再表2018-88222IP Force 特許公報全文掲載

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2018年5月17日
【発行日】2018年11月15日
(54)【発明の名称】水性顔料分散体及び水性顔料分散体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 17/00 20060101AFI20181019BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20181019BHJP
   C09D 11/326 20140101ALN20181019BHJP
   B41M 5/00 20060101ALN20181019BHJP
【FI】
   C09D17/00
   B41J2/01 501
   C09D11/326
   B41M5/00 120
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】23
【出願番号】特願2018-505762(P2018-505762)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2017年10月26日
(11)【特許番号】特許第6319642号(P6319642)
(45)【特許公報発行日】2018年5月9日
(31)【優先権主張番号】特願2016-219676(P2016-219676)
(32)【優先日】2016年11月10日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124970
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 通洋
(72)【発明者】
【氏名】上田 裕太郎
(72)【発明者】
【氏名】日比野 良太
(72)【発明者】
【氏名】鳫林 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】岡田 真一
【テーマコード(参考)】
2C056
2H186
4J037
4J039
【Fターム(参考)】
2C056FC02
2H186BA08
2H186BA10
2H186BA11
2H186DA09
2H186DA12
2H186DA14
2H186FB11
2H186FB15
2H186FB16
2H186FB17
2H186FB25
2H186FB29
2H186FB30
2H186FB48
2H186FB55
4J037AA30
4J037CC13
4J037CC16
4J037EE28
4J037EE46
4J037FF06
4J037FF23
4J039AD01
4J039AD03
4J039AD09
4J039BE01
4J039BE12
4J039BE22
4J039BE30
4J039DA02
4J039EA15
4J039EA44
4J039EA46
(57)【要約】
本発明が解決しようとする課題は、優れた分散性および長期間の保存安定性を維持でき、かつ、普通紙に印刷した場合に発色性に優れた印刷物の製造に使用可能な水性顔料分散体を提供することである。本発明は、C.I.ピグメントレッド150を含む顔料、水溶性有機溶剤、及び、芳香族環式構造または複素環式構造を有する酸価50〜120mgKOH/gのラジカル重合体を含有する水性顔料分散体であって、前記ラジカル重合体が有する酸基の一部または全部は塩基性化合物によって中和されており、前記顔料に対する前記ラジカル重合体の質量比率が0.001〜0.1の範囲であることを特徴とする水性顔料分散体に関するものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
C.I.ピグメントレッド150を含む顔料、水溶性有機溶剤、及び、芳香族環式構造または複素環式構造を有する酸価50〜120mgKOH/gのラジカル重合体を含有する水性顔料分散体であって、前記ラジカル重合体が有する酸基の一部または全部は塩基性化合物によって中和されており、前記顔料に対する前記ラジカル重合体の質量比率が0.001〜0.1の範囲であることを特徴とする水性顔料分散体。
【請求項2】
前記ラジカル重合体の重量平均分子量が2000〜40000の範囲である請求項1に記載の水性顔料分散体。
【請求項3】
C.I.ピグメントレッド150を含む顔料、塩基性化合物、水溶性有機溶剤、及び、芳香族環式構造または複素環式構造を有する酸価50〜120mgKOH/gのラジカル重合体を前記顔料の全量に対して質量比率0.001〜0.1となる範囲で含有する混練物を製造する工程、ならびに、前記混練物と水とを混合する工程を有することを特徴とする水性顔料分散体の製造方法。
【請求項4】
前記ラジカル重合体の重量平均分子量が2000〜40000の範囲である請求項3に記載の水性顔料分散体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、C.I.ピグメントレッド150を含有する水性顔料分散体及びその製造方法
【背景技術】
【0002】
オフィス用途に使用されるインクジェットプリンターは、様々なメディアへの印刷に使用される。前記メディアのうち、特に消費量が多いものとしては普通紙が挙げられる。表面加工されたインクジェット専用普通紙も存在するが、高コストであることから、リサイクル紙などの安価な普通紙に比べると消費量は少ない。
【0003】
前記普通紙は、通常、インクを吸収しやすいため、インクジェットプリンターで印刷した場合に、得られる印刷物の濃度が低くなる傾向があった。
【0004】
一方、インクジェット記録用カラーインクに用いられる顔料のうち、C.I.ピグメントレッド150は、赤系(マゼンタ、レッド)インクに多用されている。
【0005】
C.I.ピグメントレッド150を含有するインクジェット記録用インクとしては、例えば、着色成分として2種類のアゾ顔料、顔料分散樹脂、水、水溶性溶剤とを少なくとも含んでなるインキ組成物であって、該2種類のアゾ顔料の構成成分である下記の一般式(1)のインク中の含有量が400ppm以下であることを特徴とし、該水溶性溶剤がグリコールエーテル類、ジオール類から選ばれる少なくとも一種である水性インクジェットインキ組成物が知られている(例えば特許文献1参照。)。
【0006】
しかし、普通紙を用いた場合であっても高鮮明でより一層発色性に優れた印刷物が産業界から求められるなかで、従来のインクでは、前記要求性能に対し、発色性の点であと一歩及ばない場合があった。また、従来のインクは、経時的に顔料の分散安定性が低下する場合があるため、例えばインクタンクの大容量化等を図るうえで懸念される場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2012−184334号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、優れた分散性および長期間の保存安定性を備え、かつ、普通紙に印刷した場合に発色性に優れた印刷物の製造に使用可能な水性顔料分散体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、普通紙に対する発色性を得るためには、インクが紙に着弾した直後に顔料分散性を急激に低下させて顔料の浸透速度を下げ、できるだけ紙の浅い部分(インクが着弾した面に近い部分)に顔料を固着させることが効果的ではないかと推定し、鋭意検討を行った。
【0010】
前記発色性は、顔料の種類や使用量等によって大きく変化する場合があるなかで、C.I.ピグメントレッド150という特定の顔料を使用する場合においては、前記C.I.ピグメントレッド150を含む顔料の全量に対する顔料分散樹脂の質量割合を特定範囲に設定することによって、課題を解決できることを見出した。
【0011】
一方、従来の水性顔料分散体としては、良好な分散性および保存安定性を保持するうえで、顔料に対する顔料分散樹脂の質量割合を10質量%以上に設定したものが広く知られている。
【0012】
しかし、発色性の更なる向上を図るべく、したとおり前記C.I.ピグメントレッド150の全量に対する顔料分散樹脂の質量割合を特定範囲に設定すると、分散性および保存安定性の著しい低下を引き起こす場合があった。
【0013】
そこで、本発明者は、C.I.ピグメントレッド150という特定の顔料を使用する場合において、顔料分散樹脂として芳香族環式構造または複素環式構造を有する酸価50〜120mgKOH/gのラジカル重合体を選択し、かつ、前記C.I.ピグメントレッド150を含む顔料の全量に対する前記ラジカル重合体の質量比率を0.001〜0.1の範囲に設定して得た水性顔料分散体であれば、優れた分散性および保存安定性を備え、かつ、普通紙に対する優れた発色性を備えたインクの製造に使用できることを見出した。
【0014】
すなわち、本発明は、C.I.ピグメントレッド150を含む顔料、水溶性有機溶剤、及び、芳香族環式構造または複素環式構造を有する酸価50〜120mgKOH/gのラジカル重合体を含有する水性顔料分散体であって、前記ラジカル重合体が有する酸基の一部または全部は塩基性化合物によって中和されており、前記顔料に対する前記ラジカル重合体の質量比率が0.001〜0.1の範囲であることを特徴とする水性顔料分散体に関するものである。
【0015】
また、本発明は、C.I.ピグメントレッド150を含む顔料、塩基性化合物、水溶性有機溶剤、及び、芳香族環式構造または複素環式構造を有する酸価50〜120mgKOH/gのラジカル重合体を前記顔料の全量に対して質量比率0.001〜0.1となる範囲で含有する混練物を製造する工程、ならびに、前記混練物と水とを混合する工程を有することを特徴とする水性顔料分散体の製造方法に関するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の水性顔料分散体は、優れた分散性および保存安定性を維持でき、かつ、普通紙に印刷した場合に発色性に優れた印刷物の製造に使用可能なインクの製造に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の水性顔料分散体は、C.I.ピグメントレッド150を含む顔料、水溶性有機溶剤、及び、芳香族環式構造または複素環式構造を有する酸価50〜120mgKOH/gのラジカル重合体を含有する水性顔料分散体であって、前記ラジカル重合体が有する酸基の一部または全部は塩基性化合物によって中和されており、前記顔料の全量に対する前記ラジカル重合体の質量比率が0.001〜0.1の範囲であることを特徴とするものである。
【0018】
ここで、水性顔料分散体とは、顔料が水等の溶媒に分散した状態のものを指す。前記水性顔料分散体は、水性顔料インクを製造する際に使用する材料、または、水性顔料インクそのものを指す場合がある。
【0019】
本発明の水性顔料分散体は、C.I.ピグメントレッド150を含む顔料を使用する。 前記顔料の含有量は、顔料の全量に対する前記ラジカル重合体の質量比率が0.001〜0.1となる範囲で適宜選択できるが、より優れた分散性および保存安定性を備え、かつ、普通紙に対する優れた発色性を備えた水性顔料分散体を得るうえで、0.01〜0.1の範囲で使用することが好ましく、0.04〜0.1の範囲で使用することがより好ましい。
【0020】
顔料の全量に対する前記ラジカル重合体の質量比率が範囲である水性顔料分散体は、前記顔料に対する前記ラジカル重合体の使用量が少ないため、水中では良好な分散安定性を有するもののインクが紙に着弾する際に受ける大きな刺激により、ラジカル重合体で分散した顔料は急激に凝集しやすくなると考えられる。凝集した顔料は、紙の内部に浸透しにくく普通紙の表面付近に固着されやすくなり、その結果、発色性が向上するのではないかと推定される。
【0021】
一方、顔料の全量に対する前記ラジカル重合体の質量比率が範囲を超えると、水性顔料分散体の分散安定性は著しく悪化する傾向にある。この理由は明らかではないが、顔料に吸着されなかったラジカル重合体が増加し、凝集することが要因として考えられる。
【0022】
(C.I.ピグメントレッド150を含む顔料)
本発明では、前記顔料としてC.I.ピグメントレッド150を必須成分として使用する。
【0023】
前記C.I.ピグメントレッド150としては、従来知られるものを使用することができる。
【0024】
前記C.I.ピグメントレッド150としては、その一次粒子径が1μm以下であるものを使用することが好ましく、10nm〜250nmであるものを使用することがより好ましく、50nm〜200nmであるものを使用することが最も好ましい。なお、一次粒子径の測定は、例えば走査型電子顕微鏡(SEM)を使用して測定した平均粒子径の値を採用することができる。
【0025】
前記C.I.ピグメントレッド150は、前記顔料の全量に対して5質量%以上使用することが好ましく、10質量%以上使用することがより好ましく、20質量%以上使用することがさらに好ましく、30質量%以上100質量%以下の範囲で使用することが、より一層優れた分散安定性を備え、発色性に優れた印刷物を形成可能な水性顔料分散体を得るうえで最も好ましい。
【0026】
また、本発明では、前記顔料としてC.I.ピグメントレッド150のほかに、必要に応じてその他の顔料を組合せ使用することができる。
【0027】
前記その他の顔料としては、例えばC.I.ピグメントレッド193等のモノアゾレーキ顔料、38等のジスアゾ系顔料、2、5、8、9、10、11、12、14、15、16、17、18、22、23、31、32、112、114、146、147、170、184、187、188、210、213、238、245、253、256、258、266、268、269等のナフトールAS顔料、3、4、6等のβ−ナフトール顔料、49、53、68等のβ−ナフトールレーキ顔料、237、239、247等のナフトールASレーキ顔料、144、166、214、220、221、242、262等の縮合アゾ系顔料、171、175、176、185、208等のベンズイミダゾロン顔料、122等のジメチルキナクリドン系顔料、202、209等のジクロロキナクリドン系顔料、ピグメントバイオレッド19等の無置換キナクリドン、及びこれらの顔料から選ばれる少なくとも2種以上の顔料の混合物もしくは固溶体を使用することができる。
【0028】
(ラジカル重合体)
本発明の水性顔料分散体としては、芳香族環式構造または複素環式構造を有する酸価50〜120mgKOH/gのラジカル重合体のうち、前記ラジカル重合体が有する酸基の一部または全部は塩基性化合物によって中和されたもの(中和物)を使用する。前記ラジカル重合体としては、前記C.I.ピグメントレッド150を含む顔料の分散樹脂としてはたらくものを使用することができる。これにより、長期間にわたりより一層優れた分散安定性を備え、かつ、普通紙に対する優れた発色性を備えた水性顔料分散体を得ることができる。
【0029】
前記芳香族環式構造または複素環式構造としては、後述する芳香族環式構造を有する単量体または複素環式構造を有する単量体を使用することによって前記ラジカル重合体に導入される環構造が挙げられる。
【0030】
前記環構造としては、ベンゼン環構造を使用することが好ましく、スチレン由来の環構造であることがより好ましい。
【0031】
前記芳香族環式構造または複素環式構造は、前記ラジカル重合体の疎水性を高め、顔料への吸着性を高めることができる。
【0032】
前記ラジカル重合体としては、酸価50〜120mgKOH/gのものを使用する。前記酸価は、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基等の酸基に由来する酸価である。
【0033】
前記酸価は、70〜120mgKOH/gの範囲であることが好ましく、90〜120mgKOH/gの範囲であることが、分散性および保存安定性をより一層向上でき、かつ、普通紙へ印刷した際の発色性をより一層向上させることができるためより好ましい。
【0034】
なお、酸価は、日本工業規格「K0070:1992. 化学製品の酸価、けん化価、エステル価、よう素価、水酸基価及び不けん化物の試験方法」に従って測定された数値であり、ラジカル重合体1gを完全に中和するのに必要な水酸化カリウムの量(mg)である。
【0035】
前記ラジカル重合体としては、それが水中に溶解または分散する際に、前記酸基の一部または全部が、後述する塩基性化合物によって中和されたもの(中和物)を使用する。これにより、分散性および保存安定性をより一層向上させることができる。
【0036】
前記ラジカル重合体としては、各種単量体をラジカル重合することによって得られた重合体を使用することができる。
【0037】
前記単量体としては、前記ラジカル重合体に芳香族環式構造を導入する場合であれば芳香族環式構造を有する単量体を使用することができ、複素環式構造を導入する場合であれば複素環式構造を有する単量体を使用することができる。
【0038】
前記芳香族環式構造を有する単量体としては、例えばスチレン、p−tert−ブチルジメチルシロキシスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−tert−ブトキシスチレン、m−tert−ブトキシスチレン、p−tert−(1−エトキシメチル)スチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン、p−フロロスチレン、α−メチルスチレン、p−メチル−α−メチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン等を使用することができる。
【0039】
前記複素環式構造を有する単量体としては、例えば2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン等のビニルピリジン系単量体を使用することができる。
【0040】
前記ラジカル重合体として芳香族環式構造及び複素環式構造の両方を有するものを使用する場合、前記単量体として、芳香族環式構造を有する単量体及び複素環式構造を有する単量体を組合せ使用することができる。
【0041】
前記ラジカル重合体としては、芳香族環式構造を有するラジカル重合体を使用することが好ましいことから、前記単量体としても芳香族環式構造を有する単量体を使用することが好ましく、スチレン、α−メチルスチレン、tert−ブチルスチレンを使用することがより好ましい。
【0042】
前記芳香族環式構造または複素環式構造を有する単量体は、顔料への吸着性をより一層高めるうえで、前記単量体の全量に対して60〜95質量%の範囲で使用することが好ましい。
【0043】
前記芳香族環式構造または複素環式構造を有する単量体の使用比率が60質量%以上であるラジカル重合体は、C.I.ピグメントレッド150をはじめとする顔料に吸着しやすいため、得られる水性顔料分散体の分散性および保存安定性をより一層向上させることができる。
【0044】
また、前記水性顔料分散体を用いて得られるインクジェット記録用水性インクは、普通紙への印刷特性に優れ、画像記録濃度(発色性)が高くなる傾向があり、耐水性も良好となる傾向がある。
【0045】
芳香環または複素環を有する単量体の量が95質量%以下であるラジカル重合体は、ラジカル重合体で被覆されたC.I.ピグメントレッド150の水性媒体に対する分散性を良好に維持することができ、水性顔料分散体における顔料の分散性や分散安定性を向上させることができる。
【0046】
したように前記芳香族環式構造または複素環式構造を有する単量体の使用量が、前記単量体の全量に対して60〜95質量%であるラジカル重合体は、非常に疎水性の高い重合体である。疎水性の高いラジカル重合体は、水中での顔料表面との親和性が高くなる。これにより、顔料に吸着する前記ラジカル重合体の量は増し、顔料に吸着しない余剰の前記ラジカル重合体の量は減ると推定される。
【0047】
また、前記ラジカル重合体としては、前記した特定範囲の酸価を有するラジカル重合体を製造するうえで、前記単量体として酸基を有する単量体を使用することができる。
【0048】
前記酸基を有する単量体としては、例えばカルボキシル基、スルホン酸基またはリン酸基等のアニオン性基を有する単量体を使用することができる。
【0049】
前記アニオン性基を有する単量体としては、カルボキシル基を有する単量体を使用することが、入手しやすく、より一層優れた顔料分散安定性を備えた水性顔料分散体を得るうえで好ましく、アクリル酸またはメタクリル酸を使用することがより好ましい。
【0050】
前記酸基を有する単量体は、前記ラジカル重合体の製造に使用する単量体の全量に対して5〜20質量%の範囲で使用することが、前記した所定範囲の酸価を有するラジカル重合体を得るうえで好ましい。
【0051】
また、前記ラジカル重合体の製造に使用可能な単量体としては、前記したもの以外に、必要に応じてその他の単量体を使用することができる。
【0052】
前記その他の単量体としては、例えばメチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルブチル(メタ)アクリレート、1,3−ジメチルブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−メチルブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、3−エトキシプロピル(メタ)アクリレート、3−エトキシブチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、エチル−α−(ヒドロキシメチル)(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニルエチル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、グリセリン(メタ)アクリレート、ビスフェノールA(メタ)アクリレート、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、酢酸ビニル等を単独または2種以上組合せ使用することができる。なお、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートまたはメタクリレートを指す。
【0053】
また、前記ラジカル重合体としては、前記単量体のラジカル重合によって形成される構造が線状(リニア)である重合体、分岐(グラフト)した構造を有する重合体、架橋した構造を有する重合体を使用することができる。それぞれの重合体において、モノマー配列は特に限定することはなく、ランダム型やブロック型配列の重合体を使用することができる。
【0054】
前記架橋構造を有する重合体は、前記単量体として架橋性官能基を有する単量体を使用することによって製造することができる。
【0055】
前記架橋性官能基を有する単量体としては、例えばエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングルコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリ(オキシエチレンオキシプロピレン)グリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンのアルキレンオキシド付加物のトリ(メタ)アクリレート等の多価アルコールのポリ(メタ)アクリレート;グリシジル(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン等を使用することができる。
【0056】
本発明で使用するラジカル重合体としては、酸基を有する単量体及び芳香族環式構造または複素環式構造を有する単量体のみの重合体を使用することが好ましい。
【0057】
本発明で使用するラジカル重合体としては、前記したなかでも、スチレン−(メタ)アクリル酸重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸系エステル−(メタ)アクリル酸重合体等の、スチレン構造単位と(メタ)アクリル酸構造単位とを有する重合体のうち、前記特定範囲の酸価を有するものを使用することが、より一層優れた分散性および保存安定性を備え、発色性に優れた印刷物を形成可能な水性顔料分散体を得るうえで好ましい。
【0058】
前記スチレン−(メタ)アクリル酸重合体としては、スチレン−アクリル酸重合体、スチレン−メタクリル酸重合体、スチレン−アクリル酸−メタクリル酸重合体のいずれも使用できるが、スチレン−アクリル酸−メタクリル酸重合体を使用することが、前記単量体の共重合性が向上して、重合体の均一性が向上し、その結果、より分散性および保存安定性に優れた顔料分散体が得られるため好ましい。
【0059】
前記ラジカル重合体としては、その製造に使用する単量体の全量に対するスチレンとアクリル酸とメタクリル酸との合計量が80質量%以上であるものを使用することが好ましく、85質量%以上がより好ましく、90質量%以上100質量%以下のものを使用することがさらに好ましい。
【0060】
なお、本発明では、前記単量体のラジカル重合率(反応率)はほぼ同一とし、各単量体の使用割合(仕込み割合)が、ラジカル重合体を構成する各単量体由来の構造単位の割合と同一であるとみなした。
【0061】
前記単量体をラジカル重合法によりラジカル重合体を製造する方法としては、例えば塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の方法が挙げられる。その際、必要に応じて公知慣用の重合開始剤、連鎖移動剤(重合度調整剤)、界面活性剤及び消泡剤を使用することができる。
【0062】
重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、ベンゾイルパーオキサイド、ジブチルパーオキサイド、ブチルパーオキシベンゾエート等が挙げられる。前記重合開始剤は、前記ラジカル重合体の製造に使用する単量体の全量に対して0.1〜10質量%の範囲で使用することが好ましい。
【0063】
前記ラジカル重合体としては、リニア重合体、グラフト重合体のどちらも使用することができる。前記ラジカル重合体として前記スチレン−(メタ)アクリル酸重合体を使用する場合、前記グラフト重合体としては、(メタ)アクリル酸および/またはスチレンとを含む単量体の共重合体が分岐鎖または主鎖を構成し、ポリスチレンやエポキシ、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドなどのアルキレンオキサイド鎖、ビスフェノール、長鎖アルキルなどの疎水性側鎖で構成するグラフト共重合体が挙げられる。前記スチレン−(メタ)アクリル酸重合体としては、前記グラフト重合体とリニア重合体との混合物を使用してもよい。
【0064】
前記ラジカル重合体としては、重量平均分子量が2000〜40000の範囲内であるものを使用することが好ましく、5000〜20000の範囲内にあることがより好ましく、7000〜15000範囲内にあることが特に好ましい。
【0065】
重量平均分子量が2000以上であるラジカル重合体を使用すると、水性顔料分散体の長期保存安定性が良くなる傾向となり、顔料の凝集などによる沈降が発生しにくい傾向がある。また、重量平均分子量が30000以下のスチレン−(メタ)アクリル酸重合体を使用すると、インクジェット記録用インクの吐出安定性が向上する傾向にある。なお、前記重量平均分子量とはGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)法で測定される値であり、標準物質として使用するポリスチレンの分子量に換算した値である。
【0066】
(塩基性化合物)
前記ラジカル重合体が有する酸基は、前記したとおり、塩基性化合物によって中和されている。
【0067】
前記塩基性化合物としては、例えばカリウム、ナトリウムなどのアルカリ金属の水酸化物;カリウム、ナトリウムなどのアルカリ金属の炭酸塩;カルシウム、バリウムなどのアルカリ土類金属などの炭酸塩;水酸化アンモニウム等の無機系塩基性化合物や、トリエタノールアミン、N,N−ジメタノールアミン、N−アミノエチルエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、N−N−ブチルジエタノールアミンなどのアミノアルコール類、モルホリン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリンなどのモルホリン類、N−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン、ピペラジンヘキサハイドレートなどのピペラジン等の有機系塩基性化合物を使用することができる。なかでも、前記塩基性化合物としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウムに代表されるアルカリ金属水酸化物を使用することが、水性顔料分散体の低粘度化に寄与し、インクジェット記録用インクの保存安定性及び吐出安定性をより一層向上させるうえで好ましく、水酸化カリウムを使用することが特に好ましい。
【0068】
これらを使用した前記アニオン性基の中和率は特に限定はないが、未中和のラジカル重合体による凝集物の生成を抑えるために、一般に80〜120%となる範囲で行うことが好ましい。本発明において、中和率とは、以下の式で計算された値を指す。
【0069】
中和率(%)=[{塩基性化合物の質量(g)×56.11×1000}/{ラジカル重合体の酸価(mgKOH/g)×塩基性化合物の当量×ラジカル重合体の質量(g)}]×100
【0070】
前記塩基性化合物としては、それ顔料等と混合する際に、予め水等の溶媒に溶解または分散等させたものを使用することができる。
【0071】
(水溶性有機溶剤)
本発明で使用する水溶性有機溶剤としては、湿潤剤として知られるものを使用することができ、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;メタノール、エタノール、2−プロパノール、2−メチル−1−プロパノール、1−ブタノール、2−メトキシエタノール等のアルコール類;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン等のエーテル類;ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類が挙げられ、とりわけ炭素数が3〜6のケトン及び炭素数が1〜5のアルコールからなる群から選ばれる化合物を用いるのが好ましい。
【0072】
前記水溶性有機溶剤としては、粘度の高いエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのグリコール類;ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、およびこれらと同族のジオールなどのジオール類;ラウリン酸プロピレングリコールなどのグリコールエステル;ジエチレングリコールモノエチル、ジエチレングリコールモノブチル、ジエチレングリコールモノヘキシルの各エーテル、プロピレングリコールエーテル、ジプロピレングリコールエーテル、およびトリエチレングリコールエーテルを含むセロソルブなどのグリコールエーテル類;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、ブチルアルコール、ペンチルアルコール、およびこれらと同族のアルコールなどのアルコール類;あるいは、スルホラン;γ−ブチロラクトンなどのラクトン類;N−(2−ヒドロキシエチル)ピロリドンなどのラクタム類;グリセリンおよびその誘導体、ポリオキシエチレンベンジルアルコールエーテルなどを使用することができる。
【0073】
前記水溶性有機溶剤は、1種または2種以上を組み合わせ使用することができる。なかでも、前記水溶性有機溶剤としては、高沸点、低揮発性で、高表面張力のグリコール類やジオール類等の多価アルコール類を使用することが好ましく、特にジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のグリコール類を使用することが好ましい。
【0074】
(水)
本発明の水性顔料分散体は、した各種成分が水に溶解または分散したものである。前記水としては、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水、または超純水を用いることができる。また、前記水としては、紫外線照射または過酸化水素添加等によって滅菌された水を用いることが、水性顔料分散体やそれを使用したインク等を長期保存する場合に、カビまたはバクテリアの発生を防止することができるため好適である。
【0075】
(水性顔料分散体の製造方法)
本発明の水性顔料分散体の製造方法は、C.I.ピグメントレッド150を含む顔料、塩基性化合物、水溶性有機溶剤、及び、前記顔料の全量に対して芳香族環式構造または複素環式構造を有する酸価50〜120mgKOH/gのラジカル重合体を質量比率0.001〜0.1となる範囲で含有する混練物を製造する工程、ならびに、前記混練物と水とを混合する工程を有することを特徴とする。
【0076】
はじめに、C.I.ピグメントレッド150を含む顔料、塩基性化合物、水溶性有機溶剤、及び、前記ラジカル重合体を、した質量比率となるように容器へ供給し混練物を製造する。前記混練物を得る工程は、特に限定されず公知の分散方法で行うことができる。例えば、ペイントシェーカー、ビーズミル、サンドミル、ボールミル等のメディアを使用するメディアミル分散法;超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、ナノマイザー、アルティマイザー等を使用したメディアレス分散法;ロールミル、ヘンシェルミキサー、加圧ニーダー、インテンシブミキサー、バンバリーミキサー、プラネタリーミキサー等の混練分散法等が挙げられる。このうち混練分散法は、顔料を含有する高固形分濃度の混合物に混練機で強い剪断力を与えることによって顔料粒子を微細化させる方法であり、顔料濃度の高い混練物を得ることができ、且つ粗大粒子の低減に有効な方法であり好ましい。前記混練分散法においては、水は、混合物の全固形分に対し50質量%以下で含むかあるいは水を含まないことが好ましい。
【0077】
前記混練分散法は、C.I.ピグメントレッド150を含む顔料、塩基性化合物、水溶性有機溶剤、及び、前記ラジカル重合体の混合物を混練する。このときの混合物の仕込み順序には特に限定はなく全量を同時に仕込んで混練を開始してもよいし、各々を少量ずつ仕込んでもよいし、例えばラジカル重合体と塩基性化合物と顔料とを仕込んだのち水溶性有機溶剤を仕込む等、原料によって仕込み順を変えてもよい。各々の原料の仕込み量は前述の範囲で行うことができる。塩基性化合物を配合する際、予め水に溶解された塩基性化合物水溶液を使用する場合には、前記混合物中の水の量は、前記塩基性化合物水溶液に含まれる水の量を考慮して決定することが好ましい。
【0078】
混練分散法のメリットである強い剪断力を混合物に与えるためには、前記混合物の固形分比率が高い状態で混練するほうが好ましく、より高い剪断力を前記混合物に加えることができる。固形分比率としては、20〜100質量%の範囲であることが好ましく、30〜90質量%の範囲であることがより好ましく、40〜80質量%の範囲であることが、混練中の混合物の粘度を適度に高く保つことができるため混練機によって混合物にかかる負荷を大きくでき、その結果、混合物中の顔料の十分な解砕と、顔料のラジカル重合体による吸着(被覆)とをより効率的に行うことができるため特に好ましい。
【0079】
混練時の温度は混練物に十分な剪断力が加わるように、使用するラジカル重合体のガラス転移点等の温度特性を考慮して適宜調整を行うことができる。例えばラジカル重合体が前記スチレン−(メタ)アクリル酸重合体の場合、ガラス転移点より低く、かつ該ガラス転移点との温度差が50℃より小さい範囲で行うことが好ましい。このような温度範囲で混練を行うことにより、混練温度の上昇によるラジカル重合体の溶融に伴う混練物の粘度低下によって剪断力が不足することがない。
【0080】
混練工程に用いる混練装置としては、固形分比率の高い混合物に対して高い剪断力を発生させることのできるものであればよく、前述したような公知の混練装置の中から選択して用いることが可能である。前記混練装置としては、二本ロール等の撹拌槽を有しない開放型の混練機を用いるよりも、撹拌槽と撹拌羽根を有し撹拌槽を密閉可能な混練装置を用いることが好ましい。
【0081】
撹拌槽と撹拌羽根を有し撹拌槽を密閉可能な混練装置としては、ヘンシェルミキサー、加圧ニーダー、バンバリーミキサー、プラネタリーミキサーなどが例示され、特にプラネタリーミキサー等を使用することが好ましい。
【0082】
本発明においては、顔料とラジカル重合体からなる固形分濃度が高い状態で混練することが好ましいが、混練物の状態に依存して粘度が広範囲で変化する。二本ロール等と比較すると、プラネタリーミキサーは広い範囲の粘度領域で混練処理が可能であり、更に水性媒体の添加及び減圧溜去による混練時の粘度及び負荷剪断力の調整も容易である。
【0083】
前記撹拌槽と撹拌羽根を有し撹拌槽を密閉可能な混練装置を使用する場合、前記混練後、前記混練装置に水や水溶性有機溶剤を供給することによって、前記混練物を水に分散させることができる。
【0084】
前記方法で得られた水性顔料分散体としては、顔料濃度が10〜50質量%であるものを使用することが、インクを製造する際の水等による希釈が容易であり好ましい。
【0085】
また、前記方法で、顔料濃度が前記範囲内であっても粘度が範囲よりも高く取扱いに不便を感じる場合には、水性媒体で適宜希釈し、所望の粘度範囲の水性顔料分散体とすることも可能である。
【0086】
具体的には、例えば前述のように撹拌槽を有する混練機で顔料混練物を製造した後、該撹拌槽に水性媒体を添加、混合し、必要に応じて撹拌して直接希釈することにより水性顔料分散体を製造できる。また、撹拌翼を備えた別の攪拌機で固体の顔料分散体と水性媒体を混合し、必要に応じて撹拌して水性顔料分散体を調製できる。
【0087】
水性媒体の混合に関しては、顔料混練物に対して必要量を一括混合してもよいが、連続的あるいは断続的に必要量を添加して混合を進めた方が、水性媒体による希釈が効率的に行われ、より短時間で水性顔料分散体を作製することができる。
【0088】
前記水性顔料分散体としては、製造後に分散機を用いて分散処理されたものを使用することもできる。
【0089】
前記分散機としては、ペイントシェーカー、ビーズミル、ロールミル、サンドミル、ボールミル、アトライター、バスケットミル、サンドミル、サンドグラインダー、ダイノーミル、ディスパーマット、SCミル、スパイクミル、アジテーターミル、ジュースミキサー、高圧ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、ナノマイザー、デゾルバー、ディスパー、高速インペラー分散機、ニーダー、プラネタリーミキサーなどがあげられる。
【0090】
前記水性顔料分散体に含まれる粒子の体積平均粒子径は、50nmから300nmであることが好ましく、100nmから200nmであることが優れた分散性および保存安定性を備え、発色性に優れた印刷物を形成するうえで最も好ましい。
【0091】
(インクジェット記録用水性インク)
前記インクは、自動車や建材用の塗料や、オフセットインキ、グラビアインキ、フレキソインキ、シルクスクリーンインキ等の印刷インキ、または、インクジェット記録用インク等に使用することができる。
【0092】
前記インクは、前記水性顔料分散体と必要に応じて水や水溶性有機溶剤や添加剤等とを混合し、必要に応じて攪拌等することによって製造することができる。前記インクを製造する際には、前記攪拌途中、または、インク製造後に、必要に応じて遠心分離や濾過処理を行ってもよい。前記インクとしては、顔料濃度を0.1〜20質量%程度に希釈されたものであることが好ましい。
【0093】
前記添加剤としては、バインダー目的で使用するアクリル系樹脂やポリウレタン系樹脂等の樹脂、乾燥抑止剤、浸透剤、界面活性剤等を使用することができる。
【0094】
前記乾燥抑止剤は、例えばプリンタヘッド内におけるインクの乾燥を防止することを目的として使用することができる。前記乾燥抑止剤は、前記インクの全量に対して3質量%〜50質量%の範囲で含まれることが好ましい。
【0095】
前記乾燥抑止剤としては、前記した水溶性有機溶剤と同様のものを使用できるが、水との混和性がありインクジェットプリンターのヘッドの目詰まり防止効果が得られるものが好ましい。
【0096】
前記乾燥防止剤としては、例えば、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、分子量2000以下のポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、イソプロピレングリコール、イソブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、メソエリスリトール、ペンタエリスリトール等が挙げられる。なかでも、前記乾燥防止剤としては、グリセリン、トリエチレングリコールを使用することが、安全性が高く、かつ、前記インクの乾燥をより一層効果的に防止でき、インクの吐出性をさらに向上させることができる。
【0097】
前記浸透剤は、記録媒体への浸透性の改良や記録媒体上におけるインクドットの径の大きさを調整するうえで使用することができる。
【0098】
浸透剤としては、例えばエタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール;エチレングリコールヘキシルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル等のアルキルアルコールのグリコールモノエーテルが挙げられる。インク中の浸透剤の含有量は0.01質量%〜10質量%であることが好ましい。
【0099】
前記界面活性剤は、表面張力等のインク特性を調整するために使用することができる。界面活性剤としては、特に限定されるものではなく、各種のアニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤などが挙げられ、これらの中では、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤が好ましい。
【0100】
アニオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルフェニルスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、高級脂肪酸塩、高級脂肪酸エステルの硫酸エステル塩、高級脂肪酸エステルのスルホン酸塩、高級アルコールエーテルの硫酸エステル塩及びスルホン酸塩、高級アルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩等が挙げられ、これらの具体例として、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、イソプロピルナフタレンスルホン酸塩、モノブチルフェニルフェノールモノスルホン酸塩、モノブチルビフェニルスルホン酸塩、ジブチルフェニルフェノールジスルホン酸塩などを挙げることができる。
【0101】
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、脂肪酸アルキロールアミド、アルキルアルカノールアミド、アセチレングリコール、アセチレングリコールのオキシエチレン付加物、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールブロックコポリマー等を挙げることができ、これらの中では、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸アルキロールアミド、アセチレングリコール、アセチレングリコールのオキシエチレン付加物、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールブロックコポリマーが好ましい。
【0102】
その他の界面活性剤としては、ポリシロキサンオキシエチレン付加物のようなシリコーン系界面活性剤;パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、オキシエチレンパーフルオロアルキルエーテルのようなフッ素系界面活性剤;スピクリスポール酸、ラムノリピド、リゾレシチンのようなバイオサーファクタント等も使用することができる。
【0103】
前記界面活性剤は、単独または2種以上組合せ使用することができる。界面活性剤の使用量はインクの全質量に対し、0.001質量%〜2質量%の範囲が好ましく、0.001質量%〜1.5質量%であることがより好ましく、0.01質量%〜1質量%の範囲であることが、印刷画像のにじみ等をより効果的に防止するうえでさらに好ましい。
【0104】
前記その他の添加剤としては、必要に応じて防腐剤、粘度調整剤、pH調整剤、キレート剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等を使用することができる。
【0105】
(記録媒体)
インクジェット記録用水性インクの記録媒体としては特に限定はなく、複写機で一般的に使用されているコピー用紙(PPC紙)等の吸収性の記録媒体、インクの吸収層を有する記録媒体、インクの吸収性を有しない非吸水性の記録媒体、インクの吸水性の低い難吸収性の記録媒体などがありうる。
【0106】
吸収性の記録媒体としては、例えば普通紙、表面にカチオン成分を含むインクジェット専用普通紙等のインクジェット専用普通紙、布帛、ダンボール、木材等があげられる。また吸収層を有する記録媒体の例としては、インクジェット専用紙等があげられ、この具体例としては、例えば、株式会社ピクトリコのピクトリコプロ・フォトペーパーやEPSON株式会社のプロフェッショナルフォトペーパー等が挙げられる。
【0107】
インクの吸収性を有しない非吸水性の記録媒体としては、例えば食品用の包装材料に使用されているもの等を使用することができ、公知のプラスチックフィルムが使用できる。具体例としては、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィンフィルム、ナイロン等のポリアミド系フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、ポリ乳酸フィルム等が挙げられる。特にポリエステルフィルム、ポリオレフィンフィルム、ポリアミド系フィルムが好ましく、さらにポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ナイロンが好ましい。またバリア性を付与するためのポリ塩化ビニリデン等のコーティングをしたフィルムでもよいし、必要に応じてアルミニウム等の金属、あるいはシリカやアルミナ等の金属酸化物の蒸着層を積層したフィルムを併用してもよい。
【0108】
前記プラスチックフィルムは、未延伸フィルムであってもよいが、1軸もしくは2軸方向に延伸されたものでも良い。さらにフィルムの表面は、未処理であってもよいが、コロナ放電処理、オゾン処理、低温プラズマ処理、フレーム処理、グロー放電処理等、接着性を向上させるための各種処理を施したものが好ましい。
【0109】
前記プラスチックフィルムの膜厚は用途に応じて適宜変更されるが、例えば軟包装用途である場合は、柔軟性と耐久性、耐カール性を有しているものとして、膜厚が10μm〜100μmであることが好ましい。より好ましくは10μm〜30μmである。この具体例としては、東洋紡株式会社のパイレン(登録商標)などが挙げられる。
【0110】
インクの吸水性の低い難吸収性の記録媒体には、印刷本紙などのアート紙、コート紙、軽量コート紙、微塗工紙などが使用できる。これら難吸収性の記録媒体は、セルロースを主体とした一般に表面処理されていない上質紙や中性紙等の表面にコート材を塗布してコート層を設けたものであり、王子製紙(株)製の「OKエバーライトコート」及び日本製紙(株)製の「オーロラS」等の微塗工紙、王子製紙(株)製の「OKコートL」及び日本製紙(株)製の「オーロラL」等の軽量コート紙(A3)、王子製紙(株)製の「OKトップコート+」及び日本製紙(株)製の「オーロラコート」等のコート紙(A2、B2)、王子製紙(株)製の「OK金藤+」及び三菱製紙(株)製の「特菱アート」等のアート紙(A1)等が挙げられる。
【実施例】
【0111】
以下、本発明を実施例によってさらに詳細に説明する。
【0112】
(ラジカル重合体A)
ラジカル重合体Aは、溶液重合で製造された粉体状(直径1mm以下)であり、その単量体組成比は、スチレン/アクリル酸/ブチルアクリレート=90.40/9.50/0.10(質量比)であり、重量平均分子量8000、酸価70mgKOH/g、ガラス転移温度は110℃である。
【0113】
(ラジカル重合体B)
ラジカル重合体Bは、溶液重合で製造された粉体状(直径1mm以下)であり、その単量体組成比は、スチレン/アクリル酸=87.70/12.30(質量比)であり、重量平均分子量11000、酸価90mgKOH/g、ガラス転移温度は98℃である。
【0114】
(ラジカル重合体C)
ラジカル重合体Cは、溶液重合で作製された粉体状(直径1mm以下)であり、その単量体組成比において、スチレン/アクリル酸=87.70/12.30(質量比)であり、重量平均分子量9000、酸価90mgKOH/g、ガラス転移温度は103℃である。
【0115】
(ラジカル重合体D)
ラジカル重合体Dは、溶液重合で製造された粉体状(直径1mm以下)であり、その単量体組成比は、スチレン/アクリル酸/メタクリル酸=83.00/7.35/9.55/0.10(質量比)であり、重量平均分子量11000、酸価120mgKOH/g、ガラス転移温度は121℃である。
【0116】
(ラジカル重合体E)
ラジカル重合体Eは、溶液重合で製造された粉体状(直径1mm以下)であり、その単量体組成比は、スチレン/アクリル酸/メタクリル酸/アクリル酸ブチル=72.00/12.13/15.77/0.10(質量比)であり、重量平均分子量8000、酸価180mgKOH/g、ガラス転移温度は113℃である。
【0117】
(ラジカル重合体F)
ラジカル重合体Fは、溶液重合で製造された粉体状(直径1mm以下)であり、その単量体組成比は、スチレン/アクリル酸/メタクリル酸/アクリル酸ブチル=56.00/19.09/24.81/0.10(質量比)であり、重量平均分子量6000、酸価280mgKOH/g、ガラス転移温度は121℃である。
【0118】
なお、本発明における重量平均分子量は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)法で測定される値であり、標準物質として使用するポリスチレンの分子量に換算した値である。なお測定は以下の装置及び条件により実施した。
【0119】
送液ポンプ:LC−9A
システムコントローラー:SLC−6B
オートインジェクター:S1L−6B
検出器:RID−6A
以上島津製作所社製
データ処理ソフト:Sic480IIデータステーション(システムインスツルメンツ社製)。
カラム:GL−R400(ガードカラム)+GL−R440+GL−R450+GL−R400M(日立化成工業(株)製)
溶出溶媒:THF(テトラヒドロフラン)
溶出流量:2ml/min
カラム温度:35℃
【0120】
(実施例1 水性顔料分散体の製造方法)
ラジカル重合体Aを2.0質量部、C.I.ピグメントレッド150として「FUJI FASTCARMINE 522−1(冨士色素(株)製)」50質量部を、プラネタリーミキサー(商品名:ケミカルミキサーACM04LVTJ−B 株式会社愛工舎製作所製)に仕込み、ジャケットを加温し、内容物温度が80℃に達した後、自転回転数:80回転/分、公転回転数:25回転/分で混練を行った。5分後、トリエチレングリコールを40質量部、34質量%水酸化カリウム水溶液を0.41質量部加えた。
【0121】
プラネタリーミキサーの電流値が最大電流値を示してから120分を経過した時点まで混練を継続し混練物を得た。顔料に対する前記ラジカル重合体の比率(R/P)は0.04であった。
【0122】
得られた混練物80質量部をジャケットから取出し、1cm角状に切断した後、市販のジューサーミキサーに入れた。そこにイオン交換水80質量部を加え10分間ミキサーにかけて混合、希釈しイオン交換水に分散させた。
【0123】
さらにイオン交換水とトリエチレングリコールを加え、顔料の濃度が14.5質量%、前記C.I.ピグメントレッド150に対するトリエチレングリコールの濃度が100質量%の水性顔料分散体を得た。
【0124】
(インクジェット記録用水性インクの製造方法)
得られた水性顔料分散体をイオン交換水で顔料濃度12質量%となるように希釈することによって希釈液を得た。
【0125】
次に、前記希釈液を用い、以下の成分を混合することによって、顔料濃度6質量%のインクジェット記録用水性インクを得た。
水性顔料分散体の希釈液:50質量部
2−ピロリジノン:8質量部
トリエチレングリコール:4質量部
トリエチレングリコール モノ−n−ブチルエーテル:8質量部
精製グリセリン:3質量部
サーフィノール440 (エアープロダクツ社製):0.5質量部
イオン交換水:26.5質量部
【0126】
(実施例2)
ラジカル重合体A2.0質量部の代わりにラジカル重合体Bを5.0質量部使用し、34質量%水酸化カリウム水溶液の使用量を0.41質量部から1.32質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で水性顔料分散体及びインクジェット記録用水性インクを得た。顔料に対する前記ラジカル重合体の比率(R/P)は0.1であった。
【0127】
(実施例3)
ラジカル重合体A2.0質量部の代わりにラジカル重合体Cを5.0質量部使用し、34質量%水酸化カリウム水溶液の使用量を0.41質量部から1.32質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で水性顔料分散体及びインクジェット記録用水性インクを得た。C.I.ピグメントレッド150を含む顔料の質量に対する前記ラジカル重合体の質量の比率(R/P)は0.1であった。
【0128】
(実施例4)
ラジカル重合体A2.0質量部の代わりにラジカル重合体Dを2.0質量部使用し、34質量%水酸化カリウム水溶液の使用量を0.41質量部から0.71質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で水性顔料分散体及びインクジェット記録用水性インクを得た。C.I.ピグメントレッド150を含む顔料の質量に対する前記ラジカル重合体の質量の比率(R/P)は0.1であった。
【0129】
(比較例1)
ラジカル重合体A2.0質量部の代わりにラジカル重合体Bを10.0質量部使用し、34質量%水酸化カリウム水溶液の使用量を0.41質量部から2.64質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で水性顔料分散体及びインクジェット記録用水性インクを得た。C.I.ピグメントレッド150を含む顔料の質量に対する前記ラジカル重合体の質量の比率(R/P)は0.2であった。
【0130】
(比較例2)
ラジカル重合体A2.0質量部の代わりにラジカル重合体Cを10.0質量部使用し、34質量%水酸化カリウム水溶液の使用量を0.41質量部から2.64質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で水性顔料分散体及びインクジェット記録用水性インクを得た。C.I.ピグメントレッド150を含む顔料の質量に対する前記ラジカル重合体の質量の比率(R/P)は0.2であった。
【0131】
(比較例3)
ラジカル重合体A2.0質量部の代わりにラジカル重合体Dを10.0質量部使用し、34質量%水酸化カリウム水溶液の使用量を0.41質量部から3.53質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で水性顔料分散体及びインクジェット記録用水性インクを得た。C.I.ピグメントレッド150を含む顔料の質量に対する前記ラジカル重合体の質量の比率(R/P)は0.2であった。
【0132】
(比較例4)
ラジカル重合体A2.0質量部の代わりにラジカル重合体Eを2.0質量部使用し、34質量%水酸化カリウム水溶液の使用量を0.41質量部から1.05質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で水性顔料分散体及びインクジェット記録用水性インクを得た。C.I.ピグメントレッド150を含む顔料の質量に対する前記ラジカル重合体の質量の比率(R/P)は0.04であった。
【0133】
(比較例5)
ラジカル重合体A2.0質量部の代わりにラジカル重合体Fを2.0質量部使用し、34質量%水酸化カリウム水溶液の使用量を0.41質量部から1.64質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で水性顔料分散体及びインクジェット記録用水性インクを得た。C.I.ピグメントレッド150を含む顔料の質量に対する前記ラジカル重合体の質量の比率(R/P)は0.04であった。
【0134】
以上の実施例、比較例で作製した水性顔料分散体の評価を以下の方法を用いて行った。
【0135】
(水性顔料分散体の評価)
〔体積平均粒子径の測定方法〕
はじめに、実施例及び比較例で調製した水性顔料分散体を、イオン交換水で1000倍に希釈した。
【0136】
次に、希釈後の水性顔料分散体の約4mlをセルにいれ、マイクロトラック・ベル(株)社製ナノトラック粒度分布計「UPA150」を用い、25℃環境下で、レーザー光の散乱光を検出することにより、体積平均粒子径(MV)を測定した。
【0137】
前記体積平均粒子径を3回測定し、それらの平均値を算出し有効数字2桁で示した値を、体積平均粒子径の値(単位:nm)とした。
【0138】
〔粗大粒子数の測定方法〕
はじめに、実施例及び比較例で調製した水性顔料分散体を、イオン交換水で500〜1000倍の任意の割合で希釈した。
【0139】
次に、パーティクルサイジングシステム社(Particle Sizing Systems社)製、個数カウント方式 粒度分布計(Accusizer 780 APS)を用い、前記希釈後の水性顔料分散体に含まれる直径0.5μm以上の粒子数を3回測定した。
【0140】
次に、前記測定値に、それぞれ希釈濃度を乗じることによって、単位体積あたりの粗大粒子数を算出した。方法で算出した3つの粗大粒子数の平均値を、実施例及び比較例で調製した水性顔料分散体の粗大粒子数とした。
【0141】
(水性顔料分散体の保存安定性の試験方法)
はじめに、実施例及び比較例で製造した直後の水性顔料分散体の体積平均粒子径を、前記〔体積平均粒子径の測定方法〕に記載した方法と同様の方法で測定した。
【0142】
次に、実施例及び比較例で得た水性顔料分散体をポリプロピレン容器に密封し、60℃で1週間保存した後の体積平均粒子径を〔体積平均粒子径の測定方法〕と同様の方法で測定した。
【0143】
次に、前記製造直後の水性顔料分散体の体積平均粒子径と、前記保存後の水性顔料分散体の体積平均粒子径と、変化率(%)=[(前記保存後の水性顔料分散体の体積平均粒子径−前記製造直後の水性顔料分散体の体積平均粒子径)/前記製造直後の水性顔料分散体の体積平均粒子径]×100の式に基づき、体積平均粒子径の変化率を算出した。前記変化率が10%以内であれば保存安定性は良好であると判断した。
【0144】
〔印刷濃度の測定方法〕
はじめに、製造後24時間以上静置したインクジェット記録用水性インクを、市販のインクジェットプリンターのカートリッジに充填し、リサイクル紙(普通紙)とインクジェット専用紙(IJ専用紙)とOHPフィルムに、画像濃度設定100%設定の印刷パターンを印刷した。
【0145】
次に、X−Rite社製の「eXact」で前記印刷パターンを測色し、印刷パターンのC*(彩度)、及び、C*をL*(明度)で除した値(C*/L*)を算出した。
【0146】
次に、日本分光社製「V‐660」を用いて、前記印刷前のOHPフィルムをブランクとして、前記印刷後のOHPフィルムの印刷面の波長570nmにおける吸光度(Abs.)を測定し、インク打ち込み量の指標とした。なお、波長570nmの吸光度の値が高いほどインク吐出量が多いことを示す。
【0147】
次に、前記値(C*/L*)と、吸光度(Abs.)と、評価値=[値(C*/L*)/吸光度(Abs.)]の式に基づき、実施例及び比較例で得たインクジェット記録用水性インクの評価値を算出し、その値に基づいて印刷濃度を評価した。
【0148】
なお、評価値は、単位インク吐出量あたりの印刷濃度を表し、評価値が高いほど色が濃く見える(高評価)ことを示す。
【0149】
水性顔料分散体及びインクジェット記録用水性インクの評価結果を表1に示す。
【0150】
【表1】
【0151】
この結果、実施例1〜4の水性顔料分散体は、粗大粒子数が少なく、分散性および保存安定性が良好であることが明らかであった。また、本発明における水性顔料分散体を使用したインクジェット記録用インクは、リサイクル紙、インクジェット専用紙共に(C*/L*)を(Abs.)で除した単位インク吐出量あたりの印刷面濃度が高い値を示した。
【国際調査報告】

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