特表-18123763IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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再表2018-123763樹脂組成物およびフィラメント状成形体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2018年7月5日
【発行日】2018年12月27日
(54)【発明の名称】樹脂組成物およびフィラメント状成形体
(51)【国際特許分類】
   C08L 67/04 20060101AFI20181130BHJP
   C08L 77/00 20060101ALI20181130BHJP
   C08K 3/00 20180101ALI20181130BHJP
   B29C 64/153 20170101ALI20181130BHJP
   B29C 64/314 20170101ALI20181130BHJP
   C08L 101/16 20060101ALN20181130BHJP
【FI】
   C08L67/04ZBP
   C08L77/00
   C08K3/00
   B29C64/153
   B29C64/314
   C08L101/16
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】18
【出願番号】特願2018-517240(P2018-517240)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2017年12月20日
(11)【特許番号】特許第6359230号(P6359230)
(45)【特許公報発行日】2018年7月18日
(31)【優先権主張番号】特願2016-250317(P2016-250317)
(32)【優先日】2016年12月26日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2017-182457(P2017-182457)
(32)【優先日】2017年9月22日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】特許業務法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】臼井 あづさ
(72)【発明者】
【氏名】野口 彰太
(72)【発明者】
【氏名】松岡 文夫
(72)【発明者】
【氏名】中谷 雄俊
【テーマコード(参考)】
4F213
4J002
4J200
【Fターム(参考)】
4F213AA24
4F213AA29
4F213AR12
4F213AR20
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL12
4F213WL32
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4F213WL96
4J002CF18W
4J002CL01X
4J002CL03X
4J002DA026
4J002DA036
4J002DE076
4J002DE086
4J002DE106
4J002DE136
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4J002DE186
4J002DE236
4J002DG026
4J002DG046
4J002DJ006
4J002DJ016
4J002DJ036
4J002DJ046
4J002DJ056
4J002DL006
4J002FD016
4J002FD170
4J002GK01
4J002GT00
4J200AA04
4J200BA14
4J200CA06
4J200DA00
4J200EA07
4J200EA09
(57)【要約】
熱溶解積層法3Dプリンターの造形材料用樹脂組成物であって、ポリ乳酸(A)とポリアミド共重合体(B)とを含有し、ポリ乳酸(A)とポリアミド共重合体(B)との質量比(A/B)が90/10〜25/75であることを特徴とする樹脂組成物。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱溶解積層法3Dプリンターの造形材料用樹脂組成物であって、ポリ乳酸(A)とポリアミド共重合体(B)とを含有し、ポリ乳酸(A)とポリアミド共重合体(B)との質量比(A/B)が90/10〜25/75であることを特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】
曲げ弾性率が1.5〜3.2GPaであり、摩耗試験時の摩耗質量が、ポリ乳酸(A)の摩耗質量に対して、1.2〜2.0倍であることを特徴とする請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項3】
さらに、充填剤(C)を含有することを特徴とする請求項1または2記載の樹脂組成物。
【請求項4】
熱溶解積層法3Dプリンターの造形材料用成形体であって、請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂組成物で構成され、直径が0.2〜5.0mmであることを特徴とするフィラメント状成形体。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱溶解積層法3Dプリンターの造形材料用の樹脂組成物と、それからなるフィラメント状成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
3DCADや3次元コンピューターグラフィックスのデータを元に、立体造形物(3次元のオブジェクト)を作製する3Dプリンターは、近年、産業向けを中心に急速に普及している。3Dプリンターの造形方法には、光造形、インクジェット、粉末石膏造形、粉末焼結造形、熱溶解積層造形等の方法がある。
【0003】
近年、個人向け等の低価格の3Dプリンターの多くは、熱溶解積層法を採用している。この熱溶解積層法3Dプリンターにおいては、造形材料として、フィラメント状成形体が使用され、造形材料を構成する樹脂として、ポリ乳酸やABS樹脂が使用されることが多い。
ポリ乳酸は、融点が約170℃であり、プラスチックの中でも比較的融点が低く、低温で溶融するため、個人向けの3Dプリンターの造形材料に適している。また、ポリ乳酸は、ABS樹脂と比較して、造形性が良好であり、得られる造形物は反りが小さいことから、造形材料としてポリ乳酸を使用することが要望されている。しかしながら、ポリ乳酸は、それ自体が硬く、ポリ乳酸からなる造形物は、ABS樹脂のそれと比較して硬くてもろいため、造形後の仕上げとしてスジ彫りや表面研磨などができないことがあった。
【0004】
特許文献1には、表面研磨しやすい熱溶解積層方式三次元造形素材として、ポリ乳酸にスチレン系樹脂やポリエステル等を配合した組成が開示されている。しかしながら、この素材は、研磨性が十分に向上したものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公報第2015/037574号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記の問題点を解決しようとするものであり、3Dプリンターにより立体造形物を得る際の造形材料として好適に使用することができる樹脂組成物であって、柔軟性および研磨性に優れた立体造形物を良好に作製することができる樹脂組成物およびそれからなるフィラメント状成形体を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために検討した結果、本発明に到達した。すなわち、本発明の要旨は下記の通りである。
(1)熱溶解積層法3Dプリンターの造形材料用樹脂組成物であって、ポリ乳酸(A)とポリアミド共重合体(B)とを含有し、ポリ乳酸(A)とポリアミド共重合体(B)との質量比(A/B)が90/10〜25/75であることを特徴とする樹脂組成物。
(2)曲げ弾性率が1.5〜3.2GPaであり、摩耗試験時の摩耗質量が、ポリ乳酸(A)の摩耗質量に対して、1.2〜2.0倍であることを特徴とする(1)記載の樹脂組成物。
(3)さらに、充填剤(C)を含有することを特徴とする(1)または(2)記載の樹脂組成物。
(4)熱溶解積層法3Dプリンターの造形材料用成形体であって、(1)〜(3)のいずれかに記載の樹脂組成物で構成され、直径が0.2〜5.0mmであることを特徴とするフィラメント状成形体。
【発明の効果】
【0008】
本発明の樹脂組成物は、ポリ乳酸とポリアミド共重合体とを適量配合してなるものであるため、太さ斑のないフィラメント状成形体を得ることが可能である。そして、本発明の樹脂組成物からなるフィラメント状成形体は、3Dプリンターの造形材料として好適であり、柔軟性および研磨性に優れた立体造形物を作製することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
まず、本発明の樹脂組成物について説明する。本発明の樹脂組成物は、ポリ乳酸(A)とポリアミド共重合体とを含有する樹脂組成物であって、ポリ乳酸(A)とポリアミド共重合体(B)との質量比(A/B)が90/10〜25/75である。
【0010】
本発明の樹脂組成物で用いられるポリ乳酸としては、ポリ(L−乳酸)、ポリ(D−乳酸)、これらの混合物、および2種以上の共重合成分を含む共重合体を用いることができ、生分解性および成形加工性の観点から、ポリ(L−乳酸)を主体とすることが好ましい。ポリ(L−乳酸)を主体とするポリ乳酸(A)は、D−乳酸の含有量が10モル%以下であることが好ましく、6モル%以下であることがより好ましい。
【0011】
ポリ乳酸(A)は、成形加工性や性能の点から、温度190℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローレート(MFR)が0.3〜15g/10分であることが好ましい。
【0012】
ポリ乳酸の市販品としては、例えば、NatureWorks社製『4032D』(D−乳酸含有量1.4モル%、MFR3g/10分)、『3001D』(D−乳酸含有量1.4モル%、MFR10g/10分)、あるいは『4060D』(D−乳酸含有量10モル%、MFR3.5g/10分)が挙げられ、これらを混合して使用してもよい。
【0013】
本発明の樹脂組成物は、ポリアミド共重合体(B)を含有することが必要である。ポリ乳酸(A)にポリアミドを配合することにより、樹脂組成物は、柔軟性が向上し、ポリアミドが共重合成分を含有する共重合体であると、樹脂組成物は、柔軟性に加えて、研磨性と製糸性も向上する。
ポリ乳酸(A)とポリアミド共重合体(B)との質量比(A/B)が90/10〜25/75であることが必要であり、中でも90/10〜50/50であることが好ましく、75/25〜50/50であることがより好ましい。ポリアミド共重合体(B)の割合が10質量%未満であると、得られる造形物は、柔軟性および研磨性が低いものとなる。一方、ポリアミド共重合体(B)の割合が75質量%を超えて、吸湿量が多いポリアミド共重合体(B)の割合が多くなると、フィラメント状成形体は、3Dプリンターでの溶融時に発泡し、満足な造形物が得られなくなる。また得られる造形物は、研磨性も低下する。さらには、フィラメント状成形体は、直径にバラツキが生じやすく、バラツキが大きくなると、3Dプリンターでのフィラメント供給量(吐出量)が変動し、満足な造形物が得られなくなることがある。
【0014】
本発明におけるポリアミド共重合体(B)を構成する共重合成分としては、ポリアミド形成能を有するものであれば、特に限定されず、例えば、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド66、ポリアミド69、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド613、およびポリアミド10T等が挙げられる。上記共重合成分を2種以上含むポリアミド共重合体(B)としては、柔軟性を有し、ポリ乳酸(A)との相溶性が良好であり、ポリ乳酸(A)と融点が近く、ポリ乳酸(A)と混合しやすいことから、ポリアミド6/66共重合体、ポリアミド6/12共重合体、ポリアミド6/66/12共重合体、イソフタル酸/アジピン酸/1,6−ヘキサメチレンジアミン/ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタンの重縮合体等が好ましい。
【0015】
ポリアミド共重合体の市販品としては、例えば、宇部興産社製『5023』(6/66共重合体、融点196℃)、『7034』(6/12共重合体、融点201℃)、あるいは『6434』(6/66/12共重合体、融点188℃)、さらに、ユニチカ社製『CX1004』(イソフタル酸/アジピン酸/1,6−ヘキサメチレンジアミン/ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタンの重縮合体、融点210℃)が挙げられる。
【0016】
本発明の樹脂組成物において、上記のようなポリアミド共重合体(B)は、ポリ乳酸(A)との相溶性が非常に良く、相溶化剤がない状態でも、十分に相溶し、直径に斑のないフィラメント状成形体を得ることができるが、本発明の樹脂組成物は、通常の相溶化剤を含有することを妨げるものではない。相溶化剤としては、例えば、東亜合成社製のアルフォンシリーズ、日油社製のモディパーAシリーズ、トレンドサイン社製のSAGシリーズ、BASF社製のJONCRYL ADRシリーズ等が挙げられる。
なお、エポキシ基やアリル基等の反応性を有する官能基を含有する相溶化剤は、これらの官能基がポリ乳酸(A)と反応し、ポリ乳酸(A)がゲル化しやすくなることがある。ポリ乳酸(A)がゲル化すると、フィラメント状成形体を製糸性よく得ることが困難になるとともに、フィラメント状成形体を使用して得られる造形物は、表面にゲル化した部分が現れて、品位が低下することがある。
【0017】
本発明の樹脂組成物は、さらに充填剤(C)を含有することにより、研磨性を向上させることが可能である。充填剤としては、ガラスビーズ、ガラス繊維粉、ワラストナイト、マイカ、合成マイカ、セリサイト、タルク、クレー、ゼオライト、ベントナイト、カオリナイト、ドロナイト、シリカ、チタン酸カリウム、微粉ケイ酸、シラスバルーン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化チタン、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸ジルコニウム、石膏、グラファイト、モンモリロナイト、カーボンブラック、硫化カルシウム、酸化亜鉛、窒化ホウ素、セルロースファイバー等が挙げられる。
中でも、マイカやタルク、炭酸カルシウムが好ましく、またこれらの併用も、研磨性向上の点から特に好ましい。炭酸カルシウムは、含有水分が多いため、ポリ乳酸(A)を分解し、粘度低下を引き起こすおそれがあることから、疎水処理が施されたものであることがより好ましい。
充填剤(C)の粒径は、製糸性よくフィラメント状成形体を得るために、100μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましい。充填剤(C)は、粒径が100μmを超えると、フィラメント状成形体製造時において、紡糸機のフィルターに詰り、濾過圧が上昇することがある。また得られるフィラメント状成形体は、ざらつきが強くなって、品位が低下することがある。
【0018】
樹脂組成物における充填剤(C)の含有量は30質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましい。樹脂組成物は、充填剤(C)の含有量が30質量%を超えると、製糸性が低下し、得られるフィラメント状成形体は、直径のバラツキが大きくなることがあり、表面のざらつきも大きくなることがある。
また、タルクと炭酸カルシウムを併用する場合、製糸性およびフィラメント状成形体の平滑性の点から、質量比(タルク/炭酸カルシウム)は80/20〜20/80であることが好ましく、70/30〜30/70であることがより好ましい。
【0019】
本発明の樹脂組成物は、上記のような充填剤(C)を含有することにより、フィラメント状成形体の作製時および、3Dプリンターでの造形時に、ノズルに汚れが出やすくなることがある。そのため、本発明の樹脂組成物は、充填剤(C)を含有する場合は、汚れ防止剤も含有することが好ましい。
汚れ防止剤としては、金属セッケン、フッ素系滑剤、脂肪酸アミドなどを主成分とする滑剤などを用いることができる。金属セッケンは、アルカリ金属以外の金属の脂肪酸塩のことをいい、主な金属として、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、銅、鉛、アルミニウム、鉄、コバルト、クロム、マンガンなどが挙げられる。また、フッ素系滑剤としては、パーフルオロアルカン、パーフルオロカルボン酸エステル、パーフルオロ有機化合物やフッ化ポリマーなどが挙げられ、脂肪族アミドとしては、オレイン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミドなどが挙げられる。中でも、フッ素系滑剤のフッ化ビニリデン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体は、効果が大きく、好ましい。市販品としては、例えば、ダイキン工業社製のPPAシリーズが挙げられる。
【0020】
さらに、本発明の樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、染料または顔料を含む着色剤、帯電防止剤、末端封鎖剤、紫外線防止剤、光安定剤、防曇剤、防霧剤、可塑剤、難燃剤、着色防止剤、酸化防止剤、離型剤、防湿剤、酸素バリア剤、結晶核剤等を含有することができる。またこれらを2種以上含有してもよい。ただし、これらの添加剤の粒径は、製糸性よくフィラメント状成形体を得るために、100μm以下であることが好ましい。
【0021】
本発明の樹脂組成物は、ポリ乳酸(A)にポリアミド共重合体(B)を配合したため、柔軟性に優れるものであり、柔軟性を示す指標である曲げ弾性率が3.2GPa以下であることが好ましく、中でも曲げ弾性率は、1.5〜3.2GPaであることが好ましい。
【0022】
また、本発明の樹脂組成物は、ポリ乳酸(A)にポリアミド共重合体(B)を適量配合するものであるため、詳細は不明であるが、研磨性に優れるものである。本発明の樹脂組成物において、研磨性を示す指標である摩耗試験時の摩耗質量は、ポリアミド共重合体(B)を配合していないポリ乳酸(A)単独の場合の摩耗質量の1.2倍以上であることが好ましく、1.3倍以上であることがより好ましく、1.4倍以上であることがさらに好ましい。また摩耗質量の上限は、造形物の型崩れを防止するために、ポリ乳酸(A)単独の場合の摩耗質量の2.0倍であることが好ましい。
【0023】
本発明の樹脂組成物は、上記のポリ乳酸(A)とポリアミド共重合体(B)とを混合することによって作製することができる。両樹脂の混合には、単軸押出機、二軸押出機、ロール混練機、ブラベンダー等の一般的な混練機を使用することができ、なかでも、混練状態の向上のため、二軸の押出機を使用することが好ましい。樹脂組成物は、例えば、シリンダー温度160〜230℃、ダイス温度180〜240℃の条件で、これらの樹脂を溶融混練して押出して、ストランドを冷却後、ペレットサイズにカットする方法で作製することが好ましい。なお、二軸の紡糸装置を使用すれば、溶融混練したポリ乳酸(A)とポリアミド共重合体(B)とから、樹脂組成物のペレットを作製することなく、そのままフィラメント状成形体を作製することも可能である。
【0024】
次に、本発明のフィラメント状成形体は、本発明の樹脂組成物で構成されてなるものである。樹脂組成物をフィラメントの形状とすることで、熱溶解積層法3Dプリンターの造形材料として好適に使用することができる。フィラメント状成形体は、モノフィラメントでも、マルチフィラメントでもよいが、モノフィラメントが好ましい。またこれらは未延伸のものであっても延伸したものであってもよい。
【0025】
フィラメント状成形体は、直径が0.2〜5.0mmであることが好ましく、1.5〜3.2mmであることがより好ましく、中でも1.6〜3.1mmであることがさらに好ましい。フィラメント状成形体の直径とは、フィラメント状成形体の長手方向に対して垂直に切断した断面における、最大長径と最小短径の平均である。フィラメント状成形体は、直径が0.2mm未満であると、細くなりすぎて、汎用の熱溶解積層法3Dプリンターに適さないことがある。なお、汎用の熱溶解積層法3Dプリンターに適したフィラメント状成形体の直径の上限は、5.0mm程度である。
【0026】
モノフィラメントからなるフィラメント状成形体を作製する方法としては、本発明の樹脂組成物を、170〜270℃で溶融し、定量供給装置でノズル孔から押出し、これを20〜80℃の液浴中で冷却固化後、紡糸速度1〜50m/分で引き取り、ボビン等に巻き取る方法等が挙げられる。なお、モノフィラメントの形状にする際、ある程度の範囲内の倍率で延伸を施してもよい。モノフィラメントの延伸は、紡糸後のモノフィラメントを一度巻き取ってからおこなってもよく、また、モノフィラメントは、紡糸後に巻き取らず、紡糸に続いて、連続的に延伸してもよい。延伸に際して、適度な加熱延伸、熱処理を施すと、より安定したフィラメントが形成され、形成されたフィラメントは、フィラメント強度が増加し、フィラメント表面の平滑性、耐屈曲性が向上する。
【実施例】
【0027】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。実施例および比較例の樹脂組成物およびフィラメント状成形体の評価に用いた測定法は、次のとおりである。
【0028】
(1)ポリ乳酸(A)のD体含有量
ポリ乳酸(A)約0.3gを1N−水酸化カリウム/メタノール溶液6mlに加え、65℃にて充分撹拌し、ポリ乳酸樹脂を分解させた後、硫酸450μlを加えて、65℃にて撹拌し、乳酸メチルエステルとした。このサンプル5ml、純水3ml、および、塩化メチレン13mlを混合して振り混ぜた。静置分離後、下部の有機層を約1.5ml採取し、HPLC用ディスクフィルター(孔径0.45μm)でろ過し、ガスクロマトグラフィーで測定した。
ガスクロマトグラフィー(Hewlett Packard社製、HP−6890)は、ヘリウム(He)をキャリアガスとして、流速1.8ml/minで、オーブンプログラムは90℃で3分間保持し、50℃/minで220℃まで昇温し、1分間保持する条件でおこなった。カラムは、J&W社製DB−17(30m×0.25mm×0.25μm)を用い、検出器はFID(温度300℃)、内部標準法で測定した。乳酸メチルエステルの全ピーク面積に占めるD−乳酸メチルエステルのピーク面積の割合(%)を算出し、これをD体含有量(モル%)とした。
【0029】
(2)ポリ乳酸(A)のメルトフローレート(MFR)
東洋精機製作所社製メルトインデクサーF−B01を用いて、JIS K7210に準拠して測定した。試験温度190℃、試験荷重2.16kgの条件で測定した。
【0030】
(3)研磨性
得られた樹脂組成物のペレット(65℃×48hrの条件で乾燥して、水分率を0.01%としたもの)を用いて、射出成形機(日精樹脂社製、NEX−110型)を用い、シリンダー温度190〜220℃、金型温度30〜40℃の条件で、直径10mm、厚さ2mmの円板を作製した。
テーバー摩耗試験機(東洋精機製、Rotary Abrasion Testen)を用いて、JIS K7204に準拠して、円板の摩耗試験を実施した。用いた摩耗輪はH−22であり、回転数は1000回転とした。
摩耗試験前後の円板の質量を測定してその前後の質量差を摩耗質量とした。各樹脂組成物からなる円板における摩耗質量を、ポリ乳酸のみから構成される比較例1の円板の摩耗質量で除して、研磨性を評価した。
【0031】
(4)柔軟性
得られた樹脂組成物のペレット(65℃×48hrの条件で乾燥して、水分率を0.01%としたもの)を用いて、射出成形機(日精樹脂社製、NEX−110型)を用い、シリンダー温度190〜220℃、金型温度30〜40℃の条件で、ISO準拠の一般物性測定用試験片(ダンベル片)を作製し、曲げ弾性率を測定した。
【0032】
(5)製糸性
紡糸速度10m/分にて24時間、繊経1.75mmのモノフィラメントを採取した際の糸切れ回数により、以下のように3段階で評価した。
〇:糸切れが0回
△:糸切れ回数が1〜3回
×:糸切れ回数が4回以上、もしくはフィラメントの引取不可
【0033】
(6)モノフィラメントの直径
得られたモノフィラメントを、20cm毎に、モノフィラメントの長手方向に対して垂直に切断し、測定サンプルを30個得た。各サンプルにおいて、断面における最大長径と最小短径を、マイクロメーターを用いて測定し、その平均を各サンプルの直径とした。全30サンプルの直径を平均して、モノフィラメントの直径を算出した。
【0034】
(7)モノフィラメントの直径バラツキ
上記(6)において算出した、全サンプルの直径の最大値(M1)と最小値(M2)を用いて、モノフィラメントの直径バラツキを算出した。
直径バラツキ=(M1−M2)/2
【0035】
(8)モノフィラメントの耐屈曲性
JIS P8115に記載のMIT耐折度試験に準じて、マイズ試験機社製、MIT耐折度試験機を用い、荷重5N、クランプ先端R0.38mm、つかみ間隔2.0mm、試験速度175rpm、折り曲げ角度135度で実施し、モノフィラメントの耐折回数を計測した。測定には、標準状態(室温22±2℃、湿度50±2%)で48時間以上放置した試料を用いた。耐折回数により、以下のように4段階で評価した。本発明においては、耐折回数は5回以上であることが好ましく、さらには30回以上であることが好ましく、100回以上であることがより好ましい。
◎:100回以上
○:30〜99回
△:5〜29回
×:5回未満
【0036】
(9)フィラメントのざらつき
フィラメント表面が平滑であれば「5」、ざらつきが最も大きいものを「1」とする5段階評価を評価者5人によりおこない、その平均値でフィラメントのざらつきを評価した。
【0037】
(10)3Dプリンター造形性
得られたモノフィラメントを用いて、3Dプリンター(FLASHFORGE社製、CREATOR PRO)を用いて、ノズル温度190〜240℃、テーブル温度50℃の条件でISOダンベル片を造形し、その結果により以下の3段階で評価した。
○:問題なく造形可能
△:気泡を含有し造形性やや難
×:造形不可
【0038】
(11)3Dプリンターのノズル汚れ
上記(10)3Dプリンター造形性の評価に用いた方法で、ISOダンベル片の造形を10回繰り返しおこない、その間のノズルの汚れを観察した。その結果により、以下の3段階で評価した。
○:10回造形後もノズルに汚れが付着していなかった。
△:10回造形後にノズルに少量汚れが付着していた。
×:ノズルに付着した汚れが、造形したISOダンベル片にも付着していた。
【0039】
また、実施例、比較例に用いた各種原料は次の通りである。
〔ポリ乳酸〕
・ポリ乳酸樹脂(NatureWorks社製『3001D』、D−乳酸含有量1.4モル%、MFR10g/10分)
・ポリ乳酸樹脂(NatureWorks社製『4060D』、D−乳酸含有量10モル%、MFR3.5g/10分)
〔ポリアミド〕
・ポリアミド6/66/12共重合体(宇部興産社製『6434B』、押出成形用、融点188℃)
・ポリアミド6/12共重合体(宇部興産社製『7034B』、押出成形用、融点201℃)
・ポリアミド6/66共重合体(宇部興産社製『5023B』、押出成形用、融点196℃)
・ポリアミド共重合体(ユニチカ社製『CX1004』、融点210℃)
・ポリアミド6(ユニチカ社製『A1030BRL』、融点225℃)
・ポリアミド12(アルケマ社製『AMNO』、融点181℃)
〔相溶化剤〕
・グラフトコポリマー(日油社製『モディパーA−4400』、主鎖:EGMA、側鎖:AS)
〔充填剤〕
・タルク(竹原化学工業社製『ハイミクロンタルクHE5』、平均粒子径1.6μm)
・炭酸カルシウム(竹原化学工業社製『SMP−1510T』、最大粒子径30μm)
・マイカ(レプコ社製『S−200HG』、平均粒子径55μm)
〔汚れ防止剤のマスターバッチペレット〕
二軸押出機(池貝社製、PCM−30)を用い、ポリ乳酸(3001D)99質量部と、汚れ防止剤(フッ化ビニリデン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ダイキン工業社製『PPA DA-310ST』)1質量部とをブレンドして押出機に供給した。温度200℃、スクリュー回転数120rpm、吐出量7kg/hの条件で混練、押出した。引き続き、押出機先端から吐出されたストランドを、冷却バスで冷却後、ペレタイザーにて引き取り、カッティングして汚れ防止剤のマスターバッチペレット(M)を得た。
【0040】
実施例1
二軸押出機(池貝社製、PCM−30、スクリュー径29mm、L/D30、ダイス径3mm、孔数3)を用い、ポリ乳酸(A)90質量部と、ポリアミド共重合体(B)としてポリアミド6/66/12共重合体10質量部とをブレンドして、押出機に供給した。温度215℃、スクリュー回転数120rpm、吐出量7kg/hの条件で混練、押出した。引き続き、押出機先端から吐出されたストランドを、冷却バスで冷却後、ペレタイザーにて引き取り、カッティングして樹脂組成物のペレットを得た。得られた樹脂組成物のペレットを65℃×48hrの条件で乾燥して、水分率を0.01%とした。
次にこの乾燥させた樹脂組成物ペレットを、スピニングテスター(富士フィルター工業社製、スクリュー径30mm、溶融押出しゾーン1000mm)を用い、紡糸温度205℃の条件で、得られるモノフィラメントの直径が1.75mmになるように吐出量を調整して、モノフィラメント孔径5mmで1孔有する丸断面の紡糸口金から押出した。引き続き、押出されたモノフィラメントを、紡糸口金より20cm下の冷却温水50℃に浸漬し、冷却時間1分で調整しながら引き取り、モノフィラメントを得た(モノフィラメント製造方法A)。
【0041】
実施例2、18、20〜27、比較例1〜7
ポリ乳酸、ポリアミド共重合体、充填剤および相溶化剤の質量部を表1、2に示すものに変更してブレンドした以外は、実施例1と同様にして、樹脂組成物のペレットを得た。そして、得られた樹脂組成物のペレットを用いて、実施例1と同様にして、製造方法Aにより、モノフィラメントを得た。
【0042】
実施例3〜4
混練温度を210℃に変更した以外は、実施例2と同様の方法で、水分率0.01%の樹脂組成物ペレットを得た。
実施例3においては、この乾燥させた樹脂組成物ペレットを、モノフィラメント製造装置(単軸押出機(日本製鋼所社製、スクリュー径60mm、溶融押出しゾーン1200mm))を用い、紡糸温度220℃の条件で、得られるモノフィラメントの直径が1.74mmになるように吐出量を調整して、孔径5mmで1孔有する丸断面の紡糸口金から押出した。引き続き、押し出されたモノフィラメントを紡糸口金より20cm下の冷却温水50℃に浸漬し、引き取り速度30m/分で調整しながら引き取り、モノフィラメントを得た。冷却時間は約1分であった(モノフィラメント製造方法B(延伸倍率1))。
実施例4においては、紡糸・延伸を連続的におこなった。すなわち、実施例3と同様の条件で、得られるモノフィラメントの直径が1.75mmになるように吐出量を調整して、紡糸口金から樹脂組成物を押出した後、引き取った。冷却時間は約1分であった。さらに引き続き70℃の温浴下で3倍に延伸して、さらに引き続き、温度180℃で熱処理し、モノフィラメントを得た(モノフィラメント製造方法B(延伸倍率3))。
【0043】
実施例5〜17、19、28〜29
ポリ乳酸、ポリアミド共重合体、充填剤および汚れ防止剤のマスターバッチの質量部を表1、2に示すものに変更してブレンドした以外は、実施例3と同様にして、樹脂組成物のペレットを得た。そして、得られた樹脂組成物のペレットを用いて、実施例3、4と同様にして、製造方法Bにより、モノフィラメントを得た。
【0044】
実施例、比較例で得られた樹脂組成物およびモノフィラメントの評価結果を表1、2に示す。
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】
実施例で得られた樹脂組成物は、研磨性、柔軟性、製糸性に優れ、得られたモノフィラメントは、3Dプリンターにおける造形性に優れていた。このため、これらの樹脂組成物は、熱溶解積層法3Dプリンターの造形材料として、好適に使用することができるものであった。
実施例3の樹脂組成物のペレットを用いて、3倍延伸した実施例4のモノフィラメントは、実施例3で得られた未延伸のモノフィラメントに比べて、耐屈曲性が向上し、また表面のざらつきも改善された。
実施例5〜17、19、23〜24、28〜29の、充填剤を含有する樹脂組成物は、製糸性に悪影響が及ぼされておらず、柔軟性も保持していた。また、得られたモノフィラメントは、3Dプリンターにおける造形性にも優れていた。また、充填剤を含有する樹脂組成物は、研磨性がさらに向上され、柔軟性も保持されていた。このため、充填剤を含有する樹脂組成物から得られるモノフィラメントは、熱溶解積層法3Dプリンターの造形材料として、さらに好適に使用することができるものであった。また、実施例7、12、15、17、29の3倍延伸したモノフィラメントは、未延伸のモノフィラメントに比べて耐屈曲性が向上し、また表面のざらつきも改善されていた。また、実施例16、17のモノフィラメントは、汚れ防止剤を含有するため、3Dプリンターによる造形時において、ノズルに汚れが付着することがなかった。
【0048】
一方、比較例1の樹脂組成物は、ポリ乳酸のみであったため、弾性率が高く柔軟性に劣り、また研磨性も劣った。
比較例2の樹脂組成物は、ポリアミド共重合体の含有量が過少であったため、柔軟性および研磨性が劣った。
比較例3の樹脂組成物は、ポリアミド共重合体の含有量が過多であったため、製糸性および研磨性が劣った。
比較例4の樹脂組成物は、ポリアミド共重合体のみであったため、研磨性が劣った。
比較例5の樹脂組成物は、ポリアミドが共重合成分を含有せず、ポリアミド6であったため、研磨性に劣り、製糸性に劣っていた。また、得られたモノフィラメントは、直径にバラツキが生じ、熱溶解積層法3Dプリンターの液化機にフィラメントを供給するローラに食い込まず、造形することができなかった。
比較例6の樹脂組成物は、ポリアミドが共重合成分を含有せず、ポリアミド12であったため、製糸性に劣り、モノフィラメントを得ることができなかった。
比較例7の樹脂組成物は、ポリアミド共重合体を含有せず、ポリ乳酸に単に充填剤を添加したため、製糸性がやや劣り、柔軟性が大幅に低下し、脆い性状を有するものであり、研磨性についても大幅な向上が認められなかった。



【手続補正書】
【提出日】2018年5月17日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱溶解積層法3Dプリンターの造形材料用樹脂組成物であって、ポリ乳酸(A)とポリアミド共重合体(B)とを含有し、ポリ乳酸(A)とポリアミド共重合体(B)との質量比(A/B)が90/10〜25/75であることを特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】
さらに、充填剤(C)を含有することを特徴とする請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項3】
熱溶解積層法3Dプリンターの造形材料用成形体であって、請求項1または2記載の樹脂組成物で構成され、直径が0.2〜5.0mmであることを特徴とするフィラメント状成形体。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために検討した結果、本発明に到達した。すなわち、本発明の要旨は下記の通りである。
(1)熱溶解積層法3Dプリンターの造形材料用樹脂組成物であって、ポリ乳酸(A)とポリアミド共重合体(B)とを含有し、ポリ乳酸(A)とポリアミド共重合体(B)との質量比(A/B)が90/10〜25/75であることを特徴とする樹脂組成物
(2)さらに、充填剤(C)を含有することを特徴とする(1)記載の樹脂組成物。
)熱溶解積層法3Dプリンターの造形材料用成形体であって、(1)または(2)記載の樹脂組成物で構成され、直径が0.2〜5.0mmであることを特徴とするフィラメント状成形体。
【国際調査報告】