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再表2017-94817周波数混合器および中間周波数信号生成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2017年6月8日
【発行日】2018年9月6日
(54)【発明の名称】周波数混合器および中間周波数信号生成方法
(51)【国際特許分類】
   H03D 7/00 20060101AFI20180810BHJP
   H03D 7/14 20060101ALI20180810BHJP
【FI】
   H03D7/00 F
   H03D7/14 D
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】16
【出願番号】特願2017-554167(P2017-554167)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2016年12月1日
(31)【優先権主張番号】特願2015-237723(P2015-237723)
(32)【優先日】2015年12月4日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA
(71)【出願人】
【識別番号】301072650
【氏名又は名称】NECスペーステクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【弁理士】
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100124154
【弁理士】
【氏名又は名称】下坂 直樹
(72)【発明者】
【氏名】蛭田 昌紀
(57)【要約】
軽量かつ小形で出力信号の損失と偶数次の高調波の抑制を図る周波数混合器を提供するために、周波数混合器は、RF信号を受け付ける受信信号入力端と、LO信号を受け付ける局部発振信号入力端と、受信信号入力端に接続された第1の分配器と、局部発振信号入力端に接続された第2の分配器と、第1の分配器の一方の出力端と第2の分配器の一方の出力端と接続される第1の混合器と、第1の分配器の他方の出力端と90度の遅延経路を介して接続されると共に第2の分配器の他方の出力端と90度の遅延経路を介して接続される第2の混合器と、第1の混合器及び第2の混合器に、第1の分配器で分岐される各々のRF信号の信号経路長が揃った長さで接続される結合器と、結合器と接続する出力端と、を用いて構成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
RF(Radio Frequency)信号を受け付ける受信信号入力端と、
LO(Local Oscillator)信号を受け付ける局部発振信号入力端と、
前記受信信号入力端に接続された第1の分配器と、
前記局部発振信号入力端に接続された第2の分配器と、
前記第1の分配器の一方の出力端と前記第2の分配器の一方の出力端と接続される第1の混合器と、
前記第1の分配器の他方の出力端と90度の遅延経路を介して接続されると共に前記第2の分配器の他方の出力端と90度の遅延経路を介して接続される第2の混合器と、
前記第1の混合器及び前記第2の混合器に、前記第1の分配器で分岐される各々のRF信号の信号経路長が揃った長さで接続される結合器と、
前記結合器と接続する出力端と、
を具備する周波数混合器。
【請求項2】
前記第1の混合器と前記第2の混合器を各々含む信号経路は、変換損失が揃った値を有する請求項1記載の周波数混合器。
【請求項3】
前記第1の混合器及び第2の混合器でダブルバランスミキサを形成する請求項1又は2に記載の周波数混合器。
【請求項4】
前記受信信号入力端から前記出力端までの信号経路を受動回路で形成する請求項1ないし3の何れか一項に記載の周波数混合器。
【請求項5】
それぞれの信号経路をマイクロストリップラインで構成する請求項1ないし4の何れか一項に記載の周波数混合器。
【請求項6】
前記第1の分配器、前記第2の分配器、及び前記結合器をそれぞれウィルキンソンディバイダ、それぞれの90度の遅延経路を各々の波長に合わせたλ/4のディレイラインで構成する請求項1ないし5の何れか一項に記載の周波数混合器。
【請求項7】
前記第1の分配器及び前記第2の分配器、それぞれの90度の遅延経路を一括してハイブリットを用いて形成する請求項1ないし5の何れか一項に記載の周波数混合器。
【請求項8】
前記第1の分配器から前記結合器までの信号経路内に、帯域フィルタを具備しない請求項1ないし7の何れか一項に記載の周波数混合器。
【請求項9】
前記請求項1ないし7の何れか一項に記載の周波数変換器を含み、Cバンド、Kuバンド、Kaバンド、の何れかでLO信号の偶数次の高調波が通信帯域内に入り込む関係にあるアップ/ダウンリンクを採用する衛星搭載用周波数変換装置。
【請求項10】
請求項9に記載の衛星搭載用周波数変換装置を搭載した人工衛星。
【請求項11】
受信信号入力端及び局部発振信号入力端からRF信号及びLO信号を受け付け、
前記RF信号及びLO信号をそれぞれ2つに分波し、
分波された前記RF信号及びLO信号のそれぞれの一方の信号波相互を第1の混合波信号として混合し、
分波された前記RF信号及びLO信号のそれぞれの他方の信号波を90度遅延させ、遅延させた信号波相互を第2の混合波信号として混合し、
前記第1の混合波信号と第2の混合波信号をIF(Intermediate Frequency)信号に同位相で合波し、生成信号波を中間周波数出力端から出力する、
周波数混合器による中間周波数信号生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波信号(RF(Radio Frequency)信号)と局部発振信号(LO(Local Oscillator)信号)から中間周波数信号(IF(Intermediate Frequency)信号)を生成する周波数混合器に関する。
【背景技術】
【0002】
周波数混合器は、多くの通信機器で用いられている。周波数混合器は、入力信号として高周波信号と局部発振信号を受け付け、その両信号波を合波して中間周波数信号として合成信号を出力する。また、周波数混合器には、所望の帯域フィルタが設けられることも多い。
【0003】
図4は、簡易的に示したある一つの周波数混合器である。この周波数混合器は、帯域フィルタを具備している。この帯域フィルタを有することで、この周波数混合器は、出力する合成信号に含まれる不要な帯域成分を除去した中間周波数信号を出力できる。
【0004】
また、他の周波数混合器の構成例は、特許文献1や特許文献2、特許文献3に記載されている。
【0005】
特許文献1には、周波数混合器の構成要素となる混合器(ミキサ)と分配器と移相器が記載されている。特許文献1に記載された周波数混合器は、特徴ある帯域フィルタ(具体的にはLPF:Low-Pass Filter)を内在することで、イメージ信号を除去している。
【0006】
また、特許文献2には、ベースバンド信号の直交成分(I成分,Q成分)各々をRF信号に混合する周波数変換装置が記載されている。この周波数変換装置は、イメージ信号を抑圧するための仕組みを有する特徴あるミキサが具備されている。また、この周波数変換装置は、ミキサの前段と後段側にそれぞれ帯域フィルタを具備している。
【0007】
特許文献3には、4次高調波ミキサを用いて、イメージ信号と共に幾つかの高調波成分を抑圧する周波数混合器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−043853号公報
【特許文献2】特開2004−349789号公報
【特許文献3】国際公開第2009/044451号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記図4に例示した周波数混合器は、出力信号に含まれてしまう高調波成分を帯域フィルタで除去している。
【0010】
多くの周波数変換装置や周波数混合器の回路構成では、周波数混合器の後に狭帯域な帯域フィルタを組み込み、局部発振信号の高調波を抑圧する構成を具備している。
【0011】
この帯域フィルタを具備する周波数変換装置や周波数混合器の構成では、局部発振信号の高調波成分を抑圧する際に、その帯域フィルタの影響が出力波(IF信号)に現れる。
多くの場合、この影響が顕著な周波数帯域(周波数範囲)は、システムの設計時にその周波数帯域を避けていた。
【0012】
例えば、人工衛星や宇宙機などの通信システムに組み込む周波数変換装置では、アップリンク信号とダウンリンク信号の周波数の関係性から、帯域フィルタの影響が強く及ぶ周波数帯域を通信帯域から除外している。これは、現実の人工衛星や宇宙機などの通信システムで用いるアップリンク/ダウンリンク周波数が衛星などの通信周波数帯域内に周波数変換装置の局部発振信号の高調波成分が落ち込む組合せが多いためである。
【0013】
また、この帯域フィルタには、多くの場合、急峻な帯域阻止特性が求められ、Q値の高い帯域フィルタが必要となる。その結果、フィルタ回路の規模が大きくなってしまう問題を含んでいる。換言すれば、フィルタ回路の規模が機器の小型化や低廉化の一つの制約になっている。
【0014】
発明者は、今後の様々な分野での周波数変換装置を想定し、より小型・軽量な機能性の高い周波数混合器を検討する。
【0015】
この検討過程で、現状の周波数変換器内で帯域フィルタを用いてフィルタしていた阻止帯域(既存の手法では利用帯域から除外していた帯域)を使用可能にする小規模な周波数混合器の回路構成の検討を試みる。特許文献1ないし3には、発明者が所望する機能を満足する回路構成は記載されていなかった。
【0016】
本発明は、上記背景のもとで、出力信号の損失と偶数次の高調波の抑制を図る周波数混合器の提供を目的とする。
【0017】
更に別の目的は、軽量かつ小形の上記周波数混合器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の一実施形態に係る周波数混合器は、RF信号を受け付ける受信信号入力端と、LO信号を受け付ける局部発振信号入力端と、前記受信信号入力端に接続された第1の分配器と、前記局部発振信号入力端に接続された第2の分配器と、前記第1の分配器の一方の出力端と前記第2の分配器の一方の出力端と接続される第1の混合器と、前記第1の分配器の他方の出力端と90度の遅延経路を介して接続されると共に前記第2の分配器の他方の出力端と90度の遅延経路を介して接続される第2の混合器と、前記第1の混合器及び前記第2の混合器に、前記第1の分配器で分岐される各々のRF信号の信号経路長が揃った長さで接続される結合器と、前記結合器と接続する出力端と、を具備する。
【0019】
本発明の一実施形態に係る周波数混合器による中間周波数信号生成方法は、受信信号入力端及び局部発振信号入力端からRF信号及びLO信号を受け付け、前記RF信号及びLO信号をそれぞれ2つに分波し、分波された前記RF信号及びLO信号のそれぞれの一方の信号波相互を第1の混合波信号として混合し、分波された前記RF信号及びLO信号のそれぞれの他方の信号波を90度遅延させ、遅延させた信号波相互を第2の混合波信号として混合し、前記第1の混合波信号と第2の混合波信号をIF信号に同位相で合波し、生成信号波を中間周波数出力端から出力する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、出力信号の損失と偶数次の高調波の抑制を図る周波数混合器を提供できる。
【0021】
また、本発明によれば、同等の機能を具備する周波数混合器よりも軽量で小形の上記周波数混合器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態にかかる周波数混合器の回路構成を示すブロック図である。
図2】一構成例にかかる周波数混合器の内部構成を示すブロック図である。
図3】別の一構成例にかかる周波数混合器の内部構成を示すブロック図である。
図4】周波数混合器の例を示したブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。
【0024】
図1は、一実施形態にかかる周波数混合器1の回路構成を示すブロック図である。
【0025】
図1に示すように、周波数混合器1は、受信信号(RF信号)を受け付ける入力端11と、局部発振信号(LO信号)を受け付ける入力端12と、中間周波数信号(IF信号)を出力する出力端13とを入出力端として有する。
【0026】
また、周波数混合器1は、構成要素として、第1の分配器14、第2の分配器15、第1の混合器16、第2の混合器17、及び結合器18を具備する。
【0027】
各々の構成要素は、図1に示すように次のように接続される。
第1の分配器14の入力は、受信信号用の入力端11に接続される。
第2の分配器15の入力は、局部発振信号用の入力端12に接続される。
第1の混合器16のそれぞれの入力は、第1の分配器14と第2の分配器15のそれぞれの一出力と接続される。
第2の混合器17のそれぞれの入力は、第1の分配器14と第2の分配器15のそれぞれの一出力とおのおの90度の遅延経路を介して接続される。この遅延経路は、例えば、90度移相器を用いて構成してもよいし、ディレイラインを用いて形成してもよい。
【0028】
結合器18は、第1の混合器16及び第2の混合器17に、第1の分配器14で2分岐される各々のRF信号の信号経路長が論理的に揃った長さで接続される。
【0029】
異なる観点で説明すれば、周波数混合器1の内部構造は、次のようにも説明できる。
【0030】
第1及び第2の混合器16,17を並列に配置する。
【0031】
第2の混合器17は、第1の混合器16の接続関係と比較して、受信信号(RF信号)と局部発振信号(LO信号)をそれぞれ90度の位相遅延を持たせつつ、第1の混合器16と第2の混合器17の出力信号を中間周波数信号(IF信号)に同位相で結合する。
【0032】
このことで、周波数混合器1は、出力信号(IF信号)を、損失なく合成できる。加えて、周波数混合器1は、周波数混合で生じる損失の低減と、出力信号の偶数次の高調波成分の抑制とを、同時に図ることができる。
【0033】
ここで、周波数混合器1の動作原理を説明する。
【0034】
受信信号(RF) εcosωt は、第1の分配器14に入力されると、その内部で同位相で分配される。分配された受信信号(RF)の一方は、第1の混合器16の入力端ではε/2・cosωt となる。また、分配された受信信号(RF)の他方は、混合器17の入力端では90度遅延経路によりε/2・cos(ωt+π/2) となる。
【0035】
同様に、局部発振信号(LO) ε0cosω0t は、第2の分配器15に入力されると、その内部で同位相で分配される。分配された局部発振信号(LO)の一方は、第1の混合器16の入力端ではε0/2・cosω0t となる。また、分配された局部発振信号(LO)の他方は、混合器17の入力端では90度遅延経路によりε0/2・cos(ω0t+π/2)となる。
【0036】
第1の混合器16で周波数変換された第1の混合波信号(所要のIF信号1)は、a21・ε1・ε0/4・cos(ω10)t となる。この第1の混合波信号に含まれるLO信号の偶数(2n)倍の高調波成分は、a2n1/2n・(εo/2)2n cos(2nω0)tとなる。ここで、a21は第1の混合器16の変換損失であり、a2n1は2n次の項の変換損失である。
【0037】
同様に、第2の混合器17で周波数変換された第2の混合波信号(所要のIF信号2)は、 a22・ε1/2・ε0/2・cos(ω1t+π/2-(ω0t+π/2))となり、a22・ε1・ε0/4・cos(ω10)t となる。この第2の混合波信号に含まれるLO信号の偶数(2n)倍の高調波成分は、a2n2/2n・(εo/2)2n cos(2nω0t+(2n-1)π)となる。ここで、cos(2nω0t+(2n-1)π)=-cos(2nω0t)であるので、第2の混合波信号に含まれるLO信号の偶数(2n)倍の高調波成分は、-a2n2/2n・(εo/2)2n cos(2nω0t)となる。なお、a22は第2の混合器17の変換損失であり、a2n2は2n次の項の変換損失である。
【0038】
第1及び第2の混合器16,17でそれぞれ生成された第1及び第2の混合波信号の変換損失が全く等しい(a21=a22、a2n1=a2n2)場合、結合器18で損失無く同相合成されるため、出力信号(IF)は、a21/2・ε1・ε0・cos(ω10)tとなる。また、LO信号の偶数(2n)倍の成分については逆符号のためキャンセルされる。この数式から自明なように、出力信号(IF)に偶数倍の高調波成分が含まれていない。すなわち、この回路構成によれば、偶数倍の高調波成分を理論上キャンセルして抑圧した信号波で出力信号(IF)を出力できる。
【0039】
[構成例1]
構成例1では、人工衛星に搭載することに好適な周波数混合器の回路構成を説明する。
【0040】
図2は、本構成例にかかる周波数混合器2の内部構成を示すブロック図である。本構成例では、周波数混合器2をアップリンク周波数30GHz帯、ダウンリンク周波数20GHz帯のKaバンド周波数変換器に適用する。
【0041】
この場合、LO信号周波数は10GHz、その2倍の高調波は20GHzになり、ダウンリンクの周波数帯に落ち込む。LO信号の2倍の高調波に対する必要な抑圧量は、出力信号比で50dBとする。
【0042】
第1の混合器16、第2の混合器17は、ダブルバランスミキサを使用し、偶数次のLO信号のスプリアスが30dB程度抑圧できる特性の混合器を用いる。
【0043】
それぞれの信号経路は、マイクロストリップラインで構成する。
【0044】
各信号経路は、第1及び第2の分配器14,15、及び結合器18を含み、この例では、第1及び第2の分配器14,15、及び結合器18はウィルキンソンディバイダを用いている。また、90度遅延経路(90度移相器)はそれぞれRF信号及びLO信号の波長に合わせたλ/4のディレイラインを使用して構成している。
【0045】
このように、入力端11から出力端13までの信号経路を受動回路で形成する。なお、受動回路で形成せずとも、能動素子を用いた位相器で第1の混合器16と第2の混合器17の入力信号の位相差が90度になる回路構成を採用してもよい。例えば、第1の分配器14の出力の両方に増幅器を挿入し、第1の混合器16の経路と比較して第2の混合器17の経路のみを90度位相遅れが生じるようにバイアス設定すればよい。
【0046】
この回路構成で周波数混合器2を構成して動作させることで、小規模な回路で出力信号の高調波成分について20dB〜30dBの抑圧特性が得られる。
【0047】
この回路構成によれば、第1及び第2の混合器16,17のダブルバランスミキサの抑圧量30dBと合わせ、結合器18の後に帯域フィルタを設けなくとも、多くの設計で求められる必要抑圧量(50dB)を満足できる。
【0048】
換言すれば、この回路構成によれば、第1の及び第2の混合器16,17の前段(第1の分配器14から第1又は第2の混合器16,17まで)に帯域フィルタを設けなくとも、抑圧量(50dB)を満足できる。
【0049】
同様に、この回路構成によれば、第1の及び第2の混合器16,17の後段(第1又は第2の混合器16,17から結合器18まで)に帯域フィルタを設けなくとも、抑圧量(50dB)を満足できる。
【0050】
衛星や宇宙機などの周波数変換装置は、[背景技術]の欄で説明したように、アップリンク信号とダウンリンク信号の周波数の関係性から、使用周波数帯域内に局部発振信号の高調波成分が落ち込む組合せが現実に多い。また、人工衛星や宇宙機に搭載される周波数変換器の機器数は、通信チャネルの増強や衛星システムの構成変更などに伴い、増える傾向にある。このような課題に対して、周波数混合器2は、良好な解決解になる。
【0051】
また、周波数混合器2は、Kaバンド同様に、Cバンド(6GHz/4GHz)、Kuバンド(18GHz/12GHz)等、LO信号の偶数次の高調波が通信帯域内に入り込むアップ/ダウンリンクに有益な特性を発揮できる。
【0052】
[構成例2]
図3は、別の一構成例にかかる周波数混合器3の内部構成を示すブロック図である。
【0053】
構成例1では第1及び第2の分配器をウィルキンソンディバイダ、両90度遅延経路を各々ディレイラインで構成する態様を説明した。この構成に変えて、第1及び第2の分配器、両90度遅延経路を、ブランチラインタイプのハイブリットを用いて形成することも可能である。
【0054】
[効果の説明]
本発明により、以下の効果が得られる。
【0055】
上記周波数混合器の回路構成により、偶数次のLO信号の高調波成分を抑圧した中間周波数信号を、帯域フィルタを使用することなく生成可能になる。この結果、今まで帯域フィルタを用いることで使用不可能になっていた帯域が使用可能になる。
【0056】
人工衛星などに搭載する周波数変換装置に組み込む周波数混合器の回路構成を上記説明したように形成することで、生成される不要波成分のうち、特に偶数次の局部発信号の高調波成分を抑圧して、その影響を軽減することができる。
【0057】
以上説明したように、本発明を適用した周波数混合器は、出力信号の損失と偶数次の高調波の抑制を図れる。同様に、帯域フィルタを用いないことで、同等の機能を発揮する周波数混合器よりも軽量化、小型化できる。
【0058】
なお、実施形態及び/又は構成例を例示して本発明を説明した。しかし、本発明の具体的な構成は前述の実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の変更があってもこの発明に含まれる。例えば、上述した実施形態及び/又は構成例のブロック構成の分離併合などの変更は本発明の趣旨および説明される機能を満たせば自由であり、上記説明が本発明を限定するものではない。
【0059】
また、上記の実施形態の一部又は全部は、以下のようにも記載されうる。尚、以下の付記は本発明をなんら限定するものではない。
[付記1]
RF信号を受け付ける受信信号入力端と、
LO信号を受け付ける局部発振信号入力端と、
前記受信信号入力端に接続された第1の分配器と、
前記局部発振信号入力端に接続された第2の分配器と、
前記第1の分配器の一方の出力端と前記第2の分配器の一方の出力端と接続される第1の混合器と、
前記第1の分配器の他方の出力端と90度の遅延経路を介して接続されると共に前記第2の分配器の他方の出力端と90度の遅延経路を介して接続される第2の混合器と、
前記第1の混合器及び前記第2の混合器に、前記第1の分配器で分岐される各々のRF信号の信号経路長が揃った長さで接続される結合器と、
前記結合器と接続する出力端と、
を具備する周波数混合器。
【0060】
[付記2]
前記第1の混合器と前記第2の混合器を各々含む信号経路は、変換損失が揃った値を有する上記付記記載の周波数混合器。
【0061】
[付記3]
前記第1の混合器及び第2の混合器でダブルバランスミキサを形成する上記付記記載の周波数混合器。
【0062】
[付記4]
前記受信信号入力端から前記出力端までの信号経路を受動回路で形成する上記付記記載の周波数混合器。
【0063】
[付記5]
それぞれの信号経路をマイクロストリップラインで構成する上記付記記載の周波数混合器。
【0064】
[付記6]
前記第1の分配器、前記第2の分配器、及び前記結合器をそれぞれウィルキンソンディバイダ、それぞれの90度の遅延経路を各々の波長に合わせたλ/4のディレイラインで構成する上記付記記載の周波数混合器。
【0065】
[付記7]
前記第1の分配器及び前記第2の分配器、それぞれの90度の遅延経路を一括してハイブリットを用いて形成する上記付記記載の周波数混合器。
【0066】
[付記8]
前記第1の分配器から前記結合器までの信号経路内に、帯域フィルタを具備しない上記付記記載の周波数混合器。
【0067】
[付記9]
上記付記記載の周波数変換器を含み、Cバンド、Kuバンド、Kaバンド、の何れかでLO信号の偶数次の高調波が通信帯域内に入り込む関係にあるアップ/ダウンリンクを採用する衛星搭載用周波数変換装置。
【0068】
[付記10]
上記付記記載の衛星搭載用周波数変換装置を搭載した人工衛星。
【0069】
[付記11]
受信信号入力端及び局部発振信号入力端からRF信号及びLO信号を受け付け、
前記RF信号及びLO信号をそれぞれ2つに分波し、
分波された前記RF信号及びLO信号のそれぞれの一方の信号波相互を第1の混合波信号として混合し、
分波された前記RF信号及びLO信号のそれぞれの他方の信号波を90度遅延させ、遅延させた信号波相互を第2の混合波信号として混合し、
前記第1の混合波信号と第2の混合波信号をIF信号に同位相で合波し、生成信号波を中間周波数出力端から出力する、
周波数混合器による中間周波数信号生成方法。
【0070】
この出願は、2015年12月4日に出願された日本出願特願2015−237723を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、人工衛星用周波数変換器など、局部発振信号の偶数倍の高調波の影響が無視できない機器に組み込む周波数混合器に好適である。
【符号の説明】
【0072】
1,2,3 周波数混合器
11 入力端(受信信号(RF信号))
12 入力端(局部発振信号(LO信号))
13 出力端(中間周波数信号(IF信号))
14 第1の分配器(受信信号(RF信号)用)
15 第2の分配器(局部発振信号(LO信号)用)
16 第1の混合器
17 第2の混合器
18 結合器
図1
図2
図3
図4

【手続補正書】
【提出日】2018年5月9日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
RF(Radio Frequency)信号を受け付ける受信信号入力端と、
LO(Local Oscillator)信号を受け付ける局部発振信号入力端と、
前記受信信号入力端に接続された第1の分配器と、
前記局部発振信号入力端に接続された第2の分配器と、
前記第1の分配器の一方の出力端と前記第2の分配器の一方の出力端と接続される第1の混合器と、
前記第1の分配器の他方の出力端と90度の遅延経路を介して接続されると共に前記第2の分配器の他方の出力端と90度の遅延経路を介して接続される第2の混合器と、
前記第1の混合器及び前記第2の混合器に、前記第1の分配器で分岐される各々のRF信号の信号経路長が揃った長さで接続される結合器と、
前記結合器と接続する出力端と、
を具備する周波数混合器。
【請求項2】
前記第1の混合器と前記第2の混合器を各々含む信号経路は、変換損失が揃った値を有する請求項1記載の周波数混合器。
【請求項3】
前記第1の混合器及び第2の混合器でダブルバランスミキサを形成する請求項1又は2に記載の周波数混合器。
【請求項4】
前記受信信号入力端から前記出力端までの信号経路を受動回路で形成する請求項1ないし3の何れか一項に記載の周波数混合器。
【請求項5】
それぞれの信号経路をマイクロストリップラインで構成する請求項1ないし4の何れか一項に記載の周波数混合器。
【請求項6】
前記第1の分配器、前記第2の分配器、及び前記結合器をそれぞれウィルキンソンディバイダ、それぞれの90度の遅延経路を各々の波長に合わせたλ/4のディレイラインで構成する請求項1ないし5の何れか一項に記載の周波数混合器。
【請求項7】
前記第1の分配器及び前記第2の分配器、それぞれの90度の遅延経路を一括してハイブリットを用いて形成する請求項1ないし5の何れか一項に記載の周波数混合器。
【請求項8】
前記第1の分配器から前記結合器までの信号経路内に、帯域フィルタを具備しない請求項1ないし7の何れか一項に記載の周波数混合器。
【請求項9】
請求項1ないし7の何れか一項に記載の周波数混合器を含み、Cバンド、Kuバンド、Kaバンド、の何れかでLO信号の偶数次の高調波が通信帯域内に入り込む関係にあるアップ/ダウンリンクを採用する衛星搭載用周波数変換装置。
【請求項10】
受信信号入力端及び局部発振信号入力端からRF信号及びLO信号を受け付け、
前記RF信号及びLO信号をそれぞれ2つに分波し、
分波された前記RF信号及びLO信号のそれぞれの一方の信号波相互を第1の混合波信号として混合し、
分波された前記RF信号及びLO信号のそれぞれの他方の信号波を90度遅延させ、遅延させた信号波相互を第2の混合波信号として混合し、
前記第1の混合波信号と第2の混合波信号をIF(Intermediate Frequency)信号に同位相で合波し、生成信号波を中間周波数出力端から出力する、
周波数混合器による中間周波数信号生成方法。
【国際調査報告】