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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2019年9月6日
【発行日】2020年12月17日
(54)【発明の名称】光電変換素子
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/054 20140101AFI20201120BHJP
   H01L 31/07 20120101ALI20201120BHJP
【FI】
   H01L31/04 620
   H01L31/06 350
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】22
【出願番号】特願2020-503656(P2020-503656)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2019年3月1日
(31)【優先権主張番号】特願2018-36992(P2018-36992)
(32)【優先日】2018年3月1日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2018-197459(P2018-197459)
(32)【優先日】2018年10月19日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】花村 克悟
(72)【発明者】
【氏名】磯部 和真
(72)【発明者】
【氏名】宇野 智裕
(72)【発明者】
【氏名】徳丸 慎司
(72)【発明者】
【氏名】小林 孝之
【テーマコード(参考)】
5F151
【Fターム(参考)】
5F151AA08
5F151BA18
5F151CB08
5F151CB15
5F151DA05
5F151FA16
5F151FA23
5F151GA03
(57)【要約】
光電変換素子自体の構造で光を選択的に反射することができる光電変換素子を提供する。
光電変換素子は、光起電力効果により光を電力に変換する半導体を用いた光電変換素子であって、半導体からなる半導体層と、半導体層の表面に形成された金属層である表側金属層と、半導体層の裏面に形成された金属層である裏側金属層と、を備え、表側金属層、半導体層および裏側金属層によってMSM構造の共振器が形成されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光起電力効果により光を電力に変換する半導体を用いた光電変換素子であって、
前記半導体からなる半導体層と、前記半導体層の表面に形成された金属層である表側金属層と、前記半導体層の裏面に形成された金属層である裏側金属層と、を備え、
前記表側金属層、前記半導体層および前記裏側金属層によってMSM構造の共振器が形成されている、
光電変換素子。
【請求項2】
前記表側金属層は、部分的なパターンであり、
前記裏側金属層は、ベタパターンである、
請求項1に記載の光電変換素子。
【請求項3】
前記表側金属層は、部分的かつ連続的なパターンである、
請求項1または請求項2に記載の光電変換素子。
【請求項4】
前記表側金属層は、メッシュ状のパターンである、
請求項3に記載の光電変換素子。
【請求項5】
前記半導体は、ガリウムアンチモンであり、
前記半導体層の厚みは、50nm以上1000nm以下である、
請求項4に記載の光電変換素子。
【請求項6】
前記表側金属層の厚みは、80nm以上1000nm以下である、
請求項4に記載の光電変換素子。
【請求項7】
前記半導体は、ガリウムアンチモンであり、
前記表側金属層の開口率は、30%以上97%以下である、
請求項4に記載の光電変換素子。
【請求項8】
前記表側金属層のメッシュ状のパターンの開口部は、矩形である、
請求項4〜請求項7の何れか一項に記載の光電変換素子。
【請求項9】
前記表側金属層のメッシュ状のパターンの開口部は、円形である、
請求項4〜請求項7の何れか一項に記載の光電変換素子。
【請求項10】
前記表側金属層は、Au層、Ag層、Au合金層またはAg合金層である、
請求項1〜請求項9の何れか一項に記載の光電変換素子。
【請求項11】
前記表側金属層は、各ブロック内で同一パターンが繰り返された矩形ブロックが縦横に複数配列された複合パターンである、
請求項1〜請求項10の何れか一項に記載の光電変換素子。
【請求項12】
前記半導体の感度領域における反射率の平均が30%以下である、
請求項1〜請求項11の何れか一項に記載の光電変換素子。
【請求項13】
前記半導体は、ガリウムアンチモンであり、
波長0.8〜1.8μmにおける反射率の平均が30%以下である、
請求項1〜請求項11の何れか一項に記載の光電変換素子。
【請求項14】
前記半導体は、ガリウムアンチモンであり、
波長0.8〜1.8μmにおける反射率の平均が30%以下であり、
波長1.8〜5.0μmにおける反射率の平均が90%以上である、
請求項1〜請求項11の何れか一項に記載の光電変換素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光電変換素子に関する。
【背景技術】
【0002】
光起電力効果により光を電力に変換する光電変換素子を備える発電装置、すなわち熱光起電力発電装置が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第6303853号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、光電変換素子の感度領域(例えばGaSbの場合、波長域0.8〜1.8μm)は限られているのに対し、鉄鋼材料などの高温材料の輻射光は比較的広い波長域を有している。感度領域よりも波長の長い輻射光は、光電変換素子を発熱させて温度上昇させるものの発電には寄与せず、逆に光電変換素子を温度上昇させて発電効率を低下させてしまう。
【0005】
そこで、感度領域よりも波長が長い波長域の光による温度上昇を抑制するために、特定波長の光を吸収する透過性板を光電変換素子の前面に配置することが考えられる。しかしながら、適切な領域に光吸収波長域を有する透過性板は高い耐熱性を有していないことが多く、輻射熱により軟化して変形したり、変質して透過性が劣化したりするおそれがある。さらに一般的な透過性板は、半球状に入射するすべての光に対して、適切な波長選択が有効ではない場合がある。
【0006】
本開示は、光電変換素子自体の構造で光を選択的に反射することができる光電変換素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
<1>
光起電力効果により光を電力に変換する半導体を用いた光電変換素子であって、
前記半導体からなる半導体層と、前記半導体層の表面に形成された金属層である表側金属層と、前記半導体層の裏面に形成された金属層である裏側金属層と、を備え、
前記表側金属層、前記半導体層および前記裏側金属層によってMSM構造の共振器が形成されている、
光電変換素子。
【0008】
この態様のように、光を電力に変換する半導体からなる半導体層を含んだMSM(金属−半導体−金属)構造の共振器を形成することで、特定の吸収領域(共振器の構造により決まる領域)の光を選択的に電力に変換すると共にそれ以外の光を反射する光電変換素子とすることができる。
なお、「共振器が形成されている」ことは、分光光度計で分光反射率を計測し、特定の領域でのみ光を吸収していることを確認することで証明できる。
【0009】
特に、光の吸収領域を半導体の感度領域(分光感度の高い領域)にあわせることで、不要な光を反射させて光電変換素子の不要な温度上昇を抑制できる。また、光電変換素子自体の構造によって不要な光を反射するので、波長選択透過板など他の波長選択手段を用いなくてもよい。(なお、勿論用いてもよい。)
【0010】
<1の2>
前記裏側金属層は、金属製の支持体である、
<1>に記載の光電変換素子。
【0011】
金属製の支持体とは、例えば、Mo,Cu,SUSの板材である。
この態様によれば、「裏側金属層」としての金属製の支持体の上に半導体層を形成すればよいため、支持体(例えばAlの基板)の上にスパッタリング等により裏側金属層が形成されている態様と比較して、製造工程が簡易である。
なお、支持体としての板材は、好ましくは板厚が50μm以上の板材、更に好ましくは板厚が100μm以上の板材である。
【0012】
<2>
前記表側金属層は、部分的なパターンであり、
前記裏側金属層は、ベタパターンである、
<1>または<1の2>に記載の光電変換素子。
【0013】
<3>
前記表側金属層は、部分的かつ連続的なパターンである、
<1>〜<2>の何れか一項に記載の光電変換素子。
【0014】
この態様では、表側金属層が部分的であるものの連続的なパターンであるため、表側金属層を光電変換素子の電極として利用できる。すなわち、本開示における「連続的なパターン」とは、表側金属層を光電変換素子の電極として利用できる程度に、表側金属層が連続性を有しているパターンをいう。
【0015】
<4>
前記表側金属層は、メッシュ状のパターンである、
<3>に記載の光電変換素子。
【0016】
<4の2>
前記半導体は、ガリウムアンチモンであり、
前記半導体層の厚みは、50nm以上1000nm以下である、
<4>に記載の光電変換素子。
【0017】
半導体であるガリウムアンチモンからなる半導体層の厚みが50nmよりも薄いと、共振による発電向上効果が低く、また、空乏層厚さも不足するため、発電量が低くなる。一方、半導体層の厚みが1000nmよりも厚い場合の問題は、第一共振波長が長波長側にシフトするため、発電に寄与する波長領域から外れてしまい発電効率が下がること、および均一な結晶を構成する素子を安定して製造することが難しくなることである。
結晶を安定に製造でき、高い波長選択効果を得る観点から、半導体層の厚みは、より好ましくは100nm以上300nm以下であり、更に好ましくは200nm以上300nm以下である。
【0018】
<4の3>
前記表側金属層の厚みは、80nm以上1000nm以下である、
<4>または<4の2>に記載の光電変換素子。
【0019】
表側金属層の厚みが80nm未満であると、発電に寄与しない波長域の輻射光が表側金属層を透過し、光電変換素子の温度が過度に上昇してしまう。表側金属層の厚みが1000nmよりも厚いと、表側金属層を堆積により形成する時間が長くなったり、この金属層にて輻射光が吸収されて、波長選択性が低下して発電効率が低くなったりする。
表側金属層の厚みは、より好ましくは100nm以上600nm以下であり、更に好ましくは100nm以上300nm以下である。
【0020】
<4の4>
前記半導体は、ガリウムアンチモンであり、
前記表側金属層の開口率は、30%以上97%以下である、
<4>〜<4の3>の何れか一項に記載の光電変換素子。
【0021】
開口率が30%未満であると、共振領域が小さく発電量が確保できない。97%超であると、輻射によって発生したキャリアを電流として充分に取り出せない。なお、表側金属層の開口率は、より好ましくは50%以上90%以下である。
なお、表側金属層の開口率とは、半導体層の表面のうち、金属で覆われていない部分の面積の割合をいう。
【0022】
<4の5>
前記半導体は、ガリウムアンチモンであり、
前記半導体層の厚みは、50nm以上1000nm以下であり、
前記表側金属層の開口率は、30%以上97%以下である、
<4>に記載の光電変換素子。
【0023】
<4の6>
前記半導体は、ガリウムアンチモンであり、
前記半導体層の厚みは、50nm以上1000nm以下であり、
前記表側金属層の厚みは、80nm以上1000nm以下であり、
前記表側金属層の開口率は、30%以上97%以下である、
<4>に記載の光電変換素子。
【0024】
<4の7>
前記表側金属層のメッシュ状のパターンの開口部は、矩形である、
<4>〜<4の4>の何れか一項に記載の光電変換素子。
【0025】
なお、開口部が矩形の場合、開口部の一辺の長さは、300nm以上900nm以下であることが好ましい。開口部の一辺の長さが300nm未満であると、GaSbの感度領域である0.8μm以上の光を反射してしまい、発電効率が低下する。また、開口部の一辺の長さが900nm以上であると、GaSbの発電に寄与しない1.8μm以上の光も吸収し、光電変換素子の温度が過度に上昇してしまう。
【0026】
<4の8>
前記表側金属層のメッシュ状のパターンの開口部は、円形である、
<4>〜<4の4>の何れか一項に記載の光電変換素子。
【0027】
この態様では、メッシュ状開口部の幅に方向性(XY平面上での方向性)がなくなり、導波管の原理による長波長の遮蔽効果のコントロールが容易になる。
なお、ここでいう「円形」は、完全な円形に限定されず、メッシュ状開口部の幅の最小値に対する最大値の比率が1.1以下であるものを含む。例えば、短軸の長さに対する長軸の長さが1.1以下である楕円形は、ここでいう「円形」に含まれる。但し、メッシュ状開口部の幅の最小値に対する最大値の比率は、1.05以下であることが好ましい。
【0028】
<5>
前記表側金属層は、アイランド状のパターンである、
<1>または<2>に記載の光電変換素子。
【0029】
<6>
前記表側金属層は、矩形アイランド状のパターンである、
<5>に記載の光電変換素子。
【0030】
<7>
前記表側金属層は、Au層、Ag層、Au合金層またはAg合金層である、
<1>〜<6>の何れか一項に記載の光電変換素子。
【0031】
この態様では、表側金属層がAu層またはAu合金層であれば、特定領域以外の波長域での反射率が高く、かつ表側金属層が経年劣化しにくい。または、表側金属層がAg層またはAg合金層であれば、特定領域以外の波長域での反射率を高めつつ、電気伝導性が高いから、発電損失を低減することができ、材料費用も比較的安価である。
【0032】
<8>
前記表側金属層は、各ブロック内で同一パターンが繰り返された矩形ブロックが縦横に複数配列された複合パターンである、
<1>〜<7>の何れか一項に記載の光電変換素子。
【0033】
この態様では、幅広い波長域の光を吸収して発電に利用することができ、また、幅広い共振周波数を狙った設計が容易である。
【0034】
<9>
前記半導体の感度領域における反射率の平均が30%以下である、
<1>〜<8>の何れか一項に記載の光電変換素子。
【0035】
この態様では、感度領域における反射率が低い(つまり感度領域における吸収率が高い)ので、感度領域の光を効率的に発電に利用することができる。
<10>
前記半導体は、ガリウムアンチモンであり、
波長0.8〜1.8μmにおける反射率の平均が30%以下である、
<1>〜<8>の何れか一項に記載の光電変換素子。
【0036】
<11>
前記半導体は、ガリウムアンチモンであり、
波長0.8〜1.8μmにおける反射率の平均が30%以下であり、
波長1.8〜5.0μmにおける反射率の平均が90%以上である、
<1>〜<8>の何れか一項に記載の光電変換素子。
【発明の効果】
【0037】
本開示によれば、光電変換素子自体の構造で光を選択的に反射することができる光電変換素子を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】第1実施形態の光電変換素子の構造を一部切り出して示す模式的な図である。
図2】第2実施形態の光電変換素子の構造を一部切り出して示す模式的な図である。
図3】第2実施形態の光電変換素子の反射率を示すグラフである。
図4】同一パターンが繰り返されたブロックが縦横に複数配列されている様子を示す図である。
図5図4の構造の光電変換素子の反射率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0039】
〔第1実施形態〕
以下、本開示の第1実施形態について説明する。
【0040】
図1は、第1実施形態の光電変換素子10を模式的に示す図である。図1に示すように、光電変換素子10は、半導体層30の表裏が金属層20,40(表側金属層20および裏側金属層40)により挟まれたMSM(金属−半導体−金属)構造を備える。
換言すると、光電変換素子10は、半導体からなる半導体層30と、半導体層30の表面(図の上側面)に形成された金属層である表側金属層20と、半導体層30の裏面(図の下側面)に形成された金属層である裏側金属層40と、を備える。
【0041】
半導体層30を構成する半導体は、GaSb(ガリウムアンチモン)である。半導体層30は、半導体のp−n接合が形成されており、光起電力効果により光を電力に変換する機能を有する。GaSbは、バンドギャップが0.67eVであり、感度領域は0.8〜1.8μmの領域となる。
【0042】
金属層20,40を構成する金属は、例えばAu(金)またはAu合金である。AuまたはAu合金は、反射率が高く、波長選択性が高い。また、Ag層またはAg合金層であれば、特定領域以外の波長域での反射率を高めつつ、電気伝導性が高いから、発電損失を低減することができ、材料費用も比較的安価である。表側金属層20を構成する金属は、例えば、モリブデンであってもよいし、その他の金属であってもよい。
【0043】
金属層20,40のうち裏側金属層40は、半導体層30の裏面の全面(全体)に形成されたパターン(本開示では、このようなパターンをベタパターンという。)となっている。
【0044】
一方、表側金属層20は、ベタパターンではなく部分的なパターンとなっており、半導体層30の表面側には金属で覆われている部分と覆われていない部分とが存在する。金属で覆われている部分をアイランド(後述の金属要素22)と称する。具体的には、表側金属層20は、矩形状の金属要素22が縦横(図のXY方向)に規則的に配列された矩形アイランド状のパターンとなっている。矩形アイランド状のパターンの規則的な配列により、半導体の限られた領域における発電効率を高めることができ、また、後述する共振周波数を狙った設計が容易である。
【0045】
更に具体的には、表側金属層20は、半導体層30に垂直な方向から見て矩形状の金属要素22が縦横に複数配列された構造となっている。隣り合う矩形の金属要素22同士は、その辺同士を互いに平行に対向させている。金属要素22の縦横の辺が延びる方向と、複数の金属要素22が整列された方向とが同じ方向(共に図のX方向およびY方向)になっている。これにより、半導体層30の表面のうち金属で覆われていない部分が碁盤の目状に縦横に延びている。
【0046】
これら表側金属層20、半導体層30および裏側金属層40によってMSM構造の共振器が形成されており、光電変換素子10は、そのMSM構造に応じた共振周波数を有する。したがって、MSM構造を適切に設計することで、共振器の共振周波数を狙いの共振周波数に合わせることもできる。
【0047】
〔第2実施形態〕
第1実施形態では、表側金属層20が矩形アイランド状のパターンとされた例を説明したが、本開示はこれに限定されず、以下で説明する第2実施形態の光電変換素子110としてもよい。
【0048】
図2に示すように、第2実施形態の光電変換素子110の表側金属層120は、メッシュ状のパターンとされている。具体的には、半導体層30の表面に縦横に延びる金属膜が碁盤の目状に形成されている。このため、表側金属層120は、第1実施形態の表側金属層20の金属要素22と異なり、連続的なパターンとなっている。表側金属層120をメッシュ状のパターンにする場合でも、部分的には下記式に示したように、GaSb厚膜と入射光の波長との干渉により狙いの共振周波数を得ることができる。
【0049】
第2実施形態では、表側金属層120がメッシュ状のパターンであり、部分的かつ連続的なパターンとなっている。このため、表側金属層120を光電変換素子110の電極として利用することができる。これによりアイランド状よりも、光電変換素子で得られた発電を外部に効率よく取り出すことができる。
また、メッシュ状では、表側金属層が抜けている開口部を構成しており、この開口部により電磁波を閉じ込める導波管の作用が加わることがメッシュ状の特長である。これによりメッシュ状パターンでは、アイランド状よりも反射すべき長波長領域での光の吸収を抑えることができ、光電変換素子の発電効率を高めることができる。
【0050】
(共振周波数の設定)
例えば、表側金属層が図2のようにメッシュ状の場合、以下の公知の式(1)〜(5)で狙いの共振周波数を有する構造を算出することができる。式(1)〜(5)は、図2に示す構造を回路と見立てた場合、Y方向に平行な断面内にできる回路について立式されている。X方向に平行な断面内にできる回路についても、wとlとを入れ替え、X方向の周期(金属膜の配置周期)を用いることで同様に立式できる。
表側金属層120内での電子の運動はXY方向それぞれ独立に議論したものの重ね合わせであるという前提のもとに式(1)〜(5)は立式されている。
【0051】
【数1】


・・・式(1)
【数2】


・・・式(2)
【数3】


・・・式(3)
【数4】


・・・式(4)
【数5】


・・・式(5)
【0052】
なお、
h 金属膜の厚さ, m
d 誘電体(半導体)膜厚さ, m
w 開口部の横幅, m
Λ 金属膜の配置周期, m
l 開口部の奥行き, m
μ0真空の透磁率, H/m
ε0真空の誘電率, F/m
ε’Au金の比誘電率(実部), -
ε'’Au金の比誘電率(虚部), -
εGaSb誘電体(ガリウムアンチモン)の比誘電率, -
c’ 補正係数, -
δ 電磁波侵入深さ, m
c0光速度, 3.0 × 108m/s
λ 波長, m
κ 減衰係数, 1/m
ω 角周波数, rad/s
Cm金属膜と金属基板の間の静電容量, F
Cg金属膜間の静電容量, F
Lm金属の相互インダクタンス, H
Lk金属の自己インダクタンス, H
Ztotal系全体のインピーダンス, Ω
である。
【0053】
つまり、図2で示されるメッシュ状開口部の横辺長さ(横幅)w、縦辺長さ(奥行き)l、高さ(膜厚さ)h、金属膜の配置周期Λなどを、上記式で得られる適切な値に設定することで狙いの共振周波数の共振器を形成することができる。
【0054】
(実数解が存在することの説明)
例えばメッシュ状のパターンの場合に、d=300nm、l=w=200nm、h=100nm、Λ=500nmとしたとき、1.8μm付近が共振波長として算出される。このことから、半導体層30を金属層20,40により挟みこんだMSM構造において、共振器を形成することができることが判る。
【0055】
実際に光電変換素子を作製した場合、光電変換素子は、図3に示すように、波長λ(狙いの共振周波数に対応する波長)を中心とした幅のある範囲で光を吸収する。
なお、光電変換素子の反射率は、分光光度計を用いて測定することができる。
【0056】
(複合パターン)
ところで、図3の特性の光電変換素子は、約1.3〜1.8μmの領域の光を吸収し発電に利用できているが、0.8〜1.3μmの領域の光の殆どを反射している。0.8〜1.3μmの領域はGaSbの感度領域であるため、感度領域の光を反射していることとなり、この点において更なる発電の効率化を図る余地がある。そこで次に、更なる発電の効率化のための構造について、図4を用いて説明する。
【0057】
図4に示す表側金属層120は、各ブロック内で同一パターンが繰り返された矩形のブロックが縦横に複数配列された複合パターンとなっている。
つまり、同一パターンが繰り返されている範囲を1ブロックとして捉えた場合に、図4に示す表側金属層120は、複数のブロックが縦横に配列された複合パターンとなっている。
【0058】
図4には、縦横に配列された複数のブロックのうち、9つのブロック1,2,3,4,5,6,7,8,9が示されている。つまり、図4に示される範囲外でも同様の規則的パターンが続いている。各ブロックの大きさは互いに同じである。
【0059】
ブロック1,3,5,7,9内では、メッシュ状の開口部24Aが9つ縦横に配列されている(Aパターン)。一方、ブロック2,4,6,8内では、メッシュ状の開口部24Bが16つ縦横に配列されている(Bパターン)。これにより、表側金属層120は、AパターンのブロックとBパターンのブロックとが複合的に配列された複合パターンとなっている。
【0060】
Aパターンのブロックはその構造によって決まる共振周波数を有し、Bパターンのブロックはその構造によって決まる共振周波数を有する。このように製作された光電変換素子の反射率を図5に示す。
【0061】
図5に示すように、Aパターンの共振周波数に対応する波長λと、Bパターンの共振周波数に対応する波長λとにピークを持つ反射率のグラフとなる。このように、図4に示す複合パターンの表側金属層120を備える光電変換素子では、図3と比較して幅広い吸収領域を有する。
【0062】
MSM構造の共振器による吸収領域が半導体の感度領域と重なるように、光電変換素子のMSM構造を設計することで、発電効率の良い光電変換素子とすることができる。
【0063】
特に、図5では、感度領域である波長0.8〜1.8μmにおける反射率の平均が30%以下である。感度領域での反射率が低いため、感度領域の光を効率的に吸収し、発電に利用することができる。
【0064】
他方、感度領域よりも長波長の領域である波長1.8〜5.0μmにおける反射率の平均が90%以上である。感度領域よりも長波長の領域での反射率が高いため、半導体の不要な温度上昇を抑制することができる。
【0065】
(MSM構造の製造方法の一例)
光電変換素子10、110のMSM構造の製造方法は特に限定されないが、例えば以下の(1)〜(3)の手順で製造することができる。
(1)基板(図示省略)の上にスパッタリングにより裏側金属層40を形成する。
(2)裏側金属層40の上にエピタキシャル成長等の薄膜成長法でp−n接合を有する半導体層30を形成する。
(3)半導体層30の上に、スパッタリングにより表側金属層20、120を矩形アイランド状やメッシュ状のパターンで形成する。
【0066】
他の製造方法としては、金属製の支持体であるMo,Cu,SUSの板材の上に半導体層30を形成し、半導体層30の上に表側金属層20、120を形成しても良い。この場合、金属製の支持体が裏側金属層40として機能する。
【実施例】
【0067】
本発明者は、表側金属層がメッシュ状のパターンである場合(第2実施形態)における具体的な構造を検討するために実験を行った。
【0068】
素子の作製は、20×15mm角、厚さ1mmのAl基板に裏側金属層としてAuのスパッタリングを行い、次いでGaSbのpn接合を分子線エピタキシャル成長で作製し、表側金属層としてAuのスパッタリングを行い、メッシュ状のパターンの表側金属層を有する光電変換素子(図2参照)を作製した。表側金属層の厚み(h)、表側金属層の幅(H)、メッシュ開口径(l=w)、GaSbの厚み(d)は、それぞれ実施例および比較例について表1の条件とした。比較例としては、20×15mm角、厚さ1mmのAl基板にGaSbのpn接合を100nm成膜した光電変換素子を作製した。
【0069】
【表1】

【0070】
発電出力の評価は、1200℃程度に加熱した200mm角、厚み10mmの高温熱源に各素子を100mmのギャップで正対させ、各素子の発電量(単位面積当たりの出力(W/m))を測定することにより行った。各素子は、水冷銅板に貼り付けて用いた。高温熱源としては、SiC板を用いた。具体的には、加熱ヒータの上にSiC板を設置し、SiC板の温度を1200℃程度に加熱して行った。
【0071】
実施例1を基準に、発電出力が10%以上低下した実施例を評価C、±10%以内であるものを評価B、10%以上向上した実施例を評価Aとした。発電出力が著しく悪化した場合を評価Dとした。
また、光電変換素子の長時間発電出力を評価するため、比較例1以外については、水冷銅板による冷却を止めて1時間および5時間経過後の発電出力を経過時間が0の結果との変化率で比較した。発電出力の低下が5%以内である場合を評価A、5〜10%である場合を評価B、10%以上である場合を評価Cとした。
さらに、熱流束センサーを水冷銅板と裏側金属層(裏側電極)との間に貼り付け、熱流束を測定し、実施例1の熱流束よりも小さい実施例を評価B、大きい実施例を評価Cとした。
【0072】
実施例1では十分高い発電出力が得られたのに対し、比較例1では発電が著しく低かった(評価D)。これは、実施例1がMSM構造であり不要な輻射光を反射するのに対し、比較例1が不要な輻射光を吸収して素子の温度が過剰に上昇したことが大きな原因と考えられる。
【0073】
実施例1〜6では、GaSbの厚みについて評価した。
GaSbの厚みが10nmの実施例2では、発電出力が実施例1よりも低下した(評価C)。GaSbの厚みが1000nmよりも厚い実施例6では、発電出力は実施例1と大きく変わらなかったが、厚膜の成膜が不安定になる問題が生じた(備考欄)。GaSbの厚みが50nmの実施例3は10nmの実施例2に比べ発電出力が向上し、300nmの実施例4では、発電出力が最も良かった。
【0074】
実施例1、7〜13では、メッシュ開口径(具体的には、正方形のメッシュ開口部の一辺の長さ)について評価した。
メッシュ開口径が50nm、180nmの実施例7,8では、発電出力が実施例1よりも10%以上低下した(評価C)。メッシュ開口径が300nm、600nm、900nmの実施例9、10,11では、良好な発電出力が得られた(評価A)。メッシュ開口径が1500nmの実施例13では、発電出力が10%以上低下した(評価C)。
【0075】
実施例1、14〜20では、表側金属層の厚みについて評価した。
表側金属層の厚みが70nmの実施例14では、発電出力が低下した(評価C)。表側金属層の厚みが1100nmの実施例20では、発電出力は実施例1と同等であったが(評価B)、厚膜の成膜が困難であった(備考欄)。表側金属層の厚みが200nm、600nmの実施例17、18では、発電出力が高く(評価A)、かつ1時間後および5時間後の発電出力も高い値を維持した(共に評価A)。
【0076】
実施例21では、メッシュ開口部を正方形ではなく、円形とした。
メッシュ開口部の面積が実施例1と同等となるように、実施例21では直径226nmの円形の開口部とした。実施例21では、発電出力が実施例1と同等であった(評価B)。メッシュ開口部が円形であっても、正方形の場合と同様の効果が得られることが確認できた。
さらに、実施例22では、メッシュ開口部が正方形ではなく、短辺100nm、長辺400nmの開口径を有する素子を作製し評価した。その結果、開口部が長方形であっても高い発電出力、長時間発電出力および熱流束を示すことが分かった。
【0077】
実施例1、24〜27では、素子作製の支持体の違いについて評価した。なお、実施例23は欠番である。
評価したのは金属基板としてSUS、Moの2種類、セラミックス基板としてAl、AlN、Siの5種類とした。基板については備考欄に記載した。
実施例1、24〜27は、基板の種類に依らず良好な発電出力を示した。特にSUS、Moの金属基板、Siのセラミックス基板は1時間後、5時間後の発電出力も高い値を維持し、良好な特性を示した。
【0078】
実施例28〜31では、表側金属層の幅について評価した。
表面電極層の幅が20nmの実施例28では、圧膜の成膜が困難であった。
【0079】
次に、本発明者は、比較例2、実施例33〜55において、開口部形状、開口径、開口率について検討した。素子の作製方法は表1の実施例と同様である。
【0080】
発電出力の評価は、表1における評価と異なり、Al基板にGaSbのpn接合を300nm成膜し、表側金属層を300nmの厚みで幅1mmのライン状に形成した素子(比較例2、なお、比較例2では、表側金属層が幅1mmのライン状なので、当然に共振器は形成されない。)を基準とし、発電出力が高くなった場合は評価A、20%以下の低下率となった場合は評価B、20%超40%以下の場合は評価C、40%超の場合は評価Dとした。波長選択性は出力/熱流束が40%超の場合は評価A、30%超40%以下は評価B、20%超30%以下は評価C、20%以下の場合は評価Dとした。
波長選択性の評価は、発電出力/熱流束が40%超の場合は評価A、30%超40%以下の場合は評価B、20%超30%以下の場合は評価C、20%以下の場合は評価Dとした。
結果を表2に示す。
【0081】
【表2】
【0082】
表側金属層を幅1mmのライン状に形成した比較例2では、波長選択性が非常に低かった。GaSbの厚みが50nm未満の実施例34では、出力と波長選択性が共に非常に低かった。開口径が300nm未満の実施例39では、発電出力が低かった。開口径が1000nm超の実施例43では、発電出力が非常に低く、波長選択性も低かった。表側金属層の厚みが80nm未満の実施例44では、発電出力が非常に低かった。開口部形状を長方形とした実施例51,52でも、高い発電出力と波長選択性が得られた。開口率が30%未満の実施例55では、発電出力が非常に低かった。
【0083】
次に、本発明者は、実施例56〜62において、半導体の種類、表側金属層の種類などが異なる場合について検討した。
【0084】
素子の作製方法、評価方法は表1の実施例と同様である。半導体としてInGaAs、表面電極層としてAg,Mo,Wについて検討した。結果を表3に示す。
【0085】
【表3】

【0086】
いずれの半導体、表面金属であっても高い発電出力を示し、本開示の効果が得られることが分かった。
【0087】
〔補足説明〕
以上、種々の典型的な実施形態を説明してきたが、本開示はそれらの実施の形態に限定されない。
【0088】
また、表側金属層20の構造は、矩形アイランド状やメッシュ状のパターンに限定されない。表側金属層20の構造は、例えば、矩形以外(円形や多角形など)のアイランド状であってもよいし、その他不規則なパターンであってもよい。
また、上記第2実施形態では、メッシュ状のパターンとして、次のような構造を示した(図2参照)。
すなわち、表側金属層120が、半導体層30に垂直な方向から見て矩形状の開口部が縦横に複数配列された構造となっている。隣り合う矩形の開口部同士は、その辺同士を互いに平行に対向させている。開口部の縦横の辺が延びる方向と、複数の開口部が整列された方向とが同じ方向(共に図のX方向およびY方向)になっている。これにより、半導体層30の表面のうち金属で覆われている部分が碁盤の目状に縦横に延びている。
しかしながら、本開示の「メッシュ状のパターン」は、これに限定されない。例えば、開口部は、円形であってもよいし、三角形であってもよいし、他の形状であってもよい。また、開口部の配置は、縦横に複数配列された構造(換言すると、X方向で近接する開口部同士の位置がY方向で一致している配置関係の構造)でなくてもよい。
【0089】
また、上記実施形態では、裏側金属層40が所謂ベタパターンである例を説明したが、本開示の裏側金属層はこれに限定されない。MSM構造による共振器が形成されていれば、裏側金属層40が表側金属層20のような部分的なパターンであってもよい。なお、本明細書でいう「ベタパターン」には、金属で覆われていない部分がごく僅かに存在する状態も含むものとする。
【0090】
また、各ブロック(図4参照)の形は特に限定されず、矩形や正方形でなく、三角形や他の多角形であってもよい。
【0091】
また、半導体層30を構成する半導体は、GaSbに限定されず、例えばInAsSbP(感度領域2.0〜3.2μm)、InGaAsP(感度領域0.92〜1.65μm)、InGaAsSb(感度領域1.0〜2.6μm)、InGaAs(感度領域0.9〜2.6μm)、InAs(感度領域1.0〜3.8μm)、InAsSb(感度領域1.0〜5.0μm)でもよい。
【符号の説明】
【0092】
10 光電変換素子
20 表側金属層
22 金属要素
30 半導体層
40 裏側金属層
110 光電変換素子
120 表側金属層
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】