(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2019年1月3日
【発行日】2019年11月7日
(54)【発明の名称】電解処理装置および処理システム
(51)【国際特許分類】
C02F 1/461 20060101AFI20191011BHJP
B01D 53/92 20060101ALI20191011BHJP
C02F 1/50 20060101ALI20191011BHJP
B63B 13/00 20060101ALI20191011BHJP
【FI】
C02F1/461 Z
B01D53/92 215
B01D53/92 224
C02F1/50 510A
C02F1/50 520F
C02F1/50 531P
C02F1/50 540B
C02F1/50 550D
C02F1/50 560F
B63B13/00 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】18
【出願番号】特願2019-526655(P2019-526655)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2018年5月9日
(31)【優先権主張番号】特願2017-126090(P2017-126090)
(32)【優先日】2017年6月28日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391022614
【氏名又は名称】学校法人幾徳学園
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】乾 貴誌
(72)【発明者】
【氏名】豊角 浩之
(72)【発明者】
【氏名】瑞慶覧 章朝
(72)【発明者】
【氏名】奥 知大
(72)【発明者】
【氏名】中田 悠太
【テーマコード(参考)】
4D002
4D061
【Fターム(参考)】
4D002AA02
4D002AA12
4D002AC10
4D002BA02
4D002DA06
4D002DA12
4D002DA16
4D002EA07
4D002EA14
4D061DA04
4D061DB08
4D061DB09
4D061EA02
4D061EB01
4D061EB04
4D061EB12
4D061EB19
4D061EB29
4D061EB37
4D061EB39
4D061FA13
4D061GA22
4D061GC12
4D061GC18
4D061GC19
4D061GC20
(57)【要約】
陰極および陽極を有する電気分解槽と、電気分解槽に液体を注入する注入部と、電気分解槽の槽内を、陰極を含む陰極側領域および陽極を含む陽極側領域に分離し、且つ、陰極側領域の液体および陽極側領域の液体の間を電気的に導通させる隔膜と、液体を電気分解処理することで陰極側領域に生じた陰極側溶液を、排ガス処理装置に供給する陰極側排出部と、液体を電気分解処理することで陽極側領域に生じた陽極側溶液を、殺菌装置に供給する陽極側排出部とを備える電解処理装置を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
陰極および陽極を有する電気分解槽と、
前記電気分解槽に液体を注入する注入部と、
前記電気分解槽の槽内を、前記陰極を含む陰極側領域および前記陽極を含む陽極側領域に分離し、且つ、前記陰極側領域の液体および前記陽極側領域の液体の間を電気的に導通させる隔膜と、
前記液体を電気分解処理することで前記陰極側領域に生じた陰極側溶液を、排ガス処理装置に供給する陰極側排出部と、
前記液体を電気分解処理することで前記陽極側領域に生じた陽極側溶液を、殺菌装置に供給する陽極側排出部と
を備える電解処理装置。
【請求項2】
前記殺菌装置は、船舶においてバラスト水を貯留するバラストタンクを含む
請求項1に記載の電解処理装置。
【請求項3】
前記陰極側領域および前記陽極側領域の少なくとも一方の容積が可変である
請求項1または2に記載の電解処理装置。
【請求項4】
前記電気分解槽の槽内における前記隔膜の位置が可変である
請求項3に記載の電解処理装置。
【請求項5】
前記電気分解槽の槽内における異なる位置において挿抜可能な複数の前記隔膜を備える
請求項3に記載の電解処理装置。
【請求項6】
前記注入部は、前記電気分解槽に海水を注入する
請求項1から5のいずれか一項に記載の電解処理装置。
【請求項7】
前記排ガス処理装置は、前記陰極側溶液を排ガスに接触させることで前記排ガスに含まれる除去対象物質を除去し、
前記注入部は、前記液体の少なくとも一部として前記排ガス処理装置が排出する排液を前記電気分解槽に注入する
請求項1から6のいずれか一項に記載の電解処理装置。
【請求項8】
前記注入部は、前記排ガス処理装置が排出する排液の少なくとも一部を、前記陽極側領域に注入する
請求項7に記載の電解処理装置。
【請求項9】
前記電気分解槽が排出した前記陰極側溶液および前記陽極側溶液の少なくとも一方に対して設けられた貯蔵タンクを更に備える
請求項1から8のいずれか一項に記載の電解処理装置。
【請求項10】
前記陽極側領域に注入される液体、または、前記陽極側溶液のpH値に基づいて、前記陽極側領域の容積を制御する容積制御部を更に備える
請求項3から5のいずれか一項に記載の電解処理装置。
【請求項11】
前記電解処理装置が設置された船舶の運転状況に基づいて、前記陰極側領域および前記陽極側領域の少なくとも一方の容積を制御する容積制御部を更に備える
請求項3から5のいずれか一項に記載の電解処理装置。
【請求項12】
前記陽極側排出部は、前記陽極側領域に注入される液体、または、前記陽極側溶液のpH値に基づいて、前記陽極側溶液の単位時間当たりの流量を制御する
請求項1から11のいずれか一項に記載の電解処理装置。
【請求項13】
前記陰極および前記陽極に電力を供給する電源を更に備え、
前記電源は、前記陽極側領域に注入される液体、または、前記陽極側溶液のpH値に基づいて、前記陽極および前記陰極の間に流す電流を制御する
請求項1から12のいずれか一項に記載の電解処理装置。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に記載の電解処理装置と、
前記排ガス処理装置と
を備える処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解処理装置および処理システム
【背景技術】
【0002】
従来、船舶等における排ガスを、アルカリ物質を含む溶液を用いて処理するスクラバ装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、船舶のバラスト水等を殺菌する処理装置が知られている(例えば特許文献2参照)。
特許文献1 特開2004−89770号公報
特許文献2 特開2005−342626号公報
【0003】
船舶等に設置する装置は小型であることが好ましい。
【0004】
課題を解決するために、本発明の第1の態様においては、電解処理装置を提供する。電解処理装置は、陰極および陽極を有する電気分解槽を備えてよい。電解処理装置は、電気分解槽に液体を注入する注入部を備えてよい。電解処理装置は、電気分解槽の槽内を、陰極を含む陰極側領域および陽極を含む陽極側領域に分離し、且つ、陰極側領域の液体および陽極側領域の液体の間を電気的に導通させる隔膜を備えてよい。電解処理装置は、液体を電気分解処理することで陰極側領域に生じた陰極側溶液を、排ガス処理装置に供給する陰極側排出部を備えてよい。電解処理装置は、液体を電気分解処理することで陽極側領域に生じた陽極側溶液を、殺菌装置に供給する陽極側排出部を備えてよい。
【0005】
殺菌装置は、船舶においてバラスト水を貯留するバラストタンクを含んでよい。陰極側領域および陽極側領域の少なくとも一方の容積が可変であってよい。電気分解槽の槽内における隔膜の位置が可変であってよい。電解処理装置は、電気分解槽の槽内における異なる位置において挿抜可能な複数の隔膜を備えてよい。
【0006】
注入部は、電気分解槽に海水を注入してよい。排ガス処理装置は、陰極側溶液を排ガスに接触させることで排ガスに含まれる除去対象物質を除去してよい。注入部は、液体の少なくとも一部として排ガス処理装置が排出する排液を電気分解槽に注入してよい。注入部は、排ガス処理装置が排出する排液の少なくとも一部を、陽極側領域に注入してよい。
【0007】
電解処理装置は、電気分解槽が排出した陰極側溶液および陽極側溶液の少なくとも一方に対して設けられた貯蔵タンクを備えてよい。
【0008】
電解処理装置は、陽極側領域に注入される液体、または、陽極側溶液のpH値に基づいて、陽極側領域の容積を制御する容積制御部を備えてよい。電解処理装置は、電解処理装置が設置された船舶の運転状況に基づいて、陰極側領域および陽極側領域の少なくとも一方の容積を制御する容積制御部を備えてよい。
【0009】
陽極側排出部は、陽極側領域に注入される液体、または、陽極側溶液のpH値に基づいて、陽極側溶液の単位時間当たりの流量を制御してよい。電解処理装置は、陰極および陽極に電力を供給する電源を備えてよい。電源は、陽極側領域に注入される液体、または、陽極側溶液のpH値に基づいて、陽極および陰極の間に流す電流を制御してよい。
【0010】
本発明の第2の態様においては、第1の態様に係る電解処理装置と、排ガス処理装置とを備える処理システムを提供する。
【0011】
なお、の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一つの処理システム10の一例を示すブロック図である。
【図2】電解処理装置100の一例を示す模式図である。
【図3】電解処理装置100の他の例を示す模式図である。
【図4】電解処理装置100の他の例を示す模式図である。
【図5】クローズド式駆動における処理システム10を示す図である。
【図6】クローズド式駆動における電解処理装置100の動作例を示す図である。
【図7】船舶の運転状況に応じて、陰極側領域126および陽極側領域128の容積比を制御する例を示す。
【図8】処理システム10の他の例を示すブロック図である。
【図9】陽極側領域128における液体のpH値と、陽極側溶液に含まれるHClOの比率との関係を示すグラフである。
【図10】電解処理装置100の他の動作例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0014】
図1は、本発明の一つの処理システム10の一例を示すブロック図である。処理システム10は、液体を電解処理することで、アルカリ物質を含む陰極側溶液と、酸を含む陽極側溶液とを生成する。処理システム10が用いる液体は、一例として海水であるが、電解処理によりアルカリ物質および酸を生成できる液体であればよい。本例では、船舶に設置された処理システム10を説明するが、処理システム10は、船舶以外の設備に設置されてもよい。
【0015】
処理システム10は、ポンプ20、電源30、排ガス処理装置40、バラスト水処理装置50および電解処理装置100を備える。ポンプ20は、液体を電解処理装置100に供給する。本例のポンプ20は、海から海水をくみ上げて、電解処理装置100に供給する。
【0016】
電解処理装置100は、ポンプ20から供給された液体を電解処理する。電源30は、電解処理装置100に設けられた陰極および陽極に電力を供給する。電解処理装置100は、電解処理により陰極近傍に生じた陰極側溶液を、排ガス処理装置40に供給する。また、電解処理装置100は、電解処理により陽極近傍に生じた陽極側溶液をバラスト水処理装置50に供給する。
【0017】
排ガス処理装置40は、排ガス源が生成した排ガスに含まれる除去対象物質を、陰極側溶液を用いて除去する。排ガス処理装置40は、排ガスと陰極側溶液とを接触させることで、排ガスに含まれる除去対象物質を、陰極側溶液に含まれるアルカリ物質と反応させて除去する。一例として排ガス処理装置40は、排ガスが流れる筐体内に陰極側溶液を噴霧することで、排ガスと陰極側溶液とを接触させる。排ガス処理装置40は、除去対象物質を除去した処理済みガスを外部に排出する。
【0018】
一例として排ガス源は、船舶の推進エンジン、船舶に設けられた発電装置(例えば発電用エンジン)、または、船舶に設けられたボイラー等である。一例として除去対象物質は、硫黄酸化物(SOx)、または、窒素酸化物(NOx)である。一例としてアルカリ物質はMgCO
3、または、Mg(OH)
2である。
【0019】
バラスト水処理装置50は、船舶のバラスト水を、陽極側溶液を用いて殺菌する殺菌装置の一例である。バラスト水処理装置50は、バラスト水に陽極側溶液を混ぜることでバラスト水を殺菌してよい。バラスト水処理装置50は、殺菌されたバラスト水を貯留するバラストタンク52を含んでよい。バラスト水処理装置50は、バラスト水を殺菌する殺菌部を備えてよい。バラスト水処理装置50は、バラスト水に含まれる所定の物質および物体を除去するフィルタ等を更に含んでもよい。処理システム10は、バラスト水として用いる海水をくみ上げてバラスト水処理装置50に供給するポンプを更に備えてよい。他の例では、バラスト水処理装置50は、陽極側溶液自体をバラスト水としてバラストタンク52に貯留してもよい。一例として陽極側溶液に含まれる酸は、次亜塩素酸(HClO)または次亜塩素酸イオン(ClO
−)である。これらの酸により、バラスト水に含まれるプランクトンまたは大腸菌等のバクテリアを除去できる。
【0020】
図2は、電解処理装置100の一例を示す模式図である。電解処理装置100は、電気分解槽104、隔膜112、注入部102、陰極側排出部116および陽極側排出部118を備える。
【0021】
注入部102は、電気分解槽104の槽内に液体110を注入する。一例として注入部102は、液体110を搬送する配管である。本例における液体110は海水である。電気分解槽104は、槽内に液体110を貯留する。電気分解槽104の槽内には、陰極106および陽極108が挿入されている。陰極106および陽極108は例えば炭素を含む材料で形成される。陰極106および陽極108には、電源30により所定の電力が印加される。
【0022】
隔膜112は、電気分解槽104の槽内を、陰極106を含む陰極側領域126および陽極108を含む陽極側領域128に分離する。ここで分離するとは、隔膜112を設けない場合に比べて、陰極側領域126および陽極側領域128の間の液体の移動を抑制することを指す。隔膜112は、陰極側領域126および陽極側領域128の間の液体の移動を完全に遮断しなくてよい。また、隔膜112は、陰極106および陽極108の間で電流を流すことが可能なように、陰極側領域126の液体と、陽極側領域128の液体との間を電気的に導通させる。なお、注入部102は、陰極側領域126および陽極側領域128の両方に海水を注入してよい。
【0023】
一例として隔膜112は布である。より具体的な例として、隔膜112は、テトロンおよびレーヨン等の化学繊維を薄膜状に織り込んだものである。このような隔膜112を液体110に浸すことで、液体の移動を抑制しつつ、陰極106および陽極108の間を電気的に導通させることができる。
【0024】
隔膜112は、陰極側領域126および陽極側領域128を適切に分離すべく、陰極側領域126および陽極側領域128の境界全体に渡って設けられることが好ましい。他の例の隔膜112は、陰極側領域126および陽極側領域128の境界の一部には設けられていなくともよい。
【0025】
海水には、Mg
2+、Cl
−、HCO
3−等のイオンが含まれている。海水に浸した陰極106および陽極108の間に電圧を印加すると、陰極106では水(H
2O)からH
2とOH
−が生成され、陽極108ではCl
−からCl
2が生成される。
【0026】
陰極で生成されたOH
−は海水中のHCO
3−と反応してCO
32−を生成する。CO
32−は海水中のMg
2+と反応してアルカリ物質のMgCO
3を生成する。また、陰極で生成されたOH
−は、海中のMg
2+と反応してアルカリ物質のMg(OH)
2を生成する。
【0027】
陽極で生成されたCl
2は水と反応して次亜塩素酸(HClO)を生成する。また、次亜塩素酸は、水中における化学平衡により、次亜塩素酸イオン(ClO
−)としても存在し得る。上述した反応プロセスの反応式は下記の通りである。
【数1】
【0028】
なお、隔膜112を設けることで、陰極反応で生成されたOH
−と、水溶液中の反応(陽極側)で生成されたH
+とが反応して水になることを抑制し、アルカリ物質の生成反応と、次亜塩素酸の生成反応を促進できる。このため、アルカリ物質を高濃度に含有する陰極側溶液と、次亜塩素酸を高濃度に含有する陽極側溶液とを一つの電気分解槽104を用いて生成できる。このため、装置を小型化できる。装置の設置場所が制限される船舶等において、電解処理装置100は特に有用である。
【0029】
陰極側排出部116は、液体110を電気分解処理することで陰極側領域126に生じた陰極側溶液を、排ガス処理装置40に供給する。陽極側排出部118は、液体110を電気分解処理することで陽極側領域128に生じた陽極側溶液を、バラスト水処理装置50に供給する。陰極側排出部116および陽極側排出部118は、電気分解槽104に設けられた排出口であってよい。
【0030】
排ガス処理装置40は、陰極側溶液を用いて排ガスを処理する。本例の陰極側溶液は、海水に比べてアルカリ物質を高濃度に含有する。このため、排ガスに含まれる除去対象物質を効率よく除去できる。バラスト水処理装置50は、陽極側溶液を用いてバラスト水を殺菌する。本例の陽極側溶液は次亜塩素酸を高濃度に含有する。このため、バラスト水を効率よく殺菌できる。
【0031】
排ガス処理装置40は、排ガスを処理した陰極側溶液(排液)を海に放出してよく、電解処理装置100に戻してもよい。処理システム10は、排ガス処理装置40の排液を海に放出する系統と、電解処理装置100に戻す系統の2系統を有してよい。例えば、排液を放出することが許容されている海域においては、排ガス処理装置40は排液を海に放出する。排液を海に放出する場合、排液に含まれる酸性物質および除去対象物質(例えば排出規制対象物質)の結合物をフィルタ等で除去してよく、中和剤等を用いて排液のpH値を所定の範囲内に調整してもよい。排液を放出することが許容されていない海域においては、排ガス処理装置40は排液を電解処理装置100に戻す。本明細書では、排ガス処理装置40の排液を海に放出する方式をオープン式駆動、排液を電解処理装置100に戻す方式をクローズド式駆動と称する。
【0032】
図3は、電解処理装置100の他の例を示す模式図である。本例の電解処理装置100は、陰極側領域126および陽極側領域128の少なくとも一方の容積が可変である。電解処理装置100は、陰極側領域126および陽極側領域128の少なくとも一方の容積を制御する容積制御部114を備えてよい。他の構造は、図1および図2において説明した電解処理装置100と同様である。
【0033】
一例として、電解処理装置100は、電気分解槽104の槽内における隔膜112の位置が可変である。この場合、容積制御部114は、隔膜112の位置を制御することで、陰極側領域126および陽極側領域128の両方の容積を制御する。ただし、陰極側領域126および陽極側領域128の容積は、他の方法で可変であってもよい。例えば、電気分解槽104の外壁が移動することで、陰極側領域126および陽極側領域128の少なくとも一方の容積が変化してもよい。
【0034】
隔膜112は、電気分解槽104の槽内に配置された状態を維持しつつ、槽内で移動可能であってよい。隔膜112は、電気分解槽104に液体110が注入された状態で、槽内で移動可能であってよい。隔膜112の移動に伴い陰極側領域126および陽極側領域128の間で液体が移動できるように、隔膜112の端部には陰極側領域126および陽極側領域128を接続する開口が設けられてよい。
【0035】
容積制御部114は、電解処理装置100が設置された船舶の運転状況に基づいて、陰極側領域126および陽極側領域128の少なくとも一方の容積を制御してよい。船舶の運転状況によっては、陰極側溶液および陽極側溶液のいずれかを多く生成すべき場合がある。船舶の運転状況とは、船舶が停泊または航行しているか、船舶の航行速度、船舶の現在位置、推進エンジン等の排ガス源の稼働状況、バラストタンク52にバラスト水を注入しているか否か等の状況である。
【0036】
例えば、船舶のバラストタンク52にバラスト水を注入する場合、高速にバラスト水を注入すべく、陽極側溶液を多く生成することが好ましい。この場合、容積制御部114は、陽極側領域128の容積を増大させる。陽極側領域128の容積を増大させることで、陽極側領域128に注入および排出される液体の流量が多い場合でも、液体が陽極側領域128内に留まっている時間を確保できる。このため、陽極側溶液に含まれる酸の濃度を高くできる。本例では、陽極側領域128の容積を増大させると、陰極側領域126の容積が減少する。ただし、船舶のバラストタンク52にバラスト水を注入する場合は船舶が停泊しているので、船舶の推進エンジン等から排出される排ガスはそれほど多くならない。このため、陰極側溶液の流量を小さくし、陰極側領域126の容積を減少させても問題にならない。
【0037】
また、船舶が航行している場合、船舶の推進エンジン等から排出される排ガスは多くなる。一方で、バラストタンク52には既にバラスト水が注入された状態である。この場合、容積制御部114は、陰極側領域126の容積を増大させて、陽極側領域128の容積を減少させる。これにより、陰極側領域126に注入および排出される液体の流量が多い場合でも、液体が陰極側領域126内に留まっている時間を確保できる。このため、陰極側溶液におけるアルカリ物質の濃度を高くできる。容積制御部114は、陰極側溶液および陽極側溶液の少なくとも一方における単位時間当たりの流量に基づいて、陰極側領域126および陽極側領域128の少なくとも一方の容積を制御してよい。
【0038】
また、陰極側領域126または陽極側領域128の容積を小さくすることで、不要な溶液の生成量を少なくできる。陰極側排出部116および陽極側排出部118は、生成した溶液を貯蔵用タンクに注入してもよい。不要な溶液の生成量を少なくできるので、貯蔵用のタンクのサイズを小さくできる。なお、船舶の航行中においても陽極側排出部118は、生成した陽極側溶液をバラストタンク52に注入してよい。この場合、バラストタンク52内の海水量を一定に維持すべく、注入された陽極側溶液に応じた量のバラスト水を、バラストタンク52から電解処理装置100に供給してもよい。
【0039】
なお、容積制御部114は、汎用のコンピュータであってよい。この場合、コンピュータには、当該コンピュータを容積制御部114として機能させるためのプログラムがインストールされる。容積制御部114は、容積制御部114として機能する専用の回路または装置であってもよい。
【0040】
図4は、電解処理装置100の他の例を示す模式図である。本例の電解処理装置100は、電気分解槽104の槽内の異なる位置において挿抜可能な複数の隔膜112を備える。他の構造は、図1から図3において説明した電解処理装置100と同様である。なお図4では、電源30および注入部102を省略している。
【0041】
本例の容積制御部114は、いずれかの隔膜112を電気分解槽104の槽内に挿入し、他の隔膜112を電気分解槽104の槽内から引き抜く。いずれの隔膜112を挿入するかによって、陰極側領域126および陽極側領域128の容積を制御できる。図4の例では、陰極106に近い隔膜112−1を挿入することで、陰極側領域126を小さくして陽極側領域128を大きくできる。また、陽極108に近い隔膜112−2を挿入することで、陰極側領域126を大きくして陽極側領域128を小さくできる。それぞれの隔膜112は、陰極側領域126と陽極側領域128の間において異なる位置に挿入可能であってよい。
【0042】
図5は、クローズド式駆動における処理システム10を示す図である。クローズド式駆動における処理システム10は、排ガス処理装置40の排液を海に排出せず、電解処理装置100に注入する液体の少なくとも一部として再利用する。また、クローズド式駆動においては、バラストタンク52に貯留されたバラスト水を、電解処理装置100に供給してもよい。
【0043】
図6は、クローズド式駆動における電解処理装置100の動作例を示す図である。注入部102は、電気分解槽104に注入する液体の少なくとも一部として、排ガス処理装置40の排液を用いる。一例として注入部102は、排ガス処理装置40の排液の全量を、陰極側領域126に注入する。つまり、排ガス処理装置40の排液の全量が、陰極側領域126および排ガス処理装置40の間をループする。注入部102は、陰極側領域126および排ガス処理装置40の間をループする液体が蒸発等により減少した場合に、海水またはバラスト水を陰極側領域126に補充してよい。
【0044】
注入部102は、陽極側領域128から排出された陽極側溶液に応じた量のバラスト水を、陽極側領域128に注入してよい。また、バラスト水に代えて、ポンプ20がくみ上げた海水を用いてもよい。この場合、陽極側溶液は、バラストタンク52ではなく、貯蔵用のタンクに供給されることが好ましい。
【0045】
クローズド式駆動において、排ガス処理装置40の排液におけるアルカリ物質の濃度は低下しているが、電解処理装置100が当該排液を電解処理することで、アルカリ物質の濃度を上昇させることができる。このため、排ガス処理装置40の排液をループさせて再利用しても、排ガスに含まれる除去対象物質を効率よく除去できる。
【0046】
図7は、船舶の運転状況に応じて、陰極側領域126および陽極側領域128の容積比を制御する例を示す。船舶が公海上を航行している場合、推進エンジンおよび発電装置等から比較的に多くの排ガスが排出される。本例では、船舶が公海上を航行している場合、排ガス処理装置40の排液を海に排出可能とする。この場合、排ガス処理装置40はオープン式駆動する。
【0047】
バラストタンク52には所定量のバラスト水が既に貯留されているので、バラストタンク52へのバラスト水の注入は行わず、バラスト水処理装置50は停止している。この場合、容積制御部114は、陰極側領域126の容積を大きくし、陽極側領域128の容積を小さくしてよい。これにより、電解処理装置100によりアルカリ物質の濃度を高めた陰極側溶液を用いて、排ガスに含まれる除去対象物質を効率よく除去できる。また、陽極側溶液は、貯蔵用のタンクに貯蔵しておいてよい。貯蔵した陽極側溶液は、バラスト水を殺菌するときに用いることができる。
【0048】
なお、オープン式駆動の場合、排ガス処理装置40の排液を再利用しないので、排ガス処理装置40において消費したアルカリ物質を、電解処理装置100における電解処理で補充する必要がない。このため、海水に元々含まれているアルカリ物質の濃度で十分な場合、電解処理装置100を停止させて、ポンプ20がくみ上げた海水を排ガス処理装置40に供給してもよい。
【0049】
船舶が入港する場合、推進エンジンおよび発電装置等から比較的に多くの排ガスが排出される。本例では、船舶が入港する場合、排ガス処理装置40の排液を海に排出不可とする。この場合、排ガス処理装置40はクローズド式駆動する。
【0050】
バラストタンク52には所定量のバラスト水が貯留されているので、バラストタンク52へのバラスト水の注入は行わず、バラスト水処理装置50は停止している。この場合、容積制御部114は、陰極側領域126の容積を最大化し、陽極側領域128の容積を最小化してよい。これにより、排ガス処理装置40により消費したアルカリ物質の濃度を、電解処理装置100により回復させて、排ガス処理装置40において再度用いることができる。
【0051】
船舶が港内で停泊する場合、推進エンジンは停止するので、排ガス源は主に発電装置になる。この場合、排ガス処理装置40が処理する排ガス量は比較的に少なくなる。一方で、バラストタンク52へのバラスト水の注入を開始し、バラスト水処理装置50が起動する。この場合、容積制御部114は、陰極側領域126の容積を小さくし、陽極側領域128の容積を大きくしてよい。
【0052】
船舶のバラストタンク52にバラスト水を注入している間(バラスティング)、バラストタンク52へのバラスト水の流量は最大となり、バラスト水処理装置50の出力は最大となる。この場合、容積制御部114は、陰極側領域126の容積を最小化し、陽極側領域128の容積を最大化してよい。
【0053】
バラスティングが終了して、船舶が出港する場合、バラストタンク52へのバラスト水の注入は停止し、バラスト水処理装置50は停止する。一方で、推進エンジンが動作するので、排ガス処理装置40が処理する排ガス量は比較的に多くなる。この場合、容積制御部114は、陰極側領域126の容積を最大化し、陽極側領域128の容積を最小化してよい。
【0054】
図8は、処理システム10の他の例を示すブロック図である。本例の処理システム10は、図1から図7において説明した処理システム10の構成に加えて、陰極側溶液および陽極側溶液の少なくとも一方に対して設けられた貯蔵タンク60を更に備える。図8に示した例では、処理システム10は、陰極側溶液および陽極側溶液のそれぞれに対して、貯蔵タンク60を備える。
【0055】
図7に示した例のように、船舶の運転状況によって、陰極側溶液および陽極側溶液の少なくとも一方が不要な場合がある。ただし、電解処理により溶液を生成するので、一方の溶液だけを生成することはできず、不要な溶液も生成されてしまう。貯蔵タンク60は、使用しない陰極側溶液および陽極側溶液を貯蔵する。処理システム10は、貯蔵タンク60に貯蔵した陰極側溶液および陽極側溶液を、後で用いてもよいし、廃棄が可能な状況になった場合に廃棄してもよい。溶液を廃棄する場合、溶液に含まれる殺菌成分(酸性物質)およびアルカリ性物質を除去または中和することが好ましい。
【0056】
図9は、陽極側領域128における液体のpH値と、陽極側溶液に含まれるHClOの比率との関係を示すグラフである。HClOの比率とは、HClOとClO
−の全体に対して、HClOが占めるモル比である。
【0057】
陽極側領域128においては、HClOとClO
−が所定の存在比で平衡状態となる。当該存在比は、図9に示すように溶液のpH値に依存する。一方で、HClOは、ClO
−に比べて、殺菌能力が80倍程度と高い。このため、陽極側溶液のpH値は、HClOの比率が高くなるように調整されることが好ましい。一例として、陽極側溶液のpH値は、2以上7以下の範囲内に調整されてよく、3以上6以下の範囲内に調整されてよく、4以上5以下の範囲に調整されてもよい。
【0058】
陽極側溶液のpH値は、陽極側領域128の容積を調整することで制御できる。具体的には、陰極106および陽極108の間に流す電流が一定であり、且つ、陽極側溶液の単位時間当たりの流量が一定であれば、陽極側領域128の容積を大きくするとpH値は大きくなり、陽極側領域128の容積を小さくするとpH値は小さくなる。容積制御部114は、陽極側領域128に注入される液体、または、陽極側溶液のpH値に基づいて、陽極側領域128の容積を制御してよい。処理システム10は、陽極側領域128に注入される液体、または、陽極側溶液のpH値を検出する検出部を更に備えてよい。
【0059】
また、陽極側溶液のpH値は、陽極側溶液の単位時間当たりの流量によっても調整できる。具体的には、陰極106および陽極108の間に流す電流が一定であり、且つ、陽極側領域128の容積が一定であれば、陽極側溶液の流量を減少させるとpH値は小さくなる。陽極側排出部118は、陽極側領域128に注入される液体、または、陽極側溶液のpH値に基づいて、陽極側溶液の単位時間当たりの流量を制御してよい。
【0060】
また、陽極側溶液のpH値は、陰極106および陽極108の間に流す電流によっても調整できる。具体的には、陽極側溶液の単位時間当たりの流量が一定であり、且つ、陽極側領域128の容積が一定であれば、電流を増加させるとpH値は小さくなる。電源30は、陽極側領域128に注入される液体、または、陽極側溶液のpH値に基づいて、陰極106および陽極108の間に流す電流を制御してよい。
【0061】
図10は、電解処理装置100の他の動作例を示す図である。本例における注入部102は、排ガス処理装置40が排出する排液の少なくとも一部を、陽極側領域128に注入する。注入部102は、排ガス処理装置40が排出する排液の全部を、陽極側領域128に注入してもよい。注入部102は、海水を陰極側領域126および陽極側領域128に注入する液体の一部として用いてよい。注入部102は、排ガス処理装置40が排出する排液と海水とを混合して、陰極側領域126および陽極側領域128に注入する液体として用いてよい。
【0062】
排ガス処理装置40が排出する排液は、SOx、NOx等を含む排ガスと気液接触するので、酸性になりやすい。図9に示すように、酸性の液体においては、HClOの存在比率を高くできる。このため、当該排液の少なくとも一部を陽極側領域128に注入することで、陽極側領域128に注入する液体のpH値を下げて、陽極側溶液におけるHClOの存在比率を高めることができる。
【0063】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は実施の形態に記載の範囲には限定されない。実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、請求の範囲の記載から明らかである。
【0064】
請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0065】
10・・・処理システム、20・・・ポンプ、30・・・電源、40・・・排ガス処理装置、50・・・バラスト水処理装置、52・・・バラストタンク、60・・・貯蔵タンク、100・・・電解処理装置、102・・・注入部、104・・・電気分解槽、106・・・陰極、108・・・陽極、110・・・液体、112・・・隔膜、114・・・容積制御部、116・・・陰極側排出部、118・・・陽極側排出部、126・・・陰極側領域、128・・・陽極側領域
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【国際調査報告】