特表-18096823IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ パナソニックIPマネジメント株式会社の特許一覧
<>
  • 再表WO2018096823-非対称スクロール圧縮機 図000003
  • 再表WO2018096823-非対称スクロール圧縮機 図000004
  • 再表WO2018096823-非対称スクロール圧縮機 図000005
  • 再表WO2018096823-非対称スクロール圧縮機 図000006
  • 再表WO2018096823-非対称スクロール圧縮機 図000007
  • 再表WO2018096823-非対称スクロール圧縮機 図000008
  • 再表WO2018096823-非対称スクロール圧縮機 図000009
  • 再表WO2018096823-非対称スクロール圧縮機 図000010
  • 再表WO2018096823-非対称スクロール圧縮機 図000011
  • 再表WO2018096823-非対称スクロール圧縮機 図000012
  • 再表WO2018096823-非対称スクロール圧縮機 図000013
  • 再表WO2018096823-非対称スクロール圧縮機 図000014
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2018年5月31日
【発行日】2019年10月17日
(54)【発明の名称】非対称スクロール圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04C 18/02 20060101AFI20190920BHJP
   F04C 29/04 20060101ALI20190920BHJP
   F04C 29/12 20060101ALI20190920BHJP
【FI】
   F04C18/02 311X
   F04C18/02 311J
   F04C18/02 311Y
   F04C29/04 M
   F04C29/12 E
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】26
【出願番号】特願2018-552452(P2018-552452)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2017年10月12日
(31)【優先権主張番号】特願2016-228339(P2016-228339)
(32)【優先日】2016年11月24日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100115554
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 幸一
(72)【発明者】
【氏名】中井 啓晶
(72)【発明者】
【氏名】作田 淳
【テーマコード(参考)】
3H039
3H129
【Fターム(参考)】
3H039AA06
3H039AA12
3H039BB15
3H039BB17
3H039BB22
3H039BB28
3H039CC02
3H039CC03
3H039CC04
3H039CC08
3H039CC24
3H039CC26
3H039CC27
3H039CC30
3H039CC42
3H039CC44
3H129AA02
3H129AA14
3H129AA32
3H129AB03
3H129BB01
3H129BB16
3H129BB43
3H129BB52
3H129CC02
3H129CC13
3H129CC33
3H129CC34
3H129CC64
(57)【要約】
非対称スクロール圧縮機であって、第1圧縮室(15a)及び第2圧縮室(15b)に中間圧の冷媒をインジェクションする、少なくとも1つのインジェクションポート(43)を、吸入冷媒の閉じ込み後の圧縮行程中にある第1圧縮室(15a)又は第2圧縮室(15b)に開口する位置に、固定スクロール(12)の鏡板を貫通して設ける。さらに、インジェクションポート(43)から第2圧縮室(15b)にインジェクションする冷媒量よりも、インジェクションポート(43)から第1圧縮室(15a)にインジェクションする冷媒量を多くする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鏡板から渦巻き状のラップが立ち上がる固定スクロール及び旋回スクロールを備え、前記固定スクロールの前記ラップと前記旋回スクロールの前記ラップとを噛み合わせて、前記固定スクロールと前記旋回スクロールとの間に圧縮室を形成し、前記圧縮室として、前記旋回スクロールのラップ外壁側に形成される第1圧縮室と、前記旋回スクロールのラップ内壁側に形成される第2圧縮室とが形成され、前記第1圧縮室の吸入容積が前記第2圧縮室の吸入容積よりも大きい非対称スクロール圧縮機において、
前記第1圧縮室及び前記第2圧縮室に中間圧の冷媒をインジェクションする、少なくとも1つのインジェクションポートを、吸入冷媒の閉じ込み後の圧縮行程中にある前記第1圧縮室又は前記第2圧縮室に開口する位置に、前記固定スクロールの前記鏡板を貫通して設け、前記インジェクションポートから前記第2圧縮室にインジェクションする冷媒量よりも、前記インジェクションポートから前記第1圧縮室にインジェクションする冷媒量を多くしたことを特徴とする非対称スクロール圧縮機。
【請求項2】
前記インジェクションポートには、前記圧縮室への冷媒流れを許容し、前記圧縮室からの冷媒流れを抑止する逆止弁を設けたことを特徴とする請求項1に記載の非対称スクロール圧縮機。
【請求項3】
前記固定スクロールと前記旋回スクロールを内部に備えた密閉容器には、オイルを溜める貯油部を形成し、前記旋回スクロールの背面には高圧領域と背圧室とを形成し、前記貯油部から前記圧縮室に前記オイルを給油する給油経路は前記背圧室を経由し、前記背圧室が前記第1圧縮室又は前記第2圧縮室に連通する前記給油経路は、前記吸入冷媒の閉じ込み後の前記圧縮行程中にある前記第1圧縮室又は前記第2圧縮室に開口する前記位置に設け、前記給油経路が前記第1圧縮室又は前記第2圧縮室に連通する給油区間の少なくとも一部の区間を、前記インジェクションポートが前記第1圧縮室又は前記第2圧縮室に開口する開口区間と重複させたことを特徴とする請求項1に記載の非対称スクロール圧縮機。
【請求項4】
前記固定スクロールと前記旋回スクロールを内部に備えた密閉容器には、オイルを溜める貯油部を形成し、前記旋回スクロールの背面には高圧領域と背圧室とを形成し、前記貯油部から前記圧縮室に前記オイルを給油する給油経路は前記背圧室を経由し、前記背圧室が前記第1圧縮室又は前記第2圧縮室に連通する前記給油経路は、前記吸入冷媒の閉じ込み後の前記圧縮行程中にある前記第1圧縮室又は前記第2圧縮室に開口する前記位置に設け、前記給油経路が前記第1圧縮室又は前記第2圧縮室に連通する給油区間の少なくとも一部の区間を、前記インジェクションポートが前記第1圧縮室又は前記第2圧縮室に開口する開口区間と重複させたことを特徴とする請求項2に記載の非対称スクロール圧縮機。
【請求項5】
前記給油区間が前記開口区間と重複する重複区間を、前記給油区間の後半の一部の区間としたことを特徴とする請求項3に記載の非対称スクロール圧縮機。
【請求項6】
前記給油区間が前記開口区間と重複する重複区間を、前記給油区間の後半の一部の区間としたことを特徴とする請求項4に記載の非対称スクロール圧縮機。
【請求項7】
少なくとも1つの前記インジェクションポートを、前記第1圧縮室と前記第2圧縮室とに順次開口する位置に設けたことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の非対称スクロール圧縮機。
【請求項8】
前記インジェクションポートが前記第1圧縮室に開口する開口区間が、前記インジェクションポートが前記第2圧縮室に開口する開口区間より長いか、又は前記インジェクションポートの前記第1圧縮室への開口時における前記インジェクションポート内の中間圧と前記第1圧縮室の内圧との圧力差が、前記インジェクションポートの前記第2圧縮室への開口時における前記インジェクションポート内の中間圧と前記第2圧縮室の内圧との圧力差より大きいことを特徴とする請求項7に記載の非対称スクロール圧縮機。
【請求項9】
前記インジェクションポートとして、前記第1圧縮室のみに開口する第1インジェクションポートと、前記第2圧縮室のみに開口する第2インジェクションポートとを備え、前記第1インジェクションポートが、前記第2インジェクションポートよりもポート径が大きいか、前記第1インジェクションポートが前記第1圧縮室に開口する開口区間が、前記第2インジェクションポートが前記第2圧縮室に開口する開口区間より長いか、又は前記第1インジェクションポートの前記第1圧縮室への開口時における前記第1インジェクションポート内の中間圧と前記第1圧縮室の内圧との圧力差が、前記第2インジェクションポートの前記第2圧縮室への開口時における前記第2インジェクションポート内の中間圧と前記第2圧縮室の内圧との圧力差より大きいことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の非対称スクロール圧縮機。
【請求項10】
前記固定スクロールの前記鏡板の中心部に、前記圧縮室で圧縮した冷媒を吐出する吐出ポートを備え、前記第1圧縮室が前記吐出ポートと連通する前に前記圧縮室で圧縮した前記冷媒を吐出する吐出バイパスポートを設け、前記圧縮室の前記冷媒が吐出可能となる前記圧縮室の吐出容積に対する前記吸入容積の比である容積比を、前記第2圧縮室よりも前記第1圧縮室を小さくしたことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の非対称スクロール圧縮機。
【請求項11】
前記固定スクロールの前記鏡板の中心部に、前記圧縮室で圧縮した冷媒を吐出する吐出ポートを備え、前記第1圧縮室が前記吐出ポートと連通する前に前記圧縮室で圧縮した前記冷媒を吐出する吐出バイパスポートを設け、前記圧縮室の前記冷媒が吐出可能となる前記圧縮室の吐出容積に対する前記吸入容積の比である容積比を、前記第2圧縮室よりも前記第1圧縮室を小さくしたことを特徴とする請求項9に記載の非対称スクロール圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に空気調和機、給湯器、冷蔵庫等の冷凍機に用いられる、非対称スクロール圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
冷凍装置や空気調和装置には、蒸発器で蒸発したガス冷媒を吸入し、凝縮器にて凝縮させるために必要な圧力までガス冷媒を圧縮して冷媒回路中に高温高圧のガス冷媒を送り出す圧縮機が使用されている。そして、非対称スクロール圧縮機は、凝縮器と蒸発器との間に2つの膨張弁を設け、2つの膨張弁の間を流れる中間圧の冷媒を圧縮工程中の圧縮室内にインジェクションすることで、冷凍サイクルの消費電力削減や能力向上を図っている。
【0003】
すなわち、凝縮器を循環する冷媒は、インジェクションされた冷媒量だけ増加し、空調機であれば暖房能力が向上する。また、インジェクションされる冷媒は、中間圧状態であり、圧縮に必要な動力は、中間圧から高圧までであるため、インジェクションを行わずに同じ能力を実現する場合に比べて、COP(Coefficient Of Performance)が向上し、消費電力も削減できる。
【0004】
凝縮器を流れる冷媒量は、蒸発器を流れる冷媒量とインジェクションされる冷媒量との和に等しく、凝縮器の冷媒量に対するインジェクション冷媒量の比がインジェクション率である。
【0005】
インジェクションの効果を大きくするには、インジェクション率を高くすればよい。そして、インジェクションされる冷媒圧と圧縮室の内圧との圧力差で冷媒がインジェクションされるため、インジェクション率を高くするには、インジェクションされる冷媒圧を高くする必要がある。
【0006】
しかし、インジェクションされる冷媒圧を高くすると、液冷媒が圧縮室にインジェクションされてしまい、暖房能力の低下や圧縮機の信頼性低下を招いてしまう。
【0007】
インジェクション管から圧縮室に流入する冷媒は、気液分離器からガス冷媒を優先的に取り出して送り込まれるが、中間圧制御のバランスが崩れた場合や過渡的な条件変化の際には、ガス冷媒に液冷媒が混ざった状態でインジェクション管から流入する。摺動部分を多く有する圧縮室には、摺動状態を良好に保つために適量のオイルを送り込んで冷媒とともに圧縮しているが、液冷媒が混入すると圧縮室のオイルが液冷媒によって洗い流されることで、摺動状態が悪化し、部品磨耗や焼き付きを生じさせてしまう。従って、インジェクション管から流入した液冷媒は、極力圧縮室には送り込まず、ガス冷媒だけをインジェクションポートに導くことが重要となる。
【0008】
気液分離器の上流側および下流側にそれぞれ設けた膨張弁の開度を調整することで、中間圧を制御し、インジェクション管が最終的に繋がる圧縮機内の圧縮室の内圧と中間圧との圧力差でインジェクション冷媒を圧縮室に送り込む。このため、中間圧を高く調整すればインジェクション率は増加する。一方で、凝縮器から上流側の膨張弁を通って気液分離器に流入する冷媒中の気相成分比率は、中間圧が高いほど少なくなるため、過剰に中間圧を上げると気液分離器の液冷媒が増加し、液冷媒がインジェクション管に流れ込み、暖房能力の低下や圧縮機の信頼性に影響を及ぼす。よって、圧縮機としてはできるだけ低い中間圧で多くのインジェクション冷媒を取り込める構成が望ましく、圧縮方式としては圧縮速度が緩やかなスクロール型が適している。
【0009】
ところで、旋回スクロールラップの外側に容積の大きい圧縮室(以下、第1圧縮室と称す)が、内側に容積の小さい圧縮室(以下、第2圧縮室と称す)が形成される非対称スクロール圧縮機において、1個のインジェクションポートが両方の圧縮室に順次開口し、特に、第2圧縮室に、より多くのインジェクション冷媒を送り込む構成が開示されている(例えば、特許文献1参照)。これにより、スクロール圧縮機の非対称性に起因する固定スクロールと旋回スクロールの押圧力の偏りを解消させて、旋回スクロールの挙動を安定化させつつ、第1圧縮室にもインジェクション冷媒を送ることでインジェクション率の向上を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第4265128号公報
【発明の概要】
【0011】
2つの圧縮室へのインジェクションポートの開口区間は各圧縮室へのインジェクション冷媒量に大きく関係する。
【0012】
特許文献1においては、第1圧縮室へのインジェクション冷媒量を第2圧縮室へのインジェクション量よりも多くした場合について、押圧力のアンバランス量変化で隙間や摩擦力が増大し、効率低下を招くとしている。
【0013】
しかしながら、特許文献1は、2つの課題によりインジェクションサイクル本来の効果を実現できていなかったと考える。
【0014】
1つ目の課題は、特許文献1の表1(表示せず)に記載の通り、第1圧縮室における吸入冷媒の閉じ込み前からインジェクションポートを開口しているためにインジェクション冷媒が吸入側まで逆流している点である。この点は特許文献1自身でも指摘しているように、吸入工程中にインジェクションポートを開口すると、インジェクション効果は期待できないにも関わらず、吸入工程中にインジェクションを行う仕様と圧縮室閉じ込み後にインジェクションを行う仕様を比較して、インジェクション冷媒量を第2圧縮室に多くインジェクションすべきとの結論を導いている。そのため、最適なインジェクションの比較として適切でない。
【0015】
また、2つ目の課題は、圧縮機へ接続するインジェクション管に逆止弁を設けている点である。インジェクション管に逆止弁を設けているために、インジェクションポートならびにインジェクション配管までの経路が、圧縮室開口区間中に無効な体積として損失を生じており、開口区間を広く設定した際にその損失を、より多く生じていたと考えられる。
【0016】
また、容積の小さい第2圧縮室の内圧上昇速度は、吸入容積が小さい分だけ第1圧縮室よりも速く、第2圧縮室へのインジェクション量を多くするには、第1圧縮室へのインジェクションを制限する必要があり、インジェクション率の低下要因となっていた。
【0017】
本発明は、インジェクションサイクル本来の効果を最大化し得るために、より高いインジェクション率での運転にも高効率に対応でき、能力向上量についても拡大できる非対称スクロール圧縮機を提供する。
【0018】
本発明の非対称スクロール圧縮機は、鏡板から渦巻き状のラップが立ち上がる固定スクロール及び旋回スクロールを備え、固定スクロールのラップと旋回スクロールのラップとを噛み合わせて、固定スクロールと旋回スクロールとの間に圧縮室を形成する。また、圧縮室として、旋回スクロールのラップ外壁側に形成される第1圧縮室と、旋回スクロールのラップ内壁側に形成される第2圧縮室とが形成される。また、第1圧縮室の吸入容積が第2圧縮室の吸入容積よりも大きい非対称スクロール圧縮機において、第1圧縮室及び第2圧縮室に中間圧の冷媒をインジェクションする、少なくとも1つのインジェクションポートを、吸入冷媒の閉じ込み後の圧縮行程中にある第1圧縮室又は第2圧縮室に開口する位置に、固定スクロールの鏡板を貫通して設ける。さらに、インジェクションポートから第2圧縮室にインジェクションする冷媒量よりも、インジェクションポートから第1圧縮室にインジェクションする冷媒量を多くする。
【0019】
このように、容積の大きい第1圧縮室に対して多くのインジェクションを行うことで、インジェクション率を高め、インジェクションサイクル効果を最大化して、従来以上の効率向上と能力拡大効果を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本発明の第1の実施の形態による非対称スクロール圧縮機を備えた冷凍サイクル図である。
図2図2は、本発明の第1の実施の形態による非対称スクロール圧縮機の縦断面図である。
図3図3は、図2の要部拡大図である。
図4図4は、図3の4−4線矢視図である。
図5図5は、図4の5−5線矢視図である。
図6図6は、図3の6−6線矢視図である。
図7図7は、インジェクション運転を伴わない場合の非対称スクロール圧縮機における圧縮室の内圧と吐出開始位置の関係図である。
図8図8は、本発明の第1の実施の形態による非対称スクロール圧縮機の旋回運動に伴う給油経路とシール部材との位置関係を示す説明図である。
図9図9は、本発明の第1の実施の形態による非対称スクロール圧縮機の旋回運動に伴う給油経路およびインジェクションポートの開口状態を示す説明図である。
図10図10は、本発明の第1の実施の形態による非対称スクロール圧縮機における圧縮室の内圧と開口区間及び給油区間との関係図である。
図11図11は、本発明の第1の実施の形態による非対称スクロール圧縮機における圧縮室の内圧と吐出開始位置の関係図である。
図12図12は、本発明の第2の実施の形態による非対称スクロール圧縮機の要部縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第1の実施の形態)
以下本発明の第1の実施の形態による非対称スクロール圧縮機について説明する。なお、以下の実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0022】
図1は本実施の形態による非対象スクロール圧縮機を備えた冷凍サイクル図である。
【0023】
図1に示すように、本実施の形態による非対象スクロール圧縮機を備えた冷凍サイクル装置は、圧縮機91、凝縮器92、蒸発器93、膨張弁94a、94b、インジェクション管95、気液分離器96を構成要素としている。
【0024】
凝縮器92で凝縮した作動流体である冷媒は上流側の膨張弁94aで中間圧まで減圧され、気液分離器96は、中間圧の冷媒の気相成分(ガス冷媒)と液相成分(液冷媒)を分離する。中間圧まで減圧された液冷媒は、更に下流側の膨張弁94bを通り、低圧冷媒となって蒸発器93に導かれる。
【0025】
蒸発器93に送り込まれた液冷媒は、熱交換によって蒸発し、ガス冷媒又は一部液冷媒が混じったガス冷媒として排出される。蒸発器93から排出された冷媒は圧縮機91の圧縮室に取り込まれる。
【0026】
一方、気液分離器96で分離された中間圧状態のガス冷媒は、インジェクション管95を通り、圧縮機91内の圧縮室に導かれる。インジェクション管95に閉塞弁や膨張弁を設け、インジェクションする圧力を調整、停止する機構としても良い。
【0027】
圧縮機91は蒸発器93から流入する低圧冷媒を圧縮し、圧縮過程において気液分離器96の中間圧の冷媒を圧縮室に噴射(インジェクション)させて圧縮し、高温高圧冷媒を吐出管から凝縮器92に送り出す。
【0028】
気液分離器96で分離される気相成分と液相成分の比率は、上流側に設けた膨張弁94aの入口側圧力と出口側圧力との圧力差が大きいほど気相成分が多く、また凝縮器92出口の冷媒の過冷却度が小さい、もしくは渇き度が大きいほど気相成分が多くなる。
【0029】
一方、圧縮機91がインジェクション管95を介して吸入する冷媒の量は、中間圧が高いほど多くなるため、気液分離器96で分離される冷媒の気相成分比率よりも多くインジェクション管95から冷媒を吸い込むと、気液分離器96のガス冷媒が枯渇し、インジェクション管95に液冷媒が流入する。圧縮機91の能力を最大限に発揮するためには、気液分離器96において分離されるガス冷媒が余すことなくインジェクション管95から圧縮機91に吸い込まれることが望ましい。しかし、その均衡状態から外れてしまうとインジェクション管95から圧縮機91に液冷媒が流入するため、そのような場合においても圧縮機91が高い信頼性を維持できるよう構成する必要がある。
【0030】
図2は、本実施の形態による非対称スクロール圧縮機の縦断面図である。図3は、図2の要部拡大図である。図4は、図3の4−4線矢視図である。図5は、図4の5−5線矢視図である。
【0031】
図2に示すように、圧縮機91は、密閉容器1の内部に、圧縮機構2、モータ部3、貯油部20を備えている。
【0032】
圧縮機構2は、密閉容器1に溶接や焼き嵌めによって固定した主軸受部材11と、主軸受部材11上にボルト止めした固定スクロール(圧縮室区画部材)12と、固定スクロール12と噛み合う旋回スクロール13とを有する。シャフト4は主軸受部材11で軸支されている。
【0033】
旋回スクロール13と主軸受部材11との間には、旋回スクロール13の自転を防止して円軌道運動するように案内するオルダムリングなどによる自転拘束機構14を設けている。
【0034】
旋回スクロール13は、シャフト4の上端にある偏心軸部4aにて偏心駆動し、自転拘束機構14によって円軌道運動する。
【0035】
圧縮室15は、固定スクロール12と旋回スクロール13との間に形成される。
【0036】
吸入パイプ16は密閉容器1外に通じ、固定スクロール12の外周部には吸入ポート17を設けている。吸入パイプ16から吸入される作動流体(冷媒)は、吸入ポート17から圧縮室15に導かれる。圧縮室15は、外周側から中央部に向かって容積を縮めながら移動し、圧縮室15で所定の圧力に到達した作動流体は、固定スクロール12の中央部に設けた吐出ポート18から吐出室31に吐出される。吐出ポート18には吐出リード弁19を設けている。圧縮室15で所定の圧力に到達した作動流体は、吐出リード弁19を押し開いて吐出室31に吐出される。吐出室31に吐出された作動流体は、密閉容器1の外に吐出される。
【0037】
一方、インジェクション管95から導かれた中間圧の作動流体は、中間圧室41に流入し、インジェクションポート43に設けた逆止弁42を開き、閉じ込み後の圧縮室15にインジェクションされ、吸入ポート17から吸い込んだ作動流体と共に吐出ポート18から密閉容器1内に吐出される。
【0038】
シャフト4の下端にはポンプ25を設けている。ポンプ25は、その吸い込み口が貯油部20内に存在するように配置する。ポンプ25は、シャフト4によって駆動され、密閉容器1の底部に設けられた貯油部20にあるオイル6を、圧力条件や運転速度に関係なく、確実に吸い上げることができ、オイル6切れの心配も解消される。ポンプ25で吸い上げたオイル6は、シャフト4内に形成しているオイル供給穴26を通じて圧縮機構2に供給される。なお、オイル6をポンプ25で吸い上げる前もしくは吸い上げた後に、オイルフィルタ等でオイル6から異物を除去すると、圧縮機構2への異物混入が防止でき、更なる信頼性向上を図ることができる。
【0039】
圧縮機構2に導かれたオイル6の圧力は、スクロール圧縮機の吐出圧とほぼ同等であり、旋回スクロール13に対する背圧源ともなる。これにより、旋回スクロール13は固定スクロール12から離れたり片当たりしたりすることはなく、所定の圧縮機能を安定して発揮する。
【0040】
図3に示すように、旋回スクロール13の鏡板の背面13eにはシール部材78を配置している。
【0041】
シール部材78の内側には高圧領域30が形成され、シール部材78の外側には背圧室29が形成される。背圧室29は、高圧と低圧との間の圧力に設定されている。シール部材78を用いることにより、高圧領域30と背圧室29とを分離できるため、旋回スクロール13の背面13eからの圧力付加を安定的に制御できる。
【0042】
貯油部20からの給油経路として、高圧領域30から背圧室29への接続路55と、背圧室29から第2圧縮室15b(図6参照)への供給路56とを有する。高圧領域30から背圧室29への接続路55を設けることで、自転拘束機構14の摺動部や、固定スクロール12と旋回スクロール13のスラスト摺動部にオイル6を供給することができる。
【0043】
接続路55の第1開口端55aは旋回スクロール13の背面13eに形成し、シール部材78の内側と外側を往来させ、第2開口端55bは常に高圧領域30に開口している。これにより間欠給油が実現できる。
【0044】
オイル6の一部は、供給圧や自重によって、逃げ場を求めるようにして偏心軸部4aと旋回スクロール13との嵌合部、シャフト4と主軸受部材11との間の軸受部66に進入してそれぞれの部分を潤滑した後落下し、貯油部20へ戻る。
【0045】
本実施の形態による非対称スクロール圧縮機では、圧縮室15への給油経路が、旋回スクロール13の内部に形成された通路13aと、固定スクロール12のラップ面側鏡板に形成された凹部12aから構成されている。通路13aの第3開口端56aはラップ先端13cに形成し、旋回運動にあわせて周期的に凹部12aに開口させ、また通路13aの第4開口端56bは常に背圧室29に開口させている。これにより、背圧室29と第2圧縮室15bを間欠的に連通させることができる。
【0046】
中間圧の冷媒をインジェクションするためのインジェクションポート43は、固定スクロール12の鏡板を貫通して設けている。インジェクションポート43は、第1圧縮室15a(図6参照)及び第2圧縮室15bに順次開口する。インジェクションポート43は、第1圧縮室15a及び第2圧縮室15bでの閉じ込み後の圧縮工程中に開口する位置に設けている。
【0047】
固定スクロール12の鏡板には、吐出ポート18と連通する前に圧縮室15で圧縮した冷媒を吐出する吐出バイパスポート21を設けている。
【0048】
図3図4に示すように、本実施の形態による圧縮機91は、インジェクション管95から送り込まれ、圧縮室15にインジェクションする前の中間圧作動流体を導く中間圧室41を設けている。
【0049】
中間圧室41は、圧縮室区画部材である固定スクロール12と、中間圧プレート44と、中間圧カバー45とで形成している。中間圧室41と圧縮室15とは、固定スクロール12を挟んで対向させている。中間圧室41は、中間圧作動流体が流入する中間圧室入口41aと、中間圧作動流体を圧縮室15にインジェクションするインジェクションポート43のインジェクションポート入口43aと、中間圧室入口41aより低い位置に形成した液溜め部41bとを有している。
【0050】
液溜め部41bは固定スクロール12の鏡板の上面で形成している。
【0051】
中間圧プレート44には、圧縮室15から中間圧室41への冷媒逆流を防止する逆止弁42が設けられている。インジェクションポート43が圧縮室15に開口している区間において、圧縮室15の内圧がインジェクションポート43の中間圧よりも高い場合には、圧縮室15から中間圧室41に向けて冷媒が逆流するため、逆止弁42を設けることにより冷媒の逆流を阻止できる。
【0052】
本実施の形態による圧縮機91では、逆止弁42は圧縮室15側にリフトして圧縮室15と中間圧室41を連通させるリード弁42aで構成しており、圧縮室15の内圧が中間圧室41の圧力よりも低い時にのみ中間圧室41を圧縮室15に連通させる。リード弁42aを用いることで、可動部における摺動箇所が少なく、長期に亘りシール性を維持できるとともに、流路面積を必要に応じて拡大し易い。逆止弁42を設けなかったり、逆止弁42をインジェクション管95に設けたりした場合は、圧縮室15の冷媒がインジェクション管95まで逆流し、無駄な圧縮動力を消費することになる。本実施の形態では逆止弁42を圧縮室15に近い中間圧プレート44に設けることで圧縮室15からの逆流を抑制している。
【0053】
固定スクロール12の鏡板の上面は、中間圧室入口41aよりも低い位置にあり、固定スクロール12の鏡板の上面に、液相成分の作動流体が溜まる液溜め部41bを設けている。また、インジェクションポート入口43aは、中間圧室入口41aの高さよりも高い位置に設けている。従って、中間圧作動流体の内、気相成分の作動流体はインジェクションポート43に導かれ、液溜め部41bに溜まった液相成分の作動流体は、高温状態にある固定スクロール12の表面で気化されるため、圧縮室15には液相成分の作動流体が流入しにくい。
【0054】
さらに、中間圧室41と吐出室31とは中間圧プレート44を介して隣接する位置に設けており、中間圧室41に液相成分の作動流体が流入した際の気化を促進するとともに、吐出室31の高圧冷媒の温度上昇も抑制できるため、その分だけ高い吐出圧条件まで運転を行うことができる。
【0055】
インジェクションポート43に導かれた中間圧作動流体は、インジェクションポート43と圧縮室15との圧力差によりリード弁42aを押し開き、吸入ポート17から吸い込んだ低圧作動流体と圧縮室15で合流するが、逆止弁42から圧縮室15までの間のインジェクションポート43に残る中間圧作動流体は、再膨張と再圧縮を繰り返すため、圧縮機91の効率を低下させる要因となる。そこで、リード弁42aの最大変位量を規制するバルブストップ42b(図5参照)の厚みを、リード弁42aのリフト規制箇所に応じて変化させ、リード弁42aより下流のインジェクションポート43内体積を小さく構成している。
【0056】
また、リード弁42aおよびバルブストップ42bはボルトからなる固定部材46により中間圧プレート44に固定されており、バルブストップ42bに設けた固定部材46の固定用孔は、バルブストップ42bを貫通することなく固定部材46の挿入側にのみ開口しているため、結果として、固定部材46は中間圧室41にのみ開放するように構成している。これにより、固定部材46の隙間を介して中間圧室41と圧縮室15との間で作動流体が漏れるのを抑制でき、インジェクション率を向上させることができる。
【0057】
中間圧室41は、圧縮室15へのインジェクション量を十分に供給可能とするために圧縮室15の吸入容積以上とする。ここで吸入容積とは、吸入ポート17から導いた作動流体を圧縮室15に閉じ込んだ時点、すなわち吸入工程完了時点での圧縮室15の容積であり、第1圧縮室15aと第2圧縮室15bとの合計容積である。本実施の形態の圧縮機91では、中間圧室41を固定スクロール12の鏡板の平面上に広がるように設け、容積を拡大している。しかしながら、圧縮機91に封入されたオイル6の一部が吐出冷媒と共に圧縮機91から出ていき、気液分離器96からインジェクション管95を通って中間圧室41に戻った場合に、液溜め部41bに残るオイル6が多すぎると貯油部20のオイル6が不足してしまう問題を生じるため、中間圧室41の容積が大きすぎるのも適切でない。このことから、中間圧室41の容積は、圧縮室15の吸入容積以上で、封入されるオイル6のオイル容積の1/2以下とすることが好ましい。
【0058】
図6は、図3の6−6線矢視図である。
【0059】
図6は固定スクロール12に旋回スクロール13を噛み合わせ、旋回スクロール13の背面13e(図3参照)側から見た図である。図6に示すように固定スクロール12と旋回スクロール13を噛み合わせた状態で、固定スクロール12の渦巻きラップを旋回スクロール13の渦巻きラップと同等まで延長している。
【0060】
固定スクロール12と旋回スクロール13により形成される圧縮室15には、旋回スクロール13のラップ外壁側に形成される第1圧縮室15aと、ラップ内壁側に形成される第2圧縮室15bとがある。
【0061】
第1圧縮室15aの作動流体を閉じ込める位置と第2圧縮室15bの作動流体を閉じ込める位置とは、略180度ずれるように渦巻きラップを構成している。
【0062】
作動流体を閉じ込めるタイミングが第1圧縮室15aと第2圧縮室15bとで180度程度ずれることで、第1圧縮室15aを閉じ込めた後、シャフト4の回転が180度進んでから第2圧縮室15bを閉じ込めることになる。これにより、第1圧縮室15aにおいて吸入加熱の影響を小さくすることができ、さらに吸入容積を最大にすることができる。すなわちラップ高さを低く設定でき、その結果ラップの径方向接点部の漏れ隙間(=漏れ断面積)を縮小することができるので、漏れ損失の更なる低減が可能となる。
【0063】
図7は、インジェクション運転を伴わない場合の非対称スクロール圧縮機における圧縮室の内圧と吐出開始位置の関係図である。
【0064】
図7には、クランクの回転角度であるクランク角度に対する第1圧縮室15aの圧力変化を示す圧力曲線Pと、第2圧縮室15bの圧力変化を示す圧力曲線Qと、圧力曲線Qを180度スライドさせて圧力曲線Pと圧縮開始点を揃えた圧力曲線Qaを示している。第1圧縮室15aの吸入容積は、第2圧縮室15bの吸入容積より大きい。このことにより、インジェクション運転を行わない場合には、図7の圧力曲線Pと圧力曲線Qaの比較で明らかなように、第2圧縮室15bの圧力上昇速度は第1圧縮室15aの圧力上昇速度より速い。
【0065】
圧縮開始位置からのシャフト4の回転角で言えば、第2圧縮室15bの方が早期に吐出圧に到達する。圧縮室15が吐出ポート18(図3参照)や吐出バイパスポート21(図3参照)と連通して冷媒が吐出可能となる圧縮室15の吐出容積に対する圧縮室15の吸入容積の比で定義する容積比は、吸入容積が小さい第2圧縮室15bの方が同等か小さくなる。しかし、本実施の形態によるスクロール圧縮機では、後述するインジェクション冷媒の効果により第1圧縮室15aの方が早期に吐出圧に到達するため、この容積比に関しても第1圧縮室15aを第2圧縮室15bに対して小さくしている。これにより、圧縮室15の内圧が吐出圧以上まで圧縮されたにも関わらず、吐出ポート18もしくは吐出バイパスポート21と連通していないがために吐出圧以上にまで圧縮される課題を解決している。
【0066】
また、旋回スクロール13のラップ先端13c(図3参照)には、運転中の温度分布を測定した結果をもとに、中心部である巻き始め部から外周部である巻き終わり部にかけて、徐々にハネ高さが高くなるようにスロープ形状が設けられている。これにより熱膨張による寸法変化を吸収し、局所摺動を防止し易くしている。
【0067】
図8は、本実施の形態による非対称スクロール圧縮機の旋回運動に伴う給油経路とシール部材との位置関係を示す説明図である。
【0068】
図8は固定スクロール12に旋回スクロール13を噛み合わせ、旋回スクロール13の背面13e側から見た図であり、位相を90度ずつずらした図である。
【0069】
接続路55の第1開口端55aは旋回スクロール13の背面13eに形成している。
【0070】
図8に示すように、シール部材78で旋回スクロール13の背面13eは内側の高圧領域30と外側の背圧室29に仕切られている。
【0071】
図8の(B)の状態では、第1開口端55aはシール部材78の外側である背圧室29に開口しているため、オイル6が供給される。
【0072】
これに対し図8の(A)、(C)、(D)では、第1開口端55aはシール部材78の内側に開口しているため、オイルが供給されることはない。
【0073】
すなわち接続路55の第1開口端55aは、高圧領域30と背圧室29とを往来するが、接続路55の第1開口端55aと第2開口端55b(図3参照)の間で圧力差が生じたときのみ背圧室29にオイル6が供給される。この構成にすると、給油量は第1開口端55aがシール部材78を往来する時間割合で調整できるため、接続路55(図3参照)の通路径をオイルフィルタに対し10倍以上の寸法で構成することが可能となる。これにより、通路13a(図3参照)に異物が噛み込んで閉塞する恐れがなくなるため、安定した背圧の印加と同時にスラスト摺動部及び自転拘束機構14(図3参照)の潤滑も良好な状態を維持でき、高効率かつ高信頼性を実現するスクロール圧縮機を提供することができる。なお本実施の形態では、第2開口端55bが常に高圧領域30にあり、第1開口端55aが高圧領域30と背圧室29を往来する場合を例として説明したが、第2開口端55bが高圧領域30と背圧室29を往来し、第1開口端55aが常に背圧室29にある場合でも、第1開口端55aと第2開口端55bとの間で圧力差が生じるため、間欠給油が実現でき同様の効果が得られる。
【0074】
図9は、本実施の形態による非対称スクロール圧縮機の旋回運動に伴う給油経路およびインジェクションポートの開口状態を示す説明図である。
【0075】
図9は、固定スクロール12に旋回スクロール13を噛み合わせた状態であり、位相を90度ずつずらした図である。
【0076】
図9に示すように、ラップ先端13c(図3参照)に形成された、通路13aの第3開口端56aを、固定スクロール12の鏡板に形成された凹部12aに周期的に開口させることで、間欠連通を実現させている。
【0077】
図9の(D)の状態で第3開口端56aは凹部12aに開口しており、この状態では、供給路56(図3参照)及び通路13aを通って背圧室29(図3参照)から第2圧縮室15bにオイル6が供給される。このように、第3開口端56aによって給油経路は、吸入冷媒の閉じ込み後の圧縮行程中にある第2圧縮室15bに開口する位置に設けている。
【0078】
これに対し図9の(A)、(B)、(C)では、第3開口端56aは凹部12aに開口していないため、背圧室29から第2圧縮室15bにオイル6は供給されない。以上のことから、背圧室29のオイル6は、給油経路を通って第2圧縮室15bに間欠的に導かれるので、背圧室29の圧力変動を抑制することができ、所定の圧力に制御することが可能となる。また同時に、第2圧縮室15bに供給されたオイル6は圧縮時のシール性向上や潤滑性向上の役割を果たす。
【0079】
第1圧縮室15aの閉じ込み時点を示す図9の(A)では、インジェクションポート43は第1圧縮室15aに開口しておらず、圧縮が開始された後の状態を示す図9(B)、(C)では、第1圧縮室15aに対してインジェクションポート43が開口している。
【0080】
同様に、第2圧縮室15bの閉じ込み時点を示す図9の(C)では、インジェクションポート43は第2圧縮室15bに対して開口しておらず、圧縮が進んだ状態を示す図9の(A)の状態においてインジェクションポート43は第2圧縮室15bに対して開口する。
【0081】
これにより、インジェクションポート43を省スペース化すると共に、インジェクション冷媒が吸入ポート17まで逆流することなく圧縮できるため、冷媒循環量を増加し易く、高効率なインジェクション運転が可能となる。
【0082】
このように、インジェクションポート43は、第1圧縮室15aと第2圧縮室15bに順次開口する位置に設けている。また、インジェクションポート43は、図9の(B)および(C)に示すように吸入冷媒の閉じ込み後の圧縮行程中にある第1圧縮室15a又は図9の(A)に示すように吸入冷媒の閉じ込み後の圧縮行程中にある第2圧縮室15bに開口する位置に、固定スクロール12の鏡板を貫通して設けている。
【0083】
インジェクションポート43が第1圧縮室15aに開口する開口区間は、インジェクションポート43が第2圧縮室15bに開口する開口区間より長くしており、インジェクションポート43から第2圧縮室15bにインジェクションする冷媒量よりも、インジェクションポート43から第1圧縮室15aにインジェクションする冷媒量を多くしている。これは、図7でも示したように、インジェクションを行わない状態においても第1圧縮室15aは第2圧縮室15bに比べて内圧の上昇速度が遅い。そのため、高インジェクション率を実現するために第1圧縮室15aの内圧の上昇速度を高めている。なお、吸入容積の大きい第1圧縮室15aは、吸入容積の小さい第2圧縮室15bに対して同じインジェクション冷媒量をインジェクションしても内圧の上昇速度は第1圧縮室15aの方が小さい。
【0084】
図10は、本実施の形態による非対称スクロール圧縮機における圧縮室の内圧と開口区間及び給油区間との関係図である。
【0085】
図10には、クランクの回転角度であるクランク角度に対する第1圧縮室15aのインジェクション無しでの圧力変化を示す圧力曲線Pと、第2圧縮室15bのインジェクション無しでの圧力変化を示す圧力曲線Qを示している。また、図10には、クランクの回転角度であるクランク角度に対する第1圧縮室15aのインジェクション有りでの圧力変化を示す圧力曲線Rと、第2圧縮室15bのインジェクション有りでの圧力変化を示す圧力曲線Sを示している。
【0086】
図10に示すように、第2圧縮室15bへのインジェクションポート43の連通区間Eと、背圧室29から第2圧縮室15bへの給油区間Fの少なくとも一部の区間とを重複させている。給油区間Fが連通区間Eと重複する重複区間は、給油区間Fの後半の一部の区間とし、給油区間Fの後半にインジェクションポート43が開口して連通区間Eが開始する。
【0087】
図9では、図9の(C)から(D)にかけて第2圧縮室15bへの給油区間Fが開始し、それに遅れて図9の(D)から(A)にかけてインジェクションポート43が第2圧縮室15bに開口して連通する間に重複区間がある。本実施の形態では、給油区間Fは第3開口端56aの凹部12aへの開口に等しい。背圧室29の圧力は、この給油区間Fの終了時の圧縮室15の内圧に依存し、給油区間Fの途中からインジェクション冷媒を圧縮室15に送り込むことで、インジェクション運転時にのみ背圧室29の圧力を上昇させて、旋回スクロール13の挙動の不安定化を抑制することを可能としている。また、インジェクションポート43の第2圧縮室15bへの開口開始を給油区間Fの前半まで早めない理由は以下の通りである。すなわち、給油区間Fの早期からインジェクション冷媒により第2圧縮室15bの内圧が上昇し過ぎると、背圧室29から第2圧縮室15bへ十分に給油される前に第2圧縮室15bの内圧と背圧室29の圧力が等しくなり、給油不足になって圧縮機91の信頼性に課題を生じさせる可能性が高まる。以上は、第2圧縮室15bへの給油とインジェクションについて説明したが、第1圧縮室15aについても同様の作用となる。
【0088】
圧縮室15への給油区間の少なくとも一部を、インジェクションポート43の開口区間と重複するよう構成することで、背面13eから旋回スクロール13への圧力付加は、インジェクション冷媒の中間圧が上昇するのに応じて、給油区間中の圧縮室15の内圧と共に大きくなる。そのため、旋回スクロール13は固定スクロール12に対してより安定的に押し付けられ、背圧室29から圧縮室15への漏れを低減するとともに、安定した運転を行うことができる。これにより、旋回スクロール13の挙動はより安定的に、最適性能を実現し、インジェクション率を更に向上させることができる。
【0089】
なお、本実施の形態では、図10に示すようにインジェクションポート43が第1圧縮室15aに開口する連通区間Gが、インジェクションポート43が第2圧縮室15bに開口する連通区間Eより長い場合を示した。但し、この構成とともに、又はこの構成に代えて、インジェクションポート43の第1圧縮室15aへの開口時におけるインジェクションポート43内の中間圧と第1圧縮室15aの内圧との圧力差が、インジェクションポート43の第2圧縮室15bへの開口時におけるインジェクションポート43内の中間圧と第2圧縮室15bの内圧との圧力差より大きくすることが好ましい。容積が大きく圧力上昇速度が緩やかな第1圧縮室15aへのインジェクション量を確実に多くすることができ、効率的なインジェクション冷媒量の分配が可能となる。
【0090】
図11は、本実施の形態による非対称スクロール圧縮機における圧縮室の内圧と吐出開始位置の関係図である。
【0091】
図11には、クランクの回転角度であるクランク角度に対する第1圧縮室15aのインジェクション無しでの圧力変化を示す圧力曲線Pと、第2圧縮室15bのインジェクション無しでの圧力変化を示す圧力曲線Qを示している。また、図11には、クランクの回転角度であるクランク角度に対する第1圧縮室15aのインジェクション有りでの圧力変化を示す圧力曲線Rと、第2圧縮室15bのインジェクション有りでの圧力変化を示す圧力曲線Sを示している。さらに、圧力曲線Sを180度スライドさせて圧力曲線Rと圧縮開始点を揃えた圧力曲線Saを示している。
【0092】
図7ではインジェクションを行わない場合の吸入容積の違いによる圧縮速度の違いについて説明し、従来の圧縮室では第2圧縮室15bの方が圧縮開始から短い圧縮区間で吐出圧に到達することを述べた。このことから従来の圧縮機では第2圧縮室15bの方が圧縮開始を基準として早期に開口する位置に吐出バイパスポート21を設けるのが望ましかった。しかしながら、本実施の形態においては、第1圧縮室15aに対するインジェクション冷媒量を多くすることから、特に高いインジェクション率を伴う運転時には、第1圧縮室15aの圧力上昇速度は第2圧縮室15bの圧力上昇速度よりも速くなる。
【0093】
図11では、インジェクション有りの場合の第2圧縮室15bの圧力曲線Sを図7の場合と同様に圧縮開始点を合わせるためにスライドした圧力曲線Saを示している。
【0094】
インジェクション有りの第1圧縮室15aの圧力曲線Rが吐出圧に到達する吐出開始位置は、インジェクション有りの第2圧縮室15bの圧力曲線Saの吐出開始位置よりも早まる。つまり、インジェクション冷媒の効果により図7の時とは逆の構成が必要となる。図11において、インジェクション無しの場合の第1圧縮室の吐出開始位置Xの容積比に合わせて吐出バイパスポート21を設けた場合、インジェクション有りの第1圧縮室15aでは、吐出開始位置Yに圧到達後にも圧縮が続き、吐出開始位置Xまでの間にBおよびAの面積に相当する圧縮動力が余分に必要となる。そして、第1圧縮室15aの吐出バイパスポート21の吐出開始位置を圧力曲線Sの吐出開始位置(図中では圧縮開始点を合わせた圧力曲線Saの吐出開始位置Z)と同等の位置まで早めたとしても、まだBの面積に相当する圧縮動力を必要とし、高いインジェクション率による消費電力削減効果を打ち消してしまうことになる。そこで、本実施の形態では、インジェクション量の多い第1圧縮室15aに対しては、第2圧縮室15bよりも更に早いタイミングで吐出可能とし得る位置に吐出バイパスポート21を設けている。
【0095】
このように、固定スクロール12の鏡板の中心部に、圧縮室15で圧縮した冷媒を吐出する吐出ポート18を備え、第1圧縮室15aが吐出ポート18と連通する前に圧縮室15で圧縮した冷媒を吐出する吐出バイパスポート21を設ける。さらに、圧縮室15の冷媒が吐出可能となる圧縮室15の吐出容積に対する吸入容積の比である容積比を、第2圧縮室15bよりも第1圧縮室15aを小さくしたことで、最大インジェクション状態においても第1圧縮室15aの過剰な圧力上昇を抑制することができる。
【0096】
(第2の実施の形態)
図12は、本発明の第2の実施の形態による非対称スクロール圧縮機の要部縦断面図である。
【0097】
本実施の形態では、第1圧縮室15aのみに開口する第1インジェクションポート48aと第2圧縮室15bのみに開口する第2インジェクションポート48bとを備えている。第1インジェクションポート48aには第1逆止弁47aを設け、第2インジェクションポート48bには第2逆止弁47bを設けている。その他の構成は、第1の実施の形態と同一であるため、同一符号を付して説明を省略する。
【0098】
本実施の形態では、第1インジェクションポート48aのポート径を第2インジェクションポート48bよりも大きくすることで、第1インジェクションポート48aから第1圧縮室15aにインジェクションする冷媒量を、第2インジェクションポート48bから第2圧縮室15bにインジェクションする冷媒量よりも多くしている。
【0099】
このように、第1圧縮室15aのみに開口する第1インジェクションポート48aと第2圧縮室15bのみに開口する第2インジェクションポート48bとを設けることで、第1圧縮室15aと第2圧縮室15bへのインジェクション量を個別に調整することが可能になる。加えて、第1圧縮室15aと第2圧縮室15bに対して常にインジェクションさせ、又は第1圧縮室15aと第2圧縮室15bに対して同時にインジェクションさせることも可能となる。そして、冷凍サイクルの圧力差が大きい条件下において、高いインジェクション率を実現するのに有効となる。さらに、背圧室29からの給油区間の設定の自由度が高まるため、前述の背圧室29からの圧力調整機能を有効に活用でき、旋回スクロール13の背面13eからの圧力付加を安定的に制御できる。
【0100】
なお、本実施の形態では、第1インジェクションポート48aが、第2インジェクションポート48bよりもポート径が大きい場合を示した。この構成とともに、又はこの構成に代えて、第1インジェクションポート48aが第1圧縮室15aに開口する連通区間が、第2インジェクションポート48bが第2圧縮室15bに開口する開口区間より長くしてもよい。さらには、第1インジェクションポート48aの第1圧縮室15aへの開口時における第1インジェクションポート48a内の中間圧と第1圧縮室15aの内圧との圧力差が、第2インジェクションポート48bの第2圧縮室15bへの開口時における第2インジェクションポート48b内の中間圧と第2圧縮室15bの内圧との圧力差より大きくすることもできる。
【0101】
また、本実施の形態では、第1圧縮室15aと第2圧縮室15bにのみそれぞれ開口する第1インジェクションポート48aと第2インジェクションポート48bについて説明した。しかし、その構成に限られるものではなく、第1圧縮室15aと第2圧縮室15b双方に開口するインジェクションポートと、第1圧縮室15aと第2圧縮室15bにのみそれぞれ開口する第1インジェクションポート48aと第2インジェクションポート48bとを組み合わせて、第1圧縮室15aへのインジェクション量を第2圧縮室15bへのインジェクション量よりも多くしてもよい。
【0102】
作動流体である冷媒として、吐出冷媒の温度が高温となり易いR32や二酸化炭素を用いた場合には、吐出冷媒温度の上昇を抑制できる効果が発揮され、モータ部3の絶縁材など樹脂材料の劣化を抑え、長期に亘って信頼性の高い圧縮機を提供可能となる。
【0103】
一方、炭素間に二重結合を有する冷媒、又はその冷媒を含むGWP500以下(GWP:Global Warming Potential(地球温暖化係数))の冷媒を用いた場合には、高温時に冷媒分解反応を生じ易いため、吐出冷媒温度の上昇を抑制する効果により、冷媒の長期安定性に効果を発揮する。
【0104】
第1の開示による非対称スクロール圧縮機は、第1圧縮室及び第2圧縮室に中間圧の冷媒をインジェクションする、少なくとも1つのインジェクションポートを、吸入冷媒の閉じ込み後の圧縮行程中にある第1圧縮室又は第2圧縮室に開口する位置に、固定スクロールの鏡板を貫通して設ける。さらに、インジェクションポートから第2圧縮室にインジェクションする冷媒量よりも、インジェクションポートから第1圧縮室にインジェクションする冷媒量を多くする。
【0105】
この構成により、容積の大きい第1圧縮室に対して多くのインジェクションを行うことで、インジェクション率を高め、インジェクションサイクル効果を最大化して、従来以上の効率向上と能力拡大効果を得ることが可能となる。
【0106】
第2の開示は、第1の開示による非対称スクロール圧縮機において、インジェクションポートに、圧縮室への冷媒流れを許容し、圧縮室からの冷媒流れを抑止する逆止弁を設ける。
【0107】
この構成によれば、逆止弁と圧縮室を近づけて設けることで、インジェクションポートが圧縮室に開口している区間において圧縮室の内圧が中間圧以上に上昇しても、インジェクション管などの圧縮に無効な空間内の冷媒圧縮を最小限に抑制でき、インジェクションサイクルの理論性能を最大限に発揮可能な条件までインジェクション率を高めることができる。
【0108】
第3の開示は、第1の開示または第2の開示による非対称スクロール圧縮機において、固定スクロールと旋回スクロールを内部に備えた密閉容器に、オイルを溜める貯油部を形成し、旋回スクロールの背面には高圧領域と背圧室とを形成する。また、貯油部から圧縮室にオイルを給油する給油経路は背圧室を経由し、背圧室が第1圧縮室又は第2圧縮室に連通する給油経路は、吸入冷媒の閉じ込み後の圧縮行程中にある第1圧縮室又は第2圧縮室に開口する位置に設ける。さらに、給油経路が第1圧縮室又は第2圧縮室に連通する給油区間の少なくとも一部の区間を、インジェクションポートが第1圧縮室又は第2圧縮室に開口する開口区間と重複させる。
【0109】
圧縮室に中間圧の冷媒をインジェクションした場合、インジェクションを行わなかった場合に比べて圧縮室の内圧上昇が早くなるため、旋回スクロールを固定スクロールから引き離そうとする力が従来以上に大きくなる。第3の開示の構成によれば、旋回スクロールを固定スクロールへ押圧する力は給油経路が連通している圧縮室の内圧に連動する。そのため、中間圧の冷媒が圧縮室にインジェクションされればされるほど、旋回スクロールを固定スクロールに押圧する力も大きくなり、旋回スクロールが固定スクロールから離れることなく安定した運転が可能となる。
【0110】
第4の開示は、第3の開示による非対称スクロール圧縮機において、給油区間が開口区間と重複する重複区間を、給油区間の後半の一部の区間とする。
【0111】
この構成によれば、背圧室の圧力は重複区間の後半の圧縮室の内圧と連動するため、インジェクションが完了した状態もしくはより多くインジェクションされた状態の圧縮室の内圧に応じた背圧室の圧力の設定が可能となる。これにより、インジェクションによる旋回スクロールの引き離し力が大きい条件では背圧室の圧力は高く、安定した旋回運動が可能であり、一方、インジェクション量が少ない条件では背圧室の圧力は低く、固定スクロールへの過剰な押圧力を防止することができる。
【0112】
第5の開示は、第1の開示から第4の開示のいずれかによる非対称スクロール圧縮機において、少なくとも1つのインジェクションポートを、第1圧縮室と第2圧縮室とに順次開口する位置に設ける。
【0113】
この構成によれば、第1および第2圧縮室双方にインジェクションする際にインジェクションポートを共用化できため、小型化や部品点数の削減が図れるだけでなく、インジェクション率を高めてインジェクションサイクル効果を最大限に引き出すことが可能となる。さらに、非対称スクロール圧縮機では一般的に第1圧縮室と第2圧縮室の圧縮開始のタイミングが180度異なるため、一つのインジェクションポートからいずれの圧縮室に対しても圧縮開始直後にインジェクションを行う位置に設けることも可能であり、高いインジェクション率の実現に適している。
【0114】
第6の開示は、第5の開示による非対称スクロール圧縮機において、インジェクションポートが第1圧縮室に開口する開口区間が、インジェクションポートが第2圧縮室に開口する開口区間より長い。あるいはインジェクションポートの第1圧縮室への開口時におけるインジェクションポート内の中間圧と第1圧縮室の内圧との圧力差が、インジェクションポートの第2圧縮室への開口時におけるインジェクションポート内の中間圧と第2圧縮室の内圧との圧力差より大きい。
【0115】
この構成によれば、容積が大きく圧力上昇速度が緩やかな第1圧縮室へのインジェクション量を確実に多くすることができ、効率的なインジェクション冷媒量の分配が可能となる。
【0116】
第7の開示は、第1の開示から第4の開示までのいずれかによる非対称スクロール圧縮機であって、インジェクションポートとして、第1圧縮室のみに開口する第1インジェクションポートと、第2圧縮室のみに開口する第2インジェクションポートとを備える。また、第1インジェクションポートが、第2インジェクションポートよりもポート径が大きい。または、第1インジェクションポートが第1圧縮室に開口する開口区間が、第2インジェクションポートが第2圧縮室に開口する開口区間より長い。あるいは第1インジェクションポートの第1圧縮室への開口時における第1インジェクションポート内の中間圧と第1圧縮室の内圧との圧力差が、第2インジェクションポートの第2圧縮室への開口時における第2インジェクションポート内の中間圧と第2圧縮室の内圧との圧力差より大きい。
【0117】
この構成によれば、容積が大きく圧力上昇速度が緩やかな第1圧縮室へのインジェクション量を確実に多くすることができ、効率的なインジェクション冷媒量の分配が可能となる。
【0118】
第8の開示は、第1の開示から第7の開示のいずれかによる非対称スクロール圧縮機であって、固定スクロールの鏡板の中心部に、圧縮室で圧縮した冷媒を吐出する吐出ポートを備える。また、第1圧縮室が吐出ポートと連通する前に圧縮室で圧縮した冷媒を吐出する吐出バイパスポートを設け、圧縮室の冷媒が吐出可能となる圧縮室の吐出容積に対する吸入容積の比である容積比を、第2圧縮室よりも第1圧縮室を小さくする。
【0119】
一般的なスクロール圧縮機では、第1圧縮室と第2圧縮室で吐出可能となる冷媒の圧縮室容積はほぼ等しく、圧縮開始時の圧縮室容積は吸入容積と等しいため、第1圧縮室と第2圧縮室の容積比を比較すると、吸入容積の大きい第1圧縮室の方が容積比も大きくなる。しかしながら、第1圧縮室に対してより多くのインジェクションを行うことで、第2圧縮室よりも第1圧縮室の圧縮室の内圧の方が、より短い圧縮区間で吐出圧に到達する。圧縮室の内圧が吐出圧に到達しても吐出可能なポートと圧縮室が連通していなければ過剰な圧縮が生じ、余分な圧縮動力が必要となるだけでなく、旋回スクロールを固定スクロールから引き離す力を生じるため、圧縮運動の不安定化を招いてしまう。
【0120】
第8の開示の構成によれば、第2圧縮室よりも第1圧縮室の容積比を小さくしたことで、最大インジェクション状態においても第1圧縮室の過剰な圧力上昇を抑制することができる。
【産業上の利用可能性】
【0121】
本発明の非対称スクロール圧縮機は、蒸発器が低温環境下で使用される温水暖房装置、空気調和装置、給湯器、又は冷凍機などの冷凍サイクル装置に有用である。
【符号の説明】
【0122】
1 密閉容器
2 圧縮機構
3 モータ部
4 シャフト
4a 偏心軸部
6 オイル
11 主軸受部材
12 固定スクロール
12a 凹部
13 旋回スクロール
13c ラップ先端
13e 背面
14 自転拘束機構
15 圧縮室
15a 第1圧縮室
15b 第2圧縮室
16 吸入パイプ
17 吸入ポート
18 吐出ポート
19 吐出リード弁
20 貯油部
21,21a,21b 吐出バイパスポート
25 ポンプ
26 オイル供給穴
29 背圧室
30 高圧領域
31 吐出室
41 中間圧室
41a 中間圧室入口
41b 液溜め部
42 逆止弁
42a リード弁
42b バルブストップ
43 インジェクションポート
43a インジェクションポート入口
44 中間圧プレート
45 中間圧カバー
46 固定部材
47a 第1逆止弁
47b 第2逆止弁
48 インジェクションポート
48a 第1インジェクションポート
48b 第2インジェクションポート
55 接続路
55a 第1開口端
55b 第2開口端
56 供給路
56a 第3開口端
56b 第4開口端
66 軸受部
78 シール部材
91 圧縮機
92 凝縮器
93 蒸発器
94a,94b 膨張弁
95 インジェクション管
96 気液分離器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【国際調査報告】