特表-19082904IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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再表2019-82904電解コンデンサ用電解液及び電解コンデンサ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2019年5月2日
【発行日】2020年11月12日
(54)【発明の名称】電解コンデンサ用電解液及び電解コンデンサ
(51)【国際特許分類】
   H01G 9/035 20060101AFI20201016BHJP
【FI】
   H01G9/035
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】21
【出願番号】特願2019-551168(P2019-551168)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2018年10月23日
(31)【優先権主張番号】特願2017-204842(P2017-204842)
(32)【優先日】2017年10月24日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2018-63561(P2018-63561)
(32)【優先日】2018年3月29日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165951
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 憲悟
(72)【発明者】
【氏名】田邊 史行
(72)【発明者】
【氏名】芝 隆宏
(72)【発明者】
【氏名】内橋 賢吾
(57)【要約】
本発明は、耐電圧性に優れ、かつ耐熱性試験後の電導度低下が小さい電解コンデンサ用電解液を提供することを目的とする。
電解質及び溶剤を含有する電解コンデンサ用電解液であって、前記電解質がアニオンとカチオンとからなり、前記アニオンが、カルボキシ基を有する共重合体から、カルボキシ基の水素イオンを少なくとも1つ除いた構造のアニオンであり、前記カルボキシ基を有する共重合体が、共重合体主鎖の炭素原子に結合した炭素数5以上20以下の置換基を有し、前記カルボキシ基を有する共重合体が、ヒドロキシ基を含有しないか、含有したとしても、前記カルボキシ基を有する共重合体の構成単量体中のヒドロキシ基を含有する単量体の含有量が前記カルボキシ基を有する共重合体を構成する全単量体の重量に基づいて60重量%未満であり、かつ、下記条件1を満たす共重合体であり、前記溶剤がエチレングリコールを含む電解コンデンサ用電解液。
(条件1)前記カルボキシ基を有する共重合体とアンモニアとのアンモニウム塩を10重量%含むエチレングリコール溶液の30℃での電導度が、0.2mS/cm以上3.0mS/cm以下である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質及び溶剤を含有する電解コンデンサ用電解液であって、前記電解質がアニオンとカチオンとからなり、前記アニオンが、カルボキシ基を有する共重合体から、カルボキシ基の水素イオンを少なくとも1つ除いた構造のアニオンであり、
前記カルボキシ基を有する共重合体が、共重合体主鎖の炭素原子に結合した炭素数5以上20以下の置換基を有し、
前記カルボキシ基を有する共重合体が、ヒドロキシ基を含有しないか、含有したとしても、前記カルボキシ基を有する共重合体の構成単量体中のヒドロキシ基を含有する単量体の含有量が前記カルボキシ基を有する共重合体を構成する全単量体の重量に基づいて60重量%未満であり、かつ、下記条件1を満たす共重合体であり、
前記溶剤がエチレングリコールを含む電解コンデンサ用電解液。
(条件1)
前記カルボキシ基を有する共重合体とアンモニアとのアンモニウム塩を10重量%含むエチレングリコール溶液の30℃での電導度が、0.2mS/cm以上3.0mS/cm以下である。
【請求項2】
前記カルボキシ基を有する共重合体が、炭素数5以上20以下の置換基中の酸素原子の含有量が前記炭素数5以上20以下の置換基の重量に基づいて33mmol/g以下である請求項1に記載の電解コンデンサ用電解液。
【請求項3】
前記単量体成分が(メタ)アクリル酸エステルを含有する請求項1又は2に記載の電解コンデンサ用電解液。
【請求項4】
前記カルボキシ基を有する共重合体の数平均分子量が、300〜100,000である請求項1〜3のいずれか1項に記載の電解コンデンサ用電解液。
【請求項5】
前記カチオンが、アンモニウム及び/又はアミジニウムである請求項1〜4のいずれか1項に記載の電解コンデンサ用電解液。
【請求項6】
前記(メタ)アクリル酸エステルが、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸のアルキレンオキシド付加物及び(メタ)アクリル酸のアルキレンオキシド付加物のアルキルエーテルからなる群から選ばれる少なくとも1種の単量体である請求項2〜5のいずれか1項に記載の電解コンデンサ用電解液。
【請求項7】
前記カルボキシ基を有する共重合体のガラス転移温度が、−100〜100℃である請求項1〜6のいずれか1項に記載の電解コンデンサ用電解液。
【請求項8】
更に、ホウ酸、ホウ酸エステル、ボロン酸及びボロン酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する請求項1〜7のいずれか1項に記載の電解コンデンサ用電解液。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の電解コンデンサ用電解液を含む電解コンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解コンデンサ用電解液及び前記電解液を含む電解コンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
電解コンデンサは、様々な電気製品及び電子製品において広く用いられており、その用途は電荷の蓄積、ノイズの除去及び位相の調整等多岐に渡っている。近年、電解コンデンサの使用環境の幅が広がっており、高い耐電圧性や高温動作保証が求められており、耐電圧向上剤の添加や電解質の構造を工夫等により、これらの性能を改善する試みがなされている。
【0003】
例えば特許文献1には、1,6−デカンジカルボン酸の塩を電解質として用いることで高温安定性に優れる電解液を提供する技術が開示されている。
【0004】
また、特許文献1に記載の方法では、電導度の低下率に一定の改善をもたらすものの、その効果は不十分であり、その耐電圧性自体も高くないという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−67448号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、耐電圧が高く、初期の導電度が高く、耐熱性に優れる電解コンデンサ用電解液を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。
即ち本発明は、電解質及び溶剤を含有する電解コンデンサ用電解液であって、前記電解質がアニオンとカチオンとからなり、前記アニオンが、カルボキシ基を有する共重合体から、カルボキシ基の水素イオンを少なくとも1つ除いた構造のアニオンであり、
前記カルボキシ基を有する共重合体が、共重合体主鎖の炭素原子に結合した炭素数5以上20以下の置換基を有し、
前記カルボキシ基を有する共重合体が、ヒドロキシ基を含有しないか、含有したとしても、前記カルボキシ基を有する共重合体の構成単量体中のヒドロキシ基を含有する単量体の含有量が前記カルボキシ基を有する共重合体を構成する全単量体の重量に基づいて60重量%未満であり、かつ、下記条件1を満たす共重合体であり、
前記溶剤がエチレングリコールを含む電解コンデンサ用電解液
(条件1)
前記カルボキシ基を有する共重合体とアンモニアとのアンモニウム塩を10重量%含むエチレングリコール溶液の30℃での電導度が、0.2mS/cm以上3.0mS/cm以下である;前記電解コンデンサ用電解液を含む電解コンデンサである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の電解コンデンサ用電解液を用いることで耐電圧が高く、初期の導電度が高く、耐熱性に優れる電解コンデンサを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明における電解コンデンサ用電解液は、電解質及び溶剤を含有する。
前記の電解質は、アニオンとカチオンとからなり、前記アニオンは、カルボキシ基を有する共重合体から、カルボキシ基の水素イオンを少なくとも1つ除いた構造のアニオンである。
前記カルボキシ基を有する共重合体は、共重合体主鎖の炭素原子に結合した炭素数5以上20以下の置換基を有する。
前記カルボキシ基を有する共重合体は、ヒドロキシ基を含有しないか、含有したとしても、前記カルボキシ基を有する共重合体の構成単量体中のヒドロキシ基を含有する単量体の含有量が前記カルボキシ基を有する共重合体を構成する全単量体の重量に基づいて60重量%未満であり、かつ、下記条件1を満たす共重合体である。
(条件1)
前記カルボキシ基を有する共重合体とアンモニアとのアンモニウム塩を10重量%含むエチレングリコール溶液の30℃での電導度が、0.2mS/cm以上3.0mS/cm以下である。
前記の電解質は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0010】
本発明における前記のカルボキシ基を有する共重合体としては、カルボキシ基を有する単量体を構成単量体として含む共重合体が挙げられる。カルボキシ基を有する単量体としては、(メタ)アクリル酸等が挙げられる。
なお、本願明細書において、「(メタ)アクリル」の表記は「アクリル」及び/又は「メタクリル」を意味し、「(メタ)アクリレート」の表記は「アクリレート」及び/又は「メタクリレート」を意味し、「(メタ)アクリロイロキシ」の表記は「アクリロイロキシ」及び/又は「メタクリロイロキシ」を意味する。
また、カルボキシ基を有する共重合体の構成単量体には、カルボキシ基を有する単量体以外の単量体を含有していてもよい。
前記のカルボキシ基を有する単量体以外の単量体として、溶剤への溶解性の観点から好ましいものとしては(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。
【0011】
前記の(メタ)アクリル酸エステルの内、溶剤への溶解性の観点から好ましいものとしては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸のアルキレンオキシド付加物、(メタ)アクリル酸のアルキレンオキシド付加物のアルキルエーテル、ホスホ基を有する(メタ)アクリル酸エステル及びスルホ基を有する(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
なお、前記の(メタ)アクリル酸エステルは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0012】
前記の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ドデシル及び(メタ)アクリル酸オクタデシル等が挙げられる。
前記の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが有するアルキル基の炭素数は2〜20であることが好ましく、更に好ましくは4〜12である。炭素数が2以上であると電導度の観点で好ましく、20以下であると溶剤への溶解性の観点で好ましい。
【0013】
前記の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシ−1−メチルエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシ−1−メチルプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシ−2−メチルプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシ−1−メチルプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシ−2−メチルプロピル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸7−ヒドロキシヘプチル及び(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル等が挙げられる。
【0014】
前記の(メタ)アクリル酸のアルキレンオキシド付加物におけるアルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド、1,2−又は1,3−プロピレンオキシド及び1,2−、1,3−、1,4−又は2,3−ブチレンオキシドが挙げられる。
(メタ)アクリル酸1モルに対するアルキレンオキシドの付加モル数は、2〜20モルであることが好ましく、更に好ましくは4〜10モルである。付加モル数が2モル以上であれば溶剤への溶解性の観点で好ましく、20モル以下であれば電導度の観点で好ましい。
【0015】
前記の(メタ)アクリル酸のアルキレンオキシド付加物のアルキルエーテルにおけるアルキルエーテルを構成するアルキル基としては、メチル基、エチル基、ブチル基及びオクチル基等が挙げられる。これらの内、電導度の観点から好ましいのはメチル基及びエチル基である。
【0016】
前記のホスホ基を有する(メタ)アクリ酸エステルとしては、リン酸2−[(メタ)アクリロイロキシ]エチル等が挙げられる。
前記のスルホ基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸2−スルホエチル等が挙げられる。
【0017】
前記の(メタ)アクリル酸エステルの内、電導度及び耐電圧性の観点から更に好ましいのは(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸のアルキレンオキシド付加物及び(メタ)アクリル酸のアルキレンオキシド付加物のアルキルエーテルであり、特に好ましいのは(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び(メタ)アクリル酸のアルキレンオキシド付加物のアルキルエーテルである。
【0018】
前記のカルボキシ基を有する単量体及び(メタ)アクリル酸エステル以外のその他の単量体を使用することができる。その具体例としては、スチレン及びその誘導体(スチレンスルホン酸ナトリウム及びα―メチルスチレン等)及び炭素数3〜20の(メタ)アクリルアミド[(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド及びN,N−ジベンジル(メタ)アクリルアミド等]等が挙げられる。
【0019】
前記カルボキシ基を有する共重合体は、共重合体主鎖の炭素原子に結合した炭素数5以上20以下の置換基を有する。
重合した際に、共重合体主鎖の炭素原子に結合した炭素数5以上20以下の置換基となるような置換基を有する単量体としては、前記の(メタ)アクリル酸エステルのうち、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが有するアルキル基の炭素数が4〜19のもの((メタ)アクリル酸ブチル及びアクリル酸2−エチルヘキシル)、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルが有するアルキル基の炭素数が4〜19のもの((メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル等)、(メタ)アクリル酸のアルキレンオキシド付加物が有するアルキレン基の炭素数の合計が4〜19のもの(ポリプロピレングリコールアクリレート等)並びに(メタ)アクリル酸のアルキレンオキシド付加物のアルキルエーテルが有するアルキル基及びアルキレン基の炭素数の合計が4〜19のもの((メタ)アクリル酸2−(2−エトキシエトキシ)エチル等)等が挙げられる。
例えば、メタクリル酸とアクリル酸ブチルとの共重合体の場合、共重合体主鎖の炭素原子に結合した炭素数5以上20以下の置換基は、−COOCである。
【0020】
前記カルボキシ基を有する共重合体は、ヒドロキシ基を含有しないか、含有したとしても、前記カルボキシ基を有する共重合体の構成単量体中のヒドロキシ基を含有する単量体の含有量が前記カルボキシ基を有する共重合体を構成する全単量体の重量に基づいて60重量%未満である。
前記のヒドロキシ基を含有する単量体の含有量は、好ましくは50重量%以下であり、更に好ましくは30重量%以下であり、特に好ましくは10重量%以下である。前記のヒドロキシ基を含有する単量体の含有量が60重量%以上であると電導度の観点から問題がある。
なお、本発明において、カルボキシ基を有する共重合体のカルボキシ基中のヒドロキシ基部分は、ヒドロキシ基の含有量に含めない。
【0021】
前記のカルボキシ基を有する単量体の含有量は、前記カルボキシ基を有する共重合体を構成する全単量体の重量に基づいて、電導度の観点から、好ましくは5〜99.9重量%であり、更に好ましくは10〜90重量%であり、特に好ましくは30〜70重量%である。
また、前記の(メタ)アクリル酸エステルの含有量は、前記カルボキシ基を有する共重合体を構成する全単量体の重量に基づいて、溶剤への溶解性の観点から、好ましくは0.1〜95重量%であり、更に好ましくは10〜90重量%であり、特に好ましくは30〜70重量%である。
また、前記のその他の単量体の含有量は、電導度の観点から、好ましくは50重量%以下であり、更に好ましくは30重量%以下であり、特に好ましくは10重量%以下である。
【0022】
本発明のカルボキシ基を有する共重合体は、前記カルボキシ基を有する共重合体とアンモニアとのアンモニウム塩を10重量%含むエチレングリコール溶液の30℃での電導度が、0.2mS/cm以上3.0mS/cm以下である。前記のエチレングリコール溶液の30℃での電導度は、好ましくは0.4mS/cm以上2.8mS/cm以下であり、更に好ましくは0.6mS/cm以上2.5mS/cm以下であり、特に好ましくは0.8mS/cm以上2.0mS/cm以下である。電導度が0.2mS/cm未満であると、コンデンサのESRが高いという問題があり、3.0mS/cmを超えるとコンデンサにした際の耐電圧が低いという問題がある。
【0023】
次に、電導度の測定方法について説明する。
前記カルボキシ基を有する共重合体と炭酸アンモニウムとをエチレングリコール中で混合し、目的のエチレングリコール溶液を得た。この時、カルボキシ基を有する共重合体のカルボキシ基のモル数と、炭酸アンモニウムから発生するアンモニアのモル数が同じになるように量比を決定した。エチレングリコールの量は、カルボキシ基を有する共重合体とアンモニアとのアンモニウム塩の含有量が10重量%になるようにした。
前記エチレングリコール溶液について、電気伝導率計CM−40S[東亜電波工業(株)製]を用いて、30℃での電導度を測定した。
【0024】
前記カルボキシ基を有する共重合体が、電解液の電導度の観点から、炭素数5以上20以下の置換基中の酸素原子の含有量が、前記炭素数5以上20以下の置換基の重量に基づいて、好ましくは33mmol/g以下であり、更に好ましくは25mmol/g以下であり、特に好ましくは20mmol/g以下である。
置換基中の酸素原子の含有量は下記式にて計算した。
置換基中の酸素原子の含有量(mmol/g)=1モルの置換基に含まれる酸素原子のモル数(mmol)/1モルの置換基の重量(g)
【0025】
本発明における共重合体の数平均分子量(以下、Mnと略記することがある)は、300〜100,000であることが好ましく、更に好ましくは1,000〜50,000であり、特に好ましくは2,000〜30,000である。
数平均分子量が300以上であると電解液の耐電圧性の観点で好ましく、100,000以下であると電解液の素子への含浸性の観点で好ましい。
なお、本発明における数平均分子量は、後記する実施例に記載のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定した値とする。
【0026】
本発明のカルボキシ基を有する共重合体のガラス転移温度(以下、Tgと略記することがある)は、耐電圧性向上の観点から、好ましくは−100〜100℃であり、更に好ましくは−50〜90℃であり、特に好ましくは−40〜90℃である。
なお、本発明のTgは、示差走査熱量測定装置[セイコーインスツル(株)製の「DSC20」及び「SSC/580」等]を用いて「ASTM D3418−82」に準拠した方法で測定することができる。
【0027】
本発明におけるカルボキシ基を有する共重合体は、前記の構成単量体を公知の方法で重合することで製造することができる。
例えば、(メタ)アクリル酸を構成単量体とする重合体は、(メタ)アクリル酸を含有する単量体成分を公知の方法(特開平5−117330号公報等に記載の方法等)で重合することで製造することができる。
【0028】
前記の電解質を構成するカチオンとして電導度の観点から好ましいものとしては、アンモニウム及びアミジニウム等が挙げられる。
アンモニウムは、前記のアニオンと塩を形成するアンモニウムであれば特に限定されることなく使用することができる。
前記のアンモニウムとしては、無置換アンモニウム、第1級アンモニウム(メチルアンモニウム、エチルアンモニウム、プロピルアンモニウム及びイソプロピルアンモニウム等)、第2級アンモニウム(ジメチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、メチルエチルアンモニウム、メチルプロピルアンモニウム及びメチルイソプロピルアンモニウム等)、第3級アンモニウム(トリメチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、ジメチルエチルアンモニウム、ジメチルプロピルアンモニウム及びジメチルイソプロピルアンモニウム等)及び第4級アンモニウム(テトラメチルアンモニウム、エチルトリメチルアンモニウム、ジエチルジメチルアンモニウム、トリエチルメチルアンモニウム及びテトラエチルアンモニウム等)等が挙げられる。
【0029】
アミジニウムは、前記のアニオンと塩を形成するアミジニウムであれば特に限定されることなく使用することができる。
アミジニウムとしては、イミダゾリニウム、イミダゾリニウムが有する水素原子をアルキル基で置換したカチオン(1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリニウム、1,3,4−トリメチル−2−エチルイミダゾリニウム、1,3−ジメチル−2,4−ジエチルイミダゾリニウム及び1,2−ジメチル−3,4−ジエチルイミダゾリニウム等)、イミダゾリウム及びイミダゾリウムが有する水素原子をアルキル基で置換したカチオン(1,3−ジメチルイミダゾリウム、1,3−ジエチルイミダゾリウム、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム及び1,2,3−トリメチルイミダゾリウム等)等が挙げられる。
【0030】
アンモニウム及びアミジニウムの内、耐電圧性の観点から、好ましくはアンモニウムであり、更に好ましくは無置換アンモニウム、第一級アンモニウム及び第二級アンモニウムである。
【0031】
前記の電解質は、前記の共重合体と溶剤との混合物中に、電解質のカチオンとなる原料(例えばアンモニアガス)を添加する等の方法により、製造することができる。
【0032】
本発明の電解コンデンサ用電解液は、前記の共重合体を用いた電解質以外に、カルボキシレートイオンと前記のアンモニウム又はアミジニウムとからなる電解質を含んでいても良い。
前記のカルボキシレートイオンと前記のアンモニウム又はアミジニウムとからなる電解質は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0033】
前記のカルボキシレートイオンとしては、飽和ポリカルボン酸(シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、2−メチルアゼライン酸、セバシン酸、1,5−オクタンジカルボン酸、4,5−オクタンジカルボン酸、1,9−ノナンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,6−デカンジカルボン酸、5,6−デカンジカルボン酸、1,11−ウンデカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、1,13−トリデカンジカルボン酸、1,14−テトラデカンジカルボン酸、1,15−ペンタデカンジカルボン酸、メチルマロン酸、エチルマロン酸、プロピルマロン酸、ブチルマロン酸、ペンチルマロン酸、ヘキシルマロン酸、ジメチルマロン酸、ジエチルマロン酸、メチルプロピルマロン酸、メチルブチルマロン酸、エチルプロピルマロン酸、ジプロピルマロン酸、メチルコハク酸、エチルコハク酸、2,2−ジメチルコハク酸、2,3−ジメチルコハク酸、2−メチルグルタル酸、3−メチルグルタル酸、3−メチル−3−エチルグルタル酸、3,3−ジエチルグルタル酸、3,3−ジメチルグルタル酸及び3−メチルアジピン酸等);
飽和モノカルボン酸(ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、ウラリル酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸及びウンデカン酸等);
不飽和モノカルボン酸[(メタ)アクリル酸、クロトン酸及びオレイン酸等];
不飽和脂肪族ポリカルボン酸(マレイン酸、フマル酸、イタコン酸及びシトラコン酸等);
芳香族モノカルボン酸(安息香酸、ケイ皮酸、ナフトエ酸、トルイル酸、エチル安息香酸、プロピル安息香酸、イソプロピル安息香酸、ブチル安息香酸、イソブチル安息香酸、tert−ブチル安息香酸、ヒドロキシ安息香酸、エトキシ安息香酸、プロポキシ安息香酸、イソプロポキシ安息香酸、ブトキシ安息香酸、イソブトキシ安息香酸、tert−ブトキシ安息香酸、アミノ安息香酸、N−メチルアミノ安息香酸、N−エチルアミノ安息香酸、N−プロピルアミノ安息香酸、N−イソプロピルアミノ安息香酸、N−ブチルアミノ安息香酸、N−イソブチルアミノ安息香酸、N−tert−ブチルアミノ安息香酸、N,N−ジメチルアミノ安息香酸及びN,N−ジエチルアミノ安息香酸等);及び;
芳香族ポリカルボン酸(フタル酸、イソフタル酸及びテレフタル酸等)等のカルボン酸のカルボキシ基から水素原子を除いたアニオンが挙げられる。
これらの内、耐電圧性の観点から好ましいのは飽和ポリカルボン酸及び不飽和ポリカルボン酸からカルボキシ基の水素イオンを除いたアニオンである。
【0034】
本発明の電解コンデンサ用電解液に用いられる溶剤は、エチレングリコールを含む溶剤である。エチレングリコール以外の溶剤としては、水、アルコール溶剤(メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール及びプロピレングリコール等)、アミド溶剤(N−メチルホルムアミド及びN,N−ジメチルホルムアミド等)、ラクトン溶剤(α−アセチル−γ−ブチロラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン及びδ−バレロラクトン等)、ニトリル溶剤(アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、アクリロニトリル、メタクリルニトリル及びベンゾニトリル等)、スルホキシド溶剤(ジメチルスルホキシド、メチルエチルスルホキシド及びジエチルスルホキシド)及びスルホン溶剤(スルホラン及びエチルメチルスルホン等)等が挙げられる。
これらエチレングリコール以外の溶剤の内、電導度の観点から好ましいのは、水、アルコール溶剤、ラクトン溶剤及びスルホン溶剤である。
前記の溶剤は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0035】
前記のカルボキシ基を有する共重合体を用いた電解質以外の電解質は公知の方法[J.Am.Chem.Soc.,69,2269(1947)及び米国特許第4892944号等に記載の方法]を用いることで合成することができる。
例えば、第3級アミンを炭酸エステルで4級化後、酸交換する方法で合成することができる。
【0036】
本発明の電解コンデンサ用電解液は、更に、ホウ酸、ホウ酸エステル、ボロン酸及びボロン酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有することが好ましい。
前記のホウ酸エステルとしては、ホウ酸トリメチル、ホウ酸トリエチル、ホウ酸トリプロピル、ホウ酸トリブチル、ホウ酸トリフェニル、2−エトキシ−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン、2−イソプロポキシ−4,4,6−トリメチル−1,3,2−ジオキサボリナン及び2,4,6−トリメトキシボロキシン等が挙げられる。
前記のボロン酸としては、メチルボロン酸、エチルボロン酸、プロピルボロン酸、ブチルボロン酸、シクロヘキシルボロン酸、フェニルボロン酸、1−ナフタレンボロン酸、2−フェニルエチルボロン酸、2−フリルボロン酸及び3−フリルボロン酸等が挙げられる。
前記のボロン酸エステルとしては、2,4,4,5,5−ペンタメチル−1,3,2−ジオキサボロラン、2−エチル−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン、2−ベンジル−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン、2−フェニル−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン及び5,5−ジメチル−2−フェニル−1,3,2−ジオキサボリナン等が挙げられる。
【0037】
本発明の電解コンデンサ用電解液は、ホウ酸、ホウ酸エステル、ボロン酸及びボロン酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有することで、驚くべきことに、電導度が大きく向上する。そのメカニズムは明らかでないが、以下の内容が推察される。
前記のホウ酸、ホウ酸エステル、ボロン酸及びボロン酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも1種は、前記のカルボキシ基を有する共重合体を用いた電解質と可逆的に結合して錯体を形成し、電解液中を移動する。これにより、前記のカルボキシ基を有する共重合体間の電荷移動を引き起こすため、電導度が上昇するものと考えられる。
【0038】
本発明の前記の電解質の重量割合は、電解コンデンサ用電解液の重量に基づいて、好ましくは1〜40重量%であり、更に好ましくは3〜30重量%であり、特に好ましくは5〜20重量%である。
重量割合が、1重量%以上であると電導度が良好であり、40重量%以下であると含浸性が良好である。
【0039】
本発明の溶剤の重量割合は、電導度の観点から、電解コンデンサ用電解液の重量に基づいて、好ましくは60〜99重量%であり、更に好ましくは60〜99重量%であり、特に好ましくは70〜97重量%であり、最も好ましくは80〜95重量%である。
【0040】
本発明の電解コンデンサ用電解液がホウ酸、ホウ酸エステル、ボロン酸及びボロン酸エステルを含有する場合、ホウ酸、ホウ酸エステル、ボロン酸及びボロン酸エステルの合計重量の割合は、電導度の観点から、電解コンデンサ用電解液の重量に基づいて、好ましくは0.1〜5重量%であり、更に好ましくは0.3〜2重量%である。
【0041】
本発明の電解コンデンサとしては、前記の本発明の電解コンデンサ用電解液を含んでいればよく、形状及び大きさ等は限定されず、例えば、捲き取り形の電解コンデンサであって、陽極表面に酸化アルミニウムが形成された陽極(酸化アルミニウム箔)と陰極アルミニウム箔との間に、セパレータを介在させて捲回することにより構成されたコンデンサが挙げられる。
【0042】
本発明のアルミニウム電解コンデンサは、本発明の電解コンデンサ用電解液を駆動用電解液としてセパレータ(クラフト紙及びマニラ紙等)に含浸し、陽陰極と共に、有底筒状のアルミニウムケースに収納した後、アルミニウムケースの開口部を封口ゴム(ブチルゴム及びシリコーンゴム等)で密閉することで得ることができる。
【実施例】
【0043】
以下本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0044】
製造例における重合体のMnはGPCを用いて以下の条件で測定した。
装置: 東ソー(株)製 HLC−8120
カラム:TSK GEL GMH6 2本 〔東ソー(株)製〕
測定温度:40℃
試料溶液:0.25重量%のTHF溶液
溶液注入量:100μl
検出装置:屈折率検出器
基準物質:東ソー製 標準ポリスチレン(TSKstandard POLYSTYRENE)12点(重量平均分子量: 500 1050 2800 5970 9100
18100 37900 96400 190000 355000 1090000
2890000)
【0045】
また、製造例における重合体のTgは、示差走査熱量測定装置[セイコーインスツル(株)製の「DSC20」及び「SSC/580」等]を用いて「ASTM D3418−82」に準拠した方法で測定した。
【0046】
<共重合体の合成>
<製造例1:共重合体(A−1)の合成>
撹拌機、温度計及び冷却管を取り付けたフラスコに、メチルイソブチルケトン[和光純薬工業(株)製]70重量部及びアクリル酸[(株)日本触媒製]3.0重量部、アクリル酸ブチル[(株)日本触媒製]27.0重量部を仕込み80℃まで加熱した。ここに予め調製しておいたアゾビスイソブチロニトリル[和光純薬工業(株)製]0.5重量部をメチルイソブチルケトン5重量部に溶解させた溶液を3時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに3時間加熱した。その後100℃、0.5kPaの条件の減圧乾燥によりメチルイソブチルケトン及び水を留去し、共重合体(A−1)を得た。
共重合体(A−1)の数平均分子量は6,300であり、Tgは−39℃であった。
【0047】
<製造例2:共重合体(A−2)の合成>
製造例1においてアクリル酸の仕込み重量を3.0重量部から9.0重量部に、アクリル酸ブチルの仕込み重量を27.0重量部から21.0重量部に変更した以外は製造例1と同様にして行い、共重合体(A−2)を得た。
共重合体(A−2)の数平均分子量は7,200であり、Tgは−7℃であった。
【0048】
<製造例3:共重合体(A−3)の合成>
製造例1においてアクリル酸の仕込み重量を3.0重量部から15.0重量部に、アクリル酸ブチルの仕込み重量を27.0重量部から15.0重量部に変更した以外は製造例1と同様にして行い、共重合体(A−3)を得た。
共重合体(A−3)の数平均分子量は6,500であり、Tgは26℃であった。
【0049】
<製造例4:共重合体(A−4)の合成>
製造例1においてアクリル酸の仕込み重量を3.0重量部から21.0重量部に、アクリル酸ブチルの仕込み重量を27.0重量部から9.0重量部に変更した以外は製造例1と同様にして行い、共重合体(A−4)を得た。
共重合体(A−4)の数平均分子量は6,000であり、Tgは58℃であった。
【0050】
<製造例5:共重合体(A−5)の合成>
製造例1においてアクリル酸の仕込み重量を3.0重量部から27.0重量部に、アクリル酸ブチルの仕込み重量を27.0重量部から3.0重量部に変更した以外は製造例1と同様にして行い、共重合体(A−5)を得た。
共重合体(A−5)数平均分子量は6,300であり、Tgは90℃であった。
【0051】
<製造例6:共重合体(A−6)の合成>
製造例1においてアクリル酸の仕込み重量を3.0重量部から27.0重量部に、アクリル酸ブチルの仕込み重量を27.0重量部から3.0重量部に、アゾビスイソブチロニトリルの仕込み重量を0.5重量部から2重量部に変更した以外は製造例1と同様にして行い、共重合体(A−6)を得た。
共重合体(A−6)の数平均分子量は2,500であり、Tgは90℃であった。
【0052】
<製造例7:共重合体(A−7)の合成>
製造例1においてアクリル酸の仕込み重量を3.0重量部から15.0重量部に、アクリル酸ブチル27.0重量部をアクリル酸2−エチルヘキシル15.0重量部に変更した以外は製造例1と同様にして行い、共重合体(A−7)を得た。
共重合体(A−7)の数平均分子量は7,000であり、Tgは18℃であった。
【0053】
<製造例8:共重合体(A−8)の合成>
製造例1においてアクリル酸3.0重量部をメタクリル酸15.0重量部、アクリル酸ブチル27.0重量部をメタクリル酸ブチル15.0重量部に変更した以外は製造例1と同様にして行い、共重合体(A−8)を得た。
共重合体(A−8)の数平均分子量は5,400であり、Tgは90℃であった。
【0054】
<製造例9:共重合体(A−9)の合成>
製造例3においてメチルイソブチルケトンの仕込み重量を70重量部から210重量部に変更した以外は製造例3と同様にして行い、共重合体(A−9)を得た。
共重合体(A−9)の数平均分子量は1,500であり、Tgは26℃であった。
【0055】
<製造例10:共重合体(A−10)の合成>
製造例3においてメチルイソブチルケトンの仕込み重量を70重量部から30重量部に変更した以外は製造例3と同様にして行い、共重合体(A−10)を得た。
共重合体(A−10)の数平均分子量は30,500であり、Tgは26℃であった。
【0056】
<製造例11:共重合体(A−11)の合成>
製造例3においてアクリル酸ブチル15.0重量部をアクリル酸4−ヒドロキシブチル15.0重量部に変更した以外は製造例3と同様にして行い、共重合体(A−11)を得た。
共重合体(A−11)の数平均分子量は5,000であり、Tgは20℃であった。
【0057】
<製造例12:共重合体(A−12)の合成>
製造例3においてアクリル酸ブチル15.0重量部をアクリル酸2−(2−エトキシエトキシ)エチル[商品名「ライトアクリレートEC−A」、共栄社化学(株)製]15.0重量部に変更した以外は製造例3と同様にして行い、共重合体(A−12)を得た。
共重合体(A−12)の数平均分子量は7,200であり、Tgは18℃であった。
【0058】
<製造例13:共重合体(A−13)の合成>
製造例3においてアクリル酸ブチル15.0重量部をポリプロピレングリコールアクリレート[商品名「ブレンマーAP−400」、日油(株)製]15.0重量部に変更した以外は製造例3と同様にして行い、共重合体(A−13)を得た。
共重合体(A−13)の数平均分子量は6,800であり、Tgは24℃であった。
【0059】
<製造例14:共重合体(A−14)の合成>
製造例1においてアクリル酸ブチル27.0重量部をアクリル酸4−ヒドロキシブチル27.0重量部に変更した以外は製造例1と同様にして行い、共重合体(A−14)を得た。
共重合体(A−14)の数平均分子量は6,000であり、Tgは20℃であった。
【0060】
<製造例15:共重合体(A−15)の合成>
製造例2においてアクリル酸ブチル21.0重量部をアクリル酸4−ヒドロキシブチル21.0重量部に変更した以外は製造例2と同様にして行い、共重合体(A−15)を得た。
共重合体(A−15)の数平均分子量は6,000であり、Tgは30℃であった。
【0061】
<製造例16:共重合体(A−16)の合成>
製造例3においてアクリル酸ブチル15.0重量部をメトキシポリエチレングリコールアクリレート[商品名「NKエステルAM−130G」、新中村化学(株)製]15.0重量部に変更した以外は製造例3と同様にして行い、共重合体(A−16)を得た。
共重合体(A−16)の数平均分子量は7,000であり、Tgは10℃であった。
【0062】
<製造例17:共重合体(A−17)の合成>
製造例3においてアクリル酸ブチル15.0重量部をアクリル酸エチル15.0重量部に変更した以外は製造例3と同様にして行い、共重合体(A−17)を得た。
共重合体(A−17)の数平均分子量は5,800であり、Tgは40℃であった。
【0063】
<製造例18:共重合体(A−18)の合成>
製造例3においてアクリル酸ブチル15.0重量部をアクリル酸ドコシル15.0重量部に変更した以外は製造例3と同様にして行い、共重合体(A−18)を得た。
共重合体(A−18)の数平均分子量は7,200であり、Tgは85℃であった。
【0064】
製造例1〜18で得た共重合体(A−1)〜(A−18)の組成、Mn及びTgを、表1にまとめて記載する。
【0065】
【表1】
【0066】
<電解コンデンサ用電解液の調製>
<実施例1>
製造例1で合成した共重合体(A−1)10重量部を、エチレングリコール87重量部及び水3重量部の混合溶剤に溶解させた。次に、混合溶剤に、アンモニアガスを1ml/秒の速度で吹き込み続けた。
アンモニアガスの吹込み中、混合溶剤のpHを測定し続け、1分間のpHの最大値と最小値の差が0.1以下となった時点で吹き込みを終了した。
これにより、表2に記載のアニオンとカチオンとからなる電解質を含有する電解コンデンサ用電解液(B−1)を調製した。
【0067】
<実施例2〜13>
実施例1において、共重合体(A−1)に代えて共重合体(A−2)〜(A−13)を用いたこと以外は実施例1と同様にして行い、表2に記載のアニオンとカチオンとからなる電解質を含有する電解コンデンサ用電解液(B−2)〜(B−13)を調製した。
【0068】
<実施例14>
製造例3で合成した共重合体(A−3)10重量部を、エチレングリコール87重量部及び水3重量部の混合溶剤に溶解させた。次に、混合溶剤に、ジメチルアミンガスを1ml/秒の速度で吹き込み続けた。
ジメチルアミンガスの吹込み中、混合溶剤のpHを測定し続け、1分間のpHの最大値と最小値の差が0.1以下となった時点で吹き込みを終了した。
これにより、表2に記載のアニオンとカチオンとからなる電解質を含有する電解コンデンサ用電解液(B−13)を調製した。
【0069】
<実施例15>
ジメチルカーボネート[東京化成工業(株)製]12.0重量部とメタノール[和光純薬工業(株)製]3.0重量部の混合溶液に、2,4−ジメチルイミダゾリン[東京化成工業(株)製]6.0重量部を滴下して、120℃で15時間攪拌することで、1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリニウム・メチルカーボネート塩の76重量%メタノール溶液を得た。ここに製造例1で合成した共重合体(A−1)10重量部を加え、50℃、1.0kPaの条件で3時間減圧を行った後、100℃に昇温しさらに3時間減圧し、残存溶媒を留去することで電解質(共重合体(A−1)1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリニウム)を得た。
ここに、エチレングリコール87重量部及び水3重量部を添加して均一に撹拌した。
これにより、表2に記載のアニオンとカチオンとからなる電解質を含有する電解コンデンサ用電解液(B−15)を調製した。
【0070】
<実施例16>
製造例1で合成した共重合体(A−1)10重量部を、エチレングリコール86重量部及び水3重量部の混合溶剤に溶解させた。次に、混合溶剤に、アンモニアガスを1ml/秒の速度で吹き込み続けた。
アンモニアガスの吹込み中、混合溶剤のpHを測定し続け、1分間のpHの最大値と最小値の差が0.1以下となった時点で吹き込みを終了した。
次に、混合溶剤にホウ酸1重量部を添加して溶解させ、表2に記載のアニオンとカチオンとからなる電解質を含有する電解コンデンサ用電解液(B−16)を調製した。
【0071】
<実施例17>
実施例16において、ホウ酸1重量部に代えてホウ酸トリエチル1重量部を用いたこと以外は実施例16と同様にして行い、表2に記載のアニオンとカチオンとからなる電解質を含有する電解コンデンサ用電解液(B−17)を調製した。
【0072】
<実施例18>
実施例16において、ホウ酸1重量部に代えてエチルボロン酸1重量部を用いたこと以外は実施例16と同様にして行い、表2に記載のアニオンとカチオンとからなる電解質を含有する電解コンデンサ用電解液(B−18)を調製した。
【0073】
<比較例1>
1,6−ドデカン二酸[宇部興産(株)製]5重量部を、エチレングリコール87重量部及び水3重量部の混合溶媒に溶解させた。次に、混合溶剤に、アンモニアガスを1ml/秒の速度で吹き込み続けた。
アンモニアガスの吹込み中、混合溶剤のpHを測定し続け、1分間のpHの最大値と最小値の差が0.1以下となった時点で吹き込みを終了した。
これにより、表2に記載のアニオンとカチオンとからなる電解質を含有する比較用の電解コンデンサ用電解液(B’−1)を調製した。
【0074】
<比較例2>
製造例14で合成した共重合体(A−14)10重量部を、エチレングリコール87重量部及び水3重量部の混合溶剤に溶解させた。次に、混合溶剤に、アンモニアガスを1ml/秒の速度で吹き込み続けた。
アンモニアガスの吹込み中、混合溶剤のpHを測定し続け、1分間のpHの最大値と最小値の差が0.1以下となった時点で吹き込みを終了した。
これにより、表2に記載のアニオンとカチオンとからなる電解質を含有する電解コンデンサ用電解液(B‘−2)を調製した。
【0075】
<比較例2〜6>
実施例1において、共重合体(A−1)に代えて共重合体(A−14)〜(A−18)を用いたこと以外は実施例1と同様にして行い、表2に記載のアニオンとカチオンとからなる電解質を含有する電解コンデンサ用電解液(B’−2)〜(B’−6)を調製した。
【0076】
各実施例及び比較例で得た電解コンデンサ用電解液について、「耐電圧性」及び「耐熱性」を下記方法で評価した。結果を表2に示す。
【0077】
【表2】
【0078】
<耐電圧>
陽極として10cmの高圧用化成エッチングアルミニウム箔を、陰極として10cmのプレーンなアルミニウム箔を、電解液として各電解コンデンサ用電解液を用い、25℃にて定電圧・定電流直流電源装置[(株)高砂製作所製、GP0650−05R]を用いて定電流法(2mA)による負荷をかけ、電圧を測定した。横軸に時間を、縦軸に電圧をプロットし、時間経過に伴う電圧の上昇カーブを観測し、初めにスパーク又はシンチレーションによる上昇カーブの乱れが生じた時点での電圧を火花電圧とした。火花電圧が高いほど、耐電圧が高いことを示す。
【0079】
<電導度及び耐熱性>
(1)初期電導度の測定
電気伝導率計CM−40S[東亜電波工業(株)製]を用いて、各電解コンデンサ用電解液の30℃での電導度を測定し、初期電導度とした。初期電導度が高いものほど、電導度が優れることを示す。
(2)125℃1000時間後の電導度の測定
各電解コンデンサ用電解液を密閉容器に充填し、125℃の恒温乾燥器内で1000時間放置した。次に、放置後の電解液の電導度を、(1)と同様の方法で測定し、125℃1000時間後の電導度とした。
(3)電導度維持率の評価
下記式から電導度維持率を求め評価した。電導度維持率が高いほど耐熱性に優れることを示す。
電導度維持率(%)=125℃1000時間後の電導度/初期電導度×100
【0080】
実施例1〜18の電解コンデンサ用電解液は、いずれも耐電圧が高く、電導度が高く、耐熱性に優れる。
一方で、比較例1〜5の電解コンデンサ用電解液は、耐電圧、電導度及び耐熱性のうち、少なくとも1つの性能に劣る。比較例6の電解コンデンサ用電解液は、溶剤に溶解せず、評価ができるものではなかった。
これは、従来の電解コンデンサ用電解液の性能劣化は、電解質を構成するアニオン及びカチオン等のエステル化及びアミド化等が原因であると考えられるところ、本発明の電解質が有するカルボキシレートアニオン基が結合している炭素原子周辺が、立体的に込み入った構造となっていることにより、前記の性能劣化の原因となるエステル化及びアミド化等を抑制できているためと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明の電解コンデンサ用電解液を用いた電解コンデンサは、高い耐電圧性と耐熱性を有するため、産業機器用コンデンサに好適に用いることができる。
【国際調査報告】