(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
編み機1の編成機構7は、複数層に編地を重ねることによって編成物を編成する。編成機構7は、編成物の編成に際し、第N−1層(ただし、Nは2以上の整数)の編地の編成時に形成されたループを、第N−1層の編地の編成の完了後も保持し、第N層の編地の編目を編成する際、第N層で既に形成されたループを保持し、保持した当該第N層で既に形成されたループと、保持している第N−1層に係るループのうち、第N層で既に形成されたループの位置に対応する位置のループとの双方に新たな編糸を通して編目を編成し、編目の編成に応じて当該対応する位置のループの保持を解除する一方、当該第N層で既に形成されたループの保持を第N層の編地の編成の完了後も継続する。これにより編成機構7は、複数層の編地からなる編成物であって、しかも上下方向に隣接する2つの層の編地が、互いに対応する位置に存在するループとループとの連結によって接続された状態の編成物を編成する。
前記保持部材の2つの前記保持部は、対称点を中心として対称な位置に配置され、前記保持部材は、2つの前記保持部が対称点を中心として位置が対称である状態を維持したまま、対称点を中心として回動可能であり、
前記編成機構は、
複数の前記保持部材の対称点より下方側に配置された前記保持部により、前記N−1層で列方向に複数段で並ぶ複数の編目のループを、第N−1層の編地の編成の完了後も保持し、
第N層の編地の編成時に所定段の編目を編成する際、第N層において当該所定段の1つ前の段で形成されたループを、当該所定段の前記保持部材の対称点より上方側に配置された前記保持部により保持し、保持した第N層に係るループと、当該所定段の前記保持部材の対称点より下方側の前記保持部により保持している第N−1層に係るループとの双方に編糸を通して編目を編成し、編目の編成後、下方側の前記保持部による第N−1層に係るループの保持を解除し、上方側の前記保持部による第N層に係るループの保持を維持したまま前記保持部材を対称点を中心として回転させ、第N層に係るループを保持する前記保持部を対称点より下方側に位置させる
ことを特徴とする請求項2に記載の編み機。
前記編成機構は、第N層に係るループと第N−1層に係るループとに編目を編成して形成した新たなループを、当該他方の前記保持部形成部材の他の保持部分で保持し、当該他方の前記保持部形成部材の他の保持部分による当該新たなループの保持を第N層の編地の編成の完了後も継続することを特徴とする請求項12に記載の編み機。
2つの前記保持部形成部材は、互いに姿勢を変更することによって、片方の保持部形成部材の任意の前記保持部分ともう片方の保持部形成部材の任意の前記保持部分とを対向させることが可能に構成されており、
前記保持部分は、ループの内側を広げた状態でループを保持することができ、
前記編成機構は、
第N層の編地の編目を編成する際、当該他方の前記保持部形成部材の一の保持部分と、当該一方の前記保持部形成部材の一の保持部分とを対向させることによって各保持部分が保持するループを対向させ、編糸が係止する編み針部材を移動させて各保持部分に保持されたループのそれぞれの内側に編糸を通すことによって編目を編成する
ことを特徴とする請求項12に記載の編み機。
前記編成機構は、前記編み針部材の移動による編目の編成に応じて形成された新たなループを当該他方の前記保持部形成部材の他の保持部分に受け渡し、当該他方の前記保持部形成部材の他の保持部分による当該新たなループの保持を第N層の編地の編成の完了後も継続することを特徴とする請求項14に記載の編み機。
2つの前記保持部形成部材は、互いに姿勢を変更することによって、片方の保持部形成部材の任意の前記保持部分ともう片方の保持部形成部材の任意の前記保持部分とを第1方向において対向させることが可能に構成され、
前記編み針部材は、前記第1方向において先端側に向かう先端側向きと基端側に向かう基端側向きとに移動可能に構成されると共に、押し込み面が形成された編み針基端部と、前記編み針基端部よりも先端側で前記編み針基端部に支持され、編糸が係止可能なフック部材および前記フック部材の進入口を開閉するベラを有する編み針先端部とを備え、
前記フック部材にループが係止しているときにループが前記編み針部材に対して相対的に基端側へ進むと、前記ベラが開状態のときは前記ベラの開状態が維持される一方、前記ベラが閉状態のときはループに押されて前記ベラが開状態となり、相対的な基端側への移動が更に進むとループが基端側に前記ベラを超え、相対的な基端側への移動が更に進むと前記編み針基端部の前記押し込み面に当接し、前記押し込み面に押される構成とされ、
前記ベラが開状態でありループが前記ベラよりも基端側にあるときにループが前記編み針部材に対して相対的に先端側へ進むと、ループが前記ベラの外側に当接し、相対的な先端側への移動が更に進むと、前記ベラがループに押されて閉状態へと移行していくと共に、ループが前記進入口を介して前記フック部材に進入することなく前記ベラの外側を摺動し、相対的な先端側への移動が更に進むと、ループが前記フック部材を先端側に超える構成とされ、
前記編成機構は、
当該他方の前記保持部形成部材が当該一方の前記保持部形成部材に対して前記先端側向きに配置されている場合において、第N層の編地の編目を編成する際、
当該他方の前記保持部形成部材の一の保持部分と、当該一方の前記保持部形成部材の一の保持部分とを対向させ、当該一方の前記保持部形成部材の一の保持部分に係止する第N−1層に係るループを前記編み針部材の前記フック部材に引っ掛けた後、前記編み針部材を基端側向きへ移動させて第N−1層に係るループを前記フック部材に係止させ、前記編み針部材が当該他方の前記保持部形成部材の一の保持部分に保持された第N層に係るループの内側を通るように前記編み針部材を前記先端側向きへ移動させ、その移動に伴って前記フック部材に係止する第N−1層に係るループを前記編み針部材に対して相対的に前記基端側向きに移動させて前記押し込み面に第N−1層に係るループを当接させ、当該他方の前記保持部形成部材の一の保持部分に保持された第N層に係るループよりも前記先端側向きにある編糸に前記フック部材を係止させ、前記フック部材に係止する編糸が当該他方の前記保持部形成部材の一の保持部分に保持された第N層に係るループの内側を通るように前記編み針部材を前記基端側向きへ移動させ、その移動に伴って前記フック部材に編糸が係止した状態を維持しつつ、前記押し込み面に当接していた第N−1層に係るループを前記編み針部材に対して相対的に前記先端側向きに移動させて、第N−1層に係るループに前記ベラの外側を摺動させて前記ベラを閉状態へと移行させると共に、第N−1層に係るループが前記フック部材を先端側に超えるようにし、これにより、第N−1層に係るループと第N層に係るループとの双方に前記フック部材に係止する編糸を通して編目を形成する
ことを特徴とする請求項14に記載の編み機。
複数層に編地を重ねることによって編成物を編成する編成機構が、第N−1層の編地の編成時に形成されたループを、第N−1層の編地の編成の完了後も保持するステップと、
前記編成機構が、第N層の編地の編目を編成する際、第N層で既に形成されたループを保持し、保持した当該第N層で既に形成されたループと、保持している第N−1層に係るループのうち、当該第N層で既に形成されたループの位置に対応する位置のループとの双方にループを通して編目を編成し、編目の編成に応じて当該対応する位置のループの保持を解除する一方、当該第N層で既に形成されたループの保持を第N層の編地の編成の完了後も継続するステップと、
を含むことを特徴とする編成方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態に係る編み機1(
図2)により編成された編成物2の一例を示す図である。
図1に示すように、編成物2の形状は、立体形状である。編成物2は、その内部が空洞ではなく、編成物2を構成する編糸3によって内部が詰まった状態である。このため、編成物2に対して外部から力を加えた場合(例えば、編成物2を台に載置した状態で編成物2を押しつぶす力を加えた場合)であっても、内部が空洞の場合と比較して、その形状が変形しにくい。本実施形態に係る編み機1は、
図1で例示する編成物2のように、1枚の編地からなる平面的な形状ではなく、立体的な形状であり、かつ、編糸3によって内部が詰まった状態の編成物2を編成する装置である。なお、本実施形態では、編地において、一のループに対して、いわゆるウェール方向に他のループが通った状態を「編目」と表現している。また既に形成されている一のループに対して編糸を通すことを「編目を編成する」と表現している。編目が編成されると、新たなループが形成されることになる。また、ループ状の編糸であって、他のループが通る対象となるものを「ループ」と呼んでいる。新たなループが通っていないものも、既にループが通っているものも「ループ」に相当する。
【0010】
図2は、編み機1の内部構造を示す斜視図である。
図2は、説明の便宜および図面の見やすさを考慮して部材の構造を簡略化して描画すると共に一部の部材を省略している。以下の編み機1の説明では、
図2の両矢印Y1で示すように、編み針4の編み針延在部5(後述)が延在する方向を前後方向とし、前後方向における一方の向きを前方、前後方向において前方と反対の向きを後方とする。また、
図2の両矢印Y2で示すように、前後方向と交わる方向であって、保持部材ブロック6(後述)が昇降する方向を上下方向とする。上下方向は、編み機1が通常の態様で使用されるときの鉛直方向に対応しており、上下方向において鉛直上方に向かう向きを上方とし、上下方向において鉛直下方に向かう向きを下方とする。また、
図2の両矢印Y3で示すように、上下方向に対して垂直な水平面上で、前後方向と直交する方向を左右方向とし、左右方向において前方に向かって右の向きを右方、前方に向かって左の向きを左方とする。
【0011】
図2に示すように、編み機1は、編成機構7を有し、この編成機構7は、第1編み針ユニット8と、第1編み針ユニット8の後方に設けられた第2編み針ユニット9と、第1編み針ユニット8および第2編み針ユニット9の間に設けられた保持部材ユニット10とを含んで構成されている。
【0012】
以下、まず第1編み針ユニット8について説明する。
図2に示すように、第1編み針ユニット8は、平板状の編み針載置板12を有する。この編み針載置板12は、所定の範囲内で前後方向に移動可能に構成されている。編み針載置板12の上面には、5本の編み針4が左右方向に間隔をあけて並んで配置されている。
【0013】
図3(A)は、編み針4の拡大斜視図である。
図3(A)に示すように、編み針4は、対向して延在する2つの編み針延在部5を有し、これら一対の編み針延在部5は、その基端で湾曲部13を介して接続されている。2つの編み針延在部5のそれぞれの先端には、フック14が設けられている。つまり、編み針4は、二股のフック14を有する。
図3(A)に示すように、1つのフック14は、対向する2つの爪の先端が互いに近づくように延在し、2つの爪の間に進入口が形成され、2つの爪で囲まれた領域に進入口に連通する収容空間が形成された形状をしている。編み針4の一対のフック14には、編糸3(ループ)を跨らせて係止させることができる。また、2つの編み針延在部5のうち、一方の編み針延在部5には、編み針延在部5と直交する方向に突出するバンド部15が設けられている。バンド部15は、編み針延在部5を構成する部材を屈曲させることによって編み針延在部5と一体的に形成されている。なお、
図3(A)で例示する編み針4の形状は、あくまで一例である。編み針4は、先がピンセットのように開閉でき(従って、後述する間隙形成状態と非間隙形成状態との間で状態を変移でき)、バンド部15に相当する部材が接続されていれば、どのような形状であってもよい。編み針4の変形例については、後に
図30を用いて説明する。
【0014】
図3(B)、(C)は、編み針4を上から見た様子を説明に適した態様で単純化して模式的に示す図である。
図3(B)は間隙形成状態(後述)の編み針4を示しており、
図3(C)は非間隙形成状態(後述)の編み針4を示している。
図3(B)に示すように、編み針4は、外部から力が加わらない状態では、湾曲部13および編み針延在部5の弾性力により、一対のフック14の間に長さT1の間隙が形成された間隙形成状態となる。この長さT1は、後述する保持部材16の幅よりも十分に大きく、間隙形成状態の場合、一対のフック14の間に保持部材16が進入可能である。一方、
図3(C)に示すように、編み針4は、一対の編み針延在部5に対して、これら部材が互いに近づくように外部から力を加えることにより、一対のフック14の間に間隙が形成されない、または、ほとんど間隙が形成されない非間隙形成状態とすることもできる。
【0015】
図2では省略されているが、第1編み針ユニット8の編み針載置板12には、編み針カバー18が設けられている。
図4(A)は、第1編み針ユニット8の編み針カバー18を上から見た様子を説明に適した態様で単純化して模式的に示す図である。編み針載置板12に編み針カバー18が取り付けられている状況では、編み針4は外から見えないが、
図4(A)では編み針4を実線で描画している。なお、
図4(A)では、編み針4は、引き戻し状態(後述)である。
図4(A)に示すように、編み針カバー18には、編み針載置板12における編み針4の位置に対応させて編み針用溝19が形成されている。編み針用溝19は、前後方向に延在し、バンド部15を除く編み針4の本体が前後方向に移動可能な状態で収容される第1溝部20と、第1溝部20の上方に形成され、バンド部15が前後方向に移動可能な状態で収容される第2溝部21とを有する。第2溝部21は、第1溝部20に沿って延在している。
【0016】
第1溝部20の幅は、間隙形成状態の編み針4の幅と同程度か僅かに大きく形成されている。また、第1溝部20の高さは、編み針4の編み針延在部5の高さと同程度か僅かに大きく形成されている。第2溝部21は、第1溝部20に編み針4を収容したときのバンド部15の位置に対応する位置に形成されており、編み針用溝19に編み針4を収容すると、バンド部15が第2溝部21を介して編み針カバー18の外側に突出した状態となる。編み針カバー18内で編み針用溝19に収容された編み針4は、左右方向および上下方向への移動が規制された状態で前後方向へ移動可能である。また、編み針カバー18の外側に突出したバンド部15に対して、編み針4を前後方向へ移動させる力を加えることにより、編み針用溝19に収容された編み針4を前後方向に移動させることができる。
【0017】
図4(B)は、第2溝部21の位置で編み針カバー18および関連する部材を切断したときの断面図である。
図4(A)、(B)に示すように、第2溝部21を介して編み針カバー18の外側に突出するバンド部15には、円柱状の保護部材22が取り付けられる。なお、保護部材22は必ずしも必要ではない。
図4(A)に示すように、編み針カバー18の上面には、第1規制部材23と第2規制部材24とが設けられている。第1規制部材23は、編み針4のバンド部15に取り付けられた保護部材22に所定の位置で当接し、編み針4が後方へ向かって移動するのを規制する。第2規制部材24は、保護部材22に所定の位置で当接し、編み針4が前方へ向かって移動するのを規制する。
【0018】
図2では省略されているが、第1編み針ユニット8の編み針カバー18の上方側には、カム部材26が設けられている。
図5(A)は、カム部材26を説明するため、カム部材26、第2溝部21および保護部材22が描画された第1編み針ユニット8の編み針カバー18を上から見た様子を説明に適した態様で単純化して模式的に示す図である。カム部材26は、最も左方側に位置する第2溝部21よりも更に左方側に位置する第1カム部材位置27(
図5(A)参照)と、最も右方側に位置する第2溝部21よりも更に右方側に位置する第2カム部材位置28(
図5(C)参照)との間で移動可能である。
図5(A)では、カム部材26は、第1カム部材位置27に位置した状態である。
【0019】
図5(A)に示すように、カム部材26には、右方に向かうに従って、前方へ向かうように傾斜したカム部材溝29が形成されている。なお、
図5(A)(後述する
図5(B)、
図5(C)も同様)では、説明の便宜のため、カム部材26にカム部材溝29を明示しているが、実際には、カム部材溝29は、カム部材26の下面側の面(編み針カバー18の上面に対向する面)に形成されており、カム部材26を上から見た場合、カム部材溝29は見えない。
【0020】
図5(A)に示すように、カム部材26が第1カム部材位置27に位置しているときは、全ての編み針4は、引き戻し状態とされる。この状態から、カム部材26が右方へ向かって移動すると、最も左方に位置する保護部材22から右方へ向かって順番にカム部材溝29に取り込まれていき、カム部材26の右方へ向かう移動に伴ってカム部材溝29に案内されて後方に移動し、その後、カム部材溝29から排出される。この保護部材22の移動に伴って、引き戻し状態の編み針4は、後方へ向かって移動し、押し出し状態となる。
図5(B)は、第1カム部材位置27と第2カム部材位置28との略中間にカム部材26が位置しているときの、保護部材22とカム部材26との位置関係を示している。
図5(C)は、カム部材26が第2カム部材位置28に位置しているときの、保護部材22とカム部材26との位置関係を示している。以上のように、カム部材26を第1カム部材位置27から第2カム部材位置28へと移動させることにより、引き戻し状態の5本の編み針4を順番に後方へ向かって移動させ、全ての編み針4を押し出し状態とすることができる。
【0021】
一方で、カム部材26が第2カム部材位置28に位置しているときは、全ての編み針4は、押し出し状態とされる。この状態から、カム部材26が第1カム部材位置27に至るまで左方へ向かって移動すると、保護部材22がカム部材溝29に案内されることにより、押し出し状態の5本の編み針4が順番に前方へ向かって移動し、全ての編み針4が引き戻し状態となる。
【0022】
図4に示すように、編み針カバー18の後面には、この後面を覆うように、板状の開閉部材30が設けられている。なお、
図2では開閉部材30の図示は省略されている。
図6(A)は、第1編み針ユニット8の開閉部材30の斜視図を編み針カバー18と共に示す図である。
図6(B)は、第1開閉部材位置(後述)に位置する開閉部材30と編み針カバー18との位置関係を示す図であり、
図6(C)は、第2開閉部材位置(後述)に位置する開閉部材30と編み針カバー18との位置関係を単純化して模式的に示す図である。
図6(A)の開閉部材30は、第1開閉部材位置に位置している。
図6(A)〜
図6(C)では、全ての編み針4が押し出し状態である。
【0023】
図6(A)に示すように、開閉部材30の下端部には、開閉部材30を前後方向に貫通する5つの切欠き部31が左右方向に間隔をあけて並んで形成されている。
図6(B)に示すように、開閉部材30が第1開閉部材位置に位置している場合、5つの切欠き部31のそれぞれは、編み針カバー18の第1溝部20の開口に対応する位置に位置する。つまり、第1開閉部材位置は、開閉部材30の5つの切欠き部31のそれぞれが、第1溝部20の開口のそれぞれの位置に対応する位置に存在する状態である。
図6(A)、(B)に示すように、開閉部材30が第1開閉部材位置に位置しているときは、押し出し状態の編み針4に対して外部から力が加わらず、押し出し状態の編み針4は間隙形成状態となる。
【0024】
開閉部材30は、第1開閉部材位置(
図6(A)、(B))と第2開閉部材位置(
図6(C))との間で移動可能である。開閉部材30が第1開閉部材位置から左方へ向かって移動し、第2開閉部材位置に至ると、
図6(C)に示すように、押し出し状態の編み針4の右方側の編み針延在部5が、切欠き部31の内周によって左方へ向かって押圧され、押し出し状態の開閉部材30は、間隙形成状態から非間隙形成状態へと移行する。以上のように、開閉部材30の位置を第1開閉部材位置と第2開閉部材位置との何れかに変位させることによって、押し出し状態の編み針4の状態を間隙形成状態と非間隙形成状態との何れかの状態とすることができる。
【0025】
図2に示すように、第1編み針ユニット8の編み針載置板12の後方側の2つの隅部には、上方へ向かって突出した一対のメインギア支持部材33が設けられている。右方側に位置するメインギア支持部材33の右方側には、メインギア34(の軸心)が上下方向に移動可能な状態で設けられている。同様に、左方側に位置するメインギア支持部材33の左方側には、メインギア34(の軸心)が上下方向に移動可能な状態で設けられている。一対のメインギア34の軸心は図示を省略したモータ(一対のメインギア34ごとに異なるモータであってもよく、共通する1つのモータであってもよい)の駆動軸に動力伝達機構を介して接続されており、モータを駆動することによって一対のメインギア34を回転させることができる。一対のメインギア34は、同一の回転方向に同一の回転速度で同期して回転する。また、一対のメインギア34の軸心は、ギア上限位置とギア下限位置との間で同期して上下方向に移動可能に構成されている。
【0026】
図2に示すように、第1編み針ユニット8には、一対のプッシャ35が設けられている。右側のプッシャ35は、水平面に沿って延在する板状の押上げ部36と、押上げ部36の右側に接続され、上下方向に延在する板状の添え板部37とを有する。同様に、左側のプッシャ35は、押上げ部36と、押上げ部36の左端に接続された添え板部37とを有する。一対のプッシャ35は、同期して前後方向に移動可能に構成されている。更に、押上げ部36は、添え板部37に対して、プッシャ上限位置とプッシャ下限位置との間で同期して上下方向に移動可能に構成されている。一対のプッシャ35は、保持部材ブロック6(詳細は後述)を選択的に上昇させ、または、下降させるための部材である。保持部材ブロック6を昇降させるときの一対のプッシャ35の動作については後述する。
【0027】
図2では省略されているが、編成機構7の第1編み針ユニット8は、第1駆動機構に搭載されている。この第1駆動機構は、(1)カム部材26を第1カム部材位置27と第2カム部材位置28との間で移動させるカム部材駆動機構、(2)開閉部材30の位置を第1開閉部材位置と第2開閉部材位置との何れかに変位させる開閉部材駆動機構、(3)一対のメインギア34の軸心をギア上限位置とギア下限位置との間で同期して上下方向に移動させると共に、一対のメインギア34を同期して回転させるメインギア関連駆動機構、(4)一対のプッシャ35を前後方向に同期して移動させ、また、一対のプッシャ35の一対の押上げ部36を上下方向に同期して移動させるプッシャ駆動機構、(5)編み針載置板12を所定の範囲内で前後方向に移動させる編み針載置板駆動機構を少なくとも有している。例えば、カム部材駆動機構は、カム部材26が搭載されるキャリッジや、キャリッジ軸上でキャリッジを走査させる駆動部、駆動部を駆動するモータ、モータを制御するモータドライバ等を含んで構成されている。他の機構についても、各機構を駆動するための駆動部や、駆動部を駆動するモータ、モータを制御するモータドライバ等を含んで構成されている。また、編み機1の編成機構7は、マイクロコントローラを含んで構成された制御ユニット38を有している。制御ユニット38は、第1駆動機構の各部を制御する。なお、(1)〜(5)の各機構は、単一の第1駆動機構に搭載されている必要はなく、分散して配置されていてもよい。また、各機構は、予め定められた態様で同期して駆動するのではなく、制御ユニット38の制御に従って、独立して駆動することが可能である。
【0028】
以上、第1編み針ユニット8について説明した。第2編み針ユニット9は、第1編み針ユニット8と同様の構成であり、第1編み針ユニット8の要素と同様の機能を有する要素に、第1編み針ユニット8と同一の符号を付し、その説明を省略する。第2編み針ユニット9は、カム部材駆動機構、開閉部材駆動機構、メインギア関連駆動機構、プッシャ駆動機構、および、編み針載置板駆動機構とを少なくとも有する第2駆動機構に搭載されており、この第2駆動機構の各機構は、制御ユニット38により制御される。
【0029】
次に、保持部材ユニット10について説明する。
図2に示すように、保持部材ユニット10は、前後方向に並んで配置された5つの保持部材ブロック6を備えている。1つの保持部材ブロック6は、左右方向に離間して配置された一対の屈折部材40を有する。一対の屈折部材40のうち、右方側の屈折部材40は、上下方向に延在する立ち上がり部41と、この立ち上がり部41の上端部から右方へ向かって延在する被接触部42とを有する。同様に、一対の屈折部材40のうち、左方側の屈折部材40は、立ち上がり部41と、この立ち上がり部41の上端部から左方へ向かって延在する被接触部42とを有する。
【0030】
図2に示すように、一対の屈折部材40には、左右方向に延在する保持部材支持棒43が支持されている。保持部材支持棒43は、棒状の部材であり、その両端が一対の屈折部材40の一対の立ち上がり部41に支持されている。保持部材支持棒43の左右の両端部のそれぞれには、一対の保持部材状態変更部材44が設けられており、一対の保持部材状態変更部材44の間には、5つの保持部材16が左右方向に間隔をあけて並んで配置されている。
【0031】
保持部材ブロック6は、外部から力が加わっていないときは、図示しないバネの付勢力で下方に付勢され、ブロック下限位置に位置した状態である。この状態の保持部材ブロック6に対して、保持部材ブロック6を上方へ向かって移動させる力を加えることにより、保持部材ブロック6を、前後方向および左右方向の移動が規制された状態で上下方向に移動させることが可能である。
【0032】
一対のプッシャ35は、5つの保持部材ブロック6のうち、任意の1つまたは2つの保持部材ブロック6を昇降させることができる。1つの保持部材ブロック6の昇降について詳述すると、上述したように、一対のプッシャ35は、前後方向に同期して移動可能であると共に、一対のプッシャ35の一対の押上げ部36は上下方向に同期して移動可能である。例えば、一の保持部材ブロック6を上昇させる場合、制御ユニット38は、プッシャ駆動機構を制御して、一対のプッシャ35(第1編み針ユニット8のものでも、第2編み針ユニット9のものでもよい)の押上げ部36のそれぞれの上面と、当該一の保持部材ブロック6の一対の被接触部42のそれぞれの下面とが対向した状態となるように、一対のプッシャ35の前後方向の位置を調整する。
図7(A)は、この状態となったときの当該一の保持部材ブロック6の一対の屈折部材40と一対のプッシャ35との位置関係を模式的に示す図である。
【0033】
この状態となった後、制御ユニット38は、プッシャ駆動機構を制御して、一対の押上げ部36を、一対の添え板部37に対して上方へ向かって上昇させる。一対の押上げ部36の上方へ向かう移動に応じて、所定のタイミングで一対のプッシャ35の押上げ部36のそれぞれの上面と、当該一の保持部材ブロック6の一対の被接触部42のそれぞれの下面とが接触した状態となる。
図7(B)は、この状態となったときの当該一の保持部材ブロック6の一対の屈折部材40と一対のプッシャ35との位置関係を模式的に示す図である。この状態となった後、更に一対の押上げ部36の上方へ向かう移動が進むと、一対の屈折部材40が一対の押上げ部36により上方へ持ち上げられ、これにより当該一の保持部材ブロック6が上方へ向かって移動する。なお、前後方向に連続する2つの屈折部材40の間にプッシャ35を位置させることにより、一対のプッシャ35により2つの保持部材ブロック6を同時に上昇させることが可能である。
【0034】
上述の通り、保持部材ユニット10は、前後方向に並んで配置された5つの保持部材ブロック6を備えており、保持部材ブロック6は、保持部材支持棒43の両端部に設けられた一対の保持部材状態変更部材44と、一対の保持部材状態変更部材44の間に設けられた5つの保持部材16とを有している。
図2に示すように、第1編み針ユニット8の最も左方側に設けられた編み針4Aと、第2編み針ユニット9の最も左方側に設けられた編み針4Bとは、略同一直線上に配置されており、この直線上に異なる5つの保持部材ブロック6の5つの保持部材16が前後方向に離間して並んで配置されている。このように、前後方向を「列方向」とした場合に、編成機構7は、列方向において対向する一対の編み針4と、この一対の編み針4と略同一直線上で列方向に5段で並ぶ保持部材16とを含む列グループを有する。編成機構7には、この列グループが左右方向に間隔をあけて5つ設けられている。
【0035】
図8(A)は、1つの保持部材ブロック6の一対の保持部材状態変更部材44のうち、左方側に設けられた保持部材状態変更部材44、および、保持部材状態変更部材44に最も近い位置に設けられた保持部材16を所定の視点で見たときの斜視図である。
図8(B)は、
図8(A)と異なる視点で保持部材状態変更部材44および保持部材16を見たときの斜視図である。
図8(A)、(B)(後述する
図10の各図も)では、保持部材16から所定距離だけ右方に離間した位置で部材が切断されている。また、
図8(B)では一部の部材を透過して描画している。なお、
図8(A)、(B)(後述する
図10の各図も)では、説明の便宜のため、
図2と比較して、保持部材状態変更部材44と保持部材16との距離が近くなっている。ただし、保持部材状態変更部材44と保持部材16との距離は、保持部材状態変更部材44および保持部材16の動作に影響しない。以下、
図8、後述する
図9および後述する
図10の各図を用いて、1つの保持部材ブロック6の一対の保持部材状態変更部材44のうち、左方側に設けられた保持部材状態変更部材44、および、関連する部材について説明する。
【0036】
図8(A)、(B)に示すように、保持部材状態変更部材44は、略円筒状の部材であり、左方側の端部に従動ギア45が設けられている。なお、
図8(A)、(B)(後述する
図10の各図も)では、従動ギア45の歯車が描画されていないが、実際には
図2に示すように、従動ギア45の外周には歯車が形成されている。従動ギア45は、保持部材状態変更部材44の一部であり、従動ギア45を回転させることによって保持部材支持棒43を中心として保持部材状態変更部材44を回動させることができる。後述するように、従動ギア45にはメインギア34がかみ合い、従動ギア45は、メインギア34の回転に従動して回転する。
【0037】
保持部材状態変更部材44の中心軸には、貫通孔44aが形成されており、この貫通孔44aの内周に保持部材支持棒43の外周が接触した状態で、この貫通孔44aを保持部材支持棒43が貫通している。このような構成のため、保持部材状態変更部材44に対して外部から力が加っていない状態では、貫通孔44aの内周と保持部材支持棒43の外周との間に働く摩擦力により、保持部材支持棒43に対する保持部材状態変更部材44の姿勢が維持される。一方で、保持部材状態変更部材44に対して、摩擦力に抗して保持部材状態変更部材44を回動させる力が外部から加わると、保持部材状態変更部材44は、保持部材支持棒43を中心として回動する。
【0038】
図8(A)、(B)(特に
図8(A))に示すように、保持部材支持棒43上で、保持部材状態変更部材44の右方側の面46の右方側には、所定の長さの円筒状の介在部材47が設けられており、この介在部材47の右方側には保持部材16(詳細な構造は後述)が設けられており、この保持部材16の右方側には介在部材48が設けられている。保持部材16は、介在部材47と介在部材48との挟まれ、これら部材によって保持部材支持棒43上の左右方向の位置が位置決めされている。保持部材支持棒43に設けられた他の保持部材16についても、保持部材16と保持部材16との間、および保持部材16と保持部材状態変更部材44との間に介在する介在部材によって保持部材支持棒43上の位置が位置決めされている。
【0039】
図9(A)は、
図8(A)、(B)の状態(以下、便宜的に「正状態」という)の保持部材状態変更部材44の右方側の面46を正面視したときの様子を模式的に示す図である。
図8(A)および
図9(A)に示すように、正状態の保持部材状態変更部材44の右方側の面46において、面46を正面視したときの中心よりも右側には、緩やかに湾曲した開口が形成されており、保持部材状態変更部材44には、この開口に連通する湾曲溝50が形成されている。湾曲溝50には、湾曲溝挿入棒52が挿入されている。
【0040】
湾曲溝挿入棒52について詳述すると、湾曲溝挿入棒52は、保持部材16の湾曲溝側保持片54(後述)に支持された状態で、その先端部が、湾曲溝50の内部に挿入されている。後述するように、湾曲溝側保持片54は、保持部材支持棒43との間で働く摩擦力により、保持部材支持棒43に対する位置が維持されている。
【0041】
図8(A)および
図9(A)に示すように、正状態の保持部材状態変更部材44の右方側の面46において、面46を正面視したときの中心よりも左側には、円状の開口が形成されており、保持部材状態変更部材44には、この開口に連通する保持穴51が形成されている。保持穴51には、保持穴挿入棒53が挿入されている。保持穴51の内周のサイズは、保持穴挿入棒53の外周のサイズと略同一であり、保持穴挿入棒53は、保持部材状態変更部材44に対する相対的な位置が固定された状態で、保持穴51に挿入され支持されている。
【0042】
図8(A)、(B)に示すように、保持部材16は、湾曲溝側保持片54と保持穴側保持片55とを有する。湾曲溝側保持片54の形状と保持穴側保持片55の形状とは略同一である。
図9(B)は、湾曲溝側保持片54を正面から見た様子を模式的に示す図である。
図9(B)に示すように、湾曲溝側保持片54は、円弧上の外周を有し、その中央部から中央延在部56が突出している。中央延在部56の先端部には、保持部材支持棒43が貫通する貫通孔57が形成され、基端部には、湾曲溝挿入棒52が貫通する貫通孔58が形成されている。中央延在部56の両側には、2つの爪部59が形成されており、この爪部59と中央延在部56との間には窪みが形成されている。保持穴側保持片55は、湾曲溝側保持片54と略同一の形状であるため、湾曲溝側保持片54と同一の要素には、湾曲溝側保持片54と同一の符号を付し、説明を省略する。
【0043】
図8(A)、(B)に示すように、湾曲溝側保持片54は、中央延在部56の貫通孔57(
図9(B))に保持部材支持棒43が貫通する。湾曲溝側保持片54は、湾曲溝側保持片54に対して外部から力が加わらない限り、保持部材支持棒43の外周と貫通孔57の内周との間で働く摩擦力により、保持部材支持棒43に対する位置が維持される。また、貫通孔58(
図9(B))には、湾曲溝挿入棒52が貫通する。上述したように、湾曲溝側保持片54は、湾曲溝挿入棒52を支持している。同様に、保持穴側保持片55は、中央延在部56の貫通孔57に保持部材支持棒43が貫通し、かつ、貫通孔58に保持穴挿入棒53が貫通する。
図8(A)、(B)に示すように、湾曲溝側保持片54の一方の爪部59と、保持穴側保持片55の一方の爪部59とは対応する位置に位置しており、これら爪部59によって1つの保持部60が形成されている。また、湾曲溝側保持片54の他方の爪部59と、保持穴側保持片55の他方の爪部59とは対応する位置に位置しており、これら爪部59によって1つの保持部60が形成されている。このように、保持部材16は、2つの保持部60を有する。この2つの保持部60は、保持部材支持棒43(対称点)を中心として対称な位置に配置される。保持部材16は、2つの保持部60が保持部材支持棒43(対称点)を中心として位置が対称である状態を維持したまま、保持部材支持棒43(対称点)を中心として回動可能である。
【0044】
保持部材状態変更部材44は、保持部材16を、下方閉状態、両方閉状態および上方閉状態の何れかとすることができる。
図10は、保持部材16の各状態、および、後述する第1回動動作、第2回動動作、第3回動動作の説明に利用する図である。
図10(A)は、下方閉状態の保持部材16を示している。
図10(A)に示すように、下方閉状態では、保持部材支持棒43に対して一方の保持部60が上方に位置し、他方の保持部60が下方に位置している。以下の説明では、保持部材支持棒43に対して一方の保持部60が上方に位置し、他方の保持部60が下方に位置している状態のときに、上方側の保持部60を上方保持部60Uといい、下方側の保持部60を下方保持部60Dという。
図10(A)に示すように、下方閉状態では、上方保持部60Uについて、湾曲溝側保持片54の爪部59の先端と保持穴側保持片55の爪部59の先端とが離間し、これら爪部59で囲まれた収容空間61が、これら爪部59の間に形成される進入口を介して開放された状態である。以下、この状態を「開放状態」という。
【0045】
一方、下方閉状態では、下方保持部60Dについて、湾曲溝側保持片54の爪部59の先端と保持穴側保持片55の爪部59の先端とが交差し、これら爪部59で囲まれた収容空間61の外周が閉じた状態である。以下、この状態を「掴持状態」という。収容空間61に編糸3のループが挿通している状態で、保持部60を掴持状態とすると、収容空間61からループが抜けず、保持部60によりループを保持できる。保持部60が掴持状態のときは、保持部60の位置にかかわらず、ループを保持できる。
図10(B)は両方閉状態の保持部材16を示している。
図10(B)に示すように、両方閉状態では、上方保持部60Uおよび下方保持部60Dが共に掴持状態である。
図10(C)は上方閉状態の保持部材16を示している。
図10(C)に示すように、上方閉状態では、上方保持部60Uが掴持状態であり、下方保持部60Dが開放状態である。
【0046】
保持部材状態変更部材44は、第1回動動作、第2回動動作または第3回動動作を行うことによって、保持部材16の状態を所定の態様で変化させることができる。以下、第1回動動作、第2回動動作および第3回動動作について説明する。今、保持部材16および保持部材状態変更部材44の状態が、
図10(B)に示す状態であるとする。
図10(B)では、保持部材16は両方閉状態であり、湾曲溝挿入棒52と保持穴挿入棒53と保持部材支持棒43とが略同一水平面上に位置している。
図10(B)の状態から、回動方向KD1に向かって30°程度、保持部材状態変更部材44が回動すると、保持部材16および保持部材状態変更部材44の状態は、
図10(A)の状態となる。
図10(A)では、保持部材16は、下方閉状態である。つまり、
図10(B)の状態から保持部材状態変更部材44を30°程度、回動方向KD1へ向かって回動させると、保持部材16は、両方閉状態から下方閉状態へ移行する。これは以下の理由による。
【0047】
すなわち、
図10(B)の状態から保持部材状態変更部材44が回動方向KD1へ回動すると、保持部材状態変更部材44の回動方向KD1への回動に応じて、保持穴側保持片55は、保持部材状態変更部材44の回動量と同じだけ回動する。保持穴51に挿入された保持穴挿入棒53が保持部材状態変更部材44の回動に同期して回動し、保持穴挿入棒53の回動に伴って保持穴側保持片55が保持部材支持棒43を中心として回動するからである。一方、保持部材状態変更部材44の回動方向KD1への回動に応じて、湾曲溝側保持片54は回動しない。保持部材状態変更部材44が回動している間、湾曲溝挿入棒52が湾曲溝50の内周に接触することなく、湾曲溝50の内部を移動し、湾曲溝挿入棒52に対して外部から力が加わらないからである。湾曲溝挿入棒52に対して外部から力が加わっていないときは、湾曲溝側保持片54に対して外部から力が加わらず、湾曲溝側保持片54の位置は変化しない。以上のように、保持部材状態変更部材44の回動方向KD1への30°程度の回動に応じて、保持穴側保持片55は回動する一方、湾曲溝側保持片54は回動しないため、保持部材16は、
図10(B)に示す両方開状態から、
図10(A)に示す下方閉状態へと移行する。
【0048】
そして、
図10(A)の状態から、回動方向KD2に210°程度、保持部材状態変更部材44が回動し、保持部材16の状態を
図10(A)→
図10(B)→
図10(C)→
図10(D)→
図10(E)へと変化させる動作が第1回動動作である。詳述すると、
図10(A)の状態から保持部材状態変更部材44が回動方向KD2に30°程度、回転すると、
図10(B)に示すように、保持部材16は両方閉状態となる。保持穴側保持片55は、保持部材状態変更部材44の回動に同期して回動する一方、湾曲溝側保持片54は、回動しないからである。
図10(B)の状態から保持部材状態変更部材44が回動方向KD2に更に30°程度、回転すると、
図10(C)に示すように、保持部材16は上方閉状態となる。保持穴側保持片55は、保持部材状態変更部材44の回動に同期して回動する一方、湾曲溝側保持片54は、回動しないからである。
図10(C)の状態では、湾曲溝挿入棒52が、湾曲溝50の端部の内周に当接した状態(または当該内周から僅かに離間した状態)となる。
【0049】
図10(C)の状態から保持部材状態変更部材44が回動方向KD2に更に回動すると、保持穴側保持片55だけでなく湾曲溝側保持片54も保持部材状態変更部材44と同期して回転するようになる。湾曲溝挿入棒52に対して、湾曲溝50の端部の内周が当接し、湾曲溝挿入棒52に対して、保持部材状態変更部材44の回動に同期して湾曲溝挿入棒52を回動させる力が外部から加わるからである。従って、
図10(C)において掴持状態の上方保持部60Uは、掴持状態を維持したまま、回動方向KD2に向かって移動していく。一方、
図10(C)において開放状態の下方保持部60Dは、開放状態を維持したまま、回動方向KD2に向かって移動していく。
図10(D)は、
図10(C)の状態から回動方向KD2に15°程度、回動したときの保持部材16および保持部材状態変更部材44の様子を示している。
【0050】
図10(D)の状態から、更に回動方向KD2への回動が進むと、
図10(E)に示すように、
図10(C)で上方保持部60Uであった保持部60が掴持状態を維持したまま下方保持部60Dとなり、
図10(C)で下方保持部60Dであった保持部60が開放状態を維持したまま上方保持部60Uとなる。以上の
図10(A)の状態から
図10(E)の状態へと保持部材16の状態を変化させる動作が第1回動動作である。以上の通り、保持部材状態変更部材44が第1回動動作をすると、下方閉状態→両方閉状態→上方閉状態へと状態が変移し、その後、掴持状態の上方保持部60Uが掴持状態を維持したまま下方保持部60Dとなり、開放状態の下方保持部60Dが開放状態を維持したまま上方保持部60Uとなる。
【0051】
第2回動動作は、
図10(E)の状態から保持部材状態変更部材44が回動方向KD1へ向かって30°程度回動し、
図10(F)に示すように、上方保持部60Uが開放状態から掴持状態へ移行し、下方保持部60Dが掴持状態から開放状態へ移行する動作である。
【0052】
第3回動動作は、
図10(F)の状態から保持部材状態変更部材44が回動方向KD1へ向かって150°程度、回動し、保持部材16の状態を以下の態様で変化させる動作である。すなわち、
図10(F)の状態では、保持部材16の上方保持部60Uは掴持状態であり、下方保持部60Dは開放状態である。保持部材状態変更部材44により第3回動動作が行われると、掴持状態の上方保持部60Uは、掴持状態を維持したまま、下方保持部60Dとなり、一方、開放状態の下方保持部60Dは、開放状態を維持したまま上方保持部60Uとなる。
【0053】
図2に示すように、保持部材支持棒43の両端部には、一対の保持部材状態変更部材44が設けられている。一対の保持部材状態変更部材44は、正面視したときに左右対称の構造となっており、一方の保持部材状態変更部材44の湾曲溝50と、他方の保持部材状態変更部材44の湾曲溝50とが対向し、かつ、一方の保持部材状態変更部材44の保持穴51と、他方の保持部材状態変更部材44の保持穴51とが対向している。一対の保持部材状態変更部材44の一対の湾曲溝50には共通する湾曲溝挿入棒52が挿入されており、また、一対の保持部材状態変更部材44の一対の保持穴51には共通する保持穴挿入棒53が挿入されている。
【0054】
制御ユニット38は、メインギア関連駆動機構およびプッシャ駆動機構を制御して、保持部材状態変更部材44を回動させて保持部材16の状態を変更することができ、特に、保持部材状態変更部材44に第1回動動作、第2回動動作または第3回動動作を行わせることができる。詳述すると、制御ユニット38は、保持部材16の状態を変更する対象とする一の保持部材ブロック6を、第1編み針ユニット8または第2編み針ユニット9の一対のプッシャ35により所定量だけ上方へ向かって移動させる。更に、制御ユニット38は、第1編み針ユニット8または第2編み針ユニット9の編み針載置板12を所定量だけ前方へ移動させると共に、一対のメインギア34の軸心の上下方向の位置を調整し、当該一の保持部材ブロック6の一対の従動ギア45に、一対のメインギア34を噛み合わせる。
【0055】
図11は、従動ギア45とメインギア34とがかみ合った様子を示す図である。
図11では、左方側の屈折部材40を取り外した保持部材ユニット10を、左方側から右方に向かって見ている。一対の従動ギア45と一対のメインギア34とを噛み合わせた後、制御ユニット38は、保持部材16を、現在の状態から目標とする状態とするために必要な回転量だけ適切な回転方向に一対のメインギア34を回転させる。一対のメインギア34の回転に伴って、一対の従動ギア45と共に一対の保持部材状態変更部材44が適切な回動方向に適切な回動量だけ同期して回動し、当該一の保持部材ブロック6に設けられた5つの保持部材16の状態が同期して変化する。
【0056】
この他、保持部材ユニット10は、後述する係止部材駆動機構(不図示)を有している。後述するように、制御ユニット38は、編成物2の編成時に、係止部材駆動機構を制御して、編糸3の取り回しを行う。また、編み機1の編成機構7は、編糸3が巻き回されたボビンを収容し、編成機構7に編糸3を供給する給糸機構を有する。
図2では、ボビンに巻き回された編糸3の様子を描画している。
【0057】
次に、編み機1の編成機構7が編成物2を編成するときの動作について説明する。以下では、編み針4、保持部材16および編糸3を模式的に示した模式図を用いて編み機1の基本的な動作のフローを説明すると共に、適宜、斜視図を用いて編み機1の具体的な状態を明示する。
図12〜
図16は、編成機構7が編成物を編成するときの動作の流れを模式図によって表すものである。
図17〜
図25は、編成機構7の斜視図である。
図12〜
図16および
図17〜
図25において、方向は、図中に矢印で示す方向に従う。
【0058】
図12〜
図16の模式図では、例えば
図12(A)に示すように、
図2の第1編み針ユニット8の編み針4A(最も左方側にある編み針4)と、第2編み針ユニット9の編み針4B(最も左方側にある編み針4)とを含む列グループを横から見た様子を模式的に示している。この列グループには、列方向(前後方向)において編み針4Bから編み針4Aに向かって、1段目から5段目までの5つの段が形成されており、1段目に保持部材H1が設けられ、2段目に保持部材H2が設けられ、3段目に保持部材H3が設けられ、4段目に保持部材H4が設けられ、5段目に保持部材H5が設けられている。斜視図では、
図17(A)のみに、符号H1〜H5を付している。
【0059】
また、保持部材H1を有する保持部材ブロック6を保持部材ブロックB1とし、保持部材H2を有する保持部材ブロック6を保持部材ブロックB2とし、保持部材H3を有する保持部材ブロック6を保持部材ブロックB3とし、保持部材H4を有する保持部材ブロック6を保持部材ブロックB4とし、保持部材H5を有する保持部材ブロック6を保持部材ブロックB5とする。斜視図では、
図17(A)のみに、符号B1〜B5を付している。上述したように、編成機構7は、5つの列グループを備えているが、模式図で表した列グループ以外の列グループも、模式図で表した列グループと同様の動作を行う。
【0060】
また、
図17〜
図25は、一部の例外を除き、基本的には
図2に示す編み機1の編成機構7を、左斜め後方側から保持部材ユニット10に向かって見た斜視図である。ただし、図面の見やすさのため、保持部材ユニット10の左方側に配置された5つの屈折部材40、全てのプッシャ35、および、左方側に配置されたメインギア支持部材33(およびこれに関連する部材)は図示を省略している。以下の説明において、「図○の状態」と表現する場合、編成機構7の状態と、編成機構7に保持された編糸3の状態との組み合わせを意味する。また、「図○(ただし
図17〜25のうちの何れかの図)は、図△(ただし
図12〜16のうちの何れかの図)に対応する」と表現する場合、図○が、図△が示す編成機構7の状態を具体的に表した斜視図であることを意味する。
【0061】
また、以下の説明において、制御ユニット38が部材を移動させたり、部材の状態を変化させたりする場合に、各機構で行われる具体的な動作の詳細な説明は省略する場合がある。例えば、制御ユニット38が、プッシャ駆動機構その他の関連する機構を制御して、プッシャ35を移動させ、保持部材16を上昇(下降)させることを単に「制御ユニット38は、保持部材16を上昇(下降)させる」のように表現する。また、例えば、制御ユニット38が、編み針載置板駆動機構その他の関連する機構を制御して、編み針載置板12を前方(または後方)に移動させることにより、編み針4(例えば、編み針4A)を前方(または後方)に移動させることを単に「制御ユニット38は、編み針4を前方へ移動させる」のように表現する。
【0062】
ここで、編成機構7の動作の詳細を説明する前に、編成機構7が編成物2を編成するときの大まかな流れについて説明する。編成機構7は、第1層の編地(複数の列について、複数段の編目が編成されたもの)を編成し、第1層の編地の上方に重ねるように第2層の編地を編成する。編成機構7は、第2層よりも上方についても編地を重ねていき、編地が複数層に重なった編成物2を編成する。
【0063】
さて、まず、編成機構7は、
図12(A)の状態とされる。
図17(A)は
図12(A)に対応する。
図17(A)に示すように、
図12(A)の状態では、保持部材H1の掴持状態の下方保持部60Dにより、いわゆる作り目のループが保持される。ただし、
図12(A)を含む模式図では、図面の見やすさのため、保持部材H1によって保持される作り目のループについては図示を省略している。また、
図12(A)および
図17(A)に示すように、
図12(A)の状態では、保持部材H2の掴持状態の下方保持部60Dにより、保持部材H1が保持するループに通されたループが保持される。本例では、給糸機構により供給される編糸3が手動で巻き回されることによって、
図12(A)の状態とされる。ただし、一部自動化して
図12(A)の状態とするようにしてもよい。
図12(A)の状態では、全ての保持部材16の上下方向の位置は、編み針4Aおよび編み針4Bの上下方向の位置よりも下方である。以下、
図12(A)における保持部材16の上下方向の位置を「保持部材下限位置」という。
【0064】
図12(A)の状態から、制御ユニット38は、保持部材H2を上昇させ、
図12(B)の状態とする。
図17(B)は
図12(B)に対応する。
図12(B)の保持部材H2の上下方向の位置は、編み針4Aおよび編み針4Bの上下方向の位置よりも上方に位置する。以下、
図12(B)における保持部材H2の上下方向の位置を「保持部材上限位置」という。
【0065】
その後、編糸3の取り回しが行われる。
図18(A)は、編糸3の取り回しが行われた後の編成機構7を示す斜視図である。
図18(A)に示すように、編糸3の取り回しでは、給糸機構から編糸3が引きだされた上で、引き出された編糸3のうち、保持部材ブロックB2の最も右方側の保持部材16(
図18(A)において実線の丸印をつけた保持部材16)が保持するループに至るまでの取り回し部分62が、
図18(A)に示す状態となるようにされる。
【0066】
図18(A)に示すように、取り回し部分62は、保持部材ブロックB2の最も右方側の保持部材16が保持するループにつながる位置から、上方に向かって延在する第1上下方向延在部分63と、この第1上下方向延在部分63の上端から屈曲し左方に向かって延在する第1左右方向延在部分64と、この第1左右方向延在部分64の左端から屈曲し上方に向かって延在する第2上下方向延在部分65と、この第2上下方向延在部分65の上端から屈曲右方に向かって延在する第2左右方向延在部分66と、この第2左右方向延在部分66の右端から屈曲し下方に向かって延在する第2上下方向延在部分67とを有している。
【0067】
図18(A)において、部位A、部位B、部位C、部位Dおよび部位Eには、編糸3が係止する係止部材(
図26)が配置されており、各部位の係止部材に編糸3が係止することによって、取り回し部分62について
図18(A)に示す状態とされる。保持部材ユニット10は、各係止部材の位置を所定の範囲内で所定の態様で変位させる係止部材駆動機構を有している。制御ユニット38は、係止部材駆動機構を制御することによって、所定の範囲内で所定の態様で各係止部材の位置を変位させることができる。編糸3の取り回しは、各係止部材に編糸3が係止された後、制御ユニット38の制御で各係止部材が適切な態様で適切な位置に移動されることによって行われる。
【0068】
図26は、
図18(A)の部位A、B、C、D、Eにおいて、編糸3が係止する係止部材KA、KB、KC、KD、KEを単純化して模式的に示す図である。
図26の例では、係止部材KAと係止部材KEとが設けられた板部材ITが保持部材ユニット10よりも下方側に設けられており、部位Aに対応する部位A´において係止部材KAに編糸3が係止している。また、部位Bに対応する部位B´において係止部材KBに編糸3が係止している。
図26の例では、係止部材KBは、フックが形成された針状の部材である。また、部位Cに対応する部位C´において係止部材KCに編糸3が係止している。また、部位Dに対応する部位D´において係止部材KDに編糸3が係止している。また、部位Eに対応する部位E´において係止部材KEに編糸3が係止している。
【0069】
編糸3の取り回し後、制御ユニット38は、編み針4Aを押し出し状態とする。次いで、制御ユニット38は、編み針4Aを非間隙形成状態とし、非間隙形成状態の編み針4Aについて、保持部材上限位置に位置する保持部材H2が保持するループ(保持部材H2によって持ち上げられたループ)を通過させつつ、後方へ向かって移動させる。制御ユニット38は、編み針4Aのフック14よりも前方の部位が取り回し部分62の第1左右方向延在部分64の下方に至るまで編み針4Aを前方へ向かって移動させる。編み針4Aは非間隙形成状態であるため、編み針4Aは、一対のフック14の間に編糸3が入り込むことなく、スムーズにループを通過しつつ後方へ移動することができる。なお、以下において、特に説明しない場合にも、制御ユニット38は、編み針4にループを通過させる場合、少なくとも編み針4がループに進入するタイミングでは、編み針4を非間隙形成状態とする。
【0070】
次いで、制御ユニット38は、係止部材駆動機構を制御して、第1左右方向延在部分64を下方へ向かって移動させる。第1左右方向延在部分64の下方への移動が進むと、所定の動作が行われてフック14に編糸3が入り込み、フック14に編糸3が係止した状態となる(
図12(C))。
図18(B)は
図12(C)に対応する。
【0071】
ここで、編糸3の取り回し後、第1左右方向延在部分64に対応する編糸3が編み針4Aのフック14に係止するまでの動作について簡単に説明する。
図27および
図28は、編糸3が係止する係止部材が
図26で例示した係止部材KA〜KEであるものとして、編糸3の取り回しから、第1左右方向延在部分64に対応する編糸3が編み針4Aのフック14に係止するまでの動作を簡単に示す図である。
図27(A)では、編糸3が係止部材KAに係止している状態である。その後、係止部材KEが動作し、
図27(B)に示す態様で、編糸3が係止部材KEに係止する。なお係止部材KEは、板部材ITに接続する軸心を中心として回動可能である。
【0072】
次いで、係止部材KBが、下方側の先端に形成されたフックが、編糸3よりも下方に位置する程度に下方へ向かって下降し(
図27(C))、その後、上昇して編糸3を係止し、編糸3を上方へ向かって持ち上げる(
図27(D))。次いで、係止部材KBにより編糸3が持ち上げられることによって形成されたループに、
図27(E)に示す態様で係止部材KCの先端が入り込む。次いで、
図27(F)に示すように、
図27(F)で示す態様で係止部材KFに編糸3が係止すると共に、係止部材KCのフックに編糸3が係止した状態で、係止部材KCが
図27(F)に示す態様で移動する。
図27(F)の状態では、係止部材KA、係止部材KB、係止部材KC、係止部材KF、係止部材KEの順番で編糸3が係止した状態である。
【0073】
その後、係止部材KFが
図28(A)に示す態様で移動すると共に、係止部材KCにより編糸3が引っ張られることによって形成されたループに進入するように、係止部材KDが上方へ向かって移動する(
図28(A))。次いで、
図28(B)に示すように、編糸3が係止した状態で係止部材KDが下方へ向かって移動すると共に、係止部材KDと係止部材KFとで挟まれた編糸3の部分(第1左右方向延在部分64に相当する部分)を潜るように、編み針4Aが後方に向かって移動する。その後、係止部材KFが
図28(C)に示す態様で移動し、係止部材KFによる編糸3の保持が解除される。すると、
図28(C)に示すように、係止部材KDと係止部材KFとで挟まれた編糸3の部分(第1左右方向延在部分64に相当する部分)が下方へ向かって移動し、編み針4Aのフック14よりも前方の部位に当接した状態となる。
図28(C)の状態から、編み針4Aが後方へ向かって移動すると、
図28(D)に示すように、編み針4Aのフック14に編糸3が係止した状態となる。
【0074】
さて、
図12(C)の状態となった後、制御ユニット38は、保持部材H2が保持するループを通過させつつ、編み針4Aを前方へ向かって移動させる。制御ユニット38は、編み針4Aのフック14が保持部材H3の上方に至るまで編み針4Aを前方へ向かって移動させる(
図12(D))。
図19(A)は
図12(D)に対応する。
図12(B)の状態から
図12(D)の状態へと移行させる動作は、第1層の編地に2段目の編目を編成する動作に相当する。より詳細には、
図12(B)の状態から
図12(D)の状態へと移行させる動作は、第1層の編地の編成時に、2段目の編目を編成するにあたって、1段目(第1層において2段目の1つ前の段)の編目の編成により形成された2段目のループに編糸3を通して、2段目の編目を編成する動作に相当する。編目の編成に応じて新たなループ(3段目のループ)が形成される。なお、第1層では、1段目から5段目に向かう方向に段階的に編目が編成されていくため、例えば、第1層では、2段目の1つ前の段が1段目となり、5段目の1つ前の段が4段目となる。一方、第2層では、5段目から1段目に向かう方向に段階的に編目が編成されていくため、例えば、4段目の1つ前の段が5段目となり、2段目の1つ前の段が3段目となる。
【0075】
図12(D)の状態となった後、制御ユニット38は、編み針4Aから保持部材H3へとループを目移しする(
図12(E))。
図19(B)は
図12(E)に対応する。
図19(B)では、図面の見やすさのため、保持部材ブロックB2の図示を省略している。編み針4Aから保持部材H3への目移しについて詳述すると、制御ユニット38は、編み針4Aを間隙形成状態とする。編み針4Aが間隙形成状態となると、一対のフック14に編糸3が跨って係止した状態となる。次いで、制御ユニット38は、保持部材H3を下方閉状態とする。つまり、制御ユニット38は、保持部材H3の上方保持部60Uを開放状態とする。次いで、制御ユニット38は、下方閉状態の保持部材H3を上方へ向かって所定位置まで移動させる。
【0076】
図3(B)を用いて説明したように、間隙形成状態の編み針4Aの一対のフック14の間に形成される間隙の長さT1は、保持部材16の幅よりも大きく、下方閉状態の保持部材H3の上方へ向かう移動が進むと、保持部材H3の開放状態の上方保持部60Uは、一対のフック14の間に入り込む。その際、上方保持部60Uの収容空間61に進入口を介して一対のフック14に跨って係止する編糸3が収容される。制御ユニット38は、一対のフック14に対する編糸3の係止が解除される程度に編糸3が持ち上がるまで保持部材H3を上昇させた後、保持部材H3の上昇を停止する。以上が編み針4Aから保持部材H3へとループを目移しする際の動作である。
【0077】
その後、制御ユニット38は、編み針4Aを前方へ移動させると共に(
図12(F))、保持部材ブロックB3の一対の保持部材状態変更部材44に第1回動動作を行わせる。保持部材状態変更部材44により第1回動動作が行われると、ループを保持する開放状態の上方保持部60Uが、ループを保持したまま掴持状態へ移行すると共に下方保持部60Dとなる。つまり、保持部材H3について、掴持状態の下方保持部60Dがループを保持した状態となる。次いで、制御ユニット38は、保持部材H3を保持部材下限位置まで移動させる(
図12(G))。
図20(A)は
図12(G)に対応する。
【0078】
図12(G)の状態となった後、制御ユニット38は、保持部材H2を保持部材下限位置まで移動させる(
図12(H))。
図20(B)は
図12(H)に対応する。
図12(G)の状態から
図12(H)の状態への移行に際し、制御ユニット38は、
図20(B)に示すように、取り回し部分62が保持部材ブロックB2と保持部材ブロックB3との間に延在している状態となるようにする。制御ユニット38は、係止部材駆動機構を制御すると共に、必要に応じて保持部材ブロック6や編み針4を利用して、取り回し部分62が保持部材ブロックB1と保持部材ブロックB2との間に延在している状態から、取り回し部分62が保持部材ブロックB2と保持部材ブロックB3との間に延在した状態となるようにする。なお、以下では詳細な説明を省略するが、取り回し部分62の状態は制御ユニット38により必要に応じて適切に変化される。
【0079】
図12(B)の状態から
図12(H)の状態へ至るまでのフローにより、第1層の2段目に編目が編成される。第1層の2段目のループは、保持部材H2の下方保持部60Dによって保持された状態である。更に、2段目の編目の編成により新たに形成されたループ(3段目のループ)が保持部材H3によって保持された状態となる。後に明らかとなる通り、保持部材H2による第1層の編地の2段目のループの保持は、第1層の編地の編成が完了した後も継続し、更に第2層の2段目の編目の編成が完了するまで継続する。
【0080】
編成機構7の状態が
図12(H)の状態となった後、制御ユニット38は、
図12(A)の状態から
図12(H)の状態へと移行するときと同様の動作を編成機構7の各部に行わせて、
図12(I)→
図12(J)→
図12(K)→
図13(A)→
図13(B)→
図13(C)と編成機構7の状態を変化させる。
図21(A)は
図13(C)に対応する。
図12(I)の状態から
図13(C)の状態へと移行する一連の動作により、第1層の第3段目に編目が編成される。
図13(C)では、第1層の3段目のループが保持部材H3の下方保持部60Dによって保持された状態であり、また、3段目の編目の編成により新たに形成された4段目のループが保持部材H4によって保持された状態である。保持部材H3による第1層の編地の3段目のループの保持は、第1層の編地の編成が完了した後も継続し、更に第2層の3段目の編目の編成が完了するまで継続する。
【0081】
編成機構7の状態が
図13(C)の状態となった後、制御ユニット38は、
図13(D)の状態から
図14(I)の状態へと移行する動作を編成機構7に行わせる。この動作は、第1層の4段目に編目を編成し、第1層の編地の編成を完了すると共に、第2層の編地の編成を開始するにあたって、編地を編成していく列方向の向きを折り返す動作に相当する。詳述すると、制御ユニット38は、保持部材H4を保持部材上限位置まで上昇させる(
図13(D))。次いで、制御ユニット38は、保持部材H4が保持するループに、編み針4Aを用いて編糸3を通すことによって第1層の4段目に新たな編目を編成する(
図13(E)、
図13(F))。
【0082】
次いで、制御ユニット38は、編み針4Aが保持するループを保持部材H5に目移しする(
図13(G))。次いで、制御ユニット38は、編み針4Aを前方に移動させる(
図13(H))。次いで、制御ユニット38は、保持部材H5に第1回動動作を行わせ(
図13(I))、保持部材H5の下方保持部60Dがループを保持した状態とする(
図13(I))。次いで、制御ユニット38は、保持部材H5を保持部材上限位置まで上昇させると共に、保持部材H4を所定位置まで下降させる(
図13(J))。
図21(B)は、
図13(J)に対応する。
【0083】
次いで、制御ユニット38は、編み針4Aを、編み針4Aのフック14が保持部材H4の下方に至るまで後方に向かって移動させ、保持部材H4が保持するループを編み針4Aに目移しする(
図14(A))。
図22(A)は
図14(A)に対応する。保持部材H4から編み針4Aへのループの目移しは、以下のようにして行われる。すなわち、制御ユニット38は、編み針4Aを非間隙形成状態とし、保持部材H4によって持ち上げられたループ内に編み針4Aのフック14の部分を通過させる。この結果、編み針4Aのフック14が保持部材H4によって保持されたループ内を通り、かつ、フック14の上方に、ループを保持する保持部材H4の下方保持部60Dが位置した状態となる。この状態から、制御ユニット38は、編み針4Aを間隙形成状態とし、一対のフック14の間に、ループを保持する下方保持部60Dを進入させる。次いで、制御ユニット38は、保持部材H4の下方保持部60Dを開放状態とし、下方保持部60Dによるループの保持を解除する。すると、下方保持部60Dに保持されていたループは、保持部材H3によって引っ張られて下方へ移動して一対のフック14に係止する。以上のようにして、保持部材H4から編み針4Aへのループの目移しが行われる。
【0084】
編み針4Aにループを目移しした後、制御ユニット38は、保持部材H4を保持部材上限位置まで上昇させる(
図14(B))。次いで、制御ユニット38は、編み針4Aのフック14が保持部材H5よりも前方に至るまで、編み針4Aを前方へ向かって移動させる(
図14(C))。次いで、制御ユニット38は、保持部材H5を所定位置まで下降させると共に(
図14(D))、編み針4Bを前方へ向かって移動させて、保持部材H5の下方保持部60Dが保持するループを編み針4Bに目移しする(
図14(E))。次いで、制御ユニット38は、保持部材H5を保持部材上限位置まで上昇させる(
図14(F))。次いで、制御ユニット38は、編み針4Aのフック14が保持部材H4の下方に位置し、かつ、編み針4Bのフック14が保持部材H3の上方に位置するように、編み針4Aおよび編み針4Bを後方へ向かって移動させる(
図14(G))。
図22(B)は
図14(G)に対応する。
図22(B)では、図面の見やすさのため、第2編み針ユニット9の編み針載置板12の図示を省略している。
【0085】
次いで、制御ユニット38は、保持部材H4を下降させて、編み針4Aが保持するループを保持部材H4に目移しし、保持部材H4の掴持状態の下方保持部60Dにより第1層の4段目のループが保持された状態とする(
図14(H))。次いで、制御ユニット38は、掴持状態の下方保持部60Dによってループが保持された状態を維持したまま、保持部材H4を保持部材下限位置まで下降させる(
図14(I))。
図14(I)の状態となることにより、第1層の編地の編成が完了する。
図14(I)に示すように、
図14(I)の状態では、第1層の2段目のループが2段目の保持部材H2の下方保持部60Dにより保持され、第1層の3段目のループが3段目の保持部材H3の下方保持部60Dにより保持され、第1層の4段目のループが4段目の保持部材H4の下方保持部60Dにより保持されている。また、上述したように、作り目のループ(1段目のループ)が、1段目の保持部材H1の下方保持部60Dにより保持されている。
【0086】
図14(I)の状態となった後、制御ユニット38は、所定量だけ保持部材H3を上昇させ、編み針4Bが保持するループを、保持部材H3の開放状態の上方保持部60Uに目移しし(
図14(J))、編み針4Bを後方へ向かって移動させる(
図15(A))。
図23(A)は
図15(A)に対応する。
図15(A)の状態において、保持部材H3は、掴持状態の下方保持部60Dにより第1層3段目のループを保持し、かつ、開放状態の上方保持部60Uにより第2層3段目のループを保持した状態である。この第2層3段目のループは、第2層4段目(第2層において3段目の1つ前の段に相当)の編目の編成により形成されたループである。そして、「第1層3段目のループ」は、「第2層3段目のループ」の位置に対応する位置のループに相当する。一の層のループの位置と、当該一の層の1つ上の他の層のループの位置とが対応するとは、当該他の層の編地の編目を編成するときに、各ループが、同時に揃って編糸3が通される対象となるような位置関係にあることを意味する。
【0087】
次いで、制御ユニット38は、保持部材H3を保持部材上限位置まで上昇させる(
図15(B))。上述したように、保持部材上限位置は、編み針4Aおよび編み針4Bの上下方向の位置を上方に向かって超えた位置である。
図23(B)は
図15(B)に対応する。次いで、制御ユニット38は、編み針4Bを非間隙形成状態とする。制御ユニット38は、非間隙形成状態の編み針4Bについて、保持部材上限位置に位置する保持部材H3が保持する2つのループ(保持部材H3によって持ち上げられた2つのループ)を通過させつつ、前方へ向かって移動させる。そして、制御ユニット38は、係止部材駆動機構を制御して、取り回し部分62の状態を調整し、編み針4Bのフック14に編糸3を係止させる(
図15(C))。
【0088】
次いで、制御ユニット38は、保持部材H3が保持する2つのループの双方を通過させつつ、編み針4Bを後方へ向かって移動させる。制御ユニット38は、編み針4Bのフック14が保持部材H2の上方に至るまで編み針4Bを後方へ向かって移動させる(
図15(D))。
図24(A)は
図15(D)に対応する。これにより、
図15(D)に示すように、第2層の3段目のループ(保持部材H3の上方保持部60Uが保持するループ)に編糸3が通されて第2層の3段目に新たな編目が編成されると共に、新たなループ(編み針4Bに保持されたループ)が形成される。更に、3段目のループの編成により新たに形成されたループ(編み針4Bに保持されたループ)は、第1層の3段目の編目のループも通った状態となる。
【0089】
次いで、制御ユニット38は、保持部材H3に対応する保持部材状態変更部材44に第2回動動作を行わせて、保持部材H3の下方保持部60Dを掴持状態から開放状態へ移行する(
図15(E))。すると、保持部材H3の下方保持部60Dによるループの保持が解除され、第1層の3段目の編目のループが落とされる。このように、第1層の3段目のループは、第1層の3段目の編目の編成後も継続して保持部材H3によって保持され、第1層の1つ上の第2層における3段目の編目の編成が完了した後に、保持部材H3による保持が解除される。
【0090】
次いで、制御ユニット38は、保持部材H3に対応する保持部材状態変更部材44に第3回動動作を行わせて、保持部材H3について、掴持状態の下方保持部60Dにより第2層の3段目のループが保持された状態とし(
図15(F))、保持部材H3を保持部材下限位置まで下降させる(
図15(G))。
図24(B)は
図15(F)に対応する。
図25(A)は
図15(G)に対応する。ただし、
図25(A)は、
図15(G)の状態の編成機構7を下方側から上方へ向かって見た図である。
【0091】
ここで、
図29(A)、(B)は、
図14(I)の状態から
図15(G)の状態へと移行する一連の動作で第2層の3段目の編目が編成される様子を説明に適した態様で模式的に示している。
図29(A)では、第1層の編地のうち、2段目、3段目および4段目の部分が描画されると共に、第1層の4段目のループに編糸3が通されて形成された、後方へ向かうループR2−3(第2層の4段目の編目の編成により新たに形成されたループ)が描画されている。
図14(J)から
図15(D)に示す状態では、ループR2−3が保持部材H3の上方保持部60Uによって保持されると共に、第1層の3段目の編目のループR1−3が保持部材H3の下方保持部60Dによって保持される。
図15(B)の状態から
図15(D)の状態へ移行する動作によりループR2−3およびループR1−3の双方に編糸3が通される。これにより、
図29(B)に示すように、第2層の3段目に新たな編目が編成されると共に、ループR2−3およびループR1−3の双方を通る新たなループR2−2が形成される。このため、第2層のループR2−3と第1層のループR1−3とは分離不能に連結された状態となる。
【0092】
図15(G)では、保持部材H3の下方保持部60Dにより、第2層の3段目のループが保持された状態である。保持部材H3による第2層の編地の3段目のループの保持は、第2層の編地の編成が完了した後も継続し、更に第3層の3段目の編目の編成が完了するまで継続する。
【0093】
図15(G)の状態となった後、制御ユニット38は、
図14(J)の状態から
図15(G)の状態へと移行するときと同様の動作を編成機構7の各部に行わせて、
図15(H)→
図15(I)→
図15(J)→
図16(A)→
図16(B)→
図16(C)→
図16(D)と編成機構7の状態を変化させる。より詳細には、制御ユニット38は、2段目の保持部材H2を上昇させて、編み針4Bが保持するループ(第2層において2段目の1つ前の段の3段目の編目の編成により新たに形成されたループ)を保持部材H2の上方保持部60Uに目移しする(
図15(H))。制御ユニット38は、保持部材H2を、保持部材上限位置まで移動させ(
図15(I))、編み針4Bを用いて保持部材H2によって持ち上げられた2つのループに編糸3を通す(
図15(I)、
図15(J)、
図16(A))。制御ユニット38は、保持部材H2によるループの保持を解除して、第1層の2段目のループを落とし(
図16(B))、保持部材状態変更部材44に第3回動動作を行わせて、保持部材H2の下方保持部60Dがループ(第2層の2段目のループ)を保持した状態とし(
図16(C))、保持部材H2を保持部材下限位置まで移動させる(
図16(D))。
図25(B)は
図16(D)に対応する。
【0094】
図15(H)から
図16(D)に至る一連の動作により、第2層の2段目に新たな編目が編成されると共に、新たなループ(編み針4Bに保持されたループ)が形成される。この2段目の編目の編成により新たに形成されたループは、第2層の1つ前の段のループだけでなく、第1層の2段目のループも通った状態である。また、
図16(D)では、保持部材H2により第2層の編地の2段目のループが保持された状態である。保持部材H2による第2層の編地の2段目のループの保持は、第2層の編地の編成が完了した後も継続し、更に第3層の2段目の編目の編成が完了するまで継続する。
【0095】
図16(D)の状態となった後、制御ユニット38は、
図16(E)の状態から
図16(K)の状態へと移行する動作を編成機構7に行わせる。この動作は、第2層の1段目に編地を編成し、第2層の編地の編成を完了すると共に、第3層の編地の編成を開始するにあたって、編地を編成していく列方向の向きを折り返す動作に相当する。
【0096】
詳述すると、制御ユニット38は、保持部材H1を上昇させて編み針4Bから保持部材H1の上方保持部60Uにループを目移しする(
図16(E))。なお、上述の通り、保持部材H1の下方保持部60Dは実際には第1層における作り目のループを保持している。次いで、制御ユニット38は、保持部材H1を保持部材上限位置まで上昇させる(
図16(F))。次いで、制御ユニット38は、編み針4Aによって、保持部材H2によって保持され保持部材H1により持ち上げられたループに編糸3を通して新たなループを形成する(
図16(G)、
図16(H))。その際、制御ユニット38は、ループが係止する編み針4Aのフック14が保持部材H2の上方に位置した状態とする。制御ユニット38は、保持部材H1の下方保持部60Dを開放状態へ移行して、保持部材H1の下方保持部60Dが保持するループを落とす(
図16(I))。次いで、制御ユニット38は、保持部材H1に対応する保持部材状態変更部材に第1回動動作を行わせて保持部材H1の下方保持部60Dがループを保持した状態とし(
図16(J))、保持部材H1を保持部材下限位置まで移動させる(
図16(K))。以降、
図14(I)の状態から
図16(D)の状態へ移行する動作と同様の処理が行われて、第3層の編地が編成される。
【0097】
図29(C)は、
図29(B)の後に第2層で編目を編成する処理が行われ、第2層の4〜1段目までの編目が編成された様子を示し、
図29(D)は、更に第3層で編目を編成する処理が行われて、第3層の1段目および2段目に編目が編成された様子を示す。
図29(C)に示すように、第2層の2段目の編目は、第2層の3段目(第2層において2段目の1つ前の段)の編目を編成したときに形成されたループR2−2、および、第1層の2段目のループR1−2の双方に編糸3が通されることによって編成されている。これにより、ループR2−2とループR1−2とが分離不能に連結された状態となる。第3層の編地の編成の開始時点では、第2層の編地の編成において新たに形成されたループのそれぞれが、対応する段の保持部材16によって保持された状態である。
【0098】
図29(D)に示すように、第3層では、まず、ループR2−1に編糸3が通されて第3層の1段目の編目が形成されると共に、新たなループR3−2が形成される。第3層の2段目の編目は、第3層の1段目(第3層において2段目の1つ前の段)の編目の編成により形成されたループR3−2および第2層の2段目のループR2−2を編糸3が通ることによって編成されている。なお、編目の編成は、2段目の保持部材H2の下方保持部60Dに保持されたループR2−2、および、保持部材H2の上方保持部60Uに保持されたループR3−2に編糸3(ループ)が通されることにより行われる。これにより、ループR2−2とループR3−2とが分離不能に連結された状態となる。なお、第3層では、1段目から5段目に向かう方向に段階的に編目が編成されていくため、例えば、第1層では、2段目の1つ前の段が1段目となり、5段目の1つ前の段が4段目となる。
【0099】
以上のように、本実施形態では、編成機構7は、第N−1層の編地の編成時に形成されたループを、第N−1層の編地の編成の完了後も継続して保持する。編成機構7は、第N層の編地の編目を編成する際、第N層で既に形成されたループを保持し、保持した第N層で既に形成されたループと、保持している第N−1層に係るループのうち、第N層で既に形成されたループの位置に対応する位置のループとの双方に新たな編糸を通して編目を編成し、編目の編成に応じて当該対応する位置のループの保持を解除する一方、当該第N層で既に形成されたループの保持を第N層の編地の編成の完了後も継続する。
【0100】
この構成によれば、第N層の編目の編成にあたり、第N−1層において対応する位置に形成されたループと、第N層で既に形成されたループとの双方に編糸3を通すことによって編目が形成される。このため、複数層の編地からなる編成物2であって、しかも上下方向に隣接する2つの編地が、互いに対応する位置に存在するループとループとの連結によって接続された状態の編成物2を編成できる。このようにして編成された編成物2は、複数層の編地により構成される中身の詰まった立体的な形状の編成物2という新規な態様の編成物2であり、本実施形態によれば、このような新規な態様の編成物2を編成可能な編成機構7およびこの編成機構7による編成方法を提供できる。
【0101】
また、本実施形態に係る編成機構7は、以下の構造的特徴を有する。すなわち、編成機構7は、列方向に複数段で並ぶ複数の保持部材16を備える。保持部材16のそれぞれは、ループの保持およびループの保持の解除が可能な保持部60を独立して2つ備えている。編成機構7は、複数の保持部材16の一方の保持部60により、N−1層で列方向に複数段で並ぶ複数の編目のループを、第N−1層の編地の編成の完了後も継続して保持する。編成機構7は、第N層の編地の編成時に所定段の編目を編成する際、第N層において当該所定段の1つ前の段で形成されたループを、当該所定段の保持部材16の他方の保持部60により保持し、保持した第N層に係るループと、当該所定段の保持部材16の一方の保持部60により保持している第N−1層に係るループとの双方に編糸3を通して編目を編成し、編目の編成後、他方の保持部60による第N層に係るループの保持を第N層の編地の編成の完了後も継続する一方、一方の保持部60による第N−1層に係るループの保持を解除する。
【0102】
より具体的には、保持部材16の2つの保持部60は、対称点を中心として対称な位置に配置され、保持部材16は、2つの保持部60が対称点を中心として位置が対称である状態を維持したまま、対称点を中心として回動可能である。編成機構7は、複数の保持部材16の対称点より下方側に配置された保持部60により、N−1層で列方向に複数段で並ぶ複数のループを、第N−1層の編地の編成の完了後も継続して保持する。編成機構7は、第N層の編地の編成時に所定段の編目を編成する際、第N層において当該所定段の1つ前の段で形成されたループを、当該所定段の保持部材16の対称点より上方側に配置された保持部60により保持し、保持した第N層に係るループと、当該所定段の保持部材16の対称点より下方側の保持部60により保持している第N−1層に係るループとの双方に新たなループを通して編目を編成し、編目の編成後、下方側の保持部60による第N−1層に係るループの保持を解除し、上方側の保持部60による第N層に係るループの保持を維持したまま保持部材16を対称点を中心として回転させ、第N層に係るループを保持する保持部60を対称点より下方側に位置させる。
【0103】
この構成によれば、N層の編地の編成にあたり、段ごとに、各段の保持部材16を利用して、N層に係るループおよびN−1層に係るループの双方に編糸3を通して編目を編成することが可能である。特に、N層で所定段の編目を編成する際、当該所定段の1つの保持部材16により編糸3を通すべき2つのループの保持が行われるため、異なる複数の保持部材を利用して2つのループを保持する場合と比較して構造が単純化する。
【0104】
また、本実施形態では、編成機構7は、ループが係止可能な編み針4を備える。保持部材16の保持部60は、編み針4に係止するループを受け取ることが可能である。編成機構7は、第N層の編地の編成時、所定段の保持部材16の他方の保持部60により保持している第N層に係るループと、当該所定段の保持部材16の一方の保持部60により保持している第N−1層に係るループとの双方に、ループが係止する編み針4を通して編目を編成し、当該所定段の次の段の保持部材16の他方の保持部60により編み針4に係止するループを受け取って保持し、当該所定段の次の段の保持部材16の他方の保持部60が保持する第N層に係るループと一方の保持部60が保持する第N−1層に係るループとの双方に、ループが係止する編み針4を通して編目を編成するという動作を繰り返し行って列方向に段階的に編目を形成する。より具体的には、編成機構7は、第N層の編地の編成時、所定段の保持部材16の対称点より上方側の保持部60により保持している第N層に係るループと、当該所定段の保持部材16の対称点より下方側の保持部60により保持している第N−1層に係るループとの双方に、ループが係止する編み針4を通して編目を編成し、当該所定段の次の段の保持部材16の対称点より上方側の保持部60により編み針4に係止するループを受け取って保持し、当該所定段の次の段の保持部材16の上方側の保持部60が保持する第N層に係るループと下方側の保持部60が保持する第N−1層に係るループとの双方に、ループが係止する編み針4を通して編目を編成するという動作を繰り返し行って列方向に段階的に編目を形成する。
【0105】
この構成によれば、列方向に複数段で保持部材16を有するという構造的特徴を利用して、N層に係るループおよびN−1層に係るループの双方に編糸3が通された編目を列方向に連続して形成していくことが可能である。
【0106】
また、本実施形態では、編み針4は、上下方向の位置を維持したまま、上下方向と交わる水平方向に移動可能である。保持部材16のそれぞれは、編み針4の上下方向における位置を跨って上下方向に移動可能である。編成機構7は、第N層の編地の編成時、第N層に係るループを他方の保持部60により保持すると共に、第N−1層に係るループを一方の保持部60により保持する所定段の保持部材16を、編み針4の上下方向における位置を超えて上昇させる。編成機構7は、当該所定段の保持部材16に持ち上げられた2つのループ内を通るように、ループが係止する編み針4を水平移動させて編目を形成する。より具体的には、編成機構7は、第N層の編地の編成時、第N層に係るループを対称点より上方側の保持部60により保持すると共に、第N−1層に係るループを対称点より下方側の保持部60により保持する所定段の保持部材16を、編み針の上下方向における位置を超えて上昇させ、当該所定段の保持部材16に持ち上げられた2つのループ内を通るように、ループが係止する編み針を水平移動させて編目を形成する。
【0107】
この構成によれば、保持部材16については上下方向という一定方向の移動を行わせ、また、編み針4については水平方向という一定方向の移動を行わせることにより、N層に係るループおよびN−1層に係るループの双方に編糸3が通された編目を列方向に連続して形成していくことが可能であり、構造の単純化、動作の単純化を図ることができる。
【0108】
また、本実施形態では、編成機構7は、第N層の編地の編成時、第N層に係るループを他方の保持部60により保持すると共に、第N−1層に係るループを一方の保持部60により保持する所定段の保持部材16を、編み針の上下方向における位置を超えて上昇させる。編成機構7は、当該所定段の保持部材16に持ち上げられた2つのループ内を通り、かつ、ループが係止した部位が当該所定段の次の段の保持部材16の上方の位置に至るように、ループが係止する編み針を水平移動させて編目を形成する。編成機構7は、当該所定段の次の段の保持部材16を上昇させて、他方の保持部60により編み針に係止するループを受け取る。より具体的には、編成機構7は、第N層の編地の編成時、第N層に係るループを対称点より上方側の保持部60により保持すると共に、第N−1層に係るループを対称点より下方側の保持部60により保持する所定段の保持部材16を、編み針の上下方向における位置を超えて上昇させる。編成機構7は、当該所定段の保持部材16に持ち上げられた2つのループ内を通り、かつ、ループが係止した部位が当該所定段の次の段の保持部材16の上方の位置に至るように、ループが係止する編み針を水平移動させて編目を形成する。編成機構7は、当該所定段の次の段の保持部材16を上昇させて、対称点より上方側の保持部60により編み針に係止するループを受け取る。
【0109】
この構成によれば、保持部材16が列方向に複数段、並んで配置されると共に、保持部材16が上下方向に移動し、編み針4が水平方向に移動する構成において、N層に係るループおよびN−1層に係るループの双方に編糸3が通された編目を列方向に連続して形成していくことが可能であり、構造の単純化、動作の単純化を図ることができる。
【0110】
また、本実施形態では、保持部60は、編み針4に係止するループを掴むことによって編み針4からループを受け取る。編み針4は、ループを係止する二股の一対のフック14を有しており、一対のフック14に跨ってループが係止し、かつ、保持部60のループを掴む部分が進入可能な程度な間隔が一対のフック14の間に形成された間隙形成状態へと変位可能である。編成機構7は、編み針4が保持するループを保持部材16の保持部60により受け取る際、編み針4を間隙形成状態とし、保持部材16を上昇させて、編み針4の一対のフック14の間に形成された間隙に、保持部60のループを掴む部分を進入させ、保持部60によりループを掴む。
【0111】
この構成によれば、保持部材16が上下方向に移動し、編み針4が水平方向に移動する構成において、保持部材16の保持部60により適切にループを受け取ることが可能である。
【0112】
<第1実施形態の変形例>
次に第1実施形態の変形例について説明する。
【0113】
上記実施形態では、列グループの数は5個であり、保持部材16が設けられた段の数は5個であったが、列グループ(列グループの数が変わると、編み針4の数も変わる)の数や段の数は、上記実施形態で例示したものに限られない。
【0114】
また、編み針4の構造は、本実施形態で例示した形状に限られない。
図30は、編み針4の別例である編み針4´の斜視図である。
図30において、編み針延在部5´は編み針延在部5と同様の機能を有し、フック14´はフック14と同様の機能を有し、バンド部15´はバンド部15と同様の機能を有する。
図30に示すように、編み針4´は、一対の編み針延在部5´の間に、これら一対の編み針延在部5´を一定距離で離間させる介在部材70が設けられている。介在部材70は、一対の編み針延在部5´の全長において、フック14´と逆側の略半分に延在している。バンド部15´は、介在部材70から突出して設けられている。編み針4の構造は、
図3を使用して説明した構造にかぎらず、
図30で示す構造であってもよい。
【0115】
また、編成機構7の動作の仕組みや、各部材の構造は上記実施形態で例示したものに限定されるものではない。例えば、編み針4を引き戻し状態と押し出し状態との間で変移させる仕組みは本実施形態で例示したものに限られない。一例として、編み針4ごとに、編み針4を前後方向に移動させる機構を設け、この機構を制御して編み針4ごとに引き戻し状態と押し出し状態との間で変移できるようにしてもよい。また、例えば、編み針4を間隙形成状態と非間隙形成状態との何れかの状態とする仕組みは本実施形態で例示したものに限られない。一例として、編み針4ごとに、編み針4を閉じる方向に力を加える機構を設け、この機構を制御して編み針4ごとに間隙形成状態と非間隙形成状態との間で変移できるようにしてもよい。
【0116】
また、例えば、保持部材ブロック6を昇降させる仕組みは、プッシャ35を用いた仕組みに限らない。一例として、保持部材ブロック6ごとに、モータを駆動して上下方向に保持部材ブロック6を昇降させる機構を設け、この機構を制御して保持部材ブロック6ごとに昇降可能な構成としてもよい。また、例えば、保持部材16の構造や、保持部材16の状態を変化させる仕組みは、上記実施形態で例示したものに限られない。保持部材16は、2つの保持部60がそれぞれ、編糸3(ループ)を保持することができ、編糸3(ループ)の保持を解除することができ、更に、以下のことができればよい。すなわち、上方に位置する保持部60で編糸3を保持した後、編糸3を保持した状態のまま保持部60の位置を下方に位置させることができればよい。例えば、1つの保持部材16に設けられた2つの保持部60のそれぞれを、異なるモータにより独立して状態を変移できるような構造としてもよい。
【0117】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態について説明する。以下の第2実施形態の説明において、第1実施形態の要素と同一の要素については、第1実施形態で付与した符号と同一の符号を付与し、詳細な説明を省略する。
【0118】
図31は、本実施形態に係る編み機100の内部構造を示す斜視図である。
図32(A)は編み機100を上から見た図であり、(B)は編み機100の右側から左方へ向かって編み機100を見た図である。
図31、32は、一部の部材の描画を省略している。以下の編み機100の説明では、
図31の両矢印で示すように、対編み針101(後述)が延在する方向を前後方向とし、前後方向における一方の向きを前方、前方と反対の向きを後方とする。また、移動棒規制部材102(後述)が立設する方向を上下方向とする。上下方向は、編み機100が通常の態様で使用されるときの鉛直方向に対応しており、上下方向において鉛直上方に向かう向きを上方とし、上下方向において鉛直下方に向かう向きを下方とする。また、上下方向に対して垂直な水平面上で、前後方向と直交する方向を左右方向とし、左右方向において前方に向かって右の向きを右方、前方に向かって左の向きを左方とする。
【0119】
図31、32に示すように、編み機100は編成機構103を有する。編成機構103は、後方編み針ユニット104と、後方編み針ユニット104の前方に設けられた前方編み針ユニット105と、後方保持ユニット106と、後方保持ユニット106の前方に設けられた前方保持ユニット107とを含んで構成される。
【0120】
図31に示すように後方編み針ユニット104および前方編み針ユニット105はそれぞれ、左右方向に間隔をあけて並んで配置された5つの対編み針101(特許請求の範囲の「編み針部材」に相当)を有する。
図33(A)は対ベラ110(後述)が開状態(後述)の対編み針101の側面図であり、(B)は対ベラ110が閉状態(後述)の対編み針101の側面図であり、(C)は対編み針101の上面図である。
図33(特に
図33(C))に示すように、対編み針101は、側面視したときに重なり合うように四角柱状の介在部材111の両側面に接続された2つの片編み針112を備えている。
【0121】
片編み針112は、片フック113(後述)が設けられた側を先端側(
図33(A))、その逆側を基端側(
図33(A))とすると、片編み針基端部114と、片編み針基端部114よりも先端側で片編み針基端部114に支持された片編み針先端部115とを備えている。片編み針基端部114は、前後方向に延びる板状の部材である(
図31も併せて参照)。以下、対編み針101に着目したときに前後方向において先端側に向かう向きを「先端側向き」といい、基端側に向かう向きを「基端側向き」という。片編み針基端部114の先端側向きの面には片押し込み面116(
図33(A)、(B))が形成されている。
【0122】
図33に示すように、片編み針先端部115の先端には片フック113が形成されている。片フック113は、湾曲した爪を有し、この爪の内側に編糸を収容可能な保持空間が形成されている。片フック113の爪の先端に対応する部位には、当該保持空間に編糸3が進入するときに通る進入口117(
図33(A))が形成されている。また片編み針先端部115には、回動軸を中心として回動可能であり、進入口117を塞ぐ閉状態(
図33(B))と進入口117を開放する閉状態(
図33(A))との間で状態が変移可能な片ベラ118が設けられている。また片編み針先端部115において片ベラ118の基端側向きには下方に向かって窪んだ片窪み部119(
図33(A)、(B))が形成されている。
【0123】
1つの対編み針101を構成する一対の片編み針112の一対の片編み針基端部114により編み針基端部120が構成され、一対の片編み針先端部115により編み針先端部121が構成され、一対の片フック113により対フック122(特許請求の範囲の「フック部材」に相当)が構成され、一対の片ベラ118により対ベラ110(特許請求の範囲の「ベラ」に相当)が構成され、一対の片窪み部119により対窪み部123が構成され、一対の片押し込み面116により対押し込み面124(特許請求の範囲の「押し込み面」に相当)が構成される。
【0124】
図31、32に示すように、後方編み針ユニット104の5つの対編み針101は、その先端側向きと前方とが一致するように配置される。前方編み針ユニット105の5つの対編み針101は、その先端側向きと後方とが一致するように配置される。後方編み針ユニット104の5つの対編み針101は、図示しない編み針ユニット駆動機構によって、同期して前後方向に移動可能である。前方編み針ユニット105の5つの対編み針101は、図示しない編み針ユニット駆動機構によって、同期して前後方向に移動可能である。なお、本実施形態では、説明の便宜を考慮して、後方編み針ユニット104および前方編み針ユニット105の対編み針101が同期して動くものとするが、動作を同期させず、対編み針101が1本ずつ、または複数本ずつ順に動作する構成でもよい。以下、後方編み針ユニット104の5個の対編み針101について、右から左へ向かって第1後方対編み針BA1、第2後方対編み針BA2、・・・、第5後方対編み針BA5とする(
図31参照)。また、前方編み針ユニット105の5個の対編み針101について、右から左へ向かって第1前方対編み針FA1、第2前方対編み針FA2、・・・、第5前方対編み針FA5とする(
図31参照)。
【0125】
図31、32で示すように、後方保持ユニット106は、後方保持板群126と、一対の移動棒規制部材102とを備えている。後方保持板群126は、10個の保持部形成板127(特許請求の範囲の「保持部形成部材」に相当)を備えている。以下、後方保持板群126の10個の保持部形成板127について、右から左へ向かって順に、第1後方保持部形成板BH1、第2後方保持部形成板BH2、第3後方保持部形成板BH3、・・・、第10後方保持部形成板BH10(
図35参照。)とする。
図34は、第1後方保持部形成板BH1を右側から左方へ向かって見た側面図である。
図34で示す第1後方保持部形成板BH1は、2つの固着部材125(後述)が取り付けられた状態である。
【0126】
図34に示すように、保持部形成板127(
図34では第1後方保持部形成板BH1)は、側面視したときに全体として上方側の端部から下方側の端部へ向かって、前方に向かって凸となるように湾曲した形状をしている。第1後方保持部形成板BH1は、上方側の端部から前方側へ向かって下方に湾曲しつつ延びる上方側延在部128と、下方側の端部から前方側へ向かって上方に湾曲しつつ延びる下方側延在部129と、上方側延在部128と下方側延在部129との間に介在し、前方に向かって膨らんだ膨らみ部130とを有している。
【0127】
第1後方保持部形成板BH1の膨らみ部130には、前方が開口し、後方に向かうに従って徐々に狭くなるように凹んだ凹み部131が7個、形成されている。なお、凹み部131の形状は、あくまで一例であり、徐々に狭くならずに略一定の幅で延在する構成でもよい。以下、保持部形成板127に形成された7個の凹み部131を下から順番に一段目凹み部HK1、二段目凹み部HK2、・・・、七段目凹み部HK7とする。凹み部131の開口の上部には、保持部132(特許請求の範囲の「保持部分」に相当)が形成されている。
図34に示すように、第1後方保持部形成板BH1の保持部132は、フック状の部材を有し、このフック状の部材の先端部に対応する位置には進入口133が形成され、このフック状の部材の内側には保持空間が形成されている。
【0128】
保持空間には、進入口133を介して編糸3が進入可能である。編糸3が保持空間に進入するには、一旦、編糸3が凹み部131の内部に進入し、進入口133の後方側から、進入口133に対して相対的に前方側へ移動し、進入口133を通って保持空間に進入する必要がある。以下、保持部形成板127に形成された7個の保持部132を下から順番に一段目保持部HJ1、二段目保持部HJ2、・・・、七段目保持部HJ7とする。後に明らかとなる通り、保持部形成板127の保持部132のそれぞれは、1つの層で列方向に形成された複数のループを保持可能である。
【0129】
図34に示すように、上方側延在部128には前方側に向かって順に第1板貫通孔135および第2板貫通孔136が間隔をあけて形成されており、下方側延在部129には後方に向かって順に第3板貫通孔137および第4板貫通孔138が間隔をあけて形成されている。第1板貫通孔135、第2板貫通孔136、第3板貫通孔137および第4板貫通孔138(以下、これらを区別しない場合、単に「板貫通孔」という)はそれぞれ第1後方保持部形成板BH1(保持部形成板127)を貫通する貫通孔である。第1後方保持部形成板BH1以外の保持部形成板127は、第1後方保持部形成板BH1と同じ構造である。
【0130】
図34に示すように、第1後方保持部形成板BH1の右側の面の第2板貫通孔136に対応する部位および第4板貫通孔138に対応する部位には固着部材125が取り付けられている。固着部材125には、対応する板貫通孔と連通する貫通孔が形成されている。
【0131】
図35(A)はペア離間状態(後述)の後方保持板群126および関連する部材の斜視図であり、(B)はペア近接状態(後述)の後方保持板群126および関連する部材の斜視図である。後方保持板群126は、右側から左側へ向かって2つずつペアとなって板ペア140を構成する。すなわち、第1後方保持部形成板BH1と第2後方保持部形成板BH2とが1つのペアとなって第1後方板ペアPB1が構成され、第3後方保持部形成板BH3と第4後方保持部形成板BH4とにより第2後方板ペアPB2が、第5後方保持部形成板BH5と第6後方保持部形成板BH6とにより第3後方板ペアPB3が、第7後方保持部形成板BH77と第8後方保持部形成板BH8とにより第4後方板ペアPB4が、第9後方保持部形成板BH9と第10後方保持部形成板BH10とにより第5後方板ペアPB5が構成される。
【0132】
後方保持板群126の各板ペア140において右側に位置する保持部形成板127には、右面の第2板貫通孔136および第4板貫通孔138に対応して固着部材125が設けられる。また、後方保持板群126の各板ペア140において左側に位置する保持部形成板127には、左面の第1板貫通孔135および第3板貫通孔137に対応して固着部材125が設けられる。
図31、35で示すように、後方保持板群126の全ての保持部形成板127の第1板貫通孔135および第1板貫通孔135に対応して設けられた固着部材125には、棒状の第1移動棒141が挿通している。同様に、全ての第2板貫通孔136および対応する固着部材125には第2移動棒142が、全ての第3板貫通孔137および対応する固着部材125を第3移動棒143が、全ての第4板貫通孔138および対応する固着部材125を第4移動棒144が挿通している。以下、第1〜第4移動棒141〜144を区別しない場合は「移動棒」という。
【0133】
固着部材125のそれぞれは、自身を挿通する移動棒に固着されている。また第1移動棒141と第3移動棒143とは図示しない移動棒駆動機構により、同期して左右方向に移動可能である。同様に第2移動棒142と第4移動棒144とは移動棒駆動機構により、同期して左右方向に移動可能である。固着部材125のそれぞれは、自身を挿通する移動棒に固着されているため、第1移動棒141および第3移動棒143が同期して左右方向に移動すると、各板ペア140の左側に位置する保持部形成板127も移動棒の移動に従って移動する。同様に第2移動棒142および第4移動棒144が同期して左右方向に移動すると、各板ペア140の右側に位置する保持部形成板127も移動棒の移動に従って移動する。なお、第1移動棒141と第3移動棒143との双方を動かす構成としたが、一方のみを動かすことによって対応する保持部形成板127を移動させる構成としてもよい。第1移動棒141と第3移動棒143とについても同様である。
【0134】
後方保持板群126は、ペア離間状態(
図35(A))と、ペア近接状態(
図35(B))との2つ状態をとることができる。
図35(A)で示すように、ペア離間状態とは、各板ペア140について一定量以上の間隙が形成された状態である。本実施形態では、隣接する2つの板ペア140について、右側の板ペア140における左側の保持部形成板127の固着部材125が、左側の板ペア140における右側の保持部形成板127の右側の面に接触するか近接するとペア離間状態となる。なお、側面視したときに第1板貫通孔135に対応する固着部材125と、第2板貫通孔136に対応する固着部材125とが重ならないように設計されている。また側面視したときに第3板貫通孔137に対応する固着部材125と、第4板貫通孔138に対応する固着部材125とが重ならないように設計されている。なお、ペア離間状態において、対編み針101が通過可能な程度に板ペア140の間隙を確保できるのであれば、固着部材125の態様はどのようなものでもよく、例えば、側面視したときに重なるようにしてもよい。後方保持板群126がペア離間状態となると、後方保持板群126を前方側から後方へ向かって見たときに、各板ペア140に形成された間隙に対応する位置に、後方編み針ユニット104の対編み針101のそれぞれおよび前方編み針ユニット105の対編み針101のそれぞれが位置した状態となる。
【0135】
図35(B)で示すように、ペア近接状態とは、各板ペア140の2つの保持部形成板127が接触するか近接した状態である。
【0136】
1つの板ペア140について、2つの保持部形成板127が備える一対の保持部132により対保持部146が構成される。以下、
図35、36で示すように、1つの板ペア140の7個の対保持部146について、下から順番に一段目対保持部TH1、二段目対保持部TH2、三段目対保持部TH3、四段目対保持部TH4、五段目対保持部TH5、六段目対保持部TH6、七段目対保持部TH7とする。後に明らかとなる通り、対保持部146は、ペア離間状態のとき、ループの内側を広げた状態でループを保持する。また1つの板ペア140について、2つの保持部形成板127が備える一対の凹み部131により対凹み部148が構成される。以下、
図35で示すように、1つの板ペア140の7個の対凹み部148について、下から順番に一段目対凹み部TK1、二段目対凹み部TK2、三段目対凹み部TK3、四段目対凹み部TK4、五段目対凹み部TK5、六段目対凹み部TK6、七段目対凹み部TK7とする。
【0137】
図31、32で示すように、後方保持ユニット106において後方保持板群126の右側および左側には一対の移動棒規制部材102が設けられている。後方保持板群126に対応して設けられた4つの移動棒は、一対の移動棒規制部材102に形成された移動棒規制切欠き147のそれぞれに挿通している。右側の移動棒規制部材102の移動棒規制切欠き147は、前方に向かって凸となるように湾曲した切欠きであり、仮想的な円の円周に沿って形成されている。左側の移動棒規制部材102の移動棒規制切欠き147についても同様である。移動棒のそれぞれは、移動棒駆動機構により、左右方向に延在した状態が維持されたまま、かつ、各移動棒の相対的な位置関係が維持されたまま移動棒規制切欠き147に沿って同期して移動し、停止することが可能である。各移動棒が移動棒規制切欠き147に沿って移動すると、これに従って後方保持板群126のそれぞれの保持部形成板127も移動する。
【0138】
以上、後方保持ユニット106(後方保持板群126および一対の移動棒規制部材102)を説明したが、前方保持ユニット107は、後方保持ユニット106と同一構造の部材群が後方保持ユニット106と前後方向において逆向きに配置されたものである。以下、前方保持ユニット107の10個の保持部形成板127を前方保持板群145(
図31、32)とする。また前方保持板群145の10個の保持部形成板127について、右側から左へ向かって順番に第1前方保持部形成板FH1、第2前方保持部形成板FH2、・・・、第10前方保持部形成板FH10(
図32(A))とする。また、板ペア140について、右側から左へ向かって順番に第1前方板ペアPF1、第2前方板ペアPF2、第3前方板ペアPF3、第4前方板ペアPF4、第5前方板ペアPF5とする。その他、前方保持ユニット107の部材について、後方保持ユニット106と同じ機能を有する部材、部位については、特に説明をしない限り同一の符号を付す。
【0139】
後方保持板群126の保持部形成板127、および、前方保持板群145の保持部形成板127は、互いに姿勢を変更することによって、片方の保持部形成板127の任意の保持部132ともう片方の保持部形成板127の任意の保持部132とを前後方向において対向させることが可能に構成されている。例えば、後に使用する
図50(B)で示すように、後方保持板群126の保持部形成板127の七段目保持部HJ7と、前方保持板群145の保持部形成板127の一段目保持部HJ1とが対向するようにすることもでき、
図65(A)で示すように、後方保持板群126の保持部形成板127の一段目保持部HJ1と、前方保持板群145の保持部形成板127の七段目保持部HJ7とが対向するようにすることもできる。
【0140】
編み機100は、制御ユニット150(
図31)を備えている。制御ユニット150は、各種駆動機構(上述した編み針ユニット駆動機構、移動棒駆動機構を含む)を制御して、編成機構103を動作させる。特に、編み機100は、不図示の取り回し機構を備えており、制御ユニット150は、取り回し機構を制御して編糸3の取り回しを行う。
【0141】
次に、以上の構造的特徴を有する編み機100の編成機構103が編成物2を編成するときの動作について具体的な一例を説明する。まず、
図36を用いて編成機構103の動作によって編成物2がどのように編成されていくかについて説明する。なお、本実施形態では、説明の簡易化のため、第1実施形態と編地における段数の数え方が異なっている。すなわち本実施形態では、ある層において、最初の段に形成されたループを1段目のループとし、この1段目のループに編糸3が通されることによって編成される編目を1段目の編目とする。そして列方向(=いわゆるウェール方向)への編地の編成に応じて順次、2段目、3段目と段数が増えていくものとする。
【0142】
本実施形態に係る編み機100が編成物2を編成する原理は、第1実施形態に係る編み機1と同様である。すなわち
図36(A)で示すように、まず、編成機構103により第1層の編地が編成される。第1層の編地は、1段目のループに編糸3が通されて1段目の編目が編成された後、順次6段目までの編目が編成され、その過程で2段目のループから7段目のループへと順番にループが形成されることによって編成される。詳述すると、まず編成機構103により、作り目と呼ばれる第1層1段目のループに編糸3が通され、第1層1段目の編目が編成されると共に、第1層2段目のループが形成される。このようにして順次、編目の編成およびループの形成がなされていき、第1層6段目のループに編糸3が通されると、第1層6段目の編目が編成されると共に第1層7段目のループが形成される。第1層1段目から第1層7段目のループのそれぞれは、第1層の編地の編成後も編成機構103(本例において具体的には、後方保持板群126のそれぞれの保持部132)に保持された状態が維持される。
【0143】
第1層の編地の編成後、編成機構103は、第1層7段目のループを第2層1段目のループとして、
図36(B)で示すように、この第2層1段目のループに新たな編糸3を通すことによって第2層1段目の編目を編成すると共に、第2層2段目のループを形成する。第1層から第2層への折り返しの際には、第2層より上層の折り返し(第2層から第3層への折り返し、第3層から第4層への折り返し…)と異なり、1段目の編目の編成にあたって、現層(第2層)のループと、現層より1つ下の層(第1層)のループとの双方に編糸3を通すのではなく、現層のループ(=第2層1段目のループ)にのみ編糸3を通す。これは、編糸3を第2層1段目(=第1層7段目)と一緒に第1層6段目のループに通してしまうと、編糸3と一緒に第2層1段目(=第1層7段目)のループが第1層6段目のループを通ることになり、編糸がほどけてしまうからである。
【0144】
次いで編成機構103は、
図36(C)で示すように、第2層2段目のループと保持している第1層6段目のループとの双方に編糸3を通すことによって、第2層2段目の編目を編成し、第2層3段目のループを新たに形成する。つまり編成機構103は、第2層2段目の編目の編成に際して、第2層で既に形成されたループ(1つ前の段で形成されたループ)を保持し、保持したこのループと、「保持している第1層に係るループのうち、第2層で既に形成されたループの位置に対応する位置のループ」に相当する第1層6段目のループとの双方に編糸3を通して編目を編成する。編目の編成後、編成機構103は、保持した第2層のループについては保持を継続する一方、第1層のループについては保持を解除する。
【0145】
以降、編成機構103は、
図36(C)で示すように、第2層で既に形成されたループと第1層の対応するループとの双方に編糸3を通すことによって新たな編目を編成すると共に新たなループを形成するという処理を順次、実行していき第2層の編地を編成する。編成機構103は、第2層の編地の編成後、第3層の編地を編成する際、第1層1段目のループ(作り目)について保持を破棄する。そして編成機構103は、
図36(D)で示すように、第2層の最終段のループに相当する第2層7段目のループ(第2層6段目の編目を編成することによって形成されたループ)を第3層1段目のループとし、この第3層1段目のループと、保持している第2層6段目のループとの双方に編糸3を通し、第3層1段目の編目を編成すると共に、第3層2段目のループを形成する。以降、編成機構103は、第3層において既に形成されたループ(第3層2段目、3段目・・・)と第2層において対応するループ(第2層5段目、4段目・・・)との双方に編糸3を通すことによって編目を編成すると共に新たなループを形成するという処理を順次、実行していき、第3層の編地を編成する。以上のようにして編成機構103は、複数層の編地からなる編成物2を編成する。
【0146】
次に編成物2を編成するときの編成機構103の動作について詳細に説明する。
図37〜
図63は、編成物2を編成するときの編成機構103の様子を示す図であり、
図37から
図63へ向かって時間が経過している。
図37〜
図63の各図において(A)は編成機構103の斜視図を示し(ただし、
図50においては(A1)、(A2))、(B)は編成機構103の右側から左方に向かって編成機構103を見た様子を示している。
図37〜
図63の各図において(A)(または(A1)、(A2))と(B)とは同じタイミングの編成物2の様子を示している。なお、
図37〜
図63の各図では、図面の見やすさのため、所定の部材の描画を省略する場合がある。以下の説明では、制御ユニット150が各種駆動機構を制御することによって編成機構103が動作することを前提とし、制御ユニット150の処理については特に言及しない。
【0147】
編成物2の編成に際し、編成機構103は、
図37の状態とされる。
図37の状態では、後方保持板群126はペア離間状態とされる。また後方保持板群126に編糸3がセットされる。
図64は、編糸3がセットされた後方保持板群126の一段目凹み部HK1と一段目保持部HJ1とを正面視した様子を単純化して模式的に示している。なお、
図64では、図面の見やすさのため、一段目凹み部HK1と一段目保持部HJ1との幅を異ならせている。
【0148】
図37、64で示すように、
図37の状態において、編糸3は、第1後方保持部形成板BH1の一段目凹み部HK1の右側から、全ての保持部形成板127の一段目凹み部HK1を通って第10後方保持部形成板BH10の一段目凹み部HK1の左側に至る。以下、
図37の状態において、編糸3のうち、後方保持板群126の一段目凹み部HK1のそれぞれを通過して左右方向に延在する部位を「後方一段目左右延在部位152」という。編糸3は、第10後方保持部形成板BH10の一段目凹み部HK1の左側で折り返し、第5後方板ペアPB5の一段目対保持部TH1(第10後方保持部形成板BH10の一段目保持部HJ1および第9後方保持部形成板BH9の一段目保持部HJ1の双方)に巻回され、一段目対保持部TH1にループ(いわゆる作り目)として保持される。
図36(A)を参照し、第5後方板ペアPB5の一段目対保持部TH1に保持されたループは、
図36(A)の第1層1段目の最も左側のループに相当する。編糸3は、第5後方板ペアPB5の一段目対保持部TH1に巻回された後、同様にして第4後方板ペアPB4、第3後方板ペアPB3、第2後方板ペアPB2、第1後方板ペアPB1の順番に一段目対保持部TH1に巻回され、その後、第1後方保持部形成板BH1の一段目凹み部HK1を通って、第1後方保持部形成板BH1の右側に排出される。
図37で示すように、後方一段目左右延在部位152は、一段目対保持部TH1に保持されたループよりも後方に位置している。なお、編糸3のセットは、機械的に行われてもよく、一部または全部が人為的に行われてもよい。
【0149】
図37の状態となった後、編成機構103は、前方編み針ユニット105を後方に移動させ、
図38の状態へ移行する。
図38(A)では、第1後方保持部形成板BH1の図示は省略している。なお、
図38では前方保持板群145の図示は省略されているが(以下の
図39〜49も同様)、前方保持板群145はペア離間状態であり、前方編み針ユニット105の対編み針101のそれぞれは、前方保持板群145の各板ペア140の間隙のそれぞれを通過して後方へ移動する。
【0150】
図37の状態から
図38の状態への移行について第1前方対編み針FA1に着目して説明すると、
図37の状態において第1前方対編み針FA1の対ベラ110は開状態である。ただし、この状態で閉状態としておき、
図38の状態へと移行する過程で、編糸3を利用したり磁石を利用したりするなどして開状態とするようにしてもよい。第1前方対編み針FA1の編み針先端部121は、後方への移動に応じて、第1後方板ペアPB1の間隙に進入し、第1後方板ペアPB1の一段目対保持部TH1に保持されたループの内側を通る。ペア離間状態においてループが対保持部146に保持されている場合、対保持部146は、ループの内側を広げた状態でループを保持する。このため、ペア離間状態の場合、編み針先端部121は、対保持部146に保持されたループの内側を通ることができる。更に第1前方対編み針FA1の編み針先端部121は、開状態の対ベラ110の上方に後方一段目左右延在部位152が位置し、かつ、開状態の対ベラ110の先端部が、対保持部146に保持されたループよりも後方に位置した状態となるまで後方に向かって移動する。
【0151】
図38の状態となった後、編成機構103は、前方編み針ユニット105を前方に向かって移動させ、
図39の状態へ移行する。
図38の状態から
図39の状態への移行について第1前方対編み針FA1に着目して詳述すると、第1前方対編み針FA1が
図38の状態から前方へ向かって移動すると、後方一段目左右延在部位152が対フック122に引っ掛かって係止し、対フック122に引っ張られる。対フック122は、第1後方板ペアPB1の一段目対保持部TH1に保持されたループの内側を通って前方へ向かって移動するため、対フック122に係止する編糸3はこのループの内側を通って対フック122に引っ張られていく。
【0152】
また、第1前方対編み針FA1が前方へ向かって移動する過程で、開状態の対ベラ110の先端部が、一対の一段目保持部HJ1に懸架された編糸3の部位に当接し、当該編糸3の部位に乗り上げる。更に第1前方対編み針FA1の前方への移動が進むと、当該編糸3の部位から対ベラ110に対して、対ベラ110を閉状態へと移行させる力が作用し、対ベラ110が徐々に閉じていき、閉状態となる。以上の結果、
図39の状態では、対ベラ110が閉状態となり、かつ、編糸3が第1前方追編み針FA1の対フック122に係止し、一段目対保持部TH1に保持されたループの内側を取って引っ張られた状態となる。
図36(A)を参照し、この状態は、第1層の編地の1段目のループに編糸3が通り、第1層1段目の編目が編成されると共に新たに第1層2段目のループが形成された状態である。なお、磁石を利用して対ベラ110を閉状態から開状態へ移行する機構や、対ベラ110に部材を当接させて対ベラ110を開状態へ移行させる機構等の対ベラ110の状態を変える専用の機構を設け、この種の機構により対ベラ110を閉状態へ移行させる構成としてもよい。
【0153】
図39の状態となった後、編成機構103は、後方保持板群126をペア近接状態とし、
図40の状態へ移行する。次いで編成機構103は、前方編み針ユニット105の対編み針101と、後方保持板群126の二段目対保持部TH2とが前後方向において対向する程度に後方保持板群126を若干、下方へ向かって移動(回動)させる。次いで編成機構103は、後方保持板群126の全ての二段目凹み部HK2に、右側から左側へ向かって給糸機構(不図示)から供給される編糸3を通過させ、
図41の状態とする。以下、
図41の状態において、編糸3のうち、後方保持板群126の二段目凹み部HK2のそれぞれを通過して左右方向に延在する部位を「後方二段目左右延在部位153」という。なお、このような編糸3の取り回しは制御ユニット150に取り回し機構が制御されることによって行われる。次いで編成機構103は、前方編み針ユニット105を後方へ向かって移動させ、
図42の状態を経由して
図43の状態へと移行する。
図43(A)では、第1後方保持部形成板BH1および第2後方保持部形成板BH2の図示は省略してある。
【0154】
図41の状態から
図42の状態を経由した
図43の状態への移行について第1前方対編み針FA1に着目して説明すると、
図41の状態から第1前方対編み針FA1が後方へ向かって移動すると、やがて一対の片フック113で懸架された編糸3の部位が、第1後方板ペアPB1の二段目対凹み部TK2に進入する。編糸3には弛みを抑制するテンション(編糸3を引っ張るテンション)が加えられており、第1前方対編み針FA1の後方への移動に応じて対フック122に係止するループは収縮していく。対フック122で懸架された編糸3の部位が、第1後方板ペアPB1の二段目対保持部TH2の下方に位置した状態(
図42の状態)となり、更に二段目対保持部TH2を後方側に超えると、対フック122で懸架された編糸3の部位は、当該部位を後方へ向かって移動させようとする力と、編糸3に加わるテンションが釣り合い、後方へ向かう移動がほとんどなくなる。一方で、対フック122は後方へ向かって移動する。
【0155】
このため、第1前方対編み針FA1が後方へ進むと、やがて対ベラ110の内側に対フック122で懸架された編糸3の部位が当接し、更に第1前方対編み針FA1が後方へ進むと、当該編糸3の部位から対ベラ110に対して、対ベラ110を開状態へと移行させる力が作用し、対ベラ110が徐々に開いていき、開状態となる。第1前方対編み針FA1の後方へ向かう移動が更に進むと、対フック122に係止していた編糸3の部位が、第1前方対編み針FA1の対窪み部123に位置した状態となり、この状態で第1前方対編み針FA1の移動は停止する。その後、後方保持板群126が少しだけ下方に向かって回動されると、
図43の状態となる。
【0156】
図43の状態となった後、編成機構103は、前方編み針ユニット105を前方へ向かって移動させ、
図44の状態を経由して
図45の状態へと移行する。
図43の状態から
図44の状態を経由した
図45の状態への移行について第1前方対編み針FA1に着目して説明すると、
図43の状態から第1前方対編み針FA1が前方へ移動を開始すると、対窪み部123に懸架された編糸3の部位に対して、第1前方対編み針FA1が相対的に前方へ向かって移動し、当該編糸3の部位は開状態の対ベラ110の根本に当接する。更に第1前方対編み針FA1の前方への移動が進むと、当該編糸3の部位は、対ベラ110に押されて徐々に前方へ向かって進んでいくと共に、対ベラ110に対して、対ベラ110を閉状態へと移行させる力を作用させ、対ベラ110を徐々に閉じさせていく。更に第1前方対編み針FA1の前方への移動が進むと、当該部位が、進入口117を介して二段目対保持部TH2の内側に入り込み、更に対ベラ110が閉状態となる(
図44の状態)。
【0157】
図44の状態から更に第1前方対編み針FA1が前方へ移動すると、
図45で示すように、ループが第1前方対編み針FA1から抜けて、第1前方追編み針FA1が第1後方板ペアPB1から前方に離間した位置に位置すると共に、二段目対保持部TH2によりループが保持された状態となる。以上のように、
図39の状態から
図45の状態へ至る一連の動作で、前方編み針ユニット105の対編み針101に係止していたループが、後方保持板群126の二段目対保持部TH2に目移しされる。
図45の状態で二段目対保持部TH2に保持されているループは、
図36(A)で示す第1層2段目のループに相当する。
【0158】
図45の状態となった後、編成機構103は、後方保持板群126を少しだけ上方へ向かって回動させると共に、後方保持板群126をペア離間状態とする。更に編成機構103は、
図37の状態から
図39の状態へ移行したときと同様の方法で、後方二段目左右延在部位153を前方編み針ユニット105の対編み針101のそれぞれで前方へ向かって引っ張って、二段目対保持部TH2により保持されたループのそれぞれの内側に編糸3を通す。これにより、
図36(A)を参照し、第1層2段目の編目が編成されると共に、第1層3段目のループが新たに形成される。
図46は、後方二段目左右延在部位153が前方編み針ユニット105のそれぞれの対編み針101により引っ張られ、第1層2段目のループに編糸3が通って新たに第1層3段目のループが形成され、そのループが前方編み針ユニット105の対編み針101のそれぞれに係止している様子を示す。
【0159】
以上のようにして編成機構103は、制御ユニット150の制御の下、一の対保持部146に保持された既存のループ(直前に形成されたループ)に編糸3を通して編目を編成すると共に新たなループを形成し、この新たなループを、当該一の対保持部146の一段上の対保持部146により保持するという動作を順次、実行し、列方向(=ウェール方向)に段階的に編目を編成していく。
図47は、第1層6段目のループが、後方保持板群126の六段目対保持部TH6のそれぞれにより保持された後、第1層6段目のループに編糸3が通されて新たに第1層7段目のループが形成され、形成されたループのそれぞれが、後方保持板群126の七段目対保持部TH7のそれぞれにより保持された状態を示している。
図47の状態では、後方保持板群126はペア離間状態である。
【0160】
図47の状態となった後、編成機構103は、後方編み針ユニット104を前方に向かって移動させ、
図48の状態へ移行する。
図48(A)では、第1後方保持部形成板BH1の図示が省略されている。
図48の状態では、後方編み針ユニット104の対編み針101のそれぞれの対フック122に、七段目対保持部TH7のそれぞれに保持されているループのそれぞれが係止している。
【0161】
図48の状態となった後、編成機構103は、後方編み針ユニット104の対フック122のそれぞれにループが係止した状態で、後方編み針ユニット104を後方へ向かって移動し、
図49の状態へ移行する。
図49の状態では、後方保持板群126の七段目対保持部TH7のそれぞれによるループの保持は解除される。後方編み針ユニット104の対編み針101のそれぞれの対フック122に係止するループは、第1層7段目のループであると共に、第2層1段目のループでもある(
図36(B)参照)。
【0162】
図49の状態となった後、編成機構103は、前方保持板群145の一段目凹み部HK1のそれぞれに、前方保持板群145の左側から右側に向かって編糸3を通し、
図50の状態とする。
図50で示すように、
図50の状態では、後方保持板群126の保持部形成板127の七段目保持部HJ7と、前方保持板群145の保持部形成板127の一段目保持部HJ1とが前後方向において対向するように、後方保持板群126の保持部形成板127および前方保持板群145の保持部形成板127の姿勢が制御される。以下、編糸3の部位のうち、前方保持板群145の一段目凹み部HK1のそれぞれを通過して左右方向に延在する部位を「前方一段目左右延在部位155」という。
【0163】
図50の状態となった後、編成機構103は、後方編み針ユニット104を前方に移動させ、
図51の状態へ移行する。
図51(A)では、後方保持板群126の第1後方保持部形成板BH1の図示を省略している。
図50の状態から
図51の状態への移行について第1後方対編み針BA1に着目して説明すると、
図50の状態から第1後方対編み針BA1が前方へ移動すると、対フック122に係止するループが、第1後方対編み針BA1に対して相対的に後方へ移動し(=相対的に基端側へ移動し)、やがて対ベラ110に当接し、対ベラ110に対して閉状態から開状態へと移行させる力を加える。更に第1後方対編み針BA1が前方へ移動し、ループが第1後方対編み針BA1に対して相対的に後方へ移動すると(=相対的に基端側へ移動すると)、対ベラ110が開状態となり、ループが対フック122から抜けて開状態の対ベラ110の先端を後方側へ超え、
図51の状態となる。
【0164】
図51の状態となった後、編成機構103は、後方編み針ユニット104を更に前方に移動させ、
図52の状態へ移行する。
図52(A)では、一部の移動棒の描写を省略している。
図51の状態から
図52の状態への移行について第1後方対編み針BA1に着目して説明すると、
図51の状態から後方編み針ユニット104が更に前方へ移動すると、ループは、第1後方対編み針BA1に対して相対的に後方へ移動し(=相対的に基端側へ移動し)、やがて編み針基端部120の対押し込み面124に当接する。更に第1後方対編み針BA1が前方へ移動すると、編糸3に加わるテンションに抗して対押し込み面124によりループが押され、
図52の状態となる。
図52の状態では、対編み針101に懸架された編糸3の部位は、前方保持板群145の第1前方板ペアPF1の一段目対保持部TH1よりも前方に位置する。
【0165】
図52の状態となった後、編成機構103は、後方編み針ユニット104を後方へ移動させ、
図53の状態へ移行する。
図52の状態から
図53の状態へと移行する過程で、
図43の状態から
図44の状態を経由して
図45の状態へと移行するときと同様の方法で、後方編み針ユニット104の対編み針101のそれぞれに懸架されていたループは、前方保持板群145の一段目対保持部TH1のそれぞれに目移しされ、一段目対保持部TH1のそれぞれに保持される。
【0166】
図53の状態となった後、編成機構103は、前方保持板群145をペア離間状態とし、更に、前方保持板群145を少しだけ上方に向かって回動させた後、後方編み針ユニット104の対フック122のそれぞれが前方一段目左右延在部位155よりも前方に位置する程度に、後方編み針ユニット104を前方に移動させる(
図54)。
図54(A)では、前方保持板群145の第1前方保持部形成板FH1の図示を省略している。
図54で示すように、
図54の状態では、後方編み針ユニット104の対編み針101の編み針先端部121は、前方保持板群145の一段目対保持部TH1に保持されたループの内側を通過する。
【0167】
次いで編成機構103は、後方編み針ユニット104を後方へ移動させ、
図55の状態へ移行する。
図55(A)では、後方保持板群126の第1後方保持部形成板BH1の図示を省略している。
図54の状態から
図55の状態へと移行する過程で、前方保持板群145の一段目対保持部TH1のそれぞれに保持されたループ(第1層7段目のループであり、第2層1段目のループでもある)に編糸3が通され、第2層1段目の編目が編成されると共に、後方編み針ユニット104の対フック122のそれぞれに係止する新たなループ(第2層2段目のループ)が形成される。
【0168】
次いで編成機構103は、前方保持板群145をペア近接状態とし、その後、前方保持板群145の二段目保持部HJ2と後方保持板群126の七段目保持部HJ7とが前後方向において対向する程度に前方保持板群145を下方へ向かって回動させる。更に編成機構103は、前方保持板群145の二段目凹み部HK2のそれぞれに、前方保持板群145の右側から左側に向かって編糸3を通し、
図56の状態へ移行する。以下、編糸3の部位のうち、前方保持板群145の二段目凹み部HK2のそれぞれを通過して左右方向に延在する部位を「前方二段目左右延在部位156」という。
【0169】
次いで編成機構103は、後方編み針ユニット104を前方へ移動させ、前方保持板群145を少しだけ下方へ向かって回動させ、
図57の状態へ移行する。更に編成機構103は、後方編み針ユニット104を後方へ移動させ、
図58の状態へ移行する。
図58では、後方保持板群126の第1後方保持部形成板BH1の図示を省略している。
図56の状態から
図58の状態へと至る一連の動作によって、
図50の状態から
図53の状態へと至る一連の動作と同様の方法で、後方編み針ユニット104の対編み針101のそれぞれに係止していたループが、前方保持板群145の二段目対保持部TH2のそれぞれに目移しされる。ここで二段目対保持部TH2のそれぞれに保持されたループのそれぞれは、第2層2段目のループである。
【0170】
次いで編成機構103は、後方保持板群126の保持部形成板127の六段目保持部HJ6と、前方保持板群145の保持部形成板127の二段目保持部HJ2とが前後方向において対向する程度に後方保持板群126を上方へへ向かって回動させる。次いで編成機構103は、対フック122のそれぞれが、後方保持板群126の六段目対保持部TH6のそれぞれに保持されたループのそれぞれを前方に向かって超える程度に後方編み針ユニット104を前方に向かって移動させ、その後、
図59の状態へ移行する。
図59(A)では、後方保持板群126の第1後方保持部形成板BH1の図示を省略している。
【0171】
図59(A)の状態となった後、編成機構103は、後方編み針ユニット104を後方に移動させ、
図60の状態へ移行する。
図60(A)では、後方保持板群126の第1後方保持部形成板BH1および前方保持板群145の第1前方保持部形成板FH1の図示を省略している。
図60の状態では、後方保持板群126の六段目対保持部TH6のそれぞれに保持されていたループ(第1層6段目のループ)のそれぞれが、後方編み針ユニット104の対編み針101のそれぞれに目移しされる。つまり、編成機構103は、後方保持板群126の保持部形成板127の六段目対保持部TH6(一方の保持部形成部材の一の保持部分)に係止する第1層のループを、後方編み針ユニット104(編み針部材)の対編み針101の対フック122に引っ掛ける。
【0172】
次いで編成機構103は、後方編み針ユニット104を前方へ移動させ、
図61の状態へ移行する。
図61(A)では、後方保持板群126の第1後方保持部形成板BH1および前方保持板群145の第1前方保持部形成板FH1の図示が省略されている。第1後方対編み針BA1に着目して
図60の状態から
図61の状態への移行について説明すると、編成機構103は、第1後方対編み針BA1が前方保持板群145の第1前方板ペアPF1の二段目対保持部TH2(他方の保持部形成部材の一の保持部分)に保持された第2層のループの内側を通るように、第1後方対編み針BA1を前方(第1後方対編み針BA1にとっての先端側向き)へ移動させる。この移動に伴って、編成機構103は、対フック122に係止する第1層のループを第1後方対編み針BA1に対して相対的に後方(第1後方対編み針BA1にとっての基端側向き)に移動させ、第1層のループを対押し込み面124に当接させる。
図61の状態において対ベラ110は開状態であり、対ベラ110の先端部は、前方保持板群145の第1前方板ペアPF1の二段目対保持部TH2に懸架された編糸3の部位よりも前方側に位置する。また、
図61の状態では、第1後方対編み針BA1の対フック122は、前方二段目左右延在部位156よりも前方側に位置する。
【0173】
図61の状態となった後、編成機構103は、後方編み針ユニット104を後方へ移動させ、
図62の状態へ移行する。
図62(A)では、後方保持板群126の第1後方保持部形成板BH1および前方保持板群145の第1後方保持部形成板BH1の図示が省略されている。後方編み針ユニット104の第1後方対編み針BA1に注目して
図61の状態から
図62の状態への移行について説明すると、編成機構103は、前方保持板群145の第1前方板ペアPF1の二段目対保持部TH2(他方の保持部形成部材の一の保持部分)に保持された第2層のループよりも前方(第1後方対編み針BA1にとっての先端側向き)にある編糸3に、第1後方対編み針BA1の対フック122を係止させる。編成機構103は、対フック122に係止する編糸3が前方保持板群145の第1前方板ペアPF1の二段目対保持部TH2に保持された第2層のループの内側を通るように第1後方対編み針BA1を後方(第1後方対編み針BA1にとっての基端側向き)へ移動させる。この移動に伴って、編成機構103は、対フック122に編糸3が係止した状態を維持しつつ、対押し込み面124に当接していた第1層のループを第1後方対編み針BA1に対して相対的に前方(第1後方対編み針BA1にとっての先端側向き)に移動させて、第1層に係るループに対ベラ110の外側を摺動させて対ベラ110を閉状態へと移行させると共に、第1層のループが対フック122を前方(第1後方対編み針BA1にとっての先端側)に超えるようにする。
【0174】
図61の状態から
図62の状態への移行に関し以上の動作が行われる結果、前方保持板群145の二段目対保持部TH2のそれぞれに保持されているループ(第2層2段目のループ)と、対編み針101に係止していたループ(=第1層6段目のループ)との双方に編糸3が通される。これにより、第2層2段目の編目が編成されると共に、第2層3段目のループが新たに形成され、この新たに形成されたループが対編み針101の対フック122に係止した状態となる。
【0175】
図62の状態となった後、編成機構103は、前方保持板群145の三段目対保持部TH3のそれぞれと、後方保持板群126の六段目対保持部TH6のそれぞれとが前後方向において対向する程度に前方保持板群145を下方へ向かって回動させる。次いで、編成機構103は、前方保持板群145の三段目凹み部131のそれぞれに、前方保持板群145の左側から右側に向かって編糸3を通し、
図63の状態とする。
図63では、後方保持板群126の第1後方保持部形成板BH1および前方保持板群145の第1後方保持部形成板BH1の図示が省略されている。
【0176】
以降、編成機構103は、制御ユニット150の制御の下、
図56の状態から
図62の状態へと移行したときの動作と同様の動作を行って以下の動作を実行する。すなわち、編成機構103は、
図63の状態で後方編み針ユニット104の対編み針101のそれぞれに係止する第2層3段目のループと、
図63の状態で後方保持板群126の五段目対保持部TH5のそれぞれに保持されている第1層5段目のループとの双方に編糸3を通して、第2層3段目の編目を編成すると共に、新たに第2層4段目のループを形成する。第2層3段目のループは、前方保持板群145の三段目対保持部TH3に保持される。このようにして編成機構103は、第2層で直近に形成されたループと、対応する第1層のループとの双方に編糸3を通して編目を編成し、新たなループを形成するという動作を繰り返し行い、列方向(いわゆるウェール方向)に段階的に編目を編成していき、第2層の編地を編成する。
【0177】
編成機構103は、第2層の編地の編成後、第2層から第3層へと折り返し、第3層の編目を順次、編成していき第3層の編地を編成する。上述したように、第2層から第3層への折り返しは、1段目の編目の編成に際して、同層(この場合、第3層)のループと1つ下の層(本例では第2層)のループとの双方に編糸3を通す点で、第1層から第2層への折り返しと異なっている。以下、側面図を使用して第2層から第3層への折り返しについて説明する。
【0178】
図65は、第2層から第3層へ折り返すときの編成機構103の動作を示す側面図であり、(A)から(D)へ向かって時間が形成している。
【0179】
図65(A)は、前方保持板群145が第2層の編地の1段目から7段目のループを保持している様子を示している。
図65(A)の時点では、破線で囲んだ部分において第2層の編地に第1層の編地が重なって連結されているが、
図65の各図では図面の見やすさのため、第1層の編地については図示を省略している。
図65(A)の状態となった後、編成機構103は、後方保持板群126の一段目対保持部TH1のそれぞれによるループの保持を、後方編み針ユニット104によって解除し、これのループについては保持を破棄する。なお一段目対保持部TH1に保持されたループは、第1層1段目のループ(作り目)である。
【0180】
後方編み針ユニット104の第1後方対編み針BA1に着目してこのときの編成機構103の動作を説明すると、編成機構103は、第1後方対編み針BA1を移動させて一段目対保持部TH1に係止するループを対フック122に目移しする。次いで編成機構103は、対フック122にループが係止している第1後方対編み針BA1を前方へ移動させ、ループを対押し込み面124に当接させ、そのまま前方に移動する。ループにより対フック122は開状態となる。次いで編成機構103は、第1後方対編み針BA1を後方へ移動させる。この移動に伴って対ベラ110が閉状態になり、ループは対ベラ110の外側を摺動して対編み針101から抜ける。これにより、ループの保持が破棄される。
図65(B)は、後方保持板群126の一段目対保持部TH1のそれぞれによるループの保持が解除された後の編成機構103の様子を示している。
【0181】
図65(B)の状態となった後、編成機構103は、後方保持板群126の一段目保持部HJ1のそれぞれと、前方保持板群145の七段目保持部HJ7のそれぞれとを前後方向において対向させる。次いで編成機構103は、前方編み針ユニット105を移動させて、前方保持板群145の七段目対保持部TH7が保持するループ(第2層7段目のループであり、第3層1段目のループでもある)のそれぞれを、前方編み針ユニット105の対編み針101のそれぞれに目移しし、更に後方保持板群126の全ての一段目凹み部HK1に編糸3が挿通した状態で左右方向に延在するように編糸3を取り回し、
図65(C)の状態とする。
【0182】
次いで編成機構103は、前方編み針ユニット105の移動を制御し、前方編み針ユニット105に係止するループのそれぞれを、後方保持板群126の一段目対保持部TH1に目移しする(
図65(D)の状態)。次いで編成機構103は、後方保持板群126、前方保持板群145および前方編み針ユニット105を制御して、後方保持板群126の一段目凹み部HK1内で左右方向に延在する編糸3を、後方保持板群126の一段目対保持部TH1に保持された第3層1段目のループと、前方保持板群145の六段目対保持部TH6に保持されている第2層6段目のループとの双方に通して、第3層1段目の編目を編成する。編成機構103は、第3層1段目の編目の編成に応じて第2層6段目のループの保持を解除し、編目の編成によって新たに形成された第3層2段目のループを、後方保持板群126の二段目対保持部TH2のそれぞれによって保持させる。以降、第3層のループと対応する第2層のループとの双方に編糸3が通されることによって、列方向(=ウェール方向)に段階的に編目が編成される。
【0183】
以上のように、本実施形態では、編成機構103は、編地の1つの列に着目したときに、1つの層で列方向に形成された複数のループを保持可能な複数の保持部132が形成された保持部形成板127を2つ備えている。編成機構103は、第N−1層の編地の編成時に形成されたループを、一方の保持部形成板127の保持部132により第N−1層の編地の編成の完了後も保持する。編成機構103は、第N層の編地の編目を編成する際、他方の保持部形成板127の一の保持部132により第N層で既に形成されたループを保持し、当該他方の保持部形成板127の一の保持部132により保持した第N層に係るループと、当該一方の保持部形成板127の保持部132により保持している第N−1層に係るループのうち、当該一方の保持部形成板127の一の保持部132が保持する、当該他方の保持部形成板127の一の保持部132により保持した第N層に係るループの位置に対応する位置のループとの双方に編糸を通して編目を編成し、編目の編成に応じて当該一方の保持部形成板127の一の保持部132による第N−1層に係るループの保持を解除する一方、当該他方の保持部形成板127の一の保持部132による第N層に係るループの保持を第N層の編地の編成の完了後も継続する。この構成によれば、第1実施形態と同様、複数層の編地により構成される中身の詰まった立体的な形状の編成物2を編成可能である。
【0184】
<第2実施形態の変形例>
次に第2実施形態の変形例について説明する。第2実施形態では、
図41〜45で示すケースのように、対編み針101の対フック122に係止するループを対保持部146に目移しする際、
図43で示すように、対編み針101(
図43の例では第1前方対編み針FA1)が、凹み部131内を延在する編糸3(
図43の例では後方二段目左右延在部位153)よりも上方に位置するようにしていた。しかしながら、
図66で示すように、対編み針101が編糸3の下方に位置するようにしてもよい。
図66の状態から前方編み針ユニット105を前方へ移動させると、編糸3によって対ベラ110が閉状態となり、編糸3を対フック122内に進入させることなく、ループを対保持部146に係止させることができる。なお、後方二段目左右延在部位153には、給紙機構によりこの位置に留まらせようとするテンションが加わっているため、
図66の位置に留まった状態となる。
【0185】
また、対編み針101に関し、以下の構成としてもよい。
図67は、第2実施形態に係る対編み針101の変形例である対編み針160を示す図である。
図67に示すように、対編み針160は、ハウジング161と、このハウジング161内に対して相対的に第1位置(
図67(A)、(B))と、第2位置(
図67(C))との間で移動可能な編み針本体162とを有している。
図67(A)、(B)で示すように、編み針本体162がハウジング161に対して第1位置にあるときは、対ベラ163がハウジング161の外側に位置し、開状態と閉状態との何れの状態ともなり得る。一方、第1位置に位置する編み針本体162の対ベラ163が
図67(B)のように開状態であるとする。この状態から編み針本体162が第2位置へ移動すると、
図67(C)に示すように、対ベラ163はハウジング161に形成されたベラ収容部164に収容され、対ベラ163が開状態のままロックされる。
【0186】
対ベラ163は、例えば以下の態様で使用される。
図68は、対ベラ163の使用態様の説明に利用する図である。今、編成機構103が
図68(A)の状態であり、この状態から対編み針160に係止するループを、二段目対保持部TH2に目移しするとする。なお、第1後方保持部形成板BH1は適切に移動されるものとし、第1後方保持部形成板BH1の移動に関しては説明を省略する。
【0187】
編成機構103は、
図68(A)の状態から、対編み針160を後方へ移動すると共に対ベラ163を開状態へ移行させ、編み針本体162を第2位置に移動し、開状態の対ベラ163をベラ収容部164に収容させる(
図68(B))。次いで編成機構103は、対編み針160を前方へ移動し、ループを二段目対保持部TH2に係止させる(
図68(C))。次いで編成機構103は、対編み針160を後方へ移動すると共に、編み針本体162を第1位置に移動する(
図68(D))。
図68(D)の状態では、対ベラ163は、開状態である。編成機構103は、
図68(D)の状態から対編み針160を前方へ移動し、
図68(E)の状態とする。
図68(D)から
図68(E)へ移行する過程で、対ベラ163は、編糸3に当たって閉状態となる。なお、第2実施形態およびその変形例において、対編み針101、160に対窪み部123が形成されていたが、対窪み部123はなくてもよい。
【0188】
また、第2実施形態に係る編み機100の編成機構103により編成される編成物2の状態は第2実施形態で例示したものに限られず、また、編成する編成物2の状態によって編成方法が異なることになる。例えば、上記実施形態では、第1層から第2層へ折り返す際に、第2層1段目の編目については、第1層のループに編糸3を通さなかった。この点に関し、第2層1段目の編目の編成に際して、第2層1段目のループと、(第2層6段目ではなく)第2層5段目のループとに編糸3を通すようにしてもよい。このほか、第2実施形態では、第2層2段目のループと第1層6段目のループとに編糸3を通すとしたところを、第2層2段目のループと第1層5段目のループとに編糸3を通すといったように、同時に編糸3が通される第N層と第N−1層との組み合わせは上記実施形態で例示したものに限られない。また、移動棒と、適切な保持部形成板127とを直接接着したり、これらを一体成形したりしてもよい。また、後方保持板群126および前方保持板群145をペア近接状態およびペア離間状態にする方法は本実施形態で例示した方法に限られない。
【0189】
また、各層の段数を同等とする必要はない。一例として、第2層は7段とする一方、第3層は6段としたり、第2層は6段とする一方、第3層は7段とする、といったことが可能である。第N層の段数が第N−1層の段数より少ない場合は、第N−1層のループのうち、第N層のループと一緒に編糸3が通されないものについては、
図65(A)を用いて説明した方法と同様の方法で、ループの保持を解除すればよい。また、第N層の段数が第N−1層の段数より多い場合は、第2実施形態の例における第1層から第2層への折り返しのように、第N層のループだけに編糸3を通すことによって新たなループを形成することによって段数を増やすことが可能である。このように層によって段数を増減させることによって編成物2の形状をコントロールすることが可能である。
【0190】
また、上記実施形態では、対編み針101に係止するループを対保持部146に目移しする際には、後方保持板群126(または前方保持板群145)をペア近接状態とし、対編み針101を上述した態様で動作させて編糸3に係止するループを対保持部146に目移しした。一方、対保持部146が保持するループを対編み針101に目移しする際には、後方保持板群126(または前方保持板群145)をペア離間状態とし、対編み針101を上述した態様で動作させて対保持部146が保持するループを対編み針101に目移しした。また、対保持部146に係止するループに、編糸3を通す際も、後方保持板群126(または前方保持板群145)をペア離間状態とし、対編み針101を動作させて、ループの内側に対編み針101に係止する編糸3を通した。しかしながらループの目移しや、編目の編成を実現するための各部材の構造的特徴や、各部材の動作は上記実施形態で例示したものに限られない。一例として、対編み針101について、一方の片編み針112と他方の片編み針112との間の距離を変動できる構成とする一方、対保持部146における一対の保持部132距離が固定されるようにし、対編み針101から対保持部146にループを目移しする際には、対編み針101の離間の幅を対保持部146の離間の幅よりも大きくし、編糸3を引っ掛けるようにして目移しを行い、対保持部146から対編み針101にループを目移しする際には、対編み針101の離間の幅を対保持部146の離間の幅よりも小さくし、編糸3を引っ掛けるようにして目移しを行うようにしてもよい。また編目の編成の際には、対編み針101の離間の幅を対保持部146の離間の幅よりも小さくし、対保持部146が保持するループに対編み針101に係止する編糸3を通すようにしてもよい。
【0191】
以上、本発明の2つの実施形態(変形例を含む)について説明したが、上記実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。特に、編み機100の構造が各実施形態の構造に限定されないことは言うまでもない。すなわち、本発明は、編成機構を有する編み機であって、第N−1層(ただし、Nは2以上の整数)の編地の編成時に形成されたループを、第N−1層の編地の編成の完了後も保持し、第N層の編地の編目を編成する際、第N層で既に形成されたループを保持し、保持した当該第N層で既に形成されたループと、保持している第N−1層に係るループのうち、第N層で既に形成されたループの位置に対応する位置のループとの双方に新たな編糸を通して編目を編成し、編目の編成に応じて当該対応する位置のループの保持を解除する一方、当該第N層で既に形成されたループの保持を第N層の編地の編成の完了後も継続するものを広く含んでおり、構造的特徴や、動作は第1実施形態や第2実施形態に限定されるものではない。また、ある層の編地に関し、その層の編地の編成の完了後も保持されるループはその層のループの全てではなく、次の層の編目の編成の際に、次の層のループと一緒に編糸3が通されるものを含んでいればよい。
(A)はペア離間状態(後述)の後方保持板群126および関連する部材の斜視図であり、(B)はペア近接状態(後述)の後方保持板群126および関連する部材の斜視図である。後方保持板群126は、右側から左側へ向かって2つずつペアとなって板ペア140を構成する。すなわち、第1後方保持部形成板BH1と第2後方保持部形成板BH2とが1つのペアとなって第1後方板ペアPB1が構成され、第3後方保持部形成板BH3と第4後方保持部形成板BH4とにより第2後方板ペアPB2が、第5後方保持部形成板BH5と第6後方保持部形成板BH6とにより第3後方板ペアPB3が、第7後方保持部形成板BH
第8後方保持部形成板BH8とにより第4後方板ペアPB4が、第9後方保持部形成板BH9と第10後方保持部形成板BH10とにより第5後方板ペアPB5が構成される。