特表-18212345IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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再表2018-212345導体の製造方法、配線基板の製造方法及び導体形成用組成物
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  • 再表WO2018212345-導体の製造方法、配線基板の製造方法及び導体形成用組成物 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2018年11月22日
【発行日】2020年5月7日
(54)【発明の名称】導体の製造方法、配線基板の製造方法及び導体形成用組成物
(51)【国際特許分類】
   C23C 18/14 20060101AFI20200410BHJP
   H01L 21/288 20060101ALI20200410BHJP
   H01L 21/28 20060101ALI20200410BHJP
【FI】
   C23C18/14
   H01L21/288 M
   H01L21/28 301R
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】14
【出願番号】特願2019-518897(P2019-518897)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2018年5月18日
(31)【優先権主張番号】特願2017-99366(P2017-99366)
(32)【優先日】2017年5月18日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】599016431
【氏名又は名称】学校法人 芝浦工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】大石 知司
【テーマコード(参考)】
4K022
4M104
【Fターム(参考)】
4K022AA03
4K022AA04
4K022AA15
4K022AA42
4K022BA08
4K022BA35
4K022BA36
4K022CA09
4K022CA19
4K022CA22
4K022DA01
4K022DA08
4K022DB04
4K022EA02
4M104AA10
4M104BB04
4M104DD48
4M104DD51
(57)【要約】
ケト酸と銅イオンとから形成される第一の銅錯体と、窒素原子を含有する配位子と銅イオンとから形成される第二の銅錯体と、を含む組成物を基板に付与して組成物層を形成する工程と、前記組成物層にレーザ照射を行って銅を析出させる工程と、を含む導体の製造方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケト酸と銅イオンとから形成される第一の銅錯体と、窒素原子を含有する配位子と銅イオンとから形成される第二の銅錯体と、を含む組成物を基板に付与して組成物層を形成する工程と、前記組成物層にレーザ照射を行って銅を析出させる工程と、を含む導体の製造方法。
【請求項2】
第二の銅錯体がアミン系銅錯体である、請求項1に記載の導体の製造方法。
【請求項3】
前記レーザ照射がCOレーザ又はErレーザを用いて行われる、請求項1又は請求項2に記載の導体の製造方法。
【請求項4】
前記レーザ照射がパターン状に行われる、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の導体の製造方法。
【請求項5】
大気中で行われる、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の導体の製造方法。
【請求項6】
前記基板が樹脂基板である、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の導体の製造方法。
【請求項7】
基板と、前記基板上に配置される銅配線とを備える配線基板の製造方法であり、ケト酸と銅イオンとから形成される第一の銅錯体と、窒素原子を含有する配位子と銅イオンとから形成される第二の銅錯体と、を含む組成物を前記基板に付与して組成物層を形成する工程と、前記組成物層にレーザ照射を行って銅を析出させる工程と、を含む配線基板の製造方法。
【請求項8】
第二の銅錯体がアミン系銅錯体である、請求項7に記載の配線基板の製造方法。
【請求項9】
前記レーザ照射がCOレーザ又はErレーザを用いて行われる、請求項7又は請求項8に記載の配線基板の製造方法。
【請求項10】
前記レーザ照射がパターン状に行われる、請求項7〜請求項9のいずれか1項に記載の配線基板の製造方法。
【請求項11】
大気中で行われる、請求項7〜請求項10のいずれか1項に記載の配線基板の製造方法。
【請求項12】
前記基板が樹脂基板である、請求項7〜請求項11のいずれか1項に記載の配線基板の製造方法。
【請求項13】
ケト酸と銅イオンとから構成される第一の銅錯体と、窒素原子を含有する配位子と銅イオンとから形成される第二の銅錯体と、を含む導体形成用組成物。
【請求項14】
第一の銅錯体がケト酸銅錯体である、請求項13に記載の導体形成用組成物。
【請求項15】
第二の銅錯体がアミン系銅錯体である、請求項13又は請求項14に記載の導体形成用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導体の製造方法、配線基板の製造方法及び導体形成用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各種電子デバイス、電気機器類などの素子及び配線を印刷法により形成する、プリンタブルエレクトロニクスと呼ばれる技術が注目されている。真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法等による従来の方法は大掛かりな設備を必要とし、これが製品の高コスト化の大きな要因となっている。また、これらの方法では一般に配線となる部分を残し、その他の部分をエッチング等により除去する工程を伴うため、材料利用の非効率、廃棄物の処分などの問題点が存在する。これに対してプリンタブルエレクトロニクスでは、配線材料を含む塗布液を基板に印刷し、これを熱処理して配線を形成する。このため、高価な装置を必要としない、配線形成に伴う廃棄物が生じないなどの利点を有する。
【0003】
一方、配線材料としては金、銀等の貴金属に代わってより低価格でマイグレーションの発生もない銅の使用が検討されている。しかしながら、銅は極めて酸化され易い金属であるため、配線形成を不活性ガス雰囲気下で行う等の酸化防止のための対策が必要であり、これが低コスト化を妨げる要因の一つとなっている。
【0004】
非特許文献1には、大気中で導体を形成可能な方法として、溶媒に可溶な銅錯体を含む塗布液を用いて基板上に印刷により薄膜を形成し、次いで炭酸ガスレーザを所望のパターン状に照射することで、照射領域に銅を析出させる方法が提案されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Materials Sciences and Applications, 2015, 6, 799-808
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
非特許文献1に記載の方法は、大気中でも導体を形成可能である、導体のダイレクトパターニングが可能である等の利点を有するが、得られる導体の表面の平滑性に向上の余地がある。
本発明は上記事情に鑑み、大気中で実施でき、表面の平滑性に優れる導体を形成可能な導体の製造方法、配線基板の製造方法及び導体形成用組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための手段には、以下の実施態様が含まれる。
<1>ケト酸と銅イオンとから形成される第一の銅錯体と、窒素原子を含有する配位子と銅イオンとから形成される第二の銅錯体と、を含む組成物を基板に付与して組成物層を形成する工程と、前記組成物層にレーザ照射を行って銅を析出させる工程と、を含む導体の製造方法。
<2>第二の銅錯体がアミン系銅錯体である、<1>に記載の導体の製造方法。
<3> 前記レーザ照射がCOレーザ又はErレーザを用いて行われる、<1>又は<2>に記載の導体の製造方法。
<4>前記レーザ照射がパターン状に行われる、<1>〜<3>のいずれか1項に記載の導体の製造方法。
<5>大気中で行われる、<1>〜<4>のいずれか1項に記載の導体の製造方法。
<6>前記基板が樹脂基板である、<1>〜<5>のいずれか1項に記載の導体の製造方法。
<7>基板と、前記基板上に配置される銅配線とを備える配線基板の製造方法であり、ケト酸と銅イオンとから形成される第一の銅錯体と、窒素原子を含有する配位子と銅イオンとから形成される第二の銅錯体と、を含む組成物を前記基板に付与して組成物層を形成する工程と、前記組成物層にレーザ照射を行って銅を析出させる工程と、を含む配線基板の製造方法。
<8>第二の銅錯体がアミン系銅錯体である、<7>に記載の配線基板の製造方法。
<9>前記レーザ照射がCOレーザ又はErレーザを用いて行われる、<7>又は<8>に記載の配線基板の製造方法。
<10>前記レーザ照射がパターン状に行われる、<7>〜<9>のいずれか1項に記載の配線基板の製造方法。
<11>大気中で行われる、<7>〜<10>のいずれか1項に記載の配線基板の製造方法。
<12>前記基板が樹脂基板である、<7>〜<11>のいずれか1項に記載の配線基板の製造方法。
<13>ケト酸と銅イオンとから構成される第一の銅錯体と、窒素原子を含有する配位子と銅イオンとから形成される第二の銅錯体と、を含む導体形成用組成物。
<14>第一の銅錯体がケト酸銅錯体である、<13>に記載の導体形成用組成物。
<15>第二の銅錯体がアミン系銅錯体である、<13>又は<14>に記載の導体形成用組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、大気中で実施でき、表面の平滑性に優れる導体を形成可能な導体の製造方法、配線基板の製造方法及び導体形成用組成物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例で形成した導体の表面の状態を示す電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合を除き、必須ではない。数値及びその範囲についても同様であり、本発明を制限するものではない。
本開示において「工程」との語には、他の工程から独立した工程に加え、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の目的が達成されれば、当該工程も含まれる。
本開示において「〜」を用いて示された数値範囲には、「〜」の前後に記載される数値がそれぞれ最小値及び最大値として含まれる。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、各成分の含有率又は含有量は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計の含有率又は含有量を意味する。
【0011】
<導体の製造方法>
本開示の導体の製造方法は、ケト酸と銅イオンとから形成される第一の銅錯体と、窒素原子を含有する配位子と銅イオンとから形成される第二の銅錯体と、を含む組成物を基板に付与して組成物層を形成する工程と、前記組成物層にレーザ照射を行って銅を析出させる工程と、を含む。
【0012】
上記方法では、基板上に形成された組成物層にレーザ照射を行うことで銅が析出する。具体的には、レーザ照射を行うと照射部が瞬間的に熱せられ、この熱によって銅錯体の配位子の結合が切断され、銅イオンがCuに還元されて銅が析出する。また、配位子は熱によりCOとCOとHOとに分解され、気体となって除去されるため、高純度な導体が得られる。導体の形状は特に制限されず、膜状であってもパターン状であってもその他の形状であってもよい。
【0013】
上記方法では、析出により生じた銅のナノ粒子同士が溶融して成長し、レーザ照射領域に導体が形成されると考えられる。また、この反応が極めて短時間のうちに進行するために大気中の酸素と反応する前に銅粒子が析出することから、大気中であっても良好な導体が形成できると考えられる。また、析出した銅ナノ粒子は銅の融点よりも低い温度で溶融するため、低エネルギーで導体を形成することができる。また、レーザ照射された領域外の組成物層は、銅錯体を溶解しうる溶剤等を用いて容易に除去することができるため、低コスト化の点でも有利である。また、組成物は銅錯体が溶解した状態であるため、金属粒子を用いた材料のように凝集、酸化等の問題が生じず保存安定性に優れている。
【0014】
さらに、上記方法により形成される導体は、第一の銅錯体のみを含む組成物を用いて形成した導体よりも表面の平滑性に優れている。第二の銅錯体が第一の銅錯体よりも分解しやすい(分解温度が低い)ため、第二の銅錯体からの銅の析出が先に生じて核を形成し、この核をもとにして第一の銅錯体から析出した銅による粒子の成長が促進されると考えられる。導体の表面がより平滑であることは、導体の構造がより緻密であることを意味すると考えられる。
【0015】
上記方法で使用する第一の銅錯体は、ケト酸と銅イオンとから形成されるもの(ケト酸銅)であれば特に制限されず、グリオキシル酸銅等のα−ケト酸銅、β−ケト酸銅及びγ−ケト酸銅のいずれであっても、これらの組み合わせであってもよい。
【0016】
上記方法で使用する第二の銅錯体は、窒素原子を含有する配位子と銅イオンとから形成されるものであれば特に制限されない。例えば、メチルアミン銅錯体、エチルアミン銅錯体等のモノアルキルアミン銅錯体(C2n+1NHCu:nは整数)、ジアルキルアミン銅錯体、トリアルキルアミン銅錯体、エチレンジアミン銅錯体、エタノールアミン銅錯体等のアミン系銅錯体が挙げられる。第二の銅錯体は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0017】
第一の銅錯体と第二の銅錯体を含む組成物は、これらの銅錯体を溶解しうる溶媒をさらに含んでもよい。このような溶媒としては、メタノール、エタノール、アミノエタノール等のアルコール系溶剤、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、ジメチルホルムアミド等のアミド系溶剤、テルピネオール等のテルペン系溶剤、エステル系溶剤などが挙げられる。溶媒は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0018】
組成物中の第一の銅錯体と第二の銅錯体の含有率は特に制限されないが、例えば組成物全体の90質量%〜5質量%の範囲内であってよく、80質量%〜10質量%の範囲内であることが好ましい。
【0019】
組成物中の第一の銅錯体と第二の銅錯体のモル比(第一の銅錯体:第二の銅錯体)は特に制限されないが、例えば9:1〜1:9の範囲内であってよく、8:2〜2:8の範囲内であることが好ましい。また、組成物全体に対する銅のモル濃度(第一の銅錯体と第二の銅錯体の合計)は特に制限されないが、例えば0.5M(mol/L)〜3.0M(mol/L)の範囲内であることが好ましい。
【0020】
組成物は、銅錯体と媒体以外の成分を必要に応じて含んでもよい。このような成分としては、粘度調整剤等が挙げられる。
【0021】
上記方法で使用する基板は特に制限されず、電子部品装置の配線基板として一般的なものを使用できる。例えば、半導体基板、ガラス基板、セラミック基板、樹脂基板、これらの複合体等が挙げられる。さらには、セルロースナノファイバを利用したペーパーデバイスに用いる基板等が挙げられる。上記方法では導体の形成がレーザ照射により行われるため、焼成等の熱処理に適しない材料からなる基板であっても導体を形成することができる。
【0022】
基板上に組成物層を形成する方法は、特に制限されない。例えば、スピンコート法、印刷法等が挙げられる。組成物層は基板上に一様に形成しても、パターン状に形成してもよい。
【0023】
上記方法でレーザ照射に使用するレーザは、銅錯体の分解と銅の析出を生じさせるものであれば特に制限されない。大気中で良好な導体を形成する観点からは赤外線レーザ及び近赤外線レーザが好ましく、COレーザ及びErレーザがより好ましい。レーザ照射は組成物層に対して一様に実施しても、パターン状に実施してもよい。
【0024】
上記方法は、レーザ照射により銅が析出した部分以外の組成物層を除去する工程を含んでもよい。例えば、組成物層に含まれる銅錯体を溶解しうる溶剤を用いて組成物層を除去してもよい。
【0025】
上記方法で形成された導体は、さらに無電解銅めっき等の処理を施してもよい。無電解銅めっきを施すことで、導体の厚みを増すことができる。一般的な無電解銅めっきではPd膜を銅析出の触媒膜として使用するが、上記方法では導体上に銅を析出させるため、低コスト化の点でも有利である。
【0026】
上記方法で形成されるパターン状の導体は、パターン幅の均一性に優れている。このため、より細かなパターンを形成することが可能となり、より高い性能を備える素子(回路)や配線を提供することが可能となる。
【0027】
パターン状の導体を形成する方法としては、組成物層にレーザをパターン状に直接照射する方法(ダイレクトパターニング)でも、パターン状に組成物層を形成し、ついでレーザを照射して銅配線へと転換する方法でもよい。これらの方法では不要な導体を除去するためのエッチングのプロセスを必要とせず、エッチング廃液などが生じないため環境にも優しい。パターン状に組成物層を形成する方法としては、スクリーン印刷、オフセット印刷などの配線形成に一般に使用される印刷法のほか、さらに微細な配線を形成可能なマイクロコンタクトプリンティングが挙げられる。
【0028】
マイクロコンタクトプリンティングによりパターン状の導体を形成する方法としては、例えば、PDMS(ポリジメチルシロキサン)からなるスタンパーに付着させた組成物を基板に転写してパターン状の組成物層を形成し、レーザ照射により銅を析出させる方法が挙げられる。
【0029】
上記方法により形成される導体は、種々の用途に用いることができる。例えば、電子機器類に用いられる配線基板の素子又は配線を形成する方法として好適に用いることができる。また、低エネルギーで導体を形成できるため、樹脂フィルム、ガラス薄板、ペーパーデバイス等の従来の方法では導体の形成が困難であった基板への導体形成にも好適に用いることができる。
【0030】
上記方法の応用例のひとつとして、ガラスからなるインターポーザ(ガラスインターポーザ)への貫通電極の形成が挙げられる。インターポーザは基板と半導体素子との間に配置される部材であり、基板と半導体素子を電気的に接続する貫通電極を備える。インターポーザの材質としては樹脂、シリコン等が一般に用いられる。ガラスインターポーザは樹脂、シリコン等からなるインターポーザに比べて熱膨張係数、耐熱性、絶縁性、製造コスト等の面で有利である一方、貫通電極の形成工程に耐えうるほどに強度が十分でないという問題がある。
【0031】
上記方法によれば、ガラス薄板を損なうことなく貫通電極を形成することができる。ガラスインターポーザへの貫通電極の形成は、例えば、ガラス薄板にレーザ加工により貫通孔を形成し、次いで貫通孔の内部に第一の銅錯体と第二の銅錯体を含む組成物を付与し、レーザ照射により銅を析出させることで行うことができる。
【0032】
<配線基板の製造方法>
本開示の配線基板の製造方法は、基板と、前記基板上に配置される銅配線とを備える配線基板の製造方法であって、ケト酸と銅イオンとから形成される第一の銅錯体と、窒素原子を含有する配位子と銅イオンとから形成される第二の銅錯体と、を含む組成物を基板に付与して組成物層を形成する工程と、前記組成物層にレーザ照射を行って銅を析出させる工程と、を含む。
【0033】
上記方法で使用される材料、組成物層の形成方法、レーザ照射条件その他の項目の詳細及び好ましい態様は、上述した導体の製造方法におけるものと同様である。
【0034】
<導体形成用組成物>
本開示の導体形成用組成物は、ケト酸と銅イオンから構成される第一の銅錯体と、窒素原子を含有する配位子と銅イオンとから形成される第二の銅錯体と、を含む。
【0035】
上記組成物を用いることで、表面の平滑性に優れる導体を形成することができる。上記組成物の詳細及び好ましい態様は、上述した導体の製造方法に用いる組成物の詳細及び好ましい態様と同様である。
【実施例】
【0036】
以下、上述した導体の製造方法について実施例を参照してより詳細に説明するが、本開示はこれらの実施例に制限されるものではない。
【0037】
<実施例1>
(組成物の調製)
α−ケト酸(グリオキシル酸銅)を水酸化ナトリウムで中和し、α−ケト酸のナトリウム塩を得た。このα−ケト酸ナトリウム塩を水に溶解し、硫酸銅を水に溶解したものを加えた。この混合液を撹拌すると、薄い青色の沈殿物としてα−ケト酸銅錯体が析出した。析出したα−ケト酸銅錯体を回収し、アミノエタノールとエタノールの混合溶媒に溶解させた。この溶液に、ギ酸銅をメチルアミンのメタノール溶液に溶解させたものを添加して、メチルアミン銅錯体を生成し、第一の銅錯体としてα−ケト酸銅錯体と、第二の銅錯体としてメチルアミン銅錯体と、を含む組成物を調製した。
組成物中のα−ケト酸銅錯体とメチルアミン銅錯体のモル比は1:1とし、α−ケト酸銅錯体とメチルアミン銅錯体の合計の組成物全体における含有率は銅濃度として1M(mol/L)とした。
【0038】
(ダイレクトパターニングによるガラス基板への銅配線の形成)
調製した組成物をガラス基板上に塗布し、COレーザ(レーザ出力:6W)をパターン状(パターン幅:200μm)に大気中で照射した。照射部には、銅が析出した。照射後の基板をアミノエタノール溶液に浸漬し、銅が析出した部分以外の組成物層を除去した。次いで乾燥し、導体が表面に形成された基板を得た。
【0039】
(導体表面の評価)
銅錯体としてα−ケト酸銅錯体のみを含むこと以外は上記と同様にして組成物を調製し、この組成物を用いた以外は上記と同様にして基板上に導体を形成した。次いで、両者の導体の表面の状態を光学顕微鏡で観察した。その結果、図1に示すように、α−ケト酸銅錯体のみを含む組成物を用いて形成した導体(左)に比べ、α−ケト酸銅錯体とメチルアミン銅錯体を含む組成物を用いて形成した導体(右)の方が表面の平滑性に優れていた。
【0040】
<実施例2>
(組成物の調製)
α−ケト酸(グリオキシル酸銅)0.85gを2−アミノエタノール1mlとエタノール2mlの混合物に溶解させ、1.7Mのグリオキシル酸銅溶液を調製した。別で、ギ酸銅・4水和物1.105gを40%メチルアミンメタノール3mlに溶解させ、1.7Mのメチルアミン銅錯体溶液を調製した。この二つの溶液を混合することで、第一の銅錯体としてα−ケト酸銅錯体と、第二の銅錯体としてメチルアミン銅錯体と、を含む組成物を調製した。
【0041】
(マイクロコンタクトプリンティングによる銅配線の形成)
調製した組成物をスライドガラスにスピンコーティング(3000rpm、30秒)し、マイクロコンタクトスタンパーを押し当てて、スタンパーに組成物を付着させ、これをアルミナ基板にスタンピングして、微細パターンの組成物層を作製した。80℃、10分でプレベイクを行い、COレーザを照射して(レーザと組成物層間の距離:145mm、掃引速度:20mm/s、出力:8.0W)、導体を得た。次いで、導体の無電解銅めっきを行った。無電解銅めっきは、上村工業株式会社製の「スルカップELC−SP」を用いて、60℃、3、6、9及び15分の条件で実施した。これにより、パターン幅が約5μmの銅配線を形成した。
【0042】
<実施例3>
(組成物の調製)
α−ケト酸(グリオキシル酸銅)0.5gを2−アミノエタノール1mlとエタノール2mlの混合物に溶解させ、1.0Mのグリオキシル酸銅溶液を調製した。別で、ギ酸銅・4水和物0.65gを40%メチルアミンメタノール3mlに溶解させ、1.0Mのメチルアミン銅錯体溶液を調製した。この二つの溶液を混合することで、第一の銅錯体としてα−ケト酸銅錯体と、第二の銅錯体としてメチルアミン銅錯体と、を含む組成物を調製した。
【0043】
(ダイレクトパターニングによるポリイミドフィルムへの銅配線の形成)
ポリイミドフィルムの片面に、UV照射(10mW/cm、ポリイミドフィルムとUVランプ間の距離:2.0cm)を2分間実施した。次いで、調製した組成物をUV照射したポリイミドフィルム上にスピンコーティング(2000rpm、30秒)し、プレベイク(80℃、10分)を行って組成物層を形成した。次いで、COレーザをパターン状(パターン幅:200μm)に照射(レーザと組成物層間の距離:140mm、掃引速度:20mm/s、出力:2.0W)した。その後、純水で非照射領域の組成物層を除去し、エタノールで乾燥することで、パターン状の導体を得た。次いで、導体の無電解銅めっきを行った。無電解銅めっきは、上村工業株式会社製の「スルカップELC−SP」を用いて、60℃、10分の条件で実施した。これにより、パターン幅が約200μmの銅配線を形成した。
【0044】
形成した銅配線の断面を透過電子顕微鏡で観察したところ、レーザ照射により形成された50nm〜100nm程度の厚みのCu膜が、無電解銅めっきにより500nm程度にまで厚膜化されている様子が確認できた。また、得られた銅配線は緻密な構造を有していた。
【0045】
以上の結果から、本開示の方法は大気中で実施でき、かつ表面の平滑性に優れる導体を形成できることがわかった。また、本開示の方法は高精細な銅配線の形成にも好適であることがわかった。さらに、本開示の方法は比較的耐熱性の低い樹脂基板にも表面の平滑性に優れる導体を形成でき、かつ高精細な銅配線を形成できることがわかった。
【0046】
日本国特許出願第2017−099366号の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、および技術規格は、個々の文献、特許出願、および技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に援用されて取り込まれる。
図1
【国際調査報告】