(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または炭素数1〜6のアルキル基であり;jは、各出現においてそれぞれ独立して、1〜3の整数であり;nは、任意の整数である。]で表されるシルセスキオキサン化合物を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本開示は、下記式(I):
(R
aSiO
1.5)
n
[式中:
R
aは、各出現において各々独立して、R
bまたはR
cであり;
ただし、少なくとも1つのR
aはR
bであり;
R
bは、−R
1−CF
2−R
2−R
3であり;
R
1は、二価の基であり;
R
2は、二価のポリマー鎖であり;
R
3は、ハロゲン原子または水素原子であり;
R
cは、水素原子、アルキル基、フェニル基、または−(OSiR
152)
j−R
15であり;
R
15は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または炭素数1〜6のアルキル基であり、
jは、各出現においてそれぞれ独立して、1〜3の整数であり、
nは、任意の整数である。]
で表されるシルセスキオキサン化合物を提供する。
【0008】
上記式中、R
aは、いわゆるシルセスキオキサンの枝鎖であり、各出現において各々独立して、R
bまたはR
cである。ただし、少なくとも1つのR
aはR
bである。
【0009】
上記式中、R
bは、−R
1−CF
2−R
2−R
3である。
【0011】
上記二価の有機基とは、炭素を含有する2価の基を意味する。かかる2価の有機基としては、代表的には、2価の炭化水素基、およびかかる2価の炭化水素基の骨格の末端または分子鎖中に、1つまたはそれ以上のN、O、S、Si、アミド、スルホニル、シロキサン、カルボニル、カルボニルオキシ等を有する基が挙げられる。好ましい態様において、2価の有機基としては、2価の炭化水素基である。
【0012】
本明細書において用いられる場合、「2価の炭化水素基」とは、炭素および水素を含む2価の基である。かかる2価の炭化水素基としては、特に限定されるものではないが、1つまたはそれ以上の置換基により置換されていてもよい、2価の脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基等が挙げられる。上記「脂肪族炭化水素基」は、直鎖状、分枝鎖状または環状のいずれであってもよく、飽和または不飽和のいずれであってもよい。また、炭化水素基は、1つまたはそれ以上の環構造を含んでいてもよい。炭化水素基は、好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数2〜10の炭化水素基である。
【0013】
上記炭化水素基の置換基としては、特に限定されないが、例えば、ハロゲン原子;および、1個またはそれ以上のハロゲン原子により置換されていてもよい、C
1−6アルキル基、C
2−6アルケニル基、C
2−6アルキニル基、C
3−10シクロアルキル基、C
3−10不飽和シクロアルキル基、5〜10員のヘテロシクリル基、5〜10員の不飽和ヘテロシクリル基、C
6−10アリール基および5〜10員のヘテロアリール基から選択される1個またはそれ以上の基が挙げられる。
【0014】
一の態様において、R
1は、−(OSiR
412)
k−R
42−であり得る。
【0015】
上記R
41は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または炭素数1〜6のアルキル基であり、好ましくは水素原子またはメチル基である。
【0016】
上記kは、各出現においてそれぞれ独立して、0〜3の整数である。
【0017】
一の態様において、kは0である。即ち、R
1は、R
42である。
【0018】
別の態様において、kは1〜3の整数である。
【0019】
上記R
42は、各出現においてそれぞれ独立して、置換されていてもよい、炭素数1〜10のアルキレン、炭素数2〜10のアルケニレン、炭素数2〜10のアルキニレン、炭素数6〜22のアリーレン、炭素数6〜22のヘテロアリーレン、炭素数2〜10のエーテル、または炭素数1〜10のエステル、あるいはこれらの基から選択される2〜5つの基の組み合わせであり得る。
【0020】
好ましい態様において、R
42は、各出現においてそれぞれ独立して、置換されていてもよい、特にフッ素原子により置換されていてもよい、炭素数1〜10のアルキレン、炭素数6〜22のアリーレン、または炭素数2〜10のエーテルであり得る。
【0021】
別の好ましい態様において、R
42は、各出現においてそれぞれ独立して、置換されていてもよい、特にフッ素原子により置換されていてもよい、炭素数1〜10のアルキレンであり得る。
【0022】
上記R
42の置換基としては、特に限定されないが、好ましくは、ハロゲン原子;ならびに、1個またはそれ以上のハロゲン原子により置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基および5〜10員のヘテロアリール基から選択される1個またはそれ以上の基が挙げられる。上記R
42の置換基は、好ましくはハロゲン原子、より好ましくはヨウ素原子または臭素原子、さらに好ましくはヨウ素原子を含み得る。
【0023】
好ましい態様において、R
42は、各出現においてそれぞれ独立して、−R
43−CR
44R
45−CHR
46−(CR
482)
l−である。
【0024】
上記R
43は、単結合、置換されていてもよい、炭素数1〜7のアルキレン、炭素数2〜7のアルケニレン、炭素数2〜7のアルキニレン、炭素数6〜22のアリーレン、炭素数6〜22のヘテロアリーレン、炭素数2〜7のエーテル、または炭素数1〜7のエステル、あるいはこれらの基から選択される2〜5つの基の組み合わせであり得る。
【0025】
上記R
43は、好ましくは、−R
49−R
50−R
51−である。
【0026】
上記R
49は、単結合または炭素数1〜7のアルキレンであり得る。
【0027】
上記R
50は、単結合、炭素数6〜22のアリーレンまたは炭素数6〜22のヘテロアリーレンであり、好ましくは単結合、または炭素数6〜22のアリーレンである。かかる炭素数6〜22のアリーレンは、フェニレンまたはナフチレンが好ましい。
【0028】
上記R
51は、単結合または炭素数1〜7のアルキレンであり得る。
【0029】
上記R
43は、好ましくは、単結合、または炭素数1〜7のアルキレンであり得る。
【0030】
上記R
44は、水素原子、臭素原子またはヨウ素原子であり、好ましくは臭素原子またはヨウ素原子であり、より好ましくはヨウ素原子である。
【0031】
上記R
45およびR
46は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1〜3のアルキル基であり、好ましくは水素原子である。
【0032】
上記R
48は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子またはフッ素原子であり、好ましくはフッ素原子である。
【0033】
上記lは、1〜8の整数であり、好ましくは1〜5の整数である。
【0034】
一の態様において、R
1は、−(CF
2)
s1−(s1は、2〜10の整数である。)または−(CF
2)
t1O(CF
2)
t2−(t1およびt2は、それぞれ独立して、2〜6の整数である。)である。
【0035】
上記式中、R
2は、二価のポリマー鎖である。
【0036】
上記二価のポリマー鎖とは、1種またはそれ以上のモノマー由来のユニットが少なくとも2、好ましくは5以上、好ましくは20以上結合した鎖を意味する。
【0037】
一の態様において、上記モノマーは、少なくとも1つのフッ素原子を有するモノマー(以下、「含フッ素モノマー」ともいう)である。
【0038】
一の態様において、上記含フッ素モノマーは、パーフルオロポリエーテル基またはパーフルオロアルキル基、および下記する重合性基Aを有する化合物であり得る。
【0039】
上記含フッ素モノマーは、2以上のパーフルオロポリエーテル基またはパーフルオロアルキル基、および、重合性基Aを有していてもよい。
【0040】
上記パーフルオロアルキル基は、C
jF
2j+1(jは、1〜30の整数、好ましくは3〜20の整数、例えば5〜10の整数である)で表される基である。パーフルオロアルキル基は、直鎖であってもよく分枝鎖であってもよいが、好ましくは直鎖である。
【0041】
一の態様において、上記パーフルオロアルキル基は、炭素原子数1〜10の直鎖状のパーフルオロアルキル基である。具体的には、上記パーフルオロアルキル基は、F−(CF
2)
nで表され、nは1〜10の整数、より好ましくは、nは4〜8の整数、例えば6である。
【0042】
上記パーフルオロポリエーテル基(以下、「PFPE」ともいう)は、下記式:
−(OC
6F
12)
a−(OC
5F
10)
b−(OC
4F
8)
c−(OC
3F
6)
d−(OC
2F
4)
e−(OCF
2)
f−
で表される基である。式中、a、b、c、d、eおよびfは、それぞれ独立して0以上200以下の整数であって、a、b、c、d、eおよびfの和は少なくとも1である。好ましくは、a、b、c、d、eおよびfは、それぞれ独立して、0以上100以下の整数である。好ましくは、a、b、c、d、eおよびfの和は5以上であり、より好ましくは10以上である。好ましくは、a、b、c、d、eおよびfの和は200以下であり、より好ましくは100以下であり、例えば10以上200以下であり、より具体的には10以上100以下である。また、a、b、c、d、eまたはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。
【0043】
これら繰り返し単位は、直鎖状であっても、分枝鎖状であってもよいが、好ましくは直鎖状である。例えば、−(OC
6F
12)−は、−(OCF
2CF
2CF
2CF
2CF
2CF
2)−、−(OCF(CF
3)CF
2CF
2CF
2CF
2)−、−(OCF
2CF(CF
3)CF
2CF
2CF
2)−、−(OCF
2CF
2CF(CF
3)CF
2CF
2)−、−(OCF
2CF
2CF
2CF(CF
3)CF
2)−、−(OCF
2CF
2CF
2CF
2CF(CF
3))−等であってもよいが、好ましくは−(OCF
2CF
2CF
2CF
2CF
2CF
2)−である。−(OC
5F
10)−は、−(OCF
2CF
2CF
2CF
2CF
2)−、−(OCF(CF
3)CF
2CF
2CF
2)−、−(OCF
2CF(CF
3)CF
2CF
2)−、−(OCF
2CF
2CF(CF
3)CF
2)−、−(OCF
2CF
2CF
2CF(CF
3))−等であってもよいが、好ましくは−(OCF
2CF
2CF
2CF
2CF
2)−である。−(OC
4F
8)−は、−(OCF
2CF
2CF
2CF
2)−、−(OCF(CF
3)CF
2CF
2)−、−(OCF
2CF(CF
3)CF
2)−、−(OCF
2CF
2CF(CF
3))−、−(OC(CF
3)
2CF
2)−、−(OCF
2C(CF
3)
2)−、−(OCF(CF
3)CF(CF
3))−、−(OCF(C
2F
5)CF
2)−および−(OCF
2CF(C
2F
5))−のいずれであってもよいが、好ましくは−(OCF
2CF
2CF
2CF
2)−である。−(OC
3F
6)−は、−(OCF
2CF
2CF
2)−、−(OCF(CF
3)CF
2)−および−(OCF
2CF(CF
3))−のいずれであってもよいが、好ましくは−(OCF
2CF
2CF
2)−である。また、−(OC
2F
4)−は、−(OCF
2CF
2)−および−(OCF(CF
3))−のいずれであってもよいが、好ましくは−(OCF
2CF
2)−である。
【0044】
一の態様において、上記PFPEは、−(OC
3F
6)
d−(式中、dは1以上200以下、好ましくは5以上200以下、より好ましくは10以上200以下の整数である)である。好ましくは、PFPEは、−(OCF
2CF
2CF
2)
d−(式中、dは1以上200以下、好ましくは5以上200以下、より好ましくは10以上200以下の整数である)または−(OCF(CF
3)CF
2)
d−(式中、dは1以上200以下、好ましくは5以上200以下、より好ましくは10以上200以下の整数である)である。より好ましくは、PFPEは、−(OCF
2CF
2CF
2)
d−(式中、dは1以上200以下、好ましくは5以上200以下、より好ましくは10以上200以下の整数である)である。
【0045】
別の態様において、PFPEは、−(OC
4F
8)
c−(OC
3F
6)
d−(OC
2F
4)
e−(OCF
2)
f−(式中、cおよびdは、それぞれ独立して0以上30以下の整数であり、eおよびfは、それぞれ独立して1以上200以下、好ましくは5以上200以下、より好ましくは10以上200以下の整数であり、c、d、eおよびfの和は、好ましくは10以上200以下の整数であり、添字c、d、eまたはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意である)である。好ましくは、PFPEは、−(OCF
2CF
2CF
2CF
2)
c−(OCF
2CF
2CF
2)
d−(OCF
2CF
2)
e−(OCF
2)
f−である。一の態様において、PFPEは、−(OC
2F
4)
e−(OCF
2)
f−(式中、eおよびfは、それぞれ独立して1以上200以下、好ましくは5以上200以下、より好ましくは10以上200以下の整数であり、添字eまたはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意である)であってもよい。
【0046】
さらに別の態様において、PFPEは、−(R
61−R
62)
k−で表される基である。式中、R
61は、OCF
2またはOC
2F
4であり、好ましくはOC
2F
4である。式中、R
62は、OC
2F
4、OC
3F
6、OC
4F
8、OC
5F
10およびOC
6F
12から選択される基であるか、あるいは、これらの基から独立して選択される2または3つの基の組み合わせである。好ましくは、R
62は、OC
2F
4、OC
3F
6およびOC
4F
8から選択される基であるか、あるいは、これらの基から独立して選択される2または3つの基の組み合わせである。OC
2F
4、OC
3F
6およびOC
4F
8から独立して選択される2または3つの基の組み合わせとしては、特に限定されないが、例えば−OC
2F
4OC
3F
6−、−OC
2F
4OC
4F
8−、−OC
3F
6OC
2F
4−、−OC
3F
6OC
3F
6−、−OC
3F
6OC
4F
8−、−OC
4F
8OC
4F
8−、−OC
4F
8OC
3F
6−、−OC
4F
8OC
2F
4−、−OC
2F
4OC
2F
4OC
3F
6−、−OC
2F
4OC
2F
4OC
4F
8−、−OC
2F
4OC
3F
6OC
2F
4−、−OC
2F
4OC
3F
6OC
3F
6−、−OC
2F
4OC
4F
8OC
2F
4−、−OC
3F
6OC
2F
4OC
2F
4−、−OC
3F
6OC
2F
4OC
3F
6−、−OC
3F
6OC
3F
6OC
2F
4−、および−OC
4F
8OC
2F
4OC
2F
4−等が挙げられる。上記kは、2〜100の整数、好ましくは2〜50の整数である。上記式中、OC
2F
4、OC
3F
6、OC
4F
8、OC
5F
10およびOC
6F
12は、直鎖または分枝鎖のいずれであってもよく、好ましくは直鎖である。この態様において、PFPEは、好ましくは、−(OC
2F
4−OC
3F
6)
k−または−(OC
2F
4−OC
4F
8)
k−である。
【0047】
一の態様において、PFPEは、炭素数1〜2のオキシペルフルオロアルキレン基の少なくとも1種からなる基(α)の1〜3つと、炭素数3〜6のオキシペルフルオロアルキレン基の少なくとも1種からなる基(β)の1〜3つとを有する単位(αβ)を単位とし、前記単位(αβ)の2つ以上が連結してなる鎖((αβ)
i)を有する基であってもよい。
【0048】
上記化合物は、鎖((αβ)
i)に属さない他のオキシペルフルオロアルキレン基を有していてもよい。
【0049】
単位(αβ)中の基(α)と基(β)の順は特に限定されない。例えば、基(α)が2つ存在する場合、2つの基(α)は連結していてもよく、少なくとも1つの基(β)を介して結合していてもよい。
【0050】
上記PFPEは、単位(αβ)の2つ以上が連結してなる鎖((αβ)
i)を有していてもよい。単位(αβ)の一方の端部が基(α)であり、他方の端部が基(β)である場合、鎖((αβ)
i)としては、単位(αβ)の2つ以上が、単位間で基(α)と基(β)とが交互に配置されるように連結することが好ましい。すなわち、隣接する単位(αβ)が頭−尾構造(ヘッド ツー テイル構造)となるように結合していることが好ましい。単位(αβ)において、基(α)基(β)の結合順序は限定されない。すなわち、基(α)と基(β)がランダムに配置されてもよく、基(α)と基(β)とが交互に配置されてもよく、複数の基からなるブロックの2以上が連結してもよい。
【0051】
単位(αβ)としては、下記が例示される。
(CF
2CF
2O−CF
2CF
2CF
2O)、
(CF
2CF
2O−CF
2CF
2CF
2CF
2O)、
(CF
2CF
2O−CF
2CF
2CF
2OCF
2CF
2CF
2O)、
(CF
2CF
2O−CF
2CF(CF
3)OCF
2CF
2CF
2O)、
(CF
2CF
2O−CF
2CF
2CF
2CF
2OCF(CF
3)CF
2O)。
【0052】
上記PFPEの好ましい態様は、具体的には、下式(1)で表される。
−O−[(Rf
1O)
x1(Rf
2O)
x2(Rf
3O)
x3(Rf
4O)
x4(Rf
5O)
x5(Rf
6O)
x6]
i−
ただし、式中の記号は以下の通りである。
iは、1以上の整数であり、2以上の整数であることが好ましい。iの上限は45が好ましい。iは、4〜40が好ましく、5〜35が特に好ましい。
x1〜x2:それぞれ独立に0〜3の整数であり、x1+x2は1〜3の整数である。
x3〜x6:それぞれ独立に0〜3の整数であり、x3+x4+x5+x6は1〜3の整数である。
Rf
1:炭素数1のペルフルオロアルキレン基。
Rf
2:炭素数2のペルフルオロアルキレン基。
Rf
3:炭素数3のペルフルオロアルキレン基。
Rf
4:炭素数4のペルフルオロアルキレン基。
Rf
5:炭素数5のペルフルオロアルキレン基。
Rf
6:炭素数6のペルフルオロアルキレン基。
【0053】
上記重合性基Aは、特に限定されないが、例えばエチレン性二重結合を有する基ならびにこれらの誘導体が挙げられる。
【0054】
重合性基Aは、好ましくは下記式:
−R
163−CR
164=CR
1652
[式中、R
163は、単結合、−O−、−CO−または−OC(O)−であり、
R
164は、水素原子、フッ素原子、あるいはフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキル基(好ましくは、炭素数1〜3のアルキル基、より好ましくはメチル基)、ラクタム基(好ましくは、β-ラクタム、γ-ラクタムまたはδ-ラクタム基、より好ましくはγ-ラクタム基)またはフェニル基を表し、好ましくは、メチル基または水素原子であり、
R
165は、それぞれ独立して、水素原子、またはフッ素原子を表し、好ましくは水素原子である。]
で表される基である。
【0055】
本実施態様において、好ましい重合性基Aは、下記式:
−R
163−CR
164=CR
1652
[式中、R
163は、単結合または−OC(O)−であり、
R
164は、水素原子、フッ素原子、あるいはフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキル基(好ましくは、炭素数1〜3のアルキル基、より好ましくはメチル基)、ラクタム基(好ましくは、β-ラクタム、γ-ラクタムまたはδ-ラクタム基、より好ましくはγ-ラクタム基)またはフェニル基を表し、好ましくは、メチル基または水素原子であり、好ましくは、水素原子、フッ素原子、あるいはフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキル基(好ましくは、炭素数1〜3のアルキル基、より好ましくはメチル基)またはフェニル基を表し、より好ましくは、メチル基または水素原子であり、
R
165は、上記と同意義である。]
で表される基である。
【0056】
より好ましい重合性基Aは、下記式:
−OC(O)−CR
164=CR
1652
[式中、R
164およびR
165は、上記と同意義である。]
で表される基である。
【0057】
さらに好ましい重合性基Aは、アクリロイル基またはメタクリロイル基である。
【0058】
含フッ素モノマーの例としては、限定するものではないが、例えば、下記式(A1)、(A2)、(B1)および(B2)のいずれか:
【化1】
[式中、Rf
aは、それぞれ独立して、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1〜16のアルキル基を表し、
PFPEは、上記と同意義であり、
R
71は、それぞれ独立して、重合性基Aを表し、
Xは、2価の有機基を表し、
R
72は、下記式:
−(Q)
e1−(CFZ)
f1−(CH
2)
g1−
(式中、Qは、各出現においてそれぞれ独立して、酸素原子、フェニレン、カルバゾリレン、−NR−(式中、Rは、水素原子または有機基を表す)または2価の極性基を表し、Zは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子または低級フルオロアルキル基を表し、e1、f1およびg1は、それぞれ独立して、0以上50以下の整数であって、e1、f1およびg1の和は少なくとも1であり、括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。)
で表される基であり、
R
73は、それぞれ独立して、2価の有機基を表し、
R
74は、各出現においてそれぞれ独立して、R
74aまたはR
74bを表し:ただし、少なくとも1つのR
74はR
74aであり、
R
74aは、各出現においてそれぞれ独立して、重合性基を有する2価の有機基を表し、
R
74bは、各出現においてそれぞれ独立して、重合性基を有しない2価の有機基を表し、
n10は、それぞれ独立して、1以上50以下の整数であり、
R
75は、それぞれ独立して、−O−、−S−、−NH−または単結合を表し、
R
76は、それぞれ独立して、1価の有機基または水素原子を表す。]
で表される少なくとも1つの化合物が挙げられる。
【0059】
本明細書において用いられる場合、「1価の有機基」および「2価の有機基」とは、それぞれ、炭素を含有する1価および2価の基を意味する。
【0060】
上記式(A1)および(A2)中、R
71は、それぞれ独立して、重合性基Aを表す。
【0061】
R
71は、好ましくは、下記式:
−R
63−CR
64=CH
2
[式中、R
63は、単結合、−O−、−CO−または−OC(O)−であり、
R
64は、水素原子、フッ素原子、フッ素原子により置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキル基(好ましくは、炭素数1〜3のアルキル基、より好ましくはメチル基)、ラクタム基(好ましくは、β-ラクタム、γ-ラクタムまたはδ-ラクタム基、より好ましくはγ-ラクタム基)またはフェニル基を表し、好ましくは、メチル基または水素原子である。]
で表される基である。
【0062】
より好ましい重合性基は、下記式:
−OC(O)−CR
64=CH
2
[式中、R
64は、上記と同意義である。]
で表される基である。
【0063】
さらに好ましくは、R
71は、アクリロイル基またはメタクリロイル基である。
【0064】
上記式(A1)および(B1)中、Rf
aは、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1〜16のアルキル基を表す。
【0065】
上記1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1〜16のアルキル基における「炭素数1〜16のアルキル基」は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよく、好ましくは、直鎖または分枝鎖の炭素数1〜6、特に炭素数1〜3のアルキル基であり、より好ましくは直鎖の炭素数1〜3のアルキル基である。
【0066】
また、Rf
aは、好ましくは、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されている炭素数1〜16のアルキル基であり、より好ましくはCF
2H−C
1−15フルオロアルキレン基またはパーフルオロアルキル基であり、さらに好ましくは炭素数1〜16のパーフルオロアルキル基であり、さらにより好ましくは炭素数1〜6、特に炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基である。
【0067】
上記式(A1)および(A2)中、Xは、それぞれ独立して、2価の有機基を表す。当該X基は、PFPEとR
71とを連結するリンカーと解される。したがって、当該X基は、上記(A1)および(A2)で表される化合物が、安定に存在し得るものであれば、いずれの2価の有機基であってもよい。
【0068】
上記Xの例としては、特に限定するものではないが、例えば、下記式:
−(CFZ’)
x−(CH
2)
y−(Y’)
z−
[式中、Z’は、フッ素原子または炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基またはその誘導体基を表し、
Y’は、−OCO−、−OCONH−または−CONH−、あるいはこれらの1種を含有する有機基を表し、
x、yおよびzは、それぞれ独立して、0〜3の整数であり、
x、yまたはzを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。]
で表される基が好ましい。
【0069】
上記Xの具体的な例としては、例えば:
−CF
2CF
2CH
2−
−CF
2CF
2CH
2−OCO−
−CF
2CF
2CH
2−CONH−
−CF
2CF
2CH
2−OCONH−
等が挙げられる。
【0070】
上記式(B1)および(B2)中、R
72は、式:−(Q)
e1−(CFZ)
f1−(CH
2)
g1−で表される基である。ここに、e1、f1およびg1は、それぞれ独立して、0以上50以下の整数であって、e1、f1およびg1の和は少なくとも1であり、括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。
【0071】
上記式中、Qは、酸素原子、フェニレン、カルバゾリレン、−NR−(式中、Rは、水素原子または有機基を表す)または2価の極性基を表し、好ましくは酸素原子または2価の極性基であり、より好ましくは酸素原子である。
【0072】
上記Qにおける「2価の極性基」としては、特に限定されないが、−C(O)−、−C(=NR
h)−、および−C(O)NR
h−(これらの式中、R
hは、水素原子または低級アルキル基を表す)が挙げられる。当該「低級アルキル基」は、例えば、炭素数1〜6のアルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピルであり、これらは、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい。
【0073】
上記式中、Zは、水素原子、フッ素原子または低級フルオロアルキル基を表し、好ましくはフッ素原子である。
【0074】
上記「低級フルオロアルキル基」は、例えば、炭素数1〜6、好ましくは炭素数1〜3のフルオロアルキル基、好ましくは炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基、より好ましくはトリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、更に好ましくはトリフルオロメチル基である。
【0075】
R
72は、好ましくは、式:−(O)
e1−(CF
2)
f1−(CH
2)
g1−(式中、e1、f1およびg1は、上記と同意義であり、括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である)で表される基である。
【0076】
上記式:−(O)
e−(CF
2)
f−(CH
2)
g−で表される基としては、例えば、−(O)
e’−(CF
2)
f’−(CH
2)
g’−O−[(CH
2)
g”−O−]
g’’’(式中、e’は0または1であり、f’、g’およびg”は、それぞれ独立して、1〜10の整数であり、g’’’は、0または1である)で表される基が挙げられる。
【0077】
上記式(B1)および(B2)中、R
73は、2価の有機基を表す。
【0078】
R
73基は、好ましくは、−C(R
73a)(R
73b)−である。ここに、R
73aおよびR
73bは、それぞれ独立して、水素原子、またはアルキル基を表し、好ましくは、R
73aおよびR
73bの一方はアルキル基である。
【0079】
上記式(B1)および(B2)中、R
74は、各出現において、それぞれ独立して、R
74aまたはR
74bである。ただし、少なくとも1つのR
74は、R
74aである。
【0080】
上記R
74aは、各出現においてそれぞれ独立して、重合性基を有する2価の有機基を表す。
【0081】
R
74aは、好ましくは、下記式:
【化2】
で表される基である。
【0082】
上記式中、R
81は、各出現において、それぞれ独立して、水素原子、またはアルキル基を表す。当該R
81は、好ましくは水素原子である。
【0083】
上記式中、R
82は、各出現において、それぞれ独立して、水素原子、またはアルキル基を表す。当該R
82は、好ましくはメチル基または水素原子であり、より好ましくは水素原子である。
【0084】
上記式中、R
83は、各出現において、それぞれ独立して、重合性基を有する有機基を表す。
【0085】
かかる重合性基としては、上記と同様のものが挙げられるが、CH
2=CX
1−C(O)−(式中、X
1は、水素原子、塩素原子などのハロゲン原子、フッ素原子またはフッ素により置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキル基を表す)が好ましく、具体的にはCH
2=C(CH
3)−C(O)−またはCH
2=CH−C(O)−が挙げられる。
【0086】
上記式中、Y
1は、−O−、−N(R
f)−、フェニレンまたはカルバゾリレンを表す。ここでR
fは有機基を表し、好ましくはアルキル基である。
【0087】
Y
1は、好ましくは−O−、フェニレン、またはカルバゾリレンであり、より好ましくは−O−またはフェニレンであり、更に好ましくは−O−である。
【0088】
上記式中、Y
2は、主鎖の原子数が1〜16(より好ましくは2〜12、更に好ましくは2〜10)であるリンカーを表す。当該Y
2としては、特に限定されるものではないが、例えば、−(CH
2−CH
2−O)
p10−(p10は、1〜10の整数、例えば2〜10の整数を表す)、−(CHR
g)
p20−O−(p20は、1〜40の整数であり、R
gは、水素、またはメチル基を表す)、−(CH
2−CH
2−O)
p30−CO−NH−CH
2−CH
2−O−(p30は、1〜10の整数、例えば2〜10の整数を表す)、−CH
2−CH
2−O−CH
2−CH
2−、−(CH
2)
p40−(p40は1〜6の整数を表す)、−(CH
2)
p50−O−CONH−(CH
2)
p60−(p50は1〜8の整数、好ましくは、2または4を表し、p60は1〜6の整数、好ましくは3を表す)、または−O−(但し、Y
1は−O−ではない)が挙げられる。好ましいY
2としては、−(CH
2−CH
2−O)
p10−(p10は、1〜10の整数、例えば2〜10の整数を表す)または−(CHR
d)
p20−O−(p20は、1〜40の整数であり、R
dは、水素、またはメチル基を表す)、具体的には、−(CH
2−CH
2−O)
2−または−CH
2−CH
2−O−が挙げられる。なお、これらの基は、左端が分子主鎖側(Y
1側)に結合し、右端が重合性基側(R
83側)に結合する。
【0089】
R
74aは、さらに好ましくは、下記式:
【化3】
で表される基である。
【0090】
上記式中、X
1は、水素原子、塩素原子、フッ素原子などのハロゲン原子、またはフッ素により置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキル基を表し、好ましくは水素原子または炭素数1〜10のアルキル基、例えばメチル基である。上記式中、q1は、1〜10の整数であり、好ましくは1〜5の整数、例えば1または2である。q2は、1〜10の整数であり、好ましくは1〜5の整数、例えば2である。
【0091】
上記R
74bは、各出現においてそれぞれ独立して、重合性基を有しない2価の有機基である。
【0092】
R
74bは、好ましくは、−(CHR
74c−CR
74dR
74e)
s−である。ここに、R
74cおよびR
74dは、それぞれ独立して、水素原子、またはアルキル基を表し、sは0から50の整数であり、R
74e基は、−Q’−R
74fである。ここに、Q’は上記Qと同意義であり、R
74fは、重合性基を有しない有機基であり、後記の基R
74gがリンカーを介して、または直接Q’に結合する基である。
【0093】
当該リンカーは、好ましくは、
(a)−(CH
2−CH
2−O)
s1−(s1は、1〜10の整数、例えば2〜10の整数を表す。)、
(b)−(CHR
74h)
s2−O−(s2は、1〜40の整数である繰り返し数を表す。R
74hは、水素またはメチル基を表す。)、
(c)−(CH
2−CH
2−O)
s1−CO−NH−CH
2−CH
2−O−(s1は、上記と同意義である。)、
(d)−CH
2−CH
2−O−CH
2−CH
2−、
(e)−(CH
2)
s3−(s3は1〜6の整数を表す。)、または
(f)−(CH
2)
s4−O−CONH−(CH
2)
s5−(s4は1〜8の整数、好ましくは、2または4を表す。s5は1〜6の整数、好ましくは3を表す。)、または
(g)−O−(但し、Q’は−O−ではない)
である。
【0094】
R
74gは、好ましくは以下の基である。
(i)アルキル基
例:メチル、エチル
【0095】
(ii)フッ素で置換されたアルキル基を含有する鎖状基
例:
【化4】
【0096】
(iii)単環式炭素環、二環式炭素環、三環式炭素環、および四環式炭素環からなる群より選択される1個以上の環状部を含有する基
例:
【化5】
【0097】
(iv)1個以上(好ましくは1または2個)のカルボキシ基で置換された炭化水素基を含有する基
例:
【化6】
【0098】
(v)1個以上(好ましくは1個)のアミノ基を含有する基
(vi)水素原子
(vii)イミダゾリウム塩を含有する基
例:
【化7】
【0099】
R
74gは、より好ましくは、水素原子、またはフッ素化されていてもよく、かつエチレン鎖を介して結合してもよいアルキル基であり、より好ましくは、水素原子、メトキシエチル基、イソブチル基、またはR
3i−CF
2−(CF
2)
s6−(CH
2)
s7−O−(CH
2)
2−(R
3iはフッ素原子または水素原子であり、s6は0〜6の整数であり、およびs7は1〜6の整数である)であり、更に好ましくは、3−(ペルフルオロエチル)プロポキシエチル基[示性式:CF
3−(CF
2)−(CH
2)
3−O−(CH
2)
2−]である。
【0100】
上記R
74中、構成単位R
74aと構成単位R
74bは、それぞれがブロックを形成していてもよく、ランダムに結合していてもよい。
【0101】
上記式(B1)および(B2)中、n10は、1以上100以下の整数、好ましくは1以上50以下の整数、更に好ましくは2以上30以下の整数である。
【0102】
上記式(B1)および(B2)中、R
75は、−O−、−S−、−NH−または単結合を表し、好ましくは−O−である。
【0103】
上記式(B1)および(B2)中、R
76は、1価の有機基または水素原子を表す。
【0104】
R
76は、好ましくは、Rf
a−PFPE−R
72(式中、Rf
a、PFPEおよびR
72は、上記と同意義である)、またはフッ素により置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキル基、より好ましくは炭素数1〜6のアルキル基、更に好ましくはメチルである。
【0105】
一の態様において、上記式(B1)および(B2)で表される化合物は、それぞれ、以下の一般式(B1a)および(B2a):
【化8】
[式中、Rf
a、PFPE、R
73、R
76、X
1、Z、およびn10は、上記と同意義であり、
gは0または1であり、
hは1または2である。]
で表される少なくとも1種の化合物であってもよい。
【0106】
また、別の含フッ素モノマーの例としては、
C
nF
2n+1−X−R
71
[式中、R
71およびXは、上記と同意義であり、
nは、1〜30の整数、好ましくは3〜20の整数、例えば4〜10の整数である。]
で表される化合物である。
【0107】
さらに別の含フッ素モノマーは、式:
【化9】
[式中、Xは、水素原子、メチル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、CFX
1X
2基(但し、X
1およびX
2は、互いに独立して水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子である。)、シアノ基、炭素数1〜21の直鎖状または分岐状のフルオロアルキル基、置換もしくは非置換のベンジル基、または、置換もしくは非置換のフェニル基、
Yは、炭素数1〜10の脂肪族基、炭素数6〜10の芳香族基または環状脂肪族基、−CH
2CH
2N(R)SO
2−基(但し、Rは炭素数1〜4のアルキル基である。)または−CH
2CH(OY
1)CH
2−基(但し、Y
1は水素原子またはアセチル基である。)、
Rf
8は、炭素数1〜6の直鎖状または分岐状の、フルオロアルキル基もしくはフルオロアルケニル基である。]
で示される含フッ素アクリレートエステルである。
【0108】
含フッ素アクリレートエステルにおいて、Xは、水素原子またはメチル基であることが好ましい。
【0109】
上記式において、Rf
8基が、パーフルオロアルキル基またはパーフルオロアルケニル基であることが好ましい。フルオロアルキル基またはフルオロアルケニル基の炭素数は、1〜6、例えば1〜4である。
フルオロアルキル基の例は、−CF
3、−CF
2CF
3、−CF
2CF
2CF
3、−CF(CF
3)
2、−CF
2CF
2CF
2CF
3、−CF
2CF(CF
3)
2、−C(CF
3)
3、−(CF
2)
4CF
3、−(CF
2)
2CF(CF
3)
2、−CF
2C(CF
3)
3、−CF(CF
3)CF
2CF
2CF
3、−(CF
2)
5CF
3、−(CF
2)
3CF(CF
3)
2等である。
フルオロアルケニル基の例は、−CF=CF
2、−CF
2CF=CF
2、−(CF
2)
2CF=CF
2、−CF
2C(CF
3)=CF
2、−CF(CF
3)CF=CF
2、−(CF
2)
3CF=CF
2、−C(CF
3)
2CF=CF
2、−(CF
2)
2C(CF
3)=CF
2、−(CF
2)
4CF=CF
2、−(CF
2)
4CF=CF
2、−(CF
2)
3C(CF
3)=CF
2、等である。
【0110】
Yは、炭素数1〜10の脂肪族基、炭素数6〜10の芳香族基または環状脂肪族基、−CH
2CH
2N(R)SO
2−基(但し、Rは炭素数1〜4のアルキル基である。)または−CH
2CH(OY
1)CH
2−基(但し、Y
1は水素原子またはアセチル基である。)である。脂肪族基はアルキレン基(特に炭素数1〜4、例えば、1または2)であることが好ましい。芳香族基および環状脂肪族基は、置換されていてもあるいは置換されていなくてもどちらでもよい。
【0111】
含フッ素モノマーの例として、式:
【化10】
【0112】
[式中、Rf
9は炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基、
R
91は、水素原子または炭素数1〜10のアルキル基、
R
92は、炭素数1〜10のアルキレン基、
R
93は、水素原子またはメチル基、
Arは、置換基を有することもあるアリール基、
n9は、1〜10の整数を表す。]
で示される含フッ素アクリレートエステルを挙げることができる。
【0113】
一の態様において、上記式中、Rf
9は炭素数1〜10のパーフルオロアルキル基、
R
91は、水素原子または炭素数1〜10のアルキル基、
R
92は、炭素数1〜10のアルキレン基、
R
93は、水素原子またはメチル基、
Arは、置換基を有することもあるアリール基、
n9は、1〜10の整数であることが好ましい。
【0114】
含フッ素モノマーの具体例は、
CF
3(CF
2)
5(CH
2)OCOCH=CH
2、
CF
3(CF
2)
5(CH
2)OCOC(CH
3)=CH
2、
CF
3(CF
2)
7(CH
2)OCOCH=CH
2、
CF
3(CF
2)
7(CH
2)OCOC(CH
3)=CH
2、
(CF
3)
2CF(CF
2)
3(CH
2)
2OCOCH=CH
2、
CF
3(CF
2)
3(CH
2)
2OCOC(CH
3)=CH
2、
CF
3(CF
2)
3(CH
2)
2OCOCH=CH
2、
CF
3(CF
2)
5(CH
2)
2OCOC(CH
3)=CH
2、
CF
3(CF
2)
5(CH
2)
2OCOCH=CH
2、
CF
3CF
2(CH
2)
2OCOCH=CH
2、
CF
3(CF
2)
3SO
2N(CH
3)(CH
2)
2OCOCH=CH
2、
CF
3(CF
2)
3SO
2N(C
2H
5)(CH
2)
2OCOC(CH
3)=CH
2、
(CF
3)
2CF(CF
2)
3CH
2CH(OCOCH
3)CH
2OCOC(CH
3)=CH
2、
(CF
3)
2CF(CF
2)
3CH
2CH(OH)CH
2OCOCH=CH
2
を例示することができる。
【0115】
一の態様において、含フッ素モノマーは、パーフルオロアルキル基、および、重合性基Aを有する。
【0116】
本態様において、上記含フッ素モノマーは、Rf
jCH=CH
2で表される化合物、パーフルオロオレフィン、パーフルオロオレフィンのダイマー、およびパーフルオロオレフィンのオリゴマーよりなる群より選ばれる少なくとも1であることが好ましい。
【0117】
上記Rf
jは、パーフルオロアルキル基であり、好ましくは、炭素原子数1〜10の直鎖状のパーフルオロアルキル基である。具体的には、Rf
jは、F−(CF
2)
nで表され、nは1〜10の整数、より好ましくは、nは4〜8の整数、例えば6である。
【0118】
上記Rf
jCH=CH
2で表される化合物の具体的な構造としては、例えば、パーフルオロヘキシルエチレン(F(CF
2)
6CH=CH
2)を挙げることができる。
【0119】
上記Rf
jCH=CH
2で表される化合物の合成方法は、特に限定されないが、例えば、Rf
jCH
2CH
2Y
3(式中、Rf
jは、上記と同意義であり、Y
3は、BrまたはIである)で表わされるハロゲン化物と、カルボン酸のアルカリ金属塩とをアルコール溶媒中で加熱する方法を挙げることができる(例えば、特公昭39−18112号公報)。上記方法では、アルコールと本態様の含フッ素モノマーとは、アルコールおよび含フッ素モノマーの融点差に着目し、いわゆる晶析操作により分離することができる(例えば、特開2009−173588号公報に記載のオレフィン−アルコール共沸混合物の分離方法)。
【0120】
上記パーフルオロオレフィンとしては、例えば、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロペンを挙げることができる。
【0121】
パーフルオロオレフィンのダイマー、またはパーフルオロオレフィンのオリゴマーとしては、例えば、テトラフルオロエチレンのオリゴマー、ヘキサフルオロプロピレンのオリゴマー等を挙げることができる。上記テトラフルオロエチレンのオリゴマーは、重合度2〜7であることが好ましく、上記ヘキサフルオロプロピレンのオリゴマーは、重合度2〜4であることが好ましい。これらのオリゴマーは、種々の加工処理に応用し得る点から有利である。テトラフルオロエチレンのオリゴマー、またはヘキサフルオロプロピレンのオリゴマーは、例えば米国特許第3403191号明細書、米国特許第2918501号明細書などに記載の方法で、テトラフルオロエチレンまたはヘキサフルオロプロピレンをオリゴメル化することによって得られる。
【0122】
上記オリゴマーは、多くの異性体からなる、高度に分岐した分子鎖を有する化合物であり得る。上記オリゴマーとしては、例えば以下のような構造を挙げることができる。
【0123】
ヘキサフルオロプレペンダイマー:
【化11】
【0124】
ヘキサフルオロプロペントリマー:
【化12】
【0125】
ヘキサフルオロプロペンテトラマ−:
【化13】
【0126】
テトラフルオロエチレンダイマー:
【化14】
【0127】
テトラフルオロエチレントリマー:
【化15】
【0128】
テトラフルオロエチレンテトラマ−:
【化16】
【0129】
テトラフルオロエチレンペンタマー:
【化17】
【0130】
テトラフルオロエチレンヘキサマー:
【化18】
【0131】
一の態様において、上記含フッ素モノマーは、Rf
jCH=CH
2で表される化合物である。
【0132】
一の態様において、上記含フッ素モノマーは、パーフルオロオレフィン、パーフルオロオレフィンのダイマー、およびパーフルオロオレフィンのオリゴマーよりなる群より選ばれる少なくとも1である。
【0133】
別の態様において、含フッ素モノマーは、エチレン性二重結合を有する炭化水素であって、その一部または全部の水素原子がフッ素原子に置換された化合物であり得る。
【0134】
上記エチレン性二重結合を有する炭化水素であって、その一部または全部の水素原子がフッ素原子に置換された化合物としては、例えば、フッ素置換された、炭素数1〜6のアルキル基を含有しかつエステル基を有しないエチレン性二重結合を有する反応性のオレフィン系モノマー、具体的にはエチレン、プロピレン、ブチレン等、またはこれらの二量体を挙げることができる。上記化合物は、好ましくは、炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基を含有しかつエステル基を有しないエチレン性二重結合を有する反応性のオレフィン系モノマー、具体的にはフッ素により全置換されたエチレン、プロピレン、ブチレン等、またはこれらの二量体が挙げられる。好ましい態様において、エチレン性二重結合を有する炭化水素であって、その一部または全部の水素原子がフッ素原子に置換された化合物は、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、ヘキサフルオロプロピレンの二量体、炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基を含有し、かつエステル基を有さないエチレン性二重結合を有する反応性のオレフィン系モノマーであり得る。
【0135】
好ましい態様において、含フッ素モノマーは、式
【化19】
で表される含フッ素アクリレートエステル(式中、X、Y、およびRf
8は、上記と同意義である)、Rf
jCH=CH
2で表される化合物(式中、Rf
jはパーフルオロアルキル基である。)、およびパーフルオロオレフィンからなる群より選ばれる少なくとも1を有する。好ましくは、Xは、水素原子またはメチル基であり;Yは、炭素数1〜10の脂肪族基、炭素数6〜10の芳香族基または環状脂肪族基、−CH
2CH
2N(R)SO
2−基(但し、Rは炭素数1〜4のアルキル基である。)または−CH
2CH(OY
1)CH
2−基(但し、Y
1は水素原子またはアセチル基である。)であり;Rf
8基が、炭素数1〜6、より好ましくは炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基またはパーフルオロアルケニル基である。
【0136】
一の態様において、上記モノマーは、フッ素原子を有しないモノマー(以下、「非フッ素モノマー」ともいう)である。
【0137】
一の態様において、上記非フッ素モノマーは、重合性基Bを有し、フッ素原子を有しない化合物であり得る。
【0138】
重合性基Bとしては、好ましくは、下記式:
−R
63’−CR
64’=CH
2
[式中、R
63’は、単結合または−OC(O)−であり、
R
64’は、水素原子、あるいは炭素数1〜10のアルキル基(好ましくは、炭素数1〜3のアルキル基、より好ましくはメチル基)またはフェニル基を表し、好ましくは、メチル基または水素原子である。]
で表される基である。
【0139】
より好ましい重合性基Bは、下記式:
−OC(O)−CR
64’=CH
2
[式中、R
64’は、上記と同意義である。]
で表される基である。
【0140】
さらに好ましい重合性基Bは、アクリロイル基またはメタクリロイル基である。
【0141】
重合性基Bを有する化合物としては、例えば、エステル末端に炭素原子数1〜20のアルキル基の結合した(メタ)アクリル系モノマー類;ノルボルネンビニル、スチレン、塩化ビニル等のビニル系モノマー類等を挙げることができる。
【0142】
重合性基Bを有する化合物としては、例えば、エステル末端に炭素原子数1〜15のアルキル基の結合した(メタ)アクリル系モノマー類、具体的にはステアリル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、酢酸ビニル、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ドデセニル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、テトラデセニル(メタ)アクリレート等;アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド;プロピオン酸ビニル、(メタ)アクリロニトリル、ノルボルネンビニル、スチレン、塩化ビニル等のビニル系モノマー類;等を挙げることができる。
【0143】
別の態様において、グラフト量を向上させる観点からは、上記重合性基Bを有する化合物として多官能の(メタ)アクリレート類を用いてもよい。多官能の(メタ)アクリレート類は、上記と同意義である。
【0144】
一の態様において、重合性基Bは、
−R
63’−CR
64’=CH
2
[式中、R
63’は、単結合であり、
R
64’は、水素原子、あるいは炭素数1〜10のアルキル基(好ましくは、炭素数1〜5のアルキル基、より好ましくはメチル基)またはフェニル基を表し、好ましくは、メチル基または水素原子である。]
で表される基である。
【0145】
本態様において、上記重合性基Bを有する化合物としては、上記重合性基Bに、例えば、炭素原子数1〜12のアルキル基、具体的には、炭素原子数1〜10のアルキル基、より具体的には、炭素原子数3〜10のアルキル基の結合した化合物を挙げることができる。
【0146】
本態様において、上記重合性基Bを有する化合物としては、例えば、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、イソブテン、ペンテン、ヘプテン、ノネン等を挙げることができる。
【0147】
上記モノマーは、好ましくは、エチレン性二重結合を有する。
【0148】
一の態様において、上記二価のポリマー鎖は、含フッ素モノマー由来のユニットを少なくとも1つ有する。即ち、上記二価のポリマー鎖は、二価の含フッ素ポリマー鎖であり得る。
【0149】
上記少なくとも1つのフッ素原子を有するモノマーは、好ましくは水素原子がフッ素原子に全置換された、いわゆるパーフルオロモノマーであり得る。
【0150】
これらの含フッ素モノマーは、1個またはそれ以上のフッ素原子が、他の置換基により置換されていてもよい。
【0151】
好ましい態様において、上記含フッ素モノマーは、下記式:
【化20】
[式中、
R
21は、水素原子、ハロゲン原子、またはハロゲン原子により置換されていてもよいアルキル基であり;
R
22は、水素原子、ハロゲン原子、またはハロゲン原子により置換されていてもよいアルキル基であり;
R
23は、水素原子、ハロゲン原子、またはハロゲン原子により置換されていてもよいアルキル基であり;
R
24は、水素原子、ハロゲン原子、−R
25、−R
26−O−R
25、−R
26−COOR
25、−R
26−OCOR
25であり;
R
25は、水素原子、ハロゲン原子、ハロゲン原子により置換されていてもよいアルキル基またはハロゲン原子により置換されていてもよいアリール基であり;
R
26は、単結合、またはハロゲン原子により置換されていてもよいアルキレン基であり;
ただし、式中少なくとも1つのフッ素原子を含む。]
で表される化合物である。
【0152】
上記式中、アルキル基は、好ましくは炭素数1〜6のアルキル基、より好ましくは炭素数1〜3のアルキル基、さらに好ましくはメチル基である。
【0153】
上記式中、アルキレン基は、好ましくは炭素数1〜6のアルキレン基、より好ましくは炭素数1〜3のアルキレン基である。
【0154】
上記式中、アリール基は、好ましくは炭素数6〜22のアリール基、より好ましくはフェニル基である。
【0155】
上記式中、ハロゲン原子は、好ましくはフッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子であり、より好ましくはフッ素原子または塩素原子、さらに好ましくはフッ素原子である。
【0156】
好ましい態様において、R
24は、フッ素原子、フッ素原子により置換されていてもよい炭素数1〜3のアルキル基、フッ素原子により置換されていてもよい炭素数1〜3のアルコキシ基、フッ素原子により置換されていてもよい炭素数6〜22のアリール基、またはフッ素原子により置換されていてもよい−COOR
25であり、好ましくは、フッ素原子、フッ素原子により置換されていてもよい炭素数1〜3のアルキル基、またはフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1〜3のアルコキシ基である。
【0157】
上記好ましい含フッ素モノマーとしては、例えば、モノフルオロエチレン、1,1−ジフルオロエチレン、1,3−ジフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン(TFE)、1,1,1,2−テトラフルオロ−2−プロピレン、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、フッ化ビニリデン(VDF)等が挙げられる。
【0158】
別の好ましい態様において、上記二価のポリマー鎖は、非フッ素モノマー由来のユニットを少なくとも1つ有する。
【0159】
一の態様において、上記非フッ素モノマーは、下記式:
【化21】
[式中、
R
31は、水素原子、塩素原子、または塩素原子により置換されていてもよいアルキル基であり;
R
32は、水素原子、塩素原子、または塩素原子により置換されていてもよいアルキル基であり;
R
33は、水素原子、塩素原子、または塩素原子により置換されていてもよいアルキル基であり;
R
34は、水素原子、塩素原子、−R
35、−R
36−O−R
35、−R
36−COOR
35、−R
36−OCOR
35、または−CHCH
2であり;
R
35は、水素原子、塩素原子、塩素原子により置換されていてもよいアルキル基、または塩素原子により置換されていてもよいアリール基であり;
R
36は、単結合、または塩素原子により置換されていてもよいアルキレン基である。]
で表される化合物である。
【0160】
好ましい態様において、R
34は、水素原子、塩素原子により置換されていてもよい炭素数1〜3のアルキル基、塩素原子により置換されていてもよい炭素数1〜3のアルコキシ基、塩素原子により置換されていてもよい炭素数6〜22のアリール基、塩素原子により置換されていてもよい−COOR
35、または−CHCH
2である。
【0161】
上記非フッ素モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、1,3−ブタジエン等が挙げられる。
【0162】
上記1,3−ブタジエンのような共役ジエン系モノマーを用いる場合、得られたポリマー鎖は、ポリマー鎖の主鎖に二重結合を有していてもよく、あるいは側鎖に二重結合を有していてもよい。例えば、1,3−ブタジエンをモノマーとして用いる場合、ポリマー鎖は、−(CH
2CH=CHCH
2)−および−(CH
2CH(CH=CH
2))−のいずれか一方または両方のユニットを有していてもよい。
【0163】
上記ポリマー鎖に存在する二重結合は、反応性部位として利用することもできる。例えば、Rf
α−Hal(Rf
αはフルオロアルキルであり、Halはハロゲン、例えば臭素またはヨウ素である)と反応させて、−(CH
2−CHHal−CHRf
α−CH
2)−または−(CH
2CH(CHHal−CH
2Rf
α))−を得ることができる。
【0164】
上記式中、R
3は、ハロゲン原子または水素原子である。
【0165】
上記ハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子である。ハロゲン原子は、好ましくはヨウ素原子である。
【0166】
一の態様において、R
3は、ハロゲン原子である。
【0167】
好ましい態様において、R
3は、ヨウ素原子または水素原子である。
【0168】
好ましい態様において、R
3は、ヨウ素原子である。
【0169】
上記式中、R
cは、水素原子、アルキル基、フェニル基、または−(OSiR
152)
j−R
15である。
【0170】
R
15は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または炭素数1〜6のアルキル基である。
【0171】
上記低級アルキルは、好ましくは直鎖または分枝鎖の、炭素数1〜10のアルキル基、好ましくは炭素数1〜6のアルキル基であり得る。
【0173】
上記nは、好ましくは4以上200以下、より好ましくは6以上100以下、さらに好ましくは6以上20以下であり得る。
【0174】
上記式(I)で表されるシルセスキオキサン化合物は、特に限定されないが、ランダム型、かご形またはラダー型のいずれであってもよく、好ましくはかご型またはラダー型、より好ましくはかご型である。
【0175】
好ましい態様において、上記式(I)で表されるシルセスキオキサン化合物は、nが6〜16、好ましくは6〜14、特に好ましくは8であるかご型のシルセスキオキサン化合物である。
【0176】
また、本開示は、nが6〜16のいずれかであるシルセスキオキサン化合物の混合物を提供する。上記混合物は、nが8であるシルセスキオキサン化合物を主成分とする。例えば、上記混合物は、nが8であるシルセスキオキサン化合物を、80mol%以上、90mol%以上、95mol%以上、または98mol%以上含み、残部がnが8以外であるシルセスキオキサン化合物であってもよい。
【0177】
上記式(I)で表されるシルセスキオキサン化合物の数平均分子量は、特に限定されず、用途等の目的に応じて適宜設定することができる。例えば、一の態様において、本発明の式(I)で表されるシルセスキオキサン化合物の数平均分子量は、3.0×10
3〜5.0×10
5であり、好ましくは5.0×10
3〜2.5×10
5であり、特に好ましくは8.0×10
3〜1.0×10
5である。
【0178】
上記式(I)で表されるシルセスキオキサン化合物は、下記式(II):
(R
dSiO
1.5)
n
[式中:
R
dは、各出現において各々独立して、R
eまたはR
fであり;
ただし、少なくとも1つのR
dはR
eであり;
R
eは、−R
11−CF
2−R
13であり;
R
11は、二価の有機基であり;
R
13は、ハロゲン原子であり;
R
fは、水素原子または低級アルキルであり;
nは、任意の整数である。]
で表されるハロゲン化シルセスキオキサン化合物に、モノマーを重合させることにより得ることができる。
【0179】
上記反応により、式(II)で示されるシルセスキオキサン化合物のR
e(即ち、−R
11−CF
2−R
13)とモノマーが反応し、−R
1−CF
2−R
2−R
3が得られる。
【0180】
上記式中、R
dは、各出現において各々独立して、R
eまたはR
fである。ただし、少なくとも1つのR
dはR
eである。ただし、少なくとも1つのR
dはR
eである。
【0181】
上記式中、R
eは、−R
11−CF
2−R
13である。
【0183】
上記二価の有機基は、上記式(I)におけるR
1に関する有機基と同意義である。
【0184】
上記式中、R
13は、ハロゲン原子、−ONR
x2、−TeR
y、または−SC(=S)R
zであり、好ましくはハロゲン原子である。
【0185】
上記ハロゲン原子は、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子である。ハロゲン原子は、好ましくは臭素原子、ヨウ素原子であり、特に好ましくはヨウ素原子である。
【0186】
上記−ONR
x2は、いわゆるNMP(Nitroxide mediated polymerization)型のラジカル重合の開始末端である。
【0187】
R
xは、置換基を有していてもよい炭化水素基、例えばアルキル基であり、または2つのR
xがN原子と一緒になって環を形成してもよい。
【0188】
上記−ONR
x2としては、例えば、以下の基が挙げられる。
【化22】
【0189】
上記−TeR
yは、いわゆるTERP(Organo-tellurium-mediated living radical polymerization)型のラジカル重合の開始末端である。
【0190】
R
yは、アルキル基またはアリール基であり、好ましくは炭素数1〜4個のアルキル基またはフェニル基、特に好ましくはメチル基、n−ブチル基、またはフェニル基であり得る。
【0191】
上記−SC(=S)R
zは、いわゆるRAFT(Reversible addition-fragmentation chain transfer)型のラジカル重合の開始末端である。R
zは、下記の基が挙げられる。
フェニル、SR、OR、NR
2
(ここにRは、アルキル基である)、
【化23】
【0192】
上記重合法は、いわゆるヨウ素移動重合法、ATRP(Atom Transfer Radical Polymerization)、RAFT、NMP、可逆配位媒介重合、TERP等に代表される各種制御ラジカル重合法やフリーラジカル重合によって実施される。上記重合法は、好ましくはヨウ素移動重合法、ATRP、可逆配位媒介重合法であり、特に好ましくはヨウ素移動重合法、ATRP、可逆配位媒介重合法である。
【0193】
また、上記重合法において、必要に応じて紫外光または可視光の照射、フォトレドックス触媒、一電子還元剤またはラジカル発生剤を添加しても良い。これらは、単独で用いてもよく、または2種以上を混合して用いてもよい。これらの反応の条件は、特に限定されず、当業者であれば、用いる原料、および所望の生成物に応じて適宜選択することができる。
【0194】
上記紫外線の光源としては、紫外線を発するものであれば限定されるものではないが、例えば、水銀ランプ、キセノンランプ、UVランプ、ハロゲンランプ、LED等が挙げられ、好ましくは高圧水銀ランプが使用される。
【0195】
上記フォトレドックス触媒としては、例えば、ローダミンB、エシオンY、[Ru(bpy)
3]
+類縁体、[Ir(bpy)
3]
+類縁体等が挙げられる。
【0196】
上記一電子還元剤としては、例えば、亜ジチオン酸リチウム、亜ジチオン酸ナトリウム、亜ジチオン酸カリウム、亜ジチオン酸セシウム、ヨウ化銅(I)、臭化銅(I)、塩化銅(I)、トリエチルアミン、トリブチルアミン、アスコルビン酸、アスコルビン酸塩等が挙げられ、好ましくは亜ジチオン酸ナトリウム、ヨウ化銅(I)、臭化銅(I)であり、特に好ましくは亜ジチオン酸ナトリウムである。
【0197】
上記ラジカル発生剤としては、例えば、有機過酸化物、無機過酸化物、有機アゾ化合物等が挙げられ、好ましくは有機過酸化物が用いられる。下記に限定されるものではないが、例えば、有機過酸化物としては過酸化ベンゾイル、無機過酸化物としてはカリウムパーサルファイト、有機アゾ化合物としてはAIBN等が挙げられる。
【0198】
上記した重合触媒としては、例えば、BHT、ビタミンEおよびビタミンC(アスコルビン酸およびその塩)等のフェノール類、シクロヘキサジエン、ジエトキシヒドロホスホニウムオキシド、テトラアルキルホスホニウムヨージド、テトラアルキルアンモニウムヨージド、N−ヨードスクシンイミド、ヨウ化ナトリウム、配位子を有する銅、ルテニウム、鉄、コバルト錯体等を用いることができる。
【0199】
上記配位子としては例えば、N,N’−ジメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラエチルエチレンジアミン、N,N’−ジターシャリーブチルエチレンジアミン、テトラメチル1,3−ジアミノプロパン、N,N,N’,N’−ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサメチレンジアミン、N,N,N’,N’ ’ ,N’ ’−ペンタメチルジエチレントリアミン、1,1,4,7,10,10−ヘキサメチルトリエチレンテトラアミン、トリス[2−(ジメチルアミノ)エチル]アミン、ピリジン、2,2’−ビピリジン、4,4’−ジカルボキシ−2,2’−ビピリジン等を用いることができる。
【0200】
上記式中、R
fは、水素原子または低級アルキルである。
【0201】
上記低級アルキルは、好ましくは直鎖または分枝鎖の、炭素数1〜10のアルキル基、好ましくは炭素数1〜6のアルキル基であり得る。
【0202】
上記nは、上記(I)におけるnと同意義である。
【0203】
上記ハロゲン化シルセスキオキサン化合物と反応させるモノマーは、上記したモノマーであり得る。
【0204】
上記重合の条件は、特に限定されず、当業者であれば、用いる原料、および所望の生成物に応じて適宜選択することができる。
【0205】
上記重合反応は、好ましくは、ラジカル発生剤の存在下で行われる。
【0206】
上記ラジカル発生剤としては、例えば、有機過酸化物、無機過酸化物、有機アゾ化合物等が挙げられ、好ましくは有機過酸化物が用いられる。下記に限定されるものではないが、例えば、有機過酸化物としては過酸化ベンゾイル、無機過酸化物としてはカリウムパーサルファイト、有機アゾ化合物としてはアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)等が挙げられる。
【0207】
本開示のシルセスキオキサン化合物は、多種多様な用途に用いられる。特に、フッ素を含有する含フッ素シルセスキオキサン化合物は、特に限定されないが、例えば添加剤等が挙げられる。
【0208】
本開示は、上記した式(I)で表されるシルセスキオキサン化合物を含む組成物を提供する。
【0209】
一の態様において、本開示の組成物は、有機溶剤を含み得る。有機溶剤としては、特に限定されないが、含フッ素溶剤が好ましい。
【0210】
含フッ素溶媒としては、特に限定されないが、例えば、アサヒクリン(登録商標)AK−225(旭硝子株式会社製)、C
2F
5CF(OCH
3)C
3F
7、ClCF
2−CFCl−CF
2CF
3等が挙げられる。
【0211】
一の態様において、本開示の組成物は、さらに、他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、特に限定されないが、分散安定剤、乳化剤、硬化剤、光酸発生剤、光ラジカル発生剤等が挙げられる。
【0212】
一の態様において、本開示のシルセスキオキサン化合物または組成物は、添加剤として用いられる。
【0213】
好ましい態様において、本開示のシルセスキオキサン化合物または組成物は、フッ素ゴム、パーフロゴム、シリコーン系ゴム等のゴム材料の添加剤として用いられる。即ち、本開示は、本開示のシルセスキオキサン化合物と、ゴム材料、例えばフッ素ゴム、パーフロゴムまたはシリコーン系ゴムとを含むゴム組成物を提供する。
【0214】
本開示のシルセスキオキサン化合物の添加量は、用いる用途、目的等に応じて適宜変化し得る。例えば、上記添加量は、ゴム材料に対して、0.1質量%以上、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上、例えば、15質量%以上または20質量%以上であり得る。また、上記添加量は、ゴム材料に対して、50質量%以下、好ましくは30質量%以下であり得る。一の態様において、本開示のシルセスキオキサン化合物の添加量は、0.1〜50質量%、好ましくは1〜30質量%、特に好ましくは5〜30質量%、例えば5.0〜10質量%、5.0〜15.0質量%、5.0〜20.0質量%または5.0〜30.0質量%であり得る。
【0215】
本開示のシルセスキオキサン化合物をゴム材料に添加した場合、ゴム材料の性能、例えば耐熱性、酸素プラズマ耐性等を向上させることができる。特に、本開示のシルセスキオキサン化合物の添加量を大きくすることにより、上記ゴム材料の性能をより向上させることができる。また、本開示のシルセスキオキサン化合物の添加量を小さくすることにより、ゴム材料本来の機能を保持できる。
【0216】
一の態様において、本開示の組成物を、ゴム材料の添加剤として用いる場合、本開示の組成物は、溶剤を含んでいなくてもよく、あるいは有機溶剤、好ましくは含フッ素溶剤を含んでいてもよい。好ましくは、本開示の組成物は、無溶剤である。溶剤を含む場合、本開示の組成物に含まれる有機溶媒の量は、ゴム材料1質量に対して、1〜100質量部、好ましくは1.5〜10質量部であり得る。
【0217】
上記フッ素ゴムとしては、非パーフルオロフッ素ゴムまたはパーフルオロフッ素ゴムのいずれであってもよい。
【0218】
上記フッ素ゴムは、例えば、テトラフルオロエチレン(TFE)、フッ化ビニリデン(VdF)および下記式(a):
CF
2=CF−Rf
a(a)
(式中、Rf
aは、−CF
3またはORf
b(Rf
bは、炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基を表す。)
で表されるパーフルオロエチレン性不飽和化合物(例えば、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)等)からなる群から選択される少なくとも1種の単量体に由来する構造単位を含むことが好ましい。
【0219】
非パーフルオロフッ素ゴムとしては、フッ化ビニリデン(VdF)系フッ素ゴム、テトラフルオロエチレン(TFE)/プロピレン(Pr)系フッ素ゴム、テトラフルオロエチレン(TFE)/プロピレン(Pr)/ビニリデンフルオライド(VdF)系フッ素ゴム、エチレン(Et)/ヘキサフルオロプロピレン(HFP)系フッ素ゴム、エチレン(Et)/ヘキサフルオロプロピレン(HFP)/ビニリデンフルオライド(VdF)系フッ素ゴム、エチレン(Et)/ヘキサフルオロプロピレン(HFP)/テトラフルオロエチレン(TFE)系フッ素ゴム、フルオロシリコーン系フッ素ゴム、フルオロホスファゼン系フッ素ゴム等が挙げられ、これらを単独または組み合わせて用いることができる。また、これらのフッ素ゴムは、共単量体との共重合体であってもよい。
【0220】
上記共単量体としては、その他の単量体と共重合可能であれば特に限定されず、例えば、TFE、HFP、PAVE、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、トリフルオロエチレン、トリフルオロプロピレン、テトラフルオロプロピレン、ペンタフルオロプロピレン、トリフルオロブテン、テトラフルオロイソブテン、ヘキサフルオロイソブテン、フッ化ビニル、ヨウ素含有フッ素化ビニルエーテル、下記一般式(b):
CH
2=CFRf
b(b)
(式中、Rf
bは炭素数1〜12の直鎖または分枝鎖のフルオロアルキル基を表す)
で表される含フッ素単量体等のフッ素含有単量体(c);
CF
2=CFOCF
2ORf
c(c)
(式中、Rf
cは、炭素数1〜6の直鎖または分枝鎖のパーフルオロアルキル基、炭素数5〜6の環式パーフルオロアルキル基、または、1〜3個の酸素原子を含む炭素数2〜6の直鎖または分枝鎖のパーフルオロオキシアルキル基を表す。)
で表されるパーフルオロビニルエーテル;
エチレン(Et)、プロピレン(Pr)、アルキルビニルエーテル等のフッ素非含有単量体;および、反応性乳化剤等が挙げられ、これらは、単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0221】
このような共重合体としては、限定するものではないが、例えば、VdF/HFP共重合体、VdF/TFE/HFP共重合体、VdF/CTFE共重合体、VdF/CTFE/TFE共重合体、VdF/PAVE共重合体、VdF/TFE/PAVE共重合体、VdF/HFP/PAVE共重合体、VdF/HFP/TFE/PAVE共重合体、VdF/TFE/プロピレン(Pr)共重合体、VdF/エチレン(Et)/HFP共重合体およびVdF/式(b)で表される含フッ素単量体(b)の共重合体からなる群より選択される少なくとも1種の共重合体が挙げられる。
【0222】
一の態様において、フッ素ゴムは、O−リング等のシーリング材に用いられるフッ素ゴム、例えば、フッ化ビニリデン系(FKM)フッ素ゴム、テトラフルオロエチレン−プロピレン系(FEPM)フッ素ゴム、テトラフルオロエチレン−パーフルオロビニルエーテル系(FFKM)フッ素ゴム等であり得る。
【0223】
上記含フッ素ゴムは、高温における圧縮永久歪特性に優れる点から、ガラス転移温度が−70℃以上であることが好ましく、−60℃以上であることがより好ましく、−50℃以上であることが更に好ましい。また、耐寒性が良好であるという点から、5℃以下であることが好ましく、0℃以下であることがより好ましく、−3℃以下であることが更に好ましい。
【0224】
上記ガラス転移温度は、示差走査熱量計(メトラー・トレド社製、DSC822e)を用い、試料10mgを10℃/minで昇温することによりDSC曲線を得て、DSC曲線の二次転移前後のベースラインの延長線と、DSC曲線の変曲点における接線との2つの交点の中点を示す温度として求めることができる。
【0225】
上記含フッ素ゴムは、耐熱性が良好な点で、170℃におけるムーニー粘度ML(1+20)が30以上であることが好ましく、40以上であることがより好ましく、50以上であることが更に好ましい。また、加工性が良好な点で、150以下であることが好ましく、120以下であることがより好ましく、110以下であることが更に好ましい。
【0226】
上記含フッ素ゴムは、耐熱性が良好な点で、140℃におけるムーニー粘度ML(1+20)が30以上であることが好ましく、40以上であることがより好ましく、50以上であることが更に好ましい。また、加工性が良好な点で、180以下であることが好ましく、150以下であることがより好ましく、110以下であることが更に好ましい。
【0227】
上記含フッ素ゴムは、耐熱性が良好な点で、100℃におけるムーニー粘度ML(1+10)が10以上であることが好ましく、20以上であることがより好ましく、30以上であることが更に好ましい。また、加工性が良好な点で、120以下であることが好ましく、100以下であることがより好ましく、80以下であることが更に好ましい。
【0228】
上記ムーニー粘度は、ALPHA TECHNOLOGIES社製ムーニー粘度計MV2000E型を用いて、170℃または140℃、100℃において、JIS K6300に従い測定することができる。
【0229】
上記組成物は、更に、別の架橋剤を含み得る。上記別の架橋剤としては、パーオキサイド架橋、ポリオール架橋、ポリアミン架橋、トリアジン架橋、オキサゾール架橋、イミダゾール架橋、および、チアゾール架橋において用いる架橋剤が挙げられる。
【0230】
上記パーオキサイド架橋において用いる架橋助剤は、熱や酸化還元系の存在下で容易にパーオキシラジカルを発生し得る有機過酸化物であればよく、具体的には、例えば1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、α,α−ビス(t−ブチルパーオキシ)−p−ジイソプロピルベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)−ヘキシン−3、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネートなどをあげることができる。一般に活性−O−O−の量、分解温度などを考慮して有機過酸化物の種類並びに使用量が選ばれる。
【0231】
また、この場合に用いることのできる架橋剤としては、パーオキシラジカルとポリマーラジカルに対して反応活性を有する化合物であればよく、例えばCH
2=CH−、CH
2=CHCH
2−、CF
2=CF−などの官能基を有する多官能性化合物が挙げられる。具体的には、例えばトリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、トリアクリルホルマール、トリアリルトリメリテート、N,N′−n−フェニレンビスマレイミド、ジプロパギルテレフタレート、ジアリルフタレート、テトラアリルテレフタレートアミド、トリアリルホスフェート、ビスマレイミド、フッ素化トリアリルイソシアヌレート(1,3,5−トリス(2,3,3−トリフルオロ−2−プロペニル)−1,3,5−トリアジン2,4,6−トリオン)、トリス(ジアリルアミン)−S−トリアジン、亜リン酸トリアリル、N,N−ジアリルアクリルアミド、1,6−ジビニルドデカフルオロヘキサンなどが挙げられる。
【0232】
上記ポリオール架橋に用いる架橋剤としては、ビスフェノールA、ビスフェノールAFなどの多価アルコール化合物が挙げられる。
【0233】
上記ポリアミン架橋に用いる架橋剤としては、ヘキサメチレンジアミンカルバメート、N,N’−ジシンナミリデン−1,6−ヘキサンジアミン、4,4’−ビス(アミノシクロヘキシル)メタンカルバメートなどの多価アミン化合物が挙げられる。
【0234】
上記トリアジン架橋に用いる架橋助剤としては、テトラフェニルスズ、トリフェニルスズなどの有機スズ化合物が挙げられる。
【0235】
上記オキサゾール架橋系、イミダゾール架橋系、チアゾール架橋系に使用する架橋剤としては、例えば一般式(20):
【化24】
(式中、R
4は−SO
2−、−O−、−CO−、炭素数1〜6のアルキレン基、炭素数1〜10のパーフルオロアルキレン基または単結合手または、
【化25】
で示される基であり、R
5およびR
6は一方が−NH
2であり他方が−NHR
7、−NH
2、−OHまたは−SHであり、R
7は水素原子、フッ素原子または一価の有機基であり、好ましくはR
5が−NH
2でありR
6が−NHR
7である。炭素数1〜6のアルキレン基の好ましい具体例としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基などをあげることができ、炭素数1〜10のパーフルオロアルキレン基としては、
【化26】
などが挙げられる。なお、これらの化合物は、特公平2−59177号公報、特開平8−120146号公報などで、ビスジアミノフェニル化合物の例示として知られているものである)で示されるビスジアミノフェニル系架橋剤、ビスアミノフェノール系架橋剤、ビスアミノチオフェノール系架橋剤、一般式(21):
【化27】
(式中、R
4は、前記と同じ、R
8は、
【化28】
で表される基である)
で示されるビスアミドラゾン系架橋剤、一般式(22):
【化29】
(式中、R
f3は炭素数1〜10のパーフルオロアルキレン基である)、
または一般式(23):
【化30】
(式中、nは1〜10の整数である)で示されるビスアミドオキシム系架橋剤などが挙げられる。これらのビスアミノフェノール系架橋剤、ビスアミノチオフェノール系架橋剤またはビスジアミノフェニル系架橋剤などは従来シアノ基を架橋点とする架橋系に使用していたものであるが、カルボキシル基およびアルコキシカルボニル基とも反応し、オキサゾール環、チアゾール環、イミダゾール環を形成し、架橋物を与える。
【0236】
特に好ましい別の架橋剤としては、複数個の3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル基、または3−アミノ−4−メルカプトフェニル基を有する化合物、もしくは一般式(24):
【化31】
(式中、R
4、R
5、R
6、は前記と同じである)で示される化合物が挙げられ、具体的には、例えば2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(一般名:ビス(アミノフェノール)AF)、2,2−ビス(3−アミノ−4−メルカプトフェニル)ヘキサフルオロプロパン、テトラアミノベンゼン、ビス−3,4−ジアミノフェニルメタン、ビス−3,4−ジアミノフェニルエーテル、2,2−ビス(3,4−ジアミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[3−アミノ−4−(N−フェニルアミノ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[3−アミノ−4−(N−メチルアミノ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[3−アミノ−4−(N−エチルアミノ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[3−アミノ−4−(N−プロピルアミノ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[3−アミノ−4−(N−パーフルオロフェニルアミノ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[3−アミノ−4−(N−ベンジルアミノ)フェニル]ヘキサフルオロプロパンなどである。
【0237】
これらの中でも、別の架橋剤としては耐熱性、耐スチーム性、耐アミン性、良好な架橋性の点から、2,2−ビス[3−アミノ−4−(N−フェニルアミノ)フェニル]ヘキサフルオロプロパンが好ましい。
【0238】
上記別の架橋剤は、含フッ素ポリマー100質量部に対して、0.05〜10質量部であることが好ましく、0.5〜5質量部であることがより好ましい。架橋剤が、0.05質量部より少ないと、含フッ素ポリマーが充分架橋されない傾向があり、10質量部を超えると、架橋物の物性を悪化させる傾向がある。
【0239】
本開示のシルセスキオキサン化合物は、特にゴム材料またはゴム材料の原料と混合することにより、ゴム材料に種々の性能を与えることができる。例えば、本開示のシルセスキオキサン化合物が添加されたゴム材料を、酸素プラズマに曝される用途に用いた場合であっても、劣化が生じ難く、種々の問題を引き起こし得る化合物の脱落等を抑制することができる。また、仮に脱落が生じた場合であっても、本開示のシルセスキオキサン化合物は分子サイズであることから、周囲への影響を小さくすることができる。また、本開示のシルセスキオキサンは、枝鎖の構造を適宜変更することにより、非パーフロゴムまたはパーフロゴムに良好に分散させることができる。例えば、枝鎖をメタクリル系のポリマー鎖とすることにより、フッ化ビニリデン系のゴムと良好に混合することができる。また、枝鎖を含フッ素モノマー由来のポリマー鎖とすることにより、パーフロゴムと良好に混合することができる。
【0240】
以上、本発明について詳述したが、本発明は、上記の化合物および用途に限定されない。
【実施例】
【0241】
以下、シルセスキオキサンの構造を以下のように略す。
【化32】
【0242】
合成例1:8官能ビニル化かご型オリゴシルセスキオキサン(以下、「POSS」ともいう)のペルフルオロアルキル化
【化33】
8官能ビニル化POSS(16)(0.3mmol)のジクロロメタン/AK225(1/1)混合溶液に対し、1,4−ジヨードオクタフルオロブタン(16当量)およびチオ硫酸ナトリウム水溶液(10当量)を添加し、400W高圧水銀ランプによる光照射を24時間行い、ペルフルオロアルキル化POSS(17)(R
f=−(CF
2)
4−)(913.7mg)を得た。
【0243】
1H NMR (400 MHz, CDCl
3); 3.4(8H, br, CHI), 2.9(CH
2)
19F NMR (376 MHz, CDCl
3); -58.6(16F, s, ICF
2), -112.6(16F, s, CF
2), -114(16F, br, CF
2), -122(2F, s, CF
2)
【0244】
実施例1:ペルフルオロアルキル化POSSに対するメチルメタクリレート(以下、「MMA」ともいう)の重合
【化34】
a)THF中GPC測定(較正標準として直鎖ポリスチレン)
【0245】
ペルフルオロアルキル化POSS(17)のジメチルスルホキシド溶液(1mL)に対し、MMA(80当量)、亜ジチオン酸ナトリウム(12当量;ヨウ素部位に対して1.5当量)、炭酸水素ナトリウム(12当量)を添加し、60℃で24時間攪拌した。得られた生成物を、反応後、メタノールにより再沈殿して、化合物18を得た。
【0246】
1H NMR (400 MHz, CDCl
3); 3.6(C(O)OCH
3), 2.1-1.6(CH
2C(CH
3)(C(O)OCH
3), 1.1(C(CH
3)), 0.9(C(CH
3))
19F NMR (376 MHz, CDCl
3); -52(16F, br, ICF
2), -106(16F, br, CF
2), -107(16F, br, CF
2), -115(2F, s, CF
2)
【0247】
合成例2
【化35】
【0248】
パイレックスチューブ中、化合物18(168mg)をCH
2Cl
2(5.0ml)に溶解し、化合物2(553mg)およびチオ硫酸ナトリウム水溶液(317mg、1ml水溶液)を加え、反応系の温度を一定に保ちながら400W高圧水銀ランプを用い、紫外光を24時間照射した。得られた反応混合物を
1H及び
19F NMRによって分析したところ、化合物19を収率52%で得たことを確認した。
【0249】
1H NMR (400 MHz, CDCl
3) ; 4.60(1H, m, CH
2C
HICO
2CH
2)), 4.23(2H, q, CO
2C
H2CH
3), 3.30(1H, m, CF
2C
H2CHI), 3.12(1H, dd, SiC
HICH
2), 2.88(1H, m, CF
2C
H2CHI), 2.80-2.45(2H, m, SiCHIC
H2CF
2), 1.86(7H, tq, CH
2C
H(CH
3)
2), 1.28(3H, t, CO
2CH
2C
H3), 0.95(14H, d, CH2CH(C
H3)
2), 0.64(42H, m, SiC
H2CH(CH
3)
2)
19F NMR (376 MHz、CDCl
3) ; -115.0(2F, dd, CH
2C
F2), -115.6(2F, dd, C
F2CH
2) -124.1(4F, s, CF
2C
F2C
F2CF
2)
【0250】
実施例2
【化36】
【0251】
反応容器中、化合物19(150mg)をトルエン(0.37mL)に溶解し、メタクリル酸メチル(1.1mL)、テトラブチルアンモニウムアイオダイド(36.7mg)を加え、反応容器内を不活性ガスで十分に置換した後に、120℃で1時間加熱した。反応終了後、再沈殿により精製し、化合物20(収率36%、M
n=1.2×10
4、M
w/M
n=1.15)で得た。
【0252】
1H NMR (400 MHz, CDCl
3) ; 4.14(2H, q, CO
2C
H2CH
3),3.60(3nH, s, CO
2C
H3), 3.12(1H, dd, SiC
HICH
2), 2.65-2.45(2H, m, SiCHIC
H2CF
2), 2.1-1.7(br, CH
2C(C
H3)(CO
2CH
3)), 1.50-1.35(br, CH
2C(C
H3)(CO
2CH
3)), 1.30-1.18(br, C
H2C(CH
3)(CO
2CH
3)), 1.02(s, C
H2C(CH
3)(CO
2CH
3)), 0.95(14H, d, SiCH
2CH(C
H3)
2), 0.85(s, C
H2C(CH
3)(CO
2CH
3)), 0.64(42H, m, SiC
H2CH(CH
3)
2)
19F NMR (376 MHz、CDCl
3) ; -114.28(2F, CH
2C
F2), -115.6(2F, C
F2CH
2), -124.2(4F, s, CF
2C
F2C
F2CF
2)