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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2017年4月13日
【発行日】2017年11月30日
(54)【発明の名称】作業車両の操舵制御装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 6/00 20060101AFI20171102BHJP
   B62D 5/04 20060101ALI20171102BHJP
   B62D 5/18 20060101ALI20171102BHJP
   B62D 5/09 20060101ALI20171102BHJP
   B62D 113/00 20060101ALN20171102BHJP
   B62D 119/00 20060101ALN20171102BHJP
【FI】
   B62D6/00
   B62D5/04
   B62D5/18
   B62D5/09 Z
   B62D113:00
   B62D119:00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】28
【出願番号】特願2017-544088(P2017-544088)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2015年10月5日
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002457
【氏名又は名称】特許業務法人広和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】一野瀬 昌則
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 真二郎
【テーマコード(参考)】
3D232
3D333
【Fターム(参考)】
3D232CC08
3D232CC20
3D232DA04
3D232DA15
3D232DA64
3D232DA87
3D232DA88
3D232DA92
3D232DA93
3D232EB11
3D232EC03
3D232EC08
3D232EC23
3D232EC34
3D232EC37
3D232FF01
3D232FF07
3D232GG02
3D232GG15
3D333CB03
3D333CB05
3D333CB06
3D333CB07
3D333CB13
3D333CB29
3D333CB52
3D333CC13
3D333CE49
3D333CE55
3D333GC01
3D333JA01
3D333JA03
(57)【要約】
作業車両の操舵制御装置(20)は、ステアリングコラム(33)に対し助勢トルクを発生する電動モータ装置(34)と、インバータ(43)とを備えている。操舵制御装置(20)は、電動モータ装置(34)と操舵機構部(21)の負荷部分との間に装着され操舵系の負荷トルクを検出する負荷トルクセンサ(39)と、負荷トルクセンサ(39)の出力値を基に操舵負荷トルクを算出する操舵負荷トルク算出手段(41)と、操舵負荷トルク算出手段(41)から出力された操舵負荷トルクと外部から入力された目標操舵トルクとを加算して電動モータ装置(34)に指令する助勢トルクを算出し、前記インバータ(43)へと指令する助勢トルク算出手段(42)とを備えている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業車両の操舵機構のステアリングコラムに対し助勢トルクを発生する電動モータ装置と、前記助勢トルクの指令値に基づいて前記電動モータ装置を駆動するための電流を供給するインバータとを備えた操舵制御装置において、
前記電動モータ装置と前記操舵機構の負荷部分との間に装着され、操舵系に掛かる負荷トルクを検出する負荷トルクセンサと、
前記負荷トルクセンサの出力値を基に操舵負荷トルクを算出する操舵負荷トルク算出手段と、
前記操舵負荷トルク算出手段から出力された操舵負荷トルクと外部から入力された目標操舵トルクとを加算して前記電動モータ装置に指令する前記助勢トルクを算出し、前記インバータへと指令する助勢トルク算出手段とを備えたことを特徴とする作業車両の操舵制御装置。
【請求項2】
前記操舵負荷トルク算出手段は、
前記負荷トルクセンサの出力値がゼロからどちらの回転方向に立ち上がったかを検知する回転方向判定手段と、
前記回転方向判定手段により検知された前記ステアリングコラムの回転の開始とその回転方向に基づき、前記ステアリングコラムを前記回転方向に助勢する向きで予め設定した大きさの回転開始トルクを算出する回転開始トルク算出手段と、
前記回転開始トルク算出手段により前記回転開始トルクが算出されている期間、前記負荷トルクセンサの出力値に替えて前記回転開始トルクを前記操舵負荷トルクとして前記助勢トルク算出手段に出力するトルク切替手段とを備え、
前記操舵負荷トルク算出手段は、前記負荷トルクセンサの出力値に基づいて前記回転の開始を検知したときに、予め設定した大きさの前記回転開始トルクを前記回転方向に助勢する向きで前記助勢トルク算出手段に出力し、前記期間の後に前記負荷トルクセンサの出力値を前記操舵負荷トルクとして前記助勢トルク算出手段に出力することを特徴とする請求項1に記載の作業車両の操舵制御装置。
【請求項3】
前記操舵負荷トルク算出手段は、
外部から入力された前記目標操舵トルクがゼロからどちらの回転方向に立ち上がったかを検知する回転方向判定手段と、
前記回転方向判定手段により検知された前記ステアリングコラムの回転の開始とその回転方向に基づき、前記ステアリングコラムを前記回転方向に助勢する向きで予め設定した大きさの回転開始トルクを算出する回転開始トルク算出手段と、
前記回転開始トルク算出手段により前記回転開始トルクが算出されている期間、前記負荷トルクセンサの出力値に替えて前記回転開始トルクを前記操舵負荷トルクとして前記助勢トルク算出手段に出力するトルク切替手段とを備え、
前記操舵負荷トルク算出手段は、前記目標操舵トルクに基づいて前記回転の開始を検知したときに、予め設定した大きさの前記回転開始トルクを前記回転方向に助勢する向きで前記助勢トルク算出手段に出力し、前記期間の後に前記負荷トルクセンサの出力値を前記操舵負荷トルクとして前記助勢トルク算出手段に出力することを特徴とする請求項1に記載の作業車両の操舵制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばダンプトラックに代表される作業車両の操舵制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、作業車両を含む自動車は、ステアリングコラムまたはラックに電動モータを備えた電動パワーステアリング装置が搭載されている(特許文献1)。前記電動モータは、車両のハンドル操作(操舵)に必要な力を補助し、運転者の疲労を軽減する。この種の従来技術によるパワーステアリング装置は、運転者のハンドル操作に応じて操舵輪の向きを変える手動の操舵装置を備えている。この操舵装置には、ハンドルと操舵機構の負荷部分との間でステアリングコラムの途中に配置され、運転者による操舵トルクを検出するトルクセンサと、前記操舵輪の向きを変える操舵トルクを助勢するための助勢トルクを発生する電動モータとが設けられている。
【0003】
ここで、電動モータは、運転者によりハンドルが操作されない限りは回転することはなく、電動モータによる助勢トルクが出力されることはない。また、電動モータは、トルクセンサによる検出トルクが大きいほど助勢トルクを大きくできるようにモータ回転が制御される。即ち、操舵系に掛かる負荷トルクは路面の滑り易さ等の路面状態により変動する。このため、従来の電動パワーステアリング装置は、運転者がハンドルに加えなければならない操舵トルクが変化する。従って、負荷トルクが大きくなると、操舵トルク(運転者の操舵反力としての操舵フィーリング)も大きくなる。
【0004】
このように、一般的な道路走行を行う自動車等の車両では、前述した路面状態により操舵トルクが変化する特性が路面状態を知る一手段として用いられることもある。即ち、運転者にとっては、ハンドルの操作感(操舵反力としての操舵フィーリング)から路面の状態を知ることができ、車両走行中は手応えのある操作感をもって運転、操舵を行い得る構成としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公昭50−33584号公報
【特許文献2】特開平8−76846号公報
【発明の概要】
【0006】
ところで、鉱山等の大規模な採掘場、石切り場等で採掘した砕石物または土砂を運搬するダンプトラックに代表される作業車両は、運転者による舵取り操作が頻繁かつ長時間にわたり行われる。このため、運転者のハンドル操作に必要な操舵トルク(即ち、操舵反力としての操舵フィーリング)は出来る限り小さくしたいという要求がある。即ち、ダンプトラック等の作業車両は、作業現場が仮に不整地な道路等であっても、路面状態が予め定められている道路を比較的遅い速度で、走行を繰返して行うだけである。このため、操舵トルクが路面状態の変化による影響を受けることは少なく、むしろ操舵トルクを常に軽くできるようにすることが望まれている。
【0007】
また、このような作業車両は、特許文献2にも記載のように、外部からの遠隔操作による各種指令に基づいて自律して走行する自律モードと、搭乗した運転者の手動操作(操舵)によって走行するマニュアルモードとを有したものが知られている。モード選択信号により自律/マニュアルモードのいずれか一方のモードを選択して走行動作する構成としている。
【0008】
本発明の目的は、例えばダンプトラックに代表される大型の作業車両において、外部からの遠隔操作または運転者による舵取り操作に対して適切な補助操舵力を発生して軽い操舵力で操作できるようにした操舵制御装置を提供することにある。
【0009】
上述した課題を解決するため、本発明は、作業車両の操舵機構のステアリングコラムに対し助勢トルクを発生する電動モータ装置と、前記助勢トルクの指令値に基づいて前記電動モータ装置を駆動するための電流を供給するインバータとを備えた操舵制御装置において、前記電動モータ装置と前記操舵機構の負荷部分との間に装着され、操舵系に掛かる負荷トルクを検出する負荷トルクセンサと、前記負荷トルクセンサの出力値を基に操舵負荷トルクを算出する操舵負荷トルク算出手段と、前記操舵負荷トルク算出手段から出力された操舵負荷トルクと外部から入力された目標操舵トルクとを加算して前記電動モータ装置に指令する前記助勢トルクを算出し、前記インバータへと指令する助勢トルク算出手段とを備えたことを特徴としている。
【0010】
本発明によれば、作業車両、特にダンプトラック等の車両において、運転者による舵取り操作により発生する操舵負荷トルクを負荷トルクセンサで検出し、検出したトルクの出力値に基づき助勢トルクを算出して電動モータ装置を駆動する。これにより、適切な補助操舵力(助勢トルク)を発生して常に軽い操舵力で操作できる。このため、運転者の疲労低減を図ることができる。また、運転者による舵取り操作の代替機能を付加し、自律モードにより自動操舵が可能な作業車両とした場合、外部制御装置からの操舵トルク指令値と前記操舵負荷トルクに基づき助勢トルクを算出して電動モータ装置を駆動する。これにより、操舵負荷トルクを相殺するように補助操舵力を発生でき、操舵トルク指令値に滑らかに追従するように自動舵取り操作が可能な操舵制御装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施の形態による作業車両としてのダンプトラックを示す正面図である。
図2】第1の実施の形態によるダンプトラックの操舵システムおよび走行駆動系システムを示す全体構成図である。
図3図2中の自律モードコントローラと走行駆動部、操舵コントローラとの関係を示す制御ブロック図である。
図4図2中の操舵システムにおける操舵制御装置を示す構成図である。
図5図2中の操舵コントローラを示す制御ブロック図である。
図6図5中の操舵負荷トルク算出部を示す制御ブロック図である。
図7】操舵負荷トルク算出部による処理手順を示す流れ図である。
図8】ダンプトラックが作業現場で右回りに操舵して走行する状態を示す模式図である。
図9図8中の操舵位置(時間)に対する目標操舵トルク、負荷トルクおよび回転開始トルクの関係を示す特性線図である。
図10図8中の操舵位置(時間)に対するトルク切替部の動作特性を示す特性線図である。
図11】第2の実施の形態による操舵制御装置を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態による作業車両の操舵制御装置を、ダンプトラックに適用した場合を例に挙げ、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0013】
図1ないし図10は、本発明の第1の実施の形態に係る作業車両の操舵制御装置を示している。
【0014】
図1において、ダンプトラック1は、鉱山等の大規模な採掘場、石切り場等で採掘した砕石物または土砂を運搬する大型の作業車両である。ダンプトラック1は、車体2、ベッセル3、キャブ5、前輪6L,6R、後輪7L,7R等を備えている。車体2は、ダンプトラック1のフレーム構造体を構成している。車体2の上側には、ホイストシリンダ4によって後部側を支点として傾転(起伏)可能となった荷台としてのベッセル3が搭載されている。
【0015】
車体2の前部には、ベッセル3の庇部3Aの下側となる位置にデッキ部2Aが設けられている。このデッキ部2Aには、キャブ5とモータ制御装置9等とが搭載されている。キャブ5は、ベッセル3の前側に位置して車体2(デッキ部2A)の上側に設けられている。キャブ5内には、後述するアクセルペダル10、ブレーキペダル11、操舵ハンドル32等が設けられている。車体2内には、例えばキャブ5の下側に位置して原動機となるエンジン(図示せず)が設けられている。このエンジンは、例えば大型のディーゼルエンジンにより構成されている。
【0016】
左,右の前輪6L,6Rは、後述の操舵シリンダ27L,27Rによって操舵角が可変に制御される操舵輪を構成している。左,右の前輪6L,6Rは、ダンプトラック1の運転者が後述の操舵ハンドル32を操作したときに、操舵シリンダ27L,27Rの伸長動作と縮小動作とによって舵取り操作される。左,右の後輪7L,7Rは、左,右の走行用モータ8L,8Rにより独立して回転駆動され、ダンプトラック1の駆動輪を構成している。左,右の走行用モータ8L,8Rは、大型の電動モータにより構成され、車載の主発電機(図示せず)から後述のモータ制御装置9を介して電力供給が行われることにより回転駆動される。
【0017】
次に、ダンプトラック1に搭載された走行駆動用の電動系システムについて、図2および図3を参照して説明する。
【0018】
図3に示すように、アクセルペダル10には、その操作量を検出するアクセル操作センサ10Aが設けられている。このアクセル操作センサ10Aは、例えば角度センサ、ポテンショメータ等によって構成され、アクセルペダル10の操作量(踏込み量)に応じた加速指令を出力する。
【0019】
ブレーキペダル11は、車両の制動を操作する制動操作装置を構成している。ブレーキペダル11には、操作量を検出するブレーキ操作センサ11Aが設けられている。このブレーキ操作センサ11Aは、例えば角度センサ、ポテンショメータ等によって構成され、ブレーキペダル11の操作量(踏込み量)に応じた制動指令を出力する。
【0020】
図2に示すように、アクセル操作センサ10Aおよびブレーキ操作センサ11Aの出力側は、いずれも走行駆動部12に接続されている。走行駆動部12は、例えばマイクロコンピュータ等により構成されている。走行駆動部12は、アクセルペダル10による加速指令とブレーキペダル11による制動指令とに基づいて、車両(ダンプトラック1)の走行駆動を制御する制御装置である。この走行駆動部12は、出力側がモータ制御装置9等に接続され、ダンプトラック1の走行状態等に応じた制御信号をモータ制御装置9に出力する。モータ制御装置9は、この制御信号に従ってインバータのスイッチング素子(いずれも図示せず)を切換え制御する。
【0021】
走行駆動部12の入力側には、アクセル操作センサ10Aおよびブレーキ操作センサ11Aが接続されている。走行駆動部12の入力側には、アクセル操作センサ10Aから加速指令が入力されると共に、ブレーキ操作センサ11Aから制動指令が入力される。また、走行駆動部12には、外部入力端子等を介して自律モードコントローラ14が接続されている。走行駆動部12には、自律モードコントローラ14からの加速指令が入力されると共に、自律モードコントローラ14からの制動指令が入力される。さらに、走行駆動部12には、マニュアルモードおよび自律モードのうちいずれか一方を選択するモード選択スイッチ13が接続されている。
【0022】
モード選択スイッチ13によってマニュアルモードが選択されているときに、走行駆動部12は、アクセル操作センサ10Aからの信号(指令)に基づいた加速指令を算出し、ブレーキ操作センサ11Aからの信号(指令)に基づいた制動指令を算出する。走行駆動部12は、これらの加速指令と制動指令とに基づいてモータ制御装置9を制御する。
【0023】
一方、モード選択スイッチ13によって自律モードが選択されているときに、走行駆動部12は、自律モードコントローラ14からの信号(指令)に基づいた加速指令と制動指令を算出する。走行駆動部12は、これらの加速指令と制動指令とに基づいて、モータ制御装置9を制御する。
【0024】
次に、ダンプトラック1を自律走行させるための自律モードコントローラ14について、図2および図3を参照しつつ説明する。
【0025】
図3に示すように、自律モードコントローラ14は、管制通信部15、自己位置算出部16、行動判断部17、走行制御部18を含んで構成されている。管制通信部15は、後述する外部の管理局19との間で相互に双方向の通信を行う。管制通信部15は、例えば他のダンプトラックの走行状態や車両位置のような他車情報を含めた各種の運行指令VI0を、管理局19から受信する。管制通信部15は、この運行指令VI0を行動判断部17に出力する。
【0026】
また、管制通信部15には、走行駆動部12からモード信号Mが入力されると共に、行動判断部17からダンプトラック1の走行状態や車両位置P0のような自車情報VI1が入力される。管制通信部15は、モード信号Mによってマニュアルモードおよび自律モードのうち選択されたモードを判別すると共に、選択されたモードと自車情報VI1とを管理局19に向けて送信する。これにより、管理局19は、ダンプトラック1がマニュアルモードおよび自律モードのいずれのモードで動作しているのかを把握することができる。これに加えて、管理局19は、ダンプトラック1が走行および停止のいずれの状態となっているのかを把握することができる。このため、管理局19は、これらに応じた運行指令VI0を出力することができる。
【0027】
自己位置算出部16は、自己の車両位置P0を算出する車両位置算出部を構成している。自己位置算出部16は、例えばGPSアンテナ(図示せず)に接続され、GPS衛星から送信される信号に基づいて、車両位置P0を算出する。
【0028】
行動判断部17は、自律モードにおけるダンプトラック1の走行動作を判断する。具体的には、行動判断部17は、自己位置算出部16によって算出した車両位置P0と、管制通信部15が受信した運行指令VI0とに基づいて、自律モード中のダンプトラック1の動作を決定する。行動判断部17は、このように決定した動作に応じた目標車速を含む動作指令Cを走行制御部18に出力する。また、行動判断部17は、動作指令Cに応じたダンプトラック1の走行状態と車両位置P0とに基づく自車情報VI1を、管制通信部15に出力する。
【0029】
走行制御部18は、自己位置算出部16によって算出された車両位置P0と所定の走行軌跡とに基づいて加速指令、制動指令および操舵トルク指令(即ち、目標トルクTa)を算出する。この走行制御部18は、行動判断部17からの動作指令Cと、自己位置算出部16によって算出した車両位置P0とに基づいて、ダンプトラック1の操舵コントローラ40(電動モータ装置34)、前記エンジン、モータ制御装置9を制御し、行動判断部17が決定した動作を実行する。図3に示すように、走行制御部18は、動作指令Cと車両位置P0とに基づいて、操舵用の目標トルクTa、加速指令および制動指令を演算して出力する。
【0030】
操舵トルク指令値として目標トルクTaは、目標操舵角(角度)に予め決められたゲインを掛けて求められる。具体的には、走行制御部18は、動作指令Cと車両位置P0とに基づいて、予め設定された走行軌跡に従って自律モードでダンプトラック1が走行動作するように、車両の操舵方向と目標操舵角を算出する。走行制御部18は、算出した操舵方向と目標操舵角とに応じた操舵用の目標トルクTaを操舵コントローラ40に出力する。
【0031】
これにより、操舵コントローラ40は、このときの操舵用の目標トルクTaと後述の操舵負荷トルクTcとに基づいた助勢トルクに従って電動モータ35の回転を制御する。電動モータ35の回転は、操舵機構部21のステアリングコラム33を介して後述のステアリングバルブ31に伝えられる。これにより、ステアリングバルブ31が駆動され、前輪6L,6Rの自律モードによる操舵が行われる。
【0032】
図3に示す外部の管理局19は、複数台のダンプトラック1に対する作業現場での運行管理を行う外部制御装置を、自律モードコントローラ14と共に構成している。管理局19は、管制通信部15を介してダンプトラック1の自車情報VI1とモード信号M等とを受信する。これにより、管理局19は、ダンプトラック1がマニュアルモードおよび自律モードのいずれのモードで動作しているのかを把握する。さらに、管理局19は、ダンプトラック1が走行および停止のいずれの状態となっているかを把握し、これらに応じた運行指令VI0を管制通信部15に向けて出力する。管理局19は、自律モードコントローラ14の管制通信部15との間で双方向の通信を行い、ダンプトラック1に対する各種の運行指令VI0を無線通信等で送信する。
【0033】
次に、ダンプトラック1に搭載された操舵システムとしての操舵制御装置20の構成について、図2ないし図6を参照して説明する。ここで、操舵制御装置20(操舵システム)は、機械的な操舵機構部21と、後述の電動モータ35を介して電気的な操舵制御を行う操舵コントローラ40とを含んで構成されている。操舵制御装置20の操舵機構(即ち、操舵機構部21)は、後述の操舵用リンク機構22およびステアリングバルブ31等が負荷部分となる。
【0034】
操舵制御装置20の操舵機構部21は、運転者の操舵ハンドル32の操作に応じて操舵輪(即ち、前輪6L,6R)の向きを、例えば電動モータ35の駆動力と油圧力とを利用して変えるパワーステアリング機構により構成されている。ここで、操舵機構部21は、操舵用リンク機構22と、後述の操舵シリンダ27L,27Rを油圧駆動する油圧回路(即ち、油圧ポンプ29、作動油タンク30およびステアリングバルブ31)と、操舵ハンドル32、ステアリングコラム33、電動モータ装置34および負荷トルクセンサ39等とを備えている。
【0035】
操舵用リンク機構22は、左,右の前輪6L,6R間で車体2に連結されたリンク部材23と、該リンク部材23の左,右両端に取付けられ、前輪6L,6Rを回転可能に支持する左,右一対のスピンドル23L,23Rと、後述の操舵シリンダ27L,27R等とを含んで構成されている。一対のスピンドル23L,23Rのうち、左側のスピンドル23Lには、上,下方向に延びるキングピン24が一体的に設けられている。このスピンドル23Lと前輪6Lとは、キングピン24を中心として水平方向(即ち、前,後方向)に回動可能に支持されている。スピンドル23Lには、後方に向けて延びるナックルアーム25Lが一体的に設けられている。
【0036】
右側のスピンドル23Rは、左側のスピンドル23Lと左,右対称な形状に形成されている。このため、右側のスピンドル23Rも、左側のスピンドル23Lと同様に、上,下方向に延びるキングピン24が一体的に設けられている。このスピンドル23Rと前輪6Rとは、キングピン24を中心として水平方向(前,後方向)に回動可能に支持されている。スピンドル23Rには、後方に向けて延びるナックルアーム25Rが一体的に設けられている。ナックルアーム25L,25Rの先端部は、左,右方向に延びた棒状のタイロッド26によって連結されている。リンク部材23、ナックルアーム25L,25Rおよびタイロッド26は、略四角形のリンク機構を構成している。このリンク機構によって、スピンドル23L,23Rは、前輪6L,6Rが左,右方向のうち互いに同じ方向に傾いて操舵されるように回動変位する。
【0037】
操舵シリンダ27L,27Rは、油圧シリンダにより構成され、後述の油圧ポンプ29からの圧油が供給または排出されることによって伸長または縮小する。左側の操舵シリンダ27Lは、基端部がリンク部材23のシリンダ用ブラケット(図示せず)に回動可能に取付けられ、先端部がナックルアーム25Lの長さ方向の途中位置に回動可能に連結されている。同様に、右側の操舵シリンダ27Rは、基端部がリンク部材23のシリンダ用ブラケット(図示せず)に回動可能に取付けられ、先端部がナックルアーム25Rの長さ方向の途中位置に回動可能に連結されている。
【0038】
操舵シリンダ27L,27Rは、それぞれロッド側油室とボトム側油室(いずれも図示せず)を有している。一方の操舵シリンダ27Lは、ロッド側油室が他方の操舵シリンダ27Rのボトム側油室に油圧管路28Aを介して接続され、ボトム側油室が他方の操舵シリンダ27Rのロッド側油室に油圧管路28Bを介して接続されている。このため、操舵シリンダ27L,27Rは、ステアリングバルブ31を介して油圧源(油圧ポンプ29と作動油タンク30)からの圧油が給排されることにより、一方のシリンダが伸長動作するときに、他方のシリンダが縮小動作する。これにより、左,右の前輪6L,6Rは、操舵シリンダ27L,27Rの伸縮に従って任意の方向に舵取り操作され、車両の操舵が行われる。
【0039】
油圧ポンプ29は、前記エンジンによって回転駆動され、作動油タンク30から吸込んだ作動油を高圧の圧油としてステアリングバルブ31に向け吐出する。作動油タンク30は、図1に示すように車体2の側面に取付けられている。図2および図4に示すように、ステアリングバルブ31は、一方で油圧源となる油圧ポンプ29、作動油タンク30に対して接続されている。ステアリングバルブ31の出力側は、一対の油圧管路28A,28Bを介して操舵シリンダ27L,27Rの前記各油室に接続されている。
【0040】
ステアリングバルブ31は、操舵ハンドル32の操作に応じて操舵シリンダ27L,27Rへの圧油の供給と排出を切換え制御する。このステアリングバルブ31は、例えばロータリ弁またはスプール弁等を用いて構成されている。ステアリングバルブ31は、ステアリングコラム33等を介して操舵ハンドル32に連結されている。ステアリングコラム33の途中には、電動モータ装置34と負荷トルクセンサ39とが設けられている。電動モータ装置34は、操舵ハンドル32と負荷トルクセンサ39との間に位置してステアリングコラム33に回転力を付与できるように配設されている。
【0041】
ステアリングホイールとしての操舵ハンドル32は、キャブ5内に設けられ、運転者によって舵取り操作される。この操舵ハンドル32は、運転者が把持してステアリングコラム33を左,右に回動させることにより、車両のステアリング操作を行う。操舵ハンドル32は、マニュアルモード時に車両の進行方向を操作する舵取り操作装置を構成している。なお、舵取り操作装置は、運転者によって回転操作される操舵ハンドル32に限らず、例えば操舵方向に傾転操作されるレバー等によって構成してもよい。また、ダンプトラック1が自律モードで運転されるときには、電動モータ装置34が舵取り操作装置を構成することになる。
【0042】
ダンプトラック1がマニュアルモードで運転されるとき、ステアリングバルブ31は、操舵ハンドル32および電動モータ装置34(従動ギヤ37)の回動方向に応じて圧油の供給と排出を切換える。また、ステアリングバルブ31は、油圧ポンプ29から操舵シリンダ27L,27Rへと流れる圧油の流量を、操舵ハンドル32(即ち、従動ギヤ37)の回転角に応じて制御する。一方、ダンプトラック1が自律モードで運転されるときには、電動モータ装置34(即ち、従動ギヤ37)からの回転力によりステアリングバルブ31が操作される。ステアリングバルブ31は、電動モータ装置34(従動ギヤ37)の回動方向に応じて圧油の供給と排出を切換えると共に、従動ギヤ37の回転角に応じて圧油の流量を制御する。
【0043】
電動モータ装置34は、図4に示すように、電動モータ35と、該電動モータ35の出力軸35Aに設けられた駆動ギヤ36と、前記ステアリングコラム33の途中に固定して設けられ駆動ギヤ36と噛合した従動ギヤ37とにより構成されている。駆動ギヤ36と従動ギヤ37とは、電動モータ35の回転を減速してステアリングコラム33に伝達する減速機構を構成している。図4中に点線で示すように、電動モータ装置34は、電動モータ35、駆動ギヤ36および従動ギヤ37を収納する筒状のケース38を有している。このケース38内で、電動モータ35の出力軸35Aはステアリングコラム33と平行に延びるように配設されている。
【0044】
このため、電動モータ35および駆動ギヤ36をケース38内から取外すことも可能であり、例えば自律モードを用いないマニュアルモード専用の操舵制御装置(操舵システム)への機種変更、組換え作業を容易に行うことができる。また、マニュアルモードと自律モードとをモード選択スイッチ13の操作により選択的に用いる機種の場合には、図4に示すように電動モータ装置34を構成すればよい。
【0045】
ここで、駆動ギヤ36と従動ギヤ37とは、平歯車を用いて構成されている。このため、電動モータ35の出力軸35Aはステアリングコラム33と平行に延びるように配設される。しかし、駆動ギヤと従動ギヤとは、傘歯車等を用いて構成することができる。この場合には、電動モータ35の出力軸35Aをステアリングコラム33に対し斜め傾けて配設することも可能である。また、駆動ギヤ36と従動ギヤ37に替えて、例えばプーリとベルト、チェーン等を用いた減速機構を採用してもよい。さらに、電動モータの回転子をステアリングコラムと同軸に配設して電動モータ装置を構成することも可能である。
【0046】
負荷トルクセンサ39は、ステアリングバルブ31(負荷部分)と電動モータ装置34との間でステアリングコラム33の途中位置に配設されている。負荷トルクセンサ39は、両者間でステアリングコラム33に発生する捩りトルクを操舵負荷トルクセンサ出力値Tbとして検出し、これを操舵コントローラ40に出力する。ここで、操舵負荷トルクは、例えば左,右の前輪6L,6Rを操舵(操向回動)するために路面との間に生じる摩擦トルク、走行中の舵取り操作によって前輪6L,6Rが受けるセルフアライニングトルク等の操舵系に掛かる負荷トルク等によりステアリングコラム33に付加されるトルクである。このような操舵負荷トルクは、前輪6L,6R(路面)側への伝達経路とは逆の経路を辿って運転者に操舵時の負荷として伝達される。よって、これら操舵系に掛かる負荷トルクが大きい状況では大きな操舵トルクが必要となり、それは運転者にとっても大きな負担となる。
【0047】
第1の実施の形態で採用した操舵制御装置20は、例えばマニュアルモード時でも運転者が操舵ハンドル32に加える操舵トルクの一部または全部を電動モータ35の助勢トルクにより補助または駆動する。これにより、運転者がハンドル操作に必要な力を動力補助して、運転者の負担、疲労を小さく低減できるようにしている。また、自律モード時には、運転者によるハンドル操作を不要にし、電動モータ装置34による自動操舵が可能となるように、操舵制御装置20は構成されている。
【0048】
操舵制御装置20の操舵機構部21は、電動モータ35によるメカニカルな操舵系に加えて油圧による操舵系を備えた構成としている。このような操舵機構部31は、操舵ハンドル32により電動モータ装置34の駆動力でステアリングコラム33を回動してメカニカルに操舵車輪を操向するに加えて、ステアリングバルブ31等の油圧を介して操舵車輪を操向するものである。操舵機構部21は、油圧を介することにより大きな操舵力を発生することが可能であり、メカニカルなリンク結合が不要になって搭載位置が自由になるという利点がある。これにより、操舵制御装置20の操舵機構部21は、鉱山用ダンプトラック(リジッドダンプトラック、アーティキュレートダンプトラック)に限らず、例えばホイールローダ、フォークリフト、農業用機械等の大型の作業車両においても広く用いることができる構造である。
【0049】
次に、操舵制御装置20の電気的な制御を行う操舵コントローラ40について述べる。
【0050】
図2に示すように、操舵コントローラ40は、自律モードコントローラ14と電動モータ装置34との間に配設されている。操舵コントローラ40は、電動モータ35の回転を制御する操舵制御手段として、例えばマイクロコンピュータ等により構成されている。操舵コントローラ40は、その入力側が走行駆動部12、自律モードコントローラ14、負荷トルクセンサ39および後述の操舵角センサ48等に接続され、出力側は電動モータ35に接続されている。
【0051】
操舵コントローラ40には、外部入力端子等を通じて自律モードコントローラ14が接続され、自律モードコントローラ14から自律操舵を行うための目標トルクTa(操舵トルク指令値)が入力される。これに加えて、操舵コントローラ40には、走行駆動部12が接続され、マニュアルモードおよび自律モードのうち選択されたモードに対応したモード信号Mが走行駆動部12から入力される。マニュアルモードを選択するモード信号Mが入力されているとき、操舵コントローラ40は、自律モードコントローラ14からの操舵用の目標トルクTaを無効(即ち、目標トルクTaを零)として処理する。
【0052】
一方、自律モードを選択するモード信号Mが入力されているとき、操舵コントローラ40は、自律モードコントローラ14から操舵コントローラ40に出力される目標トルクTaを有効とし、これに基づいて後述の如く助勢トルクを算出する。操舵トルク指令値としての目標トルクTaは、前述の目標操舵角(角度)に対し予め決められたゲインを掛けて求められる。そして、操舵コントローラ40は、自律モードコントローラ14からの操舵用の目標トルクTaと負荷トルクセンサ39による負荷トルクセンサ出力値Tbとに基づいて、後述の助勢トルク算出部42により助勢トルクを算出し、この助勢トルクを発生させるために必要な駆動電流をインバータ43から電動モータ35へと出力する。
【0053】
ここで、操舵コントローラ40は、図5に示すように、操舵負荷トルク算出手段としての操舵負荷トルク算出部41と、助勢トルク算出手段としての助勢トルク算出部42と、インバータ43とによって構成されている。インバータ43は、助勢トルク算出部42で算出した助勢トルクを電動モータ装置34で発生させるように、電動モータ35に駆動電流を供給(出力)する。
【0054】
操舵負荷トルク算出部41は、負荷トルクセンサ39の出力値(負荷トルクセンサ出力値Tb)を基に操舵負荷トルクTcを算出するものである。図5に示すように、助勢トルク算出部42は、操舵負荷トルク算出部41から出力された操舵負荷トルクTcと、外部(例えば、自律モードコントローラ14)から入力された目標トルクTa(操舵トルク指令値)とを加算して電動モータ装置34の電動モータ35に指令する助勢トルクを算出し、これをインバータ43への指令信号として出力する。
【0055】
本実施の形態において、操舵負荷トルク算出部41は、例えば図6に示すように、モード切替部44、回転方向判定手段としての回転方向判定部45、回転開始トルク算出手段としての回転開始トルク算出部46およびトルク切替手段としてのトルク切替部47を含んで構成されている。
【0056】
ここで、回転開始トルクとは、操舵系の機構や前記ステアリングバルブ31の静止摩擦による負荷トルクである。静止摩擦力は動摩擦力に比べて大きいため、ステアリングコラム33が回転し始める瞬間は、回転中よりも大きなトルクを要する。このように、ステアリングコラム33が回り始める瞬間に、回転開始トルク算出部46で発生させるトルクが回転開始トルクである。回転開始トルクとしては、予め計測して決めておいた値を用いたり、車両の状態量等を用いてマップ化したテーブルを参照して必要なトルク値を決定したりすることが可能である。
【0057】
操舵負荷トルク算出部41のモード切替部44は、例えばマニュアルモード接点44A、自律モード接点44Bと可動接点44Cとを有し、マニュアルモード時には、可動接点44Cがマニュアルモード接点44Aに接続される。一方、自律モード時には、可動接点44Cがマニュアルモード接点44Aから遮断され、自律モード接点44Bに接続される。ダンプトラック1がマニュアルモードで運転されるときには、自律モードコントローラ14から操舵コントローラ40(操舵負荷トルク算出部41)に操舵用の目標トルクTaが入力されることはなく、この場合の目標トルクTaは零として処理される。
【0058】
このため、マニュアルモード時の操舵負荷トルク算出部41は、負荷トルクセンサ39の出力値(負荷トルクセンサ出力値Tb)が零の状態から左,右のどちらの操舵(回転)方向に立ち上がったかを回転方向判定部45により検知する。回転方向判定部45の次段(出力側)に接続された回転開始トルク算出部46は、回転方向判定部45により検知された回転の開始とその回転方向に基づき、ステアリングコラム33を前記回転方向に助勢する向きで予め設定した大きさの回転開始トルクを出力する。
【0059】
回転開始トルク算出部46の次段に接続されたトルク切替部47は、例えばセンサ側接点47A、回転開始側接点47Bと可動接点47Cとを有している。常時は、可動接点47Cがセンサ側接点47Aに接続される。一方、回転開始トルク算出部46から回転開始トルクが出力されると、可動接点47Cがセンサ側接点47Aから回転開始側接点47Bに切替わり、所定の短い時間にわたって可動接点47Cが回転開始側接点47Bに接続される。このため、トルク切替部47は、回転開始トルク算出部46から回転開始トルクが出力されている短い時間(図10中の切替信号55,56参照)にわたって、負荷トルクセンサ39からの出力値に替えて前記回転開始トルクを操舵負荷トルクTcとして出力する。
【0060】
このように、操舵負荷トルク算出部41は、マニュアルモード時に負荷トルクセンサ39の出力値により回転の開始を検知したときに、予め設定した大きさの回転開始トルクを前記回転方向に助勢する向きで操舵負荷トルクTcとして出力する。操舵負荷トルク算出部41は、その後に所定の短い時間が経過したときに、負荷トルクセンサ39の出力値(負荷トルクセンサ出力値Tb)を操舵負荷トルクTcとして出力する構成となっている。
【0061】
一方、ダンプトラック1が自律モードで運転されるときには、モード切替部44の可動接点44Cが自律モード接点44Bに切替えて接続される。このため、操舵負荷トルク算出部41は、外部(例えば、自律モードコントローラ14)から入力された操舵用の目標トルクTaが零の状態から左,右のどちらの操舵(回転)方向に立ち上がったかを回転方向判定部45により検知する。次に、回転開始トルク算出部46は、回転方向判定部45により検知された回転の開始とその回転方向に基づき、ステアリングコラム33を前記回転方向に助勢する向きで予め設定した大きさの回転開始トルクを出力する。この回転開始トルクは、自律モード時でもマニュアルモード時でも同じ大きさのトルク値に設定されている。
【0062】
次に、トルク切替部47は、回転開始トルク算出部46から回転開始トルクが出力されたときに、マニュアルモード時と同様に可動接点47Cがセンサ側接点47Aから回転開始側接点47Bに切替わる。これにより、所定の短い時間にわたって可動接点47Cが回転開始側接点47Bに接続される。このため、トルク切替部47は、回転開始トルク算出部46から回転開始トルクが出力されている短い時間(図10中の切替信号55,56参照)にわたって、負荷トルクセンサ39からの出力値に替えて前記回転開始トルクを操舵負荷トルクTcとして出力する。
【0063】
このように、操舵負荷トルク算出部41は、自律モード時に自律モードコントローラ14から入力された操舵用の目標トルクTaにより回転の開始を検知すると、予め設定した大きさの回転開始トルクを前記回転方向に助勢する向きで操舵負荷トルクTcとして出力する。その後、所定の短い時間が経過したときには、トルク切替部47の可動接点47Cが回転開始側接点47Bからセンサ側接点47Aに切替わる。これにより、操舵負荷トルク算出部41は、負荷トルクセンサ39の出力値(負荷トルクセンサ出力値Tb)を操舵負荷トルクTcとして出力する構成となっている。
【0064】
図3に示す操舵角センサ48は、例えば左,右の前輪6L,6Rのうちいずれか一方の車輪の実操舵角を検出する角度検出器である。操舵角センサ48は、例えばホール素子とマグネットとからなる電磁ピックアップ式回転角検出器、または発光体と受光体とからなる光学式の回転角検出器等により構成されている。例えば、車両が直進する方向に前輪6L,6Rが向いたとき、即ち前輪6L,6Rが前,後方向に平行な直進状態となったときに、操舵角は零として検出される。車両が左折する方向に前輪6L,6Rが傾いたときには、例えば操舵角は正(または負)の検出値として出力される。車両が右折する方向に前輪6L,6Rが傾いたときには、例えば操舵角は負(または正)の検出値として出力される。
【0065】
このように、操舵角センサ48は、前輪6L,6Rの操舵角に応じた操舵角検出信号を操舵コントローラ40に出力する。自律モード運転時には、ステアリングコラム33の操舵角度(即ち、電動モータ35の回転角)が操舵コントローラ40により前記操舵角検出信号に基づいてフィードバック制御される。なお、操舵角センサ48は、必ずしも操舵輪(前輪6L,6R)の操舵角を検出する検出器である必要はない。例えば、電動モータ35の回転を検出するリゾルバ等の回転センサを用いて、電動モータ35の回転を操舵コントローラ40によりフィードバック制御する構成としてもよい。
【0066】
第1の実施の形態によるダンプトラック1は、上述の如き構成を有するもので、次に、その作動について説明する。
【0067】
ダンプトラック1は、運転者のマニュアル操作によって走行するマニュアルモードと、管理局19からの運行指令VI0によって走行する自律モードとのいずれかで運転される。
【0068】
そこで、まずマニュアルモードにおけるダンプトラック1の走行動作について説明する。
【0069】
図3ないし図5に示すように、マニュアルモードでは、運転者が操舵ハンドル32を回転操作すると、操舵コントローラ40は、運転者の操舵に応じた負荷トルクセンサ39による負荷トルクセンサ出力値Tbに基づいて助勢トルク算出部42により助勢トルクを算出し、この助勢トルクを発生させるために必要な駆動電流をインバータ43から電動モータ35へと出力する。
【0070】
これにより、運転者によるハンドル操作の操舵トルクを軽くした状態で、操舵機構部21のステアリングコラム33は、電動モータ装置34からの回転力(即ち、助勢トルク)により回転される。ステアリングバルブ31は、この回転に応じた油圧力によって操舵シリンダ27L,27Rを駆動し、前輪6R,6Lの操舵角が調整される。
【0071】
次に、自律モードにおけるダンプトラック1の走行動作について説明する。
【0072】
ダンプトラック1のモード選択スイッチ13を切換え操作すると、ダンプトラック1は、マニュアルモードから自律モードに切換わる。図3に示すように、自律モードコントローラ14は、自律モード時に操舵用の目標トルクTaを操舵コントローラ40に出力すると共に、車両を加速させるための加速指令および/または車両を減速させるための制動指令を走行駆動部12に出力する。
【0073】
図5に示すように、操舵コントローラ40は、自律モードコントローラ14からの操舵用の目標トルクTaと負荷トルクセンサ39による負荷トルクセンサ出力値Tb(以下、負荷トルクセンサ値Tbという)とに基づいて助勢トルク算出部42により助勢トルクを算出し、この助勢トルクを発生させるために必要な駆動電流をインバータ43から電動モータ35へと出力する。これにより、操舵機構部21のステアリングコラム33は、電動モータ装置34からの回転力(即ち、目標トルクTaと負荷トルクセンサ値Tbとを合計した助勢トルク)により回転される。ステアリングバルブ31は、この回転に応じた油圧力により操舵シリンダ27L,27Rを駆動し、前輪6R,6Lの操舵角が調整される。これにより、ダンプトラック1は、自律モードコントローラ14からの操舵用の目標トルクTaに基づいて、自律走行する。
【0074】
ところで、ダンプトラック1に代表される大型の作業車両にあっては、重量物である車両の舵取り操作を開始するときに、所謂動摩擦力に比べて大きい静止摩擦力の影響等を受ける。このため、舵取り操作の開始時には、大きな操舵力(回転トルク)を車両に発生させることが要求される。即ち、左,右の前輪6L,6Rを操向回動し始めるときに、操舵系に生じる摩擦抵抗、ステアリングバルブ31が回動し始めるときの摩擦抵抗等によって、操舵開始時に大きな操舵力(回転トルク)を発生させることが要求される。
【0075】
このため、第1の実施の形態では、操舵コントローラ40の操舵負荷トルク算出部41を、例えば図6に示すように、モード切替部44、回転方向判定部45、回転開始トルク算出部46およびトルク切替部47により構成している。この操舵負荷トルク算出部41は、図7に示す下記のような処理手順に従って操舵負荷トルクTcを算出する。
【0076】
まず、マニュアルモードによる操舵処理について述べる。
【0077】
即ち、図7に示す処理動作がスタートすると、ステップ1でトルク入力の立上りがあるか否かを判定する。ステップ1で「YES」と判定するときには、次のステップ2で目標トルクが入力されたか否かを判定する。ステップ2で「NO」と判定するときには、自律モードコントローラ14から操舵コントローラ40(操舵負荷トルク算出部41)に操舵用の目標トルクTaが入力されず、目標トルクTaは零として処理された場合である。
【0078】
このように、ステップ2で「NO」と判定した場合は、ダンプトラック1がマニュアルモードで運転され、負荷トルクセンサ39の出力値(負荷トルクセンサ値Tb)が零の状態から左,右のどちらかの操舵(回転)方向に立ち上がっている場合に該当する。このため、次のステップ3では、モード切替部44の可動接点44Cをマニュアルモード接点44A(負荷トルクセンサ39側)に接続したままの状態とし、次のステップ4で操舵方向を判定する。
【0079】
即ち、ステップ4では、マニュアルモード時において負荷トルクセンサ39の出力値(負荷トルクセンサ値Tb)が、零の状態から左,右のどちらの操舵(回転)方向に立ち上がったかを回転方向判定部45により検知する。次のステップ5では、回転方向判定部45により検知された回転の開始とその回転方向に基づき、回転開始トルク算出部46により予め設定した大きさの回転開始トルクを算出する。
【0080】
次のステップ6では、トルク切替部47の可動接点47Cをセンサ側接点47Aから回転開始側接点47Bに切替えて、回転開始トルク算出部46から前記回転開始トルクを出力させる。次のステップ7では、回転開始トルク算出部46からの回転開始トルクによりステアリングコラム33が回転開始したか否かを判定する。この判定処理は、可動接点47Cをセンサ側接点47Aから回転開始側接点47Bに切替えて所定の短い時間(図10中の切替信号55,56参照)が経過したか否かにより判定すればよい。
【0081】
ステップ7で「NO」と判定する間は、ステップ7の判定処理を繰返し、ステップ7で「YES」と判定したときには、次のステップ8でトルク切替部47の可動接点47Cを回転開始側接点47Bからセンサ側接点47Aへと切替える。これにより、ステップ8では、負荷トルクセンサ39の出力値(負荷トルクセンサ値Tb)を操舵負荷トルクTcとして出力する。
【0082】
このように、操舵負荷トルク算出部41は、マニュアルモード時に負荷トルクセンサ39の出力値により回転の開始を検知すると、予め設定した大きさの回転開始トルクを前記回転方向に助勢する向きで操舵負荷トルクTcとして出力し、所定の短い時間が経過したときには負荷トルクセンサ39の負荷トルクセンサ値Tbを操舵負荷トルクTcとして出力する。操舵コントローラ40は、このように操舵負荷トルク算出部41から出力される操舵負荷トルクTcを、助勢トルク算出部42により助勢トルクとして算出し、この助勢トルクを発生させるために必要な駆動電流をインバータ43から電動モータ35へと出力する。
【0083】
次に、自律モードによる操舵処理について述べる。
【0084】
一方、自律モードコントローラ14から操舵コントローラ40(操舵負荷トルク算出部41)に操舵用の目標トルクTaが入力される自律モード時には、前記ステップ2で「YES」と判定される。このため、次のステップ9では、モード切替部44の可動接点44Cをマニュアルモード接点44Aから自律モード接点44B(目標トルク側)に切替え、目標トルクTaの信号を回転方向判定部45に入力させる。
【0085】
次のステップ10では、この場合の操舵方向を回転方向判定部45により判定する。即ち、ステップ10では、自律モードコントローラ14からの目標トルクTaが、零の状態から左,右のどちらの操舵(回転)方向に立ち上がったかを回転方向判定部45により検知する。そして、この場合もステップ5〜8にわたる処理を、マニュアルモード時と同様に行う。これにより、操舵負荷トルク算出部41は、自律モード時の目標トルクTaによりステアリングコラム33の回転開始を検知すると、予め設定した大きさの回転開始トルクを前記回転方向に助勢する向きで操舵負荷トルクTcとして出力する。
【0086】
その後に、所定の短い時間(図10中の切替信号55,56参照)が経過したときに、操舵負荷トルク算出部41は、前記回転開始トルクに切替えて負荷トルクセンサ39の出力値(負荷トルクセンサ値Tb)を操舵負荷トルクTcとして出力する。操舵コントローラ40は、このように操舵負荷トルク算出部41から出力される操舵負荷トルクTcを、助勢トルク算出部42により自律モードコントローラ14からの目標トルクTaに加算して助勢トルクを算出し、この助勢トルクを発生させるために必要な駆動電流をインバータ43から電動モータ35へと出力する。
【0087】
次に、自律モードでダンプトラックを操舵する場合の動作について説明する。
【0088】
図8は、例えば自律モードでダンプトラック1が作業現場で右回りに操舵して走行する状態を示している。ダンプトラック1は、作業現場の運搬路HRを時間t1〜t2の位置まで直進しているが、時間t2〜t4の位置では右旋回するように操舵が行われている。時間t4〜t6の位置では、操舵ハンドル32を切り返す方向にステアリングコラム33を回転させ、時間t6〜t7以降の位置では、ダンプトラック1が再び直進するように操作されている。
【0089】
図9は、ダンプトラック1の走行位置(図8中の時間t1〜t7)に対する目標操舵トルク、負荷トルクおよび回転開始トルクの関係を示している。一点鎖線で示す特性線51は、時間t2の位置で右旋回するように操舵が開始されたときの回転開始トルクの特性を示している。点線で示す特性線52は、時間t2〜t6にわたる位置で負荷トルクセンサ39により検出される負荷トルクセンサ値Tbの特性を示している。この特性線52は、時間t4の位置でトルクの検出方向が反転する(例えば、サインカーブを描く)ような特性となっている。
【0090】
図9中に実線で示す特性線53は、操舵用の目標トルクTaの特性であり、時間t2〜t6にわたる位置でステアリングコラム33の回転方向に対応してサインカーブを描くように変化している。また、一点鎖線で示す特性線54は、例えば時間t4の位置でステアリングコラム33の回転方向が反転されるため、このときの反転開始に伴う回転開始トルクの特性を示している。
【0091】
図10は、ダンプトラック1の走行位置(図8中の時間t1〜t7)に対するトルク切替部47の動作特性を示している。即ち、ダンプトラック1が直進している時間t1〜t2の位置では、トルク切替部47の可動接点47Cがセンサ側接点47Aに接続されるため、操舵負荷トルク算出部41から助勢トルク算出部42に、負荷トルクセンサ39の出力値(負荷トルクセンサ値Tb)が操舵負荷トルクTcとして出力される。
【0092】
次に、時間t2の位置で目標トルクTaにより操舵が開始されると、図10中に示す切替信号55が所定の短い時間だけ出力され、トルク切替部47の可動接点47Cはセンサ側接点47Aから回転開始側接点47Bに切替えられる。これにより、操舵負荷トルク算出部41から助勢トルク算出部42には、図9中に一点鎖線で示す特性線51のように、予め設定した大きさの回転開始トルクが前記回転方向に助勢する向きの操舵負荷トルクTcとして出力される。
【0093】
その後に、切替信号55の出力が停止され時間t4までは、トルク切替部47の可動接点47Cが再びセンサ側接点47Aに接続される。このため、操舵負荷トルク算出部41から助勢トルク算出部42には、負荷トルクセンサ39の出力値(負荷トルクセンサ値Tb)が操舵負荷トルクTcとして出力される。そして、時間t4の位置で目標トルクTaによる操舵方向が反転されると、図10中に示す切替信号56が所定の短い時間だけ出力され、トルク切替部47の可動接点47Cはセンサ側接点47Aから再び回転開始側接点47Bに切替えられる。
【0094】
これによって、操舵負荷トルク算出部41から助勢トルク算出部42には、図9中に一点鎖線で示す特性線54のように、予め設定した大きさの回転開始トルクが反転された回転方向に助勢する向きの操舵負荷トルクTcとして出力される。その後、切替信号56の出力が停止され時間t7以降までは、トルク切替部47の可動接点47Cが再びセンサ側接点47Aに接続される。このため、操舵負荷トルク算出部41から助勢トルク算出部42に、負荷トルクセンサ39の出力値(負荷トルクセンサ値Tb)が操舵負荷トルクTcとして出力される。
【0095】
かくして、第1の実施の形態によれば、例えば自律モードでダンプトラック1を走行させて操舵を行うときに、操舵負荷トルク算出部41の回転方向判定部45により検知された回転の開始とその回転方向に基づき、回転開始トルク算出部46によりステアリングコラム33を操舵方向(回転方向)に助勢する向きで予め設定した大きさの回転開始トルクを出力することができる。従って、操舵開始時に所謂静止摩擦力の影響で電動モータ装置34に大きな負荷が加えられるのを抑制することができる。
【0096】
このため、電動モータ装置34に用いる電動モータ35を、小型のモータで構成することが可能となり、操舵制御装置20全体の小型化、軽量化を図ることができる。しかも、操舵制御装置20の操舵機構部21は、操舵用リンク機構22と、操舵用リンク機構22の操舵シリンダ27L,27Rを駆動する油圧回路(即ち、油圧ポンプ29、作動油タンク30およびステアリングバルブ31)とを含んで構成されている。このため、操舵輪である前輪6L,6Rの向きを電動モータ35の力と油圧力とを利用して変えることができ、これによっても、電動モータ35の小型、軽量化を図ることができる。
【0097】
また、ダンプトラック1をマニュアルモードで運転するときでも、運転者によるハンドル操作の操舵トルクを軽くすることができる。即ち、運転者による舵取り操作に対して適切な補助操舵力を発生して常に一定の操舵力で操作することができる。これにより、運転者による舵取り操作が頻繁かつ長時間にわたり行われる場合でも、運転者のハンドル操作に必要な操舵トルクを小さくして、運転者の疲労、負担を軽減することができる。
【0098】
特に、第1の実施の形態による操舵制御装置20は、操舵コントローラ40の操舵負荷トルク算出部41を、モード切替部44、回転方向判定部45、回転開始トルク算出部46およびトルク切替部47により構成されている。これにより、操舵機構部21側での操舵開始時に必要な回転開始トルクを、予め決められた大きさの回転開始トルクとして発生させ、補償することができ、回り始めのトルクの不足を補うことが可能となる。また、運転者がハンドル操作を開始した瞬間の重さが軽減され、操舵感を良好に出来るという効果を奏する。
【0099】
しかも、操舵系の操舵開始時に必要な回転開始トルクを補償することによって回り始めのトルクの不足を補うことが可能となる。このため、操舵用の目標トルクTaに遅滞なく追従させて、電動モータ35を駆動することができる。これにより、操舵用の目標トルクTaの立ち上がりから実際に操舵系が操舵を開始するまでの時間を短縮することができ、操舵時の応答性を高めることができる。
【0100】
従って、第1の実施の形態によれば、ダンプトラック1に代表される作業車両において、運転者によるマニュアルモードの舵取り操作または自律モード時の目標トルクによる舵取り操作により、操舵機構部21の負荷部分と電動モータ装置34との間でステアリングコラム33に発生する操舵負荷トルクTcを負荷トルクセンサ39で検出、または、操舵負荷トルク算出部41で算出する。このように算出したトルク値に基づいて、助勢トルク算出部42では助勢トルクを算出し、この助勢トルクを発生させるために必要な駆動電流をインバータ43から電動モータ35へと出力して電動モータ装置34を駆動する。
【0101】
これにより、操舵機構部21の負荷部分には、適切な補助操舵力(助勢トルク)を発生して常に軽い操舵力で操舵輪を操作できるため、例えばマニュアルモード時でも運転者の疲労低減を図ることができる。また、運転者による舵取り操作の代替機能を付加し、自律モードにより自動操舵が可能な作業車両とした場合でも、外部制御装置(即ち、自律モードコントローラ14、外部の管理局19)からの操舵用の目標トルクTaと操舵負荷トルクTcとに基づき助勢トルクを算出して電動モータ装置34を駆動する。これにより、操舵負荷トルクTcを相殺するように補助操舵力を発生でき、操舵用の目標トルクTaに滑らかに追従するように自動舵取り操作が可能な操舵制御装置20を実現することができる。
【0102】
しかも、前述の2つの効果を得るための操舵機構部21および制御手段(操舵コントローラ40)は共通である。このため、装置コストの上昇を最小に抑えつつ、マニュアルモード時の運転者補助と自律モード時の自動操舵の2つの機能を実現することができる。また、例えば自律モードによる走行中であっても、車両に搭乗した運転者が操舵ハンドル32を操作することによって、マニュアルモードによる運転を行うことも可能であり、自律走行の途中でも必要に応じて手動の操舵を行うことができる。
【0103】
次に、図11は本発明の第2の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、電動モータの駆動力によって動力操舵を行うようにし、操舵制御装置の操舵機構部に油圧力を用いることなく、パワーステアリング機構として構成したことにある。なお、第2の実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0104】
ここで、第2の実施の形態で採用した操舵制御装置60(操舵システム)は、機械的な操舵機構部61と、第1の実施の形態と同様な操舵コントローラ40とを含んで構成されている。しかし、第2の実施の形態による操舵制御装置60の操舵機構(操舵機構部61)は、第1の実施の形態で述べたステアリングバルブ31等の油圧機構を用いることなく、後述の電動モータ装置70による駆動力で操舵輪(前輪6L,6R)の向きを変える構成としている。操舵機構部61は、第1の実施の形態と同様な操舵ハンドル32および負荷トルクセンサ39と、後述の操舵用リンク機構62、ステアリングコラム69および電動モータ装置70とを備えている。
【0105】
操舵用リンク機構62は、左,右の前輪6L,6R間で車体2に連結されたリンク部材63と、該リンク部材63の左,右両端に取付けられ、前輪6L,6Rを回転可能に支持する左,右一対のスピンドル63L,63Rと、左,右一対のキングピン64と、左,右一対のナックルアーム65L,65Rと、左,右一対のタイロッド66L,66Rと、後述のラック67、ギヤケース68とを含んで構成されている。操舵用リンク機構62は、左,右のタイロッド66L,66R、ラック67およびギヤケース68等を除けば、前記第1の実施の形態で述べた操舵用リンク機構22とほぼ同様に構成されている。
【0106】
ラック67は、筒状のギヤケース68内から左,右方向の両側に延びて形成され、その両端側には左,右のタイロッド66L,66Rが回動可能にピン結合されている。即ち、左,右のタイロッド66L,66Rは、左,右のナックルアーム65L,65Rとラック67の両端との間にそれぞれ回動可能に連結されている。筒状のギヤケース68内には、ラック67に噛合するピニオン(図示せず)が配置され、このピニオンは、ステアリングコラム69の先端(下端)側に一体回転するように設けられている。即ち、ラック67とピニオンとは、所謂ラック−ピニオンと呼称されるステアリングギヤ機構を構成し、メカニカルに操舵車輪(前輪6L,6R)を操向するものである。
【0107】
ステアリングコラム69の途中には、第1の実施の形態と同様に電動モータ装置70と負荷トルクセンサ39とが設けられている。電動モータ装置70は、操舵ハンドル32と負荷トルクセンサ39との間に位置してステアリングコラム69に回転力を付与できるように配設されている。電動モータ装置70は、電動モータ71と、該電動モータ71の出力軸71Aに設けられた駆動ギヤ72と、前記ステアリングコラム69の途中に固定して設けられ駆動ギヤ72と噛合した従動ギヤ73とにより構成されている。駆動ギヤ72と従動ギヤ73とは、電動モータ71の回転を減速してステアリングコラム69に伝達する減速機構を構成している。
【0108】
電動モータ装置70は、点線で示すように、電動モータ71、駆動ギヤ72および従動ギヤ73を収納する筒状のケース74を有している。このケース74内で、電動モータ71の出力軸71Aはステアリングコラム69と平行に延びるように配設されている。第1の実施の形態でも述べたように、電動モータ71および駆動ギヤ72をケース74内から取外すことも可能である。ここで、駆動ギヤ72と従動ギヤ73とは、平歯車を用いて構成されている。しかし、駆動ギヤと従動ギヤとは、傘歯車等を用いて構成することができる。この場合には、電動モータ71の出力軸71Aをステアリングコラム69に対し斜め傾けて配設することも可能である。また、駆動ギヤ72と従動ギヤ73に替えて、例えばプーリとベルト、チェーン等を用いた減速機構を採用してもよい。さらに、電動モータの回転子をステアリングコラムと同軸に配設して電動モータ装置を構成することも可能である。
【0109】
このようなダンプトラック1に代表される作業車両において、運転者が操舵ハンドル32を操作すると、操舵ハンドル32に加えられた操舵トルクはステアリングコラム69を介してギヤケース68内の前記ピニオンからラック67に伝達され、回転運動を直動変換するようにラック67からタイロッド66L,66Rの左,右移動に変換される。左,右のタイロッド66L,66Rは、リンク部材63に回動可能なように取付けられたナックルアーム65L,65Rへと接続され、タイロッド66L,66Rの左,右移動をナックルアーム65L,65Rの操向回転運動へと変換する。これらの働きによりナックルアーム65L,65Rにキングピン64を介して固定されたスピンドル63L,63Rと該スピンドル63L,63Rに回転可能に取付けられた左,右の前輪6L,6Rの向きが変化し、操舵が実現される。
【0110】
かくして、このように構成される第2の実施の形態でも、運転者によるマニュアルモードの舵取り操作または自律モード時の目標トルクによる舵取り操作により、操舵機構部61の負荷部分と電動モータ装置70との間でステアリングコラム69に発生する操舵負荷トルクTcを負荷トルクセンサ39で検出する。また、操舵負荷トルク算出部41は、この検出値を基に操舵負荷トルクを算出し、算出したトルク値に基づいて助勢トルク算出部42では助勢トルクを算出し、この助勢トルクを発生させるために必要な駆動電流をインバータ43から電動モータ71へと出力して電動モータ装置70を駆動することにより、前記第1の実施の形態とほぼ同様な効果を奏する。
【0111】
特に、第2の実施の形態では、操舵制御装置60の操舵機構部61に、第1の実施の形態のようにステアリングバルブ31を含んだ油圧機構を用いることなく、電動モータ装置70による駆動力で操舵輪(前輪6L,6R)の向きを変える構成としている。このため、操舵機構部61の構成を簡素化することができ、装置の小型、軽量化を図ることができる。また、油圧配管の設置作業等が不要となり、組立作業性を向上することができる。
【0112】
なお、前記第1の実施の形態では、操舵コントローラ40の操舵負荷トルク算出部41を、モード切替部44、回転方向判定部45、回転開始トルク算出部46およびトルク切替部47により構成する場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば運転者によるマニュアルモードの舵取り操作または自律モード時の目標トルクによる舵取り操作により、操舵機構部21の負荷部分と電動モータ装置70との間でステアリングコラム69に発生する操舵負荷トルクを、負荷トルクセンサ39で検出したトルク値により算出する構成とした操舵負荷トルク算出手段としてもよい。この点は、第2の実施の形態についても同様である。
【0113】
前記各実施の形態では、自律モードコントローラ14を備えるダンプトラック1を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば自律モードコントローラ14を省いて、マニュアル運転だけが可能なダンプトラック等の作業車両を構成してもよい。この場合でも、自律モードコントローラ14を走行駆動部12に接続することによって、自律モードの機能を後から追加することができる。
【0114】
さらに、前記各実施の形態では、車両として大型の作業車両であるダンプトラック1を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば中型または小型の作業車両の操舵制御装置にも適用することができる。
【0115】
以上述べたように、本発明の実施の形態によると、前記操舵負荷トルク算出手段は、前記負荷トルクセンサの出力値がゼロからどちらの回転方向に立ち上がったかを検知する回転方向判定手段と、前記回転方向判定手段により検知された前記ステアリングコラムの回転の開始とその回転方向に基づき、前記ステアリングコラムを前記回転方向に助勢する向きで予め設定した大きさの回転開始トルクを算出する回転開始トルク算出手段と、前記回転開始トルク算出手段により前記回転開始トルクが算出されている期間、前記負荷トルクセンサの出力値に替えて前記回転開始トルクを操舵負荷トルクとして前記助勢トルク算出手段に出力するトルク切替手段とを備え、前記操舵負荷トルク算出手段は、前記負荷トルクセンサの出力値に基づいて前記回転の開始を検知したときに、予め設定した大きさの前記回転開始トルクを前記回転方向に助勢する向きで前記助勢トルク算出手段に出力し、前記期間の後に前記負荷トルクセンサの出力値を前記操舵負荷トルクとして前記助勢トルク算出手段に出力する構成としている。
【0116】
また、前記操舵負荷トルク算出手段は、外部から入力された目標操舵トルクがゼロからどちらの回転方向に立ち上がったかを検知する回転方向判定手段と、前記回転方向判定手段により検知された前記ステアリングコラムの回転の開始とその回転方向に基づき、前記ステアリングコラムを前記回転方向に助勢する向きで予め設定した大きさの回転開始トルクを算出する回転開始トルク算出手段と、前記回転開始トルクが算出されている期間、前記負荷トルクセンサの出力値に替えて前記回転開始トルクを操舵負荷トルクとして前記助勢トルク算出手段に出力するトルク切替手段とを備え、前記操舵負荷トルク算出手段は、前記目標操舵トルクに基づいて前記回転の開始を検知したときに、予め設定した大きさの前記回転開始トルクを前記回転方向に助勢する向きで前記助勢トルク算出手段に出力し、前記期間の後に前記負荷トルクセンサの出力値を前記操舵負荷トルクとして前記助勢トルク算出手段に出力する構成としている。
【0117】
これにより、例えば自律モードで作業車両を走行させて操舵を行うときに、操舵負荷トルク算出手段の回転方向判定手段により検知された回転の開始とその回転方向に基づき、回転開始トルク算出手段によりステアリングコラムを操舵方向(回転方向)に助勢する向きで予め設定した大きさの回転開始トルクを出力することができる。これにより、操舵開始時に所謂静止摩擦力等の影響で電動モータ装置に大きな負荷が加えられるのを抑制することができる。
【符号の説明】
【0118】
1 ダンプトラック(作業車両)
2 車体
6L,6R 前輪
7L,7R 後輪
8L,8R 走行用モータ
12 走行駆動部
13 モード選択スイッチ
14 自律モードコントローラ(外部制御装置)
19 管理局(外部制御装置)
20,60 操舵制御装置
21,61 操舵機構部(操舵機構)
22,62 操舵用リンク機構
27L,27R 操舵シリンダ
31 ステアリングバルブ
32 操舵ハンドル
33,69 ステアリングコラム
34,70 電動モータ装置
35,71 電動モータ
39 負荷トルクセンサ
40 操舵コントローラ(操舵制御手段)
41 操舵負荷トルク算出部(操舵負荷トルク算出手段)
42 助勢トルク算出部(助勢トルク算出手段)
43 インバータ
44 モード切替部
45 回転方向判定部(回転方向判定手段)
46 回転開始トルク算出部(回転開始トルク算出手段)
47 トルク切替部(トルク切替手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【国際調査報告】