特表-18123050IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱電機株式会社の特許一覧
再表2018-123050放電表面処理電極の製造方法および皮膜体の製造方法
<>
  • 再表WO2018123050-放電表面処理電極の製造方法および皮膜体の製造方法 図000003
  • 再表WO2018123050-放電表面処理電極の製造方法および皮膜体の製造方法 図000004
  • 再表WO2018123050-放電表面処理電極の製造方法および皮膜体の製造方法 図000005
  • 再表WO2018123050-放電表面処理電極の製造方法および皮膜体の製造方法 図000006
  • 再表WO2018123050-放電表面処理電極の製造方法および皮膜体の製造方法 図000007
  • 再表WO2018123050-放電表面処理電極の製造方法および皮膜体の製造方法 図000008
  • 再表WO2018123050-放電表面処理電極の製造方法および皮膜体の製造方法 図000009
  • 再表WO2018123050-放電表面処理電極の製造方法および皮膜体の製造方法 図000010
  • 再表WO2018123050-放電表面処理電極の製造方法および皮膜体の製造方法 図000011
  • 再表WO2018123050-放電表面処理電極の製造方法および皮膜体の製造方法 図000012
  • 再表WO2018123050-放電表面処理電極の製造方法および皮膜体の製造方法 図000013
  • 再表WO2018123050-放電表面処理電極の製造方法および皮膜体の製造方法 図000014
  • 再表WO2018123050-放電表面処理電極の製造方法および皮膜体の製造方法 図000015
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2018年7月5日
【発行日】2018年12月27日
(54)【発明の名称】放電表面処理電極の製造方法および皮膜体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 26/00 20060101AFI20181130BHJP
   B22F 7/04 20060101ALI20181130BHJP
【FI】
   C23C26/00 D
   B22F7/04 E
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】20
【出願番号】特願2017-535935(P2017-535935)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2016年12月28日
(11)【特許番号】特許第6227206号(P6227206)
(45)【特許公報発行日】2017年11月8日
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118762
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 順
(72)【発明者】
【氏名】加藤木 英隆
(72)【発明者】
【氏名】鷲見 信行
(72)【発明者】
【氏名】中野 善和
【テーマコード(参考)】
4K018
4K044
【Fターム(参考)】
4K018AA06
4K018AA07
4K018AA10
4K018AA19
4K018AA21
4K018AA24
4K018BA03
4K018BA04
4K018BA09
4K018BA13
4K018BB04
4K018EA60
4K018JA25
4K018KA37
4K044CA36
(57)【要約】
放電表面処理電極(1)の製造方法は、粉末(21)を敷き詰めて第1の粉末層(11)を形成する第1の敷設工程と、第1の粉末層(11)のうち一部の粉末(21)同士を結合させる第1の結合工程と、を備える。また、一部の粉末(21)同士が結合された粉末層の上に粉末(21)をさらに敷き詰めて第2の粉末層(12)を形成する第2の敷設工程と、第2の粉末層(12)のうち一部の粉末(21)同士を結合させて造粒粉の積層体(2)を形成する第2の結合工程と、を備え、積層体(2)の内部に空孔率が他の領域と異なる領域が形成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末を敷き詰めて第1の粉末層を形成する第1の敷設工程と、
前記第1の粉末層のうち一部の粉末同士を結合させる第1の結合工程と、
一部の前記粉末同士が結合された粉末層の上に前記粉末をさらに敷き詰めて第2の粉末層を形成する第2の敷設工程と、
前記第2の粉末層のうち一部の粉末同士を結合させて前記粉末の積層体を形成する第2の結合工程と、を備え、
前記積層体の内部に空孔率が他の領域と異なる領域が形成されることを特徴とする放電表面処理電極の製造方法。
【請求項2】
前記第1の結合工程および前記第2の結合工程において、結合させる前記粉末に向けて選択的に結合剤を噴射することを特徴とする請求項1に記載の放電表面処理電極の製造方法。
【請求項3】
前記積層体を高温炉に投入して前記粉末同士を焼結または仮焼結させる投入工程をさらに備えることを特徴とする請求項2に記載の放電表面処理電極の製造方法。
【請求項4】
前記第1の結合工程および前記第2の結合工程において、結合させる前記粉末を選択的に加熱することを特徴とする請求項1に記載の放電表面処理電極の製造方法。
【請求項5】
前記加熱によって、前記粉末同士が仮焼結または焼結されることを特徴とする請求項4に記載の放電表面処理電極の製造方法。
【請求項6】
前記粉末は、金属粉末と結合剤が混合された造粒粉末であり、
前記加熱によって前記結合剤が溶融され、溶融された前記結合剤がその後固化することを特徴とする請求項4に記載の放電表面処理電極の製造方法。
【請求項7】
前記第1の粉末層は、ベースの上に敷き詰められ、
前記第1の結合工程において、前記第1の粉末層と前記ベースとが結合されることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1つに記載の放電表面処理電極の製造方法。
【請求項8】
前記第1の粉末層は、ベースの上に敷き詰められ、
前記第1の粉末層のうち前記ベースと接する領域は、前記ベースと結合しない非結合領域または前記ベースへの結合力が他の領域での前記粉末同士の結合力よりも抑えられた低結合領域となることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1つに記載の放電表面処理電極の製造方法。
【請求項9】
前記積層体は、前記粉末の積層方向に空孔率が異なる領域を有することを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1つに記載の放電表面処理電極の製造方法。
【請求項10】
前記積層体は、前記粉末の積層方向と垂直な方向に空孔率が異なる領域を有することを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1つに記載の放電表面処理電極の製造方法。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれか1つに記載の放電表面処理電極の製造方法で製造された放電表面処理電極を被加工物と対峙させる工程と、
前記放電表面処理電極に電圧を印加して前記放電表面処理電極と前記被加工物との間に放電現象を発生させて前記被加工物に皮膜を形成する工程とを備えることを特徴とする皮膜体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電表面処理に用いる放電表面処理電極の製造方法および皮膜体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
放電表面処理技術には、放電表面処理電極を用いて被加工物の表面に皮膜を形成させるものがある。特許文献1では、型枠の内部で粉末を押し固めた圧粉体、圧粉体を焼結させた焼結体または圧粉体を仮焼結させた仮焼結体が放電表面処理電極に用いられている。放電表面処理電極を用いた放電表面処理技術では、放電表面処理電極を被加工物と対峙させ、放電表面処理電極と被加工物との間で放電現象を発生させる。放電現象の放電爆発力によって放電表面処理電極から粉末が崩れて浮遊する。そして、浮遊した粉末が被加工物の表面で溶融および凝固することで、被加工物の表面に皮膜が形成される。
【0003】
放電表面処理電極では、放電爆発力によって粉末が崩れる必要がある。そのため、放電表面処理電極は、放電表面処理電極を構成する粉末の間にある程度の距離を設けること、すなわち放電表面処理電極の空孔率を制御することが必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−322034号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の技術で空孔率を制御するためには、固化条件の設定に時間を要するとともに、品質の安定化も難しいという問題があった。なお、固化条件には、型枠の内部に粉末を押し固める圧力の大きさおよび圧力を加える時間が例示される。
【0006】
また、放電表面処理の処理条件、すなわち放電表面処理に用いられる被加工物の材質および被加工物の表面に形成される膜の膜質に応じて、異なる形状の放電表面処理電極が必要となる場合がある。この場合には、放電表面処理電極の形状に合わせた型枠を製造するか、共通の型枠を用いて製造された放電表面処理電極に対して、後加工を行って所望の形状にする必要がある。そのため、形状に合わせた型枠を製造するコスト、または後加工を行うコストによって、放電表面処理電極の製造コストが増大してしまう。なお、放電表面処理電極に対して行う後加工には、放電加工が例示される。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたもので、製造コストを抑えつつ、安定した品質で空孔率の制御を行うことができる放電表面処理電極の製造方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、粉末を敷き詰めて第1の粉末層を形成する第1の敷設工程と、第1の粉末層のうち一部の粉末同士を結合させる第1の結合工程と、を備える。また、一部の粉末同士が結合された粉末層の上に粉末をさらに敷き詰めて第2の粉末層を形成する第2の敷設工程と、第2の粉末層のうち一部の粉末同士を結合させて粉末の積層体を形成する第2の結合工程と、を備え、積層体の内部に空孔率が他の領域と異なる領域が形成される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、型を用いることなく形状自由度が高く、空孔率が自由に設定可能な放電表面処理電極を得ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施の形態1にかかる放電表面処理電極に用いられる造粒粉の断面図
図2】実施の形態1にかかる放電表面処理電極の製造方法を示すフローチャート
図3】実施の形態1にかかる放電表面処理電極の製造工程を示す図
図4】実施の形態1にかかる放電表面処理電極の一例とその放電表面処理電極を用いた放電表面処理の一例を示す図
図5】実施の形態1にかかる放電表面処理電極の他の例とその放電表面処理電極を用いた放電表面処理の他の例を示す図
図6】実施の形態1にかかる放電表面処理電極のさらに他の例を示す図
図7】実施の形態1の変形例1にかかる放電表面処理電極を示す図
図8】実施の形態1の変形例2にかかる放電表面処理電極を示す図
図9】本発明の実施の形態2にかかる放電表面処理電極の製造方法を示すフローチャート
図10】実施の形態2にかかる放電表面処理電極の製造工程を示す図
図11】本発明の実施の形態3にかかる放電表面処理電極の製造方法を示す図
図12】本発明の実施の形態4にかかる放電表面処理電極を示す図
図13】実施の形態4にかかる放電表面処理電極の製造に用いられる造粒粉を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明にかかる放電表面処理電極の製造方法および皮膜体の製造方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0012】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1にかかる放電表面処理電極に用いられる造粒粉の断面図である。造粒粉21は、図1に示すように、複数の金属粉末21mを第1の結合剤21bで結合させてまとめた粉末である。なお、以下の説明において、複数の金属粉末を結合剤で結合させてまとめることを造粒という。
【0013】
放電表面処理電極を用いた放電表面処理では、放電表面処理電極と被加工物との間に金属粉末21mを浮遊させる。そのため、金属粉末21mの粒径は、放電表面処理電極と被加工物との間隙よりも十分に小さくする必要があり、具体的には粒径が1μmから10μmであることが望ましい。この金属粉末21mを第1の結合剤21bで結合することで、粒径が150μm以上の造粒粉21を得る。
【0014】
実施の形態1にかかる放電表面処理電極の製造工程では、用意した金属粉末の粒径が1μmから10μmであれば第1の結合剤で結合させ、用意した金属粉末の粒径が10μmより大きければ、粉砕等の工程によって粒径が1μmから10μmの金属粉末にしてから、第1の結合剤で結合させて、粒径が150μmの造粒粉21を得る。ここでいう粒径は、D50と呼ばれる値で示している。D50は、粉末全体の粒度分布から求められる値である。具体的には、粉体をある粒径より大きい粒子とある粒径より小さい粒子との2つに分けて、ある粒径より大きい粒子とある粒径より小さい粒子とが等量となるときのある粒径がD50の値として示される。なお、粒径が10μmよりも大きい金属粉末であっても、粉砕して造粒せずに放電表面処理電極の製造に用いてもよい。例えば、粒径が50μmの金属粉末を造粒せずに放電表面処理電極の製造に用いることができる場合がある。すなわち、放電表面処理電極の製造に用いられる粉末には、造粒されていない金属粉末も含まれる。
【0015】
金属粉末21mに用いられる金属には、チタン(Ti)、シリコン(Si)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、ジルコニウム(Zr)、モリブデン(Mo)、バリウム(Ba)、レニウム(Re)、タングステン(W)、チタンカーバイド(TiC)、コバルトクロム(CoCr)、タングステンカーバイド(WC)、チタンシリコンカーバイド(TiSiC)、および硫化モリブデン(MoS)が例示される。
【0016】
第1の結合剤21bは、溶質と溶媒を含んで構成される。第1の結合剤21bの溶質には、パラフィンが例示される。第1の結合剤21bの溶媒には、非水性媒液であるアルコール系またはケトン系の無極性溶媒が例示される。第1の結合剤21bでのパラフィンの含有量は、0.1重量%以上2.0重量%以下であることが望ましい。
【0017】
粒径が1μmから10μmである金属粉末21mは、そのまま取り扱うと取扱いに注意を必要とするが、第1の結合剤21bで結合させて150μm以上の造粒粉21とすることで取り扱いが容易になる。
【0018】
図2は、実施の形態1にかかる放電表面処理電極1の製造方法を示すフローチャートである。図3は、実施の形態1にかかる放電表面処理電極1の製造工程を示す図である。なお、本願の図面では、後述する第2の結合剤が供給された造粒粉を二重の円で示し、第2の結合剤で結合された造粒粉あるいは焼結または仮焼結された金属粉末をハッチングがされた円で示し、第2の結合剤が供給されていない造粒粉を白抜きの円で示している。
【0019】
まず、図3に示すプロセスp1において、テーブル10上に造粒粉21を敷き詰める第1の敷設工程を行う(ステップS1)。第1の敷設工程では、テーブル10上に第1の粉末層11が形成される。ここでは、粉末である造粒粉21が敷き詰められるベースにテーブル10を用いている。次に、図3に示すプロセスp2において、結合剤噴射装置3から第1の粉末層11を構成する造粒粉21の一部に向けて選択的に第2の結合剤4を噴射させる(ステップS2)。これにより、一部の造粒粉21に第2の結合剤4が供給される。ここで、結合剤噴射装置3には、第2の結合剤4の噴射位置を制御することができる噴射装置であればよく、例えば3Dプリンタとも呼ばれる粉末積層造形装置に用いられる噴射装置を適用できる。
【0020】
また、第2の結合剤4には、噴射時には液状であり、乾燥後は固化する材料が用いられる。なお、造粒粉21に用いられる第1の結合剤21bと同じ材料のものを第2の結合剤4に用いることが望ましい。また、結合剤噴射装置3から第2の結合剤4を噴射させる場合には、粗大なパラフィンが含まれにくいスプレー噴霧であることが望ましい。噴射後の第2の結合剤4に粗大なパラフィンが含まれていなければ、第2の結合剤4を加熱して乾燥させた場合にパラフィンが異物として残存しにくくなる。
【0021】
また、第2の結合剤4の噴射は不活性ガス雰囲気または真空環境下で行われることが望ましい。不活性ガスには、窒素、アルゴンおよびヘリウムが例示される。ただし、これらの記載は、大気中で第2の結合剤4が噴射されることを除外するものではない。
【0022】
次に、図3に示すプロセスp3において、加熱装置5で第1の粉末層11を加熱して、第2の結合剤4を乾燥させる(ステップS3)。これにより、第1の粉末層11のうち第2の結合剤4が供給された場所で造粒粉21が結合される。ステップS3での第2の結合剤4の噴射とステップS4での第2の結合剤4の乾燥とで、第1の粉末層11のうち第2の結合剤4が供給された造粒粉21同士を結合させる第1の結合工程が行われる。
【0023】
加熱装置5に用いる熱源の種類については、特に、限定されるものではない。造粒粉21の比抵抗は、金属粉末21mよりも非常に高い。そのため、ステップS3における加熱において、電子ビームに例示される電気的熱源ではなく、ヒータに例示される電気的ではない熱源あるいはレーザに例示される光源を加熱装置5に用いる熱源にしてもよい。
【0024】
次に、図3に示すプロセスp4において、第1の粉末層11の上に造粒粉21をさらに敷き詰める第2の敷設工程を行う(ステップS4)。第2の敷設工程では、第1の粉末層11の上に第2の粉末層12が形成される。
【0025】
次に、図3に示すプロセスp5において、結合剤噴射装置3から第2の粉末層12を構成する造粒粉21の一部に向けて選択的に第2の結合剤4を噴射させる(ステップS5)。これにより、一部の造粒粉21に第2の結合剤4が供給される。図2に示すように、ステップS5では、第2の結合剤4が供給される面積が第1の粉末層11よりも少なくなっている。すなわち、第2の粉末層12では、第1の粉末層11よりも結合される造粒粉21が少なくなっている。
【0026】
次に、図3に示すプロセスp6において、加熱装置5で第2の粉末層12を加熱して、第2の結合剤4を乾燥させる(ステップS6)。これにより、第2の粉末層12のうち第2の結合剤4が供給された場所で造粒粉21が結合される。ステップS5での第2の結合剤4の供給とステップS6での第2の結合剤4の乾燥とで、第2の粉末層12のうち第2の結合剤4が供給された造粒粉21同士を結合させる第2の結合工程が行われる。なお、第2の結合工程では、第2の粉末層12のうち第2の結合剤4が供給された造粒粉21が、第1の粉末層11とも結合される。これにより、複数の造粒粉21が結合された積層体2が得られる。この後、第2の敷設工程および第2の結合工程を繰り返すことで、所望の厚さの積層体2が得られる。
【0027】
次に、図3に示すプロセスp7において、積層体2をテーブル10上から移動させて、結合されていない造粒粉21を除去する(ステップS7)。なお、積層体2をテーブル10から取り外しやすいように、第1の粉末層11に第2の結合剤4を噴射した際に、テーブル10に接する造粒粉21には第2の結合剤4を到達させていない。これにより、テーブル10に接する造粒粉21によって形成される領域が、テーブル10と結合しない非結合領域となるため、積層体2の取り外しが容易となる。なお、テーブル10に接する造粒粉21に供給する第2の結合剤4の量を、それよりも上層に積層される造粒粉21に供給する第2の結合剤4の量よりも少量に抑えてもよい。この場合には、テーブル10に接する造粒粉21のテーブル10への結合力が、それよりも上層での造粒粉21同士の結合力よりも低く抑えられる。これにより、テーブル10に接する造粒粉21によって形成される領域が、テーブル10への結合力が抑えられた低結合領域となり、積層体2の取り外しの容易化を図ることができる。
【0028】
次に、結合されていない造粒粉21が除去された積層体2を高温炉に投入して、第1の結合剤21bを昇華させ、金属粉末21mを焼結または仮焼結させる投入工程を行うことで、放電表面処理電極1が得られる(ステップS8)。
【0029】
以上説明した製造方法で製造された放電表面処理電極1では、第2の結合剤4が供給される位置を制御することで、第1の粉末層11および第2の粉末層12において結合される造粒粉21の割合を異ならせることが可能となる。これは、第1の粉末層11および第2の粉末層12において結合されない造粒粉21の割合、すなわち第1の粉末層11で形成される領域と第2の粉末層12で形成される領域とで空孔率を異ならせることができると換言できる。
【0030】
図3に示した例では、第1の粉末層11で結合される造粒粉21の割合よりも第2の粉末層12で結合される造粒粉21の割合を低くしている。すなわち、第1の粉末層11よりも第2の粉末層12で空孔率を高くしている。このように、本実施の形態1にかかる放電表面処理電極1の製造方法では、放電表面処理電極1の内部に空孔率が他の領域とは異なる領域を形成することができる。また、より初期に積層される第1の粉末層11で空孔率を低くすることで、積層体2の形成初期において積層の安定化を図ることができる。なお、第1の粉末層11で空孔率を高くし、第2の粉末層12で空孔率を低くしても構わない。
【0031】
また、所望の位置にある造粒粉21を結合させることができるので、第2の結合剤4が供給される位置を異ならせることで、放電表面処理電極1を様々な形状で製造することができる。したがって、圧粉体を形成して放電表面処理電極を製造する場合のように、異なる形状の放電表面処理電極に合わせた型枠を製造する必要がない。また、後加工によって放電表面処理電極を所望の形状にするに必要がない。したがって、形状に合わせた型枠を製造するコスト、または後加工を行うコストを削減することで、放電表面処理電極の製造コストを抑制することができる。なお、これらの記載は、実施の形態1にかかる放電表面処理電極1に対して後加工を行って放電表面処理電極1の形状を加工することを排除するものではない。
【0032】
なお、室温では固体であって融点が100℃以下である材料を第2の結合剤4に用いた場合には、造粒粉21に噴射された第2の結合剤4は融点以下の温度環境下であれば自然に固化して、造粒粉21同士を結合させることができる。そのため、室温では固体であって融点が100℃以下である材料を第2の結合剤4に用いた場合には、ステップS3およびステップS6の加熱工程を省略しても造粒粉21同士を結合させることができる。
【0033】
また、第1の粉末層11に用いられる造粒粉21と第2の粉末層12に用いられる造粒粉21とで、含まれる金属粉末21mの材料を異ならせてもよい。もちろん、第2の敷設工程と第2の結合工程を繰り返す場合にも、積層される粉末層ごとに造粒粉21に含まれる金属粉末21mの材料を異ならせてもよい。
【0034】
また、造粒粉21自体が第1の結合剤21bを含んでいるので、ステップS2およびステップS5における第2の結合剤4の噴射を省略して、敷き詰められた造粒粉21の一部を加熱して造粒粉21に含まれる第1の結合剤21bを溶融させてもよい。この場合には、溶融した第1の結合剤21bが冷却されて再度固化することで造粒粉21同士が結合される。
【0035】
また、放電表面処理電極1を用いた放電表面処理によって被加工物に形成される皮膜に要求される条件によっては、ステップS8における高温炉への積層体2の投入を省略することができる。高温炉への投入を省略することで、第1の結合剤21bおよび第2の結合剤4が昇華されずに放電表面処理電極1にパラフィンが残存する。パラフィンが残存する放電表面処理電極1を用いて放電表面処理を行った場合には、被加工物に形成される皮膜にパラフィンが混在する可能性がある。すなわち、被加工物に形成される皮膜にパラフィンが混在しても構わない場合には、ステップS8における高温炉への積層体2の投入を省略することができる。
【0036】
また、放電表面処理に適した粒径、すなわち1μmから10μmの金属粉末21mは、濡れ性の影響によって所望の位置で第2の結合剤4によって結合させることが困難である。そのため、ステップS1およびステップS4で敷き詰められる粉末には粗粒化された造粒粉21を用いている。しかしながら、濡れ性の影響を無視することができる条件下であれば、造粒粉21ではなく造粒されていない金属粉末を放電表面処理電極に用いられる粉末としてそのまま敷き詰めるようにしても構わない。濡れ性の影響を無視することができる条件下には、濡れ性の影響の少ない粒径の金属粉末を用いて製造された放電表面処理電極1であっても、放電表面処理によって被加工物に皮膜を形成できる場合が例示される。例えば、粒径が50μmの金属粉末をそのまま敷き詰めて放電表面処理電極1を製造できる場合がある。
【0037】
次に、空孔率が異なる領域を有する放電表面処理電極1を用いた放電表面処理について説明する。図4は、実施の形態1にかかる放電表面処理電極1の一例とその放電表面処理電極1を用いた放電表面処理の一例を示す図である。図4に示す放電表面処理電極1は、図示を省略する放電表面処理装置に放電表面処理電極1を取り付けるための治具50に接着されている。また、放電表面処理電極1は、被加工物150と対峙するように設けられている。治具50は、放電表面処理電極1と被加工物150との間に放電現象を発生させるための通電部であり、導電性の材料で形成される。治具50に用いられる導電性の材料には、金属、合金または導電性セラミックスが例示される。
【0038】
また、放電表面処理電極1は、治具50側から被加工物150に向けて第1の領域20、第2の領域30、第3の領域40の順に複数の領域が積層されている。放電表面処理電極1における空孔率は、治具50に近い領域ほど小さくなっている。すなわち、第3の領域40の空孔率よりも第2の領域30の空孔率のほうが小さく、第2の領域30の空孔率よりも第1の領域20の空孔率のほうが小さくなっている。
【0039】
プロセスp11で治具50に電圧を印加することで、放電表面処理電極1にも電圧が印加されて、放電表面処理電極1と被加工物150との間で放電現象が発生する。放電現象の発生によって、最も表層である第3の領域40から粉末が崩れて、プロセスp12で示すように、被加工物150に第1の皮膜140が形成される。次に、プロセスp13で示すように、第2の領域30、第1の領域20と順次粉末が崩れて、被加工物150に第2の皮膜130および第3の皮膜120が形成される。これにより、被加工物150に皮膜が形成された皮膜体が得られる。
【0040】
図4に示す放電表面処理電極1では、最も表層である第3の領域40では空孔率が高いことで放電発生の起点が分散されるため、放電表面処理電極1に電圧が印加された際に放電現象が開始しやすくなっている。
【0041】
また、空孔率の高い領域に由来して形成される皮膜は皮膜密度が低くなり、空孔率の低い領域に由来して形成される皮膜は皮膜密度が高くなる。すなわち、放電表面処理電極1において空孔率を制御することで、被加工物150に形成される皮膜の皮膜密度を制御することが可能となる。ここで、図4のプロセスp13で示す第1の皮膜140は主に放電表面処理電極1の第3の領域40に由来して形成され、第2の皮膜130は主に放電表面処理電極1の第2の領域30に由来して形成され、第3の皮膜120は主に放電表面処理電極1の第1の領域20に由来して形成されている。したがって、第1の皮膜140の皮膜密度よりも第2の皮膜130の皮膜密度のほうが高く、第2の皮膜130の皮膜密度よりも第3の皮膜120の皮膜密度のほうが高くなっている。
【0042】
また、第1の領域20、第2の領域30および第3の領域40のそれぞれで用いられる金属粉末21mの材料を異ならせれば、被加工物150に形成される第1の皮膜140、第2の皮膜130および第3の皮膜120を構成するそれぞれの材料も異ならせることができる。すなわち、放電表面処理電極1における領域ごとの空孔率および金属粉末21mの材料を制御することで、被加工物150に形成される皮膜の膜質を容易に制御することが可能となる。
【0043】
また、第1の領域20のように空孔率の低い領域が崩れて皮膜が形成される間は、放電表面処理電極1と被加工物150との間に金属粉末21mが多く存在する環境を作り出すことができるため、放電表面処理効率を向上させることができる。
【0044】
次に、領域ごとに空孔率を異ならせた放電表面処理電極1を用いた放電表面処理の他の例について説明する。図5は、実施の形態1にかかる放電表面処理電極1の他の例とその放電表面処理電極1を用いた放電表面処理の他の例を示す図である。図5に示す放電表面処理電極1は、治具50に接着されている。また、放電表面処理電極1は、被加工物150と対峙するように設けられている。
【0045】
図5に示す放電表面処理電極1では、放電表面処理電極1の製造工程における造粒粉21の積層方向に垂直な方向に空孔率が異なる領域を有する。具体的には、紙面左方となる領域に空孔率が低い第1の領域20を有し、紙面右方となる領域に空孔率が高い第2の領域30を有する。
【0046】
図5に示すプロセスp21において治具50に電圧を印加して、プロセスp22において放電現象によって形成される皮膜は、被加工物150の面方向に沿って膜質の異なる領域を有する。具体的には、主に第1の領域20に由来して紙面左方に形成される第1の皮膜220は、主に第2の領域30に由来して紙面右方に形成される第2の皮膜230よりも皮膜密度が高く、厚さも大きい。
【0047】
このように、造粒粉21の積層方向と垂直な方向に空孔率が異なる領域を有する放電表面処理電極1を用いれば、被加工物150の面方向に沿って皮膜の膜質を異ならせることができる。また、造粒粉21の積層方向と垂直な方向に空孔率が異なる領域を有する放電表面処理電極1も、図2および図3に示した製造方法であれば、結合させる造粒粉21の位置を制御することで容易に製造することができる。なお、放電表面処理電極1が他の領域と空孔率が異なる領域を有していればよく、例えば造粒粉の積層方向と造粒粉の積層方向と垂直な方向の両方で空孔率が異なる領域を有するようにしてもよい。
【0048】
次に、領域ごとに空孔率を異ならせた放電表面処理電極1のさらに他の例について説明する。図6は、実施の形態1にかかる放電表面処理電極1のさらに他の例を示す図である。図6に示す放電表面処理電極1は、図示を省略する放電表面処理装置に放電表面処理電極1を取り付けるための治具50に接着されている。
【0049】
図6に示す放電表面処理電極1は、表面に凹部を有する形状となっている。空孔率が互いに異なる第1の領域20、第2の領域30および第3の領域40も、表面側に凹部23を有する形状で形成される。なお、治具50の直接接触していない第2の領域30および第3の領域40は、全体としてV字形状となっている。このように空孔率が同じ領域が造粒粉21の積層方向でずれた放電表面処理電極1も、結合する造粒粉21の位置を制御することで、容易に製造することができる。
【0050】
次に、実施の形態1の変形例1にかかる放電表面処理電極1について説明する。図7は、実施の形態1の変形例1にかかる放電表面処理電極1を示す図である。本変形例1にかかる放電表面処理電極1では、放電表面処理電極1の製造工程において治具50に放電表面処理電極1を結合させている。具体的には、図3に示した製造工程において、テーブル10に代えて治具50上に造粒粉21を敷き詰めて直接第1の粉末層11を形成する。このように、本変形例1では、粉末である造粒粉21が敷き詰められるベースに治具50を用いている。また、図3に示したプロセスp2において、第1の粉末層11のうち治具50に接する造粒粉21にも第2の結合剤4を到達させることで、造粒粉21と治具50とを結合させている。
【0051】
このように、図7に示す放電表面処理電極1は、放電表面処理装置に放電表面処理電極1を取り付けるための治具50に予め結合されている。ここで、放電表面処理電極1は、ある程度の空孔率を持たせて形成されるため脆性という特徴を有する。そのため、放電表面処理電極1を治具50に接着するために直接把持した場合には、その把持力によって放電表面処理電極1が破壊されてしまう可能性がある。一方、本変形例1によれば、放電表面処理電極1が治具50に結合されて形成されるので、治具50を把持して放電表面処理電極1を取り扱うことができる。したがって、本変形例1にかかる放電表面処理電極1では、把持することによる放電表面処理電極1の破壊を防ぐことができる。また、放電表面処理電極1は、大型化によって脆性が増すためそのままでは取り扱いが困難になるが、本変形例1によれば予め放電表面処理電極1が治具50に支持された状態で形成されるので取扱いが容易になる。そのため、放電表面処理電極1の大型化を図ることが可能となる。
【0052】
次に、実施の形態1の変形例2にかかる放電表面処理電極1について説明する。図8は、実施の形態1の変形例2にかかる放電表面処理電極1を示す図である。本変形例2にかかる放電表面処理電極1では、放電表面処理電極1の製造工程において治具50上に設けられたサポート部51に放電表面処理電極1を結合させている。
【0053】
具体的には、図3に示した製造工程において、テーブル10に代えてサポート部51上に造粒粉21を敷き詰めて直接第1の粉末層11を形成する。このように、本変形例2では、粉末である造粒粉21が敷き詰められるベースにサポート部51を用いている。また、図3に示したプロセスp2において、第1の粉末層11のうちサポート部51に接する造粒粉21にも第2の結合剤4を到達させることで、造粒粉21とサポート部51とを結合させている。
【0054】
サポート部51は、変形例1で示した放電表面処理電極1と同様に、粉末の敷設工程と粉末の結合工程を治具50上で繰り返して治具50上に直接形成してもよい。また、メタル溶射法およびスパッタリング法をはじめとする別の方法で形成してもよい。また、別途用意したサポート部51を治具50に接着して、治具50上にサポート部51を形成してもよい。
【0055】
また、治具50上にサポート部51を形成してからサポート部51上に放電表面処理電極1を形成してもよいし、放電表面処理電極1をサポート部51上に形成してから、サポート部51を治具50に接着してもよい。
【0056】
このように、治具50と放電表面処理電極1との間にサポート部51を設けることで、治具50の材料と放電表面処理電極1に用いられる金属粉末21mの材料との相性不一致があった場合に、両材料との相性がよい材料でサポート部51を形成すれば、治具50と金属粉末21mとの相性を取り持つことが可能となる。異なる材料間の相性の不一致には、チタンとアルミニウム合金との間で生じるガルバニック腐食が例示される。
【0057】
また、放電表面処理電極1のうち実際の放電表面処理では不要となる部分にサポート部51を配することで、放電表面処理電極1の製造に用いる粉末材料を削減して製造コストの抑制を図ることができる。また、図8に示すように、サポート部51に突部51aを設けることで、放電表面処理に必要な部分だけで形成された形状に放電表面処理電極1を近付けることができる。したがって、放電表面処理電極1の製造に用いる粉末材料をより一層削減することができる。
【0058】
また、本変形例2によれば、治具50上に放電表面処理電極1を形成した場合と同様に、サポート部51または治具50を把持して放電表面処理電極1を取り扱うことができるので、放電表面処理電極1を把持することによる放電表面処理電極1の破壊を防ぐことができる。また、放電表面処理電極1の大型化を図ることができる。
【0059】
実施の形態2.
図9は、本発明の実施の形態2にかかる放電表面処理電極1Qの製造方法を示すフローチャートである。図10は、実施の形態2にかかる放電表面処理電極1Qの製造工程を示す図である。なお、上記実施の形態1と同様の構成については、同様の符号を付して詳細な説明を省略する。本実施の形態2にかかる放電表面処理電極1Qの製造方法では、第2の結合剤を用いずに造粒粉21の一部を選択的に焼結または仮焼結させて造粒粉21を結合させる。以下に、本実施の形態2にかかる放電表面処理電極1Qの製造方法について詳細に説明する。
【0060】
まず、図10に示すプロセスp31において、テーブル10上に造粒粉21を敷き詰める第1の敷設工程を行う(ステップS11)。第1の敷設工程では、テーブル10上に第1の粉末層11が形成される。ここでは、粉末である造粒粉21が敷き詰められるベースにテーブル10を用いている。次に、図10に示すプロセスp32において、加熱装置5で第1の粉末層11の一部を選択的に加熱する(ステップS12)。
【0061】
ステップS12では、選択的に加熱された造粒粉21が焼結温度または仮焼結温度まで熱せられることで、選択的に加熱された造粒粉21に含まれる金属粉末21m同士が焼結または仮焼結によって結合される。すなわち、ステップS12では、選択的に加熱された造粒粉21に含まれる金属粉末21m同士を結合させる第1の結合工程が行われる。
【0062】
なお、本実施の形態2では、ステップS12において金属粉末21m同士を焼結または仮焼結させているので、造粒粉21に含まれる第1の結合剤21bがこの時点で昇華する。そのため、ステップS12では、第1の結合剤21bの昇華によって発生するヒュームおよびガスを回収装置で回収することが望ましい。
【0063】
また、加熱装置5に用いる熱源の種類については、特に、限定されるものではないが、粉末層の一部に選択的にエネルギを投入して焼結温度または仮焼結温度まで高めることのできる熱源である必要がある。このような熱源には、電子ビームまたはレーザを照射する熱源が例示される。ただし、熱源から供給されるエネルギには、金属粉末21mを溶融させるほどの温度に上昇させる強度は必要なく、金属粉末21mが焼結または仮焼結する温度に上昇させる程度の強度でよい。加熱装置5に用いる熱源が、レーザを照射する熱源である場合には、数十から数百ワットのエネルギでよい。加熱装置5に用いる熱源が、電子ビームを照射する熱源である場合には、金属粉末21mが仮焼結する程度の千から三千ワットのエネルギでよい。
【0064】
ステップS12における造粒粉21の加熱は、不活性ガス雰囲気または真空環境下で行われることが望ましい。不活性ガスには、窒素、アルゴンおよびヘリウムが例示される。焼結または仮焼結時の金属粉末21mの酸化を防ぐ観点からは、真空環境下で電子ビームの照射によって造粒粉21の加熱が行われることが望ましい。ただし、これらの記載は、大気中で造粒粉21の加熱が行われることおよび他の熱源を用いて加熱することを除外するものではない。
【0065】
次に、図10に示すプロセスp33において、第1の粉末層11の上に造粒粉21をさらに敷き詰める第2の敷設工程を行う(ステップS13)。第2の敷設工程では、第1の粉末層11の上に第2の粉末層12が形成される。
【0066】
次に、図10に示すプロセスp34において、加熱装置5で第2の粉末層12の一部を選択的に加熱する(ステップS14)。ステップS14では、選択的に加熱された造粒粉21が焼結温度または仮焼結温度まで熱せられることで選択的に加熱された造粒粉21に含まれる金属粉末21m同士が焼結または仮焼結によって結合される。すなわち、ステップS12では、選択的に加熱された造粒粉21に含まれる金属粉末21m同士を結合させる第2の結合工程が行われる。また、造粒粉21に含まれる第1の結合剤21bがこの時点で昇華する。また、図10に示すように、プロセスp34では、加熱される造粒粉の面積が第1の粉末層11よりも少なくなっている。
【0067】
なお、第2の結合工程では、第2の粉末層12のうち加熱された造粒粉21に含まれる金属粉末21mが、第1の粉末層11とも結合される。これにより、複数の金属粉末21mが結合された積層体222が得られる。この後、第2の敷設工程および第2の結合工程を繰り返すことで、所望の厚さの積層体222を得る。
【0068】
次に、図10に示すプロセスp35において、積層体222をテーブル10上から移動させて、加熱されていない造粒粉21を除去する(ステップS15)。なお、積層体222をテーブル10から取り外しやすいように、第1の粉末層11を加熱する際に、テーブル10に接する造粒粉21は加熱していない。これにより、テーブル10に接する造粒粉21に含まれる金属粉末21mによって形成される領域が、テーブル10と結合しない非結合領域となるため、積層体222の取り外しが容易となる。なお、テーブル10に接する造粒粉21に投入するエネルギを、それよりも上層に積層される造粒粉21に投入するエネルギよりも低く抑えてもよい。この場合には、テーブル10に接する造粒粉21に含まれる金属粉末21mのテーブル10への結合力が、それよりも上層での造粒粉21に含まれる金属粉末21m同士の結合力よりも低く抑えられる。これにより、テーブル10に接する造粒粉21によって形成される領域が、テーブル10への結合力が抑えられた低結合領域となり、積層体222の取り外しの容易化を図ることができる。
【0069】
本実施の形態2では、ステップS12およびステップS13、すなわち第1の結合工程および第2の結合工程において、第1の結合剤21bを昇華させるとともに金属粉末21mを焼結または仮焼結させているので、パラフィンが残存していない放電表面処理電極1Qとして積層体222をそのまま用いることができる。したがって、実施の形態1のような高温炉への投入工程が不要となる。これにより、放電表面処理電極1を製造する製造設備の簡素化および製造工程の簡素化を図ることができる。
【0070】
以上説明した製造方法で製造された放電表面処理電極1Qでは、加熱される造粒粉21の位置を制御することで、第1の粉末層11および第2の粉末層12において結合される金属粉末21mの割合を異ならせることが可能となる。これは、放電表面処理電極1Qにおいて、第1の粉末層11で形成される領域と第2の粉末層12で形成される領域とで空孔率を異ならせることができると換言できる。
【0071】
図10に示した例では、第1の粉末層11で加熱される造粒粉21の割合よりも第2の粉末層12で加熱される造粒粉21の割合を低くしている。すなわち、第1の粉末層11よりも第2の粉末層12で空孔率を高くしている。このように、本実施の形態2にかかる放電表面処理電極1Qの製造方法では、放電表面処理電極1の内部に空孔率が他の領域と異なる領域を形成することができる。また、より初期に積層される第1の粉末層11で空孔率を低くすることで、積層体222の形成初期において積層の安定化を図ることができる。なお、第1の粉末層11で空孔率を高くし、第2の粉末層12で空孔率を低くしても構わない。
【0072】
また、所望の位置にある造粒粉21に含まれる金属粉末21mを結合させることができるので、加熱する位置を異ならせることで、放電表面処理電極1Qを様々な形状で製造することができる。したがって、圧粉体を形成して放電表面処理電極を製造する場合のように、異なる形状の放電表面処理電極に合わせた型枠を製造する必要がない。また、後加工によって放電表面処理電極を所望の形状にするに必要がない。したがって、形状に合わせた型枠を製造するコスト、または後加工を行うコストを削減することで、放電表面処理電極の製造コストを抑制することができる。なお、これらの記載は、実施の形態2にかかる放電表面処理電極1Qに対して後加工を行って放電表面処理電極1Qの形状を加工することを排除するものではない。
【0073】
なお、第1の粉末層11に用いられる造粒粉21と第2の粉末層12に用いられる造粒粉21とで、含まれる金属粉末21mの材料を異ならせてもよい。もちろん、第2の敷設工程と第2の結合工程を繰り返す場合にも、積層される粉末層ごとに造粒粉21に含まれる金属粉末21mの材料を異ならせてもよい。
【0074】
また、ステップS11およびステップS13において、造粒粉21ではなく金属粉末21mをそのまま敷き詰めるようにしても構わない。この場合であっても、加熱装置5による選択的加熱によって、所望の位置で金属粉末21mを焼結または仮焼結させて、金属粉末21m同士を結合させることができる。また、金属粉末21mをそのまま敷き詰めた場合には、加熱時の第1の結合剤21bの昇華がない。そのため、第1の結合剤21bの昇華によって発生するヒュームおよびガスを回収する回収装置が不要となる。
【0075】
なお、本実施の形態2かかる放電表面処理電極1Qの製造方法で、上記実施の形態1の図4図5図6で示した空孔率が制御された放電表面処理電極1Qを製造し、その放電表面処理電極1Qで放電表面処理を行ってももちろん構わない。この場合にも、上記実施の形態1での説明と同様の効果を得ることができる。
【0076】
また、本実施の形態2かかる放電表面処理電極1Qの製造方法で、上記実施の形態1の図7および図8で示したように、治具50またはサポート部51上に放電表面処理電極1Qを形成してもよい。この場合にも、上記実施の形態1での説明と同様の効果を得ることができる。
【0077】
実施の形態3.
図11は、本発明の実施の形態3にかかる放電表面処理電極1Rの製造方法を示す図である。なお、上記実施の形態と同様の構成については、同様の符号を付して詳細な説明を省略する。図11に示すプロセスp41からプロセスp45では、所望のパターン形状で造粒粉21をテーブル10または第1の粉末層11上に供給する。そして、所望のパターン形状で形成された造粒粉21を加熱装置5で加熱して、造粒粉21に含まれる第1の結合剤21bの再溶融後の固化あるいは造粒粉21に含まれる金属粉末21mの焼結または仮焼結によって、造粒粉21同士を結合または金属粉末21m同士を結合させる。なお、造粒粉に向けて第2の結合剤を噴射して造粒粉同士を結合させてもよい。これにより、放電表面処理電極1Rが得られる。本実施の形態3では、所望のパターンの形状を異ならせることで、他の領域と空孔率の異なる領域を有する放電表面処理電極1Rを得ることができる。図11に示す例では、第1の粉末層11で形成される領域よりも、第2の粉末層12で形成される領域のほうが、空孔率が高くなっている。
【0078】
実施の形態4.
図12は、本発明の実施の形態4にかかる放電表面処理電極1Sを示す図である。本実施の形態4では、第1の粉末層11に用いられる造粒粉21の粒径dと、第2の粉末層12に用いられる造粒粉31の粒径dとを異ならせている。具体的には、造粒粉21の粒径dよりも造粒粉31の粒径dのほうが大きくなっている。そして、粒径の大きい造粒粉31が敷き詰められた第2の粉末層12によって形成される領域のほうが、第1の粉末層11によって形成される領域よりも空孔率を高くすることができる。
【0079】
なお、詳細な図示は省略するが、造粒粉31も複数の金属粉末が第1の結合剤で結合されてまとめられている。また、本実施の形態4でも第1の粉末層11を形成し、その第1の粉末層11で造粒粉21を結合し、第1の粉末層11の上に第2の粉末層12を形成し、その第2の粉末層12で造粒粉31を結合することが行われる。また、第1の粉末層11での造粒粉21の結合と、第2の粉末層12での造粒粉31の結合は、上記他の実施の形態で説明したように、第2の結合剤4の供給による結合であってもよいし、造粒粉に含まれる第1の結合剤の再溶融後の固化による結合であってもよいし、熱源からのエネルギ供給による焼結または仮焼結による結合であってもよい。
【0080】
図13は、実施の形態4にかかる放電表面処理電極1Sの製造に用いられる造粒粉22を示す断面図である。図13に示す造粒粉22は、造粒粉21の周囲にバインダ膜41が形成されている。造粒粉22では、バインダ膜41に膜厚を異ならせることで造粒粉22の粒径を異ならせることができる。このように、バインダ膜41の膜厚を異ならせることで粒径を異ならせた造粒粉22を用いて、図12に示す放電表面処理電極1Sを製造してもよい。特に、バインダ膜41の膜厚が大きいほど、造粒粉22が敷き詰められた場合の造粒粉21同士の距離が離れる。したがって、バインダ膜41の厚さによって放電表面処理電極1Sの空孔率を制御することができる。
【0081】
以上の実施の形態に示した構成は、本発明の内容の一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。
【符号の説明】
【0082】
1,1Q,1R,1S 放電表面処理電極、2,222 積層体、3 結合剤噴射装置、4 第2の結合剤、5 加熱装置、10 テーブル、11 第1の粉末層、12 第2の粉末層、20 第1の領域、23 凹部、30 第2の領域、40 第3の領域、50 治具、51 サポート部、51a 突部、21,22,31 造粒粉、21b 第1の結合剤、21m 金属粉末、120 第3の皮膜、130 第2の皮膜、140 第1の皮膜、150 被加工物、220 第1の皮膜、230 第2の皮膜。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【国際調査報告】