再表2019-203157IP Force 特許公報全文掲載

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2019年10月24日
【発行日】2020年6月18日
(54)【発明の名称】液晶性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/12 20060101AFI20200522BHJP
   C08K 7/02 20060101ALI20200522BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20200522BHJP
【FI】
   C08L101/12
   C08K7/02
   C08K3/013
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】24
【出願番号】特願2020-512757(P2020-512757)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2019年4月12日
(31)【優先権主張番号】特願2018-78528(P2018-78528)
(32)【優先日】2018年4月16日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】390006323
【氏名又は名称】ポリプラスチックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】深津 博樹
(72)【発明者】
【氏名】鄭 祐政
(72)【発明者】
【氏名】青藤 宏光
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AA011
4J002CF161
4J002CL081
4J002DE106
4J002DE186
4J002DE266
4J002DF016
4J002DG036
4J002DJ006
4J002DJ047
4J002DJ048
4J002DJ057
4J002DK006
4J002DL007
4J002FA017
4J002FA066
4J002FD016
4J002FD017
4J002FD208
4J002GQ00
(57)【要約】
肉厚差の大きな成形品におけるブリスター発生が抑制された液晶性樹脂組成物を提供する。
本発明に係る液晶性樹脂組成物は、(A)液晶性樹脂、(B)ウィスカー、及び(C)板状充填剤を含有する液晶性樹脂組成物であって、前記液晶性樹脂組成物のスウェル比は、1.00超である。本発明に係る液晶性樹脂組成物は、好ましくはコネクター用であり、前記コネクターは、前記液晶性樹脂組成物の成形品からなり、前記成形品は、厚肉部と薄肉部との肉厚差が0.5mm以上である偏肉構造を有し、前記成形品のゲート部から前記厚肉部に至る経路が前記薄肉部を経由する形状を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)液晶性樹脂、
(B)ウィスカー、及び
(C)板状充填剤
を含有する液晶性樹脂組成物であって、
前記液晶性樹脂組成物のスウェル比は、1.00超である液晶性樹脂組成物。
【請求項2】
コネクター用である請求項1に記載の液晶性樹脂組成物であって、
前記コネクターは、前記液晶性樹脂組成物の成形品からなり、
前記成形品は、厚肉部と薄肉部との肉厚差が0.5mm以上である偏肉構造を有し、前記成形品のゲート部から前記厚肉部に至る経路が前記薄肉部を経由する形状を有する液晶性樹脂組成物。
【請求項3】
リフロー工程を経るコネクター用である請求項1又は2に記載の液晶性樹脂組成物であって、
前記リフロー工程は、プレヒートゾーンにおける加熱とリフローゾーンにおける加熱とを含み、
前記プレヒートゾーンにおいて、設定温度は140〜170℃、処理時間は1〜3分間であり、
前記リフローゾーンにおいて、設定温度は180〜210℃、処理時間は30〜120秒であるとともに、実測の平均温度は183℃以上、実測のピーク温度は220〜270℃である液晶性樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶性樹脂組成物
【背景技術】
【0002】
液晶性ポリエステル樹脂に代表される液晶性樹脂は、優れた機械的強度、耐熱性、耐薬品性、電気的性質等をバランス良く有し、優れた寸法安定性も有するため高機能エンジニアリングプラスチックとして広く利用されている。最近では、液晶性樹脂は、これらの特長を生かして、精密機器部品に使用されるようになっている。
【0003】
液晶性樹脂組成物には、ブリスター発生の問題が生じ得る。即ち、液晶性ポリエステル、液晶性ポリエステルアミド等の液晶性ポリマーは、高温熱安定性が良いため、高温での熱処理を要する材料に使用される場合が多い。しかし、成形品を高温の空気中及び液体中に長時間放置すると、表面にブリスターと呼ばれる細かい膨れが生じるという問題が起こる。
【0004】
この現象の一原因は、液晶性ポリマーが溶融状態にある時に発生する分解ガス等が成形品内部に持ち込まれ、その後、高温の熱処理を行う際にそのガスが膨張し、加熱で軟化した成形品表面を押し上げ、押し上げられた部分がブリスターとして現れることである。このような原因で発生するブリスターの発生が低減された液晶性樹脂組成物としては、例えば、液晶性ポリエステルと特定の脂肪酸エステルと充填材と脂肪酸金属塩とを含有する液晶性樹脂組成物が公知である(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−179693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ブリスター発生の別の原因は、スキン層とコア層との境界に生じる歪みや複雑な成形品形状がもたらす不均一層構造に起因する空洞(層間剥離)がリフロー時に熱膨張して、加熱で軟化した成形品表面を押し上げ、押し上げられた部分がブリスターとして現れることである。特に肉厚差の大きな成形品の製造においては、溶融した液晶性樹脂組成物が薄肉部から厚肉部へ流動する過程で、液晶性樹脂特有の流動現象により、肉厚部に十分な充填がなされずに不均一層構造が形成されやすい問題がある。従来の液晶性組成物では、このような肉厚差の大きな成形品におけるブリスター発生の問題を解決するには不充分である。
【0007】
本発明は、課題を解決するためになされたものであり、その目的は、肉厚差の大きな成形品におけるブリスター発生が抑制された液晶性樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、課題を解決するために鋭意研究を重ねた。その結果、液晶性樹脂組成物のスウェル比を特定の範囲に調整することにより、課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には本発明は以下のものを提供する。
【0009】
(1) (A)液晶性樹脂、(B)ウィスカー、及び(C)板状充填剤を含有する液晶性樹脂組成物であって、前記液晶性樹脂組成物のスウェル比は、1.00超である液晶性樹脂組成物。
【0010】
(2) コネクター用である(1)に記載の液晶性樹脂組成物であって、前記コネクターは、前記液晶性樹脂組成物の成形品からなり、前記成形品は、厚肉部と薄肉部との肉厚差が0.5mm以上である偏肉構造を有し、前記成形品のゲート部から前記厚肉部に至る経路が前記薄肉部を経由する形状を有する液晶性樹脂組成物。
【0011】
(3) リフロー工程を経るコネクター用である(1)又は(2)に記載の液晶性樹脂組成物であって、前記リフロー工程は、プレヒートゾーンにおける加熱とリフローゾーンにおける加熱とを含み、前記プレヒートゾーンにおいて、設定温度は140〜170℃、処理時間は1〜3分間であり、前記リフローゾーンにおいて、設定温度は180〜210℃、処理時間は30〜120秒であるとともに、実測の平均温度は183℃以上、実測のピーク温度は220〜270℃である液晶性樹脂組成物。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、肉厚差の大きな成形品におけるブリスター発生が抑制された液晶性樹脂組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施例で成形したDDR−DIMMコネクターを示す図である。なお、Aはゲート位置を示す。図中の数値の単位はmmである。
【図2】実施例で成形したFPCコネクターを示す図である。なお、Aはゲート位置を示す。図中の数値の単位はmmである。
【図3】実施例で成形し、段差感度ブリスター評価で用いた成形品を示す図である。なお、Aはゲート位置を示す。図中の数値の単位はmmである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<液晶性樹脂組成物>
本発明に係る液晶性樹脂組成物は、(A)液晶性樹脂、(B)ウィスカー、及び(C)板状充填剤を含有する液晶性樹脂組成物であって、前記液晶性樹脂組成物のスウェル比は、1.00超である。本発明に係る液晶性樹脂組成物は、スウェル比が1.00超であることにより、肉厚差の大きな成形品におけるブリスター発生が効果的に抑制される。ブリスター発生がより効果的に抑制されることから、前記スウェル比は、1.02以上であることが好ましく、1.03以上であることがより好ましい。前記スウェル比の上限は、特に限定されず、例えば、1.2で良い。
【0015】
本明細書において、スウェル比としては、液晶性樹脂の融点よりも10〜20℃高いシリンダー温度、せん断速度2432sec−1の条件で、ISO 11443に準拠して流動性を測定する際に、内径1mm、長さ20mmのオリフィスから押し出された後、寸法が安定した押出品の外径Dを測定し、オリフィスの内径dとの比D/dを算出し、得られた値を採用する。
【0016】
スウェル比は、押し出された液晶性樹脂組成物の膨らみやすさを表す。一見すると、流動性が高い程、スウェル比が高いようにも思えるが、スウェル比は、必ずしも溶融粘度のみで決まるわけではなく、同じ溶融粘度を示す液晶性樹脂組成物同士が異なるスウェル比を有し得る。同様のことは、充填剤又はポリマーの種類又は含有量についても当てはまる。また、スウェル比は、液晶性樹脂組成物を調製する際のコンパウンド条件にも左右される。即ち、同じ成分を同じ量で含有する液晶性樹脂組成物同士であっても、コンパウンド条件が異なると、異なるスウェル比を示し得る。このように、スウェル比は、複合的要素が複雑に関係して決まる指標である。
【0017】
一方、ブリスター発生も、溶融粘度だけで決まるわけではなく、同じ溶融粘度を示す液晶性樹脂組成物同士であっても、一方ではブリスターが発生し、他方ではブリスターが発生しないということが起こり得る。同様のことは、充填剤又はポリマーの種類又は含有量及びコンパウンド条件についても当てはまる。このように、ブリスター発生も、複合的要素が複雑に関係して決まる指標である。ここで、実施例及び比較例において実証されている通り、本発明における他の要件の具備を条件に、スウェル比が1.00超であると、肉厚差の大きな成形品におけるブリスター発生が抑制される。複雑な成形品を成形する際には、例えば、液晶性樹脂組成物の溶融物の主流に対して垂直な方向に分岐したキャビティが延びるような金型が使用される。スウェル比が1.00超であると、このように垂直な方向に延びるキャビティにまでも溶融物が広がりやすく、空隙を埋め尽くしやすいため、肉厚差の大きな成形品におけるブリスター発生を抑制しやすい。
【0018】
[(A)液晶性樹脂]
本発明で使用する(A)液晶性樹脂とは、光学異方性溶融相を形成し得る性質を有する溶融加工性ポリマーを指す。異方性溶融相の性質は、直交偏光子を利用した慣用の偏光検査法により確認することが出来る。より具体的には、異方性溶融相の確認は、Leitz偏光顕微鏡を使用し、Leitzホットステージに載せた溶融試料を窒素雰囲気下で40倍の倍率で観察することにより実施できる。本発明に適用できる液晶性ポリマーは直交偏光子の間で検査したときに、たとえ溶融静止状態であっても偏光は通常透過し、光学的に異方性を示す。
【0019】
のような(A)液晶性樹脂の種類としては特に限定されず、芳香族ポリエステル及び/又は芳香族ポリエステルアミドであることが好ましい。また、芳香族ポリエステル及び/又は芳香族ポリエステルアミドを同一分子鎖中に部分的に含むポリエステルもその範囲にある。(A)液晶性樹脂としては、60℃でペンタフルオロフェノールに濃度0.1質量%で溶解したときに、好ましくは少なくとも約2.0dl/g、更に好ましくは2.0〜10.0dl/gの対数粘度(I.V.)を有するものが好ましく使用される。
【0020】
本発明に適用できる(A)液晶性樹脂としての芳香族ポリエステル又は芳香族ポリエステルアミドは、特に好ましくは、芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ヒドロキシアミン、及び芳香族ジアミンからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物に由来する繰り返し単位を構成成分として有する芳香族ポリエステル又は芳香族ポリエステルアミドである。
【0021】
より具体的には、
(1)主として芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその誘導体の1種又は2種以上に由来する繰り返し単位からなるポリエステル;
(2)主として(a)芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその誘導体の1種又は2種以上に由来する繰り返し単位と、(b)芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、及びそれらの誘導体の1種又は2種以上に由来する繰り返し単位とからなるポリエステル;
(3)主として(a)芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその誘導体の1種又は2種以上に由来する繰り返し単位と、(b)芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、及びそれらの誘導体の1種又は2種以上に由来する繰り返し単位と、(c)芳香族ジオール、脂環族ジオール、脂肪族ジオール、及びそれらの誘導体の少なくとも1種又は2種以上に由来する繰り返し単位、とからなるポリエステル;
(4)主として(a)芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその誘導体の1種又は2種以上に由来する繰り返し単位と、(b)芳香族ヒドロキシアミン、芳香族ジアミン、及びそれらの誘導体の1種又は2種以上に由来する繰り返し単位と、(c)芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、及びそれらの誘導体の1種又は2種以上に由来する繰り返し単位、とからなるポリエステルアミド;
(5)主として(a)芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその誘導体の1種又は2種以上に由来する繰り返し単位と、(b)芳香族ヒドロキシアミン、芳香族ジアミン、及びそれらの誘導体の1種又は2種以上に由来する繰り返し単位と、(c)芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、及びそれらの誘導体の1種又は2種以上に由来する繰り返し単位と、(d)芳香族ジオール、脂環族ジオール、脂肪族ジオール、及びそれらの誘導体の少なくとも1種又は2種以上に由来する繰り返し単位、とからなるポリエステルアミド等が挙げられる。更にの構成成分に必要に応じ分子量調整剤を併用してもよい。
【0022】
本発明に適用できる(A)液晶性樹脂を構成する具体的化合物の好ましい例としては、p−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸等の芳香族ヒドロキシカルボン酸、2,6−ジヒドロキシナフタレン、1,4−ジヒドロキシナフタレン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、レゾルシン、下記一般式(I)で表される化合物、及び下記一般式(II)で表される化合物等の芳香族ジオール;テレフタル酸、イソフタル酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、及び下記一般式(III)で表される化合物等の芳香族ジカルボン酸;p−アミノフェノール、p−フェニレンジアミン等の芳香族アミン類が挙げられる。
【化1】
(X:アルキレン(C1〜C4)、アルキリデン、−O−、−SO−、−SO2−、−S−、及び−CO−より選ばれる基である)
【化2】
【化3】
(Y:−(CH2)n−(n=1〜4)及び−O(CH2)nO−(n=1〜4)より選ばれる基である。)
【0023】
本発明に用いられる(A)液晶性樹脂の調製は、のモノマー化合物(又はモノマーの混合物)から直接重合法やエステル交換法を用いて公知の方法で行うことができ、通常は溶融重合法、溶液重合法、スラリー重合法、固相重合法等、又はこれらの2種以上の組み合わせが用いられ、溶融重合法、又は溶融重合法と固相重合法との組み合わせが好ましく用いられる。エステル形成能を有する化合物類はそのままの形で重合に用いてもよく、また、重合の前段階でアシル化剤等を用いて前駆体から該エステル形成能を有する誘導体に変性されたものでもよい。アシル化剤としては、無水酢酸等の無水カルボン酸等を挙げることができる。
【0024】
重合に際しては、種々の触媒の使用が可能である。使用可能な触媒の代表的なものとしては、酢酸カリウム、酢酸マグネシウム、酢酸第一錫、テトラブチルチタネート、酢酸鉛、酢酸ナトリウム、三酸化アンチモン、トリス(2,4−ペンタンジオナト)コバルト(III)等の金属塩系触媒、N−メチルイミダゾール、4−ジメチルアミノピリジン等の有機化合物系触媒を挙げることができる。触媒の使用量は、一般には、モノマーの全重量に対して、約0.001〜1質量%であることが好ましく、約0.01〜0.2質量%であることが特に好ましい。
【0025】
のような方法で得られた(A)液晶性樹脂の溶融粘度は特に限定されない。一般には成形温度での溶融粘度が剪断速度1000sec−1で10MPa以上600MPa以下のものが使用可能である。しかし、それ自体あまり高粘度のものは流動性が非常に悪化するため好ましくない。なお、(A)液晶性樹脂は2種以上の液晶性樹脂の混合物であってもよい。
【0026】
(A)液晶性樹脂の融点(以下、「Tm」ともいう。)及び結晶化温度(以下、「Tc」ともいう。)は特に限定されない。TmとTcとの差Tm−Tcは、ブリスター発生を抑制しやすく、機械的強度を維持しやすい点で、45℃以下が好ましく、42℃以下がより好ましく、40℃以下が更により好ましい。Tm−Tcの下限は、特に限定されず、0℃、1℃、5℃、10℃、20℃、30℃、及び37℃のいずれでもよい。
【0027】
本発明の液晶性樹脂組成物において、(A)液晶性樹脂の好ましい含有量は、50〜75質量%である。(A)成分の含有量が範囲内であると、得られる組成物は、流動性を維持しつつ、ブリスター発生を抑制しやすい。(A)成分の含有量は、より好ましくは53〜70質量%、更により好ましくは55〜68質量%である。
【0028】
[(B)ウィスカー]
本発明に係る液晶性樹脂組成物には、ウィスカーが含まれる。本発明に係る液晶性樹脂組成物にウィスカーが含まれることにより、得られる組成物は、機械的強度を維持しつつ、ブリスター発生を抑制しやすい。ウィスカーは、1種単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0029】
(B)ウィスカーの平均繊維長は、好ましくは50〜200μmであり、より好ましくは100〜170μmであり、更により好ましくは120〜150μmである。平均繊維長が範囲内であると、得られる組成物は、機械的強度を維持しつつ、ブリスター発生をより抑制しやすい。なお、平均繊維長は実体顕微鏡画像をCCDカメラからPCに取り込み、画像測定機によって画像処理手法により測定された値を採用する。
【0030】
(B)ウィスカーの好ましい平均繊維径は1〜15μm以下であり、より好ましい平均繊維径は5〜10μmである。平均繊維径が範囲内であると、得られる組成物は、機械的強度を維持しつつ、ブリスター発生をより抑制しやすい。なお、平均繊維径は実体顕微鏡画像をCCDカメラからPCに取り込み、画像測定機によって画像処理手法により測定された値を採用する。
【0031】
(B)ウィスカーとしては、特に限定されず、例えば、チタン酸カリウムウィスカー、ケイ酸カルシウムウィスカー(ウォラストナイト)、炭酸カルシウムウィスカー、酸化亜鉛ウィスカー、ホウ酸アルミニウムウィスカー、窒化珪素ウィスカー、三窒化珪素ウィスカー、塩基性硫酸マグネシウムウィスカー、チタン酸バリウムウィスカー、炭化珪素ウィスカー、ボロンウィスカーが挙げられ、入手性等の点で、チタン酸カリウムウィスカー、ケイ酸カルシウムウィスカー(ウォラストナイト)、炭酸カルシウムウィスカー、酸化亜鉛ウィスカー、ホウ酸アルミニウムウィスカー等が好ましく、ケイ酸カルシウムウィスカー(ウォラストナイト)がより好ましい。なお、本発明の液晶性樹脂組成物中の(B)ウィスカーの形状と、配合される前の(B)ウィスカーの形状とは異なる。上述の(B)ウィスカーの形状は配合される前の形状である。配合される前の形状が上述の通りであれば、機械的強度を維持しつつ、ブリスター発生が抑制された成形品を得やすい。
【0032】
本発明の液晶性樹脂組成物において、(B)ウィスカーの好ましい含有量は、3〜30質量%である。(B)成分の含有量が範囲内であると、得られる組成物は、機械的強度を維持しつつ、ブリスター発生を抑制しやすい。(B)成分の含有量は、より好ましくは4〜30質量%(例えば、5〜30質量%又は4〜29質量%)、更により好ましくは5〜28質量%(例えば、5〜27.5質量%)である。
【0033】
[(C)板状充填剤]
本発明に係る液晶性樹脂組成物には、板状充填剤が含まれる。本発明に係る液晶性樹脂組成物に板状充填剤が含まれることにより、そり変形が抑制された成形品を得ることができる。板状充填剤は、1種単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0034】
本発明の液晶性樹脂組成物において、(C)板状充填剤の好ましい含有量は、10〜35質量%である。(C)成分の含有量が範囲内であると、得られる組成物からは、そり変形が抑制された成形品を得やすい。(C)成分の含有量は、より好ましくは10〜32質量%(例えば、11〜32質量%)、更により好ましくは12〜30質量%(例えば、12.5〜30質量%)である。
【0035】
本発明における板状充填剤としては、タルク、マイカ、ガラスフレーク、各種の金属箔等が挙げられる。液晶性樹脂組成物の流動性を悪化させることなく、液晶性樹脂組成物から得られる成形品のそり変形を抑制させるという点で、タルク及びマイカから選択される1種以上が好ましく、タルクがより好ましい。板状充填剤の平均粒径については、特に限定されず、薄肉部における流動性を考慮すると小さい方が望ましい。一方、液晶性樹脂組成物から得られるコネクター等の成形品のそり変形を小さくするためには、一定の大きさを維持している必要がある。具体的には、1〜100μmが好ましく、5〜50μmがより好ましい。
【0036】
〔タルク〕
本発明において使用できるタルクとしては、当該タルクの全固形分量に対して、Fe2O3、Al2O3及びCaOの合計含有量が2.5質量%以下であり、Fe2O3及びAl2O3の合計含有量が1.0質量%超2.0質量%以下であり、かつCaOの含有量が0.5質量%未満であるものが好ましい。即ち、本発明において使用できるタルクは、その主成分たるSiO2及びMgOの他、Fe2O3、Al2O3及びCaOのうちの少なくとも1種を含有し、各成分がの含有量範囲で含有するものであってもよい。
【0037】
タルクにおいて、Fe2O3、Al2O3及びCaOの合計含有量が2.5質量%以下であると、液晶性樹脂組成物の成形加工性及び当該液晶性樹脂組成物から成形されたコネクター等の成形品の耐熱性が悪化しにくい。そのため、Fe2O3、Al2O3及びCaOの合計含有量は、1.0質量%以上2.0質量%以下が好ましい。
【0038】
また、タルクのうち、Fe2O3及びAl2O3の合計含有量が1.0質量%超のタルクは入手しやすい。また、タルクにおいて、Fe2O3及びAl2O3の合計含有量が2.0質量%以下であると、液晶性樹脂組成物の成形加工性及び当該液晶性樹脂組成物から成形されたコネクター等の成形品の耐熱性が悪化しにくい。そのため、Fe2O3及びAl2O3の合計含有量は、1.0質量%超1.7質量%以下が好ましい。
【0039】
また、タルクにおいて、CaOの含有量が0.5質量%未満であると、液晶性樹脂組成物の成形加工性及び当該液晶性樹脂組成物から成形されたコネクター等の成形品の耐熱性が悪化しにくい。そのため、CaOの含有量は、0.01質量%以上0.4質量%以下が好ましい。
【0040】
本発明におけるタルクの、レーザー回折法で測定した質量基準又は体積基準の累積平均粒子径(D50)は、成形品のそり変形の防止及び液晶性樹脂組成物の流動性の維持という観点から、4.0〜20.0μmであることが好ましく、10〜18μmであることがより好ましい。
【0041】
〔マイカ〕
マイカとは、アルミニウム、カリウム、マグネシウム、ナトリウム、鉄等を含んだケイ酸塩鉱物の粉砕物である。本発明において使用できるマイカとしては、白雲母、金雲母、黒雲母、人造雲母等が挙げられるが、これらのうち色相が良好であり、低価格であるという点で白雲母が好ましい。
【0042】
また、マイカの製造において、鉱物を粉砕する方法としては、湿式粉砕法及び乾式粉砕法が知られている。湿式粉砕法とは、マイカ原石を乾式粉砕機にて粗粉砕した後、水を加えてスラリー状態にて湿式粉砕で本粉砕し、その後、脱水、乾燥を行う方法である。湿式粉砕法と比較して、乾式粉砕法は低コストで一般的な方法であるが、湿式粉砕法を用いると、鉱物を薄く細かく粉砕することがより容易である。後述する好ましい平均粒径及び厚みを有するマイカが得られるという理由で、本発明においては薄く細かい粉砕物を使用することが好ましい。したがって、本発明においては、湿式粉砕法により製造されたマイカを使用するのが好ましい。
【0043】
また、湿式粉砕法においては、被粉砕物を水に分散させる工程が必要であるため、被粉砕物の分散効率を高めるために、被粉砕物に凝集沈降剤及び/又は沈降助剤を加えることが一般的である。本発明において使用できる凝集沈降剤及び沈降助剤としては、ポリ塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、塩化コッパラス、ポリ硫酸鉄、ポリ塩化第二鉄、鉄−シリカ無機高分子凝集剤、塩化第二鉄−シリカ無機高分子凝集剤、消石灰(Ca(OH)2)、苛性ソーダ(NaOH)、ソーダ灰(Na2CO3)等が挙げられる。これらの凝集沈降剤及び沈降助剤は、pHがアルカリ性又は酸性である。本発明で使用するマイカは、湿式粉砕する際に凝集沈降剤及び/又は沈降助剤を使用していないものが好ましい。凝集沈降剤及び/又は沈降助剤で処理されていないマイカを使用すると、液晶性樹脂組成物中のポリマーの分解が生じにくく、多量のガス発生やポリマーの分子量低下等が起きにくいため、得られるコネクター等の成形品の性能をより良好に維持するのが容易である。
【0044】
本発明において使用できるマイカは、マイクロトラックレーザー回折法により測定した平均粒径が10〜100μmであるものが好ましく、平均粒径が20〜80μmであるものが特に好ましい。マイカの平均粒径が10μm以上であると、成形品の剛性に対する改良効果が十分となりやすいため好ましい。マイカの平均粒径が100μm以下であると、成形品の剛性の向上が十分となりやすく、ウェルド強度も十分となりやすいため好ましい。更に、マイカの平均粒径が100μm以下であると、本発明のコネクター等を成形するのに十分な流動性を確保しやすい。
【0045】
本発明において使用できるマイカの厚みは、電子顕微鏡の観察により実測した厚みが0.01〜1μmであることが好ましく、0.03〜0.3μmであることが特に好ましい。マイカの厚みが0.01μm以上であると、液晶性樹脂組成物の溶融加工の際にマイカが割れにくくなるため、成形品の剛性が向上しやすい可能性があるため好ましい。マイカの厚みが1μm以下であると、成形品の剛性に対する改良効果が十分となりやすいため好ましい。
【0046】
本発明において使用できるマイカは、シランカップリング剤等で表面処理されていてもよく、かつ/又は、結合剤で造粒し顆粒状とされていてもよい。
【0047】
[その他の成分]
本発明に係る液晶性樹脂組成物には、本発明の効果を害さない範囲で、その他の重合体、その他の充填剤、一般に合成樹脂に添加される公知の物質、即ち、酸化防止剤や紫外線吸収剤等の安定剤、帯電防止剤、難燃剤、染料や顔料等の着色剤、潤滑剤、離型剤、結晶化促進剤、結晶核剤等も要求性能に応じ適宜添加することができる。その他の充填剤とは、(B)ウィスカー及び(C)板状充填剤以外の充填剤をいい、例えば、シリカ等の粒状充填剤が挙げられる。
【0048】
[液晶性樹脂組成物の調製方法]
本発明の液晶性樹脂組成物の調製方法は特に限定されない。例えば、(A)〜(C)成分を配合して、これらを1軸又は2軸押出機を用いて溶融混練処理することで、液晶性樹脂組成物の調製が行われる。
【0049】
本発明の液晶性樹脂組成物は、好ましくはコネクター用であり、前記コネクターは、前記液晶性樹脂組成物の成形品からなり、前記成形品は、厚肉部と薄肉部との肉厚差が0.5mm以上である偏肉構造を有し、前記成形品のゲート部から前記厚肉部に至る経路が前記薄肉部を経由する形状を有する。前記成形品は、上述の形状を有するため、その製造時には、溶融した液晶性樹脂組成物が薄肉部から厚肉部へ流動することが必要である。本発明の液晶性樹脂組成物は、単に、厚肉部と薄肉部との肉厚差が0.5mm以上である偏肉構造を有するだけではなく、薄肉部から厚肉部への液晶性樹脂組成物の流動が必要な成形品からなるコネクターにおいて、ブリスターの発生を効果的に抑制することができる。なお、かかるコネクターの代表例としては、DDRコネクター等のメモリーモジュール用コネクター;SATAコネクター等のインターフェースコネクターが挙げられる。DDRコネクターとしては、例えば、DDR−DIMMコネクター、DDR2−DIMMコネクター、DDR−SO−DIMMコネクター、DDR2−SO−DIMMコネクター、DDR−Micro−DIMMコネクター、DDR2−Micro−DIMMコネクター等が挙げられる。
【0050】
また、本発明の液晶性樹脂組成物は、好ましくはリフロー工程を経るコネクター用であり、前記リフロー工程は、プレヒートゾーンにおける加熱とリフローゾーンにおける加熱とを含み、前記プレヒートゾーンにおいて、設定温度は140〜170℃、処理時間は1〜3分間であり、前記リフローゾーンにおいて、設定温度は180〜210℃、処理時間は30〜120秒であるとともに、実測の平均温度は183℃以上、実測のピーク温度は220〜270℃である。前記プレヒートゾーンでは、温度を140〜170℃で1〜3分間維持することにより、半田ペーストが加熱され、ペースト内のフラックスが半田付けされる表面を適切に洗浄することができる。プレヒートゾーンにおける加熱後、例えば、オーブンの温度を毎秒1〜3℃で上昇させることによって、前記リフローゾーンにおける加熱に遷移することができる。前記リフローゾーンでは、設定温度が180〜210℃、処理時間が30〜120秒であることにより、コネクターの実温度が少なくとも60秒以上、183℃(半田の融点)以上になる結果、半田付けによる歪やブリッジ、低温状態での接続等を効果的に防ぐことができることに加え、実測のピーク温度220〜260℃での処理時間が30〜120秒維持されるため、十分なリフローを完結することができる。本発明の液晶性樹脂組成物は、リフロー工程を経るコネクターにおいて、ブリスターの発生を効果的に抑制することができる。
【0051】
以下、実施例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明は以下の実施例に限定されない。
【0052】
(A)液晶性樹脂
(液晶性ポリマー1の製造方法)
撹拌機、還流カラム、モノマー投入口、窒素導入口、減圧/流出ラインを備えた重合容器に、以下の原料モノマー、金属触媒、アシル化剤を仕込み、窒素置換を開始した。
(I)4−ヒドロキシ安息香酸:1380g(60モル%)(HBA)
(II)6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸:157g(5モル%)(HNA)
(III)テレフタル酸:484g(17.5モル%)(TA)
(IV)4,4’−ジヒドロキシビフェニル:388g(12.5モル%)(BP)
(V)4−アセトキシアミノフェノール:17.2g(5モル%)(APAP)
酢酸カリウム触媒:110mg
無水酢酸:1659g
【0053】
重合容器に原料を仕込んだ後、反応系の温度を140℃に上げ、140℃で1時間反応させた。その後、更に340℃まで4.5時間かけて昇温し、そこから15分かけて10Torr(即ち、1330Pa)まで減圧して、酢酸、過剰の無水酢酸、その他の低沸分を留出させながら溶融重合を行った。撹拌トルクが所定の値に達した後、窒素を導入して減圧状態から常圧を経て加圧状態にして、重合容器の下部からポリマーを排出し、ストランドをペレタイズしてペレット化した。得られたペレットの融点は336℃、融点と結晶化温度との差Tm−Tcは40℃、溶融粘度は20Pa・sであった。
【0054】
(液晶性ポリマー2の製造方法)
撹拌機、還流カラム、モノマー投入口、窒素導入口、減圧/流出ラインを備えた重合容器に、以下の原料モノマー、脂肪酸金属塩触媒、アシル化剤を仕込み、窒素置換を開始した。
(I)4−ヒドロキシ安息香酸1385g(60モル%)(HBA)
(II)6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸88g(2.8モル%)(HNA)
(III)テレフタル酸504g(18.15モル%)(TA)
(IV)イソフタル酸19g(0.7モル%)(IA)
(V)4,4’−ジヒドロキシビフェニル415g(13.35モル%)(BP)
(VI)N−アセチル−p−アミノフェノール126g(5モル%)(APAP)
酢酸カリウム触媒120mg
無水酢酸1662g
原料を仕込んだ後、反応系の温度を140℃に上げ、140℃で1時間反応させた。その後、更に360℃まで5.5時間かけて昇温し、そこから20分かけて10Torr(即ち1330Pa)まで減圧にして、酢酸、過剰の無水酢酸、その他の低沸分を留出させながら溶融重合を行った。撹拌トルクが所定の値に達した後、窒素を導入して減圧状態から常圧を経て加圧状態にして、重合容器の下部からポリマーを排出し、ストランドをペレタイズしてペレット化した。得られたペレットの融点は345℃、Tm−Tcは37℃、溶融粘度は10Pa・sであった。
【0055】
(液晶性ポリマー3の製造方法)
撹拌機、還流カラム、モノマー投入口、窒素導入口、減圧/流出ラインを備えた重合容器に、以下の原料モノマー、金属触媒、アシル化剤を仕込み、窒素置換を開始した。
(I)4−ヒドロキシ安息香酸:1040g(48モル%)(HBA)
(II)6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸:89g(3モル%)(HNA)
(III)テレフタル酸:547g(21モル%)(TA)
(IV)イソフタル酸:91g(3.5モル%)(IA)
(V)4,4’−ジヒドロキシビフェニル:716g(24.5モル%)(BP)
酢酸カリウム触媒:110mg
無水酢酸:1644g
【0056】
重合容器に原料を仕込んだ後、反応系の温度を140℃に上げ、140℃で1時間反応させた。その後、更に360℃まで5.5時間かけて昇温し、そこから20分かけて5Torr(即ち、667Pa)まで減圧して、酢酸、過剰の無水酢酸、その他の低沸分を留出させながら溶融重合を行った。撹拌トルクが所定の値に達した後、窒素を導入して減圧状態から常圧を経て加圧状態にして、重合容器の下部からポリマーを排出し、ストランドをペレタイズしてペレット化した。得られたペレットの融点は355℃、Tm−Tcは48℃、溶融粘度は10Pa・sであった。
なお、液晶性ポリマー1〜3の溶融粘度は、後述する液晶性樹脂組成物の溶融粘度の測定方法と同様にして測定した。
【0057】
(充填剤)
(B)繊維状充填剤
ミルドファイバー:日本電気硝子(株)製EPH150M−01M、繊維径10.5μm、数平均繊維長150μm
ガラス繊維:日本電気硝子(株)製ECS03T−786H、繊維径10μm、長さ3mmのチョプドストランド
ケイ酸カルシウムウィスカー:NYCO Materials社製NYGLOS 8、数平均繊維長136μm、平均繊維径8μm
(C)板状充填剤
タルク:松村産業(株)製クラウンタルクPP、平均粒子径12.8μm
(D)球状充填剤
ガラスビーズ:ポッターズ・バロティーニ(株)製EGB731、平均粒子径20.0μm
【0058】
[液晶性樹脂組成物の製造]
成分を、表1、表2、又は表3に示す割合で二軸押出機((株)日本製鋼所製TEX30α型)を用いて、シリンダー温度350℃にて溶融混練し、液晶性樹脂組成物ペレットを得た。その際、実施例1〜11、比較例1〜4、6、7では、押出機のメインフィード口から液晶性樹脂を供給し、メインフィード口より押出方向後方に設けられたサイドフィード口から充填剤を供給した。一方、比較例5では、押出機のメインフィード口から液晶性樹脂及び充填剤を供給した。なお、表中の「%」は質量%を示す。
【0059】
[融点の測定]
TAインスツルメント社製DSCにて、液晶性ポリマーを室温から20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm1)の観測後、(Tm1+40)℃の温度で2分間保持した後、20℃/分の降温条件で室温まで一旦冷却した後、再度、20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピークの温度を測定した。
【0060】
[結晶化温度の測定]
TAインスツルメント社製DSCにて、液晶性ポリマーを室温から20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm1)の観測後、(Tm1+40)℃の温度で2分間保持した後、20℃/分の降温条件で測定した際に観測される発熱ピーク温度を測定した。
【0061】
[スウェル比の測定]
液晶性樹脂組成物のスウェル比を、ペレットを用いて測定した。具体的には、キャピラリー式レオメーター((株)東洋精機製作所製、キャピログラフ1D:ピストン径10mm)により、下記シリンダー温度、せん断速度2432sec−1の条件で、ISO 11443に準拠して流動性を測定する際に、内径1mm、長さ20mmのオリフィスから押し出されて膨張し又は収縮した後、寸法が安定した時点で、押出品の外径Dを測定した。オリフィスの内径をdとしたとき、D/dを算出し、得られた値をスウェル比とした。結果を表1又は表2に示す。
シリンダー温度:
350℃(実施例1、2、4〜11、比較例2〜7)
360℃(実施例3)
370℃(比較例1)
【0062】
[溶融粘度の測定]
液晶性樹脂組成物の溶融粘度を、ペレットを用いて測定した。具体的には、キャピラリー式レオメーター((株)東洋精機製作所製、キャピログラフ1D:ピストン径10mm)により、下記シリンダー温度、せん断速度1000sec−1の条件での見かけの溶融粘度をISO 11443に準拠して測定した。測定には、内径1mm、長さ20mmのオリフィスを用いた。結果を表1又は表2に示す。
シリンダー温度:
350℃(実施例1、2、4〜11、比較例2〜7)
360℃(実施例3)
370℃(比較例1)
【0063】
[荷重たわみ温度(DTUL)の測定]
ペレットを、成形機(住友重機械工業(株)製 「SE100DU」)を用いて、以下の成形条件で成形し、測定用試験片(80mm×10mm×4mm)を得た。この試験片を用いて、ISO75−1,2に準拠した方法で荷重たわみ温度を測定した。なお、曲げ応力としては、1.8MPaを用いた。結果を表1又は表2に示す。
〔成形条件〕
シリンダー温度:
350℃(実施例1、2、4〜11、比較例2〜7)
360℃(実施例3)
370℃(比較例1)
金型温度: 90℃
射出速度: 33mm/sec
【0064】
[曲げ試験]
ペレットを、成形機(住友重機械工業(株)製 「SE100DU」)を用いて、以下の成形条件で成形し、80mm×10mm×4mmの曲げ試験片を作製した。この試験片を用いて、ISO178に準拠し、曲げ強度及び曲げ弾性率を測定した。結果を表1又は表2に示す。
〔成形条件〕
シリンダー温度:
350℃(実施例1、2、4〜11、比較例2〜7)
360℃(実施例3)
370℃(比較例1)
金型温度: 90℃
射出速度: 33mm/sec
保圧: 50MPa
【0065】
[平面度の測定]
ペレットを、成形機(住友重機械工業(株)製 「SE−100DU」)を用いて、以下の成形条件で成形し、80mm×80mm×1mmの平板状試験片を5枚作製した。1枚目の平板状試験片を水平面に静置し、(株)ミツトヨ製のCNC画像測定機(型式:QVBHU404−PRO1F)を用いて、平板状試験片上の9箇所において、水平面からの高さを測定し、得られた測定値から平均の高さを算出した。高さを測定した位置は、平板状試験片の主平面上に、この主平面の各辺からの距離が3mmとなるように、一辺が74mmの正方形を置いたときに、この正方形の各頂点、この正方形の各辺の中点、及びこの正方形の2本の対角線の交点に該当する位置である。水平面からの高さが平均の高さと同一であり、水平面と平行な面を基準面とした。9箇所で測定された高さの中から、基準面からの最大高さと最小高さとを選択し、両者の差を算出した。同様にして、他の4枚の平板状試験片についてもの差を算出し、得られた5個の値を平均して、平面度の値とした。結果を表1又は表2に示す。
〔成形条件〕
シリンダー温度:
350℃(実施例1、2、4〜11、比較例2〜7)
360℃(実施例3)
370℃(比較例1)
金型温度: 90℃
射出速度: 33mm/sec
保圧: 60MPa
【0066】
[ブリスター温度の測定]
ペレットを、成形機(住友重機械工業(株)製 「SE100DU」)を用いて、以下の成形条件で成形し、ウェルド部を有する12.5mm×120mm×0.8mmの成形品を得た。この成形品をウェルド部で二分割して得た断片を1検体とし、所定温度のホットプレスに5分間挟んだ。その後、目視にて検体の表面にブリスターが発生しているかどうかを調べた。ブリスター温度は、ブリスターの発生個数がゼロとなる最高温度とした。なお、所定温度は250〜300℃の範囲において10℃刻みで設定した。
〔成形条件〕
シリンダー温度:
350℃(実施 例1、2、4〜11、比較例2〜7)
360℃(実施例3)
370℃(比較例1)
金型温度: 90℃
射出速度: 33mm/sec
【0067】
[段差感度ブリスター評価]
ペレットを、成形機((株)ソディック製 「TR100EH」)を用いて、以下の成形条件で成形し、図3に示すような、段差0.5mm/0.4mm又は段差0.2mm/0.3mmを有する12.9mm×73.0mm×0.8mmの成形品を得た。
〔成形条件〕
シリンダー温度:
350℃(実施例1、2、4〜11、比較例2〜7)
360℃(実施例3)
370℃(比較例1)
金型温度:80℃
射出速度:100、200、300、又は400mm/sec
【0068】
得られた成形品に対し、下記条件でIRリフローを行い、ブリスター発生の有無を目視で観察した。なお、成形品はゲートを境に異なる段差を有するところ、本評価においては各段差を独立した検体と見なした。段差4条件×射出速度4条件の計16条件の各々について、10本の検体の評価を行い、合計160本の検体中で、ブリスターが発生した検体の本数をカウントした。結果を表1又は表2に示す。
[IRリフロー条件]
測定機:日本パルス技術研究所製大型卓上リフローハンダ付け装置RF−300(遠赤外線ヒーター使用)
試料送り速度:140mm/sec
リフロー炉通過時間:5分
プレヒートゾーンの設定温度:150℃(処理時間:60秒)
実測の平均温度:150℃
リフローゾーンの設定温度:190℃(処理時間:60秒)
実測の平均温度:230℃以上
実則のピーク温度:251℃
【0069】
[DDR型ブリスター評価]
下記成形条件で、液晶性樹脂組成物を射出成形し(ゲート:トンネルゲート、ゲートサイズ:φ0.75mm)、図1に示すような、全体の大きさ70.0mm×26.0mm×4.0mmt、ピッチ間距離0.6mm、ピン孔数100×2のDDR−DIMMコネクターを得た。
〔成形条件〕
成形機:住友重機械工業SE30DUZ
シリンダー温度:
350℃(実施例1、2、4〜11、比較例2〜7)
360℃(実施例3)
370℃(比較例1)
金型温度:80℃
射出速度:200mm/sec
【0070】
得られたコネクターに対し、下記条件でIRリフローを行い、ブリスター発生の有無を目視で観察した。結果を表1又は表2に示す。表中、ブリスター発生なしを「○」で、ブリスター発生ありを「×」で示す。
[IRリフロー条件]
測定機:日本パルス技術研究所製大型卓上リフローハンダ付け装置RF−300(遠赤外線ヒーター使用)
試料送り速度:140mm/sec
リフロー炉通過時間:5分
プレヒートゾーンの設定温度:150℃(処理時間:60秒)
実測の平均温度:150℃
リフローゾーンの設定温度:190℃(処理時間:60秒)
実測の平均温度:230℃以上
実測のピーク温度:251℃
【0071】
[FPC型ブリスター評価]
下記成形条件で、液晶性樹脂組成物を射出成形し(ゲート:トンネルゲート、ゲートサイズ:φ0.4mm)、図2に示すような、全体の大きさ17.6mm×4.00mm×1.16mm、ピッチ間距離0.5mm、ピン孔数30×2ピン、最小肉厚:0.12mmのFPCコネクターを得た。
〔成形条件〕
成形機:住友重機械工業、SE30DUZ
シリンダー温度:
350℃(実施例1、2、4〜11、比較例2〜7)
360℃(実施例3)
370℃(比較例1)
金型温度:80℃
射出速度:200mm/sec
保圧力:50MPa
保圧時間:0.5秒
冷却時間:10秒
スクリュー回転数:120rpm
スクリュー背圧:1.2MPa
【0072】
得られたコネクターに対し、下記条件でIRリフローを行い、ブリスター発生の有無を目視で観察した。結果を表1又は表2に示す。表中、ブリスター発生なしを「○」で、ブリスター発生ありを「×」で示す。
[IRリフロー条件]
測定機:日本パルス技術研究所製大型卓上リフローハンダ付け装置RF−300(遠赤外線ヒーター使用)
試料送り速度:140mm/sec
リフロー炉通過時間:5分
プレヒートゾーンの設定温度:150℃(処理時間:60秒)
実測の平均温度:150℃
リフローゾーンの設定温度:190℃(処理時間:60秒)
実測の平均温度:230℃以上
実測のピーク温度:251℃
【0073】
【表1】
【0074】
【表2】
【0075】
【表3】
【0076】
表1、表2、及び表3から分かる通り、本発明の液晶性樹脂組成物は、(A)液晶性樹脂、(B)ウィスカー、及び(C)板状充填剤を含有し、スウェル比が1.00超であることにより、機械的強度を維持し、かつ、そり変形が抑制されるとともに、ブリスター発生が抑制された成形品を与えるものであった。
【図1】
【図2】
【図3】
【国際調査報告】

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