再表2018-159595IP Force 特許公報全文掲載

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2018年9月7日
【発行日】2019年12月19日
(54)【発明の名称】ヒドロシリル化反応、水素化反応およびヒドロシラン還元反応用触媒
(51)【国際特許分類】
   B01J 31/22 20060101AFI20191122BHJP
   C07F 7/08 20060101ALI20191122BHJP
   C07F 7/18 20060101ALI20191122BHJP
   C07C 211/27 20060101ALI20191122BHJP
   C07C 209/50 20060101ALI20191122BHJP
   C07C 5/03 20060101ALI20191122BHJP
   C07C 9/15 20060101ALI20191122BHJP
   C07C 15/073 20060101ALI20191122BHJP
【FI】
   B01J31/22 Z
   C07F7/08 X
   C07F7/18 C
   C07F7/18 X
   C07C211/27
   C07C209/50
   C07C5/03
   C07C9/15
   C07C15/073
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】41
【出願番号】特願2019-503010(P2019-503010)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2018年2月27日
(31)【優先権主張番号】特願2017-36946(P2017-36946)
(32)【優先日】2017年2月28日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)委託者 国立研究開発法人科学技術振興機構,事業名 戦略的創造研究推進事業チーム型研究(CREST),研究題目 有機合成用鉄触媒の高機能化,研究担当者 国立大学法人九州大学 先導物質化学研究所 教授 永島英夫ほか,研究期間 平成23年10月1日〜平成29年3月31日。産業技術力強化法第19条の規定の適用を受ける特許出願。
(71)【出願人】
【識別番号】504145342
【氏名又は名称】国立大学法人九州大学
(71)【出願人】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】特許業務法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永島 英夫
(72)【発明者】
【氏名】真川 敦嗣
(72)【発明者】
【氏名】川端 将真
(72)【発明者】
【氏名】野田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】作田 晃司
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H049
【Fターム(参考)】
4G169AA06
4G169BA21A
4G169BA21B
4G169BA27A
4G169BA27B
4G169BC66A
4G169BC66B
4G169BC67A
4G169BC67B
4G169BC68A
4G169BC68B
4G169BE01A
4G169BE01B
4G169BE13A
4G169BE18A
4G169BE18B
4G169BE21A
4G169BE32A
4G169BE36A
4G169BE37A
4G169CB02
4G169CB25
4G169CB70
4H006AA02
4H006AC52
4H006BA19
4H006BA20
4H006BA46
4H006BC10
4H049VN01
4H049VP01
4H049VP02
4H049VQ78
4H049VR23
4H049VR41
4H049VS78
4H049VT16
4H049VT30
(57)【要約】
式(1)の化合物からなり、脂肪族不飽和結合に対するヒドロシリル化反応もしくは水素化反応、または炭素−酸素不飽和結合もしくは炭素−窒素不飽和結合に対するヒドロシラン還元反応から選ばれる少なくとも1種の反応に活性を有する触媒。
Mn(L)m (1)
{Mは酸化数が0価のFe、Co、またはNiを、Lは下記式(2)で示されるイソシアニド配位子を、nは1〜8の整数を、mは2〜12の整数を表す。
(CN)x−R1 (2)
(R1はハロゲン原子で置換されていてもよく、O、N、SおよびSiから選ばれる原子が1個以上介在してもよい、炭素原子数1〜30の1〜3価の有機基を、xは1〜3の整数を表す。)}
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で示される化合物からなり、脂肪族不飽和結合に対するヒドロシリル化反応もしくは水素化反応、または炭素−酸素不飽和結合もしくは炭素−窒素不飽和結合に対するヒドロシラン還元反応から選ばれる少なくとも1種の反応に活性を有する触媒。
Mn(L)m (1)
{式中、Mは、酸化数が0価のFe、Co、またはNiを表し、Lは、下記式(2)で示されるイソシアニド配位子を表し、nは、1〜8の整数を表し、mは、2〜12の整数を表す。
(CN)x−R1 (2)
(式中、R1は、ハロゲン原子で置換されていてもよく、酸素、窒素、硫黄、およびケイ素から選ばれる原子が1個またはそれ以上介在してもよい、炭素原子数1〜30の1〜3価の有機基を表し、xは、1〜3の整数を表す。)}
【請求項2】
前記式(2)において、xが1である請求項1記載の触媒。
【請求項3】
前記式(1)において、n=1のときm=2、4または5であり、n=2〜4のときm=6〜10の整数であり、n=8のときm=12である請求項1または2記載の触媒。
【請求項4】
前記式(1)において、MがFeのとき、n=1、m=5であり、MがCoのとき、n=2、m=8であり、MがNiのとき、n=1、m=2もしくは4、またはn=3、4もしくは8、m=4、6、7もしくは12である請求項1〜3のいずれか1項記載の触媒。
【請求項5】
前記式(1)におけるMが、FeまたはCoである請求項1〜4のいずれか1項記載の触媒。
【請求項6】
前記式(2)におけるR1が、炭素原子数1〜30の1価の炭化水素基である請求項1〜5のいずれか1項記載の触媒。
【請求項7】
前記式(2)におけるR1が、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数3〜20のシクロアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基、および炭素原子数7〜30のアルキルアリール基から選ばれる少なくとも1種の炭化水素基である請求項6記載の触媒。
【請求項8】
前記式(2)におけるR1が、t−ブチル基、1−アダマンチル基、メシチル基、フェニル基、2,6−ジメチルフェニル基、および2,6−ジイソプロピルフェニル基から選ばれる少なくとも1種の炭化水素基である請求項7記載の触媒。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項記載の触媒を用いることを特徴とする、脂肪族不飽和結合含有化合物とSi−H結合含有化合物とのヒドロシリル化反応物の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか1項記載の触媒を用いることを特徴とする、脂肪族不飽和結合含有化合物の水素化反応物の製造方法。
【請求項11】
前記脂肪族不飽和結合含有化合物が、オレフィン化合物、またはSi原子と結合したアルケニル基を有するシラン化合物もしくはオルガノポリシロキサンである請求項9または10記載の製造方法。
【請求項12】
請求項1〜8のいずれか1項記載の触媒を用いることを特徴とする、炭素−酸素不飽和結合または炭素−窒素不飽和結合を有する化合物のSi−H結合含有化合物による還元反応物の製造方法。
【請求項13】
前記炭素−酸素不飽和結合または炭素−窒素不飽和結合を有する化合物が、アルデヒド化合物、ケトン化合物、アミド化合物またはニトリル化合物である請求項12記載の還元反応物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の金属−イソシアニド錯体からなる触媒に関し、さらに詳述すると、脂肪族不飽和結合に対するヒドロシリル化反応もしくは水素化反応、または炭素−酸素不飽和結合もしくは炭素−窒素不飽和結合に対するヒドロシラン還元反応から選ばれる少なくとも1種の反応に活性を有する触媒
【背景技術】
【0002】
炭素−炭素二重結合や同三重結合を有する化合物に対してSi−H官能性化合物が付加するヒドロシリル化反応は、有機ケイ素化合物を合成する有用な手段であり、工業的にも重要な合成反応である。
このヒドロシリル化反応の触媒としては、Pt、Pd、Rh化合物が知られており、その中でも最も多く用いられているものはSpeier触媒、Karstedt触媒に代表されるPt化合物である。
【0003】
Pt化合物を触媒とする反応の問題点としては、末端オレフィンにSi−H官能性化合物を付加する際、オレフィンが内部転位する副反応が生じることが挙げられる。この系では内部オレフィンに対しては付加反応性を示さず、未反応オレフィンが付加生成物中に残留してしまうことから、反応を完結させるためには、副反応で残留する分を見込んであらかじめ過剰のオレフィンを用いる必要がある。
また、オレフィンの種類によっては、α付加体とβ付加体の選択性が劣るという問題もある。
【0004】
最も大きな問題点は、中心金属であるPt,Pd,Rhはいずれも極めて高価な貴金属元素であるということであり、より安価に使用できる金属化合物触媒が望まれていることから、数多くの研究が進められている。
例えば、鉄−カルボニル錯体(Fe(CO)5、Fe3(CO)12)による反応が知られているが(非特許文献1)、この反応では160℃といった高温下での反応条件、または光照射(非特許文献2)が必要である。
また、これらの鉄−カルボニル錯体では付加反応ではなく、脱水素シリル化生成物が得られるとの報告もある(非特許文献3,特許文献1)。
シクロペンタジエニル基を配位子として有する鉄−カルボニル錯体を使用した、メチルビニルジシロキサンとメチルハイドロジェンジシロキサンの反応例も報告されているが(非特許文献4,特許文献2)、この反応では脱水素シリル化反応も進行するため、付加反応の選択性が低い。
【0005】
ターピリジン系配位子を有する鉄触媒の反応では(非特許文献5)、PhSiH3、Ph2SiH2はオレフィンに対して付加するものの、より有用性の高いトリアルキルシラン類、アルコキシシラン類、シロキサン類はオレフィンに対する付加反応性が乏しい。
同じくターピリジン系配位子とビストリメチルシリルメチル基を有する鉄触媒の反応で、収率良く付加反応物が得られることが報告されている(非特許文献6)ものの、この手法は、先ず触媒前駆体となるターピリジン−鉄錯体を合成し、更に低温下でのビストリメチルシリルメチル基の導入と、触媒合成が容易ではない。
【0006】
ビスイミノピリジン配位子を有するFe錯体も報告されており(非特許文献7,8)、アルコキシシラン類、シロキサン類に対しても温和な条件下で優れた反応性を示すことが開示されている。
しかし、この錯体合成時には、禁水性のナトリウムと毒性の高い水銀からなり、取り扱いに注意を要するNaアマルガムを使用すること(もしくは禁水性のNaBEt3Hを使用すること)、錯体化合物自体の安定性が低く、保存は不活性ガス窒素雰囲気下で低温であることが必要といった問題点がある。
【0007】
キラルなイミノピリジンオキサゾリン配位子を有する鉄錯体も報告されており(非特許文献9)、3級アルケンとPh2SiH2の反応例が示されている。しかしながら、還元剤(NaBHEt3)が必要であり、ジヒドロジフェニルシランは工業的に価値の高い反応基質ではない。
コバルト−カルボニル錯体(Co2(CO)8など)による反応例も報告されているが(非特許文献10〜15)、反応収率、反応モル比の点で満足すべきものではなく、また錯体は毒性の高い一酸化炭素を有しており、取り扱いや保存には、不活性ガス雰囲気かつ低温下である必要がある。
トリアルキルシリル基を置換基として有するコバルト−カルボニル錯体によるオレフィンとトリアルキルシランの反応例も報告されているが(非特許文献16)、収率が低く、また選択性にも乏しい。
【0008】
シクロペンタジエニル基を配位子として有するコバルト−ホスファイト錯体を使用することによるオレフィンとトリアルキルシランの反応(非特許文献17)、N−ヘテロ環状カルベンを配位子として有するコバルト錯体によるオレフィンとトリヒドロフェニルシランの反応(非特許文献18)が報告されているが、錯体化合物の安定性が低く、取り扱いや保存には、不活性ガス雰囲気下、かつ、低温下が必要となる。
β−ジケチミナート基を配位子として有するコバルト触媒による反応例も報告されているが(非特許文献19)、反応基質がトリヒドロフェニルシランでは工業的な利用価値は低い。1−ヘキセンとトリエトキシシランとの反応例も示されているが、触媒量が2モル%必要であり、触媒活性は高くない。
【0009】
触媒前駆体の取扱いが容易であるピリジンジイミン配位子を有するコバルト触媒による反応例も報告されており高い触媒活性を有するが(非特許文献20)、この反応では脱水素シリル化反応も進行するため、微量の脱水素シリル化物が常に混在し、付加生成物の選択性が低い。
ビスシクロオクタテトラエニル鉄とイソシアニド化合物を配位子として用いたヒドロシリル化反応触媒や(非特許文献21)、ピバル酸鉄またはピバル酸コバルトとイソシアニド化合物を配位子として用いたヒドロシリル化反応触媒も報告されているが(非特許文献22)、どちらも触媒活性としてはPt触媒には及ばず、より高い触媒活性を有する触媒の開発が望まれている。
【0010】
また、不飽和化合物としてアルケニルスルフィド誘導体を用いたヒドロシリル化反応は、硫黄元素が触媒毒となるため、報告例が少ないが、Pt触媒を用いた例やRh触媒を用いた例が一部報告されている(非特許文献23,24)。しかし、他の基質に比べて触媒活性が低く、また付加反応物の選択性は低い。
Rh触媒を用いた例では、硫黄元素に隣接した炭素にSiが結合した付加生成物が選択的に得られることを報告しているが(非特許文献25)、触媒活性は低く、またその付加物の選択性は低い。
【0011】
ニッケル錯体触媒も多数報告されている。例えば、ホスフィンを配位子とする触媒(非特許文献26)では選択性に劣り、触媒の保存や取り扱いに注意が必要である。
ビニルシロキサンが配位した触媒(非特許文献27)は、脱水素シリル化生成物が主成分となり、付加反応の選択性は低い。
アリルホスフィンを配位子とする触媒(非特許文献28)は収率が低く、トリヒドロフェニルシランは工業的に価値の高い反応基質ではない。
ビスアミド基を有する触媒(非特許文献29)は、触媒の保存や取り扱いに注意が必要であり、またジヒドロジフェニルシランも工業的に価値の高い反応基質ではない。
N−ヘテロ環状カルベンを配位子として有する触媒(非特許文献30)は、反応の選択性が低く、トリヒドロフェニルシランは工業的な価値が高くない。
【0012】
配位子をターピリジン、ビスイミノピリジン、ビスイミノキノリンとした、鉄、コバルト、ニッケル触媒の例も報告されているが(特許文献3〜6)、上述した非特許文献6〜8と同様に、触媒前駆体の合成、あるいは同前駆体から錯体触媒の合成に至るまでが工業的に容易ではない。
また、ビスイミノキノリン配位子を有する錯体触媒による反応で、触媒の活性化剤としてMg(ブタジエン)・2THF、NaEt3BHを使用する方法が開示されているが(特許文献7)、目的物の収率も満足すべきものではない。
【0013】
オルガノポリシロキサンへの応用を念頭に置いたものとして、ホスフィン配位子を有する触媒(特許文献8)、アリール−アルキル−トリアゼニド基を有する触媒(特許文献9)、コロイド状の触媒(特許文献10)、スルフィド基を配位子とする触媒(特許文献11)、アミノ基、ホスフィノ基、スルフィド基とオルガノシロキサン基を配位子とする触媒(特許文献12)が開示されている。
しかし、反応活性を具体的に例示しているのは高価な金属元素である白金、パラジウム、ロジウム、イリジウムのみであり、コスト的に有利な方法とはいえない。
また、特許文献13,14の実施例で効果が示されているのは公知となっている白金触媒のみであり、他の金属で触媒活性を示す構造については何も示唆していない。
【0014】
カルベンを配位子として有する触媒も開示されている(特許文献15〜17)が、特許文献15ではヒドロシリル化反応への有効性についてはなんら検討されていない。
特許文献16,17にはカルベンとビニルシロキサンを配位子として有する触媒が開示されているが、実施例として記載されているのは白金触媒のみである。
しかも、カルベンを配位子として有する金属触媒は、錯体化合物の保存安定性が低く、取り扱いにも注意を要する。
【0015】
金属錯体を触媒とするのではなく、金属塩と金属に対して配位性のある化合物を混合し、それを触媒として用いる方法も開示されている(特許文献18〜24)。しかし、これらの特許文献では、数例の組み合わせでヒドロシリル化が進行したとされているが、収率の記載等が無く、反応がどの程度効果的に進行しているかは不明である。また、全ての実施例で活性化剤としてイオン性の塩、ヒドリド還元剤を使用しているが、それにもかかわらず殆どの実施例で触媒活性がない。
【0016】
一方、炭素−炭素二重結合を有する化合物であるオレフィンに対して水素分子が付加する水素化反応についても多くの報告がある。例えば、Fe(CO)5を触媒として使用した、熱反応による水素化(非特許文献31)や、光反応による水素化(非特許文献32)が報告されている。しかし、熱反応では高温高圧(180℃28気圧)条件を必要とし、また、光反応は室温下でも進行するものの、どちらも触媒の回転数を示すターンオーバー数(TON)も低く、十分な活性を有しているとは言えない。
【0017】
また、有機アルミニウム化合物を反応助剤とした鉄触媒を用いた反応例(非特許文献33)、グリニャール化合物やリチウムアルミニウムヒドリド化合物と塩化鉄触媒を併用した反応例(非特許文献34,35)が報告されているが、TONは20以下であり、触媒活性は低い。
リン系化合物を配位子として有する鉄触媒も報告されており(非特許文献36)、この系では、室温下で比較的低圧(4気圧)の条件下で反応するものの、ターンオーバー数も十分とは言えない。
1,2−ビス(ジメチルシリル)ベンゼン配位子を有する鉄触媒の例も報告されており(非特許文献37)、室温下常圧で反応が進行するが、触媒合成が容易ではない。
【0018】
ビスイミノピリジン配位子を有する鉄触媒の例も報告されており(非特許文献7)、室温下、比較的低圧(4気圧)条件下でTONが1814と良好な反応性を有している。
また、2,6−ビス(アリールイミダゾール−2−イリデン)ピリジン配位子を有する鉄触媒が報告されているが(非特許文献38)、どちらもビスイミノピリジン配位子を有するFe錯体と同様に合成時の安全性、化合物の安定性等の問題点がある。
【0019】
リン系化合物を配位子として有するコバルト触媒も報告されており(非特許文献39)、この系では室温下常圧で反応が進行するが、触媒合成が容易ではない。
ビス(メシチルベンズイミダゾール−2−イリデン)フェニル配位子を有するコバルト触媒が報告されているが(非特許文献40)、2,6−ビス(アリールイミダゾール−2−イリデン)ピリジン配位子を有するFe錯体と同様に合成時の安全性、化合物の安定性等の問題点があるうえ、TONは50であり、触媒活性も十分とは言えない。
【0020】
さらに、炭素−酸素または炭素−窒素二重結合、および炭素−窒素三重結合を有する化合物を還元する方法としては、アルミニウムやホウ素の水素化合物や貴金属触媒存在下で水素を用いる方法がある。カルボニル化合物のうち、ケトンやアルデヒドについては、温和な条件で反応を進行させ得る、安定で取り扱いやすいヒドリド反応剤や水素化用貴金属触媒が知られているが、エステルやアミドのようなカルボン酸誘導体の還元には、リチウムアルミニウムヒドリド、ボラン等の強力な還元剤を用いる方法が主に用いられている(非特許文献41)。しかし、これらの還元剤は発火性、禁水性物質であるため取り扱いに難がある。また、反応後のアルミニウム、あるいはホウ素化合物を目的物から除去する時にも取り扱いに注意が必要である。
【0021】
空気中で安定かつ取り扱いが容易なヒドロシラン化合物、メチルハイドロジェンポリシロキサンを還元剤として使用する方法が数多く報告されているが、反応には強い酸またはルイス酸の添加や、高価な貴金属触媒を必要とする。最近、安価な鉄、コバルト、ニッケルを触媒とするカルボニル化合物のヒドロシラン還元反応が報告されており、そのうちの一部は、従来法では過酷な条件を必要とするアミドの還元反応に適用した例もある。具体的な例として非特許文献37,42〜49が挙げられるが、より高いターンオーバー数を示す高活性触媒が望まれている。
【0022】
また一方で、鉄−、コバルト−またはニッケル−イソシアニド錯体が、非特許文献50〜62において知られているが、これらは錯体の合成と構造解析および反応が主であり、脂肪族不飽和結合に対するヒドロシリル化反応もしくは水素化反応、または炭素−酸素不飽和結合もしくは炭素−窒素不飽和結合に対するヒドロシラン還元反応の触媒として利用した例はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【特許文献1】国際公開第2013/081794号
【特許文献2】国際公開第2010/016416号
【特許文献3】特表2012−532885号公報
【特許文献4】特表2012−532884号公報
【特許文献5】特表2013−544824号公報
【特許文献6】特表2014−502271号公報
【特許文献7】特表2014−503507号公報
【特許文献8】特開平6−136126号公報
【特許文献9】特開平6−263780号公報
【特許文献10】特開平1−315344号公報
【特許文献11】特許第3174616号公報
【特許文献12】特開平7−149780号公報
【特許文献13】特開2001−131231号公報
【特許文献14】特許第4007467号公報
【特許文献15】特許第3599669号公報
【特許文献16】特許第3854151号公報
【特許文献17】特許第4249702号公報
【特許文献18】国際公開第2013/043846号
【特許文献19】国際公開第2013/043783号
【特許文献20】国際公開第2013/043912号
【特許文献21】国際公開第2014/021908号
【特許文献22】国際公開第2013/081794号
【特許文献23】国際公開第2013/043785号
【特許文献24】国際公開第2013/043787号
【非特許文献】
【0024】
【非特許文献1】A. N. Nesmeyanov, et al., Tetrahedron, 1962, 17, 61
【非特許文献2】M. S. Wrighton, et al., J. Organomet. Chem., 1977, 128, 345
【非特許文献3】F. Kakiuchi, et al., J. Organomet., Chem., 1993, 456, 45
【非特許文献4】H. Nakazawa, et al., J. Am. Chem. Soc., 2012, 134, 804
【非特許文献5】H. Nakazawa, et al., Organometallics, 2012, 31, 3825
【非特許文献6】P. J. Chirik, et al., Organometallics, 2012, 31, 4886
【非特許文献7】P. J. Chirik, et al., J. Am. Chem. Soc., 2004, 126, 13794
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【非特許文献61】E. L.Muetterties, et al.,Inorg.Chem.,1980, 19, 1552
【非特許文献62】D. Lentz, et al.,J.Fluorine Chem.,1998, 89, 73
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、脂肪族不飽和結合に対するヒドロシリル化反応もしくは水素化反応、または炭素−酸素不飽和結合もしくは炭素−窒素不飽和結合に対するヒドロシラン還元反応において優れた触媒活性を発揮し得る触媒、およびこの触媒を用いた各種化合物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明者らは、目的を達成するため鋭意検討を行った結果、所定の鉄−、コバルト−、またはニッケル−イソシアニド錯体が、脂肪族不飽和結合に対するヒドロシリル化反応もしくは水素化反応、または炭素−酸素不飽和結合もしくは炭素−窒素不飽和結合に対するヒドロシラン還元反応において優れた触媒活性を発揮し得、温和な条件下で各反応が進行することを見出し、本発明を完成した。
【0027】
すなわち、本発明は、
1. 下記式(1)で示される化合物からなり、脂肪族不飽和結合に対するヒドロシリル化反応もしくは水素化反応、または炭素−酸素不飽和結合もしくは炭素−窒素不飽和結合に対するヒドロシラン還元反応から選ばれる少なくとも1種の反応に活性を有する触媒、
Mn(L)m (1)
{式中、Mは、酸化数が0価のFe、Co、またはNiを表し、Lは、下記式(2)で示されるイソシアニド配位子を表し、nは、1〜8の整数を表し、mは、2〜12の整数を表す。
(CN)x−R1 (2)
(式中、R1は、ハロゲン原子で置換されていてもよく、酸素、窒素、硫黄、およびケイ素から選ばれる原子が1個またはそれ以上介在してもよい、炭素原子数1〜30の1〜3価の有機基を表し、xは、1〜3の整数を表す。)}
2. 前記式(2)において、xが1である1の触媒、
3. 前記式(1)において、n=1のときm=2、4または5であり、n=2〜4のときm=6〜10の整数である1または2の触媒、
4. 前記式(1)において、MがFeのとき、n=1、m=5であり、MがCoのとき、n=2、m=8であり、MがNiのとき、n=1、m=2もしくは4、またはn=3、4もしくは8、m=4、6、7もしくは12である1〜3のいずれかの触媒、
5. 前記式(1)におけるMが、FeまたはCoである1〜4のいずれかの触媒、
6. 前記式(2)におけるR1が、炭素原子数1〜30の1価の炭化水素基である1〜5のいずれかの触媒、
7. 前記式(2)におけるR1が、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数3〜20のシクロアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基、および炭素原子数7〜30のアルキルアリール基から選ばれる少なくとも1種の炭化水素基である6の触媒、
8. 前記式(2)におけるR1が、t−ブチル基、1−アダマンチル基、メシチル基、フェニル基、2,6−ジメチルフェニル基、および2,6−ジイソプロピルフェニル基から選ばれる少なくとも1種の炭化水素基である7の触媒、
9. 1〜8のいずれかの触媒を用いることを特徴とする、脂肪族不飽和結合含有化合物とSi−H結合含有化合物とのヒドロシリル化反応物の製造方法、
10. 1〜8のいずれかの触媒を用いることを特徴とする、脂肪族不飽和結合含有化合物の水素化反応物の製造方法、
11. 前記脂肪族不飽和結合含有化合物が、オレフィン化合物、またはSi原子と結合したアルケニル基を有するシラン化合物もしくはオルガノポリシロキサンである9または10の製造方法、
12. 1〜8のいずれかの触媒を用いることを特徴とする、炭素−酸素不飽和結合または炭素−窒素不飽和結合を有する化合物のSi−H結合含有化合物による還元反応物の製造方法、
13. 前記炭素−酸素不飽和結合または炭素−窒素不飽和結合を有する化合物が、アルデヒド化合物、ケトン化合物、アミド化合物またはニトリル化合物である12の還元反応物の製造方法
を提供する。
【発明の効果】
【0028】
本発明の鉄−、コバルト−、またはニッケル−イソシアニド錯体(以下、単にイソシアニド錯体と略す)からなる反応用触媒は、人体に毒性の高いカルボニル配位子を有しておらず、また、錯体の熱的安定性、空気中での安定性が高い。
本発明のイソシアニド錯体を触媒として用い、脂肪族不飽和結合含有化合物とSi−H基を有するシランもしくは(ポリ)シロキサンとのヒドロシリル化反応を行うと、室温〜100℃以下の条件下で付加反応が可能になる。特に工業的に有用な(ポリ)シロキサン、およびトリアルコキシシラン、ジアルコキシシランとの付加反応も良好に進行する。なお、公知文献では同反応において、不飽和結合への付加反応と、脱水素シリル化反応による不飽和結合含有化合物が生成する反応がたびたび同時に進行することが示されているが、本発明の触媒を用いると選択的に不飽和結合への付加反応が進行する。
しかも、従来の触媒では困難であった内部オレフィンとの反応において、不飽和結合の末端への移動をともなった付加反応物を得ることが可能となる。
また、本発明の触媒を用いることで、アルケニルスルフィド等のヒドロシリル化反応において、選択的に硫黄元素に隣接した炭素にSiが結合した付加生成物が得られる。
さらに、本発明の触媒は、脂肪族不飽和結合含有化合物の水素化反応に対して高い触媒活性を有し、当該反応は温和な条件下で進行する。
また、本発明の触媒を使用した炭素−酸素不飽和結合または炭素−窒素不飽和結合に対するヒドロシラン還元反応では、アミド化合物、ケトン化合物、アミド化合物等のカルボニル化合物やニトリル化合物と、取り扱いが容易なSi−H基を有するシランまたは(ポリ)シロキサンとを反応させ、目的とする化合物を高収率で得ることができる。
このように本発明のイソシアニド錯体からなる触媒は、脂肪族不飽和結合に対するヒドロシリル化反応もしくは水素化反応、または炭素−酸素不飽和結合もしくは炭素−窒素不飽和結合に対するヒドロシラン還元反応において、一つまたは複数の反応に対して活性を有していることから、有機合成反応において極めて有用性が高い。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明についてさらに詳しく説明する。
本発明に係る触媒は、式(1)で示される化合物からなり、脂肪族不飽和結合に対するヒドロシリル化反応もしくは水素化反応、または炭素−酸素不飽和結合もしくは炭素−窒素不飽和結合に対するヒドロシラン還元反応から選ばれる少なくとも1種の反応に活性を有することを特徴とする。
Mn(L)m (1)
【0030】
式(1)において、Mは、酸化数が0価のFe、Co、またはNiを表し、Lは、下記式(2)で示されるイソシアニド配位子を表し、nは、1〜8の整数を表し、mは、2〜12の整数を表す。
(CN)x−R1 (2)
【0031】
式(1)において、のとおり、nは1〜4であり、mは2〜10であるが、錯体の安定性と触媒活性の観点から、好ましくはnが1の場合、m=2、4または5、n=2〜4の場合、m=6〜10の整数であり、n=8のときm=12であり、より好ましくはMがFeの場合、nは1、mは5、MがCoの場合、nは2、mは8、MがNiの場合、n=1、m=2もしくは4、またはn=3、4もしくは8、m=4、6、7もしくは12である。
【0032】
式(2)において、R1は、ハロゲン原子で置換されていてもよく、酸素、窒素、硫黄、およびケイ素から選ばれる原子が1個またはそれ以上介在してもよい、炭素原子数1〜30の1〜3価の有機基を表し、xは、1〜3の整数を表す。
【0033】
ハロゲン原子の具体例としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
炭素原子数1〜30の1〜3価の有機基としては、特に限定されるものではないが、炭素原子数1〜30の1〜3価の炭化水素基が好ましい。
1価炭化水素基の具体例としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルキルアリール基、アラルキル基等が挙げられる。
アルキル基としては、直鎖、分岐鎖、環状のいずれでもよく、好ましくは1〜20、より好ましくは1〜10のアルキル基であり、その具体例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、n−ノニル、n−デシル、n−ウンデシル、n−ドデシル、n−トリデシル、n−テトラデシル、n−ペンタデシル、n−ヘキサデシル、n−ヘプタデシル、n−オクタデシル、n−ノナデシル、n−エイコサニル基等の直鎖または分岐鎖アルキル基;シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、ノルボルニル、アダマンチル基等のシクロアルキル基などが挙げられる。
【0034】
アルケニル基としては、炭素原子数2〜20のアルケニル基が好ましく、その具体例としては、エテニル、n−1−プロペニル、n−2−プロペニル、1−メチルエテニル、n−1−ブテニル、n−2−ブテニル、n−3−ブテニル、2−メチル−1−プロペニル、2−メチル−2−プロペニル、1−エチルエテニル、1−メチル−1−プロペニル、1−メチル−2−プロペニル、n−1−ペンテニル、n−1−デセニル、n−1−エイコセニル基等が挙げられる。
アルキニル基としては、炭素原子数2〜20のアルキニル基が好ましく、その具体例としては、エチニル、n−1−プロピニル、n−2−プロピニル、n−1−ブチニル、n−2−ブチニル、n−3−ブチニル、1−メチル−2−プロピニル、n−1−ペンチニル、n−2−ペンチニル、n−3−ペンチニル、n−4−ペンチニル、1−メチル−n−ブチニル、2−メチル−n−ブチニル、3−メチル−n−ブチニル、1,1−ジメチル−n−プロピニル、n−1−ヘキシニル、n−1−デシニル、n−1−ペンタデシニル、n−1−エイコシニル基等が挙げられる。
【0035】
アリールまたはアルキルアリール基としては、好ましくは炭素原子数6〜20のアリールまたは炭素原子数7〜20のアルキルアリール基であり、その具体例としては、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、アントリル、フェナントリル、o−ビフェニリル、m−ビフェニリル、p−ビフェニリル、トリル、2,6−ジメチルフェニル、2,6−ジイソプロピルフェニル、メシチル基等が挙げられる。
アラルキル基としては、好ましくは炭素原子数7〜30、より好ましくは炭素原子数7〜20のアリールアルキル基であり、その具体例としては、ベンジル、フェニルエチル、フェニルプロピル、ナフチルメチル、ナフチルエチル、ナフチルプロピル基等が挙げられる。
【0036】
2価の炭化水素基としては、アルキレン基、アリーレン基、アラルキレン基等が挙げられる。
アルキレン基としては、直鎖、分岐鎖、環状のいずれでもよく、好ましくは炭素原子数1〜20のアルキレン基であり、その具体例としては、メチレン、エチレン、プロピレン、トリメチレン、n−ブチレン、イソブチレン、s−ブチレン、n−オクチレン、2−エチルヘキシレン、n−デシレン、n−ウンデシレン、n−ドデシレン、n−トリデシレン、n−テトラデシレン、n−ペンタデシレン、n−ヘキサデシレン、n−ヘプタデシレン、n−オクタデシレン、n−ノナデシレン、n−エイコサニレン基等の直鎖または分岐鎖アルキレン基;1,4−シクロへキシレン基等のシクロアルキレン基などが挙げられる。
アリーレン基の具体例としては、o−フェニレン、m−フェニレン、p−フェニレン、1,2−ナフチレン、1,8−ナフチレン、2,3−ナフチレン、4,4′−ビフェニレン基等が挙げられる。
アラルキレン基の具体例としては、−(CH2)y−Ar−(Arは、炭素原子数6〜20のアリーレン基を表し、yは1〜10の整数を表す。)、−Ar−(CH2)y−(Arおよびyはと同じ意味を表す。)、−(CH2)y−Ar−(CH2)y−(Arはと同じ意味を表し、yは互いに独立してと同じ意味を表す。)等が挙げられる。
【0037】
3価の炭化水素基の具体例としては、下記式で示されるものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0038】
【化1】
【0039】
R1におけるその他の有機基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基等のアルコキシ基;フェノキシ基等のアリールオキシ基;トリフルオロメチル基等のハロゲン化アルキル基;ジメチルアミノ基等のアルキルアミノ基;メチルエステル、エチルエステル等のエステル基;ニトロ基;ニトリル基;トリメチルシリル基、フェニルジメチルシリル基等のアルキルまたはアリールシリル基;トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、ジメトキシメチルシリル基、ジエトキシメチルシリル基等のアルコキシシリル基;ピリジル基等の窒素含有複素環含有基;チエニル基等の硫黄含有複素環含有基などが挙げられる。
これらの中でもR1としては、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数3〜20のシクロアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基、炭素原子数7〜30のアルキルアリール基から選ばれる少なくとも1種の炭化水素基が好ましく、t−ブチル基、1−アダマンチル基、メシチル基、フェニル基、2,6−ジメチルフェニル基、2,6−ジイソプロピルフェニル基がより好ましい。
なお、以上説明した各有機基は、酸素、窒素、ケイ素、硫黄、およびリンから選ばれる原子が1個またはそれ以上介在していてもよく、また、ハロゲン原子で置換されていてもよい。
【0040】
式(2)におけるxは、1〜3の整数であるが、好ましくは1または2であり、さらに好ましくは1である。
【0041】
式(2)で表されるイソシアニド化合物は、市販品として入手する、または公知の方法によって合成することができる。例えば、アミン化合物とギ酸からホルミル化物を得、次いで有機アミンの存在下、塩化ホスホリルと反応させてイソシアニド化する方法(合成方法1。Organometallics,2004,23,3976−3981参照);温和な条件下でホルミル化物を得る方法として、無水酢酸とギ酸から酢酸ギ酸無水物を形成し、これをアミン化合物と反応させてホルミル化物を得ることができる(合成方法2。Org.Synth.,2013,90,358−366参照)。得られたホルミル化物はと同じ合成方法1に記載されている方法によってイソシアニド化することができる。
さらに、ホルミル化を経由しない方法である、アミン化合物とジクロルカルベンを反応させてイソシアニド化する方法によっても合成することができる(合成方法3。Tetrahedron Letters,1972,17,1637−1640参照)。
【0042】
イソシアニド化合物の具体例としては、メチルイソシアニド、エチルイソシアニド、n−プロピルイソシアニド、シクロプロピルイソシアニド、n−ブチルイソシアニド、イソブチルイソシアニド、sec−ブチルイソシアニド、t−ブチルイソシアニド、n−ペンチルイソシアニド、イソペンチルイソシアニド、ネオペンチルイソシアニド、n−ヘキシルイソシアニド、シクロヘキシルイソシアニド、シクロヘプチルイソシアニド、1,1−ジメチルヘキシルイソシアニド、1−アダマンチルイソシアニド、2−アダマンチルイソシアニド等のアルキルイソシアニド;フェニルイソシアニド、2−メチルフェニルイソシアニド、4−メチルフェニルイソシアニド、2,4−ジメチルフェニルイソシアニド、2,5−ジメチルフェニルイソシアニド、2,6−ジメチルフェニルイソシアニド、2,4,6−トリメチルフェニルイソシアニド、2,4,6−トリt−ブチルフェニルイソシアニド、2,6−ジイソプロピルフェニルイソシアニド、1−ナフチルイソシアニド、2−ナフチルイソシアニド、2−メチル−1−ナフチルイソシアニド等のアリールイソシアニド;ベンジルイソシアニド、フェニルエチルイソシアニド等のアラルキルイソシアニドなどが挙げられる。
【0043】
ジイソシアニド化合物の具体例としては、1,2−ジイソシアノエタン、1,3−ジイソシアノプロパン、1,4−ジイソシアノブタン、1,5−ジイソシアノペンタン、1,6−ジイソシアノヘキサン、1,8−ジイソシアノオクタン、1,12−ジイソシアノドデカン、1,2−ジイソシアノシクロヘキサン、1,3−ジイソシアノシクロヘキサン、1,4−ジイソシアノシクロヘキサン、1,3−ジイソシアノ−2,2−ジメチルプロパン、2,5−ジイソシアノ−2,5−ジメチルヘキサン、1,2−ビス(ジイソシアノエトキシ)エタン、1,2−ジイソシアノベンゼン、1,3−ジイソシアノベンゼン、1,4−ジイソシアノベンゼン、1,1’−メチレンビス(4−イソシアノベンゼン)、1,1’−オキシビス(4−イソシアノベンゼン)、3−(イソシアノメチル)ベンジルイソシアニド、1,2−ビス(2−イソシアノフェノキシ)エタン、ビス(2−イソシアノフェニル)フェニルホスホネート、ビス(2−イソシアノフェニル)イソフタレート、ビス(2−イソシアノフェニル)スクシネート等が挙げられる。
【0044】
トリイソシアニド化合物の具体例としては、1,3−ジイソシアノ−2−(イソシアノメチル)−2−メチルプロパン、1,5−ジイソシアノ−3−(2−イソシアノエチル)ペンタン、1,7−ジイソシアノ−4−(3−イソシアノプロピル)ヘプタン、3−イソシアノ−N,N’−ビス(3−イソシアノプロピル)プロパン−1−アミン等が挙げられる。
【0045】
式(1)で表されるイソシアニド錯体からなる触媒は、公知の方法によって合成することができ、例えば、イソシアニド化合物存在下で、鉄、コバルト、またはニッケル塩と還元剤とを有機溶剤中で反応させる方法や、鉄−、コバルト−、またはニッケル−カルボニル錯体とイソシアニド化合物を有機溶剤中で、高温下、光照射下または触媒存在下で反応させる方法で合成することができる。また、置換可能な配位子を有する鉄、コバルト、またはニッケル錯体とイソシアニド化合物を有機溶剤中で反応させて合成することもできる。
さらに、アート型鉄−、コバルト−、またはニッケル−イソシアニド錯体と酸化剤を有機溶剤中で反応させて合成することもできる。
【0046】
鉄、コバルト、またはニッケル塩としては、特に限定されるものではないが、還元剤との反応性を考慮すると、Cl、Br、I等のハロゲン化物;アセテート等のカルボン酸塩が好ましく、Cl、Br、I等のハロゲン化物がより好ましい。
鉄塩の具体例としては、FeCl2、FeBr2、FeCl3、FeBr3、FeI3等のハロゲン化鉄;Fe(OAc)2、Fe(stearate)2、Fe(stearate)3等のカルボン酸鉄などが挙げられる。
コバルト塩の具体例としては、CoCl2、CoBr2、CoI2等のハロゲン化コバルト;Co(OAc)2、Co(OBz)2、Co(2−ethylhexanoate)2、Co(stearate)2等のカルボン酸コバルトなどが挙げられる。
ニッケル塩の具体例としては、NiCl2、NiBr2、NiI2等のハロゲン化ニッケル;Ni(OAc)2等のカルボン酸ニッケルなどが挙げられる。
【0047】
鉄−、コバルト−、またはニッケル−カルボニル錯体の具体例としては、Fe(CO)5、Fe3(CO)12、Co2(CO)8、Ni(CO)4等が挙げられる。
また、置換可能な配位子としては、1,5−シクロオクタジエン、ブタジエン等のオレフィン化合物;トリメチルホスフィン等のリン配位子などが挙げられる。
【0048】
還元剤としては、鉄、コバルト、またはニッケル塩中の金属を0価まで還元できる強い還元剤が望ましく、例えば、非特許文献Chem. Rev.1996,96,887−910において、フェロセンを基準とした酸化還元電位ポテンシャルが−2.0V以下であるものが好ましく、−2.3V以下のものが特に好ましい。
その具体例としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属;ナトリウム−カリウム、ナトリウムアマルガム等のアルカリ金属合金;カリウムナフタレニド等のアルカリ金属ナフタレニドなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0049】
また、これらのアルカリ金属、アルカリ金属合金は、固体物質に担持されたものでもよく、例えば、シリカ、アルミナ、グラファイト、酸化チタン、ゼオライト、酸化亜鉛、酸化セリウム、ポリスチレンに担持されたナトリウム、カリウム、およびナトリウム−カリウム合金などが挙げられるが、これらの中でも、反応性の点では、カリウム担持グラファイト(以下、KC8と略記)が好ましく、安全性の点では、ナトリウム担持シリカ(ステージ1または2)が発火性等の危険性が少ない点で好ましい。
なお、これらの固体物質に担持されたアルカリ金属は、例えば特許第5048503号公報に記載の方法など従来公知の方法で合成されたものや、市販品としても入手でき、そのような市販品としては、KC8(Strem Chemicals社製)、Naシリカゲル(アルドリッチ社製、ステージI)、Naシリカゲル(アルドリッチ社製、ステージII)、NaK2シリカゲル(アルドリッチ社製、ステージI)等が挙げられる。
【0050】
アート型鉄−、コバルト−、またはニッケル−イソシアニド錯体は、一般に鉄−、コバルト−、またはニッケル−イソシアニド錯体をさらに還元したイオン性錯体として知られており、非特許文献51記載のNa[Co(2,6−ジメシチルイソシアニド)4]等が知られている。
アート型鉄−、コバルト−、またはニッケル−イソシアニド錯体を用いて合成する場合の酸化剤としては、フェロセニウムトリフラート等が挙げられる。
【0051】
本発明の式(1)で表されるイソシアニド錯体としては、特に限定されるものではないが、例えば、下記のものが挙げられる。
鉄−イソシアニド錯体の具体例としては、Fe(CNMe)5、Fe(CNEt)5、Fe(CNnPr)5、Fe(CNiPr)5、Fe(CNnBu)5、Fe(CNtBu)5、Fe(CNCy)5、Fe(CNAd)5、Fe(CNCF3)5、Fe(CNPh)5、Fe(CNXylyl)5、Fe(CNMes)5、Fe(N2)[CN−(2,6−bismesitylphenyl)]4、Fe(CN−(2−methyl−6−chlorophenyl))5、Fe(CN−(3,5−dimethoxyphenyl))5、Fe2(CNEt)9等が挙げられる。
コバルト−イソシアニド錯体の具体例としては、Co2(CNtBu)8、Co2(CNCy)8、Co2(CNAd)8、Co2(CNPh)8、Co2(CNXylyl)8、Co2(CNMes)8、Co2(CN−(2−methyl−6−chlorophenyl))8、Co2(CN−(3,5−dimethoxyphenyl))8、Co[CN−(2,6−bismesitylphenyl)]4等が挙げられる。
【0052】
ニッケル−イソシアニド錯体の具体例としては、Ni(CNMe)4、Ni(CNEt)4、Ni(CNtBu)4、Ni2(CNtBu)4、Ni3(CNtBu)6、Ni(CNCy)4、Ni(CNPh)4、Ni(CNMes)4、Ni(CNXylyl)4、Ni[CN−(4−MeOC6H4)]4、Ni[CN−(4−NO2C6H4)]4、Ni(CNC6F5)4、Ni4(CNtBu)6、Ni4(CNtBu)7、Ni4(CNMe)(CNtBu)6、Ni4(CNCy)7、Ni8(CNiPr)12等が挙げられる。
なお、において、nPrはn−プロピル基、iPrはイソプロピル基、nBuはn−ブチル基、tBuはt−ブチル基、Cyはシクロヘキシリル基、Adはアダマンチル基、Phはフェニル基、Mesはメシチル基、Xylylは2,6−ジメチルフェニル基を示す。
【0053】
本発明のイソシアニド錯体を触媒として用いる反応を行うにあたり、触媒の使用量は特に限定されるものではないが、20〜100℃程度の温和な条件下で反応を進行させて収率よく目的物を得ることを考慮すると、基質である化合物1モルに対してイソシアニド錯体として0.001モル%以上用いることが好ましく、0.01モル%以上用いることがより好ましく、0.05モル%以上用いることがより一層好ましい。一方、イソシアニド錯体の使用量に特に上限はないが、経済的な観点から基質1モルに対して10モル%程度、好ましくは5モル%である。
なお、本発明の触媒を用いる反応では、その活性等を損なわない範囲で、公知の2電子供与性配位子を併用してもよい。2電子供与性配位子としては、特に限定されるものではないが、カルボニル基以外の配位子が好ましく、アンモニア分子、エーテル化合物、アミン化合物、ホスフィン化合物、ホスファイト化合物、スルフィド化合物等が挙げられる。
また、イソシアニド化合物をその活性等を損なわない範囲で、さらに添加してもよく、その場合の添加量は本発明の触媒に対して0.1〜5モル当量程度が好ましい。
【0054】
本発明の触媒を用いる反応の条件は、特に限定されるものではなく、通常、反応温度が10〜100℃程度であるが、好ましくは20〜80℃であり、反応時間は、1〜48時間程度である。
反応は無溶媒で行うこともできるが、必要に応じて有機溶媒を用いてもよい。
有機溶媒を用いる場合、その種類としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素類などが挙げられる。
有機溶媒を用いる場合、触媒の濃度としては、触媒活性と経済性を考慮すると、モル濃度(M)として、0.01〜10Mが好ましく、0.1〜5Mがより好ましい、。
【0055】
本発明の触媒は、脂肪族不飽和結合に対するヒドロシリル化反応もしくは水素化反応、または炭素−酸素不飽和結合もしくは炭素−窒素不飽和結合に対するヒドロシラン還元反応触媒として使用できる。
本発明の触媒を用いる反応においては、全ての成分を一括して添加してもよく、いくつかの成分ずつに分けて添加してもよい。
【0056】
本発明の触媒をヒドロシリル化反応に用いることにより、脂肪族不飽和結合含有化合物とSi−H結合含有化合物とのヒドロシリル化反応物が得られる。
ヒドロシリル化反応における、脂肪族不飽和結合含有化合物とSi−H結合含有化合物との使用比率は、脂肪族不飽和結合/Si−H結合のモル比が1/10〜10/1、好ましくは、1/5〜5/1、より好ましくは1/3〜3/1である。
【0057】
脂肪族不飽和結合含有化合物の具体例としては、下記のものが挙げられる。
(1)炭素−炭素不飽和結合含有炭化水素化合物
エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン、ヘキセン、オクテン、デセン、ドデセン、n−ヘキサデセン、イソヘキサデセン、n−オクタデセン、イソオクタデセン、ノルボルネン、トリフロロプロペン等のアルケン類;エチン、プロピン、ブチン、ペンチン、ヘキシン、オクチン、デシン、ドデシン、ヘキサデシン、オクタデシン等のアルキン類;スチレン、2−メチルスチレン、4−クロロスチレン、4−メトキシスチレン、α−メチルスチレン、4−メチル−αメチルスチレン、アリルベンゼン等の芳香族基含有アルケン類
(2)アリルエーテル化合物
アリルグリシジルエーテル、アリルグリコール、アリルベンジルエーテル、ジエチレングリコールモノアリルエーテル、ジエチレングリコールアリルメチルエーテル、ポリオキシエチレンモノアリルエーテル、ポリオキシプロピレンモノアリルエーテル、ポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)モノアリルエーテル、ポリオキシエチレンジアリルエーテル、ポリオキシプロピレンジアリルエーテル、ポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)ジアリルエーテル等
(3)窒素含有アルケン化合物
アリルアミン、N,N−ジメチルアリルアミン、N,N−ジエチルアリルアミン、N,N−ジ(n−プロピル)アリルアミン、N,N−ジイソプロピルアリルアミン、N,N−ジ(n−ブチル)アリルアミン、N,N−ジイソブチルアリルアミン、N−t−ブチルアリルアミン、N−アリルシクロヘキシルアミン、N−アリルモルホリン、N,N−ジアリルアミン、トリアリルアミン、N−アリルアニリン、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルフタルイミド等
【0058】
(4)炭素−炭素不飽和結合含有シラン化合物
トリメチルビニルシラン、トリエチルビニルシラン、トリメトキシビニルシラン、トリエトキシビニルシラン、ジメトキシメチルビニルシラン、ジエトキシメチルビニルシラン、メトキシジメチルビニルシラン、エトキシジメチルビニルシラン、トリメトキシアリルシラン、トリエトキシアリルシラン、トリイソプロポキシビニルシラン、フェニルジメトキシビニルシラン、フェニルジエトキシビニルシラン、ジフェニルメトキシビニルシラン、ジフェニルエトキシビニルシラン、トリフェニルビニルシラン、トリフェニルビニルシラン等
(5)炭素−炭素不飽和結合含有シロキサン化合物
ペンタメチルビニルジシロキサン、テトラメチルジビニルジシロキサン、ヘプタメチルビニルトリシロキサン、ジメチルジフェニルジビニルジシロキサン、ジメチルビニルシロキシ基末端封鎖ジメチルポリシロキサン、ジメチルビニルシロキシ基末端封鎖(ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン)共重合体。トリメチルシロキシ基末端封鎖(ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン)共重合体、トリメチルシロキシ基末端封鎖(ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン、メチルビニルシロキサン)共重合体、ジメチルビニルシロキシ基末端封鎖(ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン)共重合体、ジメチルビニルシロキシ基末端封鎖(ジメチルシロキサン、メチルビニルシロキサン、ジフェニルシロキサン)共重合体、末端ヒドロキシ基封鎖(ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン)共重合体、α−ビニルジメチルポリシロキサン等
【0059】
脂肪族不飽和結合含有化合物において、不飽和結合は分子末端に存在しても、内部に存在してもよく、ヘキサジエン、オクタジエンのように分子内に複数の不飽和結合が存在していてもよい。
また、脂肪族不飽和結合含有化合物として、以下に示されるようなスルフィド基を有するアルケン化合物も使用できる。この場合、白金触媒を用いた場合で知られているアルケン末端の炭素に対してケイ素が結合したケイ素化合物とは異なり、アルケンの異性化反応を伴い、硫黄元素に隣接した炭素上にケイ素が結合したケイ素化合物が選択的に得られる。
(6)スルフィド基を有するアルケン化合物
メチルビニルスルフィド、エチルビニルスルフィド、n−プロピルビニルスルフィド、イソプロピルビニルスルフィド、n−ブチルビニルスルフィド、フェニルビニルスルフィド、ベンジルビニルスルフィド、メチルアリルスルフィド、エチルアリルスルフィド、n−プロピルアリルスルフィド、イソプロピルアリルスルフィド、n−ブチルアリルスルフィド、イソブチルアリルスルフィド、フェニルアリルスルフィド、ベンジルアリルスルフィド、アリル(n−プロピル)ジスルフィド、ジアリルスルフィド、ジアリルジスルフィド等
【0060】
Si−H結合含有化合物としては、例えば以下のシラン類、シロキサン類が挙げられる。
(1)シラン類
トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリイソプロポキシシラン、ジメトキシメチルシラン、ジエトキシメチルシラン、ジメトキシフェニルシラン、ジエトキシフェニルシラン、メトキシジメチルシラン、エトキシジメチルシラン、トリフェニルシラン、ジフェニルジシラン、フェニルトリシラン、ジフェニルメチルシラン、フェニルジメチルシラン、ジフェニルメトキシシラン、ジフェニルエトキシシラン等
(2)シロキサン類
ペンタメチルジシロキサン、テトラメチルジシロキサン、ヘプタメチルトリシロキサン、オクタメチルテトラシロキサン、ジメチルハイドロジェンシロキシ基末端封鎖ジメチルポリシロキサン、ジメチルハイドロジェンシロキシ基末端封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、トリメチルシロキシ基末端封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、ジメチルハイドロジェンシロキシ基末端封鎖(ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン)共重合体、トリメチルシロキシ基末端封鎖(ジメチルシロキサン・メチルヒドロシロキサン)共重合体、トリメチルシロキシ基末端封鎖(ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン、メチルハイドロジェンシロキサン)共重合体、ジメチルハイドロジェンシロキシ基末端封鎖(ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン)共重合体、ジメチルハイドロジェンシロキシ基末端封鎖(ジメチルシロキサン、メチルハイドロジェンシロキサン、ジフェニルシロキサン)共重合体、末端ヒドロキシ基封鎖(ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン)共重合体、片末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基末端封鎖ジメチルポリシロキサン等
【0061】
また、本発明の触媒の存在下で、脂肪族不飽和結合含有化合物と水素分子とを反応させることによって、対応する飽和結合を有する化合物が得られる。
脂肪族不飽和結合含有化合物の具体例としては、ヒドロシリル化反応で例示した化合物と同様のものが挙げられる。
水素化反応における反応系内への水素分子の導入手段は、水素分子を含む気体を反応容器内にフローまたはバブリングしながら導入してもよく、水素分子を含む気体を封入した耐圧容器内で反応を行ってもよい。その際の圧力としては特に制限するものではないが、安全性の観点から、0.1〜3MPaが好ましく、0.1〜2MPaがより好ましい。
【0062】
さらに、本発明の触媒の存在下で、炭素−酸素不飽和結合または炭素−窒素不飽和結合を有する化合物とSi−H結合含有化合物とのヒドロシラン還元反応物が得られる。
この場合、炭素−酸素不飽和結合または炭素−窒素不飽和結合を有する化合物と、Si−H結合含有化合物の使用比率は、特に限定されるものではないが、モル比として、(炭素−酸素不飽和結合または炭素−窒素不飽和結合)/(Si−H結合)=1/10〜1/1が好ましく、1/5〜1/1がより好ましく、1/3〜1/1がより好ましい。
【0063】
本発明の炭素−酸素不飽和結合または炭素−窒素不飽和結合を有する化合物のヒドロシラン還元反応において使用するSi−H結合含有化合物としては、ヒドロシリル化反応で例示した化合物と同様のものが挙げられるが、反応性と経済性を考慮すると、それらの中でも、フェニルシラン、ジフェニルシラン、ジメチルフェニルシラン等のアリール基含有シラン;1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、トリメチルシロキシ基末端封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、ジメチルハイドロジェンシロキシ基末端封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン等の、酸素原子を介して隣接したSi−H基を含有するシロキサン類が好ましく、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,1,1,3,3−ペンタメチルジシロキサン、1,1,1,3,5,5,5−ヘプタメチルトリシロキサン、トリメチルシロキシ基末端封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、ジメチルハイドロジェンシロキシ基末端封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサンがより好ましい。
【0064】
ヒドロシラン還元反応に供し得る炭素−酸素不飽和結合または炭素−窒素不飽和結合を有する化合物としては、アルデヒド、ケトン、アミド、ニトリル基等を有する化合物が挙げられ、これらを本発明の触媒の存在下、Si−H基を含有するシランまたはシロキサンと反応させ、公知の後処理を行うことによって、それぞれ対応するアミンやアルコール化合物へと導くことができる。
炭素−酸素不飽和結合または炭素−窒素不飽和結合を有する化合物の具体例としては、例えば、アセトフェノン、N,N−ジメチルベンズアミド、アセトニトリル等が挙げられる。
【実施例】
【0065】
以下、合成例、実施例および比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
触媒の調製に用いた溶媒は、全て公知の方法で脱酸素、脱水を行った後に用いた。
得られた触媒は、25℃、窒素ガス雰囲気下で保存し、反応に用いた。
ヒドロシリル化反応および溶媒精製は、全て不活性ガス雰囲気下で行い、各種反応に用いた溶媒等は、全て予め公知の方法で精製、乾燥、脱酸素を行ったものを用いた。
1H−NMRの測定は日本電子(株)製JNM−ECA600,JNM−LA400を、IR測定は日本分光(株)製FT/IR−550を用いて行った。
なお、以下に示す化学構造式においては慣用的な表現法に従って水素原子を省略している。
【0066】
[合成例1]コバルトイソシアニド錯体Co2(CNtBu)8の合成
反応容器に、ヨウ化コバルト(0.31g,1.0mmol)、テトラヒドロフラン(以下、THFと略す)(15mL)、t−ブチルイソシアニド(0.33g,4.0mmol)、KC8(Strem Chemicals社製、0.27g,2.0mmol)の順に加え、25℃で12時間撹拌した。その後、反応溶液をセライトろ過し、ろ液の溶媒を減圧留去した。得られた乾燥物をペンタン(約40mL)に溶解させ、不溶物をセライトろ過で取り除いた。ろ液を−35℃に冷却し、再結晶化することにより、Co2(CNtBu)8を得た(0.24g,61%)。
1H−NMR(600MHz,C6D6)δ:1.44(s,72H).
IR(ATR):ν=1666(CN(bridge)),2093,1977,1942(CN(terminal))cm-1
Anal.Calcd.for C40H72N8Co2:C,61.36;H,9.27;N,14.31 Found:C,61.06;H,9.52;N,14.05.
【0067】
[合成例2]コバルトイソシアニド錯体Co2(CNAd)8の合成
反応容器に、ヨウ化コバルト0.31g(1.0mmol)、1−イソシアノアダマンタン(以下、CNAdと略す)0.65g(4.0mmol)、THF(15mL)、KC8(0.27g,2.0mmol)の順に加え、25℃で12時間撹拌した。その後、反応溶液をセライトろ過し、ろ液の溶媒を減圧留去した。得られた乾燥物をトルエン(約20ml)に溶解させ、再度セライトろ過した。ろ液の溶媒を減圧留去した後、乾燥物を少量のベンゼン(約3ml)で洗うことにより、Co2(CNAd)8を得た(0.33g,47%)。
1H−NMR(396MHz,C6D6)δ:2.32(s,48H),2.06(s,24H),1.71(d,J=10.3,24H),1.58(d,J=10.3,24H).
IR(ATR):ν=1647(CN(bridge)),2101,2000,1954(CN(terminal))cm-1
Anal.Calcd.for C88H120N8Co2:C,75.08;H,8.59;N,7.96 Found:C,75.16;H,8.62;N,7.46.
【0068】
[合成例3]コバルトイソシアニド錯体Co2(CNMes)8の合成
反応容器に、ヨウ化コバルト(13mg,0.10mmol)、メシチルイソシアニド(58mg,0.40mmol)、THF(3mL)、KC8(27mg,0.20mmol)の順に加え、25℃で12時間撹拌した。その後、反応溶液をセライトろ過し、ろ液の溶媒を減圧留去した。得られた乾燥物をトルエン(約3mL)に溶解させ、不溶物をセライトろ過で取り除いた。ろ液の上からペンタン(約3mL)をゆっくり加えることにより、再結晶化させ、コバルトイソシアニド錯体Co2(CNMes)8を得た(42mg,66%)。
1H−NMR(396MHz,C6D6)δ:6.60(s,12H),6.58(s,4H),2.46(s,36H),2.42(s,12H),2.05(s,18H),2.03(s,6H).
IR(ATR):ν=1669(CN(bridge)),2063,2026,1954(CN(terminal))cm-1
Anal.Calcd.for C80H88N8Co2:C,75.10;H,6.93;N,8.60 Found:C,75.21;H,6.90;N,8.60.
【0069】
[合成例4]鉄イソシアニド錯体Fe(CNtBu)5の合成
反応容器に、臭化鉄(22mg,0.10mmol)、THF(3mL)、t−ブチルイソシアニド(42mg,0.50mmol)、KC8(27mg,0.20mmol)の順に加え、25℃で12時間撹拌した。その後、反応溶液をセライトろ過し、ろ液の溶媒を減圧留去した。得られた乾燥物をペンタン(約4mL)に溶解させ、不溶物をセライトろ過で取り除いた。ろ液を−35℃に冷却し、再結晶化することにより、Fe(CNtBu)5を得た(30mg,63%)。
1H−NMR(600MHz,C6D6)δ:1.29(s,45H).
IR(ATR):ν=2119,2000,1943,1826(CN)cm-1
【0070】
[合成例5]臭化鉄とKC8を用いた鉄イソシアニド錯体Fe(CNAd)5の合成
反応容器に、臭化鉄(216mg,1.0mmol)、THF(20mL)、アダマンチルイソシアニド(806mg,5.0mmol)、KC8(Strem Chemicals社製、270mg,2.0mmol)の順に加え、25℃で12時間撹拌した。その後、反応溶液をセライトろ過し、ろ液の溶媒を減圧留去した。得られた乾燥物をベンゼン(約5mL)に溶解させ、不溶物をセライトろ過で取り除いた。ろ液にペンタンを加えた後、−35℃に冷却し、再結晶化することにより、Fe(CNAd)5を得た(601mg,収率70%)。
1H−NMR(396MHz,C6D6)δ:2.15(s,30H),1.88(s,15H),1.50(d,J=11.5,15H),1.42(d,J=11.5,15H).
IR(ATR):ν=2106(CN)cm-1
【0071】
[合成例6]臭化ニッケル(ジメトキシエタン付加物)とKC8を用いたニッケルイソシアニド錯体Ni(CNtBu)4の合成
反応容器に、臭化ニッケル(ジメトキシエタン付加物)(31mg,0.1mmol)、THF(3mL)、t−ブチルイソシアニド(0.33g,0.4mmol)、KC8(270mg,2.0mmol)の順に加え、室温で30分間撹拌した。その後、反応溶液をセライトろ過し、ろ液の溶媒を減圧留去した。得られた乾燥物をベンゼン(約5mL)に溶解させ、不溶物をセライトろ過で取り除いた。ろ液にエーテルを加えた後、−35℃に冷却し、再結晶化することにより、Ni(CNtBu)4を得た(21mg,収率54%)。
1H−NMR(396MHz、C6D6)δ:1.09(s,36H).
IR(ATR):ν=2002(CN)cm-1
【0072】
[1]アルケンを基質として用いたヒドロシリル化反応
[実施例1]触媒としてCo2(CNtBu)8を用いたα−メチルスチレンの1,1,1,3,3−ペンタメチルジシロキサンによるヒドロシリル化反応
反応容器に、合成例1で得られたCo2(CNtBu)8(3.4mg,0.005mmol)、α−メチルスチレン(129μL,1.0mmol)、1,1,1,3,3−ペンタメチルジシロキサン(254μL,1.3mmol)を加え、25℃で24時間撹拌した。反応終了後、1H−NMRスペクトルを測定して生成物の構造と収率を決定した。目的生成物におけるケイ素に隣接する炭素上のプロトンのシグナルである0.94ppmの多重線を確認し、その収率を求めた。その結果を表1に示す。
1H−NMR(396MHz,CDCl3)δ:7.27(t,J=6.8,2H),7.21(d,J=6.8,2H),7.15(t,J=6.8,1H),2.91(sext,J=6.8,1H),1.28(d,J=6.8,3H),0.90−0.98(m,2H),0.05(s,9H),−0.05(s,3H),−0.07(s,3H).
【0073】
[実施例2,3]
Co2(CNtBu)8の代わりに、触媒として表1に記載したコバルト−イソシアニド錯体(0.005mmol)をそれぞれ用いた以外は、実施例1と同様に反応を行った。その結果を以下の表1に示す。
【0074】
[比較例1]ピバル酸コバルトとCNAdとジエトキシメチルシランから成る組成物を触媒として用いたα−メチルスチレンの1,1,1,3,3−ペンタメチルジシロキサンによるヒドロシリル化反応
反応容器に、ピバル酸コバルト3mg(0.01mmol)、CNAd5mg(0.03mmol)、THF100μLを加え、溶解させた。そこに、ジエトキシメチルシラン5.3mg(0.04mmol)を加え、25℃で1時間撹拌した。その後、α−メチルスチレン(129μL,1.0mmol)、1,1,1,3,3−ペンタメチルジシロキサン(254μL,1.3mmol)を加えて、25℃で24時間撹拌した。反応終了後、1H−NMRスペクトルを測定して生成物の構造と収率を決定した。目的生成物におけるケイ素に隣接する炭素上のプロトンのシグナルである0.94ppmの多重線を確認し、その収率を求めた。その結果を表1に示す。
【0075】
【表1】
【0076】
[実施例4]触媒としてCo2(CNAd)8を用いたα−メチルスチレンの1,1,1,3,3−ペンタメチルジシロキサンによるヒドロシリル化反応
反応容器に、合成例2で得られたCo2(CNAd)8(6.4mg,0.0005mmol)、α−メチルスチレン(1.29mL,10mmol)、1,1,1,3,3−ペンタメチルジシロキサン(2.54mL,13mmol)を加え、80℃で24時間撹拌した。反応終了後、1H−NMRスペクトルを測定して生成物の構造と収率を決定した。目的生成物におけるケイ素に隣接する炭素上のプロトンのシグナルである0.94ppmの多重線を確認し、その収率を求めた。その結果を表2に示す。
【0077】
[比較例2]触媒としてCo2(CO)8を用いたα−メチルスチレンの1,1,1,3,3−ペンタメチルジシロキサンによるヒドロシリル化反応
反応容器に、Co2(CO)8(1.7mg,0.0005mmol)、α−メチルスチレン(1.29mL,10mmol)、1,1,1,3,3−ペンタメチルジシロキサン(2.54mL,13mmol)を加え、80℃で24時間撹拌した。反応終了後、1H−NMRスペクトルを測定して生成物の構造と収率を決定した。目的生成物におけるケイ素に隣接する炭素上のプロトンのシグナルである0.94ppmの多重線を確認し、その収率を求めた。その結果を表2に示す。
【0078】
【表2】
【0079】
[実施例5]触媒としてFe(CNtBu)5を用いたスチレンの1,1,1,3,3−ペンタメチルジシロキサンによるヒドロシリル化反応
反応容器に、合成例4で得られたFe(CNtBu)5(4.7mg,0.01mmol)、スチレン(114μL,1.0mmol)、1,1,1,3,3−ペンタメチルジシロキサン(254μL,1.3mmol)を加え、25℃で24時間撹拌した。反応終了後、1H−NMRスペクトルを測定して生成物の構造と収率を決定した。目的生成物におけるケイ素に隣接する炭素上のプロトンのシグナルである0.90ppmの多重線を確認し、その収率を求めた。その結果を表3に示す。
1H−NMR(396MHz,CDCl3)δ:7.24−7.29(m,2H),7.13−7.22(m,3H),2.61−2.68(m,2H),0.86−0.92(m,2H),0.08(s,9H),0.07(s,6H).
【0080】
[実施例6]触媒としてCo2(CNMes)8を用いた1−オクテンの1,1,1,3,3−ペンタメチルジシロキサンによるヒドロシリル化反応
反応容器に、合成例3で得られたCo2(CNMes)8(6.4mg,0.005mmol)、1−オクテン(157μL,1.0mmol)、1,1,1,3,3−ペンタメチルジシロキサン(254μL,1.3mmol)を加え、25℃で24時間撹拌した。反応終了後、1H−NMRスペクトルを測定して生成物の構造と収率を決定した。目的生成物におけるケイ素に隣接する炭素上のプロトンのシグナルである0.50ppmの多重線を確認し、その収率を求めた。その結果を表3に示す。
1H−NMR(396MHz,CDCl3)δ:1.21−1.37(m,12H),0.88(t,J=6.8,3H),0.50(m,2H),0.06(s,9H),0.03(s,6H).
【0081】
[実施例7]触媒としてCo2(CNMes)8を用いたスチレンの1,1,1,3,3−ペンタメチルジシロキサンによるヒドロシリル化反応
反応容器に、合成例3で得られたCo2(CNMes)8(6.4mg,0.005mmol)、スチレン(114μL,1.0mmol)、1,1,1,3,3−ペンタメチルジシロキサン(254μL,1.3mmol)を加え、25℃で24時間撹拌した。反応終了後、1H−NMRスペクトルを測定して生成物の構造と収率を決定した。目的生成物におけるケイ素に隣接する炭素上のプロトンのシグナルである0.90ppmの多重線を確認し、その収率を求めた。その結果を表3に示す。
1H−NMR(396MHz,CDCl3)δ:7.24−7.29(m,2H),7.13−7.22(m,3H),2.61−2.68(m,2H),0.86−0.92(m,2H),0.08(s,9H),0.07(s,6H).
【0082】
[実施例8]触媒としてCo2(CNAd)8を用いたアリルグリシジルエーテルの1,1,1,3,3−ペンタメチルジシロキサンによるヒドロシリル化反応
反応容器に、合成例2で得られたCo2(CNAd)8(6.4mg,0.005mmol)、アリルグリシジルエーテル(118μL,1.0mmol)、1,1,1,3,3−ペンタメチルジシロキサン(254μL,1.3mmol)を加え、25℃で24時間撹拌した。反応終了後、1H−NMRスペクトルを測定して生成物の構造と収率を決定した。目的生成物におけるケイ素に隣接する炭素上のプロトンのシグナルである0.51ppmの多重線を確認し、その収率を求めた。その結果を表3に示す。
1H−NMR(396MHz,CDCl3)δ:3.71(dd,J=11.6,J=3.9,1H)3.37−3.51(m,3H),3.26(dt,J=2.9,J=6.3,1H),2.62(t,J=4.4,1H),2.62(q,J=2.9,1H),1.59−1.65(m,2H),0.49−0.53(m,2H),0.06(s,9H).
【0083】
【表3】
【0084】
[実施例9]触媒としてCo2(CNtBu)8を用いたα−メチルスチレンの1,1,1,3,5,5,5−ヘプタメチルトリシロキサンによるヒドロシリル化反応
反応容器に、合成例1で得られたCo2(CNtBu)8(3.4mg,0.005mmol)、α−メチルスチレン(129μL,1.0mmol)、1,1,1,3,5,5,5−ヘプタメチルトリシロキサン(351μL,1.3mmol)を加え、80℃で24時間撹拌した。反応終了後、1H−NMRスペクトルを測定して生成物の構造と収率を決定した。目的生成物におけるケイ素に隣接する炭素上のプロトンのシグナルである0.88ppmの多重線を確認し、その収率を求めた。その結果を表4に示す。
1H−NMR(396MHz,CDCl3)δ:7.27(t,J=6.8,2H),7.21(d,J=6.8,2H),7.16(t,J=6.8,1H),2.92(sext,J=6.8,1H),1.28(d,J=6.8,3H),0.82−0.94(m,2H),0.09(s,9H),0.07(s,9H),−0.12(s,3H).
【0085】
[実施例10]触媒としてCo2(CNAd)8を用いたα−メチルスチレンのトリエトキシシランによるヒドロシリル化反応
反応容器に、合成例2で得られたCo2(CNAd)8(6.4mg,0.005mmol)、α−メチルスチレン(129μL,1.0mmol)、トリエトキシシラン(213mg,1.3mmol)を加え、80℃で24時間撹拌した。反応終了後、1H−NMRスペクトルを測定して生成物の構造と収率を決定した。目的生成物におけるフェニル基に隣接する炭素上のプロトンのシグナルである3.00ppmの6重線を確認し、その収率を求めた。その結果を表4に示す。
1H−NMR(396MHz,CDCl3)δ:7.27(t,J=6.8,2H),7.21(d,J=6.8,2H),7.15(t,J=6.8,1H),3.73(q,J=6.8,6H),2.96(sext,J=6.8,1H),1.31(d,J=6.8,3H),1.18(m,J=6.8,9H),1.03(d,J=6.8,2H).
【0086】
[実施例11]触媒としてCo2(CNtBu)8を用いたα−メチルスチレンのジエトキシ(メチル)シランによるヒドロシリル化反応
反応容器に、合成例1で得られたCo2(CNtBu)8(3.4mg,0.005mmol)、α−メチルスチレン(129μL,1.0mmol)、ジエトキシ(メチル)シラン(175mg,1.3mmol)を加え、50℃で24時間撹拌した。反応終了後、1H−NMRスペクトルを測定して生成物の構造と収率を決定した。目的生成物におけるフェニル基に隣接する炭素上のプロトンのシグナルである2.96ppmの6重線を確認し、その収率を求めた。その結果を表4に示す。
1H−NMR(396MHz、CDCl3)δ:7.27(t,J=6.8,2H),7.21(d,J=6.8,2H),7.15(t,J=6.8,1H),3.63−3.70(m,4H),3.00(sext,J=6.8,1H),1.32(d,J=6.8,3H),1.21(t,J=6.8,3H),1.15(t,J=6.8,3H),1.03(d,J=6.8,2H),−0.08(s,3H).
【0087】
【表4】
【0088】
[実施例12]触媒としてCo2(CNAd)8を用いたアリルグリシジルエーテルの両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ポリジメチルシロキサンによるヒドロシリル化反応
反応容器に、合成例2で得られたCo2(CNAd)8(6.4mg,0.005mmol)、アリルグリシジルエーテル(154μL,1.3mmol)、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ポリジメチルシロキサン(重合度18)(0.74g,0.50mmol)を加え、50℃で24時間撹拌した。反応終了後、1H−NMRスペクトルを測定して生成物の構造と収率を決定した。目的生成物におけるケイ素に隣接する炭素上のプロトンのシグナルである0.54ppmの多重線を確認し、その収率を求めた(収率>99%)。
1H−NMR(396MHz、CDCl3)δ:3.70(m,1H),2.95−2.90(m,2H),3.45(m,3H),3.15(m,1H),2.80(m,1H),2.61(m,1H),1.62(m,2H),0.54(m,2H),0.08(br),0.05(s),−0.08(s).
【0089】
[2]硫黄含有アルケンを基質として用いたヒドロシリル化反応
【化2】
【0090】
[実施例13]触媒としてCo2(CNtBu)8を用いたエチルビニルスルフィドの1,1,1,3,3−ペンタメチルジシロキサンによるヒドロシリル化反応
反応容器に、合成例1で得られたCo2(CNtBu)8(3.4mg,0.005mmol)、エチルビニルスルフィド(88mg,1.0mmol)、1,1,1,3,3−ペンタメチルジシロキサン(254μL,1.3mmol)を加え、25℃で24時間撹拌した。反応終了後、シリカゲルクロマトグラフィーより分離精製を行い、目的生成物を239mg得た。その収率を表5に示す。
1H−NMR(400MHz,CDCl3)δ:0.08(s,9H,−SiMe3),0.12(s,3H),0.16(s,3H),0.98(t,J=7.32Hz,3H),1.50−1.65(m,3H),1.68−1.71(m,1H),1.75−1.81(m,1H),2.49(t,2H).
【0091】
[実施例14]触媒としてCo2(CNtBu)8を用いたフェニルビニルスルフィドの1,1,1,3,3−ペンタメチルジシロキサンによるヒドロシリル化反応
反応容器に、合成例1で得られたCo2(CNtBu)8(6.0mg,0.0075mmol)、フェニルビニルスルフィド(68mg,0.5mmol)、1,1,1,3,3−ペンタメチルジシロキサン(223mg,1.5mmol)を加え、25℃で24時間撹拌した。反応終了後、クーゲルロール蒸留により分離精製を行い、目的生成物を129mg得た。その収率を表5に示す。
1H−NMR(400MHz,CDCl3)δ:0.11(s,9H),0.18(s,3H),0.20(s,3H),1.31(d,J=7.73Hz,3H),2.54(q,J=7.09Hz,1H),7.28(dd,J=7.73,9.67Hz,1H),7.28(d,J=7.73Hz,2H),7.35(d,J=9.67Hz,2H).
【0092】
[実施例15]触媒としてCo2(CNtBu)8を用いたメチルアリルスルフィドの1,1,1,3,3−ペンタメチルジシロキサンによるヒドロシリル化反応
反応容器に、合成例1で得られたCo2(CNtBu)8(3.4mg,0.005mmol)、メチルアリルスルフィド(88mg,1.0mmol)、1,1,1,3,3−ペンタメチルジシロキサン(254μL,1.3mmol)を加え、25℃で24時間撹拌した。反応終了後、シリカゲルクロマトグラフィーより分離精製を行い、目的生成物を209mg得た。その収率を表5に示す。
1H−NMR(400MHz,CDCl3)δ:0.08(s,9H),0.13(s,3H),0.16(s,3H),1.06(t,J=7.14Hz,3H),1.57−1.62(m,2H),1.75−1.81(m,1H),2.09(s,3H).
【0093】
[実施例16]触媒としてCo2(CNtBu)8を用いたn−プロピルアリルスルフィドの1,1,1,3,3−ペンタメチルジシロキサンによるヒドロシリル化反応
反応容器に、合成例1で得られたCo2(CNtBu)8(3.4mg,0.005mmol)、n−プロピルアリルスルフィド(116mg,1.0mmol)、1,1,1,3,3−ペンタメチルジシロキサン(254μL,1.3mmol)を加え、25℃で24時間撹拌した。反応終了後、シリカゲルクロマトグラフィーより分離精製を行い、目的生成物を239mg得た。その収率を表5に示す。
1H−NMR(400MHz,CDCl3)δ:0.08(s,9H),0.12(s,3H),0.16(s,3H),0.98(t,J=7.32Hz,3H),1.50−1.65(m,3H),1.68−1.71(m,1H),1.75−1.81(m,1H),2.49(t,2H).
【0094】
[実施例17]触媒としてCo2(CNtBu)8を用いたフェニルアリルスルフィドの1,1,1,3,3−ペンタメチルジシロキサンによるヒドロシリル化反応
反応容器に、合成例1で得られたCo2(CNtBu)8(9.7mg,0.0125mmol)、フェニルアリルスルフィド(75mg,0.5mmol)、1,1,1,3,3−ペンタメチルジシロキサン(127μL,0.65mmol)を加え、25℃で24時間撹拌した。反応終了後、クーゲルロール蒸留により分離精製を行い、目的生成物を142mg得た。その収率を表5に示す。
1H−NMR(600MHz,CDCl3)δ:0.10(s,9H),0.19(s,3H),0.19(s,3H),1.31(t,J=7.42Hz,3H),1.67(dqd,J=6.04,7.42,13.74Hz,1H),1.81(dqd,6.04,7.42,13.74Hz,1H),7.14(td,J=7.42,2.75Hz,1H),7.25−7.26(m,2H),7.35(dd,J=8.24,1.10Hz,2H).
【0095】
[実施例18]触媒としてCo2(CNtBu)8を用いたベンジルアリルスルフィドの1,1,1,3,3−ペンタメチルジシロキサンによるヒドロシリル化反応
反応容器に、合成例1で得られたCo2(CNtBu)8(3.4mg,0.005mmol)、ベンジルアリルスルフィド(164mg,1.0mmol)、1,1,1,3,3−ペンタメチルジシロキサン(254μL,1.3mmol)を加え、25℃で24時間撹拌した。反応終了後、クーゲルロール蒸留により分離精製を行い、目的生成物を245mg得た。その収率を表5に示す。
1H−NMR(400MHz,CDCl3)δ:0.05(s,9H),0.06(s,3H),1.01(t,J=7.32Hz,3H),1.53−1.62(m,1H),1.63−1.67(m,1H),1.69−1.80(m,1H),3.66−3.75(m,2H),7.22−7.30(m,5H).
【0096】
[比較例3]触媒としてCo2(CO)8を用いたメチルアリルスルフィドの1,1,1,3,3−ペンタメチルジシロキサンによるヒドロシリル化反応
反応容器に、合成例1で得たCo2(CNtBu)8(3.4mg,0.005mmol)、メチルアリルスルフィド(88mg,1.0mmol)、1,1,1,3,3−ペンタメチルジシロキサン(254μL,1.3mmol)を加え、25℃で24時間撹拌した。反応終了後、1H−NMRスペクトルを測定した結果、原料のみが確認され、生成物は見られなかった(0%収率)。
【0097】
【表5】
【0098】
[3]窒素含有アルケンを基質として用いたヒドロシリル化反応
【化3】
【0099】
[実施例19]触媒としてCo2(CNAd)8を用いたN−アリルアニリンの1,1,1,3,3−ペンタメチルジシロキサンによるヒドロシリル化反応
反応容器に、合成例2で得られたCo2(CNAd)8(6.4mg,0.005mmol)、N−アリルアニリン(133mg,1.0mmol)、1,1,1,3,3−ペンタメチルジシロキサン(254μL,1.3mmol)を加え、25℃で24時間撹拌した。反応終了後、1H−NMRスペクトルを測定して生成物の構造と収率を決定した。目的生成物におけるケイ素に隣接する炭素上のプロトンのシグナルである0.59ppmの多重線を確認し、その収率を求めた。その結果を表6に示す。
1H−NMR(400MHz,CDCl3)δ:0.07(s,15H),0.59(m,2H),1.63(m,2H),3.10(q,J=5.8,2H),3.66(br,1H),6.60(d,J=7.7,2H),6.68(t,J=7.7,1H),7.17(t,J=7.2,2H).
【0100】
[実施例20]触媒としてCo2(CNAd)8を用いたN,N−ジエチルアリルアミンの1,1,1,3,3−ペンタメチルジシロキサンによるヒドロシリル化反応
反応容器に、合成例2で得られたCo2(CNAd)8(6.4mg,0.005mmol)、N,N−ジエチルアリルアミン(113mg,1.0mmol)、1,1,1,3,3−ペンタメチルジシロキサン(254μL,1.3mmol)を加え、50℃で24時間撹拌した。反応終了後、1H−NMRスペクトルを測定して生成物の構造と収率を決定した。目的生成物におけるケイ素に隣接する炭素上のプロトンのシグナルである0.46ppmの多重線を確認し、その収率を求めた。その結果を表6に示す。
1H−NMR(400MHz,CDCl3)δ:0.03(s,9H),0.04(s,3H),0.05(s,3H),0.46(m,2H),1.02(t,J=7.4,6H),1.47(m,2H),2.40(t,J=8.0,2H),2.52(q,J=7.4,4H).
【0101】
[実施例21]触媒としてCo2(CNMes)8を用いた9−ビニルカルバゾールの1,1,1,3,3−ペンタメチルジシロキサンによるヒドロシリル化反応
反応容器に、合成例3で得られたCo2(CNMes)8(6.4mg,0.005mmol)、溶媒としてのN−メチルピロリドン(100μL)、9−ビニルカルバゾール(193mg,1.0mmol)、1,1,1,3,3−ペンタメチルジシロキサン(254μL,1.3mmol)を加え、25℃で24時間撹拌した。反応終了後、1H−NMRスペクトルを測定して生成物の構造と収率を決定した。目的生成物におけるケイ素に隣接する炭素上のプロトンのシグナルである1.16ppmの多重線を確認し、その収率を求めた。その結果を表6に示す。
1H−NMR(400MHz,CDCl3)δ:0.15(s,6H),0.17(s,9H),1.16(m,2H),4.38(m,2H),7.23(t,J=7.7Hz,2H),7.39(d,J=7.7Hz,2H),7.47(t,J=7.7Hz,2H),8.11(d,J=7.7Hz,2H).
【0102】
[実施例22]触媒としてCo2(CNtBu)8を用いたN−ビニルフタルイミドの1,1,1,3,3−ペンタメチルジシロキサンによるヒドロシリル化反応
反応容器に、合成例1で得られたCo2(CNtBu)8(3.4mg,0.005mmol)、溶媒としてのDME(100μL)、N−ビニルフタルイミド(173mg,1.0mmol)、1,1,1,3,3−ペンタメチルジシロキサン(254μL,1.3mmol)を加え、50℃で24時間撹拌した。反応終了後、1H−NMRスペクトルを測定して生成物の構造と収率を決定した。目的生成物におけるケイ素に隣接する炭素上のプロトンのシグナルである1.03ppmの多重線を確認し、その収率を求めた。その結果を表6に示す。
1H−NMR(400MHz,CDCl3)δ:0.07(s,9H),0.14(s,6H),1.03(m,2H),3.75(m,2H),7.69−7.80(m,4H).
【0103】
[実施例23]触媒としてCo2(CNAd)8を用いたN−ビニル−2−ピロリドンの1,1,1,3,3−ペンタメチルジシロキサンによるヒドロシリル化反応
反応容器に、合成例2で得られたCo2(CNAd)8(6.4mg,0.005mmol)、N−ビニル−2−ピロリドン(111mg,1.0mmol)、1,1,1,3,3−ペンタメチルジシロキサン(254μL,1.3mmol)を加え、50℃で24時間撹拌した。反応終了後、1H−NMRスペクトルを測定して生成物の構造と収率を決定した。目的生成物におけるケイ素に隣接する炭素上のプロトンのシグナルである0.81ppmの多重線を確認し、その収率を求めた。その結果を表6に示す。
1H−NMR(400MHz,CDCl3)δ:0.08(s,9H),0.10(s,6H),0.82(m,2H),2.00(quint,J=7.2,2H),2.36(t,J=7.7,2H),3.36(m,4H).
【0104】
[比較例4]触媒としてCo2(CO)8を用いたN−ビニル−2−ピロリドンの1,1,1,3,3−ペンタメチルジシロキサンによるヒドロシリル化反応
反応容器に、Co2(CO)8(1.7mg,0.005mmol)、N−ビニル−2−ピロリドン(111mg,1.0mmol)、1,1,1,3,3−ペンタメチルジシロキサン(254μL,1.3mmol)を加え、50℃で24時間撹拌した。反応終了後、1H−NMRスペクトルを測定して生成物の構造と収率を決定した。目的生成物におけるケイ素に隣接する炭素上のプロトンのシグナルである0.81ppmの多重線を確認し、その収率を求めた。その結果を表6に示す。
【0105】
【表6】
【0106】
[4]炭素−酸素不飽和結合または炭素−窒素不飽和結合を有する化合物を基質として用いたヒドロシラン還元反応
[実施例24]触媒としてCo2(CNtBu)8を用いたアセトフェノンのジメチルフェニルシランによるヒドロシラン還元反応
【化4】
【0107】
反応容器に、合成例1で得られたCo2(CNtBu)8(3.4mg,0.005mmol)、アセトフェノン(120mg,1.0mmol)、ジメチルフェニルシラン(177mg,1.3mmol)を加え、50℃で24時間撹拌した。反応終了後、1H−NMRスペクトルを測定して生成物の構造と収率を決定した。その結果を表7に示す。
1H−NMR(400MHz,CDCl3):0.28(s,3H),0.33(s,3H),1.42(d,J=6.4Hz),4.85(q,6.4Hz,1H),7.16−7.41(m,8H),7.53−7.59(m,2H).
【0108】
[実施例25]触媒としてFe(CNtBu)5を用いたアセトフェノンの1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンによるヒドロシラン還元反応
【化5】
【0109】
反応容器に、合成例4で得られたFe(CNtBu)5(4.7mg,0.01mmol)、アセトフェノン(120mg,1.0mmol)、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン(147mg,1.3mmol)を加え、50℃で24時間撹拌した。反応終了後、1H−NMRスペクトルを測定して生成物の構造と収率を決定した。その結果を表7に示す。
1:1付加体(a);1H−NMR(400MHz,CDCl3):0.02(s,3H),0.10(s,3H),0.13(d,J=3.0,3H),0.14(d,J=3.0,3H),1.46(d,J=6.5Hz,3H),4.66(m,1H),4.98(q,6.4Hz,1H),7.19−7.37(m,5H).
1:2付加体(b);1H−NMR(400MHz,CDCl3):0.05−0.17(m,12H),1.44(d,J=6.5Hz,6H),4.94(q,6.4Hz,2H),7.19−7.37(m,10H).
【0110】
[比較例5]触媒としてFe2(CO)9を用いたアセトフェノンの1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンによるヒドロシラン還元反応
反応容器に、Fe2(CO)5(1.8mg,0.005mmol)、アセトフェノン(120mg,1.0mmol)、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン(147mg,1.3mmol)を加え、50℃で24時間撹拌した。反応終了後、1H−NMRスペクトルを測定して生成物の構造と収率を決定した。その結果を表7に示す。
【0111】
【表7】
【0112】
[実施例26]触媒としてCo2(CNMes)8を用いたN,N−ジメチルベンズアミドのジフェニルシランによるヒドロシラン還元反応
【化6】
【0113】
反応容器に、合成例3で得られたCo2(CNMes)8(6.4mg,0.005mmol)、N,N−ジメチルベンズアミド(149mg,1.0mmol)、ジフェニルシラン(239mg,1.3mmol)を加え、50℃で24時間撹拌した。反応終了後、1H−NMRスペクトルを測定して生成物の構造と収率を決定した。その結果を表8に示す。
1H−NMR(400MHz,CDCl3):2.24(s,6H),3.42(s,2H),7.30−7.38(m,5H).
【0114】
[実施例27]触媒としてFe(CNtBu)5を用いたN,N−ジメチルベンズアミドの1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンによるヒドロシラン還元反応
【化7】
【0115】
反応容器に、合成例4で得られたFe(CNtBu)5(4.7mg,0.01mmol)、N,N−ジメチルベンズアミド(149mg,1.0mmol)、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン(147mg,1.3mmol)を加え、50℃で24時間撹拌した。反応終了後、1H−NMRスペクトルを測定して生成物の構造と収率を決定した。その結果を表8に示す。
【0116】
[比較例6]触媒としてCo2(CO)8を用いたN,N−ジメチルベンズアミドのジフェニルシランによるヒドロシラン還元反応
反応容器に、Co2(CO)8(1.7mg,0.005mmol)、N,N−ジメチルベンズアミド(149mg,1.0mmol)、ジフェニルシラン(239mg,1.3mmol)を加え、50℃で24時間撹拌した。反応終了後、1H−NMRスペクトルを測定して生成物の構造と収率を決定した。その結果を表8に示す。
【0117】
【表8】
【0118】
[実施例28]触媒としてCo2(CNtBu)8を用いたアセトニトリルの1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンによるヒドロシラン還元反応
【化8】
【0119】
反応容器に、合成例1で得られたCo2(CNtBu)8(3.4mg,0.005mmol)、アセトニトリル(41mg,1.0mmol)、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン(147mg,1.3mmol)を加え、50℃で24時間撹拌した。反応終了後、1H−NMRスペクトルを測定して生成物の構造と収率を決定した。その結果を表9に示す。
1H−NMR(400MHz,CDCl3):0.18(s,6H),0.19(s,6H),1.02(t,J=6.4,3H),2.88(q,J=6.4,2H).
【0120】
[比較例7]触媒としてCo2(CO)8を用いたアセトニトリルの1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンによるヒドロシラン還元反応
反応容器に、Co2(CO)8(1.7mg,0.005mmol)、アセトニトリル(41mg,1.0mmol)、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン(147mg,1.3mmol)を加え、50℃で24時間撹拌した。反応終了後、1H−NMRスペクトルを測定して生成物の構造と収率を決定した。その結果を表9に示す。
【0121】
【表9】
【0122】
[5]炭素−炭素不飽和結合を有する化合物を基質として用いた水素化反応
[実施例29]触媒としてCo2(CNtBu)8を用いた1−オクテンの水素化反応
オートクレーブ用反応容器に、合成例1で得られたCo2(CNtBu)8(6.4mg,0.005mmol)、1−オクテン(1.12g,10mmol)を加え、10atm水素を導入し、80℃で24時間撹拌した。反応終了後、1H−NMRスペクトルを測定して生成物の構造と収率を決定した。その結果を表10に示す。
1H−NMR(CDCl3,400MHz)δ=0.88(t,J=7.2Hz,6H),1.16−1.36(m,12H).
【0123】
[実施例30]触媒としてFe(CNtBu)5を用いたスチレンの水素化反応
オートクレーブ用反応容器に、合成例4で得られたFe(CNtBu)5(4.7mg,0.01mmol)、スチレン(1.04g,10mmol)を加え、10atm水素を導入し、80℃で24時間撹拌した。反応終了後、1H−NMRスペクトルを測定して生成物の構造と収率を決定した。その結果を表10に示す。
1H−NMR(CDCl3,400MHz)δ=1.13(t,J=7.2Hz,3H),2.54(q,J=7.2Hz,2H),7.02−7.20(m,5H).
【0124】
【表10】
【0125】
[実施例31]触媒としてCo2(CNtBu)8を用いたα−メチルスチレンのトリエチルシランによるヒドロシリル化反応
反応容器に、合成例1で得られたCo2(CNtBu)8(3.4mg,0.005mmol)、α−メチルスチレン(129μL,1.0mmol)、トリエチルシラン(151mg,1.3mmol)を加え、25℃で24時間撹拌した。反応終了後、1H−NMRスペクトルを測定して生成物の構造と収率を決定した。目的生成物における2.86ppmの多重線を確認し、その収率を求めた。その結果を表11に示す。
1H−NMR(396MHz,CDCl3)δ:7.21−7.27(m,4H),7.15−7.17(m,1H),2.86(sext,J=6.8,1H),1.27(d,J=6.8,3H),0.98(dd,J=14.8,6.8Hz,1H),0.90(dd,J=14.8,6.8Hz,1H),0.86(t,J=8.0,9H),0.34−0.48(m,6H).
【0126】
[実施例32]触媒としてCo2(CNtBu)8を用いたα−メチルスチレンのジメチルフェニルシランによるヒドロシリル化反応
反応容器に、合成例1で得られたCo2(CNtBu)8(3.4mg,0.005mmol)、α−メチルスチレン(129μL,1.0mmol)、ジメチルフェニルシラン(177mg,1.3mmol)を加え、25℃で24時間撹拌した。反応終了後、1H−NMRスペクトルを測定して生成物の構造と収率を決定した。目的生成物における2.85ppmの多重線を確認し、その収率を求めた。その結果を表11に示す。
1H−NMR(396MHz,CDCl3)δ:7.44−7.47(2H,m),7.31−7.34(3H,m),7.21−7.26(2H,m),7.11−7.17(3H,m),2.85(sext,J=6.8,1H),1.23(d,J=6.8,3H),1.22(dd,J=14.8,6.8Hz,1H),1.15(dd,J=14.8,6.8Hz,1H),0.15(s,3H),0.09(s,3H).
【0127】
【表11】
【0128】
[実施例33]触媒としてCo2(CNAd)8を用いたα−メチルスチレンの両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ポリジメチルシロキサンによるヒドロシリル化反応
反応容器に、合成例2で得られたCo2(CNAd)8(6.4mg,0.005mmol)、α−メチルスチレン(1.53mg,13mmol)、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ポリジメチルシロキサン(重合度18)(7.4g,5.0mmol)を加え、50℃で24時間撹拌した。反応終了後、1H−NMRスペクトルを測定して生成物の構造と収率を決定した。目的生成物におけるケイ素に隣接する炭素上のプロトンのシグナルである0.98ppmの多重線を確認し、その収率を求めた(収率>99%)。
1H−NMR(396MHz,CDCl3)δ:7.27(t,J=6.8,2H),7.21(d,J=6.8,2H),7.15(t,J=6.8,1H),2.92(sext,J=6.8,1H),1.28(d,J=6.8,3H),0.90−0.98(m,2H),0.05(s),−0.05(s),−0.07(s).
【0129】
[実施例34]Co2(CNMes)8を空気中で24時間放置した後、それを触媒として用いたα−メチルスチレンの1,1,1,3,3−ペンタメチルジシロキサンによるヒドロシリル化反応
グローブボックス内で、反応容器に、合成例3で得られたCo2(CNMes)8(6.4mg,0.005mmol)を加えた。その反応容器をグローブボックスの外へ出し、空気中室温で24時間放置した。その後、反応容器をグローブボックス内に持ち込みα−メチルスチレン(129μL,1.0mmol)、1,1,1,3,3−ペンタメチルジシロキサン(254μL,1.3mmol)を加え、25℃で24時間撹拌した。反応終了後、1H−NMRスペクトルを測定して生成物の構造と収率を決定した。目的生成物におけるケイ素に隣接する炭素上のプロトンのシグナルである0.94ppmの多重線を確認し、その収率を求めた(収率>99%)。
【0130】
[実施例35]触媒としてFe(CNAd)5を用いたスチレンの1,1,1,3,3−ペンタメチルジシロキサンによるヒドロシリル化反応
反応容器に、合成例5で得られたFe(CNAd)5(8.6mg,0.01mmol)、スチレン(114μL,1.0mmol)、1,1,1,3,3−ペンタメチルジシロキサン(254μL,1.3mmol)を加え、50℃で24時間撹拌した。反応終了後、1H−NMRスペクトルを測定して生成物の構造と収率を決定した。目的生成物におけるケイ素に隣接する炭素上のプロトンのシグナルである0.90ppmの多重線を確認し、その収率を求めた。その結果を表12に示す。
【0131】
[実施例36]触媒としてFe(CNAd)5を用いたスチレンのジエトキシ(メチル)シランによるヒドロシリル化反応
反応容器に、合成例5で得られたFe(CNAd)5(8.6mg,0.01mmol)、スチレン(114μL,1.0mmol)、ジエトキシ(メチル)シラン(175mg,1.3mmol)を加え、50℃で24時間撹拌した。反応終了後、1H−NMRスペクトルを測定して生成物の構造と収率を決定した。目的生成物におけるケイ素に隣接する炭素上のプロトンのシグナルである0.90ppmの多重線を確認し、その収率を求めた。その結果を表12に示す。
1H−NMR(396MHz,CDCl3)δ:7.20(m,5H),3.80(m,4H)2.68−2.72(m,2H),1.23(t,J=6.8,6H),0.97−1.01(m,2H),0.12(s,3H).
【0132】
【表12】
【0133】
[実施例37]触媒としてFe(CNAd)5を用いたスチレンの両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ポリジメチルシロキサンによるヒドロシリル化反応
反応容器に、合成例5で得られたFe(CNAd)5(8.6mg,0.01mmol)、スチレン(154μL,1.3mmol)、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ポリジメチルシロキサン(重合度18)(0.74g,0.50mmol)を加え、50℃で24時間撹拌した。反応終了後、1H−NMRスペクトルを測定して生成物の構造と収率を決定した。目的生成物におけるケイ素に隣接する炭素上のプロトンのシグナルである0.90ppmの多重線を確認し、その収率を求めた。その結果を表13に示す。
1H−NMR(396MHz,CDCl3)δ:7.24−7.29(m,2H),7.13−7.22(m,3H),2.61−2.68(m,2H),0.86−0.92(m,2H),0.08(s),0.07(s).
【0134】
【表13】
【0135】
[実施例38]触媒としてNi(CNtBu)4を用いたスチレンの1,1,1,3,3−ペンタメチルジシロキサンによるヒドロシリル化反応
【化9】
【0136】
反応容器に、合成例6で得られたNi(CNtBu)4(3.9mg,0.01mmol)、スチレン(114μL,0.01mmol)、1,1,1,3,3−ペンタメチルジシロキサン(254μL,1.3mmol)を加え、80℃で24時間撹拌した。反応終了後、1H−NMRスペクトルを測定して生成物の構造と収率を決定した。目的生成物におけるケイ素に隣接する炭素上のプロトンのシグナルである2.65ppmの多重線を確認し、その収率を求めた(収率39%)。
1H−NMR(396MHz,CDCl3)δ:7.22−7.29(m,5H),2.65(q,J=7.6Hz,1H),1.35(d,J=7.6Hz,2H),0.01(s,9H),−0.01(s,3H),−0.02(s,3H).
【0137】
[実施例39]触媒としてCo2(CNMes)8を用いた1,1,1,3,3−ペンタメチル−3−ビニルジシロキサンの1,1,1,3,3−ペンタメチルジシロキサンによるヒドロシリル化反応
反応容器に、合成例3で得られたCo2(CNMes)8(6.4mg,0.005mmol)、1,1,1,3,3−ペンタメチル−3−ビニルジシロキサン(174mg,1.0mmol)、1,1,1,3,3−ペンタメチルジシロキサン(254μL,1.3mmol)を加え、80℃で3時間撹拌した。反応終了後、1H−NMRスペクトルを測定して生成物の構造と収率を決定した。目的生成物におけるケイ素に隣接する炭素上のプロトンのシグナルである0.40ppmの多重線を確認し、その収率を求めた。その結果を表14に示す。
1H−NMR(396MHz,CDCl3)δ:0.03(s,12H),0.06(s,18H),0.40(s,4H).
【0138】
[実施例40]触媒としてCo2(CNtBu)8を用いたビニルトリエトキシシランの1,1,1,3,3−ペンタメチルジシロキサンによるヒドロシリル化反応
反応容器に、合成例1で得られたCo2(CNtBu)8(3.4mg,0.005mmol)、ビニルトリエトキシシラン(190mg,1.0mmol)、1,1,1,3,3−ペンタメチルジシロキサン(254μL,1.3mmol)を加え、50℃で24時間撹拌した。反応終了後、1H−NMRスペクトルを測定して生成物の構造と収率を決定した。目的生成物におけるケイ素に隣接する炭素上のプロトンのシグナルである0.50ppmの多重線を確認し、その収率を求めた。その結果を表14に示す。
1H−NMR(396MHz,CDCl3)δ:3.78(6H,q,J=7.0Hz),1.19(9H,t,J=7.0Hz),0.47−0.53(4H,m),0.02(9H,s),0.00(6H,s).
【0139】
【表14】
【国際調査報告】

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