特表-19189062IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2019年10月3日
【発行日】2021年1月7日
(54)【発明の名称】燃料電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/2418 20160101AFI20201204BHJP
   H01M 8/0202 20160101ALI20201204BHJP
   H01M 8/10 20160101ALI20201204BHJP
   H01M 8/02 20160101ALI20201204BHJP
   H01M 8/0258 20160101ALI20201204BHJP
【FI】
   H01M8/2418
   H01M8/0202
   H01M8/10
   H01M8/02
   H01M8/0258
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】17
【出願番号】特願2020-510844(P2020-510844)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2019年3月26日
(31)【優先権主張番号】特願2018-69795(P2018-69795)
(32)【優先日】2018年3月30日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】向笠 大悟
(72)【発明者】
【氏名】長▲崎▼ 仁志
(72)【発明者】
【氏名】麦島 丈弘
(72)【発明者】
【氏名】藤本 洸生
(72)【発明者】
【氏名】水野 あゆみ
【テーマコード(参考)】
5H126
【Fターム(参考)】
5H126AA02
5H126AA08
5H126AA14
5H126AA22
5H126BB06
5H126DD05
5H126EE03
5H126EE05
5H126EE13
5H126EE22
5H126EE24
5H126EE44
5H126FF04
(57)【要約】
燃料電池(10)において、電解質膜・電極構造体(22a、22b)を構成するカソード電極(28)と、空気供給層(70)との間には、カソード電極(28)を覆うカソード側多孔質フィルム(54)が介在する。なお、カソード側多孔質フィルム(54)には呼吸孔(66)が形成され、空気供給流路(78a、78b)を流通する空気は、該呼吸孔(66)を通過してカソード電極(28)に供給される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向に沿って延在し、且つその膜厚方向に伝導性を示すインターコネクト部が形成された1個の電解質膜と、
前記第1の方向に沿って延在し、且つ前記第1の方向に直交する第2の方向では互いに離間して配置された複数個のアノード電極と、
前記第1の方向に沿って延在し、且つ前記第2の方向では互いに離間して配置された複数個のカソード電極と、
を有する電解質膜・電極構造体を備える燃料電池であって、
前記電解質膜・電極構造体では、前記第2の方向において、1個の前記アノード電極の一部が、互いに隣接する2個の前記カソード電極中の1個の一部に対し、前記電解質膜を介して対向するとともに、前記アノード電極の別の一部が、前記2個のカソード電極中の残余の1個の一部に対し、前記電解質膜に形成された前記インターコネクト部を介して対向するように千鳥配置され、
前記複数個のカソード電極を覆うとともに、前記複数個のカソード電極に供給される酸化剤ガスが通過する呼吸孔が形成されたカソード側多孔質フィルムと、
前記カソード側多孔質フィルムに臨むとともに、前記酸化剤ガスが流通する酸化剤ガス供給流路が設けられた酸化剤ガス供給層と、
をさらに備えることを特徴とする燃料電池。
【請求項2】
請求項1記載の燃料電池において、前記酸化剤ガス供給流路が前記第1の方向に沿って延在することを特徴とする燃料電池。
【請求項3】
請求項1又は2記載の燃料電池において、前記酸化剤ガス供給流路を負圧にする負圧発生手段をさらに有することを特徴とする燃料電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1個の電解質膜に対して複数個のアノード電極及びカソード電極を設けた電解質膜・電極構造体を備える燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な燃料電池では、電解質膜・電極接合体(MEA)を1組のセパレータで挟持することで得られた単位セルが複数個積層されている。この構成は、燃料電池スタックとして周知である。これに対し、近時、1個の電解質膜に複数個のアノード電極及びカソード電極を設けることで、複数個の単位セルを平面状に構成することが提案されている。
【0003】
特開2011−204609号公報に記載されるように、この場合、電解質膜には、隣接する単位セル同士を電気的に接続するためのインターコネクト部が形成される。すなわち、複数個の単位セルは、インターコネクト部を介して直列接続される。この構成を採用する場合、1個の電解質膜で高電圧の燃料電池を得ることができるとともに、単位セルを積層する作業が不要となるという利点がある。
【発明の概要】
【0004】
一般的な燃料電池では、冷却媒体として冷却水等の冷却液がスタック内に供給されるが、この場合、冷却液を供給・排出するための機構が必要となるので、燃料電池の大型化や構成の複雑化を招く。そこで、上記の種の燃料電池において、酸化剤ガスとして空気を用いるとともに、この空気を冷却媒体とすることが想起される。
【0005】
しかしながら、この場合、カソード電極が燃料電池内を流通する空気に曝される。このため、カソード電極や電解質膜が過度に乾燥する懸念がある。このような事態が発生すると、電解質膜のプロトン伝導度が低下するので燃料電池の発電特性が低下する。
【0006】
本発明の主たる目的は、内部を流通する空気がカソード電極に供給される燃料電池を提供することにある。
【0007】
本発明の別の目的は、カソード電極が過度に乾燥する懸念を払拭し得る燃料電池を提供することにある。
【0008】
本発明の一実施形態によれば、第1の方向に沿って延在し、且つその膜厚方向に伝導性を示すインターコネクト部が形成された1個の電解質膜と、
前記第1の方向に沿って延在し、且つ前記第1の方向に直交する第2の方向では互いに離間して配置された複数個のアノード電極と、
前記第1の方向に沿って延在し、且つ前記第2の方向では互いに離間して配置された複数個のカソード電極と、
を有する電解質膜・電極構造体を備える燃料電池であって、
前記電解質膜・電極構造体では、前記第2の方向において、1個の前記アノード電極の一部が、互いに隣接する2個の前記カソード電極中の1個の一部に対し、前記電解質膜を介して対向するとともに、前記アノード電極の別の一部が、前記2個のカソード電極中の残余の1個の一部に対し、前記電解質膜に形成された前記インターコネクト部を介して対向するように千鳥配置され、
前記複数個のカソード電極を覆うとともに、前記複数個のカソード電極に供給される酸化剤ガスが通過する呼吸孔が形成されたカソード側多孔質フィルムと、
前記カソード側多孔質フィルムに臨むとともに、前記酸化剤ガスが流通する酸化剤ガス供給流路が設けられた酸化剤ガス供給層と、
をさらに備える燃料電池が提供される。
【0009】
すなわち、本発明においては、酸化剤ガス供給層とカソード電極との間にカソード側多孔質フィルムが介在する。このカソード側多孔質フィルムにより、カソード電極にて生成した水が保持される。生成水は、呼吸孔を通過する以外にカソード側多孔質フィルムの外方に排出されることはないからである。
【0010】
従って、カソード電極や、該カソード電極に接する電解質膜が適切に保湿される。換言すれば、カソード電極や電解質膜が過度に乾燥することを回避することができる。その結果として、電解質膜が良好なプロトン伝導性を示す。このため、燃料電池が良好な発電特性を示す。
【0011】
加えて、上記の構成を採用することにより、酸化剤ガス(例えば、空気)を、燃料電池を冷却する冷却媒体として用いることができる。この場合においても、上述の通り、カソード側多孔質フィルムによってカソード電極や電解質膜が過度に乾燥することが回避されるからである。従って、燃料電池の小型化や、構成の簡素化を図ることができる。
【0012】
酸化剤ガス供給流路は、例えば、第1の方向に沿って延在するものとして形成することができる。この場合、カソード電極の長手方向(第1の方向)に沿って万遍なく酸化剤ガスを接触させることができる。
【0013】
また、燃料電池には、酸化剤ガス供給流路を負圧にする負圧発生手段を設けるとよい。酸化剤ガスは、燃料電池の外部から、負圧となった酸化剤ガス供給流路に容易に導入される。すなわち、燃料電池の内部に酸化剤ガスを流通させることが容易となる。
【0014】
本発明によれば、酸化剤ガス供給層とカソード電極との間に介在させたカソード側多孔質フィルムによって、カソード電極にて生成した水が保持される。従って、カソード電極や、該カソード電極に接する電解質膜が過度に乾燥することが回避され、適切に保湿されるので、燃料電池が良好な発電特性を示す。
【0015】
しかも、酸化剤ガス(例えば、空気)を、燃料電池を冷却する冷却媒体として用いることができるので、燃料電池の小型化や、構成の簡素化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施の形態に係る燃料電池の全体概略斜視図である。
図2図1の燃料電池の要部分解斜視図である。
図3図1の燃料電池の要部縦断面図である。
図4】ラミネート層を構成するAn側フィルム(アノード側多孔質フィルム)の概略平面図である。
図5】燃料電池を構成する空気供給層(酸化剤ガス供給層)の全体概略斜視図である。
図6】燃料電池を構成する下側水素供給層(燃料ガス供給層)の全体概略斜視図である。
図7】複数個の燃料電池を並列に連結したときの水素の流通方向を示す模式平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る燃料電池につき好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。なお、以下における「下」、「上」、「左」及び「右」は、特に図3の下方、上方、左方及び右方に対応するが、これは理解を容易にするための便宜的なものであり、燃料電池を使用する際の方向を特定するものではない。
【0018】
図1図3は、それぞれ、本実施の形態に係る燃料電池10の全体概略斜視図、要部分解斜視図、要部縦断面図である。この燃料電池10では、図1に示す下方ハウジング部材12、後述の酸化剤ガス供給層70を構成する支持盤14、上方ハウジング部材16、ファン取付部材18が組み付けられることで略直方体形状のハウジング20が構成される。
【0019】
図2及び図3に示すように、ハウジング20内には、第1電解質膜・電極構造体である下方の第1構造体22a、第2電解質膜・電極構造体である上方の第2構造体22bが収容される。はじめに、これら第1構造体22a、第2構造体22bにつき説明する。なお、構造体22a、22bは略同様に構成されているが、説明の便宜上、図2及び図3中で下方に位置する第1構造体22aを「下側MEA」、上方に位置する第2構造体22bを「上側MEA」と表わす。また、以降における「Ca側」及び「An側」は、それぞれ、カソード側、アノード側に設けられていることを意味する。
【0020】
図3に詳細を示すように、下側MEA22aは1個の電解質膜24を有する。この電解質膜24の下端面に複数個のアノード電極26が形成される一方、上端面に複数個のカソード電極28が形成される。具体的には、電解質膜24の下端面には、An側保護層30、An側電極触媒層32、An側ガス拡散層34が電解質膜24に近接する側からこの順序で積層されることで、1個のアノード電極26が形成されている。これらAn側保護層30、An側電極触媒層32、An側ガス拡散層34は、図1における矢印A方向(第1の方向)に延在する帯形状をなす。すなわち、アノード電極26は、A方向を長手方向として延在する。
【0021】
An側電極触媒層32の、矢印B方向(第2の方向)に沿う幅寸法は、An側保護層30及びAn側ガス拡散層34よりも短尺である。このため、An側保護層30とAn側ガス拡散層34は、一部同士が互いに直接接触する。なお、An側保護層30は、例えば、パーフルオロスルホン酸ポリマーの薄膜からなる。
【0022】
このように構成されるアノード電極26は、B方向に沿って複数個設けられている。隣り合うアノード電極26同士は、An側溝36を介して互いに離間している。
【0023】
その一方で、電解質膜24の上端面には、Ca側保護層38、Ca側電極触媒層40、Ca側ガス拡散層42が電解質膜24に近接する側からこの順序で積層されることで、1個のカソード電極28が形成されている。これらCa側保護層38、Ca側電極触媒層40、Ca側ガス拡散層42は、図1及び図2における矢印A方向(第1の方向)に延在する帯形状をなす。すなわち、カソード電極28は、アノード電極26と同様にA方向を長手方向として延在する。
【0024】
なお、Ca側電極触媒層40及びCa側ガス拡散層42の、矢印B方向(第2の方向)に沿う幅寸法は略同一である。これに対し、Ca側保護層38は、後述するインターコネクト部44の延在方向(A方向)に沿って複数個の無接点孔46が点在するように形成されている。また、Ca側保護層38は、例えば、カーボンブラックを含有したパーフルオロスルホン酸ポリマーの薄膜からなる。
【0025】
このように構成されるカソード電極28は、B方向に沿って複数個設けられている。隣り合うカソード電極28同士は、Ca側溝48を介して互いに離間している。
【0026】
Ca側溝48は、An側溝36に対してオフセットされた位置に形成されている。また、インターコネクト部44は、An側溝36とCa側溝48の間に位置する。このため、1個のアノード電極26は、Ca側溝48を介して隣り合う2個のカソード電極28に跨る。すなわち、1個のアノード電極26は、B方向において、その一部がカソード電極28中の1個の一部に対して電解質膜24を介して対向し、且つ別の一部が、隣接する別のカソード電極28の1個の一部に対し、インターコネクト部44を介して対向するように千鳥配置されている。電解質膜24を介して対向するアノード電極26の一部と、カソード電極28の一部とで単位セル50が構成される。
【0027】
電解質膜24に形成されたインターコネクト部44は、An側保護層30からCa側保護層38に向かう膜厚方向の全体にわたるとともに、A方向に沿って延在する帯形状である。電解質膜24では、主にインターコネクト部44において電子伝導が起こり、それ以外の部位では主にプロトン伝導が起こる。
【0028】
このように構成された下側MEA22aは、An側フィルム52(アノード側多孔質フィルム)及びCa側フィルム54(カソード側多孔質フィルム)によってラミネートされている。すなわち、An側フィルム52とCa側フィルム54は下側MEA22aに比して大面積に設定され、下側MEA22aから露呈した外方縁部同士が接合される。これにより、ラミネート層56が形成される。
【0029】
An側フィルム52及びCa側フィルム54は、燃料電池10の運転温度(数十℃〜100℃程度)において耐熱性を示す素材、例えば、樹脂からなる。特に、透明樹脂であると、下側MEA22aの封入状態や、An側フィルム52とCa側フィルム54との接合状態等を目視にて容易に確認することができるので好適である。このような樹脂の具体例としては、ポリイミド樹脂が挙げられる。
【0030】
下側MEA22aは薄肉であり、単体を把持すると自重で撓むほど軟質であるが、ラミネート層56内に下側MEA22aを封入することにより、ある程度の剛性が付与される。すなわち、下側MEA22aをラミネート層56ごと把持した程度では自重で撓むことはない。このため、下側MEA22aを取り扱うこと、例えば、搬送すること等が容易となる。また、下側MEA22aの形状が保持されるので、該下側MEA22aに反り等の変形が生じることが回避される。
【0031】
図4に示すように、An側フィルム52は、複数個のアノード電極26の各々に密着して設けられ、インターコネクト部44に重畳してA方向に延在する複数個の第1直線部60と、第1直線部60に直交するB方向に延在する複数個の第2直線部62とを有する。すなわち、An側フィルム52は、第1直線部60と第2直線部62が互いに直交することで格子形状をなす。2本の第1直線部60と2本の第2直線部62との交差により、これら4本の直線部60、60、62、62に囲繞される略長方形形状のAn側呼吸孔64が形成されている。
【0032】
一方、Ca側フィルム54にはCa側呼吸孔66が形成される(図3参照)。Ca側フィルム54は、An側フィルム52に比して厚みが小さく設定される。換言すれば、An側フィルム52の厚みは、Ca側フィルム54に比して大きい。
【0033】
上側MEA22bは、下側MEA22aと略同様に構成されている。従って、同一の構成要素には同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0034】
下側MEA22aが、電解質膜24の下方にアノード電極26、上方にカソード電極28が設けられたものであるのに対し、上側MEA22bでは、電解質膜24の下方にカソード電極28、上方にアノード電極26が設けられている。すなわち、燃料電池10においては、下側MEA22aのカソード電極28と、上側MEA22bのカソード電極28とが対向する。
【0035】
下側MEA22aの単位セル50と、上側MEA22bの単位セル50とは位相が相違する。すなわち、下側MEA22aのAn側溝36、Ca側溝48及びインターコネクト部44は、上側MEA22bのAn側溝36、Ca側溝48及びインターコネクト部44からオフセットされた位置に設定される。
【0036】
下側MEA22aと上側MEA22bとの間には、図5に詳細を示す空気供給層70(酸化剤ガス供給層)が介挿される。この空気供給層70は、例えば、アルミニウムや銅、又はその合金等の熱伝導度が高い金属からなり、下側凸部72(第1凸部)と上側凸部74(第2凸部)が交互に連なることで波形状をなしたフィン76を有する。下側凸部72は、下側MEA22aのCa側フィルム54に当接し、上側凸部74は、上側MEA22bのCa側フィルム54に当接する。なお、フィン76の表面に絶縁処理を施すようにしてもよい。
【0037】
下側凸部72は、下側MEA22aを構成する電解質膜24のインターコネクト部44上に重畳される(図3参照)。また、上側凸部74には、上側MEA22bを構成する電解質膜24のインターコネクト部44が重畳される。すなわち、フィン76は、下側凸部72が下側MEA22aのインターコネクト部44の位置に対応し、且つ上側凸部74が上側MEA22bのインターコネクト部44の位置に対応する波形状に設定されている。
【0038】
下側凸部72と、上側MEA22bのCa側フィルム54との間には、A方向に沿って延在する空間が形成される。同様に、上側凸部74と、下側MEA22aのCa側フィルム54との間にも、A方向に沿って延在する空間が形成される。これらの空間は、それぞれ、上側MEA22bのカソード電極28に空気(酸化剤ガス)を供給するための上側空気供給流路78a(酸化剤ガス供給流路)、下側MEA22aのカソード電極28に空気を供給するための下側空気供給流路78b(酸化剤ガス供給流路)となる。
【0039】
Ca側フィルム54に形成されたCa側呼吸孔66は、上側空気供給流路78a又は下側空気供給流路78bに対して連通する。すなわち、Ca側呼吸孔66は、下側凸部72、上側凸部74が当接しない位置に形成されている。
【0040】
空気供給層70は、さらに、フィン76を支持するとともに上方ハウジング部材16と下方ハウジング部材12間に介挿される支持盤14を有する(図5参照)。支持盤14には、ハウジング20が構成されたときに正面側となるファン取付部材18側で開口する排出ダクト80と、背面側で開口する導入ダクト82とが設けられる。後述するように、導入ダクト82は上側空気供給流路78a、下側空気供給流路78bに流通する空気をハウジング20の外部から内部に取り入れるためのものであり、排出ダクト80は、上側空気供給流路78a、下側空気供給流路78bを流通した空気をハウジング20の外部に排出するためのものである。
【0041】
導入ダクト82及び排出ダクト80の先端は、支持盤14の前端及び後端よりも若干奥まった位置に設定される。このため、導入ダクト82又は排出ダクト80とファン取付部材18との間には、それぞれ、所定容量の第1バッファ空間、第2バッファ空間が形成される。
【0042】
支持盤14には、下側MEA22a、上側MEA22bの各カソード電極28に対して個別に電気的に接続される2個のCa側集電体及びCa側端子(図示せず)と、各アノード電極26に対して個別に電気的に接続される2個のAn側集電体及びAn側端子(図示せず)とが設けられる。Ca側端子及びAn側端子に対し、外部負荷を電気的に接続することができる。
【0043】
さらに、下側MEA22aの下方には、燃料ガスとしての水素ガスを供給する下側水素供給層84(燃料ガス供給層)が配設される。上側MEA22bの上方にも同様に、略平板形状の上側水素供給層86(燃料ガス供給層)が配設される。下側水素供給層84、上側水素供給層86は、下方ハウジング部材12、上方ハウジング部材16にそれぞれ支持される(図2参照)。
【0044】
図6に示すように、下側水素供給層84の、下側MEA22aを構成するアノード電極26に臨む側の端面には、該端面から下方に向かって陥没するようにして下側水素供給流路88(燃料ガス供給流路)が形成される。下側水素供給流路88は、B方向に沿って延在する複数個の往路90及び復路92を含む。往路90と復路92は交互に並列され、且つ互いに平行である。また、往路90と復路92は、A方向に沿って延在する連通路94を介して連通する。すなわち、下側水素供給流路88は、直線流路が連通路94を介して折り返した、いわゆる蛇行形状をなすサーペンタイン型流路である。
【0045】
下側水素供給層84において、下側水素供給流路88は溝であり、それ以外の部位は壁部である。図3に示すように、壁部は、1個のアノード電極26の、An側電極触媒層32が存在しない部位から、該アノード電極26に隣接する別のアノード電極26の、An側電極触媒層32が存在しない部位に跨る。従って、An側溝36が壁部で閉塞される。また、壁部には、アノード電極26を介してインターコネクト部44が重畳される。
【0046】
一方、上側水素供給層86の、上側MEA22bを構成するアノード電極26に臨む側の端面には、該端面から上方に向かって陥没するようにして上側水素供給流路96(燃料ガス供給流路)が形成される。上側水素供給流路96は、下側水素供給流路88と同様に形成された往路90、復路92及び連通路94を含むサーペンタイン型流路である。また、上側水素供給層86において、溝である上側水素供給流路96以外の壁部はAn側溝36を閉塞するとともに、アノード電極26を介してインターコネクト部44上に重畳される。
【0047】
下方ハウジング部材12及び上方ハウジング部材16には、水素をハウジング20内に導入するための下側供給マニホールド100、上側供給マニホールド102と、内部から水素を導出するための下側排出マニホールド104、上側排出マニホールド106とが設けられる(図1参照)。また、下方ハウジング部材12と上方ハウジング部材16に跨るように取り付けられるファン取付部材18には、ハウジング20内を負圧にするためのファン108(負圧発生手段)が設けられる。
【0048】
下方ハウジング部材12と上方ハウジング部材16は、例えば、ボルト・ナット等の締結具によって緊締される。この緊締に伴い、支持盤14が下方ハウジング部材12と上方ハウジング部材16に挟持される。また、ファン取付部材18は、例えば、ボルト・ナット等の締結具によって下方ハウジング部材12及び上方ハウジング部材16に連結される。
【0049】
本実施の形態に係る燃料電池10は、基本的には以上のように構成されるものであり、次に、その作用効果につき、燃料電池10の運転との関係で説明する。
【0050】
上記したように、下側MEA22aと上側MEA22bは、全てのカソード電極28及び電解質膜24を覆うCa側フィルム54と、全てのアノード電極26及び電解質膜24を覆うAn側フィルム52とが接合されたラミネート層56内に封入されている。ラミネート層56が自重で撓まない程度に硬質であるので、取り扱いが容易となる。このため、燃料電池10を組み立てる際、例えば、下方ハウジング部材12と支持盤14、又は支持盤14と上方ハウジング部材16との間に下側MEA22a、上側MEA22bを挿入する作業を容易に遂行することができる。
【0051】
また、下方ハウジング部材12と上方ハウジング部材16の緊締に伴い、下側MEA22aを構成する電解質膜24のインターコネクト部44が、空気供給層70の下側凸部72と下方ハウジング部材12に押圧される。同様に、上側MEA22bを構成する電解質膜24のインターコネクト部44が、空気供給層70の上側凸部74と上方ハウジング部材16に押圧される。下側MEA22a、上側MEA22bに対する押圧力は、5MPa以下とすることが好ましい。
【0052】
さらに、単位セル50を同一平面状に複数個設けることができるので、燃料電池10を、小型ながらも起電力が大きなものとして得ることができる。
【0053】
燃料電池10を運転するに際しては、ハウジング20の外部に露呈するCa側端子、An側端子に外部負荷(例えば、モータ等)を電気的に接続する。そして、燃料電池10を数十℃〜100℃程度に昇温する一方でファン108を回転付勢するとともに、図示しない水素供給源から下側供給マニホールド100、上側供給マニホールド102を介してハウジング20内に水素を供給する。
【0054】
ファン108が回転付勢されることに伴い、ハウジング20(特に下側空気供給流路78b及び上側空気供給流路78a)内の空気がファン108側に吸引される。吸引された空気は、支持盤14に設けられた排出ダクト80から第1バッファ空間を経た後、ファン108を介してハウジング20外に排出される。このため、ハウジング20内が負圧となる。
【0055】
ハウジング20の背面側には、支持盤14に設けられた導入ダクト82が位置する。ハウジング20内が負圧となっているため、ハウジング20外の空気が導入ダクト82を介してハウジング20内に導入される。導入された空気は、ファン108によって吸引されることで、下側空気供給流路78b、上側空気供給流路78aに沿ってファン108側に向かって移動する。すなわち、下側空気供給流路78b、上側空気供給流路78aを空気が流通する。
【0056】
この過程で、空気の一部が、Ca側フィルム54に形成されたCa側呼吸孔66を介してラミネート層56内に進入し、さらに、Ca側ガス拡散層42を介して拡散した後、Ca側電極触媒層40に到達する。このようにして、空気がカソード電極28に供給される。
【0057】
一方、下側供給マニホールド100からハウジング20内に導入された水素は、下側水素供給流路88の往路90に進入し、B方向に沿って流通する。さらに、往路90の末端から連通路94を経て復路92に進入することで折り返され、B方向に沿って再流通する。復路92の末端においても連通路94を経て往路90に進入することで折り返され、B方向に沿って再流通する。すなわち、水素は、下側供給マニホールド100に最近接するアノード電極26を上流として各アノード電極26を横切るように流通した後、下側排出マニホールド104に最近接するアノード電極26から折り返して、各アノード電極26を再度横切るように流通する。このような蛇行を繰り返しながら、下側排出マニホールド104に向かって流通する。
【0058】
この過程で、水素の一部が、An側フィルム52に形成されたAn側呼吸孔64を介してラミネート層56内に進入し、さらに、An側ガス拡散層34を介して拡散した後、An側電極触媒層32に到達する。すなわち、水素が各アノード電極26に供給される。余剰の水素は、下側排出マニホールド104からハウジング20外に排出される。
【0059】
各An側電極触媒層32では、水素が電離してプロトンと電子が生成する。プロトンは、電解質膜24の、インターコネクト部44以外の部位を主に伝導し、Ca側電極触媒層40に到達する。一方、電子は、主に電解質膜24のインターコネクト部44を介して、隣接する単位セル50を構成するカソード電極28に移動する。
【0060】
そして、カソード電極28では、Ca側電極触媒層40において、プロトンと、電子と、空気中の酸素とが化合して水が生成する。水は、例えば、水素に同伴され、下側水素供給流路88に沿って流通する。このため、下側水素供給流路88を流通する水素は、下流側(下側排出マニホールド104)になるに従って高湿となる。
【0061】
下側水素供給流路88の往路90及び復路92がA方向に沿って延在する場合、水素は、1個のアノード電極26の全体に接触するように流通した後、これに隣接する別のアノード電極26の全体に接触するように流通する。すなわち、上流側のアノード電極26には低湿の水素が接触し、下流側のアノード電極26には高湿の水素が接触する。このように、個々のアノード電極26に供給される水素の湿度が相違する場合、各単位セル50の発電量にバラツキが生じて燃料電池10としての発電が不安定となる懸念がある。
【0062】
これに対し、本実施の形態では、下側水素供給流路88の往路90及び復路92は、複数個のアノード電極26を横切るように延在している。このため、水素は、1個のアノード電極26に対し、湿度を上昇させながら複数回接触する。すなわち、個々のアノード電極26に対して湿度が相違する水素が接触することがない。従って、任意の1個の単位セル50と、これとは別の単位セル50との発電量が略同等となる。このため、燃料電池10の発電が不安定となる懸念が払拭される。
【0063】
しかも、下側水素供給層84の壁部上にはアノード電極26を介してインターコネクト部44が重畳され、上側水素供給層86の壁部がアノード電極26を介してインターコネクト部44上に重畳されている。従って、すなわち、下側水素供給層84、上側水素供給層86の壁部が電解質膜24を押圧する。これにより、下側MEA22a、上側MEA22bの保形がなされる。
【0064】
生成水の大部分は、ラミネート層56内に保持される。このため、下側MEA22a(特に電解質膜24)が湿潤状態に維持されるので、電解質膜24において十分なプロトン伝導度が発現する。また、ラミネート層56は絶縁体であるので、カソード電極28とフィン76との接触による短絡が防止される。
【0065】
余剰の生成水は、Ca側フィルム54に形成されたCa側呼吸孔66から下側空気供給流路78bに排出される。ここで、Ca側呼吸孔66は、下側凸部72が当接する部位には形成されていない。従って、フィン76と下側凸部72との間に液洛が生じることを回避することができる。
【0066】
しかも、下側水素供給層84の壁部がフィン76とともに下側MEA22aを押圧している。このため、下側MEA22aの形状が維持される。また、インターコネクト部44がフィン76の下側凸部72、上側凸部74で押圧されるとともに、その押圧力がAn側フィルム52の第1直線部60を介してインターコネクト部44に効率よく伝わる。その結果、インターコネクト部44とCa側電極触媒層40との接触界面における接触抵抗が低減するので、電子伝導度が良好となる。
【0067】
そして、Ca側保護層38の、インターコネクト部44の位置に対応する位置には、A方向に沿って点在する無接点孔46が形成されている。加えて、アノード電極26においては、インターコネクト部44及び無接点孔46に対応する位置にAn側電極触媒層32が存在しない。従って、無接点孔46の近傍では、インターコネクト部44とCa側電極触媒層40ないしAn側電極触媒層32との界面で電極反応が生じること、換言すれば、水が生成することが抑制される。このため、インターコネクト部44とカソード電極28、アノード電極26の接触界面で過剰に生成した水によって液洛が生じることを回避することができる。
【0068】
以上について、上側MEA22bにおいても同様であることは勿論である。
【0069】
燃料電池10の運転温度は上記したように数十℃〜100℃程度であり、また、電極反応が生起されることに伴い、下側MEA22a及び上側MEA22bが熱を帯びる。ここで、下側空気供給流路78b、上側空気供給流路78aには空気が流通しており、燃料電池10はこの空気によって冷却される。その結果、燃料電池10の温度が過度に上昇することが回避される。このように、燃料電池10は、いわゆる空冷式である。
【0070】
また、空気で下側MEA22a及び上側MEA22bが冷却される(熱が除去される)ことから、カソード電極28が過度に乾燥することが回避される。しかも、電極反応によって生成した水は、ラミネート層56に形成されたCa側呼吸孔66ないしAn側呼吸孔64以外から外部に排出されることが阻害される。すなわち、ラミネート層56内にある程度の水分が蓄えられる。以上のことが相俟って、An側ガス拡散層34やCa側ガス拡散層42が適切に保湿される。このために電解質膜24も保湿されるので、所定のプロトン伝導度が維持される。
【0071】
本発明は、上記した実施の形態に得に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0072】
例えば、下側MEA22aの下方、ないし上側MEA22bの上方の少なくともいずれか一方に別のMEAを積層するようにしてもよい。この場合、該別のMEAを構成するアノード電極26を、下側MEA22aを構成するアノード電極26、ないし上側MEA22bを構成するアノード電極26に対向するような向きとすればよい。
【0073】
また、図7に示すように、複数個の燃料電池10を水平方向に並列配置するようにしてもよい。この場合、水素を、各燃料電池10に個別に分配されてハウジング20内を流通するように導入すればよい。
【0074】
さらに、この実施の形態では、水素等の燃料ガスをハウジング20内に導入・排出するための供給マニホールドと排出マニホールドを、下側供給マニホールド100、下側排出マニホールド104、上側供給マニホールド102、上側排出マニホールド106として、下方ハウジング部材12と上方ハウジング部材16の両方に設けるとともに、下側MEA22a、上側MEA22bに個別に燃料ガスを供給・排出する構成としているが、例えば、上方ハウジング部材16に単一個の供給マニホールドを設ける一方、下方ハウジング部材12に単一個の排出マニホールドを設けるようにしてもよい。
【0075】
この場合、下側MEA22aと上側MEA22bの単位セル50が存在しない領域に2個の連通孔を設け、1個の連通孔を介して水素等の燃料ガスを上方ハウジング部材16から下側MEA22aに分配・供給するとともに、上側MEA22bからの余剰の燃料ガスを、残余の1個を介して下方ハウジング部材12に流通させ、下側MEA22aからの余剰の燃料ガスと合流させて排出すればよい。このように構成することで部品点数を削減することができ、燃料電池を組み立てることが容易となる。
【符号の説明】
【0076】
10…燃料電池 12…下方ハウジング部材
14…支持盤 16…上方ハウジング部材
18…ファン取付部材 20…ハウジング
22a…下側MEA 22b…上側MEA
24…電解質膜 26…アノード電極
28…カソード電極 36…An側溝
44…インターコネクト部 48…Ca側溝
50…単位セル 52…An側フィルム
54…Ca側フィルム 56…ラミネート層
60…第1直線部 62…第2直線部
64…An側呼吸孔 66…Ca側呼吸孔
70…空気供給層 72…下側凸部
74…上側凸部 76…フィン
78a…上側空気供給流路 78b…下側空気供給流路
80…排出ダクト 82…導入ダクト
84…下側水素供給層 86…上側水素供給層
88…下側水素供給流路 90…往路
92…復路 94…連通路
96…上側水素供給流路 100…下側供給マニホールド
102…上側供給マニホールド 104…下側排出マニホールド
106…上側排出マニホールド 108…ファン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】