(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2017年6月8日
【発行日】2018年9月20日
(54)【発明の名称】信号処理装置および信号処理方法
(51)【国際特許分類】
H04R 3/00 20060101AFI20180824BHJP
【FI】
H04R3/00 310
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】15
【出願番号】特願2017-553723(P2017-553723)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2016年11月2日
(31)【優先権主張番号】特願2015-236148(P2015-236148)
(32)【優先日】2015年12月2日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA
(71)【出願人】
【識別番号】514315159
【氏名又は名称】株式会社ソシオネクスト
(74)【代理人】
【識別番号】100189430
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100190805
【弁理士】
【氏名又は名称】傍島 正朗
(72)【発明者】
【氏名】宮阪 修二
【テーマコード(参考)】
5D220
【Fターム(参考)】
5D220AA01
5D220AB01
(57)【要約】
信号処理装置(1)は、入力信号から筐体(15)の共振の原因となる周波数成分を抽出する共振帯域パスフィルタ(10)と、共振帯域パスフィルタ(10)の出力信号に対するハーモニック信号を生成するハーモニック生成手段(21)と、ハーモニック生成手段(21)の出力信号と入力信号の少なくとも一部の周波数成分とを加算する加算手段(22)と、加算手段(22)の出力信号から筐体(15)の共振の原因となる周波数成分を除去する共振帯域カットフィルタ(13)とを備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スピーカと当該スピーカが取り付けられた筐体とを備えた信号処理装置であって、
入力信号から前記筐体の共振の原因となる周波数成分を抽出する共振帯域パスフィルタと、
前記共振帯域パスフィルタの出力信号に対するハーモニック信号を生成するハーモニック生成手段と、
前記ハーモニック生成手段の出力信号と前記入力信号の少なくとも一部の周波数成分とを加算する加算手段と、
前記加算手段の出力信号から、前記筐体の共振の原因となる周波数成分を除去する共振帯域カットフィルタとを備える
信号処理装置。
【請求項2】
前記筐体の特徴に関する情報を設定する設定手段と、
前記設定手段に設定された情報に応じて前記ハーモニック生成手段からの出力信号を調整するハーモニック調整手段とを備え、
前記設定手段には、前記情報として前記筐体の共振の原因となる周波数が設定されており、
前記ハーモニック調整手段は、
前記設定手段に設定された前記周波数が予め定められた値より低い場合、前記ハーモニック生成手段が生成するN次のハーモニックを含む信号を前記加算手段に送出するように調整し、
前記設定手段に設定された前記周波数が前記予め定められた値以上である場合、前記ハーモニック生成手段が生成するN次より少ないM次のハーモニックを含む信号を前記加算手段に送出するよう調整する
請求項1記載の信号処理装置。
【請求項3】
前記筐体の特徴に関する情報を設定する設定手段と、
前記設定手段に設定された情報に応じて前記ハーモニック生成手段からの出力信号を調整するハーモニック調整手段と、
前記設定手段に設定された情報に応じて前記共振帯域カットフィルタのゲインを調整するフィルタ調整手段とを備え、
前記設定手段には、前記情報として前記筐体の共振の感度が設定されており、
前記ハーモニック調整手段は、
前記設定手段に設定された前記筐体の共振の感度が予め定められた値より大きい場合、前記ハーモニック生成手段の出力信号をA倍に増幅して前記加算手段に送出し、
前記設定手段に設定された前記筐体の共振の感度が前記予め定められた値以下の場合は、前記ハーモニック生成手段の出力信号をAより小さいB倍に増幅して前記加算手段に送出し、
前記フィルタ調整手段は、
前記感度が前記予め定められた値より大きい場合、前記共振帯域カットフィルタのゲインが−Gとなるように設定し、
前記筐体の共振の感度が前記予め定められた値以下の場合、前記共振帯域カットフィルタのゲインが−Gより大きい−Hとなるように設定する
請求項1記載の信号処理装置。
【請求項4】
スピーカと当該スピーカが取り付けられた筐体とを備えた信号処理装置における信号処理方法であって、
共振帯域パスフィルタにより、入力信号から前記筐体の共振の原因となる周波数成分を抽出するステップと、
ハーモニック生成手段により、前記共振帯域パスフィルタの出力信号に対するハーモニック信号を生成するステップと、
加算手段により、前記ハーモニック生成手段の出力信号と前記入力信号の少なくとも一部の周波数成分とを加算するステップと、
共振帯域カットフィルタにより、前記加算手段の出力信号から前記筐体の共振の原因となる周波数成分を除去するステップとを含む
信号処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号処理装置および信号処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、収録技術や放送技術の進歩によって、放送コンテンツの品質が向上し、とりわけ音声信号にリッチな重低音成分が含まれるようになっている。一方、その受信機であるテレビは、薄型化、フラット化など、デザイン性重視の筐体と、コストダウンの要請から、当該重低音成分による筐体の共振(所謂ビビリ)が発生しやすくなっている。
【0003】
このような課題を解消するために、入力の音声信号から筐体のビビリの要因になる周波数成分を除去する技術が開発されている(例えば、特許文献1)。
【0004】
特許文献1にかかる技術では、信号処理装置の筐体のビビリの原因となる周波数成分が大きい場合は、バンドカットフィルタでの減衰の深さを大きくし、筐体のビビリの原因となる周波数成分が小さい場合は、バンドカットフィルタでの減衰の深さを小さくしている。これによって、入力の音声信号が引き起こす筐体の共振を低減し、入力の音声信号の音色を損なわないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−78497号公報
【特許文献2】特開2004−101797号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術は、入力の音声信号において、筐体の共振を引き起こす周波数成分が急峻に変動した場合、筐体の共振を引き起こす周波数成分の検出またはバンドカットフィルタの特性の修正等が間に合わず、ビビリの現象が発生したり、バンドカットフィルタの特性の修正を急峻に行うことによる音色の違和感が生じたりするという課題がある。
【0007】
本発明は、このような従来の問題点に鑑みてなされたものであって、入力された音声信号が引き起こす筐体の共振を低減し、かつ、入力された音声信号の音色が損なわれるのを抑制することができる信号処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明の一態様にかかる信号処理装置は、スピーカと当該スピーカが取り付けられた筐体とを備えた信号処理装置であって、入力信号から前記筐体の共振の原因となる周波数成分を抽出する共振帯域パスフィルタと、前記共振帯域パスフィルタの出力信号に対するハーモニック信号を生成するハーモニック生成手段と、前記ハーモニック生成手段の出力信号と前記入力信号の少なくとも一部の周波数成分とを加算する加算手段と、前記加算手段の出力信号から、前記筐体の共振の原因となる周波数成分を除去する共振帯域カットフィルタとを備える。
【0009】
また、上記の課題を解決するため、本発明の一態様にかかる信号処理方法は、スピーカと当該スピーカが取り付けられた筐体とを備えた信号処理装置における信号処理方法であって、共振帯域パスフィルタにより、入力信号から前記筐体の共振の原因となる周波数成分を抽出するステップと、ハーモニック生成手段により、前記共振帯域パスフィルタの出力信号に対するハーモニック信号を生成するステップと、加算手段により、前記ハーモニック生成手段の出力信号と前記入力信号の少なくとも一部の周波数成分とを加算するステップと、共振帯域カットフィルタにより、前記加算手段の出力信号から前記筐体の共振の原因となる周波数成分を除去するステップとを含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、入力された音声信号が引き起こす筐体の共振を低減し、かつ、入力された音声信号の音色が損なわれるのを抑制することができる信号処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本実施の形態1における信号処理装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、本実施の形態1におけるデジタルテレビの外観図である。
【
図3】
図3は、種々の共振周波数に対応するための信号処理装置の構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、種々の共振感度に対応するための信号処理装置の構成を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、本実施の形態1におけるデジタルテレビのブロック図である。
【
図6】
図6は、本実施の形態1における信号処理装置の動作を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、従来技術にかかる信号処理装置の構成を示すブロック図である。
【
図8】
図8は、ミッシングファンダメンタル現象を利用した信号処理装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(本発明の前提となる知識)
まず、課題および本実施の形態にかかる信号処理装置の前提となる知識を
図7および
図8を用いて説明する。
図7は、従来技術にかかる信号処理装置100aの構成を示すブロック図である。
図8は、ミッシングファンダメンタル現象を利用した信号処理装置100bの構成を示すブロック図である。
【0013】
図7に示す信号処理装置100aは、入力信号から筐体101のビビリの原因となる周波数成分を抽出するバンドパスフィルタ140と、入力信号から筐体101の共振の原因となる周波数成分を減衰させる可変バンドカットフィルタ143と、バンドパスフィルタ140の出力信号の振幅レベルを検出する検出手段141と、検出手段141の検出値に応じて可変バンドカットフィルタ143のゲイン(減衰の深さ)を決定する制御手段142とを備えている。
【0014】
従来の技術では、このような構成によって、筐体101のビビリの原因となる周波数成分が大きい場合は、可変バンドカットフィルタ143での減衰の深さを大きくし、筐体101のビビリの原因となる周波数成分が小さい場合は、可変バンドカットフィルタ143での減衰の深さを小さくする。そうすることによって、入力の音声信号が引き起こす筐体101の共振を低減し、しかも入力の音声信号の音色をできるだけ損なわないようにしている。
【0015】
また、
図8に示した技術は、ミッシングファンダメンタル現象という聴覚心理現象を利用したものである。ミッシングファンダメンタル現象は、基音(例えば50Hzの音)が欠落しても、そのハーモニック(倍音成分)が存在している場合(基音が50Hzの場合には、100Hz、150Hz、200Hz、250Hz、・・・という倍音が存在している場合)、欠落している基音が聴感上聞える、という現象である。なお、本願では、2倍音を1次のハーモニック、3倍音を2次のハーモニック、(N+1)倍音をN次のハーモニックということとする。
【0016】
図8に示した信号処理装置100bは、入力信号から基音の周波数成分を抽出するバンドパスフィルタ150と、バンドパスフィルタ150の出力信号に対するハーモニック信号を生成するハーモニック生成手段151と、ハーモニック生成手段151の出力信号と入力信号の少なくとも一部の周波数成分とを加算する加算手段152と、加算手段152の出力信号を出音するスピーカ153とを備えている。このような構成によって、
図8に示した信号処理装置100bでは、基音となる低い周波数成分が入力信号に加算されスピーカ153によって出音されるので、仮にスピーカ153が基音となる周波数成分を再生できないスピーカであったとしても、リスナーには基音成分が聞こえることになる。したがって、
図8に示した信号処理装置100bでは、安価なスピーカでも良好な音質を維持することができる(特許文献2参照)。本発明にかかる信号処理装置は、この知識を前提として構成されている。
【0017】
以下、上述の課題を解決し、入力された音声信号が引き起こす筐体の共振を低減し、かつ、入力された音声信号の音色が損なわれるのを抑制することができる信号処理装置について、以下の実施の形態を例として説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも一具体例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置および接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0018】
(実施の形態1)
実施の形態1における信号処理装置について、図面を参照しながら説明する。
【0019】
図1は、本実施の形態における信号処理装置1の構成を示す図である。
図2は、本実施の形態1におけるデジタルテレビの外観図である。
【0020】
本実施の形態にかかる信号処理装置1は、スピーカ14と当該スピーカ14が取り付けられた筐体15とを備えた信号処理装置である。信号処理装置1は、入力の音声信号が引き起こす筐体15の共振を低減し、かつ、入力の音声信号の音色が損なわれるのを抑制することができる。
【0021】
図1において、信号処理装置1は、入力信号から筐体15の共振の原因となる周波数成分を抽出する共振帯域パスフィルタ10と、共振帯域パスフィルタ10の出力信号に対するハーモニック信号を生成するハーモニック生成手段11と、ハーモニック生成手段11の出力信号と入力信号の少なくとも一部の周波数成分とを加算する加算手段12と、加算手段12の出力信号から共振の原因となる周波数成分を除去する共振帯域カットフィルタ13と、筐体15に取り付けられたスピーカ14とを備えている。
【0022】
図1に示す信号処理装置1は、例えば
図2に外観を示すデジタルテレビ16の筐体15の内部に設置されている。
【0023】
図2において、デジタルテレビ16は、スピーカ14、ディスプレイ17等をその筐体15に備えている。
図2におけるスピーカ14は、
図1におけるスピーカ14と同一である。また、
図2における筐体15は、
図1における筐体15と同一である。
【0024】
以上のように構成された信号処理装置1の動作について、以下説明する。
【0025】
まず、共振帯域パスフィルタ10で、入力信号から筐体15の共振の原因となる周波数成分を抽出する。例えば、50Hz近傍の周波数成分が筐体15の共振の原因となる周波数である場合、共振帯域パスフィルタ10は、50Hzを含む周波数成分を取り出すバンドパスフィルタである。なお、共振帯域パスフィルタ10は、50Hz含むローパスフィルタであってもよい。
【0026】
次に、ハーモニック生成手段11で、共振帯域パスフィルタ10の出力信号に対するハーモニック信号を生成する。ハーモニック信号を生成する手段はどのようなものであってもよいが、例えば、前述の特許文献2に示された手段であってもよい。
【0027】
次に、加算手段12で、ハーモニック生成手段11の出力信号と入力信号とを加算する。ここで、ハーモニック生成手段11の出力信号と加算される入力信号は、少なくとも一部の周波数成分を含む入力信号であってもよい。例えば、入力信号は、音質を調整するために周波数成分の加工が行われていてもよい。
【0028】
次に、共振帯域カットフィルタ13で、加算手段12の出力信号から共振の原因となる周波数成分を除去する。本実施の形態にかかる信号処理装置1では、50Hz近傍の周波数成分が筐体15の共振の原因となる周波数であるとしているので、共振帯域カットフィルタ13は、50Hzを含む周波数帯域を減衰させるものである。なお、ハーモニック生成手段11によってハーモニック成分が生成されていることで音色は維持できているので、共振帯域カットフィルタ13は、50Hzを含む範囲の周波数成分を減衰させるものであってもよい。そうすることで筐体15のビビリを確実に抑え込むことができる。
【0029】
最後に、スピーカ14で、共振帯域カットフィルタ13の出力信号を出音する。当該スピーカは筐体15に取り付けられているが、筐体15の共振をもたらす周波数成分は除去されている。
【0030】
以上のように、本実施の形態にかかる信号処理装置1によれば、入力信号から筐体15の共振の原因となる周波数成分を抽出する共振帯域パスフィルタ10と、共振帯域パスフィルタ10の出力信号に対するハーモニック信号を生成するハーモニック生成手段11と、ハーモニック生成手段11の出力信号と入力信号の少なくとも一部の周波数成分とを加算する加算手段12と、加算手段12の出力信号から共振の原因となる周波数成分を除去する共振帯域カットフィルタ13とを備える。これにより、筐体15の共振を抑えることができる。しかも、筐体15の共振を抑えるために減衰させた周波数成分を、ミッシングファンダメンタルの聴覚心理現象によって聴感的に補うことができる。
【0031】
なお、本実施の形態にかかる信号処理装置1では、筐体15の共振を引き起こす周波数成分を50Hzとしているが、この値は機器ごとに異なる。例えば、筐体15の共振を引き起こす周波数成分が100Hzである場合、3倍音(2次)のハーモニックがすでに300Hzであるので、あまり高次のハーモニックを生成するとむしろ耳障りな異音となって出音されてしまう。一方、筐体15の共振を引き起こす周波数成分が50Hzの場合は、5倍音まで生成しても5倍音のハーモニックは250Hzであるので、耳障りな異音となる可能性は少ない。このように、筐体15の共振を引き起こす周波数成分の高低によって何次のハーモニックまで生成するべきか、が異なってくる。
【0032】
以下に、筐体15の共振を引き起こす周波数成分の高低によって何次のハーモニックまで生成するべきかを調整するための、信号処理装置2の構成について説明する。
図3は、種々の共振周波数に対応するための信号処理装置の構成を示すブロック図である。
【0033】
図3に示すように、信号処理装置2は、共振帯域パスフィルタ10と、ハーモニック生成手段21と、加算手段22と、共振帯域カットフィルタ23と、スピーカ24と、設定手段25と、ハーモニック調整手段26とを備えている。
【0034】
信号処理装置2が
図1に示した信号処理装置1と異なる点は、信号処理装置2が、筐体15の特徴に関する情報を設定する設定手段25と、設定手段25に設定された情報に応じてハーモニック生成手段21からの出力信号を調整するハーモニック調整手段26とを備えている点である。設定手段25は、筐体15の特徴に関する情報として、筐体15の共振の原因となる周波数成分を示す情報(周波数F)を設定する。
【0035】
この構成によって、設定手段25に筐体15の共振の原因となる周波数Fが設定された場合、ハーモニック調整手段26は、周波数Fが、予め定められた値(P)より低い場合、ハーモニック生成手段21が生成するN次のハーモニックを含む信号を加算手段22に送出するように調整する。また、周波数Fが予め定められた値(P)以上の場合、ハーモニック生成手段21が生成するN次より少ないM次のハーモニックを含む信号を加算手段22に送出するよう調整する。
【0036】
ここで、上述したF、P、Nの関係は、以下のように決定される。ハーモニック成分は、あまり高い周波数成分にまで達すると耳障りな音になるという傾向にある。例えば、400Hzより上の周波数帯域にまでハーモニック成分が存在してしまうとハーモニック成分が耳障りな音になるとする。また、あまり高次のハーモニック成分が存在すると、これも耳障りな音になる。例えば、3次のハーモニック成分(4倍音)まで存在すればミッシングファンダメンタル現象により十分に基音が知覚されるので、それ以上の高次のハーモニック成分は不要であるとする。この場合、Nは3であり、Pは100となる。すなわち、周波数Fが100Hz以上の場合、3次のハーモニック成分は400Hz以上となり、耳障りな音が近くされる周波数となる。逆に、周波数Fが100Hzより小さい場合は、3次のハーモニック成分が400Hzより小さくなるので、3次のハーモニック成分まで生成しても耳障りな音とはならない。したがって、周波数FがPより小さい場合はN次のハーモニック成分を生成し、周波数FがP以上の場合はNより小さい次数(M次)のハーモニック成分を生成する。なお、上述したF、P、N、Mの値は、一例である。
【0037】
そうすることによって、ハーモニック成分が最終的な音色に悪い影響を与えないように制御することができる。なお、上述した次数(M次)は0であってもよい。
【0038】
また、筐体15の共振を引き起こす感度(共振の感度)も機器ごとに異なる。ここで、感度とは、どの程度敏感に共振が発生するかどうか、という意味であり、予め定められた値より大きい場合に「感度が高い(簡単に筐体15にビビリが生じる状態)」、予め定められた値以下の場合に「感度が低い」ということとする。
【0039】
以下に、筐体15の共振の感度を調整するための、信号処理装置3の構成について説明する。
図4は、種々の共振の感度に対応するための信号処理装置の構成を示すブロック図である。
【0040】
図4に示すように、信号処理装置3は、共振帯域パスフィルタ10と、ハーモニック生成手段31と、加算手段32と、共振帯域カットフィルタ33と、スピーカ34と、設定手段35と、ハーモニック調整手段36と、フィルタ調整手段37とを備えている。
【0041】
信号処理装置3が
図1に示した信号処理装置1と異なる点は、信号処理装置3では、筐体15の特徴に関する情報を設定する設定手段35と、設定手段35に設定された情報に応じてハーモニック生成手段31からの出力信号を調整するハーモニック調整手段36と、設定手段35に設定された情報に応じて共振帯域カットフィルタ33のゲイン(カット(減衰)の深さ)を調整するフィルタ調整手段37とを備えている点である。設定手段35は、筐体15の特徴に関する情報として、筐体15の共振の感度を示す情報を設定する。
【0042】
このような構成によって、ハーモニック調整手段36は、設定手段35に設定された感度を示す情報(S)が、予め定められた値(例えば、以下に示すXの逆数)より大きい場合(簡単に筐体15にビビリが生じる場合)、ハーモニック生成手段31の出力信号をA倍に増幅して加算手段32に送出する。また、設定手段35に設定された感度を示す情報(S)が、予め定められた値以下の場合は、ハーモニック生成手段31の出力信号をAより小さいB倍に増幅して加算手段32に送出する。なお、AおよびBは、A>Bを満たす値である。このとき、AおよびBを1より大きく設定してもよい。
【0043】
また、設定手段35に設定された感度を示す情報(S)が予め定められた値より大きい場合(簡単に筐体15にビビリが生じる場合)、共振帯域カットフィルタ33のゲインが−Gとなるように(カットが深くなるように)設定する。また、設定手段35に設定された感度を示す情報(S)が予め定められた値以下の場合、共振帯域カットフィルタ33のゲインが−Gより大きい−Hとなるように(カットが浅くなるように)設定する。そうすることで、筐体15が簡単にビビリを生じるような場合でも確実にビビリを抑制でき、ビビリによって生じた周波数帯域のロスも、ハーモニックを強くすることによって補うことができる。また、筐体15がビビリを生じ難い場合は、ハーモニックを弱くすることによってより原音に近い音色を出音できる。
【0044】
ここで、上述したSは、以下のようなものである。振幅が徐々に大きくなる信号を出音し筐体がビビリを生じ始めるときの振幅値をXとした場合、Xが大きい場合には当該筐体はビビリを生じ難く、Xが小さい場合には当該筐体はビビリを生じ易いということになる。Sは大きい程ビビリを生じ易いという定義なので、SはXの逆数など、Xの増加に従って減少する指数である。また、上述した−G、−Hは、フィルタのゲインをデシベル換算した値である。例えば、−Gは−18dBなどであり、−Hは−6dBなどである。なお、上述したH、Gの値は一例である。
【0045】
上述した信号処理装置は、それぞれの手段、フィルタのすべて、もしくは一部をハードウェアで実現しても構わないし、ソフトウェアで実現してもよい。
【0046】
図5は、本実施の形態におけるデジタルテレビのブロック図であり、上述した信号処理装置をソフトウェアで実現するデジタルテレビ16の構成を示している。
【0047】
図5において、デジタルテレビ16は、スピーカ14と、ディスプレイ17と、システムLSI(Large Scale Integration:大規模集積回路)71と、アンテナ72と、キーボード73とを備えている。システムLSI71は、チューナ711と、AVデコーダ712と、メモリ713と、CPU714と、インタフェース(I/F)715と、オーディオ出力手段716と、ビデオ出力手段717を備えている。
【0048】
なお、デジタルテレビ16は、上記のうち、スピーカ14と、ディスプレイ17と、システムLSI71のみを備えるものであってもよい。その場合、デジタルテレビ16はケーブル等によりアンテナ72またはキーボード73と接続するように構成することができる。
【0049】
アンテナ72は、デジタルテレビ16の放送信号を受信してシステムLSI71に送る。システムLSI71は、アンテナ72から送られた放送信号を復調してオーディオ信号およびビデオ信号を出力する。スピーカ14は、システムLSI71から送られたオーディオ信号を音にして出力する。ディスプレイ17は、システムLSI71から送られたビデオ信号を映像にして出力する。
【0050】
システムLSI71の内部では、チューナ711で放送信号が所望のチャンネルのデジタル信号に変換されてAVデコーダ712に送られる。AVデコーダ712では、チューナ711から送られたデジタル信号がデコードされてオーディオ信号とビデオ信号とが生成される。メモリ713には、CPU714で実行されたときに上述した信号処理装置の機能を実現するプログラムが格納されている。CPU714が当該プログラムをメモリ713から読み出して実行すると、AVデコーダ712で生成されたオーディオ信号が信号処理されてオーディオ出力手段716に送られる。オーディオ出力手段716は、オーディオ信号を出力する。AVデコーダ712で生成されたビデオ信号は、ビデオ出力手段717に送られる。ビデオ出力手段717は、ビデオ信号を出力する。
【0051】
システムLSI71は、さらに、インタフェース715を備え、外部からの入力手段、たとえば、キーボード73等を接続することができる。インタフェース715は、デジタルテレビ16の筐体15の共振を引き起こす周波数成分や筐体15の共振の感度を示す情報等を、キーボード73等を用いてシステムLSI71内部に設定するために用いられる。
【0052】
次に、信号処理装置1における信号処理方法について説明する。
図6は、本実施の形態における信号処理装置1の動作を示すフローチャートである。
【0053】
図6に示すように、本実施の形態における信号処理装置1では、まず、信号処理装置1に、オーディオ信号が入力される(ステップS81)。次に、共振帯域パスフィルタ10によって、ステップS81で入力されたオーディオ信号に含まれる筐体15の共振周波数成分が抽出される(ステップS82)。次に、ハーモニック生成手段11によってステップS82で抽出された筐体15の共振周波数成分に対するハーモニック信号が生成される(ステップS83)。次に、加算手段12によって、ステップS83で生成されたハーモニック信号とステップS81で信号処理装置1に入力されたオーディオ信号とが加算される(ステップS84)。次に、共振帯域カットフィルタ13によって、ステップS84で加算された信号から共振の原因となる周波数成分が除去される(ステップS85)。以上のような信号処理方法により、信号処理装置1において、筐体15の共振を抑え、かつ、筐体15の共振を抑えるために減衰させた周波数成分を、ミッシングファンダメンタルの聴覚心理現象によって聴感的に補うことができる。
【0054】
なお、信号処理装置2および信号処理装置3についても、信号処理装置1と同様の動作を行うため、ここでは説明を省略する。
【0055】
このように、本実施の形態にかかる信号処理装置によると、入力の音声信号が引き起こす筐体の共振を低減し、かつ、入力の音声信号の音色が損なわれるのを抑制することができる。
【0056】
以上、一つまたは複数の態様に係る信号処理装置について、実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、この実施の形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものや、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、一つまたは複数の態様の範囲内に含まれてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明にかかる信号処理装置は、テレビ、カーオーディオ、スマートホン、タブレットなどのポータブル機器に応用できる。
【符号の説明】
【0058】
1、2、3、100a、100b 信号処理装置
10 共振帯域パスフィルタ
11、21、31、151 ハーモニック生成手段
12、22、32、152 加算手段
13、23、33 共振帯域カットフィルタ
14、24、34、144、153 スピーカ
15、101 筐体
16 デジタルテレビ
17 ディスプレイ
25、35 設定手段
26、36 ハーモニック調整手段
37 フィルタ調整手段
71 システムLSI
72 アンテナ
73 キーボード
140、150 バンドパスフィルタ
141 検出手段
142 制御手段
143 可変バンドカットフィルタ
711 チューナ
712 AVデコーダ
713 メモリ
714 CPU
715 インタフェース
716 オーディオ出力手段
717 ビデオ出力手段
【国際調査報告】