再表2019-160161IP Force 特許公報全文掲載

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2019年8月22日
【発行日】2020年12月10日
(54)【発明の名称】熱源検出装置
(51)【国際特許分類】
   G08B 17/12 20060101AFI20201113BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20201113BHJP
   G01W 1/08 20060101ALI20201113BHJP
【FI】
   G08B17/12 B
   G06T7/00 640
   G01W1/08 P
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】14
【出願番号】特願2019-572326(P2019-572326)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2019年2月19日
(31)【優先権主張番号】特願2018-27194(P2018-27194)
(32)【優先日】2018年2月19日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(72)【発明者】
【氏名】笹川 千春
(72)【発明者】
【氏名】大貝 高士
【テーマコード(参考)】
5C085
5L096
【Fターム(参考)】
5C085AA01
5C085AA03
5C085AA11
5C085AB05
5C085AC03
5C085BA31
5C085CA30
5C085FA40
5L096AA13
5L096FA32
5L096GA32
5L096GA51
(57)【要約】
この熱源検出装置(3)は、静止衛星(1)に搭載された放射計(10)の観測データを用いて、地球上の熱源を検出する熱源検出装置であって、観測データに対する、当該観測データに含まれる熱源に起因する波長分布の割合を示す熱源割合値を、プランクの法則を用いたカーブフィッティングにより算出する算出部(321)と、算出部により算出された熱源割合値に応じて熱源の存在の有無を判定する判定部(323)と、を備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
静止衛星に搭載された放射計の観測データを用いて、地球上の熱源を検出する熱源検出装置であって、
前記観測データに対する、当該観測データに含まれる前記熱源に起因する波長分布の割合を示す熱源割合値を、プランクの法則を用いたカーブフィッティングにより算出する算出部と、
前記算出部により算出された前記熱源割合値に応じて前記熱源の存在の有無を判定する判定部と、
を備える熱源検出装置。
【請求項2】
前記算出部は、前記観測データにおける、炎を伴う火災における熱源の温度に依存する波長分布の割合と、煙のみを伴う火災における熱源の温度に依存する波長分布の割合とを、前記熱源割合値として算出する、請求項1に記載の熱源検出装置。
【請求項3】
前記算出部により算出された前記熱源割合値を時系列に格納する格納部を更に備え、
前記判定部は、前記格納部に格納された時系列の前記熱源割合値の変化率が閾値を超えた場合には、前記熱源が存在していると判定する、請求項1又は請求項2に記載の熱源検出装置。
【請求項4】
前記判定部は、前記格納部に格納された時系列の前記熱源割合値を一定区間ごとに平均化した前記一定区間の平均値を算出し、算出した前記平均値の変化率が前記閾値を超えた場合には、前記熱源が存在していると判定する、請求項3に記載の熱源検出装置。
【請求項5】
前記算出部は、有炎状態、無炎状態、及び無火災状態に応じて定められた所定の温度に基づく第1波長分布D1、第2波長分布D2、及び第3波長文法D3をそれぞれ設定し、前記観測データの輝度放射G=aD1+bD2+cD3を満たす係数a,b及びcを非線形最小二乗法により算出し、前記熱源割合値を、a/(a+b+c)、b/(a+b+c)、又はc/(a+b+c)とする、請求項1に記載の熱源検出装置。
【請求項6】
前記算出部は、非線形最小二乗法によるカーブフィッティングを行うことでesfを算出し、算出したesfに基づく放射輝度と前記観測データの前記放射輝度Gとの差が一定の値以下に収束するまで、前記温度を調整しつつ、この手順を繰り返し行う、請求項5に記載の熱源検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
熱源検出装置に関する。
本願は、2018年2月19日に日本に出願された特願2018−027194号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
従来、低軌道衛星から取得された観測データを用いてホットスポット(熱源)をモニタすることにより地球上における森林火災を検知する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】日本国特開2003−296702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、低軌道衛星から取得される観測データは時間分解能が低い。そのため、森林火災が発生した場合であっても、火災発生後半日から1日経過後に当該森林火災を検知することになり、火災検知が遅れる可能性がある。そこで、静止衛星から取得される観測データが低軌道衛星よりも時間分解能が高いことから、この観測データを用いて火災検知を行うことが考えられる。ただし、静止衛星から取得される観測データは、空間分解能が低く、小規模火災の特定が難しい場合がある。
【0005】
このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、早期に小規模火災を検出可能な熱源検出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の態様は、静止衛星に搭載された放射計の観測データを用いて、地球上の熱源を検出する熱源検出装置であって、前記観測データに対する、当該観測データに含まれる前記熱源に起因する波長分布の割合を示す熱源割合値を、プランクの法則を用いたカーブフィッティングにより算出する算出部と、前記算出部により算出された前記熱源割合値に応じて前記熱源の存在の有無を判定する判定部と、を備える。
【0007】
本開示の第2の態様は、前記第1の態様の熱源検出装置において、前記算出部は、前記観測データにおける、炎を伴う火災における熱源の温度に依存する波長分布の割合と、煙のみを伴う火災における熱源の温度に依存する波長分布の割合とを、前記熱源割合値として算出する。
【0008】
本開示の第3の態様は、前記第1又は第2の態様の熱源検出装置が、前記算出部により算出された前記熱源割合値を時系列に格納する格納部を更に備え、前記判定部は、前記格納部に格納された時系列の前記熱源割合値の変化率が閾値を超えた場合には、前記熱源が存在していると判定する。
【0009】
本開示の第4の態様は、前記第3の態様の熱源検出装置において、前記判定部は、前記格納部に格納された時系列の前記熱源割合値を一定区間ごとに平均化した前記一定区間の平均値を算出し、算出した前記平均値の変化率が前記閾値を超えた場合には、前記熱源が存在していると判定する。
【0010】
本開示の第5の態様は、前記第1の態様の熱源検出装置において、前記算出部が、有炎状態、無炎状態、及び無火災状態に応じて定められた所定の温度に基づく第1波長分布D1、第2波長分布D2、及び第3波長文法D3をそれぞれ設定し、前記観測データの輝度放射G=aD1+bD2+cD3を満たす係数a,b及びcを非線形最小二乗法により算出し、前記熱源割合値を、a/(a+b+c)、b/(a+b+c)、又はc/(a+b+c)とする。
【0011】
本開示の第6の態様は、前記第5の態様の熱源検出装置において、前記算出部が、非線形最小二乗法によるカーブフィッティングを行うことでesfを算出し、算出したesfに基づく放射輝度と前記観測データの前記放射輝度Gとの差が一定の値以下に収束するまで、前記温度を調整しつつ、この手順を繰り返し行う。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、早期に小規模火災を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本開示の一熱源検出装置を備えた熱源検出システムの概略構成の一例を示す図である。
【図2】本開示の一熱源検出装置の概略構成の一例を示す図である。
【図3】本開示の一算出部における有炎状態、無炎状態、及び無火災状態の各波長分布が含まれる割合の算出方法を示す図である。
【図4】本開示の一特定部における火災規模の特定方法を示す図である。
【図5】本開示の一熱源検出装置の動作の流れを示すフローチャートである。
【図6】本開示の一熱源割合値における平均値の変化率の算出方法を示す図である。
【図7A】本開示の一判定部における火災の有無の判定方法を説明する図である。
【図7B】本開示の一判定部における火災の有無の判定方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示の一熱源検出装置を、図面を用いて説明する。
【0015】
図1は、本開示の一熱源検出装置3を備えた熱源検出システムAの概略構成の一例を示す図である。熱源検出システムAは、地球上における熱源を検出するシステムである。
【0016】
図1に示すように、熱源検出システムAは、静止衛星1、データセンター2、及び熱源検出装置3を備える。
【0017】
静止衛星1は、赤道上空の高度約36000kmの静止軌道に配置された衛星であり、地球の自転と同じ周期で公転する。例えば、静止衛星1は、静止気象衛星「ひまわり」である。この静止衛星1は、可視赤外放射計10を搭載しており、所定の波長帯(観測バンド)における放射輝度(観測データ)を一定周期ごとに計測することができる。この一定周期とは、可視赤外放射計10の計測周期である。
例えば、可視赤外放射計10は、計測周期を10分として、静止衛星1から見える範囲における観測データを計測することができる。
【0018】
したがって、静止衛星1は、低軌道衛星(地上から高度数百キロメートル程度で地球を周回する衛生)よりも時間分解能が高い観測データを取得することができる。静止衛星1は、観測データを取得すると、その取得した観測データを地球上のデータセンター2に送信する。
【0019】
データセンター2は、地球上に設置されている。このデータセンター2は、静止衛星1から送信された観測データを受信及び管理する。例えば、データセンター2は、観測データ(気象データ)を公開している公的又は私的機関である。
【0020】
熱源検出装置3は、静止衛星1からデータセンター2を介して得られる観測データに基づいて、地球上の熱源を検出する装置である。例えば、この熱源とは、火災(例えば、森林火災)や噴火等の熱源である。したがって、熱源検出装置は、人のいない(又は少ない)場所等の火災の発見が難しい場合に意義を有する。本実施形態では、熱源検出装置3が、火災の有無を検知する場合について説明する。
【0021】
例えば、熱源検出装置3は、森林の火災を検出する場合にあたって、その検出対象に火災が発生している状態(以下、「火災状態」という。)又は火災が発生していない状態(以下、「無火災状態」という。)であるか否かを判定する。ここで、火災状態とは、炎を伴う火災の状態(以下、「有炎状態」という。)と煙のみを伴う火災が発生している状態(以下、「無炎状態」という。)がある。この無炎状態とは、火災の初期状態に起こる無炎燃焼(いわゆる、くん焼)により白煙が発生している状態又は不完全燃焼により黒煙が発生している状態である。なお、炎を伴う火災が生じているが、発生した煙により火炎が静止衛星1から観測できない状態を、「無炎状態」に含めてもよい。
【0022】
したがって、熱源検出装置3は、静止衛星1から得られる観測データに基づいて、検出対象が有炎状態又は無炎状態を有するか否かを判定し、有炎状態又は無炎状態を有する場合には、火災が発生していると判定する。ただし、静止衛星1から得られる観測データは、低軌道衛星から得られる観測データよりも空間分解能が低く、小規模火災の有無の判定が難しい場合がある。そこで、本実施形態の特徴の一つは、静止衛星1から得られる観測データから、プランクの法則を用いたカーブフィッティングにより、空間分解能よりも高い分解能で情報(有炎状態、無炎状態、及び無火災状態の情報)を抽出可能な点にある。これにより、熱源検出装置3は、静止衛星1から得られる観測データに基づいて、初期段階の小規模火災を検知することができる。
【0023】
以下に、本開示の一熱源検出装置3の概略構成について、具体的に説明する。図2は、本開示の一熱源検出装置3の概略構成の一例を示す図である。
【0024】
図2に示すように、熱源検出装置3は、通信部31、検出部32、表示部33、及び報知部34を備える。
【0025】
通信部31は、データセンター2と通信することで情報を送受する。例えば、通信部31とデータセンター2との通信ネットワークは、無線通信の伝送路であってもよく、無線通信の伝送路及び有線通信の伝送路の組み合わせであってもよい。また、この通信ネットワークは、携帯電話回線網などの移動体通信網、無線パケット通信網、インターネット及び専用回線又はそれらの組み合わせであってもよい。
【0026】
検出部32は、通信部31を介してデータセンター2から観測データを取得する。そして、検出部32は、取得した観測データに基づいて火災状態の有無を判定する。ここで、観測データについて、説明する。
【0027】
観測データは、ピクセルごとに、波長(wave length)の情報と、放射輝度(radiant emission)の情報とを有する。したがって、検出部32は、ピクセルごとに、波長の情報と放射輝度の情報とを取得することになる。この1ピクセルにおける放射輝度は、検出対象(例えば、森林)のある特定のエリア(以下、「検出エリア」という。)から放射される電磁波のデータに相当する。したがって、あるピクセルの観測データから火災状態が検出された場合には、そのピクセルに対応する検出エリアに火災が発生していることを示すことになる。なお、観測データにおける1ピクセルに相当する地球の表面の領域は、例えば2km×2kmである。
【0028】
ところで、検出エリアに火災が発生した場合には、ウィーンの変位則により放射輝度のピーク波長が短波長側に移動することが知られている。したがって、検出エリアが火災状態において得られる放射輝度のピーク波長は、無火災状態において得られる放射輝度のピーク波長よりも短波長側に移動することになる。また、火災状態である場合においても、有炎状態と無炎状態とでは熱源の温度が異なり、有炎状態の方が無炎状態よりも熱源の温度が高い。したがって、検出エリアが有炎状態において得られる放射輝度のピーク波長は、無炎状態において得られる放射輝度のピーク波長よりも短波長側に移動することになる。したがって、有炎状態、無炎状態、無火災状態の放射輝度のピーク波長がそれぞれλ1、λ2、λ3で表される場合には、ピーク波長λ1<ピーク波長λ2<ピーク波長λ3の関係となる。
【0029】
ただし、検出エリアは、有炎状態、無炎状態、及び無火災状態の少なくとも一以上の状態が含まれ得ることになる。すなわち、検出エリア内において有炎状態だけしか存在しない場合もあれば、無炎状態や無火災状態をも存在する場合もある。したがって、ピクセルごとに得られた放射輝度は、有炎状態の波長分布(ピーク波長λ1を有する波長分布)、無炎状態の波長分布(ピーク波長λ2を有する波長分布)、及び無火災状態の波長分布(ピーク波長λ3を有する波長分布)の少なくとも一以上の波長分布を含むことになる。したがって、検出部32は、ピクセルごとの観測データを、有炎状態、無炎状態、及び無火災状態の各状態の波長分布へ分離し、有炎状態及び無炎状態の波長分布の有無を判定することにより、検出対象の火災検出を行う。
【0030】
以下に、本開示の一検出部32における火災検出の動作を実行するための機能部について説明する。
【0031】
検出部32は、算出部321、格納部322、判定部323、及び特定部324を備える。
なお、検出部32はコンピュータから構成されており、このコンピュータは、CPU(中央処理装置)、記憶装置、及び入出力装置等を備える。記憶装置は、RAM(Random Access Memory)等の揮発性メモリ、ROM(Read Only Memory)等の不揮発性メモリ、HDD(Hard Disk Drive)、及びSSD(Solid State Drive)等のうちの1以上を含む。入出力装置は、有線又は無線で通信部31と信号やデータ(観測データ等)のやり取りを行う。コンピュータは、記憶装置に保存されたプログラム等に基づいて所定の機能を果たすことができる。検出部32が1つのコンピュータから構成されて、算出部321、格納部322、判定部323、及び特定部324が当該コンピュータの各機能ブロックとして構成されてもよいし、算出部321、格納部322、判定部323、及び特定部324がそれぞれ独立したコンピュータから構成されて、複数のコンピュータ間で信号やデータをやり取りするよう構成されてもよい。
【0032】
算出部321は、通信部31を介してデータセンター2から観測データを取得する。そして、算出部321は、プランクの法則による黒体からの電磁輻射の放射輝度の波長分布が温度に依存する特性を活用し、カーブフィッティングにより放射輝度波長の分布を有炎状態、無炎状態、及び無火災状態の各波長分布へ分離する。具体的には、図3に示すように、算出部321は、ピクセルごとに得られた放射輝度(図3におけるG)において、当該放射輝度に対する有炎状態、無炎状態、及び無火災状態の各波長分布が含まれる割合を、プランクの法則を用いたカーブフィッティングにより算出する。
例えば、算出部321は、プランクの法則を用いた非線形最小二乗法によりカーブフィッティングを行ってもよい。この場合、算出部321は、通信部31を介してデータセンター2から観測データのピクセル毎の放射輝度G(図3)を取得し、有炎状態、無炎状態、及び無火災状態に応じて定められた所定の温度(温度初期値)に基づく第1波長分布D1(ピーク波長λ1を有する波長分布)、第2波長分布D2(ピーク波長λ2を有する波長分布)、及び第3波長文法D3(ピーク波長λ3を有する波長分布)をプランクの法則に基づいてそれぞれ設定し、輝度放射G=aD1+bD2+cD3を満たす係数a,b及びcを非線形最小二乗法により算出し、観測データに対する当該観測データに含まれる熱源に起因する波長分布の割合を示す熱源割合値を、a/(a+b+c)、b/(a+b+c)、又はc/(a+b+c)とする。なお、非線形最小二乗法によるカーブフィッティングを行うことで、検出エリアにおける火災の割合を示すesf(emission scaling factor)を算出し、算出したesfに基づいて温度を最適化しつつ、非線形最小二乗法を行ってもよい。言い換えれば、有炎状態、無炎状態、及び無火災状態における温度初期値を用いて非線形最小二乗法によるカーブフィッティングを行うことでesfを算出し、算出したesfに基づく放射輝度と観測データの放射輝度Gとの差が一定の値以下に収束するまで、温度を調整しつつ、この手順を繰り返し行ってもよい。esfは、例えば0以上1以下の値である。一定の値は、必要とする検出精度や計算時間などに鑑みて、適宜設定すればよい。
【0033】
そして、算出部321は、算出した有炎状態、無炎状態、及び無火災状態の各波長分布の割合(熱源割合値)を格納部322に格納する。なお、以下の説明において、有炎状態における波長分布の割合を有炎状態割合値(a/(a+b+c)で示される)、無炎状態における波長分布の割合を無炎状態割合値(b/(a+b+c)で示される)、無火災状態における波長分布の割合を無火災状態割合値(c/(a+b+c)で示される)と称する。
【0034】
格納部322は、算出部321がピクセルごとに算出した有炎状態割合値、無炎状態割合値、及び無火災状態割合値を時系列に格納する。すなわち、格納部322には、有炎状態割合値、無炎状態割合値、及び無火災状態割合値が、静止衛星1のrevisit timeごとに時系列で格納される。
【0035】
判定部323は、有炎状態割合値又は無炎状態割合値に基づいて、熱源の存在、すなわち火災の発生の有無を判定する。例えば、判定部323は、有炎状態割合値及び無炎状態割合値の少なくともいずれかの割合値が所定の閾値以上である場合には、火災が発生していると判定する。なお、有炎状態割合値及び無炎状態割合値のそれぞれの閾値は同一でもよいし、異なっていてもよい。また、判定部323は、有炎状態割合値及び無炎状態割合値がいずれも閾値以上である場合に、火災が発生していると判定してもよい。
【0036】
ところで、検出対象の上空に雲が覆い被さっている場合には、熱源からの放射輝度が遮られる場合があり、熱源割合値が正確に算出されない場合がある。したがって、判定部323は、格納部322に格納された時系列の有炎状態割合値及び無炎状態割合値のそれぞれの変化率に応じて火災の発生を判定してもよい。
【0037】
例えば、判定部323は、格納部322に格納された時系列の有炎状態割合値及び無炎状態割合値のそれぞれの平均値を一定区間ごとに算出する。そして、判定部323は、一定区間ごとに算出した平均値の変化率を求める。この変化率としては、例えば、現在の区間の平均値と1つ前の区間の平均値との差分や、現在の区間の平均値と1つ前の区間の平均値との差分を現在の区間の平均値で除して得た値が挙げられる。判定部323は、一定区間ごとに算出した有炎状態割合値の平均値の変化率が閾値(第1変化率閾値)を超えた場合には、火災が発生したと判定する。また、判定部323は、一定区間ごとに算出した無炎状態割合値の平均値の変化率が変化率閾値(第2変化率閾値)を超える場合には、火災が発生したと判定する。すなわち、判定部323は、格納部322に格納された時系列の熱源割合値を一定区間ごとに平均化したその一定区間の平均値を算出し、算出した平均値の変化率が変化率閾値を超えた場合には、熱源が存在していると判定する。なお、第1変化率閾値と第2変化率閾値変化とは異なっていてもよいし、同一であってもよい。また、有炎状態割合値や無炎状態割合値の平均値の変化率が複数回続けて閾値を超えた場合に、火災が発生したと判定してもよい。
【0038】
特定部324は、判定部323により火災が発生した判定された場合には、当該火災の火災エリア及び火災規模を予測する。例えば、特定部324は、どのピクセルの観測データによって火災の発生が判定されたかを特定し、その特定したピクセルに対応する検出エリアを火災エリアと特定する。また、特定部324は、判定部323により火災が発生した判定された場合には、有炎状態割合値や無炎状態割合値に基づいて、その火災エリアの火災規模を特定する。
【0039】
例えば、図4に示すように、有炎状態割合値が0.01%、無炎状態割合値が49.9%、無火災状態割合値が50%であり、静止衛星1の空間分解能が2km×2kmである場合には、特定部324は、特定した2km×2kmの火災エリアにおいて、0.0004km2(400m2)が有炎状態であり、1.996km2が無炎状態であると特定することができる。
【0040】
表示部33は、検出対象を示す画像(例えば、検出対象の俯瞰地図)を表示画面に表示するとともに、検出部32により火災が発生したと判定された場合には、表示画面上における特定部324で特定された火災エリアに火災が発生したことを示す表示を行う。例えば、表示部33は、表示画面上における特定部324で特定された火災エリアを、火災が発生していない場合とは異なる色で表示する。
【0041】
報知部34は、判定部323により火災が発生した判定された場合に報知する。ここで、報知とは、電子メールやLINE(登録商標)等のSNS(Social Networking Service)でもよいし、ブザーでもよいし、音声でもよいし、LED(Light Emitting Diode)の点灯又は点滅であってもよい。また、報知部34は、判定部323により火災が発生した判定された場合に、その火災が発生したことを知らせる旨の情報を管理者に有線又は無線で送信することで報知してもよい。この管理者とは、熱源検出装置3を管理する管理者でもうよいし、火災エリアを管理する管理者であってもよい。
【0042】
以下に、本開示の一熱源検出装置3の動作について、図5〜図7Bを用いて説明する。熱源検出装置3は、静止衛星1からデータセンター2を介して検出対象における観測データを取得する(ステップS101)。
【0043】
熱源検出装置3は、静止衛星1から取得した観測データにおいて、ピクセルごとに有炎状態、無炎状態、及び無火災状態の各状態の波長分布へ分離する(ステップS102)。そして、熱源検出装置3は、分離した有炎状態、無炎状態、及び無火災状態の各状態の波長分布が静止衛星1から得られた観測データに対してどの程度含まれているかを示す割合値を算出して格納部322に時系列で格納する(ステップS103)。
【0044】
ここで、熱源(例えば、火災)に起因する波長分布の観測データの割合値(熱源割合値)は、有炎状態及び無炎状態の各状態の波長分布の割合値である。したがって、有炎状態及び無炎状態の各状態の波長分布の割合値(有炎状態割合値、無炎状態割合値)のそれぞれを用いて、火災の発生が判定される。
【0045】
熱源検出装置3は、格納部322に格納された時系列の有炎状態割合値及び無炎状態割合値のそれぞれの平均値を一定区間ごとに算出する(ステップS104)。そして、判定部323は、一定区間ごとに算出した平均値の変化率を求める(ステップS105)。
【0046】
そして、熱源検出装置3は、一定区間ごとに算出した有炎状態割合値及び無炎状態割合値のそれぞれの平均値の変化率が所定値を超えるか否かを判定する(ステップS106)。そして、熱源検出装置3は、有炎状態割合値及び無炎状態割合値のそれぞれの平均値の変化率の少なくともいずれかが閾値を超える場合には、火災が発生したと判定して(ステップS107)、その旨を報知する(ステップS108)。一方、熱源検出装置3は、有炎状態割合値及び無炎状態割合値のそれぞれの平均値の変化率も閾値を超えない場合には、火災が発生していないと判定する(ステップS109)。
【0047】
例えば、図6に示すように、熱源検出装置3は、一定区間ごとに熱源割合値の平均値μA、μB、μC、μDを算出した場合には、平均値μAから平均値μBへの変化率Δ1、平均値μBから平均値μCへの変化率Δ2、平均値μCから平均値μDへの変化率Δ3をそれぞれ算出する。そして、図7A及び7Bに示すように、熱源検出装置3は、平均値μAから平均値μBへの変化率Δ1が大きい場合(例えば、閾値を超える場合)には、火災が発生したと判定する(図7A)。一方、図に示すように、熱源検出装置3は、平均値μAから平均値μBへの変化率Δ1が小さい場合(例えば、閾値を超えない場合)には、火災が発生してないと判定する(図7B)。
【0048】
以上、この開示の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られず、この開示の要旨を逸脱しない範囲の設計等も本開示の範囲に含まれる。
【0049】
(変形例1)実施形態では、報知部34は、判定部323により火災が発生した判定された場合に、その火災が発生したことを知らせる旨の情報と、特定部324で特定された当該火災の火災エリア及び火災規模を、火災エリアの管理者の通信端末に通知してもよい。これにより、管理者は、熱源検出装置3から通知された場合には、火災エリアに対して即座に消火活動を行うことができる。また、報知部34は、火災エリアにおいて有炎状態や無炎状態がどの程度含まれているかを火災エリアの管理者の通信端末に通知してもよい。これにより、管理者は、火災エリアの状態に応じた消火活動や非難指示を行うことができる。
【0050】
(変形例2)実施形態では、判定部323は、格納部322に格納された時系列の熱源割合値を一定区間ごとに平均化した一定区間の平均値を算出したがこれに限定されない。例えば、判定部323は、格納部322に格納された時系列の熱源割合値を移動平均してもよいし、加重平均してもよい。この場合には、判定部323は、格納部322に格納された時系列の熱源割合値を移動平均又は加重平均した平均値又はその平均値の変化率が所定の閾値を超える場合に、火災が発生したと判定する。また、判定部323は、格納部322に格納された時系列の熱源割合値を一定区間ごとに中央値や最頻値を計算してもよい。この場合には、判定部323は、その中央値や最頻値が所定の閾値を超えた場合に火災が発生したと判定する。
【0051】
上述したように、熱源検出装置3は、静止衛星1から送られてくる観測データから、当該観測データに含まれる熱源に起因する波長分布の割合(熱源割合値)を、プランクの法則を用いたカーブフィッティングにより算出する。そして、熱源検出装置3は、その算出した熱源割合値に応じて熱源の存在の有無を判定する。
【0052】
このように構成すれば、静止衛星1からの観測データの空間分解能が低くても、その空間分解能よりも狭い検出エリアの火災を高頻度でモニタすることができる。したがって、熱源検出装置3は、早期に小規模火災を検出することができる。
【0053】
なお、本熱源検出装置3は、熱源割合値をプランクの法則を用いたカーブフィッティングにより算出する制御及び熱源の存在の有無を判定する制御に関する各種処理を行う、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されたプログラムをインストールし、このプログラムをコンピュータに実行させることで、構成してもよい。つまり、コンピュータに熱源割合値をプランクの法則を用いたカーブフィッティングにより算出する制御及び熱源の存在の有無を判定する制御に関する各種処理を行うプログラムを実行させることにより、熱源検出装置3が備える各部としてコンピュータを機能させることで、熱源検出装置3を構成してもよい。
コンピュータはCPU、ROM、RAM、EEPROM(登録商標)等の各種メモリ、通信バス及びインタフェースを有し、予めファームウェアとしてROMに格納された処理プログラムをCPUが読み出して順次実行することで、熱源検出装置3として機能する。
【0054】
実施形態では、算出部321は、非線形最小二乗法を用いたカーブフィッティングにより放射輝度波長の分布を有炎状態、無炎状態、及び無火災状態の3つの波長分布へ分離しているが、本開示はこれに限定されず、算出部321は、非線形最小二乗法を用いたカーブフィッティングにより放射輝度波長の分布を火災状態(有炎状態及び無炎状態を含む)並びに無火災状態の2つの波長分布へ分離するように構成されてもよい。
【符号の説明】
【0055】
A 熱源検出システム
1 静止衛星
2 データセンター
3 熱源検出装置
10 可視赤外放射計(放射計)
32 検出部
321 算出部
322 格納部
323 判定部
324 特定部
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【国際調査報告】

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