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再表2018-155121非水電解質二次電池用正極活物質、及び非水電解質二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2018年8月30日
【発行日】2019年12月12日
(54)【発明の名称】非水電解質二次電池用正極活物質、及び非水電解質二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/485 20100101AFI20191115BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20191115BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20191115BHJP
   C01G 53/00 20060101ALI20191115BHJP
【FI】
   H01M4/485
   H01M4/525
   H01M4/505
   C01G53/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】19
【出願番号】特願2019-501178(P2019-501178)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2018年2月1日
(31)【優先権主張番号】特願2017-30438(P2017-30438)
(32)【優先日】2017年2月21日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平塚 秀和
【テーマコード(参考)】
4G048
5H050
【Fターム(参考)】
4G048AA03
4G048AA04
4G048AB02
4G048AB06
4G048AC06
4G048AD04
4G048AE05
5H050AA07
5H050AA08
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA07
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB03
5H050CB07
5H050CB11
5H050FA17
5H050HA05
5H050HA09
5H050HA13
(57)【要約】
非水電解質二次電池用正極活物質は、リチウム遷移金属酸化物の一次粒子が凝集した二次粒子を含み、前記一次粒子の平均粒径は1μm以上であり、前記二次粒子の空隙率は30%超である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム遷移金属酸化物の一次粒子が凝集した二次粒子を含み、
前記一次粒子の平均粒径は1μm以上であり、前記二次粒子の空隙率は30%超である、非水電解質二次電池用正極活物質。
【請求項2】
前記二次粒子の細孔径分布は0.3〜1.0μmの範囲にピークを有する分布曲線である、請求項1に記載の非水電解質二次電池用正極活物質。
【請求項3】
前記二次粒子の圧縮破壊強度は200〜500MPaの範囲である、請求項1又は2に記載の非水電解質二次電池用正極活物質。
【請求項4】
前記リチウム遷移金属酸化物の結晶子サイズが200nm以上であり、前記リチウム遷移金属酸化物の結晶歪が0.2%未満である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池用正極活物質。
【請求項5】
正極と、負極と、非水電解質と、を備え、
前記正極は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池用正極活物質を含む、非水電解質二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、非水電解質二次電池用正極活物質、及び非水電解質二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高出力、高エネルギー密度の二次電池として、正極、負極、及び非水電解質を備え、正極と負極との間でリチウムイオンを移動させて充放電を行う非水電解質二次電池が広く利用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、非水電解質二次電池用の正極活物質として、一次粒子が凝集して形成された二次粒子の空隙率が30%以下となるリチウム遷移金属酸化物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−85006号公報
【発明の概要】
【0005】
しかし、特許文献1のように、リチウム遷移金属酸化物の二次粒子の空隙率を30%以下とすると、電解液(非水電解質)の浸透性が低下するため、高出力化を図ることが困難となる。そこで、高出力化を図るためには、二次粒子の空隙率を上げる必要があるが、特許文献1の空隙率より高い空隙率を有する二次粒子を製造しようとすると、一次粒子が微細化し、脆くなるため、充放電サイクル特性が低下してしまうという問題がある。
【0006】
本開示は、上記従来技術の有する課題に鑑みなされたものであり、その目的は、非水電解質二次電池の高出力化を図ると共に充放電サイクル特性の低下を抑制することが可能な非水電解質二次電池用正極活物質を提供することにある。
【0007】
本開示の一態様である非水電解質二次電池用正極活物質は、リチウム遷移金属酸化物の一次粒子が凝集した二次粒子を含み、前記一次粒子の平均粒径は1μm以上であり、前記二次粒子の空隙率は30%超である。
【0008】
本開示の一態様である非水電解質二次電池は、正極と、負極と、非水電解質とを備え、前記正極は上記非水電解質二次電池用正極活物質を含む。
【0009】
本開示の一態様によれば、非水電解質二次電池の高容量化を図ると共に充放電サイクル特性の低下を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態の一例である非水電解質二次電池の斜視図である。
図2】正極活物質を構成する粒子の模式拡大断面図である。
図3】実施例1のリチウム遷移金属酸化物の二次粒子の細孔径分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<本開示の基礎となる知見>
リチウム遷移金属酸化物の二次粒子の空隙率は、リチウム遷移金属酸化物の合成段階で調整することが可能であるが、従来の合成方法では、リチウム遷移金属酸化物の二次粒子の空隙率を上げようとすると、一次粒子は微細化し、脆くなってしまう。リチウム遷移金属酸化物は、非水電解質二次電池の充放電に伴い膨張収縮するが、微細化した一次粒子は、この膨張収縮により破壊されるため、充放電サイクル特性が低下してしまう場合がある。
【0012】
そこで、本発明者らが鋭意検討した結果、リチウム遷移金属酸化物の二次粒子の空隙率を上げても、一次粒子が微細化しないリチウム遷移金属酸化物の合成方法を見出し、以下に説明する態様の非水電解質二次電池用正極活物質を想到するに至った。
【0013】
本開示の一態様である非水電解質二次電池用正極活物質は、リチウム遷移金属酸化物の一次粒子が凝集した二次粒子を含み、前記一次粒子の平均粒径は1μm以上であり、前記二次粒子の空隙率は30%超である。このように、本開示の一態様である非水電解質二次電池用正極活物質は、二次粒子の空隙率が30%超と大きいため、二次粒子内部への電解液の浸透性が向上し、非水電解質二次電池の高出力化を図ることが可能となる。また、一次粒子の平均粒径が1μm以上と大きいため、一次粒子の強度は高い。その結果、電池の充放電に伴うリチウム遷移金属酸化物の膨張収縮によっても、一次粒子は破壊され難く、非水電解質二次電池の充放電サイクル特性の低下を抑制することが可能となる。一次粒子の平均粒径が1μm以上であり、二次粒子の空隙率が30%超であるリチウム遷移金属酸化物の合成方法については後述する。
【0014】
以下、図面を参照しながら、実施形態の一例について詳細に説明する。なお、本開示の非水電解質二次電池用正極活物質、及び非水電解質二次電池は、以下で説明する実施形態に限定されない。また、実施形態の説明で参照する図面は、模式的に記載されたものである。
【0015】
図1は、実施形態の一例である非水電解質二次電池の外観を示す斜視図である。図1に例示する非水電解質二次電池10は、例えば上端に開口部を有する有底角型筒状の外装缶11と、外装缶11の開口部を塞ぐ封口板12とを備える。図1に示す非水電解質二次電池10は角型電池であるが、これに限定されず、例えば、円筒型、コイン型、ボタン型、ラミネート型などが例示できる。
【0016】
外装缶11には電極体及び非水電解質が収容されている。電極体は、正極及び負極がセパレータを介して巻回されてなる巻回型の電極体、正極及び負極がセパレータを介して積層されてなる積層型の電極体等が用いられる。
【0017】
封口板12には、正極外部端子13、負極外部端子14、ガス排出弁15、及び注液部16が設けられている。正極外部端子13と負極外部端子14は、例えば絶縁性のガスケットを用いて封口板12と電気的に絶縁された状態で封口板12に取り付けられ、正極外部端子13は外装缶11内の正極に接続され、負極外部端子14は外装缶11内の負極に接続されている。なお、封口板12に外部端子として負極外部端子のみを設け、外装缶11を正極外部端子とする形態としてもよい。注液部16は、一般的に、非水電解質(電解液)を注液するための注液孔と、注液孔を塞ぐ封止栓とで構成される。
【0018】
以下、非水電解質二次電池10の各構成要素について詳説する。
【0019】
[正極]
正極は、例えば金属箔等の正極集電体と、正極集電体上に形成された正極合材層とで構成される。正極集電体には、アルミニウムなどの正極の電位範囲で安定な金属の箔、当該金属を表層に配置したフィルム等を用いることができる。
【0020】
正極合材層は、正極活物質を含む。また、正極合材層は、正極活物質の他に、導電材及び結着材を含むことが好適である。正極合材層の厚みは、例えば、10μm以上である。
【0021】
正極は、例えば、正極活物質、導電材及びバインダーを含む正極合材スラリーを調製し、この正極合材スラリーを正極集電体上に塗布、乾燥して正極合材層を形成し、この正極合材層を加圧成形することにより作製できる。
【0022】
図2は、正極活物質を構成する粒子の模式拡大断面図である。図2に示すように、正極活物質は、リチウム遷移金属酸化物の一次粒子31が凝集した二次粒子30を含む。リチウム遷移金属酸化物の二次粒子30は、一次粒子31間に形成された空隙32(以下、二次粒子内の空隙32)を有する。
【0023】
リチウム遷移金属酸化物は、従来公知のものが使用され、例えば、少なくともニッケル(Ni)、コバルト(Co)、及びマンガン(Mn)を含有し、リチウム(Li)を除く金属元素の総モル数に対するNiの割合が30モル%以上の酸化物等である。Ni、Co、Mnを含有するリチウム遷移金属酸化物を用いることで、リチウム遷移金属酸化物の二次粒子30の空隙率の調整が容易となり、またNi含有量を高めることで、正極の高容量化を図ることができる。
【0024】
好適なリチウム遷移金属酸化物は、例えば、組成式LiNi(1―x)(0.95≦a≦1.2、0.3≦x<1.0、MはLi、Ni以外の金属元素)で表される酸化物である。Ni含有量は、50モル%以上であってもよく、50モル%〜80モル%であってもよい。リチウム遷移金属酸化物に含有されるLi、Ni以外の金属元素としては、上述のようにCo、Mnが好ましいが、他にも例えば、タングステン(W)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、リン(P)、硫黄(S)から選択される少なくとも一種が含まれていてもよい。さらに、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、カルシウム(Ca)、スカンジウム(Sc)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ガリウム(Ga)、ゲルマニウム(Ge)、イットリウム(Y)、ジルコニウム(Zr)、錫(Sn)、アンチモン(Sb)、鉛(Pb)、及びビスマス(Bi)から選択される少なくとも1種が含まれていてもよい。
【0025】
リチウム遷移金属酸化物の二次粒子30の空隙率は30%超である。特に、電解液の浸透性を向上させ、非水電解質二次電池の出力特性をより向上させることができる点で、二次粒子30の空隙率は、40%以上であることが好ましい。なお、正極合材層中の充填密度を考慮すれば、40%以上60%以下の範囲であることが望ましい。ここで、本明細書中において、リチウム遷移金属酸化物の二次粒子30の空隙率とは、リチウム遷移金属酸化物の二次粒子30の断面積に対する二次粒子内の空隙32の面積の割合から求めた2次元値である。
【0026】
リチウム遷移金属酸化物の二次粒子30の空隙率は、走査型電子顕微鏡(SEM)によって観察される断面SEM画像を解析することにより求めることができる。例えば、正極を樹脂中に埋め込み、クロスセクションポリッシャ(CP)加工などにより正極合材層の断面を作製し、この断面をSEMにより撮影する。或いは、リチウム遷移金属酸化物の粉末を樹脂中に埋め込み、クロスセクションポリッシャ(CP)加工などによりリチウム遷移金属酸化物の粒子断面を作製し、この断面をSEMにより撮影する。
【0027】
Image−Pro PLUS等の解析ソフトを用いて、撮影した断面SEM画像中の各二次粒子30の表面に沿って外径線を描き、外径線に囲まれた部分の総面積を求め、これを二次粒子30の断面積とし、また、上記外径線に囲まれた部分の黒色部の総面積を求め、これを二次粒子内の空隙32の面積として、二次粒子30の断面積に対する二次粒子内の空隙32の面積の割合を算出し、この値をリチウム遷移金属酸化物の二次粒子30の空隙率とする。
【0028】
リチウム遷移金属酸化物の二次粒子30を構成する一次粒子31の平均粒径は、1μm以上である。特に、非水電解質二次電池の充放電サイクル特性の低下をより抑制することができる点で、例えば、1.5μm以上であることが好ましく、1.5μm以上5μm以下の範囲であることがより好ましい。一次粒子31は、例えば楕円体状、棒状等の粒子である。一次粒子31の短径と長径の比(長径/短径)であるアスペクト比は、2倍以上であることが好ましい。或いは二次粒子30を構成する一次粒子31のうち、例えば50%以上の一次粒子が2倍以上のアスペクト比を有することが好ましい。なお、一次粒子31の平均粒径は長径に基づいて算出される。一次粒子31の短径は、例えば0.2μm〜1μmである。
【0029】
一次粒子の平均粒径の具体的な測定法は、下記の通りである。
(1)上記断面SEM画像から、ランダムに10個の一次粒子を選択する。
(2)選択した10個の一次粒子の粒界を観察し、一次粒子の外形を特定する。
(3)10個の一次粒子それぞれの長径(最長径)を求め、それらの平均値を一次粒子の平均粒径とする。
【0030】
リチウム遷移金属酸化物の二次粒子30の平均粒径は、例えば4μm〜30μmであり、好ましくは7μm〜20μmである。リチウム遷移金属酸化物の二次粒子30の平均粒径とは、レーザ回折法によって測定されるメジアン径(体積基準)を意味し、例えば堀場製作所製のレーザ回折散乱式粒度分布測定装置を用いて測定できる。
【0031】
図2に示すように、リチウム遷移金属酸化物の二次粒子内の空隙32には、二次粒子30の粒子表面から粒径Dの1/6に相当する長さを超えて粒子内部まで連通した長空隙33が含まれることが好ましい。長空隙33が形成されることにより、電解液がリチウム遷移金属酸化物の二次粒子30の内部まで素早く浸透させることが可能となる。ここで、粒径Dとは、図2に示すように、二次粒子30の断面における二次粒子30の外接円αの直径である。本明細書では、外接円α(粒子表面)から外接円αの中心Xに向かって粒径Dの1/6を超える長さを有する空隙を長空隙33と定義する。換言すると、粒子表面に開口(入口)を有さない閉じられた空隙、粒径Dの1/6に相当する長さ以下の空隙は長空隙33ではない。
【0032】
長空隙33は、粒子表面から中心Xに向かって略真っ直ぐに延びていてもよく、蛇行していてもよい。また、長空隙33は、枝分かれしていてもよく、1つの連続した長空隙33において入口及び突き当りの少なくとも一方が複数存在してもよい。蛇行して形成される長空隙33は、粒径Dを超える長さを有していてもよい。
【0033】
長空隙33の入口は、正極活物質の二次粒子30の粒子表面の全体に一様に形成されることが好ましい。長空隙33は、粒子表面から中心Xに向かって粒径Dの2/6(1/3)、又は3/6(1/2)に相当する長さを超えて粒子内部まで連通していてもよい。図2には、外接円αの同心円であって直径Dの5/6の直径を有する円βを図示している。リチウム遷移金属酸化物の二次粒子30の粒子断面が略真円形状である場合、各粒子表面から形成される長空隙33は、円βを超えて粒子内部まで連通することが好ましい。
【0034】
二次粒子内の空隙32に占める長空隙33の割合(以下、「長空隙率」という場合がある)は、例えば20%以上が好ましく、又は30%以上がより好ましく、又は50%以上がさらにより好ましい。ここで、二次粒子内の空隙32に占める長空隙33の割合は、式:(長空隙33の面積/空隙32の面積)×100により算出される。平均粒径が7μm〜15μmの二次粒子30の長空隙率の平均値(N=100)は、例えば20%以上80%以下の範囲が好ましく、30%〜70%の範囲がより好ましく、30%〜60%の範囲がさらにより好ましい。
【0035】
二次粒子内の空隙32には、正極合材層に含まれる導電材の一部が存在していてもよい。導電材の一部は、例えば正極合材スラリーを調製する際又は正極合材層を形成する際に、二次粒子30の粒子表面に開口した空隙32に入り込む。導電材の一部は、長空隙33内に存在し、粒径Dの1/6に相当する長さを超えて粒子内部まで入り込んでいてもよい。空隙内に導電材が存在することで、例えば正極合材層内に良好な導電パスが形成され、出力特性がより向上する場合がある。
【0036】
二次粒子30の細孔径分布は、0.3〜1.0μmの範囲にピークを有する分布曲線であることが好ましい。二次粒子30の細孔径分布とは、水銀圧入法により測定されたリチウム遷移金属酸化物の二次粒子30の細孔径(空隙の径)を常用対数で示したときの細孔径分布のことであり、例えば、横軸を細孔径(常用対数)とし、縦軸をlog微分細孔容積とするグラフにより示すことができる。細孔径分布は、水銀ポロシメータ(例えば、島津製作所社製 商品名:ポロシメータ 型式9810)で測定することができる。リチウム遷移金属酸化物の二次粒子30の細孔径分布において、0.3〜1.0μmの範囲にピークを有することによって、二次粒子30の内部への電解液の浸透性を向上させることができ、非水電解質二次電池の出力特性をより向上させることが可能となる。
【0037】
二次粒子30の圧縮破壊強度は、200〜500MPaの範囲であることが好ましく、250〜350MPaの範囲であることがより好ましい。二次粒子30の圧縮破壊強度が上記範囲である場合、上記範囲外の場合と比較して、充放電に伴う二次粒子30の微細化が抑制され、非水電解質二次電池の充放電サイクル特性の低下がより抑制される。二次粒子30の圧縮破壊強度は、二次粒子1個の圧縮破壊強度(St)を指し、「日本鉱業会誌」81巻、932号 1965年12月号、1024〜1030頁に記載される数式St=2.8P/πd(式中、P:粒子にかかった荷重、d:粒子径を示す)により算出される。
【0038】
リチウム遷移金属酸化物の結晶子サイズは、200nm以上であり、リチウム遷移金属酸化物の結晶歪は0.2%未満であることが好ましい。結晶子サイズ及び結晶歪が上記範囲を満たすリチウム遷移金属酸化物は、上記範囲を満たさないリチウム遷移金属酸化物と比較して、結晶構造が強固であるため、例えば、非水電解質二次電池の高容量化又は充放電サイクル特性の低下をより抑制することが可能となる。
【0039】
リチウム遷移金属酸化物の結晶子サイズと結晶歪は、粉末X線回折測定装置(ブルカーAXS社製、商品名「D8ADVANCE」)を用いて粉末X線回折パターンを求め、この粉末X線回折パターンから、Rietveld解析ソフトであるTOPAS(BrukerAXS社製)を使用し、プロファイル関数としてFP(Fundamental Parameter)法を用いたPawley法にて解析し、ローレンツ関数成分の半値幅から算出する。
【0040】
X線回析の測定条件は、検出器としてPSD(LYNX EYE)、管球としてCuKα1(波長1.5418Å)を用い、X線出力を40kV×40mA、スリット幅を0.3°、ステップ幅を0.03°とし、1ステップあたり1秒の計数時間にて10〜100°まで測定する条件である。
【0041】
リチウム遷移金属酸化物は、例えば、遷移金属前駆体と、リチウム化合物とを混合して、当該混合物を焼成することにより得られる。遷移金属前駆体は、例えば、1種又は複数種の遷移金属塩を含む溶液を撹拌しながら、水酸化ナトリウム等のアルカリ溶液を滴下し、pHをアルカリ側(例えば8.5〜11.5)に調整することにより沈殿(共沈)した遷移金属の水酸化物である。リチウム遷移金属酸化物の二次粒子の空隙率、一次粒子の粒径、ひいてはリチウム遷移金属酸化物の結晶子サイズ、結晶歪は、主に、上記遷移金属塩を含む溶液の撹拌速度、及び遷移金属前駆体とリチウム化合物の混合物の焼成温度を調整することにより制御することができる。
【0042】
本実施形態における遷移金属塩を含む溶液の撹拌速度は、従来の撹拌速度(例えば、300rpm以上)より遅く、例えば、150〜250rpmの範囲であることが好ましく、170〜230rpmの範囲であることがより好ましい。このような撹拌速度により得られた遷移金属前駆体は、従来の撹拌速度により得られる遷移金属前駆体よりタップ密度が低く、例えば、1.5g/cm以下となる。このように、タップ密度の低い遷移金属前駆体を用いることで、得られる遷移金属酸化物の二次粒子の空隙率を高くすることができる。
【0043】
また、得られたタップ密度の低い遷移金属前駆体とリチウム化合物との混合物の焼成温度は、通常の焼成温度(例えば950℃未満)より高く、例えば、970℃〜1070℃の範囲であることが好ましく、990℃〜1050℃の範囲であることがより好ましい。このような高温焼成により、一次粒子の平均粒径を大きくすることができ、さらにリチウム遷移金属酸化物の結晶子サイズを大きくすることもできる。また、タップ密度の低い遷移金属前駆体は、その粒子内に比較的多くの酸素が取り込まれているため、上記高温焼成によっても、得られる遷移金属酸化物の酸素欠損が少なく、結晶歪を小さくすることができる。
【0044】
一方、従来の撹拌速度(例えば、300rpm)では、本実施形態の場合と比べて、タップ密度の高い遷移金属前駆体となる。その結果、得られる遷移金属酸化物の二次粒子の空隙率は低く、30%以下となる。さらに、このタップ密度の高い遷移金属前駆体の粒子内には酸素が少ないため、本実施形態のように高温焼成すると、酸素欠損が多く含まれるリチウム遷移金属酸化物が得られ、結晶歪を0.2未満とすることは困難となる。また、本実施形態のように従来の撹拌速度より遅くして、タップ密度の低い遷移金属前駆体を作製したとしても、上記通常の焼成温度であれば、一次粒子の平均粒径は1μm未満となり、結晶子サイズも200nm未満とすることが困難となる。
【0045】
本実施形態における正極活物質中の上記リチウム遷移金属酸化物の含有率は、例えば90質量%以上であることが好ましく、実質的に100質量%であってもよい。なお、本願発明の効果を損なわない範囲において、正極活物質中に、一次粒子の平均粒径及び二次粒子の空隙率が上記範囲を満たさないリチウム遷移金属酸化物を含んでいてもよい。
【0046】
導電材としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、黒鉛等の炭素材料が例示できる。これらは、単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0047】
結着材としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)等のフッ素樹脂、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリイミド、アクリル樹脂、ポリオレフィン等が例示できる。また、これらの樹脂と、カルボキシメチルセルロース(CMC)又はその塩、ポリエチレンオキシド(PEO)等が併用されてもよい。これらは、単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0048】
[負極]
負極は、例えば金属箔等からなる負極集電体と、当該集電体上に形成された負極合材層とで構成される。負極集電体には、銅などの負極の電位範囲で安定な金属の箔、当該金属を表層に配置したフィルム等を用いることができる。負極合材層は、負極活物質、及び結着材を含む。負極は、例えば、負極活物質、結着材等を含む負極合材スラリーを調整し、この負極合材スラリーを負極集電体上に塗布、乾燥して負極合材層を形成し、この負極合材層を加圧成形することにより作製できる。
【0049】
負極活物質としては、リチウムイオンを可逆的に吸蔵、放出できるものであれば特に限定されず、例えば天然黒鉛、人造黒鉛等の炭素材料、ケイ素(Si)、錫(Sn)等のリチウムと合金化する金属、又はSi、Sn等の金属元素を含む合金、複合酸化物などを用いることができる。負極活物質は、単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0050】
結着材としては、正極の場合と同様にフッ素樹脂、PAN、ポリイミド、アクリル樹脂、ポリオレフィン等を用いることができる。水系溶媒を用いて合材スラリーを調製する場合は、CMC又はその塩、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリル酸(PAA)又はその塩、ポリビニルアルコール(PVA)等を用いることが好ましい。
【0051】
[セパレータ]
セパレータには、イオン透過性及び絶縁性を有する多孔性シートが用いられる。多孔性シートの具体例としては、微多孔薄膜、織布、不織布等が挙げられる。セパレータは、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、セルロースなどで構成される。セパレータは、セルロース繊維層及びポリオレフィン等の熱可塑性樹脂繊維層を有する積層体であってもよい。また、セパレータは、ポリエチレン層及びポリプロピレン層を含む多層セパレータであってもよく、アラミド樹脂で構成される表面層又は無機物フィラーを含有する表面層を有していてもよい。
【0052】
[非水電解質]
非水電解質は、非水溶媒と、非水溶媒に溶解した溶質(電解質塩)とを含む。非水溶媒には、例えばエステル類、エーテル類、ニトリル類、ジメチルホルムアミド等のアミド類、ヘキサメチレンジイソシアネート等のイソシアネート類及びこれらの2種以上の混合溶媒等を用いることができる。非水溶媒は、これら溶媒の水素の少なくとも一部をフッ素等のハロゲン原子で置換したハロゲン置換体を含有していてもよい。
【0053】
上記エステル類の例としては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート等の環状炭酸エステル、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルプロピルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、メチルイソプロピルカーボネート等の鎖状炭酸エステル、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等の環状カルボン酸エステル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル(MP)、プロピオン酸エチル等の鎖状カルボン酸エステルなどが挙げられる。
【0054】
上記エーテル類の例としては、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、プロピレンオキシド、1,2−ブチレンオキシド、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、1,3,5−トリオキサン、フラン、2−メチルフラン、1,8−シネオール、クラウンエーテル等の環状エーテル、1,2−ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジヘキシルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、メチルフェニルエーテル、エチルフェニルエーテル、ブチルフェニルエーテル、ペンチルフェニルエーテル、メトキシトルエン、ベンジルエチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、o−ジメトキシベンゼン、1,2−ジエトキシエタン、1,2−ジブトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、1,1−ジメトキシメタン、1,1−ジエトキシエタン、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル等の鎖状エーテル類などが挙げられる。
【0055】
上記ニトリル類の例としては、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、バレロニトリル、n−ヘプタニトリル、スクシノニトリル、グルタロニトリル、アジボニトリル、ピメロニトリル、1,2,3−プロパントリカルボニトリル、1,3,5−ペンタントリカルボニトリル等が挙げられる。
【0056】
上記ハロゲン置換体の例としては、フルオロエチレンカーボネート(FEC)等のフッ素化環状炭酸エステル、フッ素化鎖状炭酸エステル、フルオロプロピオン酸メチル(FMP)等のフッ素化鎖状カルボン酸エステルなどが挙げられる。
【0057】
電解質塩の例としては、LiBF、LiClO、LiPF、LiAsF、LiSbF、LiAlCl、LiSCN、LiCFSO、LiCFCO、Li(P(C)F)、LiPF6−x(C2n+1(1<x<6,nは1又は2)、LiB10Cl10、LiCl、LiBr、LiI、クロロボランリチウム、低級脂肪族カルボン酸リチウム、Li、Li(B(C)F)等のホウ酸塩類、LiN(SOCF、LiN(C2l+1SO)(C2m+1SO){l,mは0以上の整数}等のイミド塩類などが挙げられる。電解質塩は、これらを1種単独で用いてもよいし、複数種を混合して用いてもよい。電解質塩の濃度は、例えば非水溶媒1L当り0.8〜1.8モルである。
【実施例】
【0058】
以下、実施例により本開示をさらに説明するが、本開示はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0059】
<実施例1>
[リチウム遷移金属酸化物の作製]
1Mの硝酸ニッケル水溶液、1Mの硝酸コバルト水溶液及び1Mの硝酸マンガン水溶液を、モル比でNi:Co:Mn=33:33:33となるように混合した混合水溶液を調整した。この混合水溶液を200rpmの撹拌速度で撹拌しながら、pH8.5となるまで、1Mの水酸化ナトリウム水溶液を滴下し、組成式Ni0.33Co0.33Mn0.33(OH)で表わされる遷移金属前駆体を共沈させた。この遷移金属前駆体のタップ密度は1.5g/cmであった。上記遷移金属前駆体と、LiOHとを混合し、酸素気流下で、1025℃・20時間焼成して、組成式Li1.05Ni0.33Co0.33Mn0.33で表されるリチウム遷移金属酸化物を合成した。
【0060】
上記得られたリチウム遷移金属酸化物は、二次粒子の空隙率が32%、一次粒子の平均粒径が2μm、結晶子サイズが280nm、結晶歪が0.13%、二次粒子の圧縮破壊強度が350MPaであった。これらの物性値の測定方法は前述の通りであり、以下の実施例2〜3及び比較例1〜2も同様である。
【0061】
図3に、実施例1のリチウム遷移金属酸化物の二次粒子の細孔径分布を示す。細孔径分布の測定方法は前述の通りであり、以下の実施例2〜3及び比較例1〜2も同様である。図3に示すように、実施例1のリチウム遷移金属酸化物の二次粒子の細孔径分布は、0.5μmにピークを示す分布曲線であった。
【0062】
[正極の作製]
上記リチウム遷移金属酸化物を正極活物質として用いた。そして、当該正極活物質が95.8質量%、炭素粉末が3質量%、ポリフッ化ビニリデン粉末が1.2質量%となるよう混合し、さらにN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を適量加えて、正極合材スラリーを調製した。このスラリーをアルミニウム箔からなる集電体の両面にドクターブレード法により塗布し、塗膜を乾燥した後、圧延ローラに500MPaの圧力で塗膜を圧延して、正極集電体の両面に正極合材層が形成された正極を作製した。集電体の長手方向中央部に合材層を形成しない部分を設け、当該部分に正極タブを取り付けた。正極合材層の厚みは、約140μm、集電体両面の合計で約300μmとした。
【0063】
[負極の作製]
黒鉛が98.2質量%と、スチレン−ブタジエンゴムが0.7質量%、カルボキシメチルセルロースナトリウムが1.1質量%となるよう混合し、これを水と混合してスラリーを調製した。このスラリーを銅箔からなる集電体の両面にドクターブレード法により塗布し、塗膜を乾燥した後、圧延ローラにより塗膜を圧延して、負極集電体の両面に負極合材層が形成された負極を作製した。集電体の長手方向両端部に合材層を形成しない部分を設け、当該部分に負極タブを取り付けた。負極合材層の厚みは、約120μm、集電体両面の合計で約250μmとした。
【0064】
[非水電解液の作製]
エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)との等体積混合非水溶媒に、LiPFを1.6モル/Lの濃度で溶解させて非水電解液を得た。
【0065】
[非水電解質二次電池の作製]
上記正極、上記負極、上記非水電解液、及びセパレータを用いて、以下の手順で非水電解質二次電池を作製した。
(1)正極と負極とをセパレータを介して巻回し、巻回構造の電極体を作製した。
(2)電極体の上下にそれぞれ絶縁板を配置し、直径18mm、高さ65mmの円筒形状の電池外装缶に巻回電極体を収容した。
(3)負極の集電タブを電池外装缶の底部内面に溶接すると共に、正極の集電タブを封口体の底板に溶接した。
(4)電池外装缶の開口部から非水電解液を注入し、その後、封口体によって電池外装缶を密閉した。
【0066】
<実施例2>
リチウム遷移金属酸化物の合成において、焼成温度を1000℃に変更したこと以外は実施例1と同様にして、リチウム遷移金属酸化物を作製した。当該リチウム遷移金属酸化物は、二次粒子の空隙率が40%、一次粒子の平均粒径が1.8μm、結晶子サイズが250nm、結晶歪が0.12%、二次粒子の圧縮破壊強度が300MPaであった。また、リチウム遷移金属酸化物の二次粒子の細孔径分布は、0.6μmにピークを示す分布曲線であった。
【0067】
上記リチウム遷移金属酸化物を実施例2の正極活物質として用い、実施例1と同様に非水電解質二次電池を作製した。
【0068】
<実施例3>
リチウム遷移金属酸化物の合成において、焼成温度を970℃に変更したこと以外は実施例1と同様にして、リチウム遷移金属酸化物を作製した。当該リチウム遷移金属酸化物は、二次粒子の空隙率が50%、一次粒子の平均粒径が1.5μm、結晶子サイズが200nm、結晶歪が0.11%、二次粒子の圧縮破壊強度が250MPaであった。また、リチウム遷移金属酸化物の二次粒子の細孔径分布は、0.7μmにピークを示す分布曲線であった。
【0069】
上記リチウム遷移金属酸化物を実施例3の正極活物質として用い、実施例1と同様に非水電解質二次電池を作製した。
【0070】
<比較例1>
リチウム遷移金属酸化物の合成において、遷移金属前駆体のタップ密度を2.0g/cmに変更したこと以外は実施例1と同様にして、リチウム遷移金属酸化物を作製した。
【0071】
当該リチウム遷移金属酸化物は、二次粒子の空隙率が5%、一次粒子の平均粒径が0.5μm、結晶子サイズが180nm、結晶歪が0.2%、二次粒子の圧縮破壊強度が120MPaであった。また、リチウム遷移金属酸化物の二次粒子の細孔径分布は、0.1μmにピークを示す分布曲線であった。
【0072】
上記リチウム遷移金属酸化物を比較例1の正極活物質として用い、実施例1と同様に非水電解質二次電池を作製した。
【0073】
<比較例2>
リチウム遷移金属酸化物の合成において、遷移金属前駆体のタップ密度を2.0g/cm3に変更して、焼成温度を950℃に変更したこと以外は実施例1と同様にして、リチウム遷移金属酸化物を作製した。当該リチウム遷移金属酸化物は、二次粒子の空隙率が20%、一次粒子の平均粒径が0.3μm、結晶子サイズが100nm、結晶歪が0.15%、二次粒子の圧縮破壊強度が88MPaであった。また、リチウム遷移金属酸化物の二次粒子の細孔径分布は、0.2μmにピークを示す分布曲線であった。
【0074】
上記リチウム遷移金属酸化物を比較例2の正極活物質として用い、実施例1と同様に非水電解質二次電池を作製した。
【0075】
[出力試験]
実施例1〜3、比較例1〜2の非水電解質二次電池について、25℃の条件下で、0.4Itレートの電流値800mAで4.1Vまで定電流充電を行い、4.1Vで定電圧充電を行った後に800mAで2.5Vまで定電流放電を行った。このときの放電容量を実施例1〜3、比較例1〜2の各非水電解質二次電池の定格容量とした。
【0076】
次に、実施例1〜3、比較例1〜2の各非水電解質二次電池を定格容量の50%まで充電した後に、電池温度を25℃として、放電終止電圧2Vとしたときの、10秒間放電可能な最大電流値から充電深度(SOC)50%における出力値を下式により求めた。
【0077】
出力値(SOC50%)=(最大電流値)×(放電終止電圧(2.0V))
[充放電サイクル試験]
実施例1〜3、比較例1〜2の非水電解質二次電池について、25℃の条件下で、1Itレートの電流値2000mAで4.1Vまで定電流充電を行い、4.1Vで定電圧充電を行った後に2000mAで2.5Vまで定電流放電を行った。この充放電サイクルを500サイクル行い、下式により容量維持率を算出した。
【0078】
容量維持率(%)=500サイクル目の放電容量/1サイクル目の放電容量×100
表1に、実施例1〜3、比較例1〜2のリチウム遷移金属酸化物における二次粒子の空隙率、一次粒子の平均粒径、結晶子サイズ、結晶歪、二次粒子の圧縮破壊強度、実施例1〜3、比較例1〜2の非水電解質二次電池の出力値、容量維持率をまとめた。
【0079】
【表1】
【0080】
リチウム遷移金属酸化物の一次粒子の平均粒径を1μm以上とし、二次粒子の空隙率を30%超とした正極活物質を用いた実施例1〜3の非水電解質二次電池は、上記範囲を満たさない正極活物質を用いた比較例1〜2の非水電解質二次電池と比べて、高い出力値を示し、充放電を500サイクル行った時の容量維持率も高い値を示した。実施例1〜3の中では、リチウム遷移金属酸化物の一次粒子の平均粒径を1μm以上とし、二次粒子の空隙率を40%以上とした正極活物質を用いた実施例2〜3の非水電解質二次電池がより高い出力値を示した。
【符号の説明】
【0081】
10 非水電解質二次電池
11 外装缶
12 封口板
13 正極外部端子
14 負極外部端子
15 ガス排出弁
16 注液部
30 二次粒子
31 一次粒子
32 空隙
33 長空隙
図1
図2
図3

【手続補正書】
【提出日】2019年5月30日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム遷移金属酸化物の一次粒子が凝集した二次粒子を含み、
前記一次粒子の平均粒径は1μm以上であり、前記二次粒子の空隙率は30%超である、非水電解質二次電池用正極活物質。
【請求項2】
前記二次粒子の細孔径分布は0.3〜1.0μmの範囲にピークを有する分布曲線である、請求項1に記載の非水電解質二次電池用正極活物質。
【請求項3】
前記二次粒子の圧縮破壊強度は200〜500MPaの範囲である、請求項1又は2に記載の非水電解質二次電池用正極活物質。
【請求項4】
前記リチウム遷移金属酸化物の結晶子サイズが200nm以上であり、前記リチウム遷移金属酸化物の結晶歪が0.2%未満である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池用正極活物質。
【請求項5】
前記二次粒子を構成する前記一次粒子のうち、50%以上の一次粒子が、一次粒子の短径に対する長径の比(長径/短径)が2以上である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池用正極活物質。
【請求項6】
正極と、負極と、非水電解質と、を備え、
前記正極は、請求項1〜のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池用正極活物質を含む、非水電解質二次電池。
【国際調査報告】