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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2018年5月31日
【発行日】2019年10月17日
(54)【発明の名称】インジェクション機能を備えた圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04C 18/02 20060101AFI20190920BHJP
   F04C 29/04 20060101ALI20190920BHJP
【FI】
   F04C18/02 311Y
   F04C29/04 M
   F04C18/02 311X
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】22
【出願番号】特願2018-552454(P2018-552454)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2017年10月12日
(31)【優先権主張番号】特願2016-228338(P2016-228338)
(32)【優先日】2016年11月24日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100115554
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 幸一
(72)【発明者】
【氏名】中井 啓晶
(72)【発明者】
【氏名】作田 淳
(72)【発明者】
【氏名】森本 敬
【テーマコード(参考)】
3H039
3H129
【Fターム(参考)】
3H039AA06
3H039AA12
3H039BB01
3H039BB13
3H039BB28
3H039CC02
3H039CC03
3H039CC05
3H039CC29
3H039CC30
3H039CC40
3H039CC48
3H129AA02
3H129AA14
3H129AA32
3H129AB03
3H129BB12
3H129BB42
3H129BB53
3H129CC05
3H129CC13
3H129CC23
3H129CC46
3H129CC64
3H129CC82
3H129CC87
(57)【要約】
圧縮室(15)を、圧縮室区画部材(12)によって形成し、圧縮室(15)にインジェクションする前の中間圧作動流体を導く中間圧室(41)を設け、中間圧室(41)と圧縮室(15)とを、圧縮室区画部材(12)を挟んで対向させる。また、中間圧室(41)は、中間圧作動流体が流入する中間圧室入口(41a)と、中間圧作動流体を圧縮室(15)にインジェクションするインジェクションポート(43)のインジェクションポート入口(43a)と、中間圧室入口(41a)より低い位置に形成した液溜め部(41b)とを有し、液溜め部(41b)を圧縮室区画部材(12)によって形成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
低圧作動流体を吸入し、前記低圧作動流体の圧縮過程にある圧縮室に中間圧作動流体をインジェクションし、高圧作動流体を吐出する、インジェクション機能を備えた圧縮機において、
前記圧縮室を、圧縮室区画部材によって形成し、前記圧縮室にインジェクションする前の前記中間圧作動流体を導く中間圧室を設け、前記中間圧室と前記圧縮室とを、前記圧縮室区画部材を挟んで対向させ、前記中間圧室は、前記中間圧作動流体が流入する中間圧室入口と、前記中間圧作動流体を前記圧縮室にインジェクションするインジェクションポートのインジェクションポート入口と、前記中間圧室入口より低い位置に形成した液溜め部とを有し、前記液溜め部を前記圧縮室区画部材によって形成したことを特徴とするインジェクション機能を備えた圧縮機。
【請求項2】
前記圧縮室を内部に形成する密閉容器には、所定量のオイルが封入され、前記中間圧室の容積を、前記圧縮室の吸入容積以上で、封入される前記オイルによるオイル容積の1/2以下としたことを特徴とする請求項1に記載のインジェクション機能を備えた圧縮機。
【請求項3】
前記インジェクションポート入口を、前記中間圧室入口よりも高い位置に設けたことを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれか1項に記載のインジェクション機能を備えた圧縮機。
【請求項4】
前記圧縮室区画部材には、前記高圧作動流体を前記圧縮室から吐出室に吐出する吐出孔を設け、前記吐出室と前記中間圧室とを隣接させたことを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれか1項に記載のインジェクション機能を備えた圧縮機。
【請求項5】
前記低圧作動流体、前記中間圧作動流体および前記高圧作動流体として、R32又は二酸化炭素を用いたことを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれか1項に記載のインジェクション機能を備えた圧縮機。
【請求項6】
前記低圧作動流体、前記中間圧作動流体および前記高圧作動流体として、炭素間に二重結合を有する冷媒、又は前記冷媒を含むGWP(Global Warming Potential(地球温暖化係数))500以下の冷媒を用いたことを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれか1項に記載のインジェクション機能を備えた圧縮機。
【請求項7】
前記インジェクションポートには、前記圧縮室から前記中間圧室への前記中間圧作動流体の逆流を防止する逆止弁を設けたことを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれか1項に記載のインジェクション機能を備えた圧縮機。
【請求項8】
前記中間圧室を、前記圧縮室区画部材と中間圧室隔壁部材とで形成し、前記逆止弁を、前記中間圧室隔壁部材と前記圧縮室区画部材との境界面に設置したことを特徴とする請求項7に記載のインジェクション機能を備えた圧縮機。
【請求項9】
前記逆止弁を固定する固定部材を、前記中間圧室隔壁部材又は前記圧縮室区画部材に設けたことを特徴とする請求項8に記載のインジェクション機能を備えた圧縮機。
【請求項10】
前記逆止弁としてリード弁を用い、前記インジェクションポートを開閉するように前記リード弁を設置したことを特徴とする請求項7に記載のインジェクション機能を備えた圧縮機。
【請求項11】
前記リード弁の最大変位量を規制するバルブストップを設け、前記バルブストップの厚みを、前記リード弁のリフト規制箇所に応じて異ならせたことを特徴とする請求項10に記載のインジェクション機能を備えた圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に空気調和機、給湯器、冷蔵庫等の冷凍機に用いられる、インジェクション機能を備えた圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
冷凍装置や空気調和装置には、蒸発器で蒸発したガス冷媒を吸入し、凝縮器にて凝縮させるために必要な圧力までガス冷媒を圧縮して冷媒回路中に高温高圧のガス冷媒を送り出す圧縮機が使用されている。そして、インジェクション機能を備えた圧縮機は、凝縮器と蒸発器との間に2つの膨張弁を設け、2つの膨張弁の間を流れる中間圧冷媒を圧縮工程中の圧縮室内にインジェクションすることで、冷凍サイクルの消費電力削減や能力向上を図っている。
【0003】
すなわち、凝縮器を循環する冷媒は、インジェクションされた冷媒量だけ増加し、空調機であれば暖房能力が向上する。また、インジェクションされる冷媒は、中間圧状態であり、圧縮に必要な動力は、中間圧から高圧までであるため、インジェクションを行わずに同じ能力を実現する場合に比べて、COP(Coefficient Of Performance)が向上し、消費電力も削減できる。
【0004】
凝縮器を流れる冷媒量は、蒸発器を流れる冷媒量とインジェクションされる冷媒量との和に等しく、凝縮器の冷媒量に対するインジェクション冷媒量の比がインジェクション率である。
【0005】
インジェクションの効果を大きくするには、インジェクション率を高くすればよい。そして、インジェクションされる冷媒圧と圧縮室の内圧との圧力差で冷媒がインジェクションされるため、インジェクション率を高くするには、インジェクションされる冷媒圧を高くする必要がある。
【0006】
しかし、インジェクションされる冷媒圧を高くすると、液冷媒が圧縮室にインジェクションされてしまい、暖房能力の低下や圧縮機の信頼性低下を招いてしまう。
【0007】
ところで、従来のスクロール圧縮機では、圧縮室内にインジェクションされる冷媒の圧力脈動を抑制するための中間圧室を開示している(例えば、特許文献1参照)。この圧力脈動の発生は、凝縮器を流れる冷媒量に対する圧縮室へ噴射される冷媒の割合(以下、インジェクション率と称す)を低下させるため、特許文献1記載のスクロール圧縮機では、圧力脈動を抑制することでインジェクション率を高めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3745801号公報
【発明の概要】
【0009】
圧縮室にインジェクションする冷媒について、ガス冷媒と液冷媒の生成比率を制御する方法の一つとして2つの膨張弁の制御方法があるが、過不足なくガス冷媒をインジェクションする状態とインジェクション管に液冷媒の一部が混入する状態とは紙一重である。圧縮機の信頼性確保のためにはガスインジェクションもしくは液インジェクションのいずれか一方に限定した設計ではなく、ガス冷媒と液冷媒が混合した状態でインジェクション管から圧縮室へ流入することを想定しなければならない。
【0010】
インジェクション管から圧縮室に流入する冷媒は、気液分離器からガス冷媒を優先的に取り出して送り込まれるが、中間圧制御のバランスが崩れた場合や過渡的な条件変化の際には、ガス冷媒に液冷媒が混ざった状態でインジェクション管から圧縮室へ流入する。摺動部分を多く有する圧縮室には、摺動状態を良好に保つために適量のオイルを送り込んで冷媒とともに圧縮しているが、液冷媒が混入すると圧縮室のオイルが液冷媒によって洗い流されることで、摺動状態が悪化し、部品磨耗や焼き付きを生じさせてしまう。従って、インジェクション管から流入した液冷媒は、極力圧縮室には送り込まず、ガス冷媒だけをインジェクションポートに導くことが重要となる。
【0011】
特許文献1は、ガスインジェクション又は液インジェクションのいずれかを想定した構成であり、ガス冷媒に液冷媒が混入した状態でインジェクション管から冷媒が流入することは想定されておらず、その解決策についての言及もない。
【0012】
本発明は、万一ガスインジェクションされる気相成分の作動流体に液相成分の作動流体が混入しても、中間圧室によって液相成分の作動流体が圧縮室に流れ込むことを抑制し、中間圧室で液冷媒を蒸発させることで、最適な中間圧で高効率に運転しながら、高信頼性を実現できるインジェクション機能を備えた圧縮機を提供する。
【0013】
本発明のインジェクション機能を備えた圧縮機は、低圧作動流体を吸入し、低圧作動流体の圧縮過程にある圧縮室に中間圧作動流体をインジェクションし、高圧作動流体を吐出する、インジェクション機能を備えた圧縮機である。そして、圧縮室を、例えば固定スクロールで構成する圧縮室区画部材によって形成し、圧縮室にインジェクションする前の中間圧作動流体を導く中間圧室を設ける。また、中間圧室と圧縮室とを、圧縮室区画部材を挟んで対向させ、中間圧室は、中間圧作動流体が流入する中間圧室入口と、中間圧作動流体を圧縮室にインジェクションするインジェクションポートのインジェクションポート入口と、中間圧室入口より低い位置に形成した液溜め部とを有する。さらに、液溜め部を圧縮室区画部材によって形成したことを特徴とする。
【0014】
この構成により、中間圧作動流体の一部に液相成分の作動流体が存在していても、液溜め部で蒸発して気相成分の作動流体となるため、液相成分の作動流体を圧縮室にインジェクションすることがなく、最適な中間圧で高効率に運転でき、摺動部の潤滑性が液冷媒により悪化することがないために信頼性の高い圧縮機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の第1の実施の形態によるインジェクション機能を備えた圧縮機を備えた冷凍サイクル図である。
図2図2は、本発明の第1の実施の形態によるインジェクション機能を備えた圧縮機の縦断面図である。
図3図3は、図2の要部拡大図である。
図4図4は、図3の4−4線矢視図である。
図5図5は、図4の5−5線矢視図である。
図6図6は、図3の6−6線矢視図である。
図7図7は、インジェクション運転を伴わない場合のスクロール圧縮機の非対称圧縮室の内圧と吐出開始位置の関係図である。
図8図8は、本発明の第1の実施の形態によるインジェクション機能を備えたスクロール圧縮機の旋回運動に伴う給油経路とシール部材との位置関係を示す説明図である。
図9図9は、本発明の第1の実施の形態によるインジェクション機能を備えたスクロール圧縮機の旋回運動に伴う給油経路およびインジェクションポートの開口状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1の実施の形態)
以下本発明の第1の実施の形態によるインジェクション機能を備えた圧縮機について説明する。なお、以下の実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0017】
図1は本実施の形態によるインジェクション機能を備えた圧縮機を備えた冷凍サイクル図である。
【0018】
図1に示すように、本実施の形態の冷凍サイクル装置は、圧縮機91、凝縮器92、蒸発器93、膨張弁94a、94b、インジェクション管95、および気液分離器96を備えている。
【0019】
凝縮器92で凝縮した作動流体である冷媒は上流側の膨張弁94aで中間圧まで減圧され、気液分離器96は、中間圧冷媒の気相成分(ガス冷媒)と液相成分(液冷媒)を分離する。中間圧まで減圧された液冷媒は、更に下流側の膨張弁94bを通り、低圧冷媒となって蒸発器93に導かれる。
【0020】
蒸発器93に送り込まれた液冷媒は、熱交換によって蒸発し、ガス冷媒又は一部液冷媒が混じったガス冷媒として排出される。蒸発器93から排出された冷媒は圧縮機91の圧縮室に取り込まれる。
【0021】
一方、気液分離器96で分離された中間圧のガス冷媒は、インジェクション管95を通り、圧縮機91内の圧縮室に導かれる。なお、インジェクション管95に閉塞弁や減圧器を設け、インジェクションする圧力を調整、停止する構成としても良い。
【0022】
圧縮機91は蒸発器93から流入する低圧冷媒を圧縮し、圧縮過程において気液分離器96の中間圧冷媒を圧縮室に噴射(インジェクション)させて圧縮し、高温高圧冷媒を吐出管から凝縮器92に送り出す。
【0023】
気液分離器96で分離される冷媒の気相成分と液相成分の比率は、上流側に設けた膨張弁94aの入口側圧力と出口側圧力との圧力差が大きいほど気相成分が多く、また凝縮器92出口の冷媒の過冷却度が小さい、もしくは渇き度が大きいほど気相成分が多くなる。
【0024】
一方、圧縮機91がインジェクション管95を介して吸入する冷媒の量は、中間圧が高いほど多くなるため、気液分離器96で分離される冷媒の気相成分比率よりも多くインジェクション管95から冷媒を吸い込むと、気液分離器96のガス冷媒が枯渇し、インジェクション管95に液冷媒が流入する。圧縮機91の能力を最大限に発揮するためには、気液分離器96において分離されるガス冷媒が余すことなくインジェクション管95から圧縮機91に吸い込まれることが望ましい。しかし、その均衡状態から外れてしまうとインジェクション管95から圧縮機91に液冷媒が流入するため、そのような場合においても圧縮機91が高い信頼性を維持できるように構成する必要がある。
【0025】
気液分離器96の上流側および下流側にそれぞれ設けた膨張弁94a、94bの開度を調整することで、中間圧を制御し、インジェクション管95が最終的に繋がる圧縮機91内の圧縮室の内圧と中間圧との圧力差でインジェクション冷媒を圧縮室に送り込む。このため、中間圧を高く調整すればインジェクション率は増加する。一方で、凝縮器92から上流側の膨張弁94aを通って気液分離器96に流入する冷媒中の気相成分比率は、中間圧が高いほど少なくなるため、過剰に中間圧を上げると気液分離器96の液冷媒が増加し、液冷媒がインジェクション管95に流れ込み、暖房能力の低下や圧縮機91の信頼性に影響を及ぼす。よって、圧縮機91としてはできるだけ低い中間圧で多くのインジェクション冷媒を取り込める構成が望ましく、圧縮方式としては圧縮速度が緩やかなスクロール型が適している。
【0026】
図2は、本実施の形態によるインジェクション機能を備えた圧縮機の縦断面図である。図3図2の要部拡大図である。図4図3の4−4線矢視図である。図5図4の5−5線矢視図である。
【0027】
本実施例によるインジェクション機能を備えた圧縮機91はスクロール圧縮機である。
【0028】
図2に示すように、圧縮機91は、密閉容器1の内部に、圧縮機構2、モータ部3、貯油部20を備えている。
【0029】
圧縮機構2は、密閉容器1に溶接や焼き嵌めによって固定した主軸受部材11と、主軸受部材11上にボルト止めした圧縮室区画部材である固定スクロール12と、固定スクロール12と噛み合う旋回スクロール13とを有する。シャフト4は主軸受部材11で軸支されている。
【0030】
また、圧縮機構2は、旋回スクロール13の自転を防止して円軌道運動するように案内するオルダムリングなどによる自転拘束機構14を設けている。本実施の形態では、自転拘束機構14であるオルダムリングは、旋回スクロール13と主軸受部材11との間に配置している。
【0031】
旋回スクロール13は、シャフト4の上端にある偏心軸部4aに嵌合して偏心駆動し、自転拘束機構14によって円軌道運動する。
【0032】
圧縮室15は、固定スクロール12と旋回スクロール13との間に形成される。
【0033】
吸入パイプ16は密閉容器1外に通じ、固定スクロール12の外周部には吸入ポート17を設けている。吸入パイプ16から吸入される作動流体(冷媒)は、吸入ポート17から圧縮室15に導かれる。圧縮室15は、外周側から中央部に向かって容積を縮めながら移動して吸入された作動流体の圧力を上げる。圧縮室15で所定の圧力に到達した作動流体は、固定スクロール12の中央部に設けた吐出ポート18から吐出室31に吐出される。吐出ポート18には吐出リード弁19を設けている。圧縮室15で所定の圧力に到達した作動流体は、吐出リード弁19を押し開いて吐出室31に吐出される。吐出室31に吐出された作動流体は、図示しない通路を介して密閉容器1の最上部に流れ、吐出管8を通じて密閉容器1の外に吐出される。
【0034】
一方、インジェクション管95から導かれた中間圧の作動流体は、中間圧室41に流入し、インジェクションポート43に設けた逆止弁42を開き、閉じ込み後の圧縮室15にインジェクションされ、吸入ポート17から吸い込んだ作動流体と共に吐出ポート18から密閉容器1内の吐出室31に吐出される。
【0035】
シャフト4の下端にはポンプ25を設けている。ポンプ25は、その吸い込み口が貯油部20内に存在するように配置する。ポンプ25は、シャフト4によって駆動され、密閉容器1の底部に設けられた貯油部20にあるオイル6を、圧力条件や運転速度に関係なく、確実に吸い上げることができ、圧縮機構2などにおけるオイル6が切れるという心配も解消される。ポンプ25で吸い上げたオイル6は、シャフト4内に形成しているオイル供給穴26を通じて圧縮機構2に供給される。なお、オイル6をポンプ25で吸い上げる前もしくは吸い上げた後に、オイルフィルタ等でオイル6から異物を除去すると、圧縮機構2への異物混入が防止でき、更なる信頼性向上を図ることができる。
【0036】
圧縮機構2に導かれたオイル6の圧力は、スクロール圧縮機の吐出圧とほぼ同等であり、旋回スクロール13に対する背圧源ともなる。これにより、旋回スクロール13は固定スクロール12から離れたり片当たりしたりすることはなく、所定の圧縮機能を安定して発揮する。
【0037】
図3に示すように、旋回スクロール13の鏡板の背面13eにはリング状のシール部材78を配置している。
【0038】
シール部材78の内側には高圧領域30が形成され、シール部材78の外側には背圧室29が形成される。背圧室29は、高圧と低圧との間の圧力に設定されている。シール部材78を用いることにより、高圧領域30と背圧室29とを分離できるため、旋回スクロール13の背面13eからの圧力付加を安定的に制御できる。
【0039】
なお、図3の6−6線矢視図である図6に示すように、固定スクロール12と旋回スクロール13により形成される圧縮室15には、旋回スクロール13のラップ外壁側に形成される第1圧縮室15aと、ラップ内壁側に形成される第2圧縮室15bとがある。
【0040】
貯油部20からの給油経路としては、高圧領域30から背圧室29への接続路55と、背圧室29から第2圧縮室15bへの供給路56とを有する。高圧領域30から背圧室29への接続路55を設けることで、自転拘束機構14の摺動部や、固定スクロール12と旋回スクロール13のスラスト摺動部にオイル6を供給することができる。
【0041】
接続路55の第1開口端55aは旋回スクロール13の背面13eに形成し、シール部材78を往来させ、第2開口端55bは常に高圧領域30に開口している。これにより間欠給油が実現できる。
【0042】
オイル6の一部は、供給圧や自重によって、逃げ場を求めるようにして偏心軸部4aと旋回スクロール13との嵌合部、シャフト4と主軸受部材11との間の軸受部66に進入してそれぞれの部分を潤滑した後落下し、貯油部20へ戻る。
【0043】
本実施の形態によるスクロール圧縮機では、圧縮室15への給油経路が、旋回スクロール13の内部に形成された通路13aと、固定スクロール12のラップ面側鏡板に形成された凹部12aから構成されている。通路13aの第3開口端56aはラップ先端13cに形成し、旋回運動にあわせて周期的に凹部12aに開口させ、また通路13aの第4開口端56bは常に背圧室29に開口させている。これにより、背圧室29と第2圧縮室15bを間欠的に連通させることができる(図6図9参照)。
【0044】
中間圧の冷媒をインジェクションするためのインジェクションポート43は、固定スクロール12の鏡板を貫通して設けている。インジェクションポート43は、第1圧縮室15a及び第2圧縮室15bに順次開口する。インジェクションポート43は、第1圧縮室15a及び第2圧縮室15bでの閉じ込み後の圧縮工程中に開口する位置に設けている。
【0045】
固定スクロール12の鏡板には、吐出ポート18と連通する前に圧縮室15で圧縮した冷媒を吐出する吐出バイパスポート21を設けている。
【0046】
図3図4に示すように、本実施の形態による圧縮機91は、インジェクション管95から送り込まれ、圧縮室15にインジェクションする前の中間圧作動流体を導く中間圧室41を設けている。
【0047】
中間圧室41は、圧縮室区画部材である固定スクロール12と、中間圧室隔壁部材を構成する中間圧プレート44および中間圧カバー45とで形成している。中間圧室41と圧縮室15とは、固定スクロール12を挟んで対向させている。中間圧室41は、中間圧作動流体が流入する中間圧室入口41aと、中間圧作動流体を圧縮室15にインジェクションするインジェクションポート43のインジェクションポート入口43aと、中間圧室入口41aより低い位置に形成した液溜め部41bとを有している。
【0048】
液溜め部41bは固定スクロール12の鏡板の上面で形成している。
【0049】
中間圧プレート44には、圧縮室15から中間圧室41への冷媒逆流を防止する逆止弁42が設けられている。インジェクションポート43が圧縮室15に開口している区間において、圧縮室15の内圧がインジェクションポート43の中間圧よりも高い場合には、圧縮室15から中間圧室41に向けて冷媒が逆流するため、逆止弁42を設けることにより冷媒の逆流を阻止できる。
【0050】
本実施の形態による圧縮機91では、逆止弁42は圧縮室15側にリフトして圧縮室15と中間圧室41を連通させるリード弁42aで構成しており、圧縮室15の内圧が中間圧室41の圧力よりも低い時にのみ中間圧室41を圧縮室15に連通させる。リード弁42aを用いることで、可動部における摺動箇所が少なく、長期に亘りシール性を維持できるとともに、流路面積を必要に応じて拡大し易い。逆止弁42を設けなかったり、逆止弁42をインジェクション管95に設けたりした場合は、圧縮室15の冷媒がインジェクション管95まで逆流し、無駄な圧縮動力を消費することになる。本実施の形態では逆止弁42を圧縮室15に近い中間圧プレート44に設けることで圧縮室15からの逆流を抑制している。
【0051】
固定スクロール12の鏡板の上面は、中間圧室入口41aよりも低い位置にあり、固定スクロール12の鏡板の上面に、液相成分の作動流体が溜まる液溜め部41bを設けている。また、インジェクションポート入口43aは、中間圧室入口41aの高さよりも高い位置に設けている。従って、中間圧作動流体の内、気相成分の作動流体はインジェクションポート43に導かれ、液溜め部41bに溜まった液相成分の作動流体は、高温状態にある固定スクロール12の表面で気化されるため、圧縮室15には液相成分の作動流体が流入しにくい。
【0052】
さらに、中間圧室41と吐出室31とは中間圧プレート44を介して隣接する位置に設けており、中間圧室41に液相成分の作動流体が流入した際の気化を促進するとともに、吐出室31の高圧冷媒の温度上昇も抑制できるため、その分だけ高い吐出圧条件まで運転を行うことができる。
【0053】
インジェクションポート43に導かれた中間圧作動流体は、インジェクションポート43と圧縮室15との圧力差によりリード弁42aを押し開き、吸入ポート17から吸い込んだ低圧作動流体と圧縮室15で合流する。しかし、逆止弁42から圧縮室15までの間のインジェクションポート43に残る中間圧作動流体は、再膨張と再圧縮を繰り返すため、圧縮機91の効率を低下させる要因となる。そこで、リード弁42aの最大変位量を規制するバルブストップ42b(図5参照)の厚みを、リード弁42aのリフト規制箇所に応じて変化させ、リード弁42aより下流のインジェクションポート43内体積を小さくしている。
【0054】
また、リード弁42aおよびバルブストップ42bは固定部材であるボルト48により中間圧プレート44に固定されている。バルブストップ42bに設けたねじを含む固定部材48の固定用孔は、バルブストップ42bを貫通することなく固定部材48の挿入側にのみ開口しているため、結果として、固定部材48は中間圧室41にのみ開放するように構成している。これにより、固定部材48の隙間を介して中間圧室41と圧縮室15との間で作動流体が漏れるのを抑制でき、インジェクション率を向上させることができる。
【0055】
中間圧室41は、圧縮室15へのインジェクション量を十分に供給可能とするために圧縮室15の吸入容積以上とする。ここで吸入容積とは、吸入ポート17から導いた作動流体を圧縮室15に閉じ込んだ時点、すなわち吸入工程完了時点での圧縮室15の容積であり、第1圧縮室15a(図6参照)と第2圧縮室15b(図6参照)との合計容積である。本実施例の圧縮機91では、中間圧室41を固定スクロール12の鏡板の平面上に広がるように設け、容積を拡大している。しかしながら、圧縮機91に封入されたオイル6の一部が吐出冷媒と共に圧縮機91から出ていき、気液分離器96からインジェクション管95を通って中間圧室41に戻った場合に、液溜め部41bに残るオイル6が多すぎると貯油部20のオイル6が不足してしまう問題を生じるため、中間圧室41の容積が大きすぎるのも適切でない。このことから、中間圧室41の容積は、圧縮室15の吸入容積以上で、封入されるオイル6のオイル容積の1/2以下とすることが好ましい。
【0056】
図6図3の6−6線矢視図である。
【0057】
図6は固定スクロール12に旋回スクロール13を噛み合わせ、旋回スクロール13の背面13e(図3参照)側から見た図である。図6に示すように固定スクロール12と旋回スクロール13を噛み合わせた状態で、固定スクロール12の渦巻きラップを旋回スクロール13の渦巻きラップと同等まで延長している。
【0058】
固定スクロール12と旋回スクロール13により形成される圧縮室15には、旋回スクロール13のラップ外壁側に形成される第1圧縮室15aと、ラップ内壁側に形成される第2圧縮室15bとがある。
【0059】
第1圧縮室15aの作動流体を閉じ込める位置と第2圧縮室15bの作動流体を閉じ込める位置とは、略180度ずれるように渦巻きラップを構成している。
【0060】
作動流体を閉じ込めるタイミングが第1圧縮室15aと第2圧縮室15bとで180度程度ずれることで、第1圧縮室15aを閉じ込めた後、シャフト4の回転が180度進んでから第2圧縮室15bを閉じ込めることになる。これにより、第1圧縮室15aにおいて吸入加熱の影響を小さくすることができ、さらに吸入容積を最大にすることができる。すなわちラップ高さを低く設定でき、その結果ラップの径方向接点部の漏れ隙間(=漏れ断面積)を縮小することができるので、漏れ損失の更なる低減が可能となる。
【0061】
図7は、インジェクション運転を伴わない場合のスクロール圧縮室の非対称圧縮室の内圧と吐出開始位置の関係図である。
【0062】
図7には、クランクの回転角度であるクランク角度に対する第1圧縮室15aの圧力変化を示す圧力曲線Pと、第2圧縮室15bの圧力変化を示す圧力曲線Qと、圧力曲線Qを180度スライドさせて圧力曲線Pと圧縮開始点を揃えた圧職曲線Qaを示している。圧力曲線Pと圧力曲線Qaの比較で明らかなように、第2圧縮室15bの圧力上昇速度は第1圧縮室15aの圧力上昇速度より速い。
【0063】
そのため、圧縮開始位置からのシャフト4の回転角で言えば、第1圧縮室15aに比べて第2圧縮室15bの方が早期に吐出圧に到達する。圧縮室15(図3参照)が吐出ポート18や吐出バイパスポート21と連通して冷媒が吐出可能となる圧縮室15の吐出容積に対する圧縮室15の吸入容積の比で定義する容積比は、吸入容積が小さい第2圧縮室15bの方が同等か小さくなる。しかし、本実施の形態によるスクロール圧縮機では、後述するインジェクション冷媒の効果により第1圧縮室15aの方が早期に吐出圧に到達するため、この容積比に関しても第1圧縮室15aを第2圧縮室15bに対して小さくしている。これにより、圧縮室15での内圧が吐出圧以上まで圧縮されたにも関わらず、吐出ポート18もしくは吐出バイパスポート21と連通していないがために吐出圧以上にまで圧縮されるという課題を解決している。
【0064】
また、旋回スクロール13のラップ先端13c(図3参照)には、運転中の温度分布を測定した結果をもとに、中心部である巻き始め部から外周部である巻き終わり部にかけて、徐々にハネ高さが高くなるようにスロープ形状が設けられている。これにより熱膨張による寸法変化を吸収し、局所摺動を防止し易くしている。
【0065】
図8は、本実施の形態における圧縮機であるスクロール圧縮機の旋回運動に伴う給油経路とシール部材との位置関係を示す説明図である。
【0066】
図8は固定スクロール12に旋回スクロール13を噛み合わせ、旋回スクロール13の背面13e側から見た図であり、位相を90度ずつずらした図である。
【0067】
接続路55の一方の第1開口端55aは旋回スクロール13の背面13eに形成している。
【0068】
図8に示すように、シール部材78で旋回スクロール13の背面13eは内側の高圧領域30と外側の背圧室29に仕切られている。
【0069】
図8の(B)の状態では、第1開口端55aはシール部材78の外側である背圧室29に開口しているため、オイル6が供給される。
【0070】
これに対し図8の(A)、(C)、(D)の状態では、第1開口端55aはシール部材78の内側に開口しているため、オイル6が供給されることはない。
【0071】
すなわち接続路55の一方の第1開口端55aは、高圧領域30と背圧室29とを往来するが、接続路55の第1開口端55aと第2開口端55b(図3参照)との間で圧力差が生じたときのみ背圧室29にオイル6が供給される。この構成にすると、給油量は第1開口端55aがシール部材78を往来する時間割合で調整できるため、接続路55の通路径をオイルフィルタに対し10倍以上の寸法で構成することが可能となる。これにより、通路13a(図3参照)に異物が噛み込んで閉塞する恐れがなくなるため、安定した背圧の印加と同時にスラスト摺動部及び自転拘束機構14(図3参照)の潤滑も良好な状態を維持でき、高効率かつ高信頼性を実現するスクロール圧縮機を提供することができる。なお本実施の形態では、第2開口端55bが常に高圧領域30にあり、第1開口端55aが高圧領域30と背圧室29を往来する場合を例として説明した。しかし、第2開口端55bが高圧領域30と背圧室29を往来し、第1開口端55aが常に背圧室29にある場合でも、第1開口端55a、第2開口端55bで圧力差が生じるため、間欠給油が実現でき同様の効果が得られる。
【0072】
図9は、本実施の形態における圧縮機であるスクロール圧縮機の旋回運動に伴う給油経路およびインジェクションポートの開口状態を示す図である。
【0073】
図9は、固定スクロール12に旋回スクロール13を噛み合わせた状態であり、位相を90度ずつずらした図である。
【0074】
図9に示すように、ラップ先端13c(図3参照)に形成された、通路13aの第3開口端56aを、固定スクロール12の鏡板に形成された凹部12aに周期的に開口させることで、間欠連通を実現させている。
【0075】
図9の(D)の状態で第3開口端56aは凹部12aに開口しており、この状態では、供給路56(図3参照)及び通路13aを通って背圧室29(図3参照)から第2圧縮室15bにオイル6が供給される。
【0076】
これに対し図9の(A)、(B)、(C)では、第3開口端56aは凹部12aに開口していないため、背圧室29から第2圧縮室15bにオイル6は供給されない。以上のことから、背圧室29のオイル6は、給油経路を通って第2圧縮室15bに間欠的に導かれるので、背圧室29の圧力変動を抑制することができ、所定の圧力に制御することが可能となる。また同時に、第2圧縮室15bに供給されたオイル6は圧縮時のシール性向上や潤滑性向上の役割を果たす。
【0077】
第1圧縮室15aの閉じ込み時点を示す図9の(A)では、インジェクションポート43は第1圧縮室15aに開口しておらず、圧縮が開始された後の状態を示す図9の(B)、(C)では、第1圧縮室15aに対してインジェクションポート43が開口している。
【0078】
同様に、第2圧縮室15bの閉じ込み時点を示す図9の(C)では、インジェクションポート43は第2圧縮室15bに対して開口しておらず、圧縮が進んだ状態を示す図9の(A)の状態においてインジェクションポート43は第2圧縮室15bに対して開口する。これにより、インジェクションポート43を省スペース化すると共に、インジェクション冷媒が吸入ポート17(図3参照)まで逆流することなく圧縮できるため、冷媒循環量を増加し易く、高効率なインジェクション運転が可能となる。
【0079】
圧縮室15への給油区間の少なくとも一部を、インジェクションポート43の開口区間と重複するよう構成することで、背面13eから旋回スクロール13への圧力付加は、インジェクション冷媒の中間圧が上昇するのに応じて、給油区間中の圧縮室15の内圧と共に大きくなる。そのため、旋回スクロール13は固定スクロール12に対してより安定的に押し付けられ、背圧室29から圧縮室15への漏れを低減するとともに、安定した運転を行うことができる。これにより、旋回スクロール13の挙動はより安定的に、最適性能を実現し、インジェクション率を更に向上させることができる。
【0080】
作動流体である冷媒として、吐出冷媒の温度が高温となり易いR32や二酸化炭素を用いた場合には、吐出冷媒温度の上昇を抑制できる効果が発揮され、モータ部3の絶縁材など樹脂材料の劣化を抑え、長期に亘って信頼性の高い圧縮機を提供することが可能となる。
【0081】
一方、炭素間に二重結合を有する冷媒、又はその冷媒を含むGWP500以下(GWP:Global Warming Potential(地球温暖化係数))の冷媒を用いた場合には、高温時に冷媒分解反応を生じ易いため、吐出冷媒温度の上昇を抑制する効果により、冷媒の長期安定性に効果を発揮する。
【0082】
第1の開示によるインジェクション機能を備えた圧縮機は、圧縮室を、例えば固定スクロールで構成する圧縮室区画部材によって形成し、圧縮室にインジェクションする前の中間圧作動流体を導く中間圧室を設け、中間圧室と圧縮室とを、圧縮室区画部材を挟んで対向させる。また、中間圧室は、中間圧作動流体が流入する中間圧室入口と、中間圧作動流体を圧縮室にインジェクションするインジェクションポートのインジェクションポート入口と、中間圧室入口より低い位置に形成した液溜め部とを有し、液溜め部を圧縮室区画部材によって形成する。
【0083】
この構成によれば、中間圧作動流体の一部に液相成分の作動流体が存在していても、圧縮室区画部材の熱により液溜め部で蒸発して気相成分の作動流体となる。そのため、液相成分の作動流体を圧縮室にインジェクションすることがなく、最適な中間圧で高効率に運転でき、摺動部の潤滑性が液冷媒により悪化することがないために信頼性の高い圧縮機を実現できる。
【0084】
第2の開示は、第1の開示によるインジェクション機能を備えた圧縮機において、圧縮室を内部に形成する密閉容器に、所定量のオイルを封入し、中間圧室の容積を、圧縮室の吸入容積以上で、封入したオイルによるオイル容積の1/2以下としてもよい。
【0085】
本実施の形態によれば、中間圧室は中間圧の作動流体を噴射するのに十分な容積を確保しつつ、中間圧室の液溜め部にオイルの一部が溜まったとしても貯油部には潤滑に必要なオイルを残すことができるため、液溜め部が摺動部へのオイル供給を妨げることがなく、高い信頼性を有する圧縮機を提供する。
【0086】
第3の開示は、第1又は第2いずれかの開示によるインジェクション機能を備えた圧縮機において、インジェクションポート入口を、中間圧室入口よりも高い位置に設けてもよい。
【0087】
この構成によれば、中間圧室入口から流入した作動流体の液成分はインジェクションポートに到達することができず、液溜め部へと導かれるため、作動流体の気相成分を圧縮室に噴射することができる。
【0088】
第4の開示は、第1又は第2いずれかの開示によるインジェクション機能を備えた圧縮機において、圧縮室区画部材に、高圧作動流体を圧縮室から吐出室に吐出する吐出孔を設け、吐出室と中間圧室とを隣接させてもよい。
【0089】
この構成によれば、中間圧室内の液溜め部の作動流体を、吐出された高温の作動流体の熱によって蒸発させ易くなる。
【0090】
第5の開示は、第1又は第2いずれかの開示によるインジェクション機能を備えた圧縮機において、作動流体として、R32又は二酸化炭素を用いてもよい。
【0091】
R32や二酸化炭素は高温冷媒であり、吐出温度が上昇し易く、設備保護などの安全面から運転可能な高圧限界が定められる。この構成によれば、高温となる吐出冷媒がインジェクションされる冷媒によって温度低下するため、運転可能領域を拡大することができる。
【0092】
第6の開示は、第1又は第2いずれかの開示によるインジェクション機能を備えた圧縮機において、作動流体として、炭素間に二重結合を有する冷媒、又はその冷媒を含むGWP(Global Warming Potential(地球温暖化係数))500以下の冷媒を用いてもよい。
【0093】
炭素間に二重結合を有する冷媒は、高温状態で不安定となり分解し易くなるため、温度上昇を抑制する必要がある。この構成によれば、インジェクション冷媒との混合ならびに液溜め部の冷媒との熱交換によって、吐出冷媒の温度は大きく低下するため、冷媒の分解を抑制し、高信頼性の圧縮機を提供することができる。
【0094】
第7の開示は、第1又は第2いずれかの開示によるインジェクション機能を備えた圧縮機において、インジェクションポートに、圧縮室から中間圧室への中間圧作動流体の逆流を防止する逆止弁を設けてもよい。
【0095】
圧縮室内部の吸入圧から吐出圧まで昇圧される途中の段階で、圧縮室の内圧と中間圧との圧力差を利用してインジェクションポートから作動流体を流入させる。しかし、中間圧はインジェクション量の観点から決められるため、インジェクションポートが圧縮室内へ連通するタイミングは必ずしも常に最適にはならず、連通状態であっても圧縮室の内圧が中間圧よりも高くなることも起こり得る。この構成によれば、インジェクションポートに逆止弁を設けることで、圧縮室から中間圧室への作動流体の逆流を防止することができ、様々な運転状況において高効率で高能力な運転を実現できる。
【0096】
第8の開示は、第7の開示によるインジェクション機能を備えた圧縮機において、中間圧室を、例えば固定スクロールで構成する圧縮室区画部材と例えば中間圧プレートおよび中間圧カバーで構成する中間圧室隔壁部材とで形成し、逆止弁を、中間圧室隔壁部材と圧縮室区画部材との境界面に設置してもよい。
【0097】
この構成により、逆止弁を圧縮室の近傍に設けることで圧縮工程でのデッドボリュームを小さくでき、インジェクション率の高い高効率運転が可能となる。
【0098】
第9の開示は、第8の開示によるインジェクション機能を備えた圧縮機において、逆止弁を固定する固定部材を、中間圧室隔壁部材又は圧縮室区画部材に設けてもよい。
【0099】
この構成により、固定部材の隙間を通じて、中間圧室と圧縮室間で作動流体が漏れ出ることを防止できるため、インジェクション率の高い高効率運転が可能となる。
【0100】
第10の開示は、第7の開示によるインジェクション機能を備えた圧縮機において、逆止弁としてリード弁を用い、インジェクションポートを開閉するようにリード弁を設置してもよい。
【0101】
リード弁は、可動部における摺動箇所が少なく、長期に亘りシール性を維持できるとともに、流路面積を必要に応じて拡大し易いため、この構成によれば、インジェクション率の高い高効率運転と高い信頼性を実現できる。
【0102】
第11の開示は、第10の開示によるインジェクション機能を備えた圧縮機において、リード弁の最大変位量を規制するバルブストップを設け、バルブストップの厚みを、リード弁のリフト規制箇所に応じて異ならせてもよい。
【0103】
インジェクションポート中のリード弁がリフト開閉する側は、圧縮室と連通した圧縮室の一部であり、必要以上の空間はデッドボリュームとなって圧縮機の効率低下に繋がる。バルブストップの厚みを一定とした場合、リード弁根元付近ではバルブストップ背面に空間が発生してしまい、それが効率低下の要因となってしまう。この構成により、そのような空間をバルブストップの板厚変化によって無くすことができ、インジェクション量が多くなる高リフトタイプのリード弁で特に効果を発揮する。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明は、中間圧のインジェクションが行われるスクロール圧縮機だけに限らず、ロータリ式などのインジェクションを行う全ての方式の圧縮機に有用であり、その用途としても、空気調和機に限らず、温水暖房装置、給湯器、冷凍機などの電気製品に利用できる冷凍サイクル装置に有用である。
【符号の説明】
【0105】
1 密閉容器
2 圧縮機構
3 モータ部
4 シャフト
4a 偏心軸部
6 オイル
11 主軸受部材
12 固定スクロール(圧縮室区画部材)
12a 凹部
13 旋回スクロール
13c ラップ先端
13e 背面
14 自転拘束機構
15 圧縮室
15a 第1圧縮室
15b 第2圧縮室
16 吸入パイプ
17 吸入ポート
18 吐出ポート
19 吐出リード弁
20 貯油部
21 吐出バイパスポート
25 ポンプ
26 オイル供給穴
29 背圧室
30 高圧領域
31 吐出室
41 中間圧室
41a 中間圧室入口
41b 液溜め部
42 逆止弁
42a リード弁
42b バルブストップ
43 インジェクションポート
43a インジェクションポート入口
44 中間圧プレート(中間圧室隔壁部材)
45 中間圧カバー(中間圧室隔壁部材)
48 固定部材(ボルト)
55 接続路
55a 第1開口端
55b 第2開口端
56 供給路
56a 第3開口端
56b 第4開口端
66 軸受部
78 シール部材
91 圧縮機
92 凝縮器
93 蒸発器
94a,94b 膨張弁
95 インジェクション管
96 気液分離器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】