特表-18163805IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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再表2018-163805弾性波装置、高周波フロントエンド回路及び通信装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2018年9月13日
【発行日】2019年12月26日
(54)【発明の名称】弾性波装置、高周波フロントエンド回路及び通信装置
(51)【国際特許分類】
   H03H 9/25 20060101AFI20191129BHJP
【FI】
   H03H9/25 C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】38
【出願番号】特願2019-504440(P2019-504440)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2018年2月20日
(31)【優先権主張番号】特願2017-44690(P2017-44690)
(32)【優先日】2017年3月9日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】特許業務法人 宮▲崎▼・目次特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩本 英樹
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼井 努
(72)【発明者】
【氏名】中川 亮
(72)【発明者】
【氏名】山根 毅
(72)【発明者】
【氏名】太田川 真則
【テーマコード(参考)】
5J097
【Fターム(参考)】
5J097AA14
5J097BB15
5J097DD28
5J097EE10
5J097FF01
5J097FF03
5J097GG03
5J097GG04
5J097KK03
5J097KK09
(57)【要約】
メインモードの良好な特性を維持しつつ、高次モードを抑制することが可能な弾性波装置を提供する。
オイラー角(φ,θ,ψ)を有し、オイラー角(φ,θ,ψ)における弾性定数が下記の式(1)で表される材料層2と、材料層2に直接的にまたは間接的に積層されており、オイラー角(φ,θ,ψ)を有し、オイラー角(φ,θ,ψ)における弾性定数が下記の式(1)で表される単結晶からなる圧電体3と、圧電体3の第1の主面及び第2の主面のうちの少なくとも一方に設けられているIDT電極4とを備え、材料層の弾性定数C11〜C66のうち0でない少なくとも1つの弾性定数と、圧電体の弾性定数C11〜C66のうち0でない少なくとも1つの弾性定数とが逆符号となっている、弾性波装置1。
【数1】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オイラー角(φ,θ,ψ)を有し、前記オイラー角(φ,θ,ψ)における弾性定数が下記の式(1)で表される材料層と、
対向し合う第1及び第2の主面を有し、前記第2の主面側から前記材料層に直接的にまたは間接的に積層されており、オイラー角(φ,θ,ψ)を有し、前記オイラー角(φ,θ,ψ)における弾性定数が下記の式(1)で表される圧電体と、
前記圧電体の前記第1の主面及び前記第2の主面のうちの少なくとも一方に設けられているIDT電極と、
を備え、
前記材料層の弾性定数C11〜C66のうち0でない少なくとも1つの弾性定数と、前記圧電体の弾性定数C11〜C66のうち0でない少なくとも1つの弾性定数とが逆符号となっている、弾性波装置。
【数1】
【請求項2】
前記材料層の回転操作前の弾性定数cab0としたときに、前記オイラー角(φ,θ,ψ)における前記弾性定数cabは、式(cab)=[α]−1[cab][β]で求められ、前記圧電体の前記オイラー角(φ,θ,ψ)における前記弾性定数cabは、回転操作前の前記圧電体の弾性定数をcabとしたときに、式(cab)=[α]−1[cab][β]で求められる、請求項1に記載の弾性波装置。
式中、α及びβは以下の通りである。
【数2】
また、l、l、l、m、m、m、n、n及びnは以下の通りである。
=cosψcosφ−cosθsinφsinψ
=−sinψcosφ−cosθsinφcosψ
=sinθsinφ
=cosψsinφ+cosθcosφsinψ
=−sinψsinφ+cosθcosφcosψ
=−sinθcosφ
=sinψsinθ
=cosψsinθ
=cosθ
【請求項3】
前記逆符号とされている弾性定数が、前記式(1)におけるC41〜C43、C51〜C54、C61〜C65、C14、C24、C34、C15、C25、C35、C45、C16、C26、C36、C46及びC56のうちの少なくとも1つである、請求項1または2に記載の弾性波装置。
【請求項4】
前記逆符号とされている弾性定数が、前記式(1)のうちの弾性定数C41またはC14を含む、請求項3に記載の弾性波装置。
【請求項5】
前記逆符号とされている弾性定数が、前記式(1)のうちの弾性定数C42またはC24を含む、請求項3または4に記載の弾性波装置。
【請求項6】
前記逆符号とされている弾性定数が、前記式(1)のうちの弾性定数C56またはC65を含む、請求項3〜5のいずれか1項に記載の弾性波装置。
【請求項7】
前記IDT電極により励振される高次モードの少なくとも一部が、前記材料層と前記圧電体の両方を伝搬する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の弾性波装置。
【請求項8】
前記逆符号とされている弾性定数の絶対値が、1GPa以上である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の弾性波装置。
【請求項9】
前記材料層が、前記圧電体を伝搬する弾性波の音速よりも、バルク波の音速が高速となる高音速材料である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の弾性波装置。
【請求項10】
前記材料層が、圧電体以外の材料からなる、請求項1〜9のいずれか1項に記載の弾性波装置。
【請求項11】
前記材料層が、単結晶からなる、請求項1〜10のいずれか1項に記載の弾性波装置。
【請求項12】
前記圧電体が、単結晶からなる、請求項1〜11のいずれか1項に記載の弾性波装置。
【請求項13】
前記圧電体の厚みが、10λ以下である、請求項1〜12のいずれか1項に記載の弾性波装置。
【請求項14】
前記圧電体の厚みが、3.5λ以下である、請求項13に記載の弾性波装置。
【請求項15】
前記圧電体の厚みが、2.5λ以下である、請求項13に記載の弾性波装置。
【請求項16】
前記圧電体の厚みが、1.5λ以下である、請求項13に記載の弾性波装置。
【請求項17】
前記圧電体の厚みが、0.5λ以下である、請求項13に記載の弾性波装置。
【請求項18】
前記材料層が、支持基板である、請求項1〜17のいずれか1項に記載の弾性波装置。
【請求項19】
前記圧電体が、圧電基板である、請求項1〜18のいずれか1項に記載の弾性波装置。
【請求項20】
前記圧電体は、タンタル酸リチウムである、請求項1〜19のいずれか1項に記載の弾性波装置。
【請求項21】
前記圧電体は、ニオブ酸リチウムである、請求項1〜19のいずれか1項に記載の弾性波装置。
【請求項22】
前記材料層は、シリコンからなる、請求項1〜21のいずれか1項に記載の弾性波装置。
【請求項23】
前記材料層における前記圧電体が積層されている側とは反対側の面に積層されている支持基板をさらに備える、請求項1〜22のいずれか1項に記載の弾性波装置。
【請求項24】
前記圧電体が圧電基板であり、前記圧電基板に直接的にまたは間接的に前記材料層が積層されている、請求項1〜23のいずれか1項に記載の弾性波装置。
【請求項25】
前記圧電体と、前記材料層が積層された、板波のモードを励振する構造である、請求項1〜24のいずれか1項に記載の弾性波装置。
【請求項26】
前記材料層と、前記圧電体との間に設けられており、伝搬するバルク波の音速が、前記圧電体を伝搬する弾性波の音速よりも低速である低音速膜をさらに備える、請求項1〜25のいずれか1項に記載の弾性波装置。
【請求項27】
前記低音速膜が酸化ケイ素膜である、請求項26に記載の弾性波装置。
【請求項28】
前記低音速膜の厚みが、2λ以下である、請求項27に記載の弾性波装置。
【請求項29】
前記低音速膜と、前記材料層との間に積層されており、伝搬するバルク波の音速が、前記圧電体を伝搬する弾性波の音速よりも高速である、高音速膜をさらに備える、請求項26〜28のいずれか1項に記載の弾性波装置。
【請求項30】
前記高音速膜が、窒化ケイ素膜である、請求項29に記載の弾性波装置。
【請求項31】
前記窒化ケイ素膜の膜厚が、0.25λ以上、0.55λ以下である、請求項30に記載の弾性波装置。
【請求項32】
弾性表面波装置である、請求項1〜31のいずれか1項に記載の弾性波装置。
【請求項33】
板波を励振する弾性波装置である、請求項1〜32のいずれか1項に記載の弾性波装置。
【請求項34】
請求項1〜33のいずれか1項に記載の弾性波装置と、
パワーアンプと、
を備える、高周波フロントエンド回路。
【請求項35】
請求項1〜33のいずれか1項に記載の弾性波装置と、パワーアンプとを有する高周波フロントエンド回路と、
RF信号処理回路と、
を備える、通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単結晶からなる圧電体を有する弾性波装置、該弾性波装置を有する高周波フロントエンド回路及び通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シリコンからなる支持基板上に、直接または間接に、圧電体が積層されている弾性波装置が種々提案されている。例えば、下記の特許文献1及び2に記載の弾性波装置では、シリコン基板上に、SiO膜を介してLiTaO単結晶圧電体が積層されている。下記の特許文献3に記載の弾性波装置では、シリコンの(111)面、(100)面または(110)面上に、SiO膜を介してLiTaOからなる単結晶の圧電体が積層されている。
【0003】
特許文献3では、(111)面を利用することにより、耐熱性を高めることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−55070号公報
【特許文献2】特開2005−347295号公報
【特許文献3】特開2010−187373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1〜3に記載のような従来の弾性波装置では、利用する弾性波としてのメインモードのエネルギーを圧電体内に集中させることができる。しかしながら、メインモードだけでなく、メインモードの高周波数側に位置している高次モードも同時に圧電体内に閉じこもる場合があることがわかった。そのため、高次モードがスプリアスとなり、弾性波装置の特性が劣化するという問題があった。
【0006】
本発明の目的は、メインモードの良好な特性を維持しつつ、高次モードを抑制することが可能な弾性波装置、該弾性波装置を有する高周波フロントエンド回路及び通信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る弾性波装置は、オイラー角(φ,θ,ψ)を有し、前記オイラー角(φ,θ,ψ)における弾性定数が下記の式(1)で表される材料層と、対向し合う第1及び第2の主面を有し、前記第2の主面側から前記材料層に直接的にまたは間接的に積層されており、オイラー角(φ,θ,ψ)を有し、前記オイラー角(φ,θ,ψ)における弾性定数が下記の式(1)で表される圧電体と、前記圧電体の前記第1の主面及び前記第2の主面のうちの少なくとも一方に設けられているIDT電極と、を備え、前記材料層の弾性定数C11〜C66のうち0でない少なくとも1つの弾性定数と、前記圧電体の弾性定数C11〜C66のうち0でない少なくとも1つの弾性定数とが逆符号となっている。
【0008】
【数1】
【0009】
本発明に係る弾性波装置のある特定の局面では、前記材料層の回転操作前の弾性定数cab0としたときに、前記オイラー角(φ,θ,ψ)における前記弾性定数cabは、式(cab)=[α]−1[cab][β]で求められ、前記圧電体の前記オイラー角(φ,θ,ψ)における前記弾性定数cabは、回転操作前の前記圧電体の弾性定数をcabとしたときに、式(cab)=[α]−1[cab][β]で求められる。
式中、α及びβは以下の通りである。
【数2】
また、l、l、l、m、m、m、n、n及びnは以下の通りである。
=cosψcosφ−cosθsinφsinψ
=−sinψcosφ−cosθsinφcosψ
=sinθsinφ
=cosψsinφ+cosθcosφsinψ
=−sinψsinφ+cosθcosφcosψ
=−sinθcosφ
=sinψsinθ
=cosψsinθ
=cosθ
【0010】
本発明に係る弾性波装置のある特定の局面では、前記逆符号とされている弾性定数が、前記式(1)におけるC41〜C43、C51〜C54、C61〜C65、C14、C24、C34、C15、C25、C35、C45、C16、C26、C36、C46及びC56のうちの少なくとも1つである。この場合には、オイラー角のψを調整することにより、弾性定数の符号を容易に反転させることができる。
【0011】
本発明に係る弾性波装置の他の特定の局面では、前記逆符号とされている弾性定数が、前記式(1)のうちの弾性定数C41またはC14を含む。この場合には高次モードをより効果的に抑制することができる。
【0012】
本発明に係る弾性波装置のさらに他の特定の局面では、前記逆符号とされている弾性定数が、前記式(1)のうちの弾性定数C42またはC24を含む。この場合には高次モードをより効果的に抑制することができる。
【0013】
本発明に係る弾性波装置の別の特定の局面では、前記逆符号とされている弾性定数が、前記式(1)のうちの弾性定数C56またはC65を含む。この場合には高次モードをより効果的に抑制することができる。
【0014】
本発明に係る弾性波装置の他の特定の局面では、前記IDT電極により励振される高次モードの少なくとも一部が、前記材料層と前記圧電体の両方を伝搬する。
【0015】
本発明に係る弾性波装置の他の特定の局面では、前記逆符号とされている弾性定数の絶対値が、1GPa以上である。
【0016】
本発明に係る弾性波装置の他の特定の局面では、前記材料層が、前記圧電体を伝搬する弾性波の音速よりも、バルク波の音速が高速となる高音速材料である。
【0017】
本発明に係る弾性波装置のさらに他の特定の局面では、前記材料層が、圧電体以外の材料からなる。
【0018】
本発明に係る弾性波装置の他の特定の局面では、前記材料層が、単結晶からなる。圧電体以外の単結晶である場合、圧電効果が材料層において生じないため、さらなる高次モードの発生を抑制することができる。
【0019】
本発明に係る弾性波装置のさらに他の特定の局面では、前記圧電体が、単結晶からなる。
【0020】
本発明に係る弾性波装置の別の特定の局面では、前記圧電体の厚みが、10λ以下である。この場合には、高次モードをより効果的に抑制することができる。
【0021】
本発明に係る弾性波装置の別の特定の局面では、前記圧電体の厚みが、3.5λ以下である。
【0022】
本発明に係る弾性波装置の別の特定の局面では、前記圧電体の厚みが、2.5λ以下である。
【0023】
本発明に係る弾性波装置の別の特定の局面では、前記圧電体の厚みが、1.5λ以下である。
【0024】
本発明に係る弾性波装置の別の特定の局面では、前記圧電体の厚みが、0.5λ以下である。
【0025】
本発明に係る弾性波装置のさらに他の特定の局面では、前記材料層が、支持基板である。
【0026】
本発明に係る弾性波装置のさらに他の特定の局面では、前記圧電体が圧電基板である。
【0027】
本発明に係る弾性波装置のさらに他の特定の局面では、前記圧電体は、タンタル酸リチウムである。
【0028】
本発明に係る弾性波装置のさらに他の特定の局面では、前記圧電体は、ニオブ酸リチウムである。
【0029】
本発明に係る弾性波装置のさらに他の特定の局面では、前記材料層は、シリコンからなる。
【0030】
本発明に係る弾性波装置の別の特定の局面では、前記材料層における前記圧電体が積層されている側とは反対側の面に積層されている支持基板がさらに備えられている。
【0031】
本発明に係る弾性波装置の別の特定の局面では、前記圧電体が圧電基板であり、前記圧電基板に直接的にまたは間接的に材料層が積層されている。
【0032】
本発明に係る弾性波装置の別の特定の局面では、前記圧電体と前記材料層が積層された、板波のモードを励振する構造である。
【0033】
本発明に係る弾性波装置のさらに他の特定の局面では、前記材料層と、前記圧電体との間に設けられており、伝搬するバルク波の音速が、前記圧電体を伝搬する弾性波の音速よりも低速である低音速膜がさらに備えられている。好ましくは、前記低音速膜が酸化ケイ素膜である。この場合には、周波数温度特性を改善することができる。
【0034】
本発明に係る弾性波装置のさらに他の特定の局面では、前記低音速膜の厚みが、2λ以下である。
【0035】
本発明に係る弾性波装置のさらに他の特定の局面では、前記低音速膜と、前記材料層との間に積層されており、伝搬するバルク波の音速が、前記圧電体を伝搬する弾性波の音速よりも高速である、高音速膜がさらに備えられている。この場合には、メインモードに最も近い周波数位置に生じる高次モードを効果的に抑制することができる。上記高音速膜としては、好ましくは、窒化ケイ素膜が用いられる。より好ましくは、窒化ケイ素膜の膜厚は、0.25λ以上、0.55λ以下とされる。この場合には、高次モードをより一層効果的に抑制することができる。
【0036】
本発明に係る弾性波装置のさらに他の特定の局面では、弾性波装置が弾性表面波装置である。
【0037】
本発明に係る弾性波装置のさらに他の特定の局面では、板波を励振する弾性波装置である。
【0038】
本発明に係る高周波フロントエンド回路は、本発明に従って構成された弾性波装置と、パワーアンプと、を備える。
【0039】
本発明に係る通信装置は、本発明に従って構成された弾性波装置と、パワーアンプとを有する高周波フロントエンド回路と、RF信号処理回路と、を備える。
【発明の効果】
【0040】
本発明に係る弾性波装置、高周波フロントエンド回路及び通信装置によれば、メインモードの良好な特性を維持しつつ、メインモードの高周波側に位置している高次モードを効果的に抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1図1は、本発明の第1の実施形態に係る弾性波装置の正面断面図である。
図2図2は、本発明の第1の実施形態に係る弾性波装置の電極構造を示す模式的平面図である。
図3図3は、第1の実施形態及び第1の比較例の各弾性波装置のインピーダンス特性を示す図である。
図4図4は、図3中の円Aで示されている部分付近を拡大して示す図である。
図5図5は、Liのオイラー角が(0°,0°,0°)である場合に、シリコン単結晶のオイラー角が(−45°,−54.7°,180°)及び(−45°,−54.7°,0°)の場合の弾性波装置のインピーダンス特性を示す図である。
図6図6は、第2の実施形態及び第3の実施形態の各弾性波装置のインピーダンス特性を示す図である。
図7図7は、座標系(X,Y,Z)とオイラー角(φ,θ,ψ)との関係を示す模式図である。
図8図8は、シリコン単結晶からなる支持基板の弾性定数C41を、タンタル酸リチウムからなる圧電単結晶の弾性定数C41に対して符号を反転させた弾性波装置と、反転させていない弾性波装置のインピーダンス特性を示す図である。
図9図9は、シリコン単結晶からなる基板の弾性定数C42を、タンタル酸リチウムからなる圧電単結晶の弾性定数C42に対して符号を反転させた弾性波装置と、反転させていない弾性波装置のインピーダンス特性を示す図である。
図10図10は、シリコン単結晶からなる基板の弾性定数C56を、タンタル酸リチウムからなる圧電単結晶の弾性定数C56に対して符号を反転させた弾性波装置と、反転させていない弾性波装置のインピーダンス特性を示す図である。
図11図11は、弾性定数C56の大きさと、高次モードの位相最大値との関係を示す図である。
図12図12は、圧電体の膜厚と、高次モード位相差との関係を示す図である。
図13図13は、本発明の第5の実施形態に係る弾性波装置の正面断面図である。
図14図14は、第5の実施形態の弾性波装置及び第2の比較例の弾性波装置のインピーダンス特性を示す図である。
図15図15は、本発明の第6の実施形態に係る弾性波装置の正面断面図である。
図16図16は、第5の実施形態及び第6の実施形態に係る各弾性波装置の位相特性を示す図である。
図17図17は、図16の一部を拡大して示す図である。
図18図18は、第7の実施形態の弾性波装置における、窒化ケイ素膜の膜厚と、高次モード位相最大値との関係を示す図である。
図19図19は、窒化ケイ膜の膜厚と高次モードの位相最大値との関係を示す図である。
図20図20は、第1の実施形態の変形例に係る弾性波装置の正面断面図である。
図21図21は、シリコンの結晶方位の定義を説明するための模式図である。
図22図22は、第8の実施形態の弾性波装置及び第3の比較例の弾性波装置のインピーダンス特性を示す図である。
図23図23は、第9の実施形態に係る弾性波装置の正面断面図である。
図24図24は、第9の実施形態及び第4の比較例において、ニオブ酸リチウムを伝搬するレイリー波を利用した場合の高次モードの応答を示す図である。
図25図25は、材料層と圧電体のオイラー角がいずれも(0°,0°,0°)の場合における、両者の座標軸の関係を示す図である。
図26図26は、高周波フロントエンド回路を有する通信装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明することにより、本発明を明らかにする。
【0043】
なお、本明細書に記載の各実施形態は、例示的なものであり、異なる実施形態間において、構成の部分的な置換または組み合わせが可能であることを指摘しておく。
【0044】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る弾性波装置の正面断面図であり、図2は、第1の実施形態に係る弾性波装置の電極構造を示す模式的平面図である。
【0045】
弾性波装置1は、単結晶からなる材料層2を有する。なお、材料層2は、シリコン(Si)単結晶である。材料層2上に、単結晶からなる圧電体3が積層されている。圧電体3は、Li単結晶である。材料層2は、本実施形態では、圧電体3を支持している支持基板の機能をも有している。
【0046】
圧電体3は、対向し合う第1,第2の主面3a,3bを有する。上記圧電体3は、第2の主面3b側から、材料層2上に直接積層されている。第1の主面3a上に、IDT電極4及び反射器5,6が設けられている。それによって、弾性波装置1では、弾性波共振子が構成されている。なお、弾性波装置1は、圧電体3を伝搬する弾性表面波を利用する弾性表面波装置である。もっとも、本発明において、弾性波装置は弾性表面波を利用したものに限定されず、弾性波を利用したものであればよい。
【0047】
IDT電極4及び反射器5,6はAlからなる。もっとも、IDT電極4及び反射器5,6は、他の金属により構成されてもよい。また、IDT電極4及び反射器5,6は、複数の金属膜を積層した積層金属膜からなるものであってもよい。
【0048】
上記圧電体3は、Li単結晶からなり、すなわち圧電単結晶からなる。このLi単結晶のオイラー角は、(0°,45°,0°)とされている。また、IDT電極4の電極指ピッチで定まる波長をλとしたときに、圧電体3の膜厚は、0.30λとされている。IDT電極4の膜厚は、0.08λとされている。なお、本実施形態では、λは、1.0μmである。
【0049】
弾性波装置1の特徴は、オイラー角(φ,θ,ψ)を有し、オイラー角(φ,θ,ψ)における弾性定数が下記の式(1)で表される材料層と、対向し合う第1及び第2の主面を有し、第2の主面側から材料層に直接的にまたは間接的に積層されており、オイラー角(φ,θ,ψ)を有し、オイラー角(φ,θ,ψ)における弾性定数が下記の式(1)で表される圧電体と、圧電体の第1の主面及び第2の主面のうちの少なくとも一方に設けられているIDT電極と、を備えており、材料層の弾性定数C11〜C66のうち0でない少なくとも1つの弾性定数と、圧電体の弾性定数C11〜C66のうち0でない少なくとも1つの弾性定数とが逆符号となっていることである。それによって、高次モードの抑制が図られている。これを、以下においてより詳細に説明する。
【0050】
単結晶及び単結晶にほぼ近い材料の場合、結晶方位に応じ、弾性定数が下記の式(1)で表される。したがって、圧電体3は、単結晶だけでなく、単結晶にほぼ近い状態の圧電体も含む。また、材料層2は、単結晶だけでなく、単結晶にほぼ近い状態の材料層も含む。これは、以下のすべての実施形態で同様である。
【0051】
【数3】
【0052】
なお、回転操作後の弾性定数をcabとした場合、すなわち、あるオイラー角における弾性定数をcabとした場合、弾性定数cabは一般的に知られているシリコン弾性定数のテンソルに対し、それぞれ3つのオイラー角に対応した回転処理をした後の弾性定数である。この座標変換の方法により、各結晶方位における弾性定数を導くことができる。
【0053】
すなわち、前記材料層の回転操作前の弾性定数cab0としたときに、前記オイラー角(φ,θ,ψ)における前記弾性定数cabは、式(cab)=[α]−1[cab][β]で求められ、前記圧電体の前記オイラー角(φ,θ,ψ)における前記弾性定数cabは、回転操作前の前記圧電体の弾性定数をcabとしたときに、式(cab)=[α]−1[cab][β]で求められる。なお、座標変換の方法については、文献「弾性波素子技術ハンドブック」(日本学術振興会弾性波素子技術第150委員会、第1版第1刷、平成13年11月30日発行、549頁)に記載されている。
【0054】
図3の実線は、本実施形態の弾性波装置のインピーダンス特性を示し、破線が、第1の比較例の弾性波装置のインピーダンス特性を示す。なお、第1の実施形態では、材料層2を構成しているシリコン単結晶のオイラー角は、(−45°,−54.7°,180°)である。これに対して、第1の比較例では、シリコン単結晶のオイラー角は(−45°,−54.7°,0°)とされている。
【0055】
ここで、シリコンにおいて、φ=−45°、θ=−54.7°で指定される面はシリコンの(111)面を表している。本実施形態及び第1の比較例では、ψが180°と0°の2つの方位の結果を示したが、これら2つの方位はともにシリコン(111)面で、積層される圧電体の結晶構造に対して、面内で180°回転して積層した構造に相当する。また、(−45°,−54.7°,180°)と(−45°,−54.7°,0°)の2つの方位のシリコン内を伝搬する弾性波の音速は同じとなる。なぜならば、進行波と後退波とで弾性波の速度は変わらないためである。これを言い換えると、2つの方位において、式(1)で示した各弾性定数の絶対値は同じで、符号が異なることになる。
【0056】
図3では、第1の実施形態及び第1の比較例の双方において、3.8GHz付近にメインモードの応答が現れている。そして、第1の比較例では、5.7GHz付近に高次モードによる応答が現れている。すなわち、図3の円Aで囲まれた部分において、第1の比較例では高次モードの応答が現れている。
【0057】
図4は、図3の円Aで示されている付近を拡大して示す図である。図3及び図4から明らかなように、第1の比較例では、高次モードによる応答が大きく現れているのに対し、本実施形態では、5.7GHz付近において高次モードの応答がほとんど現れていないことがわかる。従って、本実施形態によれば、高次モードによるスプリアスが抑制されるため、共振特性の劣化が生じ難いことがわかる。
【0058】
図3図4で示した2つのシリコンの方位では弾性波の音速は同じである。従来は、積層構造の膜厚、材料の設計を行う際には、各層の音速のみを考慮して設計を行っていたが、本結果から、弾性波のモードに影響するパラメータは音速だけではなく、弾性定数の符号も影響していることが明らかとなった。
【0059】
また、図3から明らかなように、第1の実施形態におけるメインモードの応答の大きさは、第1の比較例と同等である。従って、メインモードの特性を維持しつつ、高次モードを抑制し得ることがわかる。
【0060】
上記のように、第1の実施形態において、第1の比較例に比べ、高次モードの抑制が可能となる理由を、以下において説明する。
【0061】
本願発明者らは、オイラー角(φ,θ,ψ)を有し、オイラー角(φ,θ,ψ)における弾性定数が式(1)で表される材料層2と、対向し合う第1及び第2の主面を有し、第2の主面側から材料層に直接的にまたは間接的に積層されており、オイラー角(φ,θ,ψ)を有し、オイラー角(φ,θ,ψ)における弾性定数が式(1)で表される圧電体と、圧電体の第1の主面及び第2の主面のうちの少なくとも一方に設けられているIDT電極と、を備える構造においては、圧電体の結晶方位と材料層2における結晶方位を特定の範囲とすることにより、上記高次モードの励振を抑制し得ることを見出し、本発明をなすに至った。
【0062】
下記の式(2)は、Liのオイラー角(0°、0°、0°)で20℃における弾性定数を示す。
【0063】
【数4】
【0064】
なお、上記式(2)は、N.M.Shorrocks et al.の文献(Proc.Ultrasonics Symposium(1981))に表されているものである。
【0065】
なお、単結晶方位を回転操作により回転させた場合、上記式(1)で表される弾性定数が変化する。下記の表1は、オイラー角が(0°、45°、0°)のときの圧電体としてのLiの弾性定数を示す。なお、以下においては、式(1)で示した弾性定数について、表1のような表形式で示すこととする。表1において、左端の縦軸の1〜6は、Cabのaを示す。また、上端の欄の1〜6は、Cabのbを示す。
【0066】
【表1】
【0067】
上記表1から明らかなように、弾性定数C51〜C54、C61〜C64、C15、C16、C25、C26、C35、C36、C45、C46の値は0となっており、他の弾性定数は0ではない。
【0068】
他方、材料層としてのオイラー角(−45°,−54.7°,0°)のシリコン単結晶の弾性定数は下記の表2に示す通りとなる。また、第1の比較例で用いたオイラー角(−45°,−54.7°,180°)の材料層としてのシリコン単結晶の弾性定数は下記の表3で示す通りとなる。
【0069】
【表2】
【0070】
【表3】
【0071】
第1の実施形態の圧電体3の弾性定数を示す上記表1と、第1の実施形態の材料層2の弾性定数を示す上記表2とを対比すると、弾性定数C41、C42、C65と、これらと対称な位置にある弾性定数C14、C24及びC56とにおいて、正負の符号が、Liとシリコン単結晶との間で逆転している。
【0072】
他方、第1の比較例の圧電体3の弾性定数を示す上記表1と、第1の比較例の材料層2の弾性定数を示す上記表3とを対比すれば明らかなように、第1の比較例では、C41,C42、C65と、これらと対称な位置にある弾性定数C14、C24及びC56とが、Liとシリコン単結晶とで符号が反転しておらず、同符号であることがわかる。また、表1と表3において、0でない弾性定数の符号は全て同符号である。
【0073】
本実施形態では、材料層2の弾性定数C11〜C66のうち0でない少なくとも1つの弾性定数と、圧電体3の弾性定数C11〜C66のうち0でない少なくとも1つの弾性定数とが逆符号となっている。それによって、高次モードが抑制される。この理由は、以下の通りであると考えられる。
【0074】
まず、単結晶または単結晶に近い材料からなる圧電体3と、単結晶または単結晶に近い材料からなる材料層2とを直接的または間接的に積層した構造では、双方の膜厚により決定される高次モードが発生する。この高次モードにより、材料層2の表面のうち、圧電体3側の表面に高次モードに起因する応力が生じる。この応力により、材料層2に変位が生じ、図3に示した高次モードが励振されていると考えられる。一方、上記圧電体3と上記材料層2との間で、逆符号の弾性定数が存在している場合、材料層2は、圧電体3側から加わった応力方向とは逆の方向に変位しようとすることとなる。そのため、高次モードの励振が阻害され、高次モードが抑制されていると考えられる。
【0075】
従って、本実施形態のように、圧電体3及び材料層2における式(1)の弾性定数C11〜C66のうち、0でない少なくとも1つの弾性定数が、圧電体3と材料層2とで逆符号とされておればよい。
【0076】
なお、0でない弾性定数の符号、すなわち正負は、結晶方位を変更することにより調整することができる。上記のように、材料層2において、オイラー角(−45°,−54.7°,180°)の第1の比較例の場合に対して、オイラー角のψを0°となるように結晶方位を調整することにより、第1の実施形態のように、C41、C42及びC56並びにこれらと対称な位置にある弾性定数の符号を逆転させることができる。
【0077】
式(1)における弾性定数のうち、圧電体3の弾性定数と材料層2の弾性定数とが逆符号となっている弾性定数は、好ましくは、C41〜C43、C51〜C54及びC61〜C65並びにこれらと対称な位置にある弾性定数の少なくとも1つであることが望ましい。なぜならば、これらの弾性定数については、上記結晶方位の調整により、符号を容易に反転させることができるからである。
【0078】
また、材料層2の結晶方位を調整した場合、材料層2中を伝搬する弾性波の音速は変化する場合があるが、材料層2を伝搬する弾性波の音速はメインモードの音速よりは十分大きい。そのため、前述したように圧電体3中に多くのエネルギーが存在するメインモードは、大きな影響を受けない。よって、メインモードの応答による特性を維持しつつ、高次モードを独立に抑制することができる。
【0079】
上記のように、単結晶または単結晶に近い材料からなる材料層2上に、単結晶または単結晶に近い材料からなる圧電体3が積層されている構造における高次モードの抑制が、材料層2の弾性定数の符号と、圧電体3の弾性定数の符号とを調整することにより果たすことができる。つまり、オイラー角(φ,θ,ψ)を有し、オイラー角(φ,θ,ψ)における弾性定数が式(1)で表される材料層2上に、オイラー角(φ,θ,ψ)を有し、オイラー角(φ,θ,ψ)における弾性定数が式(1)で表される圧電体3が積層されている構造における高次モードの抑制を、材料層2の弾性定数の符号と、圧電体3の弾性定数の符号とを調整することにより果たすことができる。
【0080】
なお、Liの結晶方位がオイラー角で(0°,0°,0°)であり、シリコン単結晶の結晶方位がオイラー角で(−45°,−54.7°,180°)及び(−45°,−54.7°,0°)の場合のインピーダンス特性を図5に示す。すなわち、シリコン単結晶の結晶方位は上記第1の実施形態及び第1の比較例と同じであるが、Liの結晶方位が(0°,0°,0°)の場合には、式(2)に示したように、C41、C42、C65及びこれらと対称な位置の弾性定数が0となっている。従って、図5に示すように、高次モードの応答は抑制されていない。
【0081】
なお、図5では、シリコン単結晶の結晶方位が(−45°,−54.7°,180°)の場合を実線で、(−45°,−54.7°,0°)の場合を破線で示したが、実際には実線と破線とがほぼ重なっている。従って、シリコン単結晶の結晶方位がいずれの場合であっても、Li単結晶の弾性定数と、0でない弾性定数の符号の反転が果たされていない。よって、高次モードを抑制することができていない。
【0082】
すなわち、本発明では、上記のように、C51〜C54、C61〜C64、C15、C16、C25、C26、C35、C36、C45、C46の弾性定数のうち少なくとも1つが、0でないことが必要である。
【0083】
(第2の実施形態)
第2の実施形態は第1の実施形態と同様に、単結晶または単結晶に近い材料からなる材料層2上に、単結晶または単結晶に近い材料からなる圧電体3が積層されている。つまり、オイラー角(φ,θ,ψ)を有し、オイラー角(φ,θ,ψ)における弾性定数が式(1)で表される材料層2上に、オイラー角(φ,θ,ψ)を有し、オイラー角(φ,θ,ψ)における弾性定数が式(1)で表される圧電体3が積層されている。もっとも、圧電体3は、第2の実施形態では、LiTaOからなり、その膜厚は0.30λ、カット角は50°Yとした。従って、LiTaOのオイラー角は、(0°,140°,0°)とされている。
【0084】
その他の構成、すなわちIDT電極の材料、膜厚、圧電体の膜厚、及びλは、第1の実施形態と同様とした。
【0085】
第2の実施形態では、シリコン単結晶からなる材料層の結晶方位はオイラー角で(−45°,−54.7°,180°)とした。また、シリコン単結晶の結晶方位をオイラー角で(−45°,−54.7°,0°)の材料層を有することを除いては、上記第2の実施形態と同様の第3の実施形態の弾性波装置を構成した。
【0086】
上記(−45°,−54.7°,180°)のオイラー角の材料層としてのシリコン単結晶の弾性定数を下記の表4に示す。
【0087】
また、(−45°,−54.7°,0°)のオイラー角の材料層としてのシリコン単結晶の弾性定数を下記の表5に示す。
【0088】
また、圧電体としてのLiTaOのオイラー角(0°,140°,0°)における弾性定数を表6に示す。
【0089】
【表4】
【0090】
【表5】
【0091】
【表6】
【0092】
上記第2の実施形態及び第3の実施形態のインピーダンス特性を図6に示す。図6の実線が第2の実施形態の結果を、破線が第3の実施形態の結果を示す。図6から明らかなように、第3の実施形態に比べ、第2の実施形態によれば、5400MHz付近に現れている高次モードがより一層効果的に抑制されていることがわかる。
【0093】
なお、図7は、座標系(X,Y,Z)とオイラー角(φ,θ,ψ)との関係を示す模式図である。
【0094】
本明細書において、オイラー角(φ、θ、ψ)は、文献「弾性波素子技術ハンドブック」(日本学術振興会弾性波素子技術第150委員会、第1版第1刷、平成13年11月30日発行、549頁)記載の右手系オイラー角を用いた。シリコンの場合を例に説明すると、図21に示したようにシリコンの結晶軸をX軸、Y軸、Z軸と定義する。オイラー角(φ、θ、ψ)とは、右ネジの回転方向を正とし、図7に示すように、1)(X,Y,Z)をZ軸回りに「φ」回転し、(X,Y,Z)とし、次に、2)(X,Y,Z)をX軸回りに「θ」回転し、(X,Y,Z)とする。このZ軸を法線とする面が材料層、または、圧電体の主面となる。さらに3)(X,Y,Z)をZ軸回りに「ψ」回転し、(X,Y,Z)とする。このとき、前述の回転操作をオイラー角で(φ、θ、ψ)と表す。
【0095】
式(1)で示した弾性定数とは、材料層、または、圧電体の弾性定数の文献値に対して、前述した回転操作により弾性定数を座標変換したのちの弾性定数のことを言う。つまり、同一の材料であっても、使用するオイラー角により、弾性定数の各成分は各種値、符号を取り得る。
【0096】
また、材料層と圧電体のオイラー角がいずれも(0°,0°,0°)の場合における、両者の座標軸の関係を図25に示す。図25のX、Y、Z軸を材料層の結晶軸、図25のXa、Ya、Zaが圧電体の結晶軸である。オイラー角が(0°,0°,0°)の場合には図25に示したように、XとXa、YとYa、ZとZaが同一方向となるように定義する。圧電体を伝搬する弾性波がX伝搬の場合には、Xa方向とIDT電極が垂直となる。
【0097】
弾性定数Cabと、応力T及び歪みSとの間には、下記の式(3)に示す関係がある。
【0098】
【数5】
【0099】
なお、表4及び表5では、上記弾性定数の有効数字は2桁とされている。
【0100】
また、絶対値が1×10N/m以下の弾性定数は値自体が小さく、高次モードに与える影響が小さいためゼロとみなす。逆に言うと、本発明による高次モード抑制の効果を得るためには、絶対値が1×10N/m以上の弾性定数の符号を反転させる必要がある。
【0101】
また、表4及び表5において*を付けた欄では、弾性定数はψの180°回転では値が変化しない。これに対して、0でない残りの弾性定数は、ψを180°回転した場合、絶対値は変わらないが、符号が変化する。この符号が変化する弾性定数としては、C41、C42、C65及びこれらと対称なC14、C24及びC56などが挙げられる。
【0102】
また、シリコン単結晶の結晶方位が(−45°,−54.7°,0°)と(−45°,−54.7°,180°)の場合のシリコン単結晶の弾性定数C41(=C14)、C42(=C24)及びC65(=C56)の符号は、下記の表7に示す通りである。
【0103】
【表7】
【0104】
他方、LiTaOのオイラー角は(0°,140°,0°)であり、この場合、LiTaOの弾性定数は下記の表8に示す通りである。すなわち、第2の実施形態及び第3の実施形態における圧電体の弾性定数は表8に示す通りである。
【0105】
【表8】
【0106】
従って、表8におけるC41=C14、C42=C24及びC65=C56の符号は、以下の表9に示す通りとなる。
【0107】
【表9】
【0108】
すなわち、シリコン単結晶の結晶方位がオイラー角で(−45°,−54.7°,180°)とした場合、(−45°,−54.7°,0°)の場合と比べ、C41及びC65において符号は逆転されていることがわかる。
【0109】
ところで、上記弾性定数C41〜C43、C51〜C54及びC61〜C65並びにこれらと対称な位置にある弾性定数のうち、圧電体3の弾性定数と材料層2の弾性定数とで1つの弾性定数のみ逆符号とした場合のインピーダンス特性を図8図10にそれぞれ示す。構造は第2の実施形態に記載した構造で、LiTaOのオイラー角は(0°,140°,0°)、シリコンのオイラー角が(−45°,−54.7°,0°)の場合の弾性定数を基準として、C41(=C14)、C42(=C24)、C65(=C56)の値を適宜変更して評価を行った。なお、基準とした構造では、LiTaOの弾性波装置と、シリコンの弾性波装置とは全て同符号である。この基準とした構造の波形を図8〜10の破線で示す。
【0110】
図8の実線は、圧電体3の弾性定数C41(=C14)の符号と、材料層2の弾性定数C41(=C14)の符号のみを、逆符号とした場合、破線は、弾性定数C41(=C14)を同符号とした場合の弾性波装置のインピーダンス特性を示す。図8に示すように、符号の反転により高次モードがわずかに抑制されていることがわかる。
【0111】
図9の実線は、圧電体3の弾性定数C42(=C24)の符号と、材料層2の弾性定数C41(=C14)の符号のみを逆符号とした場合の弾性波装置のインピーダンス特性を示す。破線は、弾性定数C42(=C24)を同符号とした場合の弾性波装置のインピーダンス特性を示す。
【0112】
図10の実線は、圧電体3の弾性定数C56(=C65)の符号と、材料層2の弾性定数C41(=C14)の符号のみを、逆符号とした場合の弾性波装置のインピーダンス特性を示す。図10においても、破線は、弾性定数C56(=C65)が逆符号とされていない弾性波装置のインピーダンス特性を示す。
【0113】
図9から明らかなように、圧電体3の弾性定数C42の符号と、材料層2の弾性定数C41(=C14)の符号のみを逆符号とした場合、高次モードを効果的に抑圧し得ることがわかる。さらに、図10に示すように、弾性定数C56の符号を反転させた場合には、高次モードをより一層効果的に抑制でき、高次モードによる応答がほぼ現れていないことがわかる。
【0114】
従って、好ましくは、弾性定数C41、C42及びC56のうち、弾性定数C56=C65の符号を反転させることがもっとも好ましく、弾性定数C42=C24を逆符号とすることが次に好ましいことがわかる。
【0115】
従って、本発明においては、圧電体3の弾性定数と材料層2の弾性定数とで逆符号とされている弾性定数は、弾性定数C41を含むことが好ましく、より好ましくは、弾性定数C42を含むことが好ましく、さらに好ましくは弾性定数C56またはC65を含むことが望ましい。
【0116】
なお、第1の実施形態及び第2の実施形態では、材料層2は、シリコン単結晶からなったが、サファイア、ダイヤモンド、SiC、GaN、AlN、GaAs、各種金属材料等の他の単結晶材料を用いても同様の効果が得られる。加えて、単結晶に限らず、弾性定数が式(1)で表される材料からなる材料層2であれば、同様の効果が得られる。シリコンの場合は熱伝導率が高く、放熱性が良好である。また、熱線膨張係数が小さく、温度特性の改善が可能となる。ダイシング等の加工性も良好で、材料層がシリコンであることが好ましい。
【0117】
もっとも、材料層は単結晶からなることが好ましく、圧電体以外の単結晶からなる材料層であることがより好ましい。圧電体の場合には、圧電効果を発現するため、新たな高次モードを生じるおそれがある。これに対して、圧電体以外の単結晶からなる材料層を用いることにより、このようなさらなる高次モードの影響を受け難い。
【0118】
また、第1及び第2の実施形態では、LiまたはLiTaOを用いたが、圧電体を構成する圧電単結晶についてもこれらに限定されるものではない。
【0119】
(第3の実施形態)
第3の実施形態では、シリコン単結晶のオイラー角が(−45°,−54.7°,0°)の場合の弾性定数に対し、弾性定数C56=C65の値のみを変化した架空の弾性定数を持つ材料層を用いた。その他の内容は第2の実施形態と同様とした。
【0120】
この場合において、C56=C65の値を種々変化させた。
【0121】
図11は、弾性定数C56の大きさと、高次モードの位相最大値との関係を示す図である。LiTaOのオイラー角が(0°,140°,0°)の場合、弾性定数C56は、−3.7GPaであり、負の値である。
【0122】
従って、シリコン単結晶の弾性定数C56が正であれば、高次モードを抑制することができる。図11に示すように、シリコン単結晶の弾性定数C56の値が0よりも正の値で大きい領域において、高次モードの位相最大値を−70°レベルまで抑制し得ることがわかる。従って、シリコン単結晶の弾性定数C56が0よりも大きい値であれば、弾性定数C56の大きさに依存せずに、高次モードを効果的に抑制することができる。より好ましくは、1GPa以上とすることで、高次モードをより効果的に抑制することが可能となる。すなわち、高次モードの抑制では、弾性定数の絶対値には依存しないことがわかる。
【0123】
(第4の実施形態)
第4の実施形態では、第2の実施形態において、LiTaOからなる圧電体3の膜厚を0.05λ〜15λの範囲で変化させた。
【0124】
LiTaOの結晶方位はオイラー角で(0°,140°,0°)とし、シリコン単結晶の結晶方位はオイラー角で(−45°,−54.7°,0°)または(−45°,−54.7°,180°)とした。
【0125】
図12の横軸は圧電体の膜厚すなわちLiTaOの膜厚であり、縦軸は高次モード位相差(°)である。ここで、高次モード位相差とは、シリコン単結晶のオイラー角が(−45°,−54.7°,0°)の場合の高次モード位相差最大値と、(−45°,−54.7°,180°)である場合の高次モード位相差最大値との差を示す。この高次モード位相差の差が大きいほど、高次モード強度の改善度が大きい。
【0126】
図12から明らかなように、圧電体の膜厚が薄い方が高次モードの改善度が高い。これは、圧電体が薄いと、シリコン単結晶からなる材料層内へより多くのエネルギーが分布し、高次モード抑制効果が高まるためと考えられる。
【0127】
また、図12によれば、高次モード抑制効果は、圧電体の膜厚が、10λ以下の領域で効果的であることがわかる。従って、好ましくは、圧電体の膜厚は、10λ以下であることが望ましい。
【0128】
(第5の実施形態)
図13は、本発明の第5の実施形態に係る弾性波装置の正面断面図である。
【0129】
弾性波装置21では、材料層2と、圧電体3との間に、低音速膜22が積層されている。低音速膜22は、伝搬するバルク波の音速が、圧電体3を伝搬する弾性波の音速よりも低い低音速材料からなる。この低音速膜22は、本実施形態では、酸化ケイ素からなる。なお、酸化ケイ素はSiOであってもよい。低音速膜を構成する材料としては圧電膜を伝搬する弾性波よりも低音速のバルク波音速を有する適宜の材料を用いることができる。このような低音速材料としては、酸化ケイ素、ガラス、酸窒化ケイ素、酸化タンタル、または、酸化ケイ素にフッ素や炭素やホウ素を加えた化合物など、当該材料を主成分とした媒質を用いることができる。
【0130】
第5の実施形態の弾性波装置においても、材料層2と圧電体3との間で、前述した式(1)で表される弾性定数C11〜C66のうち、0でない少なくとも1つの弾性定数が、逆符号とされておればよい。それによって、第1〜第4の実施形態と同様に、高次モードを抑制することができる。これを、より具体的な実験例に基づき説明する。
【0131】
第5の実施形態の弾性波装置21において、LiTaOからなる圧電体3の厚みを0.3λ、オイラー角を(0°,140°,0°)とした。酸化ケイ素膜として、SiO膜を用いた。そしてSiO膜からなる低音速膜22の厚みは0.35λとした。材料層2として用いたシリコン単結晶のオイラー角を第2の実施形態の場合と同様に、(−45°,−54.7°,0°)または(−45°,−54.7°,180°)とした。
【0132】
IDT電極4の電極指ピッチで定まる波長λは1.0μm、IDT電極4は、Alからなり、その膜厚は0.08λとした。
【0133】
図14の実線は、第5の実施形態の結果を示し、シリコン単結晶のオイラー角が(−45°,−54.7°,180°)の場合のインピーダンス特性である。破線は、第2の比較例の特性を示し、シリコン単結晶のオイラー角は(−45°,−54.7°,0°)である。破線で示す特性に比べ、実線で示す特性によれば、5.1GHz付近に現れている高次モードを効果的に抑制し得ることがわかる。
【0134】
このように、圧電体3と材料層2との間に低音速膜22を設けてもよい。この場合、低音速膜22を設けることにより、圧電体3への弾性波のエネルギー集中度を高めることができる。それによって損失を小さくすることができる。また、SiOからなる低音速膜22の場合には、周波数温度特性を改善することができる。さらに、WO2012/086639に開示されているように、SiO膜の膜厚を2λ以下とすることにより、電気機械結合係数を調整することができる。
【0135】
(第6の実施形態)
図15は、第6の実施形態に係る弾性波装置の正面断面図である。弾性波装置31は、低音速膜22と、材料層2との間に高音速膜32が積層されている。その他の構成は、弾性波装置31は、弾性波装置21と同様である。高音速膜32は、伝搬するバルク波の音速が、圧電体3を伝搬する弾性波の音速よりも高速である高音速材料からなる。このような高音速材料は、上記音速関係を満たす限り特に限定されない。低音速膜22は、前述した適宜の低音速材料で構成し得るが、本実施形態では、低音速膜22は酸化ケイ素である。また、高音速膜32は、窒化ケイ素である。
【0136】
高音速膜32用の高音速材料としては、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、シリコン、サファイア、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム、水晶、アルミナ、ジルコニア、コ−ジライト、ムライト、ステアタイト、フォルステライト、マグネシア、DLC膜またはダイヤモンド、これらの材料を主成分とする媒質、これらの材料の混合物を主成分とする媒質等が用いられ得る。
【0137】
このように、高音速膜32をさらに積層した弾性波装置31でも、材料層2の弾性定数C41〜C43、C51〜C54、及びC61〜C65並びにこれらと対称な位置にある弾性定数の少なくとも1つの弾性定数と、圧電体3の弾性定数C41〜C43、C51〜C54、及びC61〜C65並びにこれらと対称な位置にある弾性定数の少なくとも1つの弾性定数とが逆符号とされておればよい。それによって、高次モードを抑制することができる。これを、図16及び図17に示す。
【0138】
窒化ケイ素からなる高音速膜の膜厚を0.45λとした。LiTaOのオイラー角は、(0°,140°,0°)とし、シリコン単結晶のオイラー角は、第6の実施形態において(−45°,−54.7°,180°)とした。その他の構成は、第5の実施形態と同様にして、第6の実施形態に係る弾性波装置を用意した。比較のために、第5の実施形態の弾性波装置を用意した。
【0139】
図16及び図17は、第6の実施形態及び第5の実施形態の弾性波装置の位相特性を示す図である。図16及び図17において実線が第6の実施形態の結果を、破線が第5の実施形態の結果を示す。破線に比べ実線の特性によれば、4600〜4700MHz付近の高次モードを抑制し得ることがわかる。また、4700〜5000MHz付近における位相特性が−90°に近いため、損失の低減も果たすことが可能となっている。さらに、5000〜6000MHz付近に、弱い応答の高次モードが生じている。しかしながら、窒化ケイ素膜を有しない場合に比べ、高次モードの応答(位相最大値)のピーク自体は小さくなっている。
【0140】
すなわち、高音速膜32を設けることにより、高次モードをより一層効果的に抑制し得ることがわかる。
【0141】
(第7の実施形態)
第7の実施形態として、第6の実施形態の弾性波装置31において、高音速膜32としての窒化ケイ素膜の膜厚を変化させた。図18は窒化ケイ素膜の膜厚と、高次モードの位相最大値との関係を示す図である。
【0142】
図18から明らかなように、窒化ケイ素膜の膜厚が、0.25λ以上になると、高次モードの強度がほぼ−90°付近まで低下することがわかる。従って、好ましくは、窒化ケイ素膜の膜厚は0.25λ以上である。なお、図19は、窒化ケイ素膜の膜厚を変化させた場合の4000MHz〜6000MHzの帯域に発生する高次モードの位相最大値の変化を示す図である。
【0143】
図19から明らかなように、窒化ケイ素膜の膜厚を0.55λ以下とすれば、4000MHz〜6000MHzに現れる高次モードの位相を−60°よりも小さくし得ることがわかる。
【0144】
従って、メインモードからもっとも近い高次モードを抑制しつつ、高次モードの全体のレベルを抑制するには、窒化ケイ素膜の膜厚は0.25λ以上、0.55λ以下の範囲とするのが望ましいことがわかる。
【0145】
図20は、第1の実施形態の変形例に係る弾性波装置の正面断面図である。図20に示す弾性波装置51では、材料層2の圧電体3と接触している側の面とは反対側の面に支持基板52が積層されている。このように、材料層2を支持している支持基板52がさらに備えられていてもよい。支持基板52を構成する材料としては、特に限定されず、アルミナ、シリコンなどの適宜の絶縁性セラミックスや、金属などを用いることができる。
【0146】
(第8の実施形態)
第8の実施形態に係る弾性波装置の積層構造は、第1の実施形態の弾性波装置と同様である。もっとも、積層構造は以下のとおりである。シリコンからなる厚み0.1λの材料層上に、厚み0.3λのLiTaOからなる圧電体が積層されている。この圧電体上に、厚み0.08λのAlからなるIDT電極が設けられている。LiTaOのオイラー角を(0°,140°,0°)とし、シリコンのオイラー角は第8の実施形態では、(−45°,−54.7°,180°)とした。また、第3の比較例として、シリコンのオイラー角が、(−45°,−54.7°,0°)であることを除いては、第8の実施形態と同様にして弾性波装置を作製した。シリコンからなる材料層の下面を無反射吸収端としてシミュレーションし、高次モードの応答を調べた。
【0147】
図22の実線は、第8の実施形態の結果を、破線は第3の比較例の結果を示す。第8の実施形態においても、弾性定数の符号が、圧電体と材料層とで逆符号とされている。そのため、図22から明らかなように高次モードを効果的に抑制し得ることがわかる。このように、材料層は厚みのある支持基板ではなく、薄い材料層であってもよい。また、第8の実施形態のように、板波のモードを励振する構造においても、高次モードを抑制することができる。
【0148】
(第9の実施形態)
図23は、第9の実施形態に係る弾性波装置の正面断面図である。弾性波装置61は、126.5°Yカットのニオブ酸リチウムからなる圧電体62を有する。圧電体62上に、IDT電極63が設けられている。IDT電極63は、Pt膜上に、Al膜が積層されている積層金属膜とした。Al膜の厚みは0.06λ、Pt膜の厚みは0.02λとした。
【0149】
また、IDT電極63を覆うように、厚み0.3λの酸化ケイ素膜(SiO膜)64が積層されており、酸化ケイ素膜64上に、シリコンからなる材料層65が積層されている。このように、圧電体62のIDT電極63が設けられている主面に間接に材料層65が積層されている。第9の実施形態では、シリコンのオイラー角は(−45°,−54.7°,180°)とした。第4の比較例として、シリコンのオイラー角が(−45°,−54.7°,0°)としたことを除いては、第9の実施形態と同様にして弾性波装置を作製した。
【0150】
図24は、第9の実施形態及び第4の比較例において、ニオブ酸リチウムを伝搬するレイリー波を利用した場合の高次モードの応答を示す図である。図24の破線で示すように、第4の比較例では、高次モードの応答が4040MHz付近において強く現れているのに対し、実線で示す第9の実施形態では、高次モードの応答がほとんど流れていないことがわかる。図24から、この場合においても、圧電体と材料層とで弾性定数を逆符号とすることにより、高次モードを抑制し得ることがわかる。
【0151】
(圧電体の厚み及び酸化ケイ素膜の厚み)
LiTaO膜からなる圧電体の膜厚は、3.5λ以下が好ましい。その場合には、3.5λを超えた場合に比べて、Q値が高くなる。より好ましくは、Q値をより高めるには、LiTaO膜の膜厚は、2.5λ以下であることが望ましい。
【0152】
また、圧電体の膜厚が、2.5λ以下の場合、周波数温度係数TCFの絶対値が2.5λを超えた場合に比べて小さくすることができる。より好ましくは、膜厚を2λ以下とすることが望ましく、その場合には、周波数温度係数TCFの絶対値を、10ppm/℃以下とし得る。周波数温度係数TCFの絶対値を小さくするには、圧電体の膜厚を1.5λ以下とすることがさらに好ましい。
【0153】
電気機械結合係数及び比帯域の調整範囲を広げるためには、LiTaO膜の膜厚は、0.05λ以上、0.5λ以下の範囲が望ましい。
【0154】
また、酸化ケイ素膜の圧電体とは反対側の面に高音速膜として、さまざまな高音速材料からなる膜を積層することができる。この場合の高音速膜としては、窒化ケイ素膜、酸化アルミニウム膜またはDLC膜などを用いることができる。
【0155】
なお、この場合、高音速膜の材質及び酸化ケイ素膜の膜厚を変更したとしても、電気機械結合係数及び音速がほとんど変化しないことが確かめられている。特に、酸化ケイ素膜の膜厚が、0.1λ以上、0.5λ以下では、高音速膜の材質の如何に関わらず、電気機械結合係数はほとんど変わらない。また、酸化ケイ素膜の膜厚が、0.3λ以上、2λ以下であれば、高音速膜の材質の如何に関わらず、音速が変わらない。従って、好ましくは、酸化ケイ素からなる低音速膜の膜厚は、2λ以下、より望ましくは0.5λ以下であることが好ましい。
【0156】
(弾性波装置の構造)
本発明の弾性波装置は、弾性波共振子であってもよく、帯域通過型の弾性波フィルタであってもよく、弾性波装置の電極構造は特に限定されない。
【0157】
図26は、高周波フロントエンド回路を有する通信装置の概略構成図である。通信装置240は、アンテナ202と、高周波フロントエンド回路230と、RF信号処理回路203とを有する。高周波フロントエンド回路230は、アンテナ202に接続される回路部分である。高周波フロントエンド回路230は、マルチプレクサ210と、増幅器221〜224とを有する。マルチプレクサ210は、第1〜第4のフィルタ211〜214を有する。この第1〜第4のフィルタ211〜214に、上述した本発明の弾性波装置を用いることができる。マルチプレクサ210は、アンテナ202に接続されるアンテナ共通端子225を有する。アンテナ共通端子225、に受信フィルタとしての第1〜第3のフィルタ211〜213一端と、送信フィルタとしてのフィルタの214の一端とが共通接続されている。第1〜第3のフィルタ211〜213の出力端が、増幅器221〜223にそれぞれ接続されている。また、第4のフィルタ214の入力端に、増幅器224が接続されている。
【0158】
増幅器221〜223の出力端がRF信号処理回路203に接続されている。増幅器224の入力端がRF信号処理回路203に接続されている。
【0159】
なお、マルチプレクサは、複数の送信フィルタのみを有するものであってもよく、複数の受信フィルタを有するものであってもよい。
【0160】
本発明の弾性波装置は、弾性波共振子、フィルタ、デュプレクサ、マルチバンドシステムに適用できるマルチプレクサ、フロントエンド回路及び通信装置として、携帯電話などの通信機器に広く利用できる。
【符号の説明】
【0161】
1…弾性波装置
2…材料層
3…圧電体
3a,3b…第1,第2の主面
4…IDT電極
5,6…反射器
21,31,51,61…弾性波装置
22…低音速膜
32…高音速膜
52…支持基板
62…圧電体
63…IDT電極
64…酸化ケイ素膜
65…材料層
202…アンテナ素子
203…RF信号処理回路
210…マルチプレクサ
211〜214…第1〜第4のフィルタ
221〜224…増幅器
225…アンテナ共通端子
230…高周波フロントエンド回路
240…通信装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26

【手続補正書】
【提出日】2019年8月30日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オイラー角(φ,θ,ψ)を有し、前記オイラー角(φ,θ,ψ)における弾性定数が下記の式(1)で表される材料層と、
対向し合う第1及び第2の主面を有し、前記第2の主面側から前記材料層に直接的にまたは間接的に積層されており、オイラー角(φ,θ,ψ)を有し、前記オイラー角(φ,θ,ψ)における弾性定数が下記の式(1)で表される圧電体と、
前記圧電体の前記第1の主面及び前記第2の主面のうちの少なくとも一方に設けられているIDT電極と、
を備え、
前記材料層の弾性定数C11〜C66のうち0でない少なくとも1つの弾性定数と、前記圧電体の弾性定数C11〜C66のうち0でない少なくとも1つの弾性定数とが逆符号となっている、弾性波装置。
【数1】
【請求項2】
前記材料層の回転操作前の弾性定数ab0としたときに、前記オイラー角(φ,θ,ψ)における前記弾性定数abは、式(ab)=[α]−1ab][β]で求められ、前記圧電体の前記オイラー角(φ,θ,ψ)における前記弾性定数abは、回転操作前の前記圧電体の弾性定数をabとしたときに、式(ab)=[α]−1ab][β]で求められる、請求項1に記載の弾性波装置。
式中、α及びβは以下の通りである。
【数2】

また、l、l、l、m、m、m、n、n及びnは以下の通りである。
=cosψcosφ−cosθsinφsinψ
=−sinψcosφ−cosθsinφcosψ
=sinθsinφ
=cosψsinφ+cosθcosφsinψ
=−sinψsinφ+cosθcosφcosψ
=−sinθcosφ
=sinψsinθ
=cosψsinθ
=cosθ
【請求項3】
前記逆符号とされている弾性定数が、前記式(1)におけるC41〜C43、C51〜C54、C61〜C65、C14、C24、C34、C15、C25、C35、C45、C16、C26、C36、C46及びC56のうちの少なくとも1つである、請求項1または2に記載の弾性波装置。
【請求項4】
前記逆符号とされている弾性定数が、前記式(1)のうちの弾性定数C41またはC14を含む、請求項3に記載の弾性波装置。
【請求項5】
前記逆符号とされている弾性定数が、前記式(1)のうちの弾性定数C42またはC24を含む、請求項3または4に記載の弾性波装置。
【請求項6】
前記逆符号とされている弾性定数が、前記式(1)のうちの弾性定数C56またはC65を含む、請求項3〜5のいずれか1項に記載の弾性波装置。
【請求項7】
前記IDT電極により励振される高次モードの少なくとも一部が、前記材料層と前記圧電体の両方を伝搬する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の弾性波装置。
【請求項8】
前記逆符号とされている弾性定数の絶対値が、1GPa以上である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の弾性波装置。
【請求項9】
前記材料層が、前記圧電体を伝搬する弾性波の音速よりも、バルク波の音速が高速となる高音速材料である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の弾性波装置。
【請求項10】
前記材料層が、圧電体以外の材料からなる、請求項1〜9のいずれか1項に記載の弾性波装置。
【請求項11】
前記材料層が、単結晶からなる、請求項1〜10のいずれか1項に記載の弾性波装置。
【請求項12】
前記圧電体が、単結晶からなる、請求項1〜11のいずれか1項に記載の弾性波装置。
【請求項13】
前記圧電体の厚みが、10λ以下である、請求項1〜12のいずれか1項に記載の弾性波装置。
【請求項14】
前記材料層は、シリコンからなる、請求項1〜13のいずれか1項に記載の弾性波装置。
【請求項15】
前記圧電体と、前記材料層が積層された、板波のモードを励振する構造である、請求項1〜14のいずれか1項に記載の弾性波装置。
【請求項16】
前記材料層と、前記圧電体との間に設けられており、伝搬するバルク波の音速が、前記圧電体を伝搬する弾性波の音速よりも低速である低音速膜をさらに備える、請求項1〜15のいずれか1項に記載の弾性波装置。
【請求項17】
前記低音速膜が酸化ケイ素膜である、請求項16に記載の弾性波装置。
【請求項18】
前記低音速膜の厚みが、2λ以下である、請求項17に記載の弾性波装置。
【請求項19】
前記低音速膜と、前記材料層との間に積層されており、伝搬するバルク波の音速が、前記圧電体を伝搬する弾性波の音速よりも高速である、高音速膜をさらに備える、請求項1618のいずれか1項に記載の弾性波装置。
【請求項20】
前記高音速膜が、窒化ケイ素膜である、請求項19に記載の弾性波装置。
【請求項21】
前記窒化ケイ素膜の膜厚が、0.25λ以上、0.55λ以下である、請求項20に記載の弾性波装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
本発明に係る弾性波装置のある特定の局面では、前記材料層の回転操作前の弾性定数ab0としたときに、前記オイラー角(φ,θ,ψ)における前記弾性定数abは、式(ab)=[α]−1ab][β]で求められ、前記圧電体の前記オイラー角(φ,θ,ψ)における前記弾性定数abは、回転操作前の前記圧電体の弾性定数をabとしたときに、式(ab)=[α]−1ab][β]で求められる。
式中、α及びβは以下の通りである。
【数2】

また、l、l、l、m、m、m、n、n及びnは以下の通りである。
=cosψcosφ−cosθsinφsinψ
=−sinψcosφ−cosθsinφcosψ
=sinθsinφ
=cosψsinφ+cosθcosφsinψ
=−sinψsinφ+cosθcosφcosψ
=−sinθcosφ
=sinψsinθ
=cosψsinθ
=cosθ
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0052
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0052】
なお、回転操作後の弾性定数をabとした場合、すなわち、あるオイラー角における弾性定数をabとした場合、弾性定数abは一般的に知られているシリコン弾性定数のテンソルに対し、それぞれ3つのオイラー角に対応した回転処理をした後の弾性定数である。この座標変換の方法により、各結晶方位における弾性定数を導くことができる。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0053
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0053】
すなわち、前記材料層の回転操作前の弾性定数ab0としたときに、前記オイラー角(φ,θ,ψ)における前記弾性定数abは、式(ab)=[α]−1ab][β]で求められ、前記圧電体の前記オイラー角(φ,θ,ψ)における前記弾性定数abは、回転操作前の前記圧電体の弾性定数をabとしたときに、式(ab)=[α]−1ab][β]で求められる。なお、座標変換の方法については、文献「弾性波素子技術ハンドブック」(日本学術振興会弾性波素子技術第150委員会、第1版第1刷、平成13年11月30日発行、549頁)に記載されている。
【国際調査報告】