特表-18092841IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2018年5月24日
【発行日】2019年10月17日
(54)【発明の名称】三次元形状造形物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B22F 3/105 20060101AFI20190920BHJP
   B22F 3/16 20060101ALI20190920BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20190920BHJP
   B29C 64/135 20170101ALI20190920BHJP
【FI】
   B22F3/105
   B22F3/16
   B33Y10/00
   B29C64/135
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】23
【出願番号】特願2018-551677(P2018-551677)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2017年11月16日
(31)【優先権主張番号】特願2016-224257(P2016-224257)
(32)【優先日】2016年11月17日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 晴彦
(74)【代理人】
【識別番号】100197583
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 健
(72)【発明者】
【氏名】中村 暁史
(72)【発明者】
【氏名】吉田 徳雄
(72)【発明者】
【氏名】中島 功康
【テーマコード(参考)】
4F213
4K018
【Fターム(参考)】
4F213AC04
4F213AR07
4F213AR20
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL12
4F213WL44
4F213WL45
4F213WL76
4F213WL92
4K018BB04
4K018CA44
4K018EA51
4K018EA60
4K018FA06
4K018KA18
(57)【要約】
本発明は、(i)粉末層の所定箇所に光ビームを照射して当該所定箇所の粉末を焼結又は溶融固化させて固化層を形成する工程、および(ii)得られた固化層の上に新たな粉末層を形成し、当該新たな粉末層の所定箇所に光ビームを照射して更なる固化層を形成する工程により粉末層および固化層を交互に繰り返して積層させることで三次元形状造形物を製造する方法に関する。本発明では、光ビームとして、粉末層の所定箇所および当該所定箇所の下方に位置する固化層を溶融可能な照射エネルギー密度を有する主ビーム、および当該所定箇所のみを溶融可能な照射エネルギー密度を有する副ビームを用い、および主ビームよりも先行して副ビームを当該所定箇所に照射する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)粉末層の所定箇所に光ビームを照射して該所定箇所の粉末を焼結又は溶融固化させて固化層を形成する工程、および
(ii)得られた固化層の上に新たな粉末層を形成し、該新たな粉末層の所定箇所に光ビームを照射して更なる固化層を形成する工程
により粉末層および固化層を交互に繰り返して積層させることで三次元形状造形物を製造する方法であって、
前記光ビームとして、前記粉末層の前記所定箇所および該所定箇所の下方に位置する前記固化層を溶融可能な照射エネルギー密度を有する主ビーム、および該所定箇所のみを溶融可能な照射エネルギー密度を有する副ビームを用い、および
前記主ビームよりも先行して前記副ビームを前記所定箇所に照射する、三次元形状造形物の製造方法。
【請求項2】
前記主ビームが前記副ビームと比べて相対的に大きい照射エネルギー密度を有し、および前記副ビームが前記主ビームと比べて相対的に小さい照射エネルギー密度を有する、請求項1に記載の三次元形状造形物の製造方法。
【請求項3】
前記主ビームの照射に先立って、前記副ビームの照射によって前記所定箇所の前記粉末のみを予め溶融させる、請求項1又は2に記載の三次元形状造形物の製造方法。
【請求項4】
前記主ビームの走査中央ラインを挟んで相互に対向する複数の位置に前記副ビームを照射する、請求項1〜3のいずれかに記載の三次元形状造形物の製造方法。
【請求項5】
前記固化層の輪郭となる仮想輪郭を基点として前記主ビームの走査中央ラインよりも遠位側の位置に前記副ビームを照射する、請求項1〜3のいずれかに記載の三次元形状造形物の製造方法。
【請求項6】
前記副ビームを前記所定箇所に対して間欠的に照射する、請求項1〜5のいずれかに記載の三次元形状造形物の製造方法。
【請求項7】
前記所定箇所において前記主ビームと前記副ビームとを互いに接触させる、請求項1〜6のいずれかに記載の三次元形状造形物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元形状造形物の製造方法に関する。より詳細には、本発明は、粉末層への光ビーム照射によって固化層を形成する三次元形状造形物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光ビームを粉末材料に照射することを通じて三次元形状造形物を製造する方法(一般的には「粉末床溶融結合法」と称される)は、従来より知られている。かかる方法は、以下の工程(i)および(ii)に基づいて粉末層形成と固化層形成とを交互に繰り返し実施して三次元形状造形物を製造する。
(i)粉末層の所定箇所に光ビームを照射し、かかる所定箇所の粉末を焼結又は溶融固化させて固化層を形成する工程。
(ii)得られた固化層の上に新たな粉末層を形成し、同様に光ビームを照射して更なる固化層を形成する工程。
【0003】
このような製造技術に従えば、複雑な三次元形状造形物を短時間で製造することが可能となる。粉末材料として無機質の金属粉末を用いる場合、得られる三次元形状造形物を金型として使用することができる。一方、粉末材料として有機質の樹脂粉末を用いる場合、得られる三次元形状造形物を各種モデルとして使用することができる。
【0004】
粉末材料として金属粉末を用い、それによって得られる三次元形状造形物を金型として使用する場合を例にとる。図9に示すように、まず、スキージング・ブレード23を動かして造形プレート21上に所定厚みの粉末層22を形成する(図9(a)参照)。次いで、粉末層22の所定箇所に光ビームLを照射して粉末層22から固化層24を形成する(図9(b)参照)。引き続いて、得られた固化層の上に新たな粉末層を形成して再度光ビームを照射して新たな固化層を形成する。このようにして粉末層形成と固化層形成とを交互に繰り返し実施すると固化層24が積層することになり(図9(c)参照)、最終的には積層化した固化層24から成る三次元形状造形物を得ることができる。最下層として形成される固化層24は造形プレート21と結合した状態になるので、三次元形状造形物と造形プレート21とは一体化物を成すことになり、その一体化物を金型として使用できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−69507号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願発明者らは、粉末層の所定箇所に光ビームを照射して固化層を形成する際において以下の問題が生じ得ることを見出した。具体的には、図7および図8に示すように、粉末層22’の所定箇所に光ビームL’を照射するに際して、光ビームL’が照射される被照射領域50’の周囲に位置する粉末19’が当該被照射領域50’へと移動する現象が生じ得る。被照射領域50’の周囲に位置する粉末19’が被照射領域50’へと移動すると、被照射領域50’に位置する粉末19’が相対的に増加し、それに起因して母材(既に形成した固化層24’に相当)にまで光ビームL’の照射熱エネルギーを好適に供することができなくなる。そのため、被照射領域50’内の粉末19’に加えて母材を好適な溶融状態にすることができず、その結果として所望の新たな固化部24a’(新たな固化層24’の構成要素)を形成できない虞がある。つまり、高精度な三次元形状造形物を最終的に得ることができない虞がある。
【0007】
本発明は、かかる事情に鑑みて為されたものである。すなわち、本発明の目的は、光ビームが照射される被照射領域の周囲に位置する粉末の被照射領域への移動を抑制することが可能な三次元形状造形物の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の一実施形態では、
(i)粉末層の所定箇所に光ビームを照射して該所定箇所の粉末を焼結又は溶融固化させて固化層を形成する工程、および
(ii)得られた固化層の上に新たな粉末層を形成し、該新たな粉末層の所定箇所に光ビームを照射して更なる固化層を形成する工程
により粉末層および固化層を交互に繰り返して積層させることで三次元形状造形物を製造する方法であって、
前記光ビームとして、前記粉末層の前記所定箇所および該所定箇所の下方に位置する前記固化層を溶融可能な照射エネルギー密度を有する主ビーム、および該所定箇所のみを溶融可能な照射エネルギー密度を有する副ビームを用い、および
前記主ビームよりも先行して前記副ビームを前記所定箇所に照射する、三次元形状造形物の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の製造方法によれば、光ビームが照射される被照射領域の周囲に位置する粉末の被照射領域への移動を抑制することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る製造方法を模式的に示した斜視図
図2A】相互に対向する副ビームを用いる態様を模式的に示した斜視図
図2B】相互に対向する副ビームを用いる態様を模式的に示した断面図
図2C】相互に対向する副ビームの照射後の態様を模式的に示した断面図
図2D】相互に対向する副ビームの照射後の主ビームの照射態様を模式的に示した断面図
図2E】新たな固化部(新たな固化層の構成要素)の形成態様を模式的に示した断面図
図3A】本発明の一態様に係る固化層輪郭の形成態様を模式的に示した図
図3B】従来の固化層輪郭の形成態様を模式的に示した図
図4A】粉末層の所定箇所に副ビームを間欠的に照射する態様を模式的に示した斜視図
図4B】粉末層の所定箇所に主ビームおよび副ビームを間欠的に照射する態様を模式的に示した斜視図
図5A】粉末層の所定箇所において主ビームと副ビームとを互いに接触させる態様を模式的に示した平面図
図5B】粉末層の所定箇所において主ビームと副ビームとを互いに接触させる別態様を模式的に示した平面図
図6A】主ビームおよび副ビームの照射態様を模式的に示した断面図
図6B】主ビームおよび副ビームの別の照射態様を模式的に示した断面図
図6C】主ビームおよび副ビームの更に別の照射態様を模式的に示した断面図
図7】本願発明者らが見出した技術的課題を模式的に示した斜視図
図8】本願発明者らが見出した技術的課題を模式的に示した断面図
図9】粉末床溶融結合法が実施される光造形複合加工のプロセス態様を模式的に示した断面図(図9(a):粉末層形成時、図9(b):固化層形成時、図9(c):積層途中)
図10】光造形複合加工機の構成を模式的に示した斜視図
図11】光造形複合加工機の一般的な動作を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下では、図面を参照して本発明の一実施形態をより詳細に説明する。図面における各種要素の形態および寸法は、あくまでも例示にすぎず、実際の形態および寸法を反映するものではない。
【0012】
本明細書において「粉末層」とは、例えば「金属粉末から成る金属粉末層」または「樹脂粉末から成る樹脂粉末層」を意味している。また「粉末層の所定箇所」とは、製造される三次元形状造形物の領域を実質的に指している。従って、かかる所定箇所に存在する粉末に対して光ビームを照射することによって、その粉末が焼結又は溶融固化して三次元形状造形物を構成することになる。更に「固化層」とは、粉末層が金属粉末層である場合には「焼結層」を意味し、粉末層が樹脂粉末層である場合には「硬化層」を意味している。
【0013】
また、本明細書で直接的または間接的に説明される“上下”の方向は、例えば造形プレートと三次元形状造形物との位置関係に基づく方向であって、造形プレートを基準にして三次元形状造形物が製造される側を「上方向」とし、その反対側を「下方向」とする。
【0014】
[粉末床溶融結合法]
まず、本発明の製造方法の前提となる粉末床溶融結合法について説明する。特に粉末床溶融結合法において三次元形状造形物の切削処理を付加的に行う光造形複合加工を例として挙げる。図9は、光造形複合加工のプロセス態様を模式的に示しており、図10および図11は、粉末床溶融結合法と切削処理とを実施できる光造形複合加工機の主たる構成および動作のフローチャートをそれぞれ示している。
【0015】
光造形複合加工機1は、図10に示すように、粉末層形成手段2、光ビーム照射手段3および切削手段4を備えている。
【0016】
粉末層形成手段2は、金属粉末または樹脂粉末などの粉末を所定厚みで敷くことによって粉末層を形成するための手段である。光ビーム照射手段3は、粉末層の所定箇所に光ビームLを照射するための手段である。切削手段4は、積層化した固化層の表面、すなわち、三次元形状造形物の表面を削るための手段である。
【0017】
粉末層形成手段2は、図9に示すように、粉末テーブル25、スキージング・ブレード23、造形テーブル20および造形プレート21を主に有して成る。粉末テーブル25は、外周が壁26で囲まれた粉末材料タンク28内にて上下に昇降できるテーブルである。スキージング・ブレード23は、粉末テーブル25上の粉末19を造形テーブル20上へと供して粉末層22を得るべく水平方向に移動できるブレードである。造形テーブル20は、外周が壁27で囲まれた造形タンク29内にて上下に昇降できるテーブルである。そして、造形プレート21は、造形テーブル20上に配され、三次元形状造形物の土台となるプレートである。
【0018】
光ビーム照射手段3は、図10に示すように、光ビーム発振器30およびガルバノミラー31を主に有して成る。光ビーム発振器30は、光ビームLを発する機器である。ガルバノミラー31は、発せられた光ビームLを粉末層22にスキャニングする手段、すなわち、光ビームLの走査手段である。
【0019】
切削手段4は、図10に示すように、エンドミル40および駆動機構41を主に有して成る。エンドミル40は、積層化した固化層の表面、すなわち、三次元形状造形物の表面を削るための切削工具である。駆動機構41は、エンドミル40を所望の切削すべき箇所へと移動させる手段である。
【0020】
光造形複合加工機1の動作について詳述する。光造形複合加工機1の動作は、図11のフローチャートに示すように、粉末層形成ステップ(S1)、固化層形成ステップ(S2)および切削ステップ(S3)から構成されている。粉末層形成ステップ(S1)は、粉末層22を形成するためのステップである。かかる粉末層形成ステップ(S1)では、まず造形テーブル20をΔt下げ(S11)、造形プレート21の上面と造形タンク29の上端面とのレベル差がΔtとなるようにする。次いで、粉末テーブル25をΔt上げた後、図9(a)に示すようにスキージング・ブレード23を粉末材料タンク28から造形タンク29に向かって水平方向に移動させる。これによって、粉末テーブル25に配されていた粉末19を造形プレート21上へと移送させることができ(S12)、粉末層22の形成が行われる(S13)。粉末層22を形成するための粉末材料としては、例えば「平均粒径5μm〜100μm程度の金属粉末」および「平均粒径30μm〜100μm程度のナイロン、ポリプロピレンまたはABS等の樹脂粉末」を挙げることができる。粉末層22が形成されたら、固化層形成ステップ(S2)へと移行する。固化層形成ステップ(S2)は、光ビーム照射によって固化層24を形成するステップである。かかる固化層形成ステップ(S2)においては、光ビーム発振器30から光ビームLを発し(S21)、ガルバノミラー31によって粉末層22上の所定箇所へと光ビームLをスキャニングする(S22)。これによって、粉末層22の所定箇所の粉末を焼結又は溶融固化させ、図9(b)に示すように固化層24を形成する(S23)。光ビームLとしては、炭酸ガスレーザ、Nd:YAGレーザ、ファイバレーザまたは紫外線などを用いてよい。
【0021】
粉末層形成ステップ(S1)および固化層形成ステップ(S2)は、交互に繰り返して実施する。これにより、図9(c)に示すように複数の固化層24が積層化する。
【0022】
積層化した固化層24が所定厚みに達すると(S24)、切削ステップ(S3)へと移行する。切削ステップ(S3)は、積層化した固化層24の表面、すなわち、三次元形状造形物の表面を削るためのステップである。エンドミル40(図9(c)および図10参照)を駆動させることによって切削ステップが開始される(S31)。例えば、エンドミル40が3mmの有効刃長さを有する場合、三次元形状造形物の高さ方向に沿って3mmの切削処理を行うことができるので、Δtが0.05mmであれば60層分の固化層24が積層した時点でエンドミル40を駆動させる。具体的には駆動機構41によってエンドミル40を移動させながら、積層化した固化層24の表面を切削処理に付すことになる(S32)。このような切削ステップ(S3)の最終では、所望の三次元形状造形物が得られているか否かを判断する(S33)。所望の三次元形状造形物が依然得られていない場合では、粉末層形成ステップ(S1)へと戻る。以降、粉末層形成ステップ(S1)〜切削ステップ(S3)を繰り返し実施して更なる固化層の積層化および切削処理を実施することによって、最終的に所望の三次元形状造形物が得られる。
【0023】
[本発明の製造方法]
本発明の一実施形態に係る製造方法は、上述の粉末床溶融結合法の中でも、粉末層の所定箇所に対する光ビームの照射態様に特徴を有している。
【0024】
(本発明の技術的思想)
本発明は、粉末層の所定箇所に対して少なくとも2つの光ビームを照射するという技術的思想を有する。具体的には、本発明は、粉末層の所定箇所に対して主ビームおよび少なくとも1つの副ビームを照射するという技術的思想を有する。より具体的には、本発明では、(i)光ビームとして、粉末層の所定箇所および当該所定箇所の下方に位置する固化層を溶融可能な照射エネルギー密度を有する主ビーム、および当該所定箇所のみを溶融可能な照射エネルギー密度を有する副ビームを用いる。更に、これに加えて、本発明の一実施形態では、(ii)主ビームよりも先行して副ビームを新たな粉末層の所定箇所に照射する。
【0025】
本明細書でいう「主ビーム」とは、広義には粉末層の所定箇所を照射して、当該所定箇所の粉末を焼結又は溶融固化させるという光ビームの主たる機能を有するものを指し、狭義には新たな粉末層の所定箇所の下方に位置する固化層まで溶融可能な程度の照射エネルギー密度を有するものを指す。一方、本明細書でいう「副ビーム」とは、広義には主ビームを補助する役割を担うものを指し、狭義には新たな粉末層の所定箇所のみを溶融可能な程度であって、当該所定箇所の下方に位置する固化層を溶融しない程度の照射エネルギー密度を有するものを指す。本明細書でいう「主ビームを照射するに先立って副ビームを照射する」とは、粉末層の所定箇所に副ビームを時間的に先に照射し、次いで主ビームを照射することを実質的に指す。
【0026】
本発明の一実施形態に係る製造方法では、上述のように粉末層22の所定箇所に対して主ビームLを照射するに先立って副ビームLを照射する(図1参照)。副ビームLが粉末層22の所定箇所に照射されると、副ビーム被照射領域50Aが溶融状態となる。なお、上述のように、副ビームLは、副ビーム被照射領域50Aとなる粉末層22の所定箇所のみを溶融させる。すなわち、副ビームLは、当該所定箇所の下方に位置する母材となる固化層24までは溶融しないことを確認的に述べておく。副ビーム被照射領域50Aが溶融状態となると、それに起因して副ビーム被照射領域50A周縁の粉末19も副ビーム被照射領域50A側へと引き寄せられる。これにより、副ビーム被照射領域50Aでは、当該被照射領域50Aに位置する粉末19と前述の引き寄せられた粉末19とが一体となって、粉末19よりも相対的に径寸法の大きい“ボール状一体化物10”が形成され得る。ボール状一体化物10が形成されると、当該「一体化物10」と「副ビーム被照射領域50A側へと引き寄せられなかった粉末19」との間に空隙(隙間)を実質的に形成することができる。かかる空隙の形成状態で、主ビームLを後刻に照射すると、当該空隙の存在に起因して、主ビームLが照射される主ビーム被照射領域50Bへの粉末19の移動が抑制され得る。具体的には、当該空隙の存在に起因して、主ビームLが照射される主ビーム被照射領域50Bへの「副ビーム被照射領域50A側へと引き寄せられなかった部分の粉末19」の移動が抑制され得る。つまり、本発明の一実施形態では、副ビームLは主ビームLが照射される主ビーム被照射領域50Bへの粉末19の移動を抑制するビームとして機能し得る。
【0027】
以上により、本発明では、(1)主ビームLが照射される主ビーム被照射領域50Bに位置する粉末19の増大が抑制される。又、ボール状一体化物10の形成状態では、ボール状一体化物10の非形成状態(すなわち粉末層形成状態)と比べて、ボール状一体化物10同士の間にも微小な隙間が形成され得る。そのため、(2)母材となる下部領域に位置する固化層を局所的に露出させることが可能となる。その結果、母材となる固化層にまで主ビームLの照射熱エネルギーを好適に供することが可能となる。これにより、主ビーム被照射領域50B内の粉末19と母材とを好適な溶融状態にすることができる。それ故、所望の新たな固化部(新たな固化層の構成要素)を形成することができ、高精度な三次元形状造形物を最終的に得ることができる。
【0028】
主ビーム被照射領域50Bへの粉末19の移動が抑制されると、以下の効果も奏され得る。具体的には、主ビーム被照射領域50Bに位置する粉末19が主ビームLにより溶融され溶融部が形成されている場合に、かかる溶融部が相対的に高温であることに起因して、主ビーム被照射領域50Bへと移動する粉末19が溶融し、その溶融物が溶融部内に取り込まれることなく主ビーム被照射領域50Bの周囲に飛散することを抑制することができ得る。粉末19の溶融物が主ビーム被照射領域50Bの周囲に、例えば既に形成した固化層上に飛散すると、後刻に新たな粉末層を好適に敷くことができないところ、本発明の一実施形態では粉末19の溶融物の当該周囲への飛散が抑制され得るため、後刻に新たな粉末層を好適に敷くことができ得る。その結果、所望の新たな固化部(新たな固化層の構成要素)を形成することができ、高精度な三次元形状造形物を最終的に得ることができる。
【0029】
主ビーム被照射領域50Bへの粉末19の移動が抑制され得ると、以下の効果も更に奏され得る。具体的には、粉末層の所定箇所にビームを照射する際、当該所定箇所の粉末が溶融しその後固化することに起因して収縮応力が生じ得る。かかる収縮応力の発生は最終的に得られる三次元形状造形物の反り変形につながり得る。これにつき、本発明の一実施形態では、主ビーム被照射領域50Bへの粉末19の移動が抑制され得るため、主ビーム被照射領域50Bに位置する粉末19の増大が抑制され得る。かかる主ビーム被照射領域50Bに位置する粉末19の増大抑制は、必要以上の溶融部の形成抑制につながり得る。これにより、溶融部が必要以上に形成されないため、後刻の冷却固化に起因する必要以上の収縮応力の発生を減じることができ得る。従って、かかる必要以上の収縮応力の発生低減により、最終的に得られる三次元形状造形物の反り変形を抑制することができ得る。つまり、高精度な三次元形状造形物を最終的に得ることができ得る。
【0030】
なお、本発明の一実施形態に係る製造方法は、下記態様をとり得る。
【0031】
一態様では、主ビームが副ビームと比べて相対的に大きい照射エネルギー密度を有し、および副ビームが主ビームと比べて相対的に小さい照射エネルギー密度を有していてよい(図2A参照)。
【0032】
具体的には、主ビームの照射エネルギー密度(J/mm)に対する副ビームの照射エネルギー密度(J/mm)の比率α(%)は、特に限定されるものではないが1<α<100であってよく、好ましくは10<α<60であり、更に好ましくは20<α<50であり得る。また、これに起因して、粉末層の所定箇所に主ビームにより照射される主ビーム被照射領域の面積に対する粉末層の所定箇所に副ビームにより照射される副ビーム被照射領域の面積の比率β(%)は、特に限定されるものではないが1<β<100であってよく、好ましくは20<β<80であり、更に好ましく30<β<50であり得る。
【0033】
主ビームLの照射エネルギー密度が相対的に大きいと、母材となる固化層にまで主ビームLの照射熱エネルギーをより好適に供することが可能となる。そのため、主ビーム被照射領域50B内の粉末19と母材とをより好適な溶融状態にすることができる。一方、副ビームLの照射エネルギー密度が相対的に小さいと、粉末層22の所定箇所のみを溶融させる一方、母材となる固化層まで溶融させない状態を好適に確保することができる。母材となる固化層まで溶融されない状態を確保可能となるため、「副ビーム被照射領域50Aに位置する粉末19」と「副ビーム被照射領域50A周縁に位置する当該領域50Aへと引き寄せられた粉末19」とが一体となって、粉末19よりも相対的に径寸法の大きい“ボール状一体化物10”をより好適に形成することが可能なる。そのため、当該「一体化物10」と「副ビーム被照射領域50A側へと引き寄せられなかった粉末19」との間に空隙をより好適に形成することができる。
【0034】
本態様では、粉末層の所定箇所に主ビームを照射して得られる部分(固化部)の固化密度は、主ビームが相対的に大きい照射エネルギー密度を有することに起因して相対的に高くなっている。一方、粉末層の所定箇所に副ビームを照射して得られる固化部分の固化密度は、副ビームが相対的に小さい照射エネルギー密度を有することに起因して相対的に低くなっている。従って、粉末層の所定箇所に副ビームを照射して得られる固化部分の固化密度は相対的に低いことに起因して、後刻に粉末層の所定箇所に主ビームを照射しても、当該副ビームを照射して得られる固化部分を好適に溶融させることができる。
【0035】
なお、本態様では、主ビームが副ビームと比べて相対的に大きい照射エネルギー密度を有し、および副ビームが主ビームと比べて相対的に小さい照射エネルギー密度を有することを前提としている。しかしながら、光ビームの照射態様はこれに限定されない。「母材となる固化層への主ビームLの照射熱エネルギーの好適な提供」実現のため(1)主ビーム被照射領域50Bに位置する粉末19の増大抑制および(2)母材となる下部領域に位置する固化層の局所的な露出が可能ならば、照射エネルギー密度が同一である主ビームおよび副ビームが用いられてよい。
【0036】
この場合、単一の光ビームを用いて、上記副ビームの機能である「粉末層の所定箇所のみの溶融」の実施、次なる上記主ビームの機能である「粉末層の所定箇所および当該所定箇所の下方に位置する固化層の溶融」の実施を行うことが実質的に可能となる。つまり、単一の光ビームが主ビームの機能と副ビームの機能の両方を備えることが可能となる。これにより、光ビームによる照射効率を向上させることが可能となり得る。なお、単一の光ビームが当該両機能を備える場合、「粉末層の所定箇所のみの溶融」と「粉末層の所定箇所および当該所定箇所の下方に位置する固化層の溶融」とを好適に実現する観点から、照射エネルギー密度の絶対値が過度に大きい又は過度に小さいことは予め回避されることが好ましい。
【0037】
一態様では、主ビームの走査中央ラインを挟んで相互に対向する複数の位置に副ビームを照射してよい。本明細書でいう「走査中央ライン」とは、主ビームの走査ラインの中央領域を実質的に指す。
【0038】
本態様では、例えば、主ビームLを照射するに先立って、走査中央ライン60を挟んで相互に対向する2つの副ビームL(第1副ビームL11および第2副ビームL12)を粉末層22の所定箇所に照射する(図2A参照)。走査中央ライン60を挟んで第1副ビームL11および第2副ビームL12が相互に対向すると、第1副ビーム被照射領域50A21および第2副ビーム被照射領域50A22も走査中央ライン60を挟んで相互に対向し得る(図2A参照)。つまり、第1副ビーム被照射領域50A21および第2副ビーム被照射領域50A22は、走査中央ライン60を挟んで相互に離隔するように形成され得る。なお、副ビームの数は2つに限定されず、相互に対向することを前提として3つ以上であってよい。特に限定されるものではないが、図2Aおよび図2Bに示す態様では、相互に離隔する第1副ビームL11および第2副ビームL12を粉末層22の所定箇所に照射する。
【0039】
第1副ビームL11および第2副ビームL12が照射されると、第1副ビーム被照射領域50A21および第2副ビーム被照射領域50A22の周縁の粉末19はそれぞれ、各副ビーム被照射領域が溶融状態となることに起因して各副ビーム被照射領域側へと引き寄せられる。以上の事から、各副ビーム被照射領域に位置する粉末19と各副ビーム被照射領域側へと引き寄せられた周縁粉末19とが一体となって、粉末19よりも相対的に径寸法の大きい“ボール状一体化物10”がそれぞれ形成される(図2B参照)。ボール状一体化物10がそれぞれ形成されると、当該「一体化物10」と「副ビーム被照射領域50A側へと引き寄せられなかった粉末19」との間に空隙15A,15A(隙間)をそれぞれ形成することができる(図2C参照)。
【0040】
更に、上述のように、本態様では、第1副ビーム被照射領域50A21および第2副ビーム被照射領域50A22は、走査中央ライン60を挟んで相互に離隔するように形成される。そのため、第1副ビーム被照射領域側に形成されたボール状一体化物10と第2副ビーム被照射領域側に形成されたボール状一体化物10との間にも空隙15Bを形成することが可能となる(図2C参照)。つまり、第1副ビームL11および第2副ビームL12は主ビームLの走査中央ライン60付近への粉末19の移動を抑制するビームとして機能し得る。
【0041】
かかる2つの空隙15Aと空隙15Aの形成状態で、主ビームLを後刻に照射すると、これら空隙の存在に起因して、主ビームLが照射される主ビーム被照射領域50Bへの粉末19の移動がより好適に抑制され得る(図2D参照)。具体的には、これら空隙の存在に起因して、主ビームLが照射される主ビーム被照射領域50Bへの「各副ビーム被照射領域50A側へと引き寄せられなかった部分の粉末19」の移動がより好適に抑制され得る。つまり、主ビームLが照射される主ビーム被照射領域50Bに位置する粉末19の増大がより好適に抑制される。
【0042】
これに加えて、空隙15Bの形成状態で主ビームLを後刻に照射すると、当該空隙の存在に起因して、ボール状一体化物10の非形成状態(すなわち粉末層形成状態)と比べて、第1副ビーム被照射領域側に形成されたボール状一体化物10と第2副ビーム被照射領域側に形成されたボール状一体化物10との間に、母材となる下部領域に位置する固化層を主ビーム60の走査中央ライン60に沿って露出させることが可能となる。そのため、母材となる固化層にまで主ビームLの照射熱エネルギーをより好適に供することが可能となる。これにより、主ビーム被照射領域50B内の粉末19と母材とをより好適な溶融状態にすることができる。その結果、所望の新たな固化部(新たな固化層の構成要素)を形成することができ、高精度な三次元形状造形物をより好適に最終的に得ることができる(図2E参照)。
【0043】
一態様では、固化層の輪郭となる仮想輪郭を基点として主ビームの走査中央ラインよりも遠位側の位置に副ビームを照射してよい。本明細書でいう「固化層の輪郭となる仮想輪郭」とは、主ビームが照射される粉末層の所定箇所のうち後刻に形成される固化層の輪郭に対応する箇所を実質的に指す。
【0044】
粉末床溶融結合法に従い、粉末層22’の所定箇所にビームを照射して固化層24’を形成する際、固化層24’の輪郭24b’には相対的に大きな隆起固化部70’が生じ得る(図3B参照)。特定の理論に拘束されるものではないが、母材(既に形成した固化層24’に相当)が存在する部分と母材の無い部分との境界領域にビームが直接当たると、母材上の粉末と母材の無い部分にある粉末とが共に溶融し、表面張力により盛り上がることに起因して、当該隆起固化部70’が固化層24’の輪郭24b’に生じ得ると考えられる。また、本願発明者らが見出したように、光ビームが照射される被照射領域の周囲に位置する粉末は被照射領域へと移動し得るため、かかる境界領域付近の母材上では、相対的に粉末量が相対的に増加し得る状態となる。以上の事から、固化層24’の輪郭24b’には相対的に大きな隆起固化部70’が生じ得る。固化層24’の輪郭24b’に相対的に大きな隆起固化部70’が生じると、高精度な三次元形状造形物を最終的に得ることが困難となり得る。
【0045】
そこで、本態様では、例えば図3Aに示すように、固化層24の輪郭24bとなる仮想輪郭80を基点として主ビームの走査中央ライン60よりも遠位側の位置に1つの副ビームを照射する。副ビームの数は1つに限定されず、主ビームの走査中央ライン60よりも遠位側の位置することを前提として2つ以上であってよい。図3Aに示すように、仮想輪郭80を基点として主ビームの走査中央ライン60よりも遠位側に副ビームが位置付けられると、走査中央ライン60よりも遠位側に実質的に形成され得る副ビーム被照射領域50Aに位置する粉末のみが予め溶融状態となり得る。
【0046】
走査中央ライン60よりも遠位側に実質的に形成され得る副ビーム被照射領域50Aに位置する粉末のみが予め溶融状態になると、それに起因して副ビーム被照射領域50Aの周囲の粉末19が副ビーム被照射領域50Aへと意図的に移動され得る。この際、特に、走査中央ライン60よりも近位側に位置する粉末19も副ビーム被照射領域50A側へと好適に移動され得るため、それに起因して走査中央ライン60よりも近位側への粉末19の移動が抑制され得る。つまり、粉末層22の所定箇所への副ビームの照射により、主ビームの走査中央ライン60と仮想輪郭80との間の領域への粉末19の移動が抑制され得る。この事からも、本態様では、副ビームは走査中央ライン60と仮想輪郭80との間の領域への粉末19の移動を抑制するビームとして機能し得る。
【0047】
走査中央ライン60と仮想輪郭80との間の領域への粉末19の移動が抑制されると、それに起因して母材が存在する部分と母材の無い部分との境界領域に主ビームが直接当たるとしても、かかる境界領域付近の母材上の主ビーム被照射領域50Bに位置する粉末19の増大が抑制され得る。これにより、母材上の粉末19と母材の無い部分にある粉末とが共に溶融し、表面張力により盛り上がることに起因して固化層24の輪郭24bに生じ得る隆起固化部70の寸法サイズを相対的に減じることができ得る。従って、かかる相対的に小さな隆起固化部70により、高精度な三次元形状造形物を最終的に得ることを容易にし得る。
【0048】
一態様では、副ビームを粉末層の所定箇所に対して間欠的に照射してよい。本明細書でいう「間欠的に照射」とは、広義には、一定の時間的間隔を置いて、副ビームによる粉末層の所定箇所に対する照射を実施することを指す。
【0049】
本態様では、例えば、図4Aに示すように、主ビームLを照射するに先立って、走査中央ライン60を挟んで相互に対向する2つの副ビームL(第1副ビームL11および第2副ビームL12)を粉末層22の所定箇所に照射する(図4A参照)。副ビームの数は2つに限定されず、1つであってもよいし、3つ以上であってよい。
【0050】
図4Aに示す態様では、相互に離隔する第1副ビームL11および第2副ビームL12を粉末層22の所定箇所に間欠的に照射する。かかる第1副ビームL11および第2副ビームL12の間欠的な照射により、第1副ビームL11および第2副ビームL12により照射される第1副ビーム被照射領域50A41および第2副ビーム被照射領域50A42に位置する粉末を「必要時に」それぞれ予め溶融状態にし得る。
【0051】
例えば、特に限定されるものではないが、主ビームが照射される主ビーム被照射領域への粉末の移動が十分に抑制できていないと判断した場合に、かかる間欠的な副ビームの照射を実施してよい。当該粉末層の所定箇所に対して第1副ビームL11および第2副ビームL12を照射すると、粉末層の所定箇所の粉末を必要時に予め溶融状態にし得る。つまり、本態様では、粉末層22の所定箇所に対する第1副ビームL11および第2副ビームL12の照射を必要と判断した場合にのみ、かかる間欠的な照射を実施する点に特徴を有する。
【0052】
図4Aに示すように、粉末層の所定箇所の粉末を必要時に予め溶融状態にし得ると、それに起因して第1副ビーム被照射領域50A41周囲の粉末19が第1副ビーム被照射領域50A41へと必要時に移動され、かつ第2副ビーム被照射領域50A42周囲の粉末19も第2副ビーム被照射領域50A42へと必要時に移動され得る。これにより、相互に離隔するように形成され得る第1副ビーム被照射領域50A41と第2副ビーム被照射領域50A42との間への粉末19の移動が必要時に抑制され得る。つまり、主ビームLの走査中央ライン60付近への粉末19の移動が必要時に抑制され得る。
【0053】
以上の事からも、本態様では、粉末層22の所定箇所に対する第1副ビームL11および第2副ビームL12の照射を必要と判断した場合にのみ、かかる間欠的な照射を実施する。これにより、粉末層22の所定箇所に副ビームを連続的に照射して、当該所定箇所の粉末を溶融状態にする場合と比べて、副ビームによる必要時のみの照射に起因して当該所定箇所の粉末の溶融状態の制御性を向上させることができ得る。
【0054】
上記態様に限定されず、一態様では、粉末層の所定箇所に対して、照射エネルギー密度が変更制御された副ビームを照射してよい。本明細書でいう「照射エネルギー密度を変更制御する」とは、粉末層の所定箇所に照射する副ビームの照射エネルギー密度を時間的に異ならせることを実質的に指す。
【0055】
本態様は、上記態様と比べて実質的に連続的な副ビームの照射を実施するものの、当該所定箇所に照射する副ビームの照射エネルギー密度を時間的に異ならせる点で異なる。
【0056】
例えば、特に限定されるものではないが、所定の照射エネルギー密度を有した粉末層の所定箇所に副ビームを照射しているものの、主ビームが照射される主ビーム被照射領域への粉末の移動が十分に抑制できていないと判断した場合に、それまで使用していた副ビームの照射エネルギー密度よりも相対的に大きな照射エネルギー密度に変更制御した副ビームの照射を実施してよい。かかる相対的に大きな照射エネルギー密度の副ビームを照射により、副ビーム被照射領域の粉末をより一層溶融状態にし得る。
【0057】
かかる副ビーム被照射領域の粉末のより一層の溶融状態に起因して、副ビーム被照射領域周囲の粉末が当該副ビーム被照射領域へとより移動され易くなる。これにより、例えば、主ビームを照射するに先立って、走査中央ラインを挟んで相互に対向する2つの副ビームを粉末層の所定箇所に照射する場合、相互に離隔するように形成され得る第1副ビーム被照射領域と第2副ビーム被照射領域との間への粉末の移動をより効果的に抑制し得る。つまり、主ビームの走査中央ライン付近への粉末の移動をより効果的に抑制し得る。
【0058】
以上の事からも、本態様では、実質的に連続的な副ビームの照射を実施するものの、粉末層の所定箇所に照射する副ビームの照射エネルギー密度を時間的に異ならせる。これにより、同一の照射エネルギー密度の副ビームを実質的に連続的に照射する場合と比べて、
当該所定箇所の粉末の溶融状態を途中で変化させることができ得る。つまり、粉末層の所定箇所に照射する副ビームの照射エネルギー密度を時間的に異ならせることに起因して、当該所定箇所の粉末の溶融状態の制御性を向上させることができ得る。
【0059】
一態様では、図4Aに示す態様と比べて副ビームに加えて主ビームも粉末層の所定箇所に対して間欠的に照射してよい。なお、図4Aに示す態様で記載した内容と重複する部分については説明を省略する。
【0060】
本態様では、図4Aに示す態様と同様に相互に離隔する第1副ビームL11および第2副ビームL12を粉末層22の所定箇所に間欠的に照射する。つまり、本態様では、粉末層22の所定箇所に対する第1副ビームL11および第2副ビームL12の照射を必要と判断した場合にのみ、かかる間欠的な照射を実施する点に特徴を有する。かかる間欠的な照射により、図4Aに示す態様で記載するように第1副ビームL11が照射される第1副ビーム被照射領域50A51と第2副ビームL12が照射される第2副ビーム被照射領域50A52との間への粉末19の移動が必要時に抑制され得る。かかる第1副ビーム被照射領域50A51と第2副ビーム被照射領域50A52との間への粉末19移動の必要時の抑制に起因して、主ビームLの走査中央ライン60付近への粉末19の移動抑制が必要時になされ得る。
【0061】
また、本態様では、副ビームの間欠的な照射に加えて主ビームLも粉末層22の所定箇所に間欠的に照射する。かかる副ビームおよび主ビームの粉末層の所定箇所に対する間欠的な照射が図4Aに示す態様と異なる点である。
【0062】
主ビームLの走査中央ライン60付近への粉末19の移動抑制がなされた状態で、主ビームLの走査中央ライン60に沿って粉末層22の所定箇所に対して主ビームLを間欠的に照射すると、主ビームLが照射される主ビーム被照射領域50Bへの粉末19の移動が必要時に抑制され得る。かかる主ビーム被照射領域50Bへの粉末19の必要時の移動抑制に起因して、主ビーム被照射領域50Bに位置する粉末19の増大が必要時に抑制され得る。
【0063】
上述のように、本態様では、副ビームの間欠的な照射に加えて主ビームLも粉末層22の所定箇所に間欠的な照射を実施するため、粉末層22の所定箇所に対して副ビームおよび主ビームLを連続的に照射して、当該所定箇所の粉末を溶融状態にする場合と比べて、副ビームに加えて主ビームLによる必要時のみの照射に起因して当該所定箇所の粉末の溶融状態の制御性をより向上させることができ得る。
【0064】
一態様では、粉末層の所定箇所において主ビームと副ビームとを互いに接触させてよい。本明細書でいう「主ビームと副ビームとを互いに接触させる」とは、主ビームにより照射される主ビーム被照射領域と副ビームにより照射される副ビーム被照射領域とが点接触又は面接触することが実質的に指す。
【0065】
本態様は、粉末層の所定箇所に対して照射する主ビームと副ビームとの位置関係に特徴を有する。具体的には、粉末層の所定箇所に対して照射する主ビームと副ビームとを互いに接触させる。
【0066】
上述のように、主ビームに先立って粉末層の所定箇所に照射される副ビームは、主ビームが照射される主ビーム被照射領域への粉末の移動を抑制するビームとして機能し得る。具体的には、粉末層の所定箇所に対する副ビームの照射によって、副ビームにより照射される副ビーム被照射領域に位置する粉末のみが予め溶融状態となり、それに起因して副ビーム被照射領域周囲の粉末が副ビーム被照射領域50へと意図的に移動され得る。これにより、粉末層の所定箇所に対して主ビームを照射する際に、主ビームが照射される主ビーム被照射領域への粉末の移動が抑制され得る。
【0067】
本態様では、これに加えて粉末層の所定箇所に対して照射する主ビームと副ビームとを互いに接触させるため、それに起因して主ビーム被照射領域と副ビーム被照射領域とが接した状態となり得る。そのため、副ビーム被照射領域に位置する粉末を溶融状態にするために供される副ビームの照射熱エネルギーを、主ビーム被照射領域と副ビーム被照射領域とが接する箇所を介して主ビーム被照射領域へと好適に供することができ得る。そのため、主ビーム被照射領域に後刻に供される主ビームの照射熱エネルギーを抑制(又は低減)することができ得る。これにより、主ビーム被照射領域と副ビーム被照射領域とが相互に離隔した状態と比べて、主ビームの照射熱エネルギー抑制によるコスト削減に寄与し得る。
【0068】
一例としては、主ビーム被照射領域50Bと副ビーム被照射領域50Aとが平面視で点接触するように接してよい(図5A参照)。この場合、副ビーム被照射領域50Aに位置する粉末19を溶融状態にするために供される副ビームの照射熱エネルギーを、主ビーム被照射領域50Bと副ビーム被照射領域50Aとが点接触する箇所を介して主ビーム被照射領域50Bへと好適に供することができ得る。
【0069】
他の例としては、主ビーム被照射領域50Bと副ビーム被照射領域50Aとが平面視で面接触するように接することが好ましい(図5B参照)。この場合、副ビーム被照射領域50Aに位置する粉末19を溶融状態にするために供される副ビームの照射熱エネルギーを、主ビーム被照射領域50Bと副ビーム被照射領域50Aとが面接触する箇所を介して主ビーム被照射領域50Bへとより好適に供することができ得る。これは、主ビーム被照射領域50Bと副ビーム被照射領域50Aとが点接触する場合(図5A参照)と比べて面接触する場合に接触面積が相対的に大きくなり得ることに起因する。
【0070】
また、一態様では、粉末層の所定箇所に照射する副ビームの照射方式を変更してもよい。
【0071】
一般的に、粉末層の所定箇所を照射するためのビームとして、ガウシアン型ビームとトップハット型ビームとが挙げられる。ここでいう「ガウシアン型ビーム」は、平面視にてビームの中央領域に向かうにつれて照射エネルギー密度が相対的に大きくなる一方、ビームの外側領域(ビームの中央領域よりも外側の領域に相当)に向かうにつれて照射エネルギー密度が相対的に小さくなるものを指す。一方、ここでいう「トップハット型ビーム」とは、平面視にて相対的に中程度の照射エネルギー密度が全体として略均一となっているものを指す。ここでいう「相対的に中程度の照射エネルギー密度」とは、ガウシアン型ビームにおける相対的に大きい照射エネルギー密度と相対的に小さい照射エネルギー密度との略中間値を実質的に指す。
【0072】
本態様では、粉末層の所定箇所に照射する副ビームとしてトップハット型副ビームを用いることが好ましい。トップハット型副ビームを用いると、副ビームの外側領域側においても副ビームの中央領域と略同一の所定の照射エネルギー密度が確保されている。そのため、粉末層の所定箇所に対して主ビームを照射するに先立って副ビームを照射すると、かかる副ビームの照射により照射される副ビーム被照射領域の中央領域に位置する粉末のみではなく、当該副ビーム被照射領域の外側領域に位置する粉末もより好適な溶融状態に予めし得る。かかるより好適な溶融状態に起因して、副ビーム被照射領域周囲の粉末を副ビーム被照射領域へとより好適に移動させることができ得る。
【0073】
これにより、粉末層の所定箇所に対して主ビームを後刻に照射する際に、主ビームが照射される主ビーム被照射領域への粉末の移動がより好適に抑制され得る。かかる主ビーム被照射領域への粉末のより好適な移動抑制により、主ビームが照射される主ビーム被照射領域に位置する粉末増大がより好適に抑制され、それによって母材にまで主ビームの照射熱エネルギーをより好適に供することが可能となり得る。そのため、主ビーム被照射領域内の粉末と母材とをより好適な溶融状態にすることができ、その結果より好適な新たな固化部(新たな固化層の構成要素)を形成することができ得る。
【0074】
なお、これに限定されず、一態様では、粉末層の所定箇所に照射する主ビームの照射方式も変更してもよい。
【0075】
本態様では、粉末層の所定箇所に照射する副ビームとしてトップハット型副ビームを用い、かつ粉末層の所定箇所に照射する主ビームとしてトップハット型主ビームを用いることが好ましい。
【0076】
上述のように、トップハット型副ビームを用いると、副ビームの外側領域側においても副ビームの中央領域と略同一の所定の照射エネルギー密度が確保されているため、副ビーム被照射領域の中央領域に位置する粉末のみではなく、当該副ビーム被照射領域の外側領域に位置する粉末もより好適な溶融状態に予めし得る。そのため、かかるより好適な溶融状態に起因して、副ビーム被照射領域周囲の粉末を副ビーム被照射領域へとより好適に移動させることができ得る。
【0077】
これに加えて、トップハット型主ビームを用いると、主ビームの外側領域側においても主ビームの中央領域と略同一の所定の照射エネルギー密度が確保されているため、主ビーム被照射領域の中央領域に位置する粉末のみではなく、主ビーム被照射領域の外側領域に位置する粉末もより好適な溶融状態にし得る。これは、主ビーム被照射領域内の粉末を全体として略同一のより好適な溶融状態にし得ることを意味する。かかる主ビーム被照射領域内の粉末の略同一のより好適な溶融状態に起因して、得られる新たな固化部(新たな固化層の構成要素)をより好適なものとすることができ得る。
【0078】
一態様では、DOE(Diffractive Optical Element, 回析光学素子)を備えた光ビーム照射手段を用いて主ビームおよび副ビームを照射することが好ましい。
【0079】
上述のように、本発明の一実施形態では、被照射領域の周囲に位置する粉末の被照射領域への移動を抑制する観点から粉末層22(例えば固化層24上の粉末層22)の所定箇所に主ビームLおよび副ビームLを照射することを特徴とする。一態様では、図6Aに示すようにかかる主ビームLおよび副ビームLはDOE(Diffractive Optical Element, 回析光学素子)を利用した光ビーム照射手段3Xから照射されることが好ましい。DOEは、回析現象を利用したものであって、光学面上に微細な格子形状が形成された光学素子である。かかるDOEを任意の溝の形状、深さ、およびピッチ等を備えたものとすることで、1本のレーザ光から、任意の光路および光の強さを備えた複数の分岐光を形成することができ得る。つまり、DOEを用いれば、1つの光ビーム照射手段3Xのみを用いて複数の分岐光を形成することができ得るため、本発明の一実施形態において主ビームと副ビームの形成のために複数のレーザデバイスを用いる必要がない。従って、所望の三次元形状造形物を製造するための装置構成の簡略化および装置コストの低減化に寄与することができ得る。
【0080】
別の態様では、DOEを備えた第1光ビーム照射手段を用いて副ビームを照射し、DOEを備えていない第2光ビーム照射手段を用いて主ビームを照射してもよい。
【0081】
具体的には、本態様では、図6Bに示すようにDOEを備えた第1光ビーム照射手段3Aを用いて副ビームLを照射する一方、光ビーム発振器30Bおよびガルバノミラー31Bを備えた第2光ビーム照射手段3Bを用いて主ビームLを照射してもよい。本発明の一実施形態では、被照射領域の周囲に位置する粉末の被照射領域への移動を抑制する観点から複数の副ビームLを用いる場合があり得る。かかる場合を考慮し、DOEを備えた第1光ビーム照射手段3Aを用いれば、1つの第1光ビーム照射手段3Aのみを用いて複数の分岐光、すなわち複数の副ビームLを少なくとも形成することができ得る。
【0082】
これに限定されず、更に別の態様では、DOEを備えていない第3光ビーム照射手段とDOEを備えていない第4光ビーム照射手段を用いて主ビームおよび副ビームを照射してもよい。具体的には、本態様では、図6Cに示すように光ビーム発振器30Cおよびガルバノミラー31Cを備えた第3光ビーム照射手段3Cを用いて主ビームLを照射してよい。同様に図6Cに示すように光ビーム発振器30Dおよびガルバノミラー31Dを備えた第4光ビーム照射手段3Dを用いて主ビームLを照射してもよい。
【0083】
以上、本発明の一実施形態について説明してきたが、本発明の適用範囲のうちの典型例を例示したに過ぎない。従って、本発明はこれに限定されず、種々の改変がなされ得ることを当業者は容易に理解されよう。例えば、上記の主ビームと副ビームとは同時に用いられてもよい。すなわち、主ビームを用いる際に副ビームも併せて用いられてよい。これに限定されることなく、上記の主ビームと副ビームとは別個に、すなわち別々のタイミングで用いられてよいことを確認的に述べておく。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明の一実施形態に係る三次元形状造形物の製造方法を実施することによって、種々の物品を製造することができる。例えば、『粉末層が無機質の金属粉末層であって、固化層が焼結層となる場合』では、得られる三次元形状造形物をプラスチック射出成形用金型、プレス金型、ダイカスト金型、鋳造金型、鍛造金型などの金型として用いることができる。一方、『粉末層が有機質の樹脂粉末層であって、固化層が硬化層となる場合』では、得られる三次元形状造形物を樹脂成形品として用いることができる。
【関連出願の相互参照】
【0085】
本出願は、日本国特許出願第2016−224257号(出願日:2016年11月17日、発明の名称:「三次元形状造形物の製造方法」)に基づくパリ条約上の優先権を主張する。当該出願に開示された内容は全て、この引用により、本明細書に含まれるものとする。
【符号の説明】
【0086】
19 粉末
22 粉末層
24 固化層
24b 固化層の輪郭
60 走査中央ライン
80 仮想輪郭
100 三次元形状造形物
L 光ビーム
主ビーム
副ビーム
11 第1副ビーム
12 第2副ビーム
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図7
図8
図9
図10
図11
【国際調査報告】