特表-19239484IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2019年12月19日
【発行日】2020年12月17日
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20201120BHJP
   H02M 7/12 20060101ALI20201120BHJP
【FI】
   H02M7/48 Z
   H02M7/12 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】13
【出願番号】特願2020-524981(P2020-524981)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2018年6月12日
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中野 俊秀
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健治
(72)【発明者】
【氏名】中村 宏輝
【テーマコード(参考)】
5H006
5H770
【Fターム(参考)】
5H006AA02
5H006CA01
5H006CA05
5H006CB01
5H006DB01
5H006HA01
5H006HA05
5H006HA08
5H770AA21
5H770DA03
5H770DA41
5H770PA21
5H770PA42
5H770QA06
5H770QA08
(57)【要約】
この発明に係る半導体装置は、半導体モジュール(5)と、冷却部材(20)と、伝熱部材(12)とを備える。半導体モジュール(5)は、互いに逆並列に接続されたスイッチング素子(Q)およびダイオード(D)を有する。伝熱部材(12)は、半導体モジュール(5)および冷却部材(20)の間に配置され、スイッチング素子(Q)およびダイオード(D)が発生する熱を冷却部材(20)に伝達する。伝熱部材(12)は、スイッチング素子(Q)およびダイオード(D)が並んで搭載される搭載面を有し、搭載面と反対側の面が冷却部材(20)に接している。伝熱部材(12)において、搭載面に平行な第1の方向における熱伝導率は、搭載面に垂直な第2の方向における熱伝導率よりも高い。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに逆並列に接続されたスイッチング素子およびダイオードを有する半導体モジュールと、
前記半導体モジュールを冷却する冷却部材と、
前記半導体モジュールおよび前記冷却部材の間に配置され、前記スイッチング素子および前記ダイオードが発生する熱を前記冷却部材に伝達する伝熱部材とを備え、
前記伝熱部材は、前記スイッチング素子および前記ダイオードが並んで搭載される搭載面を有し、前記搭載面と反対側の面が前記冷却部材に接しており、
前記伝熱部材において、前記搭載面に平行な第1の方向における熱伝導率は、前記搭載面に垂直な第2の方向における熱伝導率よりも高い、半導体装置。
【請求項2】
前記伝熱部材は、前記第2の方向における厚みを大きくするに従って、前記第1の方向における熱抵抗が小さくなる一方で、前記第2の方向における熱抵抗が大きくなるという関係を有する、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記伝熱部材の前記第2の方向における厚みは、前記第1の方向における熱抵抗および前記第2の方向における熱抵抗を有する抵抗ラダーによる熱回路網モデルから導出される、前記伝熱部材の前記搭載面の温度および前記冷却部材の表面温度間の温度差と前記厚みとの関係に基づいて設定される、請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記伝熱部材の前記第2の方向における厚みは、導出された前記関係において、前記伝熱部材の前記搭載面の温度および前記冷却部材の表面温度間の温度差が最小となる厚みに設定される、請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記半導体装置は、前記スイッチング素子をオンオフさせることにより直流電力および交流電力の間で電力変換を行なう電力変換器である、請求項1から4のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記伝熱部材は、グラファイトシートである、請求項1から5のいずれか1項に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特開2012−5194号公報(特許文献1)には、スイッチング素子および整流素子を有する半導体素子と、半導体素子を冷却する冷却器と、半導体素子と冷却器との間に介在して、両者の結合と相互の熱伝達とを行なう実装部材とを備える電力変換器が開示される。
【0003】
電力変換器においては、動作状態に依存してスイッチング素子の発熱と整流素子の発熱との間に偏りが生じる場合がある。スイッチング素子と整流素子との間の発熱の偏りに対して一定の冷却を保証するためには、各素子の発熱量が最大となった状態でも冷却できるだけの冷却能力が必要となる。そのため、冷却器が大型化するという問題があった。
【0004】
この対策として、特許文献1では、実装部材に熱伝導率の異なる少なくとも2つの充填部材を内包する。発熱量の多い素子と冷却器との間に相対的に熱伝導率が高い充填部材を配置し、発熱量の少ない素子と冷却器との間に相対的に熱伝導率が低い充填部材を配置する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−5194号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1では、熱伝導率の異なる2つの充填部材として、気体(例えば空気)および液体(例えば水)を用いており、厚みのある実装部材の内部に形成された密閉空間にこれらの流動体を充填させている。そして、電力変換器が搭載される車両の加減速時の重力によって、密閉空間内でこれらの流動体を移動させることで、上述した充填部材の配置を実現している。
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載される技術は車両の走行状態による重力の変化を利用したものであるため、当該技術を適用することができる電力変換器が限定されることが懸念される。したがって、より簡素な構成で半導体素子の冷却効率を高めることができる構成が求められる。
【0008】
それゆえ、この発明の主たる目的は、簡素な構成で半導体素子の冷却効率を高めることができる半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係る半導体装置は、半導体モジュールと、冷却部材と、伝熱部材とを備える。半導体モジュールは、互いに逆並列に接続されたスイッチング素子およびダイオードを有する。冷却部材は半導体モジュールを冷却する。伝熱部材は、半導体モジュールおよび冷却部材の間に配置され、スイッチング素子およびダイオードが発生する熱を冷却部材に伝達する。伝熱部材は、スイッチング素子およびダイオードが並んで搭載される搭載面を有し、搭載面と反対側の面が冷却部材に接している。伝熱部材において、搭載面に平行な第1の方向における熱伝導率は、搭載面に垂直な第2の方向における熱伝導率よりも高い。
【発明の効果】
【0010】
この発明に係る半導体装置によれば、簡素な構成で半導体モジュールの冷却効率を高めることができる半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】この発明の実施の形態に係る半導体装置が適用され得る電力変換装置の構成例を示す回路ブロック図である。
図2】半導体モジュールの構成例を模式的に示す概略平面図である。
図3】3つの半導体モジュールの素子配置を示す概略平面図である。
図4図3のIV−IV線における断面図である。
図5】本実施の形態に係る電力変換装置の断面図である。
図6】半導体モジュールにおけるスイッチング素子の放熱経路を概念的に示す図である。
図7】伝熱部材の概略図である。
図8】熱回路網モデルを示す図である。
図9】シミュレーション結果を示す図である。
図10】伝熱部材の厚みの設定方法を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下では図中または相当部分には同一符号を付してその説明は原則的に繰返さないものとする。
【0013】
図1は、この発明の実施の形態に係る半導体装置が適用され得る電力変換装置の構成例を示す回路ブロック図である。
【0014】
図1を参照して、電力変換装置10は、交流入力端子T1〜T3および直流出力端子T4,T5を備える。交流入力端子T1〜T3は、交流電源1から商用周波数の三相交流電力を受ける。直流出力端子T4,T5は負荷2に接続される。負荷2は電力変換装置10から供給される直流電力によって駆動される。
【0015】
電力変換装置10は、さらに、コンバータ3、直流正母線L1、直流負母線L2、コンデンサ4および制御装置6を備える。コンバータ3は、制御装置6によって制御され、商用交流電源から供給される三相交流電力を直流電力に変換して直流正母線L1および直流負母線L2間に出力する。
【0016】
コンバータ3は、3つのレグ回路3U,3V,3Wを含む。レグ回路3U,3V,3Wは、直流正母線L1および直流負母線L2の間に並列に接続される。レグ回路3U,3V,3Wの各々は、直列接続された2つのスイッチング素子と、2つのダイオードとを有する。
【0017】
具体的には、レグ回路3Uは、直流正母線L1および交流入力端子T1の間に接続されたスイッチング素子Q1、交流入力端子T1および直流負母線L2の間に接続されたスイッチング素子Q2、およびダイオードD1,D2を有する。スイッチング素子Q1〜Q6の各々は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、GCT(Gate Commutated Turn-off)サイリスタ等の任意の自己消弧型のスイッチング素子によって構成することができる。ダイオードD1,D2はFWD(Freewheeling Diode)であり、スイッチング素子Q1,Q2に対してそれぞれ逆並列に接続される。
【0018】
レグ回路3Vは、直流正母線L1および交流入力端子T2の間に接続されたスイッチング素子Q3、交流入力端子T2および直流負母線L2の間に接続されたスイッチング素子Q4、およびダイオードD3,D4を有する。レグ回路3Wは、直流正母線L1および交流入力端子T3の間に接続されたスイッチング素子Q5、交流入力端子T3および直流負母線L2の間に接続されたスイッチング素子Q6、およびダイオードD5,D6を有する。以下では、スイッチング素子Q1〜Q6およびダイオードD1〜D6を総括的に説明する場合、スイッチング素子QおよびダイオードDとそれぞれ表記する。
【0019】
制御装置6は、交流入力端子T1〜T3の交流電圧に同期して動作し、直流出力端子T4,T5間の直流電圧VDCが目標直流電圧VDCTになるように、コンバータ3を制御する。すなわち、制御装置6は、6個のスイッチング素子Q1〜Q6を制御し、直流出力端子T4,T5間の直流電圧VDCを三相交流電圧に変換して交流入力端子T1〜T3間に出力させる。このとき、制御装置6は、交流入力端子T1〜T3に流れる交流電流をほぼ正弦波状に、かつ、交流入力端子T1〜T3の交流電圧と同相になるように、6個のスイッチング素子Q1〜Q6を制御することによって、力率をほぼ1にすることができる。
【0020】
コンバータ3を構成する3つのレグ回路3U,3V,3Wの各々は、1つの半導体モジュールで構成されている。次に、半導体モジュールの構成例を詳細に説明する。
【0021】
図2は、半導体モジュールの構成例を模式的に示す概略平面図である。
図1の例では、3つのレグ回路3U,3V,3Wに対応して、3つの半導体モジュール5U,5V,5Wが配置されている。各相の半導体モジュールの構成は同一であるため、図2では、U相の半導体モジュール5Uの構成を説明する。
【0022】
半導体モジュール5Uは、平面状の基板上に、スイッチング素子Q1,Q2およびダイオードD1,D2が実装された構成を有している。スイッチング素子Q1,Q2およびダイオードD1,D2は図示しないボンディングワイヤまたは導電体からなる配線層によって電気的に接続されている。スイッチング素子Q1,Q2およびダイオードD1,D2は、基板、ボンディングワイヤおよび配線層などとともに樹脂により封止されている。
【0023】
なお、図2の例では、1つの半導体モジュール5Uについて、スイッチング素子およびダイオードがそれぞれ2つずつ設ける構成を示しているが、スイッチング素子およびダイオードがそれぞれ4つずつ設ける構成としてもよい。この構成では、2つのスイッチング素子および2つのダイオードがそれぞれ並列に接続されている。
【0024】
図3は、3つの半導体モジュール5U,5V,5Wの素子配置を示す概略平面図である。図4は、図3のIV−IV線における断面図である。
【0025】
半導体モジュール5U,5V,5Wは、冷却フィン20のベース部分に並べて搭載される。半導体モジュール5U,5V,5Wの各々と冷却フィン20との間には、伝熱部材100が塗布されている。伝熱部材100は、シリコン系樹脂などの絶縁性樹脂に銀、銅、アルミニウムなどの熱伝導率の高い金属、またはアルミナ、窒化アルミニウム、炭化珪素、グラファイトなどの熱伝導率の高いセラミックスをフィラーとして添加されたものである。これらの伝熱部材100としては、伝熱グリス、伝熱シート、または熱伝導性の接着剤である。伝熱部材100によって半導体モジュールと冷却フィン20との隙間を塞ぎ、半導体モジュール5から冷却フィン20に効率良く熱を伝導させることができる。
【0026】
半導体モジュール5U,5V,5Wの各々は、その動作中にスイッチング素子QおよびダイオードDには導通損失およびスイッチング損失からなる損失が発生するため、その損失によりスイッチング素子QおよびダイオードDが発熱する。
【0027】
ここで、高力率の電力変換装置10においては、その動作中、電流の大部分がスイッチング素子Qを流れるため、スイッチング素子Qに発熱が集中する。その結果、半導体モジュール5U,5V,5Wの各々において、ダイオードDの発熱量に比べて、スイッチング素子Qの発熱量が多くなる傾向が現れる。この発熱により、スイッチング素子Qの接合温度が定格温度を超えて上昇し続けると素子破壊に至るため、スイッチング素子Qは冷却しながら動作させなければならない。
【0028】
図4の例では、矢印で示すように、スイッチング素子Qで発生した熱は、半導体モジュールから伝熱部材100を経由して冷却フィン20に伝熱され、冷却フィン20から外部へ放熱される。このとき、図4に示すように、スイッチング素子Qの熱は、スイッチング素子Qの直下に位置する伝熱部材100および冷却フィン20を伝導する。したがって、主にスイッチング素子および冷却フィン20の間に垂直方向の放熱経路が形成される。
【0029】
その一方で、発熱量が少ないダイオードDの直下、または、隣接する2個のスイッチング素子Qの間に位置する伝熱部材100および冷却フィン20には熱が拡散されにくくなっており、結果的に冷却フィン20の放熱性能が有効に利用されていないことが懸念される。
【0030】
次に、図5を用いて、本実施の形態に係る電力変換装置10の構成について説明する。
図5は、本実施の形態に係る電力変換装置10の断面図であり、図4と対比される図である。本実施の形態に係る電力変換装置10および半導体モジュール5の概略平面図は、図1および図2とそれぞれ同じであるため詳細な説明は繰返さない。
【0031】
図5を参照して、本実施の形態に係る電力変換装置10においては、伝熱部材100に代えて、伝熱部材12を用いる。伝熱部材12は、スイッチング素子QおよびダイオードDが並んで搭載される搭載面12Aを有しており、搭載面12Aと反対側の面(以下、裏面とも称する)が冷却フィン20に接している。
【0032】
伝熱部材12は、搭載面12Aに平行な第1の方向における熱伝導率が、搭載面12Aに垂直な第2の方向における熱伝導率よりも高くなるように構成される。図5の例では、第1の方向はX−Y平面に平行な方向であり、第2の方向はZ方向である。なお、本願明細書において「熱伝導率λ」は、温度勾配によって伝熱部材12内を流れる、熱としてのエネルギー伝達量として定義される。熱伝導率λの単位は[W/(m・K)]である。第1の方向における熱伝導率をλhとし、第2の方向における熱伝導率をλvとすると、伝熱部材12は、λh>λvの関係を有している。
【0033】
このような伝熱部材12としては、例えばグラファイトシートを用いることができる。グラファイトシートは、層状の結晶構造を持つグラファイトで構成されており、層の方向(面を伝わる方向)の熱伝導率が、層の厚さ方向(層の上下に伝わる方向)の熱伝導率よりも高い(約200倍程度)という特性を有している。本実施の形態では、グラファイトシートの層の方向を伝熱部材12の第1の方向とし、かつ、グラファイトシートの層の厚さ方向を伝熱部材12の第2の方向とすることで、上述した熱伝導率λhおよびλvの関係を実現する。
【0034】
このような構成とすることにより、スイッチング素子Qで発生した熱は、半導体モジュール5から伝熱部材12に伝導すると、図中の矢印で示すように、Z方向(第2の方向)に伝導するとともに、X−Y平面に平行な方向(第1の方向)にも伝導する。したがって、発熱量が少ないダイオードDの直下、または、隣接する2個のスイッチング素子Qの間に位置する伝熱部材12を経由して冷却フィン20に熱を拡散することができる。この結果、冷却フィン20の放熱性能を有効に利用することができるため、半導体モジュール5の冷却効率を高めることができる。
【0035】
次に、図5に示した伝熱部材12の好適な形状について検討する。なお、伝熱部材12の搭載面12Aの大きさ(すなわち、面積)は、通常、半導体モジュール5U,5V,5Wの各々のチップ面積に応じて決まる。したがって、以下の検討では主に、伝熱部材12の第2の方向における厚みについて検討する。
【0036】
図6には、半導体モジュール5Uにおけるスイッチング素子Q2の放熱経路が破線矢印で概念的に示されている。スイッチング素子Q2で発生した熱は、半導体モジュール5Uから伝熱部材12を経由して冷却フィン20に伝熱され、冷却フィン20から外部へ放熱される。
【0037】
図6において、スイッチング素子Q2の接合温度をTj[K]、冷却フィン20の表面温度をTf[K]とする。伝熱部材12の搭載面温度をTa[K]、伝熱部材12の裏面温度をTb[K]とする。接合温度Tjと冷却フィン表面温度Tfとの間の熱抵抗は、接合温度Tjおよび搭載面温度Ta間の熱抵抗θp、搭載面温度Taおよび裏面温度Tb間の熱抵抗θs、および裏面温度Tbおよび冷却フィン表面温度Tf間の熱抵抗θfの合計値(=θp+θs+θf)で表すことができる。
【0038】
熱抵抗の合計値(θp+θs+θf)が低ければ、スイッチング素子Q2で発生した熱は速やかに放出される。一方、熱抵抗の合計値が高ければ、半導体モジュール5U内部で熱が籠ってしまうため、スイッチング素子Q2の温度が上昇する。接合温度Tjが上限値を超えると、スイッチング素子Q2が正常に動作しなくなる、あるいは、スイッチング素子Q2が破壊するおそれがある。
【0039】
そこで、本実施の形態では、上記放熱経路における伝熱部材12に着目し、搭載面温度Taおよび裏面温度Tb間の熱抵抗θsを低減するための好適な厚みを検討する。
【0040】
図7には、検討に用いた伝熱部材12の概略図が示される。簡単のため、伝熱部材12は直方体の形状を有するものとする。伝熱部材12の搭載面(X−Y平面)を一辺の長さが2a[mm]の正方形状とする。伝熱部材12の第2の方向(Z方向)における厚みをb[mm]とする。
【0041】
このような伝熱部材12において、X方向における熱抵抗をθh[K/W]とすると、
θhは次式(1)で与えられる。
【0042】
θh=a/(λh・2a・b) …(1)
また、Z方向における熱抵抗をθv[K/W]とすると、θvは次式(2)で与えられる。
【0043】
θv=b/(λv・a・a) …(2)
式(1),(2)から分かるように、伝熱部材12の厚みbを大きくすれば、X方向の熱抵抗θhを下げることができるが、その一方で、Z方向における熱抵抗θvが大きくなる。すなわち、伝熱部材12は、Z方向(第2の方向)における厚みbを大きくするに従って、X−Y平面に平行な方向(第1の方向)における熱抵抗θhが小さくなる一方で、第2の方向における熱抵抗θvが大きくなるというトレードオフ関係を有している。
【0044】
これによると、伝熱部材12の厚みbを大きくすれば、X−Y平面に平行な方向により多くの熱を拡散することができるが、Z方向に熱が拡散されにくくなる。したがって、伝熱部材12の特徴を活かして半導体モジュール5の冷却効率を向上させるために、搭載面温度Taおよび裏面温度Tb間の熱抵抗θsが最小となるように伝熱部材12の厚みbを決定する。
【0045】
伝熱部材12の最適な厚みbを導出するために、本実施の形態では、図8に示すような抵抗ラダーによる熱回路網モデルを作成する。この熱回路網モデルでは、Qiはスイッチング素子Qの発熱量を示し、V1は搭載面温度Taと冷却フィン表面温度Tfとの温度差を示す。簡単のため、発熱は、伝熱部材12の搭載面の中央の1点(図7の原点に相当)に集中させるとともに、X−Y方向の熱伝導についてX方向のみを考慮する。
【0046】
図8に示すように、伝熱部材12の第1の方向における単位面積(1mm)当たりの熱抵抗が抵抗値Rh[K/W・mm]に置き換えられている。伝熱部材12の第2の方向における単位面積当たりの熱抵抗が抵抗値Rv[K/W・mm]に置き換えられている。冷却フィン20の第2の方向における単位面積当たりの熱抵抗が抵抗値Rf[K/W・mm]に置き換えられている。なお、抵抗値Rh,Rvの大きさは伝熱部材12の材質(主に伝熱部材12の熱伝導率λh,λv)で決まり、抵抗値Rfの大きさは冷却フィン20の材質(主に冷却フィン20の熱伝導率)で決まる。
【0047】
図8に示した熱回路網モデルでは、X方向の正方向および負方向の各々に沿って、a個の抵抗値Rhが直列に接続されている。抵抗値Rhの個数aは伝熱部材12の搭載面の大きさで決まる。Z方向の負方向にb個の抵抗値Rvが直列に接続されている。抵抗値Rvの個数bは、伝熱部材12の厚みbを表している。抵抗値Rvの直列回路に対して、さらに抵抗値Rfが直列に接続されている。
【0048】
この熱回路網モデルについて熱伝導方程式を導出することにより、搭載面温度Taと冷却フィン表面温度Tfとの温度差V1を演算する。搭載面温度Taと冷却フィン表面温度Tfとの間の熱抵抗が小さくなるほど、温度差V1も小さくなる。熱回路網モデルにおいてbを変数として、伝熱部材12の厚みbと温度差V1との関係を導出する。
【0049】
図9にシミュレーション結果を示す。シミュレーションでは、Rh=Rv=1[K/W・mm]、Rf=10[K/W・mm]、a=10mmとした。この条件の下でbを2mm〜7mmの範囲で1mmずつ変化させながら、温度差V1を演算した。図9は、伝熱部材12の厚みbと温度差V1との関係を示すグラフである。図9の横軸は伝熱部材12の厚みbを示し、縦軸は温度差V1を示す。
【0050】
図9に示すように、伝熱部材12の厚みbを変化させると、温度差V1も変化する。図9の例では、厚みbを2mmから増やすに従って温度差V1が徐々に小さくなっている。この傾向は、厚みbの増加によりX−Y方向における熱抵抗が小さくなるという特徴を表している。
【0051】
しかしながら、伝熱部材12の厚みbが5mmを超えると、温度差V1は増加に転じている。この傾向は、伝熱部材12の厚みbの増加によりZ方向における熱抵抗が大きくなるという特徴を表している。その結果、図9のグラフでは、特定の厚みb=5mmのときに、温度差V1が最小となっている。
【0052】
図9のシミュレーション結果によれば、伝熱部材12の厚みbと温度差V1との関係を示すグラフには極小点が出現することが分かる。図9の例では、伝熱部材12の厚みb=5mmに設定したときに、伝熱部材12の搭載面温度および冷却フィン20の表面温度間の熱抵抗(θs+θf)が最小となる。伝熱部材12に着目すると、厚みb=5mmのときに、搭載面温度および裏面温度間の熱抵抗θsを最小にすることができる。
【0053】
図10は、伝熱部材12の厚みの設定方法を説明するためのフローチャートである。
図10を参照して、最初に、ステップS10により、伝熱部材12の熱回路網モデル(図8)を生成する。ステップS10では、伝熱部材12に固有の抵抗値Rh,Rvおよび冷却フィン20に固有の抵抗値Rfを取得する。伝熱部材12の搭載面の形状に基づいて、抵抗値Rh,Rv,Rfからなる抵抗ラダー回路を形成する。
【0054】
次に、ステップS20により、ステップS10で形成した抵抗ラダー回路における熱伝導方程式を導出する。
【0055】
ステップS30では、ステップS20で導出した熱伝導方程式を用いて、伝熱部材12の厚みbと、搭載面温度Taおよび冷却フィン表面温度Tfの温度差V1との関係(図9のグラフ)を導出する。
【0056】
ステップS40では、ステップS30で導出された関係において、搭載面温度Taおよび冷却フィン表面温度Tfの温度差V1が最小となる厚みを、伝熱部材12の厚みbに設定する。
【0057】
以上説明したように、本実施の形態に従う半導体装置では、搭載面に平行な第1の方向における熱伝導率が搭載面に垂直な第2の方向における熱伝導率よりも高い特性を有する伝熱部材12を用いて、半導体モジュールで発生した熱を冷却フィンに伝達させる。これによると、半導体モジュール内部のスイッチング素子で発生した熱を、第2の方向だけでなく、伝熱部材12を経由して第1の方向にも拡散させることができる。その結果、冷却フィンの放熱性能を有効に利用できるため、半導体モジュールの冷却効率を高めることができる。
【0058】
さらに、伝熱部材12の第2の方向における厚みbを、搭載面温度Taおよび裏面温度Tb間の熱抵抗θsが最小となる厚みに基づいて設定することで、半導体モジュールの冷却効率をさらに向上させることができる。
【0059】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0060】
1 交流電源、2 負荷、3 コンバータ、3U,3V,3W レグ回路、4 コンデンサ、5,5U,5V,5W 半導体モジュール、6 制御装置、10 電力変換装置、12,100 伝熱部材、20 冷却フィン、Q,Q1〜Q6 スイッチング素子、D1〜D6 ダイオード、T1〜T3 交流入力端子、T4,T5 直流出力端子、L1 直流正母線、L2 直流負母線。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】