特表-18047382IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2018年3月15日
【発行日】2018年12月13日
(54)【発明の名称】燃焼システム
(51)【国際特許分類】
   F23J 15/00 20060101AFI20181116BHJP
   B01J 35/10 20060101ALI20181116BHJP
   B01J 23/22 20060101ALI20181116BHJP
   B01D 53/86 20060101ALI20181116BHJP
   F23G 7/07 20060101ALI20181116BHJP
【FI】
   F23J15/00 AZAB
   F23J15/00 H
   B01J35/10 301J
   B01J23/22 A
   B01D53/86 222
   F23G7/07 T
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】25
【出願番号】特願2018-533708(P2018-533708)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2017年3月7日
(11)【特許番号】特許第6410201号(P6410201)
(45)【特許公報発行日】2018年10月24日
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2016/076870
(32)【優先日】2016年9月12日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ
(71)【出願人】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】305027401
【氏名又は名称】公立大学法人首都大学東京
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】清永 英嗣
(72)【発明者】
【氏名】引野 健治
(72)【発明者】
【氏名】盛田 啓一郎
(72)【発明者】
【氏名】春田 正毅
(72)【発明者】
【氏名】村山 徹
(72)【発明者】
【氏名】美濃 真
【テーマコード(参考)】
3K070
3K078
4D148
4G169
【Fターム(参考)】
3K070DA22
3K070DA25
3K078AA06
3K078BA02
3K078BA24
3K078DA11
4D148AA06
4D148AB02
4D148AC03
4D148AC04
4D148BA23X
4D148BA41X
4D148CC52
4D148DA03
4D148DA11
4D148DA20
4G169AA02
4G169AA11
4G169BA04B
4G169BB04A
4G169BB04B
4G169BB06B
4G169BC54A
4G169BC54B
4G169CA02
4G169CA08
4G169CA13
4G169DA06
4G169EC02X
4G169EC02Y
4G169EC03X
4G169EC03Y
4G169EC04X
4G169EC04Y
4G169EC05X
4G169EC05Y
4G169EC25
4G169EC30
4G169ED07
4G169FA01
4G169FC08
(57)【要約】
稼働のコストが低い燃焼システムを提供する。
燃料を燃焼させる燃焼装置10と、燃焼装置10において燃料が燃焼することによって発生する排ガスが流通する排気路L1と、排気路L1に配置され且つ排ガスから熱回収する空気予熱器30と、排気路L1に配置され且つ脱硝触媒によって排ガスから窒素酸化物を除去する脱硝装置40と、を備える燃焼システム1であって、脱硝装置40は、排気路L1における空気予熱器30の下流側に配置され、脱硝触媒は、五酸化バナジウムが43wt%以上存在し、BET比表面積が30m/g以上である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料を燃焼させる燃焼装置と、
前記燃焼装置において前記燃料が燃焼することによって発生する排ガスが流通する排気路と、
前記排気路に配置され且つ前記排ガスから熱回収する空気予熱器と、
前記排気路に配置され且つ脱硝触媒によって前記排ガスから窒素酸化物を除去する脱硝装置と、を備える燃焼システムであって、
前記脱硝装置は、前記排気路における前記空気予熱器の下流側に配置され、
前記脱硝触媒は、五酸化バナジウムが43wt%以上存在し、BET比表面積が30m/g以上である燃焼システム。
【請求項2】
前記脱硝触媒は、NH−TPD(TPD:昇温脱離プログラム)によるNH脱離量が、10.0μmol/g以上である、請求項1に記載の燃焼システム。
【請求項3】
前記脱硝装置は、選択接触還元法によって前記排ガスから窒素酸化物を除去する、請求項1又は2に記載の燃焼システム。
【請求項4】
前記燃料は、天然ガスである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の燃焼システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼システムに関する。より詳しくは、本発明は、燃焼装置と、排ガスが流通する排気路と、排ガスから熱回収する空気予熱器と、排ガスから窒素酸化物を除去する脱硝装置と、を備える燃焼システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ボイラを備える燃焼システムでは、ボイラにおいて石炭等の燃料を燃焼させることによって熱エネルギーを得た後、例えば、この熱エネルギーを電気エネルギーに変換している。この際、ボイラにおいて燃料を燃焼させると、窒素酸化物を含む排ガスが発生する。
【0003】
ボイラにおいて発生する排ガスは、排気路を通してボイラから外部に排出される。ボイラから外部に排出される排ガスからは、環境面への配慮により、脱硝装置によって窒素酸化物が除去されている。
【0004】
ところで、排ガスから窒素酸化物を除去する脱硝装置には、一般的にバナジウム/チタン触媒(V/TiO)等の脱硝触媒が用いられている。そして、バナジウム/チタン触媒は、高温(例えば、約370℃)環境下において高い触媒活性が発揮されることから、例えば火力発電所においては、脱硝装置は、ボイラ内の排ガスの出口の近傍や、排気路の上流側に配置される(例えば、特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−190940号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方で、ボイラ内の排ガスの出口の近傍や、排気路の上流側は、上記のように高温環境下であるとともに石炭灰及びS分が高濃度で存在していることから、脱硝触媒の劣化が進行しやすい環境でもある。脱硝触媒の劣化が急速に進行すると、脱硝触媒の交換頻度が高くなることから、燃焼システムの稼働のコストも高くなる傾向にある。
【0007】
なお、脱硝装置において、選択接触還元法によって排ガスから窒素酸化物を除去する場合には、脱硝触媒の劣化が進行すると、還元剤として用いられるアンモニアが脱硝装置からリークしてしまう。脱硝装置からアンモニアがリークすると、アンモニアと排ガス中のS分とが反応することで硫酸アンモニウムが生成し、脱硝装置の二次側に配置される空気予熱器に硫酸アンモニウムが付着してしまう。このように、空気予熱器に硫酸アンモニウムが付着して堆積した場合、排ガスの流路の目詰まりの防止のために空気予熱器を洗浄する必要がある等で、燃焼システムの稼働のコストが更に高くなる。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、稼働のコストが低い燃焼システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、燃料を燃焼させる燃焼装置と、前記燃焼装置において前記燃料が燃焼することによって発生する排ガスが流通する排気路と、前記排気路に配置され且つ前記排ガスから熱回収する空気予熱器と、前記排気路に配置され且つ脱硝触媒によって前記排ガスから窒素酸化物を除去する脱硝装置と、を備える燃焼システムであって、前記脱硝装置は、前記排気路における前記空気予熱器の下流側に配置され、前記脱硝触媒は、五酸化バナジウムが43wt%以上存在し、BET比表面積が30m/g以上である燃焼システムに関する。
【0010】
また、前記脱硝触媒は、NH−TPD(TPD:昇温脱離プログラム)によるNH脱離量が、10.0μmol/g以上であることが好ましい。
【0011】
また、前記脱硝装置は、選択接触還元法によって前記排ガスから窒素酸化物を除去することが好ましい。
【0012】
また、前記燃料は、天然ガスであることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
脱硝装置が空気予熱器の後段にあるため、脱硝装置に用いられる脱硝触媒の劣化が進行し難いことから、稼働のコストが低い火力発電システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る火力発電システムの構成を示す図である。
図2】実施例1、参考例1〜2、比較例1により調製された五酸化バナジウム触媒の粉末X線回折の結果である。
図3】実施例1〜2、参考例3〜6、比較例2〜3により調製された五酸化バナジウム触媒の粉末X線回折の結果である。
図4】実施例1、参考例1〜2、比較例1、比較例4により調製された五酸化バナジウム触媒のNH−SCR活性を示す図である。
図5】参考例1、及び比較例1により調製された五酸化バナジウム触媒を用いた選択的触媒還元反応における、反応温度とN選択率との関係を示す図である。
図6】参考例1により調製された五酸化バナジウム触媒をNH−SCR反応に用いた場合の、空間速度依存性を示す図である。
図7】参考例1により調製された五酸化バナジウム触媒を、水分共存下の選択的触媒還元反応に用いた場合の、NO転化率の時間経過を示す図である。
図8】参考例1により調製された五酸化バナジウム触媒を、S分共存下の選択的触媒還元反応に用いた場合の、NH、NO、SO濃度の時間経過を示す図である。
図9】各実施例により調製された五酸化バナジウム触媒の、五酸化バナジウム担持量とNO転化率との関係を、反応温度毎に示した図である。
図10】各実施例、各参考例、及び各比較例により調製された五酸化バナジウム触媒のBET比表面積とNO転化率の関係を示す図である。
図11】実施例4〜6、参考例7〜8により調製された五酸化バナジウム触媒の粉末X線回折の結果である。
図12】実施例4〜6、参考例7〜8により調製された五酸化バナジウム触媒のNH−SCR活性を示す図である。
図13】実施例4〜6、参考例1〜2、参考例7、比較例1により調製された五酸化バナジウム触媒の比表面積とNO転化率の関係を示す図である。
図14】実施例4〜5、参考例1〜2、比較例1により調製された五酸化バナジウム触媒のBET比表面積とNH脱離量の関係を示す図である。
図15】実施例4〜5、参考例1〜2、比較例1により調製された五酸化バナジウム触媒のNH脱離量とNO転化率の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態に係る火力発電システム1の構成を示す図である。図1に示すように、火力発電システム1は、燃焼装置としてのボイラ10と、気化器20と、排気路L1と、空気予熱器30と、脱硝装置40と、誘引通風機50と、煙突60と、を備える。
【0016】
ボイラ10は、燃料としての天然ガスを空気とともに燃焼させる。ボイラ10において、天然ガスが燃焼することにより排ガスが発生する。なお、天然ガスの燃焼時には、微粉炭の燃焼時とは異なり、燃焼灰は生成されない。このため、火力発電システム1は、集塵装置を必須としない。また、天然ガスにはS分が含まれないため、火力発電システム1は、脱硫装置も必要としない。
【0017】
ボイラ10は、全体として略逆U字状に形成される。ボイラ10において生成する排ガスは、ボイラ10の形状に沿って逆U字状に移動する。ボイラ10の排ガスの出口付近における排ガスの温度は、例えば300〜400℃である。
【0018】
気化器20は、図示しないLNGタンクから供給される天然ガスを、気化してボイラ10に供給する。気化する際には、海水を利用する方式(オープンラック式)を用いてもよく、ガスバーナで温水を作り加熱する方式(サブマージドコンバスチョン式)を用いてもよく、中間媒体を用いて数段階の熱交換を行う方式を用いてもよい。
【0019】
排気路L1は、上流側がボイラ10に接続される。排気路L1は、ボイラ10において発生する排ガスが流通する流路である。
【0020】
空気予熱器30は、排気路L1に配置される。空気予熱器30は、排ガスと図示しない押込式通風機から送り込まれる燃焼用の空気との間で熱交換を行い、排ガスから熱回収する。燃焼用の空気は、空気予熱器30において加熱されてからボイラ10に供給される。
【0021】
脱硝装置40は、排気路L1における空気予熱器30の下流側に配置される。脱硝装置40には、空気予熱器30において冷却された排ガスが供給される。脱硝装置40は、脱硝触媒によって排ガスから窒素酸化物を除去する。脱硝装置40において用いられる脱硝触媒については、後段で詳述する。脱硝装置40における排ガスの温度は、例えば130〜200℃である。
【0022】
脱硝装置40では、選択接触還元法によって排ガスから窒素酸化物を除去する。選択接触還元法によれば、還元剤及び脱硝触媒によって窒素酸化物から窒素及び水を生成することで、排ガスから効率的に窒素酸化物を除去することができる。選択接触還元法において用いられる還元剤は、アンモニア及び尿素の少なくとも一方を含む。還元剤としてアンモニアを用いる場合、アンモニアガス、液体アンモニア及びアンモニア水溶液のいずれの状態のアンモニアを用いてもよい。
【0023】
より具体的には、脱硝装置40は、導入された排ガスに対してアンモニアガスを注入してから、その混合ガスを脱硝触媒に接触させる構成とすることができる。
【0024】
誘引通風機50は、排気路L1における脱硝装置40の下流側に配置される。誘引通風機60は、脱硝装置40において窒素酸化物を除去した排ガスを、一次側から取り込んで二次側に送り出す。
【0025】
煙突60には、排気路L1の下流側が接続される。煙突60には、脱硝装置40において窒素酸化物を除去した排ガスが導入される。脱硝装置40における排ガスの温度は、例えば130〜200℃であることから、煙突60に導入された排ガスは、煙突効果によって煙突100の上部から効果的に排出される。また、煙突100の出口付近における排ガスの温度は、例えば110℃である。
【0026】
続いて、脱硝装置40において用いられる脱硝触媒について説明する。
本発明の脱硝触媒は、五酸化バナジウムが43wt%以上存在し、前記触媒成分のBET比表面積が30m/g以上である。このような脱硝触媒は、従来用いられているバナジウム/チタン触媒等の脱硝触媒に比べて、低温環境下でも高い脱硝効果を発揮できる。
【0027】
具体的には、酸化バナジウムが五酸化バナジウム換算で3.3wt%以上存在する脱硝触媒を用いた、アンモニアを還元剤とする選択的触媒還元反応(NH−SCR)においては、概ね、反応温度120℃の場合で約35%以上、反応温度150℃の場合で約60%以上のNO転化率を示す。反応温度100℃の場合においてすら、20%を超えるNO転化率を示す。一方で、脱硝触媒中に酸化バナジウムが五酸化バナジウム換算で3.3wt%未満しか存在しない場合は、反応温度120℃の場合でも反応温度150℃の場合でも、20%未満のNO転化率しか示されない。
【0028】
上記のように、本発明に係る脱硝触媒においては、酸化バナジウムが五酸化バナジウム換算で43wt%以上存在するが、その他の含有物として、酸化バナジウム以外に、酸化チタンを含んでもよい。その他、貴金属および卑金属,典型金属を含んでも良い。好ましくは酸化タングステン、酸化クロム、酸化モリブデン等を含むことも可能である。
【0029】
また、上述の記載では、脱硝触媒中に、酸化バナジウムが五酸化バナジウム換算で43wt%以上存在するとしたが、なお好ましくは、脱硝触媒中に、酸化バナジウムが五酸化バナジウム換算で80wt%以上存在してもよい。更に好ましくは、脱硝触媒中100%が、酸化バナジウムであってもよい。
【0030】
上記の酸化バナジウムは、酸化バナジウム(II)(VO)、三酸化バナジウム(III)(V)、二酸化バナジウム(IV)(V)、五酸化バナジウム(V)(V)を含み、脱硝反応中、五酸化バナジウム(V)のV元素は、5価、4価、3価、2価の形態を取ってもよい。
【0031】
また、脱硝触媒のBET比表面積に関して、例えば、五酸化バナジウムを含み、BET比表面積が13.5m/gの脱硝触媒を用いた、反応温度120℃のNH-SCRでは、NO転化率が20%を超える。また、五酸化バナジウムを含み、BET比表面積が16.6m/gの脱硝触媒を用いた、反応温度120℃のNH-SCRでも、NO転化率が20%を超える。一方、BET比表面積が10m/gに満たない脱硝触媒として、例えばBET比表面積4.68m/gの脱硝触媒を用いた、反応温度120℃のNH−SCRでは、NO転化率が20%を下回る。
【0032】
また、脱硝触媒のBET比表面積は、30m/g以上であるが、好ましくは、40m/g以上であってもよい。更に好ましくは、脱硝触媒のBET比表面積が50m/g以上であってもよい。更に好ましくは、脱硝触媒のBET比表面積が60m/g以上であってもよい。
【0033】
なお、脱硝触媒のBET比表面積は、JIS Z8830:2013に規定された条件に準拠して測定することが好ましい。具体的には、以下の実施例記載の方法により、BET比表面積を測定することが可能である。
【0034】
本発明の脱硝触媒は、200℃以下での脱硝に用いられる。好ましくは160℃以上200℃以下での脱硝に用いられる。これにより、NH−SCR反応時には、SOのSOへの酸化が伴わない。
【0035】
NH−TPD(TPD:昇温脱離プログラム)によるNH脱離量に関して、NH脱離量が10.0μmol/gを超える脱硝触媒は、反応温度120℃でのNH−SCRにおけるNO転化率が、20%以上の値を示す。一方で、NH脱離量が10.0μmol/gを下回る脱硝触媒は、反応温度120℃でのNH−SCRにおけるNO転化率が、20%を下回る。
【0036】
本発明の脱硝触媒は、NH−TPD(TPD:昇温脱離プログラム)によるNH脱離量が、10.0μmol/g以上であるが、好ましくは、NH−TPDによるNH脱離量が、20.0μmol/g以上であってもよい。更に好ましくは、NH−TPDによるNH脱離量が、50.0μmol/g以上であってもよい。更に好ましくは、NH−TPDによるNH脱離量が、70.0μmol/g以上であってもよい。
【0037】
酸化バナジウムが五酸化バナジウム換算で3.3wt%以上存在し、BET比表面積が10m/g以上である脱硝触媒は、熱分解法、ゾルゲル法、及び含浸法のいずれかによって作製できる。以下、熱分解法、ゾルゲル法、及び含浸法により、五酸化バナジウムが3.3wt%以上存在し、比表面積が10m/g以上である脱硝触媒を作製する方法を示す。
【0038】
熱分解法は、バナジン酸塩を熱分解する工程を備える。バナジン酸塩としては、例えば、バナジン酸アンモニウム、バナジン酸マグネシウム、バナジン酸ストロンチウム、バナジン酸バリウム、バナジン酸亜鉛、バナジン酸鉛、バナジン酸リチウム等を用いてもよい。
【0039】
なお、上記の熱分解法は、バナジン酸塩を300℃〜400℃で熱分解することが好ましい。
【0040】
ゾルゲル法は、バナジン酸塩をキレート化合物に溶解して乾燥した後に焼成する工程を備える。キレート化合物としては、例えば、シュウ酸やクエン酸などの複数のカルボキシル基を有するもの、アセチルアセトナート、エチレンジアミンなどの複数のアミノ基を有するもの、エチレングリコールなどの複数のヒドロキシル基を有するもの等を用いてもよい。
【0041】
なお、上記のゾルゲル法は、キレート化合物によるが、例えば、バナジウムとキレート化合物のモル比が1:1〜1:5となるように、バナジン酸塩をキレート化合物に溶解する工程を備えることが好ましい。なお好ましくは、バナジン酸塩とキレート化合物のモル比が1:2〜1:4であってもよい。
【0042】
含浸法は、バナジン酸塩をキレート化合物に溶解した後、担体を加えてから乾燥した後に焼成する工程を備える。担体としては、酸化チタン、酸化アルミニウム、シリカ等を用いてもよい。上記と同様に、キレート化合物としては、例えば、シュウ酸やクエン酸などの複数のカルボキシル基を有するもの、アセチルアセトナート、エチレンジアミンなどの複数のアミノ基を有するもの、エチレングリコールなどの複数のヒドロキシル基を有するもの等を用いてもよい。
【0043】
なお、上記の含浸法においては、例えば、バナジン酸アンモニウムをシュウ酸溶液に溶解し、更に、担体である酸化チタン(TiO)を加えた後、乾燥した後、焼成することにより、本発明の実施形態に係る脱硝触媒として、xwt%V/TiO(x≧43)を得てもよい。
【0044】
このようにして調製される脱硝触媒においては、通常、五酸化バナジウムが3.3wt%以上含まれ、比表面積が10m/g以上である。
【0045】
上記実施形態に係る燃焼システム1によれば、以下の効果が奏される。
(1)上記実施形態に係る燃焼システム1では、ボイラ(燃焼装置)10において発生する排ガスの流通する排気路L1において、脱硝装置40を空気予熱器30の下流側に配置した。更に、上記実施形態では、脱硝装置40において五酸化バナジウムが43wt%以上存在し、BET比表面積が30m/g以上である脱硝触媒を用いた。
上記の実施形態における脱硝触媒は、200℃以下での脱硝に用いることが可能であるため、脱硝装置40を空気予熱器30の下流側に配置することが可能となる。これにより、脱硝触媒が脱硝する排ガスの温度が低くなり、脱硝触媒の劣化を低減することが可能となる。
また、上記の実施形態における燃焼システム1では、集塵装置と脱硫装置を必須の構成要素とはしていない。従って、燃焼システム1の構成を単純化することにより、設置コストを下げることが可能となる。
【0046】
(2)上記のように、脱硝装置40において用いられる脱硝触媒は、NH−TPD(TPD:昇温脱離プログラム)によるNH脱離量が、10.0μmol/g以上であることが好ましい。
これにより、反応温度が120℃でのNH−SCRに、この脱硝触媒を用いると、20%を超えるNO転化率を示す。
【0047】
(3)上記実施形態では、脱硝装置40が、選択接触還元法によって排ガスから窒素酸化物を除去するものとした。
脱硝装置40において、選択接触還元法によって排ガスから窒素酸化物を除去する場合には、脱硝触媒の劣化が進行すると、還元剤として用いられるアンモニア(又は尿素)が脱硝装置40からリークしてしまう。上記の繰り返しとなるが、排気路L1におけるボイラ10の近傍に通常配置される空気予熱器30の上流に脱硝装置40が配置されていないことから、アンモニアと排ガス中のS分とが反応することで生成する硫酸アンモニウムに起因する空気予熱器30の目詰まりが生じない。このように、空気予熱器30の目詰まりが防止されるので、空気予熱器30を洗浄するためのコストを抑えることができる。
【0048】
(4)上記実施形態に係る燃焼システム1では、ボイラ(燃焼装置)10において燃焼させる燃料を天然ガスとした。
火力発電システムのボイラにおいて天然ガスを燃焼させると、天然ガスにはS分が含まれないことから、硫酸アンモニウムは発生しない。これにより、空気予熱器30の目詰まりが防止されると共に、燃焼システム1には、脱硫装置を備える必要はなくなる。また、天然ガスの燃焼時には煤塵が生成されないため、燃焼システム1には、集塵装置を備える必要もなくなる。従って、燃焼システム1の構成を単純化することにより、設置コストを下げることが可能となる。
【0049】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
【0050】
上記実施形態では、脱硝装置40において、選択接触還元法によって排ガスから窒素酸化物を除去するものとしたが、本発明はこれに限定されない。例えば、本発明においては、脱硝装置40において、非選択接触還元法によって排ガスから窒素酸化物を除去する構成としてもよい。
【0051】
また、上記実施形態では、脱硝装置40を、空気予熱器30の直後に配置されるものとしたが、本発明はこれに限定されない。脱硝装置90は、空気予熱器30の後段であれば、どこに配置されてもよい。また、ガスガスヒーターを用いて排ガスを再加熱した後に、脱硝装置90を用いて脱硝してもよい。
【0052】
また、上記実施形態では、燃焼システム1の一例としてLNG火力発電システムについて説明したが、本発明はこれに限定されない。たとえば、石炭ガス化複合発電等についても適用できる。
【実施例】
【0053】
以下、本発明の触媒成分の実施例を、参考例及び比較例と共に、具体的に説明する。なお、本発明は、これらの実施例によって限定されるものではない。
【0054】
1.酸化バナジウム含有量及び比表面積とNH−SCR活性との関係
1.1 各実施例と比較例
[参考例1]
バナジン酸アンモニウム(NHVO)を、空気中において300℃で4時間熱分解することにより得られた五酸化バナジウム(V)を、参考例1の脱硝触媒とした。なお、この参考例1の脱硝触媒のサンプル名を、“V_300”とした。
【0055】
[参考例2]
バナジン酸アンモニウムを、空気中において400℃で4時間熱分解することにより得られた五酸化バナジウムを、参考例2の脱硝触媒とした。なお、この参考例2の脱硝触媒のサンプル名を、“V_400”とした。
【0056】
[比較例1]
バナジン酸アンモニウムを、空気中において500℃で4時間熱分解することにより得られた五酸化バナジウムを、比較例1の脱硝触媒とした。なお、この比較例1の脱硝触媒のサンプル名を、“V_500”とした。
【0057】
[実施例1]
バナジン酸アンモニウムをシュウ酸溶液に溶解させた(バナジウム:シュウ酸のモル比=1:3)。全て溶かしきった後、ホットスターラー上で溶液中の水分を蒸発させ、乾燥機中において、120℃で一晩乾燥させた。その後、乾燥後の粉末を空気中において300℃で4時間焼成した。焼成後の五酸化バナジウムを、実施例1の脱硝触媒とした。なお、このゾルゲル法によって得られた実施例1の脱硝触媒のサンプル名を、“V_SG_300”とした。また、バナジン酸アンモニウムをシュウ酸溶液に溶解する際の、バナジウムとシュウ酸のモル比が異なる脱硝触媒については、後述する。
【0058】
[比較例2]
バナジン酸アンモニウムをシュウ酸溶液に加え、10分間撹拌し、担体である酸化チタンをゆっくりと加えた。その後、ホットスターラー上で溶液中の水分を蒸発させ、乾燥機中において、120℃で一晩乾燥させた。その後、乾燥後の粉末を空気中において300℃で4時間焼成した。その結果として、五酸化バナジウムの質量パーセントが、0.3wt%となった焼成後の脱硝触媒を、比較例2の脱硝触媒とした。なお、この比較例2の脱硝触媒のサンプル名を、“0.3wt%V/TiO”とした。
【0059】
[比較例3]
比較例2と同様の手法によって得られると共に、五酸化バナジウムの質量パーセントが、0.9wt%である焼成後の脱硝触媒を、比較例3の脱硝触媒とした。なお、この比較例3の脱硝触媒のサンプル名を、“0.9wt%V/TiO”とした。
【0060】
[参考例3]
比較例2と同様の手法によって得られると共に、五酸化バナジウムの質量パーセントが、3.3wt%である焼成後の脱硝触媒を、参考例3の脱硝触媒とした。なお、この参考例3の脱硝触媒のサンプル名を、“3.3wt%V/TiO”とした。
【0061】
[参考例4]
比較例2と同様の手法によって得られると共に、五酸化バナジウムの質量パーセントが、9wt%である焼成後の脱硝触媒を、参考例4の脱硝触媒とした。なお、この参考例4の脱硝触媒のサンプル名を、“9wt%V/TiO”とした。
【0062】
[参考例5]
比較例2と同様の手法によって得られると共に、五酸化バナジウムの質量パーセントが、20wt%である焼成後の脱硝触媒を、参考例5の脱硝触媒とした。なお、この参考例5の脱硝触媒のサンプル名を、“20wt%V/TiO”とした。
【0063】
[参考例6]
比較例2と同様の手法によって得られると共に、五酸化バナジウムの質量パーセントが、33wt%である焼成後の脱硝触媒を、参考例6の脱硝触媒とした。なお、この参考例6の脱硝触媒のサンプル名を、“33wt%V/TiO”とした。
【0064】
[実施例2]
比較例2と同様の手法によって得られると共に、五酸化バナジウムの質量パーセントが、43wt%である焼成後の脱硝触媒を、実施例2の脱硝触媒とした。なお、この実施例2の脱硝触媒のサンプル名を、“43wt%V/TiO”とした。
【0065】
[実施例3]
比較例2と同様の手法によって得られると共に、五酸化バナジウムの質量パーセントが、80wt%である焼成後の脱硝触媒を、実施例3の脱硝触媒とした。なお、この実施例3の脱硝触媒のサンプル名を、“80wt%V/TiO”とした。
【0066】
[比較例4]
既存触媒を比較例4とした。なお、既存触媒とは、酸化チタン(TiO)(含有率:79.67wt%)に、酸化タングステン(WO)(含有率:10.72wt%)及びシリカ(SiO)(含有率:6.25wt%)等が担持され、バナジウムが0.5%前後含まれた触媒である。
【0067】
1.2 評価
1.2.1 粉末X線回折
(回折方法)
粉末X線回折としては、Rigaku smart labにより、Cu−Kaを用いて測定を行った。
【0068】
(回折結果)
実施例1(V_SG_300),参考例1(V_300),参考例2(V_400),及び比較例1(V_500)の粉末XRDパターンを図2に、実施例1(V_SG_300),実施例2、参考例3〜6,及び比較例2〜3(xwt%V/TiO)の粉末XRDパターンを図3に示す。実施例1(V_SG_300),参考例1(V_300),参考例2(V_400),比較例1(V_500)の粉末XRDパターンでは、熱分解温度、調製法に関わらず、Vのみのピークが観察された。実施例2,参考例3〜6,及び比較例2〜3(xwt%V/TiO2)の粉末XRDパターンに関しては、9wt%までVピークが見られず、TiOに高分散していると考えられる。V担持量が20wt%まで増加すると、22.2°、27.4°にVのピークが観察されるようになり、担持量が増すごとにVピーク強度が大きくなっていった。一方、TiOピークは減少していく傾向にあった。
【0069】
1.2.2 BET比表面積測定
(測定方法)
BET比表面積の測定には、MicrotracBEL BELSORP−maxを用いた。Ar雰囲気下、200℃で2時間前処理をした後、196℃で測定した。
【0070】
(測定結果)
【表1】
【0071】
参考例1(V_300),参考例2(V_400),比較例1(V_500),実施例1(V_SG_300)と、比較例2〜3、参考例3〜6、及び実施例2〜3(xwt%V/TiO触媒)、及び比較例4(既存触媒)のBET比表面積を表1に示す。バナジン酸アンモニウムを熱分解することにより調製した五酸化バナジウム触媒は、熱分解温度の上昇に伴い、BET比表面積は減少した。すなわち、最大のBET比表面積を示す五酸化バナジウムは、300℃で熱分解した参考例1(V_300)の五酸化バナジウムにおいて、最大のBET比表面積16.6m−1が示された。また、ゾルゲル法を用い、300℃で調整した五酸化バナジウムのBET比表面積は更に大きく、62.9m−1であった。
参考例3〜6、及び実施例2〜3、及び比較例2〜3(xwt%V/TiO)に関しては、五酸化バナジウムの担持量が増加するにつれ、TiOの細孔が埋められていき、BET比表面積が低下していった。
【0072】
1.2.3 触媒活性測定
(測定方法)
以下の表2の条件の下、固定床流通式触媒反応装置を用いてNH−SCR反応を行った。触媒層を通過したガスのうち、NO、NH、NO、NOをJasco FT−IR−4700で分析した。
【0073】
【表2】
【0074】
また、NO転化率、N選択率を、下記の式により算出した。なお、NOinは反応管入口のNO濃度、NOoutは反応管出口のNO濃度、N2outは反応管出口のN濃度、NH3inは反応管入口のNH濃度、NH3outは反応管出口のNH濃度である。
【0075】
【数1】
【数2】
【0076】
(測定結果)
図4に五酸化バナジウム触媒のNH−SCR活性を示す。バナジン酸アンモニウムを熱分解して得られた触媒の場合、熱分解温度が低くなるにつれてNO転化率は大きくなっていき、熱分解温度300℃の触媒である参考例1(V_300℃)で最も高い活性を示した。また、反応温度200℃においては、参考例1(V_300℃)、参考例2(V_400℃)、実施例1(V_SG_300℃)のいずれかを触媒として用いた場合、80%以上のNO転化率があった。更に、いずれの実施例も、比較例1及び比較例4に比較して高いNO転化率を示した。
【0077】
熱分解温度が低いほど、五酸化バナジウムの比表面積が大きくなっていることから、バルクの五酸化バナジウム触媒を使用した低温NH−SCR活性にはBET比表面積の大きさが起因していると考えられる。そのため、上記のように、実施例1として、BET比表面積を大きくするためにシュウ酸を用いたゾルゲル法により五酸化バナジウムを調製した次第である。この方法で調整した五酸化バナジウムのBET比表面積は、表1に記載のように62.9m−1であり、熱分解法で調整した五酸化バナジウムの約4倍近い大きさを有している。実施例1(V_SG_300℃)のNO転化率は、熱分解法で調製した五酸化バナジウムに比べて、100−150℃間で80−200%上昇した。
【0078】
なお、いずれの温度においてもN選択率は、ほぼ100%であった。図5に、例として、参考例1(V_300℃)と比較例1(V_500℃)のN選択率を示す。
【0079】
(空間速度依存性)
以下の表3の条件の下、選択的触媒還元反応を行うことにより、参考例1(V_300℃)を触媒として用いた場合の、空間速度(ガス処理用)依存性を測定した。測定結果を、図6に示す。図6(a)は、反応温度120℃におけるNO転化率を示し、図6(b)は、反応温度100℃におけるNO転化率を示す。
80%のNO無害化達成は、120℃において約15Lh−1cat−1であり、100℃において約11Lh−1cat−1であった。
空間速度を変化させた実験においても、Nへの選択率は、ほぼ100%であった。
【0080】
【表3】
【0081】
(水分共存下における反応)
参考例1(V_300℃)を触媒とし、以下の表4の条件の下、反応温度150℃、空間速度20Lh−1cat−1にてNH−SCR反応の実験を行った際の、時間経過に伴うNO転化率を、図7に示す。反応開始1.5h経過後に、2.3%HOを添加した所、NO転化率は64%から50%へと低下した。HOを添加してもNへの選択性は変化がなく、100%であった。反応開始から3.5h経過後に水の導入を止めた所、NO転化率は増加し、67%となった。
【0082】
【表4】
【0083】
(S分共存下における反応)
上記の水分共存下における反応に係る実験と同様の条件下で、SO100ppmを反応ガスに流通させた。実験結果を、図8に示す。NOの触媒活性には変化がなく、150℃までの温度上昇完了後から、常にHOとOが存在するものの、SOの濃度が下がることはなく、SOは反応しなかった。したがって、実施例の脱硝触媒は、耐S性も有することが分かった。
【0084】
(五酸化バナジウム担持量とNO転化率との関係)
図9に、反応温度毎の、五酸化バナジウム担持量とNO転化率との関係を示す。図9(a)は、反応温度120℃における五酸化バナジウム担持量とNO転化率の関係を示す。同様に、図9(b)は、反応温度150℃、図9(c)は、反応温度100℃における五酸化バナジウム担持量とNO転化率の関係を示す。なお、各グラフにおいて、五酸化バナジウム担持量が100wt%となっている触媒は、上記の実施例1により調製された脱硝触媒V_SG_300である。四角を用いてプロットされた点は、比較例4である既存触媒のNO転化率を示す。
全てのグラフにおいて、概ね、五酸化バナジウム担持量が増えるほど、NO転化率が高くなることが示された。ただし、いずれのグラフにおいても、五酸化バナジウム担持量が3.3wt%の触媒が、五酸化バナジウム担持量が9.0wt%の触媒よりも高いNO転化率を示した。
具体的には、図9(a)に見られるように、反応温度120℃のNH−SCR反応においては、五酸化バナジウム担持量が80wt%となった段階で、NO転化率が80%となった。また、図9(b)に見られるように、反応温度150℃のNH−SCR反応においては、五酸化バナジウム担持量が3.3wt%となった段階で、NO転化率は大きく上昇することが示された。更に、図9(c)に見られるように、反応温度100℃の選択的触媒還元反応においては、五酸化バナジウム担持量が43wt%までの脱硝触媒に比較して、五酸化バナジウム担持量が80wt%の脱硝触媒で、NO転化率が大きく上昇することが示された。
【0085】
(BET比表面積とNO転化率との関係)
図10(a)に、五酸化バナジウムを酸化チタンに担持させた脱硝触媒における、BET比表面積とNO転化率との関係を示す。五酸化バナジウムを酸化チタンに担持させた脱硝触媒においては、担持量を増やしていくと、概して、BET比表面積は減る一方で、活性は上がっていくことが示された。
また、図10(b)に、五酸化バナジウムを酸化チタンに担持させた脱硝触媒と、酸化チタンに担持させない脱硝触媒双方の、BET比表面積とNO転化率の関係を示す。五酸化バナジウムを酸化チタンに担持させない触媒においては、BET比表面積を増やすほど、活性が上がっていくことが示された。
【0086】
2.ゾルゲル法を用いて製造したV触媒
2.1 各実施例(実施例4〜6、参考例7〜8)
上記の「1.1 各実施例と比較例」においては、「実施例1」として、バナジウムとシュウ酸のモル比が1:3となるように、バナジン酸アンモニウムをシュウ酸溶液に溶解させた後、水分を蒸発させ、乾燥させ、乾燥粉末を焼成した脱硝触媒を作製した。このバナジウムとシュウ酸のモル比を、1:1、1:2、1:3、1:4、1:5とした脱硝触媒を、参考例7、実施例4〜6、参考例8とする。
具体的には、上記の繰り返しとなるが、バナジン酸アンモニウムをシュウ酸溶液に溶解させた(バナジウム:シュウ酸のモル比=1:1〜1:5)。全て溶かしきった後、ホットスターラー上で溶液中の水分を蒸発させ、乾燥機中において、120℃で一晩乾燥させた。その後、乾燥後の粉末を空気中において300℃で4時間焼成した。
それらのサンプル名を、各々、“V_SG_1:1”(参考例7),“V_SG_1:2”(実施例4),“V_SG_1:3”(実施例5),“V_SG_1:4”(実施例6),“V_SG_1:5”(参考例8)とした。
なお、「1.1 各実施例と比較例」における「実施例1」である、“V_SG_300”と、実施例5の“V_SG_1:3”とは、実質的に同一物であるが、説明の便宜上、ここでは、サンプル名が“V_SG_1:3”の「実施例5」とした。
なお、BET比表面積を高めるため、シュウ酸溶液に界面活性剤を加えてもよい。界面活性剤としては、例えば、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム(CTAB)、ラウリル硫酸ナトリウム(SDS)、ヘキサデシルアミン等の陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤が例示できる。
【0087】
2.2 評価
2.2.1 粉末X線回折
(回折方法)
上記の1.2.1と同様、粉末X線回折は、Rigaku smart labにより、Cu−Kaを用いて測定を行った。
【0088】
(回折結果)
参考例7、実施例4〜6、参考例8(V_SG)の粉末XRDパターンを、図11に示す。バナジウム:シュウ酸比が1:1,1:2,1:5となる溶液を用いて作製した五酸化バナジウム(参考例7、7、及び10)は、斜包晶Vピークのみ検出されたが、バナジウム:シュウ酸比が1:3,1:4となる溶液を用いて作製した五酸化バナジウム(実施例5及び6)では、斜包晶Vピークの他に、11°に未確認ピークが検出された。しかしながら、現時点で同定はできていない。
【0089】
2.2.2 BET比表面積測定
(測定方法)
上記の1.2.3と同様、BET比表面積の測定には、MicrotracBEL BELSORP−maxを用いた。Ar雰囲気下、200℃で2時間前処理をした後、196℃で測定した。
【0090】
(測定結果)
【表5】
【0091】
参考例7(V_SG_1:1),実施例4(V_SG_1:2),実施例5(V_SG_1:3),実施例6(V_SG_1:4),参考例8(V_SG_1:5)のBET比表面積を表5に示す。シュウ酸の比率が高まるに従って、バナジウム:シュウ酸比が1:3まで比表面積が増加し、それ以上では減少した。また、以下の触媒活性試験後の実施例5(V_SG_1:3)の比表面積は、触媒活性試験前に比較して大きく減少し、43.4m−1であった。
【0092】
2.2.3 触媒活性測定
(測定方法)
上記の1.2.4と同一の測定方法で、各V_SG触媒のNH−SCR活性を測定し、NO転化率を算出した。
【0093】
(測定結果)
図12に、V_SG触媒のNH−SCR活性を示す。図12(a)は、各触媒を用いたNH−SCR反応における、反応温度毎のNO転化率を示す。また、図12(b)は、反応温度120℃におけるバナジウム:シュウ酸の比率とNO転化率の関係を示す。バナジウム:シュウ酸の比率が1:3の触媒である実施例5(V_SG_1:3)において、NO転化率が最も高くなり、それ以上シュウ酸を加えると、NO転化率は減少した。実施例6(V_SG_1:4)は、実施例4(V_SG_1:2)よりも比表面積が大きいにもかかわらず、NO転化率が低かった。
【0094】
(比表面積とNO転化率との関係)
図13に、実施例4〜6、参考例7の各V_SG、及び、上記の参考例1(V_300),参考例2(V_400),比較例1(V_500)における、BET比表面積とNO転化率との関係を示す。なお、四角の点で示されるプロットは、実施例5(V_SG_1:3)の、選択的触媒還元反応後におけるBET比表面積とNO転化率との関係を示す。上記の繰り返しとなるが、バナジウム:シュウ酸の比率が1:3の触媒である実施例5(V_SG_1:3)において、NO転化率が最も高くなることが示された。
【0095】
2.2.4 NH−TPDによるキャラクタリゼーション
(測定方法)
NH−TPD(TPD:昇温脱離プログラム)により、触媒表面の酸点の量を見積もることが出来る。そこで、マイクロトラックベル社製のベルキャットを用い、装置中で、参考例1(V_300)、参考例2(V_400)、比較例1(V_500)、実施例4(V_SG_1:2)、実施例5(V_SG_1:3)の各触媒0.1gを、He(50ml/min)流通下300℃にて1時間前処理した。その後、100℃に下げ、5%アンモニア/He(50ml/min)を30分流通させ、アンモニアを吸着した。流通ガスをHe(50ml/min)に切り替え、30分の安定化の後、10℃/minで昇温し、質量数16のアンモニアを質量分析計にてモニターした。
【0096】
(測定結果)
【表6】
【0097】
参考例1(V_300)、参考例2(V_400)、比較例1(V_500)、実施例4(V_SG_1:2)、実施例5(V_SG_1:3)各々を用いた場合の、NH脱離量の測定結果を表6に示す。
これらのNH脱離量の値と、各々の触媒のBET比表面積とをプロットすると、図14のグラフが得られる。この図14のグラフからも分かるように、VのBET比表面積にほぼ比例して、NH脱離量が大きくなることが示された。また、各触媒のNH脱離量とNO転化率との対応関係をプロットすると、図15のグラフが得られた。すなわち、NH脱離量=触媒表面の酸点の量が大きい触媒ほど、NO転化率が高くなることが示された。
【0098】
以上のように、酸化バナジウムが五酸化バナジウム換算で3.3wt%以上存在し、比表面積が10m/g以上である本発明の脱硝触媒を用いた、アンモニアを還元剤とする選択的触媒還元反応においては、200℃以下の低温での脱硝効率が高い。一方で、SOの酸化は認められない。
【符号の説明】
【0099】
1…燃焼システム
10…ボイラ
30…空気予熱器
40…脱硝装置
L1…排気路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
【国際調査報告】