特表-18159123IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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再表2018-159123光触媒材料の製造方法および光触媒材料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2018年9月7日
【発行日】2019年12月26日
(54)【発明の名称】光触媒材料の製造方法および光触媒材料
(51)【国際特許分類】
   B01J 21/18 20060101AFI20191129BHJP
   B01J 37/02 20060101ALI20191129BHJP
   B01J 35/02 20060101ALI20191129BHJP
   C01B 32/186 20170101ALI20191129BHJP
【FI】
   B01J21/18 M
   B01J37/02 301Z
   B01J35/02 J
   C01B32/186
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】14
【出願番号】特願2019-502494(P2019-502494)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2018年1月17日
(31)【優先権主張番号】特願2017-40101(P2017-40101)
(32)【優先日】2017年3月3日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100115554
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 幸一
(72)【発明者】
【氏名】原 恒平
(72)【発明者】
【氏名】郡 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】橋本 泰宏
(72)【発明者】
【氏名】猪野 大輔
【テーマコード(参考)】
4G146
4G169
【Fターム(参考)】
4G146AA01
4G146AB01
4G146AC01B
4G146AC07B
4G146AC22B
4G146AD03
4G146AD17
4G146AD35
4G146BA12
4G146BA48
4G146BC09
4G146BC23
4G146BC32A
4G146BC33A
4G146DA03
4G146DA15
4G146DA40
4G169AA02
4G169AA08
4G169BA04A
4G169BA04B
4G169BA08A
4G169BA08B
4G169BA48A
4G169CA05
4G169CA10
4G169DA03
4G169EA02X
4G169EA02Y
4G169EB15Y
4G169ED07
4G169EE01
4G169FA01
4G169FA08
4G169FB03
4G169FC07
4G169HA01
4G169HB02
4G169HC18
4G169HC29
4G169HD04
4G169HE05
4G169HE06
4G169HE07
(57)【要約】
炉心管が回転する機構を備えた電気炉に二酸化チタン粒子を入れる工程(a)と、前記二酸化チタン粒子を入れた前記電気炉の前記炉心管内部を、当該炉心管内部に不活性ガスを流入させながら、400℃以上800℃以下の温度へ昇温する工程(b)と、前記不活性ガスに加えて、炭化水素ガスを前記炉心管内部に流入させる工程(c)と、前記炉心管を回転させ、当該炉心管の内部で流動状態にある前記二酸化チタン粒子に対して熱CVDを行ない、前記二酸化チタン粒子の表面に、グラフェンを含む炭素系析出物の単一層を形成する工程(d)と、を含む製造方法によって、二酸化チタン粒子の表面に炭素系析出物の単一層が形成されている光触媒材料を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉心管が回転する機構を備えた電気炉に二酸化チタン粒子を入れる工程(a)と、
前記二酸化チタン粒子を入れた前記電気炉の前記炉心管内部を、当該炉心管内部に不活性ガスを流入させながら、400℃以上800℃以下の温度へ昇温する工程(b)と、
前記不活性ガスに加えて、炭化水素ガスを前記炉心管内部に流入させる工程(c)と、
前記炉心管を回転させ、当該炉心管の内部で流動状態にある前記二酸化チタン粒子に対して熱CVDを行ない、前記二酸化チタン粒子の表面に、グラフェンを含む炭素系析出物の単一層を形成する工程(d)と、
を含む、光触媒材料の製造方法。
【請求項2】
前記炭素系析出物の前記単一層は、前記二酸化チタン粒子の表面の少なくとも一部を覆っている、請求項1に記載の光触媒材料の製造方法。
【請求項3】
二酸化チタン粒子の表面に、グラフェンを含む炭素系析出物の単一層が形成されている、光触媒材料。
【請求項4】
前記炭素系析出物の前記単一層は、前記二酸化チタン粒子の表面の少なくとも一部を覆っている、請求項3に記載の光触媒材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光触媒材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、二酸化チタン粒子は、光触媒として広く用いられている。二酸化チタン粒子の光触媒としての性能を向上させるために、二酸化チタン粒子の表面を炭素系の析出物によって被覆することが検討されてきた。
【0003】
例えば、二酸化チタンとグラフェンとの複合体に関する先行技術として、チタンアルコキシドとグラファイト粉末とを混合した懸濁液に剥離剤を加えながらゾルゲル反応を進行させ、分散液を乾燥することにより、二酸化チタンとグラフェンとの複合体を得るものがある(特許文献1参照)。
【0004】
また、例えば、微粒子の表面にカーボン薄膜を形成する方法として、反応槽が回転する機構を備えた電気炉を用いる方法もある。この方法は、微粒子を反応槽内で流動させながらCVD(Chemical Vapor Deposition)を行うことにより、表面に均一なカーボン薄膜をコーティングする方法である(特許文献2参照)。
【0005】
このように、二酸化チタン粒子の表面を炭素系析出物で被覆することによって、触媒活性作用および化学耐久性の向上が期待できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015-229619号公報
【特許文献2】特許第2590937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、光触媒材料の実用化には、触媒活性作用の更なる改善が必要であった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の課題を解決するための光触媒材料の製造方法の一態様は、炉心管が回転する機構を備えた電気炉に二酸化チタン粒子を入れる工程(a)と、前記二酸化チタン粒子を入れた前記電気炉の前記炉心管内部を、当該炉心管内部に不活性ガスを流入させながら、400℃以上800℃以下の温度へ昇温する工程(b)と、前記不活性ガスに加えて、炭化水素ガスを前記炉心管内部に流入させる工程(c)と、前記炉心管を回転させ、当該炉心管の内部で流動状態にある前記二酸化チタン粒子に対して熱CVDを行ない、前記二酸化チタン粒子の表面に、グラフェンを含む炭素系析出物の単一層を形成する工程(d)と、を含む。
【発明の効果】
【0009】
上記態様により、光触媒材料の触媒活性作用の更なる改善を実現できた。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本開示の実施の形態1における、光触媒材料の製造手順を示すフローチャートである。
図2図2は、本開示の実施の形態1における、光触媒材料の透過型電子顕微鏡による観察結果を示す図である。
図3図3は、本開示の実施の形態1における、光触媒材料の製造に使用した二酸化チタンの熱重量分析結果を示す図である。
図4図4は、本開示の実施の形態1における、光触媒材料の熱重量分析の結果を示す図である。
図5図5は、本開示の実施の形態1における、二酸化チタンに対する炭素系析出物の被覆率の時間変化を示す図である。
図6図6は、本開示の実施の形態1における、炭素系析出物の被覆率とギ酸分解速度との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
特許文献1に開示されている二酸化チタンとグラフェンとの複合体において、二酸化チタン表面に形成されたグラフェンは、複層構造を有すると考えられる。そのため、この複合体を光触媒として使用する際には、複層構造を有するグラフェンによって二酸化チタンに吸収されるべき光が吸収され、二酸化チタンによる光の吸収が妨げられてしまう。更に、例えば、水中の汚染物質を光触媒反応によって浄化する目的で複合体を使用する場合、汚染物質が二酸化チタン表面まで近接することが阻害され、汚染物質の浄化速度が遅くなるという課題がある。
【0012】
また、特許文献2に開示されているカーボン薄膜のコーティング方法では、微粒子表面にカーボン薄膜をコーティングする際に、反応槽内の温度を、1000℃から1600℃に設定している。この温度範囲を用いてコーティングを行う理由は、副反応の抑制および生成されるカーボン薄膜への不純物混入の防止であり、この温度範囲は、グラフェン、カーボンナノチューブ等のsp2混成軌道のカーボンで構成される材料を作製する際に一般的に用いられる。ここで、特許文献2に開示されているカーボン薄膜のコーティング方法において、微粒子として二酸化チタンを使用する場合を考える。前述の温度範囲において、二酸化チタンは、ルチル型の結晶として安定に存在する。しかし、二酸化チタンが光触媒として作用するためには、アナターゼ型の結晶として存在していることが好ましい。そのため、特許文献2に開示されている方法で、二酸化チタンにカーボン薄膜をコーティングしても、二酸化チタンの結晶がルチル型に相転移してしまい、光触媒としての性能が低下するという課題がある。
【0013】
そこで、光触媒材料の触媒活性向上のため、以下の改善策を検討した。
【0014】
光触媒材料の製造方法の一態様は、炉心管が回転する機構を備えた電気炉に二酸化チタン粒子を入れる工程(a)と、前記二酸化チタン粒子を入れた前記電気炉の前記炉心管内部を、当該炉心管内部に不活性ガスを流入させながら、400℃以上800℃以下の温度へ昇温する工程(b)と、前記不活性ガスに加えて、炭化水素ガスを前記炉心管内部に流入させる工程(c)と、前記炉心管を回転させ、当該炉心管の内部で流動状態にある前記二酸化チタン粒子に対して熱CVDを行ない、前記二酸化チタン粒子の表面に、グラフェンを含む炭素系析出物の単一層を形成する工程(d)と、を含む。
【0015】
上記態様によると、二酸化チタン粒子の表面に、グラフェンを含む炭素系析出物の単一層を形成した光触媒材料を製造できる。二酸化チタン粒子の表面を、グラフェンを含む炭素系析出物の単一層で被覆することにより、二酸化チタン粒子に光が照射されて電子が励起された際、励起電子が表面の炭素系析出物のアクセプター準位によって安定化される。これによって、励起電子・正孔対の再結合が抑制され、量子効率が向上する。また、二酸化チタン粒子の表面を被覆する炭素系析出物による反応物の吸着濃縮効果により、光触媒反応で反応させたい物質の濃度が光触媒表面近傍で増大する。また、二酸化チタン粒子を炭素系析出物によって厚く覆ってしまうと、二酸化チタン粒子による光吸収を炭素系析出物が阻害してしまうという問題が生じるが、本開示のように、二酸化チタン粒子を覆う炭素系析出物が、複層でなく、単一層であることによって、光吸収の阻害を最小限に抑えることができる。これらのメカニズムにより、光触媒活性の向上効果が得られる。
【0016】
上記態様において、前記炭素系析出物の前記単一層は、前記二酸化チタン粒子の表面の少なくとも一部を覆っていてもよい。前記炭素系析出物の前記単一層は、前記二酸化チタン粒子の表面の5〜40%を覆っているのがより好ましい。
【0017】
また、他の態様において、二酸化チタン粒子の表面に、グラフェンを含む炭素系析出物の単一層が形成されている光触媒材料を提供する。
【0018】
上述の他の態様において、前記炭素系析出物の前記単一層は、前記二酸化チタン粒子の表面の少なくとも一部を覆っているとしてもよい。前記炭素系析出物の前記単一層は、前記二酸化チタン粒子の表面の5〜40%を覆っているのがより好ましい。
【0019】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0020】
(実施の形態1)
本実施の形態における、光触媒材料の製造方法を以下に示す。本実施の形態では、回転式電気炉を用いた熱CVDを行なう。本実施の形態で用いられる回転式電気炉は、内部の雰囲気を変更可能で、炉心管が水平回転軸を中心に回転する回転機構を備える。
【0021】
図1は、実施の形態1における、光触媒材料の製造手順を示すフローチャートである。
【0022】
本実施の形態における光触媒材料の製造手順は、ステップ101〜107を含む。ステップ101では、光触媒材料の原料となる二酸化チタン粒子を用意する。用意した二酸化チタン粒子は、電気炉内へ挿入するためのインナーケースに入れる。このとき、インナーケースは、例えば、石英製である。また、1000℃以上で安定な他のセラミックス製のインナーケースを用いてもよい。インナーケースは、電気炉の炉心管の回転に合わせて回転する。これによって、インナーケース内部の二酸化チタン粒子が流動した状態で熱処理を行うことが可能となる。インナーケースの形状は、円筒状であって、円筒の両端が狭まった形をしているとしてもよい。この形状によって、電気炉へ導入されるガスは、インナーケース内に出入りでき、かつ、インナーケースが回転した時に、インナーケース内の二酸化チタン粒子がインナーケースの外へ漏れにくい。インナーケースは、例えば、内壁に凹凸を有していてもよく、また、二酸化チタン粒子の流動を促進させるための他の構造を有していてもよい。
【0023】
ここで、本実施の形態において、光触媒材料の原料として用いる二酸化チタン粒子について考える。二酸チタン粒子の結晶構造は、アナターゼ型、ルチル型またはブルッカイト型であり得る。光触媒として用いる場合、高い光触媒機能を有するアナターゼ型の結晶構造を有する二酸化チタン粒子を選択することが好ましい。また、一般的に、光触媒粒子の表面積が大きい程、光触媒機能が高くなると考えられるため、本実施の形態において用いられる二酸化チタン粒子の粒子径は、小さい方が好ましい。そのため、例えば、平均粒子径が1000nm以下である二酸化チタン粒子を本実施の形態の光触媒材料の原料として用いてもよい。ここで、二酸化チタン粒子の平均粒子径は、例えば、二酸化チタン粒子の長径および短径の平均値として定義される。また、二酸化チタン粒子の平均粒子径が1nmよりも小さい場合、一般に、量子サイズ効果によって二酸化チタン粒子の触媒活性が低下すると考えられる。以上のことを考慮して、本開示の光触媒材料の原料には、平均粒子径が1nm以上1000nm以下の二酸化チタン粒子を用いることが望ましい。
【0024】
本実施の形態においては、二酸化チタン粒子として、デグサ社製の「P25」という製品を用いて光触媒材料の作製を行なった。P25は、平均粒子径が25nmの二酸化チタン粒子である。
【0025】
ステップ101において、二酸化チタン粒子を秤量し、除電ブロワで静電気を除去したインナーケースに、秤量した二酸化チタン粒子を入れる。
【0026】
ステップ102では、インナーケースを電気炉の炉心管に挿入する。二酸化チタン粒子を入れたインナーケースを電気炉の炉心管の加熱部まで挿入し、炉心管に対して、不活性ガスおよび原料ガスのガスラインを接続する。ここで、例えば、不活性ガスとして窒素ガスまたはアルゴンガスを用いてもよい。
【0027】
ステップ103では、前述のガスラインを介して、炉心管内に不活性ガスを導入する。このとき、例えば、流量50mL/minで不活性ガスを導入して、炉心管内を不活性雰囲気に置換する。炉心管内部の気体を不活性ガスで置換することにより、炉心管内部から、CVD時に導入する原料ガス以外の炭素を取り除く。
【0028】
ステップ104では、不活性ガス雰囲気下で炉心管内を昇温する。電気炉の温度制御プログラムを作動させ、インナーケースに入れた二酸化チタン粒子を400〜800℃に加熱する。このとき、例えば、5℃/minの昇温速度で、炉心管内の温度を室温から目標温度まで昇温するとしてもよい。本実施の形態では、炉心管内の温度を室温から450℃まで昇温した。
【0029】
ステップ105では、回転式電気炉の回転機構を動作させる。ここでは、炉心管内の温度の昇温が完了した後に回転機構を動作させている。昇温が完了した後に回転機構を動作させることによって、粉末の流動によって起こる二酸化チタン粒子同士の凝集を最小限に抑えることができ、二酸化チタン粒子の表面に形成される炭素系析出物の均一性が向上する。
【0030】
ステップ106では、二酸化チタン粒子に対して熱CVD処理を行う。まず、原料ガスと不活性ガスとの混合ガスを炉心管の内部へ導入する。二酸化チタン表面に原料ガスが吸着し、所定の温度において熱分解と脱水素化とを起こすことにより、二酸化チタン粒子の表面に炭素系析出物201の単一層を形成させる。これにより、グラフェンを含む炭素系析出物201の単一層で被覆された二酸化チタン粒子が得られる。ここでは、原料ガスとして、例えば、プロピレンのようなアルケン、または、メタンのようなアルカンを含有する炭化水素ガスが用いられる。また、例えば、メタノールまたはエタノールのようなアルコールに不活性ガスをバブリングすることにより得られたガスを原料ガスとして用いてもよい。
【0031】
原料ガスと不活性ガスとの混合ガスは、例えば、流量50mL/minの窒素ガスに対して、プロピレンガスを流量80mL/minで混合することで生成する。この混合ガスを用いて、熱CVD処理を行う。原料ガスを用いて二酸化チタン粒子の表面に炭素系析出物を形成するために、原料ガスを400℃以上に加熱する。二酸化チタン表面において、原料ガスは、400℃以下でも熱分解を起こすが、二酸化チタン表面の原料ガスを400℃以上に加熱することにより、原料ガス分子の脱水素化が進む。その結果、sp2混成軌道の炭素を含む結晶性の高い炭素系析出物が二酸化チタン表面に形成され、光触媒材料の化学耐久性が向上する。
【0032】
一方で、800℃を超える加熱を行うと、アナターゼ型の二酸化チタン粒子の結晶がルチル型へと変化する。前述のように、二酸化チタンを光触媒として利用する場合には、触媒活性の高いアナターゼ型を用いることが好ましく、ルチル型の二酸化チタンでは、アナターゼ型と比較して触媒活性が低い。そのため、本実施形態における光触媒材料の作製過程においては、二酸化チタン粒子に対して800℃以下の温度で熱処理を行うことが望ましい。以上のことから、本実施形態における光触媒材料の作製過程では、400℃以上であって800℃以下の温度域で熱CVDを行うことが望ましい。
【0033】
次に、熱CVDを行った時間について述べる。本実施の形態においては、5分間の熱CVDを行っているが、例えば、10分間、20分間、30分間または60分間の熱CVDを行なうとしてもよい。ここで、熱CVDを行った時間は、回転式電気炉の炉心管内部への原料ガス供給の開始から終了までの時間とする。熱CVDの完了後、原料ガスの供給および回転機構の動作を止め、不活性雰囲気下で炉心管を自然冷却する。
【0034】
最後に、ステップ107において、作製された光触媒材料が取得される。炉心管およびインナーケースの冷却完了後、炉心管からインナーケースを取り出し、作製された光触媒材料を得る。
【0035】
図2は、実施の形態1における、光触媒材料の透過型電子顕微鏡による観察結果を示す図である。
【0036】
図2において、黒線で囲った領域が二酸化チタン粒子202で、破線で囲った二酸化チタン粒子の周囲の領域が、グラフェンを含む炭素系析出物201の単一層である。二酸化チタン粒子202は、光触媒活性を有する粒子であり、アナターゼ型二酸化チタンにおける格子面間隔を図中縦方向に観察できる範囲を黒線で囲って示した。ここで、アナターゼ型二酸化チタンにおける(101)面の格子面間隔は、0.35nmである。黒い破線で囲ったグラフェンを含む炭素系析出物201は、二酸化チタン粒子202の表面に形成されている。炭素系析出物201の厚さは、0.5nm以下で、グラフェン1層分の厚さにほぼ等しく、表面の炭素系析出物201は単一層である。格子縞が交差している部分は、二酸化チタン粒子202と他の二酸化チタン粒子とが立体的に重なっているため、図中の破線は、粒子同士の重なりが無く、炭素系析出物201と判別できる部分を示した。
【0037】
グラフェンを含む炭素系析出物の単一層201の二酸化チタン粒子202に対する被覆率は、熱重量分析装置を用いて光触媒表面の炭素系析出物の単一層201の重量を定量分析することにより、以下のように求めることができる。空気雰囲気において二酸化チタン粒子および光触媒材料を加熱し、それぞれの重量変化を求める。本実施の形態において熱重量測定装置は、日立ハイテクサイエンス製の熱分析システムTA7000および示差熱重量同時測定装置STA7200を用いた。流量200mL/minでAirガスを流した空気雰囲気において、二酸化チタン粒子を室温から800℃まで20℃/minの昇温速度で加熱し、重量変化を求める。同様の条件で、本開示による光触媒粒子を昇温して重量変化を求め、二つの重量変化の差分から炭素系析出物の単一層201の重量変化を求める。空気中で、本開示による光触媒粒子を800℃まで昇温することにより、光触媒表面の炭素系析出物の単一層201は燃焼し、その分重量が減少する。熱重量分析装置への仕込み量、炭素系析出物の単一層201の密度および重量変化、ならびに、二酸化チタン粒子202の表面積から被覆率を求めることができる。
【0038】
図3は、光触媒材料の製造に使用した二酸化チタンの熱重量分析結果を示す図である。
【0039】
二酸化チタン粒子の熱重量分析による重量変化は、二酸化チタン粒子の加熱によって、二酸化チタン粒子が吸湿した空気中の水分が蒸発したことによるものである。
【0040】
図4は、本開示の光触媒材料の熱重量分析結果を示す図である。
【0041】
光触媒材料の熱重量分析による重量変化は、二酸化チタン表面に析出している炭素系析出物の燃焼、および光触媒材料が吸湿した水分の蒸発によるものである。ここで、図3および図4に示す熱重量分析結果を比較して、二酸化チタンおよび光触媒材料の800℃までのそれぞれの重量変化の平均値の差分を求める。これによって、光触媒材料を被覆する炭素系析出物の燃焼による重量変化を求めることができる。計算の結果、炭素系析出物の燃焼による光触媒材料の重量変化の割合は、0.45wt%であった。熱重量分析装置への光触媒材料の仕込み量は3mgであり、二酸化チタンの表面積は50m2/gであり、炭素系析出物の密度は2g/cm3であり、グラフェン1層分の厚さは0.4nmであるため、これらの値を用いて二酸化チタン粒子表面の炭素系析出物の被覆率を計算すると、0.11ML(Mono Layer)となった。ここで、二酸化チタン粒子表面の全てを炭素系析出物が単一層にて覆った状態を1MLとしている。そのため、被覆率が0.11MLということは、二酸化チタン粒子表面の11%が炭素系析出物の単一層で覆われていることを示している。
【0042】
図5は、二酸化チタンに対する炭素系析出物の被覆率の時間変化を示す図である。CVD時間を変化させた各条件において、炭素系析出物による被覆率は、1ML以下であった。したがって、本実施の形態において作製した光触媒材料の表面には、二酸化チタンの表面が露出している部分と、炭素系析出物の単一層によって二酸化チタン表面が覆われている部分とが存在している。
【0043】
有機物を含有する水溶液に光触媒を分散させて光を照射した後、有機物の濃度変化を分析することにより、光触媒の活性を評価することができる。例として、有機物のギ酸を用いて、以下のように光触媒活性を評価した。作製した光触媒を25mg秤量し、10mg/Lに調製したギ酸水溶液と混合した。超音波洗浄機を用いて、1分間超音波をあてて、光触媒を分散させ、マグネティックスターラーにセットして1時間撹拌した。撹拌した後、テフロン(登録商標)製のセルに5mL採水し、波長350nm、照射強度1mW/cm2の紫外光を照射した。その結果、光触媒反応でギ酸は分解され、6分間でギ酸濃度は0.1mg/L以下に減少した。光触媒反応によるギ酸の濃度変化を一次の反応速度式でフィッティングすると、反応速度定数は0.48min-1となった。
【0044】
図6は、炭素系析出物の被覆率とギ酸分解速度との関係を示す図である。図6から、炭素系析出物の被覆率の好ましい範囲は、5〜40%であることが分かる。
【0045】
なお、被覆率0MLのプロットは、後述の比較例における二酸化チタン粒子「P25」を用いて測定した結果を示している。
【0046】
光触媒活性評価の結果より、炭素系析出物の単一層によって被覆された光触媒のうち、被覆率が小さい光触媒材料ほど、光触媒活性が高いことがわかる。光触媒活性に対するプラスの効果として、表面の炭素系析出物201による励起電子の安定化および反応物の吸着濃縮効果が考えられる。マイナスの効果として、炭素系析出物201による光触媒の光吸収の阻害、および、光触媒表面に直接吸着して反応が起きる分子の吸着サイトの減少が考えられる。光触媒活性は、これらのプラスとマイナスとの効果のバランスによって決まると考えられる。被覆率が小さい場合、マイナスの効果が小さいため、プラスの効果が顕著に光触媒活性に影響する。このことから、特許文献1で示したような複層のグラフェンで光触媒を覆うことは、活性の低下につながることが分かる。
【0047】
二酸化チタン表面にグラフェンを含む炭素系析出物201を形成することで、化学耐久性の向上も期待できる。本開示における光触媒表面の炭素系析出物201は、sp2混成軌道のカーボンで構成されるグラフェン構造を含有している。グラフェンは、化学的に不活性な表面を持つことで知られる層状化合物である。表面垂直方向にダングリングボンド(不対電子)を持たないため、イオン等の化学吸着が起こりにくい。したがって、水中において、金属塩または酸化物が光触媒表面に化学吸着することによる光触媒活性の低下を抑制する効果が期待できる。
【0048】
また、比較例として、実施の形態1に記載の光触媒活性評価の方法に従い、炭素系析出物の単一層で被覆していない二酸化チタン粒子である「P25」を用いて、ギ酸分解の光触媒反応実験を実施した。このときの速度定数は、0.17min-1であった。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本開示による光触媒材料は、水質浄化、空気浄化等の環境浄化用途に加え、光触媒反応関わる有機合成等にも適用できる可能性がある。
【符号の説明】
【0050】
201 炭素系析出物
202 二酸化チタン粒子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】