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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2018年9月7日
【発行日】2019年12月26日
(54)【発明の名称】劣化診断システム追加学習方法
(51)【国際特許分類】
   G05B 23/02 20060101AFI20191129BHJP
   G06N 20/00 20190101ALI20191129BHJP
【FI】
   G05B23/02 302S
   G06N20/00 130
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】17
【出願番号】特願2019-502509(P2019-502509)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2018年1月26日
(31)【優先権主張番号】特願2017-40434(P2017-40434)
(32)【優先日】2017年3月3日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100115554
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 幸一
(72)【発明者】
【氏名】島崎 尚史
(72)【発明者】
【氏名】池田 和隆
【テーマコード(参考)】
3C223
【Fターム(参考)】
3C223AA23
3C223BA01
3C223BB17
3C223CC02
3C223DD02
3C223EA01
3C223EB05
3C223FF05
3C223FF23
3C223FF26
3C223FF35
3C223FF46
3C223FF47
3C223GG01
3C223HH29
(57)【要約】
劣化加速実験により取得した、設備が正常から劣化に至る加速測定データと、加速測定データ中の劣化の特徴を示すデータにラベルを付与した事前ラベルデータとを学習させた判定器DE1を作成する。稼動中の設備から劣化診断の測定データを取得し、設備における保守の記録から教師劣化度ラベルデータを求め、測定データ及び教師劣化度ラベルデータから追加データを取得する。追加データを含む全学習データを判定器で判定して得られる予測劣化度ラベルデータと、全学習データに含まれる教師劣化度ラベルデータとの差異が所定値より大きい場合は、学習データを追加学習データとして選別する。追加学習データを学習して判定器を更新する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
劣化加速実験により取得した、設備が正常から劣化に至る連続する加速測定データと、前記加速測定データ中の劣化の特徴を示すデータにラベルを付与した事前ラベルデータとを学習させた判定器を作成する初期学習ステップと、
稼動中の前記設備から劣化診断の測定データを取得するステップと、
前記設備における保守の記録から教師劣化度ラベルデータを求めるステップと、
前記測定データ及び前記教師劣化度ラベルデータから追加データを取得するステップと、
前記追加データを含む全学習データを前記判定器で判定して得られる予測劣化度ラベルデータと、前記全学習データに含まれる前記教師劣化度ラベルデータとの差異が所定値より大きい場合には、前記学習データを追加学習データとして選別するステップと、
前記追加学習データを学習して前記判定器を更新するステップと
を備えている劣化診断システム追加学習方法。
【請求項2】
前記追加データを取得するステップと、
前記学習データを前記追加学習データとして選別するステップと、
前記判定器を更新するステップとを、
前記保守を実施するごとに繰り返して行う請求項1に記載の劣化診断システム追加学習方法。
【請求項3】
前記学習データを前記追加学習データとして選別するステップは、
前記追加データを含む前記全学習データを前記判定器で判定する際に、判定したデータが前記学習データに対して未知なる度合いが所定の閾値より高いデータである場合に、前記判定したデータを未知データとして判定するステップと、
前記未知データを前記学習データの前記追加学習データとして選別するステップと
を含む請求項1に記載の劣化診断システム追加学習方法。
【請求項4】
前記設備は、回転体を有する電動機を備えている請求項1に記載の劣化診断システム追加学習方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機器設備における劣化診断システム追加学習方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、運転中の電動機の入力電流に含まれる特定の高調波成分を検出する信号抽出手段と、該信号抽出手段からの出力信号を変換処理する信号処理手段とを備え、該信号処理手段により得られた高周波成分からなる特性値と予め定めた判定基準との比較により、異常原因及び場所を特定することが可能な機器設備の異常診断方法が開示されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
回転体を有するモータ及び発電機等を備えた設備の劣化状態を常時監視する従来の異常診断方法においては、設備の状態を表す物理量を、主として温度、音及び振動に関して測定しており、この際の正常又は異常の診断を所定の閾値によって診断している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−189064号公報
【特許文献2】特開2003−156547号公報
【発明の概要】
【0005】
しかしながら、従来の異常診断方法において用いられる温度、音及び振動等は、環境依存性が極めて高い。従って、この環境依存性を弱めるために、診断の対象である設備ごとに、複雑且つ膨大な量の閾値パラメータの初期値の設定が必要となる。同時に、当該パラメータの継続的な微調整が必要となる。このため、専門家による定期的なメンテナンスが必要とされ、設備の劣化診断には多大な工数を要するという問題がある。
【0006】
本発明は、従来の問題を解決し、劣化加速実験により作成した判定器に対して追加学習を行う際に、定期的な追加学習に必要な学習データ量を適正に選択しながら、学習効果の増大を図れるようにすることを目的とする。
【0007】
目的を達成するため、本発明は、劣化加速実験による初期学習データを用いて作成した判定器を、設備の稼動中の測定データと該設備の教師劣化度ラベルデータとから更新する。
【0008】
具体的に、本発明に係る一態様の劣化診断システム追加学習方法は、劣化加速実験により取得した、設備が正常から劣化に至る連続する加速測定データと、加速測定データ中の劣化の特徴を示すデータにラベルを付与した事前ラベルデータとを学習させた判定器を作成する初期学習ステップと、稼動中の設備から劣化診断の測定データを取得するステップと、設備における保守の記録から教師劣化度ラベルデータを求めるステップと、測定データ及び教師劣化度ラベルデータから追加データを取得するステップと、追加データを含む全学習データを判定器で判定して得られる予測劣化度ラベルデータと、全学習データに含まれる教師劣化度ラベルデータとの差異が所定値より大きい場合には、学習データを追加学習データとして選別するステップと、追加学習データを学習して判定器を更新するステップとを備えている。
【0009】
これによれば、劣化加速実験により取得された加速測定データ、及び加速測定データに対する事前ラベルデータを学習させて判定器を作成し、稼動中の設備から、劣化診断の測定データと、保守の記録から求める教師劣化度ラベルデータから取得した追加学習データを用いて、判定器を更新する。これにより、現場で取得される非連続の学習データである追加データを、連続基準データである初期学習データに適合することができる。その結果、監視対象の設備における劣化の判定基準の確度を高めることができる。したがって、追加学習に必要な学習データ量を適正に選択しながら、学習効果の増大を図ることができる。
【0010】
また、追加データを取得するステップと、学習データを追加学習データとして選別するステップと、判定器を更新するステップとを、保守を実施するごとに繰り返して行ってもよい。
【0011】
これによれば、保守を実施するごとに、判定器の学習度を更新することができる。
【0012】
また、学習データを追加学習データとして選別するステップは、追加データを含む全学習データを判定器で判定する際に、判定したデータが学習データに対して未知なる度合いが所定の閾値より高いデータである場合に、判定したデータを未知データとして判定するステップと、未知データを学習データの追加学習データとして選別するステップとを含んでいてもよい。
【0013】
これによれば、未知度が所定の閾値よりも高いデータであっても、判定器に対して学習データとして追加できるので、現場ごとに異なる可能性がある未知のデータに対しても対応することができるようになる。
【0014】
また、劣化診断の対象である設備は、回転体を有する電動機を備えていてもよい。
【0015】
これによれば、電動機の電流変動成分を高調波センサで取得することにより、設備の劣化を検出することができる。
【0016】
本発明によれば、劣化加速実験により作成した判定器に対して追加学習を行う際に、定期的な追加学習に必要な学習データ量を適正に選択しながら、現場ラベリングにより学習効果の増大を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の実施形態に係る劣化診断システム追加学習方法を実現する劣化診断システムを示す構成図である。
図2図2は、図1の劣化診断システムにおける選別工程を示すフロー図である。
図3図3は、本発明の実施形態に係る劣化診断システムにおける判定器の学習タイミングを表す概略フロー図である。
図4図4は、本発明の実施形態に係る劣化診断システムを構成する判定器を表す構成図である。
図5図5は、本発明の実施例に係る劣化診断システム追加学習方法を示すフロー図である。
図6図6は、本発明の実施例に係る劣化診断システムを利用する顧客の利用形態を示す模式図である。
図7図7は、本発明の実施例に係る劣化診断システムを利用する場合の、保守時の測定データからの波形の抽出処理及びラベリング処理の概略を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(実施形態)
本発明の実施形態について説明する。
【0019】
本発明の実施形態に係る劣化診断システム追加学習方法は、設備の加速劣化実験により連続して取得された測定データを初期基準となる初期学習データとし、劣化診断の対象である設備から非連続に取得された特徴的な現場データを初期学習データにより作成された判定器に追加学習させることにより、現場設備からの非連続のデータを用いながらも、連続した判定基準を得ることができる。
【0020】
以下、具体例として、STEP1、STEP2、及びSTEP3を、図1を参照しながら順次説明する。STEP1は、電動機により駆動される回転体を有する設備の模擬的な実験装置を用いた加速実験ステップである。STEP2は、該加速実験から得られた連続する加速測定データと、該加速測定データを分析して得られる設備の劣化の特徴を有するデータにラベルを付与して学習し、初期基準となる判定器を作成するステップである。STEP3は、劣化診断対象である設備に対して、判定器を用いて設備劣化度を常時判定すると共に、当該設備における保守記録等の非連続のデータを用いて測定データにラベルを付与し、さらに過去を含む全学習データから選別した追加学習データを、判定器に追加学習するステップである。
【0021】
図1は、本発明の実施形態に係る劣化診断システム追加学習方法を実現する劣化診断システムを示す構成図である。
【0022】
(STEP1)
加速劣化実験機材(加速実験装置)HW1は、例えば、電動機の回転軸の他端に結合されたベアリング(軸受)を有する。加速劣化実験機材HW1は、該ベアリングの近傍に荷重発生機により、例えば1.8tの荷重を掛ける。回転軸における荷重印加部分に対して電動機と反対側には、発電機がカップリングされる。該発電機と該発電機の負荷との接続部には、劣化判定用の高調波センサが設けられる。
【0023】
このように負荷が掛けられた加速劣化実験装置を、例えば1週間運転して、正常状態から、摩耗状態、さらには故障状態に至る連続した加速測定データDT1を取得する(AM0)。具体的には、加速測定データDT1は、約20秒間隔で測定された高調波の生データである。なお、劣化診断の対象となる設備の部品は、ベアリングに限られず、ギア、ボールねじ及びベルト等をも対象とすることができる。
【0024】
また、公知のように、上記の負荷により、ベアリングが劣化すると、該ベアリングには固有振動が生じる。生じた固有振動は、電動機のロータに伝播して、その角速度が変化する。この角速度の変化に応じて電流高調波が発生するため、発生した電流高調波を高調波センサによって計測することにより、機械の劣化の状態を診断することができる。
【0025】
(STEP2)
取得した各加速測定データDT1に対して、高調波の例えば極大値、極小値、分散値又は平均値を結ぶグラフを作成して、変化の特徴箇所、すなわち劣化の特徴箇所を確認する(MN1)。この人力作業による特徴箇所の確認MN1によって、劣化の程度に応じたラベルを付与して、ラベルデータDT2を作成する。
【0026】
次に、加速測定データDT1と、加速測定データDT1の劣化特徴と等価な事前ラベルデータDT2とを人力作業又は自動作業により対応付ける。これをラベリングと呼ぶ。ここでは、監視対象機材の稼動中のラベリングと区別して事前ラベリングMN2と呼ぶ。事前ラベリングMN2によって、初期学習データDT3を作成する。
【0027】
次に、作成された初期学習データDT3を判定器DE1に学習させる(初期学習MN3)。以上により、初期基準学習が実行されて、判定器DE1が作成される。
【0028】
(STEP3)
次に、劣化診断の対象である監視対象機材HW2に高調波センサを取り付けて、高調波データを定期的又は任意のイベント発生時に測定する(AM1)。測定した測定データDT4を判定器DE1に掛けて、予測劣化度ラベルデータ及び未知度データDT5を得る。その後、この予測劣化度ラベルデータ及び未知度データDT5は、ディスプレイ又はプリンタ等に出力されて可視化される(AM3)。
【0029】
本実施形態においては、高調波センサによる常時監視に加えて、人力作業により行われる、定期又は不定期の保守作業MN4により得られた教師劣化度ラベルデータDT6を取得する。教師劣化度ラベルデータとは、判定又は評価に必要な情報を、他の情報と区別するためのラベルを付与されたデータをいう。
【0030】
次に、取得した教師劣化度ラベルデータDT6と、上記の測定データDT4とから、人力作業により、監視対象機材HW2の劣化の判定に必要なデータを区別する、現場ラベリングMN5を行う。このとき、取得した教師劣化度ラベルデータDT6と、測定データDT4とは、互いのタイムスタンプによって照合が可能となる。現場ラベリングMN5によって、追加データDT7を作成し、一旦、データ倉庫DT8に格納する。なお、データ倉庫DT8には、初期学習データDT3等の過去のデータをも全て含んでいる。
【0031】
次に、データ倉庫DT8から取り出した、過去分を含む全学習データDT9に対し、判定器DE1を用いて判定して、新たな追加学習データDT10を選別する(選別処理AM4)。なお、選別処理AM4は、図2を用いてその詳細を後述する。
【0032】
次に、選別された追加学習データDT10は、判定器DE1の再学習AM5に使用されて、判定器DE1を成長させる。但し、再学習AM5は、全学習データDT9のデータの選別処理AM4を一通り完了させた後で行う。このようにすることにより、判定器DE1が途中で更新されたことによる、過去のデータにおける誤判定率の上昇を防ぐことができる。
【0033】
次に、図2を参照しながら、選別処理AM4を説明する。図2は、図1の劣化診断システムにおける選別工程を示すフロー図である。なお、図2及びそれ以降の図面においては、図1に示した構成要素と同一の構成要素に同一の符号を付すことにより、その説明を省略する。
【0034】
図2に示すように、ステップST01において、過去分を含む全学習データDT9に対し、以下の処理を行う。
【0035】
すなわち、次のステップST02において、判定器DE1により、監視対象機材HW2の劣化度を1データずつ判定する。この判定処理によって、既存の学習データと比べてその波形に未知なるパターンを含むデータ(ここでは「未知度を含むデータ」と呼ぶ)DT13を中間データとして保存する。同時に、予測劣化度ラベルデータDT14を中間データとして保存する。
【0036】
次のステップST03において、中間データの未知度を含むデータDT13が、未知度が予め設けられた閾値よりも高値である場合には、未知データとして、次のステップST05において、追加学習データとして選別する。一方、ステップST03において、未知データに該当しない、すなわち既知のデータである可能性が高い場合には、次のステップST04に進む。
【0037】
次のステップST04では、劣化判定の結果として、期待する出力値を得られない場合は、次のステップST05において、追加学習データとして選別する。具体的には、ステップST04は、中間データの予測劣化度ラベルデータDT14と、学習データに含まれる教師劣化度ラベルデータDT6との間の差異が予め設けられた閾値よりも高値である場合には、判定中のデータを次のステップST05において、追加学習データDT10として選別する。
【0038】
以上の選別処理を、過去を含む全学習データに対して、繰り返し行う。
【0039】
このように、本実施形態においては、STEP3において、現場で取得される非連続の劣化データである教師劣化度ラベルデータDT6を、連続基準データである予測劣化度ラベルデータDT14に適合することができる。これにより、監視対象機材HW2における劣化の判定基準の確度を上げることが可能となる。
【0040】
図3は、本発明の実施形態に係る劣化診断システムにおける判定器の学習タイミングを表す概略処理フロー図である。図3に示すように、まず、ケースA:[学習しない場合]として、例えば、高調波センサを用いた常時監視による測定データを、判定器DE1で判定AM2して、当該データの可視化AM3のみが行われる。このため、判定器DE1の学習は行われない。図1に示すように、この場合の測定データはDT4に蓄積され、さらには、データ倉庫DT8に格納される。
【0041】
これに対し、ケースB:[学習する場合]として、判定器DE1に学習が行われる場合は、人力による保守作業が実施される。この場合は、上述したように、保守データから教師劣化度ラベルデータDT6を取得する。続いて、取得した教師劣化度ラベルデータDT6と測定データと突き合わせて、現場ラベリングMN5を行って、追加データDT7を作成する。選別処理AM4により、追加学習が必要な追加学習データDT10を選別して、判定器DE1の再学習を実施する。
【0042】
このように、判定器DE1に対して再学習が実施される第1の条件は、保守が実施されることである。
【0043】
なお、以下の場合には、たとえ保守が実施されたとしても、判定器DE1の学習は行われない。すなわち、図2のフロー図から分かるように、判定対象のデータの未知度が低い場合と、判定結果と期待する出力値とに有意な差がない場合、具体的には、予測劣化度ラベルデータDT14と教師劣化度ラベルデータDT6との間の差異が小さい場合、判定器DE1の再学習は実施されない。
【0044】
さらに、保守を行っても、教師劣化度ラベルデータDT6を取得できない場合と、今回の保守と前回の保守との期間が十分に空いていない場合には、再学習は実施されない。ここで、今回の保守と前回の保守との十分な期間は、監視対象機材HW2が持つ設備、またはその稼働率等によって、任意に決めることができる。
【0045】
ここで、本実施形態における機械学習の概要を説明する。本実施形態で用いるニューラルネットワークは、データが入力層から中間層及び出力層に順次伝播するフィードフォワードニューラルネットワークである。公知のように、ニューラルネットワークの学習とは、該ニューラルネットワークに対して、積和演算と非線形関数(活性関数)とを多段で組み合わせた数値演算モデルに、誤差逆伝播(バックプロパゲーション)法を用いて入力層と出力層との間の誤差が最小となるパラメータ(結合荷重)を学習させ、任意の入力に対して適切な出力を推定できるシステムを構築することをいう。
【0046】
図4は、本発明の実施形態に係る劣化診断システムを構成する判定器DE1を表す構成図である。図4に示すように、判定器DE1は、特徴フィルタ100と、正常/劣化度判定器110と、未知度判定器120とを有している。
【0047】
特徴フィルタ100は、測定データが入力される波形切出し部101と、切り出された測定データの周波数解析等を行う周波数解析部102とを含む。
【0048】
正常/劣化度判定器110は、特徴フィルタ100からの出力を受け、2次元のデータを出力する全結合4層ニューラルネットワーク111と、全結合4層ニューラルネットワーク111からの出力をそれぞれ受ける第1統合処理部112及び第2統合処理部113とを含む。第1統合処理部112は正常度を外部に出力する。第2統合処理部113は劣化度を外部に出力する。
【0049】
未知度判定器120は、全結合3層オートエンコーダ121と、比較処理部122と、統合処理部123とを含む。全結合3層オートエンコーダ121は、特徴フィルタ100からの出力を受けてエンコードする。比較処理部122は、全結合3層オートエンコーダ121からの出力と特徴フィルタ100からの出力とを比較する。統合処理部123は、比較処理部122からの出力を受け、未知度を外部に出力する。
【0050】
波形切出し部101及び周波数解析部102は、特徴量として、例えば336次元を指定し、フレーム数は所定の数を切り出す。
【0051】
全結合4層ニューラルネットワーク111は、特徴フィルタ100からの336次元の入力データを2次元にして、第1の出力と第2の出力を出力する。第1の出力を受ける第1統合処理部112は、切り出されたフレーム数分のデータを統合して、例えば正常度を出力する。第2の出力を受ける第2統合処理部113は、切り出されたフレーム数分のデータを統合して、例えば劣化度を出力する。
【0052】
全結合3層オートエンコーダ121は、特徴フィルタ100からの336次元の入力データに対して、所定のエンコードを行って、336次元の出力データを出力する。比較処理部122は、全結合3層オートエンコーダ121でエンコードされたデータと、特徴フィルタ100で周波数解析等がなされたデータとを比較する。すなわち、比較処理部122は、全結合3層オートエンコーダ121における入力データと出力データとの間の正規化とノルム計算とを行って比較処理を行う。統合処理部123は、切り出されたフレーム数分のデータを統合して未知度を出力する。
【0053】
なお、本実施形態においては、図2のフロー図で説明したように、ステップST03において、図4の未知度判定器120の出力データの未知度が高い場合には、当該出力データを追加学習データとして選別することができる。
【0054】
図2のステップST04において、図4の正常/劣化度判定器110の出力データにおける正常度及び劣化度が期待する出力値と異なる場合にも、当該出力データを追加学習データとして選別することができる。
【0055】
このように、監視対象機材HW2を常時監視している際に、期待する正常度又は期待する劣化度の推定が困難な測定データであっても、又は、未知度が高い測定データであっても、本実施形態に係る劣化診断システム、すなわち判定器DE1における学習度合いを成長させることができる。
【0056】
以上のように、本実施形態の劣化診断システム追加学習方法は、劣化加速実験により取得した、設備が正常から劣化に至る連続する加速測定データDT1と、加速測定データDT1中の劣化の特徴を示すデータにラベルを付与した事前ラベルデータDT2とを学習させた判定器DE1を作成する初期学習ステップと、稼動中の設備から劣化診断の測定データDT4を取得するステップと、設備における保守の記録から教師劣化度ラベルデータDT6を求めるステップと、測定データDT4及び教師劣化度ラベルデータDT6から追加データDT7を取得するステップと、追加データDT7を含む全学習データDT9を判定器DE1で判定して得られる予測劣化度ラベルデータDT14と、全学習データDT9に含まれる教師劣化度ラベルデータDT6との差異が所定値より大きい場合には、学習データを追加学習データDT10として選別するステップと、追加学習データDT10を学習して判定器DE1を更新するステップとを備えている。
【0057】
これによれば、稼動中の設備から、劣化診断の測定データDT4と、保守の記録から求める教師劣化度ラベルデータDT6から取得した追加学習データDT10を用いて、判定器DE1を更新する。これにより、現場で取得される非連続の学習データである追加データDT7を、連続基準データである初期学習データに適合することができる。その結果、監視対象の設備における劣化の判定基準の確度を高めることができる。したがって、追加学習に必要な学習データ量を適正に選択しながら、学習効果の増大を図ることができる。
【0058】
また、追加データDT7を取得するステップと、学習データを追加学習データDT10として選別するステップと、判定器DE1を更新するステップとを、保守を実施するごとに繰り返して行ってもよい。
【0059】
これによれば、保守を実施するごとに、判定器の学習度を更新することができる。
【0060】
また、学習データを追加学習データDT10として選別するステップは、追加データDT7を含む全学習データDT9を判定器DE1で判定する際に、判定したデータが学習データに対して未知なる度合いが所定の閾値より高いデータである場合に、判定したデータを未知データとして判定するステップと、未知データを学習データの追加学習データDT10として選別するステップとを含んでいてもよい。
【0061】
これによれば、未知度が所定の閾値よりも高いデータであっても、判定器に対して学習データとして追加できるので、現場ごとに異なる可能性がある未知のデータに対しても対応することができるようになる。
【0062】
また、劣化診断の対象である設備は、回転体を有する電動機を備えていてもよい。
【0063】
これによれば、電動機の電流変動成分を高調波センサで取得することにより、設備の劣化を検出することができる。
【実施例】
【0064】
図5は、本発明の実施例に係る劣化診断システムの利用方法を示すフロー図である。まず、ステップST10において、加速劣化試験により、初期基準データを収集する。次に、ステップST11において、判定器DE1に対して初期学習を行う。ここまでが、上述したSTEP1及びSTEP2に対応する。
【0065】
次に、ステップST12において、本劣化診断システムを顧客の監視対象機材HW2に配置する。
【0066】
次に、ステップST13において、本劣化診断システムを稼動する。すなわち、稼動中の監視対象機材HW2に対して、監視対象機材HW2が発する高調波を高調波センサにより連続測定し、測定したデータを判定器DE1によって判定する。このときの連続して測定された波形データ及び判定結果を波形及び判定結果データDT11に格納する。
【0067】
ステップST14において、監視対象機材HW2に異常がないと判定された場合には、ステップST13に戻る。一方、ステップST14において、監視対象機材HW2に異常があると判定された場合には、ステップST15において、監視対象機材HW2に対して臨時の保守を実施する。その後、ステップST17において、インターネット(WEB又はクラウドコンピューティング等)を用いて、監視対象機材HW2の保守の結果を保守結果データDT12に格納する。
【0068】
ステップST14と並行するステップST16において、顧客は監視対象機材HW2に対して定期的な保守を実施する。ステップST17において、ステップST16における監視対象機材HW2の保守結果をWEBなどを用い、インターネット上の保守結果データDT12に入力する。
【0069】
次に、ステップST18において、連続測定された波形及び判定結果データDT11及び入力された保守結果データDT12から、波形データにラベリング(現場ラベリング)を施して、過去分を含む全学習データDT9に格納する。
【0070】
次に、ステップST19において、判定器DE1を用いて、ラベリングされた過去分を含む全学習データDT9から学習データを抽出し、抽出された追加学習データとしてDT10に格納する。この工程は、図1及び図2に示した選別処理AM4に対応する。
【0071】
次に、ステップST20において、抽出された追加学習データDT10を用いて、判定器DE1を再学習して、判定器DE1を成長させる。
【0072】
ここで、本実施例に係る劣化診断システムにおける顧客の利用形態について図6を参照しながら説明する。図6は、本発明の実施例に係る劣化診断システムを利用する顧客の利用形態を示す模式図である。
【0073】
(1)監視対象機材HW2の所定の部位に高調波センサを配置する。高調波センサは、インターネットと接続可能な端末であるエッジデバイスEDと接続され、さらにエッジデバイスEDはインターネットと接続される。
【0074】
(2)監視対象機材HW2が稼動中であれば、高調波センサ及びエッジデバイスEDを通して、例えばWEB上に測定データDT4として登録し、判定器DE1により、上述した解析及び判定を行う。
【0075】
(3)この判定結果は、WEBブラウザ等によって、スマートフォン及びパソコンから随時閲覧することができる。
【0076】
(4)上記の(2)と並行して、定期保守の期間又は判定器DE1による判定結果が不良の際には、人力作業により保守点検を行う。
【0077】
(5)保守点検時に得られた測定データを、上述した教師劣化度ラベルデータDT6としてWEB上に登録する。
【0078】
(6)現場ラベリングによる追加データを含め、過去分を含む全学習データDT9から、再学習用のデータを選別して、選別したデータで判定器DE1を再学習する。
【0079】
以下に、オンラインによる常時監視の測定データ又は定期保守時の測定データに、異常と判定されたデータが連続して出力された場合でも、人力作業による保守により、監視対象機材HW2は正常に稼動していたという場合を説明する。この場合の保守データからの波形抽出処理及びラベリング処理について、図7を参照しながら説明する。図7は、本発明の実施例に係る劣化診断システムを利用する場合の、保守時の測定データからの波形の抽出処理及びラベリング処理の概略を示す模式図である。
【0080】
図7に示すように、例えば、高調波センサ及びエッジデバイスEDによる測定波形に対して、判定器DE1が複数回(図7では、2回)連続して異常を出力した場合に、人力作業による保守を行う。図7において、上の行に、エッジデバイスの測定波形を示す。エッジデバイスの測定波形の下に、それぞれの測定波形に対応する、判定器DE1の出力を示す。保守時に、図7に示す波形Bのデータが観察されたとすると、以下の5つの条件のうち少なくとも1つの条件を満たせば、保守時に取得された波形Bのデータを含め、その前後のデータをもまとめて、測定結果のラベルを「異常」から「正常」に付け替える。同時に、ラベリングされた過去分を含む全学習データDT9を更新する。
【0081】
ここで、複数の測定結果のラベルをまとめて付け替える5つの条件とは、以下の通りである。
【0082】
i)タイムスタンプが近い。
【0083】
ii)波形の形状が似ている。
【0084】
iii)波形同士のユークリッド距離が予め設けられた閾値よりも小さい。
【0085】
iv)ある特徴を抽出した後の特徴パラメータ同士のユークリッド距離が予め設けられた閾値よりも小さい。
【0086】
v)判定器DE1からの出力値(劣化度又は未知度)同士のユークリッド距離が予め設けられた閾値よりも小さい。
【0087】
このように、実施形態及び実施例に係る劣化診断システムにおける追加学習方法は、オンラインによる常時監視の測定データ又は定期保守時の測定データに、劣化度が高いことを示す異常が連続的に検出されたとしても、緊急の保守によって、これらの異常を正常に戻すことができる。そして、再度、オンラインで常時監視を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明に係る劣化診断システム追加学習方法は、電気機器設備における劣化診断システム等に有用である。
【符号の説明】
【0089】
DE1 判定器
ED エッジデバイス
HW1 加速劣化実験機材
HW2 監視対象機材
100 特徴フィルタ
101 波形切出し部
102 周波数解析部
110 正常/劣化度判定器
111 全結合4層ニューラルネットワーク
112 第1統合処理部
113 第2統合処理部
120 未知度判定器
121 全結合3層オートエンコーダ
122 比較処理部
123 統合処理部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】