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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2018年5月24日
【発行日】2019年10月17日
(54)【発明の名称】冷媒圧縮機及びそれを備えた冷凍装置
(51)【国際特許分類】
   F04B 39/00 20060101AFI20190920BHJP
【FI】
   F04B39/00 103N
   F04B39/00 103E
   F04B39/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】21
【出願番号】特願2018-551684(P2018-551684)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2017年11月16日
(31)【優先権主張番号】特願2016-224663(P2016-224663)
(32)【優先日】2016年11月18日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】飯田 登
(72)【発明者】
【氏名】石田 貴規
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 耕
【テーマコード(参考)】
3H003
【Fターム(参考)】
3H003AA02
3H003AB03
3H003AC03
3H003AD01
3H003BD09
3H003CA01
3H003CA02
(57)【要約】
冷媒圧縮機は、電動要素(106)と、前記電動要素により駆動されて冷媒を圧縮する圧縮要素(107)と、前記電動要素及び前記圧縮要素を収容する密閉容器(101)と、を備え、前記圧縮要素は、前記電動要素によって回転する軸部品(109,110)と、前記軸部品を回転可能に摺接する軸受部品(114,119)と、を有し、前記軸部品の摺動面には、前記軸受部品の摺動面の硬さ以上の硬さを有する皮膜(160)が設けられており、前記軸受部品の摺動面の表面粗さは、前記軸部品の摺動面の表面粗さよりも小さい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動要素と、
前記電動要素により駆動されて冷媒を圧縮する圧縮要素と、
前記電動要素及び前記圧縮要素を収容する密閉容器と、を備え、
前記圧縮要素は、
前記電動要素によって回転する軸部品と、
前記軸部品を回転可能に摺接する軸受部品と、を有し、
前記軸部品の摺動面には、前記軸受部品の摺動面の硬さ以上の硬さを有する皮膜が設けられており、
前記軸受部品の摺動面の表面粗さは、前記軸部品の摺動面の表面粗さよりも小さい、冷媒圧縮機。
【請求項2】
前記軸受部品の摺動面のうち、少なくとも一部の表面粗さが前記軸部品の摺動面の表面粗さよりも小さい、請求項1に記載の冷媒圧縮機。
【請求項3】
前記軸受部品の軸心方向において、前記軸受部品の摺動面のうち、表面粗さが前記軸部品の摺動面の表面粗さよりも小さい範囲の寸法は、前記軸部品の摺動面の寸法の1/10以上かつ1/2以下であり、前記軸心方向の端部位置に設定されている、請求項1又は2に記載の冷媒圧縮機。
【請求項4】
前記軸受部品の摺動面うち、表面粗さが前記軸部品の摺動面表面粗さよりも小さい範囲の算術平均粗さRaは、0.01μm以上かつ0.2μm以下である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の冷媒圧縮機。
【請求項5】
前記電動要素は、複数の運転周波数でインバータ駆動するように構成されている、請求項1〜4のいずれか一項に記載の冷媒圧縮機。
【請求項6】
放熱器、減圧装置、吸熱器、並びに、請求項1〜5のいずれか一項に記載の密閉型圧縮機を備える、冷凍装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷蔵庫及びエアーコンディショナー等に使用される冷媒圧縮機、並びにそれを備えた冷凍装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境保護の観点から化石燃料の使用を削減するために、高効率の冷媒圧縮機の開発が進められている。このため、特許文献1の密閉形コンプレッサでは、圧縮機械の摺動面の一方にリン酸マンガン系等で不溶解性皮膜処理を施した鋳鉄を用い、他方に炭素鋼を用いている。また、特許文献2のロータリー式コンプレッサでは、互いに摺動するローラー及びベーン板の少なくともいずれか一方に、軟窒化処理した鉄系焼結合金を用いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−238885号公報
【特許文献2】特公昭55−4958号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、図10に示すような一般的な冷媒圧縮機は、回転する主軸8、及び、これを軸支する主軸受14等の摺動部材を有している。この主軸8が主軸受14に対して回転し始める際、これらの間に大きな摩擦抵抗力が発生する。また、近年、冷媒圧縮機の高効率化のために、摺動面間に供給される潤滑油2の低粘度化、及び、摺動面の寸法の短縮化が図られており、潤滑条件が厳しくなっている。これにより、例えば、上記特許文献1のようなリン酸マンガン系皮膜が摺動面に施されていても、早期に摩耗し、冷媒圧縮機への入力が高くなるため、冷媒圧縮機の効率が低下してしまう。
【0005】
また、近年、冷媒圧縮機の高効率化のために、インバータ駆動による低速化(例えば20Hz未満)が進んでいる。このような状況では、摺動面間の油膜が薄くなるため、表面に存在する多数の微細な突起による摺動面間の接触が頻発し、冷媒圧縮機への入力が高くなってしまう。また、このような摺動面に、例えば、上記特許文献2のような硬い軟窒化処理皮膜が施されると、被膜が摺動面の突起を覆うため、突起の摩耗の進行が遅くなり、入力が高い状態が長期化し、冷媒圧縮機の効率が低下してしまう。
【0006】
本発明はこのような点に鑑みてなしたもので、効率低下の低減を図った冷媒圧縮機及びそれを備えた冷凍装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る冷媒圧縮機は、上記目的を達成するため、電動要素と、前記電動要素により駆動されて冷媒を圧縮する圧縮要素と、前記電動要素及び前記圧縮要素を収容する密閉容器と、を備え、前記圧縮要素は、前記電動要素によって回転する軸部品と、前記軸部品を回転可能に摺接する軸受部品と、を有し、前記軸部品の摺動面には、前記軸受部品の摺動面の硬さ以上の硬さを有する皮膜が設けられており、前記軸受部品の摺動面の表面粗さは、前記軸部品の摺動面の表面粗さよりも小さい。
【0008】
また、本発明に係る冷凍装置は、放熱器、減圧装置、吸熱器、並びに、上記冷媒圧縮機を備えている。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、上記構成により、効率低下の低減を図った冷媒圧縮機及びそれを備えた冷凍装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態1に係る冷媒圧縮機を示す断面図である。
図2図1の冷媒圧縮機に用いた酸化皮膜のSIM(走査イオン顕微鏡)による観察結果の一例を示すSIM像である。
図3図1の主軸及び主軸受の深さ方向の硬さを表したグラフである。
図4A図1の冷媒圧縮機への入力の時系列変化曲線図である。
図4B図1の冷媒圧縮機のCOPの時系列変化曲線図である。
図5図1の冷媒圧縮機における圧縮荷重を説明するための図である。
図6】主軸受の中心軸に垂直な方向における、表面粗さ向上範囲を設けていない主軸受及び主軸の摺動面を示す断面図である。
図7図1の主軸受の中心軸に垂直な方向における、主軸受及び主軸の摺動面を示す断面図である。
図8図1の主軸受の中心軸に平行な方向における、主軸受及び主軸の摺動面を示す断面図である。
図9】実施の形態2に係る冷凍装置を概略的に示す断面図である。
図10】従来の冷媒圧縮機を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
第1の態様に係る冷媒圧縮機は、電動要素と、前記電動要素により駆動されて冷媒を圧縮する圧縮要素と、前記電動要素及び前記圧縮要素を収容する密閉容器と、を備え、前記圧縮要素は、前記電動要素によって回転する軸部品と、前記軸部品を回転可能に摺接する軸受部品と、を有し、前記軸部品の摺動面には、前記軸受部品の摺動面の硬さ以上の硬さを有する皮膜が設けられており、前記軸受部品の摺動面の表面粗さは、前記軸部品の摺動面の表面粗さよりも小さい。
【0012】
これにより、摺動部材の耐摩耗性を向上することができ、また、油膜が薄くても突起による固体接触の発生を低減することができる。よって、効率低下の低減を図った冷媒圧縮機を提供することができる。
【0013】
第2の態様に係る冷媒圧縮機は、第1の態様において、前記軸受部品の摺動面のうち、少なくとも一部の表面粗さが前記軸部品の摺動面の表面粗さよりも小さくてもよい。これにより、突起による固体接触の発生を低減するとともに、生産性を向上することができる。
【0014】
第3の態様に係る冷媒圧縮機は、第1又は第2の態様において、前記軸受部品の軸心方向において、前記軸受部品の摺動面のうち、表面粗さが前記軸部品の摺動面の表面粗さよりも小さい範囲の寸法は、前記軸部品の摺動面の寸法の1/10以上かつ1/2以下であり、前記軸心方向の端部位置に設定されていてもよい。これにより、軸部品と軸受部品との片当り時においても、突起による固体接触の発生を低減するとともに、生産性を向上することができる。
【0015】
第4の態様に係る冷媒圧縮機は、第1〜第3のいずれか一つの態様において、前記軸受部品の摺動面うち、表面粗さが前記軸部品の摺動面表面粗さよりも小さい範囲の算術平均粗さRaは、0.01μm以上かつ0.2μm以下であってもよい。これにより、突起による固体接触の発生を低減し、油膜の形成状態を向上させるとともに、生産性を向上することができる。
【0016】
第5の態様に係る冷媒圧縮機は、放熱器、減圧装置、吸熱器、並びに、第1〜第4のいずれか一つの態様において、前記電動要素は、複数の運転周波数でインバータ駆動するように構成されていてもよい。これにより、回転数が増加する高速運転時、及び、各摺動面への給油量が減少する低速運転時のいずれにおいても、耐摩耗性に優れた皮膜と、接触摺動状態の緩和作用とによって油膜形成を促進させることができる。
【0017】
第6の態様に係る冷凍装置は、上記いずれかの密閉型圧縮機を備えている。この効率低下の低減を図った冷媒圧縮機によって、冷凍装置の省エネルギー化を実現することができる。
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によってこの発明が限定されるものではない。
【0019】
(実施の形態1)
<冷媒圧縮機>
実施の形態1に係る冷媒圧縮機は、図1に示すように、密閉容器101を備えている。密閉容器101にR600aを冷媒ガスとして充填されていると共に、密閉容器101の底部に潤滑油103として鉱油が貯留されている。
【0020】
また、密閉容器101は、電動要素106及び圧縮要素107を収容している。電動要素106は、固定子104、及び、固定子104に対して回転する回転子105を有している。圧縮要素107は、電動要素106により駆動されて、冷媒を圧縮する機構であって、例えば、往復式機構であり、クランクシャフト108、シリンダブロック112及びピストン132を有している。
【0021】
圧縮要素107は、クランクシャフト108、シリンダブロック112及びピストン132を有している。クランクシャフト108は、主軸109及び偏心軸110を有している。主軸109は、円柱形状の軸部品であって、下部が回転子105に圧入固定されており、下端には潤滑油103に連通する給油ポンプ111が設けられている。偏心軸110は、円柱形状の軸部品であって、主軸109に対し偏心して配置されている。
【0022】
シリンダブロック112は、例えば、鋳鉄等の鉄系材料からなり、シリンダボア113、及び主軸受114を有している。このシリンダボア113は、円筒形であって、内部空間を有し、端面がバルブプレート139で封止されている。
【0023】
主軸受114は、円筒形状の軸受部品であって、内周面によって主軸109を軸支しており、主軸109のラジアル荷重を支えるジャーナル軸受である。このため、主軸受114の内周面と主軸109の外周面とは対向し、主軸受114の内周面に対して主軸109が摺動する。このように主軸受114の内周面及び主軸109の外周面において互いに摺動する部分が摺動面であって、この摺動面を有する主軸受114及び主軸109は一対の摺動部材を構成する。
【0024】
ピストン132の一端部は、主軸109の回転によって往復可動にシリンダボア113の内部空間に挿入されている。これにより、シリンダボア113、バルブプレート139及びピストン132により囲まれた圧縮室134が形成される。また、ピストン132の他端部は、そのピストンピン孔116にピストンピン115が回転不能に係止されており、このピストンピン115によってコンロッド(連結手段)117の一端部に連結されている。また、コンロッド117の他端部には偏心軸受119が設けられており、偏心軸受119に軸支される偏心軸110とピストン132とが連結される。
【0025】
偏心軸受119は、円筒形状の軸受部品であって、内周面によってクランクシャフト108の円柱形状の偏心軸110を軸支しており、偏心軸110のラジアル荷重を支えるジャーナル軸受である。このため、偏心軸受119の内周面と偏心軸110の外周面とは対向し、偏心軸受119の内周面に対して偏心軸110が摺動する。このような偏心軸受119の内周面及び偏心軸110の外周面において互いに摺動する部分が摺動面であって、この摺動面を有する偏心軸受119及び偏心軸110は一対の摺動部材を構成する。
【0026】
シリンダヘッド140は、バルブプレート139におけるシリンダボア113側と反対側に固定され、バルブプレート139の吐出孔を覆うことにより高圧室(図示せず)を形成している。また、サクションチューブ(図示せず)は、密閉容器101に固定されるとともに冷凍サイクルの低圧側(図示せず)に接続され、冷媒ガスを冷凍サイクルから密閉容器101内に導く。さらに、サクションマフラー142は、バルブプレート139とシリンダヘッド140に挟持されている。
【0027】
<皮膜>
主軸109は、基材150、及び、基材150の表面を被覆する皮膜により構成されている。基材150は、ねずみ鋳鉄(FC鋳鉄)等の鉄系材料により形成されている。皮膜は、例えば、主軸109の表面を構成し、主軸受114の摺動面の硬さ以上の硬さを有し、例えば、酸化皮膜160が挙げられる。例えば、炭酸ガス(二酸化炭素ガス)等の公知の酸化性ガス及び公知の酸化設備を用いて、数百℃(例えば400〜800℃)の範囲内で基材150であるねずみ鋳鉄を酸化することにより、基材150の表面に酸化皮膜160を形成することができる。
【0028】
図2は、基材150を酸化皮膜160が被覆した主軸109をSIM(走査イオン顕微鏡)により観察した像(SIM像)である。なお、図2において、第一の部分151の上には観察試料を保護するための保護膜(樹脂膜)が形成されている。また、酸化皮膜160の表面に平行な方向を横方向と称し、酸化皮膜160の表面に直交する方向を縦方向と称する。
【0029】
この酸化皮膜160は縦方向の寸法(膜厚)は、約3μmである。また、酸化皮膜160は、第一の部分151、第二の部分152及び第三の部分153を有しており、これらの部分はこの順で表面側から基材150側に積層されている。この積層方向は縦方向に平行である。
【0030】
第一の部分151は、酸化皮膜160の表面を構成し、第二の部分152上に形成されており、微結晶の組織により形成されている。EDS(エネルギー分散型X線分光法)分析及びEELS(電子線エネルギー損失分光法)分析を行った結果、第一の部分151は、最も多く占める成分が三酸化二鉄(Fe)であって、ケイ素(Si)化合物も含んでいた。また、第一の部分151は、結晶密度が異なる2つの部分(第一aの部分151a及び第一bの部分151b)を有している。
【0031】
第一aの部分151aは、第一bの部分151b上に形成され、酸化皮膜160の表面を構成する。第一aの部分151aの結晶密度は、第一bの部分151bの結晶密度よりも小さい。また、第一aの部分151aは、所々に空隙部158(図2中の黒く見える部分)、及び、針状組織159を含有している。針状組織159は、縦長であって、例えば、縦方向の短径側の長さが100nm以下であって、縦方向の径を横方向の径で除した比率(アスペクト比)が1以上10以下である。
【0032】
第一bの部分151bは、粒径100nm以下からなる微結晶155が敷き詰められた組織である。第一bの部分151bには、第一aの部分151aで見られたような空隙部158及び針状組織159は殆ど見られない。
【0033】
第二の部分152は、第三の部分153上に形成されており、縦長の柱状組織156を含有している。例えば、柱状組織156は、縦方向の径が約100nm以上1μm以下であって、横方向の径が約100nm以上150nm以下であって、アスペクト比が約3以上10以下である。また、EDS及びEELSの分析結果、第二の部分152は、最も多く占める成分が四酸化三鉄(Fe)であって、ケイ素(Si)化合物も含んでいる。
【0034】
第三の部分153は、基材150上に形成されており、横長の層状組織157を含有している。例えば、層状組織157は、縦方向の径が数十nm以下であって、横方向の径が数百nm程度であり、アスペクト比が0.01以上0.1以下と横方向に長い。また、EDS及びEELSの分析結果、第三の部分153は、最も多く占める成分が四酸化三鉄(Fe)であって、ケイ素(Si)化合物及びケイ素(Si)固溶部を含んでいる。
【0035】
なお、図2では、酸化皮膜160は、第一の部分151、第二の部分152、及び、第三の部分153により構成されており、この順で積層されている。ただし、酸化皮膜160の構成及び積層順はこれに限定されない。
【0036】
例えば、酸化皮膜160は、第一の部分151の単層によって構成されていてもよい。酸化皮膜160は、第一の部分151が酸化皮膜160の表面を形成するように第一の部分151及び第二の部分152の二層によって構成されていてもよい。酸化皮膜160は、第一の部分151が酸化皮膜160の表面を形成するように第一の部分151及び第三の部分153の二層によって構成されていてもよい。
【0037】
また、酸化皮膜160は、第一の部分151、第二の部分152及び第三の部分153以外の組成を含んでいてもよい。酸化皮膜160は、第一の部分151が酸化皮膜160の表面を形成するように第一の部分151、第二の部分152、第一の部分151及び、第三の部分153の四層によって構成されていてもよい。
【0038】
この酸化皮膜160の構成及び積層順は諸条件を調整することにより容易に実現することができる。代表的な諸条件としては、酸化皮膜160の製造方法(形成方法)が挙げられる。酸化皮膜160の製造方法には、公知の鉄系材料の酸化方法を好適に用いることができるが、これに限定されない。製造方法における条件は、基材150を形成する鉄系材料の種類、基材150の表面状態(研磨仕上げ等)、求める酸化皮膜160の物性等の条件に応じて、適宜、設定される。
【0039】
<冷媒圧縮機の動作>
商用電源(図示せず)から供給される電力は、外部のインバータ駆動回路(図示せず)を介して電動要素106に供給される。これにより、電動要素106は複数の運転周波数でインバータ駆動され、電動要素106の回転子105はクランクシャフト108を回転させる。このクランクシャフト108の偏心軸110の偏心運動は、コンロッド117及びピストンピン115によってピストン132の直線運動に変換されて、ピストン132はシリンダボア113内の圧縮室134を往復運動する。このため、サクションチューブを通して密閉容器101内に導かれた冷媒ガスをサクションマフラー142から圧縮室134に吸入し、さらに、冷媒ガスを圧縮室134内で圧縮して密閉容器101から吐出する。
【0040】
また、クランクシャフト108の回転に伴い、潤滑油103は給油ポンプ111から各摺動面に給油され、摺動面を潤滑する。これとともに、潤滑油103はピストン132とシリンダボア113との間においてはシールを形成し、圧縮室134を密閉する。
【0041】
<硬さ>
図3は、主軸109及び主軸受114の深さ方向の硬さを表したグラフである。なお、硬さはビッカース硬さで示している。硬さの計測には、シエンタ・オミクロン株式会社製のナノインデンテーション装置(トライボインデンター)を使用した。
【0042】
主軸109の硬さの計測では、圧子を主軸109の表面に押し込んで荷重を負荷した状態を一定時間維持させるステップを行った。そして、次のステップでは、一旦、荷重を除荷した後、除荷前のステップの荷重よりも高い荷重で圧子を主軸109の表面に押し込み、再び荷重を負荷した状態を一定時間維持するようにした。このように段階的に荷重を増加させるステップを15回、繰り返した。また、最大荷重が1Nになるように各ステップの荷重を設定した。そして、各ステップ後に主軸109の酸化皮膜160及び基材150の硬さ及び深さを計測した。
【0043】
また、主軸受114の硬さの計測では、主軸受114の一部をファインカッターで切り出した。この一部において、主軸受114の内周面に圧子を荷重0.5kgfを負荷して、硬さを計測した。
【0044】
図3に示すように、主軸109の酸化皮膜160及び基材150の硬さは主軸受114の硬さ以上であった。このように、酸化皮膜160によって主軸109の硬さを主軸受114の硬さ以上とすることにより、耐摩耗性向上とともに、一対の摺動部材間の油膜を確保して、冷媒圧縮機へ入力が運転初期から低い高効率な運転を可能とする。
【0045】
このような硬さは、物質及び材料等の物体において表面又は表面近傍の機械的性質の一つであって、物体に外力が加えられた時の、物体の変形し難さ及び傷つき難さである。硬さにはさまざまな測定手段(定義)及びそれに対応する値(硬さの尺度)が存在する。このため、測定対象に応じた測定手段を用いてもよい。
【0046】
例えば、測定対象が金属又は非鉄金属である場合、押込み硬さ試験法(例えば、先にあげたナノインデンテーション法や、ビッカースやロックウェル硬さ法等)が測定に用いられる。
【0047】
また、樹脂膜及びリン酸塩皮膜等の皮膜のような、押込み硬さ試験法による測定が困難な測定対象には、例えば、リング・オン・ディスク方式などの摩耗試験が用いられる。この測定方法の一例では、ディスクの表面に皮膜を施した試験片を形成する。この試験片を油中に浸漬した状態で、リングによって皮膜に荷重1000Nを負荷しながら、回転速度1m/sで1時間、回転させて、皮膜上をリングで摺動する。この皮膜及びリングの表面の摺動面の状態を観察する。この結果、リング及び皮膜のうち摩耗量が相対的に大きい方を、硬さが低いと判断してもよい。
【0048】
<表面粗さ>
図7に示すように、主軸受114の摺動面の表面粗さは、主軸109の摺動面の表面粗さよりも小さく形成されている。この主軸109の摺動面の表面粗さは、主軸109の皮膜の表面粗さである。
【0049】
図8に示すように、主軸受114の摺動面114bの一部に、表面粗さが主軸109の表面粗さよりも小さい範囲(表面粗さ向上範囲114a)を設けている。表面粗さ向上範囲114aは、主軸受114の軸心方向における端部位置であって、例えば、主軸受114の摺動面114bの上端部に設けられている。ただし、表面粗さ向上範囲114aは、主軸受114の摺動面114bの下端部に設けられていてもよい。このため、表面粗さ向上範囲114aは、主軸受114の摺動面114bの上端部及び下端部の少なくともいずれか一方に設けられていればよい。
【0050】
この表面粗さ向上範囲114aの範囲は、主軸受114の軸心方向において主軸受114の摺動面114bの端(上端、下端)から寸法(幅)Cの範囲であって、主軸受114の内周面の周方向において全周に亘って設けられている。この幅Cは、主軸受114の摺動面114bの寸法(幅)Dの1/10以上1/2以下である。この摺動面114bは、主軸受114の内周面のうち、主軸109の外周面と対向して摺動する範囲である。このため、例えば、主軸受114の内周面に面取り部114cが設けられている場合、この面取り部114cは摺動面114bに含まれない。また。摺動面114bは、主軸109と主軸受114とが常に摺動する部分ではなく、摺動し得る部分である。
【0051】
この表面粗さ向上範囲114aにより、主軸109と主軸受114との片当り時においても、摺動面上の微細な突起による固体接触の発生を低減することができる。しかも、加工に時間がかかる表面粗さの小さい部分(表面粗さ向上範囲114a)を少なくして、生産性を向上させることができる。
【0052】
なお、表面粗さ向上範囲114aの幅Cを幅Dの1/10以下にすると、主軸109と主軸受114との摺動面間の油膜を維持できなくなり、冷媒圧縮機への入力が増加してしまう。また、表面粗さ向上範囲114aの幅Cを幅Dの1/2以上にしても、幅Cを幅Dの1/2としたときの入力よりも低下することがない上、加工コストの増大を招く。
【0053】
例えば、表面粗さ向上範囲114aの算術平均粗さRaは、0.01μm以上かつ0.2μm以下である。これにより、摺動面上の微細な突起による固体接触の発生を低減し、摺動面間の油膜を維持できるとともに、生産性を向上させることができる。
【0054】
なお、表面粗さ向上範囲114aの算術平均粗さRaが0.2μmより大きいと、摺動面間の油膜を維持できなくなり、冷媒圧縮機への入力が増加してしまう。また、算術平均粗さRaを0.01μmより小さくしても、入力が低下しない上、加工コストの増大を招き生産性が悪化する。
【0055】
このように、主軸受114の表面粗さを主軸109の表面粗さよりも小さくしている。これによって、皮膜によって主軸109の表面が硬い場合であっても、主軸109と主軸受114との間において、耐摩耗性を向上させ、局所的な接触を緩和し、油膜の形成を促している。このため、長期信頼性が高く、かつ冷媒圧縮機への入力が運転初期から低く安定した高効率な冷媒圧縮機を提供することができる。
【0056】
<冷媒圧縮機の性能>
図4Aは冷媒圧縮機への入力の時系列経時変化を示し、図4Bは冷媒圧縮機の成績係数COP(Coefficient of Performance)の時系列経時変化を示す。COPは、冷凍冷蔵機器などの冷媒圧縮機のエネルギー消費効率の目安として使われる係数であって、冷凍能力(W)を入力(W)で除した値である。
【0057】
ここでは、運転周波数17Hzにて冷媒圧縮機を低速運転した場合の入力及びCOPを得た。また、本実施の形態の冷媒圧縮機は、主軸受114の表面粗さが主軸109の表面粗さよりも小さいものである。これに対し、従来の冷媒圧縮機は、主軸受114に表面粗さ向上範囲114aを設けていないものである。
【0058】
図4Aから、本実施の形態の冷媒圧縮機、及び従来の冷媒圧縮機のいずれも運転開始直後の入力(以下、初期入力と称す)が最も高い。その後の運転時間の経過に伴って入力は徐々に低下し、最終的には殆ど変化がない一定の値(以下、定常入力と称す)を示している。さらに、本実施の形態の冷媒圧縮機は、従来の冷媒圧縮機よりも初期入力が低く、また、初期入力から定常入力へ移行する時間(移行時間)も短い。本実施の形態の冷媒圧縮機の移行時間t1、及び、従来の冷媒圧縮機の移行時間t2について、t1はt2の約1/2である。これにより、図4Bに示すように、本実施の形態の冷媒圧縮機は、従来の冷媒圧縮機よりもCOPが早期に安定し、かつ向上している。
【0059】
この点について、図5図7を参照しながら、以下のように考察する。図5は、冷媒圧縮機における圧縮荷重の作用図である。図6は、主軸受114に表面粗さ向上範囲114aを設ける前の冷媒圧縮機における主軸受114と主軸109の摺動面の拡大図を示す。図7は、主軸受114に表面粗さ向上範囲114aを設けた本実施の形態に係る冷媒圧縮機における主軸受114と主軸109の摺動面の拡大図を示す。この表面粗さ向上範囲114aにより、主軸受114の表面粗さが主軸109の表面粗さより小さくなっている。
【0060】
本実施の形態に係る冷媒圧縮機は、往復動(レシプロ)式であって、圧縮室134内の圧縮荷重Pよりも密閉容器101内の圧力が低い。一般的に、この圧縮荷重Pが偏心軸110に作用する状態において、偏心軸110に繋がる主軸109を一つの主軸受114で片持ち支持している。
【0061】
このため、伊藤らの文献(日本機械学会年次大会論文集 Vol.5−1 (2005) P.143)に示されるように、主軸109及び偏心軸110を有するクランクシャフト108は、圧縮荷重Pの影響により主軸受114内で傾いた状態で振れ回っている。圧縮荷重Pの分力P1が、対向する主軸109の摺動面及び主軸受114の上端部の摺動面に作用する。一方、圧縮荷重Pの分力P2が、対向する主軸109の摺動面及び主軸受114の下端部の摺動面に作用する。このように、いわゆる、片当りが発生する。
【0062】
図6において、表面粗さ向上範囲114aを設けていない冷媒圧縮機では、主軸109及び主軸受114の双方において、摺動面の表面に多数の微小な突起が存在している。この主軸109が主軸受114内で傾くと、局所的な接触が生じて、面圧が高くなる。さらに、より低速運転では、主軸109の摺動面と主軸受114の摺動面と間の油膜厚さhが薄くなって、突起による固体接触の発生が頻発する。しかも、主軸109の摺動面が耐摩耗性の高い酸化皮膜160によって形成されている場合、主軸109の表面に点在する硬度が硬い微小な突起により、主軸受114の摺動面にて摺動痕が発生して、固体接触Xが発生する時間が長くなる。よって、冷媒圧縮機への初期入力が高くなるとともに、初期入力から定常入力への移行時間も長くなる。
【0063】
一方で、図7において、本実施の形態に係る冷媒圧縮機では、表面粗さ向上範囲114aにより主軸受114の摺動面の表面粗さが、相対する主軸109の摺動面の表面粗さよりも小さい。これにより、突起による固体接触を低減し、主軸109と主軸受114との間の油膜形成を運転初期から保持することができる。このため、初期入力を低く抑え、かつ初期入力から定常入力に移行する時間を短縮化することができる。さらに、主軸109の表面に耐摩耗性の高い酸化皮膜160を形成していることによって、耐久性も確保することができる。
【0064】
このような酸化皮膜160によって主軸109は、硬くて耐摩耗性が向上すると共に、主軸受114に対する攻撃性(相手攻撃性)が低下し、摺動初期のなじみ性も向上する。よって、主軸受114の表面粗さを主軸109の表面粗さよりも小さくすることによる効果と相まって、冷媒圧縮機への入力が運転初期から低い高効率な運転が可能となる。
【0065】
この酸化皮膜160の高い耐摩耗性と、相手攻撃性の低下及び摺動初期のなじみ性の向上については本出願人の特願2016−003910号、特願2016−003909号に詳述している通りである。この理由の一つは以下のように考えられる。
【0066】
酸化皮膜160は鉄の酸化物であるから、従来のリン酸塩皮膜と比較して化学的に非常に安定である。また、鉄の酸化物の皮膜は、リン酸塩皮膜と比較して高い硬度を有する。それゆえ、摺動面に酸化皮膜160が形成されることで、摩耗粉の発生及び付着等を効果的に防止することができる。この結果、酸化皮膜160そのものの摩耗量の増加を有効に回避でき、高い耐摩耗性を示す。
【0067】
しかも、図2に示すように酸化皮膜160の第一の部分151には、鉄の酸化物よりも硬度が高いケイ素(Si)化合物が含まれている。それゆえ、酸化皮膜160は、ケイ素(Si)化合物を含有する第一の部分151により表面を構成することにより、より高い耐摩耗性を発揮できる。
【0068】
一方、酸化皮膜160の表面を構成する第一の部分151は、最も多く占める成分として三酸化二鉄(Fe)を有している。この三酸化二鉄(Fe)の結晶構造は、菱面体晶であって、その下方に位置する四酸化三鉄(Fe)の立方晶の結晶構造、並びに、窒化皮膜の周密六方晶、面心立方晶及び体心正方晶の結晶構造よりも、結晶構造の面において柔軟である。そのため、三酸化二鉄(Fe)を多く含む第一の部分151は、従来のガス窒化皮膜又は一般的な酸化皮膜(四酸化三鉄(Fe)単部分皮膜)と比べて適度な硬さを有しつつ、相手攻撃性が低くて、摺動初期のなじみ性が向上すると考えられる。
【0069】
つまり、主軸109の表面を構成する酸化皮膜160は、その表面側に比較的硬質ではあるが結晶構造が菱面体であって柔軟な三酸化二鉄(Fe)を多く含む。このため、相手攻撃性が低下し、油膜切れ等を抑制して、摺動初期のなじみ性を向上させる。また、これは、主軸受114の表面粗さを主軸109の表面粗さよりも小さくしたことによる効果と相まって、冷媒圧縮機への入力が運転初期から低い高効率な運転が可能となる。
【0070】
さらに、酸化皮膜160の第二の部分152及び第三の部分153は、いずれもケイ素(Si)化合物を含み、第一の部分151と基材150との間に位置する。このため、酸化皮膜160の基材150に対する密着力は強力なものとなる。しかも、第三の部分153は、第二の部分152よりもケイ素の含有量が多い。このように、ケイ素(Si)化合物を含む第二の部分152及び第三の部分153が積層され、ケイ素の含有量がより多い第三の部分153が基材150に接する。これにより、酸化皮膜160の密着力をより一層強化する。その結果、摺動時の負荷に対して、酸化皮膜160の耐力が向上し、酸化皮膜160の耐摩耗性が一段と高いものとなる。そして、仮に酸化皮膜160の表面を形成する第一の部分151が摩耗したとしても、第二の部分152及び第三の部分153が残るため、酸化皮膜160はより優れた耐摩耗性を発揮する。
【0071】
また、酸化皮膜160の高い耐摩耗性、相手攻撃性の低下及び摺動初期のなじみ性の向上については別の観点から見ると、以下の理由によるものとも考えられる。
【0072】
すなわち、酸化皮膜160の表面を構成する第一の部分151はケイ素(Si)化合物が含まれている上、緻密な微結晶組織となっている。このため、酸化皮膜160は、高い耐摩耗性を発揮する。
【0073】
また、第一の部分151は微結晶の組織であって、これら微結晶の間には所々にわずかな空隙部158が形成されている、あるいは、表面に微小な凹凸が生じている。そのため、毛細管現象により潤滑油103が酸化皮膜160の表面(摺動面)に保持され易い。つまり、このようなわずかな空隙部158及び/又は微少な凹凸が存在することで、摺動状態が厳しい状況であっても摺動面に潤滑油103を留めること、いわゆる「保油性」を発揮することが可能となる。その結果、摺動面に油膜が形成され易くなる。
【0074】
さらに、酸化皮膜160は、第一の部分151の下方の基材150側に柱状組織156(第二の部分152)及び層状組織157(第三の部分153)が存在している。これら組織は、第一の部分151の微結晶155に比べて相対的に硬度が低く、軟らかい。そのため、摺動時には、柱状組織156及び層状組織157が「緩衝材」のように機能する。これにより、摺動時の表面に対する圧力により微結晶155は基材150側に圧縮されるように挙動する。その結果、酸化皮膜160の相手攻撃性は、他の表面処理膜よりも著しく低く、相手材の摺動面の摩耗を有効に抑制する。
【0075】
なお、「緩衝材」の機能は第二の部分152及び第三の部分153のいずれか一方のみであっても発揮される。このため、第一の部分151の下方には第二の部分152又は第三の部分153が位置していればよい。好ましくは、第一の部分151の下方に第二の部分152及び第三の部分153の両方が位置していればよい。
【0076】
また、酸化皮膜160は、相手攻撃性が低く、且つ、良好な「保油性」を発揮することができる。このため、酸化皮膜160を備える軸部品は、油膜形成能力が格段に高くなる。この油膜形成能力の高さが、軸受部品の表面粗さを小さくしたことによる効果と相まって、冷媒圧縮機への入力が運転初期から低い高効率な運転を可能とする。
【0077】
<変形例>
上記の構成では、軸部品として主軸109を用い、軸受部品として主軸受114を用いたが、軸部品及び軸受部品はこれに限定されない。例えば、偏心軸110を軸部品とし、偏心軸受119を軸受部品として用いてもよい。このため、主軸109及び偏心軸110の少なくともいずれか一方の軸部品に、これに対向する軸受部品の硬さ以上の硬さを有する皮膜が表面に設けられてもよい。また、主軸受114及び偏心軸受119の少なくともいずれかに一方の軸受部品の表面粗さは、これに対向する軸部品の表面粗さよりも小さくしてもよい。
【0078】
また、上記全ての構成では、軸部品の表面に酸化皮膜160を備えたが、軸部品の表面の皮膜は軸受部品の硬さ以上の硬さを有するものであれば、これに限定されない。例えば、軸部品の皮膜は、例えば、化合物層、機械的強度改善層及び被覆法により形成した層等が挙げられる。
【0079】
すなわち、軸部品の基材150が鉄系である場合、皮膜は、一般的な焼入れ方法、並びに、表層に炭素又は窒素等を浸み込ませる方法で形成した皮膜であってもよい。また、皮膜は、水蒸気による酸化処理、及び、水酸化ナトリウムの水溶液に浸漬させた酸化処理によって形成された皮膜であってもよい。さらに、皮膜は、冷間加工、加工硬化、固溶強化、析出強化、分散強化及び結晶粒微細化によって形成され、転位のすべり運動を抑制させて基材150の強化を図った層(機械的強度改善層)であってもよい。さらに、皮膜は、メッキ、溶射、PVD、CVDの被覆法により形成した層であってもよい。
【0080】
さらに、上記全ての構成では、主軸受114の摺動面の一部に、表面粗さが主軸109の表面粗さよりも小さい範囲(表面粗さ向上範囲114a)を設けた。ただし、主軸受114の摺動面における表面粗さ向上範囲114aはこれに限定されない。主軸受114の摺動面の全体(全摺動範囲)に表面粗さ向上範囲114aを設けてもよい。
【0081】
なお、上記全ての構成では、軸部品の基材150に鉄系材料を用いたが、基材150は、軸受部品と同等以上の硬さを有する皮膜を形成できるものであれば、鉄系以外の材料を用いることができる。
【0082】
また、上記全ての構成では、低速運転(例えば、運転周波数17Hz)によって冷媒圧縮機が駆動される場合を例にしてその効果を説明したが、冷媒圧縮機の運転はこれに限定されない。商用回転数による運転、及び、回転数が増加する高速運転が行われた場合であっても、冷媒圧縮機は低速運転された場合と同様に、性能及び信頼性を向上させることができる。
【0083】
また、上記全ての構成では、往復動式(レシプロ)の冷媒圧縮機を例示したが、冷媒圧縮機は、回転式、スクロール式及び振動式等の他の形式のものであってもよい。また、軸受部品の硬さ以上の硬さの皮膜を軸部品に備え、軸受部品の表面粗さを軸受部品の表面粗さよりも小さくする構成は、冷媒圧縮機に限定されず、摺動面を有する機器においても同様に用いられ、また、これにより同様の効果が得られる。この摺動面を有する機器としては、例えば、ポンプ及びモータ等であってもよい。
(実施の形態2)
図9は、実施の形態2に係る冷凍装置の模式図を示す。ここでは、冷凍装置の基本構成の概略について説明する。
【0084】
図9において、冷凍装置は、本体301、区画壁307及び冷媒回路309を備えている。本体301は、一面が開口した断熱性の箱体、及び、その開口を開閉する扉体を有している。区画壁307は、本体301の内部を、物品の貯蔵空間303と機械室305とに区画する。冷媒回路309は、冷媒圧縮機300、放熱器313、減圧装置315及び吸熱器317を配管によって環状に接続した構成であって、貯蔵空間303内を冷却する。
【0085】
吸熱器317は、送風機(図示せず)を具備した貯蔵空間303内に配置されている。吸熱器317の冷却空気は、矢印で示すように、送風機によって貯蔵空間303内を循環するように撹拌され、貯蔵空間303内を冷却する。
【0086】
以上の構成からなる冷凍装置は、冷媒圧縮機300として上記実施の形態1に係る冷媒圧縮機を備えている。これにより、冷媒圧縮機300の主軸109等の軸部品の皮膜は、これに対向する主軸受114等の軸受部品の硬さ以上の硬さを有し、軸受部品の表面粗さが軸部品の表面粗さよりも小さい。このため、軸部品と軸受部品との間において耐摩耗性の向上、局所的な接触摺動の軽減、及び、油膜形成の維持が実現される。よって、冷凍蔵置について性能が向上するので、消費電力の低減による省エネルギー化を実現し、かつ信頼性を向上させることができる。
【0087】
以上、本発明に係る冷媒圧縮機及びそれを備えた冷凍装置について、上記実施の形態を用いて説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。つまり、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0088】
以上のように、本発明は、効率低下の低減を図った冷媒圧縮機及びそれを備えた冷凍装置を提供することが可能となるので、冷凍サイクルを用いた各種機器に幅広く適用できる。
【符号の説明】
【0089】
101 密閉容器
106 電動要素
107 圧縮要素
109 主軸(軸部品)
110 偏心軸(軸部品)
114 主軸受(軸受部品)
119 偏心軸受(軸受部品)
160 酸化皮膜(皮膜)
300 冷媒圧縮機
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】