特表-19151515IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2019年8月8日
【発行日】2021年4月8日
(54)【発明の名称】早期大腸癌の検出方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6869 20180101AFI20210312BHJP
   C12Q 1/06 20060101ALI20210312BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20210312BHJP
   G01N 33/574 20060101ALI20210312BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20210312BHJP
【FI】
   C12Q1/6869 Z
   C12Q1/06
   C12N15/09 Z
   G01N33/574 Z
   G01N33/50 S
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】35
【出願番号】特願2019-569632(P2019-569632)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2019年2月4日
(31)【優先権主張番号】特願2018-18134(P2018-18134)
(32)【優先日】2018年2月5日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(71)【出願人】
【識別番号】899000079
【氏名又は名称】学校法人慶應義塾
(71)【出願人】
【識別番号】510097747
【氏名又は名称】国立研究開発法人国立がん研究センター
(74)【代理人】
【識別番号】100107870
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100098121
【弁理士】
【氏名又は名称】間山 世津子
(72)【発明者】
【氏名】山田 拓司
(72)【発明者】
【氏名】福田 真嗣
(72)【発明者】
【氏名】谷内田 真一
【テーマコード(参考)】
2G045
4B063
【Fターム(参考)】
2G045AA26
2G045CB04
2G045CB21
2G045DA07
2G045DA13
2G045FB02
4B063QA13
4B063QA19
4B063QQ02
4B063QQ06
4B063QQ42
4B063QR32
4B063QR72
4B063QR75
4B063QS10
(57)【要約】
被験者の糞便中の遺伝子の量を指標として早期大腸癌を検出する方法であって、その遺伝子が馬尿酸ヒドロラーゼ遺伝子、シクロヘキサジエニルデヒドラターゼ遺伝子、ブタノールデヒドロゲナーゼ遺伝子、核酸塩基:カチオン共輸送体-1遺伝子、及び3-ヒドロキシ-5-ホスホノオキシペンタン-2,4-ジオンチオラーゼ遺伝子からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする早期大腸癌の検出方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の糞便中の遺伝子の量を指標として早期大腸癌を検出する方法であって、その遺伝子が馬尿酸ヒドロラーゼ遺伝子、シクロヘキサジエニルデヒドラターゼ遺伝子、ブタノールデヒドロゲナーゼ遺伝子、核酸塩基:カチオン共輸送体-1遺伝子、及び3-ヒドロキシ-5-ホスホノオキシペンタン-2,4-ジオンチオラーゼ遺伝子からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする早期大腸癌の検出方法。
【請求項2】
遺伝子が、馬尿酸ヒドロラーゼ遺伝子、シクロヘキサジエニルデヒドラターゼ遺伝子、ブタノールデヒドロゲナーゼ遺伝子、核酸塩基:カチオン共輸送体-1遺伝子、及び3-ヒドロキシ-5-ホスホノオキシペンタン-2,4-ジオンチオラーゼ遺伝子であることを特徴とする請求項1に記載の早期大腸癌の検出方法。
【請求項3】
被験者の糞便中の微生物の量をさらに指標として早期大腸癌を検出する方法であって、その微生物がビロフィラ・ワーズワーシア(Bilophila wadsworthia)であることを特徴とする請求項1又は2に記載の早期大腸癌の検出方法。
【請求項4】
被験者の糞便中の代謝産物の量をさらに指標として早期大腸癌を検出する方法であって、その代謝産物がグリココール酸及び/又はタウロコール酸であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の早期大腸癌の検出方法。
【請求項5】
以下(1)〜(3)の工程を含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の早期大腸癌の検出方法、
(1)被験者の糞便中の指標とする遺伝子、微生物、又は代謝産物を定量する工程、
(2)工程(1)で定量した値を健常者の糞便中の対応値と比較する工程、
(3)工程(2)の比較の結果、工程(1)で定量した値が、健常者の糞便中の対応値よりも統計学的に有意に高い場合に被験者を早期大腸癌であると判定する工程。
【請求項6】
被験者の糞便中の微生物の量を指標として早期大腸癌を検出する方法であって、その微生物がアトポビウム・パルブルム(Atopobium parvulum)であることを特徴とする早期大腸癌の検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、早期大腸癌の検出方法に関する。大腸癌を早期に検出できれば、患者の死亡率を下げることができるだけでなく、内視鏡による癌の除去が可能になるので、患者の生活の質を向上させることもできる。
【背景技術】
【0002】
ヒト腸内には、約1000種類100兆個に及ぶ細菌が共生していることが知られている。これらは「腸内細菌叢」と呼ばれ、どの細菌種がどの程度存在するかという細菌組成の変動や異常が疾患や健康状態に影響を与えることが近年の報告により明らかとなりつつある。大腸癌についても、腸内細菌叢との関係が以前より指摘されており、例えば、欧米人においてはFusobacterium nucleatumが進行性の大腸癌患者に多く存在していることを示す論文報告がなされている(非特許文献1及び2)。
【0003】
腸内細菌を調べるために従来は、細菌を分離して、培養して増殖させることが必要であった。近年、培養という過程を経ずに、環境サンプル中の細菌がもつDNAを抽出し、その遺伝子配列情報を解読することにより、サンプル中の細菌組成を再構築する手法が開発された(メタゲノム解析)。これを糞便に応用することにより、ヒト腸内環境中の腸内細菌叢組成を明らかにすることが可能となった。また、環境中の低分子化合物(代謝産物)を定量的に測定する質量分析計を用いることにより、糞便中の代謝産物の網羅的なデータを得ることが可能である(メタボローム解析)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Zeller G et al., Mol Syst Biol. 2014 Nov 28;10:766
【非特許文献2】Feng Q et al., Nat Commun. 2015 Mar 11;6:6528
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
初期ステージの大腸癌の大部分は、内視鏡によって取り除くことが可能であることから、大腸癌の早期発見は、死亡率を低下させるという点だけでなく、患者の生活の質を向上させるという点からも重要である。このような背景の下、本発明は、早期大腸癌を検出するための手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、早期大腸癌の患者の糞便中の遺伝子、微生物、代謝産物の組成が、進行性大腸癌の患者の糞便中の組成と大きく異なっており、進行性大腸癌を検出するためのマーカーを用いたのでは、早期大腸癌を検出できないことを見出し、更に、早期大腸癌を特異的に検出できるマーカーを見出し、これらの知見に基づき、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明は、以下の〔1〕〜〔6〕を提供するものである。
〔1〕被験者の糞便中の遺伝子の量を指標として早期大腸癌を検出する方法であって、その遺伝子が馬尿酸ヒドロラーゼ遺伝子、シクロヘキサジエニルデヒドラターゼ遺伝子、ブタノールデヒドロゲナーゼ遺伝子、核酸塩基:カチオン共輸送体-1遺伝子、及び3-ヒドロキシ-5-ホスホノオキシペンタン-2,4-ジオンチオラーゼ遺伝子からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする早期大腸癌の検出方法。
【0008】
〔2〕遺伝子が、馬尿酸ヒドロラーゼ遺伝子、シクロヘキサジエニルデヒドラターゼ遺伝子、ブタノールデヒドロゲナーゼ遺伝子、核酸塩基:カチオン共輸送体-1遺伝子、及び3-ヒドロキシ-5-ホスホノオキシペンタン-2,4-ジオンチオラーゼ遺伝子であることを特徴とする〔1〕に記載の早期大腸癌の検出方法。
【0009】
〔3〕被験者の糞便中の微生物の量をさらに指標として早期大腸癌を検出する方法であって、その微生物がビロフィラ・ワーズワーシア(Bilophila wadsworthia)であることを特徴とする〔1〕又は〔2〕に記載の早期大腸癌の検出方法。
【0010】
〔4〕被験者の糞便中の代謝産物の量をさらに指標として早期大腸癌を検出する方法であって、その代謝産物がグリココール酸及び/又はタウロコール酸であることを特徴とする〔1〕乃至〔3〕のいずれかに記載の早期大腸癌の検出方法。
【0011】
〔5〕以下(1)〜(3)の工程を含むことを特徴とする〔1〕乃至〔4〕のいずれかに記載の早期大腸癌の検出方法、
(1)被験者の糞便中の指標とする遺伝子、微生物、又は代謝産物を定量する工程、
(2)工程(1)で定量した値を健常者の糞便中の対応値と比較する工程、
(3)工程(2)の比較の結果、工程(1)で定量した値が、健常者の糞便中の対応値よりも統計学的に有意に高い場合に被験者を早期大腸癌であると判定する工程。
【0012】
〔6〕被験者の糞便中の微生物の量を指標として早期大腸癌を検出する方法であって、その微生物がアトポビウム・パルブルム(Atopobium parvulum)であることを特徴とする早期大腸癌の検出方法。
【0013】
本明細書は、本願の優先権の基礎である日本国特許出願、特願2018‐018134の明細書および/または図面に記載される内容を包含する。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、これまで内視鏡検査でなければ不可能であった早期の大腸癌の発見が、非侵襲的な便検査によって可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1A】318人の患者の糞便サンプル中に含まれる属(上段)と代謝産物(下段)の相対存在量を示す。存在量の多い上位30の属及び代謝産物が示されている。患者の内訳は、「健康な」者(「正常」及び「少数のポリープ」)(N = 128)、「複数のポリープ」を有する者(N = 128)、「ステージ0」の者(N = 28)、「ステージ I / II」の者(N = 69)、「ステージ III / IV」の者(N = 54)である。ヒトゲノム断片も示されている。
図1B】属(左)及び代謝産物(右)の主成分分析。
図2A】癌の進行に伴い差異を示す分類学的特性。種は、「健康な」コントロールと比較した「複数のポリープ」、「ステージ0」、「ステージI / II」、及び「ステージI / II」の4つのステージのそれぞれにおける増加又は減少により、決定された(片側マンホイットニーのU検定でP値<0.05)。種は、「Firmicutes」、「Proteobacteria」、「Bacteroidetes」、「Actinobacteria」、 「Fusobacteria」、「Tenericutes」、及び「Euryarchaeota」の門に分類される系統樹に示されている。外側の円において、種は増加(オレンジ色)又は減少(緑色)のマークが付けられている。特に、著しく増加した(FDR補正P値<0.05)種は赤色でマークされている。最も内側の円は、種の相対的な存在量を示している。各門について、各ステージに特異的に存在量が変化した種(Private、赤)、他のステージと共有して存在量が変化した種(Shared、青)、又はすべてのステージに広範に分布して存在量が変化した種(Ubiquitous、緑)の数を数えた。ボックスプロット(ブラックボックス)は、「健康な」コントロール及び4つの異なるグループにおける代表的な種の相対的存在量を示す(*, P<0.05; **, P<0.01.)。
図2B】癌の進行に伴い差異を示す代謝的特性。代謝物は、「健康な」コントロールと比較した「複数のポリープ」、「ステージ0」、「ステージI / II」、及び「ステージI / II」の4つのステージのそれぞれにおける増加又は減少により、決定された(片側マンホイットニーのU検定でP値<0.05)。メタボロミクス分析に基づいて、主要な代謝経路の代謝産物、特に胆汁酸、短鎖脂肪酸(SCFA)、及びアミノ酸が示されている。これらの代謝産物は、「健康な」コントロールと他のグループとの間に統計的に有意な差異を示す。DCAはデオキシコール酸を表す。有意な増加又は減少は以下のように示される:++はP<0.01で増加、+はP<0.05で増加、--はP<0.01で減少、-はP<0.05で減少。
図3A】内視鏡による粘膜切開の前後の「ステージ0」大腸癌(CRC)の代表的な内視鏡画像(左)、並びに「ステージIII」CRCの代表的な術前内視鏡画像及び同じ患者の切除標本の肉眼画像(右)。
図3B】「ステージ0」及び「ステージIII / IV」癌の患者を検出するためのメタゲノミクス及びメタボロミクスマーカー。「健康な」コントロールに対して「ステージ0」(左)及び「ステージIII / IV」(右)の患者を分類するために、種単独(赤)、KO単独(青)、代謝産物単独(黒)、又は3種類の特徴の組み合わせ(緑色)に基づいて、ランダムフォレストモデルをデザインした。「ステージ0」分類では、種に基づくモデルは7種を、KOに基づくモデルは5KOを、代謝産物に基づくモデルは5代謝産物をそれぞれ特徴として使用した。「ステージIII / IV」の分類では、種に基づくモデルは17種を、KOに基づくモデルは15KOを、代謝産物に基づくモデルは20代謝産物をそれぞれ特徴として使用した。組み合わせモデルは、同じ特徴を一緒に使用した。分類精度は、受信者動作特性曲線下領域(AUC)で、leave-one-out検証によって評価した。
図3C】「ステージ0」及び「ステージIII / IV」癌の患者を検出するためのメタゲノミクス及びメタボロミクスマーカー。分類器への寄与度はMean decrease Giniを用いて計算される。全体の中の上位20の特徴が示されている(左:ステージ0、右:ステージIII / IV)。ボックスプロットの色は、「健康な」コントロールと比較して、各グループにおいて増加(赤)と減少(薄い青)を表す。
図4A】分枝鎖アミノ酸(BCAA)、芳香族アミノ酸(AAA)、メタン、及び硫化水素の生合成及び分解のための経路モジュール。有意に増加又は減少している(片側マンホイットニーのU検定によりP <0.05)KOは、経路モジュールに示されている。(a)において「バリン、ロイシン及びイソロイシン生合成」(map00290)及び「バリン、ロイシン及びイソロイシン分解」(map00280)、並びに(b)において「フェニルアラニン、チロシン及びトリプトファン生合成」(map00400)、「トリプトファン代謝」(map00380)、「チロシン代謝」(map00350)及び「フェニルアラニン代謝」(map00360)について、KEGG経路マップから経路モジュールを改変した。メタン生成の3つの主要経路(M00563、M00356及びM00567)(d)及び遺伝毒性硫化水素の生成経路(c)が示されている。
図4B図4Aにおける「バリン、ロイシン及びイソロイシン分解」の詳細を示す図。各KEGGオルソログ(KO)について、棒グラフは、5つのグループ、即ち、「健康な」、「複数のポリープ」、「ステージ0」、「ステージI / II」及び「ステージIII / IV」の各サンプルで平均したKOの存在量を示し、値の順序に応じて色付けされている。 KOは、遺伝子の存在割合が円で示されている生物で構成される。「健康な」コントロールには、最も存在量の多い3つの生物が示されている。それらの円の大きさ及び色は、各グループにおける遺伝子の相対存在量に比例する。生物名は以下のように略記される:bth, Bacteroides thetaiotaomicron VPI-5482; kpt, Klebsiella pneumoniae subsp. pneumoniae ATCC 43816 KPPR1。Phe、Tyr、Trp、Val、Leu及びIleについても平均存在量が示されている。
図4C図4Aにおける「バリン、ロイシン及びイソロイシン生合成」の詳細を示す図。各KEGGオルソログ(KO)について、棒グラフは、5つのグループ、即ち、「健康な」、「複数のポリープ」、「ステージ0」、「ステージI / II」及び「ステージIII / IV」の各サンプルで平均したKOの存在量を示し、値の順序に応じて色付けされている。 KOは、遺伝子の存在割合が円で示されている生物で構成される。「健康な」コントロールには、最も存在量の多い3つの生物が示されている。それらの円の大きさ及び色は、各グループにおける遺伝子の相対存在量に比例する。生物名は以下のように略記される:bth, Bacteroides thetaiotaomicron VPI-5482; kpt, Klebsiella pneumoniae subsp. pneumoniae ATCC 43816 KPPR1。Phe、Tyr、Trp、Val、Leu及びIleについても平均存在量が示されている。
図4D図4Aにおける「チロシン代謝」の詳細を示す図。各KEGGオルソログ(KO)について、棒グラフは、5つのグループ、即ち、「健康な」、「複数のポリープ」、「ステージ0」、「ステージI / II」及び「ステージIII / IV」の各サンプルで平均したKOの存在量を示し、値の順序に応じて色付けされている。 KOは、遺伝子の存在割合が円で示されている生物で構成される。「健康な」コントロールには、最も存在量の多い3つの生物が示されている。それらの円の大きさ及び色は、各グループにおける遺伝子の相対存在量に比例する。生物名は以下のように略記される:bth, Bacteroides thetaiotaomicron VPI-5482; kpt, Klebsiella pneumoniae subsp. pneumoniae ATCC 43816 KPPR1。Phe、Tyr、Trp、Val、Leu及びIleについても平均存在量が示されている。
図4E図4Aにおける「フェニルアラニン代謝」の詳細を示す図。各KEGGオルソログ(KO)について、棒グラフは、5つのグループ、即ち、「健康な」、「複数のポリープ」、「ステージ0」、「ステージI / II」及び「ステージIII / IV」の各サンプルで平均したKOの存在量を示し、値の順序に応じて色付けされている。 KOは、遺伝子の存在割合が円で示されている生物で構成される。「健康な」コントロールには、最も存在量の多い3つの生物が示されている。それらの円の大きさ及び色は、各グループにおける遺伝子の相対存在量に比例する。生物名は以下のように略記される:bth, Bacteroides thetaiotaomicron VPI-5482; kpt, Klebsiella pneumoniae subsp. pneumoniae ATCC 43816 KPPR1。Phe、Tyr、Trp、Val、Leu及びIleについても平均存在量が示されている。
図4F図4Aにおける「トリプトファン代謝」の詳細を示す図。各KEGGオルソログ(KO)について、棒グラフは、5つのグループ、即ち、「健康な」、「複数のポリープ」、「ステージ0」、「ステージI / II」及び「ステージIII / IV」の各サンプルで平均したKOの存在量を示し、値の順序に応じて色付けされている。 KOは、遺伝子の存在割合が円で示されている生物で構成される。「健康な」コントロールには、最も存在量の多い3つの生物が示されている。それらの円の大きさ及び色は、各グループにおける遺伝子の相対存在量に比例する。生物名は以下のように略記される:bth, Bacteroides thetaiotaomicron VPI-5482; kpt, Klebsiella pneumoniae subsp. pneumoniae ATCC 43816 KPPR1。Phe、Tyr、Trp、Val、Leu及びIleについても平均存在量が示されている。
図4G図4Aにおける「フェニルアラニン、チロシン及びトリプトファン生合成」の詳細を示す図。各KEGGオルソログ(KO)について、棒グラフは、5つのグループ、即ち、「健康な」、「複数のポリープ」、「ステージ0」、「ステージI / II」及び「ステージIII / IV」の各サンプルで平均したKOの存在量を示し、値の順序に応じて色付けされている。 KOは、遺伝子の存在割合が円で示されている生物で構成される。「健康な」コントロールには、最も存在量の多い3つの生物が示されている。それらの円の大きさ及び色は、各グループにおける遺伝子の相対存在量に比例する。生物名は以下のように略記される:bth, Bacteroides thetaiotaomicron VPI-5482; kpt, Klebsiella pneumoniae subsp. pneumoniae ATCC 43816 KPPR1。Phe、Tyr、Trp、Val、Leu及びIleについても平均存在量が示されている。
図4H図4Aにおける遺伝毒性硫化水素の生成経路の詳細を示す図。各KEGGオルソログ(KO)について、棒グラフは、5つのグループ、即ち、「健康な」、「複数のポリープ」、「ステージ0」、「ステージI / II」及び「ステージIII / IV」の各サンプルで平均したKOの存在量を示し、値の順序に応じて色付けされている。 KOは、遺伝子の存在割合が円で示されている生物で構成される。「健康な」コントロールには、最も存在量の多い3つの生物が示されている。それらの円の大きさ及び色は、各グループにおける遺伝子の相対存在量に比例する。生物名は以下のように略記される:bth, Bacteroides thetaiotaomicron VPI-5482; kpt, Klebsiella pneumoniae subsp. pneumoniae ATCC 43816 KPPR1。Phe、Tyr、Trp、Val、Leu及びIleについても平均存在量が示されている。
図4I図4Aにおけるメタン生成の3つの主要経路の詳細を示す図。各KEGGオルソログ(KO)について、棒グラフは、5つのグループ、即ち、「健康な」、「複数のポリープ」、「ステージ0」、「ステージI / II」及び「ステージIII / IV」の各サンプルで平均したKOの存在量を示し、値の順序に応じて色付けされている。 KOは、遺伝子の存在割合が円で示されている生物で構成される。「健康な」コントロールには、最も存在量の多い3つの生物が示されている。それらの円の大きさ及び色は、各グループにおける遺伝子の相対存在量に比例する。生物名は以下のように略記される:bth, Bacteroides thetaiotaomicron VPI-5482; kpt, Klebsiella pneumoniae subsp. pneumoniae ATCC 43816 KPPR1。Phe、Tyr、Trp、Val、Leu及びIleについても平均存在量が示されている。
図5A】Bilophila wadsworthiaとDCAとの関係。
図5B】手術前後の種の相対存在量の比較。X軸はlog fold changeを示し、Y軸はウィルコクソンの符号順位検定によるP値を示す(左)。円の大きさは、術前及び術後の状態で平均化された各種の存在量を示す。以前に大腸癌(CRC)において増加又は減少したとされる種(参考文献12)は、それぞれ赤色及び青色で強調されている。P値の低い種の名前は灰色で表示される。 Fusobacterium nucleatum、Peptostreptococcus stomatis及びBilophila wadsworthiaの存在量を手術前後で比較する(右)。増加及び減少パターンはそれぞれ赤色と青色に着色されている。加えて、手術前の便サンプルが入手できなかったCRCの手術後の30人の患者におけるこれらの細菌の存在量のボックスプロット(黒色)も示されている。
図6】各検体中に含まれるAtopobium parvulumの相対存在量。
図7】各検体中に含まれるBacteroides coprocolaの相対存在量。
図8】各検体中に含まれるBacteroides plebeiusの相対存在量。
図9】各検体中に含まれるBifidobacterium breveの相対存在量。
図10】各検体中に含まれるBifidobacterium choerinumの相対存在量。
図11】各検体中に含まれるBifidobacterium dentiumの相対存在量。
図12】各検体中に含まれるBifidobacterium moukalabenseの相対存在量。
図13】各検体中に含まれるBifidobacterium pseudolongum subsp. globosumの相対存在量。
図14】各検体中に含まれるBifidobacterium stellenboschenseの相対存在量。
図15】各検体中に含まれるEubacterium eligensの相対存在量。
図16】各検体中に含まれるFusobacterium nucleatum subsp. fusiformeの相対存在量。
図17】各検体中に含まれるFusobacterium nucleatum subsp. nucleatumの相対存在量。
図18】各検体中に含まれるFusobacterium nucleatum subsp. vincentiiの相対存在量。
図19】各検体中に含まれるLactobacillus rogosaeの相対存在量。
図20】各検体中に含まれるParabacteroides gordoniiの相対存在量。
図21】各検体中に含まれるRoseburia intestinalisの相対存在量。
図22】各検体中に含まれるSolobacterium mooreiの相対存在量。
図23】Atopobium parvulumの相対存在量。A:健常人と各ステージの大腸癌患者におけるAtopobium parvulumの相対存在量(メタゲノム解析)。B:健常人とステージ0の大腸癌患者におけるAtopobium parvulumの相対存在量(メタゲノム解析)。C:健常人とステージ0の大腸癌患者におけるAtopobium parvulumの相対存在量(qPCR、棒グラフ)。D:メタゲノム解析とqPCRの差がないことを示す散布図。点はサンプルを示す。E:健常人とステージ0の大腸癌患者におけるAtopobium parvulumの相対存在量(qPCR、ボックスプロット)。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の早期大腸癌の検出方法は、被験者の糞便中の遺伝子の量を指標として早期大腸癌を検出する方法であって、その遺伝子が馬尿酸ヒドロラーゼ遺伝子、シクロヘキサジエニルデヒドラターゼ遺伝子、ブタノールデヒドロゲナーゼ遺伝子、核酸塩基:カチオン共輸送体-1遺伝子、及び3-ヒドロキシ-5-ホスホノオキシペンタン-2,4-ジオンチオラーゼ遺伝子からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とするものである。
【0017】
ここで、「早期大腸癌」とは、進行性の大腸癌(例えば、ステージIII及びIVの大腸癌)以外の大腸癌をいい、主にステージ0の大腸癌を意味する。
【0018】
早期大腸癌の検出に使用される遺伝子は、上記の5種の遺伝子から選ばれる任意の1種でもよく、任意の2種でもよく、任意の3種でもよく、任意の4種でもよいが、高い精度で早期大腸癌を検出する場合には、5種すべてを使用することが好ましい。
【0019】
検出精度を向上させるため、他の指標、例えば、糞便中の微生物の量や代謝産物の量と組み合わせることも可能である。微生物としては、Bilophila wadsworthiaやAtopobium parvulumを挙げることができ、代謝産物としては、グリココール酸及び/又はタウロコール酸を挙げることができる。微生物の量や代謝産物の量を指標とする早期大腸癌の検出は、遺伝子の量を指標とする方法と組み合わせることなく、独立して行ってもよい。
【0020】
本発明の早期大腸癌の検出方法の具体例として、以下に説明する(1)〜(3)の工程を含む方法を挙げることができる。
【0021】
工程(1)では、被験者の糞便中の指標とする遺伝子を定量する。このとき、微生物の量や代謝産物の量も指標とする場合は、それらの定量も行う。遺伝子の定量はどのような方法で行ってもよく、例えば、糞便サンプルから全DNAを抽出し、それらの配列を読み取り、その配列と遺伝子のデータベース(例えばKEGG)を基に定量することが可能である。微生物の定量は、例えば、糞便サンプルから全DNAを抽出し、それらの配列を読み取り、その配列と16SリボソームRNAデータベース(例えば、SILVA)を基に行うことができる。代謝産物の定量は、CE-MSなどを用いて行うことができる。
【0022】
工程(2)では、工程(1)で定量した値を健常者の糞便中の対応値と比較する。健常者の糞便中の対応値は、被験者の糞便の定量前に決定しておいてもよく、また、被験者の糞便の定量と同時に決定してもよい。
【0023】
工程(3)では、工程(2)の比較の結果、工程(1)で定量した値が、健常者の糞便中の対応値よりも統計学的に有意に高い場合に被験者を早期大腸癌であると判定する。後述する実施例に示すように、上述した遺伝子、微生物、及び代謝産物の糞便中の存在量は、いずれも健常者と比較して、早期大腸癌の患者において増加していたので、工程(1)で定量した値が、健常者の糞便における対応値よりも統計学的に有意に高い場合には、被験者は早期大腸癌である可能性が高い。ここで、「統計学的に有意に高い」とは、被検者と健常者のそれぞれから得られた数値を統計学的に処理したときに両者間に有意差があることをいう。統計学的処理の検定方法は、有意性の有無を判断可能な公知の検定方法を適宜使用すればよく、特に限定されず、例えば、スチューデントt検定法、多重比較検定法を用いることができる。
【実施例】
【0024】
以下に、実施例により本発明をさらに詳細に述べるが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0025】
〔実施例1〕
(A)材料と方法
本研究で使用したサンプル及び臨床情報は、インフォームドコンセント及び各施設の施設審査委員会の承認を得て得られたものである。
【0026】
(1)被験者とサンプル採取
この研究は、国立がん研究センター中央病院で全大腸内視鏡検査を受ける被験者を対象に行われている。被験者の食生活などの生活習慣は、日本公衆衛生センター(JPHC)調査(参考文献1、2)で用いられたアンケートに基づく詳細なアンケート(質問項目475件、25頁)から得られた。糞便サンプルは、病院での腸洗浄剤の経口投与中の最初の排便時に直ちに採取され、ドライアイス上で凍結された。これは、このようなサンプルが大腸内視鏡検査前に採取されたサンプル(標準サンプル)と高い相関性を示すことが証明されていたからである(参考文献3)。
【0027】
2014年2月から2017年12月まで国立がん研究センター中央病院で大腸内視鏡検査を受けた2,474人の被験者から、糞便を採取した。メタゲノムデータは484人の被験者から集めた。メタボロームデータは、517人の患者から集めた。幾人かの被験者はこの研究から除外した。これらの被験者が、遺伝性疾患(例えば、家族性腺腫性ポリープ症、遺伝性非ポリポーシス大腸癌)と診断されるか、胃癌の手術歴を有していたか、又は彼らの糞便サンプルがデータ収集に十分ではなかったからである。最後に、メタゲノム解析及びメタボローム解析の両方から得られたデータを有する合計348人の被験者(男性が204人、女性が144人であり、年齢は28歳から79歳まで、平均年齢は63.3歳であった。)を、この研究に登録した。被験者は大腸内視鏡検査の所見に基づいて以下の9つのグループに分類された。
1. 正常(大腸内視鏡検査では顕著な所見なし)
2. 少数のポリープ(2つまでの小さな(5mm未満)ポリープ)
3. 複数のポリープ(3つ以上のポリープ、主に5つ以上のポリープ)
4. ステージ0 CRC
5. ステージI CRC
6. ステージII CRC
7. ステージIII CRC
8.ステージIV CRC
9. CRCの手術後に顕著な所見はなし
【0028】
(2)DNA抽出
GNOME DNA Isolation Kit(MP Biomedicals、Santa Ana、CA)を使用して、以前に記載(参考文献4)されているようにビーズビーティング法により凍結した糞便サンプルからDNAを抽出した。DNA品質は、Agilent 4200 TapeStation(Agilent Technologies、Santa Clara、CA)で分析した。最終沈殿後、DNAをTE緩衝液に再懸濁し、さらなる分析のために-80℃で保存した。
【0029】
(3)メタゲノム解析
シーケンシングライブラリーを、Nextera XT DNA Sample Prep Kit(Illumina、San Diego、CA)を用いて、以下の改変を伴った供給業者の推奨に従って生成した:DNA開始量500ng、プロセスにおけるキット化学希釈1:1。ライブラリの品質を、Agilent 4200 TapeStationで分析した。糞便サンプルの全ゲノムショットガンシーケンシングをHiSeq2500プラットフォーム(Illumina)で行った。全てのサンプルを、平均6.0Gbpの標的深度まで、150bpの読み取り長で、ペアエンドシーケンスした。
【0030】
全DNAを糞便検体から抽出し、高品質のIlluminaメタゲノムショットガンシーケンシングの合計48,261,700の読み取りデータを16SリボソームRNAデータベース(SILVA LTP)に整列させ、9,352種(2,123属)を同定した。高品質の読み取りデータは、新しく組み立てられた。
【0031】
合計79,278,379の予測オープンリーディングフレーム(ORF)をIntegrated Reference Catalog of the Human Gut Microbiome(IGC)(参考文献5)及びKyoto Encyclopedia of Genes and Genomes (KEGG)(参考文献6)データベースに記録された遺伝子カタログに整列させ、6,428 のKEGG オルソログ(KO)を同定した。
【0032】
(3)メタボローム解析
以前に報告されたように(参考文献7)、CE-TOFMSによる荷電代謝産物の定量分析を行った。内部標準としてメチオニンスルホン及びD-カンフル-10-スルホン酸をそれぞれ20μM含むメタノールと共に激しく振盪することによって糞便代謝産物を抽出した(参考文献8)。すべてのCE-TOFMS実験は、Agilent CEキャピラリー電気泳動システムを用いて行った。CE-TOFMSデータの主成分分析は、SIMCA13.0(Umetrics、Umea、Sweden)を用いて行った。分析のために、検出限界以下の濃度をゼロで置換し、全てのサンプルにおいて検出限界以下のレベルの代謝産物を除外した。
【0033】
(4)統計分析
「ステージI CRC」及び「ステージII CRC」の患者を「ステージI / II」に組み合わせ、「ステージIII CRC」及び「ステージIV CRC」の患者を、「ステージIII / IV」に組み合わせた。種/ KO /代謝産物の各量は、P値が片側マンホイットニーのU検定で0.05以下である場合、有意に増加又は減少すると定義された。
【0034】
(B)結果
(1)被験者
348名の被験者は、「CRCの手術後に顕著な所見なし」(N = 30)に加えて、「正常」(N = 55)、「少数のポリープ」(N = 73)、「複数のポリープ」(N = 39)、「ステージ0 CRC」(N = 28)、「ステージI CRC」(N = 44)、「ステージII CRC」(N = 25)、「ステージIII CRC」(N = 35)、及び「ステージIV CRC」(N = 20)と診断された。「正常」及び「少数のポリープ」の患者を「健康な」コントロール(N = 128)と定義した。また、「ステージI CRC」の10人の患者、「ステージII CRC」の7人の患者、「ステージIII CRC」の8人の患者から治療前後のメタゲノムデータを得た。
【0035】
(2)メタゲノムデータとメタボロームデータの概要
318人の被験者(CRCの手術歴を有する30人の患者を除かれている)に対するメタゲノムデータ及びメタボロームデータの全体像が、「健康な」、「少数のポリープ」、「複数のポリープ」、「ステージ0」、「ステージI/II」、及び「ステージIII/IV」において示されている(図1A及び1B)。Bacteroides属の細菌を多く持つ被験者は、Prevotella属の細菌を多く持つ被験者と逆の関係にあった。注目すべきことに、Megamonas属は、すべてのグループにおける56人の患者(17.6%)において非常に多い属(10番目に多い属に入る)として検出されたが、残りの被験者ではほとんど検出されず、珍しい分布を示した。ヒトゲノム含量は、「健康な」コントロールと比較して、進行したCRCステージにおいてより高かった(「ステージI / II」についてP = 2.1e-5;「ステージIII / IV」についてP = 2.2e-7)。主成分分析(PCA)は、2つの可変性のクラスター(即ち、Bacteroides属とPrevotella属)を示している(図1B左)。これら二つの細菌は、ヒト腸内エンテロタイプとして定義されている(参考文献9)。興味深いことに、Prevotella属のクラスターは、日本人男性が優位を占めていた(Prevotellaクラスターにおける72%の被験者、χ2試験でP = 0.0032)。プロピオン酸と酪酸は大腸の主要なエネルギー源であるが(参考文献10)、これら二つは最も存在量の多い代謝産物であった。PCAは、ジヒドロウラシルと尿素が集団の中で大きな変動があったことを示している(図1B右)。
【0036】
(3)腺腫-癌腫配列における腸内細菌叢の変化
片側マンホイットニーのU検定で、「複数のポリープ」、「ステージ0」、「ステージI / II」、及び「ステージIII / IV」の被験者における種の相対的な存在量の増加又は減少を、「健康な」コントロールと比較して調べた(図2A)。本発明者は、多段階発癌のより進んだステージ(「ステージI / II」及び「ステージIII / IV」)に加えて、「複数のポリープ」及び上皮内癌(「ステージ0」)においても、腸内細菌叢の変化が現れることを見出した。さらに重要なことに、腸内細菌叢の変化はステージによって大きく異なっていた。Actinobacteria門、Fusobacteria門、Tenericutes門、及びEuryachaeota門に属する種は、「ステージ0」、「ステージI / II」及び「ステージIII / IV」において顕著な増加及び減少を示したが、「複数のポリープ」ではほとんど差異が示されなかった。これは、これらの門が前駆病変においてほとんど変わらないことを示す。Bifidobacteriaは、「ステージI / II」においてのみ減少した。 Firmicutes(例えば、Clostridia及びErysipelotrichia)の特定のクラスは、主に「ステージIII / IV」において増加した。以前の研究によれば(参考文献11及び12)、Fusobacterium nucleatum spp. (例えば、F. nucleatum subsp. nucleatum (FDR-corrected P=9.5e-6))、Peptostreptococcus stomatis (P=5.3e-6)、及びParvimonas micra (P=3.4e-5)の相対的な存在量は、「ステージIII / IV」において増加した。興味深いことに、Desulfovibrio属の種(例えば、D. vietnamensis(P = 0.033))は、「ステージ0」において増加した。さらに、「ステージ0」で有意に上昇した別の種は、Desulfovibrio spp.(参考文献13)の近縁種であるBilophila wadsworthia(P = 0.039)であった。これらの細菌は硫化物産生細菌としてよく知られている(硫酸塩は使用しないが硫酸塩及びチオ硫酸塩を電子受容体として使用する。)。これとは対照的に、酪酸生産菌、例えば、Faecalibacterium prausnitzii (「複数のポリープ」, P=0.0091; 「ステージ0」, P=0.023;「ステージIII / IV」, P=0.031), Roseburia intestinalis (「ステージ0」, P=0.0026; 「ステージIII / IV」, P=0.0095), Eubacterium eligens (「複数のポリープ」, P=0.024; 「ステージ0」, P=0.013; 「ステージI / II」, P=0.029; 「ステージIII / IV」, P=0.0074), Lachnospira multipara (「複数のポリープ」, P=0.030; 「ステージ0」, P=0.0007; 「ステージI / II」, P=0.0046; ステージIII / IV」, P=0.0005)は、前駆段階及び癌段階で減少した。これらの知見は、腸内微生物組成が多段階発癌の間に劇的に変化したことを示している。最近、Akkermansia muciniphiaの相対的な存在量が、肥満や糖尿病(参考文献15)に加えて、免疫チェックポイント阻害剤(参考文献14)に対する臨床応答と相関があることが示されているが、この細菌は、ステージIII / IV(P = 0.028)において有意に増加した(参考文献16)。
【0037】
(4)CRC発癌における微生物遺伝子の機能特性の変化
「健康な」コントロールと比較し、各段階でのKOの存在量の有意な上昇又は減少について調べた。その結果、いずれかのステージにおいて、1,497のKOが有意な上昇を示し、887のKOが有意な減少を示した。そのうち23のKOは、異なるステージで上昇と減少の両方を示した(片側マンホイットニーのU検定でP <0.05)。一般に、リジン代謝及びメタン代謝のKOは、「ステージIII / IV」において顕著に増加した。一方、アルギニン及びプロリン代謝のKOは減少した。詳細は後のセクションで説明する。
【0038】
(5)発癌の初期段階からのメタボロームプロファイルの変化
「健康な」コントロールと比較して、各癌段階において増加又は減少する517の化合物についてのCE-TOFMSメタボロームデータを得た。いずれかのステージにおいて、「健康な」コントロールと比較して、218の代謝産物が統計的に差異を示した(片側マンホイットニーのU検定でP <0.05)。中でも、本発明者は、腸内微生物叢と密接な関係がある代謝産物である胆汁酸、短鎖脂肪酸(SCFA)、ビタミン、アミノ酸、ポリアミン、中心炭素代謝の6つのカテゴリーに注目した(図2B)(参考文献17)。まず、本発明者は、糞便中の胆汁酸の濃度に注目した。デオキシコール酸(DCA)(P = 0.0002)及びグリココール酸(P = 0.0385)は、「複数のポリープ」において増加した。グリココール酸(P = 0.0078)及びタウロコール酸(P = 0.0047)は「ステージ0」において増加した。興味深いことに、DCAは、「健康な」コントロールと比較して、「ステージIII / IV」において減少した(P = 0.0183)。次に、本発明者は糞便中のアミノ酸(AA)濃度の変化に焦点を当てた。15のアミノ酸は、すべてのCRCステージで増加した。「ステージ0」では9のアミノ酸、「ステージI / II」では8のアミノ酸、「ステージIII / IV」では12のアミノ酸が増加した(図2B)。一方、「複数のポリープ」では2のアミノ酸しか増加しなかった。アスパラギン酸(Asp)は「ステージ0」で減少した(P = 0.0448)。注目すべきことに、分枝鎖アミノ酸(BCAA:イソロイシン、ロイシン、バリン)の濃度はCRCステージの大部分で増加した。さらに、本発明者はTCAサイクルにおける代謝物に焦点を当てた。「ステージ0」におけるフマル酸、コハク酸及びリンゴ酸濃度の増加が観察された。最初の2つの代謝産物は「ステージIII / IV」においても増加した。これらの知見は、CRC患者の腸における細菌性フマル酸呼吸を示している(参考文献31)。
【0039】
(6)CRCの初期段階を検出するためのメタゲノム及びメタボロームアプローチ
「ステージ0」CRCの大部分は、内視鏡的アプローチによって治療することができ(図3A)、検出のための幅広い時間枠がある。したがって、CRCによる死亡を防止するために、このような初期ステージのCRCを検出することが重要である。「ステージ0」及び「ステージIII / IV」を「健康な」コントロールから区別するための診断マーカーとしての腸メタゲノミクス及びメタボロミクスデータの可能性を調べるために、本発明者はランダムフォレスト分類器を構築した。Leave-one-out検証を行った。種のみ、KOのみ、代謝産物のみ、又は3種の組み合わせのいずれかに基づいて、4つのタイプのモデルを構築した。既知の危険因子(すなわち、喫煙及びアルコール)及びヒトゲノムの断片が特徴に加えられた。 4つのモデル間の分類ポテンシャルを比較すると、「ステージ0」(図3B、左)及び「ステージIII / IV」(図3B、右)の両方の分類において、組み合わせモデルが優れていた。本発明者は、「ステージ0」の患者を検出するために0.85の受信者動作特性曲線下領域(AUC)を、「ステージIII / IV」の患者について0.87の領域を保存した。Mean Decrease Giniを用いて各マーカーの寄与度を計算した(図3C)。「ステージ0」を特徴付ける特性は、以下のKOが上位に位置づけられた:K01451(hipO、馬尿酸ヒドロラーゼ)、K01713(pheC、シクロヘキサジエニルデヒドラターゼ)、K00100(bdhAB、ブタノールデヒドロゲナーゼ)、K03457(T.C.NCS1、核酸塩基:カチオン共輸送体-1、NCS1ファミリー)、KO8321(lsrF、3-ヒドロキシ-5-ホスホノオキシペンタン-2,4-ジオンチオラーゼ)。K01451の主な複合遺伝子は、「ステージ0」におけるKlebsiella pneumonia由来であった。K01713は、フェニルアラニン(Phe)の生合成酵素である。
【0040】
「ステージIII / IV」分類器は、大部分が種によって特徴付けられた(図3B、右)。上位に出現する種は、主にP. stomatis、F. nucleatum、Peptostreptococcus anaerobius、及びP. micraのような口腔嫌気性菌であった。これらの細菌は、以前からCRCのマーカー種として同定されている(参考文献11、12、19、20)。ヒトゲノム断片は、「ステージIII / IV」患者を「健康な」コントロールと区別するための評価の高い特性であった。
【0041】
(7)微生物代謝経路に関与するKOの変化
多数の経路の中で、本発明者は3つの経路(すなわち、アミノ酸、メタン及び硫黄)に焦点を当てた。これらの経路は、微生物叢と密接な関係があることが知られているからである(参考文献21)。前のセクションで述べたように、アミノ酸の濃度は、メタボロミクス分析に基づいて、CRCの全段階で優勢に増加した。本発明者は、経路情報が利用可能なKOの存在量な変化を調べた。その結果、KOの変化の興味深いパターンが観察された。CRCステージで存在量が増加したKOは、「健康な」コントロールと比較してアミノ酸の分解が多かった。対照的に、CRCステージで減少したKOは、アミノ酸の生合成が多かった。K10797以外のKOは、増加と減少の両方を示さなかった。一般に、アミノ酸生合成に関与するKOの存在量は、アミノ酸分解のそれより2桁大きかった。これは注意を要する点である。例えば、BCAAの生合成に関与する多数のKO(K00052、K00053、K01703、K01704、K01652、K01653、K01687、K01754)は減少していたが、その一方、それらの分解経路に関与するKO(K00166、K00167、K00253、K00263、K01692、K11381)は増加していた(図4A〜G)。これらの知見は、BCAAの微生物生合成の減少及びBCAAの微生物分解の増加に伴う宿主(ヒト)由来のBCAAの微生物消費の増加として解釈することができる。本発明者は、Phe代謝経路を含む芳香族アミノ酸(AAA)の代謝におけるKO増加にも焦点を当てた。これは、この代謝が「ステージ0」において多く、また、K01713が「ステージ0」を「健康な」コントロールから識別する診断マーカーとして位置づけられたからである(図3C)。Phe代謝経路では、Pheは、ヒト又は細菌の酵素のいずれかによってフェニル酢酸(PAA)(C07086、メタボロームデータは利用できない)に代謝され得る。このような酵素には、K00832 (P=0.042)、K00276 (P=0.042)、K01426 (P=0.042)、K00055 (P=0.027)、K00457 (P=0.0031)が含まれるが、これらはいずれも「ステージ0」で増加していた(図4A〜G)。PAAは、グルクロニド化によって尿中に排泄されるか、又は遺伝子クラスター(paaK → paaA/paaB/paaC/paaD/paaE → paaG → paaZ → paaG/paaJ → paaF → paaH → paaJ)によって触媒される一連の反応を介して細菌によってさらに代謝され得る(参考文献22)。これらの遺伝子のうち、「ステージ0」において増加したものは、paaG(K15866)(P = 0.029)、paaJ(K02615)(P = 0.027)及びpaaF(K01692)(P = 0.0093)であった。paaG(K15866)の主な複合種はMegamonas hypermegaleであった。paaJ(K02615)及びpaaF(K01692)の複合種は、Escherichia coli K-12 MG1655 及びKlebsiella pneumoniae subsp. pneumoniae MGH 78578であった。AAA生合成経路は、KOの増加及び減少の両方を示した。2つのPhe生合成遺伝子、即ち、シクロヘキサジエニルデヒドラターゼ(pheC、K01713)(P = 5.1e-06)及び芳香族アミノ酸トランスアミナーゼ(tyrB、K00832)(P = 0.0414)は、「ステージ0」において有意に増加した。K00832は、他のアミノ酸の生合成/分解にも関与している。Trp生合成経路に関与する他の酵素は、「ステージIII / IV」において大部分が減少した。メタボロームデータは、糞便Pheが「ステージ0」において最初に増加し、「ステージI / II」及び「ステージIII / IV」において同様の増加レベルにとどまることを示した(図2B)。
【0042】
CH4(メタン)とCRCとの関係は依然として議論の余地があるが、CRCにおけるメタンガスの影響/役割については数多くの研究が議論している(参考文献23)。「ステージIII / IV」において多数のメタン生成KOの著しい増加が観察された。このようなKOには、K00390 cysH、ホスホアデノシンホスホスルフェートレダクターゼ(P = 0.0071)が含まれるが、この酵素は、3つのメタン生成経路、即ち、CO2→CH4、 CH4O→CH4、メチルアミン/ジメチルアミン/トリメチルアミン→CH4に関与する(図4I)。これらのKOの主要な複合種は、古細菌であるMethanobrevibacter smithiiであるが、この古細菌は、健康な日本人では他の国に比べて極めて少ないと報告されている(参考文献24)。最後に、異化型亜硫酸レダクターゼαサブユニット(K11180)は、遺伝毒性硫化水素の産生に関与するが、このタンパク質は、「複数のポリープ」(P = 0.0080)、「ステージ0」(P = 0.013)、及び「ステージIII / IV 」(P = 0.0033)で増加した(図4H)。このKOの優性遺伝子は、硫酸還元細菌であるDesulfovibrio vulgarisを構成する。
【0043】
(8)CRC患者における手術前後の微生物組成の変化
28のCRC(ステージI / II / III / IV)において、同じ患者の治療前後(手術後約1年)のメタゲノムデータが得られた。本発明者は、手術前後で微生物組成を比較した。F. nucleatum spp.、P. stomatis、Porphyromonas asaccharolytica及びM. smithiiの相対存在量は、「ステージI / II / III / IV」における外科手術による腫瘍除去後に減少した(図5B)。興味深いことに、Streptococcus salivarius subsp. salivariusは、手術後に増加した。この細菌は、コントロールと比較して、「ステージIII / IV」において減少する種として以前に報告されている(参考文献12)。
【0044】
(9)Bilophila wadsworthiaとDCAとの関係
この記事の前半で述べたように、DCAは「健康な」コントロールと比較して「複数のポリープ」で増加した。この代謝産物と相関する可能性のある種を探索するために、本発明者は種と代謝産物との間の相関関係を調べた。その結果、Bilophila wadsworthiaがDCAとの最も高い相関係数(CC = 0.641)を示した。相関係数は、他のステージでも肯定的であったが、「複数のポリープ」のように高くはなかった。Bilophila wadsworthiaは、タウロコール酸を含有する培地中で増殖することが知られている(参考文献32)。タウロコール酸は、DCA前駆体(コール酸)のコンジュゲート体である。
【0045】
(C)考察
本発明者は、メタゲノム解析やメタボローム解析による腸内環境と大腸癌との関係について大規模な研究を行ってきた。メタボローム解析は、宿主及び微生物由来の代謝物質プロファイルに関する新しい情報をもたらす。「健康な」コントロールを含むすべての被験者は大腸内視鏡検査を受けた。Megamonasはすべてのグループで日本人の約20%で非常に存在量の多い属として検出されたが、興味深いことに被験者の大部分(約80%)では検出されなかった。Megamonasはヨーロッパやアメリカの腸内微生物研究において優性な属として以前に報告されておらず、Megamonasは新しいエンテロタイプであり、おそらくアジアの集団に特徴的であることを示唆している(参考文献26)。本発明者は、多段階発癌のより進んだステージに加えて、「複数のポリープ」及び上皮内癌(「ステージ0」)に、腸内細菌叢及びメタボロームの変化が現れたことを示した。さらに重要なことに、腸内細菌叢の変化はステージによって大きく異なっていた。CRCの前駆ステージにおいて、DCAは糞便中に有意に増加する。DCAはDNA損傷の増加を引き起こし、突然変異を増加させることが知られており(参考文献27)、動物実験では胆汁酸の投与により腸内の腫瘍発生率が高くなることが示されている(参考文献27、28)。さらにDCAは、APCMin/+ マウスの小腸及び大腸に粘膜癌を引き起こし、レプチン欠損(ob/ob)マウスの肝臓に多発性腫瘍を引き起こすことが最近報告されている(参考文献29、30)。 Bilophila wadsworthiaはその成長が胆汁によって促進されるが(参考文献13)、この細菌は本研究においてDCAと有意に相関していた唯一の種であった(図5A)。Desulfovibrio(例えば、D. vietnamensis)及びBilophila wadsworthia(Desulfovibrio spp.の近縁種)は、「ステージ0」において有意に増加した。それらは、硫化物産生細菌であることがよく知られており(参考文献31)、また、遺伝毒性硫化水素の産生に関与する異化型亜硫酸レダクターゼαサブユニット(K11180)を有している。高レベルのタウリン抱合化を促進する肉の多い食事は、Bilophila wadsworthiaのような硫酸還元細菌の異常増殖を引き起こすが、これは病理学的な腸の状態、例えば、腫瘍形成に関連する(参考文献21、32、33)。Bilophila wadsworthiaは、タウロコール酸の存在下でIl10-/- マウスにおける大腸炎の形成について研究されている(参考文献32)。最近、Bilophila wadsworthiaは、健常人と比べてCRCのアフリカ系アメリカ人において有意に存在量が多いと報告されている(参考文献34)。O'Keefeらは、通常低脂肪、高繊維食である農村部の南アフリカのズールー族が肉や動物性脂肪の多い食事に切り替えると、結腸内の硫化物産生細菌が増加することを報告した(参考文献35)。これらの微生物は腸内生態系の正常な一部であるが、結腸直腸内のこれらの細菌及び代謝産物の過剰は炎症をもたらし、DNAを損傷させる可能性がある。以前の研究と併せて考察すると、Desulfovibrio及びBilophila wadsworthiaが早期腫瘍形成に寄与していることが示されたが、本研究では実験的検証は行われなかった。
【0046】
この研究では、メタボローム解析に基づいて、糞便中のアミノ酸、特にBCAAが増加した。しかし、予期せぬことに、CRCにおいて、アミノ酸生合成に関与するKOは一般に減少し、アミノ酸分解に関与するKOは増加した。このことは、アミノ酸の増加が宿主(主に非癌性上皮細胞)に由来し、CRCの非常に初期のステージからの腸内微生物叢の微生物組成及び/又は遺伝子機能に影響を及ぼすことを示唆している。
【0047】
Fusobacterium nucleatumは、CRCに関係していることがよく知られている(参考文献36、37)。実際、F. nucleatum spp.は、CRCの初期ステージでは増加しなかったが、「ステージIII / IV」において増加した。しかし、F. nucleatum spp.の相対存在量は、外科手術による腫瘍除去後に劇的に減少した。
【0048】
本発明者の結果は、F. nucleatumが直接的及び特異的な発癌を増強することはできないが、おそらく出血などのCRCによる環境変化による結果として増加することを示唆している(参考文献38)。これは、「健康な」コントロールと比較して、家族性腺腫様ポリポーシスを有する術前患者において、F. nucleatumが増加しなかったという本発明者の予備データ(データは示していない、N = 15)によって裏付けられている。しかしながら、F. nucleatum及びP. stomatisは、進行したCRCを検出するための良好なバイオマーカーであり得る。対照的に、Bilophila wadsworthiaは、「Stage 0」において増加を示し、手術後にも減少しなかった。
【0049】
便潜血試験は、CRCの大量スクリーニングに日常的に使用され、大腸内視鏡検査の前に行われる。CRCの早期発見、特にステージ0の発見は、腫瘍の内視鏡的切除を可能にし、患者の生活の質を大幅に改善する。本研究では、非侵襲性がんスクリーニング検査のための腸内細菌叢指標を提案する。Pheの生合成酵素であるK01713は、「ステージ0」患者を「健康な」コントロールから区別することができる。タンパク質が肉の主要な構成要素であり、Pheやトリプトファン代謝物のようなタンパク質発酵代謝産物が潜在的に発癌性であるとされている事実は、肉摂取、タンパク質発酵及びCRCの間の可能性のあるつながりを示唆している(参考文献39)。具体的には、PAAなどのPhe代謝産物は有害な代謝物とみなされている(参考文献40、41)。
【0050】
結論として、本発明者は、多段階発癌における微生物組成、腸内細菌叢の遺伝子存在量、並びに宿主及び微生物由来代謝産物のダイナミックな変化を観察した。腸内細菌叢の構造変化は、発癌性微小環境の変化をもたらす可能性がある。さらに、本研究は、CRCの進行が、微生物全体の正味の代謝産物並びに原因となる生物の存在によって影響を受けることを強調している。本発明者は、CRCは基本的に「遺伝的」であるだけでなく「微生物的」な疾患であると考えている。
【0051】
〔実施例2〕
検体数を616サンプルに増やしてメタゲノム解析を行った。検体を、健常人(H)、複数のポリープのある者(MP)、ステージ0の大腸癌患者(S0)、ステージI及びIIの大腸癌患者(SI/II)、及びステージIII及びIVの大腸癌患者(SIII/IV)に分け、各検体中に含まれる細菌の存在量を調べた。調べた細菌は、Atopobium parvulum、Bacteroides coprocola、Bacteroides plebeius、Bifidobacterium breve、Bifidobacterium choerinum、Bifidobacterium dentium、Bifidobacterium moukalabense、Bifidobacterium pseudolongum subsp. globosum、Bifidobacterium stellenboschense、Eubacterium eligens、Fusobacterium nucleatum subsp. fusiforme、Fusobacterium nucleatum subsp. nucleatum、Fusobacterium nucleatum subsp. vincentii、Lactobacillus rogosae、Parabacteroides gordonii、Roseburia intestinalis、Solobacterium mooreiの17種類である。結果を図6〜22に示す。
【0052】
上記解析の結果、Atopobium parvulumがステージ0の大腸癌患者に多く存在することが明らかになった。そこで、このAtopobium parvulumについて更に詳しく調べた(図23)。図23Aに示すように、Atopobium parvulumの相対存在量は、ステージ0の大腸癌患者に有意に多かった。このことから、検体中のAtopobium parvulumの存在量を調べることにより、早期大腸癌かどうかを判定できる可能性がある。
【0053】
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【0054】
本明細書で引用した全ての刊行物、特許および特許出願をそのまま参考として本明細書にとり入れるものとする。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、大腸癌の検出に関連する産業分野において利用可能である。
図1A
図1A-1】
図1A-2】
図1B
図1B-1】
図2A
図2A-1】
図2B
図3A
図3B
図3C
図4A
図4A-1】
図4A-2】
図4B
図4B-1】
図4C
図4C-1】
図4D
図4D-1】
図4E
図4E-1】
図4F
図4F-1】
図4G
図4G-1】
図4H
図4I
図4I-1】
図5A
図5A-1】
図5B
図5B-1】
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図23-1】
図23-2】
【国際調査報告】