(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2017年5月4日
【発行日】2018年5月31日
(54)【発明の名称】貼付剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4468 20060101AFI20180427BHJP
A61P 25/04 20060101ALI20180427BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20180427BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20180427BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20180427BHJP
A61K 47/14 20060101ALI20180427BHJP
A61K 9/70 20060101ALI20180427BHJP
A61K 47/20 20060101ALI20180427BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20180427BHJP
A61K 47/44 20170101ALI20180427BHJP
【FI】
A61K31/4468
A61P25/04
A61K47/22
A61K47/02
A61K47/10
A61K47/14
A61K9/70 401
A61K47/20
A61K47/32
A61K47/44
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】19
【出願番号】特願2017-547782(P2017-547782)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2016年10月24日
(31)【優先権主張番号】特願2015-209736(P2015-209736)
(32)【優先日】2015年10月26日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA
(71)【出願人】
【識別番号】000160522
【氏名又は名称】久光製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001047
【氏名又は名称】特許業務法人セントクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】園部 睦
(72)【発明者】
【氏名】竹内 昭雄
(72)【発明者】
【氏名】高田 恭憲
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA72
4C076BB31
4C076CC01
4C076DD24S
4C076DD30
4C076DD31
4C076DD34
4C076DD37S
4C076DD45N
4C076DD46
4C076DD47
4C076DD60S
4C076EE01
4C076EE02
4C076EE04
4C076EE53
4C076FF34
4C076FF65
4C086AA01
4C086BC21
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA32
4C086MA63
4C086NA03
4C086NA11
4C086ZA08
(57)【要約】
支持体と、該支持体の少なくとも一方の面に積層された粘着剤層とを備える貼付剤であって、前記粘着剤層が、フェンタニル及びその塩からなる群から選択される少なくとも一種、粘着基剤、及び、硫黄原子を分子内に有する抗酸化剤を含有している貼付剤。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、該支持体の少なくとも一方の面に積層された粘着剤層とを備える貼付剤であって、前記粘着剤層が、フェンタニル及びその塩からなる群から選択される少なくとも一種、粘着基剤、及び、硫黄原子を分子内に有する抗酸化剤を含有している貼付剤。
【請求項2】
前記硫黄原子を分子内に有する抗酸化剤が、2−メルカプトベンズイミダゾール及びピロ亜硫酸ナトリウムからなる群から選択される少なくとも一種である、請求項1に記載の貼付剤。
【請求項3】
前記粘着基剤がゴム系粘着基剤である、請求項1又は2に記載の貼付剤。
【請求項4】
前記フェンタニル及びその塩の配合量が前記粘着剤層の全質量を基準として0.05〜20質量%であり、前記粘着基剤の配合量が前記粘着剤層の全質量を基準として固形分換算で0.1〜98質量%であり、前記硫黄原子を分子内に有する抗酸化剤の配合量が前記粘着剤層の全質量を基準として0.01〜5質量%である、請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の貼付剤。
【請求項5】
前記粘着剤層が、吸収促進剤として脂肪酸エステルを更に含有している、請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の貼付剤。
【請求項6】
前記吸収促進剤の配合量が前記粘着剤層の全質量を基準として0.01〜20質量%である、請求項5に記載の貼付剤。
【請求項7】
前記粘着剤層が、フェノール系抗酸化剤を更に含有している、請求項1〜6のうちのいずれか一項に記載の貼付剤。
【請求項8】
前記フェノール系抗酸化剤の配合量が前記粘着剤層の全質量を基準として0.01〜5質量%である、請求項7に記載の貼付剤。
【請求項9】
前記粘着剤層が、脱塩剤として、塩基性アルカリ(土類)金属塩、アルカリ(土類)金属水酸化物、及び、塩基性窒素を含有する低分子化合物からなる群から選択される少なくとも一種を更に含有しており、前記脱塩剤の配合量が前記粘着剤層の全質量を基準として0.01〜15質量%である、請求項1〜8のうちのいずれか一項に記載の貼付剤。
【請求項10】
前記粘着剤層が、粘着付与剤として、脂環族飽和炭化水素樹脂、テルペン樹脂、ロジン樹脂、ロジンエステル樹脂及び油溶性フェノ−ル樹脂からなる群から選択される少なくとも一種を更に含有しており、前記粘着付与剤の配合量が前記粘着剤層の全質量を基準として0.1〜70質量%である、請求項1〜9のうちのいずれか一項に記載の貼付剤。
【請求項11】
前記粘着剤層が、軟化剤として、流動パラフィン、スクワラン、オリーブ油、ツバキ油、パーシック油及びラッカセイ油からなる群から選択される少なくとも一種を更に含有しており、前記軟化剤の配合量が前記粘着剤層の全質量を基準として1〜70質量%である、請求項1〜10のうちのいずれか一項に記載の貼付剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貼付剤に関し、より詳しくは、支持体と粘着剤層とを備え、粘着剤層に薬物としてフェンタニル(化学名:N−(1−フェネチルピペリジン−4−イル)−N−フェニルプロピオンアミド)及びその塩からなる群から選択される少なくとも一種が配合されている貼付剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、癌性疼痛等の鎮痛剤としてフェンタニル又はその塩を薬物として含有する注射剤が使用されていたが、近年、注射剤以外にもフェンタニル又はその塩を含有する貼付剤が開発され、薬物の経皮吸収性や経時安定性を向上させること等について検討がなされてきた。
【0003】
例えば、特開平10−45570号公報(特許文献1)には、フェンタニル又はその塩、粘着剤、及び酢酸ナトリウムを含有するフェンタニル含有経皮投与テープ製剤が開示されており、その製剤に任意成分として配合してもよい抗酸化剤として、トコフェロール及びそのエステル誘導体、アスコルビン酸、ステアリン酸エステル、ノルジヒトログアレチン酸、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)等が挙げられている。
【0004】
また、特開2010−30909号公報(特許文献2)には、粘着剤層中に、有効量のフェンタニル又はその塩と、当該フェンタニル又はその塩の析出を抑制するのに十分な量のヒンダードフェノール系抗酸化剤を含有する経皮吸収型貼付剤が開示されており、ヒンダードフェノール系抗酸化剤として2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル・テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]等が挙げられている。
【0005】
さらに、特開2010−6761号公報(特許文献3)には、抗酸化剤により処理したロジン系樹脂を含有するフェンタニル又はその塩を含有する経皮吸収型貼付剤が開示されており、抗酸化剤として、トコフェロール及びそのエステル誘導体、アスコルビン酸、アスコルビン酸エステル、ノルジヒトログアレチン酸、フェノール系抗酸化剤を単独で又は2種以上組み合わせて用いることが記載されている。
【0006】
また、特開2010−6762号公報(特許文献4)には、アスコルビン酸又はそのエステルを0.01〜0.5質量%含有するフェンタニル又はその塩を含有する医薬組成物が開示されており、その医薬組成物に、アスコルビン酸又はそのエステル以外の抗酸化剤として、フェノール系抗酸化剤、トコフェロール及びそのエステル誘導体、ノルジヒトログアレチン酸、ブチルヒドロキシアニソール等を更に配合してもよいことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−45570号公報
【特許文献2】特開2010−30909号公報
【特許文献3】特開2010−6761号公報
【特許文献4】特開2010−6762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、昨今、フェンタニル又はその塩を含有する貼付剤に対する要求性能が益々高まっており、薬物の経皮吸収性等の基本的な性能が優れていることに加えて、薬物の経時的な分解がより確実に防止され、従来の貼付剤に比べて薬物の経時安定性がより優れている貼付剤を得ることができれば非常に有用であることを本発明者らは見出した。
【0009】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、薬物としてフェンタニル及びその塩からなる群から選択される少なくとも一種を含有する貼付剤において、薬物の経皮吸収性等の基本的な性能を低下させることなく、従来の貼付剤に比べて薬物の経時安定性を顕著に向上せしめた臨床上有用な経皮投与型貼付剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、フェンタニル及びその塩からなる群から選択される少なくとも一種と粘着基剤とを含有する粘着剤層を備える貼付剤において、抗酸化剤として硫黄原子を分子内に有する抗酸化剤を粘着剤層に配合することにより、薬物の経皮吸収性等の基本的な性能を低下させることなく、薬物の経時的な分解がより確実に防止されるようになることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
本発明の貼付剤は、支持体と、該支持体の少なくとも一方の面に積層された粘着剤層とを備える貼付剤であって、前記粘着剤層が、フェンタニル及びその塩からなる群から選択される少なくとも一種、粘着基剤、及び、硫黄原子を分子内に有する抗酸化剤を含有しているものである。
【0012】
前記本発明の貼付剤においては、前記硫黄原子を分子内に有する抗酸化剤が、2−メルカプトベンズイミダゾール及びピロ亜硫酸ナトリウムからなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましい。
【0013】
また、前記本発明の貼付剤においては、前記粘着基剤がゴム系粘着基剤であることが好ましい。
【0014】
さらに、前記本発明の貼付剤においては、前記フェンタニル及びその塩の配合量が前記粘着剤層の全質量を基準として0.05〜20質量%であり、前記粘着基剤の配合量が前記粘着剤層の全質量を基準として固形分換算で0.1〜98質量%であり、前記硫黄原子を分子内に有する抗酸化剤の配合量が前記粘着剤層の全質量を基準として0.01〜5質量%であることが好ましい。
【0015】
また、前記本発明の貼付剤においては、前記粘着剤層が、吸収促進剤として脂肪酸エステルを更に含有していることが好ましく、その場合、前記吸収促進剤の配合量が前記粘着剤層の全質量を基準として0.01〜20質量%であることが好ましい。
【0016】
さらに、前記本発明の貼付剤においては、前記粘着剤層が、フェノール系抗酸化剤を更に含有していることが好ましく、その場合、前記フェノール系抗酸化剤の配合量が前記粘着剤層の全質量を基準として0.01〜5質量%であることが好ましい。
【0017】
また、前記本発明の貼付剤においては、前記粘着剤層が、脱塩剤として、塩基性アルカリ(土類)金属塩、アルカリ(土類)金属水酸化物、及び、塩基性窒素を含有する低分子化合物からなる群から選択される少なくとも一種を更に含有していることが好ましく、その場合、前記脱塩剤の配合量が前記粘着剤層の全質量を基準として0.01〜15質量%であることが好ましい。
【0018】
さらに、前記本発明の貼付剤においては、前記粘着剤層が、粘着付与剤として、脂環族飽和炭化水素樹脂、テルペン樹脂、ロジン樹脂、ロジンエステル樹脂及び油溶性フェノ−ル樹脂からなる群から選択される少なくとも一種を更に含有していることが好ましく、その場合、前記粘着付与剤の配合量が前記粘着剤層の全質量を基準として0.1〜70質量%であることが好ましい。
【0019】
また、前記本発明の貼付剤においては、前記粘着剤層が、軟化剤として、流動パラフィン、スクワラン、オリーブ油、ツバキ油、パーシック油及びラッカセイ油からなる群から選択される少なくとも一種を更に含有していることが好ましく、その場合、前記軟化剤の配合量が前記粘着剤層の全質量を基準として1〜70質量%であることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、薬物としてフェンタニル及びその塩からなる群から選択される少なくとも一種を含有する貼付剤において、薬物の経皮吸収性等の基本的な性能を低下させることなく、薬物の経時的な分解をより確実に防止せしめることが可能となり、従来の貼付剤に比べて薬物の経時安定性が顕著に優れた臨床上有用な経皮投与型貼付剤を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0022】
本発明の貼付剤は、支持体と、該支持体の少なくとも一方の面に積層された粘着剤層とを備える貼付剤であって、前記粘着剤層が、フェンタニル及びその塩からなる群から選択される少なくとも一種、粘着基剤、及び、硫黄原子を分子内に有する抗酸化剤を含有しているものである。
【0023】
前記支持体は、一般に貼付剤に用いられる支持体であればよく、特に限定されないが、材質としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ナイロン;ポリカーボネート;アルミニウム等の金属が好適に使用される。前記支持体は、フィルム状、布帛状、箔状、多孔質シート状等の形態、又はこれらを積層した形態のものが好適に使用される。
【0024】
本発明の貼付剤においては、前記支持体の少なくとも一方の面に粘着剤層が積層されている。そして、本発明の貼付剤においては、前記粘着剤層に、フェンタニル及びその塩からなる群から選択される少なくとも一種、粘着基剤、及び、硫黄原子を分子内に有する抗酸化剤が配合されている。
【0025】
本発明の貼付剤における薬理活性物質(薬物)は、フェンタニル自体及びその塩からなる群から選択される少なくとも一種である。フェンタニル塩としては、薬学的に許容し得る塩であればよく、特に限定されず、無機塩であっても有機塩であってもよく、代表的なフェンタニル塩であるクエン酸塩、塩酸塩、フマル酸塩等が挙げられる。これらの中でも、クエン酸フェンタニルは特に好ましい。なお、フェンタニル又はその塩は、単独で用いることもできるが、2種以上を混合して用いてもよい。
【0026】
また、フェンタニル及びその塩の配合量は、本発明の貼付剤の粘着剤層の全質量を基準として0.05〜20質量%であることが好ましい。フェンタニル及びその塩の配合量が0.05質量%未満では、得られる貼付剤において薬物の充分な透過量が得られにくくなる傾向にあり、他方、20質量%を超えると、得られる貼付剤の製剤自体の物性に悪影響が出易くなる傾向にある。
【0027】
本発明の貼付剤における粘着剤層に配合される粘着基剤としては、疎水系粘着基剤が好ましく、ゴム系粘着基剤やアクリル系粘着基剤が挙げられ、ゴム系粘着基剤がより好ましい。粘着基剤としてゴム系粘着基剤を用いた本発明の貼付剤においては、アクリル系粘着基剤を用いた場合に比べて薬物の皮膚透過速度が高くなり、薬物の経皮吸収性が向上する傾向にある。ゴム系粘着基剤としては、特に限定されないが、好ましい例として、ポリイソブチレン(PIB)[例えば、BASF社製;オパノールB12、B15、B50、B80、B100、B120、B150、B220等)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)[例えば、シェル化学社製;カリフレックスD−1111、カリフレックスTR−1107、日本合成ゴム社製;JSR5000、JSR−5002、SR5100、日本ゼオン社製;クインタック3421等]、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)[例えば、シェル化学社製;カリフレックスTR−1101等]等が挙げられる。また、アクリル系粘着基剤としては、特に限定されないが、好ましい例として、2−エチルヘキシルアクリレート、酢酸ビニル、エチルアクリレート、メタクリレート、メトキシエチルアクリレート、アクリル酸等から選ばれるモノマーの少なくとも2種の共重合体[例えば、日本カーバイト社製;PE−300、ヘンケル社製;Duro−Tak87−4287、Duro−Tak87−4098、Duro−Tak87−2194等]等が挙げられる。なお、このような粘着基剤は、単独で用いることもできるが、2種以上を混合して用いてもよい。また、本発明においては、薬物の経皮吸収性及び経時安定性がより向上する傾向にあり、かつ、皮膚に対する付着力が向上する傾向にあるという観点から、粘着基剤としてPIBとSISとを組み合わせて用いることが特に好ましい。
【0028】
また、粘着基剤の配合量は、本発明の貼付剤の粘着剤層の全質量(粘着基剤に関しては固形分換算)を基準として0.1〜98質量%であることが好ましく、0.1〜70質量%であることがより好ましく、0.1〜50質量%であることが特に好ましい。粘着基剤の配合量が前記下限未満では、得られる貼付剤の製剤自体の物性に悪影響が出易くなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、皮膚に対する良好な粘着力が得られにくくなる傾向にある。
【0029】
本発明の貼付剤においては、前記フェンタニル及びその塩からなる群から選択される少なくとも一種と前記粘着基剤とを含有する粘着剤層に、抗酸化剤として硫黄原子を分子内に有する抗酸化剤を配合する。硫黄原子を分子内に有する抗酸化剤を用いることにより、薬物の経皮吸収性等の基本的な性能を低下させることなく、薬物の経時的な分解がより確実に防止されるようになる。
【0030】
硫黄原子を分子内に有する抗酸化剤としては、特に限定されないが、薬物分解抑制効果が高くなる傾向にあるという観点から、好ましい例として、イミダゾール系抗酸化剤(2−メルカプトベンズイミダゾール(2−MBI)等)、ピロ亜硫酸ナトリウム、チオグリコール酸ナトリウム、N−アセチルシステイン、チオグリセロール等が挙げられる。なお、このような硫黄原子を分子内に有する抗酸化剤は、単独で用いることもできるが、2種以上を混合して用いてもよい。また、本発明においては、薬物分解抑制効果が特に高くなる傾向にあるという観点から、硫黄原子を分子内に有する抗酸化剤として2−メルカプトベンズイミダゾール及びピロ亜硫酸ナトリウムからなる群から選択される少なくとも一種を用いることが特に好ましい。
【0031】
また、硫黄原子を分子内に有する抗酸化剤の配合量は、本発明の貼付剤の粘着剤層の全質量を基準として0.01〜5質量%であることが好ましく、0.1〜3質量%であることがより好ましい。硫黄原子を分子内に有する抗酸化剤の配合量が前記下限未満では、薬物の経時的な分解が十分に防止されにくくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、薬物分解抑制に対する添加効果が小さくなる傾向にある。
【0032】
本発明の貼付剤においては、前記粘着剤層に、抗酸化剤として、前記硫黄原子を分子内に有する抗酸化剤に加えてフェノール系抗酸化剤を更に配合することが好ましい。フェノール系抗酸化剤を更に配合することにより、製剤物性の安定性がより向上する傾向にある。フェノール系抗酸化剤としては、特に限定されないが、好ましい例として、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)等のヒンダードフェノール系抗酸化剤が挙げられる。なお、このようなフェノール系抗酸化剤は、単独で用いることもできるが、2種以上を混合して用いてもよい。また、フェノール系抗酸化剤を配合する場合、その配合量は、本発明の貼付剤の粘着剤層の全質量を基準として0.01〜5質量%であることが好ましく、0.1〜3質量%であることがより好ましい。
【0033】
本発明の貼付剤においては、前述のフェンタニル及びその塩からなる群から選択される少なくとも一種、粘着基剤、及び、硫黄原子を分子内に有する抗酸化剤に加えて、後述する脱塩剤(塩基)、粘着付与剤、軟化剤(可塑剤)、吸収促進剤、親水性ポリマー、架橋剤、防腐剤、充填剤等のその他の添加成分を前記粘着剤層に配合してもよく、中でも脱塩剤(塩基)、粘着付与剤、軟化剤及び吸収促進剤からなる群から選択される少なくとも一種を配合することが好ましい。
【0034】
本発明の貼付剤の粘着剤層に脱塩剤(塩基)を配合することによって、フェンタニル及びその塩からなる群から選択される少なくとも一種(特にフェンタニル塩)の皮膚透過性がより向上する傾向にある。脱塩剤(塩基)としては、特に限定されないが、塩基性アルカリ(土類)金属塩、アルカリ(土類)金属水酸化物、塩基性窒素を含有する低分子化合物等を挙げることができ、より具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、ホウ酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン等が例示される。
【0035】
脱塩剤(塩基)の配合量は、粘着剤層の全質量を基準として0.01〜15質量%であることが好ましく、0.01〜10質量%であることがより好ましく、0.01〜5質量%であることが特に好ましい。脱塩剤(塩基)の配合量が前記下限未満では、皮膚透過性の向上効果が得られにくくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、皮膚への付着性が低下する傾向にある。
【0036】
本発明の貼付剤においては、その粘着性を高めるために、粘着剤層に粘着付与剤を配合することができる。粘着付与剤としては、特に限定されないが、好ましい例として、脂環族飽和炭化水素樹脂(石油樹脂)[例えば、荒川化学工業社製;アルコンP−100等]、テルペン樹脂[例えば、ヤスハラケミカル社製;クリアロンP−105、YSレジン75等]、ロジン樹脂[例えば、荒川化学工業社製;KR−610等]、ロジンエステル樹脂[例えば、理化ハーキュレス社製;フォーラル105、荒川化学工業社製;KE−311、KE−100、スーパーエステルS−100等]、油溶性フェノ−ル樹脂[例えば、荒川化学工業社製;タマノル521等]等が挙げられる。
【0037】
粘着付与剤の配合量は、本発明の貼付剤の粘着剤層の全質量を基準として0.1〜70質量%であることが好ましく、5〜50質量%であることがより好ましく、10〜45質量%であることが特に好ましい。粘着付与剤の配合量が前記下限未満では、十分な粘着性の向上効果が得られにくくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、粘着力が高くなり過ぎ、皮膚刺激が生じ易くなる傾向にある。
【0038】
本発明の貼付剤においては、加工性の向上や粘着性の調整のために、粘着剤層に軟化剤(可塑剤)を配合することができる。軟化剤(可塑剤)としては、特に限定されないが、好ましい例として、油脂が挙げられ、具体的には、流動パラフィン、スクワラン、オリーブ油、ツバキ油、パーシック油、ラッカセイ油等が挙げられ、中でも流動パラフィンが特に好ましい。
【0039】
軟化剤の配合量は、本発明の貼付剤の粘着剤層の全質量を基準として1〜70質量%であることが好ましく、10〜60質量%であることがより好ましく、20〜50質量%であることが特に好ましい。軟化剤の配合量が前記下限未満では、加工性の向上や粘着性の調整といった添加効果が得られにくくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、粘着剤の凝集力が低下する傾向にある。
【0040】
本発明の貼付剤においては、フェンタニル及びその塩からなる群から選択される少なくとも一種の経皮吸収を促進させるために、粘着剤層に吸収促進剤を配合することもできる。吸収促進剤としては、皮膚での吸収促進作用が認められている化合物であればよく、特に限定されないが、好ましい例として、脂肪酸、脂肪族アルコ−ル、脂肪酸エステル、脂肪酸エーテル、芳香族系有機酸、芳香族系アルコ−ル、芳香族系有機酸エステル、芳香族系有機酸エ−テル等が挙げられ、これらの化合物の炭素鎖数は6〜20であることが好ましい。また、吸収促進剤としては、乳酸エステル類、酢酸エステル類、モノテルペン系化合物、セスキテルペン系化合物、エイゾン(Azone)、エイゾン誘導体、グリセリン脂肪酸エステル類、プロピレングリコール脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類、ポリソルベート類、ポリエチレングリコ−ル脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油類、ショ糖脂肪酸エステル類等も挙げられる。そして、このような吸収促進剤としては、具体的には、カプリル酸、カプリン酸、カプロン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、オレイルアルコール、セチルアルコール、ラウリン酸メチル、ラウリン酸ジエタノールアミド、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸セチル、パルミチン酸イソプロピル、セバシン酸ジエチル、サリチル酸、サリチル酸メチル、サリチル酸エチレングリコール、ケイ皮酸、ケイ皮酸メチル、クレゾール、乳酸セチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、ゲラニオール、チモール、オイゲノール、テルピネオール、l−メントール、ボルネオール、d−リモネン、イソオイゲノール、イソボルネオール、ネロール、dl−カンフル、グリセリンモノラウレート、グリセリンモノオレエート、ソルビタンモノラウレート、ショ糖モノラウレート、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノラウレート、プロピレングリコールモノステアレート、プロピレングリコールモノオレエート、ポリソルベート20、ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールモノステアレート、HCO−60(硬化ヒマシ油)等が挙げられる。このような吸収促進剤の中でも、薬物の経皮吸収促進効果がより高くなる傾向にあるという観点から、脂肪酸エステルが好ましく、プロピレングリコール脂肪酸エステルがより好ましく、プロピレングリコールモノラウレート、プロピレングリコールモノステアレート、プロピレングリコールモノオレエートが特に好ましい。また、吸収促進剤としてプロピレングリコール脂肪酸エステルを用いると、いわゆるブリード(粘着剤層表面への液体成分の浸み出し)の発生がより確実に防止される傾向にある。
【0041】
吸収促進剤の配合量は、本発明の貼付剤の粘着剤層の全質量を基準として0.01〜20質量%であることが好ましく、0.1〜10質量%であることがより好ましく、0.5〜5質量%であることが特に好ましい。吸収促進剤の配合量が前記下限未満では、吸収促進剤の添加効果が得られにくくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、発赤、浮腫等の要因となる皮膚への刺激性が高くなる傾向にある。
【0042】
本発明の貼付剤においては、皮膚から発生した汗等の水性成分を吸収させるために、粘着剤層に親水性ポリマーを配合することもできる。親水性ポリマーとしては、特に限定されないが、好ましい例として、軽質無水ケイ酸、セルロース誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMCNa)、メチルセルロース(MC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロール(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC))、デンプン誘導体(プルラン)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、酢酸ビニル(VA)、カルボキシビニルポリマー(CVP)、エチル酢酸ビニル(EVA)、オイドラギット、ゼラチン、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ソーダ、ポリイソブチレン無水マレイン酸共重合体、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン、アラビアゴム、トラガント、カラヤゴム、ポリビニルメタクリレート等が挙げられ、中でも、軽質無水ケイ酸、セルロース誘導体(CMCNa、HPMC、HPC、MC)、オイドラギットが好ましい。
【0043】
親水性ポリマーの配合量は、本発明の貼付剤の粘着剤層の全質量を基準として0.1〜20質量%であることが好ましく、0.5〜10質量%であることがより好ましい。親水性ポリマーの配合量が前記下限未満では、親水性ポリマーの添加効果が得られにくくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、薬物の経皮吸収性が低下する傾向にある。
【0044】
本発明の貼付剤においては、所望により架橋剤、防腐剤、充填剤等のその他の添加成分を配合することもできる。架橋剤としては、特に限定されないが、好ましい例として、アミノ樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル等の熱硬化性樹脂、イソシアネート化合物、ブロックイソシアネート化合物、有機系架橋剤、金属又は金属化合物等の無機系架橋剤等が挙げられる。また、防腐剤としては、特に限定されないが、好ましい例として、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル等が挙げられる。充填剤としては、特に限定されないが、好ましい例として、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸塩(ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム等)、セルロース誘導体(ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等)が挙げられる。
【0045】
なお、本発明の貼付剤における前記粘着剤層の厚みは特に限定はされないが、一般的には30〜500μmであることが好ましく、40〜300μmであることがより好ましい。
【0046】
また、本発明の貼付剤においては、前記粘着剤層の支持体と反対側の面が剥離ライナーにより被覆されてもよい。このような剥離ライナーは、粘着剤層を被覆して保護するための剥離フィルムであり、一般的に貼付剤に用いられる剥離ライナーであればよく、特に限定はされない。このような剥離ライナーとしては、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート等)、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)等の樹脂フィルム、紙、セルロース誘導体、等の材質が例示され、粘着剤層に当接する面をシリコーン、テフロン(登録商標)等をコーティングして離型処理を施したものが好ましく、特にシリコーン処理したポリエチレンテレフタレートフィルムが好適に用いられる。
【0047】
本発明の貼付剤の製造方法としては、特に限定はなく、一般の貼付剤の製法(溶剤法、ホットメルト法等)により本発明の貼付剤を得ることができる。例えば、溶剤法により製造する場合には、前述の粘着基剤、フェンタニル及びその塩からなる群から選択される少なくとも一種、硫黄原子を分子内に有する抗酸化剤、及び必要に応じてその他の添加成分を有機溶媒中で混合し、得られた粘着剤溶液を剥離ライナーに塗布した後、溶媒を乾燥して除去し、形成された粘着剤層の上に支持体を積層し、得られた貼付剤シートを適宜裁断することよって本発明の貼付剤を得ることができる。また、配合される粘着基剤がホットメルト法により塗工可能であるものの場合には、高温で粘着基剤を溶解させた後、フェンタニル及びその塩からなる群から選択される少なくとも一種、硫黄原子を分子内に有する抗酸化剤、及び必要に応じてその他の添加成分を添加して混合し、得られた粘着剤溶液を剥離ライナーに塗布した後、冷却し、形成された粘着剤層の上に支持体を積層し、得られた貼付剤シートを適宜裁断することよって本発明の貼付剤を得ることができる。
【実施例】
【0048】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0049】
(実施例1〜10及び比較例1〜7)
下記の表1及び表2に示す粘着基剤(スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、ポリイソブチレン(PIB))、粘着付与剤(脂環族飽和炭化水素樹脂)、軟化剤(流動パラフィン)、クエン酸フェンタニル、その他の添加剤、吸収促進剤(プロピレングリコール脂肪酸エステル、セバシン酸ジエチル)、抗酸化剤(ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、2−メルカプトベンズイミダゾール(2-MBI)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ピロ亜硫酸ナトリウム、N−アセチルシステイン、チオグリセロール、チオグリコール酸ナトリウム、アスコルビン酸パルミチン酸エステル、アスコルビン酸、大豆レシチン、エデト酸ナトリウム)を用いて、下記の表1及び表2に示す組成となるように各成分を秤量し、溶媒(酢酸エチル)中で混合して粘着剤溶液を得た。次いで、得られた粘着剤溶液を、剥離ライナー(表面をシリコーンにより離型処理したPETフィルム)上に塗布し、溶媒を乾燥除去して粘着剤層を形成した(得られた粘着剤層の厚みは100g/m
2)。次に、粘着剤層の上に支持体(PETフィルム)を積層し、裁断して貼付剤を得た。その後、得られた貼付剤をアルミラミネートフィルムからなる包装袋に密封して包装した。
【0050】
なお、表1及び表2中の配合量は粘着剤層の全質量を基準とした配合量(質量%)であり、粘着基剤に関しては固形分換算した配合量である。また、表1及び表2中の空欄は0(ゼロ)であることを示す。
【0051】
【表1】
【0052】
【表2】
【0053】
得られた各貼付剤を用いて、下記の方法で「薬物経時安定性試験」を行った。また、実施例1〜4及び比較例2で得られた各貼付剤を用いて、下記の方法で「皮膚透過性試験」を行った。得られた結果を表1及び表2に示す。
【0054】
<薬物経時安定性試験>
前記包装袋に密封した製造直後の各貼付剤の包装袋を開封して貼付剤を取り出し、剥離ライナーを除いた後、粘着剤層を貼り合わせて二つに折りたたむ。これをあらかじめ正確に量りとった液体クロマトグラフィー用テトラヒドロフラン1mLに浸漬し、30分振り混ぜて抽出する。その後、メタノ−ルを加え正確に10mLとし、混和させる。得られた液を孔径0.5μm以下のメンブランフィルターでろ過し、試料溶液とした。次いで、高速液体クロマトグラフ法により、試料溶液中のフェンタニル及び各類縁物質(分解物)のピークエリアを求め、下記式:
類縁物質の量(質量%)=A
T0/(A
F+A
T)×100
(式中、A
T0は各類縁物質のピークエリア、A
Fはフェンタニルのピークエリア、A
Tは全ての類縁物質のピークエリアの総和をそれぞれ示す。)
にて各類縁物質の量(質量%)を算出した。結果を表1及び表2に示す。
【0055】
なお、RRTは、フェンタニルのリテンションタイムを1としたときの各類縁物質のリテンションタイムの相対比を示し、RRT0.4はフェンタニルの脱フェネチル体又はその類縁物質の量(質量%)、RRT1.4はフェンタニルN−オキシドの量(質量%)をそれぞれ示す。
【0056】
表1及び表2に示した結果から明らかなように、抗酸化剤として硫黄原子を分子内に有する抗酸化剤を粘着剤層に配合した本発明の貼付剤(実施例1〜10)においては、薬物の分解生成物の生成が顕著に抑制されており、薬物の経時安定性が非常に優れていることが確認された。
【0057】
<皮膚透過性試験>
前記包装袋に密封した各貼付剤を開封して取り出し、各貼付剤の皮膚透過性について、以下に説明するヘアレスマウス皮膚を用いるin vitroでの皮膚透過性試験により評価を行った。
【0058】
すなわち、6〜9週齢のヘアレスマウスの背部皮膚を摘出した後、真皮側の脂肪を注意深く取り除き、真皮側がレセプター層となるように、37℃の水をレセプター層の外周部に循環させたフロースルーセル(3cm
2)に装着した。この角質層側に各貼付剤を貼付し、レセプター層に生理食塩水を用い5ml/時間の速度で1時間毎に24時間までサンプリングを行った。その後、1時間毎の流量を正確に測定し、高速液体グロマトグラフ法により薬物濃度を測定し、1時間当たりの透過速度を下記式:
薬物透過速度[μg/cm
2/hr]=(薬物濃度[μg/ml]×流量[ml])/製剤の適用面積[cm
2]
により算出し、定常状態での薬物透過速度を求めた。結果を表1に示す。
【0059】
表1に示した結果から明らかなように、抗酸化剤として硫黄原子を分子内に有する抗酸化剤を粘着剤層に配合した本発明の貼付剤(実施例1〜4)においては、貼付剤の基本的な性能である薬物の経皮吸収性は低下しておらず、高度な水準が維持されていることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0060】
以上説明したように、本発明によれば、薬物としてフェンタニル及びその塩からなる群から選択される少なくとも一種を含有する貼付剤において、薬物の経皮吸収性等の基本的な性能を低下させることなく、薬物の経時的な分解をより確実に防止せしめることが可能となり、従来の貼付剤に比べて薬物の経時安定性が顕著に優れた臨床上有用な経皮投与型貼付剤を提供することが可能となる。
【0061】
そのため、本発明のフェンタニル及びその塩からなる群から選択される少なくとも一種を含有する経皮投与型貼付剤を用いれば、長時間にわたってフェンタニル及びその塩を安定して生体内に送達することができ、フェンタニル及びその塩の薬理効果を有効に、そして安定して持続的に利用することが可能となる。
【0062】
したがって、本発明のフェンタニル及びその塩からなる群から選択される少なくとも一種を含有する経皮投与型貼付剤は、麻酔性鎮痛剤の注射投与や経口投与が困難な患者等にとって、疼痛緩和のための非常に有力な手段となり得るものである。
【国際調査報告】