特表-19131750IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2019年7月4日
【発行日】2020年12月24日
(54)【発明の名称】レンズシステムおよび撮像装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 13/04 20060101AFI20201127BHJP
   G02B 13/18 20060101ALI20201127BHJP
   H04N 5/225 20060101ALI20201127BHJP
【FI】
   G02B13/04 C
   G02B13/18
   H04N5/225 400
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】23
【出願番号】特願2019-562098(P2019-562098)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2018年12月26日
(31)【優先権主張番号】特願2017-253614(P2017-253614)
(32)【優先日】2017年12月28日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2017-253615(P2017-253615)
(32)【優先日】2017年12月28日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】000227364
【氏名又は名称】株式会社nittoh
(74)【代理人】
【識別番号】100102934
【弁理士】
【氏名又は名称】今井 彰
(72)【発明者】
【氏名】望月 恵一
【テーマコード(参考)】
2H087
5C122
【Fターム(参考)】
2H087KA01
2H087MA07
2H087PA11
2H087PA16
2H087PB15
2H087QA02
2H087QA07
2H087QA14
2H087QA22
2H087QA26
2H087QA34
2H087QA42
2H087QA45
2H087RA05
2H087RA13
2H087RA32
2H087RA42
5C122DA03
5C122EA12
5C122FA16
5C122FB02
5C122FB03
5C122FC00
5C122FF03
5C122GE05
5C122GE11
5C122HB06
5C122HB09
5C122HB10
(57)【要約】
撮像用のレンズシステム(10)は、物体側(11)から順番に配置された、フォーカシングの際に固定された負の屈折力の第1のレンズ群(G1)と、フォーカシングの際に移動する、正の屈折力の第2のレンズ群(G2)と、フォーカシングの際に固定された、正の屈折力の第3のレンズ群(G3)と、物体側に絞りが配置され、フォーカシングの際に固定され、最も像面側(12)に配置された屈折力が正の第4のレンズ群(G4)とを有する。第1のレンズ群は、最も物体側に配置された正の屈折力の第1のレンズ(L11)と、最も像面側に配置された負の屈折力の群末のレンズ(L13)とを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像用のレンズシステムであって、
物体側から順番に配置された、フォーカシングの際に固定された負の屈折力の第1のレンズ群と、
フォーカシングの際に移動する、正の屈折力の第2のレンズ群と、
フォーカシングの際に固定された、正の屈折力の第3のレンズ群と、
物体側に絞りが配置され、フォーカシングの際に固定され、最も像面側に配置された屈折力が正の第4のレンズ群とを有し、
前記第1のレンズ群は、最も物体側に配置された正の屈折力の第1のレンズと、最も像面側に配置された負の屈折力の群末のレンズとを含む、レンズシステム。
【請求項2】
請求項1において、
前記第1のレンズは、最も物体側に配置された両凸の正の屈折力であり、前記群末のレンズは物体側に凹の負の屈折力のレンズである、レンズシステム。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記第1のレンズの物体側の面の曲率半径R1と、像面側の面の曲率半径R2とが以下の条件を満たす、レンズシステム。
0.5≦|R1/R2|≦1.5
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかにおいて、
前記第1のレンズ群は、物体側から順に前記第1のレンズと、負の屈折力の第2のレンズと、前記群末のレンズとを含む、レンズシステム。
【請求項5】
請求項4において、
前記第2のレンズは低分散の異常分散レンズであり、前記群末のレンズは高分散のレンズである、レンズシステム。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかにおいて、
前記第1のレンズ群の前記群末のレンズの像面側の面の有効半径G1LSHと、曲率半径G1LSrとが以下の条件を満たす、レンズシステム。
0<|G1LSH/G1LSr|≦0.14
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかにおいて、
前記第4のレンズ群は、物体側から順に、負の屈折力のレンズおよび正の屈折力のレンズからなる第1の接合レンズと、負の屈折力のレンズおよび正の屈折力のレンズからなる第2の接合レンズとを含む、レンズシステム。
【請求項8】
請求項1ないし6のいずれかにおいて、
前記第3のレンズ群は、前記絞りの物体側に、物体側から、少なくとも1枚の正の屈折力のレンズと、正の屈折力のレンズおよび負の屈折力のレンズからなる接合レンズを含み、この接合レンズが前記絞りに隣接し、
前記第4のレンズ群は、前記絞りに隣接して配置された、物体側から負の屈折力のレンズおよび正の屈折力のレンズからなる第1の接合レンズと、負の屈折力のレンズおよび正の屈折力のレンズからなる第2の接合レンズと、負の屈折力のレンズとを含む、レンズシステム。
【請求項9】
請求項8において、
前記第4のレンズ群は、最も像面側に配置された正の屈折力のレンズを含む、レンズシステム。
【請求項10】
請求項8または9において、
前記第3のレンズ群の前記少なくとも1枚の正の屈折力のレンズは、2枚の正の屈折力のレンズを含む、レンズシステム。
【請求項11】
請求項10において、
前記2枚の正の屈折力のレンズのd線の屈折率ndと、d線のアッベ数νdとが以下の条件を満たす、レンズシステム。
1.75≦nd≦1.95
15≦νd≦35
【請求項12】
請求項7ないし11のいずれかにおいて、
前記第4のレンズ群の前記第1の接合レンズは、前記負の屈折力のレンズは高分散のレンズであり、前記正の屈折力のレンズは低分散の異常分散レンズである、レンズシステム。
【請求項13】
請求項7ないし12のいずれかにおいて、
前記第4のレンズ群の前記第1の接合レンズの接合面の有効半径G4B1MHと、曲率半径G4B1Mrとが以下の条件を満たす、レンズシステム。
0.65<|G4B1MH/G4B1Mr|≦0.80
【請求項14】
請求項1ないし13のいずれかにおいて、
前記第2のレンズ群は、物体側に凹のメニスカスタイプのレンズにより構成されている、レンズシステム。
【請求項15】
請求項1ないし14のいずれかにおいて、
前記第2のレンズ群は、物体側から負の屈折力のレンズおよび正の屈折力のレンズからなる接合レンズで構成されている、レンズシステム。
【請求項16】
請求項1ないし15のいずれかに記載のレンズシステムと、
前記レンズシステムの像面側に配置された撮像素子とを有する撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズシステムおよび撮像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
日本国特許公開公報2001−228391号には、3群構成のレトロフォーカスタイプのインナーフォーカス式広角レンズ系であって、半画角44゜程度、Fナンバー3.5程度の広角レンズ系が開示されている。この広角レンズ系は、物体側から順に、負の第1レンズ群と、正の第2レンズ群と、絞りを有する正の第3レンズ群とからなり、フォーカシングに際し、第2レンズ群が光軸方向に移動する。
【発明の開示】
【0003】
さらに明るく、フォーカシングによる画角の変動が小さい望遠タイプの撮像系が求められている。
【0004】
本発明の一態様は、撮像用のレンズシステムであって、物体側から順番に配置された、フォーカシングの際に固定された負の屈折力の第1のレンズ群と、フォーカシングの際に移動する、正の屈折力の第2のレンズ群と、フォーカシングの際に固定された、正の屈折力の第3のレンズ群と、物体側に絞りが配置され、フォーカシングの際に固定された、屈折力が正の第4のレンズ群とから構成され、第1のレンズ群は、最も物体側に配置された正の屈折力の第1のレンズと、最も像面側に配置された負の屈折力の群末のレンズとを含む、レンズシステムである。
【0005】
このレンズシステムは、負−正−正−正の4群構成のレトロフォーカスタイプで、第2のレンズ群のみがフォーカシングの際に光軸に沿って移動するインナーフォーカス式であり、さらに、固定された第3のレンズ群と第4のレンズ群との間に絞りが配置されているレンズシステムである。最も物体側のレンズ群が負のパワーのレトロフォーカスタイプは明るい画像を得やすい構成であるが、どちらかというと広角レンズに適している。このため、本レンズシステムにおいては、第1のレンズ群の最も物体側に正のパワーの第1のレンズを配置し、最も像面側に負のパワーの群末のレンズを配置することにより、全体が負のパワーの第1のレンズ群に、最初のレンズ(最も物体側のレンズ)と最後のレンズ(最も像面側のレンズ)とで、正−負のパワー配置のテレフォトタイプの構成を導入している。したがって、レトロフォーカスタイプの明るい画像を得やすい構成を活かしながら焦点距離を伸ばすことができる。例えば、望遠に適した性能を備えたレンズシステムを提供できる。
【0006】
第1のレンズ群は、最も物体側に配置された両凸の正の屈折力の第1のレンズと、最も像面側に配置された物体側に凹の負の屈折力のレンズとを含んでもよい。
【0007】
さらに、レトロフォーカスの正のパワーの後群を3群構成に分けてパワーを分散し、フォーカシングの際に移動する第2のレンズ群のパワーを抑制し、フォーカシングの際に第2のレンズ群が移動しても画角が変動しにくい構成としている。また、フォーカシングの際に動かない(固定されている)第3のレンズ群と第4のレンズ群との間に絞りを配置することによりフォーカシングによりF値が変動することを防止している。このため、望遠タイプで、画角の変動や、明るさの変動をほとんど考慮することなく、フォーカスを自由に調整できるレンズシステムを提供できる。
【0008】
本発明の他の態様の1つは、撮像用のレンズシステムであって、物体側から順番に配置された、フォーカシングの際に固定された負の屈折力の第1のレンズ群と、フォーカシングの際に移動する、正の屈折力の第2のレンズ群と、フォーカシングの際に固定された、正の屈折力の第3のレンズ群と、物体側に絞りが配置され、フォーカシングの際に固定された、屈折力が正の第4のレンズ群とから構成され、第3のレンズ群は、絞りの物体側に、物体側から、少なくとも1枚の正の屈折力のレンズと、正の屈折力のレンズおよび負の屈折力のレンズからなる接合レンズを含み、この接合レンズが絞りに隣接し、第4のレンズ群は、絞りに隣接して配置された、物体側から負の屈折力のレンズおよび正の屈折力のレンズからなる第1の接合レンズと、負の屈折力のレンズおよび正の屈折力のレンズからなる第2の接合レンズと、負の屈折力のレンズとを含むレンズシステムである。
【0009】
このレンズシステムは、フォーカシングの際に動かない(固定されている)第3のレンズ群と第4のレンズ群との間に絞りを配置し、絞りを中心として、複数の接合レンズを対称的なパワー配置となるように設けている。このため、フォーカシングにより画角やF値の変動が少なく、諸収差が良好に補正されたレンズシステムを提供できる。
【0010】
本発明の他の態様の1つは、上記のレンズシステムと、レンズシステムの像面側に配置された撮像素子とを有する撮像装置である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】レンズシステムおよび撮像装置の一例を示す図であり、図1(a)はレンズシステムのフォーカスが無限遠の状態を示し、図1(b)はフォーカスが近距離の状態を示す。
図2図1に示すレンズシステムの各レンズのデータを示す図。
図3図1に示すレンズシステムの非球面のデータを示す図。
図4図1に示すレンズシステムの諸数値を示す図。
図5図1に示すレンズシステムの諸収差を示す図。
図6図1に示すレンズシステムの無限遠における横収差を示す図。
図7図1に示すレンズシステムの中間距離における横収差を示す図。
図8図1に示すレンズシステムの最短距離における横収差を示す図。
図9】レンズシステムおよび撮像装置の異なる例を示す図であり、図9(a)はレンズシステムのフォーカスが無限遠の状態を示し、図9(b)はフォーカスが近距離の状態を示す。
図10図9に示すレンズシステムの各レンズのデータを示す図。
図11図9に示すレンズシステムの非球面のデータを示す図。
図12図9に示すレンズシステムの諸数値を示す図。
図13図9に示すレンズシステムの諸収差を示す図。
図14図9に示すレンズシステムの無限遠における横収差を示す図。
図15図9に示すレンズシステムの中間距離における横収差を示す図。
図16図9に示すレンズシステムの最短距離における横収差を示す図。
図17】レンズシステムおよび撮像装置のさらに異なる例を示す図であり、図17(a)はレンズシステムのフォーカスが無限遠の状態を示し、図17(b)はフォーカスが近距離の状態を示す。
図18図17に示すレンズシステムの各レンズのデータを示す図。
図19図17に示すレンズシステムの非球面のデータを示す図。
図20図17に示すレンズシステムの諸数値を示す図。
図21図17に示すレンズシステムの諸収差を示す図。
図22図17に示すレンズシステムの無限遠における横収差を示す図。
図23図17に示すレンズシステムの中間距離における横収差を示す図。
図24図17に示すレンズシステムの最短距離における横収差を示す図。
【発明の実施の形態】
【0012】
図1に、撮像用の光学系を備えた撮像装置(カメラ、カメラ装置)の一例を示している。図1(a)はフォーカシングが無限遠の状態を示し、図1(b)はフォーカシングが最近距離の状態を示す。このカメラ(撮像装置)1は、レンズシステム(光学系、撮像光学系、結像光学系)10と、レンズシステム10の像面側(画像側、撮像側、結像側)12に配置された撮像素子(撮像デバイス、像面)5とを有する。この撮像用のレンズシステム10は、物体側11から順番に配置された、フォーカシングの際に固定された負の屈折力の第1のレンズ群G1と、フォーカシングの際に移動する、正の屈折力の第2のレンズ群G2と、フォーカシングの際に固定された、正の屈折力の第3のレンズ群G3と、物体側11に絞りStが配置され、フォーカシングの際に固定された、屈折力が正の第4のレンズ群G4とから構成されている。
【0013】
このレンズシステム10は、負−正−正−正の4群構成のレトロフォーカスタイプで、第2のレンズ群G2のみがフォーカシングの際に光軸7に沿って移動するインナーフォーカス式であり、さらに、固定された第3のレンズ群G3と第4のレンズ群G4との間に絞りStが配置されているレンズシステムである。最も物体側11のレンズ群G1が負のパワーのレトロフォーカスタイプは明るく鮮明な画像を得るのに適しているが、望遠ではなく広角レンズに適していると考えられている。本例のレンズシステム10においては、第1のレンズ群G1が、最も物体側11に正の屈折力の第1のレンズL11と、最も像面側12に配置された、負の屈折力のレンズ(群末のレンズ)L13とを含む。さらに具体的には、第1のレンズ群G1は、最も物体側11に配置された両凸の正の屈折力の第1のレンズL11と、最も像面側12に配置された、物体側11に凹の負の屈折力のレンズL13とを含む。
【0014】
第1のレンズ群G1の最も物体側11に両凸の正のパワーの第1のレンズL11を配置し、最も像面側12に物体側11に凹の負のパワーのレンズ、本例では負のメニスカスレンズL13を配置することにより、全体が負のパワーの第1のレンズ群G1に、最初のレンズ(最も物体側のレンズ)L11と最後のレンズ(最も像面側のレンズ)L13とで、正−負のパワー配置で負のパワーのレンズL13の物体側11の面が凹のテレフォトタイプの構成を導入している。したがって、レトロフォーカスタイプの明るい画像を得やすい構成を活かしながら焦点距離を伸ばし、望遠に適した性能を得ている。本例では、無限遠にフォーカスした際の焦点距離が75mmの望遠タイプのレンズシステム10を得ることができる。
【0015】
また、第1のレンズ群G1を、正のパワーのレンズL11を物体側11に配置したプラスリードのテレフォトタイプとすることにより、像面側12に配置する負のパワーのレンズL13との距離を確保することが可能となる。したがって、正のパワーのレンズL11で集光した光束が距離を空けた負のパワーのレンズL13に到達する構成となるので、径が大きくなる傾向となる第1のレンズ群G1の像面側12のレンズ径を小さくできる。また、第1のレンズ群G1に続く他のレンズ群のレンズ径も小さくできる。このため、コンパクトで、明るいレンズシステム10を提供できる。
【0016】
したがって、第1のレンズ群G1の最も物体側11の正のパワーのレンズL11はある程度のパワーを備えていることが望ましく、収差補正を考慮すると、正のパワーを備えた面を対称に配置した両凸のレンズであることが望ましい。さらに、両凸のレンズ(第1のレンズ)L11の両面、すなわち、物体側11の面S1の曲率半径R1と、像面側の面S2の曲率半径R2とはできるだけ同じであることが良好な収差補正を行うために望ましく、以下の条件(1)を満たしてもよい。
0.5≦|R1/R2|≦1.5・・・(1)
条件(1)の下限は0.75であってもよく、上限は1.3であってもよい。
【0017】
さらに、第1のレンズ群G1は、物体側11から順に第1のレンズL11と、負の屈折力の第2のレンズL12と、最も像面側12に配置された物体側11に凹の負の第3のレンズL13とを含んでもよい。本例のレンズシステム10においては、第1のレンズ群G1は、両凸の正レンズL11と、物体側11に凸の負のメニスカスレンズL12と、物体側11に凹の負のメニスカスレンズL13とを含む。第1のレンズ群G1は、正−負−負の構成であり、さらに全体として負のパワーなので、第2のレンズL12および第3のレンズL13のパワーが大きくなる。したがって、第1のレンズ群G1からフォーカシングの際に動く第2のレンズ群G2に向かう光束は、光軸7に対して平行か若干広がる傾向となり、第2のレンズ群G2がフォーカシングのために移動してもほぼ同じ位置を通過する。したがって、フォーカシングの際の倍率変動および画角変動を抑えるために好適な構成である。
【0018】
さらに、両凸の正レンズL11と、凹方向が向かい合った2つの負のメニスカスレンズL12およびL13とからなる構成は、面の向きと数とが対称となり、第1のレンズ群G1におけるペッツバール和を小さくするために適している。このため、第1のレンズ群G1における収差補正を行うことが可能となり、フォーカシング用の第2のレンズ群G2に収差補正が良好に施された光束を供給でき、フォーカシングによる画角変動(ブリージング)を緩和できる。また、この構成は、サジタル光線とメリジオナル光線との差を削減するためにも有効であり、MTF(Modulation Tranfer Function)の向上にも効果的である。
【0019】
また、第1のレンズ群G1の第2のレンズL12は低分散の異常分散レンズであり、第3のレンズL13は高分散のレンズであってもよい。第1のレンズ群G1の負のパワーのレンズの組み合わせL12およびL13を、低分散の異常分散レンズと高分散のレンズという異なる分散傾向を示す負のパワーのレンズの組み合わせにすることにより、倍率色収差などの諸収差を良好に補正することが可能となる。したがって、非球面の数を削減でき、低コストで収差が良好に補正されたレンズシステム10を提供できる。
【0020】
第1のレンズ群G1の最も像面側12の面、すなわち、第3のレンズL13の像面側12の面G1LS(本例では面S6)の有効半径G1LSH(本例ではD6/2)と、曲率半径G1LSr(本例ではR6)との比(半球率)が以下の条件(2)を満たしてもよい。
0<|G1LSH/G1LSr|≦0.14・・・(2)
第1のレンズ群G1の最も像面側12の面、すなわち、フォーカシングの際に移動する第2のレンズ群G2に面した面G1LSの半球率を小さくし、平面に近い状態にすることにより、第2のレンズ群G2に入る直前の光束の向きを急激に変動することを抑制できる。したがって、フォーカシングによる画角変動を抑制でき、サジタル光線とメリジオナル光線との差を削減でき、MTFの向上にも効果的である。
【0021】
さらに、レトロフォーカスタイプのレンズシステムは、一般に後群の正のパワーが強いためにインナーフォーカスタイプで正のパワーのレンズがフォーカスの際に移動すると画角が変化しやすい。このため、このレンズシステム10においては、正のパワーの後群を3群構成に分けてパワーを分散し、フォーカシングの際に移動する第2のレンズ群G2のパワーを抑制し、フォーカシングの際に第2のレンズ群G2が移動しても倍率が変動しにくい、ブリージングの少ない構成としている。さらに、フォーカシングの際に動かない(固定されている)第3のレンズ群G3と第4のレンズ群G4との間に絞りStを配置することによりフォーカシングによりF値が変動することを防止している。このため、画角の変動や、明るさの変動をほとんど考慮することなく、フォーカスを自由に調整できる望遠タイプのレンズシステムを提供できる。
【0022】
第2のレンズ群G2は、物体側11に凹のメニスカスタイプの正の屈折力の1枚のレンズで構成されていてもよく、接合レンズで構成されていてもよい。本例のレンズシステム10では、物体側11から両凹の負レンズL21と両凸の正レンズL22とから構成された、物体側11に凹の正のメニスカスタイプの接合レンズB21により第2のレンズ群G2が構成されている。レトロフォーカスタイプは正の屈折力が強くなりペッツバール和が増大しやすい。このレンズシステム10においては、正の屈折力の後群の最も物体側11となる第2のレンズ群G2に、物体側11に凹の面を配置することによりペッツバール和の増大を抑制して、収差補正、特に、球面収差およびコマ収差を良好に補正できるレンズシステム10を提供している。
【0023】
さらに、物体側11の第1のレンズ群G1に向いた接合レンズB21の物体側11の面を物体側11に凹の面とすることにより、第2のレンズ群G2をフォーカシングの際により第1のレンズ群G1に近づけることが可能となる。したがって、負のパワーの第1のレンズ群G1で広がりやすい光束を、周辺光を含めて第2のレンズ群G2により捉えて像面側12のレンズ群に伝達できる。このため、より明るく、F値の小さなレンズシステム10を提供できる。また、負のパワーの第1のレンズ群G1に接近して正のパワーの第2のレンズ群を配置することにより、光束の広がりを抑制でき、像面側の第3のレンズ群G3以降のサイズを抑制でき、よりコンパクトなレンズシステム10を提供できる。
【0024】
また、フォーカシングを行う第2のレンズ群G2に、接合レンズB21を含める、あるいは接合レンズB21からなる構成とすることにより、フォーカシングの距離に応じた収差補正機能、特に、色収差の補正機能を第2のレンズ群G2に含めることができる。
【0025】
第3のレンズ群G3は、物体側11から順に、正の屈折力のレンズL31およびL32と、正の屈折力のレンズL33および負の屈折力のレンズL34からなる正の屈折力の接合レンズB31とを含む。レトロフォーカス型の場合、後群に強い正のパワーを配置するが、第3のレンズ群に正の屈折力の接合レンズB31を設けることにより色収差を改善できる。さらに、物体側11に正のパワーのレンズL31およびL32を配置し、物体側11から正レンズL31、L32およびL33が並んだ構成とすることにより、正のパワーの面を分散することが可能となり、光束が急激に曲がることを抑制できる。したがって、この構成は、球面収差の改善に適している。
【0026】
第4のレンズ群G4は、物体側11から順に、負の屈折力のレンズL41および正の屈折力のレンズL42からなる第1の接合レンズB41と、負の屈折力のレンズL43および正の屈折力のレンズL44からなる第2の接合レンズB42と、物体側に凹の負のメニスカスレンズL45と、正の屈折力のレンズL46とを含む。この第4のレンズ群G4においては、全体として物体側11から負−正−負−正−負−正のレンズの組み合わせとなり軸上色収差が補正しやすく、さらに像面側12の2枚を独立したレンズとすることにより独立した面を設け、倍率色収差も含めた他の収差の補正も行いやすい構成となっている。
【0027】
さらに、絞りStを挟んだ第3のレンズ群G3の絞りStに隣接する構成が正−負の構成であるのに対し、第4のレンズ群G4の絞りStに隣接する構成は負−正の対称的なパワー配置となっており、収差補正が良好な構成となっている。すなわち、第3のレンズ群G3が、絞りStに隣接して配置された、物体側11から正の屈折力のレンズL33および負の屈折力のレンズL34からなる接合レンズB31を含み、第4のレンズ群G4が、絞りStに隣接して配置された、物体側11から負の屈折力のレンズL41および正の屈折力のレンズL41からなる接合レンズB41を含む構成は、絞りStを挟んで対称性の高い構成であり、収差が良好に補正しやすい構成である。
【0028】
また、このレンズシステム10においては、第3のレンズ群G3が、絞りStの物体側11に、物体側11から、少なくとも一枚の正の屈折力のレンズL32と、正の屈折力のレンズL33および負の屈折力のレンズL34からなる接合レンズB31を含み、接合レンズB31が絞りStに隣接し、絞りStを挟んだ第4のレンズ群G4が、絞りStに隣接して配置された、物体側11から負の屈折力のレンズL41および正の屈折力のレンズL42からなる接合レンズ(第1の接合レンズ)B41と、負の屈折力のレンズL43および正の屈折力のレンズL44からなる接合レンズ(第2の接合レンズ)B42と、負の屈折力のレンズL45とを含む。この構成は、絞りStを挟んでパワーの対称性が高く、収差補正に適した構成となっている。
【0029】
また、上述したように、このレンズシステム10においては、第3のレンズ群G3の接合レンズB31の物体側11の正のパワーのレンズを2枚構成、すなわちレンズL31およびL32としており、第3のレンズ群G3と第4のレンズ群G4との絞りStを挟んだパワーの対称性を維持しつつ、正のパワーを各レンズで分散して処理するとともに収差補正に利用できるレンズ面の数を増やしている。したがって、収差補正、特に球面収差の補正に適した構成となっている。
【0030】
2枚のレンズL31およびL32の屈折率(d線)nd31およびnd32と、アッベ数(d線)νd31およびνd32とが以下の条件(3)を満たしてもよい。
1.75≦nd31、nd32≦1.95
15≦νd31、νd32≦35 ・・・(3)
高屈折率のレンズを採用することにより各レンズの面の曲率を小さくすることができ、収差の発生を抑制できる。正のパワーのレンズでありながら低アッベ数で高分散性のレンズを配置することにより、正のパワーのレンズが多いレトロフォーカス型のレンズシステム10の中での分散性に変化を与え、色収差の改善を図れるようにしている。条件(3)の屈折率の条件の下限は1.8であってもよく、上限は1.93であってもよい。また、条件(3)のアッベ数の下限は20であってもよく、上限は33であってもよい。
【0031】
さらに、第4のレンズ群G4は、負の屈折力のレンズL45の像面側12に、レンズシステム10の最も撮像側12のレンズとして正の屈折力のレンズL46を含む。像面5に対して、負のパワーのレンズL45により光軸7に対して光束を拡大し、正のパワーのレンズL46により光軸7に対して光束を平行化できる。したがって、イメージサークルの大きな像面5に対して光束を垂直に、すなわち光軸7と平行に結像させることが可能となり、より大きな像をより鮮明に結像できる。特に、負のパワーのレンズL45の像面側12の面が像面側12に凸であり、正のパワーのレンズL46は両凸の正レンズであってもよい。像面5の直前の正のパワーを複数の面に分散することにより、収差の発生を抑制するとともに、収差補正を良好に行うことができる。
【0032】
第4のレンズ群G4の物体側11の接合レンズ(第1の接合レンズ)B41の一例は、異常分散の負のパワーのレンズL41と、低分散で異常分散の正のパワーのレンズL42との組み合わせである。接合レンズに異常分散タイプのレンズを採用することにより、軸上色収差に加え、倍率色収差の補正も良好に行うことができる。
【0033】
また、第4のレンズ群G4の第1の接合レンズB41の接合面G4B1M(本例では面S19)の有効半径G4B1MHと曲率半径G4B1Mrとの比である半球率が以下の条件(4)を満たしてもよい。
0.65<|G4B1MH/G4B1Mr|≦0.80・・・(4)
絞りStの像面側12で、像面5との間に位置する第4のレンズ群G4においては、諸収差、特に、倍率色収差の補正を良好に行うことが望ましい。第4のレンズ群G4で最も物体側11に配置され、絞りStの像面側12に接近して配置された接合レンズB41で倍率色収差を十分に補正できることは、後続のレンズにおける収差補正の負荷を大幅に低減できる。そのためには、第1の接合レンズB41の接合面G4B1Mにある程度の曲率を持たせておくことが望ましい。特に、上述したような、高分散の負のパワーのレンズL41と、低分散で異常分散の正のパワーのレンズL42との組み合わせの接合レンズB1において接合面G4B1Mにある程度の曲率を付与しておくことは倍率色収差の補正に有効である。
【0034】
また、第4のレンズ群G4の接合レンズB41およびB42の接合面は、ともに物体側11に凸であることが望ましく、第3のレンズ群G3の接合レンズB31の接合面(物体側11に凹)と対称であることが望ましい。接合面が絞りStを中心として対称的な配置となり、収差補正に適した構成である。
【0035】
図面を参照してさらに詳しく説明する。図1にレンズシステム10の幾つかの状態におけるレンズ配置を示している。図1(a)は、フォーカス位置が無限遠のレンズ配置を示し、図1(b)は、フォーカス位置が最短(近距離、430mm)におけるレンズ配置を示している。
【0036】
このレンズシステム10は、無限遠における焦点距離が75mmの望遠レンズであり、映画あるいはビデオ撮影用のカメラ1の交換レンズとして適した構成となっている。レンズシステム10は4群構成であり、物体側11から合成屈折力(パワー)が負の第1のレンズ群G1、パワーが正の第2のレンズ群G2、パワーが正の第3のレンズ群G3、絞りStおよびパワーが正の第4のレンズ群G4からなり、第1のレンズ群G1、第3のレンズ群G3および第4のレンズ群G4は、フォーカシングに際して像面5に対する距離は変わらずに動かず、固定されたレンズ群である。第2のレンズ群G2は、フォーカシングの際に、無限遠から近距離にフォーカス位置が移動すると、像面側12に単調に移動する。
【0037】
図2に、レンズシステム10を構成する各レンズのデータを示している。曲率半径(Ri)は物体側11から順に並んだ各レンズの各面の曲率半径(mm)、間隔diは各レンズ面の間の距離(mm)、有効径(Di)は各レンズ面の有効径(直径、mm)、屈折率ndは各レンズの屈折率(d線)、アッベ数νdは各レンズのアッベ数(d線)を示している。図2において、面番号にアスタリスクが付記されている面は非球面であり、レンズ名称にアスタリスクが付記されているものは異常分散性ガラスを用いたレンズであることを示している。以下においても同様である。
【0038】
図3には、レンズシステム10に含まれる非球面の係数を示す。この例では、第4のレンズ群G4のレンズL45の像面側の面S25が非球面となっている。交換レンズであることを考慮した場合、非球面はレンズシステム10の内部の面であることが望ましい。また、コストを考慮すると、非球面は少ないことが望ましい。本例のレンズシステム10においては、上記に説明した構成により十分な収差補正機能を備えており、1つの非球面を採用するだけでよく、低コストで明るく鮮明な像が得られるレンズシステム10を提供している。
【0039】
非球面は、Xを光軸方向の座標、Yを光軸と垂直方向の座標、光の進行方向を正、Rを近軸曲率半径とすると、図3に示した係数K、A、B、C、DおよびEを用いて次式(X)で表わされる。以降の実施形態においても同様である。なお、「En」は、「10のn乗」を意味する。
X=(1/R)Y/[1+{1−(1+K)(1/R)1/2
+AY+BY+CY+DY10+EY12・・・(X)
【0040】
図4に、レンズシステム10の焦点距離が無限遠、中間(2280mm)、最短(最接近、430mm)のときのレンズシステム10の焦点距離fと、Fナンバー(FNo.)、画角、可変間隔d6、d9の値を示している。
【0041】
図5に、レンズシステム10の焦点距離が無限遠(図5(a))、中間(2280mm)(図5(b))、最短(最接近、430mm)(図5(c))のときの球面収差、非点収差、歪曲収差を示している。また、図6に、無限遠のときの横収差を示し、図7に中間(2280mm)のときの横収差を示し、図8に最短(最接近、430mm)のときの横収差を示している。球面収差は、波長404.6560nm(一点鎖線)と、波長435.8340nm(破線)と、波長486.1330nm(ドット、短破線)と、波長546.0740nm(二点鎖線)と、波長587.5620nm(短一点鎖線)と、波長656.2720nm(実線)とを示している。非点収差は、メリジオナル(タンジェンシャル)光線Mとサジタル光線Saとを示している。以下に示した収差図においても同様である。
【0042】
これらの図に示したレンズシステム10は、全体が15枚のレンズ(L11〜L13、L21〜L22、L31〜L34、L41〜L46)からなる。最も物体側11に配置された第1のレンズ群G1は、物体側11から配置された、両凸の正レンズ(第1のレンズ)L11と、物体側11に凸の負のパワーのメニスカスレンズL12と、物体側11に凹の負のパワーのメニスカスレンズL13との3枚構成である。
【0043】
フォーカスレンズ群である第2のレンズ群G2は、両凹の負レンズL21と、両凸の正レンズL22とからなる接合レンズB21であって、全体として物体側11に凹の正のメニスカスレンズとして構成された接合レンズB21の単独の構成である。
【0044】
第3のレンズ群G3は、物体側11から順に配置された、物体側11に凸の正のメニスカスレンズL31およびL32と、両凸の正レンズL33および両凹の負レンズL34からなる接合レンズB31とから構成されている。
【0045】
絞りStを挟んで第3のレンズ群G3に対して像面側12に位置し、最も像面側12に配置された第4のレンズ群G4は、両凹の負レンズL41および両凸の正レンズL42からなる接合レンズB41と、両凹の負レンズL43および両凸の正レンズL44からなる接合レンズB42と、物体側11に凹の負のメニスカスレンズL45と、物体側11に両凸の正レンズL46とから構成されている。
【0046】
図1に示したレンズシステム10は、上述した構成をすべて含んでおり、各条件の値は以下の通りである。
条件(1) (|R1/R2|) : 0.83
条件(2) (|G1LSH/G1LSr|(|D6/2/R6|)) : 0.004
条件(3) (nd31, nd32, νd31, νd32) : 1.82, 1.91, 22.8, 31.3
条件(4) (|G4B1MH/G4B1Mr|(|D19/2/R19|)) : 0.70
【0047】
図1に示したレンズシステム10は、条件(1)〜(4)のすべてを満足しており、焦点距離が75mmと望遠で、画角が16.05と十分に大きく、さらにFナンバーが1.69と非常に明るいレンズシステムとなっている。さらに、このレンズシステム10においては、無限遠から近距離までのフォーカシングの際にFナンバーは固定され、画角はほとんど変わらず、ブリージングが少なく、また、倍率変動も少なく、フォーカシングが容易で、鮮明で、あるいは所望のフォーカシングで、明るさの変動が少ない画像を取得できる。また、図5ないし図8に示すように、フォーカシングの全域において諸収差が良好に補正された画像を取得できる。
【0048】
図9に異なるレンズシステム10を示している。図9(a)は、フォーカス位置が無限遠のレンズ配置を示し、図9(b)は、フォーカス位置が最短(近距離、430mm)におけるレンズ配置を示している。このレンズシステム10も全体がレンズ15枚(L11〜L13、L21〜L22、L31〜L34、L41〜L46)の構成で、物体側11から順番に配置された、フォーカシングの際に固定された負の屈折力の第1のレンズ群G1と、フォーカシングの際に移動する、正の屈折力の第2のレンズ群G2と、フォーカシングの際に固定された、正の屈折力の第3のレンズ群G3と、物体側11に絞りStが配置され、フォーカシングの際に固定された、屈折力が正の第4のレンズ群G4とから構成されている。
【0049】
したがって、このレンズシステム10も、負−正−正−正の4群構成のレトロフォーカスタイプで、第2のレンズ群G2のみがフォーカシングの際に光軸7に沿って移動するインナーフォーカス式であり、さらに、固定された第3のレンズ群G3と第4のレンズ群G4との間に絞りStが配置されているレンズシステムである。第1のレンズ群G1は、最も物体側11に配置された両凸の正レンズL11と、最も像面側12に配置された物体側11に凹の負のパワーのレンズL13とを備えており、全体としてレトロフォーカスタイプでありながら望遠として十分な性能を備えた明るいレンズシステム10である。
【0050】
図10に、図9に示すレンズシステム10を構成する各レンズのデータを示している。図11に、レンズシステム10に含まれる非球面の係数を示し、図12に、レンズシステム10の焦点距離が無限遠、中間(2280mm)、最短(最接近、430mm)のときのレンズシステム10の焦点距離fと、Fナンバー(FNo.)、画角、可変間隔d6、d9の値を示している。また、図13に、レンズシステム10の焦点距離が無限遠(図13(a))、中間(2280mm)(図13(b))、最短(最接近、430mm)(図13(c))のときの球面収差、非点収差、歪曲収差を示している。図14ないし16に、無限遠、中間(2280mm)、および最短(最接近、430mm)のときの横収差を示している。
【0051】
このレンズシステム10は、概略のレンズ構成および配置は、図1に示したレンズシステム10と共通する。図9に示したレンズシステム10の各条件の値は以下の通りである。
条件(1) (|R1/R2|) : 1.17
条件(2) (|G1LSH/G1LSr|(|D6/2/R6|)) : 0.014
条件(3) (nd31, nd32, νd31, νd32) : 1.82, 1.91, 22.8, 31.3
条件(4) (|G4B1MH/G4B1Mr|(|D19/2/R19|)) : 0.70
【0052】
図9に示したレンズシステム10も、条件(1)〜(4)のすべてを満足しており、焦点距離が75mmと望遠で、画角が16.03度と比較的広角であり、Fナンバーが1.69と非常に明るいレンズシステムとなっている。さらに、このレンズシステム10においては、無限遠から近距離までのフォーカシングの際にFナンバーは固定され、画角もほとんど変わらず、ブリージングや倍率変動が少なく、フォーカシングが容易で、鮮明で、あるいは所望のフォーカシングで、明るさの変動が少ない画像を取得できる。また、図13ないし図16に示すように、フォーカシングの全域において諸収差が良好に補正された画像を取得できる。
【0053】
図17に、さらに異なるレンズシステム10を示している。図17(a)は、フォーカス位置が無限遠のレンズ配置を示し、図17(b)は、フォーカス位置が最短(近距離、430mm)におけるレンズ配置を示している。このレンズシステム10も全体がレンズ15枚(L11〜L13、L21〜L22、L31〜L34、L41〜L46)の構成で、物体側11から順番に配置された、フォーカシングの際に固定された負の屈折力の第1のレンズ群G1と、フォーカシングの際に移動する、正の屈折力の第2のレンズ群G2と、フォーカシングの際に固定された、正の屈折力の第3のレンズ群G3と、物体側11に絞りStが配置され、フォーカシングの際に固定された、屈折力が正の第4のレンズ群G4とから構成されている。
【0054】
したがって、このレンズシステム10も、負−正−正−正の4群構成のレトロフォーカスタイプで、第2のレンズ群G2のみがフォーカシングの際に光軸7に沿って移動するインナーフォーカス式であり、さらに、固定された第3のレンズ群G3と第4のレンズ群G4との間に絞りStが配置されているレンズシステムである。また、第1のレンズ群G1は、最も物体側11に配置された両凸の正レンズL11と、最も像面側12に配置された物体側11に凹の負のパワーのレンズL13とを備えており、全体としてレトロフォーカスタイプでありながら望遠として十分な性能を備えた明るいレンズシステム10である。
【0055】
図18に、図17に示すレンズシステム10を構成する各レンズのデータを示している。図19に、レンズシステム10に含まれる非球面の係数を示し、図20に、レンズシステム10の焦点距離が無限遠、中間(2000mm)、最短(最接近、430mm)のときのレンズシステム10の焦点距離fと、Fナンバー(FNo.)、画角、可変間隔d6、d9の値を示している。また、図21に、レンズシステム10の焦点距離が無限遠(図21(a))、中間(2000mm)(図21(b))、最短(最接近、430mm)(図21(c))のときの球面収差、非点収差、歪曲収差を示している。図22ないし24に、無限遠、中間(2000mm)、および最短(最接近、430mm)のときの横収差を示している。
【0056】
このレンズシステム10のレンズ配置は、図1に示したレンズシステム10と共通する。ただし、フォーカシングの際に移動する第2のレンズ群G2の最も像面側12の面S9を非球面としてさらなる収差の改善を図っている。
【0057】
図17に示したレンズシステム10の各条件の値は以下の通りである。
条件(1) (|R1/R2|) : 0.97
条件(2) (|G1LSH/G1LSr|(|D6/2/R6|)) : 0.098
条件(3) (nd31, nd32, νd31, νd32) : 1.81, 1.81, 25.4, 25.4
条件(4) (|G4B1MH/G4B1Mr|(|D19/2/R19|)) : 0.70
【0058】
図17に示したレンズシステム10は、条件(1)〜(4)を満足しており、このレンズシステム10においても、焦点距離が75mmと望遠で、画角が15.9度と比較的広角で、Fナンバーが1.7と非常に明るいレンズシステムとなっている。さらに、このレンズシステム10においては、無限遠から近距離までのフォーカシングの際にFナンバーは固定され、画角もほとんど変わらず、ブリージングがほとんどなく、フォーカシングが容易で、鮮明で、あるいは所望のフォーカシングで、明るさの変動が少ない画像を取得できる。また、図21ないし図25に示すように、フォーカシングの全域において諸収差が良好に補正された画像を取得できる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
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図19
図20
図21
図22
図23
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【国際調査報告】