(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
太陽電池セル(1)は、受光面(10a)及び裏面(10b)を有する半導体基板(10)と、半導体基板(10)の裏面(10b)に、第一の方向に延び、第一の方向と交差する第二の方向に、互いに隣り合って設けられたn型半導体層(13n)及びp型半導体層(12p)と、n型半導体層(13n)及びp型半導体層(12p)の上に設けられた下地層(14)とを備える。下地層(14)は、第一の分離部(17a)及び第二の分離部(17b)を有する第一の分離溝(17)で互いに分離されたn側下地層(14n)、及び、p側下地層(14p)と、第一の分離部(17a)及び第二の分離部(17b)を隔てる第一のブリッジ部(18)とを有する。そして、第一のブリッジ部(18)は、n側下地層(14n)及びp側下地層(14p)の第一の方向における境界の少なくとも一方において、第一の分離部(17a)と第二の分離部(17b)とを隔てる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下では、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。以下に説明する実施の形態は、いずれも本発明の一具体例を示すものである。したがって、以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置、接続形態、工程、および、工程の順序などは、一例であり、本発明を限定する趣旨ではない。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち、本発明の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0012】
なお、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。また、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化される場合がある。
【0013】
また、「略**」との記載は、実質的に**と認められるものを含む意図であり、例えば「略直交」を例に挙げて説明すると、完全に直交はもとより、実質的に直交と認められるものを含む意図である。例えば、「略**」との記載は、例えば数%程度の差異をも含むことを意味する表現である。
【0014】
また、各図において、Z軸方向は、例えば、太陽電池セルの受光面に垂直な方向である。X軸方向及びY軸方向は互いに直交し、かつ、いずれもZ軸方向に直交する方向である。例えば、以下の実施の形態において、「平面視」とは、Z軸方向から見ることを意味する。また、以下の実施の形態において、「断面視」とは、太陽電池セルの受光面と直交する面(例えば、Z軸とX軸とで規定される面)において当該太陽電池セルを切断した切断面を、当該切断面から略直交する方向(例えば、Y軸方向)から見ることを意味する。
【0015】
(実施の形態1)
以下、
図1〜
図8を用いて、本実施の形態に係る太陽電池セルについて説明する。
【0016】
[1.太陽電池セルの構成]
まず、本実施の形態に係る太陽電池セルの概略構成について、
図1及び
図2を用いて説明する。太陽電池セルは、太陽光等の光を電力に変換する光電変換素子(光起電力素子)である。
【0017】
図1は、本実施の形態に係る太陽電池セル1を示す平面図である。
図1は、太陽電池セル1を裏面側から見た平面図である。具体的には、
図1の(a)は、本実施の形態に係る太陽電池セル1を示す平面図であり、
図1の(b)は、
図1の(a)の破線枠の拡大平面図である。
図2は、
図1の(a)のII−II線における、本実施の形態に係る太陽電池セル1の部分断面図である。なお、
図2では、光が入射する受光面10aが紙面に対して下側となるように図示している。
【0018】
図2に示すように、太陽電池セル1は、半導体材料からなる半導体基板10を有する。半導体基板10は、例えば、結晶シリコンなどにより構成することができる。本実施の形態では、半導体基板10がn型結晶シリコンからなる例について説明する。なお、結晶シリコンとは、単結晶シリコン、または多結晶シリコンを含むものとする。半導体基板10は、p型結晶シリコンであってもよい。また、半導体基板10の材料は、GaAsやInP等の化合物半導体であってもよい。
【0019】
半導体基板10は、光が入射する受光面10a、及び、受光面10aと背向する裏面10bを有する。半導体基板10は、受光面10aにおいて光を受光する。裏面10bは、直接光が入射しない面である。本実施の形態に係る太陽電池セル1には、XまたはY方向に沿った長辺と、X軸及びY軸の双方と交差する方向に沿った短辺とが外周に沿って交互に並んだ、略八角形の半導体基板10を用いている。
【0020】
半導体基板10の受光面10aの上には、実質的に真性なi型半導体層20iと、半導体基板10と同じ導電型を有するn型半導体層20nと、保護膜としての機能を兼ね備えた反射防止層19(保護層)とがこの順番で設けられている。i型半導体層20iは、例えば実質的に真性なi型アモルファスシリコンなどにより構成することができる。n型半導体層20nは、例えば、n型アモルファスシリコンなどにより構成することができる。反射防止層19は、例えば、窒化ケイ素などにより構成することができる。反射防止層19は、i型半導体層20i及びn型半導体層20nを保護する機能も有する。
【0021】
半導体基板10の裏面10bの上には、n型半導体層13nと、p型半導体層12pとが配置されている。
【0022】
n型半導体層13nは、裏面10bの一部分の上に配置されている。n型半導体層13nは、例えば、n型アモルファスシリコンなどにより構成することができる。n型半導体層13nと裏面10bとの間には、実質的に真性なi型半導体層13iが配置されている。i型半導体層13iは、例えば実質的に真性なi型アモルファスシリコンなどにより構成することができる。
【0023】
p型半導体層12pは、裏面10bのn型半導体層13nが配置されていない部分の少なくとも一部の上に配置されている。このp型半導体層12pとn型半導体層13nとにより裏面10bの実質的に全体が覆われている。
【0024】
p型半導体層12pは、例えば、ホウ酸などのp型ドーパントを含むp型アモルファスシリコンなどにより構成することができる。p型半導体層12pと裏面10bとの間には、実質的に真性なi型半導体層12iが配置されている。i型半導体層12iは、例えば、実質的に真性なi型アモルファスシリコンなどにより構成することができる。
【0025】
n型半導体層13n及びi型半導体層13iと、p型半導体層12p及びi型半導体層12iとは、光電変換効率の観点から、裏面10bに平行な一方向に沿って互いに形成されることが望ましい。本実施の形態では、n型半導体層13n及びi型半導体層13iと、p型半導体層12p及びi型半導体層12iとは、X軸方向に延び、かつY軸方向に互いに間挿して設けられている。つまり、n型半導体層13n及びi型半導体層13iと、p型半導体層12p及びi型半導体層12iとは、Y軸方向に互いに隣り合って設けられている。なお、X軸方向は、第一の方向の一例であり、Y軸方向は第一の方向と交差する第二の方向の一例である。また、以降においては、n型半導体層13n、p型半導体層12p、i型半導体層12i及び13iを合わせて半導体層とも記載する。半導体層は、例えば、半導体基板10の裏面10b上に直接積層される。
【0026】
また、半導体層は、半導体基板10の裏面10b上の広範囲を覆うように形成されるとよい。このため、n型半導体層13n及びi型半導体層13iと、p型半導体層12p及びi型半導体層12iとが互いに重なり合うように、積層されるとよい。例えば、
図2の分離部21に示すように、一方の層が他方の層にオーバーラップして隙間なく積層されるとよい。
【0027】
なお、p型半導体層12p上において、i型半導体層13i及びn型半導体層13nが積層される領域の全域において、絶縁層(図示しない)が形成される。これにより、i型半導体層12i及びp型半導体層12pと、i型半導体層13iとn型半導体層13nとが絶縁される。
【0028】
n型半導体層13nの上には、n側下地層14n、n側導電層15n、及び、n側電極16nが積層される。一方、p型半導体層12pの上には、p側下地層14p、p側導電層15p、及び、p側電極16pが積層される。なお、n側導電層15n及びp側導電層15pを合わせて導電層とも記載する。また、n側電極16n及びp側電極16pを合わせて電極とも記載する。
【0029】
図1の(b)に示すように、n側下地層14n、p側下地層14p、及び、第一のブリッジ部18により下地層14が構成される。本実施の形態では、下地層14が第一のブリッジ部18を有する点に特徴を有する。
【0030】
下地層14は、半導体層と導電層との接触を防止し、半導体層と導電層との合金化を防いで入射光の反射率を高める機能を有する。下地層14は、例えば、透明な導電性材材料から構成される透明導電層(TCO膜)である。透明導電層は、例えば、多結晶構造を有する酸化インジウム(In
2O
3)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化錫(SnO
2)、及び酸化チタン(TiO
2)等の金属酸化物のうち少なくとも1種を含んで構成されることが好ましい。これらの金属酸化物に、錫(Sn)、亜鉛(Zn)、タングステン(W)、アンチモン(Sb)、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、セリウム(Ce)、ガリウム(Ga)などのドーパントがドープされていてもよく、例えば、In
2O
3にSnがドープされたITOが特に好ましい。ドーパントの濃度は、0〜20質量%とすることができる。透明導電層の厚みは、例えば、50nm〜100nm程度である。
【0031】
下地層14は、半導体層の上に配置される。下地層14は、例えば、半導体層の上に直接積層される。
【0032】
下地層14は、異なる方向に延びる第一の分離部17a及び第二の分離部17bを有する第一の分離溝17により、n側下地層14nとp側下地層14pとに分離される。つまり、第一の分離溝17により、互いに分離されたn側下地層14n及びp側下地層14pが形成される。これにより、n側下地層14nは、n型半導体層13nの上に配置され、n型半導体層13nと電気的に接続される。また、p側下地層14pは、p型半導体層12pの上に配置され、p型半導体層12pと電気的に接続される。
【0033】
また、
図1の(a)、及び、
図2に示すように、電極の下(例えば、電極と半導体層との間)にも下地層14は形成されている。
図1の(a)に示すように、n側下地層14nは、X軸方向に延びる第一のn側下地部141nと、Y軸方向に延び、第一のn側下地部141nのX軸プラス側の端部を接続する第二のn側下地部142nとから構成される。第一のn側下地部141nのX軸プラス側の端部は、第一の方向における他方側の端部の一例である。また、p側下地層14pは、X軸方向に延びる第一のp側下地部141pと、Y軸方向に延び、第一のp側下地部141pのX軸マイナス側の端部を接続する第二のp側下地部142pとから構成される。第一のp側下地部141pのX軸マイナス側の端部は、第一の方向における一方側の端部の一例である。なお、本実施の形態では、第一のn側下地部141nと第一のp側下地部141pとが、互いに間挿して配置される。つまり、第一のn側下地部141nと第一のp側下地部141pとが、隣り合って配置される。
【0034】
また、第一の分離部17aは、太陽電池セル1の平面視において、X軸方向に延び、隣り合う第一のn側下地部141n及び第一のp側下地部141pの間に設けられ、第二の分離部17bは、n側下地層14n(具体的には、第一のn側下地部141n)のX軸マイナス側の端部と第二のp側下地部142p、及び、p側下地層14p(具体的には、第一のp側下地部141p)のX軸プラス側の端部と第二のn側下地部142nとの間にそれぞれ設けられる。
【0035】
第一のブリッジ部18は、第一の分離部17aと第二の分離部17bとの間に設けられる。すなわち、第一のブリッジ部18は、第一の分離部17aと第二の分離部17bとを隔てる。本実施の形態では、第一のブリッジ部18は、第一の分離部17aのX軸方向の端部と第二の分離部17bとの間に設けられる。すなわち、第一のブリッジ部18は、第一の分離部17aのX軸方向の端部と第二の分離部17bとを隔てる。これにより、第一の分離部17aと第二の分離部17bとは、平面視において交差していない。
【0036】
図1の(b)では、第一のブリッジ部18は、n側下地層14n(具体的には、第一のn側下地部141n)のX軸マイナス側の端部とp側下地層14pとの境界において、第一の分離部17aと第二の分離部17bとを隔てている例を示しているが、p側下地層14p(具体的には、第一のp側下地部141p)のX軸プラス側の端部とn側下地層14nとの境界においても、同様に、第一の分離部17aと第二の分離部17bとを隔てている。第一のブリッジ部18は、複数のn側下地層14nのX軸プラス側の端部とp側下地層14pとの境界、及び、複数のp側下地層14pのX軸マイナス側の端部とn側下地層14nとの境界の少なくとも1つに設けられる。すなわち、太陽電池セル1は、少なくとも1つの第一のブリッジ部18を備えていればよい。また、
図1の(b)では、第一のブリッジ部18の平面視形状は、略矩形状である例について図示しているが、これに限定されない。
【0037】
なお、n側下地層14n(具体的には、第一のn側下地部141n)のX軸マイナス側の端部とは、第一の端部の一例であり、p側下地層14p(具体的には、第一のp側下地部141p)のX軸プラス側の端部とは、第二の端部の一例である。また、
図1の(b)では、第二の分離部17bの長さ(Y軸方向の長さ)は、隣り合う第一の分離部17aの間隔(
図8の(a)及び
図8の(b)に示す間隔L2を参照)より長い例を示している。
【0038】
第一のブリッジ部18は、上記の位置に配置されることで、n側下地層14nとp側下地層14pとが第一のブリッジ部18を介して接続される。なお、第一のブリッジ部18は、n側下地層14n及びp側下地層14pと同一の材料で構成されているので導電性を有しているが、抵抗値が高いので、n側下地層14nとp側下地層14pとは、光電変換効率に影響がない程度でしか導通されない。例えば、n側下地層14nとp側下地層14pとの間における第一のブリッジ部18の抵抗は、0.01Ω・cm以上である。例えば、第一のブリッジ部18のX軸方向の長さL1は、30μm以下であり、Y軸方向の長さ(
図8の(a)及び
図8の(b)における幅L3)は、30μm以下である。なお、第一のブリッジ部18のY軸方向の長さは、第一の分離部17aの短手方向の長さと略等しい。また、第一のブリッジ部18のX軸方向の長さL1は、第一のブリッジ部18のY軸方向の長さ(本実施の形態では、幅L3)以下であるとよい。
【0039】
導電層は、下地層14の上に配置され、めっき成長の際に電流を流すシード層として機能する。つまり、導電層をシード層として電解めっきによりn側電極16n及びp側電極16pが形成される。導電層の厚みは、例えば、50nm〜100nm程度である。
【0040】
n側電極16nは、n側導電層15nの上に直接形成され、n型半導体層13nからキャリア(電子)を収集する電極である。p側電極16pは、p側導電層15pの上に直接形成され、p型半導体層12pからキャリア(正孔)を収集する電極である。
【0041】
本実施の形態では、n側電極16nは、n側導電層15nの上に配置されためっき層であり、p側電極16pは、p側導電層15pの上に配置されためっき層である。n側電極16nは、X軸方向に延びるn側フィンガー電極161nと、Y軸方向に延び、n側フィンガー電極161nのX軸プラス側の端部を接続するn側バスバー電極162nとから構成される。また、p側電極16pは、X軸方向に延びるp側フィンガー電極161pと、Y軸方向に延び、p側フィンガー電極161pのX軸マイナス側の端部を接続するp側バスバー電極162pとから構成される。本実施の形態では、n側フィンガー電極161nとp側フィンガー電極161pとが、互いに間挿して配置される。つまり、n側フィンガー電極161nと第一のp側フィンガー電極161pとが、隣り合って配置される。
【0042】
n側導電層15n、n側電極16n、p側導電層15p、及び、p側電極16pは、高い導電性を有し、かつ光の反射率が高い金属から構成されるとよい。例えば、銅(Cu)、錫(Sn)、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、銀(Ag)、金(Au)などの金属またはそれらの1種以上を含む合金から構成されるとよい。すなわち、n側導電層15n、n側電極16n、p側導電層15p、及び、p側電極16pは、金属層である。
【0043】
本実施の形態では、n側導電層15n、n側電極16n、p側導電層15p、及び、p側電極16pは、例えば、導電性、反射率、及び、材料コスト等の観点から、Cuにより構成される。Cu層の厚みは、例えば、10μm〜20μm程度である。
【0044】
上記のように、本実施の形態に係る太陽電池セル1は、裏面接合型の太陽電池セルである。なお、n側電極16n及びp側電極16pが印刷などにより形成される場合には、n側導電層15n及びp側導電層15pは設けられなくてもよい。
【0045】
[2.太陽電池セルの製造方法]
続いて、上記の太陽電池セル1の製造方法について、
図3〜
図8を参照しながら説明する。
【0046】
図3は、本実施の形態に係る太陽電池セルの製造方法を示すフローチャートである。なお、本実施の形態に係る製造方法は、レーザ加工工程に特徴を有する。
【0047】
図3に示すように、まず光が入射する受光面10a、及び、受光面10aと背向する裏面10bを有する半導体基板10の裏面10bに、第一の方向(本実地の形態では、X軸方向)に延び、第一の方向と交差する第二の方向(本実施の形態では、Y軸方向)に互いに隣り合って設けられたn型半導体層13n及びp型半導体層12pを形成する半導体層形成工程(S10)が行われる。半導体形成工程では、半導体基板10を真空チャンバ内に設置して、プラズマ化学気相成長(PECVD)やスパッタリングにより、i型半導体層、及び、n型半導体層を順に積層する。なお、半導体形成工程では、受光面10aにも半導体層などが形成される。
【0048】
半導体形成工程において、まず半導体基板10の受光面10a上に、i型半導体層20i及びn型半導体層20nを積層し、裏面10b上に、i型半導体層12i、p型半導体層12p、及び、絶縁層(図示しない)を積層する。絶縁層としては、例えば、反射防止層19と同様の組成で形成することができる。
【0049】
PECVDによるi型半導体層12i及び20iの積層工程では、例えば、シランガス(SiH
4)を水素(H
2)で希釈したものを原料ガスとして使用する。また、n型半導体層13n及び20nの積層工程では、例えば、シラン(SiH
4)にホスフィン(PH
3)を添加し、水素(H
2)で希釈したものを原料ガスとして使用する。また、p型半導体層12pの積層工程では、例えば、シラン(SiH
4)にジボラン(B
2H
6)を添加し、水素(H
2)で希釈したものを原料ガスとして使用する。
【0050】
そして、裏面10bに積層された各層をパターニングする。まず、絶縁層を部分的にエッチングして除去する。絶縁層のエッチング工程では、例えば、スクリーン印刷やインクジェットによる塗工プロセス、またはフォトリソプロセス等により形成されたレジスト膜をマスクとして使用する。絶縁層が酸化ケイ素(SiO
2)、窒化ケイ素(SiN)、又は、酸窒化ケイ素(SiON)である場合は、例えば、フッ化水素(HF)水溶液を用いてエッチングできる。
【0051】
絶縁層のエッチング終了後、例えば、レジスト膜を除去し、パターニングされた絶縁層をマスクとして、露出しているi型半導体層12i及びp型半導体層12pをエッチングする。i型半導体層12i及びp型半導体層12pのエッチングは、例えば、水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液(例えば、1質量%NaOH水溶液)等のアルカリ性エッチング液を用いて行う。この工程により、裏面10b上にパターニングされたi型半導体層12i及びp型半導体層12p、及び、絶縁層が形成される。
【0052】
なお、i型半導体層20iを積層する前において、半導体基板10の受光面10aにテクスチャ構造を形成するとよい。テクスチャ構造は、例えば、水酸化カリウム(KOH)水溶液を用いて、(100)面を異方性エッチングすることで形成できる。
【0053】
続いて、裏面10b上の端縁領域を除く全域にi型半導体層13i及びn型半導体層13nを積層する。つまり、パターニングしたi型半導体層12i及びp型半導体層12p上にもi型半導体層13i及びn型半導体層13nが積層される。i型半導体層13i及びn型半導体層13nは、i型半導体層12i及びp型半導体層12pと同様に、PECVDによって形成することができる。
【0054】
続いて、i型半導体層12i及びp型半導体層12p上に積層されたi型半導体層13i及びn型半導体層13nをパターニングし、絶縁層を部分的に除去する。まず、i型半導体層12i及びp型半導体層12p上に積層されたi型半導体層13i及びn型半導体層13nを部分的にエッチングして除去する。除去するi型半導体層13i及びn型半導体層13nの領域は、後工程でp側電極16pを形成するi型半導体層12i及びp型半導体層12p上の領域である。i型半導体層13i及びn型半導体層13nのエッチングでは、例えば、スクリーン印刷等によって形成されるレジスト膜をマスクとして使用し、NaOH水溶液等のアルカリ性エッチング液を用いて行う。
【0055】
i型半導体層13i及びn型半導体層13nは、通常、i型半導体層12i及びp型半導体層12pよりもエッチングされ難いため、i型半導体層12i及びp型半導体層12pに使用されるNaOH水溶液よりも高濃度のもの(例えば、10質量%NaOH水溶液)、又は、フッ硝酸(HFとHNO
3の混合水溶液(例えば、各々30質量%))を用いることが好ましい。あるいは、NaOH水溶液を70〜90℃程度に加熱して用いること(熱アルカリ処理)も好ましい。
【0056】
続いて、i型半導体層13i及びn型半導体層13nのエッチング終了後、レジスト膜を除去し、パターニングされたi型半導体層13i及びn型半導体層13nをマスクとして使用し、HF水溶液を用いて、露出している絶縁層をエッチングして除去する。そして、絶縁層の一部が除去されることで、i型半導体層12i及びp型半導体層12pの一部が露出する。
【0057】
次に、p型半導体層12p及びn型半導体層13nが形成された裏面10b上に、下地層14を形成する下地層形成工程(S11)、及び、下地層14の上に導電層15を形成する導電層形成工程(S12)が行われる。下地層14及び導電層15は、p型半導体層12p及びn型半導体層13n上の全域に積層される。
【0058】
ここで、ステップS10〜S12までの工程で作製された太陽電池セルについて、
図4を参照しながら説明する。
【0059】
図4は、本実施の形態に係る太陽電池セル1の電極形成工程後の断面模式図である。
【0060】
ステップS10〜S12までの工程において、
図4に示す各構成要素のうち、n側電極16n、p側電極16p、及び、レジスト膜22を除く部分が形成される。下地層14及び導電層15が切れ間なく形成されている。
【0061】
図3を再び参照して、導電層15上において、n側電極16n及びp側電極16pを分離溝(例えば、
図1の(b)に示すn側電極16n及びp側電極16pの間の領域)に対応する領域上にレジストを塗布するレジスト塗布工程が行われる(S13)。レジスト塗布工程で形成されたレジスト膜22は、分離部21に対応する導電層15上の領域に沿って形成される。すなわち、レジスト塗布工程後の太陽電池セル1の平面視において、レジスト膜22と分離部21とは、少なくとも一部が重なり、かつ互いに平行な方向に延びる。
【0062】
レジスト膜塗布工程では、例えば、スクリーン印刷によりレジスト膜22が形成される。そのため、
図4に示すように、レジスト膜22は、かまぼこ状の形状を有する。なお、レジスト膜22の形成方法は、スクリーン印刷法に限定されず、ディスペンサ法であってもよいし、その他の方法であってもよい。
【0063】
レジスト膜22の厚みは、後工程で行われるレーザ加工工程において、レーザ加工時の抜け残りが発生しない程度の厚みであるとよい。また、レジスト膜22の厚みは、レジスト膜22を形成するときに、ピンホールなどのかすれが発生しない程度の厚みであるとよい。例えば、レジスト膜22にかすれが発生しない程度の厚みとは、例えば15μm以上である。例えば、
図4に示すかまぼこ状のレジスト膜22において厚みが最大となる部分における厚みが、15μm以上である。それ以下であると、かすれの部分が発生し、後工程の電極形成工程において、当該かすれの部分からめっきが成長しショートの原因となる。
【0064】
続いて、レジスト膜22が形成された導電層15をシード層として、電解めっきにより、n側電極16n、及び、p側電極16pを形成する電極形成工程が行われる(S14)。ここで、めっき層が、レジスト膜22により区分けされて形成されるため、めっき層が分離されてn側電極16n、及び、p側電極16pが得られる。また、この工程では、導電層15がパターニングされていないため、めっき処理時に流れる電流の面密度が等しくなり、n側電極16n、及び、p側電極16pの厚みは同程度となる。
【0065】
本実施の形態では、n側電極16n、及び、p側電極16pがCu層から構成されるので、Cuめっきを行い、n側電極16n、及び、p側電極16pを形成する。
【0066】
図4は、ステップS14において、n側電極16n及びp側電極16pが形成された太陽電池セルを示す。レジスト膜22が形成されていない領域に、n側電極16n及びp側電極16pが形成されている。
図4に示すように、ステップS14の時点では、下地層14及び導電層15は、パターニングされていない。そのため、例えば、n型半導体層13n及びp型半導体層12pは、下地層14及び導電層15を介して導通している。よって、下地層14及び導電層15を部分的にエッチングすることが行われる。
【0067】
下地層14及び導電層15を部分的にエッチングするために、まずレーザを照射することでレジスト膜22を部分的に除去するレーザ加工工程が行われる(S15)。レーザ加工工程におけるレーザの走査経路について、
図5A及び
図5Bを参照しながら説明する。
【0068】
図5Aは、比較例に係るレーザ加工工程におけるレーザの走査経路を示す平面図である。
図5Bは、本実施の形態に係るレーザ加工工程におけるレーザの走査経路を示す平面図である。
図5A及び
図5Bでは、レーザの走査経路を破線の矢印で示しており、レーザの照射範囲を実線の枠で示している。
【0069】
図5Aに示すように、比較例では、レーザは、走査経路R111〜R113に沿って走査される。具体的には、走査経路R111における走査において、照射範囲E111の範囲のレジスト膜22にレーザが照射される。R112及び113における走査においても同様に、照射範囲E112及びE113の範囲のレジスト膜22にレーザが照射される。
【0070】
なお、n側電極16n及びp側電極16pが形成されている領域においては、レーザが照射されていない。つまり、n側電極16n及びp側電極16pが形成されている領域においては、レーザの出力が停止される。すなわち、比較例では、n側電極16n及びp側電極16pが形成されている領域と形成されていない領域との境界において、レーザの出力のオン及びオフが制御される。
【0071】
ここで、4箇所の交点Cにおいて、レーザが過剰に照射されていることがわかる。例えば、Xマイナス側にある2つの交点Cにおいて、照射範囲E111とE112とが重なる。つまり、交点Cにおいて、走査経路R111の走査においてレーザが照射され、かつ走査経路R112の走査においてレーザが照射されている。これにより、半導体層などがダメージを受けて、太陽電池セルの光電変換効率が低下することがある。そこで、本実施の形態では、レーザが同じ位置に過剰に照射されることを抑制する。なお、本実施の形態では、異なる走査経路においてそれぞれ同じ位置にレーザが照射されることを、レーザが2回照射されると記載する。
【0072】
図5Bに示すように、本実施の形態では、レーザは、走査経路R1〜R3に沿って走査される。例えば、走査経路R1〜R3は、
図5Aに示す走査経路R111〜R113と同じ経路であってもよい。具体的には、走査経路R1における走査において、照射範囲E1の範囲のレジスト膜22にレーザが照射される。走査経路R2及び3における走査においても同様に、照射範囲E2及びE3の範囲のレジスト膜22にレーザが照射される。走査経路R1は、照射範囲E3側から照射範囲E2側(
図5Bでは、X軸プラス側からX軸マイナス側)に向けて走査する往路と、照射範囲E2側から照射範囲E3側(
図5Bでは、X軸マイナス側からX軸プラス側)に向けて走査する復路とからなる。なお、走査経路R1〜R3は、レーザ加工を行う前に、予め設定される。つまり、照射範囲E2及びE3は、予め知ることができる範囲である。また、
図5Bでは、照射範囲E1〜E3はそれぞれ、直線状の範囲である例について示している。
【0073】
図5Bでは、
図5Aの交点Cのように、レーザの照射範囲が交差する領域はない。つまり、本実施の形態に係る太陽電池セルの製造方法では、同じ位置にレーザが2回照射されない。例えば、走査経路R1に沿って走査しているときのレーザの出力のオン及びオフを制御することで実現される。
【0074】
具体的には、走査経路R1(往路)において、照射範囲E3を通過した位置P1においてレーザの出力が開始される。すなわち、位置P1に到達するまでは、レーザの照射は行われていない。なお、照射範囲E3と位置P1との距離は、
図1の(b)に示す長さL1と略等しい。
【0075】
そして、位置P2に通過するまでは、レーザの照射が行われる。位置P2は、走査経路R1において、照射範囲E2を通過していない位置である。すなわち、走査経路R1において、照射範囲E2を通過する時点では、レーザの照射は行われていない。なお、照射範囲E2と位置P2との距離は、照射範囲E3と位置P1との距離と略等しい。これにより、位置P1から位置P2に至る長尺状の照射範囲E1が形成される。
【0076】
また、走査経路R1(復路)において、照射範囲E2を通過した位置P3においてレーザの出力が開始される。すなわち、位置P2から位置P3に到達するまでは、レーザの照射が行われていない。なお、照射範囲E2と位置P3との距離は、照射範囲E2と位置P2との距離と略等しい。
【0077】
そして、位置P4に至るまでは、レーザの照射が行われる。位置P4は、走査経路R1において、照射範囲E3を通過していない位置である。すなわち、走査経路R1において、照射範囲E3を通過する時点では、レーザの照射は行われていない。なお、照射範囲E3と位置P4との距離は、照射範囲E3と位置P1との距離と略等しい。これにより、位置P3から位置P4に至る長尺状の照射範囲E1が形成される。
【0078】
上記のように、走査経路R1において、走査経路R2及びR3と交差する位置において、レーザの出力が停止される。例えば、走査経路R1において、照射範囲E2及びE3と交差する位置において、レーザの出力が停止される。
【0079】
その後、走査経路R2及びR3において、照射範囲E2及びE3にレーザを照射する。例えば、走査経路R2及びR3では、n側電極16n及びp側電極16pが形成されている領域と形成されていない領域との境界において、レーザ出力のオン及びオフが行われる。
【0080】
以上のように、レーザ加工工程では、走査経路R1(往路及び復路)におけるレーザの出力のオン及びオフは、照射範囲E2及びE3の間の領域で行われる。これにより、照射範囲E1と照射範囲E2及びE3とが交差しない(重ならない)ので、同じ位置に2回レーザが照射されない。つまり、レーザにより半導体層などがダメージを受けることを抑制することができる。
【0081】
なお、
図5Bでは、レーザの出力のオン及びオフは、走査経路R1における照射範囲E2及びE3の間の領域で行われる例について説明したが、これに限定されない。例えば、レーザ出力のオン及びオフは、走査経路R2及びR3における、2つの照射範囲E1の間の領域で行われてもよい。具体的には、走査経路R1において、n側電極16n及びp側電極16pが形成されている領域と形成されていない領域との境界において、レーザ出力のオン及びオフが行われる。そして、走査経路R2及びR3において、2つの照射範囲E1の間の領域でレーザの出力のオン及びオフが行われてもよい。
【0082】
ここで、レーザ加工工程が行われた太陽電池セルについて、
図6A及び
図6Bを参照しながら説明する。
【0083】
図6Aは、
図5BのVIa−VIa線における、本実施の形態に係る製造工程中の太陽電池セル1の部分断面図である。つまり、
図6Aは、レーザ加工工程において、レーザが照射されていない領域の部分断面図である。
図6Bは、
図5BのVIb−VIb線における、本実施の形態に係る製造工程中の太陽電池セル1の部分断面図である。つまり、
図6Bは、レーザ加工工程において、レーザが照射された領域の部分断面図である。
【0084】
図6Aに示すように、レジスト膜22にレーザが照射されていない領域では、レジスト膜22に溝は形成されていない。つまり、レジスト膜22は、ステップS13において形成された状態のままである。
【0085】
図6Bに示すように、レジスト膜22にレーザが照射された領域では、レジスト膜22に導電層15まで貫通する溝22aが形成される。
図6Bでは、照射範囲E1に対応する溝22aが形成されている。
【0086】
図3を再び参照して、次にレジスト膜22に溝22aが形成された裏面10bをエッチングして下地層14をn側下地層14n及びp側下地層14pに分離する第一の分離溝17を形成する下地層除去工程が行われる(S16)。
【0087】
下地層除去工程では、まずレジスト膜22をマスクとして、導電層15を部分的にエッチングする。これにより、分離溝において導電層15が分断され、互いに分離されたn側導電層15n及びp側導電層15pが形成される。導電層15は、例えば、塩化第二鉄(FeCl
3)水溶液、塩酸過水、硫酸過水を用いてエッチングすることができる。なお、この工程により、透明導電層である下地層14の一部が露出する。
【0088】
続いて、レジスト膜22及び分離溝において分離された導電層15をマスクとして、露出した下地層14をエッチングする。これにより、第一の分離溝17において下地層14が分離され、互いに分離されたn側下地層14n及びp側下地層14p(後述する
図7Bを参照)が形成される。下地層14は、例えば、塩化水素(HCl)水溶液やシュウ酸水溶液を用いてエッチングできる。
【0089】
ここで、下地層除去工程が行われた太陽電池セル1について、
図7A及び
図7Bを参照しながら説明する。
【0090】
図7Aは、
図5BのVIa−VIa線に対応する位置における、本実施の形態に係る太陽電池セル1の下地層除去工程後の部分断面図である。つまり、
図7Aは、レーザ加工工程において、レーザが照射されていない領域の部分断面図である。
図7Bは、
図5BのVIb−VIb線に対応する位置における、本実施の形態に係る太陽電池セル1の下地層除去工程後の部分断面図である。つまり、
図7Bは、レーザ加工工程において、レーザが照射された領域の部分断面図である。
【0091】
図7Aに示すように、レジスト膜22にレーザが照射されていない領域では、導電層15及び下地層14は、エッチングされていない。つまり、導電層15及び下地層14は、ステップS11及びS12において形成された状態のままである。
【0092】
図7Bに示すように、レジスト膜22にレーザが照射された領域では、レジスト膜22の溝22aに対応した位置に、導電層15及び下地層14まで貫通する分離溝が形成される。例えば、導電層15には、当該分離溝により、互いに分離されたn側導電層15n及びp側導電層15pが形成される。また、下地層14には、当該分離溝により、互いに分離されたn側下地層14n及びp側下地層14pが形成される。なお、導電層15及び下地層14まで貫通する分離溝のうち、n側下地層14n及びp側下地層14pを分離する部分を第一の分離溝17(
図7Bにおいては、第一の分離部17a)と記載する。すなわち、第一の分離溝17は、n側下地層14n及びp側下地層14pを分離する溝である。
【0093】
図3を再び参照して、下地層除去工程の後にレジスト膜22を除去するレジスト除去工程(S17)と、n側導電層15n及びp側導電層15pの一部を除去する導電層除去工程(S18)が行われる。
【0094】
レジスト除去工程では、NaOH、KOH等のアルカリ溶液によってレジスト膜22を除去する。そして、導電層除去工程では、塩化第二鉄(FeCl
3)水溶液、塩酸過水、硫酸過水を用いてエッチングすることができる。
【0095】
ここで、レジスト除去工程及び導電層除去工程が行われた太陽電池セル1について、
図8を参照しながら説明する。
【0096】
図8は、本実施の形態に係る太陽電池セル1の導電層除去工程後の部分断面図である。具体的には、
図8の(a)は、
図5BのVIa−VIa線に対応する位置における、本実施の形態に係る太陽電池セル1の導電層除去工程後の部分断面図である。つまり、
図8の(a)は、レーザ加工工程において、レーザが照射されていない領域の部分断面図である。
図8の(b)は、
図5BのVIb−VIb線に対応する位置における、本実施の形態に係る太陽電池セル1の導電層除去工程後の部分断面図である。つまり、
図8の(b)は、レーザ加工工程において、レーザが照射された領域の部分断面図である。
【0097】
図8の(a)に示すように、レジスト膜22にレーザが照射されていない領域では、下地層14はエッチングされていない。具体的には、下地層14は、n側下地層14n、p側下地層14p、及び、第一のブリッジ部18とから構成される。第一のブリッジ部18は、n側下地層14n及びp側下地層14pとの間に配置され、n側下地層14n及びp側下地層14pを接続する。
【0098】
第一のブリッジ部18は、レーザ加工工程において、走査経路R1と走査経路R2及びR3とが交差する位置において、レーザが停止されることで、当該位置に形成される。なお、当該位置とは、例えば、照射範囲E1〜E3に含まれない領域であって、かつ照射範囲E1と照射範囲E2及びE3との間の領域に含まれる。
【0099】
図8の(b)に示すように、レジスト膜22にレーザが照射された領域では、下地層14は、エッチングされ、第一の分離部17aにより分離される。
【0100】
図8の(a)及び
図8の(b)に示すように、第一のブリッジ部18の幅L3(Y軸方向の長さ)は、第一の分離部17aの幅と略等しい。第一のブリッジ部18の幅L3は、第二の分離溝23の幅より小さい。例えば、第二の分離溝23の幅は、100μm〜200μmであり、第一のブリッジ部18の幅L3は、30μmである。なお、第一のブリッジ部18の幅L3は、レーザのドットの直径と略等しくてもよい。
【0101】
これにより、
図1の(a)及び(b)に示す太陽電池セル1が得られる。
【0102】
なお、太陽電池セル1の製造方法は、上記に限定されない。例えば、
図3に示す各工程の順序は、入れ替えられてもよい。例えば、電極形成工程が行われた後に、レジスト除去工程、導電層除去工程、及び、下地層除去工程が、この順に行われてもよい。レジスト除去工程では、
図6Bに示す溝22aが形成されていない状態のレジスト膜22(つまり、レジスト膜塗布工程で形成された状態のレジスト膜22)に対して、除去が行われる。導電層除去工程では、n側電極16n及びp側電極16pをマスクとして、導電層15の除去が行われる。これにより、n側導電層15n及びp側導電層15pが形成される。下地層除去工程では、露出した下地層14に対してレーザ加工が行われ、第一の分離溝17が形成される。すなわち、レーザ加工において、n側下地層14n、p側下地層14p、及び、第一のブリッジ部18が形成される。この場合においても、
図5Bに示すように、同じ位置においてレーザが2回照射されないようにレーザの出力の開始及び停止が制御される。これにより、
図1の(a)及び(b)に示す太陽電池セル1が得られる。
【0103】
[3.効果など]
以上のように、本実施の形態に係る太陽電池セル1は、裏面接合型の太陽電池セルであって、光が入射する受光面10a、及び、受光面10aと背向する裏面10bを有する半導体基板10と、半導体基板10の裏面10bに、第一の方向に延び、第一の方向と交差する第二の方向に、互いに隣り合って設けられたn型半導体層13n及びp型半導体層12pと、n型半導体層13n及びp型半導体層12pの上に設けられた下地層14とを備える。下地層14は、互いに異なる方向に延びる第一の分離部17a及び第二の分離部17bを有する第一の分離溝17で互いに分離され、n型半導体層13nの上に設けられたn側下地層14n、及び、p型半導体層12pの上に設けられたp側下地層14pと、第一の分離部17a及び第二の分離部17bを隔てる第一のブリッジ部18とを有し、n側下地層14nは、第一の方向に延びる第一のn側下地部141nを有し、p側下地層14pは、第一の方向に延び第一のn側下地部141nと隣り合って設けられた第一のp側下地部141pを有し、第一のブリッジ部18は、第一のn側下地部141nの第一の方向における一方側の第一の端部とp側下地層14pとの境界、及び、第一のp側下地部141pの第一の方向における他方側の第二の端部とn側下地層14nとの境界の少なくとも一方において、第一の分離部17aと第二の分離部17bとを隔てる。
【0104】
これにより、下地層14をn側下地層14nとp側下地層14pとに分離するためにレーザ加工を行う際、第一のブリッジ部18に対応する位置において、レーザの出力を停止することができる。つまり、第一の分離部17aと第二の分離部17bとが交差することを抑制することができる。よって、同じ位置にレーザが2回照射されることを抑制することができるので、レーザによる加工が行われる場合に、半導体層等へのダメージが抑制された太陽電池セル1を実現することができる。
【0105】
また、n側下地層14nは、第二の方向に延び、第一のn側下地部141nの第一の方向における他方側の端部を接続する第二のn側下地部142nを有し、p側下地層14pは、第二の方向に延び、第一のp側下地部141pの第一の方向における一方側の端部を接続する第二のp側下地部142pを有する。第一の分離部17aは、太陽電池セル1の平面視において、第一の方向に延び、隣り合う第一のn側下地部141n及び第一のp側下地部141pの間に設けられる。また、第二の分離部17bは、第一の端部と第二のp側下地部142p、及び、第二の端部と第二のn側下地部142nとの間にそれぞれ設けられ、第二の分離部17bの第二の方向における長さは、隣り合う第一の分離部17aの間隔L2より長い。そして、第一のブリッジ部18は、第一の分離部17aの第一の方向における端部と第二の分離部17bとを隔てる。
【0106】
これにより、レーザを複数回走査して第一の分離溝17を形成する場合においても、同じ位置にレーザが2回照射されることを抑制することができるので、レーザによる加工が行われる場合に、半導体層等へのダメージが抑制された太陽電池セル1を実現することができる。
【0107】
また、第一のブリッジ部18の長さL1は、第一のブリッジ部18のY軸方向の長さ(本実施の形態では、幅L3)以下である。
【0108】
これにより、第一のブリッジ部18の抵抗を高くすることができるので、第一のブリッジ部18によるキャリアの収集への影響が抑制され、かつ、レーザによる加工が行われる場合に、半導体層等へのダメージが抑制された太陽電池セル1を実現することができる。
【0109】
また、以上のように、本実施の形態に係る太陽電池セルの製造方法は、裏面接合型の太陽電池セルの製造方法であって、光が入射する受光面10a、及び、受光面10aと背向する裏面10bを有する半導体基板10の裏面10bに、第一の方向に延び、第一の方向と交差する第二の方向に互いに隣り合って設けられたn型半導体層13n及びp型半導体層12pを形成する半導体層形成工程(S10)と、n型半導体層13n及びp型半導体層12pが形成された裏面10bに下地層14を形成する下地層形成工程(S11)と、下地層14の上に導電層15を形成する導電層形成工程(S12)と、導電層15の上であり、n型半導体層13n及びp型半導体層12pに対応する領域にレジストを塗布するレジスト形成工程(S13)と、レジスト形成工程でレジスト膜22が形成された導電層15をシード層として、電解めっきにより、n側電極16n及びp側電極16pを形成する電極形成工程(S14)と、電極形成工程の後に、レーザを走査することでレジスト膜22に導電層15まで貫通する溝22aを形成するレーザ加工工程(S15)と、溝22aが形成された裏面10bをエッチングして下地層14をn側下地層14n及びp側下地層14pに分離する第一の分離溝17を形成する下地層除去工程(S16)と、下地層除去工程の後にレジスト膜22を除去するレジスト除去工程(S17)とを含む。そして、レーザ加工工程では、レーザを走査した走査経路R1〜R3が交差する位置においてレーザの出力を停止することで、当該位置において、異なる方向に延びる第一の分離部17aと第二の分離部17bとが隔てられた第一の分離溝17を形成する。
【0110】
これにより、走査経路R1〜R3が交差する位置において、レーザの出力を停止することで、第一の分離部17aと第二の分離部17bとが第一のブリッジ部18で隔てられた太陽電池セル1を実現することができる。
【0111】
また、レーザ加工工程では、レーザによりレジスト膜22を除去するので、導電層15及び下地層14を直接レーザで除去する場合に比べ、除去された導電層15及び下地層14がその周囲に付着することを抑制することができる。
【0112】
(実施の形態1の変形例1)
以下、
図9及び
図10を用いて、本変形例に係る太陽電池セルについて説明する。
【0113】
図9は、本変形例に係る太陽電池セルを示す平面図である。具体的には、
図9では、太陽電池セルのうち、
図1の(b)に対応する領域を示している。
【0114】
図9に示すように、本実施の形態では、下地層は、n側下地層114n、p側下地層114p、及び、第一のブリッジ部118を有する。
【0115】
下地層は、第一の分離溝117により分離される。具体的には、下地層は、第一の分離部117a、及び、第二の分離部117bにより、n側下地層114n及びp側下地層114pに分離される。
【0116】
第一の分離部117aは、太陽電池セルの平面視において、一方の端部が第一のp側下地部141pと第二のn側下地部142n(
図1の(a)参照)との境界に設けられ、他方の端部が第一のp側下地部141pと隣り合う第一のn側下地部141nの一方と第二のp側下地部142pとの境界に設けられる。
【0117】
第二の分離部117bは、太陽電池セルの平面視において、一方の端部が第一のp側下地部141pと第二のn側下地部142nとの境界に設けられ、他方の端部が第一のp側下地部141pと隣り合う第一のn側下地部141nの他方と第二のp側下地部142pとの境界に設けられる。
【0118】
第一の分離部117a及び第二の分離部117bはそれぞれ、例えば、端部側において湾曲した形状を有する。
【0119】
第一のブリッジ部118は、第一の分離部117a及び第二の分離部117bの隣り合う端部の間に配置されている。すなわち、第一のブリッジ部118は、異なる方向に延びる第一の分離部117a及び第二の分離部117bを、n側下地層114n及びp側下地層114pの境界において、隔てる。
【0120】
続いて、本変形例に係る太陽電池セルの製造方法について、
図10を参照しながら説明する。本変形例では、
図3に示すレーザ加工工程に特徴があり、レーザ加工工程についてのみ説明する。その他の工程は、実施の形態1と同様である。
【0121】
図10は、本変形例に係るレーザ加工工程におけるレーザの走査経路を示す平面図である。具体的には、
図10では、
図1の(a)に示す破線領域Aに対応する領域を示している。
【0122】
図10に示すように、走査経路R11に沿って走査され、レーザが照射される。具体的には、走査経路R11における走査において、照射範囲E11の範囲のレジスト膜22にレーザが照射される。つまり、本変形例では、1回の走査で、レジスト膜22に溝を形成することができる。
【0123】
照射範囲E11は、走査経路R11において、レーザが照射された範囲を示す。走査経路R11は、少なくとも一部が湾曲した形状を有する。すなわち、n側電極16nとp側電極16pとの間の領域において、走査経路R11は湾曲した経路を有する。
【0124】
走査経路R11において、湾曲して走査する位置P11でレーザがオンされる。そして、位置P12までレーザが照射される。すなわち、走査経路R11が交差する位置を通過する前にレーザの出力はオフされる。そして、レーザの出力が停止した状態で走査経路R11を走査して、走査経路R11が交差する位置を通過した位置P13においてレーザの出力がオンされる。すなわち、走査経路R11が交差する位置において、レーザの照射は行われていない。つまり、同じ位置において、レーザは2回照射されていない。そして、位置P14に到達するまで、レーザの照射が行われ、位置P14においてレーザの出力が停止される。
【0125】
レーザ加工工程において、レーザを走査した走査経路R11が交差する位置においてレーザの出力が停止されることで、当該位置において、異なる方向に延びる第一の分離部117aと第二の分離部117bとが第一のブリッジ部118で隔てられた第一の分離溝117を形成することができる。これにより、
図9に示す太陽電池セル1が得られる。
【0126】
以上のように、本変形例に係る太陽電池セルは、n側下地層114nは、第一の方向と交差する第二の方向に延び、第一のn側下地部141nの第一の方向における他方側の端部を接続する第二のn側下地部142nを有し、p側下地層114pは、第二の方向に延び、第一のp側下地部141pの第一の方向における一方側の端部を接続する第二のp側下地部142pを有する。第一の分離部117aは、太陽電池セルの平面視において、一方の端部が第一のp側下地部141pと第二のn側下地部142nとの境界に設けられ、他方の端部が第一のp側下地部141pと隣り合う第一のn側下地部141nの一方と第二のp側下地部142pとの境界に設けられる。また、第二の分離部117bは、太陽電池セルの平面視において、一方の端部が第一のp側下地部141pと第二のn側下地部142nとの境界に設けられ、他方の端部が第一のp側下地部141pと隣り合う第一のn側下地部141nの他方と第二のp側下地部142pとの境界に設けられる。そして、第一のブリッジ部118は、第一の分離部117a及び第二の分離部117bの隣り合う端部を隔てる。
【0127】
これにより、レーザを1回走査して第一の分離溝117を形成する場合においても、走査経路R11が交差する位置にレーザが2回照射されることを抑制することができるので、レーザによる加工が行われる場合に、半導体層等へのダメージが抑制された太陽電池セルを実現することができる。
【0128】
(実施の形態1の変形例2)
以下、
図11〜
図13を用いて、本変形例に係る太陽電池セルについて説明する。本変形例では、レーザ加工工程においてレーザが照射される照射範囲に特徴を有する。すなわち、第一の分離部及び第二の分離部が形成される位置が、実施の形態1とは異なる。
【0129】
図11は、本変形例に係るレーザ加工工程におけるレーザの走査経路を示す平面図である。
【0130】
図5Bでは、n側電極16nとp側電極16pとの間の略中央部に沿ってレーザが照射されていたが、本変形例では、
図11に示すように、n側電極16nとp側電極16pとの間であって、かつn側電極16n及びp側電極16pの一方に近い位置に沿ってレーザが照射される。
【0131】
図11では、走査経路R21〜R23によりレーザが照射されているが、走査経路R21は、n側電極16nとp側電極16pとの間であって、かつn側電極16n及びp側電極16pのうちn側電極16nに近い位置を走査する。そのため、照射範囲E21は、n側電極16nとp側電極16pとの間であって、かつn側電極16n及びp側電極16pのうちn側電極16nに近い位置に形成される。例えば、照射範囲E21は、n側フィンガー電極161nとp側フィンガー電極161p(
図1の(a)を参照)との間であって、かつn側フィンガー電極161nに近い位置に形成される。
【0132】
また、走査経路R22は、n側電極16nとp側電極16pとの間であって、かつn側電極16nに近い位置を走査する。そのため、照射範囲E22は、n側電極16nとp側電極16pとの間であって、かつn側電極16nに近い位置に形成される。例えば、照射範囲E22は、n側フィンガー電極161nとp側バスバー電極162p(
図1の(a)を参照)との間であって、かつn側バスバー電極162nに近い位置に形成される。
【0133】
また、走査経路R23は、n側電極16nとp側電極16pとの間であって、かつn側電極16nに近い位置を走査する。そのため、照射範囲E23は、n側電極16nとp側電極16pとの間であって、かつn側電極16nに近い位置に形成される。例えば、照射範囲E23は、p側フィンガー電極161pとn側バスバー電極162n(
図1の(a)を参照)との間であって、かつn側バスバー電極162nに近い位置に形成される。
【0134】
位置P21〜位置P24はそれぞれ、
図5Bに示す位置P1〜P4に相当する。つまり、位置P21及びP23でレーザの照射が開始され、位置P22及びP24でレーザの照射が停止される。すなわち、照射範囲E21は、照射範囲E22及びE23の間に形成される。
【0135】
図12Aは、
図11のXIIa−XIIa線における、本変形例に係る太陽電池セルのレーザ加工工程後の部分断面図である。
図12Bは、
図11のXIIb−XIIb線における、本変形例に係る太陽電池セルのレーザ加工工程後の部分断面図である。
【0136】
図12Aに示すように、レジスト膜22にレーザが照射されていない領域では、レジスト膜22に溝は形成されていない。つまり、レジスト膜22は、
図3に示すステップS13において形成された状態のままである。
【0137】
図12Bに示すように、レジスト膜22にレーザが照射された領域では、レジスト膜22に導電層15まで貫通する溝122aが形成される。
図12Bでは、照射範囲E21に対応する溝122aが形成されている。具体的には、溝122aは、太陽電池セルの断面視において、レジスト膜22の厚みが最大となる位置と、n側電極16n又はp側電極16pとの間に形成されている。本実施の形態では、レジスト膜22は、かまぼこ状に形成されている。レジスト膜22の厚みが最大値となる位置は、レジスト膜22の幅(Y軸方向の長さ)の略中央の位置となる。例えば、レジスト膜22の厚みが最大となる位置は、n側電極16nとp側電極16pとの間の略中央の位置である。そのため、溝122aは、太陽電池セルの断面視において、n側電極16n及びp側電極16pの一方に近い位置に形成される。本実施の形態では、溝122aは、n側電極16nに近い位置に形成されている。
【0138】
図13は、本変形例に係る太陽電池セルの下地層除去工程後の部分断面図である。具体的には、
図13の(a)は、
図11のXIIa−XIIa線における、本変形例に係る太陽電池セルの下地層除去工程後の部分断面図である。
図13の(b)は、
図11のXIIb−XIIb線における、本変形例に係る太陽電池セルの下地層除去工程後の部分断面図である。
【0139】
図13の(a)に示すように、レジスト膜22にレーザが照射されていない領域では、下地層14はエッチングされていない。具体的には、下地層14は、n側下地層214n、p側下地層214p、及び、第一のブリッジ部218とから構成される。第一のブリッジ部218は、n側下地層214n及びp側下地層214pとの間に配置され、n側下地層214n及びp側下地層214pを接続する。
【0140】
図13の(b)に示すように、レジスト膜22にレーザが照射された領域では、下地層14は、エッチングされ、第一の分離部217aにより分離されている。
【0141】
図13の(a)及び
図13の(b)に示すように、第一のブリッジ部218及び第一の分離部217aは、太陽電池セルの断面視において、n側電極16n及びp側電極16pのうち、p側電極16p側に形成されている。
【0142】
また、図示しないが、照射範囲E22により形成される第二の分離部は、太陽電池セルの断面視において、p側電極16p側に形成される。また、照射範囲E23により形成される第二の分離部は、太陽電池セルの断面視において、n側電極16n側に形成される。第一の分離部217aと第二の分離部とで、分離溝が形成される。
【0143】
以上のように、本変形例に係る太陽電池セルは、n側導電層15nの上に設けられ、めっき膜から形成されたn側電極16nと、p側導電層15pの上に設けられ、めっき膜から形成されたp側電極16pとを備える。そして、第一の分離溝(例えば、第一の分離部17a)は、太陽電池セルの平面視において、n側電極16nとp側電極16pとの間であり、かつn側電極16n及びp側電極16pの一方に近い位置に配置される。
【0144】
これにより、レジスト膜22の厚みが厚い場合にレジスト膜22の厚みが最大となる部分とは異なる部分をレーザで加工することができるので、レーザの出力を上げることなく溝122aを形成することができる。つまり、レジスト膜22の厚みが厚い場合であっても、レーザの出力を上げることにより半導体層へのダメージが大きくなることを抑制することができる。よって、本変形例では、レーザによる加工が行われる場合に、半導体層等へのダメージが抑制された太陽電池セルを実現することができる。
【0145】
また、以上のように、本変形例に係る太陽電池セルの製造方法は、レーザ加工工程では、太陽電池セルの断面視において、レジスト膜22の厚みが最大となる位置とn側電極16n又はp側電極16pとの間に、レーザを走査する。例えば、レーザ加工工程では、太陽電池セルの断面視において、n側電極16n及びp側電極16pの一方に近い位置に、レーザを走査してもよい。
【0146】
これにより、レジスト膜22の厚みが厚い場合にレジスト膜22の厚みが最大となる部分とは異なる部分にレーザで加工することができるので、レーザの出力を上げることなく溝122aを形成することができる。つまり、レジスト膜22の厚みが厚い場合であっても、レーザの出力を上げることにより半導体層へのダメージが大きくなることを抑制することができる。さらに、レジスト膜22の厚みの最大となる部分をレーザで加工しないので、レーザ加工後のレジスト膜22の膜残りが発生することを抑制することができる。よって、レーザによる加工が行われる場合に、半導体層等へのダメージが抑制され、かつ歩留まりが改善された太陽電池セルを実現することができる。
【0147】
(実施の形態1の変形例3)
以下、
図14を用いて、本変形例に係る太陽電池セルについて説明する。
【0148】
図14は、本変形例に係る太陽電池セルの部分断面図である。具体的には、
図14の(a)は、
図5BのVIa−VIa線に対応する位置における、本変形例に係る太陽電池セルの部分断面図である。
図14の(b)は、
図5BのVIb−VIb線に対応する位置における、本変形例に係る太陽電池セルの部分断面図である。なお、本変形例では、
図3に示す導電層除去工程は、行われない。
【0149】
図14の(a)に示すように、導電層は、n側導電層315n、p側導電層315p、及び、第二のブリッジ部24から構成される。第二のブリッジ部24は、第一のブリッジ部18の上に形成される。第二のブリッジ部24は、例えば、
図1の(b)に示す第一のブリッジ部18の上に形成される。本変形例に係る太陽電池セルは、
図1の(b)に示す第一の分離部17a及び第二の分離部17bに対応する位置に、導電層をn側導電層315nとp側導電層315pとに分離する分離溝を有する。すなわち、導電層は、異なる方向に延びる2つの分離部からなる分離溝を有する。第二のブリッジ部24は、2つの分離部を隔てる。なお、導電層をn側導電層315nとp側導電層315pとに分離する分離溝(例えば、
図14の(b)の第一の分離部23a)は、第二の分離溝の一例である。
【0150】
第二のブリッジ部24が、上記の位置に配置されることで、n型半導体層13nとp型半導体層12pとが第二のブリッジ部24を介して接続される。n型半導体層13nとp型半導体層12pとが光電変換効率に影響がない程度の高抵抗で第二のブリッジ部24を介して接続されている場合、第二のブリッジ部24が形成されていても光電変換効率に対する影響が少ない。第二のブリッジ部24の抵抗は、例えば、第一のブリッジ部18の抵抗と同程度である。例えば、第二のブリッジ部24の抵抗は、1kΩ/□以上である。例えば、導電層(本実施の形態では、第二のブリッジ部24、n側導電層315n、及び、p側導電層315p)のシート抵抗は、1kΩ/□以上である。また、例えば、平面視したときの第二のブリッジ部24のサイズは、第一のブリッジ部18と略等しい。そのため、第二のブリッジ部24の抵抗は高く、n側導電層315nとp側導電層315pとが導通することを抑制することができる。
【0151】
なお、レジスト除去工程の後に、第二のブリッジ部24の抵抗値を上げる処理が行われてもよい。例えば、酸素雰囲気下で熱処理を行って高抵抗化させる等の処理が行われてもよい。
【0152】
図14の(b)に示すように、導電層は、第一の分離部23aにより、n側導電層315n、p側導電層315pに分離されている。第一の分離部23aの幅(Y軸方向の長さ)は、例えば、第一の分離部17aの幅と略等しい。
【0153】
以上のように、本変形例に係る太陽電池セルは、n側下地層14n及びp側下地層14pの上に設けられた導電層15を備える。そして、導電層15は、第二の分離溝(例えば、第一の分離部23a)で互いに分離され、n側下地層14nの上に設けられたn側導電層315nと、p側下地層14pの上に設けられたp側導電層315pと、第一のブリッジ部18の上に設けられ、第二の分離溝を隔てる第二のブリッジ部24とを有する。
【0154】
これにより、例えば、
図3に示す導電層除去工程を省略しても、レーザによる加工が行われる場合に、半導体層等へのダメージが抑制された太陽電池セルを実現することができる。
【0155】
(実施の形態1の変形例4)
以下、
図15及び
図16を用いて、本変形例に係る太陽電池セルについて説明する。
【0156】
図15は、本変形例に係る太陽電池セルの短辺付近の拡大図である。具体的には、
図15の領域Bは、
図1中の領域Bの拡大図である。なお、
図15では、図面の理解を容易にするために、領域Bは
図1に対して180度回転させている。
図15において、R32a及びR32bは、レーザの走査経路を示す。
図16は、
図15中の領域Cの拡大図であり、領域Cにおけるレーザの走査経路と、レーザ照射範囲E31、E32、E33とを示す。
【0157】
本変形例では、太陽電池セルの短辺付近(コーナー付近)のレーザの走査経路を説明する。太陽電池セルの形状が、例えば本変形例のように長辺と短辺とを有する略八角形である場合、太陽電池セルのY軸方向の両端部に設けられるフィンガー電極161peの先端のX座標は、Y軸方向の中央部に設けられるフィンガー電極161pの先端のX座標と異なる。すなわち、フィンガー電極161peの先端のX座標は、フィンガー電極161pの先端のX座標よりも小さい。このとき、
図15のR32bのように、複数のフィンガー電極161pe(
図15の例では、2本のフィンガー電極161pe)の先端部のレーザ走査を一度に行うと、レーザ走査が簡便である。例えば、Y軸と略平行な方向の走査経路(例えば、走査経路R32a)のみでレーザ走査を行う場合、フィンガー電極161pの先端部を走査経路R32aでレーザを照射し、2本のフィンガー電極161peのそれぞれの先端部をY軸と平行な方向の走査経路で別々にレーザを照射する。つまり、3回のレーザ走査を行う必要がある。一方、本変形例では、走査経路R32a及びR32bの2回のレーザ走査で所望の領域にレーザを照射することができる。なお、本変形例における両端部とは、太陽電池セルの外周部から太陽電池セルの中心部に向かって数mm〜数cmの領域であるものとする。また、走査経路R32bは、X軸及びY軸の双方と交差する方向であり、フィンガー電極161peのそれぞれの先端のX座標等により適宜決定される。
【0158】
レーザの走査径路R32は、走査経路R31よりも外周側でフィンガー電極161nと交差することが好ましい。そのためには、フィンガー電極161peの先端付近のレジスト膜22は、フィンガー電極161pの先端付近のレジスト膜22よりもX軸方向の幅が広いほうがよい。
図16に示すように、太陽電池セルの短辺付近において、レーザの走査経路R32bは、レジスト膜22の配置位置をX軸及びY軸の双方と交差する方向に走る。すなわち、レーザ照射範囲E33もX軸及びY軸の双方と交差する方向に延びる。フィンガー電極161peの先端付近に配置されるレジスト膜22のX軸方向の幅が広いことにより、フィンガー電極161peの先端を損傷させることなく、レーザ照射範囲E33を形成することができる。レジスト膜22のX軸方向の幅は、レーザ照射範囲E33を形成するのに必要なだけの幅を有していればよい。
【0159】
本変形例では、フィンガー電極161p及び161peについて説明したが、フィンガー電極161nについても同様の処理を行ってよい。すなわち、太陽電池セルのY軸方向における両端部に設けられるフィンガー電極161ne(図示しない)の先端において、上記と同様のレーザの走査経路にてレーザ照射を行ってもよい。
【0160】
本変形例では、太陽電池セルが略八角形であるものとして説明しているが、太陽電池セルの形態は、これに限定されない。また、本変形例では、太陽電池セルのY軸方向における両端部に設けられるフィンガー電極161peと、フィンガー電極161pとを区別して説明している。しかしこのような電極の配置形態は、必ずしも太陽電池セルの両端部に設けられていなくてよい。レーザ走査を簡便にするために電極の配置パターンを変形させる場合、パターンを変形させる箇所が太陽電池セルのY軸方向の中央部であったとしても、本変形例を適用可能である。また、裏面接合型の太陽電池セルのみならず、同様な製造工程を用いる場合であれば、両面受光型の太陽電池にも本変形例が適用可能であることは言うまでもない。
【0161】
(他の実施の形態)
以上、本発明に係る太陽電池セル等について、実施の形態及び変形例に基づいて説明したが、本発明は、上記実施の形態及び変形例に限定されない。
【0162】
例えば、上記実施の形態及び変形例では、i型半導体層12i及びp型半導体層12pを積層してからi型半導体層13i及びn型半導体層13nを積層するものとして説明したが、i型半導体層13i及びn型半導体層13nを先に積層してもよい。
【0163】
また、上記実施の形態及び変形例で説明した太陽電池セルの製造方法における各工程の順序は一例であり、これに限定されない。また、各工程の一部は、行われなくてもよい。
【0164】
また、上記実施の形態及び変形例で説明した太陽電池セルの製造方法における各工程は、1つの工程で実施されてもよいし、別々の工程で実施されてもよい。なお、1つの工程で実施されるとは、各工程が1つの装置を用いて実施される、各工程が連続して実施される、又は、各工程が同じ場所で実施されることを含む意図である。また、別々の工程とは、各工程が別々の装置を用いて実施される、各工程が異なる時間(例えば、異なる日)に実施される、又は、各工程が異なる場所で実施されることを含む意図である。
【0165】
その他、各実施の形態及び変形例に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態や、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各実施の形態及び変形例における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本発明に含まれる。