(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
カルボキシメチル置換度が0.50以下であり、かつ、セルロースI型の結晶化度が50%以上であるカルボキシメチル化パルプの粉砕物及びこれを含む添加剤。好ましくは、カルボキシメチル化パルプが、水を主とする溶媒下でマーセル化反応を行い、次いで、水と有機溶媒との混合溶媒下でカルボキシメチル化反応を行うことにより製造されたものであり、湿式粉砕によりフィブリル化されているものである。
固形分1質量%の水分散体とした際の粘度(25℃、60rpm)が、2500mPa・s以下である、請求項1〜6のいずれか1項に記載のカルボキシメチル化パルプの粉砕物。
水を用いて固形分0.3質量%のスラリーを40mL調製し、次いで、スラリーを遠心機で30℃で25000Gで30分間遠心分離し、水相と沈降物とを分離し、以下の式:
保水能=(B+C−0.003×A)/(0.003×A−C)
(式中、Aは遠心分離にかけるスラリーの質量、Bは分離された沈降物の質量、Cは分離された水相中の固形分の質量)
を用いて計算された保水能が、15以上である、請求項1〜7のいずれか1項に記載のカルボキシメチル化パルプの粉砕物。
セルロースを構成するグルコース残基中の水酸基の一部に、カルボキシメチル基がエーテル結合した構造を有する、請求項1〜8のいずれか1項に記載のカルボキシメチル化パルプの粉砕物。
食品用添加剤、医薬品用添加剤、化粧品用添加剤、飼料用添加剤、製紙用添加剤、塗料用添加剤、保水性付与剤、保形性付与剤、粘度調整剤、乳化安定剤、または分散安定剤である、請求項10に記載の添加剤。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<カルボキシメチル化パルプ>
本発明は、カルボキシメチル置換度が0.50以下であり、かつ、セルロースI型の結晶化度が50%以上であるカルボキシメチル化パルプの粉砕物とこれを含む添加剤に関する。カルボキシメチル化パルプは、パルプを構成するセルロースのグルコース残基中の水酸基の一部がカルボキシメチル基とエーテル結合した構造を有するものである。カルボキシメチル化パルプは、塩の形態をとる場合もあり、本発明のカルボキシメチル化パルプには、カルボキシメチル化パルプの塩も含まれるものとする。カルボキシメチル化パルプの塩としては、例えばナトリウム塩などの金属塩などが挙げられる。
【0015】
カルボキシメチル化パルプの原料として用いられるパルプは、例えば、木材、木綿、わら、竹、麻、ジュート、ケナフ等の晒パルプまたは未晒パルプである。晒パルプ又は未晒パルプの製造方法は特に限定されず、機械的方法、化学的方法、あるいはその中間で二つを組み合せた方法でもよい。製造方法により分類される晒パルプ又は未晒パルプとしては例えば、メカニカルパルプ(サーモメカニカルパルプ(TMP)、砕木パルプ)、ケミカルパルプ(針葉樹未漂白サルファイトパルプ(NUSP)、針葉樹漂白サルファイトパルプ(NBSP)等の亜硫酸パルプ、針葉樹未漂白クラフトパルプ(NUKP)、針葉樹漂白クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未漂白クラフトパルプ(LUKP)、広葉樹漂白クラフトパルプ(LBKP)等のクラフトパルプ)等が挙げられる。さらに、製紙用パルプの他に溶解パルプを用いてもよい。溶解パルプとは、化学的に精製されたパルプであり、主として薬品に溶解して使用され、人造繊維、セロハンなどの主原料となる。
【0016】
本発明に用いられるカルボキシメチル化パルプは、これに限定されないが、平均粒子径が0.1〜300μm、好ましくは10〜100μm程度であることが好ましい。0.1μm以上であると製造しやすく、300μm以下であると食品や医薬品などの対象物に均一に混合させやすくなる。本発明では、このカルボキシメチル化パルプを粉砕することにより、カルボキシメチル化パルプの粉砕物とする。
【0017】
本発明の粉砕物及び添加剤に用いられるカルボキシメチル化パルプは、水に分散した際にも繊維状の形状の少なくとも一部が維持されるものが好ましい。すなわち、カルボキシメチル化パルプの水分散体を電子顕微鏡等で観察すると、繊維状の物質を観察することができるものが好ましい。このようなカルボキシメチル化パルプをX線回折で測定すると、セルロースI型結晶のピークを観測することができる。
【0018】
カルボキシメチル化パルプは、本発明の効果を阻害しない範囲で、カルボキシメチル基由来のカルボキシル基(−COOH)を、適宜変性したものであってもよい。そのような変性としては、例えばアルキル基やアリール基、アラルキル基などを有するアミン系化合物やリン系化合物などをカルボキシル基に結合させて、疎水化することが挙げられる。
【0019】
カルボキシメチル化パルプは、本発明の効果を阻害しない範囲で、金属担持させたものであってもよい。金属担持とは、カルボキシメチル化パルプに対し金属化合物を含む水溶液を接触させることで、カルボキシメチル化パルプのカルボキシル基(−COOH)由来のカルボキシレート基(―COO―)に、金属化合物を配位結合あるいは水素結合させることをいう。これにより、金属化合物由来の金属イオンがイオン結合している金属化合物を含有するカルボキシメチル化パルプを得ることができる。そのような金属化合物としては、例えばAg、Au、Pt、Pd、Mn、Fe、Ti、Al、Zn及びCuの群から選ばれる1種以上の金属元素のイオンを含む金属塩などを挙げることができる。
【0020】
本発明の粉砕物及び添加剤に用いられるカルボキシメチル化パルプは、セルロースの無水グルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度が0.50以下であり、好ましくは0.40以下である。当該置換度が0.50を超えると水への溶解が起こりやすくなり、水中で繊維形態を維持できなくなり、保形性付与等の効果が低減する可能性がある。保水性や保形性付与等の効果を得るためには、一定程度のカルボキシメチル置換度を有することは必要であり、例えば、カルボキシメチル置換度が0.02より小さいと、用途によっては、カルボキシメチル基を導入したことによる利点が得られない場合がある。したがって、カルボキシメチル置換度は、0.02以上であることが好ましく、0.05以上であることが更に好ましく、0.10以上であることが更に好ましく、0.15以上であることが更に好ましく、0.20以上であることがさらに好ましく、0.25以上であることがさらに好ましく、0.30以上であることがさらに好ましい。なお、特に、カルボキシメチル置換度が0.20以上0.50以下の範囲では、後述するセルロースI型の結晶化度が50%以上であるカルボキシメチル化パルプを得ること自体が困難であったが、本発明者らは、例えば後述する製法により、カルボキシメチル置換度0.20以上0.50以下であり、セルロースI型の結晶化度が50%以上であり、均質で水中でダマを形成しにくいカルボキシメチル化パルプを製造できることを見出した。カルボキシメチル置換度は、反応させるカルボキシメチル化剤の添加量、マーセル化剤の量、水と有機溶媒の組成比率をコントロールすること等によって調整することができる。
【0021】
本発明において無水グルコース単位とは、セルロースを構成する個々の無水グルコース(グルコース残基)を意味する。また、カルボキシメチル置換度(エーテル化度ともいう。)とは、セルロースを構成するグルコース残基中の水酸基のうちカルボキシメチルエーテル基に置換されているものの割合(1つのグルコース残基当たりのカルボキシメチルエーテル基の数)を示す。なお、カルボキシメチル置換度はDSと略すことがある。
【0022】
カルボキシメチル置換度の測定方法は以下の通りである:
試料約2.0gを精秤して、300mL共栓付き三角フラスコに入れる。硝酸メタノール(メタノール1000mLに特級濃硝酸100mLを加えた液)100mLを加え、3時間振盪して、カルボキシメチル化セルロースの塩(CMC)をH−CMC(水素型カルボキシメチル化セルロース)に変換する。その絶乾H−CMCを1.5〜2.0g精秤し、300mL共栓付き三角フラスコに入れる。80%メタノール15mLでH−CMCを湿潤し、0.1N−NaOHを100mL加え、室温で3時間振盪する。指示薬として、フェノールフタレインを用いて、0.1N−H
2SO
4で過剰のNaOHを逆滴定し、次式によってカルボキシメチル置換度(DS値)を算出する。
A=[(100×F'−0.1N−H
2SO
4(mL)×F)×0.1]/(H−CMCの絶乾質量(g))
カルボキシメチル置換度=0.162×A/(1−0.058×A)
F':0.1N−H
2SO
4のファクター
F:0.1N−NaOHのファクター。
【0023】
本発明の粉砕物及び添加剤に用いられるカルボキシメチル化パルプにおけるセルロースの結晶化度は、結晶I型が50%以上であり、60%以上であることがより好ましい。結晶性を上記範囲に調整することにより、カルボキシメチル化パルプによる保形性付与等の効果が高く得られるようになる。セルロースの結晶性は、マーセル化剤の濃度と処理時の温度、並びにカルボキシメチル化の度合によって制御できる。マーセル化及びカルボキシメチル化においては高濃度のアルカリが使用されるために、セルロースのI型結晶がII型に変換されやすいが、アルカリ(マーセル化剤)の使用量を調整するなどして変性の度合いを調整することによって、所望の結晶性を維持させることができる。セルロースI型の結晶化度の上限は特に限定されない。現実的には90%程度が上限となると考えられる。
【0024】
セルロースI型の結晶化度の測定方法は、以下の通りである:
試料をガラスセルに乗せ、X線回折測定装置(LabX XRD−6000、島津製作所製)を用いて測定する。結晶化度の算出はSegal等の手法を用いて行い、X線回折図の2θ=10゜〜30゜の回折強度をベースラインとして、2θ=22.6゜の002面の回折強度と2θ=18.5゜のアモルファス部分の回折強度から次式により算出する。
Xc=(I002c―Ia)/I002c×100
Xc=セルロースのI型の結晶化度(%)
I002c:2θ=22.6゜、002面の回折強度
Ia:2θ=18.5゜、アモルファス部分の回折強度。
【0025】
カルボキシメチル化パルプは、水を分散媒として分散体としたときに(水分散体)、ダマ(塊)の形成が少ない(すなわち、濾過残渣を形成する割合が少ない)ものが好ましい。具体的には、水500gにカルボキシメチル化パルプを投入し、400rpmで5秒間撹拌した後、20メッシュのフィルターを用いて自然濾過した際のフィルター上の濾過残渣の乾燥質量が、水に投入したカルボキシメチル化パルプの乾燥質量に対して、0〜30質量%であることが好ましい(本明細書において、上記の方法で算出される水に投入したカルボキシメチル化セルロースの乾燥質量に対する自然濾過後の濾過残渣の乾燥質量の割合を、「濾過残渣の割合」と呼ぶ。)。濾過残渣の割合の具体的な測定方法は、以下の通りである:
(1)濾過残渣の量の測定
1Lのビーカーに500gの水を採取する。カルボキシメチル化パルプ5gを分取し、質量を記録する(カルボキシメチル化パルプの質量)。撹拌器(IKA(登録商標)EUROSTAR P CV S1(IKA社製))に撹拌羽をセットし、400rpmで水を撹拌しておく。質量を記録しておいたカルボキシメチル化パルプを、撹拌している水中に一気に投入し、投入後5秒間撹拌する。撹拌終了後、撹拌器の電源を切る。撹拌終了後、迅速に、あらかじめ質量を測定しておいた20メッシュのフィルターを用いて自然濾過を行う。自然濾過後、フィルターとその上の残渣をともに、バット上で100℃で2時間乾燥させる。フィルターとその上の残渣の質量を測定し、フィルターの質量を差し引くことで残渣の絶乾質量(g)を計算する(絶乾残渣質量)。
(2)カルボキシメチル化パルプの水分量の計算
秤量瓶を100℃で2時間加熱し、シリカゲルの入ったデシケーター内で冷却し、秤量瓶の絶乾質量を精秤する(絶乾秤量瓶質量)。カルボキシメチル化パルプを秤量瓶中に約1.5g量り取り、精秤する(乾燥前CMC質量)。秤量瓶のふたを開け、105℃で2時間加熱乾燥する。秤量瓶のふたを閉め、シリカゲルの入ったデシケーター内で15分間冷却する。乾燥後の秤量瓶質量(乾燥後のカルボキシメチル化パルプを含む)を精秤する(乾燥後CMC入り秤量瓶質量)。以下の式を用いて、カルボキシメチル化パルプの水分量を計算する:
カルボキシメチル化パルプの水分(%)=[{乾燥前CMC質量(g)−(乾燥後CMC入り秤量瓶質量(g)−絶乾秤量瓶質量(g))}/乾燥前CMC質量(g)] ×100。
(3)濾過残渣の割合の計算
(1)で測定したカルボキシメチル化セルロースの質量(g)及び絶乾残渣質量(g)、ならびに(2)で計算したカルボキシメチル化パルプの水分(%)を用いて、以下の式により、カルボキシメチル化パルプの濾過残渣の割合を計算する:
カルボキシメチル化パルプの濾過残渣の割合(%)=[絶乾残渣質量(g)/{カルボキシメチル化パルプの質量(g)×(100−カルボキシメチル化パルプの水分(%))/100}]×100。
【0026】
上記式により算出されるカルボキシメチル化パルプの濾過残渣の割合は、0〜30%であることが好ましく、0〜20%であることがさらに好ましく、0〜10%であることがさらに好ましい。濾過残渣の割合の少ないカルボキシメチル化パルプは、分散させやすく、取扱い性に優れる。このような濾過残渣の割合の少ないカルボキシメチル化パルプは、例えば、後述する方法により製造することができる。
【0027】
カルボキシメチル化パルプは、ショッパー・リーグラろ水度が60.0゜SR以上であることが好ましい。カルボキシメチル化パルプのショッパー・リーグラろ水度の測定方法は、JIS P 82121−1:2012に準じ、具体的には、以下の通りである:
カルボキシメチル化パルプを水に分散し、固形分10g/Lの水分散体を調製し、マグネチックスターラーを用い一昼夜1000rpmにて撹拌する。得られたスラリーを1g/Lに希釈する。ミューテック社製DFR−04に60メッシュスクリーン(ワイヤー太さ0.17mm)をセットし、1000mlの検液から、上記メッシュを通過する液量を60秒間計測し、JIS P 8121−1:2012に準じた方法で、ショッパー・リーグラろ水度を算出する。
【0028】
ショッパー・リーグラろ水度は、繊維の懸濁液の水切れの程度を測定するものであり、下限値は0゜SR、上限値は100゜SRであり、ショッパー・リーグラろ水度が100゜SRに近づくほど、水切れ(排水量)が少ないことを示し、すなわち、繊維の保水性が高いことを示す。
【0029】
カルボキシメチル化パルプのショッパー・リーグラろ水度は、60.0゜SR以上であることが好ましく、65.0゜SR以上であることがさらに好ましい。上限は特に限定されないが、100.0゜SR以下であり、好ましくは、90.0゜SR以下である。ショッパー・リーグラろ水度が60.0゜SR以上であるカルボキシメチル化パルプは、保水性が高く、例えば、これらに限定されないが、食品、化粧品、医薬品などの様々な組成物において、保水剤として用いるのに適するといえる。このようなショッパー・リーグラろ水度を有するカルボキシメチル化パルプは、例えば、後述する方法により製造することができる。
【0030】
カルボキシメチル化パルプは、カナディアンスタンダードフリーネス(カナダ標準濾水度)が150ml以下であることが好ましく、120ml以下がより好ましく、110ml以下がさらに好ましい。このようなカナディアンスタンダードフリーネスを有するカルボキシメチル化パルプは、例えば、後述する方法により製造することができる。カナディアンスタンダードフリーネスは、繊維の懸濁液の水切れの程度を測定するものであり、値が小さいほど水切れ(排水量)が少ないことを示し、すなわち、繊維の保水性が高いことを示す。カナディアンスタンダードフリーネスの測定方法は、以下の通りである:
前述したショッパー・リーグラ濾水度と同様の方法で試料を調製し、ミューテック社製DFR−04に60メッシュスクリーン(ワイヤー太さ0.17mm)をセットし、1000mlの検液から、上記メッシュを通過する液量を60秒間計測し、JIS P 8121−2:2012に準じた方法で、カナディアンスタンダードフリーネスを算出する。
【0031】
カルボキシメチル化パルプは、濾水量が400ml以下であることが好ましく、380ml以下がより好ましく、370ml以下がさらに好ましい。このような濾水量を有するカルボキシメチル化パルプは、例えば、後述する方法により製造することができる。濾水量は、繊維の懸濁液の水切れの程度を測定するものであり、値が小さいほど水切れ(排水量)が少ないことを示し、すなわち、繊維の保水性が高いことを示す。濾水量の測定方法は、以下の通りである:
前述したショッパー・リーグラ濾水度と同様の方法で試料を調整し、ミューテック社製DFR−04に60メッシュスクリーン(ワイヤー太さ0.17mm)をセットし、1000mlの検液から、上記メッシュを通過する液量を60秒間計測し、濾水量を算出した。
【0032】
カルボキシメチル化パルプは、水を分散媒として分散体としたときに(水分散体)、低い粘度を示すものが好ましい。カルボキシメチル化パルプの粘度の測定方法は、以下の通りである:
カルボキシメチル化パルプを1000ml容ガラスビーカーに測りとり、蒸留水900mlに分散し、固形分1%(w/v)となるように水分散体を調製する。水分散体を25℃で撹拌機を用いて600rpmで3時間撹拌する。その後、JIS Z 8803の方法に準じて、B型粘度計(東機産業社製)を用いて、No.1ローター/回転数30rpmで3分後の粘度を測定する。
【0033】
カルボキシメチル化パルプの粘度は、10.0mPa・s以下であることが好ましく、8.0mPa・s以下がより好ましく、7.0mPa・s以下がさらに好ましい。このような低粘度のカルボキシメチル化パルプは、カルボキシメチル基が、局所的ではなく、セルロース全体にわたり均一に導入されていると考えられ、カルボキシメチル化パルプに特有の効果、例えば、保形性、吸水性付与等をより安定に得ることができると考えられる。このような粘度を有するカルボキシメチル化パルプは、例えば、後述する方法により製造することができる。上記粘度の下限値は特に限定されない。現実的には1.0mPa・s程度が下限となると考えられる。
【0034】
カルボキシメチル化パルプは、アニオン化度(アニオン電荷密度ともいう。)が1.00meq/g以下であることが好ましく、0.00meq/g以上1.00meq/g以下であることが好ましい。カルボキシメチル化パルプのアニオン化度の測定方法は、以下の通りである:
カルボキシメチル化パルプを水に分散し、固形分10g/Lの水分散体を調製し、マグネチックスターラーを用い一昼夜1000rpmにて撹拌する。得られたスラリーを0.1g/Lに希釈後、10ml採取し、流動電流検出器(Mutek Particle Charge Detector 03)用い、1/1000規定度のジアリルジメチルアンモニウムクロリド(DADMAC)で滴定して、流動電流がゼロになるまでのDADMACの添加量を用い、以下の式によりアニオン化度を算出する:
q=(V×c)/m
q:アニオン化度(meq/g)
V:流動電流がゼロになるまでのDADMACの添加量(L)
c:DADMACの濃度(meq/L)
m:測定試料中のカルボキシメチル化パルプの質量(g)。
【0035】
本明細書において、「アニオン化度」とは、上記の測定方法から分かるように、単位質量のカルボキシメチル化パルプにおいて、アニオン性基を中和するのに要したDADMACの当量に相当し、単位質量のカルボキシメチル化パルプあたりのアニオンの当量に相当する。
【0036】
カルボキシメチル化パルプのアニオン化度は、1.00meq/g以下であることが好ましく、0.00meq/g以上1.00meq/g以下であることが好ましく、0.00meq/g以上0.80meq/g以下がさらに好ましく、0.00meq/g以上0.60meq/g以下がさらに好ましい。このような範囲のアニオン化度を有するカルボキシメチル化パルプは、アニオン化度が1.00meq/gよりも高いカルボキシメチル化パルプに比べて、カルボキシメチル基が、局所的ではなく、セルロース全体にわたり均一に導入されていると考えられ、カルボキシメチル化パルプに特有の効果、例えば、保形性、吸水性付与等をより安定に得ることができると考えられる。このようなアニオン化度を有するカルボキシメチル化パルプは、例えば、後述する方法により製造することができる。
【0037】
カルボキシメチル化パルプは、一般に、セルロースをアルカリで処理(マーセル化)した後、得られたマーセル化セルロース(アルカリセルロースともいう。)を、カルボキシメチル化剤(エーテル化剤ともいう。)と反応させることにより製造することができる。
【0038】
本発明の粉砕物及び添加剤に用いられるカルボキシメチル置換度が0.50以下であり、セルロースI型の結晶化度が50%以上であるカルボキシメチル化パルプは、これに限定されないが、例えば、マーセル化(セルロースのアルカリ処理)を水を主とする溶媒下で行い、その後、カルボキシメチル化(エーテル化ともいう。)を水と有機溶媒との混合溶媒下で行うことにより、製造することができる。このようにして得たカルボキシメチル化パルプは、従来の水媒法(マーセル化とカルボキシメチル化の両方を水を溶媒として行う方法)や溶媒法(マーセル化とカルボキシメチル化の両方を有機溶媒を主とする溶媒下で行う方法)で得たカルボキシメチル化パルプに比べて、均質で品質が安定しており、分散安定性にすぐれ、保水性と保形性付与に優れ、また、水と接触した際にも比較的べたべたしにくく、さらに水中でダマを形成しにくいという特徴を有し、添加剤として使用するのに適している。また、上記の方法は、カルボキシメチル化剤の有効利用率が高いという利点がある。
【0039】
まず、原料として前述のパルプを用い、マーセル化剤(アルカリ)を添加することによりマーセル化パルプを得る。本明細書に記載の方法にしたがって、このマーセル化反応における溶媒に水を主として用い、次のカルボキシメチル化の際に有機溶媒と水との混合溶媒を使用することにより、上述の添加剤として好適なカルボキシメチル化パルプを経済的に得ることができる。
【0040】
溶媒に水を主として用いる(水を主とする溶媒)とは、水を50質量%より高い割合で含む溶媒をいう。水を主とする溶媒中の水は、好ましくは55質量%以上あり、より好ましくは60質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上であり、より好ましくは80質量%以上であり、さらに好ましくは90質量%以上であり、さらに好ましくは95質量%以上である。特に好ましくは水を主とする溶媒は、水が100質量%(すなわち、水)である。マーセル化時の水の割合が多いほど、カルボキシメチル基がセルロースにより均一に導入されるという利点が得られる。水を主とする溶媒中の水以外の(水と混合して用いられる)溶媒としては、後段のカルボキシメチル化の際の溶媒として用いられる有機溶媒が挙げられる。例えば、メタノール、エタノール、N−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、N−ブタノール、イソブタノール、第3級ブタノール等のアルコールや、アセトン、ジエチルケトン、メチルエチルケトンなどのケトン、ならびに、ジオキサン、ジエチルエーテル、ベンゼン、ジクロロメタンなどを挙げることができ、これらの単独または2種以上の混合物を水に50質量%未満の量で添加してマーセル化の際の溶媒として用いることができる。水を主とする溶媒中の有機溶媒は、好ましくは45質量%以下であり、さらに好ましくは40質量%以下であり、さらに好ましくは30質量%以下であり、さらに好ましくは20質量%以下であり、さらに好ましくは10質量%以下であり、さらに好ましくは5質量%以下であり、より好ましくは0質量%である。
【0041】
マーセル化剤としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物が挙げられ、これらのうちいずれか1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。マーセル化剤は、これに限定されないが、これらのアルカリ金属水酸化物を、例えば、1〜60質量%、好ましくは2〜45質量%、より好ましくは3〜25質量%の水溶液として反応器に添加することができる。
【0042】
マーセル化剤の使用量は、カルボキシメチル化パルプにおけるカルボキシメチル置換度0.50以下及びセルロースI型の結晶化度50%以上を両立できる量であればよく特に限定されないが、一実施形態において、セルロース100g(絶乾)に対して0.1モル以上2.5モル以下であることが好ましく、0.3モル以上2.0モル以下であることがより好ましく、0.4モル以上1.5モル以下であることがさらに好ましい。
【0043】
マーセル化の際の水を主とする溶媒の量は、原料の撹拌混合が可能な量であることが好ましい。具体的には、これに限定されないが、セルロース原料に対し、1.5〜20質量倍が好ましく、2〜10質量倍であることがより好ましい。このような量とすることにより、反応を均質に生じさせることができるようになる。
【0044】
マーセル化処理は、原料(パルプ)と、水を主とする溶媒とを混合し、反応器の温度を0〜70℃、好ましくは10〜60℃、より好ましくは10〜40℃に調整して、マーセル化剤の水溶液を添加し、15分〜8時間、好ましくは30分〜7時間、より好ましくは30分〜3時間撹拌することにより行う。これによりマーセル化パルプを得る。
【0045】
マーセル化の際のpHは、9以上が好ましく、これによりマーセル化反応を進めることができる。該pHは、より好ましくは11以上であり、更に好ましくは12以上であり、13以上でもよい。pHの上限は特に限定されない。
【0046】
マーセル化は、温度制御しつつ上記各成分を混合撹拌することができる反応機を用いて行うことができ、従来からマーセル化反応に用いられている各種の反応機を用いることができる。例えば、2本の軸が撹拌し、上記各成分を混合するようなバッチ型攪拌装置は、均一混合性と生産性の両観点から好ましい。
【0047】
次いで、マーセル化パルプに対し、カルボキシメチル化剤(エーテル化剤ともいう。)を添加することにより、カルボキシメチル化パルプを得る。本明細書に記載の方法にしたがって、マーセル化の際は水を主とする溶媒として用い、カルボキシメチル化の際には水と有機溶媒との混合溶媒を用いることにより、上述の添加剤として好適なカルボキシメチル化パルプを経済的に得ることができる。
【0048】
カルボキシメチル化剤としては、モノクロロ酢酸、モノクロロ酢酸ナトリウム、モノクロロ酢酸メチル、モノクロロ酢酸エチル、モノクロロ酢酸イソプロピルなどが挙げられる。これらのうち、原料の入手しやすさという点でモノクロロ酢酸、またはモノクロロ酢酸ナトリウムが好ましい。
【0049】
カルボキシメチル化剤の使用量は、カルボキシメチル化パルプにおけるカルボキシメチル置換度0.50以下及びセルロースI型の結晶化度50%以上を両立できる量であればよく特に限定されないが、一実施形態において、セルロースの無水グルコース単位当たり、0.5〜1.5モルの範囲で添加することが好ましい。上記範囲の下限はより好ましくは0.6モル以上、さらに好ましくは0.7モル以上であり、上限はより好ましくは1.3モル以下、さらに好ましくは1.1モル以下である。カルボキシメチル化剤は、これに限定されないが、例えば、5〜80質量%、より好ましくは30〜60質量%の水溶液として反応器に添加することができるし、溶解せず、粉末状態で添加することもできる。
【0050】
マーセル化剤とカルボキシメチル化剤のモル比(マーセル化剤/カルボキシメチル化剤)は、カルボキシメチル化剤としてモノクロロ酢酸又はモノクロロ酢酸ナトリウムを使用する場合では、0.90〜2.45が一般的に採用される。その理由は、0.90未満であるとカルボキシメチル化反応が不十分となる可能性があり、未反応のモノクロロ酢酸又はモノクロロ酢酸ナトリウムが残って無駄が生じる可能性があること、及び2.45を超えると過剰のマーセル化剤とモノクロロ酢酸又はモノクロロ酢酸ナトリウムによる副反応が進行してグリコール酸アルカリ金属塩が生成する恐れがあるため、不経済となる可能性があることにある。
【0051】
カルボキシメチル化において、カルボキシメチル化剤の有効利用率は、15%以上であることが好ましい。より好ましくは20%以上であり、さらに好ましくは25%以上であり、特に好ましくは30%以上である。カルボキシメチル化剤の有効利用率とは、カルボキシメチル化剤におけるカルボキシメチル基のうち、セルロースに導入されたカルボキシメチル基の割合を指す。マーセル化の際に水を主とする溶媒を用い、カルボキシメチル化の際に水と有機溶媒との混合溶媒を用いることにより、高いカルボキシメチル化剤の有効利用率で(すなわち、カルボキシメチル化剤の使用量を大きく増やすことなく、経済的に)、本発明のカルボキシメチル化パルプを得ることができる。カルボキシメチル化剤の有効利用率の上限は特に限定されないが、現実的には80%程度が上限となる。なお、カルボキシメチル化剤の有効利用率は、AMと略すことがある。
【0052】
カルボキシメチル化剤の有効利用率の算出方法は以下の通りである:
AM = (DS ×セルロースのモル数)/ カルボキシメチル化剤のモル数
DS: カルボキシメチル置換度(測定方法は後述する)
セルロースのモル数:パルプ質量(100℃で60分間乾燥した際の乾燥質量)/162
(162はセルロースのグルコース単位当たりの分子量)。
【0053】
カルボキシメチル化反応におけるパルプ原料の濃度は、特に限定されないが、カルボキシメチル化剤の有効利用率を高める観点から、1〜40%(w/v)であることが好ましい。
【0054】
カルボキシメチル化剤を添加するのと同時に、あるいはカルボキシメチル化剤の添加の前または直後に、反応器に有機溶媒または有機溶媒の水溶液を適宜添加し、又は減圧などによりマーセル化処理時の水以外の有機溶媒等を適宜削減して、水と有機溶媒との混合溶媒を形成し、この水と有機溶媒との混合溶媒下で、カルボキシメチル化反応を進行させる。有機溶媒の添加または削減のタイミングは、マーセル化反応の終了後からカルボキシメチル化剤を添加した直後までの間であればよく、特に限定されないが、例えば、カルボキシメチル化剤を添加する前後30分以内が好ましい。
【0055】
有機溶媒としては、メタノール、エタノール、N−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、N−ブタノール、イソブタノール、第3級ブタノール等のアルコールや、アセトン、ジエチルケトン、メチルエチルケトンなどのケトン、ならびに、ジオキサン、ジエチルエーテル、ベンゼン、ジクロロメタンなどを挙げることができ、これらの単独または2種以上の混合物を水に添加してカルボキシメチル化の際の溶媒として用いることができる。これらのうち、水との相溶性が優れることから、炭素数1〜4の一価アルコールが好ましく、炭素数1〜3の一価アルコールがさらに好ましい。
【0056】
カルボキシメチル化の際の混合溶媒中の有機溶媒の割合は、水と有機溶媒との総和に対して有機溶媒が20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、40質量%以上であることがさらに好ましく、45質量%以上であることがさらに好ましく、50質量%以上であることが特に好ましい。有機溶媒の割合が高いほど、均一なカルボキシメチル基の置換が起こりやすいなど、均質で品質の安定したカルボキシメチル化パルプが得られるという利点が得られる。有機溶媒の割合の上限は限定されず、例えば、99質量%以下であってよい。添加する有機溶媒のコストを考慮すると、好ましくは90質量%以下であり、更に好ましくは85質量%以下であり、更に好ましくは80質量%以下であり、更に好ましくは70質量%以下である。
【0057】
カルボキシメチル化の際の反応媒(パルプを含まない、水と有機溶媒等との混合溶媒)は、マーセル化の際の反応媒よりも、水の割合が少ない(言い換えれば、有機溶媒の割合が多い)ことが好ましい。本範囲を満たすことで、得られるカルボキシメチル化パルプの結晶化度を維持しやすくなり、本発明のカルボキシメチル化パルプを、より効率的に得ることができるようになる。また、カルボキシメチル化の際の反応媒が、マーセル化の際の反応媒よりも水の割合が少ない(有機溶媒の割合が多い)場合、マーセル化反応からカルボキシメチル化反応に移行する際に、マーセル化反応終了後の反応系に所望の量の有機溶媒を添加するという簡便な手段でカルボキシメチル化反応用の混合溶媒を形成させることができるという利点も得られる。
【0058】
水と有機溶媒との混合溶媒を形成し、マーセル化パルプにカルボキシメチル化剤を投入した後、温度を好ましくは10〜40℃の範囲で一定に保ったまま15分〜4時間、好ましくは15分〜1時間程度撹拌する。マーセル化パルプを含む液とカルボキシメチル化剤との混合は、反応混合物が高温になることを防止するために、複数回に分けて、または、滴下により行うことが好ましい。カルボキシメチル化剤を投入して一定時間撹拌した後、必要であれば昇温して、反応温度を30〜90℃、好ましくは40〜90℃、さらに好ましくは60〜80℃として、30分〜10時間、好ましくは1時間〜4時間、エーテル化(カルボキシメチル化)反応を行い、カルボキシメチル化パルプを得る。カルボキシメチル化反応時に昇温することにより、エーテル化反応を短時間で効率的に行えるという利点が得られる。
【0059】
カルボキシメチル化の際には、マーセル化の際に用いた反応器をそのまま用いてもよく、あるいは、温度制御しつつ上記各成分を混合撹拌することが可能な別の反応器を用いてもよい。
【0060】
反応終了後、残存するアルカリ金属塩を鉱酸または有機酸で中和してもよい。また、必要に応じて、副生する無機塩、有機酸塩等を含水メタノールで洗浄して除去し、乾燥、粉砕、分級してカルボキシメチル化パルプ又はその塩としてもよい。乾燥方法は何ら限定されないが、例えば凍結乾燥法、噴霧乾燥法、棚段式乾燥法、ドラム乾燥法、ベルト乾燥法、ガラス板等に薄く伸展し乾燥する方法、流動床乾燥法、マイクロウェーブ乾燥法、起熱ファン式減圧乾燥法などの既知の方法を使用できる。粉砕方法も特に限定されず、乾式粉砕で用いる装置としてはハンマーミル、ピンミル等の衝撃式ミル、ボールミル、タワーミル等の媒体ミル、ジェットミル等の乾式粉砕や、ホモジナイザー、マスコロイダー、パールミル等の湿式粉砕を行うことができる。
【0061】
また、本発明の粉砕物及び添加剤に用いられるカルボキシメチル化パルプを製造する際、必要に応じて、原料パルプまたはカルボキシメチル化後のパルプに、塩酸、硫酸、硝酸などの鉱酸を用いて、酸加水分解処理を施してもよい。酸加水分解処理を施したカルボキシメチル化パルプは、粉末状のセルロースの原料として用いることができ、粉末状セルロースとする場合には必要に応じてさらに中和、乾燥、粉砕、分級処理を施してもよい。
【0062】
上記の製法により、カルボキシメチル置換度が0.50以下かつセルロースI型の結晶化度が50%以上であるにもかかわらず、均質で、保水性、保形性等の良好なカルボキシメチル化パルプが得られる理由は明らかではないが、本発明者らは、次のように推測している:マーセル化反応を水を主とする溶媒を用いて行うことによりマーセル化剤が均一に混ざりやすくなり、マーセル化反応がより均一に生じるようになり、また、カルボキシメチル化において有機溶媒が存在することにより、カルボキシメチル化剤の有効利用率が向上し、その結果余剰のカルボキシメチル化剤による副反応(例えば、グリコール酸アルカリ金属塩の生成等)が生じにくくなり、品質が安定化すると考えられる。これにより均一にカルボキシメチル化が起き、カルボキシメチル化パルプが均一に分散しやすくなり、濾過残渣が生じる割合が減少したと考えられる。しかし、これに限定されるものではない。
【0063】
<カルボキシメチル化パルプの粉砕物>
カルボキシメチル化パルプを、上述の乾式粉砕または湿式粉砕することにより、カルボキシメチル化パルプの粉砕物を得ることができる。乾式粉砕と湿式粉砕の中では、湿式粉砕が好ましい。また、粉砕により、カルボキシメチル化パルプの繊維が、フィブリル化されることが好ましい。
【0064】
粉砕によりフィブリル化されたカルボキシメチル化パルプは、カルボキシメチル化パルプをリファイナーなどを用いて適度に叩解または解繊(フィブリル化)することにより得られるものである。フィブリル化されたカルボキシメチル化パルプの粉砕物は、叩解または解繊されていないカルボキシメチル化パルプに比べて、繊維表面にセルロースのミクロフィブリルの毛羽立ちが見られる。また、カルボキシメチル化されたセルロースナノファイバー(以下、「CNF]と略すこともある。)に比べて、繊維径が大きく、繊維自体の微細化(内部フィブリル化)を抑制しながら効率的に繊維表面を毛羽立たせた(外部フィブリル化)した形状を有する。
【0065】
また、フィブリル化されたカルボキシメチル化パルプの粉砕物は、カルボキシメチル化されていないフィブリル化されたパルプと比べて、カルボキシメチル基を有することにより、保水性が高い、チキソトロピー性を有する、などの特徴を有する。
【0066】
また、フィブリル化されたカルボキシメチル化パルプの粉砕物は、カルボキシメチル化されていないパルプを叩解した後にカルボキシメチル化したものと比べて、フィブリル化時にパルプがカルボキシメチル基を有するため、繊維間に存在する強固な水素結合がカルボキシメチル基の導入により弱められ、フィブリル化の際に繊維同士がほぐれやすく、繊維の損傷が少ないという特徴を有する。
【0067】
カルボキシメチル化パルプのフィブリル化における解繊または叩解は、ディスク型、コニカル型、シリンダー型等といったリファイナー、高速解繊機、せん断型撹拌機、コロイドミル、高圧噴射分散機、ビーター、PFIミル、ニーダー、ディスパーザーなどを用いて、湿式で(すなわち、水等を分散媒とする分散体の形態で)行うことが好ましいが、特にこれらの装置に限定されず、湿式にて機械的な解繊力を付与する装置であればいずれでもよい。
【0068】
フィブリル化に供するカルボキシメチル化パルプの分散体における原料の固形分濃度は、0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がさらに好ましく、1.0質量%以上がさらに好ましく、2.0質量%以上がさらに好ましい。本発明の粉砕物に用いる特定のカルボキシメチル置換度と結晶化度を有するカルボキシメチル化パルプは、べたつきが少なく、比較的高濃度で用いても装置の目詰まり等の問題が起きにくいという特徴がある。濃度の上限としては、40質量%以下が好ましく、30質量%以下がさらに好ましい。
【0069】
なお、フィブリル化に供するための分散体を調製する前に、上述の方法で得られたカルボキシメチル化パルプを予め乾燥させ、粉砕してもよい。次いで、乾式粉砕したカルボキシメチル化パルプを分散媒に分散し、フィブリル化(湿式)に供してもよい。原料の乾式粉砕に用いる装置は特に限定されず、ハンマーミル、ピンミル等の衝撃式ミル、ボールミル、タワーミル等の媒体ミル、ジェットミル等を例示することができる。
【0070】
カルボキシメチル化パルプの粉砕物またはフィブリル化されたカルボキシメチル化パルプの粉砕物(以下、これらをまとめて「粉砕物」と呼ぶ。)は、平均繊維径が500nm以上であることが好ましく、500nmよりも大きいことが好ましく、1μm以上がさらに好ましく、10μm以上がより好ましい。平均繊維径の上限は60μm以下が好ましく、40μm以下がより好ましく、30μm以下がさらに好ましく、20μm以下がさらに好ましい。平均繊維径がこの範囲になる程度の適度な粉砕またはフィブリル化を行うことにより、未解繊のセルロース繊維に比べて高い保水性を呈し、また、微細に解繊されたセルロースナノファイバーに比べて少量でも高い強度付与効果や歩留まり向上効果が得られる。
【0071】
粉砕物の平均繊維長は、200μm以上が好ましく、300μm以上が好ましく、500μm以上がより好ましい。平均繊維長の上限は、特に限定されないが、3000μm以下が好ましく、1500μm以下が好ましく、1100μm以下がさらに好ましく、900μm以下がさらに好ましい。本発明によれば、カルボキシメチル化パルプを叩解または解繊等の粉砕に用いるため、繊維を極端に短くすることなく、フィブリル化を進めることができる。
【0072】
上記の平均繊維径及び平均繊維長は、例えば、ABB株式会社製L&W Fiber Tester Plusや、バルメット株式会社製フラクショネーター等の画像解析型繊維分析装置により求めることができる。具体的には、フラクショネーターを用いた場合、それぞれ、length-weighted fiber width及びlength-weighted average fiber lengthとして求めることができる。
【0073】
粉砕物のアスペクト比は、10以上が好ましく、20以上がより好ましく、30以上がさらに好ましい。アスペクト比の上限は特に限定されないが、1000以下が好ましく、100以下がより好ましく、80以下がさらに好ましい。アスペクト比は、下記の式により算出できる:
アスペクト比=平均繊維長/平均繊維径。
【0074】
フィブリル化されたカルボキシメチル化パルプの粉砕物についてバルメット株式会社製フラクショネーターを用いて測定したフィブリル化率(Fibrillation %)は、1.0%以上であることが好ましく、2.5%以上であることがより好ましく、3.5%以上であることがさらに好ましい。フィブリル化率は、繊維面積とフィブリル面積の合計に対するフィブリル面積の割合に相当する。使用したセルロース原料の種類によってフィブリル化率は異なるが、上記範囲であればフィブリル化が行なわれていると考えられる。また、本発明では、フィブリル化する前のカルボキシメチル化パルプのフィブリル化率(f
0)が、向上するようにフィブリル化を行うことが好ましい。フィブリル化されたカルボキシメチル化パルプ粉砕物のフィブリル化率をfとすると、フィブリル化率の差Δf=f−f
0は、0を超えていればよく、好ましくは0.2%以上であり、より好ましくは1%以上であり、さらに好ましくは2.5%以上である。
【0075】
粉砕物のカルボキシメチル置換度は、粉砕及び/またはフィブリル化する前のカルボキシメチル化パルプにおけるカルボキシメチル置換度と、通常同じである。
【0076】
粉砕物のセルロースI型の結晶化度は、50%以上であり、60%以上であることがより好ましい。セルロースI型の結晶化度の上限は特に限定されない。現実的には90%程度が上限となると考えられる。セルロースI型の結晶化度の測定方法は、上述した通りである。
【0077】
粉砕物のアニオン化度(アニオン電荷密度ともいう。)は、0.10meq/g以上2.00meq/g以下であることが好ましい。粉砕物のアニオン化度の測定方法は、以下の通りである:
粉砕物を水に分散し、固形分10g/Lの水分散体を調製し、マグネチックスターラーを用い10分以上1000rpmにて撹拌する。得られたスラリーを0.1g/Lに希釈後、10ml採取し、流動電流検出器(Mutek Particle Charge Detector 03)用い、1/1000規定度のジアリルジメチルアンモニウムクロリド(DADMAC)で滴定して、流動電流がゼロになるまでのDADMACの添加量を用い、以下の式によりアニオン化度を算出する:
q=(V×c)/m
q:アニオン化度(meq/g)
V:流動電流がゼロになるまでのDADMACの添加量(L)
c:DADMACの濃度(meq/L)
m:測定試料中のカルボキシメチル化パルプの質量(g)。
【0078】
粉砕物のアニオン化度は、0.10meq/g以上2.00meq/g以下が好ましく、より好ましくは0.10meq/g以上1.50meq/g以下であり、さらに好ましくは0.10meq/g以上1.30meq/g以下であり、さらに好ましくは0.10meq/g以上1.00meq/g以下であり、更に好ましくは0.10meq/g以上0.80meq/g以下である。このような範囲のアニオン化度であると、アニオン化度が高いカルボキシメチル化パルプに比べて、カルボキシメチル基が、局所的ではなく、セルロース全体にわたり均一に導入されていると考えられ、例えば、保水性付与等の効果をより安定に得ることができると考えられる。
【0079】
粉砕物は、水を分散媒として分散体としたときに(水分散体)、比較的低い粘度を示すという特徴を有する。粉砕物の粘度の測定方法は、以下の通りである:
粉砕物をポリプロピレン製容器に量りとり、イオン交換水160mlに分散し、固形分1質量%となるように水分散体を調製する。水分散体を25℃に調整する。その後、JIS−Z−8803の方法に準じて、B型粘度計(東機産業社製)を用いて、回転数60rpmで1分後の粘度を測定する。
【0080】
粉砕物の粘度(25℃、60rpm)は、好ましくは2500mPa・s以下である。下限値については、好ましくは10mPa・s以上、より好ましくは20mPa・s以上、さらに好ましくは50mPa・s以上であり、上限値についてはより好ましくは2000mPa・s以下、さらに好ましくは1500mPa・s以下、さらに好ましくは1000mPa・s以下、さらに好ましくは600mPa・s以下、さらに好ましくは300mPa・s以下である。
【0081】
粉砕物は、以下の方法で測定される保水能が、好ましくは15以上である。保水能の測定方法は、以下の通りである:
粉砕物の固形分0.3質量%のスラリー(媒質:水)を40mL調製する。このときのスラリーの質量をAとする。次いで、スラリーの全量を高速冷却遠心機で30℃で25000Gで30分間遠心分離し、水相と沈降物とを分離する。このときの沈降物の質量をBとする。また、水相をアルミカップに入れ、105℃で一昼夜乾燥させて水を除去し、水相中の固形分の質量を測定する。この水相中の固形分の質量ををCとする。以下の式を用いて、保水能を計算する:
保水能=(B+C−0.003×A)/(0.003×A−C)。
【0082】
保水能は、上述の式の通り、沈降物中の繊維の固形分の質量に対する沈降物中の水の質量に相当する。値が大きいほど、繊維が水を保持する力が高いことを意味する。粉砕物における保水能は、好ましくは15以上であり、より好ましくは20以上であり、さらに好ましくは30以上である。上限は特に限定されないが、現実的には200以下程度となると思われる。
【0083】
なお、上述の保水能の測定方法は、フィブリル化されたカルボキシメチル化パルプの粉砕物を対象とするものであり、フィブリル化または解繊されていない繊維や、微細に解繊されたCNFに対しては通常適用できない。フィブリル化または解繊されていないセルロース繊維の保水能を上述の方法で測定しようとすると、上述の遠心分離の条件では密な沈降物が形成できず、沈降物と水相とを分離することが困難である。また、CNFは、上述の遠心分離の条件ではほとんど沈降しない。
【0084】
粉砕物は、固形分濃度1.0質量%の水分散体とした際に、好ましくは500mS/m以下の電気伝導度を有する。より好ましくは300mS/m以下であり、さらに好ましくは200mS/m以下であり、さらに好ましくは100mS/m以下であり、さらに好ましくは70mS/m以下である。電気伝導度の下限は、好ましくは5mS/m以上であり、より好ましくは10mS/m以上である。粉砕物の電気伝導度は、以下の方法により測定できる:
粉砕物の固形分濃度1.0質量%の水分散体200gを調製し、十分に撹拌する。その後、電気伝導度計(HORIBA社製ES−71型)を用いて電気伝導度を測定する。
【0085】
粉砕物は、BET比表面積が好ましくは30m
2/g以上であり、より好ましくは50m
2/g以上であり、さらに好ましくは100m
2/g以上である。BET比表面積が高いと、例えば製紙用添加剤として用いた場合にパルプに結合しやすくなり、歩留まりが向上する、紙への強度付与の効果が高まるなどの利点がある。粉砕物のBET比表面積は、窒素ガス吸着法(JIS Z 8830)を参考に以下の方法により測定できる:
(1)粉砕物の約2%スラリー(分散媒:水)を、固形分が約0.1gとなるように取り分け遠心分離の容器に入れ、100mlのエタノールを加える。
(2)攪拌子を入れ、500rpmで30分以上攪拌する。
(3)撹拌子を取り出し、遠心分離機で、7000G、30分、30℃の条件でパルプを沈降させる。
(4)沈降したパルプをできるだけ除去しないようにしながら、上澄みを除去する。
(5)100mlエタノールを加え、撹拌子を加え、(2)の条件で攪拌、(3)の条件で遠心分離、(4)の条件で上澄み除去をし、これを3回繰り返す。
(6)(5)の溶媒をエタノールからt−ブタノールに変え、t−ブタノールの融点以上の室温下で、(5)と同様にして撹拌、遠心分離、上澄み除去を3回繰り返す。
(7)最後の溶媒除去後、t−ブタノールを30ml加え、軽く混ぜた後ナスフラスコに移し、氷浴を用いて凍結させる。
(8)冷凍庫で30分以上冷却する。
(9)凍結乾燥機に取り付け、3日間凍結乾燥する。
(10)BET測定を行う(前処理条件:窒素気流下105℃2時間、相対圧0.01〜0.30、サンプル量30mg程度)。
【0086】
粉砕物は、ショッパー・リーグラろ水度が好ましくは1゜SR以上であり、より好ましくは10゜SR以上であり、より好ましくは25゜SR以上である。粉砕物のショッパー・リーグラろ水度の測定方法は、JIS P 82121−1:2012に準じるものとし、具体的には、以下の通りである:
粉砕物を水に分散し、固形分10g/Lの水分散体を調製し、マグネチックスターラーを用い一昼夜1000rpmにて撹拌する。得られたスラリーを1g/Lに希釈する。ミューテック社製DFR−04に60メッシュスクリーン(ワイヤー太さ0.17mm)をセットし、1000mlの検液から、上記メッシュを通過する液量を60秒間計測し、JIS P 8121−1:2012に準じた方法で、ショッパー・リーグラろ水度を算出する。
【0087】
粉砕物のショッパー・リーグラろ水度は、特に限定されないが下限は好ましくは1゜SR以上であり、より好ましくは10゜SR以上であり、より好ましくは25゜SR以上であり、より好ましくは40゜SR以上であり、さらに好ましくは50゜SR以上である。上限は特に限定されず、100゜SR以下である。
【0088】
粉砕物は、固形分1質量%の水分散体とした際の透明度(660nm光の透過率)が、60%未満であることが好ましく、40%以下がさらに好ましく、30%以下がさらに好ましく、20%以下がさらに好ましく、10%以下がさらに好ましい。下限は特に限定されず、0%以上でよい。透明度がこのような範囲であると、フィブリル化の程度が適度であり、本発明の効果が得られやすい。粉砕物透明度は、以下の方法で測定することができる:
粉砕物の水分散体(固形分1%(w/v)、分散媒:水)を調製し、UV−VIS分光光度計 UV−1800(島津製作所社製)を用い、光路長10mmの角型セルを用いて波長660nmの光の透過率を測定する。
【0089】
粉砕物は、水を分散媒とした際に、固形分濃度2%以上程度で、半透明から白色のゲル、またはクリーム状、ペースト状となる。
【0090】
粉砕物は、製造後に得られる分散体の状態であってもよいが、必要に応じて乾燥してもよく、また水に再分散してもよい。乾燥方法は何ら限定されないが、例えば凍結乾燥法、噴霧乾燥法、棚段式乾燥法、ドラム乾燥法、ベルト乾燥法、ガラス板等に薄く伸展し乾燥する方法、流動床乾燥法、マイクロウェーブ乾燥法、起熱ファン式減圧乾燥法などの既知の方法を使用できる。乾燥後に必要に応じて、カッターミル、ハンマーミル、ピンミル、ジェットミル等で粉砕しても良い。また、水への再分散の方法も特に限定されず、既知の分散装置を使用することができる。
【0091】
<添加剤>
上述の製法により得られるカルボキシメチル置換度が0.50以下であり、セルロースI型の結晶化度が50%以上である粉砕物は、均質で分散安定性に優れ、保水性と保形性付与に優れ、また、水と接触した際にも比較的べたべたしにくくさらっとしており、水中でダマ(塊)を形成しにくいことから、食品、医薬品、化粧品、飼料、製紙、塗料等の様々な分野において保水性付与剤、保形性付与剤、粘度調整剤、乳化安定剤、分散安定剤等の各種添加剤として好適に使用することができる。
【0092】
本発明の添加剤は、一般的に添加剤が用いられる様々な分野、例えば、これらに限定されないが、食品、飲料、化粧品、医薬、製紙、各種化学用品、塗料、スプレー、飼料、農薬、土木、建築、電子材料、難燃剤、家庭雑貨、接着剤、洗浄剤、芳香剤、潤滑用組成物などで、増粘剤、ゲル化剤、糊剤、食品添加剤、賦形剤、塗料用添加剤、接着剤用添加剤、製紙用添加剤、研磨剤、ゴム・プラスチック用配合材料、保水性付与剤、保形性付与剤、粘度調整剤、乳化安定剤、分散安定剤、泥水調整剤、ろ過助剤、溢泥防止剤などとして使用することができる。
【0093】
食品用添加剤としては、これらに限定されないが、食品用の保水性付与剤、保形性付与剤、粘度調整剤、乳化安定剤、分散安定剤が挙げられる。使用できる食品としては、これらに限定されないが、飲料(ココア、繊維・果肉入りジュース、しるこ、甘酒、乳酸菌飲料、フルーツ牛乳など)、スープ類(コーンスープ、ラーメンスープ、味噌汁、コンソメなど)、たれ類、ドレッシング、ケチャップ、マヨネーズ、ジャム、ヨーグルト、ホイップクリーム、乾物類(乾燥加工食品、インスタントラーメン、パスタ麺など)、グルテンフリーパスタ、アイスクリーム、モナカ、シャーベット、ポリジュース、菓子類(グミ、ソフトキャンディ、ゼリー、クッキーなど)、メレンゲ、パン(メロンパン、クリームパンなど)、グルテンフリーパン、フィリング、ホットケーキ、練り物、可食性フィルムなどが挙げられる。
【0094】
医薬品用添加剤としては、これらに限定されないが、医薬品用の保水性付与剤、保形性付与剤、粘度調整剤、乳化安定剤、分散安定剤が挙げられる。使用できる食品としては、これらに限定されないが、錠剤、軟膏、絆創膏、パップ剤、ハンドクリーム、練歯磨などが挙げられる。
【0095】
化粧品用添加剤としては、これらに限定されないが、化粧品用の保水性付与剤、保形性付与剤、粘度調整剤、乳化安定剤、分散安定剤が挙げられる。化粧品としては、例えば、フェイスパウダー、ファンデーション、スクラブ洗顔剤、パック、洗顔フォーム、洗顔クリーム、ヘアムース、シャンプー、ソープ、ローション、ヘアカラー、ヘアブリーチ、マスカラ、アイライナー、ネイル、制汗剤などが挙げられる。
【0096】
飼料用添加剤としては、これらに限定されないが、飼料用の保水性付与剤、保形性付与剤、粘度調整剤、乳化安定剤、分散安定剤が挙げられる。飼料としては、例えば、家畜や養殖魚用のモイストペレット、エクスパンジョンペレット、牛用代用乳などが挙げられる。
【0097】
製紙用添加剤としては、これらに限定されないが、製紙用の保水性付与剤、保形性付与剤、粘度調整剤、乳化安定剤、分散安定剤が挙げられる。例えば、表面サイズ剤、歩留まり向上剤、紙力増強剤、コーティング剤、嵩高紙用添加剤などとして用いることができる。
【0098】
塗料用添加剤としては、これらに限定されないが、塗料用の保水性付与剤、保形性付与剤、粘度調整剤、乳化安定剤、分散安定剤が挙げられる。塗料としては、艶消し塗料、建築用塗料、自動車内装塗料などが挙げられる。
【0099】
その他、食用油や各種溶剤の濾過(水分除去);繊維壁、砂壁、石膏ボードなどの建材;気泡シールド、連壁止水剤などの土木;発泡スチロール、生分解性樹脂、ゴム、セラミック、塩ビなどの樹脂充填剤又はコンパウンド;微粒子カーボンブラック、硫酸バリウム(X線造影剤)、酸化チタンや酸化亜鉛の分散などの分散剤;塩化カルシウム等の潮解性剤の吸湿時の保形性改善などの吸湿剤助剤;繊維(生地、糸)の改質剤;液体の担体;潤滑油剤;窯業;猫砂;乾燥剤用吸水材;緑化工法;バインダーなどに用いることもできる。
【実施例】
【0100】
以下、本発明を実施例及び比較例をあげてより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、特に断らない限り、部および%は質量部および質量%を示す。
【0101】
(カルボキシメチル化パルプの製造例1)
回転数を100rpmに調節した二軸ニーダーに、水130部と、水酸化ナトリウム20部を水100部に溶解したものとを加え、広葉樹パルプ(日本製紙(株)製、LBKP)を100℃60分間乾燥した際の乾燥質量で100部仕込んだ。30℃で90分間撹拌、混合しマーセル化されたセルロース原料を調製した。更に撹拌しつつイソプロパノール(IPA)100部と、モノクロロ酢酸ナトリウム60部を添加し、30分間撹拌した後、70℃に昇温して90分間カルボキシメチル化反応をさせた。カルボキシメチル化反応時の反応媒中のIPAの濃度は、30%である。反応終了後、酢酸でpH7程度になるように中和した後、脱液、乾燥を行いカルボキシメチル置換度0.21、セルロースI型の結晶化度72%のカルボキシメチル化パルプを得た。カルボキシメチル化剤の有効利用率は、29%であった。なお、カルボキシメチル置換度及びセルロースI型の結晶化度の測定方法、ならびにカルボキシメチル化剤の有効利用率の算出方法は、上述の通りである。
【0102】
(カルボキシメチル化パルプの製造例2)
回転数を100rpmに調節した二軸ニーダーに、水125部と、水酸化ナトリウム20部を水100部に溶解したものとを加え、広葉樹パルプ(日本製紙(株)製、LBKP)を100℃60分間乾燥した際の乾燥質量で100部仕込んだ。30℃で90分間撹拌、混合しマーセル化されたセルロース原料を調製した。更に撹拌しつつイソプロパノール(IPA)100部と、モノクロロ酢酸ナトリウム60部を添加し、30分間撹拌した後、70℃に昇温して90分間カルボキシメチル化反応をさせた。カルボキシメチル化反応時の反応媒中のIPAの濃度は、31%である。反応終了後、酢酸でpH7程度になるように中和した後、脱液、乾燥、及び粉砕を行いカルボキシメチル置換度が0.25、セルロースI型の結晶化度が74%であるカルボキシメチル化パルプを得た。カルボキシメチル化剤の有効利用率は、30%であった。
【0103】
(カルボキシメチル化パルプの製造例3)
回転数を100rpmに調節した二軸ニーダーに、水75部と、水酸化ナトリウム20部を水100部に溶解したものとを加え、広葉樹パルプ(日本製紙(株)製、LBKP)を100℃60分間乾燥した際の乾燥質量で100部仕込んだ。30℃で90分間撹拌、混合しマーセル化されたセルロース原料を調製した。更に撹拌しつつイソプロパノール(IPA)100部と、モノクロロ酢酸ナトリウム60部を添加し、30分間撹拌した後、70℃に昇温して90分間カルボキシメチル化反応をさせた。カルボキシメチル化反応時の反応媒中のIPAの濃度は、37%である。反応終了後、酢酸でpH7程度になるように中和した後、脱液、乾燥を行い、カルボキシメチル置換度0.38、セルロースI型の結晶化度59%のカルボキシメチル化パルプを得た。カルボキシメチル化剤の有効利用率は、46%であった。
【0104】
(実施例1)
製造例1で得られたカルボキシメチル化パルプの固形分濃度4質量%の水分散体を調製し、相川鉄工株式会社製ラボリファイナーを用いて、10分間処理し、フィブリル化されたカルボキシメチル化パルプの粉砕物を調製した。得られた粉砕物について、表1に記載の各物性値を測定した。各物性値の測定方法は、上記の「カルボキシメチル化パルプの粉砕物」の欄で粉砕物の測定方法として記載した通りである。結果を表1に示す。
【0105】
(実施例2)
製造例1で得られたカルボキシメチル化パルプの固形分濃度を4質量%から2質量%に変更し、相川鉄工株式会社製トップファイナーを用いた以外は、実施例1と同様にして、フィブリル化したカルボキシメチル化パルプの粉砕物を調製した。結果を表1に示す。
【0106】
(実施例3)
製造例2で得られたカルボキシメチル化パルプの固形分濃度4質量%の水分散体を用いた以外は、実施例2と同様にして、フィブリル化されたカルボキシメチル化パルプの粉砕物を調製した。結果を表1に示す。
【0107】
(実施例4)
製造例3で得られたカルボキシメチル化パルプの固形分濃度4質量%の水分散体を用いた以外は、実施例2と同様にして、フィブリル化されたカルボキシメチル化パルプの粉砕物を調製した。結果を表1に示す。
【0108】
(比較例1)
固形分濃度4質量%の針葉樹パルプ(日本製紙(株)製、NBKP)の水分散体を調製し、相川鉄工株式会社製トップファイナーを用いて、10分間処理し、フィブリル化されたパルプを調製した。結果を表1に示す。
【0109】
【表1】
【0110】
表1の結果より、本発明のフィブリル化されたカルボキシメチル化パルプの粉砕物(実施例1〜4)は、カルボキシメチル化されていない比較例1に比べて、保水能が高いことがわかる。また、本発明のパルプ(実施例1〜4)は、装置内でべたつきや目詰まりが生じにくく、ハンドリング性が良好であった。
【0111】
(製造例4)
回転数を100rpmに調節した二軸ニーダーに、水130部と、水酸化ナトリウム20部を水100部に溶解したものとを加え、広葉樹パルプ(日本製紙(株)製、LBKP)を100℃60分間乾燥した際の乾燥質量で100部仕込んだ。30℃で90分間撹拌、混合しマーセル化セルロースを調製した。更に撹拌しつつイソプロパノール(IPA)100部と、モノクロロ酢酸ナトリウム60部を添加し、30分間撹拌した後、70℃に昇温して90分間カルボキシメチル化反応をさせた。カルボキシメチル化反応時の反応媒中のIPAの濃度は、30%である。反応終了後、酢酸でpH7程度になるよう中和し、脱液、乾燥、粉砕して、カルボキシメチル置換度0.24、セルロースI型の結晶化度73%のカルボキシメチル化パルプのナトリウム塩の粉砕物を得た。カルボキシメチル化剤の有効利用率は、29%であった。なお、カルボキシメチル置換度及びセルロースI型の結晶化度の測定方法、ならびにカルボキシメチル化剤の有効利用率の算出方法は、上述の通りである。
【0112】
(製造例5)
IPAの添加量を変えることによりカルボキシメチル化反応時の反応液中のIPAの濃度を50%とした以外は製造例4と同様にして、カルボキシメチル化パルプのナトリウム塩の粉砕物を得た。カルボキシメチル置換度は0.31、セルロースI型の結晶化度は66%、カルボキシメチル化剤の有効利用率は37%であった。
【0113】
(製造例6)
IPAの添加量を変えることによりカルボキシメチル化反応時の反応液中のIPAの濃度を65%とした以外は製造例4と同様にして、カルボキシメチル化パルプのナトリウム塩の粉砕物を得た。カルボキシメチル置換度は0.20、セルロースI型の結晶化度は74%、カルボキシメチル化剤の有効利用率は25%であった。
【0114】
(製造例7〜10)
製造例7〜10は、それぞれ、上記の実施例1〜4で得たフィブリル化されたカルボキシメチル化パルプの粉砕物である。
【0115】
(製造例11〜14)
製造例11〜14は、それぞれ、上記の製造例7〜10で得られた粉砕物を凍結乾燥法により乾燥させたものである。
【0116】
(比較製造例1)
マーセル化反応時に水酸化ナトリウム20部を水100部に溶解したものに代えて水酸化ナトリウム45部を水100部に溶解したものを用い、カルボキシメチル化反応時の溶媒を水100%とし、カルボキシメチル化剤としてモノクロロ酢酸ナトリウム60部に代えてモノクロロ酢酸ナトリウム150部を用いた以外は製造例4と同様にして、カルボキシメチル化パルプのナトリウム塩の粉砕物を得た。カルボキシメチル置換度は0.28、セルロースI型の結晶化度は45%、カルボキシメチル化剤の有効利用率は13%であった。
【0117】
(比較製造例2)
広葉樹パルプに代えて溶解パルプ(日本製紙(株)製、NDPS)を用い、マーセル化反応時にIPA500部と水酸化ナトリウム48部を水100部に溶解したものを用い、カルボキシメチル化反応時に90%IPA45部に溶解したモノクロロ酢酸37部を用いた以外は製造例4と同様にして、カルボキシメチル化パルプのナトリウム塩の粉砕物を得た。カルボキシメチル置換度は0.50、セルロースI型の結晶化度は43%、カルボキシメチル化剤の有効利用率は78.8%であった。
【0118】
製造例4〜6のカルボキシメチル化パルプの乾式粉砕物について、上記の「カルボキシメチル化パルプ」の欄でカルボキシメチル化パルプの測定方法として説明した方法により、濾過残渣の割合、ショッパー・リーグラろ水度、カナディアンスタンダードフリーネス、濾水量、水分散体における粘度(25℃、30rpm)、及びアニオン化度を測定した。結果を表2に示す。
【0119】
【表2】
【0120】
(実施例5〜11、比較例2、3:パン類)
以下に示す配合で実施例、比較例の生地を調製した。その後、得られた各生地を、通常のストレート法の工程により発酵し、焼成して、角形食パンを得た。得られた食パンについて、焼成後の保水性について、10名の訓練されたパネラーにより官能評価した。結果を表3に示す。
【0121】
食パン用の生地の配合
小麦粉 100.0部
イースト 2.0部
イーストフード 0.05部
砂糖 7.0部
塩 2.0部
脱脂粉乳 2.0部
ショートニング 4.0部
各カルボキシメチル化パルプ粉砕物 (固形分)0.5部
水 72.0部。
【0122】
保水性についての官能評価
得られた各食パンの保水性(しっとりとした食感)について、訓練された10人のパネラーが、良好または不良のいずれかで評価した。結果を表3に示す。表3における○、△、×の記号は、以下の評価結果を示す:
○:10人中9人以上が保水性(しっとりとした食感)が良好であると評価した
△:10人中6〜8人が保水性が良好であると評価した
×:保水性が良好であると評価した人が10人中5人以下であった。
【0123】
保形成についての評価
得られた各食パンの保形成について、トースターによる加熱前後の体積をレーザー体積計VM−2000V(アステックス社)を用いて測定し、その値から体積縮小率を算出し、下記の基準で評価した:
〇:トースターによる加熱後の体積縮小率が、7%以下
△:トースターによる加熱後の体積縮小率が、7%超〜9%以下
×:トースターによる加熱後の体積縮小率が9%超。
【0124】
【表3】
【0125】
表3の結果からわかるように、本発明のカルボキシメチル化パルプの粉砕物を含有する添加剤は、食パンにしっとりとした食感を与え、食品用の保水性付与剤として適していることがわかる。
【0126】
(実施例12〜18、比較例4、5:グミ)
以下に示す配合で実施例、比較例のグミ原液を調製した。得られたグミ原液をPP製のモールド(縦×横×高さ=20mm×20mm×15mm)に高さ10mmとなるよう充填した。直径24cm、高さ14cmのIHヒーター専用鍋に、直径20cm、高さ6cmのメッシュの底面を上向きにして置き、水1リットルを入れた。IHヒーターを用いて鍋を加熱し、水が沸騰し、蒸気が出始めたところで保温設定にした。この時の鍋の内部の温度は100℃であった。グミ原液を充填したPP製モールドをメッシュの底面に置き、鍋と蓋との間に濡れ布巾を挟んだ状態にして蓋をし、30分間蒸気加熱することで、グミを得た。得られたグミについて、食感及びベタツキ感を評価した。結果を表4に示す。
【0127】
グミ原液の配合
還元水飴 49.4部
粉糖 42.8部
各カルボキシメチル化パルプ粉砕物 6.4部
クエン酸 1.2部
グレープ香料 0.2部
【0128】
食感の評価
得られたグミの食感(弾力性、みずみずしさ)を、訓練された10人のパネラーが、良好または不良のいずれかで評価した。結果を表4に示す。表4における○、△、×の記号は、以下の評価結果を示す:
○:10人中9人以上が食感良好と評価した
△:10人中6〜8人が食感良好と評価した
×:食感良好と評価した人が10人中5人以下であった。
【0129】
ベタツキ感の評価
得られたグミを触って、ベタツキ度合いを官能評価した。基準は以下の通りである:
○:全くべたつかない
△:ほとんどべたつかない
×:ベタツキ感が強い。
【0130】
【表4】
【0131】
表4の結果より、本発明のカルボキシメチル化パルプの粉砕物を含有する添加剤は、グミにしっかりした弾力を与えることができ、食品用の保形性付与剤として適していることがわかる。また、みずみずしい食感を与えながら、べたつきにくく、食品用の保水性付与剤として適していることがわかる。
【0132】
(実施例19〜25、比較例6、7:乳酸菌飲料)
以下に示す配合となるように、グラニュー糖、70%異性化液糖に、各カルボキシメチル化パルプの粉砕物を所定量となるように計算して水を加え、完全に溶解させた。この溶解液を80℃で10分間殺菌して、20℃±1℃まで冷却した後、所定量の発酵乳を加えて混合撹拌した。これを150kg/cm
2にてホモジナイザーにて1回通した。ホモジナイズした混合攪拌液を90℃で殺菌した後、20℃まで冷却し、さらに、腐敗防止のために7%安息香酸ナトリウムを2.0ml添加して実施例、比較例の乳酸菌飲料を得た。得られた乳酸菌飲料について、食感及び分散安定性を評価した。結果を表5に示す。
【0133】
乳酸菌飲料の配合
発酵乳(無水換算) 3.0部
グラニュー糖 1.5部
70%異性化液糖 9.3部
各カルボキシメチル化パルプ粉砕物 (固形分)0.5部
水 85.7部
【0134】
食感の評価
得られた乳酸菌飲料の食感(なめらかさ、ねばつきやダマの少なさ)を、訓練された10人のパネラーが、良好または不良のいずれかで評価した。結果を表5に示す。表5における○、△、×の記号は、以下の評価結果を示す:
○:10人中9人以上が食感良好と評価した
△:10人中6〜8人が食感良好と評価した
×:食感良好と評価した人が10人中5人以下であった。
【0135】
分散安定性の評価
得られた乳酸菌飲料を100mlのメスシリンダーに入れ、2週間放置し、2週間後の円筒管の乳蛋白沈殿量を読んだ。この値が小さいほど乳酸菌飲料に対する安定性が優れていることを示す。基準は以下の通りである:
○:沈殿量が5.0ml未満
△:沈殿量が5.0ml以上8.0ml未満
×:沈殿量が8.0ml以上。
【0136】
【表5】
【0137】
表5の結果より、本発明のカルボキシメチル化パルプを含有する添加剤は、乳酸菌飲料の分散安定化に優れ、食品用の分散安定剤として適していることがわかる。また、なめらかなのど越しで、ねばつきやダマが少なく、ねばつきの少ない食品用粘度調整剤として使用できることがわかる。
【0138】
(実施例26〜32、比較例8、9:チョコレート飲料)
以下に示す配合となるように、ココアパウダー、砂糖、脱脂粉乳、各カルボキシメチル化パルプの粉砕物を所定量となるように計算して水を加え、ホモミキサーにて攪拌しながら80℃になるまで加熱して予備乳化し、ホモジナイザーにて300kgf/cm
2の圧力下で均質化を行った。その後、缶に充填し、121℃、30分の殺菌を行い、実施例、比較例のチョコレート飲料を得た。得られたチョコレート飲料について、食感及び分散安定性を評価した。結果を表6に示す。
【0139】
チョコレート飲料の配合
ココアパウダー 4.0部
砂糖 10.0部
脱脂粉乳 4.0部
各カルボキシメチル化パルプ粉砕物 (固形分)2.0部
水 80.0部
【0140】
食感の評価
得られたチョコレート飲料の食感(なめらかさ、ざらつきの少なさ)を、訓練された10人のパネラーが、良好または不良のいずれかで評価した。結果を表6に示す。表6における○、△、×の記号は、以下の評価結果を示す:
○:10人中9人以上が食感良好と評価した
△:10人中6〜8人が食感良好と評価した
×:食感良好と評価した人が10人中5人以下であった。
【0141】
分散安定性の評価
得られたチョコレート飲料を100mlのメスシリンダーに入れ、2週間放置し、2週間後の円筒管の乳蛋白沈殿量を読んだ。この値が小さいほどチョコレート飲料に対する安定性が優れていることを示す。基準は以下の通りである:
○:沈殿量が5.0ml未満
△:沈殿量が5.0ml以上8.0ml未満
×:沈殿量が8.0ml以上。
【0142】
【表6】
【0143】
表6の結果より、本発明のカルボキシメチル化パルプの粉砕物を含有する添加剤は、チョコレート飲料の分散安定化に優れ、ざらつきの少ないなめらかな食感を飲料に与えることができ、食品用の分散安定化剤として適していることがわかる。
【0144】
(実施例33〜39、比較例10、11:ココア粉末の分散安定性)
市販粉末ココア(森永製菓(株)製)の20%水溶液100部に対して、各カルボキシメチル化パルプの粉砕物を5部添加した時の分散安定性について目視で観察した。また、24時間静置後に再攪拌し、再分散性を目視で観察した。分散安定性と再分散性の両方とも、保存容器の底に沈殿物が見られないものを○、保存容器底面の一部に少量沈殿が見られるものを△、保存容器底面に全体的に沈殿物が見られるものを×とした。結果を表7に示す。
【0145】
【表7】
【0146】
表7の結果より、本発明のカルボキシメチル化パルプの粉砕物を含有する添加剤は、ココア飲料の分散安定化と再分散性に優れ、食品用の分散安定化剤として適していることがわかる。
【0147】
(実施例40〜46、比較例12、13:プリン)
以下に示す配合で、水と生クリームを攪拌しながら、プリンフレーバー以外の原料を粉体混合物として添加し80℃10分間攪拌溶解した後、プリンフレーバーを添加し、容器充填後、冷却して、実施例、比較例のプリンを調整した。その後、容器から取り出した際の保形性、食感を評価した。結果を表8に示す。
【0148】
プリンの配合
生クリーム 5.0部
砂糖 10.0部
脱脂粉乳 8.0部
各カルボキシメチル化パルプ粉砕物(固形分)0.3部
プリンフレーバー 0.1部
水 77.0部
【0149】
食感の評価
得られたプリンの食感(なめらかさ)を、訓練された10人のパネラーが、良好または不良のいずれかで評価した。結果を表8に示す。表8における○、△、×の記号は、以下の評価結果を示す:
○:10人中9人以上が食感良好と評価した
△:10人中6〜8人が食感良好と評価した
×:食感良好と評価した人が10人中5人以下であった。
【0150】
保形性の評価
得られたプリンを容器から取り出し、形が崩れるか否かを下記の基準で目視評価した。
○:容器と同様の形をほぼ維持している
×:自重でかなりつぶれている。
【0151】
【表8】
【0152】
表8の結果より、本発明のカルボキシメチル化パルプの粉砕物を含有する添加剤は、プリンに充分な保形性を与えると同時になめらかな食感も維持することができ、食品用の乳化安定剤及び保形性付与剤として適していることがわかる。
【0153】
(実施例47〜53、比較例14、15:ゼリー)
以下に示す配合で、水を攪拌しながら、砂糖、各カルボキシメチル化パルプ粉砕物、クエン酸三ナトリウム、及び乳酸カルシウムの粉体混合物を加え、80℃10分間加熱攪拌溶解後、クエン酸(無水)を添加し、攪拌混合、全量を水にて補正し、容器充填し、85℃30分間殺菌して、水冷固化し、実施例、比較例のゼリーを調整した。その後、容器から取り出した際の保形性、食感を評価した。結果を表9に示す。
【0154】
ゼリーの配合
砂糖 15.0部
クエン酸 0.2部
各カルボキシメチル化パルプ粉砕物(固形分)0.3部
クエン酸三ナトリウム 0.2部
乳酸カルシウム 0.2部
水 84.0部
【0155】
食感の評価
得られたゼリーの食感(適度な弾力、みずみずしさ)を、訓練された10人のパネラーが、良好または不良のいずれかで評価した。結果を表9に示す。表9における○、△、×の記号は、以下の評価結果を示す:
○:10人中9人以上が食感良好と評価した
△:10人中6〜8人が食感良好と評価した
×:食感良好と評価した人が10人中5人以下であった。
【0156】
保形性の評価
得られたゼリーを容器から取り出し、形が崩れるか否かを下記の基準で目視評価した。
○:容器と同様の形をほぼ維持している
×:自重でかなりつぶれている。
【0157】
【表9】
【0158】
表9の結果より、本発明のカルボキシメチル化パルプの粉砕物を含有する添加剤は、ゼリーに充分な保形性や適度な弾力を与えるのと同時に、みずみずしい食感も付与することができ、食品用の保形性付与剤及び保水性付与剤として適していることがわかる。
【0159】
(実施例54〜60、比較例16、17:ハンバーグ)
以下に示す配合で、挽肉、玉ねぎ、パン粉、卵、黒コショウ、食塩、水をSKミキサーで3分間混合した後、各カルボキシメチル化パルプ粉砕物を加えてよく混ぜ、100gずつ小判型に成形した。このハンバーグをフライパン中で、強火で両面を計2分、その後弱火にしてからフタをして両面を計12分加熱調理し、実施例、比較例のハンバーグを調整した。得られたハンバーグの保形性、食感を評価した。結果を表10に示す。
【0160】
ハンバーグの配合
挽肉 57.9部
玉ねぎ 21.1部
パン粉 10.5部
卵 6.3部
黒コショウ 0.1部
食塩 0.8部
各カルボキシメチル化パルプ粉砕物 0.5部
水 3.2部
【0161】
食感の評価
得られたハンバーグの食感(適度な歯ごたえ、なめらかさ)を、訓練された10人のパネラーが、良好または不良のいずれかで評価した。結果を表10に示す。表10における○、△、×の記号は、以下の評価結果を示す:
○:10人中9人以上が食感良好と評価した
△:10人中6〜8人が食感良好と評価した
×:食感良好と評価した人が10人中5人以下であった。
【0162】
保形性の評価
調理中のハンバーグの保形性について下記の基準で評価した。
○:形がくずれにくい
×:形がくずれやすい。
【0163】
【表10】
【0164】
表10の結果より、本発明のカルボキシメチル化パルプの粉砕物を含有する添加剤は、ハンバーグに充分な保形性や良好な食感も付与することができ、食品用の保形性付与剤等として適していることがわかる。
【0165】
(実施例61〜67、比較例18、19:ホットケーキとパンの食感)
市販のホットケーキミックス(日本製粉株式会社製ホットケーキミックス)に、牛乳、卵を加え、各カルボキシメチル化パルプ粉砕物を1質量%添加し、5分後、ホットプレート(160℃、5分)で焼き、調理直後と20時間後のホットケーキのしっとり感を、パネラー10人で評価した。
【0166】
また、市販の強力粉(銘柄:日清カメリア)に、食塩、砂糖、牛乳、卵、バター、ドライイーストを加え、各カルボキシメチル化パルプ粉砕物を1質量%添加し、常法に従ってロールパンを製造し、製造直後と20時間後のロールパンのしっとり感を、パネラー10人で評価した。
【0167】
結果を表11に示す。表11における○、△、×の記号は、以下の評価結果を示す:
○:10人中9人以上が食感良好(しっとりとした食感)と評価した
△:10人中6〜8人が食感良好と評価した
×:食感良好と評価した人が10人中5人以下であった。
【0168】
【表11】
【0169】
表11の結果より、本発明のカルボキシメチル化パルプの粉砕物を含有する添加剤は、ホットケーキやロールパンにしっとりとした食感を長時間にわたり与えることができ、食品用の保水性付与剤等として適していることがわかる。
【0170】
(実施例68〜74、比較例20、21:乳液(化粧品))
以下に示す配合で、実施例、比較例の乳液(化粧品)を製造した。得られた乳液について、乳化安定性、ざらつき感のなさ、べとつき感のなさ、伸び、保湿性、及び付着性を評価した。結果を表12に示す。
【0171】
乳液の配合
ステアリン酸 4.0部
スクワラン 5.0部
グリセリン 5.0部
プロピレングリコール 5.0部
ショ糖脂肪酸エステル 2.0部
各カルボキシメチル化パルプ粉砕物 (固形分)3.0部
水 70.0部
【0172】
乳化安定性の評価
得られた乳液を室温にて1週間放置後、保存容器の底に沈殿物が見られないものを○、沈殿物が見られるものを×とした。
【0173】
ざらつき感のなさ、べとつき感のなさ、伸び、保湿性、及び付着性の評価
得られた乳液のざらつき感のなさ、べとつき感のなさ、伸び、保湿性、及び付着性を、訓練された15人の女性パネラーが、良好または不良のいずれかで評価した。結果を表12に示す。表12における○、△、×の記号は、以下の評価結果を示す:
○:15人中11人以上が良好と評価した
△:15人中6〜10人が良好と評価した
×:良好と評価した人が15人中5人以下であった。
【0174】
【表12】
【0175】
表12の結果より、本発明のカルボキシメチル化パルプの粉砕物を含有する添加剤は、乳化安定性と、ざらつき感やべとつき感の少なさ、また、伸び、保湿性、良好な付着性を乳液に与え、化粧品用の乳化安定剤、保水性付与剤、粘度調整剤として適していることがわかる。
【0176】
(実施例75〜81、比較例22〜24:飼料ペレット)
各カルボキシメチル化パルプの粉砕物を水分率30%となるよう水を加えて調製した後、リングダイ式小型ペレタイザー(カリフォルニアペレットミル製)で直径4.8mm、有効厚32mmのダイにて処理して、飼料ペレットを製造した。また、比較例24として、針葉樹パルプを水分率30%となるまで脱水した後、リングダイ式小型ペレタイザー(カリフォルニアペレットミル製)で直径4.8mm、有効厚32mmのダイにて処理して、飼料ペレットを製造した。
【0177】
セルラーゼ糖化率
得られた飼料ペレットについて、下記の方法でセルラーゼ糖化率を測定した:
飼料成形物(絶乾質量500mg)を、樹脂製サンプル瓶(60ml容)に正確に秤量した。pH4.0の0.1M酢酸緩衝液にセルラーゼ(商品名:セルラーゼオノズカ p1500、ヤクルト薬品工業(株)製)を濾紙崩壊力で1350U/(飼料成形物絶乾質量g)となるように添加した懸濁液49.5mlを上記の容器に添加し、TAITEC社製BioShaker BR−23FPを用いて、40℃、180rpmにて24時間振とうし、糖化処理を行った。
【0178】
24時間後の時点でサンプルを採取し、糖化された飼料成形物の割合(セルラーゼ糖化率)を測定した。具体的には、あらかじめ恒量を求めたろ紙上でろ過し、4回水洗を行った後に、105℃の通風乾燥機中で2時間乾燥し、残渣の乾物質量を測定した。セルラーゼ糖化率は以下の式から算出した。なお、セルラーゼ糖化率は、反芻動物の消化率と高い相関があり、24時間後のセルラーゼ糖化率が高過ぎると、反芻を促進する効果が低く、ルーメンアシドーシスを起こす可能性がある。セルラーゼ糖化率が70%以上であれば×(不合格)、70%未満であれば○(合格)と評価した。
セルラーゼ糖化率(%)=[(セルラーゼ処理前の飼料成形物質量−セルラーゼ処理後の飼料成形物(残渣)質量)/セルラーゼ処理前の飼料成形物質量]×100 (式1)
【0179】
【表13】
【0180】
表13に示されるように、本発明のカルボキシメチル化パルプの粉砕物を含有する飼料は、比較例の飼料に比べて、24時間処理後のセルラーゼ糖化率が低く、糖化にかかる時間がより長くなることが分かった。すなわち、本発明のカルボキシメチル化パルプの粉砕物を用いた飼料ペレットはペレットの形状を維持し、より長い時間反芻動物のルーメン内に留まることができるため、反芻の誘発に寄与するものと考えられる。
【0181】
(実施例82〜88、比較例25〜27:ゴム用添加剤)
ゴムラテックス(商品名:HAラテックス、レヂテックス社、固形分濃度65質量%)100gの絶乾固形分に対して、各カルボキシメチル化パルプの粉砕物の水分散液(固形分濃度1.0質量%)を絶乾相当で5質量%混合し、TKホモミキサー(8000rpm)で60分間撹拌して混合物を得た。当該混合物は全固形分濃度が68.25質量%と非常に高かった。この混合物を、70℃の加熱オーブン中で10時間乾燥させることにより、マスターバッチを得た。
【0182】
上記の方法により得たマスターバッチに対し、酸化亜鉛、ステアリン酸をマスターバッチ中のゴム成分に対しそれぞれ6質量%、0.5質量%混合し、オープンロール(関西ロール株式会社製)にて、30℃で10分間混練することによって混練物を得た。この混練物に対し、硫黄および加硫促進剤(BBS、N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド)を、混練物中のゴム成分に対しそれぞれ3.5質量%、0.7質量%加え、オープンロール(関西ロール株式会社製)を用い、30℃で10分間混練して、未加硫ゴム組成物のシートを得た。得られた未加硫ゴム組成物のシートを、金型にはさみ、150℃で10分間プレス加硫することにより、厚さ2mmの加硫ゴムシートを得た。得られた加硫ゴムシートを、所定の形状の試験片に裁断し、JIS K6251「加硫ゴムおよび熱可塑性ゴム−引張特性の求め方」に従い、引張強度を示すものとして、100%ひずみ時、および300%ひずみ時における応力、破断強度をそれぞれ測定した。
【0183】
一方、比較例27として、マスターバッチを得る際に、カルボキシメチル化パルプの粉砕物を混合しなかった以外は、上記と同様にしたものも製造した。
【0184】
結果を表14に示す。表14における〇、×の記号は、以下の評価結果を示す。
100%ひずみ時の応力
〇:1.3MPa以上
×:1.3MPa未満
300%ひずみ時の応力
〇:3.5MPa以上
×:3.5MPa未満
破断応力
〇:23MPa以上
×:23MPa未満
【0185】
【表14】
【0186】
表14に示されるように、本発明のカルボキシメチル化パルプの粉砕物を添加したゴムは、比較例のゴムに比べて、強度が向上していることがわかる。