特表-19142528IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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再表2019-142528凹凸構造体の製造方法、凹凸構造体を製造する方法に用いられる積層体および当該積層体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2019年7月25日
【発行日】2020年12月17日
(54)【発明の名称】凹凸構造体の製造方法、凹凸構造体を製造する方法に用いられる積層体および当該積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 59/02 20060101AFI20201120BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20201120BHJP
【FI】
   B29C59/02 Z
   H01L21/30 502D
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】38
【出願番号】特願2019-565754(P2019-565754)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2018年12月5日
(31)【優先権主張番号】特願2018-6980(P2018-6980)
(32)【優先日】2018年1月19日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】小田 隆志
(72)【発明者】
【氏名】大喜田 尚紀
(72)【発明者】
【氏名】中島 真実
【テーマコード(参考)】
4F209
5F146
【Fターム(参考)】
4F209AA12A
4F209AA16A
4F209AA44
4F209AB04
4F209AF01
4F209AG03
4F209AG05
4F209AH33
4F209AH73
4F209PA02
4F209PB01
4F209PG05
4F209PN06
4F209PN09
5F146AA31
5F146AA33
(57)【要約】
基材層と、フッ素含有環状オレフィンポリマー(A)、光硬化性化合物(B)および光硬化開始剤(C)を含む光硬化性樹脂層と、保護フィルム層とをこの順に備えた積層体を準備する準備工程と、積層体の保護フィルム層を剥がす剥離工程と、剥離工程で露出した光硬化性樹脂層にモールドを圧接する圧接工程と、光硬化性樹脂層に光を照射する光照射工程とを含み、モールドの凹凸が反転された凹凸構造体を製造する、凹凸構造体の製造方法。また、モールドの凹凸が反転された凹凸構造体を製造する方法に用いられる、基材層と、フッ素含有環状オレフィンポリマー(A)、光硬化性化合物(B)および光硬化開始剤(C)を含む光硬化性樹脂層とをこの順に備えた積層体。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層と、フッ素含有環状オレフィンポリマー(A)、光硬化性化合物(B)および光硬化開始剤(C)を含む光硬化性樹脂層と、保護フィルム層とをこの順に備えた積層体を準備する準備工程と、
前記積層体の前記保護フィルム層を剥がす剥離工程と、
前記剥離工程で露出した前記光硬化性樹脂層にモールドを圧接する圧接工程と、
前記光硬化性樹脂層に光を照射する光照射工程と
を含み、前記モールドの凹凸が反転された凹凸構造体を製造する、凹凸構造体の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の凹凸構造体の製造方法であって、
前記光硬化性樹脂層中の、前記フッ素含有環状オレフィンポリマー(A)の含有量と前記光硬化性化合物(B)の含有量との質量比((A)/(B))が、1/99以上80/20以下である、凹凸構造体の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の凹凸構造体の製造方法であって、
前記光硬化性化合物(B)が、カチオン重合可能な開環重合性化合物を含む、凹凸構造体の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の凹凸構造体の製造方法であって、
前記光硬化性化合物(B)の1気圧下での沸点が150℃以上350℃以下である、凹凸構造体の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の凹凸構造体の製造方法であって、
前記フッ素含有環状オレフィンポリマー(A)が、下記一般式(1)で表される構造単位を含む、凹凸構造体の製造方法。
【化1】
(一般式(1)中、
〜Rのうち少なくとも1つは、フッ素、フッ素を含有する炭素数1〜10のアルキル基、フッ素を含有する炭素数1〜10のアルコキシ基およびフッ素を含有する炭素数2〜10のアルコキシアルキル基からなる群より選択されるフッ素含有基であり、
〜Rがフッ素含有基ではない場合、R〜Rは、水素、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基および炭素数2〜10のアルコキシアルキル基からなる群より選択される有機基であり、
〜Rは同一でも異なっていてもよく、またR〜Rは互いに結合して環構造を形成していてもよく、nは0〜2の整数を表す。)
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の凹凸構造体の製造方法であって、
前記基材層が、樹脂フィルムで構成されている、凹凸構造体の製造方法。
【請求項7】
モールドの凹凸が反転された凹凸構造体を製造する方法に用いられる積層体であって、
基材層と、フッ素含有環状オレフィンポリマー(A)、光硬化性化合物(B)および光硬化開始剤(C)を含む光硬化性樹脂層と、保護フィルム層とをこの順に備えた積層体。
【請求項8】
請求項7に記載の積層体であって、
前記光硬化性樹脂層中の、前記フッ素含有環状オレフィンポリマー(A)の含有量と前記光硬化性化合物(B)の含有量との質量比((A)/(B))が、1/99以上80/20以下である積層体。
【請求項9】
請求項7または8に記載の積層体であって、
前記光硬化性化合物(B)が、カチオン重合可能な開環重合性化合物を含む積層体。
【請求項10】
請求項7〜9のいずれか一項に記載の積層体であって、
前記光硬化性化合物(B)の1気圧下での沸点が150℃以上350℃以下である積層体。
【請求項11】
請求項7〜10のいずれか1項に記載の積層体であって、
前記フッ素含有環状オレフィンポリマー(A)が、下記一般式(1)で表される構造単位を含む積層体。
【化2】
(一般式(1)中、
〜Rのうち少なくとも1つは、フッ素、フッ素を含有する炭素数1〜10のアルキル基、フッ素を含有する炭素数1〜10のアルコキシ基およびフッ素を含有する炭素数2〜10のアルコキシアルキル基からなる群より選択されるフッ素含有基であり、
〜Rがフッ素含有基ではない場合、R〜Rは、水素、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基および炭素数2〜10のアルコキシアルキル基からなる群より選択される有機基であり、
〜Rは同一でも異なっていてもよく、またR〜Rは互いに結合して環構造を形成していてもよく、
nは0〜2の整数を表す。)
【請求項12】
請求項7〜11のいずれか1項に記載の積層体であって、
前記基材層が、樹脂フィルムで構成されている積層体。
【請求項13】
請求項7〜12のいずれか1項に記載の積層体の製造方法であって、
基材層の表面に、フッ素含有環状オレフィンポリマー(A)、光硬化性化合物(B)および光硬化開始剤(C)を含む光硬化性樹脂層を形成する工程と、
前記光硬化性樹脂層の表面に保護フィルム層を形成する工程と
を含む積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凹凸構造体の製造方法、凹凸構造体を製造する方法に用いられる積層体および当該積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基板の表面に微細凹凸パターンを形成する方法として、フォトリソグラフィ法やナノインプリントリソグラフィ法が知られている。
フォトリソグラフィ法は装置が高価であり、プロセスが複雑であるのに対し、ナノインプリントリソグラフィ法は簡便な装置とプロセスによって基板の表面に微細凹凸パターンを作製することができるという利点を有している。また、ナノインプリントリソグラフィ法は、比較的幅が広く、深い凹凸構造やドーム状、四角錐、三角錐等の多様な形状を形成するのに好ましい方法とされている。
【0003】
ナノインプリントリソグラフィ法を用いた基板への微細凹凸パターンの形成方法は、一例として、以下の手順で実施される。
(1)光硬化性化合物、または光硬化性化合物を溶剤に溶解したワニスを所望の基板上に塗布し、必要に応じて乾燥炉で溶剤、および/またはその他の有機化合物を加熱除去する。
(2)次いで、所望の凹凸パターンを有するモールドを接触させ、光照射によって硬化させる。
(3)その後、モールドを剥離することで基板上に凹凸構造を形成した加工基板を得る。
【0004】
光硬化性化合物を用いる光式ナノインプリントの公知技術として、例えば、特許文献1や2が挙げられる。光式ナノインプリントは、寸法精度良く所望の凹凸パターンを形成でき、広範な領域に高い圧力を印加する必要もなく大面積化が容易であると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2009/101913号
【特許文献2】国際公開第2010/098102号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、ディスプレイ、半導体などの電子デバイスまたは回路などを製造するプロセスでは、年々増大する生産量に応じて、工程で使用される有機化合物などの排出量も増大しており、廃棄コスト、環境問題、さらにはヒト(作業者)の健康などの観点から、プロセスで使用する溶剤などの有機化合物の種類や量に対する規制が高まっている。解決策の一つとして、溶剤を用いないプロセス(いわゆるドライプロセス等)の適応が広く求められている。ナノインプリントリソグラフィ法を適応するプロセスにおいても例外なく各種の規制は適用されている。よって、微細凹凸パターン形成の精度が高く、かつ、溶剤などの揮発分を発生させない材料および/またはプロセスの創出が求められる。
【0007】
前述の特許文献1や2に記載されたナノインプリント用の光硬化性樹脂組成物は、基本的に溶剤を含有している。よって、インプリント工程実施の際に、溶剤などの有機化合物の揮発分が発生する場合がある。つまり、揮発分除去のための追加の設備投資が必要となったり、作業者の健康面で問題となったりする可能性がある。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものである。つまり、光式ナノインプリントで凹凸構造体を製造する際の、溶剤などの有機化合物の排出を抑えることを本発明の目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、検討の結果、以下に提供される発明をなし、上記課題を達成できることを見出した。
【0010】
本発明は、以下のとおりである。
【0011】
1.
基材層と、フッ素含有環状オレフィンポリマー(A)、光硬化性化合物(B)および光硬化開始剤(C)を含む光硬化性樹脂層と、保護フィルム層とをこの順に備えた積層体を準備する準備工程と、
前記積層体の前記保護フィルム層を剥がす剥離工程と、
前記剥離工程で露出した前記光硬化性樹脂層にモールドを圧接する圧接工程と、
前記光硬化性樹脂層に光を照射する光照射工程と
を含み、前記モールドの凹凸が反転された凹凸構造体を製造する、凹凸構造体の製造方法。
2.
1.に記載の凹凸構造体の製造方法であって、
前記光硬化性樹脂層中の、前記フッ素含有環状オレフィンポリマー(A)の含有量と前記光硬化性化合物(B)の含有量との質量比((A)/(B))が、1/99以上80/20以下である、凹凸構造体の製造方法。
3.
1.または2.に記載の凹凸構造体の製造方法であって、
前記光硬化性化合物(B)が、カチオン重合可能な開環重合性化合物を含む、凹凸構造体の製造方法。
4.
1.〜3.のいずれか1つに記載の凹凸構造体の製造方法であって、
前記光硬化性化合物(B)の1気圧下での沸点が150℃以上350℃以下である、凹凸構造体の製造方法。
5.
1.〜4.のいずれか1つに記載の凹凸構造体の製造方法であって、
前記フッ素含有環状オレフィンポリマー(A)が、下記一般式(1)で表される構造単位を含む、凹凸構造体の製造方法。
【0012】
【化1】
(一般式(1)中、
〜Rのうち少なくとも1つは、フッ素、フッ素を含有する炭素数1〜10のアルキル基、フッ素を含有する炭素数1〜10のアルコキシ基およびフッ素を含有する炭素数2〜10のアルコキシアルキル基からなる群より選択されるフッ素含有基であり、
〜Rがフッ素含有基ではない場合、R〜Rは、水素、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基および炭素数2〜10のアルコキシアルキル基からなる群より選択される有機基であり、
〜Rは同一でも異なっていてもよく、またR〜Rは互いに結合して環構造を形成していてもよく、nは0〜2の整数を表す。)
6.
1.〜5.のいずれか1つに記載の凹凸構造体の製造方法であって、
前記基材層が、樹脂フィルムで構成されている、凹凸構造体の製造方法。
7.
モールドの凹凸が反転された凹凸構造体を製造する方法に用いられる積層体であって、
基材層と、フッ素含有環状オレフィンポリマー(A)、光硬化性化合物(B)および光硬化開始剤(C)を含む光硬化性樹脂層と、保護フィルム層とをこの順に備えた積層体。
8.
7.に記載の積層体であって、
前記光硬化性樹脂層中の、前記フッ素含有環状オレフィンポリマー(A)の含有量と前記光硬化性化合物(B)の含有量との質量比((A)/(B))が、1/99以上80/20以下である積層体。
9.
7.または8.に記載の積層体であって、
前記光硬化性化合物(B)が、カチオン重合可能な開環重合性化合物を含む積層体。
10.
7.〜9.のいずれか1つに記載の積層体であって、
前記光硬化性化合物(B)の1気圧下での沸点が150℃以上350℃以下である積層体。
11.
7.〜10.のいずれか1つに記載の積層体であって、
前記フッ素含有環状オレフィンポリマー(A)が、下記一般式(1)で表される構造単位を含む積層体。
【0013】
【化2】
(一般式(1)中、
〜Rのうち少なくとも1つは、フッ素、フッ素を含有する炭素数1〜10のアルキル基、フッ素を含有する炭素数1〜10のアルコキシ基およびフッ素を含有する炭素数2〜10のアルコキシアルキル基からなる群より選択されるフッ素含有基であり、
〜Rがフッ素含有基ではない場合、R〜Rは、水素、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基および炭素数2〜10のアルコキシアルキル基からなる群より選択される有機基であり、
〜Rは同一でも異なっていてもよく、またR〜Rは互いに結合して環構造を形成していてもよく、
nは0〜2の整数を表す。)
12.
7.〜11.のいずれか1つに記載の積層体であって、
前記基材層が、樹脂フィルムで構成されている積層体。
13.
7.〜12.のいずれか1つに記載の積層体の製造方法であって、
基材層の表面に、フッ素含有環状オレフィンポリマー(A)、光硬化性化合物(B)および光硬化開始剤(C)を含む光硬化性樹脂層を形成する工程と、
前記光硬化性樹脂層の表面に保護フィルム層を形成する工程と
を含む積層体の製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、光式ナノインプリントで凹凸構造体を製造する際の、溶剤などの有機化合物の排出を抑えることができる。
また、本発明の積層体の光硬化性樹脂層は、フッ素含有環状オレフィンポリマー、すなわち、フッ素を含み、かつ、環状オレフィン骨格を有するポリマーを含む。この「フッ素を含む」ことにより、積層体の保護フィルム層の剥離性を良好にでき、また、凹凸構造体製造時の剥離性についても良好にできることで、モールドのパターンが精度良く転写された凹凸構造体を得ることができる。さらに、「環状オレフィン骨格を有するポリマーを含む」ことにより、保護フィルムを被せた形態で作製する積層体の製造時に光硬化性樹脂層の液だれ等起こさず、かつ、製造された凹凸構造体の形状保持性を良好にできると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
上述した目的、およびその他の目的、特徴および利点は、以下に述べる好適な実施の形態、およびそれに付随する以下の図面によってさらに明らかになる。
【0016】
図1】本実施形態の凹凸構造体の製造方法を説明するための図である。
図2】実施例の評価方法を補足するための模式的な図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0018】
煩雑さを避けるため、(i)同一図面内に同一の構成要素が複数ある場合には、その1つのみに符号を付し、全てには符号を付さない場合や、(ii)特に図2以降において、図1と同様の構成要素に改めては符号を付さない場合がある。
すべての図面はあくまで説明用のものである。図面中の各部材の形状や寸法比などは、必ずしも現実の物品と対応するものではない。
【0019】
本明細書中、数値範囲の説明における「a〜b」との表記は、特に断らない限り、a以上b以下のことを表す。例えば、「1〜5質量%」とは「1質量%以上5質量%以下」の意である。
本明細書における基(原子団)の表記において、置換か無置換かを記していない表記は、置換基を有しないものと置換基を有するものの両方を包含するものである。例えば「アルキル基」とは、置換基を有しないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
本明細書における「(メタ)アクリル」との表記は、アクリルとメタアクリルの両方を包含する概念を表す。「(メタ)アクリレート」等の類似の表記についても同様である。
【0020】
<凹凸構造体の製造方法>
本実施形態の凹凸構造体の製造方法は、
基材層と、フッ素含有環状オレフィンポリマー(A)、光硬化性化合物(B)および光硬化開始剤(C)を含む光硬化性樹脂層と、保護フィルム層とをこの順に備えた積層体を準備する準備工程(以下、単に「準備工程」ともいう)と、
積層体の保護フィルム層を剥がす剥離工程(以下、単に「剥離工程」ともいう)と、
剥離工程で露出した光硬化性樹脂層にモールドを圧接する圧接工程(以下、単に「圧接工程」ともいう)と、
光硬化性樹脂層に光を照射する光照射工程(以下、単に「光照射工程」ともいう)と
を含み、モールドの凹凸が反転された凹凸構造体を製造するものである。
【0021】
このような工程により凹凸構造体を製造することで、溶剤を含む樹脂組成物の塗布工程を要せず、溶剤などの有機化合物の排出を抑えることができる。つまり、凹凸構造体の製造時に溶剤等の揮発成分が実質上排出されないため、環境やヒト(作業者)に優しい。
【0022】
また、本実施形態の凹凸構造体の製造方法は、有機物質の揮発分を発生する塗布やベーク等の工程を要しない。これにより、ナノインプリントプロセス実施時の安全性を高めることができる。
さらに、塗布やベーク等の工程が無いため、従来技術よりも簡便に、光式ナノインプリント法で寸法精度に優れた凹凸構造体を製造することができると考えられ、工業的な利用価値が高い。
【0023】
加えて、本実施形態の凹凸構造体の製造方法は、積層体における光硬化性樹脂層がフッ素含有環状オレフィンポリマー(A)を含む。これにより、(i)剥離工程で保護フィルムを剥がすことが容易である、(ii)モールドの離型性が良好である、(iii)ポリマーに適度な剛直性があるため、適度な'硬さ'の塗膜としやすい(光硬化性樹脂層が、圧力等により意図せず「漏れ出す」といったことが無い)といった効果も得られると考えられる。
【0024】
以下、各工程について、図1を参照しつつ、より具体的に説明する。
【0025】
(準備工程:図1(i))
準備工程では、図1(i)に例示されるような、基材層101と、フッ素含有環状オレフィンポリマー(A)、光硬化性化合物(B)および光硬化開始剤(C)を含む光硬化性樹脂層102(以下、単に「光硬化性樹脂層102」とも記載する)と、保護フィルム層103とをこの順に備えた積層体を準備する。
ここで「準備」とは、広義に解釈されるものである。つまり、後の剥離工程、圧接工程、光照射工程等を行う者自身が、積層体を製造して準備する態様は、当然、「準備工程」に含まれる。のみならず、後の剥離工程、圧接工程、光照射工程等を行う者とは異なる第三者が製造した積層体を譲り受けて準備する態様なども、ここでの準備工程に含まれる。
積層体の具体的態様、構成素材、製造方法などについては、<積層体>の項で詳述する。
【0026】
(剥離工程:図1(ii))
剥離工程では、積層体の保護フィルム層103を剥がす。
剥離の方法は特に限定されず、公知の方法を適用することができる。例えば、積層体の端部を起点にして、保護フィルム層103の端部を掴んで剥離してもよい。また、粘着性のあるテープを保護フィルム層103に貼付して、そのテープを起点にして剥離してもよい。さらには、ロール・トゥ・ロール等の連続法で実施する場合、保護フィルム層103の端部を巻き取りロールに固定し、工程の周速度に応じた速度でロールを回転させながら剥離する方法であってもよい。
積層体から保護フィルム層103を剥離することで、光硬化性樹脂層102が露出する。
【0027】
(圧接工程:図1(iii))
圧接工程では、剥離工程で露出した光硬化性樹脂層102にモールド200を圧接する。
圧接により、モールド200の凹凸パターンに対応して光硬化性樹脂層102が変形する。そして、図1(iii)に示されるように、モールド200と光硬化性樹脂層102とがほぼ隙間なく密着する。
【0028】
圧接の方法については公知の方法で行うことができる。例えば、モールド200の凹凸パターンに光硬化性樹脂層102を接触させた状態で、適当な圧力で押圧する方法が挙げられる。この時の圧力は特に限定されないが、例えば、10MPa以下が好ましく、5MPa以下がより好ましく、1MPa以下が特に好ましい。この圧力は、モールド200のパターン形状、アスペクト比、材質などにより適宜選択される。圧力の下限については特に無く、モールド200の凹凸パターンに対応して光硬化性樹脂層102が変形すればよいが、例えば0.1MPa以上である。
【0029】
なお、ここで用いられるモールド200の形状などは、特に限定されない。
モールド200の凸部および凹部の形状については、ドーム状、四角柱状、円柱状、角柱状、四角錐状、三角錐状、多面体状、半球状などを挙げることができる。モールド200の凸部および凹部の断面形状については、断面四角形、断面三角形、断面半円形などを挙げることができる。
モールド200の凸部および/または凹部の幅は特に限定されないが、例えば10nm〜50μmであり、好ましくは20nm〜10μmである。また、凹部の深さおよび/または凸部の高さは特に限定されないが、例えば10nm〜50μmであり、好ましくは50nm〜10μmである。さらに、凸部の幅と凸部の高さの比のアスペクト比は、好ましくは0.1〜500であり、より好ましくは0.5〜20である。
【0030】
モールド200の材質としては、例えば、ニッケル、鉄、ステンレス鋼、ゲルマニウム、チタン、シリコン等の金属材料;ガラス、石英、アルミナ等の無機材料;ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアリレート、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂等の樹脂材料;ダイヤモンド、黒鉛等の炭素材料等を挙げることができる。
【0031】
(光照射工程:図1(iv))
光照射工程では、光硬化性樹脂層102に光を照射する。より具体的には、上記圧接工程で圧力を印加した状態のまま、光硬化性樹脂層102に光を照射し、光硬化性樹脂層102を硬化させる。
照射する光としては、光硬化性樹脂層102を硬化させうるものであれば特に限定されず、紫外線、可視光線、赤外線などを挙げることができる。これらのうち、光硬化開始剤(C)からラジカルまたはイオンを発生させる光が好ましい。具体的には、波長400nm以下の光線、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプ、i線、g線、KrFエキシマレーザ光、ArFエキシマレーザ光などを用いることができる。
光照射の積算光量は、例えば3〜3000mJ/cmに設定することができる。
【0032】
光照射は、図1(iv)の基材層101の位置する方向から行われてもよいし、モールド200の位置する方向から行われてもよいし、これら両方向から行われてもよい。基材層101やモールド200の材質(特に、光の透過性)、プロセス適合性などを考慮して適宜選択すればよい。
【0033】
光硬化性樹脂層102の硬化促進などの目的で、光照射と加熱を併用してもよい。かつ/または、光照射工程の後、加熱工程を行ってもよい。
加熱の温度は、好ましくは室温(通常、25℃を意味する)以上200℃以下であり、より好ましくは室温以上150℃以下である。加熱の温度は、基材層101、光硬化性樹脂層102およびモールド200の耐熱性や、硬化促進による生産性向上などを考慮して適宜選択すればよい。
【0034】
(モールド離型工程:図1(v))
本実施形態の凹凸構造体の製造方法は、好ましくは、モールド離型工程を含む。具体的には、上記光照射工程により硬化させた光硬化性樹脂層102をモールド200から引き離して、基材層101上に凹凸パターン102Bが形成された凹凸構造体50を得る。
モールド離型の方法については、公知の方法を適用することができる。例えば、基材層101の端部を起点にして基材層101を掴んで離型させてもよいし、粘着性のあるテープを基材層101に貼り付けて、そのテープを起点にして基材層101および光硬化性樹脂層102をモールド200から引き離してもよい。さらには、ロール・トゥ・ロール等の連続法で実施する場合、工程の周速度に応じた速度でロールを回転させ、基材層101の上に凹凸パターン102Bが形成された凹凸構造体50を巻き取りながら剥離する方法などであってもよい。
【0035】
以上の工程により、モールド200の凹凸が反転された凹凸構造体50を製造することができる。
【0036】
本実施形態の凹凸構造体の製造方法においては、特に、上述の準備工程と、剥離工程とを、別々の場所で行うことが好ましい。塗布液の塗布等を含みうる準備工程と、その後の工程とを別々の場所で行うことで、ナノインプリントプロセス実施時の、有機化合物の排出(揮発)低減や安全性の向上の効果をより確実に得ることができる。
別の言い方として、(1)まず準備工程にて積層体を準備して保管しておき、(2)その保管しておいた積層体を別の場所に運搬し、(3)その別の場所で剥離工程、圧接工程、光照射工程、モールド離型工程などを行うことが好ましい。準備工程で準備しておいた積層体を別の場所に運搬し、その後、剥離工程、圧接工程、光照射工程、モールド離型工程などを行うことで、凹凸構造体の製造時の揮発成分の排出をより確実に低減することができる。
【0037】
(用途、応用法などに関する説明)
本実施形態の凹凸構造体の製造方法は、種々のインプリントプロセスに応用することができ、そして、使用者の目的、樹脂物性、プロセスなどを勘案して様々に利用することができる。
本実施形態の凹凸構造体の製造方法は、一例として、いわゆる「レプリカモールド」の製造に好ましく適用することができる。つまり、ナノインプリントリソグラフィ法で用いられる、リソグラフィ法や電子線描画法で加工される高価なモールド(通常、マザーモールドと呼ばれる)を延命するために利用される安価な使い捨てモールド(レプリカモールド)を製造するために、本実施形態の凹凸構造体の製造方法を利用することができる。このとき、上述の工程でのモールド200がマザーモールドに、凹凸構造体50がレプリカモールドに対応する。
光硬化性樹脂層102は、フッ素含有環状オレフィンポリマー(A)を含むことにより、レプリカモールドとして用いた際の離型性、耐久性などが比較的良好である。換言すると、凹凸構造体50は、フッ素に由来する離型性の良さや、剛直な環状オレフィン構造に由来する耐久性の高さなどの点で、レプリカモールドとして好ましく用いられる。
【0038】
また、本実施形態の凹凸構造体の製造方法により得られる凹凸構造体50および/または凹凸パターン102Bは、工程部材、レンズ、回路等で使用される永久膜などとして用いられてもよい。実施の形態によって、工程部材、レンズ、回路等を製造する際のエッチング工程で使用するエッチングマスクとして利用されてもよい。
より具体的には、反射防止機能を付与したディスプレイ部材、マイクロレンズアレイ、半導体回路、ディスプレイ高輝度化部材、光導波路、抗菌シート、細胞培養床、防汚機能を付した建材、日用品、半透明ミラーなどの用途で使用される部材や製品に好ましく適用される。
【0039】
凹凸構造体50および/または凹凸パターン102Bのエッチングマスクとしての使用法としてマイクロレンズアレイを例に説明する。
凹凸構造体50を構成する基材層101が石英硝子の場合、(1)まず、本実施形態の凹凸構造体の製造方法に従って、基材層101の表面に凹凸パターン102Bとなる半球状のマクロレンズアレイ構造を形成する。次いで、(2)酸素を主成分とするガス雰囲気下でドライエッチングを施し、凹凸パターン102B層をエッチングする。さらに、(3)CF系ガスに切り替え、再度、ドライエッチングを施すことで凹凸パターン102Bの形状(この場合、マイクロレンズアレイ)に追随した形状に基材層101の石英硝子表面を加工し、所望のマイクロレンズアレイを加工する。このような方法により現在主流の切削加工に対して生産性を大きく改善できる
さらには、使用環境や条件に製品性能が適合するならば、基材層101の表面に凹凸パターン102Bとなる半球状のマクロレンズアレイ構造を形成した状態の凹凸構造体50をそのままマイクロレンズアレイとして使用してもよい。
【0040】
<積層体>
本実施形態の積層体は、モールドの凹凸が反転された凹凸構造体を製造する方法(より具体的には、上記<凹凸構造体の製造方法>で説明した方法)に用いられるものである。そして、本実施形態の積層体は、基材層と、フッ素含有環状オレフィンポリマー(A)、光硬化性化合物(B)および光硬化開始剤(C)を含む光硬化性樹脂層(単に「光硬化性樹脂層」ともいう)と、保護フィルム層とをこの順に備えている。
【0041】
本実施形態の積層体については、前述の凹凸構造体の製造方法に適用した場合、溶剤などの有機化合物の排出を抑えて凹凸構造体を製造することができる。
また、本実施形態の積層体の使用者は、保護フィルム層を剥離して光式インプリントを行うという簡便な方法(塗布工程不要)により、ドライプロセスで凹凸パターン(構造体)を得ることができる。
【0042】
さらに、積層体中の光硬化性樹脂層がフッ素含有環状オレフィンポリマー(A)を含むため、剥離工程で保護フィルムを剥がすことが容易である、モールドの離型性が良好である、といった効果を得られると考えられる。
【0043】
加えて、本実施形態の積層体は、光硬化性樹脂層の表面に保護フィルム層が配置されていることにより、光硬化性樹脂層の表面へのゴミの付着防止、光硬化性樹脂層に含まれる化合物の揮発の抑制、および大気中の水分や酸素による光硬化開始剤の劣化を防止し、ひいては積層体の長期の保存安定性などの効果も得られると考えられる。
【0044】
積層体の各層について、前述の図1(i)と対応させつつ詳細に説明する。
【0045】
(基材層101)
基材層101の素材は特に限定されず、例えば有機材料または無機材料から構成される。また、その性状については、例えば、シート状、フィルム状、またはプレート状のものを用いることができる。
【0046】
より具体的には、基材層101が有機材料から構成される場合、例えば、ポリアセタール、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンテレナフタレート等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリ(メタ)アクリレート、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアセチルセルロース、フッ素樹脂等の各種樹脂の1種または2種以上を原料とすることができる。そして、原料を射出成型、押出成型、中空成形、熱成型、圧縮成形等の方法で加工することで、基材層101とすることができる。
また、別の態様として、基材層101は、(メタ)アクリレート、スチレン、エポキシ、オキセタン等の光硬化性モノマーを重合開始剤存在下で光照射により硬化させた単層の基材、または、そのような光硬化性モノマーを有機材料または無機材料の上にコートした基材などであってもよい。
【0047】
基材層101が無機材料から構成される場合、その構成素材としては、例えば、銅、金、白金、ニッケル、アルミニウム、シリコン、ステンレス、石英、ソーダガラス、サファイヤ、炭素繊維等を挙げることができる。
【0048】
基材層101の構成材料が有機材料であっても無機材料であっても、光硬化性樹脂層102との良好な密着性を発現させるため、基材層101の表面には何らかの処理が行われてもよい。そのような処理としては、例えば、コロナ処理、大気圧プラズマ処理、易接着コート処理等の密着処理を挙げることができる。
また、基材層101の構成材料が有機材料であっても無機材料であっても、基材層101は単層でもよいし、2層以上の構成であってもよい。
【0049】
基材層101は、好ましくは樹脂フィルムである。基材層101は、例えば、上述の樹脂のいずれかを含む樹脂フィルムであることが好ましい。基材層101が無機材料ではなく樹脂フィルムであることで、使用者が容易に所望の形状やサイズに裁断して用いることができ、また、積層体の保管時に積層体を巻いておくことができる、すなわち省スペース化のメリットがある。
【0050】
また、別観点として、基材層101の光の透過性は高いことが好ましい。これにより、(i)凹凸構造体を製造するとき(例えば、前述の光照射工程のとき)に、基材層101の側から光を当てることができて硬化反応を促進できたり、(ii)圧接工程や光照射工程を目視で確認しやすくなったり、(iii)光照射の方向から装置設計の自由度を高めるといったメリットを得ることができる。
【0051】
(i)の観点からは、基材層101は、後述する光硬化開始剤(C)が反応する光の波長領域での透過率が高いことが好ましい場合がある。より好ましくは、紫外領域の光の透過率が高いことが好ましい。例えば、200nm以上から400nm以下の波長の光の透過率が、好ましくは50%以上100%以下であり、より好ましくは70%以上100%以下であり、さらに好ましくは80%以上100%以下である。
(ii)の観点からは、基材層101の可視領域の光の透過率が高いことが好ましい。例えば、500nm以上から1000nm以下の波長の光の透過率が、好ましくは50%以上100%以下であり、より好ましくは70%以上100%以下であり、さらに好ましくは80%以上100%以下である。
なお、樹脂フィルムの大半は透明性が高いものであるから、光の透過性の点でも基材層101としては樹脂フィルムが好ましいと言うことができる。
【0052】
基材層101の厚みは、特に限定されず、種々の目的、例えば、積層体のハンドリング性の良さ、得ようとする凹凸構造体の寸法精度などに応じて適宜調整される。
基材層101の厚みは、例えば1〜10000μm、具体的には5〜5000μm、より具体的には10〜1000μmである。
基材層101全体の形状は特に限定されるものではなく、例えば、板状、円盤状、ロール状などであってよい。
【0053】
(光硬化性樹脂層102)
光硬化性樹脂層102は、フッ素含有環状オレフィンポリマー(A)、光硬化性化合物(B)および光硬化開始剤(C)を含む。これら成分などについて以下説明する。
【0054】
・フッ素含有環状オレフィンポリマー(A)
フッ素含有環状オレフィンポリマー(A)は、フッ素を含有し、かつ、環状オレフィンに由来する構造単位を含むポリマーであれば特に限定されない。このポリマーはフッ素を含むため、保護フィルム層103をきれいに剥離する点や、インプリント工程の際の離型性の点などで有利と考えられる。また、環状構造を含むため、機械的な強さ、高いエッチング耐性などのメリットもあると考えられる。
【0055】
さらに、フッ素含有環状オレフィンポリマー(A)は、ポリマー全体としての極性が高く、通常のフッ素ポリマーでは溶解しない汎用の有機溶剤や光硬化性化合物との相溶性が比較的良好な傾向があり、また、非晶質となる傾向があり、かつ、それ自身は光照射により硬化しない傾向にある。この「光硬化性化合物に溶解する」ことなどにより、基材層101の上に光硬化性樹脂層102を形成した際に、光硬化性化合物との相溶性良く光照射で硬化を得るために必要な十分に透明な樹脂層(光硬化性樹脂層)を形成し、その光硬化性樹脂層102が、微細凹凸構造体の形成に適した粘性を持ちつつ、膜面の荒れに繋がる液垂れ等の不具合の低減につながると考えられる。
【0056】
加えて、フッ素含有環状オレフィンポリマー(A)は、C−F結合の電子的特異性や、上述の非晶性(アモルファス性)などの観点から、光の透過性が高く、かつ/または、膜としたときの光の透過を均一としやすい傾向にある。よって、光硬化性樹脂層102がフッ素含有環状オレフィンポリマー(A)を含むことで、光硬化性樹脂層102を光硬化させる際に照射する光の透過が均一となりやすいと考えられる。つまり、硬化が均一に行われ、これにより光硬化性樹脂層102をムラ無く均一に硬化させることができると考えられる。
【0057】
フッ素含有環状オレフィンポリマー(A)は、好ましくは、下記一般式(1)で表される構造単位を含む。
【0058】
【化3】
【0059】
一般式(1)中、
〜Rのうち少なくとも1つは、フッ素、フッ素を含有する炭素数1〜10のアルキル基、フッ素を含有する炭素数1〜10のアルコキシ基およびフッ素を含有する炭素数2〜10のアルコキシアルキル基からなる群より選択されるフッ素含有基であり、
〜Rがフッ素含有基ではない場合、R〜Rは、水素、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基および炭素数2〜10のアルコキシアルキル基からなる群より選択される有機基であり、
〜Rは同一でも異なっていてもよく、またR〜Rは互いに結合して環構造を形成していてもよく、
nは0〜2の整数を表す。
【0060】
一般式(1)で表される構造単位を含むフッ素含有環状オレフィンポリマー(A)は、主鎖に炭化水素構造および側鎖にフッ素含有脂肪族環構造を有する。よって、分子間または分子内に水素結合を形成させることができ、後述の光硬化性化合物(B)および光硬化開始剤(C)を含む場合、長期間の保存安定性が良い。また、保護フィルム層103の剥離後の状態で、凹凸構造の形成に必要な適度な埋め込み性を示し、光硬化後の剥離において良好な離型性でモールドの形状を寸法精度よく形成することができる。
さらに、フッ素含有環状オレフィンポリマー(A)は、主鎖に炭化水素構造を側鎖にフッ素またはフッ素含有置換基を有することで、分子内に比較的大きな極性を有する。これにより、光硬化性化合物(B)に対する相溶性に優れる傾向にある。
【0061】
一般式(1)において、R〜Rがフッ素含有基である場合、具体的には、フッ素;フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、ヘキサフルオロイソプロピル基、ヘプタフルオロイソプロピル基、ヘキサフルオロ−2−メチルイソプロピル基、ペルフルオロ−2−メチルイソプロピル基、n−ペルフルオロブチル基、n−ペルフルオロペンチル基、ペルフルオロシクロペンチル基等のアルキル基の水素の一部または全てがフッ素で置換された炭素数1〜10のアルキル基;フルオロメトキシ基、ジフルオロメトキシ基、トリフルオロメトキシ基、トリフルオロエトキシ基、ペンタフルオロエトキシ基、ヘプタフルオロプロポキシ基、ヘキサフルオロイソプロポキシ基、ヘプタフルオロイソプロポキシ基、ヘキサフルオロ−2−メチルイソプロポキシ基、ペルフルオロ−2−メチルイソプロポキシ基、n−ペルフルオロブトキシ基、n−ペルフルオロペントキシ基、ペルフルオロシクロペントキシ基等のアルコキシ基の水素の一部または全てがフッ素で置換された炭素数1〜10のアルコキシ基;フルオロメトキシメチル基、ジフルオロメトキシメチル基、トリフルオロメトキシメチル基、トリフルオロエトキシメチル基、ペンタフルオロエトキシメチル基、ヘプタフルオロプロポキシメチル基、ヘキサフルオロイソプロポキシメチル基、ヘプタフルオロイソプロポキシメチル基、ヘキサフルオロ−2−メチルイソプロポキシメチル基、ペルフルオロ−2−メチルイソプロポキシメチル基、n−ペルフルオロブトキシメチル基、n−ペルフルオロペントキシメチル基、ペルフルオロシクロペントキシメチル基等のアルコキシアルキル基の水素の一部または全てがフッ素で置換された炭素数2〜10のアルコキシアルキル基等が挙げられる。
【0062】
また、R〜Rは互いに結合して環構造を形成していてもよい。例えば、ペルフルオロシクロアルキル、酸素を介したペルフルオロシクロエーテル等の環を形成してもよい。
【0063】
〜Rがフッ素含有基ではない場合、R〜Rとして具体的には、水素;メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、2−メチルイソプロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル、シクロペンチル基等の炭素数1〜10のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペントキシ基等の炭素数1〜10のアルコキシ基;メトキシメチル基、エトキシメチル基、プロポキシメチル基、ブトキシメチル基、ペントキシメチル基等の炭素数2〜10のアルコキシアルキル基等が挙げられる。
【0064】
一般式(1)のR〜Rとしては、フッ素;フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、ヘキサフルオロイソプロピル基、ヘプタフルオロイソプロピル基、ヘキサフルオロ−2−メチルイソプロピル基、ペルフルオロ−2−メチルイソプロピル基、n−ペルフルオロブチル基、n−ペルフルオロペンチル基、ペルフルオロシクロペンチル基等のアルキル基の水素の一部または全てがフッ素で置換された炭素数1〜10のフルオロアルキル基;が好ましい。
【0065】
フッ素含有環状オレフィンポリマー(A)は、一般式(1)で表される構造単位一種のみからなるものでもよく、一般式(1)のR〜Rの少なくとも1つが互いに異なる二種以上の構造単位からなるものであってもよい。また、フッ素含有環状オレフィンポリマー(A)は、一般式(1)で表される構造単位の一種または二種以上と、一般式(1)で表される構造単位とは異なる構造単位とを含むポリマー(共重合体)であってもよい。
フッ素含有環状オレフィンポリマー(A)中、一般式(1)で表される構造単位の含有量は、ポリマー全体を100質量%としたとき、通常30〜100質量%であり、好ましくは70〜100質量%、さらに好ましくは90〜100質量%である。
【0066】
以下、フッ素含有環状オレフィンポリマー(A)(好ましくは一般式(1)で表される構造単位を含有するもの)の具体例を挙げるが、フッ素含有環状オレフィンポリマー(A)はこれらのみに限定されるものではない。
【0067】
ポリ(1−フルオロ−2−トリフルオロメチル−3,5−シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1−フルオロ−1−トリフルオロメチル−3,5−シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1−メチル−1−フルオロ−2−トリフルオロメチル−3,5−シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1,1−ジフルオロ−2−トリフルオロメチル−3,5−シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1,2−ジフルオロ−2−トリフルオロメチル−3,5−シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1−ペルフルオロエチル−3,5−シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1,1−ビス(トリフルオロメチル)−3,5−シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1,1,2−トリフルオロ−2−トリフルオロメチル−3,5−シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1,2−ビス(トリフルオロメチル)−3,5−シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1−ペルフルオロプロピル−3,5−シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1−メチル−2−ペルフルオロプロピル−3,5−シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1−ブチル−2−ペルフルオロプロピル−3,5−シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1−ペルフルオロ−iso−プロピル−3,5−シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1−メチル−2−ペルフルオロ−iso−プロピル−3,5−シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1,2−ジフルオロ−1,2−ビス(トリフルオロメチル)−3,5−シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1,1,2,2,3,3,3a,6a−オクタフルオロシクロペンチル−4,6−シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1,1,2,2,3,3,4,4,3a,7a−デカフルオロシクロヘキシル−5,7−シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1−ペルフルオロブチル−3,5−シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1−ペルフルオロ−iso−ブチル−3,5−シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1−ペルフルオロ−tert−ブチル−3,5−シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1−メチル−2−ペルフルオロ−iso−ブチル−3,5−シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1−ブチル−2−ペルフルオロ−iso−ブチル−3,5−シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1,2−ジフルオロ−1−トリフルオロメチル−2−ペルフルオロエチル−3,5−シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1−(1−トリフルオロメチル−2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロ−シクロペンチル)−3,5−シクロペンチレンエチレン)、ポリ((1,1,2−トリフルオロ−2−ペルフルオロブチル)−3,5−シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1,2−ジフルオロ−1−トリフルオロメチル−2−ペルフルオロブチル−3,5−シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1−フルオロ−1−ペルフルオロエチル−2,2−ビス(トリフルオロメチル)−3,5−シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1,2−ジフルオロ−1−ペルフルオロプロパニル−2−トリフルオロメチル−3,5−シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1−ペルフルオロヘキシル−3,5−シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1−メチル−2−ペルフルオロヘキシル−3,5−シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1−ブチル−2−ペルフルオロヘキシル−3,5−シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1−ヘキシル−2−ペルフルオロヘキシル−3,5−シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1−オクチル−2−ペルフルオロヘキシル−3,5−シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1−ペルフルオロヘプチル−3,5−シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1−ペルフルオロオクチル−3,5−シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1−ペルフルオロデカニル−3,5−シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1,1,2−トリフルオロ−ペルフルオロペンチル−3,5−シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1,2−ジフルオロ−1−トリフルオロメチル−2−ペルフルオロブチル−3,5−シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1,1,2−トリフルオロ−ペルフルオロヘキシル−3,5−シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1,2−ジフルオロ−1−トリフルオロメチル−2−ペルフルオロペンチル−3,5−シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1,2−ビス(ペルフルオロブチル)−3,5−シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1,2−ビス(ペルフルオロヘキシル)−3,5−シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1−メトキシ−2−トリフルオロメチル−3,5−シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1−tert−ブトキシメチル−2−トリフルオロメチル−3,5−シクロペンチレンエチレン)、ポリ(1,1,3,3,3a,6a−ヘキサフルオロフラニル−3,5−シクロペンチレンエチレン)等。
【0068】
また、本実施形態のフッ素含有環状オレフィンポリマー(A)は、下記一般式(2)で表される構造単位を含んでいてもよい。
【0069】
【化4】
【0070】
一般式(2)中、R〜Rおよびnは、上記一般式(1)と同義である。
【0071】
フッ素含有環状オレフィンポリマー(A)の、示差走査熱量分析によるガラス転移温度は、好ましくは30〜250℃、より好ましくは50〜200℃、さらに好ましくは60〜160℃である。
ガラス転移温度が上記下限値以上であると、モールドを離型した後に形成される微細な凹凸形状を高い精度で維持することが可能となる。また、ガラス転移温度が上記上限値以下であると、溶融流動しやすくなるために加熱処理温度を低くすることができ、樹脂層の黄変あるいは支持体の劣化を抑制しうる。
【0072】
フッ素含有環状オレフィンポリマー(A)を、例えば試料濃度3.0〜9.0mg/mlでゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは5,000〜1,000,000、より好ましくは10,000〜300,000である。
重量平均分子量(Mw)が上記範囲内であると、フッ素含有環状オレフィンポリマー(A)の溶剤溶解性や加熱圧着成形時の流動性が良好である。
【0073】
フッ素含有環状オレフィンポリマー(A)の分子量分布は、良好な加熱成形性の観点から、ある程度広い方が好ましい。重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比である分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは1.0〜5.0、より好ましくは1.2〜5.0、さらに好ましくは1.4〜3.0である。
【0074】
光硬化性樹脂層102は、フッ素含有環状オレフィンポリマー(A)を1種のみ含んでもよいし、2種以上含んでもよい。
光硬化性樹脂層102中のフッ素含有環状オレフィンポリマー(A)の含有量は、光硬化性樹脂層102全体を基準(100質量%)としたとき、好ましくは1〜80質量%、より好ましくは3〜75質量%である。
【0075】
・フッ素含有環状オレフィンポリマー(A)の製造方法
フッ素含有環状オレフィンポリマー(A)の製造方法、より具体的には、一般式(1)で表される構造単位を含むポリマーの製造方法(重合方法)について説明しておく。
【0076】
フッ素含有環状オレフィンポリマー(A)は、例えば、下記の一般式(3)で表わされるフッ素含有環状オレフィンモノマーを、開環メタセシス重合触媒によって重合し、一般式(2)で表される構造単位を含むフッ素含有環状オレフィンポリマー(A)を得、さらに、その主鎖のオレフィン部に水素添加することによって、一般式(1)で表される構造単位を含むフッ素含有環状オレフィンポリマー(A)を製造することができる。より具体的には、フッ素含有環状オレフィンポリマー(A)は、国際公開第2011/024421号の段落0075〜0099に記載の方法に準じて製造することができる。
【0077】
【化5】
【0078】
一般式(3)中、R〜Rおよびnの定義や具体例などは一般式(1)と同じである。
【0079】
フッ素含有環状オレフィンポリマー(A)の製造に際しては、一般式(3)で表されるフッ素含有環状オレフィンモノマーを1種のみ用いてもよいし、2種以上用いてもよい。
【0080】
フッ素含有環状オレフィンポリマー(A)のうち一般式(2)で表されるポリマーのオレフィン部(主鎖の二重結合部分)の水素添加は、本発明の積層体の使用法、使用環境、条件によっては実施の必要が無い。一方で、使用法、使用環境、条件に制約がある場合、一般式(2)で表されるポリマーのオレフィン部(主鎖の二重結合部分)の水素添加率は、好ましくは50モル%以上であり、より好ましくは70モル%以上100モル%以下、さらに好ましくは90モル%以上100モル%以下である。水素添加率が上記下限値以上であると、オレフィン部の酸化や光の吸収劣化を抑制することができ、耐熱性または耐候性をより一層良好にすることができる。また、インプリント工程において転写体を得る際に、光硬化性化合物(B)を硬化させるために十分な光を透過させることができる。
【0081】
・光硬化性化合物(B)
光硬化性化合物(B)としては、反応性二重結合基を有する化合物、カチオン重合可能な開環重合性化合物等が挙げられ、カチオン重合可能な開環重合性化合物(具体的には、エポキシ基やオキセタニル基などの開環重合性基を含む化合物)が好ましい。
光硬化性化合物(B)は、1分子中に反応性基を1個有しても、複数個有してもよいが、好ましくは2個以上有する化合物が用いられる。1分子中の反応性基の数の上限は特にないが、例えば2個、好ましくは4個である。
光硬化性化合物(B)は1種のみ用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。2種以上を用いる場合、異なる反応性基数の化合物を任意の割合で混合して用いてもよい。また、反応性二重結合基を有する化合物とカチオン重合可能な開環重合性化合物を任意の割合で混合して用いてもよい。
【0082】
光硬化性化合物(B)の1気圧下で測定された沸点は、好ましくは、150℃以上350℃以下であり、より好ましくは150℃以上330℃以下であり、さらに好ましくは150℃以上320℃以下である。
なお、2種以上の光硬化性化合物(B)を用いる場合、好ましくは光硬化性化合物(B)全体のうち50質量%以上が上記の沸点のものであり、より好ましくは75質量%以上が上記の沸点のものであり、さらに好ましくは全て(100質量%)の光硬化性化合物(B)が上記の沸点のものである。
【0083】
光硬化性化合物(B)の1気圧下での沸点を上記範囲とすることで、光硬化性化合物(B)の揮発による、光硬化性樹脂層102の経時での性状変化を抑制することができる。具体的には、ナノインプリント実施時の埋め込み性悪化を防止し、長期にわたり安定的に保管でき、保管後に用いても一定の寸法の微細凹凸パターンを精度よく転写可能な積層体を製造することができる。なお、「長期にわたり安定的に保管できる」ということは、積層体の「作りだめ」が可能であり、大量生産によるコストダウン等が可能であること等を意味する。
【0084】
また、光硬化性化合物(B)の種類や組成比を適切に選択することで、光硬化性樹脂層102の内部および表面に効率良く三次元の網目構造を形成させることができる。これにより、得られる凹凸構造体が高い表面硬度を有するようにすることができる。
【0085】
さらに、別観点として、光硬化性化合物(B)がフッ素を含むことで、離型性を更に高める等の効果が得られると考えられる。
【0086】
光硬化性化合物(B)が反応性二重結合基を有する化合物である場合の具体例としては、例えば以下を挙げることができる。
【0087】
フルオロジエン(CF=CFOCFCFCF=CF、CF=CFOCFCF(CF)CF=CF、CF=CFCFC(OH)(CF)CHCH=CH、CF=CFCFC(OH)(CF)CH=CH、CF=CFCFC(CF)(OCHOCH)CHCH=CH、CF=CFCHC(C(CFOH)(CF)CHCH=CH等)等のオレフィン類;ノルボルネン、ノルボルナジエン等の環状オレフィン類;シクロヘキシルメチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル類;酢酸ビニル等のビニルエステル類;(メタ)アクリル酸、フェノキシエチルアクリレート、ベンジルアクリレート、ステアリルアクリレート、ラウリルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、アリルアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタアエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、エトキシエチルアクリレート、メトキシエチルアクリレート、グリシジルアクリレート、テトラヒドロフルフリールアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリオキシエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N−ビニルピロリドン、ジメチルアミノエチルメタクリレート等の(メタ)アクリル酸及びその誘導体またはそれらのフッ素含有アクリレート類など。
【0088】
光硬化性化合物(B)のうち、長期の保存安定性や、フッ素含有環状オレフィンポリマー(A)との相溶性の観点などで好ましいカチオン重合可能な開環重合性化合物としては、例えば以下を挙げることができる。
【0089】
1,7−オクタジエンジエポキシド、1−エポキシデカン、シクロヘキセンエポキシド、ジシクロペンタジエンオキサイド、リモネンジオキサイド、4−ビニルシクロヘキセンジオキサイド、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3',4'−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ジ(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルアルコール、(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル)メチル−3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、エチレン1,2−ジ(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボン酸)エステル、(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、ジシクロヘキシル−3,3'−ジエポキシド、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ハロゲン化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、o−、m−、p−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、多価アルコールのポリグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3',4'−エポキシシクロヘキセンカルボキシレートといった脂環式エポキシ樹脂あるいは水添ビスフェノールAのグリシジルエーテル等のエポキシ化合物等のエポキシ化合物類;オキセタニル基を1個有する化合物として3−メチル−3−(ブトキシメチル)オキセタン、3−メチル−3−(ペンチロキシメチル)オキセタン、3−メチル−3−(ヘキシロキシメチル)オキセタン、3−メチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン、3−メチル−3−(オクチロキシメチル)オキセタン、3−メチル−3−(デカノロキシメチル)オキセタン、3−メチル−3−(ドデカノロキシメチル)オキセタン、3−メチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(ブトキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(ペンチロキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(ヘキシロキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(オクチロキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(デカノロキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(ドデカノロキシメチル)オキセタン、3−(シクロヘキシロキシメチル)オキセタン、3−メチル−3−(シクロヘキシロキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(シクロヘキシロキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン、3,3−ジメチルオキセタン、3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−メチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−エチル−3−フェノキシメチルオキセタン、3−n−プロピル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−イソプロピル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−n−ブチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−イソブチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−sec−ブチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−tert−ブチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−エチル−3−(2−エチルヘキシル)オキセタン等、オキセタニル基を2個以上有する化合物としてビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、1,2−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)]エタン、1,3−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)]プロパン、1,3−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)]−2,2−ジメチル−プロパン、1,4−ビス(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)ブタン、1,6−ビス(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)ヘキサン、1,4−ビス[(3−メチル−3−オキセタニル)メトキシ]ベンゼン、1,3−ビス[(3−メチル−3−オキセタニル)メトキシ]ベンゼン、1,4−ビス{[(3−メチル−3−オキセタニル)メトキシ]メチル}ベンゼン、1,4−ビス{[(3−メチル−3−オキセタニル)メトキシ]メチル}シクロヘキサン、4,4'−ビス{[(3−メチル−3−オキセタニル)メトキシ]メチル}ビフェニル、4,4'−ビス{[(3−メチル−3−オキセタニル)メトキシ]メチル}ビシクロヘキサン、2,3−ビス[(3−メチル−3−オキセタニル)メトキシ]ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,5−ビス[(3−メチル−3−オキセタニル)メトキシ]ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,6−ビス[(3−メチル−3−オキセタニル)メトキシ]ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ]ベンゼン、1,3−ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ]ベンゼン、1,4−ビス{[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ]メチル}ベンゼン、1,4−ビス{[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ]メチル}シクロヘキサン、4,4'−ビス{[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ]メチル}ビフェニル、4,4'−ビス{[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ]メチル}ビシクロヘキサン、2,3−ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ]ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,5−ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ]ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,6−ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ]ビシクロ[2.2.1]ヘプタン等のオキセタン化合物類など。
【0090】
光硬化性樹脂層102中の光硬化性化合物(B)の含有量は、光硬化性樹脂層102全体を基準(100質量%)としたとき、好ましくは15〜98質量%、より好ましくは20〜95質量%である。
【0091】
また、光硬化性樹脂層102中の、フッ素含有環状オレフィンポリマー(A)の含有量と、光硬化性化合物(B)の含有量との質量比((A)/(B))は、好ましくは1/99〜80/20であり、より好ましくは5/95〜75/25であり、さらに好ましくは30/70〜70/30である。この範囲であることで、フッ素含有環状オレフィンポリマー(A)による良好な剥離性(保護フィルム層103の剥がしやすさ)や凹凸構造体としたときの離型性の良さなどの効果を十分に得ることができると考えられる。また、モールドを圧接する際の光硬化性樹脂層102の粘性を適切にすることができ、埋め込み精度が向上しうる。これらの効果の総合として、微細凹凸パターンの寸法精度をより高くすることができ、良好な凹凸構造を得ることができる。
【0092】
・光硬化開始剤(C)
光硬化開始剤(C)としては、光の照射によってラジカルを生成する光ラジカル開始剤、光の照射によってカチオンを生成する光カチオン開始剤等を挙げることができる。
【0093】
光硬化開始剤(C)のうち、光の照射によってラジカルを生成する光ラジカル開始剤としては、例えば、アセトフェノン、p−tert−ブチルトリクロロアセトフェノン、クロロアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、ヒドロキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2'−フェニルアセトフェノン、2−アミノアセトフェノン、ジアルキルアミノアセトフェノン等のアセトフェノン類;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン等のベンゾイン類;ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、メチル−o−ベンゾイルベンゾエート、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ヒドロキシプロピルベンゾフェノン、アクリルベンゾフェノン、4,4'−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、ジメチルチオキサントン等のチオキサントン類;ペルフルオロ(tert−ブチルペルオキシド)、ペルフルオロベンゾイルペルオキシド等のフッ素系ペルオキド類;α−アシルオキシムエステル、ベンジル−(o−エトキシカルボニル)−α−モノオキシム、アシルホスフィンオキサイド、グリオキシエステル、3−ケトクマリン、2−エチルアンスラキノン、カンファーキノン、テトラメチルチウラムスルフィド、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルペルオキシド、ジアルキルペルオキシド、tert−ブチルペルオキシピバレート等を挙げることができる。これらは、主として光の波長が200nm以上400nm以下のUV領域で、その機能を発現することが多い。
【0094】
好ましく用いられる光ラジカル開始剤としては、イルガキュアー651(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)、イルガキュアー184(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)、ダロキュアー1173(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)、ベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、イルガキュアー500(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)、イルガキュアー2959(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)、イルガキュアー127(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)、イルガキュアー907(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)、イルガキュアー369(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)、イルガキュアー1300(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)、イルガキュアー819(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)、イルガキュアー1800(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)、ダロキュアーTPO(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)、ダロキュアー4265(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)、イルガキュアーOXE01(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)、イルガキュアーOXE02(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製))、エサキュアーKT55(ランベルティー社製)、エサキュアーKIP150(ランベルティー社製)、エサキュアーKIP100F(ランベルティー社製)、エサキュアーKT37(ランベルティー社製)、エサキュアーKTO46(ランベルティー社製)、エサキュアー1001M(ランベルティー社製)、エサキュアーKIP/EM(ランベルティー社製)、エサキュアーDP250(ランベルティー社製)、エサキュアーKB1(ランベルティー社製)、2,4−ジエチルチオキサントン等が挙げられる。これらの中で、さらに好ましく用いられる光ラジカル重合開始剤としては、イルガキュアー184(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)、ダロキュアー1173(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)、イルガキュアー500(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)、イルガキュアー819(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)、ダロキュアーTPO(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)、エサキュアーKIP100F(ランベルティー社製)、エサキュアーKT37(ランベルティー社製)およびエサキュアーKTO46(ランベルティー社製)等を挙げることができる。
【0095】
光硬化開始剤(C)のうち、光の照射によってカチオンを生成する光カチオン開始剤としては、光照射により、上記カチオン重合可能な開環重合性化合物類のカチオン重合を開始させる化合物であれば特に限定はない。好ましくは、オニウムカチオン−その対アニオンのオニウム塩のような、光反応してルイス酸を放出する化合物である。これらは、主として光の波長が200nm以上400nm以下のUV領域で、その機能を発現することが多い。
【0096】
オニウムカチオンとしては、例えば、ジフェニルヨードニウム、4−メトキシジフェニルヨードニウム、ビス(4−メチルフェニル)ヨードニウム、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウム、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウム、トリフェニルスルホニウム、ジフェニル−4−チオフェノキシフェニルスルホニウム、ビス〔4−(ジフェニルスルフォニオ)−フェニル〕スルフィド、ビス〔4−(ジ(4−(2−ヒドロキシエチル)フェニル)スルホニオ)−フェニル〕スルフィド、η5−2,4−(シクロペンタジェニル)〔1,2,3,4,5,6−η−(メチルエチル)ベンゼン〕−鉄(1+)等が挙げられる。また、オニウム陽イオン以外に、過塩素酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、トルエンスルホン酸イオン、トリニトロトルエンスルホン酸イオン等を挙げることができる。
【0097】
一方、対アニオンとしては、例えば、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、ヘキサフルオロアンチモネート、ヘキサフルオロアルセネート、ヘキサクロロアンチモネート、テトラ(フルオロフェニル)ボレート、テトラ(ジフルオロフェニル)ボレート、テトラ(トリフルオロフェニル)ボレート、テトラ(テトラフルオロフェニル)ボレート、テトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、テトラ(ペルフルオロフェニル)ボレート、テトラ(トリフルオロメチルフェニル)ボレート、テトラ(ジ(トリフルオロメチル)フェニル)ボレート等を挙げることができる。
【0098】
さらに好ましく用いられる光カチオン開始剤の具体例としては、例えば、イルガキュアー250(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)、イルガキュアー784(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)、エサキュアー1064(ランベルティー社製)、CYRAURE UVI6990(ユニオンカーバイト日本社製)、アデカオプトマーSP−172(ADEKA社製)、アデカオプトマーSP−170(旭電化社製)、アデカオプトマーSP−152(ADEKA社製)、アデカオプトマーSP−150(ADEKA社製)、CPI−210K(サンアプロ社製)、CPI−210S(サンアプロ社製)、CPI−100P(サンアプロ社製)等を挙げることができる。
【0099】
光硬化性樹脂層102は、光硬化開始剤(C)を1種のみ含んでもよいし、2種以上含んでもよい。
光硬化性樹脂層102中の光硬化開始剤(C)の含有量は、光硬化性樹脂層102全体を基準(100質量%)としたとき、好ましくは0.1〜10.0質量%、より好ましくは1.0〜7.0質量%である。
【0100】
・その他成分
光硬化性樹脂層102は、上記(A)〜(C)以外の成分を含んでもよい。例えば、老化防止剤、レベリング剤、濡れ性改良剤、界面活性剤、可塑剤等の改質剤、紫外線吸収剤、防腐剤、抗菌剤等の安定剤、光増感剤、シランカップリング剤等を含んでもよい。たとえば、可塑剤は、上記の目的とする効果の他、粘性の調整に役立つ場合があるので好ましい。
【0101】
・光硬化性樹脂層102の厚み
光硬化性樹脂層102の厚みは特に限定されないが、好ましくは0.05〜1000μmであり、より好ましくは0.05〜500μm、さらに好ましくは0.05〜250μmである。厚さは、用いられるモールドの凹凸の深さや、最終的に得られる凹凸構造の用途などにより適宜調整すればよい。
【0102】
(保護フィルム層103)
保護フィルム層103は、光硬化性樹脂層102を保護するために用いられ、凹凸構造が製造されるまでの間、光硬化性樹脂層102の大気に触れる面を保護するものである。
【0103】
保護フィルム層103は、易剥離性であることが好ましい。換言すると、本実施形態の積層体は、例えば剥離用薬品などによる特別な処理を要さずして、保護フィルム層103を光硬化性樹脂層102から容易に剥離することができることが好ましい。また、この剥離の際、保護フィルム層103には、光硬化性樹脂層102はほとんど付着または残存しないことが好ましい。
前述のように、本実施形態の積層体においては、光硬化性樹脂層102がフッ素含有環状オレフィンポリマー(A)を含むため、保護フィルム層の剥離性は元来良好と考えられる。しかしながら、保護フィルム層103の素材、表面性状、表面物性などを適切に選択することで、剥離の際の糸引きやジッピング等の面荒れなどの懸念を一層低くすることができる。なお、保護フィルム層103に含まれる成分の、光硬化性樹脂層102への溶出等が少ないことが好ましい。
【0104】
保護フィルム層103として具体的には、ポリエチレン、ポリエステル、ポリイミド、ポリシクロオレフィン、ポリ(メタ)アクリレート、ポリエチレンテレフタレート等の樹脂を加工したフィルム、シート状の加工品をベースとしたものなどを挙げることができる。この中でも、保護フィルム層103の材質としてはポリエステルフィルムが好ましい。
保護フィルム層103には、易剥離機能向上の目的などで、ケイ素化合物またはフッ素化合物が練り込まれてもよい。また、無機材料からなる金属薄膜などであってもよい。
【0105】
別観点として、積層体の長期の保存安定性を担保したい場合は、光硬化性化合物(B)の性状を保つ目的で、不透明なもの(遮光性のあるもの)を保護フィルム層103として用いることが考えられる。
【0106】
保護フィルム層103の厚さは特に限定されないが、易剥離性の観点などから、好ましくは1〜1000μm、より好ましくは10〜500μmである。
保護フィルム層103は、ロール・トゥ・ロールなどの連続法や、その他の使用において、巻取り応力や脱泡等の押し付け圧力等によって変形または破断しないことが好ましい。厚さを適切に調整することで、変形や破断の可能性を低くしうる。
【0107】
なお、保存安定性などの観点から、積層体は、保管の際は暗所に置かれることが好ましい。
【0108】
<積層体の製造方法>
本実施形態の積層体の製造方法は特に限定されないが、例えば、
・基材層101の表面に、フッ素含有環状オレフィンポリマー(A)、光硬化性化合物(B)および光硬化開始剤(C)を含む光硬化性樹脂層102を形成する工程(光硬化性樹脂層形成工程)と、
・光硬化性樹脂層102の表面に保護フィルム層103を形成する工程(保護フィルム層形成工程)と
を含む工程により製造することができる。
【0109】
光硬化性樹脂層形成工程の具体的なやり方は特に限定されないが、典型的には、まず、フッ素含有環状オレフィンポリマー(A)、光硬化性化合物(B)、光硬化開始剤(C)および必要に応じてその他の成分を、適当な溶剤(典型的には有機溶剤)を用いるなどして溶解または分散させた塗布液を調製し、その後、その塗布液を基材層101の表面に塗布し、そして溶剤を乾燥させることで行うことができる。
【0110】
このとき、塗布液を調製するための溶剤(有機溶剤)は、特に限定されない。例えば、メタキシレンヘキサフロライド、ベンゾトリフロライド、フルオロベンゼン、ジフルオロベンゼン、ヘキサフルオロベンゼン、トリフルオロメチルベンゼン、ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、メタキシレンヘキサフルオリド等のフッ素含有芳香族炭化水素;ペルフルオロヘキサン、ペルフルオロオクタン等のフッ素含有脂肪族炭化水素;ペルフルオロシクロデカリン等のフッ素含有脂肪族環状炭化水素;ペルフルオロ−2−ブチルテトラヒドロフラン等のフッ素含有エーテル類;クロロホルム、クロルベンゼン、トリクロルベンゼン等のハロゲン化炭化水素;テトラヒドロフラン、ジブチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、ジオキサン、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGMEAと称する)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエーテル類;酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のエステル類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、2−メトキシエタノール、3−メトキシプロパノール等のアルコール類等が挙げられる。これらのうちから溶解性、製膜性などを考慮して選択すればよい。
【0111】
塗布液を調製するための溶剤は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
塗布液を調製するための溶剤は、塗布液の固形分濃度(溶剤以外の成分の濃度)が、典型的には1〜90質量%、好ましくは5〜80質量%となるような量で使用される。なお、溶剤を用いることは必須ではない。
【0112】
塗布方法については公知の方法を適用することができる。例えば、テーブルコート法、スピンコート法、ディップコート法、ダイコート法、スプレーコート法、バーコート法、ロールコート法、カーテンフローコート法、スリットコート法、インクジェットコート法などを挙げることができる。
【0113】
また、溶剤を除去するなどの目的で、必要に応じて、塗布後にベーク(加熱)工程を設けてもよい。ベークの温度、時間等の諸条件は、塗工厚み、プロセス様式、生産性を考慮して適宜設定すればよい。好ましくは20〜200℃、より好ましくは20〜180℃の温度範囲で、0.5〜30分、より好ましくは0.5〜20分の時間で選ばれる。
ベークの方法は、加熱板等により直接加熱する、熱風炉を通す、赤外線ヒーター利用する等、いずれの方法であってもよい。
【0114】
保護フィルム層形成工程の具体的なやり方は、ゴミなどの異物噛みが無いように密着させる方法であれば特に限定されない。典型的には、上記の光硬化性樹脂層形成工程で形成された光硬化性樹脂層102の上に保護フィルム層103を密着させる方法を挙げることができる。
保護フィルム層103の形成は、バッチ法であってもロール・トゥ・ロールによる連続法であってもよい。また、光硬化性樹脂層102と保護フィルム層103とが接する際に圧力を加えながら密着させることで、気泡を抜くことが好ましい。このためにハンドローラーを押し当てるなどしてもよい。また、ロール・トゥ・ロールによる連続法である場合は、送り出しロールから送られた保護フィルム層103を、ニップロール等で圧力を加えながら光硬化性樹脂層102と密着させることで気泡を抜いてもよい。
【0115】
また、別のやり方として、光硬化性樹脂層102の表面に、ケイ素化合物やフッ素化合物などを含む塗布液を、スピンコートやスリットコートなどの方法で塗布し、乾燥させて保護フィルム層103としてもよい。さらに別のやり方として、金属薄膜の表面にケイ素化合物やフッ素化合物など含む塗布液を、スピンコートやスリットコートなどの方法で塗布してもよい。
【0116】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することができる。また、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
【実施例】
【0117】
本発明の実施態様を実施例に基づき説明する。なお、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0118】
まず、合成したポリマーの評価方法、評価に用いたモールド、凹凸構造体の製造手順、および寸法精度の評価方法について以下に記載する。
【0119】
[重量平均分子量(Mw)、および、分子量分布(Mw/Mn)]
下記の条件で、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)により、テトラヒドロフラン(THF)に溶解したポリマーの重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)を、ポリスチレンスタンダードによって分子量を較正して測定した。
・検出器:日本分光社製RI−2031および875−UV
・直列連結カラム:Shodex K−806M、804、803、802.5
・カラム温度:40℃、流量:1.0ml/分、試料濃度:3.0〜9.0mg/ml
【0120】
[フッ素含有環状オレフィンポリマー(A)の水素添加率]
水素添加反応を行った開環メタセシス重合体の粉末を、重水素化テトラヒドロフランに溶解した。これを、270MHz−H−NMR測定により、δ=4.5〜7.0ppmの主鎖の二重結合炭素に結合する水素に由来する吸収スペクトルの積分値を求め、この積分値から水素添加率を算出した。
【0121】
[ガラス転移温度]
島津製作所社製の装置「DSC−50」を用い、測定試料を窒素雰囲下で10℃/分の昇温速度で加熱した。このときの、ベースラインと変曲点での接線との交点を、ガラス転移温度とした。
【0122】
[使用したモールド(マザーモールドに相当)]
パターン形状が線状のライン(凸部)&スペース(凹部)である石英モールドを使用した。
具体的には、凸部と凸部の等間隔距離(凹部の幅)をL1、凸部の幅をL2、凸部の高さをL3としたとき、L1=250nm、L2=250nm、L3=500nmであるモールドを用いた。
【0123】
[凹凸構造体の製造手順]
まず、後述する実施例で製造された3層構成の積層体(製造後、暗所にて常温(23℃)で1時間保管したもの)の保護フィルムを剥がし、光硬化性樹脂層を露出させた。
次に、石英モールドのパターン面に、露出させた光硬化性樹脂層を、0.2MPaの圧力で押し当てた。
この圧力を維持したまま、光照射をして、光硬化性樹脂層を硬化させた。具体的には、SCIVAX社製ナノインプリント装置X−100Uを用いて、石英モールド背面から、高輝度LEDを光源として波長365nmの紫外線を照射して光硬化性樹脂層を硬化させた。
光照射による硬化後、光硬化性樹脂層を硬化させた2層構成の積層体を、石英モールドから剥離して、凹凸構造体を得た。
【0124】
[寸法精度の評価]
上記[凹凸構造体の製造手順]で得られた凹凸構造体のパターンを観察した。ライン(凸部)とスペース(凹部)および断面の観察、膜厚測定には、日本分光社製の走査型電子顕微鏡JSM−6701F(以下、SEMと表記する)を使用した。
SEMの断面写真において、図2に模式的に示される凸部の幅L1、凹部の幅L2、凸部の高さL3について、それぞれ任意の3か所を計測した。L1およびL2については、凹部の上面から凸部の上面(凸部の高さ)の1/2の部分を計測の基準位置として計測した。
L1およびL2については250nmに近い値であるほど、L3については500nmに近い値であるほど、寸法精度が良好であることを表す。
【0125】
[積層体の経時変化に伴う寸法精度の評価]
積層体の経時変化に伴う寸法精度を評価するため、作成した積層体を暗所にて常温(23℃)で1日間保管したサンプルおよび7日間保管したサンプルを作成して、上記と同様にしてL1、L2およびL3の平均値を算出した。
【0126】
次いで、保管時間1時間の積層体で形成した凹凸構造体の各寸法の平均値で、保管時間1日後および7日後の積層体で形成した凹凸構造体の各寸法の平均値を割り算して、その変化を算出した。
具体的には、凸部の幅(L1)については、保管期間が1時間、1日および7日の積層体を用いて、上記要領でインプリントを行ったときの凸部の幅(L1)の平均値を、それぞれ、L1(1hour)、L1(1day)およびL1(7day)として、1日および7日経時後の積層体の寸法精度L1erを以下の式で算出した。
・1日経過後:L1er(1day)=L1(1day)/L1(1hour)
・7日経過後:L1er(7day)=L1(7day)/L1(1hour)
【0127】
凹部の幅(L2)および凸部の高さ(L3)についても、同様にして寸法精度(L2erおよびL3er)を算出した。すなわち、保管時間1時間の積層体で形成した凹凸構造体の各寸法の平均値で、保管時間1日または7日の積層体で形成した凹凸構造体の各寸法の平均値を割り算して、L2er(1day)、L2er(7day)、L3er(1day)およびL3er(7day)を求めた。
【0128】
算出された寸法精度の全てが0.9〜1.1の範囲内であるものを、良好な保存安定性を示す「○」とし、そうでないものを「×」とした。
【0129】
次に、積層体の製造例、および、そのためのフッ素含有環状オレフィンポリマーの合成例、塗布液の調製例などについて記載する。
【0130】
[実施例1:フッ素含有環状オレフィンポリマーの合成、光硬化性樹脂層形成のための塗布液の調製、および積層体の製造]
5,5,6−トリフルオロ−6−(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(100g)と1−ヘキセン(0.298mg)のテトラヒドロフラン溶液に、Mo(N−2,6−Pr)(CHCMePh)(OBut(50mg)のテトラヒドロフラン溶液を添加し、70℃で開環メタセシス重合を行った。得られたポリマーのオレフィン部を、パラジウムアルミナ(5g)によって160℃で水素添加反応を行い、ポリ(1,1,2−トリフルオロ−2−トリフルオロメチル−3,5−シクロペンチレンエチレン)のテトラヒドロフラン溶液を得た。
【0131】
得られた溶液を、孔径5μmのフィルターで加圧ろ過することによりパラジウムアルミナを除去した。次いで、得られた溶液をメタノールに加え、白色のポリマーをろ別、乾燥し、99gのフッ素含有環状オレフィンポリマーであるポリマー1を得た。
得られたポリマー1は、前述の一般式(1)により表される構造単位を含有していた。また、水素添加率は100mol%、重量平均分子量(Mw)は70000、分子量分布(Mw/Mn)は1.71、ガラス転移温度は107℃であった。
【0132】
次いで、ポリマー1を20質量%の濃度で溶解したシクロヘキサノン溶液100gに、光硬化性化合物(B)として大気圧下の沸点が280℃であるビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテルと大気圧下の沸点が240℃である1,7−オクタジエンジエポキシドの質量比2/8の混合物を13g[質量比((A)/(B))=60.6/39.4]、および光硬化開始剤(C)としてCPI−210K(商品名、サンアプロ社製)を0.65g加えた溶液を調製した。
そして、この溶液を孔径1μmのフィルターで加圧ろ過し、さらに孔径0.1μmのフィルターでろ過して樹脂組成物1(塗布液)を調製した。
【0133】
この樹脂組成物1を、10cm×10cmのサイズのPETフィルム(ルミラー(登録商標)U34、東レ社製)上に、ロッド番号が9番のバーコーターで塗布し、厚みが均一な液膜を形成した。次いで、50℃に加熱したホットプレートを使用して120秒間ベークし、溶剤を除去した。この際に計測した樹脂組成物1の溶剤除去(乾燥)後の膜厚は5μmであった。
次いで、保護フィルムとしてトーセロセパレータTMSPT18(ポリエステル系フィルム、厚み50μm、三井化学東セロ社製)を溶剤除去(乾燥)後の樹脂組成物1の大気面に接触させ、ハンドローラーで気泡を抜きながら密着させた。これにより3層構造の積層体1を製造した。得られた積層体1の外観には、ゴミの付着、気泡噛み、表面の揺らぎ等の不具合は見られなかった。
【0134】
[実施例2:光硬化性樹脂層形成のための塗布液の調製、および積層体の製造]
10gの実施例1で合成したポリマー1と、90gの光硬化性化合物(沸点280℃のビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテルおよび沸点260℃の2−エチルヘキシルグリシジルエーテルの混合物(質量比5/5))とを、均一に混合した液状の混合物を準備した。
次いで、上記混合物に、光硬化開始剤(C)として、CPI−100P(商品名、サンアプロ社製)を4.5g加えて、液状の組成物を調製した。
この組成物を孔径1μmのフィルターで加圧ろ過し、さらに孔径0.1μmのフィルターでろ過して樹脂組成物2を調製した。
【0135】
積層体の製造については、ホットプレートでのベーク工程を省いた以外は実施例1と同様の方法で行い、これにより積層体2を作製した。PETフィルムに塗工した直後に計測した樹脂組成物2の膜厚は10μmであった。
【0136】
[実施例3:光硬化性樹脂層形成のための塗布液の調製、および積層体の製造]
実施例1で調製された樹脂組成物1を用いて、樹脂組成物1を塗工する基板を5cm×5cmのサイズの石英に変更した以外は実施例1と同様の方法で、積層体3を作製した。この際、石英に塗工した直後に計測した樹脂組成物1の膜厚は5μmであった。
【0137】
[実施例4:フッ素含有環状オレフィンポリマーの合成、光硬化性樹脂層形成のための塗布液の調製、および積層体の製造]
モノマーを5,6−ジフルオロ−5−トリフルオロメチル−6−ペルフルオロエチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(50g)に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で、49gのフッ素含有環状オレフィンポリマーであるポリマー2[ポリ(1,2−ジフルオロ−1−トリフルオロメチル−2−ぺルフルオロエチル−3,5−シクロペンチレンエチレン)]を得た。
得られたポリマー2は、上記一般式(1)により表される構造単位を含有していた。水素添加率は100mol%、重量平均分子量(Mw)は80000、分子量分布(Mw/Mn)は1.52、ガラス転移温度は110℃であった。
【0138】
次いで、フッ素含有環状オレフィンポリマーを、このポリマー2に変更した以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物3を調製した。
【0139】
そして、この樹脂組成物3を用いて、実施例1と同様にして積層体4を作製した。この際、PETフィルムに塗工した直後に計測した樹脂組成物3の膜厚は7μmであった。
【0140】
[実施例5:光硬化性樹脂層形成のための塗布液の調製、および積層体の製造]
光硬化性化合物(B)を、1気圧下の沸点が116℃であるメチルグリシジルエーテルに変更したこと以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物4を調製した。
次いで、実施例1と同様にして積層体5を作製した。この際、PETフィルムに塗工した直後に計測した樹脂組成物4の膜厚は5μmであった。
【0141】
[実施例6:フッ素含有環状オレフィンポリマーの合成、光硬化性樹脂層形成のための塗布液の調製、および積層体の製造]
まず、実施例1と同様にして開環メタセシス重合を行った。
次いで、得られたポリ(1,1,2−トリフルオロ−2−トリフルオロメチル−3,5−シクロペンチレンエチレン)の未水添ポリマーのテトラヒドロフラン溶液をヘキサンに加え、薄黄色のポリマーをろ別し、そして乾燥して、99gのフッ素含有環状オレフィンポリマーであるポリマー3を得た。
【0142】
得られたポリマー3は、前掲の一般式(2)により表される構造単位を含有していた。重量平均分子量(Mw)は65000、分子量分布(Mw/Mn)は1.81、ガラス転移温度は130℃であった。
【0143】
ポリマー1の代わりに上記ポリマー3を用いた以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物5(塗布液)を調製した。
この樹脂組成物5を、実施例1と同様の方法でPETフィルムに塗布するなどして、積層体6を作製した。この際、PETフィルムに塗工した直後に計測した樹脂組成物5の膜厚は2μmであった。
【0144】
[比較例1]
光式ナノインプリント用の光硬化性材料であるPAK−01(東洋合成社製、フッ素含有環状オレフィンポリマーを含まない)を、サイズが10cm×10cmであるPETフィルム(ルミラー(登録商標)、東レ社製)上に、ロッド番号が9番のバーコーターで塗工し厚み均一な液膜を形成した。この際に計測したPAK−01の膜厚は9μmであった。
次いで、保護フィルムとしてトーセロセパレータTMSPT18(厚み50μm、三井化学東セロ製)を被せるためにハンドローラーを押し当て密着させたところ、基板であるPETと保護フィルムの間から塗布したPAK−01が漏れ出し、積層体を作製することができなかった。
【0145】
[性能評価]
実施例1〜6で得られた積層体1〜6を用いて、前述の[凹凸構造体の製造手順]、[寸法精度の評価]および[積層体の経時変化に伴う寸法精度の評価]を行った。結果をまとめて表1に示す。
なお、表1中、経時変化に伴う寸法精度の数値については、前述の数式から得られた結果の小数点2桁目を四捨五入して記載した。
【0146】
【表1】
【0147】
【表2】
【0148】
実施例1〜6から、基材層と、フッ素含有環状オレフィンポリマー、光硬化性化合物および光硬化開始剤を含む光硬化性樹脂層と、保護フィルム層とをこの順に備えた積層体を準備し、保護フィルム層の剥離、モールドの圧接、および光照射を行うことで、凹凸構造体を製造できることが示された。つまり、インプリントを行う直前に有機溶剤を含む樹脂組成物の塗布などを行わずとも凹凸構造体を製造可能であり、光式ナノインプリント方式で凹凸構造体を製造する場において有機化合物の排出を実質上無くすことができることが示された。
特に、実施例1〜6のL1、L2およびL3の値を見ると、モールドの寸法を±1〜2nm程度の精度で精度良く再現している。つまり、単に凹凸構造体を製造可能というだけでなく、実用に十分耐える精度で微細なインプリントパターンが得られたことがわかる。(この理由としては、光硬化性樹脂層がフッ素含有環状オレフィンポリマーを含むことにより、モールドの剥離性が良好であったことが考えられる。)
【0149】
実施例1〜6をより詳細に分析すると、実施例1〜4および6と実施例5の、積層体の経時(1日/7日)に伴う寸法精度の評価結果から、光硬化性化合物として沸点が比較的高いものを用いることにより、製造後1日または7日経過した積層体を用いても、製造後1時間の積層体を用いて得られる凹凸パターンとほとんど同じ寸法の凹凸パターンを得られることが分かった。
つまり、光硬化性化合物として沸点が比較的高いものを選択することで、長期にわたり安定的に保管でき、保管後に用いても一定の寸法の微細凹凸パターンを精度よく転写可能な積層体を得られることが分かった。
【0150】
なお、実施例1〜6の全てにおいて、「剥離工程」については特に問題なく行うことができた。つまり、剥離工程の際、光硬化性樹脂層の一部が基材層から剥がれるなどの不具合なく、きれいに保護フィルム層を剥がすことができた。
また、実施例1〜6で得られた凹凸構造体をレプリカモールドとして用いてナノインプリントプロセスを数回行ったところ、良好な凹凸パターンを製造でき、また、レプリカモールドとしての十分な形状保持性(耐久性)があることを確認できた。
【0151】
さらに、実施例1〜6では、3層構成の積層体を、液だれなどなく製造できたのに対し、比較例1では液だれが発生し、3層構成の積層体を満足に製造することができなかった。これは、一つには、光硬化性樹脂層が、適度に剛直でフッ素含有環状オレフィンポリマーを含むことにより、塗布後に適度な'硬さ'とすることができ、光硬化性樹脂層の意図せぬ流動が抑えられたためと考えられる。
【0152】
[追加評価:プラズマエッチングによる石英基板への凹凸構造形成]
実施例3で得られた石英基板の光硬化物が形成された面を、酸素雰囲気下でプラズマエッチングし、次いで、ガス雰囲気をテトラフルオロメタンに切り替えて石英表面をプラズマエッチングした。その後、石英基板上に残存する光硬化物の除去のため、再度、酸素雰囲気下でプラズマエッチングを行った。
以上により、実施例3で得られた石英基板上の光硬化物をエッチングマスクとして、石英基板表面に凹凸形状を加工した。
石英基板表面の凹凸形状は、L1=250nm、L2=250nm、L3=500nmであった。すなわち、光硬化物の凹凸形状と実質同じ形状を石英基板表面に形成することができた。このことから、本実施形態の積層体における光硬化性樹脂層は、エッチングマスクとしても有効であることが確認された。
【0153】
この出願は、2018年1月19日に出願された日本出願特願2018−006980号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
図1
図2
【国際調査報告】