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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2018年9月7日
【発行日】2019年12月19日
(54)【発明の名称】波長変換部材、光源及び照明装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/20 20060101AFI20191122BHJP
   H01S 5/022 20060101ALI20191122BHJP
   F21S 41/16 20180101ALI20191122BHJP
   F21S 41/176 20180101ALI20191122BHJP
   F21V 9/32 20180101ALI20191122BHJP
   F21V 7/30 20180101ALI20191122BHJP
   F21S 2/00 20160101ALI20191122BHJP
   F21W 102/00 20180101ALN20191122BHJP
   F21Y 115/30 20160101ALN20191122BHJP
【FI】
   G02B5/20
   H01S5/022
   F21S41/16
   F21S41/176
   F21V9/32
   F21V7/30
   F21S2/00 311
   F21W102:00
   F21Y115:30
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】30
【出願番号】特願2019-502848(P2019-502848)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2018年2月9日
(31)【優先権主張番号】特願2017-39416(P2017-39416)
(32)【優先日】2017年3月2日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2017-39424(P2017-39424)
(32)【優先日】2017年3月2日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(74)【代理人】
【識別番号】100168273
【弁理士】
【氏名又は名称】古田 昌稔
(72)【発明者】
【氏名】長崎 純久
(72)【発明者】
【氏名】大林 孝志
(72)【発明者】
【氏名】濱田 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】杉尾 幸彦
(72)【発明者】
【氏名】小城原 佑亮
【テーマコード(参考)】
2H148
3K243
5F173
【Fターム(参考)】
2H148AA01
2H148AA07
2H148AA11
2H148AA19
2H148AA25
3K243AA02
3K243AA08
3K243BB01
3K243CD02
5F173MA10
5F173MF10
5F173MF23
5F173MF28
5F173MF39
5F173MF40
(57)【要約】
本開示の波長変換部材(10)は、第1マトリクス(22)と、第1マトリクス(22)に埋め込まれた蛍光体粒子(23)と、第1マトリクス(22)に埋め込まれた第1フィラー粒子(24)、及び、蛍光体粒子(23)の表面をそれぞれ被覆している表面被覆層(25)からなる群より選ばれる少なくとも1つとを備えている。第1マトリクス(22)の屈折率がn1であり、蛍光体粒子(23)の屈折率がn2であり、第1フィラー粒子(24)の屈折率がn3であり、表面被覆層(25)の屈折率がn4であるとき、波長変換部材(10)は、|n3−n1|>|n1−n2|、及び、|n4−n1|>|n1−n2|からなる群より選ばれる少なくとも1つの関係を満足する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1マトリクスと、
前記第1マトリクスに埋め込まれた蛍光体粒子と、
前記第1マトリクスに埋め込まれた第1フィラー粒子、及び、前記蛍光体粒子の表面をそれぞれ被覆している表面被覆層からなる群より選ばれる少なくとも1つと、
を備え、
前記第1マトリクスの屈折率がn1であり、前記蛍光体粒子の屈折率がn2であり、前記第1フィラー粒子の屈折率がn3であり、前記表面被覆層の屈折率がn4であるとき、
|n3−n1|>|n1−n2|、及び、|n4−n1|>|n1−n2|からなる群より選ばれる少なくとも1つの関係を満足する、波長変換部材。
【請求項2】
|n3−n1|−|n1−n2|≧0.3を満足する、請求項1に記載の波長変換部材。
【請求項3】
前記第1フィラー粒子の平均粒径が前記蛍光体粒子の平均粒径よりも小さい、請求項1又は2に記載の波長変換部材。
【請求項4】
前記第1フィラー粒子の平均粒径が前記蛍光体粒子から放射された蛍光の光のピーク波長以上である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の波長変換部材。
【請求項5】
前記第1フィラー粒子が金属酸化物を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の波長変換部材。
【請求項6】
|n4−n1|−|n1−n2|≧0.3を満足する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の波長変換部材。
【請求項7】
前記表面被覆層の平均厚さが前記蛍光体粒子の平均粒径よりも小さい、請求項1〜6のいずれか1項に記載の波長変換部材。
【請求項8】
前記表面被覆層の平均厚さが前記蛍光体粒子から放射された蛍光の光のピーク波長以上である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の波長変換部材。
【請求項9】
前記第1マトリクスがZnO単結晶又はc軸に配向したZnO多結晶によって構成されている、請求項1〜8のいずれか1項に記載の波長変換部材。
【請求項10】
基板と、
前記基板によって支持された蛍光体層と、
前記基板と前記蛍光体層との間に配置された光散乱層と、
をさらに備え、
前記蛍光体層は、前記第1マトリクスと、前記蛍光体粒子と、前記第1フィラー粒子及び前記表面被覆層からなる群より選ばれる少なくとも1つと、を含み、
前記光散乱層は、第2マトリクスと、前記第2マトリクスに埋め込まれた第2フィラー粒子とを含み、
前記第2マトリクスの屈折率が前記第2フィラー粒子の屈折率と異なる、請求項1〜9のいずれか1項に記載の波長変換部材。
【請求項11】
前記第2マトリクスと前記第2フィラー粒子との間の屈折率差が0.3以上である、請求項10に記載の波長変換部材。
【請求項12】
前記第2マトリクスの熱伝導率が前記第2フィラー粒子の熱伝導率よりも高い、請求項10又は11に記載の波長変換部材。
【請求項13】
前記光散乱層の前記第2マトリクスの材料組成が前記蛍光体層の前記第1マトリクスの材料組成に等しい、請求項10〜12のいずれか1項に記載の波長変換部材。
【請求項14】
前記第2フィラー粒子は、SiO2粒子及びTiO2粒子からなる群より選ばれる少なくとも1つを含む、請求項10〜13のいずれか1項に記載の波長変換部材。
【請求項15】
前記第2マトリクスがZnO単結晶又はc軸に配向したZnO多結晶によって構成されている、請求項10〜14のいずれか1項に記載の波長変換部材。
【請求項16】
発光素子と、
前記発光素子から照射された励起光を受けて蛍光を放射する請求項1〜15のいずれか1項に記載の波長変換部材と、
を備えた、光源。
【請求項17】
発光素子と、
前記発光素子から照射された励起光を受けて蛍光を放射する請求項10〜15のいずれか1項に記載の波長変換部材と、
を備え、
前記発光素子と前記波長変換部材の前記基板との間に前記波長変換部材の前記蛍光体層及び前記光散乱層が位置している、光源。
【請求項18】
前記発光素子がレーザーダイオードである、請求項16又は17に記載の光源。
【請求項19】
請求項16〜18のいずれか1項に記載の光源と、
前記光源から放射された光を外部に導く光学部品と、
を備えた、照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、波長変換部材、光源及び照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、発光素子及び波長変換部材を備えた光源が開発されている。波長変換部材は、マトリクスに埋め込まれた蛍光体粒子を有する。発光素子の光が励起光として蛍光体粒子に照射され、励起光の波長よりも長い波長の光が蛍光体から放射される。このタイプの光源において、光の輝度及び出力を高めるための試みがなされている。
【0003】
特許文献1は、マトリクスの材料として酸化亜鉛(ZnO)が使用された波長変換部材を開示している。ZnOは、多くの蛍光体の屈折率に近い屈折率を有する無機材料であるとともに、優れた透光性及び熱伝導性を有する。特許文献1の波長変換部材によれば、蛍光体粒子とZnOマトリクスとの界面での光散乱が抑制され、高い光出力が達成されうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2013/172025号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の波長変換部材は、高い光出力を達成できるものの、特許文献1の波長変換部材によって高いコントラストを得ることは難しい。
【0006】
本開示は、優れたコントラスト性能を有する波長変換部材を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、
第1マトリクスと、
前記第1マトリクスに埋め込まれた蛍光体粒子と、
前記第1マトリクスに埋め込まれた第1フィラー粒子、及び、前記蛍光体粒子の表面をそれぞれ被覆している表面被覆層からなる群より選ばれる少なくとも1つと、
を備え、
前記第1マトリクスの屈折率がn1であり、前記蛍光体粒子の屈折率がn2であり、前記第1フィラー粒子の屈折率がn3であり、前記表面被覆層の屈折率がn4であるとき、
|n3−n1|>|n1−n2|、及び、|n4−n1|>|n1−n2|からなる群より選ばれる少なくとも1つの関係を満足する、波長変換部材を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本開示の技術によれば、波長変換部材の内部における光の導波が抑制されるので、高いコントラストを達成できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本開示の第1実施形態に係る波長変換部材の概略断面図である。
図2図2は、変形例1に係る波長変換部材の概略断面図である。
図3図3は、蛍光体粒子とフィラー粒子との位置関係の例を示す図である。
図4図4は、本開示の第2実施形態に係る波長変換部材の概略断面図である。
図5図5は、変形例2に係る波長変換部材の概略断面図である。
図6図6は、蛍光体粒子及び表面被覆層の拡大断面図である。
図7図7は、本開示の第3実施形態に係る波長変換部材の概略断面図である。
図8図8は、本開示の第4実施形態に係る波長変換部材の概略断面図である。
図9図9は、本開示の第5実施形態に係る波長変換部材の概略断面図である。
図10図10は、本開示の第6実施形態に係る波長変換部材の概略断面図である。
図11図11は、参考例に係る波長変換部材の概略断面図である。
図12図12は、本開示の波長変換部材を用いた透過型光源の概略断面図である。
図13図13は、本開示の波長変換部材を用いた反射型光源の概略断面図である。
図14図14は、本開示の透過型光源を用いた照明装置の概略構成図である。
図15図15は、本開示の反射型光源を用いた照明装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(本開示の基礎となった知見)
発光素子及び波長変換部材を備えた光源において、波長変換部材には高いコントラストが要求されることがある。例えば、高輝度の光を狭い領域に照射する必要があるとき、十分に集光された光が波長変換部材から放射されることが望ましい。「波長変換部材におけるコントラスト」は、励起光が照射された部分とそれ以外の部分との間のコントラストを意味する。
【0011】
特許文献1の波長変換部材によれば、蛍光体粒子の屈折率がZnOマトリクスの屈折率に近いので、波長変換部材の内部において光が散乱しにくく、波長変換部材の内部において光が導波して広がる。その結果、励起光が照射された部分以外の部分においても蛍光が発生し、高いコントラストが得られない。
【0012】
(本開示に係る一態様の概要)
本開示の第1態様に係る波長変換部材は、
第1マトリクスと、
前記第1マトリクスに埋め込まれた蛍光体粒子と、
前記第1マトリクスに埋め込まれた第1フィラー粒子、及び、前記蛍光体粒子の表面をそれぞれ被覆している表面被覆層からなる群より選ばれる少なくとも1つと、
を備え、
前記第1マトリクスの屈折率がn1であり、前記蛍光体粒子の屈折率がn2であり、前記第1フィラー粒子の屈折率がn3であり、前記表面被覆層の屈折率がn4であるとき、
|n3−n1|>|n1−n2|、及び、|n4−n1|>|n1−n2|からなる群より選ばれる少なくとも1つの関係を満足する。
【0013】
波長変換部材が上記の関係を満たしている場合、波長変換部材の内部において光が散乱しやすく、光が導波しにくい。この場合、励起光が照射された部分以外の部分において蛍光が発生しにくいので、高いコントラストが得られる。波長変換部材の内部での光の導波を抑制することによって、輝度及び発光効率を犠牲にすることなく、高いコントラストにて光を生成することができる。
【0014】
本開示の第2態様において、例えば、第1態様に係る波長変換部材は|n3−n1|−|n1−n2|≧0.3を満足する。波長変換部材がこの関係式を満足するとき、波長変換部材の内部における光の散乱確率が上がり、より高いコントラストを達成できる。
【0015】
本開示の第3態様において、例えば、第1又は第2態様に係る波長変換部材では、前記第1フィラー粒子の平均粒径が前記蛍光体粒子の平均粒径よりも小さい。このような構成によれば、第1フィラー粒子の合計の表面積が十分に確保されるので、波長変換部材の内部における光の散乱確率が上がり、より高いコントラストを達成できる。
【0016】
本開示の第4態様において、例えば、第1〜第3態様のいずれか1つに係る波長変換部材では、前記第1フィラー粒子の平均粒径が前記蛍光体粒子から放射された蛍光の光のピーク波長以上である。このような構成によれば、波長変換部材の内部において光が十分に散乱され、高いコントラストを達成できる。
【0017】
本開示の第5態様において、例えば、第1〜第4態様のいずれか1つに係る波長変換部材では、前記第1フィラー粒子が金属酸化物を含む。金属酸化物の多くは、化学的に安定であり、蛍光を殆ど放射しないので、フィラー粒子の材料として適している。
【0018】
本開示の第6態様において、例えば、第1〜第5態様のいずれか1つに係る波長変換部材は|n4−n1|−|n1−n2|≧0.3を満足する。波長変換部材がこの関係式を満足するとき、波長変換部材の内部における光の散乱確率が上がり、より高いコントラストを達成できる。
【0019】
本開示の第7態様において、例えば、第1〜第6態様のいずれか1つに係る波長変換部材では、前記表面被覆層の平均厚さが前記蛍光体粒子の平均粒径よりも小さい。第7態様によれば、蛍光体粒子の熱が十分にマトリクスに放出されるので、蛍光体粒子の温度上昇が抑制され、高い光出力を保つことができる。
【0020】
本開示の第8態様において、例えば、第1〜第7態様のいずれか1つに係る波長変換部材では、前記表面被覆層の平均厚さが前記蛍光体粒子から放射された蛍光の光のピーク波長以上である。このような構成によれば、波長変換部材の内部において光が十分に散乱され、高いコントラストを達成できる。
【0021】
本開示の第9態様において、例えば、第1〜第8態様のいずれか1つに係る波長変換部材では、前記第1マトリクスがZnO単結晶又はc軸に配向したZnO多結晶によって構成されている。ZnOは高い熱伝導性を有するので、ZnOが第1マトリクスの材料として使用されていると、波長変換部材の熱を外部に逃がしやすい。第1マトリクスがZnO単結晶又はc軸に配向したZnO多結晶によって構成されている場合、この効果がより十分に得られる。
【0022】
特許文献1は、アルミニウム、銀などの金属で作られた反射層を有する基板を開示している。金属製の反射層では正反射のみが起こり、蛍光体粒子から放射された蛍光を様々な方向に散乱させることができない。そのため、金属製の反射層は、波長変換部材の内部における光の導波を起こしやすく、波長変換部材のコントラスト性能を低下させる。
【0023】
本開示の第10態様において、例えば、第1〜第9態様のいずれか1つに係る波長変換部材は、基板と、前記基板によって支持された蛍光体層と、前記基板と前記蛍光体層との間に配置された光散乱層と、をさらに備え、前記蛍光体層は、前記第1マトリクスと、前記蛍光体粒子と、前記第1フィラー粒子及び前記表面被覆層からなる群より選ばれる少なくとも1つと、を含み、前記光散乱層は、第2マトリクスと、前記第2マトリクスに埋め込まれた第2フィラー粒子とを含み、前記第2マトリクスの屈折率が前記第2フィラー粒子の屈折率と異なる。
【0024】
第10態様によれば、励起光及び蛍光体粒子から放射された光が光散乱層において散乱されるので、波長変換部材の内部において光が導波しにくい。この場合、励起光が照射された部分以外の部分において蛍光が発生しにくいので、高いコントラストが得られる。波長変換部材の内部での光の導波を抑制することによって、輝度及び発光効率を犠牲にすることなく、高いコントラストにて光を生成することができる。
【0025】
本開示の第11態様において、例えば、第10態様に係る波長変換部材では、前記第2マトリクスと前記第2フィラー粒子との間の屈折率差が0.3以上である。第10態様によれば、波長変換部材の内部における光の散乱確率が上がり、より高いコントラストを達成できる。
【0026】
本開示の第12態様において、例えば、第10又は第11態様に係る波長変換部材では、前記第2マトリクスの熱伝導率が前記第2フィラー粒子の熱伝導率よりも高い。第12態様によれば、蛍光体層の熱が速やかに基板に伝導されるので、蛍光体層の温度上昇が抑制され、高い発光効率を達成できる。
【0027】
本開示の第13態様において、例えば、第10〜第12態様のいずれか1つに係る波長変換部材では、前記光散乱層の前記第2マトリクスの材料組成が前記蛍光体層の前記第1のマトリクスの材料組成に等しい。第13態様によれば、光散乱層の線膨張係数と蛍光体層の線膨張係数との差に起因して、光散乱層と蛍光体層との間で剥離が生じることを防止できる。
【0028】
本開示の第14態様において、例えば、第10〜第13態様のいずれか1つに係る波長変換部材では、前記第2フィラー粒子は、SiO2粒子及びTiO2粒子からなる群より選ばれる少なくとも1つを含む。これらの粒子は、化学的に安定であり、安価である。
【0029】
本開示の第15態様において、例えば、第10〜第14態様のいずれか1つに係る波長変換部材の前記光散乱層の前記第2マトリクスがZnO単結晶又はc軸に配向したZnO多結晶によって構成されている。ZnOは高い熱伝導性を有するので、ZnOが第2マトリクスの材料として使用されていると、波長変換部材の熱を外部に逃がしやすい。第2マトリクスがZnO単結晶又はc軸に配向したZnO多結晶によって構成されている場合、この効果がより十分に得られる。
【0030】
本開示の第16態様に係る光源は、
発光素子と、
前記発光素子から照射された励起光を受けて蛍光を放射する第1〜第15態様のいずれか1つに係る波長変換部材と、
を備えたものである。
【0031】
第16態様によれば、優れたコントラスト性能を有する光源を提供できる。
【0032】
本開示の第17態様に係る光源は、
発光素子と、
前記発光素子から照射された励起光を受けて蛍光を放射する第10〜第15態様のいずれか1つの波長変換部材と、
を備え、
前記発光素子と前記波長変換部材の前記基板との間に前記波長変換部材の前記蛍光体層及び前記光散乱層が位置しているものである。
【0033】
第17態様によれば、優れたコントラスト性能を有する光源を提供できる。
【0034】
本開示の第18態様において、例えば、第16又は第17態様に係る光源では、前記発光素子がレーザーダイオードである。レーザーダイオードの光は指向性に優れ、波長変換部材の特定の部分にのみ照射されうる。つまり、レーザーダイオードは、高いコントラストを得ることに適している。
【0035】
本開示の第19態様に係る照明装置は、
第16〜第18態様のいずれか1つに係る光源と、
前記光源から放射された光を外部に導く光学部品と、
を備えたものである。
【0036】
第19態様によれば、優れたコントラスト性能を有する照明装置を提供できる。
【0037】
別の側面において、本開示の第20態様に係る波長変換部材は、
基板と、
前記基板によって支持された蛍光体層と、
前記基板と前記蛍光体層との間に配置された光散乱層と、
を備え、
前記光散乱層は、マトリクスと、前記マトリクスに埋め込まれたフィラー粒子とを含み、
前記マトリクスの屈折率が前記フィラー粒子の屈折率と異なるものである。
【0038】
第20態様によれば、励起光及び蛍光体粒子から放射された光が光散乱層において散乱されるので、波長変換部材の内部において光が導波しにくい。この場合、励起光が照射された部分以外の部分において蛍光が発生しにくいので、高いコントラストが得られる。波長変換部材の内部での光の導波を抑制することによって、輝度及び発光効率を犠牲にすることなく、高いコントラストにて光を生成することができる。
【0039】
本開示の第21態様において、例えば、第20態様に係る波長変換部材では、前記マトリクスと前記フィラー粒子との間の屈折率差が0.3以上である。第21態様によれば、波長変換部材の内部における光の散乱確率が上がり、より高いコントラストを達成できる。
【0040】
本開示の第22態様において、例えば、第20又は第21態様に係る波長変換部材では、前記マトリクスの熱伝導率が前記フィラー粒子の熱伝導率よりも高い。第22態様によれば、蛍光体層の熱が速やかに基板に伝導されるので、蛍光体層の温度上昇が抑制され、高い発光効率を達成できる。
【0041】
本開示の第23態様において、例えば、第20〜第22態様のいずれか1つに係る波長変換部材では、前記蛍光体層は、マトリクスと、前記マトリクスに埋め込まれた蛍光体粒子とを含み、前記光散乱層の前記マトリクスの材料組成が前記蛍光体層の前記マトリクスの材料組成に等しい。第23態様によれば、光散乱層の線膨張係数と蛍光体層の線膨張係数との差に起因して、光散乱層と蛍光体層との間で剥離が生じることを防止できる。
【0042】
本開示の第24態様において、例えば、第20〜第23態様のいずれか1つに係る波長変換部材では、前記フィラー粒子は、SiO2粒子及びTiO2粒子からなる群より選ばれる少なくとも1つを含む。これらの粒子は、化学的に安定であり、安価である。
【0043】
本開示の第25態様において、例えば、第20〜第24態様のいずれか1つに係る波長変換部材では、前記光散乱層の前記マトリクスがZnO単結晶又はc軸に配向したZnO多結晶によって構成されている。ZnOは高い熱伝導性を有するので、ZnOがマトリクスの材料として使用されていると、波長変換部材の熱を外部に逃がしやすい。マトリクスがZnO単結晶又はc軸に配向したZnO多結晶によって構成されている場合、この効果がより十分に得られる。
【0044】
本開示の第26態様に係る反射型光源は、
発光素子と、
前記発光素子から照射された励起光を受けて蛍光を放射する第20〜第25態様のいずれか1つの波長変換部材と、
を備え、
前記発光素子と前記波長変換部材の前記基板との間に前記波長変換部材の前記蛍光体層及び前記光散乱層が位置しているものである。
【0045】
第26態様によれば、優れたコントラスト性能を有する光源を提供できる。
【0046】
本開示の第27態様において、例えば、第26態様に係る反射型光源では、前記発光素子がレーザーダイオードである。レーザーダイオードの光は指向性に優れ、波長変換部材の特定の部分にのみ照射されうる。つまり、レーザーダイオードは、高いコントラストを得ることに適している。
【0047】
本開示の第28態様に係る照明装置は、
第26又は第27態様に係る反射型光源と、
前記光源から放射された光を外部に導く光学部品と、
を備えたものである。
【0048】
第28態様によれば、優れたコントラスト性能を有する照明装置を提供できる。
【0049】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら説明する。本開示は、以下の実施形態に限定されない。
【0050】
(第1実施形態)
図1に示すように、本実施形態の波長変換部材10は、基板11及び蛍光体層20を備えている。基板11は、蛍光体層20を支持している。蛍光体層20は、基板11の上に配置されている。蛍光体層20は、マトリクス22(第1マトリクス)、蛍光体粒子23及びフィラー粒子24(第1フィラー粒子)を有する。マトリクス22は、各粒子間に存在している。各粒子は、マトリクス22に埋め込まれている。言い換えれば、各粒子は、マトリクス22に分散されている。
【0051】
第1の波長帯域を有する励起光が波長変換部材10に照射されたとき、波長変換部材10は、励起光の一部を第2の波長帯域を有する光に変換して放射する。波長変換部材10は、励起光の波長よりも長い波長の光を放射する。第2の波長帯域は、第1の波長帯域と異なる帯域である。ただし、第2の波長帯域の一部が第1の波長帯域に重なっていてもよい。波長変換部材10から放射される光には、蛍光体粒子23から放射された光だけでなく、励起光そのものが含まれていてもよい。
【0052】
基板11は、基板本体13及び薄膜15を有する。基板11の厚さは、例えば、蛍光体層20の厚さよりも大きい。基板本体13は、サファイア(Al23)、窒化ガリウム(GaN)、窒化アルミニウム(AlN)、シリコン、アルミニウム、ガラス、石英(SiO2)、炭化ケイ素(SiC)及び酸化亜鉛からなる群より選ばれる1つの材料で作られている。基板本体13は、例えば、励起光及び蛍光体粒子23から放射された光に対して透光性を有する。この場合、波長変換部材10は、透過型光源に好適に使用されうる。基板11が透光性を有していない場合、波長変換部材10は、反射型光源に使用されうる。基板本体13は、鏡面研磨された表面を有していてもよい。
【0053】
薄膜15は、蛍光体層20を形成するための下地層として機能する。蛍光体層20のマトリクス22が結晶質であるとき、薄膜15は、マトリクス22の結晶成長過程における種結晶として機能する。つまり、薄膜15は、単結晶薄膜又は多結晶薄膜である。マトリクス22がZnO単結晶又はZnO多結晶によって構成されているとき、薄膜15は、ZnO単結晶薄膜又はZnO多結晶薄膜でありうる。ただし、基板本体13が種結晶の機能を発揮できる場合、薄膜15は省略されていてもよい。例えば、基板本体13が結晶質のGaN又は結晶質のZnOによって構成されているとき、結晶質のZnOによって構成されたマトリクス22を基板本体13の上に直接形成することができる。マトリクス22が結晶質でないときにも、薄膜15は省略されうる。
【0054】
蛍光体層20において、蛍光体粒子23は、マトリクス22に分散されている。図1において、蛍光体粒子23は、互いに離れている。フィラー粒子24も蛍光体粒子23から離れている。ただし、蛍光体粒子23が互いに接していてもよいし、フィラー粒子24が蛍光体粒子23に接していてもよい。図3に示すように、蛍光体粒子23に複数のフィラー粒子24が接していてもよい。蛍光体粒子23及びフィラー粒子24は、石垣のように積まれていてもよい。
【0055】
蛍光体粒子23の材料は特に限定されない。種々の蛍光物質が蛍光体粒子23の材料として使用されうる。具体的には、Y3Al512:Ce(YAG)、Y3(Al,Ga)512:Ce(GYAG)、Lu3Al512:Ce(LuAG)、(Si,Al)6(O,N)8:Eu(β−SiAlON)、(La,Y)3Si611:Ce(LYSN)、Lu2CaMg2Si312:Ce(LCMS)などの蛍光物質が使用されうる。蛍光体粒子23は、互いに異なる組成を有する複数の種類の蛍光体粒子を含んでいてもよい。蛍光体粒子23に照射されるべき励起光の波長、及び、蛍光体粒子23から放射されるべき光(蛍光の光)の波長は、波長変換部材10の用途に応じて選択される。
【0056】
蛍光体粒子23の平均粒径は、例えば、0.1〜50μmの範囲にある。蛍光体粒子23の平均粒径は、例えば、次の方法によって特定することができる。まず、波長変換部材10の断面を走査電子顕微鏡で観察する。得られた電子顕微鏡像において、特定の蛍光体粒子23の面積を画像処理によって算出する。算出された面積と同じ面積を有する円の直径をその特定の蛍光体粒子23の粒径(粒子の直径)とみなす。任意の個数(例えば50個)の蛍光体粒子23の粒径をそれぞれ算出し、算出値の平均値を蛍光体粒子23の平均粒径とみなす。本開示において、蛍光体粒子23の形状は限定されない。蛍光体粒子23の形状は、球状であってもよく、鱗片状であってもよく、繊維状であってもよい。本開示において、平均粒径の測定方法は上記の方法に限定されない。
【0057】
マトリクス22は、例えば、樹脂、ガラス又は他の無機材料によって構成されている。樹脂の例には、シリコーン樹脂が含まれる。他の無機材料の例には、Al23、ZnO及びSiO2が含まれる。他の無機材料は、結晶質であってもよい。マトリクス22は、励起光及び蛍光体粒子23から放射された光に対して透光性を有することが望ましい。マトリクス22は、蛍光体粒子23の屈折率よりも高い屈折率を有していてもよいし、蛍光体粒子23の屈折率よりも低い屈折率を有していてもよい。透明性及び熱伝導性の観点から、マトリクス22の材料として、ZnOが適している。ZnOは高い熱伝導性を有するので、ZnOがマトリクス22の材料として使用されていると、蛍光体層20の熱を外部(主に基板11)に逃がしやすい。
【0058】
マトリクス22の材料としてのZnOは、詳細には、ZnO単結晶又はc軸に配向したZnO多結晶である。ZnOは、ウルツ鉱型の結晶構造を有する。「c軸に配向したZnO」とは、基板11の主面(最も広い面積を有する面)に平行な面がc面であることを意味する。
【0059】
c軸に配向したZnO多結晶は、c軸に配向した複数の柱状の結晶粒を含む。c軸に配向したZnO多結晶において、c軸方向の結晶粒界は少ない。「柱状の結晶粒がc軸に配向している」とは、c軸方向のZnOの成長がa軸方向のZnOの成長よりも速く、基板11の上に縦長のZnO結晶粒が形成されていることを意味する。ZnO結晶粒のc軸は、基板11の法線方向に平行である。あるいは、基板11の法線方向に対するZnO結晶粒のc軸の傾きが4°以下である。ここで、「c軸の傾きが4°以下」とは、c軸の傾きの分布が4°以下という意味であって、全ての結晶粒のc軸の傾きが4°以下であることを必ずしも意味しない。「c軸の傾き」は、c軸のX線ロッキングカーブ法による半値幅で評価できる。詳細には、c軸のX線ロッキングカーブ法による半値幅が4°以下である。特許文献1(WO2013/172025)は、c軸に配向したZnO多結晶によって構成されたマトリクスを詳しく開示している。
【0060】
蛍光体層20において、フィラー粒子24は、マトリクス22に分散されている。フィラー粒子24は、例えば無機粒子であり、典型的には金属酸化物を含む。フィラー粒子24は、実質的に金属酸化物からなっていてもよい。金属酸化物の多くは、化学的に安定であり、蛍光を殆ど放射しないので、フィラー粒子24の材料として適している。本明細書において「実質的に〜からなる」は、言及された化合物の本質的特性を変更する他の成分を排除することを意味する。
【0061】
フィラー粒子24に励起光が照射されたとき、フィラー粒子24は、蛍光の光を放射しないか、無視できる強度の蛍光の光のみを放射する。一例において、フィラー粒子24は、SiO2粒子及びTiO2粒子から選ばれる少なくとも1つを含む。これらの粒子は、上記の要件を満たし、化学的に安定であり、安価である。フィラー粒子24の形状も限定されない。フィラー粒子24の形状は、球状であってもよく、鱗片状であってもよく、繊維状であってもよい。
【0062】
本実施形態において、マトリクス22の屈折率がn1であり、蛍光体粒子23の屈折率がn2であり、フィラー粒子24の屈折率がn3であるとき、波長変換部材10は、下記式(1)を満足する。つまり、フィラー粒子24とマトリクス22との間の屈折率差がマトリクス22と蛍光体粒子23との間の屈折率差よりも大きい。
【0063】
|n3−n1|>|n1−n2|・・・(1)
【0064】
波長変換部材10が上記の関係を満たしている場合、波長変換部材10の内部において光が散乱しやすく、光が導波しにくい。この場合、励起光が照射された部分以外の部分において蛍光が発生しにくいので、高いコントラストが得られる。波長変換部材10の内部での光の導波を抑制することによって、輝度及び発光効率を犠牲にすることなく、高いコントラストにて光を生成することができる。
【0065】
式(1)の関係を満足する材料の組み合わせは、例えば、次の通りである。
【0066】
マトリクス22:ZnO(n=1.95)
蛍光体粒子23:YAG(n=1.82)
フィラー粒子24:SiO2(n=1.45)
【0067】
マトリクス22:ZnO(n=1.95)
蛍光体粒子23:YAG(n=1.82)
フィラー粒子24:TiO2(n=2.72)
【0068】
マトリクス22:シリコーン樹脂(n=1.40)
蛍光体粒子23:YAG(n=1.82)
フィラー粒子24:TiO2(n=2.72)
【0069】
さらに、波長変換部材10は、下記式(2)を満足することが望ましい。つまり、フィラー粒子24とマトリクス22との間の屈折率差がマトリクス22と蛍光体粒子23との間の屈折率差よりも0.3以上大きい。波長変換部材10が式(2)を満足するとき、波長変換部材10の内部における光の散乱確率が上がり、より高いコントラストを達成できる。式(2)の左辺の上限値は特に限定されず、例えば、2.0である。
【0070】
|n3−n1|−|n1−n2|≧0.3・・・(2)
【0071】
屈折率は、ナトリウムのD線(589.3nm)を用い、臨界角法によって測定されうる。本開示において、マトリクス22の屈折率n1には、マトリクス22を構成する材料と同じ材料で作製された試験片の測定値が使用されうる。同様に、蛍光体粒子23の屈折率n2には、蛍光体粒子23を構成する材料と同じ材料で作製された試験片の測定値が使用されうる。フィラー粒子24の屈折率n3には、フィラー粒子24を構成する材料と同じ材料で作製された試験片の測定値が使用されうる。温度が上がると屈折率は一般には低下する。しかし、温度の上昇による屈折率の低下の度合いは小さいので、室温(20℃)で式(1)(2)を満たすのであれば、波長変換部材10の実際の使用時おける温度においても所望の効果が十分に得られる。
【0072】
フィラー粒子24の平均粒径は、例えば、0.1〜20μmの範囲にある。フィラー粒子24の平均粒径は、蛍光体粒子23の平均粒径よりも小さいことが望ましい。このような構成によれば、フィラー粒子24の合計の表面積が十分に確保されるので、波長変換部材10の内部における光の散乱確率が上がり、より高いコントラストを達成できる。蛍光体粒子23の平均粒径D1に対するフィラー粒子24の平均粒径D2の比率(D2/D1)は、例えば、0.01〜0.90の範囲にある。フィラー粒子24の平均粒径は、蛍光体粒子23の平均粒径と同じ方法によって測定されうる。
【0073】
また、フィラー粒子24の平均粒径は、蛍光体粒子23から放射された蛍光の光のピーク波長以上であることが望ましい。このような構成によれば、波長変換部材10の内部において光が十分に散乱され、高いコントラストを達成できる。例えば、蛍光体粒子23がYAGで作られているとき、蛍光ピーク波長は、540〜580nmの範囲にある。蛍光体粒子23がβ−SiAlONで作られているとき、蛍光ピーク波長は、520〜550nmの範囲にある。
【0074】
蛍光体粒子23の体積をV1、フィラー粒子24の体積をV2としたとき、V2/(V1+V2)は、例えば、0.1〜0.9の範囲にある。フィラー粒子24の粒径、蛍光体粒子23の粒子、及び、必要とする発光色(蛍光と励起光散乱光との比率)に応じて、V2/(V1+V2)の値を適宜調整することができる。
【0075】
フィラー粒子24は、熱伝導性に優れていることが望ましい。この観点において、フィラー粒子24としてのSiO2粒子には改善の余地がある。例えば、表面がSiO2被膜によって被覆されているAl23粒子は、熱伝導性及び屈折率の両方の要求を満たす。Al23の屈折率は1.77であり、Al23粒子を本開示の波長変換部材に使用することは難しい。表面がSiO2被膜によって被覆されているAl23粒子は、見かけ上、SiO2の屈折率(n=1.45)を示すので、本開示の波長変換部材に好適に使用できる。Al23粒子の表面の全部がSiO2被膜によって被覆されていてもよいし、Al23粒子の表面の一部のみがSiO2被膜によって被覆されていてもよい。このようなフィラー粒子24は、例えば、ゾルゲル法で作製することができる。具体的には、シリコンアルコキシドなどの前駆体とAl23粒子とを含む混合ゾルを調製する。混合ゾルを濾過した後、濾過物を乾燥及び焼成することによって、SiO2被膜によって被覆されたAl23粒子が得られる。
【0076】
次に、波長変換部材10の製造方法を説明する。
【0077】
マトリクス22が樹脂によって構成されている場合、樹脂及び溶媒を含む溶液に蛍光体粒子23及びフィラー粒子24を混合し、塗布液を調製する。基板11の上に塗膜が形成されるように基板11に塗布液を塗布する。塗膜を乾燥させる又は塗膜を硬化させることによって、波長変換部材10が得られる。
【0078】
マトリクス22がZnOによって構成されている場合、例えば、ゾルゲル法によってマトリクス22を形成することができる。まず、亜鉛アルコキシドなどの前駆体、蛍光体粒子23及びフィラー粒子24を含む混合ゾルを調製する。基板11の上に塗膜が形成されるように基板11に混合ゾルを塗布する。塗膜をゲル化させ、焼成することによって、波長変換部材10が得られる。
【0079】
マトリクス22がZnO単結晶又はc軸に配向したZnO多結晶である場合、溶液成長法によって基板11の上にマトリクス22を形成することができる。まず、基板11を準備する。基板本体13の上に薄膜15としての結晶性のZnO薄膜を形成する。ZnO薄膜を形成する方法としては、電子ビーム蒸着法、反応性プラズマ蒸着法、スパッタリング法、パルスレーザ蓄積法などの真空成膜法が用いられる。薄膜15は、ZnO単結晶薄膜又はZnO多結晶薄膜でありうる。次に、基板11の上(薄膜15の上)に蛍光体粒子23及びフィラー粒子24を含む層を形成する。例えば、蛍光体粒子23及びフィラー粒子24を含む分散液を調製する。基板11を分散液中に配置し、電気泳動法を用いて蛍光体粒子23及びフィラー粒子24を基板11の上に堆積させる。これにより、蛍光体粒子23及びフィラー粒子24を含む層を基板11の上に形成することができる。基板11を分散液中に配置し、蛍光体粒子23及びフィラー粒子24を沈降させることによって基板11の上に蛍光体粒子23及びフィラー粒子24を含む層を形成することもできる。蛍光体粒子23及びフィラー粒子24を含む塗布液を用い、印刷法などの薄膜形成方法によって蛍光体粒子23及びフィラー粒子24を含む層を基板11の上に形成することもできる。
【0080】
次に、Znを含有する溶液を使用した溶液成長法によって、粒子間にマトリクス22を形成する。これにより、波長変換部材10が得られる。溶液成長法には、大気圧下で行われる化学溶液析出法(chemical bath deposition)、大気圧以上の圧力下で行う水熱合成法(hydrothermal synthesis)、電圧又は電流を印加する電解析出法(electrochemical deposition)等が用いられる。結晶成長用の溶液として、例えば、ヘキサメチレンテトラミンを含有する硝酸亜鉛の水溶液が用いられる。結晶質のマトリクス22は、薄膜15の上にエピタキシャル成長する。
【0081】
(変形例1)
図2に示す変形例1の波長変換部材30は、基板11に代えて、基板12を備えている。基板12は、基板本体13、薄膜15(第1薄膜)及び薄膜17(第2薄膜)を有する。第2薄膜17は、基板本体13と第1薄膜15との間に配置されている。第1薄膜15は、例えば、先に説明した薄膜15である。第2薄膜17として、反射防止膜、ダイクロイックミラー、金属反射膜、増反射膜、保護膜などが挙げられる。反射防止膜は、励起光の反射を防止するための膜である。ダイクロックミラーは、誘電体多層膜によって構成されうる。金属反射膜は、光を反射させるための膜であり、銀、アルミなどの金属材料で作られている。増反射膜は、誘電体多層膜によって構成されうる。保護膜は、これらの薄膜を物理的又は化学的に保護するための膜でありうる。
【0082】
第2薄膜17は、基板本体13の裏面上に設けられていてもよい。基板本体13の表面及び裏面のそれぞれに第2薄膜17が設けられていてもよい。第1薄膜15が省略され、第2薄膜17のみが設けられていてもよい。
【0083】
以下、他のいくつかの実施形態について説明する。第1実施形態の波長変換部材10(又は30)と他の実施形態の波長変換部材との間の共通する要素には同じ参照符号を付し、それらの説明を省略することがある。すなわち、各実施形態に関する説明は、技術的に矛盾しない限り、相互に適用されうる。さらに、技術的に矛盾しない限り、各実施形態は、相互に組み合わされてもよい。
【0084】
(第2実施形態)
図4に示すように、本実施形態に係る波長変換部材40は、基板11及び蛍光体層50を備えている。
【0085】
蛍光体層50は、マトリクス22及び蛍光体粒子23を有する。蛍光体粒子23の表面は、それぞれ、表面被覆層25によって被覆されている。
【0086】
表面被覆層25は、例えば、無機材料によって構成されている。表面被覆層25は、蛍光体粒子23の表面の全部を被覆していてもよいし、蛍光体粒子23の表面の一部のみを被覆していてもよい。表面被覆層25に励起光が照射されたとき、表面被覆層25は、蛍光の光を放射しないか、無視できる強度の蛍光の光のみを放射する。一例において、表面被覆層25は、SiO2及びTiO2から選ばれる少なくとも1つの材料によって構成されている。表面被覆層25の材料組成は、第1実施形態において説明したフィラー粒子24の材料組成と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0087】
本実施形態において、マトリクス22の屈折率がn1であり、蛍光体粒子23の屈折率がn2であり、表面被覆層25の屈折率がn4であるとき、波長変換部材40は、下記式(3)を満足する。つまり、表面被覆層25とマトリクス22との間の屈折率差がマトリクス22と蛍光体粒子23との間の屈折率差よりも大きい。
【0088】
|n4−n1|>|n1−n2|・・・(3)
【0089】
波長変換部材40が上記の関係を満たしている場合、波長変換部材40の内部において光が散乱しやすく、光が導波しにくい。この場合、励起光が照射された部分以外の部分において蛍光が発生しにくいので、高いコントラストが得られる。波長変換部材40の内部での光の導波を抑制することによって、輝度及び発光効率を犠牲にすることなく、高いコントラストにて光を生成することができる。
【0090】
式(3)の関係を満足する材料の組み合わせは、第1実施形態の組み合わせにおける「フィラー粒子24」を「表面被覆層25」を置き換えることによって得られる。
【0091】
さらに、波長変換部材40は、下記式(4)を満足することが望ましい。つまり、表面被覆層25とマトリクス22との間の屈折率差がマトリクス22と蛍光体粒子23との間の屈折率差よりも0.3以上大きい。波長変換部材40が式(4)を満足するとき、波長変換部材40の内部における光の散乱確率が上がり、より高いコントラストを達成できる。式(4)の左辺の上限値は特に限定されず、例えば、2.0である。
【0092】
|n4−n1|−|n1−n2|≧0.3・・・(4)
【0093】
表面被覆層25の平均厚さは、蛍光体粒子23の平均粒径よりも小さいことが望ましい。この場合、蛍光体粒子23の熱が十分にマトリクス22に放出されるので、蛍光体粒子23の温度上昇が抑制され、高い光出力を保つことができる。蛍光体粒子23の平均粒径Dに対する表面被覆層25の平均厚さTの比率(T/D)は、例えば、0.01〜1.00の範囲にある。
【0094】
図6に示すように、表面被覆層25の厚さT1は、蛍光体粒子23の表面から表面被覆層25の表面までの厚さを意味する。
【0095】
表面被覆層25の平均厚さは、例えば、0.20〜5.00μmの範囲にある。表面被覆層25の平均厚さは、例えば、粒子の断面の電子顕微鏡観察像及びEDX測定から特定することができる。例えば、特定の粒子のEDX像を用い、表面被覆層25の厚さを任意の複数の点(例えば5点)において測定する。得られた値の平均値をその特定の粒子の表面被覆層25の厚さとみなすことができる。さらに、同じ測定を複数の粒子(例えば10個)について実施する。得られた厚さの合計値を粒子の個数(10個)で除することによって、表面被覆層25の平均厚さが算出されうる。粒子の断面は、FIB(Focused Ion Beam)などの方法で露出させることができる。
【0096】
表面被覆層25の平均厚さは、蛍光体粒子23から放射された蛍光の光のピーク波長以上であることが望ましい。このような構成によれば、波長変換部材40の内部において光が十分に散乱され、高いコントラストを達成できる。
【0097】
(変形例2)
図5に示す変形例2の波長変換部材60は、基板11に代えて、基板12を備えている。基板12の構成は図2を参照して説明した通りである。
【0098】
(第3実施形態)
図7に示すように、本実施形態に係る波長変換部材70は、基板11及び蛍光体層80を備えている。蛍光体層80は、マトリクス22、蛍光体粒子23及びフィラー粒子24を有する。蛍光体粒子23の表面は、それぞれ、表面被覆層25によって被覆されている。本実施形態は、第1実施形態と第2実施形態との組み合わせである。本実施形態によれば、第1実施形態の有利な効果と第2実施形態の有利な効果とが重畳的に得られる。基板11は、図2を参照して説明した基板12に置き換えられてもよい。
【0099】
(第4実施形態)
図8に示すように、本実施形態の波長変換部材90は、基板11、光散乱層19及び蛍光体層20を備えている。基板11は、光散乱層19及び蛍光体層20を支持している。基板11と蛍光体層20との間に光散乱層19が配置されている。光散乱層19は、基板11及び蛍光体層20のそれぞれに接している。光散乱層19は、マトリクス16(第2マトリクス)及びフィラー粒子18(第2フィラー粒子)を有する。マトリクス16は、各粒子間に存在している。フィラー粒子18は、マトリクス16に埋め込まれている。言い換えれば、フィラー粒子18は、マトリクス16に分散されている。蛍光体層20は、マトリクス22(第1マトリクス)、蛍光体粒子23及びフィラー粒子24(第1フィラー粒子)を有する。マトリクス22は、各粒子間に存在している。蛍光体粒子23は、マトリクス22に埋め込まれている。言い換えれば、蛍光体粒子23は、マトリクス22に分散されている。
【0100】
基板11の構成は、第1実施形態で説明した通りである。基板11は、図2を参照して説明した基板12に置き換えられてもよい。
【0101】
薄膜15は、光散乱層19を形成するための下地層として機能する。光散乱層19のマトリクス16が結晶質であるとき、薄膜15は、マトリクス16の結晶成長過程における種結晶として機能する。つまり、薄膜15は、単結晶薄膜又は多結晶薄膜である。マトリクス16がZnO単結晶又はZnO多結晶によって構成されているとき、薄膜15は、ZnO単結晶薄膜又はZnO多結晶薄膜でありうる。ただし、基板本体13が種結晶の機能を発揮できる場合、薄膜15は省略されていてもよい。例えば、基板本体13が結晶質のGaN又は結晶質のZnOによって構成されているとき、結晶質のZnOによって構成されたマトリクス16を基板本体13の上に直接形成することができる。マトリクス16が結晶質でないときにも、薄膜15は省略されうる。
【0102】
光散乱層19において、フィラー粒子18は、マトリクス16に分散されている。図8において、フィラー粒子18は、互いに離れている。ただし、フィラー粒子18が互いに接していてもよい。例えば、フィラー粒子18は、石垣のように積まれていてもよい。
【0103】
フィラー粒子18は、例えば無機粒子であり、典型的には金属酸化物でできた粒子である。フィラー粒子18は、実質的に金属酸化物からなっていてもよい。金属酸化物の多くは、化学的に安定であり、蛍光を殆ど放射しないので、フィラー粒子18の材料として適している。
【0104】
フィラー粒子18に励起光が照射されたとき、フィラー粒子18は、蛍光の光を放射しないか、無視できる強度の蛍光の光のみを放射する。一例において、フィラー粒子18は、SiO2粒子及びTiO2粒子から選ばれる少なくとも1つを含む。これらの粒子は、上記の要件を満たし、化学的に安定であり、安価である。フィラー粒子18の形状も限定されない。フィラー粒子18の形状は、球状であってもよく、鱗片状であってもよく、繊維状であってもよい。
【0105】
マトリクス16は、例えば、樹脂、ガラス又は他の無機材料によって構成されている。樹脂の例には、シリコーン樹脂が含まれる。他の無機材料の例には、Al23、ZnO及びSiO2が含まれる。他の無機材料は、結晶質であってもよい。マトリクス16の材料として、ZnOが適している。ZnOは高い熱伝導性を有するので、ZnOがマトリクス16の材料として使用されていると、蛍光体層20の熱を外部(主に基板11)に逃がしやすい。
【0106】
マトリクス16の材料としてのZnOは、詳細には、ZnO単結晶又はc軸に配向したZnO多結晶である。ZnOは、ウルツ鉱型の結晶構造を有する。「c軸に配向したZnO」とは、基板11の主面(最も広い面積を有する面)に平行な面がc面であることを意味する。
【0107】
c軸に配向したZnO多結晶は、c軸に配向した複数の柱状の結晶粒を含む。c軸に配向したZnO多結晶において、c軸方向の結晶粒界は少ない。「柱状の結晶粒がc軸に配向している」とは、c軸方向のZnOの成長がa軸方向のZnOの成長よりも速く、基板11の上に縦長のZnO結晶粒が形成されていることを意味する。ZnO結晶粒のc軸は、基板11の法線方向に平行である。あるいは、基板11の法線方向に対するZnO結晶粒のc軸の傾きが4°以下である。
【0108】
蛍光体層20の構成は、第1実施形態で説明した通りである。
【0109】
蛍光体層20のフィラー粒子24として、光散乱層19のフィラー粒子18と同じものを使用できる。もちろん、蛍光体層20のフィラー粒子24の材料組成が光散乱層19のフィラー粒子18の材料組成と異なっていてもよい。蛍光体層20のフィラー粒子24の平均粒径が光散乱層19のフィラー粒子18の平均粒径と異なっていてもよい。
【0110】
本実施形態において、蛍光体層20のマトリクス22の材料組成は、光散乱層19のマトリクス16の材料組成に等しい。このような構成によれば、光散乱層19の線膨張係数と蛍光体層20の線膨張係数との差に起因して、光散乱層19と蛍光体層20との間で剥離が生じることを防止できる。また、光散乱層19と蛍光体層20との間の熱抵抗が極めて小さいので、蛍光体層20で生じた熱を基板11に効率よく逃がすことができる。
【0111】
例えば、マトリクス16及び22は、ともに結晶質の材料によって構成されている。この場合、光散乱層19のマトリクス16を種結晶として利用して、蛍光体層22のマトリクス22を成長させることができる。つまり、界面を生じさせることなく、マトリクス16とマトリクス22とを連続的に形成することができる。結晶質の材料は、例えばZnOである。マトリクス16及び22の材料としてのZnOは、詳細には、ZnO単結晶又はc軸に配向したZnO多結晶である。
【0112】
光散乱層19において、マトリクス16の屈折率は、フィラー粒子18の屈折率と異なっている。このような構成によれば、励起光及び蛍光体粒子23から放射された光が光散乱層19において様々な方向に散乱されるため、一定方向にのみ光が伝播する導波が抑制される。この場合、励起光が照射された部分以外の部分において蛍光が発生しにくいので、高いコントラストが得られる。波長変換部材90の内部での光の導波を抑制することによって、輝度及び発光効率を犠牲にすることなく、高いコントラストにて光を生成することができる。
【0113】
光散乱層19において、マトリクス16とフィラー粒子18との間の屈折率差は、例えば0.3以上である。このような構成によれば、波長変換部材90の内部における光の散乱確率が上がり、より高いコントラストを達成できる。屈折率差の上限値は特に限定されず、例えば、1.3である。
【0114】
光散乱層19に関して、マトリクス16の材料とフィラー粒子18の材料との組み合わせは、例えば、次の通りである。マトリクス16がZnO(n=1.95)であり、フィラー粒子18がSiO2(n=1.45)である。マトリクス16がZnOであり、フィラー粒子18がTiO2(n=2.72)である。マトリクス16がZnOであり、フィラー粒子18がSiO2及びTiO2である。マトリクス16がシリコーン樹脂(n=1.40)であり、フィラー粒子18がTiO2である。マトリクス16がシリコーン樹脂であり、フィラー粒子18がBN(n=2.17)である。マトリクス16がシリコーン樹脂であり、フィラー粒子18がAlN(n=2.20)である。
【0115】
屈折率は、ナトリウムのD線(589.3nm)を用い、臨界角法によって測定されうる。本開示において、マトリクス16の屈折率には、マトリクス16を構成する材料と同じ材料で作製された試験片の測定値が使用されうる。同様に、フィラー粒子18の屈折率には、フィラー粒子18を構成する材料と同じ材料で作製された試験片の測定値が使用されうる。
【0116】
フィラー粒子18の平均粒径は、例えば、0.10〜50.0μmの範囲にある。フィラー粒子18の平均粒径は、蛍光体粒子23の平均粒径と同じ方法によって測定されうる。フィラー粒子18の平均粒径は、蛍光体粒子23の平均粒径よりも小さいことが望ましい。このような構成によれば、フィラー粒子18の合計の表面積が十分に確保されるので、波長変換部材90の内部における光の散乱確率が上がり、より高いコントラストを達成できる。
【0117】
光散乱層19において、マトリクス16の熱伝導率は、例えば、フィラー粒子18の熱伝導率よりも高い。このような構成によれば、蛍光体層20の熱が速やかに基板11に伝導されるので、蛍光体層20の温度上昇が抑制され、高い発光効率を達成できる。フィラー粒子18の熱伝導率λ1に対するマトリクス16の熱伝導率λ2の比率(λ2/λ1)は、例えば、2.0以上である。この効果を十分に得るために、光散乱層19において、マトリクス16の体積は、フィラー粒子18の合計体積よりも大きいことが望ましい。
【0118】
光散乱層19の厚さは、例えば、1.0〜100μmの範囲にある。光散乱層19の厚さが適切に調整されていると、蛍光体層20から基板11への光の透過を防止しつつ、蛍光体層20と基板11との間の熱抵抗の増加も抑制されうる。
【0119】
光散乱層19の体積Vに対するマトリクス16の体積V1の比率(V1/V)は、例えば、0.30〜0.90の範囲にある。光散乱層19の体積Vに対するフィラー粒子18の体積V2の比率(V2/V)は、例えば、0.10〜0.70の範囲にある。
【0120】
蛍光体層20の体積vに対するマトリクス22の体積v1の比率(v1/v)は、例えば、0.30〜0.80の範囲にある。蛍光体層20の体積vに対する蛍光体粒子23の体積v2の比率(v2/v)は、例えば、0.20〜0.70の範囲にある。
【0121】
光散乱層19において、フィラー粒子18は、熱伝導性に優れていることが望ましい。この観点において、フィラー粒子18としてのSiO2粒子には改善の余地がある。例えば、表面がSiO2被膜によって被覆されているAl23粒子は、熱伝導性及び屈折率の両方の要求を満たす。Al23の屈折率は1.77であり、Al23粒子を本開示の波長変換部材に使用することは難しい。表面がSiO2被膜によって被覆されているAl23粒子は、見かけ上、SiO2の屈折率(n=1.45)を示すので、本開示の波長変換部材に好適に使用できる。Al23粒子の表面の全部がSiO2被膜によって被覆されていてもよいし、Al23粒子の表面の一部のみがSiO2被膜によって被覆されていてもよい。このようなフィラー粒子18は、例えば、ゾルゲル法で作製することができる。具体的には、シリコンアルコキシドなどの前駆体とAl23粒子とを含む混合ゾルを調製する。混合ゾルを濾過した後、濾過物を乾燥及び焼成することによって、SiO2被膜によって被覆されたAl23粒子が得られる。
【0122】
次に、波長変換部材90の製造方法を説明する。
【0123】
光散乱層19のマトリクス16及び蛍光体層20のマトリクス22が樹脂によって構成されている場合、次の方法によって波長変換部材90を製造できる。まず、樹脂及び溶媒を含む溶液にフィラー粒子18を混合し、塗布液を調製する。基板11の上に塗膜が形成されるように基板11に塗布液を塗布する。塗膜を乾燥させる又は塗膜を硬化させることによって、基板11の上に光散乱層19が形成される。次に、樹脂及び溶媒を含む溶液に蛍光体粒子23及びフィラー粒子24を混合し、塗布液を調製する。光散乱層19の上に塗膜が形成されるように光散乱層19を有する基板11に塗布液を塗布する。塗膜を乾燥させる又は塗膜を硬化させることによって、光散乱層19の上に蛍光体層20が形成される。これにより、波長変換部材90が得られる。
【0124】
光散乱層19のマトリクス16及び蛍光体層20のマトリクス22がZnOによって構成されている場合、例えば、ゾルゲル法によって波長変換部材90を製造できる。まず、亜鉛アルコキシドなどの前駆体及びフィラー粒子18を含む混合ゾルを調製する。基板11の上に塗膜が形成されるように基板11に混合ゾルを塗布する。塗膜をゲル化させ、焼成することによって、基板11の上に光散乱層19が形成される。次に、亜鉛アルコキシドなどの前駆体、蛍光体粒子23及びフィラー粒子24を含む混合ゾルを調製する。光散乱層19の上に塗膜が形成されるように光散乱層19を有する基板11に混合ゾルを塗布する。塗膜をゲル化させ、焼成することによって、光散乱層19の上に蛍光体層20が形成される。これにより、波長変換部材90が得られる。
【0125】
光散乱層19のマトリクス16及び蛍光体層20のマトリクス22がZnO単結晶又はc軸に配向したZnO多結晶である場合、溶液成長法によって波長変換部材90を製造できる。まず、基板11を準備する。基板本体13の上に薄膜15としての結晶性のZnO薄膜を形成する。ZnO薄膜を形成する方法としては、電子ビーム蒸着法、反応性プラズマ蒸着法、スパッタリング法、パルスレーザ蓄積法などの真空成膜法が用いられる。薄膜15は、ZnO単結晶薄膜又はZnO多結晶薄膜でありうる。次に、基板11の上(薄膜15の上)にフィラー粒子18を含む層を形成する。例えば、フィラー粒子18を含む分散液を調製する。基板11を分散液中に配置し、電気泳動法を用いてフィラー粒子18を基板11の上に堆積させる。これにより、フィラー粒子18を含む層を基板11の上に形成することができる。基板11を分散液中に配置し、フィラー粒子18を沈降させることによって基板11の上にフィラー粒子18を含む層を形成することもできる。フィラー粒子18を含む塗布液を用い、印刷法などの薄膜形成方法によってフィラー粒子18を含む層を基板11の上に形成することもできる。
【0126】
次に、Znを含有する溶液を使用した溶液成長法によって、粒子間にマトリクス16を形成する。これにより、基板11の上に光散乱層19が形成される。溶液成長法には、大気圧下で行われる化学溶液析出法(chemical bath deposition)、大気圧以上の圧力下で行う水熱合成法(hydrothermal synthesis)、電圧又は電流を印加する電解析出法(electrochemical deposition)等が用いられる。結晶成長用の溶液として、例えば、ヘキサメチレンテトラミンを含有する硝酸亜鉛の水溶液が用いられる。結晶質のマトリクス16は、薄膜15の上にエピタキシャル成長する。
【0127】
光散乱層19と同じ方法によって、光散乱層19の上に蛍光体層20を形成する。これにより、波長変換部材90が得られる。光散乱層19のマトリクス16が種結晶としての機能を果たすので、追加の下地層が不要であり、蛍光体層20を効率的に形成することができる。
【0128】
光散乱層19のマトリクス16の材料組成が蛍光体層20のマトリクス22の材料組成と異なっている場合、上記の方法を組み合わせることによって、光散乱層19及び蛍光体層20を基板11の上に形成することができる。
【0129】
本実施形態によれば、蛍光体層20の内部における光の散乱効果に加え、光散乱層19における光の散乱効果も得られる。
【0130】
(第5実施形態)
図9に示すように、本実施形態に係る波長変換部材100は、基板11、光散乱層19及び蛍光体層50を備えている。蛍光体層50は、マトリクス22及び蛍光体粒子23を有する。蛍光体粒子23の表面は、それぞれ、表面被覆層25によって被覆されている。
【0131】
蛍光体層50の構成は、第2実施形態で説明した通りである。表面被覆層25の材料組成は、フィラー粒子18の材料組成と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0132】
(第6実施形態)
図10に示すように、本実施形態に係る波長変換部材110は、基板11、光散乱層19及び蛍光体層80を備えている。蛍光体層80は、マトリクス22、蛍光体粒子23及びフィラー粒子24を有する。蛍光体粒子23の表面は、それぞれ、表面被覆層25によって被覆されている。本実施形態は、第4実施形態と第5実施形態との組み合わせである。本実施形態によれば、第4実施形態の有利な効果と第5実施形態の有利な効果とが重畳的に得られる。基板11は、図2を参照して説明した基板12に置き換えられてもよい。
【0133】
(参考例)
図11に示すように、参考例に係る波長変換部材120は、基板11、光散乱層19及び蛍光体層21を備えている。蛍光体層21は、マトリクス22及び蛍光体粒子23を有する。波長変換部材120の構成は、蛍光体層21にフィラー粒子24が含まれていないことを除き、波長変換部材90(図8)の構成と同じである。
【0134】
励起光及び蛍光体粒子23から放射された光が光散乱層19において散乱されるので、波長変換部材120の内部において光が導波しにくい。この場合、励起光が照射された部分以外の部分において蛍光が発生しにくいので、高いコントラストが得られる。波長変換部材120の内部での光の導波を抑制することによって、輝度及び発光効率を犠牲にすることなく、高いコントラストにて光を生成することができる。
【0135】
(光源の実施形態)
図12に示すように、本実施形態の光源200は、波長変換部材10及び発光素子71を備えている。発光素子71は、波長変換部材10の基板11に向かい合っている。発光素子71の光が基板11を透過して蛍光体層20に到達する。つまり、光源200は、透過型光源である。波長変換部材10に代えて、波長変換部材40及び70も使用可能である。波長変換部材10,40及び70から選ばれる2種以上の組み合わせを光源200に使用することも可能である。
【0136】
発光素子71は、励起光を放射する。発光素子71は、典型的には、半導体発光素子である。半導体発光素子は、例えば、LED、スーパールミネッセントダイオード(SLD)又はレーザーダイオード(LD)である。発光素子71としてLDを使用したとき、本開示の波長変換部材10が特に高い効果を発揮する。LDの光は指向性に優れ、波長変換部材10の特定の部分にのみ照射されうる。つまり、LDは、高いコントラストを得ることに適している。LDと本開示の波長変換部材10とを組み合わせることによって、優れたコントラスト性能を有する光源200が得られる。
【0137】
発光素子71は、単一のLDによって構成されていてもよく、複数のLDを光学的に結合された複数のLDによって構成されていてもよい。発光素子71は、例えば、青色光を放射する。本開示において、青色光は、420〜470nmの範囲のピーク波長を有する光である。
【0138】
光源200は、光学系72をさらに備えている。発光素子71から放射された励起光の光路上に光学系72が位置していてもよい。光学系72は、レンズ、ミラー、光ファイバーなどの光学部品を含む。
【0139】
図13に示すように、本実施形態の光源202は、波長変換部材30及び発光素子71を備えている。発光素子71と波長変換部材30の基板11との間に波長変換部材30の蛍光体層20が位置している。つまり、光源202は、反射型光源である。波長変換部材30に代えて、波長変換部材60,90,100,110及び120も使用可能である。波長変換部材60,90,100,110及び120から選ばれる2種以上の組み合わせを光源202に使用することも可能である。
【0140】
(照明装置の実施形態)
図14に示すように、本実施形態の照明装置300は、光源200及び光学部品74を備えている。光学部品74は、光源200から放射された光を前方に導くための部品であり、具体的には、リフレクタである。光学部品74は、例えば、Al、Agなどの金属膜又は表面に保護膜が形成されたAl膜を有する。光源200の前方には、フィルタ75が設けられていてもよい。フィルタ75は、光源200の発光素子からのコヒーレントな青色光が直接外部に出ないように、青色光を吸収又は散乱させる。照明装置300は、いわゆるリフレクタータイプであってもよく、プロジェクタータイプであってもよい。照明装置300は、例えば、車両用ヘッドランプである。
【0141】
図15に示すように、反射型光源である光源202を用いて照明装置302を構成することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0142】
本開示の波長変換部材を備えた光源は、シーリングライトなどの一般照明装置;スポットライト、スタジアム用照明、スタジオ用照明などの特殊照明装置;ヘッドランプなどの車両用照明装置;プロジェクタ、ヘッドアップディスプレイ、デジタルカメラ、テレビ受像機などの画像装置;内視鏡などの医療器具;パーソナルコンピュータ、タブレットPC、スマートフォン、携帯電話機などの情報機器に使用されうる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15

【手続補正書】
【提出日】2019年9月27日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1マトリクスと、
前記第1マトリクスに埋め込まれた蛍光体粒子と、
前記第1マトリクスに埋め込まれた第1フィラー粒子、及び、前記蛍光体粒子の表面をそれぞれ被覆している表面被覆層からなる群より選ばれる少なくとも1つと、
を備え、
前記第1フィラー粒子の平均粒径が前記蛍光体粒子から放射された蛍光の光のピーク波長以上であり、
前記第1マトリクスの屈折率がn1であり、前記蛍光体粒子の屈折率がn2であり、前記第1フィラー粒子の屈折率がn3であり、前記表面被覆層の屈折率がn4であるとき、
|n3−n1|>|n1−n2|、及び、|n4−n1|>|n1−n2|からなる群より選ばれる少なくとも1つの関係を満足する、波長変換部材。
【請求項2】
|n3−n1|−|n1−n2|≧0.3を満足する、請求項1に記載の波長変換部材。
【請求項3】
前記第1フィラー粒子の平均粒径が前記蛍光体粒子の平均粒径よりも小さい、請求項1又は2に記載の波長変換部材。
【請求項4】
前記第1フィラー粒子が金属酸化物を含む、請求項1〜のいずれか1項に記載の波長変換部材。
【請求項5】
|n4−n1|−|n1−n2|≧0.3を満足する、請求項1〜のいずれか1項に記載の波長変換部材。
【請求項6】
前記表面被覆層の平均厚さが前記蛍光体粒子の平均粒径よりも小さい、請求項1〜のいずれか1項に記載の波長変換部材。
【請求項7】
前記表面被覆層の平均厚さが前記蛍光体粒子から放射された蛍光の光のピーク波長以上である、請求項1〜のいずれか1項に記載の波長変換部材。
【請求項8】
前記第1マトリクスがZnO単結晶又はc軸に配向したZnO多結晶によって構成されている、請求項1〜のいずれか1項に記載の波長変換部材。
【請求項9】
基板と、
前記基板によって支持された蛍光体層と、
前記基板と前記蛍光体層との間に配置された光散乱層と、
をさらに備え、
前記蛍光体層は、前記第1マトリクスと、前記蛍光体粒子と、前記第1フィラー粒子及び前記表面被覆層からなる群より選ばれる少なくとも1つと、を含み、
前記光散乱層は、第2マトリクスと、前記第2マトリクスに埋め込まれた第2フィラー粒子とを含み、
前記第2マトリクスの屈折率が前記第2フィラー粒子の屈折率と異なる、請求項1〜のいずれか1項に記載の波長変換部材。
【請求項10】
前記第2マトリクスと前記第2フィラー粒子との間の屈折率差が0.3以上である、請求項に記載の波長変換部材。
【請求項11】
前記第2マトリクスの熱伝導率が前記第2フィラー粒子の熱伝導率よりも高い、請求項又は10に記載の波長変換部材。
【請求項12】
前記光散乱層の前記第2マトリクスの材料組成が前記蛍光体層の前記第1マトリクスの材料組成に等しい、請求項11のいずれか1項に記載の波長変換部材。
【請求項13】
前記第2フィラー粒子は、SiO2粒子及びTiO2粒子からなる群より選ばれる少なくとも1つを含む、請求項12のいずれか1項に記載の波長変換部材。
【請求項14】
前記第2マトリクスがZnO単結晶又はc軸に配向したZnO多結晶によって構成されている、請求項13のいずれか1項に記載の波長変換部材。
【請求項15】
発光素子と、
前記発光素子から照射された励起光を受けて蛍光を放射する請求項1〜14のいずれか1項に記載の波長変換部材と、
を備えた、光源。
【請求項16】
発光素子と、
前記発光素子から照射された励起光を受けて蛍光を放射する請求項14のいずれか1項に記載の波長変換部材と、
を備え、
前記発光素子と前記波長変換部材の前記基板との間に前記波長変換部材の前記蛍光体層及び前記光散乱層が位置している、光源。
【請求項17】
前記発光素子がレーザーダイオードである、請求項15又は16に記載の光源。
【請求項18】
請求項1517のいずれか1項に記載の光源と、
前記光源から放射された光を外部に導く光学部品と、
を備えた、照明装置。
【国際調査報告】