特表-18155462IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 再表WO2018155462-シール装置 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2018年8月30日
【発行日】2019年12月12日
(54)【発明の名称】シール装置
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/44 20060101AFI20191115BHJP
【FI】
   F16J15/44 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】12
【出願番号】特願2019-501357(P2019-501357)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2018年2月21日
(31)【優先権主張番号】特願2017-30760(P2017-30760)
(32)【優先日】2017年2月22日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】000101879
【氏名又は名称】イーグル工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100201259
【弁理士】
【氏名又は名称】天坂 康種
(74)【代理人】
【識別番号】100116506
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻井 義宏
(72)【発明者】
【氏名】徳永 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】井上 秀行
(72)【発明者】
【氏名】木村 航
(72)【発明者】
【氏名】井口 徹哉
(72)【発明者】
【氏名】笠原 英俊
(72)【発明者】
【氏名】弘松 純
(72)【発明者】
【氏名】黒木 康洋
(72)【発明者】
【氏名】菊池 竜
【テーマコード(参考)】
3J042
【Fターム(参考)】
3J042AA03
3J042BA01
3J042CA03
3J042DA01
(57)【要約】
【課題】長時間運転してもフローティングリングが回転軸の動きに追従して、回転軸とシールリングのクリアランスを適正に保つことができ、フローティングリングによるシール作用と振動減衰機能を発揮でき、組立てが容易なシール装置を提供する。
【解決手段】ハウジング11と該ハウジング11を貫通する回転軸20との間を封止するシール装置10であって、回転軸20に対して間隙hを介して配設されるフローティングリング15を具備し、フローティングリング15は周方向に向って支持する少なくとも一つの支持手段18を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと該ハウジングを貫通する回転軸との間を封止するシール装置であって、
前記回転軸に対して間隙を介して配設されるフローティングリングを具備し、
前記フローティングリングは非接触で周方向に支持する少なくとも一つの支持手段を備えることを特徴とするシール装置。
【請求項2】
前記支持手段は、前記フローティングリングの中心を通る鉛直線に対して対称に配置されることを特徴とする請求項1に記載のシール装置。
【請求項3】
前記支持手段は、前記ハウジングに配設されるとともに周方向に磁極面向けた第1磁石及び前記フローティングリングに配設されるとともに周方向に磁極面を向けた第2磁石を備え、前記第1磁石と前記第2磁石は同じ極同士が対向するように配設されることを特徴とする請求項1又は2に記載のシール装置。
【請求項4】
前記第1磁石及び前記第2磁石は、それぞれN極とS極が隣接する磁極隣接面を非磁性材料によって囲まれることを特徴とする請求項3に記載のシール装置。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハウジングと該ハウジングを貫通する回転軸との間を封止するシール装置に関し、特に、ポンプ等の流体機械の回転軸に使用されるフローティングリングを備えたシール装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポンプ等の回転流体機械においては、流体をシールするため、フローティングシールが使用され、例えば、図3に示すものが知られている(以下、「従来技術1」という。例えば、特許文献1参照。)。この従来技術は、流体機械の回転軸45と、該回転軸45の外周に取付けられ回転軸と一体に回転するスリーブ44と、スリーブ44とクリアランスを有して遊嵌されたシールリング41と、該シールリング41の外周の4箇所に設けられた板バネ46と、シールリング41を収納するリテーナ42と、を備え、板バネ46の突起46Aがリテーナ42に設けた溝42Aに係合された状態でシールリング41は板バネ46によって支持されている。そして、シールリング41の内周面と回転軸45のスリーブ44との間に発生するくさび効果(くさび部に発生する動圧の効果)と、ロマキン効果(シール差圧が生じた際、シールリングと軸との表面間の流体の流動損失による調心効果)とにより、シールリング41の内周面と回転軸45に取付けられたスリーブ44との間の隙間を一定に保つとともに、シールリング41は高圧流体側からリテーナ42側へ軸方向に押し付けられ、シールリング41とリテーナ42は密封されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭57−154562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術1にあっては、シールリング41の外周と板バネ46は常に径方向、周方向に相対変位しながら接触しているため、長時間運転するとシールリング41の外周と板バネ46との接触部Xは面荒れが生じて、シールリング41と板バネ46が固着してしまい、シールリング41が回転軸45の動きに追従できなくなる場合がある。また、板バネ46の突起46Aはリテーナ42の溝42A内で摩耗や、変形が生じ、板バネ46がシールリング41の動きに追従できなくなる場合もある。この結果、シールリング41、板バネ46が回転軸45の動きに追従することができず、自動調心作用が失われ、回転軸45とシールリング41とが接触して損傷したり、径方向間隙が最適値より大きくなって適正なシール作用が得られない虞がある。
【0005】
さらに、従来技術1にあっては組立てに手間を要していた。すなわち、板バネ46をリテーナ42に設け、その後リテーナ42内にシールリング41を挿入する場合に、一旦、板バネ46を圧縮してシールリング41を挿入するための隙間を確保しなければならない。逆に、先にリテーナ42内にシールリング41を配置した後に板バネ46をリテーナ42に設ける場合には、板バネ46を圧縮して、リテーナ42とシールリング41との間に隙間を確保して配置しなければならず、組立てに手間がかかっていた。
【0006】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、長時間運転してもフローティングリングが回転軸の動きに追従して、回転軸とフローティングリングのクリアランスを適正に保つことができ、フローティングリングによるシール作用と振動減衰機能を発揮でき、組立てが容易なシール装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明のシール装置は、
ハウジングと該ハウジングを貫通する回転軸との間を封止するシール装置であって、
前記回転軸に対して間隙を介して配設されるフローティングリングを具備し、
前記フローティングリングは非接触で周方向に支持する少なくとも一つの支持手段を備えることを特徴としている。
この特徴によれば、フローティングリングは周方向に非接触で支持されるので、フローティングリングはハウジングに拘束されることがなく、長時間運転してもフローティングリングは回転軸の動きに追従して、シール作用を発揮することができ、また、支持手段へのフローティングリングの設置が容易な構造とすることができる。
【0008】
本発明のシール装置は、
前記支持手段は、前記フローティングリングの中心を通る鉛直線に対して対称に配置されることを特徴としている。
この特徴によれば、支持手段によってフローティングリングの周方向及び径方向を支持することができるので、回転軸とフローティングリングのクリアランスを適正に保ち、シール作用を発揮することができる。
【0009】
前記支持手段は、前記ハウジングに配設されるとともに周方向に磁極面を向けた第1磁石及び前記フローティングリングに配設されるとともに周方向に磁極面を向けた第2磁石を備え、前記第1磁石と前記第2磁石は同じ極同士が対向するように配設されることを特徴としている。
この特徴によれば、フローティングリングは磁石の周方向反発力によって押さえ付けられるので、回転軸はフローティングリングを介して動きが制限されるので、回転軸の振動を低減することができる。
【0010】
本発明のシール装置は、
前記第1磁石及び前記第2磁石は、それぞれN極とS極が隣接する磁極隣接面を非磁性材料によって囲むことを特徴としている。
この特徴によれば、永久磁石の漏れ磁束を低減できるので効率よく磁力を利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施の形態に係るシール装置の正面断面図である。
図2】2Aは図1のA−A断面図(側断面図)、2Bは支持手段の拡大図である。
図3】従来のシール装置の側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係るシール装置を実施するための形態を図面を参照しながら詳細に説明するが、本発明はこれに限定されて解釈されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々の変更、修正、改良を加えうるものである。
【0013】
本発明の実施の形態に係るシール装置10を図1及び図2を参照して説明する。ケーシング21を貫通するようにして流体機械の回転軸20が配設されており、左側が高圧側、右側が低圧側である。シール装置10は、フローティングリング15と、該フローティングリング15を収納するハウジング11から主に構成される。
【0014】
ハウジング11は、ホルダ11aとフランジ11bとから主に形成される。ホルダ11aは締結手段22によってケーシング21に固定される。ホルダ11a及びフランジ11bは、それぞれ回転軸20と所定の隙間を有し、回転軸20が貫通する孔を有する。ホルダ11aの内周部には、内周壁部11dと径方向壁部11eとによって囲まれる収納部11fを有する。そして、ハウジング11の内周壁11d、内周壁11dの軸方向をそれぞれ区画する径方向壁11e及びフランジ11b、並びに、ハウジング11を貫通する回転軸20によって囲まれる空間Sにフローティングリング15が収納される。ホルダ11aの内周壁部11dの一部には径方向外側に向けて凹部11gが周方向に等間隔で複数(本実施例では4箇所)形成されている。また、凹部11gのそれぞれには周方向に離間して1対の永久磁石14(本発明の第1磁石)が取付けられている。さらに、径方向壁部11eは、その内径側に径方向壁部11eよりわずかに飛び出たホルダ側2次シール面11cを有している
【0015】
フローティングリング15は、シールリング13、シールリング13の外周に嵌合されるリテーナ12、リテーナ12の外周に配設された永久磁石17(本発明の第2磁石)から主に構成される。
【0016】
シールリング13は、断面略矩形の円環状の部材で、カーボンなどの摺動性の良い材料から構成される。シールリング13の内周面13aは、回転軸20の外周面20a対し微小な径方向間隙hを有する円筒面に構成されている。
【0017】
リテーナ12はオーステナイト系ステンレス、プラスチック、合成樹脂等の非磁性材料からなる環状部材である。リテーナ12はカーボン等からなるシールリング13の外周にしまり嵌めされることによって、シールリング13に圧縮力を付加している。これにより、シールリング13をカーボンのような脆い材料から構成しても、回転軸20と接触等によるシールリング13の破損を防止することができる。リテーナ12の外周には、ハウジング11の凹部11gと対応する位置に永久磁石17が、凹部11gと同数個、周方向に等間隔で取付けられている。
【0018】
リテーナ12の外周部に取付けられた永久磁石17とハウジング11の凹部11gに取付けられた一対の永久磁石14とによって本発明の支持手段18が構成される。永久磁石14と永久磁石17は、フェライト磁石、ネオジム磁石、サマリウムコバルト磁石、アルニコ磁石、プラセオジム磁石等からなり、使用される温度条件、要求される磁力によって選択される。永久磁石14、永久磁石17はそれぞれ周方向に磁束が流れるようにN磁極面14N、17N及びS磁極面14S、17Sが周方向を向くように取付けられる。さらに、永久磁石17は一対の永久磁石14の間に同極の磁極が対向するように取付けられる。そしてフローティングリング15はハウジング11の空間S内に収納され、永久磁石14と永久磁石17との同極の磁極同士が反発して、フローティングリング15はハウジング11に対し周方向空隙kをもって支持される。
【0019】
図2に示すように、ハウジング11の中心Oを通る鉛直線C−Cに対し、支持手段18は略対称に取り付けられているので、フローティングリング15は支持手段18によって非連成支持され、縦方向に支持する支持手段18と横方向に支持する支持手段18は互いの影響を及ぼすことなく支持できる。また、フローティングリング15の自重は水平方向に取付けられた一対の支持手段18によって支持することができ、フローティングリング15の中心とハウジング11の中心のずれを無視できる程度に保つことができるので、シールリング13の内周面13aと回転軸20の外周面20aとの間に全周に亘って隙間を保つことができる。したがって、フローティングリング15と回転軸20との上側径方向間隙h1が確保できるように支持手段18の個数(たとえば、2以上の自然数)、永久磁石の種類、寸法、形状を適切に決定すれば、フローティングリング15と回転軸20は停止中においても接触しないようにすることができる。また、リテーナ12をオーステナイト系ステンレスではなく、プラスチック、合成樹脂等から構成することで、リテーナの軽量化を図ることができ、フローティングリング15は支持手段18の永久磁石14と永久磁石17の磁気反発力によって浮き上がり易くすることができる。なお、本実施例においては、支持手段18は上下左右の4箇所に等間隔に配置しているが、フローティングリング15と回転軸20との上側径方向間隙h1を確保できるものであればよい。たとえば、図2の4個の支持手段18を45°傾けてフローティングリングの中心Oを通る鉛直線C−Cに対し略対称に配置してもよい。また、4個以上の支持手段18を配置する場合も中心Oを通る鉛直線C−Cに対し略対称に配置してもよい。
【0020】
永久磁石14及び永久磁石17において、異なる磁極が隣接する磁極隣接面14a、17aは、オーステナイトステンレス、プラスチック、空気などの非磁性材料によって覆われている。永久磁石14及び永久磁石17の磁極隣接面14a、17aは、N極とS極が近接しているため、磁束がN極からS極へ短絡して流れる漏れ磁束が大きい。このため、永久磁石14及び永久磁石17の磁極隣接面14a、17aを磁気抵抗の高い非磁性材料によって覆うことにより漏れ磁束を減少でき、永久磁石14と永久磁石17との磁気反発力を高めることができる。なお、オーステナイトステンレスよりもプラスチック、空気の方が漏れ磁束を低減する効果は大きい。
【0021】
また、フローティングリング15はバネなど付勢手段19によって付勢されているので、シールリング側2次シール面13cとホルダ側2次シール面11cとが密着してシールリング13とホルダ11aは密封される。以下、シールリング側2次シール面13cとホルダ側2次シール面11cとの密着による密封手段を二次シールと記す。
【0022】
次に前述のような構成のシール装置10の作用を説明する。回転流体機械の停止中において、支持手段18の永久磁石14と永久磁石17との磁気反発力によって周方向に支持されるとともに、フローティングリング15の自重も支持できるので、フローティングリング15のシールリング13の内周面13aは、回転軸20の外周面20aに対し微小な径方向間隙h1、h2を保った状態で調心される(図2参照)。このように支持手段18は、周方向にも、径方向にも支持する力を発生できるので、フローティングリング15と回転軸20との間にくさび効果が発生しない停止中であっても、フローティングリング15のシールリング13と回転軸20は微小な径方向間隙h1、h2が保たれる。これにより、回転流体機械の起動時におけるシールリング13の摩耗を防ぐことができる。また、停止時において、二次シールは、フローティングリング15はバネなど付勢手段19によって付勢されているので、シールリング側2次シール面13cとホルダ側2次シール面11cとが密着して密封される。
【0023】
回転流体機械の運転中においても、ハウジング11とフローティングリング15は、支持手段18の永久磁石14と永久磁石17との磁気反発力によって周方向空隙kを保つともに、フローティングリング15の自重を保つように機能する。このとき、フローティングリング15の自重の影響によって、上側径方向間隙h1は狭く、下側径方向間隙h2は広くなっても、間隙が小さくなった上側部分にくさび効果による動圧が発生するので、フローティングリング15と回転軸20との径方向間隙hを均等になるように調心される。
【0024】
また、回転軸20が振動によって振れ回ると、支持手段18の永久磁石14と永久磁石17との磁気反発力とくさび効果による動圧の両方によって、フローティングリング15のシールリング13と回転軸20は径方向間隙hを保つように機能するので、フローティングリング15は回転軸20の動きも規制する効果を発揮し、回転軸20の振動を低減することができる。
【0025】
また、運転中においては、フローティングリング15は、付勢手段19の押圧力に加えて、さらに高圧流体側から低圧流体側への圧力によって押されるので、シールリング側2次シール面13cとホルダ側2次シール面11cとがさらに密着するので、二次シールのシール効果はさらに高まる。
【0026】
本発明は、以下のような優れた効果を奏する。
【0027】
回転流体機械が停止中において、支持手段18の磁気反発力によって、フローティングリング15のシールリング13と回転軸20は径方向間隙hを保つように機能するので、回転流体機械の起動時においてもシールリング13の摩耗を防ぐことができる。また、回転流体機械の運転中において、フローティングリング15と回転軸20との径方向間隙hが周方向に不均一になったとしても、間隙が小さくなった部分にくさび効果による動圧が発生するので、フローティングリング15と回転軸20との径方向間隙hを均等になるように調心される。これにより、停止中及び運転中において良好なシール状態が得ることができ、シールリング13の摩耗を防ぐことができる。
【0028】
ハウジング11の内径側に配置されるフローティングリング15は、ハウジング11に対して隙間を有し、非接触であるため、取付のための治具等が必要なく、ハウジング11内部に挿入するだけで、簡単にハウジング内部に配置することができる。
【0029】
また、回転軸20が振動によって振れ回ったとしても、支持手段18の永久磁石14と永久磁石17との磁気反発力とくさび効果による動圧の両方によって、フローティングリング15のシールリング13と回転軸20は径方向間隙hを保つように機能するので、フローティングリング15は回転軸20の動きも規制する効果を発揮し、回転軸20の振動を低減することができる。
【0030】
支持手段18の磁気反発力によって、フローティングリング15はハウジング11に対し非接触で周方向空隙kを一定に保つように機能するので、支持手段18はフローティングリング15及びハウジング11に固着することなく、長期にわたってその機能を発揮することができる。
【0031】
永久磁石14及び永久磁石17の磁極隣接面14a、17aは非磁性材料によって覆われているので、漏れ磁束を低減して効率良く永久磁石14と永久磁石17との反発力を高めることができる。
【0032】
シールリング13は、カーボン等の自己潤滑性、摺動性に優れた材料から構成されるので、運転中にホルダ側2次シール面11cと常に相対変位しても、摩耗、面荒れ等を防止でき、長期間に亘って二次シールの機能を維持することができる。
【0033】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0034】
例えば、上記実施例において、フローティングリング15は環状一体に構成したが、これに限らず周方向に分割して構成したものを環状に一体に組み立ててもよい。
【0035】
上記実施例において、フローティングリング15は付勢手段19によって付勢されていたが、付勢手段19を使用しないで、高圧流体側から低圧流体側への圧力によって、シールリング側2次シール面13cとホルダ側2次シール面11cとがさらに密着させて、二次シールを構成してもよい。
【0036】
上記実施例において、支持手段18はリテーナ12の外周部に取付けられた永久磁石17とハウジング11のフランジ11bの内周部に取付けられた永久磁石14とによって構成されていたが、これに限らない。たとえば、リテーナ12の外周部に永久磁石を取付け、ハウジング11のフランジ11bの内周部に電磁石を取付けて構成してもよい。
【0037】
また、ポンプの作動流体が液体ヘリウムのような超低温の流体の場合には永久磁石に換えて、超電導磁石や常電導磁石としてもよい。超電導状態においてはピン止め効果を有するため、フローティングリングの径方向位置、軸方向位置を支持する効果をさらに高めることができる。
【0038】
また、本発明はシール装置を主目的として用いるが、軸の振動を減衰する減衰装置として用いてもよい。
【符号の説明】
【0039】
10 シール装置
11 ハウジング
11a ホルダ
11b フランジ
12 リテーナ
13 シールリング
14 永久磁石(第1磁石)
14N、14S 磁極面
14a 磁極隣接面
15 フローティングリング
17 永久磁石(第2磁石)
17N、17S 磁極面
17a 磁極隣接面
18 支持手段
19 付勢手段
20 回転軸
21 ケーシング
22 締結手段
S 空間
k 周方向空隙
h 径方向空隙
C−C 鉛直線

図1
図2
図3
【国際調査報告】