(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
気体吸着剤担持体は、多孔質無機粒子と、多孔質無機粒子の孔内に担持された気体吸着剤と、孔内において気体吸着剤を封止している封止樹脂とを含有し、最大長さの平均値が、1mm以上である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
1.気体吸着剤担持体
本発明の気体吸着剤担持体は、多孔質無機粒子と、多孔質無機粒子の孔内に担持された気体吸着剤と、孔内において気体吸着剤を封止している封止樹脂とを含有する。具体的には、気体吸着剤担持体は、多孔質無機粒子と気体吸着剤と封止樹脂とからなる。
【0023】
多孔質無機粒子は、気体吸着剤を担持する担体である。
【0024】
多孔質無機粒子の材料としては、例えば、ケイ酸カルシウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸マグネシウム、ゼオライトなどのケイ酸塩、例えば、リン酸カルシウム、リン酸バリウム、リン酸マグネシウム、リン酸ジルコニウム、アパタイトなどのリン酸塩、例えば、酸化ケイ素(例えば、二酸化ケイ素(シリカ)、一酸化ケイ素など)、アルミナ、酸化マグネシウムなどの酸化物、例えば、有機物の炭化品、活性炭、カーボンブラックなどの炭素質、および、これらの2種以上の化合物の混合物などが挙げられる。
【0025】
有機物の炭化品としては、例えば、椰子殻、籾殻、木粉、竹材、褐炭、泥炭、無煙炭、ピッチなどの天産炭素含有物、例えば、フェノール樹脂などの熱硬化性樹脂硬化物、例えば、塩化ビニリデン樹脂などの熱可塑性樹脂などの合成樹脂を炭化した物が挙げられる。活性炭としては、これらの炭化物を賦活剤によって処理したもの(賦活炭)が挙げられる。このような賦活炭として、例えば、水蒸気賦活炭、リン酸賦活炭、塩化亜鉛賦活炭などが挙げられる。また、このような活性炭は、市販品を用いることができ、具体的には、BAX−1700(リン酸賦活炭、WestRock社製)、白鷺KL(塩化亜鉛賦活炭、大阪ガスケミカル社製)などが挙げられる。
【0026】
多孔質無機粒子の材料として、好ましくは、酸化物、炭素質、より好ましくは、シリカ、活性炭が挙げられる。
【0027】
多孔質無機粒子の最大長さの平均値(多孔質無機粒子が、球形状を有する場合には、平均粒子径)は、後述する気体吸着剤担持体の製造方法によって適宜設定され、1μm以上であり、また、20mm以下である。なお、多孔質無機粒子の最大長さの平均値は、例えば、ダイヤルゲージ、ノギスなどによって測定される。
【0028】
気体吸着剤は、多孔質無機粒子の孔内に担持され、封止樹脂によって封止(被覆)されている。気体吸着剤は、気体吸着剤担持体において気体を吸着できる。
【0029】
気体吸着剤は、例えば、アルデヒド吸着剤、アンモニア吸着剤、エチレン吸着剤、二酸化炭素吸着剤などが挙げられる。
【0030】
アルデヒド吸着剤は、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒドなどのアルデヒド類を吸着できる吸着剤であって、例えば、スルファミン酸、スルファミン酸の塩が挙げられる。
【0031】
スルファミン酸の塩としては、例えば、スルファミン酸アンモニウム、例えば、スルファミン酸鉄、スルファミン酸コバルト、スルファミン酸ニッケル、スルファミン酸銅、スルファミン酸銀、スルファミン酸インジウム、スルファミン酸カドミウムなどのスルファミン酸遷移金属塩、例えば、スルファミン酸ナトリウム、スルファミン酸カリウムなどのスルファミン酸アルカリ金属塩、例えば、スルファミン酸カルシウムなどのスルファミン酸アルカリ土類金属塩などが挙げられる。
【0032】
アルデヒド吸着剤としては、好ましくは、スルファミン酸の塩、より好ましくは、スルファミン酸アンモニウムが挙げられる。
【0033】
アンモニア吸着剤は、アンモニアを吸着できる吸着剤であって、例えば、クエン酸などが挙げられる。
【0034】
エチレン吸着剤は、エチレンを吸着できる吸着剤であって、例えば、ビニルピリジン、ジメチルアミノエチルメタクリレートなどのアミノ基含有ビニルモノマーのビニル重合体、例えば、エチレンイミンなどの環状アミンの開環重合体などが挙げられる。
【0035】
二酸化炭素吸着剤は、二酸化炭素を吸着できる吸着剤であって、例えば、炭酸カリウムなどの炭酸化合物、例えば、アンモニア、例えば、モノエタノールアミン、Nーメチルジエタノールアミン、ピベラジンなどのアミン化合物、例えば、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル化合物、例えば、アミノ酸、例えば、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド、テトラエチルホスホニウムベンズイミダゾリド(以下、P
2Bn)、テトラエチルアンモニウムベンズイミダゾリド(以下、N
2Bn)などのイオン性物質、例えば、塩化カルシウム、塩化リチウムなどの塩素化合物、例えば、臭化リチウムなどの臭素化合物、例えば、ポリアクリル酸ナトリウムなどの吸水性ポリマーなどが挙げられる。二酸化炭素吸着剤として、好ましくは、イオン性物質、より好ましくは、N
2Bn、P
2Bnが挙げられる。
【0036】
封止樹脂は、気体吸着剤を封止できる樹脂であれば特に制限されず、例えば、ビニル重合反応性二重結合(不飽和二重結合)を分子内に複数含む硬化性樹脂(以下、第1硬化性樹脂とする。)とビニルモノマーとの架橋による硬化物(以下、第1硬化物とする。)、ビニルモノマーによる架橋以外の架橋により硬化する硬化性樹脂(以下、第2硬化性樹脂とする。)の硬化物(以下、第2硬化物とする。)、熱可塑性樹脂などが挙げられる。
【0037】
第1硬化性樹脂としては、例えば、不飽和ポリエステル、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0038】
不飽和ポリエステルは、例えば、不飽和二塩基酸を含む二塩基酸成分と、二価アルコール(ジオール)成分とを重縮合(縮合重合)して得られる。なお、第1硬化性樹脂が不飽和ポリエステルである場合には、第1硬化性樹脂のビニルモノマー溶液(後述)は、不飽和ポリエステル樹脂である。不飽和ポリエステル樹脂を常温で硬化させる場合は、通常、オクチル酸コバルトなどの硬化促進剤が添加された不飽和ポリエステル樹脂が好適に使用される。
【0039】
また、不飽和ポリエステル樹脂を大気下、常温で硬化させる場合は、空気中の酸素による重合阻害が起こらないようにパラフィンワックスを添加してもよい。パラフィンワックスを添加する場合は、不飽和ポリエステルを溶解するビニルモノマーの一部を用いて、パラフィンワックスのビニルモノマー溶液として添加する。パラフィンワックスの融点は、通常120〜140°F(華氏)であり、添加量は不飽和ポリエステル樹脂100重量部に対して、例えば、0.01部以上、好ましくは、0.05部以上であり、また、例えば、0.2部以下、好ましくは、0.1部以下である。
【0040】
エポキシ(メタ)アクリレートは、ビニルエステルとも呼称される。エポキシ(メタ)アクリレートは、例えば、以下の方法により得られる。すなわち、ビスフェノール型エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸(つまり、アクリル酸および/またはメタクリル酸)などの不飽和カルボン酸とを、例えば、3級アミンなどの触媒存在下で反応して、エポキシ環をカルボキシル基で開環させることによって、エステル結合を生成させる方法(1)、例えば、不飽和オリゴエステルのカルボキシル基末端と、グルシジル(メタ)アクリレートなどのエポキシ基含有アクリル酸エステルのエポキシ基とを、例えば、3級アミンなどの触媒存在下で反応して、エポキシ環をカルボキシル基で開環させ、エステル結合を導入させる方法(2)などが例示される。なお、第1硬化性樹脂がエポキシ(メタ)アクリレートである場合には、第1硬化性樹脂のビニルモノマー溶液(後述)は、エポキシアクリレート樹脂である。
【0041】
ウレタン(メタ)アクリレートは、イソホロンジイソシアネートなどのジイソシアネートと、2−ヒドロキシエチルメタクリレートなどのヒドロキシ基含有(メタ)アクリル酸エステルのヒドロキシル基とを、例えば、ジブチル錫ジラウレートなどの触媒存在下で反応させることにより得られ、ウレタン結合とエステル結合とを含むオリゴマーである。なお、第1硬化性樹脂がウレタン(メタ)アクリレートである場合には、第1硬化性樹脂のビニルモノマー溶液は、ウレタンアクリレート樹脂(後述)である。
【0042】
第1硬化性樹脂として、好ましくは、不飽和ポリエステルが挙げられる。第1硬化性樹脂は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0043】
ビニルモノマーとしては、ラジカル開始による付加重合(ビニル重合)を行う性質を有する、常温で液状のモノマーが選択される。さらに、ビニルモノマーは、第1硬化性樹脂を溶解して粘度を低下させるとともに、第1硬化性樹脂の不飽和二重結合とビニル共重合する架橋性モノマーとしての役割を担う。このようなビニルモノマーとしては、例えば、単官能ビニルモノマーが挙げられ、具体的には、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、tert−ブチルスチレン、クロロスチレンなどのスチレン系モノマー、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルなどの(メタ)アクリル酸エステル系モノマーなどが挙げられる。不飽和ポリエステル樹脂およびエポキシアクリレート樹脂には、好ましくは、スチレン、メタクリル酸メチルが使用され、より好ましくは、スチレンが使用される。ウレタンアクリレート樹脂には、好ましくは、(メタ)アクリル酸エステル系モノマーが使用され、より好ましくは、メタクリル酸エステル系モノマーが使用される。ビニルモノマーは、単独使用または2種以上併用することができる。
【0044】
第2硬化性樹脂としては、例えば、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂などが挙げられる。
【0045】
アルキド樹脂は、例えば、多塩基酸(不飽和二塩基酸を含む二塩基酸成分を除く)および脂肪酸(または脂肪油)と、多価アルコールとの重縮合およびエステル交換反応によって得られる。アルキド樹脂は、後述するように、硬化促進剤の触媒作用により硬化する。
【0046】
エポキシ樹脂は、例えば、ビスフェノールAなどのフェノールと、エピクロルヒドリンとの縮合反応および開環付加反応によって得られる。エポキシ樹脂は、後述するように、ポリアミン、酸無水物などの公知の硬化剤により硬化する。
【0047】
フェノール樹脂は、例えば、フェノールと、アルデヒドとの付加縮合反応によって得られる。フェノール樹脂は、後述するように、ヘキサミンなどの公知の硬化剤により硬化する。
【0048】
メラミン樹脂は、例えば、メラミンとホルムアルデヒドとの付加縮合反応によって得られる。メラミン樹脂は、後述するように、酸無水物などの公知の硬化剤により硬化する。
【0049】
ユリア樹脂は、尿素とホルムアルデヒドの付加縮合反応によって得られる。ユリア樹脂は、後述するように、酸無水物などの公知の硬化剤により硬化する。
【0050】
第2硬化性樹脂としては、好ましくは、アルキド樹脂が挙げられる。第2硬化性樹脂は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0051】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂、ポリエステル樹脂(不飽和ポリエステルを除く)、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂などが挙げられる。熱可塑性樹脂は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0052】
第2硬化性樹脂および熱可塑性樹脂は、気体吸着剤担持体を製造する時には、低粘度液体(樹脂液(後述))にして用いられるので、溶媒(後述)の併用が必要である。
【0053】
2.気体吸着剤担持体を製造する方法
次に、気体吸着剤担持体を製造する方法について説明する。
【0054】
気体吸着剤担持体を製造する方法としては、製造方法1、製造方法2が挙げられる。
【0055】
気体吸着剤担持体の製造方法1は、最大長さの平均値が1mm以上の多孔質無機粒子の孔内に気体吸着剤を担持させる工程(1)と、気体吸着剤を担持させた多孔質無機粒子と、樹脂液とを混合し、孔内において樹脂液から形成される封止樹脂で気体吸着剤を封止する工程(2)とを備える。
【0056】
まず、この工程(1)では、例えば、多孔質無機粒子を用意するとともに、気体吸着剤を含有する液を調製する。
【0057】
多孔質無機粒子の最大長さの平均値(多孔質無機粒子が、球形状を有する場合には、平均粒子径)は、1mm以上、好ましくは、3mm以上、より好ましくは、5mm以上であり、また、例えば、20mm以下、好ましくは、10mm以下である。
【0058】
多孔質無機粒子の形状は、例えば、球形状(楕円状を含む)、板状(扁平状)、柱状(円柱状、多角柱状などを含む)、不定形状などが挙げられる。
【0059】
多孔質無機粒子の細孔容積は、例えば、0.5mL/g以上、好ましくは、0.8mL/g以上、より好ましくは、1.3mL/g以上であり、また、例えば、4mL/g以下、好ましくは、2mL/g以下、より好ましくは、1.7mL/g以下、さらに好ましくは、1.6mL/g以下である。細孔容積は、水銀圧入法により測定される。多孔質無機粒子の細孔容積は、単位質量(g)当たりの多孔質無機粒子を形成する粒子の直径40Å〜20μmの細孔容積(mL)を意味する。
【0060】
多孔質無機粒子の比表面積は、例えば、50m
2/g以上、好ましくは、100m
2/g以上、また、例えば、3000m
2/g以下である。比表面積は、簡易BET法により測定される。
【0061】
多孔質無機粒子の吸油量は、例えば、100mL/100g以上、好ましくは、250mL/100g以上、また、例えば、500mL/100g以下である。吸油量は、JIS K5101−13−2(2004年)に準拠して測定される。
【0062】
気体吸着剤が常温で液状である場合には、かかる気体吸着剤をそのまま液として準備する。好ましくは、気体吸着剤の、23℃における粘度が、150mPa・s以下、100mPa・s以下、さらには、70mPa・s以下であれば、かかる気体吸着剤をそのまま液として準備する。気体吸着剤の粘度は、BM型粘度計によって測定される。一方、気体吸着剤の、23℃における粘度が、70mPa・s超過、さらには、100mPa・s超過、さらには、150mPa・s超過であれば、気体吸着剤を溶媒(後述する第2樹脂液の溶媒と同じ。)によって希釈して、23℃における粘度が、例えば、100mPa・s以下の、好ましくは、70mPa・s以下の気体吸着剤の溶液を調製する。
【0063】
気体吸着剤が常温で半固体状または固体状である場合には、気体吸着剤の溶液を調製する。好ましくは、23℃における粘度が150mPa・s以下の、より好ましくは、100mPa・s以下の、さらに好ましくは、70mPa・s以下の気体吸着剤の溶液を調製する。具体的には、気体吸着剤が、常温で半固体状または固体状であれば、溶媒に気体吸着剤を溶解させて、気体吸着剤の溶液を調製する。
【0064】
溶媒および気体吸着剤の配合割合は、溶液の23℃における粘度が、例えば、150mPa・s以下、好ましくは、100mPa・s以下、より好ましくは、70mPa・s以下となるように、調整される。具体的には、気体吸着剤の配合割合が、溶媒および気体吸着剤の総量に対して、例えば、20質量%以上、好ましくは、50質量%以上、また、例えば、80質量%以下となるように、溶媒および気体吸着剤の配合割合を調整する。
【0065】
続いて、気体吸着剤を含有する液を、多孔質無機粒子に対して配合する。具体的には、例えば、精秤したガラス瓶に多孔質無機粒子を秤りこみ、気体吸着剤を含有する液を多孔質無機粒子に滴下し、撹拌する。
【0066】
また、この時、常圧で、気体吸着剤を含有する液を多孔質無機粒子に対して配合してもよく、または、細孔内吸着速度を速めるため、減圧にしてから、気体吸着剤を含有する液を多孔質無機粒子に対して配合してもよい。多孔質無機粒子の攪拌速度、撹拌様式、および気体吸着剤を含有する液の滴下時間は、適宜調整される。
【0067】
その後、液が溶媒を含有する場合には、溶媒を、室温または加熱の条件で、大気圧または減圧により、留去する。
【0068】
これによって、多孔質無機粒子の孔内に気体吸着剤を担持させる。
【0069】
また、上記において、工程(1)を複数回実施することで、所望量の気体吸着剤を多孔質無機粒子内に取り込むこともできる。具体的には、第1回目に、気体吸着剤を含有する液を多孔質無機粒子に対して配合し、その後、溶媒を留去し、次いで、第2回目に、気体吸着剤を含有する液を、第1回目で配合された気体吸着剤を取り込んだ多孔質無機粒子に対してさらに配合し、その後、溶媒を留去する。第3回目以降は、この操作を繰り返す。
【0070】
その後、工程(2)において、気体吸着剤を担持させた多孔質無機粒子と、樹脂液とを混合し、孔内において樹脂液から形成される封止樹脂で気体吸着剤を封止する。
【0071】
具体的には、まず、樹脂液を調製する。
【0072】
詳しくは、封止樹脂が、第1硬化物である場合には、まず、第1硬化性樹脂のビニルモノマー溶液(以下、第1樹脂液とする。)を調製する。具体的には、第1硬化性樹脂のビニルモノマー溶液の粘度が、150mPa・s以上、さらには、100mPa・s以上、さらには、70mPa・s以上である場合は、ビニルモノマーの添加により、その粘度が150mPa・s以下、好ましくは、100mPa・s以下、より好ましくは、70mPa・s以下となるように調製する。
【0073】
第1樹脂液は、第1硬化性樹脂とビニルモノマーとを含有し、非反応性の溶媒(後述)を含有せず、好ましくは、第1硬化性樹脂と、ビニルモノマーとのみからなり、非反応性の溶媒を含有しない。したがって、気体吸着剤担持体の製造において、溶媒を除去する工程を要することなく、多孔質無機粒子の孔内における第1樹脂液のすべて、つまり、第1硬化性樹脂とビニルモノマーとのすべてが硬化して第1硬化物を形成できる。そのため、孔内における第1硬化物の容積を大きく確保することができ、多孔質無機粒子において十分な量の気体吸着剤を確実に封止することができる。
【0074】
ビニルモノマーの配合割合は、第1硬化性樹脂100質量部に対して、例えば、30質量部以上、好ましくは、60質量部以上であり、また、例えば、150質量部以下、好ましくは、120質量部以下である。また、ビニルモノマーの配合割合は、第1硬化性樹脂およびビニルモノマーの総量に対して、例えば、30質量%以上、好ましくは、40質量%以上であり、また、例えば、70質量%以下、好ましくは、60質量%以下である。
【0075】
ビニルモノマーの配合割合が上記した下限以上であれば、第1樹脂液の粘度(後述)を低減させることができ、第1樹脂液が多孔質無機粒子の孔内に迅速に取り込まれる(吸着・担持される)ことができる。一方、ビニルモノマーの配合割合が上記した上限以下であれば、架橋密度の高い封止樹脂(硬化物)が得られる。
【0076】
また、第1硬化性樹脂が、不飽和ポリエステル、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレートのいずれかであれば、第1樹脂液に、例えば、メチルエチルケトンパーオキサイドなどの有機過酸化物を適宜の割合で配合する。さらに、硬化促進助剤として、例えば、ジメチルアニリンなどの芳香族アミン、例えば、アセチルアセトンなどのジケトンを配合することもできる。さらに、紫外線硬化反応を行う場合には、例えば、光増感剤を配合することができる。
【0077】
また、封止樹脂が、第2硬化性樹脂の硬化物、または、熱可塑性樹脂である場合には、樹脂液として、第2硬化性樹脂、または、熱可塑性樹脂を溶媒に溶解し、ワニス(以下、第2樹脂液とする。)を調製する。
【0078】
溶媒としては、例えば、有機溶媒、水が挙げられる。
【0079】
有機溶媒としては、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの脂肪族炭化水素類、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、例えば、ジクロロエタン、トリクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなどのアルコール類、例えば、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル類などが挙げられる。有機溶媒は、単独使用または2種以上併用することができる。溶媒として、好ましくは、エステル類が挙げられる。
【0080】
溶媒の配合割合は、第2硬化性樹脂または熱可塑性樹脂100質量部に対して、例えば、10質量部以上、好ましくは、20質量部以上であり、また、例えば、200質量部以下、好ましくは、100質量部以下である。また、溶媒の配合割合は、第2硬化性樹脂または熱可塑性樹脂、および、溶媒の総量に対して、例えば、5質量%以上、好ましくは、10質量%以上であり、また、例えば、70質量%以下、好ましくは、50質量%以下である。
【0081】
第2樹脂液は、第2硬化性樹脂または熱可塑性樹脂と、溶媒とを含有し、ビニルモノマーを含有せず、好ましくは、第2硬化性樹脂または熱可塑性樹脂と、溶媒とのみからなり、ビニルモノマーを含有しない。
【0082】
第2硬化性樹脂がアルキド樹脂である場合には、例えば、金属石鹸(具体的にはオクチル酸コバルトなど)などの硬化促進剤を、第2樹脂液に配合する。第2硬化性樹脂がアルキド樹脂以外の樹脂である場合には、公知の硬化剤および/または硬化促進剤などを適宜の割合で第2樹脂液に配合することができる。
【0083】
次いで、工程(1)により得られた多孔質無機粒子と、樹脂液とを配合し、撹拌する。
【0084】
具体的には、工程(1)により得られた多孔質無機粒子に、樹脂液を滴下する。
【0085】
気体吸着剤の質量の、封止樹脂の質量に対する割合(気体吸着剤の質量/封止樹脂の質量)が、例えば、30.0以下、好ましくは、25.0以下、より好ましくは、15.0以下、さらに好ましくは、10.0以下、とりわけ好ましくは、5.00以下、最も好ましくは、4.40以下、さらには、4.00以下、さらには、3.50以下であり、また、例えば、3.00以上となるように、多孔質無機粒子と、樹脂液とを混合する。上記割合が、上記上限以下であれば、十分な量の封止樹脂で気体吸着剤を封止することができる。上記割合が、上記下限以上であれば、封止樹脂が厚くなることを抑制できる。そのため、気体の吸着速度の低下を抑制できる。
【0086】
また、気体吸着剤、および、封止樹脂の質量の総質量の、多孔質無機粒子の質量に対する割合(気体吸着剤、および、封止樹脂の質量/多孔質無機粒子の質量)が、例えば、0.70以上、好ましくは、0.80以上、より好ましくは、1.00以上であり、また、例えば、2.50以下、好ましくは、2.30以下、より好ましくは、2.10以下、さらに好ましくは、1.98以下、とりわけ好ましくは、1.80以下、最も好ましくは、1.5以下となるように、多孔質無機粒子と、樹脂液とを混合する。上記割合が、上記上限以下であれば、封止樹脂が厚くなることを抑制できる。そのため、気体の吸着速度の低下を抑制できる。上記割合が、上記下限以上であれば、十分な量の封止樹脂で気体吸着剤を封止することができる。
【0087】
これによって、樹脂液が、多孔質無機粒子の孔内に取り込まれる。具体的には、樹脂液が、多孔質無機粒子の孔内に担持させた気体吸着剤を被覆する。
【0088】
続いて、封止樹脂が、第1硬化物、または、第2硬化物である場合、第1樹脂液または第2樹脂液を硬化させる。なお、封止樹脂が、第1硬化物である場合には、第1樹脂液を取り込んだ多孔質無機粒子を乾燥(後述)せず、第1硬化性樹脂とビニルモノマーとを硬化させる。一方、封止樹脂が、第2硬化物である場合には、第2樹脂液を取り込んだ多孔質無機粒子を乾燥し、溶媒を留去した後、硬化させる。
【0089】
第1樹脂液の硬化は、常温(25℃)で進行し、必要により、例えば、40〜90℃で加熱することもできる。硬化時間は、適宜設定される。
【0090】
第1樹脂液では、重合開始剤により、ビニルモノマーのビニル基と、第1硬化性樹脂の不飽和二重結合とが、ビニル共重合(ラジカル共重合)することにより、架橋し、硬化が進行する。第2樹脂液の硬化は、第2硬化性樹脂の種類に応じた硬化温度、硬化時間が適宜設定される。第2樹脂液では、硬化剤および/または硬化促進剤によって硬化が進行する。
【0091】
これにより、樹脂液から形成された封止樹脂が形成される。
【0092】
また、封止樹脂が、熱可塑性樹脂である場合、第2樹脂液を乾燥させ、溶媒を留去する。これにより、樹脂液から形成された封止樹脂が形成される。
【0093】
そして、多孔質無機粒子の孔内において、樹脂液から形成された封止樹脂によって、気体吸着剤が封止される。
【0094】
これにより、気体吸着剤担持体が得られる。
【0095】
気体吸着剤担持体の最大長さの平均値は、1mm以上、好ましくは、2mm以上、より好ましくは、5mm以上であり、また、20mm以下、好ましくは、10mm以下である。
【0096】
気体吸着剤担持体の最大長さの平均値が、上記下限以上であれば、圧力損失の増加を抑制できる。つまり、気体吸着剤担持体の最大長さの平均値が、上記下限未満であれば、圧力損失が増加する。
【0097】
また、気体吸着剤担持体の最大長さの平均値が、上記上限以下であれば、取り扱い性に優れる。
【0098】
得られた気体吸着剤担持体の寸法は、工程(1)で用いた多孔質無機粒子の寸法に対して、実質的に同一であり、具体的には、同一またはやや大きい。
【0099】
一方、気体吸着剤担持体の製造方法2は、多孔質無機粒子の孔内に気体吸着剤を担持させる工程(3)と、気体吸着剤を担持させた多孔質無機粒子と、樹脂液とを、混合し、最大長さの平均値が1mm以上となるように造粒するとともに、孔内において樹脂液から形成される封止樹脂で気体吸着剤を封止する工程(4)とを備える。
【0100】
なお、製造方法2において、製造方法1と同様の成分(原料)および工程については、その説明を省略する。
【0101】
まず、この工程(3)では、多孔質無機粒子を用意するとともに、気体吸着剤を含有する液を、上記と同様にして、調製する。
【0102】
多孔質無機粒子は、例えば、微細な多孔質無機粒子(最大長さの平均値が100μm未満の多孔質無機粒子。以下、単に、微細多孔質無機粒子という場合がある。)である。
【0103】
詳しくは、微細多孔質無機粒子の最大長さの平均値(微細多孔質無機粒子が、球形状を有する場合には、平均粒子径)は、例えば、100μm未満、好ましくは、50μm以下、より好ましくは、40μm以下、さらに好ましくは、30μm以下、とりわけ好ましくは、20μm、さらには、10μm以下、さらには、5μm以下である。また、最大長さの平均値は、例えば、1μm以上、好ましくは、2μm以上である。
【0104】
微細多孔質無機粒子は、例えば、微細多孔質無機粒子の一次粒子、あるいは、一次粒子が互いに凝集した凝集体(二次粒子など)として構成されている。
【0105】
微細多孔質無機粒子の形状は、限定されないが、例えば、球形状(真球形状を含む)、不定形状などが挙げられる。
【0106】
微細多孔質無機粒子の細孔容積(一次粒子の孔の総容積)、比表面積および吸油量は、上記した製造方法1における多孔質無機粒子の細孔容積、比表面積および吸油量と同様である。
【0107】
続いて、気体吸着剤を含有する液を、微細多孔質無機粒子に対して配合する。具体的には、例えば、撹拌機付きの密閉容器に微細多孔質無機粒子を秤りこみ、撹拌しながら、気体吸着剤を含有する液を滴下する。この時、常圧で、気体吸着剤を含有する液を微細多孔質無機粒子に対して配合してもよく、または、細孔内吸着速度を速めるため、減圧にしてから、気体吸着剤を含有する液を微細多孔質無機粒子に対して配合してもよい。
【0108】
その後、液が溶媒を含有する場合には、溶媒を、留去する。
【0109】
これによって、微細多孔質無機粒子の孔内に気体吸着剤を担持させる。
【0110】
その後、工程(4)において、気体吸着剤を担持させた微細多孔質無機粒子と、樹脂液とを、混合し、最大長さの平均値が1mm以上となるように造粒するとともに、孔内において樹脂液から形成される封止樹脂で気体吸着剤を封止する。
【0111】
具体的には、工程(3)により得られた微細多孔質無機粒子と、樹脂液とを混合し混合物を得る。
【0112】
詳しくは、気体吸着剤の質量の、封止樹脂の質量に対する割合(気体吸着剤の質量/封止樹脂の質量)が、例えば、3.00未満、好ましくは、1.50以下であり、また、例えば、0.10以上、好ましくは、0.50以上、より好ましくは、0.80以上、さらに好ましくは、1.00以上となるように、微細多孔質無機粒子と、樹脂液とをディスパー、ヘンシェルミキサー、プラネタリーミキサー、リボンミキサー、ニーダーなどを用いて混合する。上記割合が、上記上限以下であれば、十分な量の封止樹脂で気体吸着剤を封止することができる。上記割合が、上記下限以上であれば、封止樹脂が厚くなることを抑制できる。そのため、気体の吸着速度の低下を抑制できる。
【0113】
また、気体吸着剤、および、封止樹脂の質量の総質量の、多孔質無機粒子の質量に対する割合(気体吸着剤、および、封止樹脂の質量/多孔質無機粒子の質量)は、例えば、1.50を超過、好ましくは、2.00以上、より好ましくは、3.00以上であり、また、例えば、5.0以下となるように、微細多孔質無機粒子と、樹脂液とを混合する。上記割合が、上記上限以下であれば、封止樹脂が厚くなることを抑制できる。そのため、気体の吸着速度の低下を抑制できる。上記割合が、上記下限以上であれば、十分な量の封止樹脂で気体吸着剤を封止することができる。
【0114】
その後、得られた混合物を、例えば、押出機でストランドにし、ペレタイザーなどで切断して、円柱状造粒物を得ることができる。また、得られた混合物を、例えば、デスクペレッター型造粒機で造粒後、マルメライザーで成形して、球状造粒物を得ることができる。なお、封止樹脂が、第1硬化物である場合には、第1樹脂液を取り込んだ多孔質無機粒子を乾燥せず、第1硬化性樹脂とビニルモノマーとを硬化させる。一方、封止樹脂が、第2硬化物である場合には、第2樹脂液を取り込んだ多孔質無機粒子を乾燥し、溶媒を留去した後、硬化させる。
【0115】
詳しくは、得られた造粒物の最大長さの平均値が1mm以上、好ましくは、3mm以上、より好ましくは、5mm以上、また、20mm以下となるように、造粒する。
【0116】
得られた造粒物の形状は、特に限定されず、例えば、板状(扁平状)、柱状(円柱状、多角柱状などを含む)、不定形状などが挙げられる。
【0117】
「造粒」は、複数の微細多孔質無機粒子を、樹脂液をバインダー成分として凝集させて、粒(凝集物)をつくることを意味する一方、団塊(塊状)のものを、破砕して粒を造ることを意味しない。
【0118】
具体的には、上記した造粒は、樹脂液が、微細多孔質無機粒子の孔内に取り込まれつつ(具体的には、微細多孔質無機粒子の孔内に担持させた気体吸着剤を被覆しつつ)、樹脂液が隣接する微細多孔質無機粒子同士を接着するバインダーとして作用することにより、進行する。
【0119】
続いて、封止樹脂が、第1硬化性樹脂とビニルモノマーとの硬化物、あるいは、第2硬化性樹脂の硬化物である場合、多孔質無機粒子の孔内に取り込まれた樹脂液を、上記と同様にして、硬化させる。これにより、多孔質無機粒子の孔内において、樹脂液から形成された樹脂によって、気体吸着剤が封止される。
【0120】
また、封止樹脂が、熱可塑性樹脂である場合、第2樹脂液を乾燥させ、溶媒を留去する。これにより、樹脂液から形成された封止樹脂が形成される。
【0121】
3. 気体吸着剤担持体の用途
この気体吸着剤担持体は、例えば、工場などの排ガス処理、工場や倉庫などの換気、工場などの脱臭を目的とする気体吸着用途に用いられる。気体吸着剤担持体は、具体的には、充填塔に充填されて用いられる。そして、充填塔の塔内に、吸着したい気体を含むガスを流通させて、吸着したい気体と気体吸着剤担持体とを接触させることにより、気体を吸着する。
【0122】
一方、この気体吸着剤担持体では、気体吸着剤が封止樹脂によって封止されているが、封止樹脂が、第1硬化物または第2硬化物である場合には、硬化物を形成する際の収縮に起因して、封止樹脂は複数の微細な孔を有する。そのため、気体吸着剤担持体は、孔を介して、気体と接触し、気体を吸着することができる。
【0123】
また、気体を吸着した気体吸着剤担持体は、PSA方式などの吸脱着システムによってリサイクルすることができ、例えば、加熱あるいは常温の充填塔に水、水蒸気、窒素ガス、空気を流通させることによって、吸着した気体のみを気体吸着剤担持体の気体吸着剤から脱離することができる。
【0124】
4.作用効果
この気体吸着剤担持体は、封止樹脂によって、気体吸着剤を封止している。
【0125】
そのため、気体吸着剤担持体をリサイクルするにあたって、予め、気体吸着剤担持体を水洗する場合であっても、水洗に起因する気体吸着剤の水への溶脱を抑制できる。そのため、耐久性に優れる。
【0126】
また、リサイクル時に加熱あるいは常温の充填塔に水、水蒸気、窒素ガス、空気を流通させる際の気体吸着剤担持体間の動的接触による摩耗を抑制できる。そのため、耐久性に優れる。また、例えば、この気体吸着剤担持体が工場などの排ガス処理に用いられる場合がある。そして、このような排ガス(例えば、燃焼排ガス)は、一般に水気をガス状またはミスト状の形態で多く含んでいるため、気体吸着剤担持体が、高湿度の水蒸気または水滴に触れる可能性がある。そのため、気体吸着剤担持体には、高い水耐性が求められるとともに、このような環境において繰り返し使用できること(再利用性に優れること)が求められる場合がある。
【0127】
この気体吸着剤担持体は、封止樹脂によって、気体吸着剤を封止しているため、耐久性(水耐性)に優れつつ、再利用性に優れる。
【0128】
この気体吸着剤担持体は、その最大長さの平均値が、1mm以上であり、最大長さの平均値が、1mm未満の気体吸着剤担持体(例えば、マイクロカプセル)と比較して、大きい。そのため、圧力損失の増加を抑制できる。
【0129】
具体的には、この気体吸着剤担持体を、PSA方式などの吸脱着システムにおいて、高密度に充填して、リサイクルする場合、および、この気体吸着剤担持体を、工場や倉庫の換気システムとして使用する場合に、圧力損失の増加を抑制できる。
【0130】
また、この気体吸着剤担持体をハンドリング性が要求される家庭などで使用する場合において、気体吸着剤担持体の最大長さの平均値が、1mm以上であり、最大長さの平均値が、1mm未満の気体吸着剤担持体(例えば、マイクロカプセル)と比較して、大きいため、気体吸着剤担持体の飛散を抑制することができる。
【0131】
また、封止樹脂が硬化性樹脂のビニルモノマー溶液を硬化した硬化物(第1硬化物)であれば、第1硬化性樹脂とビニルモノマーとが硬化して硬化物(第1硬化物)を形成できる。そのため、孔内における封止樹脂の容積を大きく確保することができ、多孔質無機粒子において十分な量の気体吸着剤を確実に封止することができる。そのため、上記の水洗に起因する気体吸着剤の水への溶脱をさらに抑制できる。
【0132】
この気体吸着剤担持体の製造方法1は、最大長さの平均値が1mm以上の多孔質無機粒子の孔内に気体吸着剤を担持させる工程(1)を備えるため、最大長さの平均値が1mm以上の気体吸着剤担持体を製造できる。そのため、圧力損失の増加を抑制できる気体吸着剤担持体を製造することができる。
【0133】
この気体吸着剤担持体の製造方法1は、多孔質無機粒子の孔内において樹脂液から形成される封止樹脂で気体吸着剤を封止する工程(2)を備えるため、樹脂液から形成される封止樹脂で、気体吸着剤を封止している気体吸着剤担持体を製造することができる。そのため、耐久性に優れる気体吸着剤担持体を製造することができる。
【0134】
この気体吸着剤担持体の製造方法2は、多孔質無機粒子と、樹脂液とを、最大長さの平均値が1mm以上となるように造粒する工程(4)を備えるため、最大長さの平均値が1mm以上の気体吸着剤担持体を製造できる。そのため、圧力損失の増加を抑制できる気体吸着剤担持体を製造することができる。
【0135】
この気体吸着剤担持体の製造方法2は、気体吸着剤を担持させた多孔質無機粒子と、樹脂液とを、混合するため、樹脂液から形成される封止樹脂が、気体吸着剤を封止している気体吸着剤担持体を製造することができる。そのため、耐久性に優れる気体吸着剤担持体を製造することができる。
【0136】
この気体吸着剤担持体の製造方法1および製造方法2では、樹脂液が、第1硬化性樹脂と、ビニルモノマーとを含有すれば、第1硬化性樹脂とビニルモノマーとが硬化して硬化物(第1硬化物)を形成できる。そのため、孔内における第1硬化性樹脂の容積を大きく確保することができ、多孔質無機粒子において十分な量の気体吸着剤を確実に封止することができる。そのため、耐久性に優れる気体吸着剤担持体を製造することができる。
【0137】
なお、気体吸着剤担持体の製造方法1は、気体吸着剤担持体の製造方法2で必要とされる造粒工程(工程(4))を備えないため、工業的に簡便である。
【0138】
(変形例)
上記した製造方法1において、最大長さの平均値が1mm以上の多孔質無機粒子を含む混合物を、さらに造粒することもできる。
【0139】
上記した製造方法1において、多孔質無機粒子として、複数の微細多孔質無機粒子をバインダーで固め、最大長さの平均値を1mm以上にしたものを用いることもできる。
【実施例】
【0140】
以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。また、以下の記載において特に言及がない限り、「%」は質量基準である。
【0141】
1. 成分および装置の詳細
各実施例および各比較例で用いた各成分および装置を以下に記載する。
【0142】
シリカペレット:CARiACT Q−50(商品名)、触媒担持用シリカゲル、細孔容積0.69mL/g、比表面積68m
2/g、最大長さの平均値4mm、富士シリシア社製
リン酸賦活ペレット炭:BAX−1700(商品名)、多孔質無機粒子、細孔容積1.52mL/g、比表面積2479m
2/g、最大長さの平均値2.2mm、WestRock社製
籾殻活性炭(水蒸気賦活粒状炭):多孔質無機粒子、細孔容積1.68mL/g、最大長さの平均値2mm
籾殻炭化品(籾殻活性炭原料):籾殻活性炭の原料、細孔容積0.66mL/g、最大長さの平均値2mm
塩化亜鉛賦活粒状炭:白鷺KL(商品名)、多孔質無機粒子、細孔容積1.82mL/g、最大長さの平均値1mm、大阪ガスケミカル社製
シリカ微粒子:サイリシア310P(商品名)、湿式法シリカ微粒子、微細多孔質無機粒子、細孔容積4.64mL/g、比表面積300m
2/g、吸油量330mL/100g、平均粒子径2.7μm、富士シリシア社製
不飽和ポリエステル樹脂:ポリホープXJ−808(商品名)、硬化性樹脂(硬化促進剤を含む不飽和ポリエステルの46%スチレン溶液)、粘度120mPa・s、ジャパンコンポジット社製
アルキド樹脂:アルキディアEL−8011(商品名)、硬化性樹脂、DIC社製
スルファミン酸アンモニウム:アルデヒド吸着剤、和光純薬工業社製
クエン酸:アンモニア吸着剤、和光純薬工業社製
N
2Bn:二酸化炭素吸着剤、イオン性物質、テトラエチルアンモニウムベンズイミダゾリド、大阪ガスケミカル合成品
P
2Bn:二酸化炭素吸着剤、イオン性物質、テトラエチルホスホニウムベンズイミダゾリド、大阪ガス合成品
パーメックN:日油社の商品名、メチルエチルケトンパーオキサイド55%ジメチルフタレート溶液、有機過酸化物、日油社製
ヘキソエートCo8%:東栄化工社の商品名、オクチル酸塩コバルト、硬化促進剤、東栄化工社製
押出成形機:HAAKE MiniCTW、サーモフィッシャー・サイエンティフィック社製
熱重量分析装置:TG−DTA7300、日立ハイテクサイエンス社製
圧力損失測定装置:
図1に示す圧力損失測定装置、大阪ガスケミカル設計品
熱分析装置:DTG−60A、島津製作所製
2. 気体吸着剤担持体の製造
実施例1
スルファミン酸アンモニウムを脱イオン水に溶解して、60%スルファミン酸アンモニウム水溶液を調製した。
【0143】
次いで、精秤したガラス瓶にシリカペレット6gを精秤し、続いて、スルファミン酸アンモニウム60%水溶液7.5gを滴下して、スパーテルでそれらが均一になるように撹拌した。
【0144】
次いで、このガラス瓶を100℃の乾燥機に入れて、3時間真空乾燥し、さらに、室温の乾燥機に入れて、3時間真空乾燥した。これにより、スルファミン酸アンモニウムが担持されたシリカペレット(担持体)を得た。シリカペレットの、スルファミン酸アンモニウムに対する質量比(シリカペレット/スルファミン酸アンモニウム)は、1.33(6g/4.5g)である。
【0145】
次いで、不飽和ポリエステル樹脂5g、パーメックN0.05gを100mLのポリプロプレンカップに秤り、スパーテルでそれらを混合し、常温で硬化する状態の不飽和ポリエステルのビニルモノマー溶液(不飽和ポリエステル樹脂)を調製した。
【0146】
次いで、上記の方法により得られた担持体3.0gに、上記で調製した不飽和ポリエステル樹脂0.33gを滴下し、続いて、すべての不飽和ポリエステル樹脂がシリカペレットに吸収されるまで、スパーテルで撹拌した。
【0147】
その後、常温で12時間放置した後、60℃で減圧し、シリカペレットの表面のタックがなくなるまで不飽和ポリエステル樹脂を硬化(完全硬化)させた。
【0148】
これにより、シリカペレットと、スルファミン酸アンモニウムと、不飽和ポリエステル樹脂の硬化物とを含む気体吸着剤担持体を得た。また、ダイヤルゲージによって、気体吸着剤担持体の最大長さの平均値を測定した。その結果を表1に示す。
【0149】
実施例2〜7
各成分の配合処方を、表1の記載に従って変更した以外は、実施例1と同様に処理して、気体吸着剤担持体を得た。
【0150】
なお、実施例5および6では、60%スルファミン酸アンモニウム水溶液に代えて、N
2Bnの55%メタノール溶液を用い、溶液滴下後の乾燥温度を70℃とした。
【0151】
なお、実施例7では、第2硬化性樹脂としてアルキド樹脂を用いた。具体的には、アルキド樹脂5gを100mPa・s以下の粘度となるように、酢酸エチル1.25gに溶解し、硬化促進剤として、ヘキソエートCo8%0.05gを配合して、酢酸エチルを揮発した後に、酸化硬化する状態のアルキド樹脂を調製した。また、アルキド樹脂の乾燥および硬化は、アルキド樹脂のタックがなくなるまで80℃で、乾燥および硬化させることにより実施した。
【0152】
実施例8
スルファミン酸アンモニウムを脱イオン水に溶解して、60%スルファミン酸アンモニウム水溶液を調製した。
【0153】
次いで、撹拌羽根付きセパラブルフラスコにシリカ微粒子6gを精秤し、減圧密閉状態で撹拌しながら、スルファミン酸アンモニウム60%水溶液12gを滴下し、その後、常圧に戻した。次いで、撹拌羽根から担持体を取り除き、スパーテルでそれらが均一になるように担持体を撹拌した。次いで、このガラス瓶を100℃の乾燥機に入れて、3時間真空乾燥し、さらに、室温の乾燥機入れて、3時間真空乾燥し、水を留去した。
【0154】
その後、セパラブルフラスコから担持体を取り出し、さらに、スルファミン酸アンモニウム60%水溶液3.0gを、1分かけて、スポイドで徐々に滴下し、スパーテルで均一になるように撹拌し、シリカ微粒子にスルファミン酸アンモニウムを担持させた。
【0155】
次いで、上記と同様にして、乾燥および真空乾燥した。
【0156】
これにより、スルファミン酸アンモニウムが担持されたシリカ微粒子(担持体)を得た。シリカ微粒子の、スルファミン酸アンモニウムに対する質量比(シリカ微粒子/スルファミン酸アンモニウム)は、0.67(6g/9g)である。
【0157】
次いで、上記の方法により得られた担持体4.0gおよび実施例1で調製した不飽和ポリエスエル樹脂2.4gを秤り、ポリプロプレンカップに加え、スパーテルで混合し、混合物を得た。
【0158】
次いで、押出成形機に、得られた混合物を投入し、1分間混練後、混練物を押出して直径2mmのストランドを得た。
【0159】
その後、常温で12時間放置した後、60℃で減圧し、ストランドのタックが消えるまで不飽和ポリエステル樹脂を硬化(完全硬化)させた。
【0160】
そして、ストランドを切断して最大長さの平均値10mmのペレットにした。
【0161】
これにより、気体吸着剤担持体を得た。
【0162】
実施例9および10
各成分の配合処方を、表2の記載に従って変更した以外は、実施例8と同様に処理して、気体吸着剤担持体を得た。
【0163】
なお、実施例10では、60%スルファミン酸アンモニウム水溶液に代えて、N
2Bnの55%メタノール溶液を用い、溶液滴下後の乾燥温度を70℃とした。
【0164】
実施例11〜22
各成分の配合処方を、表4の記載に従って変更した以外は、実施例1と同様に処理して、気体吸着剤担持体を得た。
【0165】
比較例1〜6
封止樹脂で気体吸着剤を封止せず、各成分の配合処方を、表2および3の記載に従って変更した以外は、実施例1と同様に処理して、気体吸着剤担持体を得た。
【0166】
比較例7〜9
封止樹脂で気体吸着剤を封止せず、また、混合物を造粒せず、表3の記載に従って変更した以外は、実施例8と同様に処理して、気体吸着剤担持体を得た。
【0167】
比較例10
混合物を造粒せず、表3の記載に従って変更した以外は、実施例8と同様に処理して、気体吸着剤担持体を得た。
【0168】
比較例11〜16
封止樹脂で気体吸着剤を封止せず、各成分の配合処方を、表5の記載に従って変更した以外は、実施例1と同様に処理して、気体吸着剤担持体を得た。
【0169】
3. 気体吸着試験
(水洗浄工程)
実施例1〜7、および、比較例1〜6の気体吸着剤担持体のそれぞれを直径50mmカラム内に、高さが10cmになるように充填し、そこへ水を200mL/分で10分間通し、洗浄した。洗浄後、気体吸着剤担持体を60℃で12時間乾燥させた。
【0170】
(気体吸着試験)
(ホルムアルデヒド吸着試験)
(実施例1、実施例2、実施例7、比較例1および比較例2)
水洗浄した実施例1、実施例2、実施例7、比較例1および比較例2の気体吸着剤担持体と、水洗浄しなかった実施例1、実施例2、実施例7、比較例1および比較例2の気体吸着剤担持体とのそれぞれを、気体吸着剤の質量が20mgとなるように、アルミニウムシャーレに入れた。次いで、これを1Lテドラーバックに封入した後、1000ppmホルムアルデヒドを含む空気1Lを加えた。気体注入時、0.5時間後、2.0時間後、および、24.0時間後のホルムアルデヒド濃度を測定した。その結果を表1および2に示す。
【0171】
(アンモニア吸着試験)
(実施例3、実施例4、比較例3、比較例4)
水洗浄した実施例3、実施例4、比較例3、比較例4の気体吸着剤担持体と、水洗浄しなかった実施例3、実施例4、比較例3、比較例4の気体吸着剤担持体とのそれぞれを、気体吸着剤の質量が20mgとなるように、アルミニウムシャーレに入れた。次いで、これを1Lテドラーバックに封入した後、1000ppmアンモニアを含む空気1Lを加えた。気体注入時、0.5時間後、2.0時間後、および、24.0時間後のアンモニア濃度を測定した。その結果を表1および2に示す。
【0172】
(二酸化炭素吸着試験)
(実施例5、実施例6、比較例5、比較例6)
水洗浄した実施例5、実施例6および比較例5、比較例6の気体吸着剤担持体と、水洗浄しなかった実施例5、実施例6および比較例5、比較例6の気体吸着剤担持体とのそれぞれ20mgをアルミニウム試料皿にとり、これを熱重量分析装置内に静置した。次いで、窒素(純度99.9999%以上)を200mL/分で流通させながら70℃で20時間静置した。次いで、窒素を二酸化炭素(窒素中の濃度約14%)に変更して、200mL/分で流通させながら、温度70℃で10時間放置した後、二酸化炭素流通後の増加重量(二酸化炭素の吸着量)を測定し、その結果から吸着率を求めた。なお、吸着率は、下記式によって求めた。
【0173】
吸着率(%)=二酸化炭素の吸着量(g)/気体吸着剤の担持量(g)×100
その結果を表1および表3に示す。
【0174】
4. 圧力損失の測定
図1に示す圧力損失装置1を用いて、圧力損失を測定した。まず、各実施例および各比較例の気体吸着剤担持体のそれぞれを直径50mmカラム3内(高さ300mm)に、高さが10cmになるように充填した(図中2)。次いで、送風ファン4を駆動させるとともに、バルブ5の開度を調節することにより、気体吸着剤担持体2が設置されたカラム3に、ライン6を介して、流量計7により測定される送風量が流速0.3m/秒となるように、空気を流通させた。そして、カラム3の上端部とカラム3の下端部との圧力差をマノメータ8で測定し、高さ1m当たりの圧力損失ΔPとして計算した。その結果を表1〜5に示す。
【0175】
5. 再利用性の測定
(水蒸気曝露試験)
予め硫酸カリウムの結晶が共存する飽和溶液を用いて、相対湿度97%に調節したデシケータを温度40±2℃に設定した恒温室に設置した。デシケータ中に、事前にベルト駆動型油回転真空ポンプ(佐藤真空製、TSW−150)、角形真空定温乾燥機(ヤマト科学製、DP−300)を用い80℃、5時間減圧乾燥させた実施例11〜22および比較例11〜16の気体吸着剤担持体をデシケータに入れ、1時間放置した。放置後、気体吸着剤担持体を取り出し、80℃、5時間減圧乾燥させた。
(二酸化炭素吸着試験)
水蒸気曝露した実施例11〜22および比較例11〜16の気体吸着剤担持体15mgをアルミニウム試料皿にとり、これを熱分析装置内に静置した。次いで、窒素(純度99.99%以上)を100mL/分で流通させながら100℃で12時間静置した。次いで、温度を40℃に下げ3時間、窒素100mL/分で流通させた。その後、窒素を二酸化炭素に変更して、100mL/分で流通させながら、温度40℃で9時間放置した後、二酸化炭素流通後の増加重量(二酸化炭素の吸着量)を測定し、その結果から吸着率を算出した。以上の測定を1サイクルとし、繰り返し5サイクル行い、
下記式に基づき再利用率を算出した。
再利用率(%)=5サイクル目吸着量/1サイクル目吸着量×100
6.水溶脱試験
実施例11〜22および比較例11〜16の気体吸着剤担持体の質量(初期質量)を測定し、次いで、12mLスクリュー管にイオン交換水を2.0mL加え、気体吸着剤担持体を1分間浸漬させた。浸漬後、気体吸着剤担持体を取り出し、別の12mLスクリュー管中において室温で14時間減圧乾燥させた後、気体吸着剤担持体の質量(浸漬後質量)を測定し、初期質量と浸漬後質量との差から、水溶脱率(質量%)を算出した。
【0176】
7. 考察
上記した気体吸着試験の結果から以下の点が分かる。
【0177】
1)表1および表2が参照されるように、水洗浄した実施例1の気体濃度(0.5時間後、2.0時間後、24.0時間後)は、水洗浄した比較例1の気体濃度(0.5時間後、2.0時間後、24.0時間後)に比べて、低い。このことから、実施例1は封止樹脂による気体吸着剤の封止によって、水洗浄に起因する気体吸着剤の水への溶脱が抑制でき、耐久性に優れる。表1および表2が参照されるように、このことは、水洗浄した実施例2と比較例2との比較、水洗浄した実施例3と比較例3との比較、水洗浄した実施例4と比較例4との比較、水洗浄した実施例5と比較例5との比較、水洗浄した実施例6と比較例6との比較においても、同様である。
【0178】
なお、表1および表2が参照されるように、封止樹脂による気体吸着剤の封止によって、気体の吸着性能は変わらない。このことは、水洗浄しなかった実施例1と比較例1との比較、水洗浄しなかった実施例2と比較例2との比較、水洗浄しなかった実施例3と比較例3との比較、水洗浄しなかった実施例4と比較例4との比較、水洗浄しなかった実施例5と比較例5との比較、洗浄しなかった実施例6と比較例6との比較からわかる。
【0179】
2)表1が参照されるように、水洗浄した実施例1の気体濃度(0.5時間後、2.0時間後、24.0時間後)は、水洗浄した実施例7の気体濃度(0.5時間後、2.0時間後、24.0時間後)に比べて、低い。つまり、実施例1では、樹脂液が、第1硬化性樹脂(不飽和ポリエステル)とビニルモノマーとを含み、非反応性の溶媒(酢酸エチル)を含まず、多孔質無機粒子の孔内におけるビニルモノマー溶液のすべて、つまり、不飽和ポリエステル樹脂が硬化して硬化物を形成できる。一方、実施例7では、樹脂液が、アルキド樹脂と非反応性の溶媒(酢酸エチル)とを含むので、非反応性の溶媒(酢酸エチル)は、乾燥により留去される。そのため、樹脂液の一部、具体的には、第2硬化性樹脂(アルキド樹脂)のみが硬化して硬化物を形成する。つまり、実施例7は、実施例1に比べて、孔内における封止樹脂の容積が小さい。
【0180】
具体的には、実施例1および実施例7の仕込み量(具体的には、樹脂液)の質量はともに同じ(0.33g)であるが、封止樹脂の質量は、実施例7(0.26g)に比べて、実施例1(0.33g)の方が多い。
【0181】
そのため、実施例1は、実施例7に比べて、孔内における封止樹脂の容積を大きく確保することができ、多孔質無機粒子において十分な量の気体吸着剤を確実に封止することができる。従って、実施例1は実施例7に比べて、水洗浄に起因する気体吸着剤の水への溶脱が抑制できる。
【0182】
上記した圧力損失測定の結果から以下の点が分かる。
【0183】
3)表2および3が参照されるように、最大長さの平均値が1mm以上である実施例8の圧力損失は、最大長さの平均値が1mm未満である比較例7に比べて、低い。このことから、最大長さの平均値が1mm以上といった大きい気体吸着剤担持体であれば、圧力損失の増加を抑制できる。このことは、実施例9と比較例8との比較、実施例10と比較例9との比較、実施例8と比較例10との比較においても、同様である。
【0184】
上記した再利用性の測定の結果から以下の点が分かる。
【0185】
4)表4および表5が参照されるように、封止樹脂により気体吸着剤の封止した実施例11の再利用率は、封止樹脂により気体吸着剤の封止していない比較例11の再利用率に比べて、高い。このことから、実施例11は封止樹脂による気体吸着剤の封止によって、水蒸気曝露に起因する気体吸着剤の水への溶脱が抑制でき、耐久性に優れる。このことは、実施例12と比較例12との比較、実施例13〜実施例17と比較例13および比較例14との比較、実施例18と比較例15との比較、実施例19〜実施例22と比較例16との比較においても、同様である。
【0186】
上記した水溶脱試験の測定の結果から以下の点が分かる。
【0187】
5)表4および表5が参照されるように、封止樹脂により気体吸着剤の封止した実施例11の水溶脱率は、封止樹脂により気体吸着剤の封止していない比較例11の水溶脱率に比べて、低い。このことから、実施例11は封止樹脂による気体吸着剤の封止によって、水への浸漬に起因する気体吸着剤の水への溶脱が抑制でき、耐久性に優れる。このことは、実施例12と比較例12との比較、実施例18と比較例15との比較においても、同様である。
【0188】
また、このことは、多孔質無機粒子に対する気体吸着剤の配合割合が同じである実施例13と比較例13との比較、また、多孔質無機粒子に対する気体吸着剤の配合割合が同程度である実施例15と比較例14との比較、実施例20、実施例21、実施例22と比較例16との比較においても、同様である。
【0189】
【表1】
【0190】
【表2】
【0191】
【表3】
【0192】
【表4】
【0193】
【表5】
【0194】
なお、上記発明は、本発明の例示の実施形態として提供したが、これは単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。当該技術分野の当業者によって明らかな本発明の変形例は、後記請求の範囲に含まれる。