特表-19111456IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2019年6月13日
【発行日】2020年11月26日
(54)【発明の名称】トランスアクスルの制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 10/02 20060101AFI20201030BHJP
   B60K 6/442 20071001ALI20201030BHJP
   B60W 10/08 20060101ALI20201030BHJP
   B60W 10/10 20120101ALI20201030BHJP
   B60W 20/17 20160101ALI20201030BHJP
   B60W 20/30 20160101ALI20201030BHJP
   B60K 6/36 20071001ALI20201030BHJP
   B60K 6/387 20071001ALI20201030BHJP
   B60L 50/16 20190101ALI20201030BHJP
   B60L 15/20 20060101ALI20201030BHJP
   F16D 11/10 20060101ALI20201030BHJP
   F16D 48/06 20060101ALI20201030BHJP
【FI】
   B60W10/02 900
   B60K6/442ZHV
   B60W10/08 900
   B60W10/10 900
   B60W20/17
   B60W20/30
   B60K6/36
   B60K6/387
   B60L50/16
   B60L15/20 K
   F16D11/10 C
   F16D48/06 102
   F16D28/00 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】19
【出願番号】特願2019-558000(P2019-558000)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2018年8月29日
(31)【優先権主張番号】特願2017-232749(P2017-232749)
(32)【優先日】2017年12月4日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092978
【弁理士】
【氏名又は名称】真田 有
(74)【代理人】
【識別番号】100183689
【弁理士】
【氏名又は名称】諏訪 華子
(72)【発明者】
【氏名】那須 剛太
(72)【発明者】
【氏名】清水 亮
(72)【発明者】
【氏名】安部 洋則
【テーマコード(参考)】
3D202
3J056
3J057
5H125
【Fターム(参考)】
3D202AA02
3D202BB14
3D202BB32
3D202BB37
3D202BB64
3D202BB65
3D202CC01
3D202EE12
3D202EE16
3J056AA03
3J056BE27
3J056BE28
3J056CC03
3J056CC17
3J056GA05
3J056GA12
3J057AA02
3J057BB01
3J057GA01
3J057GB12
3J057GB13
3J057GB26
3J057GB36
3J057GE07
3J057HH01
3J057JJ02
5H125AA01
5H125AC08
5H125AC12
5H125BA00
5H125BE05
(57)【要約】
ハイブリッド車両のトランスアクスル(1)は、第一の回転電機(3)から出力軸(12)までの第一動力伝達経路上及びエンジン(2)から出力軸(12)までの第二動力伝達経路上の少なくとも一方に設けられたクラッチ(20,30)と、クラッチ(20,30)と同軸上に隣接配置され、そのクラッチ(20,30)のスリーブ(22,32H,32L)と係合する被係合ギヤ(16d,11d,15d)を有する第一ギヤ(16M,11H,15L)と、を備える。制御装置は、出力軸(12)が停止状態であるときに、スリーブ(22,32H,32L)を第一ギヤ(16M,11H,15L)の被係合ギヤ(16d,11d,15d)に係合させるよう第一方向に移動させたのち、所定の中立距離だけスリーブ(22,32H,32L)を第一方向とは逆方向へ移動させてその初期位置を調整する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、駆動輪側の出力軸を駆動する第一の回転電機と、前記エンジンの駆動力により発電する第二の回転電機とが搭載されたハイブリッド車両のトランスアクスルの制御装置であって、
前記トランスアクスルは、前記第一の回転電機から前記出力軸までの第一動力伝達経路上及び前記エンジンから前記出力軸までの第二動力伝達経路上の少なくとも一方に設けられたクラッチと、前記クラッチと同軸上に隣接配置され、前記クラッチのスリーブと係合する被係合ギヤを有する第一ギヤと、を備え、
前記制御装置は、前記出力軸が停止状態であるときに、前記スリーブを前記第一ギヤの前記被係合ギヤに係合させるよう第一方向に移動させたのち、所定の中立距離だけ前記スリーブを前記第一方向とは逆方向へ移動させて前記スリーブの初期位置を調整する
ことを特徴とする、トランスアクスルの制御装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記スリーブを前記第一方向に移動させる際に、前記回転電機の動力によって前記スリーブと前記被係合ギヤとの位相をずらす
ことを特徴とする、請求項1記載のトランスアクスルの制御装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記スリーブの前記第一方向に移動させている際に前記スリーブの歯と前記被係合ギヤの歯とが噛み合わずに衝突した場合に、前記スリーブと前記被係合ギヤとの位相をずらす
ことを特徴とする、請求項2記載のトランスアクスルの制御装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記スリーブを前記第一方向に移動させて停止したときの移動量が所定値未満の場合に前記スリーブの歯と前記被係合ギヤの歯とが噛み合わずに衝突したと判定する
ことを特徴とする、請求項3記載のトランスアクスルの制御装置。
【請求項5】
前記クラッチは、前記第二動力伝達経路上に設けられ、
前記制御装置は、前記第二の回転電機の動力によって前記スリーブと前記被係合ギヤとの位相をずらす
ことを特徴とする、請求項2〜4のいずれか1項に記載のトランスアクスルの制御装置。
【請求項6】
前記クラッチは、前記第二動力伝達経路上に設けられて動力伝達の断接とハイロー切替とを実施すべく、ハイ側クラッチとロー側クラッチとを有し、
前記制御装置は、前記ハイ側クラッチ及び前記ロー側クラッチの両方の前記初期位置の調整を順次実行する
ことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のトランスアクスルの制御装置。
【請求項7】
前記制御装置は、前記車両の主電源が切断された際に、前記スリーブの前記第一方向への移動を開始して前記スリーブの前記初期位置を調整する
ことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載のトランスアクスルの制御装置。
【請求項8】
前記クラッチは、前記第一動力伝達経路上に設けられ、
前記制御装置は、前記第一の回転電機の動力によって前記スリーブと前記被係合ギヤとの位相をずらす
ことを特徴とする、請求項2〜4のいずれか1項に記載のトランスアクスルの制御装置。
【請求項9】
前記クラッチは、前記第一動力伝達経路上と前記第二動力伝達経路上のそれぞれに設けられ、
前記制御装置は、前記第一の回転電機の動力によって前記第一動力伝達経路上の前記クラッチの前記スリーブと前記被係合ギヤとの位相をずらす
ことを特徴とする、請求項5に記載のトランスアクスルの制御装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンと二つの回転電機とを装備したハイブリッド車両に用いられるトランスアクスルの制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンと回転電機(モータ,ジェネレータ,モータジェネレータ)とを装備したハイブリッド車両において、走行モードを切り替えながら走行する車両が実用化されている。走行モードには、バッテリの充電電力を用いてモータのみで走行するEVモード、エンジンによってジェネレータを駆動し、発電しながらモータのみで走行するシリーズモード、エンジン主体で走行しつつモータでアシストするパラレルモード等が含まれる。走行モードの切り替えは、トランスアクスル内における動力伝達経路上に介装された断接機構が制御されることで実施される。断接機構としては、例えば摩擦クラッチ(多板クラッチ)やドグクラッチが挙げられる(特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−190365号公報
【特許文献2】特開2015−224715号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
トランスアクスルは、車両への搭載スペースの観点から小型であることが望ましいため、上記の特許文献2のようにドグクラッチが内蔵される場合には、シンクロ機構を持たないドグクラッチが採用されることが多い。シンクロ機構を持たないドグクラッチは、係合対象である遊転ギヤ側と回転同期させた状態で、スリーブの内周面に形成されたスプライン歯が遊転ギヤと一体回転するドグギヤのドグ歯に対して噛合または離脱するように、スリーブを軸方向に移動させる。
【0005】
スリーブは、制御装置で制御されるアクチュエータによって軸方向へ移動するが、スリーブには、この制御の際に基準となる初期位置(以下「0点位置」という)が設定されている。スリーブの制御を精度よく行うためには、スリーブが0点位置にあることを制御装置が正確に判断する必要がある。言い換えると、スリーブの位置を正確に0点位置に調整することができれば、ドグギヤのドグ歯とスリーブのスプライン歯とが正確に噛み合うことができ、振動や騒音の発生を回避できる。
【0006】
本件のトランスアクスルの制御装置は、このような課題に鑑み案出されたもので、スリーブの位置を確実に0点位置に調整することを目的の一つとする。なお、この目的に限らず、後述する発明を実施するための形態に示す各構成により導かれる作用効果であって、従来の技術によっては得られない作用効果を奏することも本件の他の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)ここで開示するトランスアクスルの制御装置は、エンジンと、駆動輪側の出力軸を駆動する第一の回転電機と、前記エンジンの駆動力により発電する第二の回転電機とが搭載されたハイブリッド車両のトランスアクスルの制御装置である。前記トランスアクスルは、前記第一の回転電機から前記出力軸までの第一動力伝達経路上及び前記エンジンから前記出力軸までの第二動力伝達経路上の少なくとも一方に設けられたクラッチと、前記クラッチと同軸上に隣接配置され、前記クラッチのスリーブと係合する被係合ギヤを有する第一ギヤと、を備えている。また、前記制御装置は、前記出力軸が停止状態であるときに、前記スリーブを前記第一ギヤの前記被係合ギヤに係合させるよう第一方向に移動させたのち、所定の中立距離だけ前記スリーブを前記第一方向とは逆方向へ移動させて前記スリーブの初期位置を調整する。
【0008】
なお、前記中立距離は、前記スリーブの移動の際に基準となる0点位置から前記スリーブの歯と前記被係合ギヤの歯とが噛合する位置までの距離である。また、前記スリーブは、前記クラッチが設けられた軸に対して回転同期しかつ前記軸方向に摺動自在に結合された環状の係合部材であり、内周面側に設けられた歯(スプライン歯)を有する。また、前記第一ギヤは、前記軸に対して相対回転可能に支承され、他の軸に固定された固定ギヤと噛み合っており、前記スリーブと前記被係合ギヤとが係合(噛合)したときに動力を伝達する歯車である。
【0009】
(2)前記制御装置は、前記スリーブを前記第一方向に移動させる際に、前記回転電機の動力によって前記スリーブと前記被係合ギヤとの位相をずらすことが好ましい。
(3)前記制御装置は、前記スリーブの前記第一方向に移動させている際に前記スリーブの歯と前記被係合ギヤの歯とが噛み合わずに衝突した場合に、前記スリーブと前記被係合ギヤとの位相をずらすことが好ましい。
【0010】
(4)前記制御装置は、前記スリーブを前記第一方向に移動させて停止したときの移動量が所定値未満の場合に前記スリーブの歯と前記被係合ギヤの歯とが噛み合わずに衝突したと判定することが好ましい。
(5)前記クラッチは、前記第二動力伝達経路上に設けられ、前記制御装置は、前記第二の回転電機の動力によって前記スリーブと前記被係合ギヤとの位相をずらすことが好ましい。
(6)前記クラッチは、前記第二動力伝達経路上に設けられて動力伝達の断接とハイロー切替とを実施すべく、ハイ側クラッチとロー側クラッチとを有し、前記制御装置は、前記ハイ側クラッチ及び前記ロー側クラッチの両方の前記初期位置の調整を順次実行することが好ましい。
【0011】
(7)前記制御装置は、前記車両の主電源が切断されたときに、前記スリーブの前記第一方向への移動を開始して前記スリーブの前記初期位置を調整することが好ましい。
(8)前記クラッチは、前記第一動力伝達経路上に設けられ、前記制御装置は、前記第一の回転電機の動力によって前記スリーブと前記被係合ギヤとの位相をずらすことが好ましい。
(9)前記クラッチは、前記第一動力伝達経路上と前記第二動力伝達経路上のそれぞれに設けられ、前記制御装置は、前記第一の回転電機の動力によって前記第一動力伝達経路上の前記クラッチの前記スリーブと前記被係合ギヤとの位相をずらすことが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
開示のトランスアクスルの制御装置によれば、中立距離を適切に与えることで、スリーブの初期位置を確実に0点位置に調整(設定)することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態に係るトランスアクスル及びその制御装置を搭載した車両の内部構成を例示する上面図である。
図2図1のトランスアクスルを備えたパワートレインの模式的な側面図である。
図3図1のトランスアクスルを備えたパワートレインを示すスケルトン図である。
図4図1の制御装置で実施されるスリーブ調整制御の内容を説明するための図であり、(a)は初期位置Psが0点位置Pnとずれている状態を示し、(b)はギヤブロックすることなくクラッチ係合した場合の制御内容を示し、(c)はギヤブロックした場合の制御内容を示す。
図5図1の制御装置で実施されるスリーブ調整制御のフローチャート例である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図面を参照して、実施形態としてのトランスアクスルの制御装置について説明する。以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることができる。
【0015】
[1.全体構成]
本実施形態のトランスアクスル1の制御装置5は、図1に示す車両10に適用される。この車両10は、エンジン2と走行用のモータ3(電動機,第一の回転電機)と発電用のジェネレータ4(発電機,第二の回転電機)とを装備したハイブリッド車両である。ジェネレータ4はエンジン2に連結され、モータ3の作動状態とは独立して作動可能である。また、車両10にはEVモード,シリーズモード,パラレルモードの三種類の走行モードが用意される。これらの走行モードは、制御装置5によって、車両状態や走行状態,運転者の要求出力等に応じて択一的に選択され、その種類に応じてエンジン2,モータ3,ジェネレータ4が使い分けられる。
【0016】
EVモードは、エンジン2及びジェネレータ4を停止させたまま、図示しない駆動用のバッテリの充電電力を用いてモータ3のみで車両10を駆動する走行モードである。EVモードは、走行負荷,車速が低い場合やバッテリの充電レベルが高い場合に選択される。シリーズモードは、エンジン2でジェネレータ4を駆動して発電しつつ、その電力を利用してモータ3で車両10を駆動する走行モードである。シリーズモードは、走行負荷,車速が中程度の場合やバッテリの充電レベルが低い場合に選択される。パラレルモードは、おもにエンジン2で車両10を駆動し、必要に応じてモータ3で車両10の駆動をアシストする走行モードであり、走行負荷,車速が高い場合に選択される。
【0017】
駆動輪8には、トランスアクスル1を介してエンジン2及びモータ3が並列に接続され、エンジン2及びモータ3のそれぞれの動力が互いに異なる動力伝達経路から個別に伝達される。すなわち、エンジン2及びモータ3のそれぞれは、後述する駆動輪8側の出力軸12を駆動する駆動源である。また、エンジン2には、トランスアクスル1を介してジェネレータ4及び駆動輪8が並列に接続され、エンジン2の動力が、駆動輪8に加えてジェネレータ4にも伝達される。
【0018】
トランスアクスル1は、デファレンシャルギヤ18(差動装置、以下「デフ18」と呼ぶ)を含むファイナルドライブ(終減速機)とトランスミッション(減速機)とを一体に形成した動力伝達装置であり、駆動源と被駆動装置との間の動力伝達を担う複数の機構を内蔵する。本実施形態のトランスアクスル1は、ハイロー切替(高速段,低速段の切替)が可能に構成されており、パラレルモードでの走行時において、制御装置5によって走行状態や要求出力等に応じてハイギヤ段とローギヤ段とが切り替えられる。
【0019】
エンジン2は、ガソリンや軽油を燃料とする内燃機関(ガソリンエンジン,ディーゼルエンジン)である。このエンジン2は、クランクシャフト2a(回転軸)の向きが車両10の車幅方向に一致するように横向きに配置されたいわゆる横置きエンジンであり、トランスアクスル1の右側面に対して固定される。クランクシャフト2aは、駆動輪8のドライブシャフト9に対して平行に配置される。エンジン2の作動状態は、制御装置5で制御される。
【0020】
本実施形態のモータ3及びジェネレータ4はいずれも、電動機としての機能と発電機としての機能とを兼ね備えた電動発電機(モータ・ジェネレータ)である。モータ3は、おもに電動機として機能して車両10を駆動し、回生時には発電機として機能する。ジェネレータ4は、エンジン2を始動させる際に電動機(スターター)として機能し、エンジン2の作動時にはエンジン動力で発電を実施する。モータ3及びジェネレータ4の各周囲(又は各内部)には、直流電流と交流電流とを変換するインバータ(図示略)が設けられる。モータ3及びジェネレータ4の各回転速度は、インバータを制御することで制御される。なお、モータ3,ジェネレータ4,各インバータの作動状態は、制御装置5で制御される。
【0021】
本実施形態のモータ3は、その外形が回転軸3aを中心軸とした円筒状に形成され、その底面をトランスアクスル1側に向けた姿勢でトランスアクスル1の左側面に対して固定される。また、本実施形態のジェネレータ4は、その外形が回転軸4aを中心軸とした円筒状に形成され、モータ3と同様に、その底面をトランスアクスル1側に向けた姿勢でトランスアクスル1の左側面に対して固定される。なお、図2はパワートレイン7を左側から見た側面図である。パワートレイン7は、エンジン2,モータ3,ジェネレータ4,トランスアクスル1を含んで構成される。なお、図2ではエンジン2は省略している。
【0022】
車両10の車室内には、車両10の主電源の断接状態を切り替えるパワースイッチ6が設けられる。パワースイッチ6がオン操作されると車両10の主電源が接続され(READY-ON状態とされ)、パワースイッチ6がオフ操作されると車両10の主電源が切断される(READY-OFF状態とされる)。また、車両10には、車両10に搭載される各種装置を統合制御する制御装置5が設けられる。
【0023】
[2.トランスアクスル]
図3は、本実施形態のトランスアクスル1を備えたパワートレイン7のスケルトン図である。図2及び図3に示すように、トランスアクスル1には、互いに平行に配列された六つの軸11〜16が設けられる。以下、クランクシャフト2aと同軸上に接続される回転軸を入力軸11と呼ぶ。
【0024】
同様に、ドライブシャフト9,モータ3の回転軸3a,ジェネレータ4の回転軸4aのそれぞれと同軸上に接続される回転軸を、出力軸12,モータ軸13,ジェネレータ軸14と呼ぶ。また、入力軸11と出力軸12との間の動力伝達経路上に配置された回転軸を第一カウンタ軸15と呼び、モータ軸13と出力軸12との間の動力伝達経路上に配置された回転軸を第二カウンタ軸16と呼ぶ。六つの軸11〜16はいずれも、両端部が図示しない軸受を介してケーシング1Cに軸支される。なお、入力軸11,出力軸12,モータ軸13,ジェネレータ軸14のそれぞれの軸上に位置するケーシング1Cの側面には開口が形成され、ケーシング1Cの外側に位置するクランクシャフト2a,ドライブシャフト9,回転軸3a,回転軸4aと接続される。
【0025】
トランスアクスル1の内部には、三つの動力伝達経路が形成される。具体的には、図2中に二点鎖線で示すように、モータ3からモータ軸13を介して出力軸12に至る動力伝達経路(以下「第一経路51」と呼ぶ)と、エンジン2から入力軸11を介して出力軸12に至る動力伝達経路(以下「第二経路52」と呼ぶ)と、エンジン2から入力軸11を介してジェネレータ軸14に至る動力伝達経路(以下「第三経路53」と呼ぶ)とが形成される。ここで、第一経路51及び第二経路52は駆動用動力伝達経路であり、第三経路53は発電用動力伝達経路である。
【0026】
第一経路51(第一動力伝達経路)は、モータ3から駆動輪8への動力伝達に係る経路であり、モータ3の動力伝達を担うものである。第一経路51上には、モータ軸13及び第二カウンタ軸16が設けられ、第一経路51の中途にはその動力伝達を断接する後述の第一ドグクラッチ20が介装される。第二経路52(第二動力伝達経路)は、エンジン2から駆動輪8への動力伝達に係る経路であり、エンジン2の作動時における動力の伝達を担うものである。第二経路52上には、入力軸11及び第一カウンタ軸15が設けられ、第二経路52の中途にはその動力伝達の断接とハイロー切替とを実施する後述の第二ドグクラッチ30(エンジン側ドグクラッチ)が介装される。第三経路53(第三動力伝達経路)は、エンジン2からジェネレータ4への動力伝達に係る経路であり、エンジン始動時の動力伝達及びエンジン2による発電時の動力伝達を担うものである。
【0027】
次に、図3を用いてトランスアクスル1の構成を詳述する。なお、以下の説明において、「固定ギヤ」とは、軸と一体に設けられ、軸に対して相対回転不能な歯車を意味する。また、「遊転ギヤ」とは、軸に対して相対回転可能に枢支された歯車を意味する。
【0028】
入力軸11には、エンジン2に近い側から順に、固定ギヤ11aと、ハイ側の第二ドグクラッチ30(以下、「ハイ側ドグクラッチ30H」と呼ぶ)と、遊転ギヤ11H(第一ギヤ)と、固定ギヤ11Lとが設けられる。また、第一カウンタ軸15には、エンジン2の近い側から順に、固定ギヤ15aと、固定ギヤ15Hと、遊転ギヤ15L(第一ギヤ)と、ロー側の第二ドグクラッチ30(以下、「ロー側ドグクラッチ30L」と呼ぶ)とが設けられる。
【0029】
入力軸11の固定ギヤ11aは、ジェネレータ軸14に設けられた固定ギヤ14aと常時噛合している。つまり、入力軸11とジェネレータ軸14とは、二つの固定ギヤ11a,14aを介して連結されており、エンジン2とジェネレータ4との間で動力伝達可能とされる。また、第一カウンタ軸15の固定ギヤ15aは、出力軸12に設けられたデフ18のリングギヤ18aと常時噛合している。
【0030】
入力軸11に設けられた遊転ギヤ11H及び固定ギヤ11Lは互いに異なる歯数を持ち、第一カウンタ軸15に設けられた固定ギヤ15H及び遊転ギヤ15Lのそれぞれと常時噛合している。なお、第一カウンタ軸15の固定ギヤ15H及び遊転ギヤ15Lも互いに異なる歯数を持つ。本実施形態では、遊転ギヤ11Hの方が固定ギヤ11Lよりも歯数が多い。この遊転ギヤ11Hは、歯数が少ない固定ギヤ15Hと噛み合ってハイギヤ段を形成する。反対に、歯数が少ない固定ギヤ11Lは、歯数が多い遊転ギヤ15Lと噛み合ってローギヤ段を形成する。
【0031】
ハイ側ドグクラッチ30Hと同軸上に隣接配置された遊転ギヤ11Hは、第一カウンタ軸15の固定ギヤ15Hと噛み合う歯面部の右側に一体で設けられたドグギヤ11d(被係合ギヤ)を有する。また、ロー側ドグクラッチ30Lと同軸上に隣接配置された遊転ギヤ15Lは、入力軸11の固定ギヤ11Lと噛み合う歯面部の左側に一体で設けられたドグギヤ15d(被係合ギヤ)を有する。ドグギヤ11dの先端部(径方向外側の端部)には、ドグ歯11tが設けられる。また、ドグギヤ15dの先端部にも、ドグ歯11tと同様のドグ歯(図示略)が設けられる。
【0032】
ハイ側ドグクラッチ30H及びロー側ドグクラッチ30Lはいずれも第二経路52上に設けられ、エンジン2の動力の断接状態を制御するとともにハイギヤ段とローギヤ段とを切り替えるものである。ハイ側ドグクラッチ30Hは、入力軸11に固定されたハブ31Hと、ハブ31H(入力軸11)に対して相対回転不能であって軸方向に摺動自在に結合された環状のスリーブ32Hとを有する。
【0033】
スリーブ32Hは、図示しないアクチュエータ(例えばサーボモータ)が制御装置5によって制御されることで軸方向にスライド移動する。スリーブ32Hの近傍には、その移動量(ストローク量)を検出するストロークセンサ45aが設けられる。また、スリーブ32Hの径方向内側には、ドグギヤ11dのドグ歯11tと噛合するスプライン歯32tが設けられる。スプライン歯32tとドグ歯11tとが噛み合うことで、スリーブ32Hとドグギヤ11dとが噛合(係合)する。この状態では、エンジン2からの駆動力がハイ側のギヤ対11H,15Hを通じて出力軸12へと伝達される。反対に、スリーブ32Hのスプライン歯32tとドグギヤ11dのドグ歯11tとが離隔している場合には遊転ギヤ11Hが空転状態となり、第二経路52におけるハイ側の動力伝達が遮断された状態となる。
【0034】
同様に、ロー側ドグクラッチ30Lは、第一カウンタ軸15に固定されたハブ31Lと、ハブ31L(第一カウンタ軸15)に対して相対回転不能であって軸方向に摺動自在に結合された環状のスリーブ32Lとを有する。スリーブ32Lも、図示しないアクチュエータが制御装置5によって制御されることで軸方向にスライド移動するものであり、ストロークセンサ45bによってその移動量(ストローク量)が検出される。スリーブ32Lの径方向内側には、ドグギヤ15dのドグ歯と噛合するスプライン歯(図示略)が設けられる。スプライン歯とドグ歯とが噛み合うことで、スリーブ32Lとドグギヤ15dとが噛合(係合)する。この状態では、エンジン2からの駆動力がロー側のギヤ対11L,15Lを通じて出力軸12へと伝達される。反対に、スリーブ32Lのスプライン歯とドグギヤ15dのドグ歯とが離隔している場合には遊転ギヤ15Lが空転状態となり、第二経路52におけるロー側の動力伝達が遮断された状態となる。なお、スリーブ32H,32Lの制御については後述する。
【0035】
第二カウンタ軸16には、エンジン2に近い側から順に、第一ドグクラッチ20と、遊転ギヤ16M(第一ギヤ)と、パーキングギヤ19と、固定ギヤ16aとが設けられる。固定ギヤ16aは、デフ18のリングギヤ18aと常時噛合している。パーキングギヤ19は、パーキングロック装置を構成する要素であり、運転者によりPレンジが選択されると、図示しないパーキングスプラグと係合して、第二カウンタ軸16(すなわち出力軸12)の回転を禁止する。
【0036】
遊転ギヤ16Mは、モータ軸13に設けられた固定ギヤ13aよりも歯数が多く、この固定ギヤ13aと常時噛合している。遊転ギヤ16Mは、固定ギヤ13aと噛み合う歯面部の右側に一体で設けられたドグギヤ16d(被係合ギヤ)を有する。なお、このドグギヤ16dは、上述したドグギヤ11dのドグ歯11tと同様のドグ歯(図示略)をその先端部に有する。
【0037】
第一ドグクラッチ20は、第二カウンタ軸16に固定されたハブ21と、ハブ21(第二カウンタ軸16)に対して相対回転不能であって軸方向に摺動自在に結合された環状のスリーブ22とを有する。スリーブ22も、図示しないアクチュエータが制御装置5によって制御されることで軸方向にスライド移動するものであり、ストロークセンサ45cによってその移動量(ストローク量)が検出される。スリーブ22の径方向内側には、上述したスリーブ32Hのスプライン歯32tと同様のスプライン歯(図示略)が設けられる。スリーブ22のスプライン歯と遊転ギヤ16Mのドグギヤ16dとが噛み合うことで、スリーブ22とドグギヤ16dとが噛合(係合)する。
【0038】
スリーブ22とドグギヤ16dとが噛合(係合)した状態では、モータ3からの駆動力が出力軸12へと伝達される。反対に、スリーブ22のスプライン歯と遊転ギヤ16Mのドグギヤ16dとが離隔している場合には遊転ギヤ16Mが空転状態となり、第一経路51の動力伝達が遮断された状態となる。本実施形態では、モータ3の作動時に(オン状態で)スリーブ22がドグギヤ16dと係合し、モータ3の停止時に(オフ状態で)スリーブ22がニュートラル位置に制御される。なお、ここでいう「ニュートラル位置」とは、スリーブがドグギヤから離隔した位置を意味し、後述する0点位置と同一位置であってもよいし、0点位置を含む所定範囲であってもよい。
【0039】
[3.制御の概要及び構成]
上述したトランスアクスル1では、出力軸12が停止状態であるときに、スリーブ32H,32Lの初期位置Psを調整する制御が実施される。以下、この制御を「スリーブ調整制御」と呼ぶ。スリーブ調整制御は、制御装置5によって、出力軸12が停止しているとき(つまり車両10の停止中)に実施される。本実施形態では第二経路52上に設けられた第二ドグクラッチ30のスリーブ32H,32Lに対しスリーブ調整制御が実施される場合を説明する。なお、初期位置Psとは、出力軸12が停止状態であってスリーブ32H,32Lを移動させる前のスリーブ32H,32Lの位置を意味する。
【0040】
本実施形態のトランスアクスル1は、スリーブ32H,32Lの位置を直接的に検出する位置センサを有しておらず、位置センサよりも安価なストロークセンサ45a,45bを持っている。ストロークセンサ45a,45bは、スリーブ32H,32Lの移動量を検出する検出手段である。また、各スリーブ32H,32Lには、アクチュエータによって移動させられる際に基準となる0点位置Pn(初期位置)が予め設定されている。さらに本実施形態の制御装置5は、初期位置Psからの移動方向と移動量とをアクチュエータに指示することで、スリーブ32H,32Lを所望の位置に移動させる。
【0041】
所望の位置とは、例えばスリーブ32Hのスプライン歯32tとドグギヤ11dのドグ歯11tとが噛合する位置、すなわち各スリーブ32H,32Lと、これと隣接する各ドグギヤ11d,15dとが係合する位置である。以下、所望の位置を「係合位置Pe」と呼ぶ。本実施形態では、第二ドグクラッチ30がハイ側とロー側とでそれぞれ設けられているため、0点位置Pnから係合位置Peまでの距離がスリーブ32H,32Lごとに予め決まっている。そのため、制御装置5はスリーブ32H,32Lをドグクラッチ11d,15dに係合させるときには、予め設定されている指令値(移動方向及び移動量)をアクチュエータに送信する。
【0042】
しかし、本実施形態のトランスアクスル1は、移動前のスリーブ32H,32Lの位置(すなわち初期位置Ps)が、図4(a)に示すように何らかの異常で0点位置Pnに一致していない場合には、スリーブ32H,32Lを係合位置Peに精度よく移動させることが難しい。そこで制御装置5は、出力軸12が止まっている間にスリーブ32H,32Lの初期位置Psを調整して、スリーブ32H,32Lの位置を確実に0点位置に一致させる。この制御がスリーブ調整制御である。0点位置Pnは、図3中に拡大して示すように、例えば各ハブ31H,31Lの軸方向中心点とされる。なお、移動前のスリーブ32H,32Lの初期位置Psと0点位置Pnとが一致していれば、当然、「0点位置Pn=初期位置Ps」となる。
【0043】
本実施形態では、走行負荷,車速が低い場合、すなわち車両10の発進時や停止時にはEVモードを選択する車両10を例示しているため、出力軸12の停止状態では第一ドグクラッチ20のスリーブ22とドグギヤ16dとは係合しており、第一ドグクラッチ20のスリーブ22に対してはスリーブ調整制御を実施しない。
【0044】
出力軸12が停止しているとき(車両10の停止中)としては、例えば、車両10のパワースイッチ6がオフ操作されることで車両10の主電源が切断されたとき(すなわち、車両10がREADY-OFF状態になったとき)が挙げられる。また、車両10のパワースイッチ6がオン操作されることで車両10の主電源が接続された場合であって運転を開始する前や、車両10の運転中に信号待ちや踏切待ち等で車両10が停止しているときであってジェネレータ4による発電が行なわれていないときも、出力軸12は停止している。このため、これらの場合にスリーブ調整制御を実施してもよい。
【0045】
本実施形態の制御装置5は、出力軸12が停止状態であると判定したら、ハイ側のスリーブ32Hの位置を調整し、次いでロー側のスリーブ32Lの位置を調整することで両クラッチ30H,30Lの初期位置Psの調整を順次実行する。具体的には、図4(b)に示すように、ハイ側のスリーブ32Hのアクチュエータを制御して、スリーブ32Hを初期位置Psから遊転ギヤ11Hのドグギヤ11dに向けて移動させて、スプライン歯32tとドグ歯11tとを噛合させる。このとき、スリーブ32Hは係合位置Peに位置するため、この係合位置Peから、予め設定された中立距離Dnだけスリーブ32Hを逆方向へ(図中黒塗矢印で示すようにドグギヤ11dから離れる方向へ)に移動させてスリーブ32Hの位置を調整する。以下、クラッチを係合させる方向(例えばスリーブ32Hがドグギヤ11dに向かう方向)を「第一方向」と呼び、第一方向とは逆方向(すなわちクラッチを切断する方向)を「第二方向」と呼ぶ。
【0046】
制御装置5は、車速センサや車輪速センサ(いずれも図示略)によって車両10が停止している(すなわち出力軸12が停止状態である)と判断してもよいし、シフトポジションやパーキングブレーキ19のロック状態や車両10の主電源のオンオフ状態から判断してもよい。また、中立距離Dnは、上述した「0点位置Pnから係合位置Peまでの距離」であり、スリーブ32H,32Lごとに予め設定されている。つまり、スプライン歯32tとドグ歯11tとが噛合した位置(上記の係合位置Pe)から中立距離Dnだけ離れた位置でスリーブ32Hが止められるため、スリーブ32Hの位置が確実に0点位置に一致する。
【0047】
なお、スリーブ32Hは、スライド移動の先にある部材に当接すると、その当接した位置で停止し、それ以上は動かない。したがって、スリーブ32Hのスライド移動が終了する要因は、図4(b)に示すように、スプライン歯32tとドグ歯11tとが噛合した(すなわち係合位置Peに到達した)場合か、図4(c)に示すように、スプライン歯32tとドグ歯11tとが噛み合わずに衝突した(すなわちギヤブロックが生じた)場合である。なお、ギヤブロックしたときのスリーブ32Hの位置を「ギヤブロック位置Pb」と呼ぶ。本実施形態の制御装置5は、スリーブ32Hが初期位置Psから停止した位置までの距離(移動量)に基づいて、スリーブ32Hが停止したときの要因を判別する。
【0048】
具体的には、図4(b)及び(c)中の左側に示すように、ストロークセンサ45aで検出されたスリーブ32Hの移動量D(図中模様付き矢印)が所定値X以上であるか否かで判断する。所定値Xは、スリーブ32Hの初期位置Psが図4(a)に示すように0点位置Pnからずれていたとしても、スリーブ32Hの係合とギヤブロックとを判別可能な値に予め設定されている。すなわち、図4(b)に示すように、スリーブ32Hが係合位置Peまで移動した場合には移動量Dが所定値X以上となるため、制御装置5は「D≧X」の場合に「スプライン歯32tとドグ歯11tとが噛合した」と判断する。反対に、図4(c)に示すように、スリーブ32Hがギヤブロック位置Pbまでしか移動していない場合には移動量Dが所定値X未満となるため、制御装置5は「D<X」の場合に「ギヤブロックが生じた」と判断する。
【0049】
制御装置5は、スリーブ32Hを第一方向に移動させる際に、ジェネレータ4の動力によって入力軸11を回し、スリーブ32Hとドグギヤ11dとの位相をずらす。本実施形態では、ハブ31Hが入力軸11に固定されており、スリーブ32Hがハブ31Hに対して相対回転不能に設けられているため、入力軸11が回ることでスリーブ32Hが回る。つまり、制御装置5は、スリーブ32Hを移動させるときに、ジェネレータ4にトルクを印加することでスリーブ32Hを回し、スリーブ32Hの位相を変化させることでドグギヤ11dとの相対的な位相をずらす。これにより、スプライン歯32tとドグ歯11tとのギヤブロックの発生を抑制する。
【0050】
本実施形態の制御装置5は、ギヤブロックが発生したと判断したときにジェネレータ4を作動させ、入力軸11を介してスリーブ32Hを回し、位相を変化させたのち、スリーブ32Hを再び第一方向に移動させる。このとき、スリーブ32Hが動けば、スリーブ32Hが停止するまで(すなわち係合位置Peまで)移動させ、スリーブ32Hが動かなければ、再び入力軸11を介してスリーブ32Hを回し、スリーブ32Hとドグギヤ11dとの位相をずらしたのち、スリーブ32Hをスライド移動させる。なお、入力軸11の回転方向は一方向としてもよいし、回転方向を短周期で切り替えてもよい。また、ギヤブロックが発生したと判断する前(例えば、スリーブ32Hの移動を開始したとき)から、ジェネレータ4を作動させてスリーブ32Hを回してもよい。
【0051】
制御装置5は、ハイ側のスリーブ32Hの調整が終わったら、ロー側のスリーブ32Lに対しても同様の制御を実施する。すなわち、ロー側のスリーブ32Lのアクチュエータを制御して、スリーブ32Lを遊転ギヤ15Lのドグギヤ15dに向けて(すなわち第一方向に)移動させ、スリーブ32Lが停止したときに、ストロークセンサ45bで検出された移動量Dが所定値X以上であるか否かを判定する。D≧Xであれば、スプライン歯とドグ歯とが噛合したと判断して、予め設定された中立距離Dnだけスリーブ32Lを逆方向へ(ドグギヤ15dから離れる方向へ)に移動させてスリーブ32Lの位置を調整する。
【0052】
一方、D<Xであれば、スプライン歯とドグ歯とが噛合せずに衝突した(ギヤブロックが生じた)と判断して、ジェネレータ4を作動させて入力軸11を回し、固定ギヤ11Lと噛み合っている遊転ギヤ15Lを回すことで、スリーブ32Lとドグギヤ15dとの位相をずらす。その後、スリーブ32Lを第一方向に移動させる。このとき、スリーブ32Lが動けば、スリーブ32Lが停止するまで移動させ、スリーブ32Lが動かなければ、再び入力軸11を介して遊転ギヤ15Lを回し、スリーブ32Lとドグギヤ15dとの位相をずらしたのち、スリーブ32Lをスライド移動させる。
【0053】
[4.フローチャート]
図5は、上述したスリーブ調整制御の内容を説明するためのフローチャート例である。このフローチャートは、車両10の主電源が切断されたとき(すなわち、出力軸12が停止状態であるとき)に制御装置5で実施される。なお、ストロークセンサ45a〜45cで検出された情報は制御装置5に随時伝達されるものとする。
【0054】
まず、ハイ側のスリーブ32Hを第一方向に(遊転ギヤ11Hに向けて)移動させ(ステップS1)、スリーブ32Hが停止したか否かが判定される(ステップS2)。スリーブ32Hが停止するまでアクチュエータが制御され、スリーブ32Hが停止したら、ストロークセンサ45aで検出された移動量Dが所定値X以上であるか否かが判定される(ステップS3)。D≧Xであれば、スプライン歯32tとドグ歯11tとが噛み合ったと判断して、スリーブ32Hを第二方向に中立距離Dnだけ移動させ、停止させる(ステップS4)。
【0055】
一方、ステップS3において、D<XであればステップS5に進み、ジェネレータ4を駆動し、ジェネレータ4の動力によって入力軸11を介してスリーブ32Hを回す。これにより、スリーブ32Hとドグギヤ11dとの相対的な位相をずらし、次いで、スリーブ32Hを再度第一方向に移動させる(ステップS6)。そして、スリーブ32Hが移動したか否かを判定し(ステップS7)、スリーブ32Hが動かなければ、ステップS5に戻る。一方、スリーブ32Hが移動した場合には、スリーブ32Hが停止したか否かが判定され(ステップS8)、スリーブ32Hが停止するまで(すなわち、スプライン歯32tとドグ歯11tとが噛合するまで)アクチュエータが制御される。そして、スリーブ32Hが停止したら、ステップS4の処理が実施される。
【0056】
ハイ側のスリーブ32Hの調整が終わったら、ロー側のスリーブ32Lの調整(ステップS9〜S16の処理)が実施される。すなわち、ロー側のスリーブ32Lを第一方向に(遊転ギヤ15Lに向けて)移動させ(ステップS9)、スリーブ32Lが停止したか否かが判定される(ステップS10)。スリーブ32Lが停止するまでアクチュエータが制御され、スリーブ32Lが停止したら、ストロークセンサ45bで検出された移動量Dが所定値X以上であるか否かが判定される(ステップS11)。D≧Xであれば、スプライン歯とドグ歯とが噛み合ったと判断して、スリーブ32Lを第二方向に中立距離Dnだけ移動させ、停止させる(ステップS12)。
【0057】
一方、ステップS11において、D<XであればステップS13に進み、ジェネレータ4を駆動し、ジェネレータ4の動力によって遊転ギヤ15Lを回す。これにより、スリーブ32Lとドグギヤ15dとの相対的な位相をずらし、次いで、スリーブ32Lを再度第一方向に移動させる(ステップS14)。そして、スリーブ32Lが移動したか否かを判定し(ステップS15)、スリーブ32Lが動かなければ、ステップS13に戻る。一方、スリーブ32Lが移動した場合には、スリーブ32Lが停止したか否かが判定され(ステップS16)、スリーブ32Lが停止するまで(すなわち、スプライン歯とドグ歯とが噛合するまで)アクチュエータが制御される。そして、スリーブ32Lが停止したら、ステップS12の処理が実施される。
【0058】
[5.作用,効果]
(1)上述したトランスアクスル1の制御装置5では、出力軸12が停止状態であるときに、各スリーブ32H,32Lを各遊転ギヤ11H,15Lのドグギヤ11d,15dに係合させるよう第一方向に移動させたのち、中立距離Dnだけスリーブ32H,32Lを第二方向に移動させる。ここで、本実施形態の中立距離Dnは、0点位置Pnから係合位置Peまでの距離に予め設定されているため、スリーブ32H,32Lの初期位置Psを確実に0点位置Pnに調整(設定)することができる。これにより、スリーブ32H,32Lとドグギヤ11d,15dの各歯が誤って噛み合ったり、これらの歯が誤って噛み合わなかったりすることを防止でき、クラッチ制御を精度よく行うことができる。
【0059】
(2)上述した制御装置5では、各スリーブ32H,32Lを第一方向に移動させる際に、ジェネレータ4の動力によってスリーブ32H,32Lとドグギヤ11d,15dとの相対的な位相をずらすため、ギヤブロックの発生を抑制することができる。すなわち、スリーブ32H,32Lの歯とドグギヤ11d,15dの歯とが噛み合いやすくなり、スリーブ32H,32Lの位置を速やかに調整することができる。
(3)また、スリーブ32H,32Lを移動させている際にギヤブロックが生じたと判断してからジェネレータ4を作動させるため、最小限の動力でスプライン歯とドグ歯とを噛合させることができ、スリーブ32H,32Lの位置を速やかに調整することができる。
【0060】
(4)制御装置5は、スリーブ32H,32Lの各移動量Dが所定値X以上であるか否かによってギヤブロックの有無を判定するため、位置センサよりも安価なストロークセンサ45a,45bを使って判定を実施できる。
(5)上述したスリーブ位置制御が、パワースイッチ6がオフ操作されることで車両10の主電源が切断された際に実施されることで、車両10の発進直前(車両10の主電源が接続されたとき)に実施される場合と比較して、車両10を速やかに発進させることができる。
【0061】
(6)また、上述した車両10では、停止直前にEVモードが選択されるため、エンジン10側の第二ドグクラッチ30は開放されている。このため、上述したように第二ドグクラッチ30のスリーブ32H,32Lの位置を調整することで、次回のドライブサイクルでのクラッチ制御を精度よく行うことができる。
【0062】
(7)なお、上述したトランスアクスル1では、第二経路52上に第二ドグクラッチ30が設けられ、パラレルモードでの走行時に、走行状態や要求出力等に応じてハイギヤ段とローギヤ段とが切り替えられる。つまり、パラレルモードにおいて、エンジン2の動力を二段階に切り替えて伝達(出力)することができるため、走行パターンを増やすことができ、ドライブフィーリングの向上や燃費改善といった効果が得られ、車両商品性を向上させることができる。
【0063】
また、上述した第二ドグクラッチ30は、ハイ側ドグクラッチ30Hとロー側ドグクラッチ30Lとから構成され、各ドグクラッチ30H,30Lにはスリーブ32H,32Lが設けられるため、ギヤ比の制約がない。すなわち、ハイギヤ段,ローギヤ段の各ギヤ比を自由に設定することができる。さらに、上述した車両10では、エンジン2及びモータ3の動力を個別に出力可能であるため、ハイロー切替時におけるトルク抜けをモータ3の動力でカバーすることができる。これにより、変速ショックを抑制することができるとともに、ハイロー切替を早急に行う必要性が低くなることから第二ドグクラッチ30の構成を簡素化することができる。
【0064】
上述した実施形態では、ハイギヤ段とローギヤ段との切り替えに、シンクロ機構を持たない第二ドグクラッチ30が用いられるため、小型化を図ることができ、省スペース化を実現できる。また、油圧を利用したクラッチ機構ではないためオイルポンプが不要であり、さらに引き摺り損失を低減できるため高効率化が期待できる。
【0065】
なお、上述したトランスアクスル1では、第一経路51上にも第一ドグクラッチ20が設けられており、パラレルモードでの走行時に、モータ3によるアシストが不要な場合には第一ドグクラッチ20を開放することでモータ3を出力軸12から切り離すことができる。これにより、モータ3の連れ回りを回避でき、電力消費を抑えられ、損失低減を図ることができる。
【0066】
[6.その他]
上述したスリーブ調整制御の内容は一例であって、上述したものに限られない。例えば、最初にロー側のスリーブ32Lの位置を調整してもよいし、二つのスリーブ32H,32Lの位置を同時に調整してもよい。また、スリーブ32H,32Lの第一方向への移動中にスプライン歯とドグ歯とが噛み合わずに衝突したか否かを、ストロークセンサ45a,45bで検出された移動量D以外のパラメータを用いて判断してもよい。また、ハイ側のスリーブ32Hとロー側のスリーブ32Lとを同一のアクチュエータで制御してもよい。
【0067】
上述したトランスアクスル1は一例であって、その構成は上述したものに限られない。例えば、上述したトランスアクスル1では、第二ドグクラッチ30が入力軸11及び第一カウンタ軸15のそれぞれに設けられているが、一方の軸11,15に一つの第二ドグクラッチが設けられていてもよい。例えば、入力軸11に設けられた第二ドグクラッチの軸方向の一側にハイ側のドグギヤを配置し、他側にロー側のドグギヤを配置して、第二ドグクラッチのスリーブが両方のドグギヤと噛み合うように設けられていてもよい。
【0068】
このような構成のトランスアクスルであっても、上述したスリーブ調整制御を適用可能である。例えば、出力軸12が停止状態であるときに、ハイ側のドグギヤに向けてスリーブを移動させ、ハイ側のドグギヤとスリーブとが係合したら、そこまでの移動量(初期位置からハイ側の係合位置までの距離)をストロークセンサで検出する。次いで、ロー側のドグギヤに向けてスリーブを移動させ、ロー側のドグギヤとスリーブとが係合したら、そこまでの移動量(ハイ側の係合位置からロー側の係合位置までの距離)をストロークセンサで検出する。そして、後者の検出値(移動量)の半分の値を中立距離として算出し、スリーブを逆方向に(すなわちハイ側に向けて)中立距離だけ移動させる。これにより、スリーブを確実に0点位置に調整することができる。
【0069】
なお、トランスアクスル1は、ストロークセンサに加えて、スリーブ32H,32Lの位置を直接的に検出する位置センサを備えていてもよい。このようなトランスアクスルであっても、位置センサが故障した場合にはスリーブの位置を正確に検出することができないため、上述したスリーブ調整制御を実施して、スリーブを0点位置に調整してもよい。
【0070】
また、上述したスリーブ調整制御では、第二経路52上の第二ドグクラッチ30のスリーブ32H,32Lの位置を調整しているが、これに代えてあるいは加えて、第一経路51上の第一ドグクラッチ20のスリーブ22の位置を調整してもよい。すなわち、上述したスリーブ調整制御は、ハイロー切り替え用の第二ドグクラッチ30に限らず、動力伝達の断接を切り替えるドグクラッチ(例えば第一ドグクラッチ20)に対して適用可能である。第一ドグクラッチ20に適用する場合、モータ3(第一の回転電機)の動力によって遊転ギヤ16M(第一ギヤ)の位相を変化させて、スリーブ22のスプライン歯とドグギヤ16d(被係合ギヤ)のドグ歯とが噛み合いやすくすることが好ましい。なお、第一ドグクラッチ20は必須の構成ではなく、省略してもよい。
【0071】
また、上述したトランスアクスル1は、ハイギヤ段とローギヤ段とを有し、これらが第二ドグクラッチ30により切り替えられるが、2段切り替え式のトランスアクスル以外のトランスアクスルに用いられるドグクラッチに対して、上述したスリーブ調整制御を適用してもよい。
なお、トランスアクスル1に対するエンジン2,モータ3,ジェネレータ4の相対位置は上述したものに限らない。これらの相対位置に応じて、トランスアクスル1内の六つの軸11〜16の配置を設定すればよい。また、トランスアクスル1内の各軸に設けられるギヤの配置も一例であって、上述したものに限られない。
【符号の説明】
【0072】
1 トランスアクスル
2 エンジン
3 モータ(電動機,第一の回転電機)
4 ジェネレータ(発電機,第二の回転電機)
5 制御装置
8 駆動輪
10 車両
11 入力軸
11d ドグギヤ(被係合ギヤ)
11H 遊転ギヤ(第一ギヤ)
11t ドグ歯(ドグギヤの歯)
12 出力軸
15 第一カウンタ軸
15d ドグギヤ(被係合ギヤ)
15L 遊転ギヤ(第一ギヤ)
16d ドグギヤ(被係合ギヤ)
16M 遊転ギヤ(第一ギヤ)
20 第一ドグクラッチ(クラッチ)
22 スリーブ
30 第二ドグクラッチ(エンジン側クラッチ,クラッチ)
30H ハイ側ドグクラッチ(エンジン側クラッチ,クラッチ)
30L ロー側ドグクラッチ(エンジン側クラッチ,クラッチ)
32H,32L スリーブ
32t スプライン歯(スリーブの歯)
51 第一経路(第一動力伝達経路)
52 第二経路(第二動力伝達経路)
Dn 中立距離
D 移動量(ストローク量)
Pb ギヤブロック位置
Pe 係合位置
Pn 0点位置
Ps 初期位置
X 所定値
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】