特表-19065748IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 積水化学工業株式会社の特許一覧
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2019年4月4日
【発行日】2019年11月14日
(54)【発明の名称】射出成形用樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/28 20060101AFI20191018BHJP
   C08L 27/06 20060101ALI20191018BHJP
   C08K 5/098 20060101ALI20191018BHJP
   B29C 45/00 20060101ALI20191018BHJP
【FI】
   C08L23/28
   C08L27/06
   C08K5/098
   B29C45/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】25
【出願番号】特願2018-557434(P2018-557434)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2018年9月26日
(11)【特許番号】特許第6589069号(P6589069)
(45)【特許公報発行日】2019年10月9日
(31)【優先権主張番号】特願2017-187164(P2017-187164)
(32)【優先日】2017年9月27日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000224949
【氏名又は名称】徳山積水工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷口 寛
(72)【発明者】
【氏名】増野 典和
(72)【発明者】
【氏名】後藤 司
(72)【発明者】
【氏名】望月 弘章
【テーマコード(参考)】
4F206
4J002
【Fターム(参考)】
4F206AA15
4F206AA45
4F206AB07
4F206JA07
4F206JL02
4J002BB241
4J002BD032
4J002EG036
4J002FD066
4J002GL00
(57)【要約】
本発明は、鉛、スズ等の重金属を使用せずに、優れた熱安定性、熱流動性を有し、耐水圧が高い成形体を製造することが可能な射出成形用樹脂組成物、及び、射出成形用樹脂組成物を用いた成形体を提供する。
本発明は、塩素化塩化ビニル系樹脂と、塩化ビニル系樹脂と、熱安定剤とを含有する射出成形用樹脂組成物であって、前記熱安定剤は、アルキルカルボン酸カルシウム及び亜鉛化合物を含有し、前記塩化ビニル系樹脂は、重合度が400〜1000であり、前記塩素化塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、塩化ビニル系樹脂を1〜30質量部含有する射出成形用樹脂組成物である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩素化塩化ビニル系樹脂と、塩化ビニル系樹脂と、熱安定剤とを含有する射出成形用樹脂組成物であって、
前記熱安定剤は、アルキルカルボン酸カルシウム及び亜鉛化合物を含有し、
前記塩化ビニル系樹脂は、重合度が400〜1000であり、
前記塩素化塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、塩化ビニル系樹脂を1〜30質量部含有する
ことを特徴とする射出成形用樹脂組成物。
【請求項2】
塩素化塩化ビニル系樹脂は、下記式(a)〜(c)に示す構成単位(a)〜(c)を有し、下記構成単位(a)、(b)及び(c)の合計モル数に対して、構成単位(a)の割合が17.5モル%以下、構成単位(b)の割合が46.0モル%以上、構成単位(c)の割合が37.0モル%以下であることを特徴とする請求項1記載の射出成形用樹脂組成物。
【化1】
【請求項3】
塩素化塩化ビニル系樹脂は、重合度が500〜800であることを特徴とする請求項1又は2記載の射出成形用樹脂組成物。
【請求項4】
塩素化塩化ビニル系樹脂中の塩素含有量は、63〜72質量%であることを特徴とする請求項1、2又は3記載の射出成形用樹脂組成物。
【請求項5】
塩素化塩化ビニル系樹脂と塩化ビニル系樹脂との重合度の差が500以下であることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の射出成形用樹脂組成物。
【請求項6】
塩素化塩化ビニル系樹脂と塩化ビニル系樹脂の平均塩素含有量が65〜68質量%であることを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載の射出成形用樹脂組成物。
【請求項7】
塩素化塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、熱安定剤を0.4〜20質量部含有することを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6記載の射出成形用樹脂組成物。
【請求項8】
更に、酸化防止剤を含有することを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6又は7記載の射出成形用樹脂組成物。
【請求項9】
β−ジケトンを含まないことを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7又は8記載の射出成形用樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1、2、3、4、5、6、7、8又は9記載の射出成形用樹脂組成物から成形されてなることを特徴とする成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉛、スズ等の重金属を使用せずに、優れた熱安定性、熱流動性を有し、耐水圧が高い成形体を製造することが可能な射出成形用樹脂組成物、及び、射出成形用樹脂組成物を用いた成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
塩化ビニル系樹脂組成物は、例えば、建材等の樹脂成形体の材料として広く用いられている。塩化ビニル系樹脂組成物は、高温で加工される場合があるため、高い熱安定性を有することが要求される。また、成形体の熱安定性を得るためにも高い熱安定性を有する必要がある。更に、建材として用いられる樹脂成形体は色調が重要視されるため、塩化ビニル系樹脂組成物は耐着色性を有することも必要とされる。
これらの要求に対して、熱安定性や耐着色性等の種々の性能を向上させるため、塩化ビニル系樹脂には、溶融成形の前に熱安定剤が添加されることが一般的である。
【0003】
従来、熱安定剤としては、鉛、カドミウム、バリウム等の重金属を含有する熱安定剤が使用されている。しかしながら、重金属の毒性や環境に対する悪影響が問題となるに伴い、鉛などの毒性の強い金属を含有しない熱安定剤や樹脂成型品が提案されている。
例えば、特許文献1には、含ハロゲン樹脂に酸性白土及び/又は活性白土と、Ca1−x−y2+Al(OH)で表される水酸化カルシウム系化合物(M2+はMg,Zn,Cu等の2価金属、x及びyは、0≦x<0.4,0≦y<0.1の範囲にある)との複合物を含有する含ハロゲン樹脂組成物が開示されている。
【0004】
近年では環境保護、保全に対する関心がさらに高まったことにより、スズといった鉛よりも毒性の低い重金属さえも含有しない熱安定剤や樹脂成形体に対する要求が高まっている。これに対して、例えば、特許文献2には、含窒素環状有機化合物を含む安定剤組成物が開示されている。
しかしながら、このような安定剤組成物でも、成形品が着色し易く、着色を防止するため、高価な顔料や酸化チタンを多く添加しなければならないという問題点があった。
これらの重金属を含まない熱安定剤を用いた射出成形用樹脂組成物や成形体に対して、さらなる性能の改善が望まれていた。
【0005】
一方で、塩化ビニル系樹脂を塩素化した塩素化塩化ビニル系樹脂が知られている。
塩素化塩化ビニル系樹脂には、塩化ビニル系樹脂の難燃性、耐薬品性の特性を残しつつ、耐熱性を改良することが期待されているが、継手、バルブ製品等の射出成形品用途において、充分に満足し得る程度の耐衝撃性や表面外観性が発現しにくいという欠点がある。
このため、塩素化塩化ビニル系樹脂にメタクリル酸メチル−ブタジエン−スチレン共重合体や、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体等を耐衝撃強化剤として添加する方法が開示されている。
しかしながら、塩素化塩化ビニル樹脂にこれら強化剤を配合する場合、射出成形時の流動性が低下し、製造条件面での問題が生じていた。
また、流動性の改善を目的として、可塑剤等を用いる方法が行われているが、この方法では、得られる成形体の耐水圧の低下を招くといった課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−214466号公報
【特許文献2】特表2008−535997号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、鉛、スズ等の重金属を使用せずに、優れた熱安定性、熱流動性を有し、耐水圧が高い成形体を製造することが可能な射出成形用樹脂組成物、及び、射出成形用樹脂組成物を用いた成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、塩素化塩化ビニル系樹脂と、塩化ビニル系樹脂と、熱安定剤とを含有する射出成形用樹脂組成物であって、前記熱安定剤は、アルキルカルボン酸カルシウム及び亜鉛化合物を含有し、前記塩化ビニル系樹脂は、重合度が400〜1000であり、前記塩素化塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、塩化ビニル系樹脂を1〜30質量部含有する射出成形用樹脂組成物である。
以下に本発明を詳述する。
【0009】
上述した鉛、スズ等の重金属を使用しない熱安定剤を用いる方法としては、国際公開第2016/013638号に、アルキルカルボン酸カルシウム及び亜鉛化合物を使用する方法が記載されている。
しかしながら、このような熱安定剤を使用する場合でも、熱安定性が依然として低いという欠点があった。特に、射出成形に使用する場合は、より高度な熱安定性が必要とされていた。
本発明者らは、鋭意検討の結果、射出成形用樹脂組成物に使用する樹脂として、塩素化塩化ビニル系樹脂に加えて、重合度が規定範囲内の塩化ビニル系樹脂を所定量添加することで、鉛、スズ等の重金属を使用せずに、優れた熱安定性、熱流動性を有し、耐水圧が高い成形体を製造することが可能となることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
本発明の射出成形用樹脂組成物は、塩素化塩化ビニル系樹脂(以降、「CPVC」ともいう)を含有する。
上記塩素化塩化ビニル系樹脂とは、塩化ビニル系樹脂を塩素化することによって塩素の含有率を高くしたものである。なお、塩素化塩化ビニル系樹脂とは、塩素含有量が56.8質量%以上の塩化ビニル系樹脂をいう。
【0011】
上記CPVCは、下記式(a)〜(c)に示す構成単位(a)〜(c)を有し、下記構成単位(a)、(b)及び(c)の合計モル数に対して、構成単位(a)の割合が17.5モル%以下、構成単位(b)の割合が46.0モル%以上、構成単位(c)の割合が37.0モル%以下であることが好ましい。このようなCPVCは、熱安定性が高く、且つ、良好な成形加工性を有する。
【0012】
【化1】
【0013】
上記CPVCの構成単位(a)、(b)及び(c)のモル比は、塩化ビニル系樹脂(PVC)が塩素化される際の塩素が導入される部位を反映したものである。塩素化前のPVCは、理想的には、ほぼ、構成単位(a)が0モル%、構成単位(b)が50.0モル%、構成単位(c)が50.0モル%の状態にあるが、塩素化に伴って構成単位(c)が減少し、構成単位(b)及び構成単位(a)が増加する。この際、立体障害が大きく不安定な構成単位(a)が増えすぎたり、CPVCの同一粒子内で塩素化されている部位とされていない部位が偏ったりすると、塩素化状態の不均一性が大きくなる。この不均一性が大きくなると、CPVCの熱安定性が大きく損なわれる。
一方で、本発明では、上記CPVCの構成単位(a)、(b)及び(c)のモル比を上述の範囲内とすることで、CPVCの均一性が高くなり、良好な熱安定性を有する。
【0014】
本発明では、上記構成単位(a)、(b)及び(c)の合計モル数に対して、構成単位(a)の割合が17.5モル%以下であるが、上記構成単位(a)の割合は、16.0モル%以下が好ましい。また、2.0モル%以上であることが好ましい。
また、上記構成単位(a)、(b)及び(c)の合計モル数に対して、構成単位(b)の割合が46.0モル%以上であるが、上記構成単位(b)の割合は、53.5モル%以上が好ましい。また、70モル%以下であることが好ましい。
更に、上記構成単位(a)、(b)及び(c)の合計モル数に対して、構成単位(c)の割合が37.0モル%以下であるが、上記構成単位(c)の割合は、30.5モル%以下が好ましい。また、1.0モル%以上であることが好ましい。
【0015】
本発明では、特に、構成単位(b)の割合が58.0モル%以上であり、構成単位(c)の割合が35.8モル%以下であることが好ましい。このような構成によれば、より高い熱安定性が得られる。
【0016】
上記CPVCの構成単位(a)、(b)及び(c)のモル比は、NMRを用いた分子構造解析により測定することができる。NMR分析は、R.A.Komoroski,R.G.Parker,J.P.Shocker,Macromolecules,1985,18,1257−1265に記載の方法に準拠して行うことができる。
【0017】
上記CPVCの分子構造中における塩素化されていないPVC部分は下記式(d)に示す構成単位(d)で表すことができ、本明細書ではこれをVC単位と称する。
本発明で用いるCPVCは、分子構造中に含まれる4連子以上のVC単位の含有量が30.0モル%以下であることが好ましい。ここで、4連子以上のVC単位とは、VC単位が4個以上連続して結合している部分を意味する。
【0018】
【化2】
【0019】
上記CPVC中に存在するVC単位は脱HClの起点となり、かつ、このVC単位が連続していると、ジッパー反応と言われる連続した脱HCl反応が起こりやすくなってしまう。即ち、この4連子以上のVC単位の量が大きくなるほど、脱HClが起こり易く、CPVC中の熱安定性が低くなる。そのため、4連子以上のVC単位は、30.0モル%以下であることが好ましく、28.0モル%以下であることがより好ましい。CPVC中の塩素含有量が69質量%以上72質量%未満の場合、4連子以上のVC単位は18.0モル%以下であることが好ましく、16.0モル%以下であることがより好ましい。
上記分子構造中に含まれる4連子以上の塩化ビニル単位の含有率は、上記のNMRを用いた分子構造解析により測定することができる。
【0020】
上記CPVCは、塩素含有量が63〜72質量%であることが好ましい。
上記塩素含有量を63質量%以上とすることで、成形品としての耐熱性が充分なものとなり、72質量%以下とすることで、成形性が向上する。
上記塩素含有量は、66質量%以上であることがより好ましく、69質量%以下であることがより好ましい。
上記CPVC中の塩素含有量は、JIS K 7229に記載の方法により測定することができる。
【0021】
上記CPVCの重合度は、特に限定されず、500〜800であることが好ましい。
上記重合度を上述の範囲内とすることで、射出時の流動性と成型品の強度を両立することができる。
【0022】
上記CPVCは、216nmの波長におけるUV吸光度が8.0以下であることが好ましく、0.8以下であることがより好ましい。
また、紫外吸収スペクトルにおいて、216nmの波長は、CPVC中の異種構造である、−CH=CH−C(=O)−及び−CH=CH−CH=CH−が吸収を示す波長である。
上記CPVCのUV吸光度の値から、塩素化反応時の分子鎖中の異種構造を定量化し、熱安定性の指標とすることができる。CPVCの分子構造において、二重結合した炭素の隣の炭素に付いた塩素原子は不安定である。そのため、該塩素原子を起点として、脱HClが生じる。即ち、波長216nmにおけるUV吸光度の値が大きいほど脱HClが起こり易く、熱安定性が低いことになる。
【0023】
特に、上記CPVCの塩素含有量が63質量%以上69質量%未満の場合、UV吸光度の値が0.8以下であることが好ましい。UV吸光度の値が0.8を超えると、分子鎖中の異種構造の影響が大きくなり、その結果、熱安定性が低下することがある。
また、上記CPVCの塩素含有量が69質量%以上、72質量%以下である場合は、UV吸光度の値が8.0以下であることが好ましい。上記UV吸光度の値が8.0を超えると、分子鎖中の異種構造の影響が大きくなり、熱安定性が低下する。
【0024】
上記CPVCは、190℃における脱HCl量が7000ppmに到達するのに必要な時間は60秒以上であることが好ましく、100秒以上であることがより好ましい。
上記CPVCは高温で熱分解を起こし、その際にHClガスを発生する。一般に、CPVCはその塩素化度が高くなるにつれて、上述したVC単位が減少するため、脱HCl量が減少する傾向にある。しかし、塩素化度が高くなるにつれて、不均一な塩素化状態や異種構造が増加し、熱安定性が低下する。それ故、脱HCl量を測定することにより、不均一な塩素化状態や異種構造の増加を分析することができる。例えば、190℃における脱HCl量が7000ppmに到達するのに必要な時間を熱安定性の指標とすることができ、その時間が短いほど、熱安定性が低いと言える。
【0025】
特に、上記CPVCの塩素含有量が63質量%以上、69質量%未満である場合は、190℃における脱HCl量が7000ppmに到達するのに必要な時間は60秒以上であることが好ましい。該時間が60秒未満であると、熱安定性が大きく損なわれる。よって、該時間は60秒以上であることが好ましく、70秒以上であることがより好ましく、80秒以上であることが更に好ましい。
また、上記CPVCの塩素含有量が69質量%以上、72質量%以下である場合は、該時間は100秒以上であることが好ましい。該時間が100秒未満であると、熱安定性が大きく低下してしまうため、100秒以上であることが好ましく、120秒以上であることがより好ましく、140秒以上であることが更に好ましい。
上記190℃における脱HCl量が7000ppmに到達する時間は、以下のように測定することができる。まず、塩素化塩化ビニル樹脂1gを試験管に入れ、オイルバスを使用して190℃で加熱し、発生したHClガスを回収する。回収したHClガスを100mlのイオン交換水に溶解させてpHを測定する。pHの値に基づいて、HClの濃度(ppm)(即ち、塩素化塩化ビニル樹脂100万gあたり何gのHClが発生したか)を算出する。HClの濃度が7000ppmに到達する時間を計測する。
【0026】
本発明の射出成形用樹脂組成物は、塩化ビニル系樹脂(以降、「PVC」ともいう)を含有する。
上記塩化ビニル系樹脂を塩素化塩化ビニル系樹脂と併用することで、アルキルカルボン酸カルシウム及び亜鉛化合物を熱安定剤として用いた場合に、充分な熱安定性を付与することができ、射出成形においても好適に使用することができる。
本発明において、塩化ビニル系樹脂とは、上記式(d)に示す構成単位(d)を主に有する重合体である。具体的には、構成単位(d)の割合が51〜100モル%であることが好ましい。
【0027】
上記PVCとしては、塩化ビニル単独重合体のほか、塩化ビニルモノマーと共重合可能な不飽和結合を有するモノマーと塩化ビニルモノマーとの共重合体、重合体に塩化ビニルモノマーをグラフト共重合したグラフト共重合体等を用いることができる。これら重合体は単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0028】
上記塩化ビニルモノマーと共重合可能な不飽和結合を有するモノマーとしては、例えば、α−オレフィン類、ビニルエステル類、ビニルエーテル類、(メタ)アクリル酸エステル類、芳香族ビニル類、ハロゲン化ビニル類、N−置換マレイミド類等が挙げられ、これらの1種若しくは2種以上が使用される。
上記α−オレフィン類としては、エチレン、プロピレン、ブチレン等が挙げられ、上記ビニルエステル類としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等が挙げられ、上記ビニルエーテル類としては、ブチルビニルエーテル、セチルビニルエーテル等が挙げられる。
また、上記(メタ)アクリル酸エステル類としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチルアクリレート、フェニルメタクリレート等が挙げられ、上記芳香族ビニル類としては、スチレン、α−メチルスチレン等が挙げられる。
更に、上記ハロゲン化ビニル類としては、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン等が挙げられ、上記N−置換マレイミド類としては、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等が挙げられる。
なかでも、エチレン、酢酸ビニルが好ましい。
【0029】
上記塩化ビニルをグラフト共重合する重合体としては、塩化ビニルをグラフト重合させるものであれば特に限定されない。このような重合体としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル−一酸化炭素共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−ブチルアクリレート−一酸化炭素共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体、エチレン−プロピレン共重合体等が挙げられる。また、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ポリウレタン、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等が挙げられ、これらは単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されても良い。
上記PVCの重合方法は、特に限定されず、従来公知の水懸濁重合、塊状重合、溶液重合、乳化重合等を用いることができる。
【0030】
上記PVCは、塩素含有量が56.8質量%未満である。
上記塩素含有量を上記範囲内とすることで、成形性が向上するとともに、成形品としての耐熱性が高くなる。好ましくは36.8〜56.7質量%である。
また、塩素化塩化ビニル系樹脂と塩化ビニル系樹脂の平均塩素含有量は65〜68質量%であることが好ましい。このような範囲とすることで、耐熱性と成形性を確保することができる。
なお、塩素化塩化ビニル系樹脂と塩化ビニル系樹脂の平均塩素含有量とは、塩素化塩化ビニル系樹脂の塩素含有量と、塩化ビニル系樹脂の塩素含有量のそれぞれに、含有比率を掛けた後、合計したものである。
【0031】
上記PVCの重合度は400〜1000である。上記範囲内とすることで、流動性と製品強度の両方を満足する製品とすることができる。上記PVCの重合度の好ましい下限は500、好ましい上限は800である。
【0032】
上記塩素化塩化ビニル系樹脂と塩化ビニル系樹脂との重合度の差は500以下であることが好ましい。上記重合度の差を上述の範囲内とすることで、流動性と製品強度の両方を満足する製品とすることができる。より好ましくは300以下である。
【0033】
本発明の射出成形用樹脂組成物において、上記塩化ビニル系樹脂の含有量は、塩素化塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、好ましい下限が1質量部、好ましい上限が30質量部である。この範囲で塩化ビニル系樹脂を添加することにより、熱安定性をより向上させることができるとともに、成形体の良好な外観を維持することができる。
上記塩化ビニル系樹脂の含有量のより好ましい下限は5質量部、より好ましい上限は20質量部である。
また、本発明の射出成形用樹脂組成物全体に対する上記塩化ビニル系樹脂の含有量は、2〜18質量%であることが好ましい。
【0034】
本発明において、上記熱安定剤は、アルキルカルボン酸カルシウム及び亜鉛化合物を含有するものである。上記熱安定剤は、重金属を含まないことから、重金属フリーの成形用組成物が得られる。
上記熱安定剤は、アルキルカルボン酸カルシウム及び亜鉛化合物を含有する。
このような熱安定剤を用いた場合、塩素化塩化ビニル系樹脂の熱分解で生成した塩酸が、直ちに亜鉛化合物と反応して塩化亜鉛となる。また、塩素化塩化ビニル系樹脂の脱塩酸により生成したポリエンの成長がアルキルカルボン酸カルシウムとの結合で停止されて発色が抑えられる。
一方で、生成した塩化亜鉛は、塩素化塩化ビニル系樹脂の熱分解を促進させる性質があるが、本発明では、塩化亜鉛がアルキルカルボン酸カルシウムと反応して塩化カルシウムとアルキルカルボン酸亜鉛が生成される。その結果、上記熱安定剤は、亜鉛化合物の迅速な塩酸捕捉作用を生かしながら、塩化亜鉛の熱分解促進作用が抑制されるため、顕著な相乗効果を有する。
【0035】
上記アルキルカルボン酸カルシウムとしては、例えば、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、シクロヘキシルプロピオン酸、ノナン酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、モンタン酸等のカルシウム塩が挙げられる。
なかでも、炭素数8〜28のアルキルカルボン酸カルシウムを用いることが好ましい。
【0036】
上記亜鉛化合物としては、無機亜鉛化合物又は有機亜鉛化合物が挙げられる。
上記無機亜鉛化合物としては、例えば、亜鉛の炭酸塩、塩化物、硫酸塩、酸化物、水酸化物、塩基性酸化物及び混合酸化物からなる系統からの化合物等が挙げられる。
【0037】
上記有機亜鉛化合物としては、例えば、ジ及び/又はモノアルキル亜鉛等のアルキル亜鉛化合物、有機脂肪族カルボン酸亜鉛、非置換又は置換有機芳香族カルボン酸亜鉛、有機亜燐酸亜鉛、置換又は非置換フェノール亜鉛、アミノ酸及びその誘導体亜鉛、有機メルカプタン亜鉛等を挙げることができる。
【0038】
上記有機脂肪族カルボン酸亜鉛を構成する有機脂肪族カルボン酸としては、例えば、モンタン酸、コメ糠脂肪酸、ベヘン酸、エルシン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、コメ脂肪酸、リシノレイン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、低級脂肪酸、オクチル酸、イソステアリン酸、ダイマー酸、ナフテン酸、酢酸等が挙げられる。また、アゼライン酸及びそのモノエステル、セバチン酸及びそのモノエステル、アジピン酸及びそのモノエステル、コハク酸及びそのモノエステル、マロン酸及びそのモノエステル、マレイン酸及びそのモノエステル、クロトン酸及びそのモノエステル等が挙げられる。更に、リンゴ酸及びそのモノエステル、酒石酸及びそのモノエステル、クエン酸及びそのモノエステル又はジエステル、乳酸、グリコール酸、チオジプロピオン酸及びそのモノエステル等が挙げられる。
【0039】
上記非置換又は置換有機芳香族カルボン酸亜鉛を構成する無置換又は置換芳香族カルボン酸としては、例えば、安息香酸、o−,m−及びp−トルイル酸、p−第3級ブチル安息香酸、p−ヒドロキシ安息香酸、サルチル酸、多塩基酸のフタル酸、メタフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸等及びそれらのモノエステル又はジエステル等が挙げられる。
【0040】
上記有機亜燐酸亜鉛を構成する有機亜燐酸としては、例えば、脂肪族アルコールと五酸化燐との反応物であるアシッドホスファイト等を挙げることができる。具体的には、ブチルアシッドホスファイト、オクチルアシッドホスファイト、ステアリルアシッドホスファイト、ベヘニルアシッドホスファイト等が挙げられる。
【0041】
上記置換又は非置換フェノール亜鉛を構成する置換又は非置換フェノールとしては、例えば、フェノール、クレゾール、キシロール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、ジノニルフェノール、シクロヘキシルフェノール、フェニルフェノールが挙げられる。また、上記置換又は非置換フェノールとしては、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールF、p−ヒドロキシ安息香酸のエステル、サルチル酸のエステル等を挙げることができる。
【0042】
上記アミノ酸及びその誘導体としては、例えば、焼成グルタミン酸、グリシン、アラニン等を挙げることができる。
【0043】
上記有機メルカプタン亜鉛を構成する有機メルカプタンとしては、例えば、ラウリルメルカプタン、チオグリコール酸及びそのエステル、メルカプトプロピオン酸及びそのエステル、チオリンゴ酸よびそのモノエステル又はジエステル等を挙げることができる。
【0044】
上記熱安定剤は、アルキルカルボン酸カルシウム及び亜鉛化合物を含有するものであるが、上記アルキルカルボン酸カルシウム及び亜鉛化合物の混合物であることが好ましい。
上記熱安定剤の形態としては、例えば、粉末、粒状物等が挙げられる。このような形態とすることで、ワンパックの熱安定剤として使用することができる。
上記熱安定剤が粉粒体である場合、その粒度は目的に応じて任意に調節することができ、一般に平均粒子径が50μm〜5mmであることが好ましく、特に70μm〜2mmであることが好ましい。
上記粒状物の熱安定剤を製造する方法としては、例えば、押出成形造粒法、噴霧造粒法、回転円盤造粒法、転動造粒法、圧縮造粒法等のそれ自体公知の造粒法を用いることができる。
【0045】
上記熱安定剤は、230℃における加熱減量率が5質量%未満であることが好ましい。
上記230℃における加熱減量率が5質量%以上であると、成形品内部に気泡が含まれることで強度不足になったり、表面近傍に筋状の模様が発生し外観不良が生じたりすることがある。
上記230℃における加熱減量率は、3質量%未満であることがより好ましい。
下限については特に限定されないが0.1質量%が好ましい。
なお、上記230℃における加熱減量率は、熱重量測定(TG)装置によって測定することができる。
【0046】
上記熱安定剤は、アルキルカルボン酸カルシウム及び亜鉛化合物を含有するものであるが、上記、アルキルカルボン酸カルシウムと亜鉛化合物との混合比(アルキルカルボン酸カルシウム:亜鉛化合物)は、9:1〜4:6であることが好ましい。また、上記混合比は、8:2〜5:5であることがより好ましい。
【0047】
本発明の射出成形用樹脂組成物において、上記熱安定剤の含有量は、塩素化塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、0.4〜20質量部であることが好ましく、1〜10質量部の範囲であることがより好ましい。この範囲で熱安定剤を含むことにより、熱安定性をより向上させることができるとともに、成形体の良好な外観を維持することができる。
【0048】
本発明によれば、上記熱安定剤を使用することで、重金属フリーの射出成形用樹脂組成物が得られる。本明細書において、重金属とは密度の大きい金属を意味し、一般に密度4〜5g/cm以上の金属を指す。重金属フリーとは、重金属の含有量が1000ppm以下であることを意味する。なお、上記重金属の含有量は、100ppm以下であることが好ましい。
【0049】
上記重金属としては、スカンジウム以外の遷移金属が挙げられ、例えば、Mn、Ni、Fe、Cr、Co、Cu、Au等が挙げられる。また、第4周期以下のp−ブロック元素の金属(例えばSn、Pb、Bi)、Cd、Hg等も含まれる。
【0050】
本発明の射出成形用樹脂組成物は、更に、酸化防止剤を含有することが好ましい。
上記酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、リン酸系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤等を用いることができる。これらは、単独で使用しても良く、二種以上を併用しても良い。なかでも、フェノール系酸化防止剤が好ましく、特にヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましい。
【0051】
上記ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、2,6−ジフェニル−4−オクタデシロキシフェノール、ステアリル(3,5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ジステアリル(3,5−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ホスホネート、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、ビス〔3,3−ビス(4−ヒドロキシ−3−t−ブチルフェニル)ブチリックアシッド〕グリコールエステル、4,4’−ブチリデンビス(6−t−ブチル−m−クレゾール)、2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェノール)、2,2’−エチリデンビス(4−sec−ブチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、ビス〔2−t−ブチル−4−メチル−6−(2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−メチルベンジル)フェニル〕テレフタレート、1,3,5−トリス(2,6−ジメチル−3−ヒドロキシ−4−t−ブチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2,4,6−トリメチルベンゼン、1,3,5−トリス〔(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル〕イソシアヌレート、ペンタエリスリチル−テトラキス〔メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2−t−ブチル−4−メチル−6−(2’−アクリロイルオキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルベンジル)フェノール、3,9−ビス(1’,1’−ジメチル−2’−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン、ビスβ−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート等が挙げられる。これらのうちでは、1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、ペンタエリスリチル−テトラキス〔メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕等が好ましい。これらは単独でも2種以上混合しても用いることができる。
【0052】
上記酸化防止剤は、200℃における加熱減量率が5質量%未満であることが好ましい。
上記200℃における加熱減量率が5質量%以上であると、成形品内部に気泡が含まれて強度不足になったり、表面近傍に筋状の模様が発生し外観不良が生じたりすることがある。
なお、上記200℃における加熱減量率は3質量%未満であることがより好ましい。
【0053】
上記本発明の射出成形用樹脂組成物において、上記酸化防止剤の含有量は、塩素化塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、0.1〜3質量部であることが好ましく、0.2〜2.5質量部の範囲であることがより好ましい。この範囲で酸化防止剤を含むことにより、黄変による着色の少ない成形品を得ることができる。
【0054】
本発明の射出成形用樹脂組成物は、更に、安定化助剤を含むことが好ましい。上記安定化助剤を含むことにより、熱安定性をより向上させることができる。
上記安定化助剤としては、重金属を含まないものを用いることができる。例として、有機酸塩、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ豆油エポキシ化テトラヒドロフタレート、エポキシ化ポリブタジエン等のエポキシ化合物、有機リン化合物、亜リン酸エステル、リン酸エステル、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム等の金属水酸化物等が挙げられる。また、上記安定化助剤としては、アジピン酸ナトリウム、ビスフェノールA型エポキシ化合物、グリシジル(メタ)アクリレート共重合体、オキセタニル化合物、ビニルエーテル化合物及びゼオライト化合物が挙げられる。これらは単独で使用しても良く、2種以上を併用してもよい。なお、上記安定化助剤は、アルキルカルボン酸カルシウム及び亜鉛化合物とは異なるものである。
また、上記安定化助剤は、200℃における加熱減量率が5質量%未満であることが好ましい。
【0055】
本発明の射出成形用樹脂組成物は、必要に応じて、滑剤、加工助剤、衝撃改質剤、耐熱向上剤、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤、熱可塑性エラストマー、顔料などの添加剤を混合してもよい。
【0056】
上記滑剤としては、内部滑剤、外部滑剤が挙げられる。内部滑剤は、成形加工時の溶融樹脂の流動粘度を下げ、摩擦発熱を防止する目的で使用される。上記内部滑剤としては特に限定されず、例えば、ブチルステアレート、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、グリセリンモノステアレート、ステアリン酸、ビスアミド等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
上記滑剤は、200℃における加熱減量率が5質量%未満であることが好ましい。
【0057】
上記外部滑剤は、成形加工時の溶融樹脂と金属面との滑り効果を上げる目的で使用される。上記外部滑剤としては特に限定されず、例えば、パラフィンワックス、ポリエチレン系滑剤等のポリオレフィンワックス、脂肪酸エステル系滑剤等のエステルワックス、モンタン酸ワックス等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0058】
上記加工助剤としては、特に限定されず、例えば質量平均分子量10万〜200万のアルキルアクリレート−アルキルメタクリレート共重合体等のアクリル系加工助剤などが挙げられる。上記アクリル系加工助剤としては特に限定されず、例えば、n−ブチルアクリレート−メチルメタクリレート共重合体、2−エチルヘキシルアクリレート−メチルメタクリレート−ブチルメタクリレート共重合体等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
上記加工助剤は、200℃における加熱減量率が5質量%未満であることが好ましい。
【0059】
上記衝撃改質剤としては特に限定されず、例えばメタクリル酸メチル−ブタジエン−スチレン共重合体(MBS)、塩素化ポリエチレン、アクリルゴムなどが挙げられる。
上記耐熱向上剤としては特に限定されず、例えばα−メチルスチレン系、N−フェニルマレイミド系樹脂等が挙げられる。
上記光安定剤としては特に限定されず、例えば、ヒンダードアミン系等の光安定剤等が挙げられる。
【0060】
上記紫外線吸収剤としては特に限定されず、例えば、サリチル酸エステル系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系等の紫外線吸収剤等が挙げられる。
上記顔料としては特に限定されず、例えば、アゾ系、フタロシアニン系、スレン系、染料レーキ系等の有機顔料;二酸化チタン等の酸化物系、硫化物・セレン化物系、フェロシアニン化物系などの無機顔料などが挙げられる。
【0061】
本発明の射出成形用樹脂組成物には成形時の加工性を向上させる目的で、可塑剤が添加されていてもよいが、成形体の熱安定性を低下させることがあるため、多量に使用することはあまり好ましくない。上記可塑剤としては特に限定されず、例えば、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルアジペート等が挙げられる。
【0062】
本発明の射出成形用樹脂組成物には施工性を向上させる目的で、熱可塑性エラストマーが添加されていてもよい。上記熱可塑性エラストマーとしては、特に限定されず、例えば、アクリルニトリル−ブタジエン共重合体(NBR)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−酢酸ビニル−一酸化炭素共重合体(EVACO)等の共重合体が挙げられる。また、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。上記塩化ビニル系熱可塑性エラストマーとしては、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体等が挙げられる。
これらの熱可塑性エラストマーは、単独で用いられてもよいし、2種類以上が併用されてもよい。
【0063】
本発明の射出成形用樹脂組成物は、β−ジケトンを含まないことが好ましい。β−ジケトンは、熱安定性を向上させるために従来の熱安定剤に配合されている成分である。しかしながら、β−ジケトンを含む熱安定剤を用いた場合、樹脂組成物を押出成形や射出成形により成形して成形体を製造する際に、成形体の外観が損なわれやすい。例えば、成形体の表面に、樹脂の流れ方向に平行な太さ0.1〜1mm程度の黄色〜赤褐色のすじが発生する。このように外観が損なわれた成形体は不良品となる。特に長時間使用したダイスを用いた場合に、このような不良品が発生しやすい。しかしながら、本発明によれば、β−ジケトンを含む熱安定剤を用いることなく、優れた熱安定性を有する射出成形用樹脂組成物を提供することができる。
【0064】
本発明の射出成形用樹脂組成物は、230℃における加熱減量率が2.0質量%未満であることが好ましい。
上記230℃における加熱減量率が2.0質量%以上であると、成形品内部に気泡が含まれることで強度不足になったり、表面近傍に筋状の模様が発生し外観不良が生じたりする。
上記230℃における加熱減量率は、1.0質量%未満であることがより好ましい。
下限については特に限定されないが0.1質量%が好ましい。
なお、上記230℃における加熱減量率は、熱重量測定(TG)装置によって測定することができる。
【0065】
本発明の射出成形用樹脂組成物を製造する方法としては、例えば、塩素化塩化ビニル系樹脂を調製する工程と、上記塩素化塩化ビニル系樹脂に、塩化ビニル系樹脂、熱安定剤を添加して混合する工程とを有する方法を用いることができる。上記塩素化塩化ビニル系樹脂を調製する工程としては、反応容器中において、塩化ビニル系樹脂を水性媒体に懸濁して懸濁液を調製し、上記反応容器内に塩素を導入し、従来公知の任意の方法で上記塩化ビニル系樹脂を塩素化する方法を用いることができる。
なお、上記塩素化する工程において、塩素化塩化ビニル系樹脂の一部を塩素化することで、塩素化塩化ビニル系樹脂と塩化ビニル系樹脂を併存させる状態としてもよい。
【0066】
上記塩素化塩化ビニル系樹脂を調製する工程において、用いる反応容器としては、例えば、グラスライニングが施されたステンレス製反応容器、チタン製反応容器等の一般に使用されている容器を使用することができる。
【0067】
上記塩化ビニル系樹脂を水性媒体に懸濁して懸濁液を調製する方法は、特に限定されず、重合後のPVCを脱モノマー処理したケーキ状のPVCを用いてもよいし、乾燥させたものを再度、水性媒体で懸濁化してもよく、又は、重合系中より、塩素化反応に好ましくない物質を除去した懸濁液を使用してもよい。なかでも、重合後のPVCを脱モノマー処理したケーキ状の樹脂を用いることが好ましい。
【0068】
上記水性媒体としては、例えば、イオン交換処理された純水を用いることができる。水性媒体の量は、特に限定されないが、一般にPVCの100質量部に対して150〜400質量部が好ましい。
【0069】
上記反応容器内に導入する塩素は、液体塩素及び気体塩素のいずれであってもよい。短時間に多量の塩素を仕込めるため、液体塩素を用いることが効率的である。圧力を調整するためや塩素を補給するために、反応途中に塩素を追加してもよい。このとき、液体塩素の他に気体塩素を適宜吹き込むこともできる。ボンベ塩素の5〜10質量%をパージした後の塩素を用いるのが好ましい。
【0070】
上記反応容器内のゲージ圧力は、特に限定されないが、塩素圧力が高いほど塩素がPVC粒子の内部に浸透し易いため、0.3〜2MPaの範囲が好ましい。
【0071】
上記懸濁した状態でPVCを塩素化する方法は、特に限定されず、例えば、熱エネルギーによりPVCの結合や塩素を励起させて塩素化を促進する方法(以下、熱塩素化という)、紫外光線等の光エネルギーを照射して光反応的に塩素化を促進する方法(以下、光塩素化という)等が挙げられる。熱エネルギーにより塩素化する際の加熱方法は、特に限定されず、例えば、反応器壁からの外部ジャケット方式による加熱が効果的である。また、紫外光線等の光エネルギーを使用する場合は、高温、高圧下の条件下での紫外線照射等の光エネルギー照射が可能な装置が必要である。光塩素化の場合の塩素化反応温度は、40〜80℃が好ましい。
【0072】
上記塩素化方法の中では、紫外線照射を行わない熱塩素方法が好ましく、熱のみ又は熱及び過酸化水素により塩化ビニル系樹脂の結合や塩素を励起させ塩素化反応を促進する方法が好ましい。
上記光エネルギーによる塩素化反応の場合、PVCが塩素化されるのに必要な光エネルギーの大きさは、PVCと光源との距離に大きく影響を受ける。そのため、PVC粒子の表面と内部とでは、受けるエネルギー量が相違し、塩素化が均一に生じない。その結果、均一性の低いCPVCが得られる。一方、紫外線照射を行わず、熱により塩素化する方法では、より均一な塩素化反応が可能となり、均一性の高いCPVCを得ることができる。
【0073】
上記加熱のみで塩素化する場合は、70〜140℃の範囲であることが好ましい。温度が低すぎると、塩素化速度が低下する。温度が高すぎると、塩素化反応と並行して脱HCl反応が起こり、得られたCPVCが着色する。加熱温度は、100〜135℃の範囲であることがより好ましい。加熱方法は、特に限定されず、例えば、外部ジャケット方式で反応容器壁から加熱することができる。
【0074】
上記塩素化において、懸濁液にさらに過酸化水素を添加することが好ましい。過酸化水素を添加することにより、塩素化の速度を向上させることができる。過酸化水素は、反応時間1時間毎に、PVCに対して5〜500ppmの量を添加することが好ましい。添加量が少なすぎると、塩素化の速度を向上させる効果が得られない。添加量が多すぎると、CPVCの熱安定性が低下する。
上記過酸化水素を添加する場合、塩素化速度が向上するため、加熱温度を比較的低くすることができる。例えば、65〜110℃の範囲であってよい。
【0075】
上記塩素化の際に、最終塩素含有量から5質量%手前に達した時点以降の塩素化を、塩素消費速度が0.010〜0.015kg/PVC−Kg・5minの範囲で行い、さらに、最終塩素含有量から3質量%手前に達した時点以降の塩素化を、塩素消費速度が0.005〜0.010kg/PVC−Kg・5minの範囲で行うことが好ましい。ここで、塩素消費速度とは、原料PVC1kgあたりの5分間の塩素消費量を指す。
上記方法で塩素化を行うことにより、塩素化状態の不均一性が少なく、熱安定性の優れたCPVCを得ることができる。
【0076】
本発明の射出成形用樹脂組成物を製造する方法では、次いで、上記塩素化塩化ビニル系樹脂に、塩化ビニル系樹脂、熱安定剤、及び、必要に応じて酸化防止剤を添加して混合する工程を行う。
上記熱安定剤及び酸化防止剤を混合する方法としては、特に限定されず、例えば、ホットブレンドによる方法、コールドブレンドによる方法等が挙げられる。
【0077】
以上述べたような本願発明の構成によれば、優れた熱安定性を有し、鉛、カドミウム、スズ等の重金属を含有しない射出成形用樹脂組成物を提供することができる。
更に、本発明の他の側面によれば、本発明の射出成形用樹脂組成物から成形された成形体が提供される。このような成形体もまた本発明の1つである。
上記射出成形の方法としては、従来公知の任意の成形方法が採用されてよく、例えば、一般的な射出成形法、射出発泡成形法、超臨界射出発泡成形法、超高速射出成形法、射出圧縮成形法、ガスアシスト射出成形法、サンドイッチ成形法、サンドイッチ発泡成形法、インサート・アウトサート成形法等の方法が挙げられる。
【0078】
本発明の成形体は、本発明の射出成形用樹脂組成物と同様に重金属フリーであるため、環境に悪影響を与えないという優れた利点を有し、優れた熱安定性を有し、且つ、外観の状態が良好であるため、建築部材、管工機材、住宅資材等の用途に好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0079】
本発明によれば、鉛、スズ等の重金属を使用せずに、優れた熱安定性、熱流動性を有し、耐水圧が高い成形体を製造することが可能な射出成形用樹脂組成物、及び、射出成形用樹脂組成物を用いた成形体を提供できる。
また、本発明を用いることで、射出成形時の溶融性を大幅に改善して優れたプロセス特性を得ることができる。更に、本発明を用いることで、得られる成形品のヤケやシルバーストリーク等の不具合を効果的に防止することができる。加えて、ウェルドラインの発生を低減することで、外観不良、応力集中による強度低下を防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0080】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0081】
[実施例1]
(塩素化塩化ビニル樹脂の作製)
内容積300Lのグラスライニング製反応容器に、イオン交換水200kgと平均重合度700の塩化ビニル樹脂56kgを投入した。混合物を撹拌し、反応容器にさらに水を添加して、混合物を水中に分散させた。次いで、減圧して反応容器内の酸素を除去すると共に、90℃に昇温した。
次に、反応容器内に塩素を、塩素分圧が0.4MPaになるように供給し、0.2質量%過酸化水素を1時間当たり1質量部(320ppm/時間)の割合で添加しながら、塩素化反応を行った。塩素化された塩化ビニル樹脂の塩素含有量が67.3質量%になるまで反応を継続した。塩素化された塩化ビニル樹脂の塩素含有量が62.3質量%(5質量%手前)に達した時に、0.2質量%過酸化水素の添加量を1時間当たり0.1質量部(200ppm/時間)に減少し、平均塩素消費速度が0.012kg/PVC−kg・5minになるように調整して塩素化を進めた。さらに、塩素含有量が65.3質量%(3質量%手前)に達した時に、0.2質量%過酸化水素の添加量を1時間当たり150ppm/時間に減少し、平均塩素消費速度が0.008kg/PVC−kg・5minになるように調整して塩素化を進めた。このようにして、塩素含有量が67.3質量%の塩素化塩化ビニル樹脂を得た。なお、塩素含有量は、JIS K 7229に準拠して測定を行った。
【0082】
(射出成形用樹脂組成物の作製)
得られた塩素化塩化ビニル樹脂(重合度:700)100質量部に対して、塩化ビニル樹脂(塩素含有量:56.7質量%、重合度:700)7質量部、熱安定剤4質量部、酸化防止剤0.5質量部を添加し混合した。なお、熱安定剤としては、ステアリン酸カルシウム2.0質量部と、ステアリン酸亜鉛2.0質量部を用いた。また、酸化防止剤としては、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕(ヒンダードフェノール系酸化防止剤、イルガノックス1010、BASF社製、200℃の加熱減量率1.0質量%)を用いた。
更に、衝撃改質剤5.0質量部、ポリエチレン系滑剤(三井化学社製、Hiwax220MP)2.0質量部、脂肪酸エステル系滑剤(エメリーオレオケミカルズジャパン社製、LOXIOL G−32)0.3質量部、二酸化チタン(石原産業社製、TIPAQUE CR−90)5.0質量部を添加した。なお、衝撃改質剤としては、MBS(メタクリルブタジエンスチレン)樹脂(カネカ社製、カネエース M−511)を用いた。その後、スーパーミキサーで均一に混合して、射出成形用樹脂組成物を得た。
【0083】
(射出成形体の作製)
得られた射出成形用樹脂組成物を、直径30mmの2軸異方向コニカル押出機(長田製作所社製「OSC−30」)に供給し、樹脂温度190℃でペレットを作製した。
得られたペレットを射出成形機(日新製鋼社製「J100E−C5」)に供給し、ノズルからパージした際の樹脂温度230℃で、呼び径25mmのソケット状射出成形体を作製した。
【0084】
[実施例2]
塩化ビニル樹脂の添加量を3質量部に変更した以外は、実施例1と同様に射出成形用樹脂組成物及び射出成形体を作製した。
【0085】
[実施例3]
塩化ビニル樹脂の添加量を25質量部に変更した以外は、実施例1と同様に射出成形用樹脂組成物及び射出成形体を作製した。
【0086】
[実施例4]
塩化ビニル樹脂を塩化ビニル樹脂(塩素含有量:56.7質量%、重合度:1000)に変更した以外は、実施例1と同様に塩素化塩化ビニル樹脂、射出成形用樹脂組成物及び押出成形体を作製した。
【0087】
[実施例5]
塩化ビニル樹脂の添加量を18質量部に変更した以外は、実施例1と同様に射出成形用樹脂組成物及び射出成形体を作製した。
【0088】
[実施例6]
塩素化塩化ビニル樹脂を塩素化塩化ビニル樹脂(塩素含有量:67.3質量%、重合度:600)に変更した以外は、実施例1と同様に射出成形用樹脂組成物及び押出成形体を作製した。
【0089】
[実施例7]
塩素化塩化ビニル樹脂を塩素化塩化ビニル樹脂(塩素含有量:67.3質量%、重合度:500)に変更した以外は、実施例1と同様に射出成形用樹脂組成物及び押出成形体を作製した。
【0090】
[実施例8]
塩化ビニル樹脂を塩化ビニル樹脂(塩素含有量:56.7質量%、重合度:500)に変更した以外は、実施例1と同様に塩素化塩化ビニル樹脂、射出成形用樹脂組成物及び押出成形体を作製した。
【0091】
[比較例1]
塩化ビニル樹脂を添加せず、熱安定剤をモンタン酸カルシウム2.0質量部と、ラウリン酸亜鉛2.0質量部に変更した以外は、実施例1と同様に射出成形用樹脂組成物及び押出成形体を作製した。
【0092】
[比較例2]
塩化ビニル樹脂の添加量を35質量部に変更した以外は、実施例1と同様に射出成形用樹脂組成物及び射出成形体を作製した。
【0093】
[比較例3]
塩化ビニル樹脂の種類、添加量を塩化ビニル樹脂(塩素含有量:56.7質量%、重合度:1300)7質量部に変更し、他の添加する成分を表1に記載のものに変更した以外は、実施例1と同様に射出成形用樹脂組成物及び押出成形体を作製した。
【0094】
[比較例4]
塩化ビニル樹脂の添加量を0.5質量部に変更し、他の添加する成分を表1に記載のものに変更した以外は、実施例1と同様に射出成形用樹脂組成物及び押出成形体を作製した。
【0095】
<評価>
実施例及び比較例で得られた射出成形用樹脂組成物及び成形体について以下の評価を行った。結果を表1に示した。
【0096】
[射出成形用樹脂組成物の評価]
<静的熱安定性>
得られた塩素化塩化ビニル樹脂組成物を2本の8インチロールに供給し、205℃で3分間混練して、厚さ1.0mmのシートを作製した。得られたシートを200℃のギヤオーブン中で加熱し、発泡又は黒化するまでの時間(分)を測定した。
【0097】
<ゲル化容易性・分解温度到達時間>
得られた塩素化塩化ビニル樹脂組成物をプラストミル(東洋精機社製「ラボプラストミル」)に供給し、回転数50rpm、195℃、充填量63gで混練し、ゲル化時間(秒)を測定した。混練開始から、混練トルクがピークになるまでの時間をゲル化時間とした。また、ゲル化後、更に混練及び加熱を続け、塩素化塩化ビニル樹脂の分解時間(分)を測定した。混練開始から、ゲル化後に安定した樹脂温度が再び上昇し始めるまでの時間を分解温度到達時間とした。
【0098】
<機械物性(引張強度、熱変形温度)>
得られた塩素化塩化ビニル樹脂組成物を2本の8インチロールに供給し、205℃で3分間混練して、厚さ1.0mmのシートを作製した。得られたシートを重ね合わせて、205℃のプレスで3分間予熱した後、4分間加圧して、厚さ3mmのプレス板を得た。得られたプレス板から、機械加工により試験片を切り出した。この試験片を用いて、ASTM D638に準拠して引張強度及び引張弾性率を測定した。また、ASTM D648に準拠して負荷荷重186N/cmで熱変形温度を測定した。尚、熱変形温度は、得られたプレス板を90℃のギヤオーブンで、24時間アニール処理した後測定した。
【0099】
<フロー評価>
島津フローテスター(CFT−500D/100D、島津製作所社製)を用いて、フロー評価を行った。具体的には、<機械物性(引張強度、熱変形温度)>で作製したロールシートを約5mm角に切り出し、210℃に加熱したバレルに供給して、ダイ径1mm ダイ長さ10mmのキャピラリーにて荷重205kgfで押出した。その後、溶融樹脂が3mmキャピラリーから出た時点で測定を開始し、1mmあたり何秒かかったかを測定した。
測定値が0.2mm/sec以上の場合を「合格」とし、0.2mm/sec未満の場合を「不合格」として評価した。
【0100】
[成形体の評価]
<外観観察>
得られたソケット状射出成形体についても、気泡(発泡)の有無、シルバーストリークの有無、及びヤケ(変色)の有無を評価した。
また、得られたソケット状射出成形体について、ウェルド部分の深さをワンショット3D形状測定機(キーエンス社製、VR−3000)により測定した。
【0101】
<耐水圧試験>
ASTM D1599の「耐水圧試験」に準拠した方法で、「合格」、「不合格」を判定した。
【0102】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明によれば、鉛、スズ等の重金属を使用せずに、優れた熱安定性、熱流動性を有し、耐水圧が高い成形体を製造することが可能な射出成形用樹脂組成物、及び、射出成形用樹脂組成物を用いた成形体を提供できる。

【手続補正書】
【提出日】2019年6月24日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩素化塩化ビニル系樹脂と、塩化ビニル系樹脂と、熱安定剤とを含有する射出成形用樹脂組成物であって、
前記熱安定剤は、アルキルカルボン酸カルシウム及び亜鉛化合物を含有し、
前記塩素化塩化ビニル系樹脂は、塩素含有量が63〜72質量%であり、
前記塩化ビニル系樹脂は、重合度が400〜1000、塩素含有量が56.8質量%未満であり、
前記塩素化塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、塩化ビニル系樹脂を1〜30質量部含有する
ことを特徴とする射出成形用樹脂組成物。
【請求項2】
塩素化塩化ビニル系樹脂は、下記式(a)〜(c)に示す構成単位(a)〜(c)を有し、下記構成単位(a)、(b)及び(c)の合計モル数に対して、構成単位(a)の割合が17.5モル%以下、構成単位(b)の割合が46.0モル%以上、構成単位(c)の割合が37.0モル%以下であることを特徴とする請求項1記載の射出成形用樹脂組成物。
【化1】
【請求項3】
塩素化塩化ビニル系樹脂は、重合度が500〜800であることを特徴とする請求項1又は2記載の射出成形用樹脂組成物。
【請求項4】
塩素化塩化ビニル系樹脂と塩化ビニル系樹脂との重合度の差が500以下であることを特徴とする請求項1、2、又は3記載の射出成形用樹脂組成物。
【請求項5】
塩素化塩化ビニル系樹脂と塩化ビニル系樹脂の平均塩素含有量が65〜68質量%であることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の射出成形用樹脂組成物。
【請求項6】
塩素化塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、熱安定剤を0.4〜20質量部含有することを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載の射出成形用樹脂組成物。
【請求項7】
更に、酸化防止剤を含有することを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6記載の射出成形用樹脂組成物。
【請求項8】
β−ジケトンを含まないことを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6又は7記載の射出成形用樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1、2、3、4、5、6、7又は8記載の射出成形用樹脂組成物から成形されてなることを特徴とする成形体。
【国際調査報告】