特表-19111459IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2019年6月13日
【発行日】2020年12月3日
(54)【発明の名称】車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 10/02 20060101AFI20201106BHJP
   B60K 6/442 20071001ALI20201106BHJP
   B60K 6/52 20071001ALI20201106BHJP
   B60K 6/547 20071001ALI20201106BHJP
   B60W 10/08 20060101ALI20201106BHJP
   B60W 10/10 20120101ALI20201106BHJP
   B60W 20/20 20160101ALI20201106BHJP
   B60K 17/04 20060101ALI20201106BHJP
   F16H 3/093 20060101ALI20201106BHJP
   B60L 3/00 20190101ALI20201106BHJP
   B60L 15/20 20060101ALI20201106BHJP
   B60L 50/16 20190101ALI20201106BHJP
【FI】
   B60W10/02 900
   B60K6/442ZHV
   B60K6/52
   B60K6/547
   B60W10/08 900
   B60W10/10 900
   B60W20/20
   B60K17/04 G
   F16H3/093
   B60L3/00 N
   B60L15/20 S
   B60L50/16
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】26
【出願番号】特願2019-558003(P2019-558003)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2018年8月29日
(31)【優先権主張番号】特願2017-232752(P2017-232752)
(32)【優先日】2017年12月4日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092978
【弁理士】
【氏名又は名称】真田 有
(74)【代理人】
【識別番号】100183689
【弁理士】
【氏名又は名称】諏訪 華子
(72)【発明者】
【氏名】安部 洋則
(72)【発明者】
【氏名】清水 亮
(72)【発明者】
【氏名】那須 剛太
【テーマコード(参考)】
3D039
3D202
3J528
5H125
【Fターム(参考)】
3D039AA03
3D039AB27
3D039AC38
3D039AD53
3D202AA02
3D202BB35
3D202BB37
3D202BB66
3D202CC75
3D202CC85
3D202DD01
3D202DD26
3D202DD32
3D202DD33
3D202DD39
3D202FF12
3D202FF13
3J528EA21
3J528EB37
3J528EB62
3J528EB63
3J528EB66
3J528EB75
3J528EB93
3J528FB04
3J528FB12
3J528FB14
3J528GA01
3J528JE03
3J528JJ03
5H125AA01
5H125AB01
5H125AC08
5H125AC12
5H125BA05
5H125BE05
5H125CD00
5H125EE08
5H125EE51
(57)【要約】
車両には、第一回転電機(3,4)と車輪を駆動する出力軸(12)との間の動力伝達経路上に介装された断接機構(20,30)と、第一回転電機(3,4)の回転速度を第一回転速度(Nm,Ng)として検出する第一回転電機速度センサ(43,44)と、車輪の回転速度を車輪速(Nw)として検出する車輪速センサ(42)とが設けられる。制御装置5は、断接機構(20,30)の係合状態で第一回転速度(Nm,Ng)に基づき出力軸(12)の回転速度である車軸回転速度(Nam,Nag)を算出する第一算出部(5B)と、第一算出部(5B)で算出された車軸回転速度(Nam,Nag)と車輪速(Nw)との偏差(X,Y)を算出するモニター部(5C)と、断接機構(20,30)の切断状態で、算出した偏差(X,Y)に基づいて車輪速(Nw)を補正して車軸回転速度(Nax,Nay)を算出する第二算出部(5D)と、を備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された第一回転電機と車輪を駆動する出力軸との間の第一動力伝達経路上に介装された第一断接機構と、前記第一回転電機の回転速度を第一回転速度として検出する第一回転電機速度センサと、前記車輪の回転速度を車輪速として検出する車輪速センサと、を具備した前記車両の制御装置において、
前記第一断接機構の係合状態で、前記第一回転速度に基づき前記出力軸の回転速度である車軸回転速度を算出する第一算出部と、
前記第一算出部で算出された前記車軸回転速度と前記車輪速との偏差を算出するモニター部と、
前記第一断接機構の切断状態で、算出した前記偏差に基づいて前記車輪速を補正して前記車軸回転速度を算出する第二算出部と、を備えた
ことを特徴とする、車両の制御装置。
【請求項2】
前記モニター部は、前記車両の走行中に定期的に前記偏差を算出するとともに、算出した前記偏差の平均値を記憶する
ことを特徴とする、請求項1記載の車両の制御装置。
【請求項3】
前記車両には、前記出力軸に接続される第二動力伝達経路に第二回転電機が搭載され、前記第二動力伝達経路には第二断接機構が設けられ、
前記制御装置は、前記第一断接機構及び前記第二断接機構の各断接状態を制御する制御部を備え、
前記制御部は、前記第一断接機構の切断状態で前記第二断接機構を係合させるべく前記第二断接機構を回転同期させる場合には、前記第二算出部で算出された前記車軸回転速度を用いる
ことを特徴とする、請求項1又は2記載の車両の制御装置。
【請求項4】
前記第一動力伝達経路及び前記第二動力伝達経路は、前記出力軸から前記第一回転電機への変速段数が前記出力軸から前記第二回転電機への変速段数よりも少なくなるように形成される
ことを特徴とする、請求項3記載の車両の制御装置。
【請求項5】
前記車両には前記第二回転電機を発電させるエンジンが搭載され、前記第二動力伝達経路を通じて前記エンジンの動力が前記出力軸に伝達されるとともに、
前記第二断接機構は、前記第二動力伝達経路の動力断接機能に加え、ハイギヤ段とローギヤ段とを切り替える切替機能を有する
ことを特徴とする、請求項3又は4記載の車両の制御装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記第一断接機構の係合状態で前記第二断接機構を係合させるべく前記第二断接機構を回転同期させる場合には、前記第一算出部で算出された前記車軸回転速度を用いる
ことを特徴とする、請求項3〜5のいずれか1項に記載の車両の制御装置。
【請求項7】
前記車両には前記第二回転電機の回転速度を第二回転速度として検出する第二回転電機速度センサが設けられ、
前記制御部は、前記第一断接機構の切断状態で前記第二断接機構を係合させる場合、前記第二算出部で算出された前記車軸回転速度と前記第二回転電機速度センサで検出された前記第二回転速度とに基づいて前記第二断接機構が回転同期するように前記第二回転電機を制御してから前記第二断接機構を係合させる
ことを特徴とする、請求項3〜6のいずれか1項に記載の車両の制御装置。
【請求項8】
前記制御装置は、前記第一断接機構の断接状態を制御する副制御部を備え、
前記副制御部は、前記第一断接機構を切断状態から係合させる場合、前記第二算出部で算出された前記車軸回転速度と前記第一回転電機速度センサで検出された前記第一回転速度とに基づいて前記第一断接機構が回転同期するように前記第一回転電機を制御してから前記第一断接機構を係合させる
ことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の車両の制御装置。
【請求項9】
前記車両には前記第二回転電機の回転速度を第二回転速度として検出する第二回転電機速度センサが設けられ、
前記第一断接機構及び前記第二断接機構がいずれも噛み合いクラッチとして設けられ、
前記第一算出部は、前記第二動力伝達経路上の前記第二断接機構の係合状態で、前記第二回転速度に基づき前記車軸回転速度を算出し、
前記モニター部は、前記第二回転速度に基づいて算出された前記車軸回転速度と前記車輪速との偏差である第二偏差を算出し、
前記第二算出部は、前記第二動力伝達経路上の前記第二断接機構の切断状態で、前記車輪速及び前記第二偏差を用いて前記車軸回転速度を算出し、
前記制御部は、前記第二動力伝達経路上の前記第二断接機構の切断状態で前記第一断接機構を係合させるべく前記第一断接機構を回転同期させる場合には、前記車輪速及び前記第二偏差から算出された前記車軸回転速度を用いる
ことを特徴とする、請求項3〜6のいずれか1項に記載の車両の制御装置。
【請求項10】
前記偏差が所定値以上である場合に前記第一断接機構の切断を禁止する禁止部を備えた
ことを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の車両の制御装置。
【請求項11】
前記車両には、前輪及び後輪のいずれか一方の車輪を駆動する前記第一回転電機と、他方の車輪を断接機構を介さずに駆動する第三回転電機と、前記第三回転電機の回転速度を第三回転速度として検出する第三回転電機速度センサとが設けられ、
前記第二算出部は、前記車輪速センサの故障時には、前記第三回転速度に基づいて前記一方の車輪に接続される車軸の回転速度を算出する
ことを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載の車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機と出力軸との間の動力伝達経路上に設けられた断接機構を備えた車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の駆動源(エンジン,モータ,モータジェネレータ等)を備えた車両には、駆動源と出力軸との間の動力伝達経路上にクラッチ(断接機構)が介装され、クラッチの断接状態が制御されることで、駆動源の切り替えが行われている。クラッチ係合の際には、駆動源側の回転速度と出力軸側の回転速度との差が所定値以下となるように回転の同期が図られる(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017−5914号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
クラッチ係合の際に回転を同期させるためには、出力軸側の回転速度(以下「車軸回転速度」という)に駆動源側の回転速度が合うように駆動源が制御される。一般的に、駆動源には、その作動状態を精度よく制御するために高精度な回転速度センサが設けられる。しかし、車軸回転速度は、駆動源に設けられた回転速度センサよりも検出精度の低い車輪速センサにより検出されるため、クラッチ係合の際に精度よく回転同期させることが難しいという課題がある。
【0005】
本件の車両の制御装置は、このような課題に鑑み案出されたもので、精度よく車軸回転速度を算出することを目的の一つとする。なお、この目的に限らず、後述する発明を実施するための形態に示す各構成により導かれる作用効果であって、従来の技術によっては得られない作用効果を奏することも本件の他の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)ここで開示する車両の制御装置は、車両に搭載された第一回転電機と車輪を駆動する出力軸との間の第一動力伝達経路上に介装された第一断接機構と、前記第一回転電機の回転速度を第一回転速度として検出する第一回転電機速度センサと、車輪の回転速度を車輪速として検出する車輪速センサと、を具備した車両の制御装置であって、前記第一断接機構の係合状態で、前記第一回転速度に基づき前記出力軸の回転速度である車軸回転速度を算出する第一算出部と、前記第一算出部で算出された前記車軸回転速度と前記車輪速との偏差を算出するモニター部と、前記第一断接機構の切断状態で、算出した前記偏差に基づいて前記車輪速を補正して前記車軸回転速度を算出する第二算出部と、を備えている。
【0007】
(2)前記モニター部は、前記車両の走行中に定期的に前記偏差を算出するとともに、算出した前記偏差の平均値を記憶することが好ましい。
(3)前記車両には、前記出力軸に接続される第二動力伝達経路に第二回転電機が搭載され、前記第二動力伝達経路には第二断接機構が設けられることが好ましい。この場合、前記制御装置は、前記第一断接機構及び前記第二断接機構の各断接状態を制御する制御部を備え、前記制御部は、前記第一断接機構の切断状態で前記第二断接機構を係合させるべく前記第二断接機構を回転同期させる場合には、前記第二算出部で算出された前記車軸回転速度を用いることが好ましい。
【0008】
(4)前記第一動力伝達経路及び前記第二動力伝達経路は、前記出力軸から前記第一回転電機への変速段数が前記出力軸から前記第二回転電機への変速段数よりも少なくなるように形成されることが好ましい。
(5)前記車両には前記第二回転電機を発電させるエンジンが搭載され、前記第二動力伝達経路を通じて前記エンジンの動力が前記出力軸に伝達されるとともに、前記第二断接機構は、前記第二動力伝達経路の動力断接機能に加え、ハイギヤ段とローギヤ段とを切り替える切替機能を有することが好ましい。
【0009】
(6)前記制御部は、前記第一断接機構の係合状態で前記第二断接機構を係合させるべく前記第二断接機構を回転同期させる場合には、前記第一算出部で算出された前記車軸回転速度を用いることが好ましい。
【0010】
(7)前記車両には前記第二回転電機の回転速度を第二回転速度として検出する第二回転電機速度センサが設けられることが好ましい。この場合、前記制御部は、前記第一断接機構の切断状態で前記第二断接機構を係合させる場合、前記第二算出部で算出された前記車軸回転速度と前記第二回転電機速度センサで検出された前記第二回転速度とに基づいて前記第二断接機構が回転同期するように前記第二回転電機を制御してから前記第二断接機構を係合させることが好ましい。
【0011】
(8)前記制御装置は、前記第一断接機構の断接状態を制御する副制御部を備えることが好ましい。この場合、前記副制御部は、前記第一断接機構を切断状態から係合させる場合、前記第二算出部で算出された前記車軸回転速度と前記第一回転電機速度センサで検出された前記第一回転速度とに基づいて前記第一断接機構が回転同期するように前記第一回転電機を制御してから前記第一断接機構を係合させることが好ましい。なお、前記副制御部が前記制御部の一部として設けられていてもよい。
【0012】
(9)前記車両には前記第二回転電機の回転速度を第二回転速度として検出する第二回転電機速度センサが設けられ、前記第一断接機構及び前記第二断接機構がいずれも噛み合いクラッチとして設けられることが好ましい。この場合、前記第一算出部は、前記第二動力伝達経路上の前記第二断接機構の係合状態で前記第二回転速度に基づき前記車軸回転速度を算出し、前記モニター部は、前記第二回転速度に基づいて算出された前記車軸回転速度と前記車輪速との偏差である第二偏差を算出し、前記第二算出部は、前記第二動力伝達経路上の前記第二断接機構の切断状態で前記車輪速及び前記第二偏差を用いて前記車軸回転速度を算出し、前記制御部は、前記第二動力伝達経路上の前記第二断接機構の切断状態で前記第一断接機構を係合させるべく前記第一断接機構を回転同期させる場合には、前記車輪速及び前記第二偏差から算出された前記車軸回転速度を用いることが好ましい。
【0013】
(10)前記制御装置は、前記偏差が所定値以上である場合に前記第一断接機構の切断を禁止する禁止部を備えていることが好ましい。
(11)前記車両には、前輪及び後輪のいずれか一方の車輪を駆動する前記第一回転電機と、他方の車輪を断接機構を介さずに駆動する第三回転電機と、前記第三回転電機の回転速度を第三回転速度として検出する第三回転電機速度センサとが設けられることが好ましい。この場合、前記第二算出部は、前記車輪速センサの故障時には、前記第三回転速度に基づいて前記一方の車輪に接続される車軸の回転速度を算出することが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
開示の車両の制御装置によれば、精度よく車軸回転速度を算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態に係る制御装置を搭載した車両の内部構成を例示する上面図である。
図2図1の車両に搭載されるトランスアクスルを備えたパワートレインの模式的な側面図である。
図3図2のトランスアクスルを備えたパワートレインを示すスケルトン図である。
図4図1の制御装置のモニター部で実施されるフローチャート例であり、(a)はEVモード又はシリーズモードのときに選択され、(b)はパラレルモードのときに選択される。
図5図1の制御装置で実施される制御内容を説明するフローチャート例である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図面を参照して、実施形態としての車両の制御装置について説明する。以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることができる。
【0017】
[1.全体構成]
本実施形態の制御装置5は、図1に示す車両10に適用され、この車両10に搭載されるトランスアクスル1を制御する。この車両10は、駆動源としてのエンジン2と走行用のモータ3(電動機,第一回転電機)と発電用のジェネレータ4(発電機,第二回転電機)とを装備したFF式のハイブリッド車両である。ジェネレータ4はエンジン2に連結され、モータ3の作動状態とは独立して作動可能である。また、車両10にはEVモード,シリーズモード,パラレルモードの三種類の走行モードが用意される。これらの走行モードは、制御装置5によって、車両状態や走行状態,運転者の要求出力等に応じて択一的に選択され、その種類に応じてエンジン2,モータ3,ジェネレータ4が使い分けられる。
【0018】
EVモードは、エンジン2及びジェネレータ4を停止させたまま、駆動用のバッテリ6の充電電力を用いてモータ3のみで車両10を駆動する走行モードである。EVモードは、走行負荷,車速が低い場合やバッテリ6の充電レベルが高い場合に選択される。シリーズモードは、エンジン2でジェネレータ4を駆動して発電しつつ、その電力を利用してモータ3で車両10を駆動する走行モードである。シリーズモードは、走行負荷,車速が中程度の場合やバッテリ6の充電レベルが低い場合に選択される。パラレルモードは、おもにエンジン2の動力で車両10を駆動し、必要に応じてモータ3で車両10の駆動をアシストする走行モードであり、走行負荷,車速が高い場合に選択される。
【0019】
駆動輪8(車輪,本実施形態では前輪)には、トランスアクスル1を介してエンジン2及びモータ3が並列に接続され、エンジン2及びモータ3のそれぞれの動力が互いに異なる動力伝達経路から個別に伝達される。すなわち、エンジン2及びモータ3のそれぞれは、車両10の出力軸12を駆動する駆動源である。また、エンジン2には、トランスアクスル1を介してジェネレータ4及び駆動輪8が並列に接続され、エンジン2の動力が、駆動輪8に加えてジェネレータ4にも伝達される。
【0020】
トランスアクスル1は、デファレンシャルギヤ18(差動装置、以下「デフ18」と呼ぶ)を含むファイナルドライブ(終減速機)とトランスミッション(減速機)とを一体に形成した動力伝達装置であり、駆動源と被駆動装置との間の動力伝達を担う複数の機構を内蔵する。本実施形態のトランスアクスル1は、ハイロー切替(高速段,低速段の切替)が可能に構成されており、パラレルモードでの走行時において、制御装置5によって走行状態や要求出力等に応じてハイギヤ段とローギヤ段とが切り替えられる。以下、パラレルモードでの走行を「パラレル走行」ともいう。
【0021】
エンジン2は、ガソリンや軽油を燃料とする内燃機関(ガソリンエンジン,ディーゼルエンジン)である。このエンジン2は、クランクシャフト2a(回転軸)の向きが車両10の車幅方向に一致するように横向きに配置されたいわゆる横置きエンジンであり、トランスアクスル1の右側面に対して固定される。クランクシャフト2aは、駆動輪8のドライブシャフト9に対して平行に配置される。エンジン2の作動状態は、制御装置5で制御される。
【0022】
本実施形態のモータ3及びジェネレータ4はいずれも、電動機としての機能と発電機としての機能とを兼ね備えた電動発電機(モータ・ジェネレータ)である。モータ3は、おもに電動機として機能して車両10を駆動し、回生時には発電機として機能する。ジェネレータ4は、エンジン2を始動させる際に電動機(スターター)として機能し、エンジン2の作動時にはエンジン動力で発電を実施する。モータ3及びジェネレータ4の各周囲(又は各内部)には、直流電流と交流電流とを変換するインバータ(図示略)が設けられる。モータ3及びジェネレータ4の各回転速度は、インバータを制御することで制御される。なお、モータ3,ジェネレータ4,各インバータの作動状態は、制御装置5で制御される。
【0023】
図2はパワートレイン7を左側から見た側面図である。パワートレイン7は、エンジン2,モータ3,ジェネレータ4,トランスアクスル1を含んで構成される。なお、図2ではエンジン2は省略している。
【0024】
車両10には、車両10に搭載される各種装置を統合制御する制御装置5が設けられる。また、車両10には、アクセルペダルの踏み込み操作量(アクセル開度)を検出するアクセル開度センサ41と、車輪の回転速度である車輪速Nwを検出する車輪速センサ42と、モータ3の回転速度Nm(第一回転速度)を検出するモータ回転速度センサ43(第一回転電機速度センサ)と、ジェネレータ4の回転速度Ng(第二回転速度)を検出するジェネレータ回転速度センサ44(第二回転電機速度センサ)とが設けられる。各センサ41〜44で検出された情報は、制御装置5に伝達される。なお、モータ回転速度センサ43及びジェネレータ回転速度センサ44は、車輪速センサ42よりも検出精度が高い。
【0025】
制御装置5は、例えばマイクロプロセッサやROM,RAM等を集積したLSIデバイスや組み込み電子デバイスとして構成された電子制御装置であり、車両10に搭載される各種装置を統合制御する。本実施形態の制御装置5は、運転者の要求出力等に応じて走行モードを選択し、選択した走行モードに応じて各種機器(例えばエンジン2やモータ3)を制御するとともにトランスアクスル1内のクラッチ20,30の断接状態を制御する。この制御については後述する。
【0026】
[2.トランスアクスル]
図3は、本実施形態のトランスアクスル1を備えたパワートレイン7のスケルトン図である。図2及び図3に示すように、トランスアクスル1には、互いに平行に配列された六つの軸11〜16が設けられる。以下、クランクシャフト2aと同軸上に接続される回転軸を入力軸11と呼ぶ。
【0027】
同様に、ドライブシャフト9,モータ3の回転軸3a,ジェネレータ4の回転軸4aのそれぞれと同軸上に接続される回転軸を、出力軸12,モータ軸13,ジェネレータ軸14と呼ぶ。また、入力軸11と出力軸12との間の動力伝達経路上に配置された回転軸を第一カウンタ軸15と呼び、モータ軸13と出力軸12との間の動力伝達経路上に配置された回転軸を第二カウンタ軸16と呼ぶ。六つの軸11〜16はいずれも、両端部が図示しない軸受を介してケーシング1Cに軸支される。
【0028】
トランスアクスル1の内部には、出力軸12に接続される三つの動力伝達経路が形成される。具体的には、図2中に二点鎖線で示すように、モータ3からモータ軸13を介して出力軸12に至る動力伝達経路(以下「第一経路51」と呼ぶ)と、エンジン2から入力軸11を介して出力軸12に至る動力伝達経路(以下「第二経路52」と呼ぶ)と、エンジン2から入力軸11を介してジェネレータ軸14に至る動力伝達経路(以下「第三経路53」と呼ぶ)とが形成される。ここで、第一経路51及び第二経路52は駆動用動力伝達経路であり、第三経路53は発電用動力伝達経路である。
【0029】
第一経路51(第一動力伝達経路)は、モータ3と駆動輪8との間の動力伝達に係る経路であり、モータ3の動力伝達を担うものである。第一経路51上には、モータ3と同期して回転することで動力が伝達されるモータ軸13及びモータ軸13の動力が伝達される第二カウンタ軸16が設けられ、第一経路51の中途にはその動力伝達を断接する後述の第一ドグクラッチ20(第一断接機構,噛み合いクラッチ)が介装される。
【0030】
第二経路52(第二動力伝達経路)上には、ジェネレータ4と同期して回転することで動力が伝達される入力軸11及び入力軸11の動力が伝達される第一カウンタ軸15が設けられ、第二経路52の中途にはその動力伝達の断接とハイロー切替とを実施する後述の第二ドグクラッチ30(第二断接機構,噛み合いクラッチ)が介装される。
【0031】
第三経路53は、エンジン2とジェネレータ4との間の動力伝達に係る経路であり、エンジン始動時の動力伝達及びエンジン2による発電時の動力伝達を担うものである。
【0032】
次に、図3を用いてトランスアクスル1の構成を詳述する。なお、以下の説明において、「固定ギヤ」とは、軸と一体に設けられ、軸に対して同期回転する(相対回転不能な)歯車を意味する。また、「遊転ギヤ」とは、軸に対して相対回転可能に枢支された歯車を意味する。
【0033】
入力軸11には、エンジン2に近い側から順に、固定ギヤ11aと、ハイ側の第二ドグクラッチ30(以下、「ハイ側ドグクラッチ30H」と呼ぶ)と、遊転ギヤ11Hと、固定ギヤ11Lとが設けられる。また、第一カウンタ軸15には、エンジン2の近い側から順に、固定ギヤ15aと、固定ギヤ15Hと、遊転ギヤ15Lと、ロー側の第二ドグクラッチ30(以下、「ロー側ドグクラッチ30L」と呼ぶ)とが設けられる。
【0034】
入力軸11の固定ギヤ11aは、ジェネレータ軸14に設けられた固定ギヤ14aと常時噛合している。つまり、入力軸11とジェネレータ軸14とは、二つの固定ギヤ11a,14aを介して連結されており、エンジン2とジェネレータ4との間で動力伝達可能とされる。また、第一カウンタ軸15の固定ギヤ15aは、出力軸12に設けられたデフ18のリングギヤ18aと常時噛合している。
【0035】
入力軸11の遊転ギヤ11Hは、隣接する固定ギヤ11Lよりも歯数が多く、第一カウンタ軸15の固定ギヤ15Hと常時噛合してハイギヤ段を形成する。また、入力軸11の固定ギヤ11Lは第一カウンタ軸15の遊転ギヤ15Lと常時噛合してローギヤ段を形成する。遊転ギヤ11H,15Lは、固定ギヤ15H,11Lと噛み合う各歯面部の側面に一体で設けられたドグギヤ11d,15dを有する。各ドグギヤ11d,15dの先端部(径方向外側の端部)には、図示しないドグ歯が設けられる。
【0036】
第二ドグクラッチ30を構成するハイ側ドグクラッチ30H及びロー側ドグクラッチ30Lは、第二経路52上に設けられた断接機構であり、第二経路52の動力断接機能に加え、ハイギヤ段とローギヤ段とを切り替える切替機能を有する。走行モードがEVモード又はシリーズモードである場合は、第二ドグクラッチ30が切断され、走行モードがパラレルモードである場合は第二ドグクラッチ30が係合される。本実施形態では、走行モードがパラレルモードである場合に、ハイ側ドグクラッチ30H及びロー側ドグクラッチ30Lの一方が係合されて他方が切断される。なお、どちらのクラッチ30H,30Lが係合するかは、車両10の走行状態や要求出力等に基づいて決定される。
【0037】
ハイ側ドグクラッチ30Hは、入力軸11に固定されたハブ31Hと環状のスリーブ32Hとを有する。また、ロー側ドグクラッチ30Lは、第一カウンタ軸15に固定されたハブ31Lと環状のスリーブ32Lとを有する。各スリーブ32H,32Lは、各ハブ31H,31Lに対して相対回転不能であって軸方向に摺動自在に結合されている。各スリーブ32H,32Lは、図示しないアクチュエータ(例えばサーボモータ)が制御装置5によって制御されることで軸方向にスライド移動する。各スリーブ32H,32Lの近傍には、その移動量(ストローク量)を検出するストロークセンサ(図示略)が設けられる。また、各スリーブ32H,32Lの径方向内側には、ドグギヤ11d,15dの各ドグ歯と噛合するスプライン歯(図示略)が設けられる。
【0038】
スリーブ32Hとドグギヤ11dとが係合した状態では、エンジン2からの駆動力がハイ側のギヤ対11H,15Hを通じて出力軸12へと伝達される。反対に、スリーブ32Hとドグギヤ11dとが離隔している場合には遊転ギヤ11Hが空転状態となり、第二経路52におけるハイ側の動力伝達が遮断された状態となる。また、スリーブ32Lとドグギヤ15dと係合した状態では、エンジン2からの駆動力がロー側のギヤ対11L,15Lを通じて出力軸12へと伝達される。反対に、スリーブ32Lとドグギヤ15dとが離隔している場合には遊転ギヤ15Lが空転状態となり、第二経路52におけるロー側の動力伝達が遮断された状態となる。
【0039】
第二カウンタ軸16には、エンジン2に近い側から順に、第一ドグクラッチ20と、遊転ギヤ16Mと、パーキングギヤ19と、固定ギヤ16aとが設けられる。固定ギヤ16aは、デフ18のリングギヤ18aと常時噛合している。パーキングギヤ19は、パーキングロック装置を構成する要素であり、運転者によりPレンジが選択されると、図示しないパーキングスプラグと係合して、第二カウンタ軸16(すなわち出力軸12)の回転を禁止する。
【0040】
遊転ギヤ16Mは、モータ軸13に設けられた固定ギヤ13aよりも歯数が多く、この固定ギヤ13aと常時噛合している。遊転ギヤ16Mは、固定ギヤ13aと噛み合う歯面部の右側に一体で設けられたドグギヤ16dを有する。なお、このドグギヤ16dの先端部には、ドグ歯が設けられる。第一ドグクラッチ20は、第二カウンタ軸16に固定されたハブ21と、ハブ21(第二カウンタ軸16)に対して相対回転不能であって軸方向に摺動自在に結合された環状のスリーブ22とを有する。スリーブ22は、図示しないアクチュエータが制御装置5によって制御されることで軸方向にスライド移動するものであり、図示しないストロークセンサによってその移動量(ストローク量)が検出される。スリーブ22の径方向内側には、ドグギヤ16dの先端部のドグ歯と噛合するスプライン歯(いずれも図示略)が設けられる。
【0041】
本実施形態では、走行モードがEVモード又はシリーズモードである場合、又はパラレルモードであってモータアシストが必要な場合には、第一ドグクラッチ20が係合される。すなわち、スリーブ22とドグギヤ16dとが噛合(係合)され、モータ3からの駆動力が出力軸12へと伝達される。また、走行モードがパラレルモードであってモータ3によるアシストが不要な場合には、第一ドグクラッチ20が切断される。すなわち、スリーブ22とドグギヤ16dとが離隔され、遊転ギヤ16Mが空転状態となり、第一経路51の動力伝達が遮断された状態となる。
【0042】
また、本実施形態のトランスアクスル1では、出力軸12からジェネレータ4への変速段数が3であるのに対し、出力軸12からモータ3への変速段数が2となるように第一経路51及び第二経路52が形成されている。すなわち、本実施形態では、ジェネレータ4の動力が出力軸12に伝達されるまでに、固定ギヤ14a及び固定ギヤ11a,ハイギヤ段又はローギヤ段,固定ギヤ15a及びリングギヤ18aの三箇所で変速される。これに対し、モータ3の動力が出力軸12に伝達されるまでには、固定ギヤ13a及び遊転ギヤ16Mと、固定ギヤ16a及びリングギヤ18aとの二箇所で変速される。
【0043】
[3.制御概要]
上述したトランスアクスル1では、制御装置5によって、車両10の走行状態や運転者の要求出力等に応じて走行モードが選択されるとともに、選択された走行モードに従ってクラッチ20,30の断接状態が制御される。本実施形態の制御装置5は、クラッチ20,30を係合させる際に駆動源側の回転速度と出力軸12側の回転速度とを同期させるが、この同期に際し、参照する回転速度の値が高精度なものとなるように、状況に応じてその値を変更する。
【0044】
また、制御装置5は、第一ドグクラッチ20の係合状態では、車輪速センサ42で検出された値Nwと、モータ回転速度センサ43で検出された値Nmを車軸回転速度に換算(演算)した値Namとの偏差X(=Nam−Nw)を算出し、その値を記憶する。同様に、第二ドグクラッチ30の係合状態では、車輪速センサ42で検出された値Nwと、ジェネレータ回転速度センサ44で検出された値Ngを車軸回転速度に換算(演算)した値Nagとの偏差Y(=Nag−Nw)を算出し、その値を記憶する。これらの偏差(ずれ)X,Yは、クラッチ20,30が切断状態であるとき(切断中)に検出された車輪速Nwを補正するときに用いられ、その時点での車軸回転速度Nax,Nayとして算出される。なお、偏差X,Yについては後述する。
【0045】
以下、二つの偏差X,Yを区別するときは、前者を第一偏差Xと呼び、後者を第二偏差Yと呼ぶ。クラッチ20,30の切断状態では、算出された偏差X,Yに基づいて車輪速Nwを補正して車軸回転速度Nax,Nayを算出することで、精度よく回転を同期させることが可能となる。
さらに、本実施形態の制御装置5は、第一偏差Xが所定値Xp以上である場合に、車輪速センサ42,モータ回転速度センサ43の故障可能性があると判断して、第一ドグクラッチ20の切断を禁止する。
【0046】
本実施形態の制御装置5は、上記の偏差X,Yを1ドライブサイクル中(IG-ONからIG-OFFまでの間)に定期的に算出するとともに、算出した各偏差X,Yの平均値Xav,Yavをそれぞれ算出して記憶(更新)する。これらの平均値Xav,Yavは、クラッチ20又は30の切断中に検出された車輪速Nwに加算され、その時点での車軸回転速度Nax,Nayとして算出される。以下、各クラッチ20,30の回転同期について詳述する。
【0047】
切断状態の第一ドグクラッチ20を係合させる場合、モータ3側(ドグギヤ16d)の回転速度は、モータ回転速度センサ43で検出されたモータ回転速度Nmと、固定ギヤ13a,16Mのギヤ比とから求められる。一方、出力軸12側(スリーブ22)の回転速度は、出力軸12の回転速度である車軸回転速度と、固定ギヤ16a及びリングギヤ18aのギヤ比とから求められる。
【0048】
ここで、第二ドグクラッチ30の係合状態で第一ドグクラッチ20を係合させる場合は、ジェネレータ回転速度センサ44で検出されたジェネレータ回転速度Ngに基づき、車軸回転速度Nagが算出される。すなわち、パラレル走行中にモータアシストが不要となって切断した第一ドグクラッチ20を、再び係合する場合には、車輪速Nwを用いることなく、モータ回転速度Nm及びジェネレータ回転速度Ngに基づき回転同期が行われる。
【0049】
これに対し、第二ドグクラッチ30の切断状態で第一ドグクラッチ20を係合させる場合は、ジェネレータ回転速度Ngを用いることができないため、車輪速センサ42で検出された車輪速Nwと、記憶しておいた平均値Yav(第二偏差Yの平均値)とに基づき、車軸回転速度Nayが算出される。例えば、パラレルモードからEVモード又はシリーズモードへの切替時には、第二ドグクラッチ30が係合状態であるときに記憶しておいた第二偏差Yの平均値Yavに基づき車輪速Nwを補正することで車軸回転速度Nayを算出し、この車軸回転速度Nay及びモータ回転速度Nmに基づき回転同期が行われる。
【0050】
また、切断状態のハイ側ドグクラッチ30Hを係合させる場合、ジェネレータ4側(スリーブ32H)の回転速度は、ジェネレータ回転速度センサ44で検出されたジェネレータ回転速度Ngと、固定ギヤ11a,14aのギヤ比とから求められる。一方、出力軸12側(ドグギヤ11d)の回転速度は、車軸回転速度と、ハイギヤ段のギヤ比と、固定ギヤ15a及びリングギヤ18aのギヤ比とから求められる。
【0051】
ここで、第一ドグクラッチ20の係合状態でハイ側ドグクラッチ30Hを係合させる場合は、モータ回転速度センサ43で検出されたモータ回転速度Nmに基づいて車軸回転速度Namが算出される。例えば、EVモード又はシリーズモードからパラレルモード(ハイギヤ段)への切替時には、車輪速Nwを用いることなく、モータ回転速度Nm及びジェネレータ回転速度Ngに基づき回転同期が行われる。
【0052】
これに対し、第一ドグクラッチ20の切断状態でハイ側ドグクラッチ30Hを係合させる場合は、モータ回転速度Nmを用いることができないため、車輪速センサ42で検出された車輪速Nwと、記憶しておいた平均値Xav(第一偏差Xの平均値)とに基づき、車軸回転速度Naxが算出される。例えば、モータアシスト不要のパラレル走行中にローギヤ段からハイギヤ段へ切り替える場合には、第一ドグクラッチ20が係合状態であるとき(係合中)に記憶しておいた第一偏差Xの平均値Xavに基づき車輪速Nwを補正することで車軸回転速度Naxを算出し、この車軸回転速度Nax及びジェネレータ回転速度Ngに基づき回転同期が行われる。
【0053】
また、切断状態のロー側ドグクラッチ30Lを係合させる場合、ジェネレータ4側(ドグギヤ15d)の回転速度は、ジェネレータ回転速度Ngと、固定ギヤ11a,14aのギヤ比と、ローギヤ段のギヤ比とから求められる。一方、出力軸12側(スリーブ32L)の回転速度は、車軸回転速度と、固定ギヤ15a及びリングギヤ18aのギヤ比とから求められる。ここで、第一ドグクラッチ20の係合状態でロー側ドグクラッチ30Lを係合させる場合は、ハイ側と同様、モータ回転速度Nmに基づき車軸回転速度Namが算出される。
【0054】
これに対し、第一ドグクラッチ20の切断状態でロー側ドグクラッチ30Lを係合させる場合は、モータ回転速度Nmを用いることができないため、ハイ側と同様、車輪速センサ42で検出された車輪速Nwと、記憶しておいた平均値Xav(第一偏差Xの平均値)とに基づき、車軸回転速度Naxが算出される。例えば、モータアシスト不要のパラレル走行中にハイギヤ段からローギヤ段へ切り替える場合には、第一ドグクラッチ20の係合中に記憶しておいた第一偏差Xの平均値Xavに基づき車輪速Nwを補正することで車軸回転速度Naxを算出し、この車軸回転速度Nax及びジェネレータ回転速度Ngに基づき回転同期が行われる。
【0055】
[4.制御構成]
制御装置5には、上述した回転同期と第一ドグクラッチ20の切断禁止とを含めたクラッチ断接制御を実施するための要素として、選択部5A,第一算出部5B,モニター部5C,第二算出部5D,制御部5Eおよび禁止部5Fが設けられる。これらの要素は、制御装置5で実行されるプログラムの一部の機能を示すものであり、ソフトウェアで実現されるものとする。ただし、各機能の一部又は全部をハードウェア(電子回路)で実現してもよく、あるいはソフトウェアとハードウェアとを併用して実現してもよい。
【0056】
選択部5Aは、車両10の運転状態,運転者の要求出力,バッテリ6の充電状態等に基づき、EVモード,シリーズモード,パラレルモードの中から一つの走行モードを選択するものである。なお、要求出力は、運転者が車両10に対して要求する出力(出力要求)であり、例えばアクセル開度や車速等に基づき推定(算出)される。選択部5Aは、例えば、車両10の発進時や停止時にはEVモードを選択する。また、走行負荷や車速が高いときにはパラレルモードを選択し、バッテリ6の充電率が低い場合にはシリーズモードを選択する。なお、本実施形態の選択部5Aは、パラレルモードを選択中に、例えば要求出力や車速等に基づいてモータアシストの要否を判断する。
【0057】
第一算出部5Bは、第一ドグクラッチ20の係合状態で、モータ回転速度Nmに基づいて車軸回転速度Namを算出するものである。本実施形態の第一算出部5Bは、第二ドグクラッチ30の係合状態では、ジェネレータ回転速度Ngに基づいて車軸回転速度Nagも算出する。なお、第一算出部5Bは、両方のクラッチ20,30が係合されているときに、モータ回転速度Nm及びジェネレータ回転速度Ngのそれぞれに基づいて車軸回転速度Nam,Nagを算出してもよい。
【0058】
モニター部5Cは、第一算出部5Bで算出された車軸回転速度Namと車輪速Nwとの偏差X(第一偏差)を算出(取得)するものである。本実施形態のモニター部5Cは、第一算出部5Bで算出された車軸回転速度Nagと車輪速Nwとの偏差Y(第二偏差)も算出(取得)する。すなわち、第一算出部5Bから車軸回転速度Nam,Nagが伝達されると、各値Nam,Nagから、その時点で検出された車輪速Nwを減じた値X(=Nam−Nw),Y(=Nag−Nw)を算出する。モニター部5Cは、車両10の走行中であって車輪がスリップもロックもしていないとき(正常に走行しているとき)に偏差X,Yを算出することが好ましい。
【0059】
また、本実施形態のモニター部5Cは、車両10の走行中に定期的に第一偏差X及び第二偏差Yを算出して記憶する。そして、記憶している全ての第一偏差Xの平均値Xavを算出し、現在記憶されている平均値Xavを、新しい平均値Xavに置き換えて記憶する(すなわち、平均値Xavを更新する)。第二偏差Yについても同様に平均値Yavを算出して記憶(更新)する。なお、モニター部5Cは、第一偏差Xの平均値Xavと第二偏差Yの平均値Yavとを一つずつ記憶していてもよいし、車両10の運転状態(車速,負荷等)と偏差X,Yとを紐付けして記憶し、運転状態ごとに(すなわち複数の)平均値Xav,Yavを記憶しておいてもよい。
【0060】
第二算出部5Dは、第一ドグクラッチ20の切断状態に、算出(記憶)された第一偏差Xに基づいて車輪速Nwを補正して車軸回転速度Naxを算出するものである。本実施形態の第二算出部5Dは、第二ドグクラッチ30の切断状態では、第二偏差Yに基づいて車輪速Nwを補正して車軸回転速度Nayも算出する。なお、モニター部5Cにおいて平均値Xav,Yavが運転状態ごとに記憶されている場合には、第二算出部5Dは、算出時点での運転状態に対応する平均値Xav,Yavを選択して、車軸回転速度Nax,Nayを算出することが好ましい。
【0061】
つまり、制御装置5では、第一ドグクラッチ20の係合状態では第一算出部5Bにより車軸回転速度Namが算出され、第一ドグクラッチ20の切断状態では第二算出部5Dにより車軸回転速度Naxが算出される。また、第二ドグクラッチ30の係合状態では第一算出部5Bにより車軸回転速度Nagが算出され、第二ドグクラッチ30の切断状態では第二算出部5Dにより車軸回転速度Nayが算出される。
【0062】
制御部5Eは、選択部5Aで選択された走行モードに応じて、第一ドグクラッチ20の断接状態と第二ドグクラッチ30の断接状態とを制御するものである。具体的には、制御部5Eは、第一ドグクラッチ20を切断状態から係合させる場合には、モータ3側(ドグギヤ16d)の回転速度が出力軸12側(スリーブ22)の回転速度と一致するようにモータ3のトルクを制御して回転同期させる。そして、アクチュエータを制御してスリーブ22をドグギヤ16dに向かう方向へ移動させる。なお、本実施形態の制御部5Eには、第一ドグクラッチ20の断接状態を制御する副制御部としての機能が含まれている。
【0063】
制御部5Eは、第二ドグクラッチ30の係合状態で第一ドグクラッチ20を係合させる場合には、第一算出部5Bで算出された車軸回転速度Nagを用いて出力軸12側の回転速度を求める。すなわちこの場合は、第一算出部5Bで算出された車軸回転速度Nagとモータ回転速度センサ43で検出されたモータ回転速度Nmとに基づいて第一ドグクラッチ20が回転同期するようにモータ3を制御してから第一ドグクラッチ20を係合させる。
【0064】
また、制御部5Eは、第二ドグクラッチ30の切断状態で第一ドグクラッチ20を係合させる場合には、第二算出部5Dで算出された車軸回転速度Nayを用いて出力軸12側の回転速度を求める。すなわちこの場合は、第二算出部5Dで算出された車軸回転速度Nayとモータ回転速度センサ43で検出されたモータ回転速度Nmとに基づいて第一ドグクラッチ20が回転同期するようにモータ3を制御してから第一ドグクラッチ20を係合させる。上記のように制御することで、第二ドグクラッチ30の断接状態にかかわらず、高精度に車軸回転速度が求められ、回転同期精度が向上する。
【0065】
また、制御部5Eは、第二ドグクラッチ30を係合させるべくジェネレータ4側の回転速度と出力軸12側の回転速度とを一致させる場合には、ジェネレータ4のトルクを制御して回転同期させる。そして、アクチュエータを制御してスリーブ32H又は32Lをドグギヤ11d又は15dに向かう方向へ移動させる。制御部5Eは、第一ドグクラッチ20の係合状態で第二ドグクラッチ30を係合させる場合には、第一算出部5Bで算出された車軸回転速度Namを用いて出力軸12側の回転速度を求める。すなわちこの場合は、第一算出部5Bで算出された車軸回転速度Namとジェネレータ回転速度センサ44で検出されたジェネレータ回転速度Ngとに基づいて第二ドグクラッチ30が回転同期するようにジェネレータ4を制御してから第二ドグクラッチ30を係合させる。
【0066】
また、制御部5Eは、第一ドグクラッチ20の切断状態で第二ドグクラッチ30を係合させる場合には、第二算出部5Dで算出された車軸回転速度Naxを用いて出力軸12側の回転速度を求める。すなわちこの場合は、第二算出部5Dで算出された車軸回転速度Naxとジェネレータ回転速度センサ44で検出されたジェネレータ回転速度Ngとに基づいて第二ドグクラッチ30が回転同期するようにジェネレータ4を制御してから第二ドグクラッチ30を係合させる。上記のように制御することで、第一ドグクラッチ20の断接状態にかかわらず、高精度に車軸回転速度が求められ、回転同期精度が向上する。
【0067】
禁止部5Fは、モニター部5Cで記憶された第一偏差Xが所定値Xp以上である場合には、車輪速センサ42及びモータ回転速度センサ43の少なくとも一方が故障している可能性があると判断して、第一ドグクラッチ20の切断を禁止するものである。所定値Xpは、故障の有無を判別可能な値に予め設定される。禁止部5Fは、走行モードやクラッチ20,30の断接状態にかかわらず、第一偏差Xが所定値Xp以上であるか否かを判断する。なお、禁止部5Fは、第二偏差Yに基づき、車輪速センサ42及びジェネレータ回転速度センサ44の少なくとも一方が故障している可能性があると判断して、第二ドグクラッチ30の係合を禁止してもよい。また、制御装置5は、故障の可能性があると判断した場合に、故障を示す警告灯を点灯させたり、故障を示す信号を記録したりしてもよい。
【0068】
[5.フローチャート]
図4(a)及び(b)は、上述した制御装置5のモニター部5Cにおいて実施されるフローチャート例である。選択部5AにおいてEVモード又はシリーズモードが選択された場合は図4(a)のフローチャートが所定の演算周期で実施され、パラレルモードが選択された場合は図4(b)のフローチャートが所定の演算周期で実施される。
【0069】
EVモード又はシリーズモードが選択された場合は、第一ドグクラッチ20が係合状態とされ、第二ドグクラッチ30が切断状態とされる。この場合、図4(a)に示すように、モータ回転速度センサ43で検出されたモータ回転速度Nmと、車輪速センサ42で検出された車輪速Nwとが取得される(ステップS1)。次いで、モータ回転速度Nmに基づき車軸回転速度Namが算出され(ステップS2)、車軸回転速度Namから車輪速Nwを減じた第一偏差Xが算出される(ステップS3)。そして、ステップS4では、第一偏差Xの平均値Xavが算出され、新しい平均値Xavが記憶(更新)される。
【0070】
パラレルモードが選択された場合は、第二ドグクラッチ30が係合状態とされ、第一ドグクラッチ20はモータアシストの要否によって断接状態が制御される。この場合、図4(b)に示すように、ジェネレータ回転速度センサ44で検出されたジェネレータ回転速度Ngと、車輪速センサ42で検出された車輪速Nwとが取得される(ステップS11)。次いで、ジェネレータ回転速度Ngに基づき車軸回転速度Nagが算出され(ステップS12)、車軸回転速度Nagから車輪速Nwを減じた第二偏差Yが算出される(ステップS13)。そして、ステップS14では、第二偏差Yの平均値Yavが算出され、新しい平均値Yavが記憶(更新)される。
【0071】
図5は、上述した制御装置5の選択部5A,第一算出部5B,第二算出部5D及び制御部5Eにおいて実施されるフローチャート例であり、図4(a)及び(b)のフローチャートと並行して実施される。本フローチャートは、例えば車両10の主電源がオン状態のときに所定の演算周期で実施される。なお、この演算周期は図4(a)及び(b)のフローチャートを実施するときの演算周期と同一である必要はない。
【0072】
図5に示すように、ステップT1では、各センサ41〜44で検出された情報が取得され、ステップT2では、現在の走行モードがEVモード又はシリーズモードであるか否かが判定される。EVモード又はシリーズモードの場合、ステップT3においてパラレルモードへの切替条件が成立したか否かが判定される。この条件は、例えば、車速が所定車速以上になることや、走行負荷が所定負荷以上になることなどが挙げられる。この条件が成立すると、ステップT4においてパラレルモードが設定され、第二ドグクラッチ30を係合させるための処理(ステップT5〜T7)が実施される。
【0073】
まず、ステップT5では、モータ回転速度Nmに基づき車軸回転速度Namが算出され、ステップT6では、この車軸回転速度NamとステップT1で取得されたジェネレータ回転速度Ngとに基づき回転が同期するようジェネレータ4が制御される。そして、ステップT7では、回転が同期したらアクチュエータが制御されて第二ドグクラッチ30が係合される。すなわち、ハイ側ドグクラッチ30H又はロー側ドグクラッチ30Lが係合され、エンジン2の動力が出力軸12へと伝達される状態になり、このフローをリターンする。なお、ステップT3でNoと判定されたときは、EVモード又はシリーズモードが維持されて、このフローをリターンする。
【0074】
一方、ステップT2においてパラレルモードであると判定されると、ステップT8に進み、EVモード又はシリーズモードへの切替条件が成立したか否かが判定される。この条件は、例えば、車速が所定車速未満になることや、走行負荷が所定負荷未満になることなどが挙げられる。この条件が成立しない場合、すなわちパラレルモードが維持される場合は、ステップT9においてモータアシストの要否が判定される。
【0075】
モータアシストが不要である場合は、ステップT10に進み、第一ドグクラッチ20が切断される。次いで、ハイギヤ段とローギヤ段との切替条件が成立したか否かが判定され(ステップT11)、条件が不成立であればフローをリターンする。反対に、条件が成立すると、ハイロー切替のための処理(ステップT12〜T14)が実施される。なお、ハイロー切替条件は、例えば、車速が高速域であることや要求出力が高いことなどが挙げられる。
【0076】
ステップT12では、ステップT1で取得された車輪速Nwと、図4(a)のステップS4で記憶されている第一偏差Xの平均値Xavとから車軸回転速度Naxが算出される。ステップT13では、この車軸回転速度Naxと、ステップT1で取得されたジェネレータ回転速度Ngとに基づいて回転同期が実施され、アクチュエータが制御されることでハイギヤ段とローギヤ段とが切り替えられる(ステップT14)。なお、ステップT13では、第一偏差Xの平均値Xavを加味した車軸回転速度Naxが用いられるため、回転同期精度が向上する。
【0077】
また、パラレル走行中(ステップT8のNo)、ステップT9においてモータアシストが必要であると判定されると、ステップT15に進み、第一ドグクラッチ20が係合されているか否かが判定される。第一ドグクラッチ20が係合状態であれば、直ぐにモータアシストが可能であるためこのフローをリターンする。一方、第一ドグクラッチ20が切断状態であれば、ステップT16に進み、ジェネレータ回転速度Ngから車軸回転速度Nagが算出される。そして、この車軸回転速度Nagと、ステップT1で取得されたモータ回転速度Nmとに基づいて回転同期が実施され(ステップT17)、アクチュエータが制御されることで第一ドグクラッチ20が係合される(ステップT18)。これにより、モータアシストが可能となる。
【0078】
また、ステップT8においてEVモード又はシリーズモードへの切替条件が成立した場合には、ステップT20に進み、EVモード又はシリーズモードが設定される。次いで、第二ドグクラッチ30が切断され(ステップT21)、第一ドグクラッチ20が係合状態であるか否かが判定される(ステップT22)。第一ドグクラッチ20が係合していれば、そのままモータ走行へと切り替えることができるため、このフローをリターンする。
【0079】
一方、第一ドグクラッチ20が切断されているときは、ステップT23に進み、ステップT1で取得された車輪速Nwと、図4(b)のステップS14で記憶されている第二偏差Yの平均値Yavとから車軸回転速度Nayが算出される。ステップT24では、この車軸回転速度Nayと、ステップT1で取得されたモータ回転速度Nmとに基づいて回転同期が実施され、アクチュエータが制御されることで第一ドグクラッチ20が係合される(ステップT25)。なお、ステップT24では、第二偏差Yの平均値Yavを加味した車軸回転速度Nayが用いられるため、回転同期精度が向上する。
【0080】
[6.効果]
(1)上述した制御装置5では、クラッチ20,30が係合状態であるときに、検出精度の高い回転速度センサ43,44で検出された値Nm,Ngに基づいて車軸回転速度Nam,Nagが算出され、この車軸回転速度Nam,Nagと車輪速センサ42で検出された値Nwとの偏差X,Yが算出され記憶される。このため、車輪速センサ42で検出された値Nwしか用いることができない状況下(すなわち、断接機構20,30の切断中)でも、精度よく車軸回転速度を算出することができる。これにより、例えば上記実施形態のように、モータ3と出力軸12との間の経路51上や、ジェネレータ4と出力軸12との間の経路52上に設けられたクラッチ20,30の係合時に、回転同期精度を高められるため、クラッチ係合時の振動や騒音を抑制できる。
【0081】
(2)上述したモニター部5Cは、車両10の走行中に定期的に偏差X,Yを算出して、その平均値Xav,Yavを記憶することから、第二算出部5Dでの演算精度を高めることができる。なお、モニター部5Cが運転状態ごとに偏差X,Yを算出する(すなわち、複数の偏差X,Yを算出する)場合には、第二算出部5Dが算出時点での運転状態に対応する平均値Xav,Yavを選択するため、車軸回転速度の演算精度をより高めることができる。
【0082】
(3)上述した制御部5Eは、第一ドグクラッチ20の切断状態で第二ドグクラッチ30を係合させるべく第二ドグクラッチ30を回転同期させる場合には、第二算出部5Dで算出された車軸回転速度Naxを用いる。また、第二ドグクラッチ30の切断状態で第一ドグクラッチ20を係合させるべく第一ドグクラッチ20を回転同期させる場合には、第二算出部5Dで算出された車軸回転速度Nayを用いる。このように、一方のクラッチ20,30が切断されている状態で他方のクラッチ30,20を係合する場合には、車輪速Nwに偏差X,Yを考慮した車軸回転速度Nax,Nayが用いられるため、回転同期精度を高めることができ、クラッチ20,30の係合時の振動,騒音を抑制できる。
【0083】
(4)また、上述したトランスアクスル1では、出力軸12からモータ3への変速段数が、出力軸12からジェネレータ4への変速段数よりも少ないことから、誤差のより少ないモータ回転速度Nmに基づく車軸回転速度Namを、第二ドグクラッチ30を接続する際にも利用することで、回転同期制御をより高めることができる。
【0084】
(5)上述した車両10は駆動用のエンジン2及びモータ3と、発電用のジェネレータ4とを備えたハイブリッド車両であり、第二経路52上に介装される第二ドグクラッチ30が動力伝達を断接する機能に加えてハイロー切替機能を有する。このため、エンジン主体の走行中(パラレル走行中)にハイギヤ段とローギヤ段とを切り替えるときに、モータ3が出力軸12から切り離されていたとしても、第二算出部5Dで算出された車軸回転速度Naxを用いて回転同期させることができるため、静かなハイロー切替を実現できる。また、エンジン出力を効率よく利用して車両10を駆動でき、動力性能の向上を図ることができる。
【0085】
(6)上述した制御部5Eは、第一ドグクラッチ20の係合状態で第二ドグクラッチ30を係合させるべく第二ドグクラッチ30を回転同期させる場合には、第一算出部5Bで算出された車軸回転速度Namを用いる。また、第二ドグクラッチ30の係合状態で第一ドグクラッチ20を係合させるべく第一ドグクラッチ20を回転同期させる場合には、第一算出部5Bで算出された車軸回転速度Nagを用いる。このように、一方のクラッチ20,30が係合されている状態で他方のクラッチ30,20を係合する場合には、検出精度の高い回転速度センサ43,44の値Nm,Ngに基づき算出された車軸回転速度Nam,Nagが用いられるため、回転同期精度を高めることができ、クラッチ20,30の係合時の振動,騒音を抑制できる。
【0086】
(7)上述した制御部5Eは、第一ドグクラッチ20の切断状態で第二ドグクラッチ30を係合させる場合、ジェネレータ回転速度Ngと第二算出部5Dで算出された車軸回転速度Naxとに基づき第二ドグクラッチ30が回転同期するようにジェネレータ4を制御してから第二ドグクラッチ30を係合させるため、回転同期精度を高めつつ、第二ドグクラッチ30の係合時の振動,騒音を抑制できる。
【0087】
(8)上述した制御部5Eは、第一ドグクラッチ20を切断状態から係合させる場合、モータ回転速度Nmと第二算出部5Dで算出された車軸回転速度Nayとに基づき第一ドグクラッチ20が回転同期するようにモータ3を制御してから第一ドグクラッチ20を係合させるため、回転同期精度を高めつつ、第一ドグクラッチ20の係合時の振動,騒音を抑制できる。
【0088】
(9)上述した禁止部5Fは、モニター部5Cで記憶されている第一偏差Xが所定値Xp以上である場合、すなわち第一偏差Xが大きい場合には、モータ回転速度センサ43及び車輪速センサ42の少なくとも一方が故障している可能性が高いと判断し、第一ドグクラッチ20の切断を禁止する。これにより、第一ドグクラッチ20の係合時の振動,騒音の発生を防ぐことができる。なお、禁止部5Fが第二偏差Yに基づいて、車輪速センサ42及びジェネレータ回転速度センサ44の少なくとも一方が故障している可能性があると判断して、第二ドグクラッチ30の係合を禁止する場合には、第二ドグクラッチ30の係合時の振動,騒音の発生も防ぐことができる。
【0089】
[7.変形例]
上述した実施形態では、車両10の前側にエンジン2及びモータ3が搭載された前側二輪駆動のハイブリッド車両を例示したが、上述した車軸回転速度の算出方法や回転同期制御は、図1中に二点鎖線で示すように、車両10の後側にリヤモータ3Rが搭載された四輪駆動のハイブリッド車両にも適用可能である。すなわち、車両10が、前輪8を駆動するフロントモータ3(第一回転電機)と、後輪8Rを駆動するリヤモータ3R(第三回転電機)とを有する車両であってもよい。
【0090】
図1中に二点鎖線で示すリヤモータ3Rは、左右後輪8Rを接続する車軸に対して第二のトランスアクスル60を介して接続される。ただし、第二のトランスアクスル60にはクラッチが内蔵されていない。すなわち、リヤモータ3Rはクラッチを介さずに後輪8Rに接続されている。また、この車両には、リヤモータ3Rの回転速度を検出するリヤモータ回転速度センサ48(第三回転電機速度センサ)が設けられる。
【0091】
このような四輪駆動のハイブリッド車両では、車輪速センサ42が故障した場合に、車軸回転速度の算出において、車輪速Nwに代えて、リヤモータ回転速度センサ48で検出された値(リヤモータ回転速度Nr)が用いられる。すなわち、上記の第二算出部5Dは、車輪速センサ42の故障時には、リヤモータ3Rの回転速度Nrと、モニター部5Cにより算出(記憶)されている偏差X,Yあるいは平均値Xav,Yavとに基づいて、前輪8(一方の車輪)に接続される車軸9の回転速度(車軸回転速度)を算出する。このような構成であれば、車輪速センサ42の故障時であっても車軸回転速度の算出精度を確保できる。
【0092】
なお、上述したパワートレイン7が車両後側に搭載されて上記のモータ3が後輪8Rを駆動し、駆動源としての第三回転電機(モータ)が車両前側に搭載されて前輪8を駆動するハイブリッド車両に対して、本変形例の構成を適用してもよい。少なくとも、前輪8及び後輪8Rのいずれか一方の車輪を駆動する第一回転電機と、他方の車輪を断接機構を介さずに駆動する第三回転電機とが設けられた車両に対して、本変形例の制御を適用可能である。第三回転電機がクラッチを介さずに車輪と接続されているため、クラッチの断接状態にかかわらず、第三回転電機の回転速度を車輪側Nwに代えて用いることができる。
【0093】
[8.その他]
上述した車軸回転速度の算出方法や回転同期制御の内容は一例であって、上述したものに限られない。例えば、モニター部5Cが走行中に一度だけ偏差X,Yを算出してもよいし、平均値Xav,Yavを算出して記憶する代わりに、算出した偏差X,Yを上書きして記憶(更新)してもよい。また、上述した禁止部5Fを省略してもよいし、制御部5Eとは別に、第一ドグクラッチ20の断接状態を制御する副制御部を設けてもよい。
【0094】
また、上述した実施形態では、第二ドグクラッチ30の切断状態で第一ドグクラッチ20を係合させる場合に、第二偏差Yに基づいて車輪速Nwを補正して車軸回転速度Nayを算出しているが、この場合に第一偏差Xに基づいて車輪速Nwを補正して車軸回転速度Naxを算出してもよい。同様に、第一ドグクラッチ20の切断状態で第二ドグクラッチ30を係合させる場合に、第一偏差Xに基づいて車輪速Nwを補正して車軸回転速度Naxを算出しているが、この場合に第二偏差Yに基づいて車輪速Nwを補正して車軸回転速度Nayを算出してもよい。このような算出方法であれば、車両10が一つの回転電機を有する場合にも上述した実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0095】
上述した制御装置5が制御するトランスアクスル1の構成は一例であって、上述したものに限られない。例えば、上述したトランスアクスル1では、第二ドグクラッチ30が入力軸11及び第一カウンタ軸15のそれぞれに設けられているが、一方の軸11,15に一つの第二ドグクラッチが設けられていてもよい。また、第一断接機構及び第二断接機構はいずれもドグクラッチ(噛み合いクラッチ)に限られず、油圧式の摩擦クラッチや電磁クラッチ等の断接機構でもよい。また、これらの断接機構が上述した以外の場所に配置されていてもよい。
【0096】
また、第一経路51上の断接機構及び第二経路52上の断接機構の一方がドグクラッチであって、他方が油圧式の摩擦クラッチや電磁クラッチ等の断接機構である場合にも、ドグクラッチの係合時に上述した制御を実施可能である。
例えば、第一経路51の断接機構のみがドグクラッチである場合には、ジェネレータ4(第一回転電機)の回転速度をジェネレータ回転速度センサ44(第一回転電機速度センサ)で検出し、第一算出部5Bが、第二経路52上の断接機構の係合状態でジェネレータ回転速度Ng(第一回転速度)に基づき車軸回転速度Nagを算出する。また、モニター部5Cが、この車軸回転速度Nagと車輪速Nwとの偏差Yを算出する。そして、第二算出部5Dが、第二経路52上の断接機構の切断状態で、偏差Yに基づき車輪側Nwを補正して車軸回転速度Nayを算出すれば、制御部5Eは、第二経路52上の断接状態にかかわらず、第一経路51上のドグクラッチを係合させる際に、精度よく回転同期させることができる。
【0097】
なお、トランスアクスル1に対するエンジン2,モータ3,ジェネレータ4の相対位置は上述したものに限らない。これらの相対位置に応じて、トランスアクスル1内の六つの軸11〜16の配置を設定すればよい。また、トランスアクスル1内の各軸に設けられるギヤの配置も一例であって、上述したものに限られない。
【0098】
また、上述したパワートレイン7の構成は一例であり、上述したパワートレイン7以外の構成を持つ車両に対して、上述した車軸回転速度の算出方法や回転同期制御を適用してもよい。少なくとも、車両には、回転電機(モータ,ジェネレータ,モータジェネレータ等)と出力軸との間の動力伝達経路上に介装された断接機構と、この回転電機の回転速度を検出するセンサと、車輪速センサとが設けられていればよい。
【符号の説明】
【0099】
2 エンジン
3 モータ,フロントモータ(第一回転電機)
3R リヤモータ(第三回転電機)
4 ジェネレータ(第一回転電機,第二回転電機)
5 制御装置
5B 第一算出部
5C モニター部
5D 第二算出部
5E 制御部(副制御部)
5F 禁止部
8 駆動輪,前輪,車輪
8R 後輪,車輪
10 車両
12 出力軸
20 第一ドグクラッチ(第一断接機構,噛み合いクラッチ)
30 第二ドグクラッチ(第二断接機構,噛み合いクラッチ)
42 車輪速センサ
43 モータ回転速度センサ(第一回転電機速度センサ)
44 ジェネレータ回転速度センサ(第一回転電機速度センサ,第二回転電機速度センサ)
48 リヤモータ回転速度センサ(第三回転電機速度センサ)
51 第一経路(第一動力伝達経路)
52 第二経路(第二動力伝達経路)
Nag,Nam,Nax,Nay 車軸回転速度
Ng ジェネレータ回転速度(第一回転速度,第二回転速度)
Nm モータ回転速度(第一回転速度)
Nw 車輪速
X 第一偏差
Xav 平均値
Xp 所定値
Y 第二偏差
Yav 平均値
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】