特表-20100917IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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再表2020-100917神経変性疾患の予防剤及び/又は治療剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2020年5月22日
【発行日】2021年12月2日
(54)【発明の名称】神経変性疾患の予防剤及び/又は治療剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/42 20060101AFI20211105BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20211105BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20211105BHJP
   A61K 8/9789 20170101ALI20211105BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20211105BHJP
   A23L 33/11 20160101ALI20211105BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20211105BHJP
【FI】
   A61K36/42
   A61P25/28
   A61P25/16
   A61K8/9789
   A23L33/105
   A23L33/11
   A23L2/00 F
   A23L2/52
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
【全頁数】17
【出願番号】特願2020-556127(P2020-556127)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2019年11月12日
(31)【優先権主張番号】特願2018-213172(P2018-213172)
(32)【優先日】2018年11月13日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】514258269
【氏名又は名称】グリーン・テック株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】517383939
【氏名又は名称】株式会社マックビー
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】杉本 八郎
(72)【発明者】
【氏名】長島 孝樹
(72)【発明者】
【氏名】奥田 充顕
(72)【発明者】
【氏名】藤田 有紀
【テーマコード(参考)】
4B018
4B117
4C083
4C088
【Fターム(参考)】
4B018MD53
4B018ME14
4B018MF01
4B117LC04
4B117LG07
4B117LP01
4C083AA111
4C083AA112
4C083CC01
4C083EE07
4C088AB19
4C088AC01
4C088BA07
4C088BA08
4C088BA10
4C088CA03
4C088CA06
4C088MA52
4C088MA63
4C088NA14
4C088ZA15
4C088ZA16
(57)【要約】
新規な神経変性疾患の予防剤及び/又は治療剤、ならびに当該予防剤及び/又は治療剤を含有する医薬組成物の提供を課題とする。ツルレイシの抽出物を有効成分として含有する、神経変性疾患の予防剤及び/又は治療剤、好ましくはアルツハイマー病、パーキンソン病、ダウン症候群、タウオパチー(例えば、嗜銀顆粒性認知症、神経原繊維変化型老年期認知症、進行性核上性麻痺、大脳皮質変性症、ピック病)、レビー小体型認知症から選ばれる疾患の治療又は予防に用いられる剤により、当該課題を解決する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ツルレイシの抽出物を有効成分として含有する、神経変性疾患の予防剤及び/又は治療剤。
【請求項2】
アルツハイマー病、パーキンソン病、ダウン症候群、タウオパチー及びレビー小体型認知症から選ばれる疾患の治療又は予防に用いられる、請求項1記載の剤。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の剤を含有する組成物。
【請求項4】
医薬組成物である、請求項3記載の組成物。
【請求項5】
飲食品組成物である、請求項3記載の組成物。
【請求項6】
化粧料組成物である、請求項3記載の組成物。
【請求項7】
アルツハイマー病を予防及び/又は治療するために用いられる、請求項3〜6いずれか記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、神経変性疾患の予防剤及び/又は治療剤に関する。
【背景技術】
【0002】
神経変性疾患とは、脳や脊髄にある神経細胞のなかで、ある特定の神経細胞群(例えば認知機能に関係する神経細胞や運動機能に関係する細胞)が徐々に障害を受けて発症する疾患である。このような疾患に対して、治癒的な又は改善的な療法を開発するために検討がなされている。
【0003】
例えば、特許文献1では、コーヒー、タマネギ、ダイコン、レモン、センキュウ、トウキ、マツ、オウレン、アギ、カンショ、トウモロコシ、大麦、小麦、コメ等に含まれるフェルラ酸と、グリセロリン脂質とを組み合わせることで、アミロイドβ凝集阻害効果が奏されることが報告されている。
【0004】
また、前記植物由来成分以外に、キョウチクトウ属の種(Nerium species)又はテベティア属の種(Thevetia species)の抽出物を、アルツハイマー病、ハンチントン病、脳卒中又は他の神経疾患の治療に用いることが開示されている(特許文献2)。
【0005】
一方、にがうり(ツルレイシ属ツルレイシ:momordica charantia var. pavel、以降、「ツルレイシ」と称する)は、熱帯アジア原産で日本では沖縄、九州地方で多く栽培されているウリ科の植物である。栄養素として、アミノ酸類やビタミン類、ミネラル類などを豊富に含むことから、夏バテ防止や健胃・整腸作用、細胞賦活性向上などの効果を期待して、加工食品について種々検討がなされている(例えば、特許文献3、4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2017−186335号公報
【特許文献2】特開2017−114888号公報
【特許文献3】特開平6−141813号公報
【特許文献4】国際公開第2017/022030号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、ツルレイシの抽出物が神経変性疾患を予防及び/又は治癒する効果を有することは知られていない。
【0008】
本発明は、新規な神経変性疾患の予防剤及び/又は治療剤、ならびに当該予防剤及び/又は治療剤を含有する医薬組成物に関するものである。適用対象は、ヒト又はイヌ、ネコを含むペット、ウシ、ブタなどの家畜などの動物である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、ツルレイシの抽出物が、アルツハイマー病をはじめとする神経変性疾患の病因である、タウ蛋白質やアミロイドβ蛋白質の凝集を抑制する作用を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は、下記〔1〕〜〔7〕に関する。
〔1〕 ツルレイシの抽出物を有効成分として含有する、神経変性疾患の予防剤及び/又は治療剤。
〔2〕 アルツハイマー病、パーキンソン病、ダウン症候群、タウオパチー及びレビー小体型認知症から選ばれる疾患の治療又は予防に用いられる、前記〔1〕記載の剤。
〔3〕 前記〔1〕又は〔2〕に記載の剤を含有する組成物。
〔4〕 医薬組成物である、前記〔3〕記載の組成物。
〔5〕 飲食品組成物である、前記〔3〕記載の組成物。
〔6〕 化粧料組成物である、前記〔3〕記載の組成物。
〔7〕 アルツハイマー病を予防及び/又は治療するために用いられる、前記〔3〕〜〔6〕いずれか記載の組成物。
【発明の効果】
【0011】
本発明の神経変性疾患の予防剤及び/又は治療剤は、蛋白質の凝集抑制作用などを介して、認知機能障害の発症及び/又は進行を抑制するという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、タウ蛋白質の凝集阻害を調べた結果を示す図である。
図2図2は、アミロイドβ蛋白質の凝集阻害を調べた結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の神経変性疾患の予防剤及び/又は治療剤は、ツルレイシの抽出物を有効成分とするものであり、以降、ツルレイシの抽出物を、ツルレイシ抽出物又は本発明の抽出物と記載することもある。また、本発明の神経変性疾患の予防剤及び/又は治療剤を、単に、本発明の予防剤及び/又は治療剤と記載することもある。
【0014】
本発明における神経変性疾患としては、特に限定はなく、神経細胞に蛋白質が凝集することで障害を与える疾患が挙げられる。以下においては、神経変性疾患の一つであるアルツハイマー病を例に挙げて本発明を説明する。
【0015】
アルツハイマー病は、アミロイドβ蛋白から成る老人斑とタウ蛋白から成る神経原繊維変化の形成、またこれらに伴って進行する脳の萎縮を特徴的病変とする神経変性疾患である。アミロイドβ蛋白は、蛋白凝集体を形成して組織に沈着することによって機能障害を引き起こす。また、組織へ凝集沈着して機能障害を引き起こす蛋白質としてはリン酸化タウ蛋白も知られている。このような状況下において、本発明の抽出物は、前記した蛋白質の凝集抑制作用を示すことから、アルツハイマー病の発症・進行を抑制するに有効であり、ひいては、神経変性疾患、例えば、神経細胞に蛋白質が凝集することで障害を与える疾患に対して有効であると示唆される。
【0016】
本発明の抽出物は、ツルレイシを原料とするが、該植物に対し人為的な処理を施して得られたものであれば特に限定はなく、例えば、抽出物(エキス)の他、精油(例えば、水蒸気蒸留物、搾汁液、圧搾物、溶剤抽出物、超臨界流体抽出物)も含まれる。これらは1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0017】
本発明に用いられるツルレイシは、産地は特に限定されず、ヨーロッパ、北アフリカ、アジア、南北アメリカ等、どのような産地から入手されたものであってもよい。例えば、日本の産地でもよく、平戸産などのものを用いることができる。
【0018】
使用される部位については、例えば、根茎、葉、果実、種子、花、又は植物全体を使用することができ、これらの裁断物や破砕物、乾燥物等の加工品としても使用することができる。
【0019】
本発明で用いる抽出物は、前記したツルレイシを用いて公知の方法に従って溶媒により抽出し、溶媒を留去することにより得ることができる。
【0020】
抽出溶媒としては、例えば、低級アルコール(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、n-ブタノール、イソブチルアルコール等)、多価アルコール(エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール等)、ケトン(アセトン、メチルエチルケトン等)、エーテル(ジオキサン、メチルエチルエーテル、ジエチルエーテル等)、ハロゲン化炭化水素(クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン等)、極性溶媒(ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等)のほか、酢酸エチル、トルエン、n-ヘキサン、石油エーテル等の各種有機溶媒、或いは水等を、それぞれ単独で又は2種以上組み合わせて用いることが出来る。
【0021】
抽出温度は、用いる溶媒や植物の部位・形態などによって一概には設定することができないが、抽出効率の観点から、下限としては4℃、上限としては150℃を挙げることができる。本発明においては、前記した温度範囲内であれば上限値や下限値を適宜設定することができ、例えば、10℃、15℃、20℃、30℃、40℃、60℃、80℃、100℃、120℃、140℃等を上限値あるいは下限値として設定することができる。抽出時間は、抽出に供する原料の使用量や装置に応じて適宜設定することができる。
【0022】
なお、抽出により得られた抽出物に対しては、ろ過、遠心分離、濃縮、限外ろ過、凍結乾燥、粉末化、及び分画からなる群より選ばれる1種又は2種以上の処理を、公知の方法に従って行ってもよい。また、必要により、常圧下又は減圧下で前記処理を行うことができる。本発明の抽出物の一態様として前記処理物が含まれる。なお、ツルレイシはキニーネを含有することが知られているが、キニーネは視神経障害や血液障害等の副作用を奏することから、本発明の抽出物はキニーネを実質的に含まないことが好ましい。よって、本発明においては、抽出物を得る際にキニーネを公知の方法に従って取り除いてもよく、あるいは、原料にキニーネを含まない品種を用いて抽出物を得てもよく、これらを組み合わせてもよい。ここで、実質的に含まないとは、抽出物における含有量が0.5重量%以下であればよく、好ましくは0.1重量%以下である。
【0023】
かくして得られた抽出物には、モモルディシン、チャランティン、ビタミンC、β−カロテン、カリウム、マグネシウム、鉄分、ナトリウム、カルシウムなどが含まれていることが好ましい。また、前記以外には、例えば、アルカロイド、チャリン、クリプトキサンチン、ククルビチン、ククルビタシン、ククルビタン、シクロアルテノール、ジオスゲニン、エレオステアリン酸、エリトロジオール、ガラタクロン酸、ゲンチシン酸、ゴーヤグリコサイド、ゴーヤサポニン、グアニル酸シクラーゼ阻害物質、ジプソゲニン、ヒドロキシトリプタミン、カロ湯にジオール、ラノステロール、ラウリン酸、リノール酸、リノレン酸、モモルチャラサイド、モモルチャリン、モモルデノール、モモルディシリン、モモルディシニン、モモルディコサイド、モモルディン、マルチフロアノール、ミリスチン酸、ネロリドール、オレアノリン酸、オレイン酸、オキサリン酸、ペンタデカン、ペプチド、ペトロセリニン酸、ポリペプチド、プロテイン、リボソーム不活性化プロテイン、ロスマリニン酸、ルビキサンチン、スピナステロール、ステロイド性グリコサイド、スティグマスタジオール、スティグマステロール、タラキセロール、トレハロース、トリプシン阻害物質、ウラシル、バチン、インスリン、バーバスコサイド、ビチン、ゼアチン、ゼアチンリボサイド、ゼアキサンチン、ゼイノキサンチンなどが含まれていてもよい。これらの含有量は特に限定されず、分配抽出、濃縮、クロマトグラフィー精製等の処理を組み合わせて行って、抽出物における各成分の含有量を変動させてもよい。
【0024】
本発明の抽出物の形状は、特に限定されず、粉状、固形状、液状のいずれの形状であっても良い。また、当該抽出物を公知の方法で造粒して得た粒状の固形物を、本発明の抽出物として使用することもできる。造粒方法としては、特に限定はないが、転動造粒、攪拌造粒、流動層造粒、気流造粒、押出し造粒、圧縮成型造粒、解砕造粒、噴射造粒又は噴霧造粒等が例示される。また、液状の抽出物としては、前記抽出物の製造方法により得られた液体そのもの、その濃縮物や希釈物の他、前記の粉状の抽出物を液体、例えば水やアルコール等に溶解して液状としたものが例示される。
【0025】
本発明の予防剤及び/又は治療剤は、ツルレイシの抽出物を有効成分として含有するのであれば特に限定はなく、該剤におけるツルレイシ抽出物の含有量は、例えば、0.1〜100重量%が例示される。
【0026】
本発明の予防剤及び/又は治療剤は、アミロイドβ蛋白やタウ蛋白など、神経細胞における凝集性の蛋白凝集を阻害することができる。凝集性の蛋白としては、アミロイドβ蛋白やタウ蛋白の他、アルファシヌクレインが挙げられる。よって、本発明の予防剤及び/又は治療剤は、例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、ダウン症候群、タウオパチー(例えば、嗜銀顆粒性認知症、神経原繊維変化型老年期認知症、進行性核上性麻痺、大脳皮質変性症、ピック病)、レビー小体型認知症などの予防、改善又は治療に用いることが可能である。また、前記した疾患の症状を副症状として示すその他の疾患に対しても、本発明の予防剤及び/又は治療剤は好適に用いることができる。その他の疾患としては、具体的には、例えば、全身性エリテマトーデス(SLE)が挙げられる。
【0027】
本発明の予防剤及び/又は治療剤の形態としては、本発明の抽出物が脳内の神経細胞に作用することができる形態であれば特に限定はなく、そのまま製剤化したり、医薬品、医薬部外品、飲食品、飲食品用添加剤、化粧品等の原材料に用いることが可能な形態に調製してもよい。
【0028】
本発明はまた、本発明の予防剤及び/又は治療剤を含有する組成物を提供する。該組成物の形態としては、本発明の抽出物を神経細胞内に取り込むことができる形態であれば特に限定はなく、例えば、医薬組成物、飲食品組成物、又は化粧料組成物として好適に使用される。
【0029】
医薬組成物としては、医薬品、医薬部外品等として幅広く利用することができる。具体的には、例えば、錠剤(素錠、糖衣錠、フィルムコーティング錠、舌下錠、口腔内崩壊錠、バッカル錠等を含む)、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤(ソフトカプセル剤、マイクロカプセル剤を含む)、トローチ剤、シロップ剤、液剤、乳剤、懸濁剤、放出制御製剤(例、速放性製剤、徐放性製剤、徐放性マイクロカプセル剤)、エアゾール剤、フィルム剤(例、口腔内崩壊フィルム、口腔粘膜貼付フィルム)、経皮吸収型製剤、軟膏剤、ローション剤、貼付剤、ペレット、経鼻剤、経肺剤(吸入剤)等の経口剤又は非経口剤が挙げられる。本発明の医薬組成物は、本発明の予防剤及び/又は治療剤を含有するものであれば、常法に従って、製剤分野において通常使用される担体、基剤、及び/又は添加剤等を本発明の目的を達成する範囲内で適宜配合して調製することができる。
【0030】
飲食品組成物としては、飲食品、飲食品用添加剤として幅広く利用することができる。具体的には、例えば、パン類、ケーキ類、麺類、菓子類、ゼリー類、冷凍食品、アイスクリーム類、乳製品、飲料、スープ類、食用油等の各種食品の他、果汁飲料、炭酸飲料、茶系飲料、スポーツ飲料、乳飲料、アルコール飲料、清涼飲料等が挙げられる。また、飲食品には、機能性表示食品、栄養機能食品、特定保健用食品、特別用途食品、老人用食品、病者用食品、健康補助食品(サプリメント)も含まれる。これらの形態は特に限定されず、上記した医薬品、医薬部外品の経口投与型の形態であってもよい。なお、これらは、既成の飲食品に対して本発明の予防剤及び/又は治療剤を調製時又は調製後に添加させたものであればよく、添加時期や添加方法については特に限定されるものではない。
【0031】
化粧料組成物としては、具体的には、例えば、洗浄剤、シャンプー、リンス、ヘアートニック、ヘアーローション、アフターシェーブローション、ボディーローション、化粧ローション、クレンジングクリーム、マッサージクリーム、エモリエントクリーム、エアゾール製品、芳香剤又は入浴剤などを例示することができる。本発明の化粧料組成物は、本発明の予防剤及び/又は治療剤を含有するものであれば、常法に従って、当該分野において通常使用される担体、基剤、及び/又は添加剤等を本発明の目的を達成する範囲内で適宜配合して調製することができる。
【0032】
本発明の組成物は、本発明の予防剤及び/又は治療剤を含有することから、本発明の予防剤及び/又は治療剤が効果を奏する疾患に対して、好適に用いることができる。例えば、本発明の組成物は、アルツハイマー病、パーキンソン病、ダウン症候群、タウオパチー(例えば、嗜銀顆粒性認知症、神経原繊維変化型老年期認知症、進行性核上性麻痺、大脳皮質変性症、ピック病)、レビー小体型認知症などの予防、改善又は治療用として好適に用いることが可能である。例えば、ツルレイシの抽出物を有効成分として含有する、神経変性疾患の予防又は改善用飲食品組成物として提供することができる。
【0033】
本発明の組成物におけるツルレイシ抽出物の含有量は、形態、摂取方法、担体等により異なるが、例えば、製品中、通常0.01〜100重量%、好ましくは0.05〜90重量%、より好ましくは0.1〜50重量%、更に好ましくは0.1〜30重量%である。
【0034】
組成物の摂取又は使用量は、対象、症状、摂取又は使用方法などにより差異はあるが、例えば、経口投与の場合、一般的に例えば、体重約60kgのヒトにおいては、ツルレイシ抽出物の乾燥重量として、1日当たり約0.01〜1000mg、好ましくは約0.1〜100mg、より好ましくは約0.5〜50mgである。1日当たりの総投与量は、単一投与してもよく分割投与してもよい。
【0035】
また、本発明の組成物は、ツルレイシが従来食用として利用されており、安全性が高いことから、例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、ダウン症候群、タウオパチー(例えば、嗜銀顆粒性認知症、神経原繊維変化型老年期認知症、進行性核上性麻痺、大脳皮質変性症、ピック病)、レビー小体型認知症、前頭側頭葉変性症、うつ病、双極性障害、不安障害、パニック障害、統合失調症、自閉症、外的神経損傷、虚血性脳障害等の神経変性疾患の公知治療医薬と組み合わせて使用することにより、相加的または相乗的な効果の向上が期待できる。
【0036】
さらに、本発明は、本発明の予防剤及び/又は治療剤を含有する飼料または飼料添加物としても実施することができる。
【0037】
本発明はまた、対象者に、本発明の予防剤及び/又は治療剤を投与する工程を含む、神経変性疾患の予防及び/又は治療方法を提供する。神経変性疾患としては、本発明の予防剤及び/又は治療剤が好適に用いられる疾患が挙げられる。
【0038】
またさらに、ツルレイシ抽出物が蛋白の凝集を抑制することができることから、本発明は、本発明の一態様として、神経変性疾患の予防及び/又は治療するための、ツルレイシ抽出物の使用、ならびに、神経変性疾患の予防及び/又は治療剤を製造するための、ツルレイシ抽出物の使用を提供する。
【実施例】
【0039】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0040】
実施例1
被験物質はツルレイシ(平戸産)の葉のエタノール抽出物を濃縮し、精製水にて希釈して、終濃度が原液(ツルレイシ抽出物)の20、200、2000倍希釈となる様調製した。
【0041】
得られた被験物質10μLに、50mM Tris-HCl(pH7.6)150μL、100μM タウ蛋白質(3R MBD)20μL、100μM Heparin 20μLを加え、遮光後37℃、16時間インキュベートした。インキュベート終了後、反応液135μLにチオフラビンT溶液100μMを15μL添加し、マイクロプレートリーダーにて蛍光強度を測定した(図1)。測定数値よりタウ蛋白質の凝集阻害率を下記式に従って算出した。結果を表1に示す。
【数1】
【0042】
【表1】
【0043】
結果、ネガティブコントロール(N.C.)に対し、ツルレイシ抽出物はタウ蛋白質の凝集を抑制していた。また、その効果も濃度依存的なものであった。
【0044】
実施例2
希釈にPBSを用いる以外は実施例1と同様にして被験物質を調製した。
【0045】
得られた被験物質25μLに、アミロイドβ蛋白質(Aβ1-42)(ペプチド研究所、4349-v)に0.1%NH3水を加え溶解後、PBSにて20μMに希釈した基質液25μLを加え、遮光後37℃、24時間インキュベートした。インキュベート終了後、反応液に6μM ThT溶液を50μL添加し、マイクロプレートリーダーにて蛍光強度を測定した(図2)。測定数値よりアミロイドβ蛋白質の凝集阻害率を算出した。結果を表2に示す。
【0046】
【表2】
【0047】
結果、ネガティブコントロール(N.C.)に対し、ツルレイシ抽出物はアミロイドβ蛋白質の凝集を抑制していた。また、その効果も濃度依存的なものであった。
【0048】
実施例3
75歳の全身性エリテマトーデス(SLE)を持病とする女性に対して、ツルレイシ抽出物を2.5mg含むカプセルを毎朝2個服用させて、認知機能の改善程度を調べた。具体的には、(1)何度も同じことを言う、(2)深夜に徘徊する、(3)会話に入れない、(4)集中できない、(5)耳が遠い、の5項目について、服用前と比べてどの程度改善したかを調べた。
【0049】
結果、(1)〜(4)については、1ヶ月後に4割程度、2ヶ月後に6割程度、3ヵ月後に8割程度と服用期間に応じて改善していることが確認された。また、(5)については、3ヵ月後に3〜4割程度改善していることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の予防剤及び/又は治療剤は、神経細胞におけるタンパク質の凝集を抑制する保護作用を有することから、神経変性疾患、なかでもアルツハイマー病、パーキンソン病、ダウン症候群、タウオパチー(例えば、嗜銀顆粒性認知症、神経原繊維変化型老年期認知症、進行性核上性麻痺、大脳皮質変性症、ピック病)、レビー小体型認知症の予防剤及び/又は治療剤として好適に用いることができる。
図1
図2

【手続補正書】
【提出日】2020年9月11日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キニーネを実質的に含まないツルレイシの抽出物を有効成分として含有する、神経変性疾患の予防剤及び/又は治療剤。
【請求項2】
前記ツルレイシの抽出物が、ツルレイシの葉の抽出物である、請求項1記載の剤。
【請求項3】
アルツハイマー病、パーキンソン病、ダウン症候群、タウオパチー及びレビー小体型認知症から選ばれる疾患の治療又は予防に用いられる、請求項1又は2に記載の剤。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の剤を含有する組成物。
【請求項5】
医薬組成物である、請求項4記載の組成物。
【請求項6】
飲食品組成物である、請求項4記載の組成物。
【請求項7】
化粧料組成物である、請求項4記載の組成物。
【請求項8】
アルツハイマー病を予防及び/又は治療するために用いられる、請求項4〜7いずれか記載の組成物。
【国際調査報告】