶粒界の各元素の組成はVol%で表した。また、比較例3及び比較例4の第1磁気記録層の膜厚を表5に示した。
【0106】
3.3 参考例1
参考例1として、第1磁気記録層の材料にFePt−BCを使用した磁気記録媒体を作製した。この材料を用いた磁気記録媒体は、実施例2において、第1磁気記録層のRhターゲットを用いずに第1磁気記録層を成膜すること以外同様の手順で得ることができる。成膜時の組成を表4に示した。なお、表4では、規則合金のFe、Ptの組成は原子%で表し、磁気記録層材料の磁性結晶粒と、非磁性結晶粒界の各元素の組成はVol%で表した。参考例1の第1磁気記録層の膜厚を表5に示した。
【0108】
3.4 (評価)
磁気記録媒体の評価は、Ku[film](erg/cm
3)、Hc[film](kOe)、α、及び、L1
0型の結晶構造の規則性の指標となるFePtの(001)ピークの積分強度を評価することにより行った。結果を表5及び図3〜6のグラフにまとめた。
【0110】
実施例2のFePtRh−BCを第1磁気記録層に使用した場合、参考例1のFePt−BCを第1磁気記録層に使用した場合と同等の保磁力Hc及びα値を得た。また、実施例2のKuの結果は、Rhを添加することによるKuの低下を示す。しかし、この低下は、非磁性粒界材料を用いない場合である、FePtにRhを添加した場合から算出される結果で示される低下と同等である。従って、参考例1と比較した場合、非磁性結晶粒界の材料(BC)によるKuの低下は見られなかった。
【0111】
比較例3のFePtMn−BCを第1磁気記録層に使用した場合、参考例1のFePt−BCを第1磁気記録層に使用した場合と比較して、Hc、α及びKuが大幅に低下した。また、比較例3では、L1
0規則化の指標となるFePtの(001)ピークの積分強度も、第1磁気記録層の膜厚の増加に対して横ばいであり、第1磁気記録層は規則化していないと考えられる。更に、比較例3では、M−Hヒステリシスループで、大きなキンクを持つことが観測された。このことから、比較例3の磁気記録層は、膜厚の増加に伴いエピタキシャル成長がリセットされ、磁気特性の異なる相が磁気記録層内で発生していると考えられる。
【0112】
比較例4のFePtNi−BCを第1磁気記録層に使用した場合、参考例1のFePt−BCを第1磁気記録層に使用した場合と比較して、Hcはほぼ同等であった。しかしながら、αの値が小さく、磁性結晶粒の粒子毎の磁気特性のばらつきが大きい。更に、比較例4では、M−Hヒステリシスループで、キンクを持つことが観測された。このことから、比較例4の磁気記録層は、膜厚の増加に伴いエピタキシャル成長がリセットされ、磁気特性の異なる相が磁気記録層内で発生していると考えられる。
【0113】
実施例2のFePtRh−BCを第1磁気記録層に用いた場合、平面透過型電子顕微鏡(TEM)の画像より、磁気記録層は、粒径5〜10nmの粒子からなっていた。これは、参考例1の場合の粒径5〜10nmと同等であった。また、実施例2の場合の非磁性粒界の幅も、参考例1の場合の非磁性粒界の幅と同等であった。従って、実施例2では、磁気記録層は良好な粒分離性を有していた。
【0114】
なお、本明細書において、粒径は、平面透過型電子顕微鏡(TEM)の画像より以下の手順で求めた。倍率50万倍のTEM画像より、300点以上の粒子をランダムに選択し、各粒子の外周をなぞることで粒を一つずつ取り囲む。その上で、各粒子の面積から円相当径を算出した。各円相当径の直径から、平均をとって粒径とした。
【0115】
比較例3のFePtMn−BCを第1磁気記録層に使用した場合、平面TEMの画像から、磁気記録層の粒径は3〜10nmの粒子であった。また、この磁気記録層には3nm程度の細かい粒子が散見された。更に、この磁気記録層では、粒子の3重点付近に非磁性粒界材料が集まる傾向があり、非磁性粒界の幅が不均一であった。
【0116】
比較例3の断面TEMから、MgO層の表面から3〜5nmの膜厚で、磁性材料の柱状成長がリセットされており、この膜厚を超える部分で、磁性粒子の二次成長が存在していた。
【0117】
以上の結果から、比較例3のFePtMn−BCを第1磁気記録層に使用した場合、磁気記録層の膜厚が厚くなると、磁性材料の柱状成長が保てず、MgO層からエピタキシャル成長していない微細な二次粒子が成長し、所謂二次成長が起こり、Hcの低下、Kuの低下等を引き起こしたと考えられる。
【0118】
比較例4のFePtNi−BCを第1磁気記録層に使用した場合、平面TEMの画像から、磁気記録層の粒径は5〜20nmの粒子であった。また、磁気記録層の粒子には10nm以上の粗大粒子が散見された。更に、磁性材料の非磁性粒界の幅のばらつきも大きかった。
【0119】
まとめ
実験例、実施例及び比較例の実験結果の比較から、FePt−Cを第2磁気記録層として使用し、これと組合せて、第1磁気記録層として、実施例で使用した規則合金−非磁性粒界材料のグラニュラー構造を有する磁気記録層を設けることにより、高い磁気異方性を維持しながら磁気記録層全体の厚膜化を実現することが可能となった。また、FePtRh−C、FePtRh−BCなどの、Rhを添加した磁性材料は、そのTcを低下させることが期待できる。
【産業上の利用可能性】
【0120】
本発明の磁気記録媒体は、熱アシスト式、マイクロ波アシスト式等のエネルギーアシスト式の磁気記録媒体を含めた、垂直磁気記録媒体を含む磁気記録装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0121】
10 基板
20 密着層
30 下地層
40 シード層
50 磁気記録層
52 第1磁気記録層
54 第2磁気記録層
60 保護層
100、100’ 磁気記録媒体
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【手続補正書】
【提出日】2017年9月29日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0055
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0055】
複数の層を含む形態の磁気記録層50において、第2磁気記録層54の、第
2磁性結晶粒を取り囲む第2非磁性材料はCである。この第2
磁気記録層上に、第1非磁性材料
Xを有するFePtRh−X(但し、XはC、B又はこれらの組み合わせである)のグラニュラー磁性材料を用いて第1磁気記録層52を形成することで、第2磁気記録層
54のグラニュラー構造にならったグラニュラー構造の第1磁気記録層52を効率よく形成でき、磁気記録層の厚膜化を実現できる。
【国際調査報告】