特表-19082604IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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再表2019-82604スピネル型フェライト磁性粉およびその製造方法
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  • 再表WO2019082604-スピネル型フェライト磁性粉およびその製造方法 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2019年5月2日
【発行日】2020年12月24日
(54)【発明の名称】スピネル型フェライト磁性粉およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01G 49/00 20060101AFI20201127BHJP
   C01G 51/00 20060101ALI20201127BHJP
   G11B 5/84 20060101ALI20201127BHJP
   G11B 5/706 20060101ALI20201127BHJP
   G11B 5/714 20060101ALI20201127BHJP
   H01F 1/11 20060101ALI20201127BHJP
【FI】
   C01G49/00 C
   C01G51/00 B
   G11B5/84 Z
   G11B5/706
   G11B5/714
   H01F1/11
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】19
【出願番号】特願2019-550903(P2019-550903)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2018年10月1日
(31)【優先権主張番号】特願2017-205762(P2017-205762)
(32)【優先日】2017年10月25日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082762
【弁理士】
【氏名又は名称】杉浦 正知
(74)【代理人】
【識別番号】100123973
【弁理士】
【氏名又は名称】杉浦 拓真
(72)【発明者】
【氏名】香取 健二
【テーマコード(参考)】
4G002
4G048
5D006
5D112
5E040
【Fターム(参考)】
4G002AA08
4G002AA10
4G002AB01
4G002AD04
4G002AE03
4G048AA04
4G048AA05
4G048AB01
4G048AB06
4G048AC03
4G048AD03
4G048AD06
4G048AE05
5D006BA06
5D006BA08
5D112AA05
5D112BB04
5D112BB06
5D112BB11
5D112GB01
5E040AB03
5E040CA06
5E040HB17
5E040NN06
5E040NN12
(57)【要約】
【課題】優れた特性を有するスピネル型フェライト磁性粉を提供する。
【解決手段】磁性粉の製造方法は、ガラスの形成成分とスピネル型フェライト磁性粉の形成成分とを溶融後、急冷することによりアモルファス体を作製し、アモルファス体を熱処理し、スピネル型フェライト磁性粉を析出させることを含み、熱処理時の酸素分圧が、1.0kPa以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスの形成成分とスピネル型フェライト磁性粉の形成成分とを溶融後、急冷することによりアモルファス体を作製し、
前記アモルファス体を熱処理し、スピネル型フェライト磁性粉を析出させる
ことを含み、
前記熱処理時の酸素分圧が、1.0kPa以下である磁性粉の製造方法。
【請求項2】
前記ガラスの形成成分が、ホウ酸ナトリウムを含む請求項1に記載の磁性粉の製造方法。
【請求項3】
前記ガラスの形成成分が、アルカリ土類金属の酸化物および該酸化物の前駆体のうちの少なくとも1種を更に含む請求項2に記載の磁性粉の製造方法。
【請求項4】
前記アルカリ土類金属の酸化物は、酸化カルシウム、酸化ストロンチウムおよび酸化バリウムのうちの少なくとも1種を含む請求項3に記載の磁性粉の製造方法。
【請求項5】
前記アルカリ土類金属の酸化物は、酸化ストロンチウムおよび酸化バリウムのうちの少なくとも1種を含む請求項3に記載の磁性粉の製造方法。
【請求項6】
前記ガラスの形成成分および前記スピネル型フェライト磁性粉の形成成分の総量に対する前記ホウ酸ナトリウムの割合は、35mol%以上60mol%以下である請求項2に記載の磁性粉の製造方法。
【請求項7】
前記スピネル型フェライト磁性粉の形成成分が、酸化コバルトおよび該酸化コバルトの前駆体のうちの少なくとも1種と、酸化鉄とを含む請求項1に記載の磁性粉の製造方法。
【請求項8】
前記スピネル型フェライト磁性粉は、コバルトフェライト磁性粉である請求項1に記載の磁性粉の製造方法。
【請求項9】
前記スピネル型フェライト磁性粉の保磁力Hcが、2500Oe以上である請求項1に記載の磁性粉の製造方法。
【請求項10】
前記熱処理時の酸素分圧が、0.9kPa以下である請求項1に記載の磁性粉の製造方法。
【請求項11】
前記スピネル型フェライト磁性粉の平均粒子サイズが、25nm以下である請求項1に記載の磁性粉の製造方法。
【請求項12】
一軸異方性を有し、平均粒子サイズが25nm以下であり、保磁力Hcが2500Oe以上であるスピネル型フェライト磁性粉。
【請求項13】
ホウ酸ナトリウムを含むガラスの形成成分と、スピネル型フェライト磁性粉の形成成分とを用いてガラス結晶化法により、スピネル型フェライト磁性粉を作製する磁性粉の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、スピネル型フェライト磁性粉およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子データの保存のため、塗布型磁気記録媒体が幅広く利用されている。高記録密度を実現するために、塗布型磁気記録媒体用の磁性粉として種々のものが検討されており、それらのうちでもスピネル型フェライト磁性粉は、次世代の高密度磁気記録媒体における適用が最も期待されている磁性粉の1つである。
【0003】
例えば特許文献1では、平均結晶サイズが20〜50nmであり、保磁力が室温で158kA/m以上であることを特徴とする単結晶コバルトフェライト微粒子粉末が記載されている。また、同文献では、金属イオンとしてFe3+イオンおよびCo2+イオンを含む水溶液と強アルカリ水溶液とを混合することによってコバルトフェライト微粒子粉末を生成する共沈法による単結晶コバルトフェライト微粒子粉末の製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−277189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
磁気記録媒体等の技術分野においては、スピネル型フェライト磁性粉の特性を向上することが望まれている。
【0006】
本開示の目的は、優れた特性を有するスピネル型フェライト磁性粉およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題を解決するために、第1の開示は、ガラスの形成成分とスピネル型フェライト磁性粉の形成成分とを溶融後、急冷することによりアモルファス体を作製し、アモルファス体を熱処理し、スピネル型フェライト磁性粉を析出させることを含み、熱処理時の酸素分圧が、1.0kPa以下である磁性粉の製造方法である。
【0008】
第2の開示は、一軸異方性を有し、平均粒子サイズが25nm以下であり、保磁力Hcが2500Oe以上であるスピネル型フェライト磁性粉である。
【0009】
第3の開示は、ホウ酸ナトリウムを含むガラスの形成成分と、スピネル型フェライト磁性粉の形成成分とを用いてガラス結晶化法により、スピネル型フェライト磁性粉を作製する磁性粉の製造方法である。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、優れた特性を有するスピネル型フェライト磁性粉を得ることができる。なお、ここに記載された効果は必ずしも限定されるものではなく、本開示中に記載されたいずれかの効果またはそれらと異質な効果であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の第2の実施形態に係る磁気記録媒体の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示の実施形態について以下の順序で説明する。
1 第1の実施形態(磁性粉およびその製造方法の例)
2 第2の実施形態(磁気記録媒体およびその製造方法の例)
【0013】
<1 第1の実施形態>
[磁性粉]
まず、本開示の第1の実施形態に係る磁性粉について説明する。磁性粉は、いわゆるスピネル型フェライト磁性粉であり、塗布型の高密度磁気記録媒体の記録層に好適なものである。ここで、高密度磁気記録媒体は、好ましくは50nm以下、より好ましくは46nm以下の最短記録波長で信号を記録可能に構成されている。磁性粉は一軸異方性を有する。磁性粉が一軸異方性を有することで、磁性粉を磁気記録媒体に適用した場合に、良好なS/N(signal-noise ratio)を得ることができる。磁性粉は、例えば、ガラス結晶化法により合成されうるものである。
【0014】
磁性粉の平均粒子サイズは、25nm以下、より好ましくは23nm以下である。磁気記録媒体では、記録波長の1/2のサイズの領域が実際の磁化領域となる。このため、磁性粉の平均粒子サイズを最短記録波長の半分以下に設定することで、良好なS/Nを得ることができる。磁性粉の平均粒子サイズが25nm以下である場合には、50nm以下の最短記録波長で信号を記録可能に構成された磁気記録媒体において、良好なS/Nを得ることができる。
【0015】
上記の磁性粉の平均粒子サイズは、以下のようにして求められる。まず、透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope:TEM)を用いて、磁性粉を撮影する。次に、撮影したTEM写真から500個の磁性粒子を無作為に選び出し、それぞれの粒子の最大粒子サイズを測定して、磁性粉の最大粒子サイズの粒度分布を求める。ここで、“最大粒子サイズ”とは、いわゆる最大フェレ径を意味し、具体的には、磁性粒子の輪郭に接するように、あらゆる角度から引いた2本の平行線間の距離のうち最大のものをいう。その後、求めた最大粒子サイズの粒度分布から最大粒子サイズのメジアン径(50%径、D50)を求めて、これを粒子の平均粒子サイズ(平均最大粒子サイズ)とする。
【0016】
磁性粉の保磁力Hcは、2500Oe以上、好ましくは2600Oe以上3500Oe以下である。保磁力Hcが2500Oe未満であると、磁性粉を磁気記録媒体に適用した場合に、記録領域を厳密に保持することが困難となり、良好なS/Nが得られなくなる虞がある。一方、保磁力Hcが3500Oeを超えると、記録ヘッドによる飽和記録が困難になり、良好なSNR(Signal-Noise Ratio)が得られなくなる虞がある。
【0017】
上記の磁性粉の保磁力Hcは、振動試料型磁力計(Vibrating Sample Magnetometer:VSM)または超伝導量子干渉計(Superconducting Quantum Interference Device:SQUID)を用いて、以下のようにして求められる。まず、所定形状の磁性粉サンプルを作製する。磁性粉サンプルは、測定用カプセルへの圧密、測定用テープへの貼り付け等、測定に影響を及ぼさない範囲で自由に作製することができる。次に、磁性粉サンプルのM−Hループを得たのち、得られたM−Hループから保磁力Hcを求める。なお、上記のM−Hループの測定は、25℃の環境下にて行われるものとする。
【0018】
磁性粉は、スピネル型フェライトを主相とする鉄酸化物の磁性粒子(以下「スピネル型フェライト磁性粒子」という。)を含む。スピネル型フェライト磁性粒子は、例えば、立方体状またはほぼ立方体状を有している。スピネル型フェライトは、Coを含むコバルトフェライトである。コバルトフェライトが、Co以外にNi、Mn、Al、CuおよびZnからなる群より選ばれる1種以上をさらに含んでいてもよい。
【0019】
コバルトフェライトは、例えば以下の式(1)で表される平均組成を有する。
CoxyFe2Z ・・・(1)
(但し、式(1)中、Mは、例えば、Ni、Mn、Al、CuおよびZnからなる群より選ばれる1種以上の金属である。xは、0.4≦x≦1.0の範囲内の値である。yは、0≦y≦0.3の範囲内の値である。但し、x、yは(x+y)≦1.0の関係を満たす。zは3≦z≦4の範囲内の値である。Feの一部が他の金属元素で置換されていてもよい。)
【0020】
[磁性粉の製造方法]
次に、本開示の第1の実施形態に係る磁性粉の製造方法について説明する。この磁性粉の製造方法は、ガラスの形成成分と、スピネル型フェライト磁性粉の形成成分(以下単に「磁性粉の形成成分」という。)とを用いてガラス結晶化法により、スピネル型フェライト磁性粉を作製するものである。
【0021】
(原料混合の工程)
まず、ガラスの形成成分と磁性粉の形成成分とを混合し、混合物を得る。
【0022】
ガラスの形成成分は、ホウ酸ナトリウム(Na247)を含む。ガラスの形成成分がホウ酸ナトリウムを含むことで、後述の溶融およびアモルファス化の工程において磁性粉の形成成分をガラスに溶かすことができる。また、後述の溶融およびアモルファス化の工程におけるガラス化のための急冷条件が緩和される。これにより、溶融物を双ロール急冷装置により急冷するのではなく、溶融物を水中に投入することで急冷することでも、アモルファス体を得ることができる。更に、後述の磁性粉取り出しの工程において、熱水等により結晶化ガラス(非磁性成分)を除去し、磁性粉を取り出すことができる。
【0023】
ガラスの形成成分および磁性粉の形成成分の総量に対するホウ酸ナトリウムの割合は、35mol%以上60mol%以下であることが好ましい。ホウ酸ナトリウムの割合が35mol%以上であると、均質性の高いアモルファス体を得ることができる。一方、ホウ酸ナトリウムの割合が60mol%以下であると、得られる磁性粉の量の減少を抑制することができる。
【0024】
ガラスの形成成分は、アルカリ土類金属の酸化物および当該酸化物の前駆体のうちの少なくとも1種を更に含むことが好ましい。ガラスの形成成分がアルカリ土類金属の酸化物および当該酸化物の前駆体のうちの少なくとも1種を更に含む場合、ガラスのガラス軟化点を高めることができ、ガラス軟化点付近で磁性粉の形成成分を結晶化することができる。したがって、磁性粉の形成成分が結晶化する温度に達した時点でガラスが柔らかくなり、析出した磁性粉が焼結してしまうことを抑制することができる。
【0025】
アルカリ土類金属の酸化物は、例えば、酸化カルシウム(CaO)、酸化ストロンチウム(SrO)および酸化バリウム(BaO)のうちの少なくとも1種を含み、これらの酸化物のうちでも酸化ストロンチウムおよび酸化バリウムのうちの少なくとも1種を含むことが特に好ましい。酸化ストロンチウムおよび酸化バリウムによるガラス軟化点上昇の効果は、酸化カルシウムによるガラス軟化点上昇の効果に比べて高いからである。なお、アルカリ土類金属の酸化物として酸化カルシウムを用いる場合には、ガラス軟化点を上昇させる観点からすると、酸化カルシウムを酸化ストロンチウムおよび酸化バリウムのうちの少なくとも1種と組み合わせて用いることが好ましい。
【0026】
アルカリ土類金属の酸化物の前駆体としては、後述する溶融およびアモルファス化の工程における溶融時の加熱によりアルカリ土類金属の酸化物を生成する物質が好ましい。このような物質としては、例えば、アルカリ土類金属の炭酸塩が挙げられるが、特にこれに限定されるものではない。アルカリ土類金属の炭酸塩は、例えば、炭酸カルシウム(CaCO3)、炭酸ストロンチウム(SrCO3)および炭酸バリウム(BaCO3)のうちの少なくとも1種を含み、これらの酸化物のうちでも炭酸ストロンチウムおよび炭酸バリウムのうちの少なくとも1種を含むことが特に好ましい。アルカリ土類金属の酸化物は、空気中のCO2または水分と化合し不安定であるため、ガラスの形成成分としてアルカリ土類金属の酸化物を用いるよりも、アルカリ土類金属の酸化物の前駆体(例えばアルカリ土類金属の炭酸塩)を用いる方が正確な計量が可能である。
【0027】
ホウ酸ナトリウムに対するアルカリ土類金属の酸化物のmol比(アルカリ土類金属の酸化物/ホウ酸ナトリウム)は、0.25以上0.5以下であることが好ましい。上記mol比が0.25未満であると、ガラスのガラス軟化点が低くなり、後述の結晶化の工程において磁性粉に十分な結晶性が付与される前に、ガラスが軟化してしまう虞がある。したがって、析出した磁性粉が焼結し、磁性粉の粒子サイズが大きくなってしまう虞がある。一方、上記mol比が0.5を超えると、ガラスのガラス軟化点が高くなり過ぎ、スピネル型フェライト磁性粉と共に六方晶フェライト磁性粉が析出し、磁性粉の保磁力Hcのバラツキが大きくなってしまう虞がある。したがって、磁性粉を磁気記録媒体に適用した場合に、S/Nが低下してしまう虞がある。
【0028】
磁性粉の形成成分は、酸化コバルト(CoO)および酸化コバルトの前駆体のうちの少なくとも1種と、酸化鉄(Fe23)とを含む。酸化コバルトの前駆体としては、後述する溶融およびアモルファス化の工程における溶融時の加熱により酸化コバルトを生成する物質が好ましい。このような物質としては、例えば、炭酸コバルト(CoCO3)が挙げられるが、特にこれに限定されるものではない。
【0029】
(溶融およびアモルファス化の工程)
次に、得られた混合物を高温(例えば1400℃程度)で加熱、溶融し溶融物を得たのち、この溶融物を急冷することでアモルファス体(ガラス体)を得る。ここで一部微結晶体が析出していても、後の熱処理の際に粗大にならない程度であれば問題ない。
【0030】
溶融物の急冷方法としては、例えば、金属双ロール法もしくは単ロール法等の液体急冷法、または溶融物を水中に投入する方法を用いることができるが、製造設備の簡略化の観点からすると、溶融物を水中に投入する方法が好ましい。
【0031】
(結晶化の工程)
続いて、加熱装置により、アモルファス体を熱処理し結晶化することで、結晶化ガラス中にスピネル型フェライト磁性粉を析出させ、磁性粉含有体を得る。この際、磁性粉は結晶化ガラス(非磁性成分)中で析出するため、粒子が互いに焼結することを抑制し、微細粒子サイズの磁性粉を得ることができる。また、アモルファス体を高温で熱処理するため、結晶性が良好な高磁化(σs)の磁性粉を得ることができる。
【0032】
熱処理は、大気雰囲気よりも酸素濃度が低い雰囲気で行われる。このような雰囲気で熱処理が行われることで、磁性粉の保磁力Hcを向上し、かつ、磁性粉に一軸異方性を付与することができる。熱処理時の酸素分圧は、1.0kPa以下、好ましくは0.9kPa以下、より好ましくは0.5kPa以下、更により好ましくは0.1kPa以下である。なお、大気雰囲気の酸素分圧は21kPaである。熱処理時の酸素分圧が1.0kPa以下であると、磁性粉の保磁力Hcを2500Oe以上にすることができる。熱処理時の雰囲気を大気雰囲気よりも酸素濃度が低いものとするためには、アモルファス体を収容した加熱装置内に窒素、Arガス等の不活性なガスを導入してもよいし、加熱装置内を真空ポンプを用いて真空引きし低圧の状態にしてもよい。
【0033】
熱処理の温度は、好ましくは500℃以上670℃以下、より好ましくは530℃以上650℃以下、例えば610℃程度である。熱処理の時間は、好ましくは0.5時間以上20時間以下、より好ましくは1.0時間以上10時間以下である。
【0034】
非磁性成分であるガラスのガラス軟化点と磁性粉の形成成分の結晶化温度は近いことが好ましい。ガラス軟化点が低く、ガラス軟化点と結晶化温度とが離れていると、磁性粉の形成成分を結晶化するための温度に達した時点でガラスが柔らかくなり、析出した磁性粉が焼結し易くなり、磁性粉のサイズが大きくなる虞がある。
【0035】
(磁性粉取り出しの工程)
その後、例えば弱酸または温水により、非磁性成分である結晶化ガラスを除去し、磁性粉を取り出す。これにより、目的とする磁性粉が得られる。
【0036】
[効果]
第1の実施形態に係る磁性粉は、一軸異方性を有し、平均粒子サイズが25nm以下であり、保磁力Hcが2500Oe以上であるスピネル型フェライト磁性粉である。このスピネル型フェライト磁性粉を高密度磁気記録媒体に用いることで、良好な特性を有する高密度磁気記録媒体を得ることができる。
【0037】
第1の実施形態に係る磁性粉の製造方法では、結晶化の工程において、大気雰囲気よりも酸素濃度が低い雰囲気でアモルファス体を熱処理するため、高い保磁力Hcを有するスピネル型フェライト磁性粉を得ることができる。より具体的には、酸素分圧が1.0kPa以下の雰囲気下で熱処理することで、保磁力Hcが2500Oe以上であるスピネル型フェライト磁性粉を得ることができる。
【0038】
[変形例]
ガラスの形成成分は、ホウ酸ナトリウムおよびホウ酸ナトリウムの前駆体の少なくとも1種を含むようにしてもよい。
磁性粉の形成成分は、酸化コバルトおよび酸化コバルトの前駆体のうち少なくとも1種と、酸化鉄および酸化鉄の前駆体のうち少なくとも1種とを含むようにしてもよい。
【0039】
磁性粉の製造方法が、結晶化の工程と磁性粉取り出しの工程との間に、以下に説明する磁界中熱処理の工程を更に含むようにしてもよい。
【0040】
(磁界中熱処理の工程)
磁界を印加可能なアニール装置により、磁性粉含有体(熱処理後のアモルファス体)を磁界中にて再度熱処理する。すなわち、スピネル型フェライト磁性粉の粒子間に介在物(結晶化ガラス)がある状態で、スピネル型フェライト磁性粉を磁界中にて再度熱処理する。この磁界中の熱処理により、析出したスピネル型フェライト磁性粉に印加磁場方向の異方性が付与される。
【0041】
磁界中熱処理は、大気雰囲気よりも酸素濃度が低い雰囲気で行われる。熱処理時の酸素分圧は、好ましくは1.0kPa以下、より好ましくは0.9kPa以下、更に好ましくは0.5kPa以下、特に好ましくは0.1kPa以下である。熱処理時の酸素分圧が1.0kPa以下であると、スピネル型フェライト磁性粉の保磁力Hcを2500Oe以上にすることができる。熱処理時の雰囲気を大気雰囲気よりも酸素濃度が低いものとするためには、熱処理後の磁性粉含有体を収容したアニール装置内に窒素、Arガス等の不活性なガスを導入してもよいし、アニール装置内を真空ポンプを用いて真空引きし低圧の状態にしてもよい。
【0042】
磁界中熱処理の温度は、好ましくは300℃以上600℃以下、より好ましくは350℃以上550℃以下である。磁界中熱処理の時間は、好ましくは1時間以上10時間以下、より好ましくは2時間以上5時間以下である。
【0043】
<2 第2の実施形態>
[磁気記録媒体の構成]
本開示の第2の実施形態に係る磁気記録媒体は、いわゆる塗布型の高密度磁気記録媒体であり、図1に示すように、長尺状の基体11と、基体11の一方の主面上に設けられた下地層(非磁性層)12と、下地層12上に設けられた記録層(磁性層)13とを備える。磁気記録媒体が、必要に応じて、記録層13上に設けられた保護層(図示せず)および潤滑剤層(図示せず)等をさらに備えるようにしてもよい。また、必要に応じて、基体11の他方の主面上に設けられたバックコート層14をさらに備えるようにしてもよい。磁気記録媒体は長尺状を有し、記録再生の際には長手方向に走行される。
【0044】
第2の実施形態に係る磁気記録媒体は、好ましくは大規模磁気テープデータアーカイブ装置であるライブラリ装置に好適なものである。また、第2の実施形態に係る磁気記録媒体は、好ましくは50nm以下、より好ましくは46nm以下の最短記録波長で信号を記録可能に構成されている。
【0045】
(基体)
支持体となる基体11は、可撓性を有する長尺状の非磁性基体である。非磁性基体はフィルムであり、フィルムの厚みは、例えば3μm以上8μm以下である。基体11の材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル類、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン類、セルローストリアセテート、セルロースダイアセテート、セルロースブチレート等のセルロース誘導体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のビニル系樹脂、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミドイミド等のプラスチック、アルミニウム合金、チタン合金等の軽金属、アルミナガラス等のセラミック等を用いることができる。
【0046】
(記録層)
記録層13は、いわゆる垂直記録層であり、例えば、磁性粉、結着剤および導電性粒子を含んでいる。記録層13が、必要に応じて、潤滑剤、研磨剤、防錆剤等の添加剤をさらに含んでいてもよい。
【0047】
磁性粉は、第1の実施形態に係る磁性粉である。
【0048】
結着剤としては、ポリウレタン系樹脂、塩化ビニル系樹脂等に架橋反応を付与した構造の樹脂が好ましい。しかしながら結着剤はこれらに限定されるものではなく、磁気記録媒体に対して要求される物性等に応じて、その他の樹脂を適宜配合してもよい。配合する樹脂としては、通常、塗布型の磁気記録媒体において一般的に用いられる樹脂であれば、特に限定されない。
【0049】
例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、アクリル酸エステル−アクリロニトリル共重合体、アクリル酸エステル−塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、アクリル酸エステル−アクリロニトリル共重合体、アクリル酸エステル−塩化ビニリデン共重合体、メタクリル酸エステル−塩化ビニリデン共重合体、メタクリル酸エステル−塩化ビニル共重合体、メタクリル酸エステル−エチレン共重合体、ポリ弗化ビニル、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ポリアミド樹脂、ポリビニルブチラール、セルロース誘導体(セルロースアセテートブチレート、セルロースダイアセテート、セルローストリアセテート、セルロースプロピオネート、ニトロセルロース)、スチレンブタジエン共重合体、ポリエステル樹脂、アミノ樹脂、合成ゴム等が挙げられる。
【0050】
また、熱硬化性樹脂、または反応型樹脂の例としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミン樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂等が挙げられる。
【0051】
また、上述した各結着剤には、磁性粉の分散性を向上させる目的で、−SO3M、−OSO3M、−COOM、P=O(OM)2等の極性官能基が導入されていてもよい。ここで、式中Mは、水素原子、あるいはリチウム、カリウム、ナトリウム等のアルカリ金属である。
【0052】
更に、極性官能基としては、−NR1R2、−NR1R2R3+-の末端基を有する側鎖型のもの、>NR1R2+-の主鎖型のものが挙げられる。ここで、式中R1、R2、R3は、水素原子、または炭化水素基であり、X-は弗素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン元素イオン、または無機もしくは有機イオンである。また、極性官能基としては、−OH、−SH、−CN、エポキシ基等も挙げられる。
【0053】
記録層13は、非磁性補強粒子として、酸化アルミニウム(α、βまたはγアルミナ)、酸化クロム、酸化珪素、ダイヤモンド、ガーネット、エメリー、窒化ホウ素、チタンカーバイト、炭化珪素、炭化チタン、酸化チタン(ルチル型またはアナターゼ型の酸化チタン)等をさらに含有していてもよい。
【0054】
(下地層)
下地層12は、非磁性粉および結着剤を主成分として含む非磁性層である。下地層12が、必要に応じて、導電性粒子、潤滑剤、硬化剤および防錆剤等のうちの少なくとも1種の添加剤をさらに含んでいてもよい。
【0055】
非磁性粉は、無機物質でも有機物質でもよい。また、非磁性粉は、カーボンブラック等でもよい。無機物質としては、例えば、金属、金属酸化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、金属窒化物、金属炭化物、金属硫化物等が挙げられる。非磁性粉の形状としては、例えば、針状、球状、立方体状、板状等の各種形状が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0056】
結着剤は、上述の記録層13と同様である。
【0057】
[磁気記録媒体の製造方法]
次に、上述の構成を有する磁気記録媒体の製造方法の一例について説明する。まず、非磁性粉および結着剤等を溶剤に混練、分散させることにより、下地層形成用塗料を調製する。次に、磁性粉および結着剤等を溶剤に混練、分散させることにより、記録層形成用塗料を調製する。記録層形成用塗料および下地層形成用塗料の調製には、例えば、以下の溶剤、分散装置および混練装置を用いることができる。
【0058】
上述の塗料調製に用いられる溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール系溶媒、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、乳酸エチル、エチレングリコールアセテート等のエステル系溶媒、ジエチレングリコールジメチルエーテル、2−エトキシエタノール、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、メチレンクロライド、エチレンクロライド、四塩化炭素、クロロホルム、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素系溶媒等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、適宜混合して用いてもよい。
【0059】
上述の塗料調製に用いられる混練装置としては、例えば、連続二軸混練機、多段階で希釈可能な連続二軸混練機、ニーダー、加圧ニーダー、ロールニーダー等の混練装置を用いることができるが、特にこれらの装置に限定されるものではない。また、上述の塗料調製に用いられる分散装置としては、例えば、ロールミル、ボールミル、横型サンドミル、縦型サンドミル、スパイクミル、ピンミル、タワーミル、パールミル(例えばアイリッヒ社製「DCPミル」等)、ホモジナイザー、超音波分散機等の分散装置を用いることができるが、特にこれらの装置に限定されるものではない。
【0060】
次に、下地層形成用塗料を基体11の一方の主面に塗布して乾燥させることにより、下地層12を形成する。続いて、この下地層12上に記録層形成用塗料を塗布して乾燥させることにより、記録層13を下地層12上に形成する。なお、乾燥の際に、例えばソレノイドコイルにより、磁性粉を基体11の厚み方向に磁場配向させる。記録層13の形成後、必要に応じて、記録層13上に保護層および潤滑剤層を形成してもよいし、基体11の他方の主面にバックコート層14を形成してもよい。
【0061】
その後、下地層12および記録層13が形成された基体11を大径コアに巻き直し、硬化処理を行う。最後に、下地層12および記録層13が形成された基体11に対してカレンダー処理を行った後、所定の幅に裁断する。以上により、目的とする磁気記録媒体が得られる。
【0062】
[効果]
本開示の第2の実施形態に係る磁気記録媒体は、第1の実施形態に係る磁性粉を含む記録層13を備えるので、良好な特性を有する高密度磁気記録媒体が得られる。
【実施例】
【0063】
以下、実施例により本開示を具体的に説明するが、本開示はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0064】
本実施例においてコバルトフェライト磁性粉の平均粒子サイズは、上述の第1の実施形態にて説明した磁性粉の平均粒子サイズの算出方法により求められた。
【0065】
本実施例について以下の順序で説明する。
i ガラスの形成成分としてホウ酸ナトリウムを用いた実施例
ii 結晶化の工程における熱処理時の酸素分圧を変えた実施例
【0066】
<i ガラスの形成成分としてホウ酸ナトリウムを用いた実施例>
[実施例1]
(原料混合の工程)
まず、ガラスの形成成分としてのホウ酸ナトリウム(Na247)および炭酸ストロンチウム(SrCO3)と、磁性粉の形成成分としての酸化鉄(Fe23)および炭酸コバルト(CoCO3)とを準備した。そして、準備した原料をNa247:SrO:Fe23:CoOがmol比で44:16:24:16となるように混合し、混合物を得た。
【0067】
(溶融およびアモルファス化の工程)
次に、得られた混合物を1400℃で1時間加熱し溶融させ溶融物を得たのち、この溶融物を水中に投入しアモルファス体(ガラス体)を得た。なお、上記加熱の際に、炭酸ストロンチウムから炭酸が除去され、酸化ストロンチウムが生成される。また、炭酸コバルトから炭酸が除去され、酸化コバルトが生成される。
【0068】
(結晶化の工程)
続いて、得られたアモルファス体を、酸素分圧0.1kPaの雰囲気中で610℃、1.5時間、熱処理し結晶化させ、コバルトフェライト磁性粉を析出させた。これにより、結晶化ガラス中にコバルトフェライトが析出された磁性粉含有体が得られた。
【0069】
(磁性粉取り出しの工程)
その後、非磁性成分である結晶化ガラスを熱水により除去してコバルトフェライト磁性粉を取り出した。そして、取り出されたコバルトフェライト磁性粉の平均粒子サイズを求めた。その結果、平均粒子サイズは19nmであった。
【0070】
(X線回折による分析)
上述のようにして得られたコバルトフェライト磁性粉をX線回折により分析した。その結果、コバルトフェライトのピークが確認されたのに対して、六方晶フェライトや非磁性成分(結晶化ガラス)のピークは確認されなかった。これにより、上記の結晶化の工程では、六方晶フェライト磁性粉の析出を抑制でき、かつ、上記の磁性粉取り出しの工程では、熱水により結晶化ガラスを除去できることがわかった。
【0071】
なお、ホウ酸ナトリウムの代わりに一般的なガラス結晶化法で用いられる酸化ホウ素(B23)を使用した場合には、水中投入では溶融物をアモルファス化することができなかった。
また、酸化ホウ素を用いた場合には、双ロール法により溶融物を急冷することで、溶融物をアモルファス化することが可能であったが、磁性粉取り出しの工程において熱水では磁性粉のみを分離することができなかった。一方、ホウ酸ナトリウムを用いた場合には、上述したように熱水で磁性粉のみを分離することができた。
【0072】
<ii 結晶化の工程における熱処理時の酸素分圧を変えた実施例>
[実施例2−1〜2−6]
結晶化の工程において、表1に示すように、酸素分圧を0.5kPa〜21.0kPaの範囲内でサンプル毎に変化させたこと以外は実施例1と同様にしてコバルトフェライト磁性粉を得た。なお、酸素分圧21.0kPaは大気雰囲気における酸素分圧である。
【0073】
(保磁力Hcの測定)
上述のようにして得られた実施例1、2−1〜2−6のコバルトフェライト磁性粉のM−HループをVSMにより測定し、測定したM−Hループから保磁力Hcを求めた。その結果を表1に示す。なお、上記のM−Hループの測定は、25℃の環境下にて行われた。
【0074】
表1に、結晶化の工程における熱処理時の酸素分圧とコバルトフェライト磁性粉の保磁力Hcとの関係とを示す。
【表1】
【0075】
表1から以下のことがわかる。結晶化の工程における熱処理時の酸素分圧を10.0未満にすることで、保磁力Hcを向上することができる。酸素分圧を1.0kPa以下とした場合には、高密度磁気記録媒体において望まれる2500Oe以上の保磁力Hcを実現することができる。
【0076】
(磁気テープ化後の磁気特性)
実施例2−6の磁性粉を用いて、下地層および記録層を有する塗布型の磁気テープを作製した。なお、磁気テープ化に際し、記録層形成用塗料の塗布後、記録層形成用塗料の乾燥前において5kOeの磁場をフィルム(非磁性支持体)の垂直方向(厚さ方向)に印加し、磁場中で記録層形成用塗料を乾燥した。この磁気テープの垂直方向と長手方向でそれぞれ磁気特性を測定したところ、以下の結果が得られた。
(垂直方向の磁気特性)
保磁力Hc:3200Oe
角形比SR:0.70
(長手方向の磁気特性)
保磁力Hc:2200Oe
角形比SR:0.25
上記のように、印加磁場方向に角型比が2倍以上異なる大きな異方性が確認されることから、一軸異方性が確認された。
【0077】
(トルクの角度依存性)
一軸異方性を確認するために、さらにトルクメータを用いて磁場印加時の磁気テープに加わるトルクの角度依存性を以下のようにして測定した。まず、実施例2−6の磁性粉を用いて、下地層および記録層を有する塗布型の磁気テープを作製した。なお、磁気テープ化に際し、記録層形成用塗料の塗布後、記録層形成用塗料の乾燥前において5kOeの磁場をフィルム(非磁性支持体)の長手方向に印加し、磁場中で記録層形成用塗料を乾燥した。次に、この磁気テープをトルクメータに設置し、角度によるトルク変動を測定したところ、180°周期のトルク変動が確認され、一軸異方性が確認された。
【0078】
以上、本開示の実施形態および実施例について具体的に説明したが、本開示は、上述の実施形態および実施例に限定されるものではなく、本開示の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
【0079】
例えば、上述の実施形態および実施例において挙げた構成、方法、工程、形状、材料および数値等はあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる構成、方法、工程、形状、材料および数値等を用いてもよい。また、化合物等の化学式は代表的なものであって、同じ化合物の一般名称であれば、記載された価数等に限定されない。
【0080】
また、上述の実施形態および実施例の構成、方法、工程、形状、材料および数値等は、本開示の主旨を逸脱しない限り、互いに組み合わせることが可能である。
【0081】
また、本開示は以下の構成を採用することもできる。
(1)
ガラスの形成成分とスピネル型フェライト磁性粉の形成成分とを溶融後、急冷することによりアモルファス体を作製し、
前記アモルファス体を熱処理し、スピネル型フェライト磁性粉を析出させる
ことを含み、
前記熱処理時の酸素分圧が、1.0kPa以下である磁性粉の製造方法。
(2)
前記ガラスの形成成分が、ホウ酸ナトリウムを含む(1)に記載の磁性粉の製造方法。
(3)
前記ガラスの形成成分が、アルカリ土類金属の酸化物および該酸化物の前駆体のうちの少なくとも1種を更に含む(2)に記載の磁性粉の製造方法。
(4)
前記アルカリ土類金属の酸化物は、酸化カルシウム、酸化ストロンチウムおよび酸化バリウムのうちの少なくとも1種を含む(3)に記載の磁性粉の製造方法。
(5)
前記アルカリ土類金属の酸化物は、酸化ストロンチウムおよび酸化バリウムのうちの少なくとも1種を含む(3)に記載の磁性粉の製造方法。
(6)
前記ガラスの形成成分および前記スピネル型フェライト磁性粉の形成成分の総量に対する前記ホウ酸ナトリウムの割合は、35mol%以上60mol%以下である(2)から(5)のいずれかに記載の磁性粉の製造方法。
(7)
前記スピネル型フェライト磁性粉の形成成分が、酸化コバルトおよび該酸化コバルトの前駆体のうちの少なくとも1種と、酸化鉄とを含む(1)から(6)のいずれかに記載の磁性粉の製造方法。
(8)
前記スピネル型フェライト磁性粉は、コバルトフェライト磁性粉である(1)から(7)のいずれかに記載の磁性粉の製造方法。
(9)
前記スピネル型フェライト磁性粉の保磁力Hcが、2500Oe以上である(1)から(8)のいずれかに記載の磁性粉の製造方法。
(10)
前記熱処理時の酸素分圧が、0.9kPa以下である(1)から(9)のいずれかに記載の磁性粉の製造方法。
(11)
前記スピネル型フェライト磁性粉の平均粒子サイズが、25nm以下である(1)から(10)のいずれかに記載の磁性粉の製造方法。
(12)
一軸異方性を有し、平均粒子サイズが25nm以下であり、保磁力Hcが2500Oe以上であるスピネル型フェライト磁性粉。
(13)
ホウ酸ナトリウムを含むガラスの形成成分と、スピネル型フェライト磁性粉の形成成分とを用いてガラス結晶化法により、スピネル型フェライト磁性粉を作製する磁性粉の製造方法。
【符号の説明】
【0082】
11 基体
12 下地層
13 記録層
14 バックコート層
図1
【国際調査報告】