特表-19065742IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2019年4月4日
【発行日】2019年11月14日
(54)【発明の名称】成形用樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 27/24 20060101AFI20191018BHJP
   C08L 33/12 20060101ALI20191018BHJP
   C08L 51/04 20060101ALI20191018BHJP
   C08K 5/57 20060101ALI20191018BHJP
【FI】
   C08L27/24
   C08L33/12
   C08L51/04
   C08K5/57
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】28
【出願番号】特願2018-557433(P2018-557433)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2018年9月26日
(31)【優先権主張番号】特願2017-187166(P2017-187166)
(32)【優先日】2017年9月27日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000224949
【氏名又は名称】徳山積水工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷口 寛
(72)【発明者】
【氏名】後藤 司
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BD051
4J002BD181
4J002BG062
4J002BN153
4J002BN163
4J002EZ046
4J002FD013
4J002FD022
4J002FD066
4J002FD070
4J002FD090
4J002FD160
4J002FD170
4J002GL00
4J002HA09
(57)【要約】
本発明は、優れた熱安定性を有し、耐衝撃性及び表面平滑性の高い成形体を製造することが可能な成形用樹脂組成物、及び、成形用樹脂組成物を用いた成形体を提供する。
本発明は、塩素化塩化ビニル系樹脂と、アクリル系加工助剤と、耐衝撃改良剤とを含有する成形用樹脂組成物であって、前記アクリル系加工助剤は、重量平均分子量が50万〜500万のアクリル系樹脂からなり、前記塩素化塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、前記アクリル系加工助剤を0.2〜10質量部、前記耐衝撃改良剤を0.5〜8.0質量部含有する成形用樹脂組成物である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩素化塩化ビニル系樹脂と、アクリル系加工助剤と、耐衝撃改良剤とを含有する成形用樹脂組成物であって、
前記アクリル系加工助剤は、重量平均分子量が50万〜500万のアクリル系樹脂からなり、
前記塩素化塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、前記アクリル系加工助剤を0.2〜10質量部、前記耐衝撃改良剤を0.5〜8.0質量部含有する
ことを特徴とする成形用樹脂組成物。
【請求項2】
塩素化塩化ビニル系樹脂は、下記式(a)〜(c)に示す構成単位(a)〜(c)を有し、前記構成単位(a)、(b)及び(c)の合計モル数に対して、構成単位(a)の割合が17.5モル%以下、構成単位(b)の割合が46.0モル%以上、構成単位(c)の割合が37.0モル%以下であることを特徴とする請求項1記載の成形用樹脂組成物。
【化1】
【請求項3】
塩素化塩化ビニル系樹脂中の塩素含有量は、63〜72質量%であることを特徴とする請求項1又は2記載の成形用樹脂組成物。
【請求項4】
アクリル系樹脂は、メチル(メタ)アクリレートの重合体であることを特徴とする請求項1、2又は3記載の成形用樹脂組成物。
【請求項5】
耐衝撃改良剤は、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン共重合体である請求項1、2、3又は4記載の成形用樹脂組成物。
【請求項6】
耐衝撃改良剤とアクリル系加工助剤との比(耐衝撃改良剤/アクリル系加工助剤)が、7.0以下である請求項1、2、3、4又は5記載の成形用樹脂組成物。
【請求項7】
更に、熱安定剤を含有することを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6記載の成形用樹脂組成物。
【請求項8】
β−ジケトンを含まないことを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6又は7記載の成形用樹脂組成物。
【請求項9】
塩素化塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、熱安定剤を0.4〜10質量部含有することを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7又は8記載の成形用樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1、2、3、4、5、6、7、8又は9記載の成形用樹脂組成物から成形されてなることを特徴とする成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた熱安定性を有し、耐衝撃性及び表面平滑性の高い成形体を製造することが可能な成形用樹脂組成物、及び、成形用樹脂組成物を用いた成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、塩化ビニル系樹脂(以下、PVCという)は機械的強度、耐候性、耐薬品性に優れた材料として、多くの分野に用いられている。しかしながら、耐熱性に劣るため、PVCを塩素化することにより耐熱性を向上させた塩素化塩化ビニル系樹脂(以下、CPVCという)が開発されている。PVCは熱変形温度が低く使用可能な上限温度が60〜70℃付近であるため、熱水に対して使用できないのに対し、CPVCは熱変形温度がPVCよりも20〜40℃も高いため、熱水に対しても使用可能であり、例えば、耐熱パイプ、耐熱継手、耐熱バルブ、耐熱プレート等に好適に使用されている。
【0003】
しかしながら、CPVCは一般のPVCと比較して粘度が高く、応力緩和時間が長いため、成型体、例えば管の表面(内面)が平滑性に劣るという欠点があった。管の内面が平滑性に劣る場合、凹凸の影響により滞留が起こりやすく、細菌の繁殖やゴミの蓄積が起こりやすくなるため、プラント用の超純水配管及びライニング管での使用が難しかった。
【0004】
これに対して、金属化合物や安定剤等を添加して、CPVCの熱安定性を高め、成形温度を上昇させて成形したり、金型内滞留時間を長くしたりして成形することにより表面平滑性を付与することが考えられる。
例えば、特許文献1には、有機錫系安定剤、酸化型ポリエチレンワックス、改質剤、滑剤、加工助剤及び顔料等を特定の割合で配合したCPVCが開示されている。
しかしながら、特許文献1の方法では、熱安定性が不充分なものとなっていた。このため、熱安定剤を多く添加することが行われているが、本来有する耐熱性を損なう結果となっていた。また、熱安定性を損なわないために、低分子量の加工助剤を使用することが行われているが、内面の平滑性を満足するものは得られていなかった。
【0005】
また、特許文献2には、塩素含有率、空隙率、0.001〜0.1μmの空隙容積が所定の範囲内であるCPVCを用いて成形することで、耐熱性、平滑性に優れる成形体を得る方法が記載されている。
しかしながら、この方法では、原料樹脂の製造工程が複雑になるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−316267号公報
【特許文献2】特開2001−278992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、優れた熱安定性を有し、耐衝撃性及び表面平滑性の高い成形体を製造することが可能な成形用樹脂組成物、及び、成形用樹脂組成物を用いた成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、塩素化塩化ビニル系樹脂と、アクリル系加工助剤と、耐衝撃改良剤とを含有する成形用樹脂組成物であって、前記アクリル系加工助剤は、重量平均分子量が50万〜500万のアクリル系樹脂からなり、前記塩素化塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、前記アクリル系加工助剤を0.2〜10質量部、前記耐衝撃改良剤を0.5〜8.0質量部含有する成形用樹脂組成物である。
以下に本発明を詳述する。
【0009】
本発明者らは、鋭意検討の結果、塩素化塩化ビニル系樹脂を含有する成形用樹脂組成物に対して、重量平均分子量を規定したアクリル系樹脂からなるアクリル加工助剤、及び、耐衝撃改良剤を所定量添加することで、優れた熱安定性を有し、耐衝撃性及び表面平滑性の高い成形体を製造することが可能となることを見出し、本発明を完成させるに至った。
特に、本発明では、得られる成形体の表面粗さが低くなることに加えて、ろ波うねりについても低減させることが可能となる。管状部材においては、内部のろ波うねりが流動性により深く関係するため、本発明の成形用樹脂組成物を用いて得られる成形体は、ろ波うねりを抑えることができ、その結果、肉厚の変動が小さく均一な肉厚が得られるので、内圧クリープ性能を長期に渡って向上させることが可能となる。
【0010】
本発明の成形用樹脂組成物は、塩素化塩化ビニル系樹脂(以降、「CPVC」ともいう)を含有する。
上記CPVCは、下記式(a)〜(c)に示す構成単位(a)〜(c)を有し、上記構成単位(a)、(b)及び(c)の合計モル数に対して、構成単位(a)の割合が17.5モル%以下、構成単位(b)の割合が46.0モル%以上、構成単位(c)の割合が37.0モル%以下であることが好ましい。このようなCPVCは、熱安定性が高く、且つ、良好な成形加工性を有する。
【0011】
【化1】
【0012】
上記CPVCの構成単位(a)、(b)及び(c)のモル比は、塩化ビニル系樹脂(PVC)が塩素化される際の塩素が導入される部位を反映したものである。塩素化前のPVCは、理想的には、ほぼ、構成単位(a)が0モル%、構成単位(b)が50.0モル%、構成単位(c)が50.0モル%の状態にあるが、塩素化に伴って構成単位(c)が減少し、構成単位(b)及び構成単位(a)が増加する。この際、立体障害が大きく不安定な構成単位(a)が増えすぎたり、CPVCの同一粒子内で塩素化されている部位とされていない部位が偏ったりすると、塩素化状態の不均一性が大きくなる。この不均一性が大きくなると、CPVCの熱安定性が大きく損なわれる。
一方で、本発明では、上記CPVCの構成単位(a)、(b)及び(c)のモル比を上述の範囲内とすることで、CPVCの均一性が高くなり、良好な熱安定性を有する。
【0013】
本発明では、上記構成単位(a)、(b)及び(c)の合計モル数に対して、構成単位(a)の割合が17.5モル%以下であるが、上記構成単位(a)の割合は、16.0モル%以下が好ましい。また、2.0モル%以上であることが好ましい。
また、上記構成単位(a)、(b)及び(c)の合計モル数に対して、構成単位(b)の割合が46.0モル%以上であるが、上記構成単位(b)の割合は、53.5モル%以上が好ましい。また、70.0モル%以下であることが好ましい。
更に、上記構成単位(a)、(b)及び(c)の合計モル数に対して、構成単位(c)の割合が37.0モル%以下であるが、上記構成単位(c)の割合は、30.5モル%以下が好ましい。また、1.0モル%以上であることが好ましい。
【0014】
本発明では、特に、構成単位(b)の割合が58.0モル%以上であり、構成単位(c)の割合が35.8モル%以下であることが好ましい。このような構成によれば、より高い熱安定性が得られる。
【0015】
上記CPVCの構成単位(a)、(b)及び(c)のモル比は、NMRを用いた分子構造解析により測定することができる。NMR分析は、R.A.Komoroski,R.G.Parker,J.P.Shocker,Macromolecules,1985,18,1257−1265に記載の方法に準拠して行うことができる。
【0016】
上記CPVCの分子構造中における塩素化されていないPVC部分は下記式(d)に示す構成単位(d)で表すことができ、本明細書ではこれをVC単位と称する。
本発明で用いるCPVCは、分子構造中に含まれる4連子以上のVC単位の含有量が30.0モル%以下であることが好ましい。ここで、4連子以上のVC単位とは、VC単位が4個以上連続して結合している部分を意味する。
【0017】
【化2】
【0018】
上記CPVC中に存在するVC単位は脱HClの起点となり、かつ、このVC単位が連続していると、ジッパー反応と言われる連続した脱HCl反応が起こりやすくなってしまう。即ち、この4連子以上のVC単位の量が大きくなるほど、脱HClが起こり易く、CPVC中の熱安定性が低くなる。そのため、4連子以上のVC単位は、30.0モル%以下であることが好ましく、28.0モル%以下であることがより好ましい。CPVC中の塩素含有量が69質量%以上72質量%未満の場合、4連子以上のVC単位は18.0モル%以下であることが好ましく、16.0モル%以下であることがより好ましい。
上記分子構造中に含まれる4連子以上の塩化ビニル単位の含有率は、上記のNMRを用いた分子構造解析により測定することができる。
【0019】
上記CPVCは、塩素含有量が63〜72質量%であることが好ましい。
上記塩素含有量が63質量%以上であることで、成形品としての耐熱性が充分なものとなり、72質量%以下とすることで、成形性が向上する。
上記塩素含有量は、66質量%以上であることがより好ましく、69質量%以下であることがより好ましい。
上記CPVC中の塩素含有量は、JIS K 7229に記載の方法により測定することができる。
【0020】
上記CPVCは、ゲル化時間が100〜200秒であることが好ましい。110〜190秒であることがより好ましい。
上記ゲル化時間が上記範囲内であることで、樹脂の崩壊と融着が適切に進み成形時に外観や物性を高めることができる。
上記ゲル化時間は、CPVCに熱安定剤、滑剤、衝撃改質剤を添加したサンプルをラボプラストミル等でロータ回転させ、モータートルクが最も上昇した際の時間をいう。
【0021】
上記CPVCは、216nmの波長におけるUV吸光度が8.0以下であることが好ましく、0.8以下であることがより好ましい。
また、紫外吸収スペクトルにおいて、216nmの波長は、CPVC中の異種構造である、−CH=CH−C(=O)−及び−CH=CH−CH=CH−が吸収を示す波長である。
上記CPVCのUV吸光度の値から、塩素化反応時の分子鎖中の異種構造を定量化し、熱安定性の指標とすることができる。CPVCの分子構造において、二重結合した炭素の隣の炭素に付いた塩素原子は不安定である。そのため、該塩素原子を起点として、脱HClが生じる。即ち、波長216nmにおけるUV吸光度の値が大きいほど脱HClが起こり易く、熱安定性が低いことになる。
【0022】
特に、上記CPVCの塩素含有量が63質量%以上69質量%未満の場合、UV吸光度の値が0.8以下であることが好ましい。UV吸光度の値が0.8を超えると、分子鎖中の異種構造の影響が大きくなり、その結果、熱安定性が低下することがある。
また、上記CPVCの塩素含有量が69質量%以上、72質量%以下である場合は、UV吸光度の値が8.0以下であることが好ましい。上記UV吸光度の値が8.0を超えると、分子鎖中の異種構造の影響が大きくなり、熱安定性が低下する。
【0023】
上記CPVCは、190℃における脱HCl量が7000ppmに到達するのに必要な時間は60秒以上であることが好ましく、100秒以上であることがより好ましい。
上記CPVCは高温で熱分解を起こし、その際にHClガスを発生する。一般に、CPVCはその塩素化度が高くなるにつれて、上述したVC単位が減少するため、脱HCl量が減少する傾向にある。しかし、塩素化度が高くなるにつれて、不均一な塩素化状態や異種構造が増加し、熱安定性が低下する。それ故、脱HCl量を測定することにより、不均一な塩素化状態や異種構造の増加を分析することができる。例えば、190℃における脱HCl量が7000ppmに到達するのに必要な時間を熱安定性の指標とすることができ、その時間が短いほど、熱安定性が低いと言える。
【0024】
特に、上記CPVCの塩素含有量が63質量%以上、69質量%未満である場合は、190℃における脱HCl量が7000ppmに到達するのに必要な時間は60秒以上であることが好ましい。該時間が60秒未満であると、熱安定性が大きく損なわれる。よって、該時間は60秒以上であることが好ましく、70秒以上であることがより好ましく、80秒以上であることが更に好ましい。
また、上記CPVCの塩素含有量が69質量%以上、72質量%以下である場合は、該時間は100秒以上であることが好ましい。該時間が100秒未満であると、熱安定性が大きく低下してしまうため、100秒以上であることが好ましく、120秒以上であることがより好ましく、140秒以上であることが更に好ましい。
上記190℃における脱HCl量が7000ppmに到達する時間は、以下のように測定することができる。まず、塩素化塩化ビニル系樹脂1gを試験管に入れ、オイルバスを使用して190℃で加熱し、発生したHClガスを回収する。回収したHClガスを100mlのイオン交換水に溶解させてpHを測定する。pHの値に基づいて、HClの濃度(ppm)(即ち、塩素化塩化ビニル系樹脂100万gあたり何gのHClが発生したか)を算出する。HClの濃度が7000ppmに到達する時間を計測する。
【0025】
上記CPVCは、塩化ビニル系樹脂(PVC)が塩素化されてなる樹脂である。
上記PVCとしては、塩化ビニル単独重合体、塩化ビニルモノマーと共重合可能な不飽和結合を有するモノマーと塩化ビニルモノマーとの共重合体、重合体に塩化ビニルモノマーをグラフト共重合したグラフト共重合体等を用いることができる。これら重合体は単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0026】
上記塩化ビニルモノマーと共重合可能な不飽和結合を有するモノマーとしては、例えば、α−オレフィン類、ビニルエステル類、ビニルエーテル類、(メタ)アクリル酸エステル類、芳香族ビニル類、ハロゲン化ビニル類、N−置換マレイミド類等が挙げられ、これらの1種若しくは2種以上が使用される。
上記α−オレフィン類としては、エチレン、プロピレン、ブチレン等が挙げられる。
上記ビニルエステル類としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等が挙げられる。
上記ビニルエーテル類としては、ブチルビニルエーテル、セチルビニルエーテル等が挙げられる。
上記(メタ)アクリル酸エステル類としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチルアクリレート、フェニルメタクリレート等が挙げられる。
上記芳香族ビニル類としては、スチレン、α−メチルスチレン等が挙げられる。
上記ハロゲン化ビニル類としては、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン等が挙げられる。
上記N−置換マレイミド類としては、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等が挙げられる。
【0027】
上記塩化ビニルをグラフト共重合する重合体としては、塩化ビニルをグラフト重合させるものであれば特に限定されない。例えば、エチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ポリウレタン、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等が挙げられる。これらは単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されても良い。
上記エチレン共重合体としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル−一酸化炭素共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−ブチルアクリレート−一酸化炭素共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体、エチレン−プロピレン共重合体等が挙げられる。
【0028】
上記PVCの平均重合度は、特に限定されず、通常用いられる400〜3,000のものが好ましく、より好ましくは600〜1,500である。平均重合度は、JIS K 6720−2:1999に記載の方法より測定することができる。
上記PVCの重合方法は、特に限定されず、従来公知の水懸濁重合、塊状重合、溶液重合、乳化重合等を用いることができる。
【0029】
本発明の成形用樹脂組成物は、重量平均分子量が50万〜500万のアクリル系樹脂からなるアクリル系加工助剤を含有する。
上記アクリル系樹脂としては、アクリル酸、メタクリル酸や、(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体、又は、これらを含む(メタ)アクリル共重合体が挙げられる。
上記(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、上記(メタ)アクリル酸エステルとしては、n−アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート等がある。ただし上記の(メタ)アクリル酸とはアクリル酸もしくはメタクリル酸を示す。本発明では、上記アクリル系樹脂として、メチル(メタ)アクリレート(MMA)の重合体を用いることが好ましい。
【0030】
上記(メタ)アクリル共重合体において、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル共に共重合される他の共単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、酢酸ビニル等を挙げることができる。
これらの共単量体は、アクリル系樹脂中に、ランダム共重合体、グラフト共重合体、ブロック共重合体の形で存在することができる。
【0031】
上記アクリル系樹脂は、重量平均分子量が50万〜500万である。
上記重量平均分子量を上記範囲内とすることで、表面平滑性の優れた成形品を得ることができる。
上記重量平均分子量の好ましい下限は75万、好ましい上限は350万である。
上記重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、ゲルパミエーションクロマトグラフィ(GPC)法によりポリスチレン換算分子量として測定される。
【0032】
上記アクリル系樹脂は、ガラス転移温度が80〜120℃であることが好ましい。
これにより、CPVCの耐熱性を損なうことなく表面性に優れた成形体を得ることができる。
【0033】
上記アクリル系樹脂は、溶融温度が90〜150℃であることが好ましい。
これにより、CPVCの耐熱性を損なうことなく表面性に優れた成形体を得ることができる。
上記溶融温度は、例えば、フローテスター等の機器を用いて、JIS K 7210Aに準拠した方法(80℃から5℃/minで昇温を開始し、流動開始温度を測定)により測定することができる。
【0034】
本発明の成形用樹脂組成物において、上記アクリル系加工助剤の含有量は、塩素化塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、0.2〜10質量部である。この範囲でアクリル系加工助剤を含むことにより、得られる成形体表面の平滑性をより向上させることができ、特に、ろ波うねりが小さいものとすることができる。
上記アクリル系加工助剤の含有量の好ましい下限は0.8質量部、より好ましい下限は1.0質量部、好ましい上限は7.5質量部、より好ましい上限は5質量部である。
また、上記アクリル系加工助剤の含有量は、熱安定剤100質量部に対して、150〜650質量部であることが好ましい。
更に、本発明の成形用樹脂組成物全体に対する上記アクリル系加工助剤の含有量は、0.4〜7.0質量%であることが好ましい。
【0035】
本発明の成形用樹脂組成物は、耐衝撃改良剤を含有する。
上記耐衝撃改質剤は、得られる成形体の耐衝撃性を改質する目的で用いられるものであり、ゴム成分を含有するものである。なお、上記耐衝撃改良剤は、上記アクリル系加工助剤とは異なるものである。
【0036】
上記耐衝撃改質剤としては、例えば、(メタ)アクリレートモノマー成分とゴム成分との共重合体、(メタ)アクリレートモノマー成分とオルガノシロキサンモノマー成分とを含むシリコーンアクリルゴムが挙げられる。
【0037】
上記(メタ)アクリレートモノマー成分としては、炭素数1以上12以下のアルキル(メタ)アクリレート、たとえば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレートなどが挙げられる。これらモノマー成分は、単独で用いられてもよいし、2種以上(たとえば3種)が併用されてもよい。
なお、上記耐衝撃改質剤を構成する重合体中の(メタ)アクリレートモノマー成分の含有量は特に限定されないが、たとえば20〜40質量%であることが好ましい。
【0038】
上記ゴム成分としては、ジエン成分、非ジエン成分を問わず、単独重合体および共重合体(二元共重合体および三元共重合体を含む)も問わない。共重合体の様式としては、ランダム共重合、交互共重合、ブロック共重合およびグラフト共重合を問わない。
【0039】
上記ジエン成分としては、ブタジエン、イソプレンおよびクロロプレンなどが挙げられる。 また、ジエン、不飽和ニトリル、α−オレフィンおよび芳香族ビニルからなる群から選ばれるモノマー成分を含む共重合体が挙げられる。より具体的には、不飽和ニトリルとジエンとの共重合体(たとえば、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体)、芳香族ビニルとジエンとの共重合体(たとえば、ブタジエン−スチレン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体)、オレフィンとジエンとの共重合体(たとえば、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体)等が挙げられる。
なお、上記耐衝撃改質剤を構成する重合体中のジエン成分の含有量は、35〜70質量%が好ましく、50〜65質量%であることがより好ましい。
【0040】
上記非ジエン成分としては、オレフィン、およびオルガノシロキサンからなる群から選ばれる1種又は2種以上のモノマー成分を含む重合体が挙げられる。より具体的には、オレフィンゴム(たとえば、エチレン−プロピレンゴムなど)およびシリコーンアクリルゴムが挙げられる。
【0041】
上記耐衝撃改質剤として、より具体的には、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン共重合体(MBS)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、メチルメタクリレート−アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(MABS)、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体(MB)等が好ましく使用される。
また、上記耐衝撃改質剤としては、メチルメタクリレート−アクリル・ブタジエンゴム共重合体、メチルメタクリレート−アクリル・ブタジエンゴム−スチレン共重合体およびメチルメタクリレート−(アクリル・シリコーン複合体)共重合体が好ましく使用される。なかでも、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン共重合体及び/又はアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体が好ましい。
【0042】
上記耐衝撃改質剤の構成成分のうち、耐衝撃性効果に寄与する樹脂の単体におけるガラス転移温度は0℃未満であることが好ましい。これにより、得られる成形体の耐熱性を損なうことなく耐衝撃性を向上させることができる。
【0043】
本発明の成形用樹脂組成物において、上記耐衝撃改質剤の含有量は、塩素化塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、0.5〜8質量部である。この範囲で耐衝撃改質剤を含むことにより、得られる成形体の耐衝撃性をより向上させることができる。
上記耐衝撃改質剤の含有量の好ましい下限は3質量部、より好ましい下限は4質量部、好ましい上限は8質量部、より好ましい上限は7.5質量部である。
更に、本発明の成形用樹脂組成物全体に対する上記耐衝撃改質剤の含有量は、2.5〜6.0質量%であることが好ましい。
【0044】
本発明の成形用樹脂組成物において、耐衝撃改良剤とアクリル系加工助剤との比(耐衝撃改良剤/アクリル系加工助剤)は、7.0以下であることが好ましい。このような範囲内とすることで、良好な外観と耐衝撃性を両立した成形品を得ることができる。
上記耐衝撃改良剤/アクリル系加工助剤は、0.7〜7.0であることが好ましく、0.7〜4.0であることがより好ましい。
また、上記耐衝撃改質剤は、粒子状であることが好ましく、平均粒子径が小さいことが好ましい。耐衝撃改質剤粒子の平均粒子径は、0.1〜200μm程度が好ましい。
【0045】
本発明の成形用樹脂組成物において、更に、熱安定剤を含有することが好ましい。
本発明において、上記熱安定剤は、有機スズ系安定剤が好ましい。また、アルキルカルボン酸カルシウム及び亜鉛化合物を含有するものを使用することが好ましい。
【0046】
上記有機スズ系安定剤としては、例えば、メチル、ブチル、オクチル等のアルキルスズ、好ましくはジアルキルスズのラウリン酸等の脂肪族モノカルボン酸の塩、或いはマレイン酸、フタル酸等のジカルボン酸の塩等が挙げられる。具体的には例えば、ジブチルスズジラウリレート、ジオクチルスズラウレート、ジブチルスズマレエート、ジブチルスズフタレート、ジメチルスズ ビス(2−エチルへキシルチオグリコレート)、ジブチルスズメルカプタイド、ジメチルスズメルカプタイド等のアルキルスズメルカプタイド等が挙げられる。
【0047】
上記アルキルカルボン酸カルシウム及び亜鉛化合物を含有する熱安定剤は、重金属を含まないことから、重金属フリーの成形用樹脂組成物が得られる。
また、このような熱安定剤を用いた場合、塩素化塩化ビニル系樹脂の熱分解で生成した塩酸が、直ちに亜鉛化合物と反応して塩化亜鉛となる。また、塩素化塩化ビニル系樹脂の脱塩酸により生成したポリエンの成長がアルキルカルボン酸カルシウムとの結合で停止されて発色が抑えられる。
一方で、生成した塩化亜鉛は、塩素化塩化ビニル系樹脂の熱分解を促進させる性質があるが、本発明では、塩化亜鉛がアルキルカルボン酸カルシウムと反応して塩化カルシウムとアルキルカルボン酸亜鉛が生成される。その結果、上記熱安定剤は、亜鉛化合物の迅速な塩酸捕捉作用を生かしながら、塩化亜鉛の熱分解促進作用が抑制されるため、顕著な相乗効果を有する。
【0048】
上記アルキルカルボン酸カルシウムとしては、例えば、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、シクロヘキシルプロピオン酸、ノナン酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、モンタン酸等のカルシウム塩が挙げられる。
なかでも、炭素数8〜28のアルキルカルボン酸カルシウムを用いることが好ましい。
【0049】
上記亜鉛化合物としては、無機亜鉛化合物又は有機亜鉛化合物が挙げられる。
上記無機亜鉛化合物としては、例えば、亜鉛の炭酸塩、塩化物、硫酸塩、酸化物、水酸化物、塩基性酸化物及び混合酸化物からなる系統からの化合物等が挙げられる。
【0050】
上記有機亜鉛化合物としては、例えば、ジ及び/又はモノアルキル亜鉛等のアルキル亜鉛化合物、有機脂肪族カルボン酸亜鉛、非置換又は置換有機芳香族カルボン酸亜鉛、有機亜燐酸亜鉛、置換又は非置換フェノール亜鉛、アミノ酸及びその誘導体亜鉛、有機メルカプタン亜鉛等を挙げることができる。
【0051】
上記有機脂肪族カルボン酸亜鉛を構成する有機脂肪族カルボン酸としては、例えば、モンタン酸、コメ糠脂肪酸、ベヘン酸、エルシン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、コメ脂肪酸、リシノレイン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、低級脂肪酸、オクチル酸、イソステアリン酸、ダイマー酸、ナフテン酸、酢酸等が挙げられる。
また、上記有機脂肪族カルボン酸としては、アゼライン酸、セバチン酸、アジピン酸、コハク酸、マロン酸、マレイン酸、クロトン酸、リンゴ酸、酒石酸等のジカルボン酸のほか、そのモノエステルが挙げられる。
更に、上記有機脂肪族カルボン酸としては、クエン酸及びそのモノエステル又はジエステル、乳酸、グリコール酸、チオジプロピオン酸及びそのモノエステル等が挙げられる。
【0052】
上記非置換又は置換有機芳香族カルボン酸亜鉛を構成する無置換又は置換芳香族カルボン酸としては、例えば、安息香酸、o−,m−及びp−トルイル酸、p−第3級ブチル安息香酸、p−ヒドロキシ安息香酸、サルチル酸、多塩基酸のフタル酸、メタフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸等及びそれらのモノエステル又はジエステル等が挙げられる。
【0053】
上記有機亜燐酸亜鉛を構成する有機亜燐酸としては、例えば、脂肪族アルコールと五酸化燐との反応物であるアシッドホスファイト等を挙げることができる。具体的には、ブチルアシッドホスファイト、オクチルアシッドホスファイト、ステアリルアシッドホスファイト、ベヘニルアシッドホスファイト等が挙げられる。
【0054】
上記置換又は非置換フェノール亜鉛を構成する置換又は非置換フェノールとしては、例えば、フェノール、クレゾール、キシロール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、ジノニルフェノール、シクロヘキシルフェノール、フェニルフェノールが挙げられる。また、上記置換又は非置換フェノールとしては、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールF、p−ヒドロキシ安息香酸のエステル、サルチル酸のエステル等を挙げることができる。
【0055】
上記アミノ酸及びその誘導体としては、例えば、焼成グルタミン酸、グリシン、アラニン等を挙げることができる。
【0056】
上記有機メルカプタン亜鉛を構成する有機メルカプタンとしては、例えば、ラウリルメルカプタン、チオグリコール酸及びそのエステル、メルカプトプロピオン酸及びそのエステル、チオリンゴ酸およびそのモノエステル又はジエステル等を挙げることができる。
【0057】
上記熱安定剤は、アルキルカルボン酸カルシウム及び亜鉛化合物を含有するものであるが、上記アルキルカルボン酸カルシウム及び亜鉛化合物の混合物であることが好ましい。
上記熱安定剤の形態としては、例えば、粉末、粒状物等が挙げられる。このような形態とすることで、ワンパックの熱安定剤として使用することができる。
上記熱安定剤が粉粒体である場合、その粒度は目的に応じて任意に調節することができ、一般に平均粒子径が50μm〜5mmであることが好ましく、特に70μm〜2mmであることが好ましい。
上記粒状物の熱安定剤を製造する方法としては、例えば、押出成形造粒法、噴霧造粒法、回転円盤造粒法、転動造粒法、圧縮造粒法等のそれ自体公知の造粒法を用いることができる。
【0058】
上記熱安定剤は、230℃における加熱減量率が5質量%未満であることが好ましい。
上記230℃における加熱減量率が5質量%以上であると、成形品内部に気泡が含まれることで強度不足になったり、表面近傍に筋状の模様が発生し外観不良が生じたりすることがある。
上記230℃における加熱減量率は、3質量%未満であることがより好ましい。
下限については特に限定されないが0.1質量%が好ましい。
なお、上記230℃における加熱減量率は、熱重量測定(TG)装置によって測定することができる。
【0059】
上記熱安定剤は、アルキルカルボン酸カルシウム及び亜鉛化合物を含有するものであるが、上記、アルキルカルボン酸カルシウムと亜鉛化合物との混合比(アルキルカルボン酸カルシウム:亜鉛化合物)は、9:1〜4:6であることが好ましい。また、上記混合比は、8:2〜5:5であることがより好ましい。
【0060】
本発明の成形用樹脂組成物において、上記熱安定剤の含有量は、塩素化塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、0.4〜10質量部であることが好ましく、0.6〜7質量部の範囲であることがより好ましい。この範囲で熱安定剤を含むことにより、熱安定性をより向上させることができるとともに、成形体の良好な外観を維持することができる。
【0061】
上記熱安定剤として、アルキルカルボン酸カルシウム及び亜鉛化合物を含有するものを使用した場合、重金属フリーの成形用樹脂組成物が得られる。
本明細書において、重金属とは密度の大きい金属を意味し、一般に密度4〜5g/cm以上の金属を指す。重金属フリーとは、重金属の含有量が1000ppm以下であることを意味する。なお、上記重金属の含有量は、100ppm以下であることが好ましい。
【0062】
上記重金属としては、スカンジウム以外の遷移金属が挙げられ、例えば、Mn、Ni、Fe、Cr、Co、Cu、Au等が挙げられる。また、第4周期以下のp−ブロック元素の金属(例えばSn、Pb、Bi)、Cd、Hg等も含まれる。
【0063】
本発明の成形用樹脂組成物は、更に、酸化防止剤を含有することが好ましい。
上記酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、リン酸系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤等を用いることができる。これらは、単独で使用しても良く、二種以上を併用しても良い。なかでも、フェノール系酸化防止剤が好ましく、特にヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましい。
【0064】
上記ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、2,6−ジフェニル−4−オクタデシロキシフェノール、ステアリル(3,5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ジステアリル(3,5−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ホスホネート、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、ビス〔3,3−ビス(4−ヒドロキシ−3−t−ブチルフェニル)ブチリックアシッド〕グリコールエステル、4,4’−ブチリデンビス(6−t−ブチル−m−クレゾール)、2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェノール)、2,2’−エチリデンビス(4−sec−ブチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、ビス〔2−t−ブチル−4−メチル−6−(2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−メチルベンジル)フェニル〕テレフタレート、1,3,5−トリス(2,6−ジメチル−3−ヒドロキシ−4−t−ブチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2,4,6−トリメチルベンゼン、1,3,5−トリス〔(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル〕イソシアヌレート、ペンタエリスリチル−テトラキス〔メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2−t−ブチル−4−メチル−6−(2’−アクリロイルオキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルベンジル)フェノール、3,9−ビス(1’,1’−ジメチル−2’−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン、ビス〔β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート〕等が挙げられる。これらのうちでは、1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、ペンタエリスリチル−テトラキス〔メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕等が好ましい。これらは単独でも2種以上混合しても用いることができる。
【0065】
上記酸化防止剤は、200℃における加熱減量率が5質量%未満であることが好ましい。
上記200℃における加熱減量率が5質量%以上であると、成形品内部に気泡が含まれて強度不足になったり、表面近傍に筋状の模様が発生し外観不良が生じたりすることがある。
なお、上記200℃における加熱減量率は3質量%未満であることがより好ましい。
【0066】
上記本発明の成形用樹脂組成物において、上記酸化防止剤の含有量は、塩素化塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、0.1〜3質量部であることが好ましく、0.2〜2.5質量部の範囲であることがより好ましい。この範囲で酸化防止剤を含むことにより、黄変による着色の少ない成形品を得ることができる。
【0067】
本発明の成形用樹脂組成物は、更に、安定化助剤を含むことが好ましい。上記安定化助剤を含むことにより、熱安定性をより向上させることができる。
上記安定化助剤としては、重金属を含まないものを用いることができる。例として、有機酸塩、エポキシ化合物、リン酸化合物、金属水酸化物、アジピン酸ナトリウム、グリシジル(メタ)アクリレート共重合体、オキセタニル化合物、ビニルエーテル化合物及びゼオライト化合物が挙げられる。
上記エポキシ化合物としては、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ豆油エポキシ化テトラヒドロフタレート、エポキシ化ポリブタジエン、ビスフェノールA型エポキシ化合物等が挙げられる。
上記リン酸化合物としては、有機リン化合物、亜リン酸エステル、リン酸エステル等が挙げられる。
上記金属水酸化物としては、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム等が挙げられる。
これらは単独で使用しても良く、2種以上を併用してもよい。なお、上記安定化助剤は、アルキルカルボン酸カルシウム及び亜鉛化合物とは異なるものである。
これらは単独で使用しても良く、2種以上を併用してもよい。なお、上記安定化助剤は、アルキルカルボン酸カルシウム及び亜鉛化合物とは異なるものである。
また、上記安定化助剤は、200℃における加熱減量率が5質量%未満であることが好ましい。
【0068】
本発明の成形用樹脂組成物は、必要に応じて、滑剤、加工助剤、耐熱向上剤、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤、熱可塑性エラストマー、顔料などの添加剤を混合してもよい。
【0069】
上記滑剤としては、内部滑剤、外部滑剤が挙げられる。内部滑剤は、成形加工時の溶融樹脂の流動粘度を下げ、摩擦発熱を防止する目的で使用される。上記内部滑剤としては特に限定されず、例えば、ブチルステアレート、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、グリセリンモノステアレート、ステアリン酸、ビスアミド等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
上記滑剤は、200℃における加熱減量率が5質量%未満であることが好ましい。
【0070】
上記外部滑剤は、成形加工時の溶融樹脂と金属面との滑り効果を上げる目的で使用される。上記外部滑剤としては特に限定されず、例えば、パラフィンワックス、ポリエチレン系滑剤等のポリオレフィンワックス、脂肪酸エステル系滑剤等のエステルワックス、モンタン酸ワックス等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
上記耐熱向上剤としては特に限定されず、例えばα−メチルスチレン系、N−フェニルマレイミド系樹脂等が挙げられる。
上記光安定剤としては特に限定されず、例えば、ヒンダードアミン系等の光安定剤等が挙げられる。
【0071】
上記紫外線吸収剤としては特に限定されず、例えば、サリチル酸エステル系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系等の紫外線吸収剤等が挙げられる。
上記顔料としては特に限定されず、例えば、アゾ系、フタロシアニン系、スレン系、染料レーキ系等の有機顔料;二酸化チタン等の酸化物系、硫化物・セレン化物系、フェロシアニン化物系などの無機顔料などが挙げられる。
【0072】
本発明の成形用樹脂組成物には成形時の加工性を向上させる目的で、可塑剤が添加されていてもよいが、成形体の熱安定性を低下させることがあるため、多量に使用することはあまり好ましくない。上記可塑剤としては特に限定されず、例えば、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルアジペート等が挙げられる。
【0073】
本発明の成形用樹脂組成物には施工性を向上させる目的で、熱可塑性エラストマーが添加されていてもよい。上記熱可塑性エラストマーとしては、例えば、ニトリル系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
上記ニトリル系熱可塑性エラストマーとしては、アクリルニトリル−ブタジエン共重合体(NBR)等が挙げられる。
上記オレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−酢酸ビニル−一酸化炭素共重合体(EVACO)等のエチレン系熱可塑性エラストマーが挙げられる。
上記塩化ビニル系熱可塑性エラストマーとしては、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体や塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体等が挙げられる。
これらの熱可塑性エラストマーは、単独で用いられてもよいし、2種類以上が併用されてもよい。
【0074】
本発明の成形用樹脂組成物は、β−ジケトンを含まないことが好ましい。β−ジケトンは、熱安定性を向上させるために従来の熱安定剤に配合されている成分である。しかしながら、β−ジケトンを含む熱安定剤を用いた場合、樹脂組成物を押出成形や射出成形により成形して成形体を製造する際に、成形体の外観が損なわれやすい。例えば、成形体の表面に、樹脂の流れ方向に平行な太さ0.1〜1mm程度の黄色〜赤褐色のすじが発生する。このように外観が損なわれた成形体は不良品となる。特に長時間使用したダイスを用いた場合に、このような不良品が発生しやすい。しかしながら、本発明によれば、β−ジケトンを含む熱安定剤を用いることなく、優れた熱安定性を有する成形用樹脂組成物を提供することができる。
【0075】
本発明の成形用樹脂組成物を製造する方法としては、以下の方法が挙げられる。例えば、反応容器中において、塩化ビニル系樹脂を水性媒体に懸濁して懸濁液を調製し、上記反応容器内に塩素を導入し、従来公知の任意の方法で上記塩化ビニル系樹脂を塩素化して、塩素化塩化ビニル系樹脂を調製する工程を行う。その後、上記塩素化塩化ビニル系樹脂に、重量平均分子量が50万〜500万のアクリル系樹脂からなるアクリル系加工助剤、耐衝撃改良剤を所定量添加して混合する工程を有する方法を用いることができる。
【0076】
上記塩素化塩化ビニル系樹脂を調製する工程において、用いる反応容器としては、例えば、グラスライニングが施されたステンレス製反応容器、チタン製反応容器等の一般に使用されている容器を使用することができる。
【0077】
上記塩化ビニル系樹脂を水性媒体に懸濁して懸濁液を調製する方法は、特に限定されず、重合後のPVCを脱モノマー処理したケーキ状のPVCを用いてもよいし、乾燥させたものを再度、水性媒体で懸濁化してもよい。また、重合系中より、塩素化反応に好ましくない物質を除去した懸濁液を使用してもよいが、重合後のPVCを脱モノマー処理したケーキ状の樹脂を用いることが好ましい。
【0078】
上記水性媒体としては、例えば、イオン交換処理された純水を用いることができる。水性媒体の量は、特に限定されないが、一般にPVCの100質量部に対して150〜400質量部が好ましい。
【0079】
上記反応容器内に導入する塩素は、液体塩素及び気体塩素のいずれであってもよい。短時間に多量の塩素を仕込めるため、液体塩素を用いることが効率的である。圧力を調整するためや塩素を補給するために、反応途中に塩素を追加してもよい。このとき、液体塩素の他に気体塩素を適宜吹き込むこともできる。ボンベ塩素の5〜10質量%をパージした後の塩素を用いるのが好ましい。
【0080】
上記反応容器内のゲージ圧力は、特に限定されないが、塩素圧力が高いほど塩素がPVC粒子の内部に浸透し易いため、0.3〜2MPaの範囲が好ましい。
【0081】
上記懸濁した状態でPVCを塩素化する方法は、特に限定されず、例えば、熱エネルギーによりPVCの結合や塩素を励起させて塩素化を促進する方法(以下、熱塩素化という)、紫外光線等の光エネルギーを照射して光反応的に塩素化を促進する方法(以下、光塩素化という)等が挙げられる。熱エネルギーにより塩素化する際の加熱方法は、特に限定されず、例えば、反応器壁からの外部ジャケット方式による加熱が効果的である。また、紫外光線等の光エネルギーを使用する場合は、高温、高圧下の条件下での紫外線照射等の光エネルギー照射が可能な装置が必要である。光塩素化の場合の塩素化反応温度は、40〜80℃が好ましい。
【0082】
上記塩素化方法の中では、紫外線照射を行わない熱塩素方法が好ましく、熱のみ又は熱及び過酸化水素により塩化ビニル系樹脂の結合や塩素を励起させ塩素化反応を促進する方法が好ましい。
上記光エネルギーによる塩素化反応の場合、PVCが塩素化されるのに必要な光エネルギーの大きさは、PVCと光源との距離に大きく影響を受ける。そのため、PVC粒子の表面と内部とでは、受けるエネルギー量が相違し、塩素化が均一に生じない。その結果、均一性の低いCPVCが得られる。一方、紫外線照射を行わず、熱により塩素化する方法では、より均一な塩素化反応が可能となり、均一性の高いCPVCを得ることができる。
【0083】
上記加熱のみで塩素化する場合は、70〜140℃の範囲であることが好ましい。温度が低すぎると、塩素化速度が低下する。温度が高すぎると、塩素化反応と並行して脱HCl反応が起こり、得られたCPVCが着色する。加熱温度は、100〜135℃の範囲であることがより好ましい。加熱方法は、特に限定されず、例えば、外部ジャケット方式で反応容器壁から加熱することができる。
【0084】
上記塩素化において、懸濁液にさらに過酸化水素を添加することが好ましい。過酸化水素を添加することにより、塩素化の速度を向上させることができる。過酸化水素は、反応時間1時間毎に、PVCに対して5〜500ppmの量を添加することが好ましい。添加量が少なすぎると、塩素化の速度を向上させる効果が得られない。添加量が多すぎると、CPVCの熱安定性が低下する。
上記過酸化水素を添加する場合、塩素化速度が向上するため、加熱温度を比較的低くすることができる。例えば、65〜110℃の範囲であってよい。
【0085】
上記塩素化の際に、最終塩素含有量から5質量%手前に達した時点以降の塩素化を、塩素消費速度が0.010〜0.015kg/PVC−Kg・5minの範囲で行い、さらに、最終塩素含有量から3質量%手前に達した時点以降の塩素化を、塩素消費速度が0.005〜0.010kg/PVC−Kg・5minの範囲で行うことが好ましい。ここで、塩素消費速度とは、原料PVC1kgあたりの5分間の塩素消費量を指す。
上記方法で塩素化を行うことにより、塩素化状態の不均一性が少なく、熱安定性の優れたCPVCを得ることができる。
【0086】
本発明の成形用樹脂組成物を製造する方法では、次いで、上記塩素化塩化ビニル系樹脂に、重量平均分子量が50万〜500万のアクリル系樹脂からなるアクリル系加工助剤、耐衝撃改良剤を所定量添加して混合し、必要に応じて熱安定剤、酸化防止剤を添加する工程を行う。
上記熱安定剤及び酸化防止剤を混合する方法としては、特に限定されず、例えば、ホットブレンドによる方法、コールドブレンドによる方法等が挙げられる。
【0087】
以上述べたような本願発明の構成によれば、優れた熱安定性を有し、鉛、カドミウム、スズ等の重金属を含有しない成形用樹脂組成物を提供することができる。
更に、本発明の他の側面によれば、本発明の成形用樹脂組成物から成形された成形体が提供される。このような成形体もまた本発明の1つである。
上記成形の方法としては、従来公知の任意の成形方法が採用されてよく、例えば、押出成形法、射出成形法等が挙げられる。
【0088】
本発明の成形体は、本発明の成形用樹脂組成物と同様に重金属フリーであるため、環境に悪影響を与えないという優れた利点を有し、優れた熱安定性を有し、且つ、外観の状態が良好であるため、建築部材、管工機材、住宅資材等の用途に好適に用いることができる。
【0089】
本発明の成形体は、表面粗さ(Rmax)が、1.0μm以下であることが好ましい。
また、本発明の成形体は、外表面のろ波うねり中心線平均(WcA)が、5.0μm以下であることが好ましい。これにより、表面のムラが少なく、肉厚変動の小さい成形体となる。本発明では、表面粗さに加えて、ろ波うねり中心線平均が小さいことで、パイプ等に使用する場合、流水との摩擦が減少し流速を上げることができる。
なお、表面粗さ(Rmax)は、JIS B 0601に準拠した方法、ろ波うねり中心線平均(WcA)は、JIS B 0610に準拠した方法で測定することができる。
【発明の効果】
【0090】
本発明によれば、優れた熱安定性を有し、耐衝撃性及び表面平滑性の高い成形体を製造することが可能な成形用樹脂組成物、及び、成形用樹脂組成物を用いた成形体を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0091】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0092】
[実施例1]
(塩素化塩化ビニル系樹脂の作製)
内容積300Lのグラスライニング製反応容器に、イオン交換水200kgと重合度1000の塩化ビニル系樹脂56kgを投入した。混合物を撹拌し、反応容器にさらに水を添加して、混合物を水中に分散させた。次いで、減圧して反応容器内の酸素を除去すると共に、90℃に昇温した。
次に、反応容器内に塩素を、塩素分圧が0.4MPaになるように供給し、0.2質量%過酸化水素を1時間当たり1質量部(320ppm/時間)の割合で添加しながら、塩素化反応を行った。塩素化された塩化ビニル系樹脂の塩素含有量が61質量%になるまで反応を継続した。塩素化された塩化ビニル系樹脂の塩素含有量が61質量%(5質量%手前)に達した時に、0.2質量%過酸化水素の添加量を1時間当たり0.1質量部(200ppm/時間)に減少し、平均塩素消費速度が0.012kg/PVC−kg・5minになるように調整して塩素化を進めた。さらに、塩素含有量が63質量%(3質量%手前)に達した時に、0.2質量%過酸化水素の添加量を1時間当たり150ppm/時間に減少し、平均塩素消費速度が0.008kg/PVC−kg・5minになるように調整して塩素化を進めた。このようにして、塩素含有量が67.3質量%の塩素化塩化ビニル系樹脂を得た。なお、塩素化塩化ビニル系樹脂の塩素含有量は、JIS K 7229に準拠して測定した。
また、以下の方法を用いて塩素化塩化ビニル系樹脂のゲル化時間を測定した。
【0093】
(ゲル化時間測定)
塩素化塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、熱安定剤1.2質量部、ポリエチレン系滑剤1.0質量部、酸化ポリエチレン系滑剤0.5質量部、耐衝撃改質剤5.5質量部を加え、混合することでコンパウンドサンプルを作製した。なお、熱安定剤、ポリエチレン系滑剤、酸化ポリエチレン系滑剤、耐衝撃改質剤としては、以下のものを用いた。
熱安定剤(日東化成工業社製、TVS#1380)
ポリエチレン系滑剤(三井化学社製、Hiwax220MP)
酸化ポリエチレン系滑剤(Honeywell社製、A−C316A)
耐衝撃改質剤(カネカ社製、カネエースM−511)
次いで、ラボプラストミル(東洋精機社製、4C150)に温度180℃でコンパウンドサンプル59gを投入し、80秒間予熱した後、回転数30rpmにてロータ回転させ、モータートルクが最も上昇した際の時間をゲル化時間とした。
【0094】
(塩素化塩化ビニル系樹脂組成物の作製)
得られた塩素化塩化ビニル系樹脂(重合度:1000)100質量部に対して、アクリル系加工助剤としてポリメチルメタクリレート(三菱レイヨン社製、重量平均分子量:80万、ガラス転移温度75℃、溶融温度136℃)1.5質量部、耐衝撃改質剤5.5質量部を添加した。更に、熱安定剤1.5質量部、酸化防止剤としてペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕(ヒンダードフェノール系酸化防止剤、イルガノックス1010、BASF社製、200℃の加熱減量率1.0質量%)0.5質量部を添加し混合した。なお、耐衝撃改質剤としては、MBS−1(メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン共重合体、メチルメタクリレート成分含有量25質量%、ジエン成分量55質量%、平均粒子径0.3μm)樹脂(LG化学社製、ブタジエン単体のガラス転移温度−93℃)を用いた。また、熱安定剤(有機スズ安定剤)としては、ジメチルスズ ビス(2−エチルへキシルチオグリコレート)を用いた。
更に、ポリエチレン系滑剤(三井化学社製、Hiwax220MP)2.0質量部、脂肪酸エステル系滑剤(エメリーオレオケミカルズジャパン社製、LOXIOL G−32)0.3質量部、二酸化チタン(石原産業社製、TIPAQUE CR−90)6.0質量部を添加した。その後、スーパーミキサーで均一に混合して、塩素化塩化ビニル系樹脂組成物を得た。
【0095】
(押出成形体の作製)
得られた塩素化塩化ビニル系樹脂組成物を、直径50mmの2軸異方向コニカル押出機(長田製作所社製「SLM−50」)に供給し、樹脂温度209.8℃、背圧291.0kg/cm、押出量24.3kg/hrで内形20mm、厚さ3mmのパイプ状成形体を作製した。
【0096】
[実施例2〜14、比較例1〜6]
表1に記載した重量平均分子量(Mw)、溶融温度を有するポリメチルメタクリレート、耐衝撃改質剤を、表1に記載の添加量で使用した以外は、実施例1と同様に塩素化塩化ビニル系樹脂組成物及び押出成形体を作製した。なお、実施例11では、耐衝撃改質剤として、ABS(Galata Chemicals社製 Blendex338、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)樹脂を用いた。
また、実施例12、13では、ジメチルスズ ビス(2−エチルへキシルチオグリコレート)に代えて、ステアリン酸カルシウム及びステアリン酸亜鉛を用いた。
更に、実施例14では、MBS−1に代えて、MBS−2(メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン共重合体、メチルメタクリレート成分含有量25質量%、ジエン成分量40質量%、平均粒子径0.3μm)を用いた。
なお、押出成形時の条件については、表1に示すものに変更した。
【0097】
[実施例15]
表1に記載したゲル化時間を有する塩素化塩化ビニル系樹脂を使用した以外は、実施例1と同様に塩素化塩化ビニル系樹脂組成物及び押出成形体を作製した。
【0098】
<評価>
実施例及び比較例で得られた塩素化塩化ビニル系樹脂組成物及び成形体について以下の評価を行った。結果を表1に示した。
【0099】
[塩素化塩化ビニル系樹脂組成物の評価]
<機械物性(アイゾッド衝撃強度、引張強度、引張弾性率、熱変形温度)>
得られた塩素化塩化ビニル系樹脂組成物を2本の8インチロールに供給し、205℃で3分間混練して、厚さ1.0mmのシートを作製した。得られたシートを重ね合わせて、205℃のプレスで3分間予熱した後、4分間加圧して、厚さ3mmのプレス板を得た。得られたプレス板から、機械加工により試験片を切り出した。この試験片を用いて、ASTM D256に準拠してアイゾット衝撃強度を測定し、ASTM D638に準拠して引張強度及び引張弾性率を測定した。また、ASTM D648に準拠して負荷荷重186N/cmで熱変形温度を測定した。尚、熱変形温度は、得られたプレス板を90℃のギヤオーブンで、24時間アニール処理した後測定した。
【0100】
<ビカット軟化温度>
JIS K 7206:2016(プラスチック−熱可塑性プラスチック−ビカット軟化温度(VST)の求め方 B50法)に準拠した方法で、ビカット軟化温度を測定した。
【0101】
[成形体の評価]
<外観観察>
得られたパイプ状押出成形体の表面状態を目視で観察し、ヤケ(変色)の有無を評価した。
【0102】
<表面粗さ>
表面粗さ測定装置(東京精密社製、SURFCOM480A)を用い、JIS B 0601に準拠した方法で、表面粗さ(Rmax)を測定した。なお、測定条件は、評価長さ0.3mm、測定速度0.3mm/sec、カットオフ0.08mmとした。
【0103】
<ろ波うねり>
表面粗さ測定装置(東京精密社製、SURFCOM480A)を用い、JIS B 0610に準拠した方法で、外表面のろ波うねり中心線平均(ろ波中心うねり、WcA)を測定した。なお、測定条件は、評価長さ30mm、測定速度3mm/sec、カットオフ0.25〜8mmとした。
【0104】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明によれば、優れた熱安定性を有し、耐衝撃性及び表面平滑性の高い成形体を製造することが可能な成形用樹脂組成物、及び、成形用樹脂組成物を用いた成形体を提供できる。

【手続補正書】
【提出日】2019年2月27日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩素化塩化ビニル系樹脂と、アクリル系加工助剤と、耐衝撃改良剤とを含有する成形用樹脂組成物であって、
前記アクリル系加工助剤は、重量平均分子量が110万〜240万のアクリル系樹脂からなり、
前記塩素化塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、前記アクリル系加工助剤を0.2〜10質量部、前記耐衝撃改良剤を0.5〜8.0質量部含有する
ことを特徴とする成形用樹脂組成物。
【請求項2】
塩素化塩化ビニル系樹脂は、下記式(a)〜(c)に示す構成単位(a)〜(c)を有し、前記構成単位(a)、(b)及び(c)の合計モル数に対して、構成単位(a)の割合が17.5モル%以下、構成単位(b)の割合が46.0モル%以上、構成単位(c)の割合が37.0モル%以下であることを特徴とする請求項1記載の成形用樹脂組成物。
【化1】
【請求項3】
塩素化塩化ビニル系樹脂中の塩素含有量は、63〜72質量%であることを特徴とする請求項1又は2記載の成形用樹脂組成物。
【請求項4】
アクリル系樹脂は、メチル(メタ)アクリレートの重合体であることを特徴とする請求項1、2又は3記載の成形用樹脂組成物。
【請求項5】
耐衝撃改良剤は、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン共重合体である請求項1、2、3又は4記載の成形用樹脂組成物。
【請求項6】
耐衝撃改良剤とアクリル系加工助剤との比(耐衝撃改良剤/アクリル系加工助剤)が、7.0以下である請求項1、2、3、4又は5記載の成形用樹脂組成物。
【請求項7】
更に、熱安定剤を含有することを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6記載の成形用樹脂組成物。
【請求項8】
β−ジケトンを含まないことを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6又は7記載の成形用樹脂組成物。
【請求項9】
塩素化塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、熱安定剤を0.4〜10質量部含有することを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7又は8記載の成形用樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1、2、3、4、5、6、7、8又は9記載の成形用樹脂組成物から成形されてなることを特徴とする成形体。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
本発明は、塩素化塩化ビニル系樹脂と、アクリル系加工助剤と、耐衝撃改良剤とを含有する成形用樹脂組成物であって、前記アクリル系加工助剤は、重量平均分子量が110万〜240万のアクリル系樹脂からなり、前記塩素化塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、前記アクリル系加工助剤を0.2〜10質量部、前記耐衝撃改良剤を0.5〜8.0質量部含有する成形用樹脂組成物である。
以下に本発明を詳述する。



【手続補正書】
【提出日】2019年6月4日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩素化塩化ビニル系樹脂と、アクリル系加工助剤と、耐衝撃改良剤とを含有する成形用樹脂組成物であって、
前記アクリル系加工助剤は、重量平均分子量が110万〜240万、溶融温度が90〜150℃のアクリル系樹脂からなり、
前記塩素化塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、前記アクリル系加工助剤を0.2〜10質量部、前記耐衝撃改良剤を0.5〜8.0質量部含有する
ことを特徴とする成形用樹脂組成物。
【請求項2】
塩素化塩化ビニル系樹脂は、下記式(a)〜(c)に示す構成単位(a)〜(c)を有し、前記構成単位(a)、(b)及び(c)の合計モル数に対して、構成単位(a)の割合が17.5モル%以下、構成単位(b)の割合が46.0モル%以上、構成単位(c)の割合が37.0モル%以下であることを特徴とする請求項1記載の成形用樹脂組成物。
【化1】
【請求項3】
塩素化塩化ビニル系樹脂中の塩素含有量は、63〜72質量%であることを特徴とする請求項1又は2記載の成形用樹脂組成物。
【請求項4】
アクリル系樹脂は、メチル(メタ)アクリレートの重合体であることを特徴とする請求項1、2又は3記載の成形用樹脂組成物。
【請求項5】
耐衝撃改良剤は、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン共重合体である請求項1、2、3又は4記載の成形用樹脂組成物。
【請求項6】
耐衝撃改良剤とアクリル系加工助剤との比(耐衝撃改良剤/アクリル系加工助剤)が、7.0以下である請求項1、2、3、4又は5記載の成形用樹脂組成物。
【請求項7】
更に、熱安定剤を含有することを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6記載の成形用樹脂組成物。
【請求項8】
β−ジケトンを含まないことを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6又は7記載の成形用樹脂組成物。
【請求項9】
塩素化塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、熱安定剤を0.4〜10質量部含有することを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7又は8記載の成形用樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1、2、3、4、5、6、7、8又は9記載の成形用樹脂組成物から成形されてなることを特徴とする成形体。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
本発明は、塩素化塩化ビニル系樹脂と、アクリル系加工助剤と、耐衝撃改良剤とを含有する成形用樹脂組成物であって、前記アクリル系加工助剤は、重量平均分子量が110万〜240万、溶融温度が90〜150℃のアクリル系樹脂からなり、前記塩素化塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、前記アクリル系加工助剤を0.2〜10質量部、前記耐衝撃改良剤を0.5〜8.0質量部含有する成形用樹脂組成物である。
以下に本発明を詳述する。


【国際調査報告】