特表-19097921IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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再表2019-97921ジオキサン分解菌固定担体、生分解処理方法、および生分解処理装置
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  • 再表WO2019097921-ジオキサン分解菌固定担体、生分解処理方法、および生分解処理装置 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2019年5月23日
【発行日】2020年12月17日
(54)【発明の名称】ジオキサン分解菌固定担体、生分解処理方法、および生分解処理装置
(51)【国際特許分類】
   C12N 11/02 20060101AFI20201120BHJP
   C02F 3/34 20060101ALI20201120BHJP
   C02F 3/10 20060101ALI20201120BHJP
   C02F 3/00 20060101ALI20201120BHJP
   C12N 1/20 20060101ALI20201120BHJP
【FI】
   C12N11/02
   C02F3/34 Z
   C02F3/10 Z
   C02F3/00 G
   C12N1/20 F
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】17
【出願番号】特願2019-553751(P2019-553751)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2018年10月15日
(31)【優先権主張番号】特願2017-222164(P2017-222164)
(32)【優先日】2017年11月17日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000004400
【氏名又は名称】オルガノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100122954
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷部 善太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100194803
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 理弘
(72)【発明者】
【氏名】山本 哲史
(72)【発明者】
【氏名】日下 潤
(72)【発明者】
【氏名】板垣 篤史
(72)【発明者】
【氏名】井坂 和一
(72)【発明者】
【氏名】津田 裕
(72)【発明者】
【氏名】江口 正浩
【テーマコード(参考)】
4B033
4B065
4D003
4D040
【Fターム(参考)】
4B033NA12
4B033NB02
4B033NB33
4B033NB68
4B033NC02
4B033ND04
4B033NE02
4B033NG10
4B033NH05
4B033NJ10
4B033NK10
4B065AA06X
4B065BC42
4B065CA54
4D003AB02
4D003CA07
4D003EA14
4D003EA19
4D003EA20
4D003EA21
4D003EA30
4D003FA06
4D040DD03
4D040DD12
4D040DD31
(57)【要約】
1,4−ジオキサン分解菌を担持した分解菌固定担体と、この担体を用いた有機化合物の生分解処理方法、および生分解処理装置を提供することを課題とする。解決手段として、多孔質担体と、前記多孔質担体に担持された1,4−ジオキサン分解菌と、を有する分解菌固定担体、ならびに、この担体を用いた有機化合物の生分解処理方法、および生分解処理装置を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質担体と、
前記多孔質担体に担持された1,4−ジオキサン分解菌と、
を有することを特徴とする分解菌固定担体。
【請求項2】
前記多孔質担体が、比表面積3,000m/m以上60,000m/m以下であることを特徴とする請求項1に記載の分解菌固定担体。
【請求項3】
前記多孔質担体が、疎水性であることを特徴とする請求項1または2に記載の分解菌固定担体。
【請求項4】
前記1,4−ジオキサン分解菌が、Pseudonocardia(シュードノカルディア)属であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の分解菌固定担体。
【請求項5】
前記1,4−ジオキサン分解菌が、受託番号NITE BP−02032として寄託されたN23株であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の分解菌固定担体。
【請求項6】
1,4−ジオキサン分解菌を培養中の液体培地に多孔質担体を投入することを特徴とする、多孔質担体と該多孔質担体に担持された1,4−ジオキサン分解菌とを有する分解菌固定担体の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかに記載の分解菌固定担体により、有機化合物を生分解処理することを特徴とする生分解処理方法。
【請求項8】
前記有機化合物が、環状エーテルを含むことを特徴とする請求項7に記載の生分解処理方法。
【請求項9】
前記有機化合物が、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、2−メチル−1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフランのいずれか1種以上を含むことを特徴とする請求項7または8に記載の生分解処理方法。
【請求項10】
フェッドバッチプロセスであることを特徴とする請求項7〜9のいずれかに記載の生分解処理方法。
【請求項11】
連続プロセスであることを特徴とする請求項7〜9のいずれかに記載の生分解処理方法。
【請求項12】
請求項1〜5のいずれかに記載の分解菌固定担体により、有機化合物を生分解処理することを特徴とする生分解処理装置。
【請求項13】
前記有機化合物が、環状エーテルを含むことを特徴とする請求項12に記載の生分解処理装置。
【請求項14】
前記有機化合物が、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、2−メチル−1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフランのいずれか1種以上を含むことを特徴とする請求項12または13に記載の生分解処理装置。
【請求項15】
フェッドバッチプロセスを行うことを特徴とする請求項12〜14のいずれかに記載の生分解処理装置。
【請求項16】
連続プロセスを行うことを特徴とする請求項12〜14のいずれかに記載の生分解処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1,4−ジオキサン分解菌を固定した担体と、この担体を利用した汚染水の生分解処理方法、および生分解処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
1,4−ジオキサンは、下記式(1)で表される環状エーテルである。1,4−ジオキサンは、水や有機溶媒との相溶性に優れており、主に有機合成の反応溶剤として使用されている。
【0003】
【化1】
【0004】
2010年度の日本国における1,4−ジオキサンの製造・輸入量は、約4500t/年であり、約300t/年が環境中へ放出されたと推測される。1,4−ジオキサンは、水溶性であるため、水環境中へ放出されると広域に拡散してしまう。また、揮発性、固体への吸着性、光分解性、加水分解性、生分解性がいずれも低いため、水中からの除去が困難である。1,4−ジオキサンは急性毒性及び慢性毒性を有する上、発がん性も指摘されていることから、1,4−ジオキサンによる水環境の汚染は、人や動植物に悪影響を及ぼすことが懸念されている。そのため、日本国では、水道水質基準(0.05mg/L以下)、環境基準(0.05mg/L以下)及び排水基準(0.5mg/L以下)により、1,4−ジオキサンの規制がなされている。
【0005】
また、非特許文献1には、1,4−ジオキサンを含む産業廃水には、1,4−ジオキサンの他に1,3−ジオキソラン及び2−メチル−1,3−ジオキソランといった環状エーテルが含まれていることが報告されている。特に1,3−ジオキソランは、急性毒性等の毒性が確認されており、1,3−ジオキソランを含む汚染水等は適切に処理しなければならない。
【0006】
低コストかつ安定的に1,4−ジオキサン等の環状エーテルを含む水を処理する方法が求められており、特許文献1、非特許文献2では、1,4−ジオキサン分解菌による1,4−ジオキサン処理が提案されている。1,4−ジオキサン分解菌は、1,4−ジオキサンを単一炭素源として分解する菌(資化菌)と、テトラヒドロフラン等の特定の基質の存在下にて1,4−ジオキサンを分解できる菌(共代謝菌)の2種類に大別される。そのため、地下水や廃水等に含まれる1,4−ジオキサンを1,4−ジオキサン分解菌で処理する場合、特定の基質を添加する必要がない資化菌を活用する方が効率的である。
【0007】
資化菌は、さらに1,4−ジオキサン分解酵素の誘導の有無によって、誘導型と構成型に分けられる。非特許文献3に記載されているように、誘導型1,4−ジオキサン分解菌は、1,4−ジオキサンなどの誘導物質が存在することで分解酵素の生産・分泌がされるため、1,4−ジオキサン処理に用いる前に予め馴養する必要がある。一方、構成型1,4−ジオキサン分解菌は、常時、分解酵素を生産しているため、馴養することなく、直ちに1,4−ジオキサン処理に用いることができる。
【0008】
本発明者らは、特許文献2において、ジエチレングリコールを含む培地を用いて1,4−ジオキサン分解菌を増やす1,4−ジオキサン分解菌の培養方法を提案した。1,4−ジオキサン分解菌は、他の微生物と比較してジエチレングリコールを炭素源として利用する能力に優れているため、ジエチレングリコールを含有する培地を用いることにより、滅菌処理を行うことなく、他の微生物が生息している条件下でも優先的に増殖することができる。
【0009】
さらに、本発明者らは、特許文献3において、構成型1,4−ジオキサン分解菌であるN23株を報告している。N23株は、これまでに報告されている構成型1,4−ジオキサン分解菌の中で、最も高い1,4−ジオキサン最大比分解速度を示し、1,4−ジオキサンを始めとする環状エーテルの生分解に非常に有望である。
N23株は、1,4−ジオキサン分解能を有さない微生物と比較して、1,4−ジオキサン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオールを炭素源として利用する能力に優れている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2008−306939号公報
【特許文献2】特許第5877918号公報
【特許文献3】特許第6117450号公報
【0011】
【非特許文献1】CD. Adams, PA. Scanlan and ND. Secrist: Oxidation and biodegradability enhancement of 1,4-dioxane using hydrogen peroxide and ozone, Environ. Sci. Technol., 28(11), pp.1812-1818, 1994.
【非特許文献2】清和成、池道彦:1,4−ジオキサン分解菌を用いた汚染地下水の生物処理・浄化の可能性,用水と廃水,Vol.53, No.7, 2011
【非特許文献3】K. Sei, K. Miyagaki, T. Kakinoki, K. Fukugasako, D. Inoue and M. Ike: Isolation and characterization of bacterial strains that have high ability to degrade 1,4-dioxane as a sole carbon and energy source, Biodegradation, 24, 5, pp.665-674, 2012.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、1,4−ジオキサン分解菌(以下、分解菌ともいう)を担持した分解菌固定担体と、この担体を用いた有機化合物の生分解処理方法、および生分解処理装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
1.多孔質担体と、
前記多孔質担体に担持された1,4−ジオキサン分解菌と、
を有することを特徴とする分解菌固定担体。
2.前記多孔質担体が、比表面積3,000m/m以上60,000m/m以下であることを特徴とする1.に記載の分解菌固定担体。
3.前記多孔質担体が、疎水性であることを特徴とする1.または2.に記載の分解菌固定担体。
4.前記1,4−ジオキサン分解菌が、Pseudonocardia(シュードノカルディア)属であることを特徴とする1.〜3.のいずれかに記載の分解菌固定担体。
5.前記1,4−ジオキサン分解菌が、受託番号NITE BP−02032として寄託されたN23株であることを特徴とする1.〜4.のいずれかに記載の分解菌固定担体。
6.1,4−ジオキサン分解菌を培養中の液体培地に多孔質担体を投入することを特徴とする、多孔質担体と該多孔質担体に担持された1,4−ジオキサン分解菌とを有する分解菌固定担体の製造方法。
7.1.〜5.のいずれかに記載の分解菌固定担体により、有機化合物を生分解処理することを特徴とする生分解処理方法。
8.前記有機化合物が、環状エーテルを含むことを特徴とする7.に記載の生分解処理方法。
9.前記有機化合物が、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、2−メチル−1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフランのいずれか1種以上を含むことを特徴とする7.または8.に記載の生分解処理方法。
10.フェッドバッチプロセスであることを特徴とする7.〜9.のいずれかに記載の生分解処理方法。
11.連続プロセスであることを特徴とする7.〜9.のいずれかに記載の生分解処理方法。
12.1.〜5.のいずれかに記載の分解菌固定担体により、有機化合物を生分解処理することを特徴とする生分解処理装置。
13.前記有機化合物が、環状エーテルを含むことを特徴とする12.に記載の生分解処理装置。
14.前記有機化合物が、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、2−メチル−1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフランのいずれか1種以上を含むことを特徴とする12.または13.に記載の生分解処理装置。
15.フェッドバッチプロセスを行うことを特徴とする12.〜14.のいずれかに記載の生分解処理装置。
16.連続プロセスを行うことを特徴とする12.〜14.のいずれかに記載の生分解処理装置。
【発明の効果】
【0014】
本発明の分解菌固定担体を用いることにより、分解菌の流出を防ぐことができ、有機化合物の生分解処理時に高い処理活性を維持することができる。本発明の分解菌固定担体を用いることにより、連続プロセスにおいても分解菌の流出を防ぎ、高い菌体濃度を保つことができる。本発明の分解菌固定担体により、高密度の分解菌による生分解処理が可能となり、曝気槽の容量を小さくすることができる。
多孔質担体の比表面積が3,000m/m以上60,000m/m以下である担体、多孔質担体が疎水性の材質からなる担体は、分解菌が付着しやすく、大量の菌体を担持することができる。
N23株は、有機化合物の分解性に優れ、また、高濃度から低濃度の1,4−ジオキサンを分解することができるため、N23株を固定した担体は、処理水の有機化合物濃度が変動しても、安定した処理能力を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実験2の連続プロセスにおける廃水中のジオキサン濃度の経時変化を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明の分解菌固定担体は、多孔質担体と、この多孔質担体に担持された1,4−ジオキサン分解菌とを有する。
【0017】
・多孔質担体
多孔質担体とは、担体の内部に複数の空孔を有する粒状かつ中実状の担体であり、一般的な繊維状担体とは異なる。多孔質担体の形状は、特に制限されず、例えば、立方体形状、直方体形状、六角柱等の多角柱形状、円柱形状、球形状等が挙げられる。立方体形状、または、直方体形状が、担体の製造が容易であるため好ましい。
【0018】
多孔質担体の担体サイズは、特に制限はないが、1mm以上1,000mm以下であることが好ましく、100mm以上1,000mm以下の範囲であることがより好ましい。多孔質担体の担体サイズが1mm未満であると、担体を分離するスクリーンが閉塞する場合があり、1,000mmを超えると、比表面積が低下し十分に分解菌を保持できない場合がある。なお、多孔質担体の担体サイズは、ノギスまたはマイクロスコープ等を用いて少なくとも10個の担体について測定した値から、その形状に応じて算出した体積の平均値を意味する。
【0019】
多孔質担体の空孔の平均径は、特に制限はないが、例えば、20μm以上2,000μm以下の範囲のものを用いることができる。空孔の平均径が20μm未満であると、担体の通気性が低下して流動性が低下する場合がある。空孔の平均径が2,000μmを超えると、分解菌の固定化が困難となる場合がある。なお、多孔質担体の空孔の平均径は、担体表面に現れる空孔開口部の口径を、ノギスまたはマイクロスコープ等を用いて少なくとも30個測定した値の平均値を意味する。
【0020】
多孔質担体の担体の単位体積あたりの比表面積は、3,000m/m以上60,000m/m以下であることが好ましい。比表面積が3,000m/m未満であると、分解菌を十分に保持できない場合がある。比表面積が60,000m/mより大きいと、担体が浮上して処理槽の外に流出しやすくなる。比表面積は、4,000m/m以上55,000m/m以下であることがより好ましく、4,500m/m以上50,000m/m以下であることがさらに好ましい。なお、多孔質担体の比表面積は、窒素ガスによる気体吸着法においてBET法により算出することができる。
【0021】
多孔質担体の空隙率は、50%以上99%以下であることが好ましい。多孔質担体の空隙率が50%未満であると、分解菌の付着量が不足する場合がある。空隙率が99%を超えると、担体の通気性が低下して流動性が低下する場合がある。
多孔質担体の空隙率は、対象担体の比重を測定し、下記の式から算出する。
空隙率(%)={1−(比重/真比重)}×100
比重 :対象担体の比重の測定値
真比重:対象担体材質の比重(文献値 例えばポリウレタンの場合
1.20)
【0022】
多孔質担体の材質は、特に制限することなく使用することができ、例えば、ポリウレタン系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、セルロース系樹脂、塩化ビニル等からなるスポンジ、ポリビニルアルコール、アルギン酸、ポリエチレングリコール等からなるゲル等を使用することができる。これらの中で、疎水性の材質からなる多孔質担体が、分解菌の付着性に優れるため好ましい。これは、分解菌が、組成は不明であるが、疎水性の粘性物質によるバイオフィルムを形成するためであると推測される。ここで、疎水性の担体とは、脱イオン水に投入して24時間後に沈降していないもの、親水性の担体とは、脱イオン水に投入して24時間後に沈降しているものを意味する。このような疎水性の材質としては、ポリウレタン系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、セルロース系樹脂が挙げられる。
【0023】
・1,4−ジオキサン分解菌
本発明で使用する分解菌としては特に制限されず、マイコバクテリウム属(Mycobacterium sp.)、シュードノカルディア属(Pseudonocardia sp.)、アフピア属(Afipia sp.)、ロドコッカス属(Rhodococcus sp.)、フラボバクテリウム属(Flavobacterium sp.)、メチロサイナス属(Methylosinus sp.)、バークホルデリア属(Burkholderia sp.)、ラルストニア属(Ralstonia sp.)、コルディセプス属(Cordyceps sp.)、キサントバクター属(Xanthobacter sp.)、アシネトバクター属(Acinetobacter sp.)等に属するものを用いることができる。これらの中で、マイコバクテリウム属(Mycobacterium sp.)、または、シュードノカルディア属(Pseudonocardia sp.)が好ましい。また、構成型資化菌、誘導型資化菌、共代謝菌のいずれも使用することができるが、誘導物質が不要なため資化菌が好ましく、馴養が不要なため構成型資化菌がより好ましい。
【0024】
具体的には、Pseudonocardia sp. N23、Mycobacterium sp. D11、Pseudonocardia sp. D17、Mycobacterium sp. D6、Pseudonocardia dioxanivorans CB1190、Afipia sp. D1、Mycobacterium sp. PH-06、Pseudonocardia benzenivorans B5、Flavobacterium sp.、Pseudonocardia sp. ENV478、Pseudonocardia tetrahydrofuranoxydans K1、Rhodococcus ruber T1、Rhodococcus ruber T5、Methylosinus trichosporium OB3b、Mycobacterium vaccae JOB5、Burkholderia cepacia G4、Pseudomonas mendocina KR1、Pseudonocardia tetrahydrofuranoxydans K1、Ralstonia pickettii PKO1、Rhodococcus sp. RR1、Acinetobacter Baumannii DD1、Rhodococcus sp. 219、Pseudonocardia antarctica DVS 5a1、Cordyceps sinensis A、Rhodococcus aetherivorans JCM14343等を挙げることができる。これらの中で、構成型資化菌であり、分解能に優れたPseudonocardia sp. N23が好ましい。
【0025】
Pseudonocardia sp. N23(以下、N23株という。)は、受託番号NITE BP−02032として、独立行政法人 製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(NPMD)(日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8(郵便番号292−0818))に、2015年4月10日付で国際寄託されている。
N23株は、グラム染色性が陽性、カタラーゼ反応が陽性である。N23株は、これまでに報告されている構成型1,4−ジオキサン分解菌の中で最も高い1,4−ジオキサン最大比分解速度を有し、その値は誘導型1,4−ジオキサン分解菌と同等以上である。また、N23株は、1,4−ジオキサンを0.017mg/L以下の極低濃度まで分解することができ、約5,200mg/Lという高濃度の1,4−ジオキサンを処理することができる。
【0026】
・分解菌固定担体
多孔質担体に、1,4−ジオキサン分解菌を担持させて本発明の分解菌固定担体を製造する方法は特に制限されないが、1,4−ジオキサン分解菌を培養中の液体培地に多孔質担体を投入する方法が簡便である。
1,4−ジオキサン分解菌の培養方法は特に制限されないが、1,4−ジオキサン分解菌は、他の微生物(以下、雑菌という)と比べて増殖性に劣り、通常の培養方法では雑菌のコンタミネーションが起こりやすい。そのため、本発明者らが提案しているジエチレングリコールを含む培地を用いる培養方法(特許文献2)、また、分解菌がN23株である場合は、1,4−ジオキサン、グリオキシル酸、グリコール酸、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1−ブタノール、テトラヒドロフラン、グルコース、酢酸の1種以上を含有する培地を用いる培養方法(特許文献3)が、好適である。
【0027】
既に1,4−ジオキサン分解菌による有機化合物の生分解処理を行っている曝気槽に、多孔質担体を投入することにより、本発明の分解菌固定担体を得ることもできる。この場合、分解菌の流出を防ぐために、下記フェッドバッチプロセスにおける有機化合物処理の生分解処理工程時に多孔質担体を投入することが好ましい。
【0028】
・生分解処理方法、および生分解処理装置
本発明の生分解処理方法、および生分解処理装置は、多孔質担体とこの多孔質担体に担持された1,4−ジオキサン分解菌とを有する分解菌固定担体により、有機化合物を生分解処理することを特徴とする。
生分解処理対象としては、有機化合物を含む地下水、工場排水等の汚染水、不法廃棄サイトの汚染土壌等が挙げられる。なお、汚染土壌を浄化する場合は、土壌を予め水で洗浄し、処理対象である有機化合物を水相に移行させて汚染水として処理する。
本発明の生分解処理方法、および生分解処理装置は、分解菌が担体に固定されているため、生分解処理後に廃水とともに流出するジオキサン分解菌が少なく、処理槽中の分解菌の濃度を高く保つことができる。そのため、生分解処理を行う処理槽の容量を小さくすることができる。
【0029】
生分解処理する有機化合物としては、1,4−ジオキサン分解菌が分解できる、すなわち、炭素源として利用できる有機化合物であれば特に制限されない。例えば、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、2−メチル−1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン等の環状エーテル、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール等が挙げられる。
【0030】
本発明の分解菌固定担体を用いた生分解処理方法は特に制限されないが、(1)汚染水中の有機化合物の生分解処理工程、(2)分解菌固定担体を沈殿させ、処理水の上澄みを排水する排水工程、(3)新たな汚染水を投入する汚染水投入工程を、(1)→(2)→(3)→(1)→・・・と、この順で繰り返す、いわゆるフェッドバッチプロセス、上流での汚染水の投入と下流での処理水の排水とを同量で連続的に行う連続プロセス等により行うことができる。フェッドバッチプロセスは、曝気槽での初期汚染物濃度が高いため、生分解処理速度を高く保つことができる。連続プロセスは、既設の廃水処理設備をそのまま用いることができる。
【0031】
本発明の生分解処理方法、および生分解処理装置において、曝気槽容量に対する多孔質担体の量としては、見かけ体積で処理水に対して5%以上50%以下の範囲が好ましく、10%以上40%以下であることがより好ましい。この多孔質担体の量が5%未満では、ジオキサン分解菌の菌体量が不足する場合があり、この多孔質担体の量が50%より多いと、多孔質担体の流動性が低下する場合がある。
【実施例】
【0032】
以下、実施例および比較例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0033】
「実験1:フェッドバッチプロセス」
井戸水に、1,4−ジオキサンを1,000mg/L、硫酸アンモニウムを窒素濃度20mg/L、リン酸二水素カリウムをリン濃度5mg/Lとなるように調製して試験水とした。
【0034】
多孔質担体は、以下の3種類を用いた。
担体A:ポリウレタン系の多孔質担体。疎水性。立方体形状(7mm角)。
空孔の平均径:525μm(測定値:500〜550μm)
比表面積 :5,000m/m
空隙率 :95.0%
担体B:ポリウレタン系の多孔質担体。親水性。立方体形状(10mm角)

空孔の平均径:1,500μm(測定値1,000〜2,000μ
m)
比表面積 :1,000m/m
空隙率 :96.5%
担体C:ポリビニルアルコール系の多孔質担体。親水性。立方体形状(7m
m角)。
空孔の平均径:80μm(測定値70〜90μm)
比表面積 :46,000m/m
空隙率 :89%
なお、担体の比表面積は、高精度全自動ガス吸着装置(装置名:BELSORP36、日本ベル株式会社製(現社名:マイクロトラック・ベル株式会社)による窒素ガスによる気体吸着法においてBET法により算出した。
【0035】
1,4−ジオキサン分解菌は、N23株を用いた。
N23株は、MGY培地(Malt Extract:10g/L、グルコース:4g/L、Yeast Extract:4g/L、pH7.3)を用いて2週間培養した。この培養液を、10,000×g、4℃、3分間遠心分離して集菌し、無機塩培地(培地組成:KHPO:1g/L、(NHSO:1g/L、NaCl:50mg/L、MgSO・7HO:200mg/L、FeCl:10mg/L、CaCl:50mg/L、pH:7.3)を用いて二回洗浄した菌体を用いた。
【実施例1】
【0036】
2.2L容の反応カラムに、試験水を容積の約1/3量まで加えた。反応カラムの容積に対して、見かけ体積が30%となるように計量した担体Aに対し、N23株(0.85%生理食塩水にて洗浄・調製した植菌液(菌体濃度2,000mg/L)を0.1L添加し、軽く撹拌して馴染ませた後、全量を反応カラムに添加した。試験水で反応カラムを満水にした後、室温(21〜22℃)にて、反応カラムの下方から1.0L/minでエアレーションを48時間行い、分解菌固定担体を得た。
次いで、1時間曝気を停止し、分解菌固定担体を沈降させた。上澄み水の半量を廃棄し、新たな試験水と置換した後、1.0L/minでエアレーションを24時間行った。
【0037】
ここで、試験水は、井戸水に1,4−ジオキサン等を添加したものであり、試験水中に存在する全有機炭素(TOC)はほぼ全量がジオキサン由来である。そこで、経時で処理水中のTOC濃度を全有機炭素分析装置(TOC−LCPN型、株式会社島津製作所製)で測定し、次式により換算した値を用いてジオキサン濃度(換算)を評価し、初期ジオキサン濃度(換算)の値から、ジオキサン減少率を求めた。
換算式:ジオキサン濃度(換算)(mg/L)
=TOC濃度(mg/L)÷0.545
【実施例2】
【0038】
担体Bを用いた以外は、実施例1と同様にした。
【実施例3】
【0039】
担体Cを用いた以外は、実施例1と同様にした。
【比較例1】
【0040】
コントロールとして、多孔質担体とN23株を添加しなかった以外は実施例1と同様にして、エアレーションのみを行った。
【0041】
・目視観察
親水性である担体B、Cを用いた実施例2、3は、曝気により撹拌され、エアレーション開始直後から、反応カラム内で流動した。ただし、多孔質担体の空孔内部まで菌体が浸透している様子は見られなかった。
一方、疎水性である担体Aを用いた実施例1は、エアレーション開始直後は、担体は上下に流動することなく浮かんだままであった。
48時間後には担体A〜CのいずれもN23株が付着していることが確認できた。また、実施例1においても、担体が水と馴染んで流動していることが確認できた。
【0042】
・ジオキサン減少率
実施例1〜3、比較例1における、スタート時からのジオキサン減少率を表1に示す。
【表1】
【0043】
実施例1〜3は、比較例1と比べてジオキサンの減少率が大きく、N23株によるジオキサンの分解が確認できた。特に、エアレーション開始時には試験水との馴染みが悪く流動しなかった疎水性の担体Aを用いた実施例1が、ジオキサンの分解性に優れており、48時間後のジオキサン減少率は最も大きかった。
実施例1〜3は、等量のN23株が添加されているが、特に、実施例1と、実施例2、3との間で、ジオキサン分解活性に大きな差があることが確認できた。このことから、疎水性の多孔質担体に固定された分解菌は、親水性の多孔質担体に固定された分解菌より、高い分解活性を発揮することが示唆された。
【0044】
「実験2:連続プロセス」
上記実験1で使用した装置をそのまま用いて、連続プロセスを行った。実施例1〜3、比較例1で使用した装置を用いた実験を、それぞれ実施例2−1〜3、比較例2−1とする。
【0045】
井戸水に、1,4−ジオキサンを500mg/L、硫酸アンモニウムを窒素濃度20mg/L、リン酸二水素カリウムをリン濃度5mg/Lとなるように調製して模擬廃水とした。
この模擬廃水を、流量1.2mL/min(1,4−ジオキサン負荷量0.37〜0.42kg/m/日)で上方から下方へ通水しながら、1.0L/minでエアレーションを行う連続プロセスを25日間行った。
【0046】
1日1回、反応カラム上部から処理水をシリンジで約15mL採水し、ろ紙(NO.5C)でろ過後に、上記実験1と同様にして1,4−ジオキサン濃度を評価した。なお、20日目以降の試料は、正確な値を知るためにヘッドスペースガスクロマトグラフ質量分析計(GC/MS−QP2010 PLUS、TURBOMATRIX HS40、株式会社島津製作所製、以下、GC/MSという。)を用いてジオキサン濃度を実測した。
【0047】
ジオキサン濃度の経時変化を図1に示す。なお、図1中で白抜きとなっているプロットはGC/MSによりジオキサンを実測した値である。
【0048】
実施例2−1が最も早く処理性能が安定し、処理水水質は10日程度で安定した。次いで実施例2−3が、2週間程度で処理水水質が安定した。実施例2−1、2−3では、GC/MSによるジオキサン濃度の実測値は0.5〜3mg/Lとなり、除去率は95%以上であった。一方、実施例2−2は、ジオキサンの除去性能はほとんど向上せず、除去率は40%前後のままであった。
【0049】
実験終了後にN23株の付着状況を目視で確認したところ、実施例2−1で使用した疎水性である担体Aは表面の色が黄色から濃い橙色に、実施例2−3で使用した親水性である担体Cは白色から薄い茶色に変化しており、大量のN23株が担体に付着していることが確認された。また、実施例2−3は、実施例2−1と比較して水質が安定するまで時間がかかった。これは、実施例2−3で使用した担体は親水性であるため、初期のN23株の付着性、分解活性に劣っていたが、N23株が生成する疎水性の粘性物質を足場にしてN23株の付着量が増えたことにより、疎水性の担体を使用した実施例2−1と同等の性能を発揮できたと推察される。一方、実施例2−2で使用した担体Bは、N23株は付着しているものの担体の色はほとんど変化しておらず、その付着量は少なかった。担体Bは、比表面積が1,000m/mと小さく、その孔径が大きいため、ジオキサン分解菌の付着性が悪かったと推察される。
図1
【国際調査報告】