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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2020年7月23日
【発行日】2021年11月25日
(54)【発明の名称】静電結合方式の電子ペン
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/03 20060101AFI20211029BHJP
   G06F 3/044 20060101ALI20211029BHJP
【FI】
   G06F3/03 400A
   G06F3/03 400F
   G06F3/044 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】29
【出願番号】特願2020-566118(P2020-566118)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2019年11月8日
(31)【優先権主張番号】特願2019-6246(P2019-6246)
(32)【優先日】2019年1月17日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】000139403
【氏名又は名称】株式会社ワコム
(74)【代理人】
【識別番号】100091546
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 正美
(74)【代理人】
【識別番号】100206379
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 正
(72)【発明者】
【氏名】二宮 健一
(72)【発明者】
【氏名】田中 航平
(57)【要約】
細型化を可能にすると共に、筆圧検出機能を備える場合においても、弾性部材を用いずに導電性の芯体に信号を供給することができるようにする。
筒状の筐体内の所定位置に、軸心方向が筐体の軸心方向の方向となる状態で固定配置された筒状導体を備える。導電性を有する芯体を、筐体の軸心方向の一方の開口から先端が突出すると共に、当該先端とは反対側が筒状導体の中空部内に移動可能に挿通される。信号発信回路が、筐体内の所定位置に、軸心方向において、筒状導体に対して、芯体の先端側とは反対側に配設される。信号発信回路と筒状導体とは、接続用部材により電気的に接続される。信号発信回路からの信号は、信号発信回路に電気的に接続されている筒状導体と芯体とが非接触状態であるときには、筒状導体と芯体との間の静電結合を通じて芯体に伝達され、芯体の先端部から外部に送信される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の筐体と、
前記筐体内に配設される信号発信回路と、
前記筐体内の所定位置に、軸心方向が前記筐体の軸心方向の方向となる状態で固定配置された筒状導体と、
前記筐体の軸心方向の一方の開口から先端が突出すると共に、前記先端とは反対側が前記筒状導体の中空部内に移動可能に挿通される導電性を有する芯体と、
前記信号発信回路と前記筒状導体とを電気的に接続するための接続用部材と、
を備え、
前記信号発信回路からの信号は、前記信号発信回路に電気的に接続されている前記筒状導体と前記芯体とが非接触状態であるときには、前記筒状導体と前記芯体との間の静電結合を通じて前記芯体に伝達され、前記芯体の先端部から外部に送信される
ことを特徴とする静電結合方式の電子ペン。
【請求項2】
前記筒状導体は、前記筐体内の、軸心方向において前記筒状導体と前記信号発信回路との間の位置に固定配置されたホルダーの前記筐体の前記一方の開口側に固定されている
ことを特徴とする請求項1に記載の静電結合方式の電子ペン。
【請求項3】
前記芯体の前記先端側と反対側の端部は、前記筒状導体を貫通して、前記ホルダーに設けられている嵌合部材の嵌合部に嵌合されている
ことを特徴とする請求項2に記載の静電結合方式の電子ペン。
【請求項4】
前記芯体は、前記ホルダーに設けられている前記嵌合部材に対して抜き差し可能に嵌合されている
ことを特徴とする請求項3に記載の静電結合方式の電子ペン。
【請求項5】
前記ホルダーは、前記芯体の先端に印加される筆圧を検出する感圧用部品を保持する筆圧検出部用ホルダーである
ことを特徴とする請求項2に記載の静電結合方式の電子ペン。
【請求項6】
前記芯体の前記先端側と反対側の端部は、前記筒状導体を貫通して、前記ホルダーに設けられている嵌合部材の嵌合部に抜き差し可能に嵌合されており、
前記嵌合部材は、前記芯体が前記先端に印加される筆圧より軸心方向に変位するときに、前記芯体と共に軸心方向に変位可能に前記ホルダー内に配設されており、
前記ホルダーは、前記芯体及び前記嵌合部材を通じて伝達される圧力を検出することにより、前記芯体の先端に印加される筆圧を検出する感圧用部品を保持する
ことを特徴とする請求項2に記載の静電結合方式の電子ペン。
【請求項7】
前記接続用部材は、前記ホルダーを迂回して、前記筒状導体と前記信号発信回路とを電気的に接続するように設けられている
ことを特徴とする請求項2に記載の静電結合方式の電子ペン。
【請求項8】
前記接続用部材は、前記ホルダーの外表面に形成されている
ことを特徴とする請求項2に記載の静電結合方式の電子ペン。
【請求項9】
前記芯体が挿通されている前記筒状導体の周囲を覆うように周辺電極が設けられており、前記周辺電極も位置検出センサとの静電結合して信号の授受を行うように構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の静電結合方式の電子ペン。
【請求項10】
前記筒状導体と前記周辺電極との間に絶縁部材が設けられている
ことを特徴とする請求項9に記載の静電結合方式の電子ペン。
【請求項11】
前記周辺電極は、前記芯体と静電結合する位置検出センサを備える位置検出装置からの信号を、前記位置検出センサを通じて受信する
ことを特徴とする請求項9に記載の静電結合方式の電子ペン。
【請求項12】
前記周辺電極は、前記芯体の軸心方向が位置検出センサの入力面に対する傾き角の検出用とされる
ことを特徴とする請求項9に記載の静電結合方式の電子ペン。
【請求項13】
前記周辺電極は、外部に露出する状態で取り付けられている
ことを特徴とする請求項9に記載の静電結合方式の電子ペン。
【請求項14】
前記筒状導体の前記芯体の先端側は、前記筐体の一方の開口から外部に突出している
ことを特徴とする請求項1に記載の静電結合方式の電子ペン。
【請求項15】
前記筒状導体は、導電性の金属で構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の静電結合方式の電子ペン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、静電結合方式の電子ペンに関する。
【背景技術】
【0002】
静電結合方式の電子ペンとして、位置検出装置の位置検出センサとの間の静電結合を通じて信号の授受(インタラクション)を行うことで、位置検出センサで電子ペンにより指示された位置を検出するようにする、いわゆるアクティブ静電結合方式の電子ペンが賞用されている。
【0003】
この種の静電結合方式の電子ペンは、筒状の筐体の中空部内に、電源としての電池(一次電池又は二次電池)と、筆圧検出部と、信号発信回路が搭載される回路基板等が、電子ペンの筐体の軸心方向に並べられて収納されて構成されている(特許文献1(特開2016−126503号公報)等参照)。
【0004】
この場合に、回路基板は基板ホルダーに載置されると共に、筆圧検出部は、筆圧検出部用筐体内に感圧用部品及び圧力伝達部材が収納される構成とされている。そして、筆圧検出部と基板ホルダーとが電子ペンの筐体の軸心方向において結合されることでユニット化(モジュール化)されているものが多い。基板ホルダーが、筆圧検出部用筐体部分を備えるように構成されているものもある。
【0005】
図9は、この種の従来の静電結合方式の電子ペンのペン先側の構成の一例を示すものであり、図9(A)は、その縦断面図を示し、図9(B)は、基板ホルダーが、筆圧検出部用筐体部分を備えるように構成されてユニット化されている部分の拡大説明図である。
【0006】
この例の電子ペン100は、図9(A)に示すように、筒状の筐体101のペン先側の開口に、テーパ形状の筒状体からなるフロントキャップ102が嵌合されて取り付けられている。筐体101は、使用者が電子ペン100を持って操作するときに、人体を通じてアース(地球アース)されるように、導電性材料、例えば金属で構成されている。また、フロントキャップ102は、絶縁性材料、例えば樹脂で構成されている。
【0007】
図9(A)に示すように、ペン先側には、導電性材料で構成されている芯体103が軸心方向に自由に移動可能となるように挿通可能とされ、芯体ホルダー111に保持されるように構成されている。導電性材料からなる芯体103と、導電性材料からなる筐体101とは、フロントキャップ102が介在することにより電気的に分離(絶縁)されている。
【0008】
図9(A)に示すように、筐体101の中空部内には、信号発信回路等の回路部品が搭載されているプリント基板104を、基板載置台部105aに載置している基板ホルダー105が収納されている。
【0009】
基板ホルダー105は、基板載置台部105aよりもペン先側に、筒状の感圧用部品保持部105cを保持する筒状部105bを備えている。感圧用部品保持部105c内には、筆圧検出部106を構成する感圧用部品が収納される。この例の筆圧検出部106は、芯体103に印加される筆圧に応じて静電容量が変化する容量可変コンデンサで構成される。
【0010】
この例の感圧用部品は、図9(A)及び(B)に示すように、誘電体107と、絶縁性材料からなるスペーサ部材108と、導電性弾性部材109と、係止用部材110とで構成される複数個の部品からなる。誘電体107は円板形状のもので、図示は省略するが、当該円板形状の軸心方向の係止用部材110側の一方の端面には容量可変コンデンサの第1の電極を構成する電極が形成されている。
【0011】
スペーサ部材108は、絶縁性を有すると共に弾性を有するリング状の部材である。導電性弾性部材109は例えば導電性ゴムで構成され、その先端部端面が誘電体107の他方の端面に対向するように配され、前記容量可変コンデンサの第2の電極を構成する。
【0012】
係止用部材110は、誘電体107の電極が形成されている側に配置されて、誘電体107が軸心方向の後端側に移動しないように規制するためのものである。
【0013】
そして、この例では、導電性弾性部材109には、芯体ホルダー111が嵌合される嵌合凹部109aを備えている。
【0014】
芯体ホルダー111は、導電性材料からなり、導電性弾性ゴムからなる芯体保持部材112を収納する凹穴111aと、筆圧検出部106に嵌合する棒状部111bとが一体に形成されたものである。
【0015】
芯体103は、その先端部103aとは反対側の端部103bが、導電性材料からなる芯体ホルダー111に収納されている導電性の芯体保持部材112に嵌合されることにより、芯体ホルダー111に対して抜き差し可能の状態で結合保持されている。芯体103の先端部103aに印加される圧力に応じて芯体103及び芯体ホルダー11が一体的に軸心方向に変位することにより、芯体103の先端部103aに印加される圧力(筆圧)が筆圧検出部106に伝達されるように構成されている。
【0016】
そして、芯体ホルダー111を常に芯体103側に付勢するようにするコイルばね113が、芯体ホルダー111と基板ホルダー105の筒状部105bとの間に設けられている。このコイルばね113は、導電性金属などの導電性材料で構成されており、その一端113aは、図9(A)に示すように、プリント基板104にまで延長されて、当該プリント基板104に配設されている信号発信回路と電気的に接続されている。
【0017】
芯体ホルダー111は、導電性材料で構成されているので、この芯体ホルダー111に対して導電性の芯体保持部材112を介して装着された導電性材料からなる芯体103は、このコイルばね113を通じて、プリント基板104に配設されている信号発信回路と電気的に接続されている。これにより、信号発信回路からの信号、この例では、所定の周波数f1の信号が、芯体103を通じて位置検出センサに対して送出される。
【0018】
そして、この例の電子ペン100においては、芯体103の先端側に圧力(筆圧)が印加されると、芯体103は、軸心方向に、電子ペン100の筐体101内側に変位するようになる。すると、芯体103が嵌合されている芯体ホルダー111が、芯体103と一体的に軸心方向に変位するので、筆圧検出部106の導電性弾性部材109を誘電体107側に変位させる。すると、導電性弾性部材109と誘電体107との両者の接触面積が、印加された圧力に応じて変化して、筆圧検出部106で構成される容量可変コンデンサの静電容量が印加された圧力に応じて変化する。したがって、この筆圧検出部106で構成される容量可変コンデンサの静電容量から、筆圧を検出することができる。
【0019】
そして、この例の電子ペン100においては、図9(A)に示すように、芯体103の周囲を囲む導電性材料からなる周辺電極114が設けられている。この周辺電極114は、図9(A)では図示を省略したが、プリント基板104の回路部品と電気的に接続されている。この周辺電極114は、信号発信回路からの信号を位置検出センサに送出することで、電子ペン100の傾きを検出したり、あるいは、位置検出装置から位置検出センサを通じて送られる指示信号を受信したりするために用いられる。
【0020】
そして、この例の電子ペン100においては、芯体103及び芯体ホルダー111と、周辺電極114との絶縁を確保するための筒状の絶縁部材105dが、基板ホルダー105の筒状部105bの外周部に嵌合するようにして設けられている。
【0021】
また、図9(A)に示すように、フロントキャップ102の開口102a近傍の内側には、芯体103を貫通させる筒状部102cが設けられており、周辺電極114は、この筒状部102cの存在によっても、芯体103とは電気的に分離(絶縁)された状態となるようにされている。また、フロントキャップ102は、図9(A)に示すように、周辺電極114と、電子ペン100の筐体101との間の電気的な分離(絶縁)の役割をも担うように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】特開2016−126503号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
以上説明したように、従来の静電結合方式の電子ペン100においては、導電性を有する芯体103と、プリント基板104に設けられている信号発信回路との電気的な接続は、芯体103を、導電性材料で構成されている芯体ホルダー111に嵌合すると共に、芯体ホルダー111に対して電気的に接続される導電性材料で構成されているコイルばね113を用いるようにしている。
【0024】
このようにするのは、芯体103を電子ペンに対して抜き差し可能とすると共に、芯体103が筆圧により軸心方向に変位するために、直接的に、芯体103と信号発信回路とを電気的に接続することが困難であることに起因する。また、コイルばね113を用いるのは、芯体103が芯体ホルダー111と共に、先端部103aに印加される筆圧に応じて軸心方向に変位しても当該変位によって電気的な接続が不良とならないようにして、芯体と信号発生回路との電気的接続を確保するためである。
【0025】
以上のように、従来の電子ペンの場合には、導電性の芯体ホルダー111を用いると共に、コイルばね113により芯体103と信号発生回路との電気的接続を確保するように構成する必要があり、芯体ホルダー111やコイルばね113の存在のため、電子ペンの細型化が困難であるという問題がある。
【0026】
また、芯体103の先端部103aに印加される筆圧を筆圧検出部106で検出する際に、このコイルばね113が、検出する筆圧に悪影響を与えるという問題がある。すなわち、荷重に対する伝達特性を均一になるように筆圧検出部を調整しておき、その調整した筆圧検出部を筆圧検出部106として搭載したとしても、コイルばね113における荷重に対する伝達特性にばらつきが存在すると、当該コイルばね113のばらつきのため、電子ペン100の筆圧検出における荷重に対する伝達特性がばらついてしまうという問題が生じる。
【0027】
この発明は、以上のような問題点に鑑み、筆圧検出機能を備える場合においても、弾性部材を用いずに導電性の芯体に信号を供給することができるようにした静電結合方式の電子ペンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0028】
上記の課題を解決するために、
筒状の筐体と、
前記筐体内の所定位置に、軸心方向が前記筐体の軸心方向の方向となる状態で固定配置された筒状導体と、
前記筐体の軸心方向の一方の開口から先端が突出すると共に、前記先端とは反対側が前記筒状導体の中空部内に移動可能に挿通される導電性を有する芯体と、
前記筐体内の所定位置に、軸心方向において、前記筒状導体に対して、前記芯体の前記先端側とは反対側に配設される信号発信回路と、
前記信号発信回路と前記筒状導体とを電気的に接続するための接続用部材と、
を備え、
前記信号発信回路からの信号は、前記信号発信回路と前記接続用部材により電気的に接続されている前記筒状導体と前記芯体とが非接触状態であるときには、前記筒状導体と前記芯体との間の静電結合を通じて前記芯体に伝達され、前記芯体の先端部から外部に送信される
ことを特徴とする静電結合方式の電子ペンを提供する。
【0029】
上述の構成の電子ペンにおいては、筐体内の所定位置に筒状導体が固定配置されており、その筒状導体の中空部内に、導電性を有する芯体の先端とは反対側が移動可能に挿通されるように構成されている。そして、信号発信回路と筒状導体とが、接続用部材により電気的に接続されている。
【0030】
芯体と筒状導体とは互いに導体であるので、両者が接触していれば、信号発信回路からの信号は、接続用部材及び筒状導体を通じて芯体に供給されて、その先端から位置検出センサに対して送出される。
【0031】
そして、芯体と筒状導体とが非接触状態であるときには、信号発信回路からの信号は、接続用部材を通じ、筒状導体と前記芯体との間の静電結合を通じて芯体に伝達され、芯体の先端部から外部に送信される。
【0032】
以上のように、上述の構成の電子ペンは、筐体内の所定位置に固定配置された筒状導体を通じて、信号発信回路回路の信号を芯体に供給する構成である。このため、冒頭で説明した電子ペンの場合のように、信号発信回路からの信号を芯体に供給するために、芯体ホルダーや導電性材料からなるコイルばねを設ける必要はなく、芯体を挿通させる筒状導体を筐体内の固定位置に配置すればよい。したがって、電子ペンの細型化が可能になるという効果がある。また、導電性のコイルばねが不要になるので、筆圧検出部を電子ペンに設けた場合にも、調整後の筆圧検出部の荷重に対する伝達特性にばらつきが生じることを防止することできる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】この発明による静電結合方式の電子ペンの第1の実施形態の構成例を説明するための図である。
図2】この発明による静電結合方式の電子ペンの第1の実施形態の要部の構成例を説明するための図である。
図3】この発明による静電結合方式の電子ペンの第1の実施形態の信号処理回路の一例を説明するためのブロック図である。
図4図3の信号処理回路の例を説明するためのタイミングチャートを示す図である。
図5】この発明による静電結合方式の電子ペンの第1の実施形態における周辺電極の機能の一例を説明するための図である。
図6】この発明による静電結合方式の電子ペンの第2の実施形態の構成例を説明するための図である。
図7】この発明による静電結合方式の電子ペンの第2の実施形態の筐体の構成例を説明するための図である。
図8】この発明による静電結合方式の電子ペンの他の実施形態の要部を説明するための図である。
図9】従来の静電結合方式の電子ペンの一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、この発明による電子ペンの幾つかの実施形態を、図を参照しながら説明する。
【0035】
[第1の実施形態]
図1は、この発明による静電結合方式の電子ペンの実施形態の構成例を説明するための図であり、図1(A)は、この実施形態の静電結合方式の電子ペン1の外観を示す図、図1(B)は、その要部の構成を説明するための縦断面図である。
【0036】
この実施形態の電子ペン1の筐体10は、図1(A)及び(B)に示すように、筒状、この例では円筒状の筐体本体部11のペン先側の開口に、円錐形状の筒状体からなるフロントキャップ12が嵌合されて取り付けられて構成されている。筐体10は、円筒形状に限らず、断面が多角形の筒状形状であってもよい。
【0037】
筐体本体部11は、使用者が電子ペン1を持って操作するときに、人体を通じてアース(地球アース)されるように、導電性材料、例えば金属で構成されている。また、フロントキャップ12は、絶縁性材料、例えば樹脂で構成されている。図1(B)に示すように、フロントキャップ12の先細となっているペン先側には、芯体20が軸心方向に自由に移動可能となるように挿通可能とされる開口12aが設けられている。
【0038】
芯体20は、導電性を有する材料、例えば金属で構成されており、この例では、軸心方向に直交する方向の断面が円形を有し、図1(B)に示すように、先端部21と芯体本体部22とを備えている。芯体20は、フロントキャップ12の開口12aから芯体本体部22の端部22b側から電子ペン1の筐体10内に挿入されて、その先端部21の一部又は全部が、フロントキャップ12の開口12aから、外部に突出する状態とされている。この場合に、導電性を有する芯体20と、導電性材料からなる筐体本体部11とは、両者の間にフロントキャップ12が介在することにより電気的に分離(絶縁)されている。
【0039】
筐体本体部11の中空部内には、図1(A)及び(B)に示すように、基板載置台部401にプリント基板41が載置された基板ホルダー40と、電源としての電池42が収納されている。電池42としては、一次電池であっても、二次電池(充電式電池)であってもよい。筐体本体部11のペン先側とは反対側(以下、筐体本体部11のペン先側とは反対側を後端側という)は、図1(A)に示すように、バックキャップ30により閉塞されている。
【0040】
基板ホルダー40は、図9を用いて説明した電子ペン100の基板ホルダー105と同様の構成を有しており、絶縁性の樹脂により構成され、電子ペン1の軸心方向となる長手方向において、基板載置台部401と、この基板載置台部401よりもペン先側に筒状部402を備え、筐体10内において軸心方向に移動不可の状態となるように配設されている。そして、筒状部402内には、前述した電子ペン100の基板ホルダー105の筒状部105bと同様に、筆圧検出部50を構成する感圧用部品を保持する感圧用部品保持部403を有している。
【0041】
感圧用部品保持部403内に保持されるこの例の感圧用部品は、図9を用いて説明したのと同様の構成を有し、誘電体51と、スペーサ部材52と、導電性弾性部材53と、係止用部材54とで構成される複数個の部品からなる。誘電体51は、図9の誘電体107に、スペーサ部材52は、図9のスペーサ部材108に、導電性弾性部材53は、図9の導電性弾性部材109に、係止用部材54は、図9の係止用部材110に、それぞれ対応し、筆圧検出部50の詳細な構成及び動作は、図9の筆圧検出部106について説明したのと同様であるので、ここでは、その説明を省略する。
【0042】
この例の場合にも、筆圧検出部50と基板載置台部401とが基板ホルダー40において軸心方向において配設されることでユニット化(モジュール化)部品とされており、このユニット化部品を構成する筆圧検出部50に対して、芯体20が、筆圧を伝達するように嵌合されて取り付けられる。そして、導電性の芯体20に対して、基板ホルダー40に設けられているプリント基板41に配設されている信号発信回路から、以下に説明するように信号が供給される構成とされている。
【0043】
この実施形態の電子ペン1においては、芯体20とプリント基板41上の信号発信回路の出力端との電気的接続は、コイルばねを利用せずに行うように構成する。
【0044】
図2は、基板ホルダー40が、筆圧検出部50の筐体部分を備えるように構成されてユニット化されている部分の拡大説明図である。図1(B)及び図2を参照して、この実施形態における要部の構成を以下に説明する。
【0045】
すなわち、この実施形態の電子ペン1においては、筒状の感圧用部品保持部403の軸心方向のペン先側には、この例では円筒形の筒状導体60が、その軸心方向が、筐体10の軸心方向と一致する状態で固定保持されている。筒状導体60は、この例では導電性金属例えばSUSで構成されている。この筒状導体60は、図2に示すように、芯体20の芯体本体部22の外径D2よりも大きい内径D1を備える。そして、この実施形態では、筒状導体60の軸心方向の長さは、当該筒状導体60がフロントキャップ12の開口12aから外部には突出しないが、当該開口12a近傍まで延長される長さとされる。図1(B)に示すように、この例では、筒状導体60の軸心方向の長さは、フロントキャップ12の開口12aよりも内側に形成されている筒状部12bの内壁面と、筒状導体60のペン先側の外周側面とが対向するような長さとされており、芯体20の芯体本体部22の軸心方向の長さよりも短く選定されている。
【0046】
そして、図1(B)及び図2に示すように、この筒状導体60の外周側面部分において、外部に露出している部分に、導電性材料からなる接続用線材61の一端61aが、例えば半田付け等されることにより取り付けられる。接続用線材61は、感圧用部品保持部403の外側面に沿って引き回されて基板載置台部401側に導出されるように配設される。そして、基板載置台部401側に導出された接続用線材61の他端61bがプリント基板41の信号発信回路(図1では図示を省略)の信号出力端に電気的に接続される。
【0047】
芯体20は、図1(B)及び図2に示すように、その芯体本体部22がこの筒状導体60の中空部内を挿通されて、芯体本体部22の端部22bが、筆圧検出部50の導電性弾性部材53に設けられている嵌合凹部53a内に、抜き指し可能の状態で嵌合される。すなわち、この実施形態の電子ペン1では、芯体20は、芯体ホルダーを介することなく、直接に、芯体本体部22の端部22bが筆圧検出部50の導電性弾性部材53に設けられている嵌合凹部53a内に嵌合される構成とされる。この場合に、筒状導体60の内径よりも芯体20の芯体本体部22の外径が小さいので、芯体20の芯体本体部22と筒状導体60の中空部の内壁面は非接触となる。
【0048】
しかし、この場合に、芯体本体部22の外周面と筒状導体60の中空部の内壁面とは、両者の間の隙間の空気層を介して静電結合するので、芯体本体部22の外周面と筒状導体60の中空部の内壁面との間では当該静電結合を通じて信号(交流信号)の授受が可能となる。
【0049】
なお、例えば電子ペン1が位置検出センサの入力面に対して傾いている場合には、芯体20に対しては、軸心方向に直交する方向の力も加わるので、芯体20の芯体本体部22が筒状導体60に接触する場合もある。そのように、芯体20の芯体本体部22と筒状導体60の中空部の内壁面とが接触している場合には、当該接触部を通じて信号発信回路からの信号の伝達がなされる。
【0050】
この例の電子ペン1においては、芯体20の先端部21側に圧力(筆圧)が印加されると、芯体20は、電子ペン1の筐体本体部11内の向かう方向に軸心方向に変位するようになる。このため、芯体20の芯体本体部22の端部22bが嵌合されている筆圧検出部50の感圧用部品の導電性弾性部材53を誘電体51側に変位させる。すると、導電性弾性部材53の、リング状のスペーサ部材52の中空部に対応する部分が誘電体51と接触するように変位する。そして、この導電性弾性部材53と、誘電体51との両者の接触面積が、印加された圧力に応じて変化して、筆圧検出部50で構成される容量可変コンデンサの静電容量が印加された圧力に応じて変化する。したがって、この筆圧検出部50で構成される容量可変コンデンサの静電容量から、筆圧を検出することができる。
【0051】
そして、この実施形態の電子ペン1においては、図1(B)に示すように、筒状導体60内に挿通されている芯体20の芯体本体部22の部分の周囲を囲むように、導電性材料からなる周辺電極62がフロントキャップ12内に配設されている。この例では、周辺電極62は、導電性の金属線がコイル状に形成されて構成されている。そして、この例では、絶縁材料の樹脂で構成されている筒状の周辺電極保持部63が、基板ホルダー40の感圧用部品保持部403のペン先側の外周部に嵌合して設けられている。この周辺電極保持部63は、フロントキャップ12の内壁面との間に空間を形成するように、フロントキャップ12の内壁面と相似形の筒状形状とされている。図1(B)に示すように、周辺電極62は、この筒状の周辺電極保持部63の外周面とフロントキャップ12の内壁面との間の空間に配設されている。この周辺電極62を構成するコイル部材は、図1(B)では図示を省略したが、接続用部材を介してプリント基板41の回路部品と電気的に接続されている。
【0052】
また、この例では、開口12aより内側のフロントキャップ12の中空部内には、軸心方向に沿って形成されている筒状部12bが形成されている。周辺電極62は、周辺電極保持部63と、この筒状部12bとにより、導電性の芯体20及び筒状導体60とは電気的に分離(絶縁)された状態となるようにされている。
【0053】
[電子ペン1の信号処理回路の構成例]
図3は、この実施形態の電子ペン1の信号処理回路の構成例を示すブロック図である。この信号処理回路の電子回路部品は、プリント基板41上に配設されているのは言うまでもない。この実施形態の電子ペン1の信号処理回路は、図3に示すように、コントローラ501と、信号発信回路502と、開閉スイッチ回路503及び切替スイッチ回路504とを備える。そして、コントローラ501の端子Pcは、筆圧検出部50を構成する可変容量コンデンサ50Cと抵抗Rの並列回路を介して接地されている。
【0054】
コントローラ501は、例えばマイクロプロセッサで構成されており、電子ペン1の処理動作を制御する制御回路を構成するもので、図3では図示は省略するが、駆動電源の例としての電池42から電源電圧が供給されている。コントローラ501は、信号供給制御回路の機能を備えるもので、信号発信回路502を制御したり、開閉スイッチ回路503,切替スイッチ回路504のそれぞれをスイッチング制御したりする。
【0055】
また、コントローラ501は、可変容量コンデンサ50Cの芯体20の先端部21に印加される筆圧に応じた容量変化を監視することで、電子ペン1の芯体20の先端部21に印加される筆圧を検出する。この実施形態では、コントローラ501は、芯体20の先端部21に印加される筆圧に応じた静電容量値となっている可変容量コンデンサ50Cの放電時間から筆圧を検出する。
【0056】
すなわち、コントローラ501は、芯体20の先端部21に印加される筆圧の検出に際しては、先ず、可変容量コンデンサ50Cの一端が接続されている端子Pcをハイレベルとすることで可変容量コンデンサ50Cを充電する。次いで、コントローラ501は、端子Pcを、当該端子Pcの電圧を監視する入力状態に切り替える。このとき、可変容量コンデンサ50Cに蓄えられた電荷はこれと並列に接続された抵抗Rによって定まる放電時定数で放電され、可変容量コンデンサ50Cの両端電圧は徐々に低下する。コントローラ501は、端子Pcを入力状態に切り替えてから、可変容量コンデンサ50Cの両端電圧が、予め定めた閾値電圧以下に低下するまでの時間Tpを求める。この時間Tpは、求める筆圧に相当するものであり、コントローラ501は、この時間Tpから、複数ビットの筆圧値を求める。
【0057】
信号発信回路502は、この実施形態では、所定周波数f1、例えば周波数f1=1.8MHzの交流信号を発生する発振回路を備える。コントローラ501は、この信号発信回路502を構成する発振回路に制御信号CTを供給することで、当該発振回路をオン、オフ制御する。したがって、信号発信回路502を構成する発振回路は、コントローラ501からの制御信号CTに応じて、発生する交流信号を断続させ、これにより、信号発信回路502は、ASK(Amplitude Shift Keying)変調信号からなる信号Scを発生する。つまり、コントローラ501によって信号発信回路502を構成する発振回路を制御することにより、信号発信回路502はASK変調信号を生成する。ASK変調に代えて信号発信回路502で生成される信号をOOK(On Off Keying)変調信号、FSK(Frequency Shift Keying)変調信号、あるいはその他の変調信号とするようにしてもよい。
【0058】
信号発信回路502からの信号Scは、図示を省略したアンプで増幅された後、この実施形態では、開閉スイッチ回路503を通じて筒状導体60に供給される。そして、筒状導体60に供給された信号Scは、筒状導体60と芯体20の芯体本体部22との間の静電容量を通じて、あるいは、筒状導体60と芯体20の芯体本体部22との接触部を通じて、芯体20に供給され、先端部21から送出される。
【0059】
信号発信回路502からの信号Scは、また、切替スイッチ回路504の一方の固定端子sに供給される。この切替スイッチ回路504の他方の端子gは接地されている。そして、この切替スイッチ回路504の可動端子は、周辺電極62に接続されている。
【0060】
そして、コントローラ501からの切替制御信号SWにより開閉スイッチ回路503がオン、オフ制御されると共に、切替スイッチ回路504が端子sと端子gとに切り替えられる。
【0061】
この実施形態の電子ペン1では、コントローラ501による制御により、図4(A)に示すように、位置検出期間Taと傾き検出期間Tbとを時分割で交互に実行するように信号処理回路が構成されている。開閉スイッチ回路503及び切替スイッチ回路504は、図4(B)に示すように、コントローラ501からの切替制御信号SWにより、位置検出期間Taと傾き検出期間Tbとで切り替え制御がなされる。
【0062】
すなわち、図3の例の信号処理回路においては、位置検出期間Taでは、コントローラ501からの切替制御信号SWにより開閉スイッチ回路503がオンとされて、信号発信回路502の出力端が筒状導体60に接続されると共に、切替スイッチ回路504は、端子g側に切り替えられて、周辺電極62が接地される。
【0063】
そして、この位置検出期間Taでは、信号発信回路502は、コントローラ501からの制御信号CTにより、信号Scとして位置検出用信号と筆圧の情報の信号とを発生し、この位置検出用信号と筆圧の情報の信号とが、筒状導体60を通じて芯体20に供給され、先端部21から送出される。位置検出用信号は、周波数f1の連続波信号(バースト信号)とされる。また、筆圧の情報の信号は、コントローラ501で上述のようにして検出して得た複数ビットの筆圧値の情報により周波数f1の信号が変調されたASK信号とされる。そして、この例では、位置検出期間Taでは、先ず、位置検出用信号が、次いで、筆圧の情報の信号が、芯体20の先端部21から送出される。
【0064】
この位置検出期間Taでは、周辺電極62は接地されているので、芯体20の内、周辺電極62により覆われている空間に存在する芯体本体部22の部分は、静電シールドされて、位置検出センサと静電結合しないようにされている。
【0065】
次に、傾き検出期間Tbでは、コントローラ501からの切替制御信号SWにより開閉スイッチ回路503がオフとされて、信号発信回路502の出力端の、芯体20との電気的な接続が切断されると共に、切替スイッチ回路504は、端子s側に切り替えられて、信号発信回路502の出力端が周辺電極62に接続される。
【0066】
そして、この傾き検出期間Tbでは、信号発信回路502は、コントローラ501からの制御信号CTにより、傾き検出用信号として、位置検出用信号と同様の周波数f1の連続波信号(バースト信号)を発生する。なお、この傾き検出期間Tbにおいても、傾き検出用信号に引き続いて筆圧の情報(ASK信号)を発生するようにしてもよい。
【0067】
したがって、この傾き検出期間Tbでは、傾き検出用信号が周辺電極62を通じて位置検出センサに送出される。位置検出装置では、位置検出センサを通じて得た検出信号から、電子ペン1の傾き角を検出する。
【0068】
この位置検出装置での電子ペン1の傾き角の検出の方法について、図5を参照して説明する。
【0069】
図5(A)の模式図に示すように、位置検出センサ201の入力面に対して、電子ペン1の芯体20が垂直の状態にあるときには、位置検出期間Taでは、芯体20と位置検出センサ201との間で静電結合し、その静電結合する領域OBaは、図4(B)に示すように、真円の領域となる。一方、傾き検出期間Tbでは、周辺電極62と位置検出センサ201との間で静電結合し、その静電結合する領域OBbは、図4(C)に示すように、リング状の領域となる。
【0070】
また、図4(D)の模式図に示すように、位置検出センサ201の入力面に対して、電子ペン1の芯体20が傾いている状態にあるときには、位置検出期間Taにおいて芯体20と位置検出センサ201との間で静電結合する領域OBaは、図4(E)に示すように、ほぼ真円の領域のままとなる。一方、傾き検出期間Tbにおいて周辺電極62と位置検出センサ201との間で静電結合する領域OBbは、図4(F)に示すように、傾き角に応じると共に傾きの方向に長く伸びた楕円形状の領域となる。
【0071】
したがって、位置検出装置では、図4(F)に示した領域OBbの楕円形状の長円方向の長さから電子ペン1の傾き角の大きさを検出することができ、また、図4(E)に示した電子ペン1の指示位置を起点とした領域OBbの楕円形状の長円方向を検出することにより、電子ペン1の傾きの方向を検出することができる。
【0072】
なお、図3の例では、傾き角を検出する用途に用いられる周辺電極62には、芯体20に供給する周波数f1の信号を用いるようにしたが、芯体20に供給する信号の周波数と、周辺電極62に供給する信号の周波数とを異ならせてもよい。その場合には、位置検出装置では、芯体20からの信号と、周辺電極62からの信号とを区別することができるので、上述のように、位置検出期間と傾き検出期間とを時分割で繰り返すするのではなく、芯体20からの信号と、周辺電極62からの信号とを同時に位置検出センサに送出するようにしてもよい。
【0073】
以上説明した第1の実施形態の電子ペン1においては、電子ペン1の筐体10内の所定位置に筒状導体60を固定して配置すると共に、この筒状導体60を接続用線材61を通じて信号発信回路502に電気的に接続する。そして、この筒状導体60内に芯体20の芯体本体部22を、抜き差し可能の状態で挿通させるように構成する。この場合に、芯体20の芯体本体部22と、筒状導体60とは非接触の状態となっても、信号発信回路502からの信号(周波数f1の交流信号)は、筒状導体60と芯体20の芯体本体部22との間の静電結合を介して芯体20に伝達される。
【0074】
この構成により、上述の第1の実施形態の電子ペン1によれば、信号発信回路502からの信号を芯体20に供給するために、冒頭で説明したような芯体嵌合部を備える導体からなる芯体ホルダーやコイルばねなどの接続用の弾性部材を用いる代わりに、筒状導体60及び接続用線材61を用いるだけで良い。このため、上述の実施形態の電子ペン1によれば、芯体ホルダーやコイルばねなどの接続用の弾性部材を設けるための大きなスペースを不要とすることができて、電子ペン1のペン先側を細型に構成することでき、電子ペン1の細型化が容易となる。特に、この実施形態のように、芯体20の芯体本体部22の周囲を覆うように配される周辺電極62を設けても、電子ペン1の筐体10を細型に構成することできるという効果を奏する。
【0075】
また、信号発信回路と電気的に接続される部分は、従来は、芯体の軸心方向の変位と一体に変位する芯体ホルダーであったので、接続用部材としては軸心方向の変位を吸収することができるコイルばねなどの弾性部材を用いる必要があった。しかし、上述した第1のの実施形態の電子ペン1では、信号発信回路との電気的な接続には、芯体20が筆圧に応じて軸心方向に変位しても、固定状態が維持される筒状導体60と接続用線材61を用いるものであるので、接続用部材に弾性部材を用いる必要がない。このため、筆圧検出部50での筆圧検出において、信号発信回路との電気的な接続用のコイルばねなどの弾性部材による影響を排除することができ、筆圧検出部50の特性のバラツキを少なくすることができる。特に、電子ペン1の芯体20の先端部21が位置検出センサの入力面に接触して筆記開始となるときの筆圧(オン荷重という)は、従来のようなコイルばねが存在すると、バラツキが生じてしまうが、そのばらつきを大きく低減することができる。
【0076】
[第2の実施形態]
近年のアクティブ静電結合方式の電子ペンにおいては、電子ペンによる指示位置を検出する位置検出センサ側からの信号を受信して、その受信した信号の要求に基づいたフォーマットの信号を発信する双方向通信型の電子ペンも登場してきた。上述した周辺電極は、この位置検出センサ側からの信号を受信するためにも用いられるようになってきている。
【0077】
静電結合方式の電子ペンの場合、位置検出センサとの間での信号の授受は、静電結合により送受信可能な電界によるものであり、その到達距離は非常に短い。そのため、電子ペンの周辺電極は、位置検出センサとの間での信号の授受を大きい強度で行えるように、ペン先に近い位置に配置される。すなわち、位置検出センサとの間で信号の送受をするために、周辺電極の位置と大きさが重要である。
【0078】
ところで、上述した第1の実施形態の電子ペン1においては、周辺電極62は、導電性材料で構成される筐体本体部11との絶縁を確保するために、フロントキャップ12内に設けられている。フロントキャップ12内であるために、スペースの関係上、周辺電極を設ける位置や大きさが制限される。
【0079】
以下に説明する第2の実施形態の電子ペン1Aは、以上の問題を改善できるようにした例である。以下、図6及び図7を参照して、この第2の実施形態の電子ペン1Aの構成例を説明する。
【0080】
図6は、この発明による静電結合方式の第2の実施形態の電子ペン1Aの構成例を説明するための図であり、図6(A)は、この第2の実施形態の静電結合方式の電子ペン1Aの外観を示す図、図6(B)は、そのペン先側の縦断面図である。また、図7は、この実施形態の静電容量方式の電子ペン1Aの筐体10Aの構成を説明するための分解斜視図である。図6及び図7において、上述した第1の実施形態の電子ペン1と同一の部分については、同一に参照符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0081】
この実施形態の静電容量方式の電子ペン1Aの筐体10Aは、上述した第1の実施形態と同様に、筒状、この例では円筒形状の筐体本体部11Aのペン先側にフロントキャップ12Aが取り付けられて構成されている。ただし、筐体本体部11A及びフロントキャップ12Aの構成は、第1の実施形態の筐体本体部11及びフロントキャップ12とは異なる。
【0082】
すなわち、この第2の実施形態の電子ペン1Aにおいては、筐体本体部11Aは、ペン先側の第1の筐体部11A1と、後端側の第2の筐体部11A2とが、筒状結合部材13を介して結合されて構成されている。そして、この筐体本体部11Aの第1の筐体部11A1側の開口11A1c(図7参照)から、フロントキャップ12Aが嵌合される。そして、フロントキャップ12Aの開口12Ac(図6(B)参照)から芯体20の先端部21が外部に突出する状態で、芯体20が、電子ペン1Aの筐体10A内で保持されるように構成されている。
【0083】
ペン先側の第1の筐体部11A1及び後端側の第2の筐体部11A2は、それぞれ導電性材料、例えば導電性金属で構成され、図6(A)及び(B)並びに図7に示すような筒状体からなる。
【0084】
第1の筐体部11A1は、図6及び図7に示すように、外径が一定の円筒形状部11A1aと、ペン先側に向かって徐々に先細となるようにテーパー状に形成されているテーパー部11A1bとを有する形状とされている。第2の筐体部11A2は、第1の筐体部11A1の円筒形状部11A1aの外径と等しい外径の円筒形状を有している。
【0085】
筒状結合部材13は、絶縁性材料、この例では樹脂で構成されており、図6(B)及び図7に示すような筒状体であって、その外周面の軸心方向の中ほどの位置には、当該外周側面から前記軸心方向に直交する方向に突出するリング状鍔部13Fが形成されている。このリング状鍔部13Fは、軸心方向に所定の幅W(図6及び図7参照)を有し、その端面(外周側面)は、図6(A)及び(B)に示すように、第1の筐体部11A1及び第2の筐体部11A2と段差を生じることなく面一となって筐体10Aの一部を構成するようにされている。つまり、リング状鍔部13Fの外周部の径は、第1の筐体部11A1及び第2の筐体部11A2の外径と等しく選定されている。
【0086】
そして、この筒状結合部材13の、リング状鍔部13Fよりも軸心方向の一方側であるペン先側は、第1の筐体部11A1の円筒形状部11A1aと嵌合される第1の嵌合筒状部13a(図6(B)及び図7参照)とされる。この筒状結合部材13の第1の嵌合筒状部13aの外径は、第1の筐体部11A1の円筒形状部11A1aの開口側の内径と等しいか僅かに小さくされており、第1の筐体部11A1は、リング状鍔部13Fのところまで圧入嵌合されて結合されるように構成されている。
【0087】
また、筒状結合部材13の、リング状鍔部13Fよりも軸心方向に後端側は、第2の筐体部11A2と嵌合される第2の嵌合筒状部13bとされる。この筒状結合部材13の第2の嵌合筒状部13bの外径は、第2の筐体部11A2の内径と等しいか若しくは僅かに小さくされており、第2の筐体部11A2は、リング状鍔部13Fのところまで圧入嵌合されて結合されるように構成されている。
【0088】
第1の筐体部11A1と、第2の筐体部11A2とが、筒状結合部材13に対して、図7で矢印で示すように挿入されて嵌合され、結合された状態では、図6(A)及び(B)に示すように、1本の筒状体の筐体10Aが形成される。このとき、前述したように、第1の筐体部11A1の円筒形状部11A1aの外周側面と、第2の筐体部11A2の外周側面と、リング状鍔部13Fの端面(外周面)とは面一の状態となっている。そして、導電性材料からなる第1の筐体部11A1と第2の筐体部11A2とは、筒状結合部材13のリング状鍔部13Fの存在により接触することなく互いに電気的に分離(絶縁)されている状態となっている。
【0089】
そして、この第2の実施形態の電子ペン1Aにおいては、第1の筐体部11A1は、後述するように、筒状導体60A内を挿通される芯体20の芯体本体部22の周囲を覆うように配設されていて、周辺電極を構成する。このため、この周辺電極を構成する第1の筐体部11A1と、プリント基板41の回路部とが電気的に接続される必要がある。このための構成について説明する。
【0090】
図6(B)及び図7に示すように、筒状結合部材13の外周側面には、凹溝13cが、当該筒状結合部材13の軸心方向に沿った方向に、第1の嵌合筒状部13aから、リング状鍔部13Fの下部を通って、第2の嵌合筒状部13bに亘って形成されている。この場合に、凹溝13cは、第1の嵌合筒状部13aの外周側面では、リング状鍔部13Fの下部を通って、その中間部まで形成されており、また、第2の嵌合筒状部13bの外周側面では、その軸心方向の全体に亘って形成されている。
【0091】
そして、図7に示すように、凹溝13c内には、導電体材料、この例では、導電体金属からなる接続端子導体14が配設される。この場合に、図6(B)及び図7に示すように、筒状結合部材13の第1の嵌合筒状部13a側の凹溝13cに配設される接続端子導体14の端部14aは、少なくとも一部が、当該第1の嵌合筒状部13aの外周面よりも若干膨出するように配設される。ただし、当該端部14aを上から押下したときには、端部14aが弾性的に下方に押下できるように構成されている。
【0092】
したがって、筒状結合部材13の第1の嵌合筒状部13aに第1の筐体部11A1が嵌合されたときに、接続端子導体14の端部14aと、第1の筐体部11A1の内壁とが確実に接触して、第1の筐体部11A1と接続端子導体14とが電気的に接続される状態となるように構成されている。
【0093】
なお、凹溝13cの内、筒状結合部材13の第2の嵌合筒状部13b側に設けられている部分は、深さが深くされていて、この凹溝13c内に配設される接続端子導体14の上面が、第2の嵌合筒状部13bの外周側面位置よりも低い位置となるようにされている。
【0094】
これにより、第2の筐体部11A2が、筒状結合部材13の第2の嵌合筒状部13bに嵌合されたときには、凹溝13c内の接続端子導体14の上面と第2の筐体部11A2の内壁面と両者の電気的分離(絶縁)が実現される。
【0095】
そして、図6(B)及び図7に示すように、接続端子導体14のプリント基板41側に伸びている端部14bは、折り曲げられて、プリント基板41に電気的に接続される。
【0096】
なお、凹溝13cの深さを調整するのではなく、第2の嵌合筒状部13bでは、凹溝13cの接続端子導体14の上面を絶縁層で覆うようにして、より確実に接続端子導体14と第2の筐体部11A2との絶縁を実現するようにしてもよい。
【0097】
この第2の実施形態の電子ペン1Aにおいては、図6(B)に示すように、第1の筐体部11A1の内径は、円筒形状部11A1aが筒状結合部材13の第1の嵌合筒状部13aと嵌合する開口側を除いて、テーパー部11A1bにまで亘る内径は、筒状結合部材13の内径と等しく選定されている。
【0098】
そして、第1の筐体部11A1のテーパー部11A1bのペン先側の開口11A1c(図7参照)側から、図6(A)及び(B)に示すように、絶縁性材料、例えば樹脂からなるフロントキャップ12Aが差し込まれて取り付けられる。
【0099】
この実施形態の電子ペン1Aのフロントキャップ12Aは、図6(B)に示すように、第1の筐体部11A1のテーパー部11A1bのペン先側の開口11A1c側から突出する突出部12Aaと、筒状の第1の筐体部11A1の内径及び筒状結合部材13の内径に等しい若しくは若干小さい外径を有する筒状部12Abとを備える。
【0100】
フロントキャップ12Aの突出部12Aaは、第1の筐体部11A1のテーパー部11A1bに連続するように徐々に先細となるように外形が形成されていると共に、この例では、芯体20の先端部21の最大外形よりも若干大きい内径を有する開口12Acを備える。また、フロントキャップ12Aの筒状部12Abは、その軸心方向の長さが、図6(B)に示すように、第1の筐体部11A1から筒状結合部材13にまで亘る長さとされている。
【0101】
そして、図6(B)に示すように、この実施形態では、このフロントキャップ12Aの筒状部12Ab内に、この例では円筒形の筒状導体60Aが、例えば圧入嵌合されて取り付けられて固定されている。したがって、筒状導体60Aと導電性金属で構成されている第1の筐体部11A1とは、フロントキャップ12Aにより絶縁されている。
【0102】
筒状導体60Aは、芯体20の芯体本体部22の外径よりも大きい内径を有し、芯体20の芯体本体部22が、この筒状導体60A内を挿通される、筒状導体60Aは、この例においては、前述の例の筒状導体60と同様に、導電性金属例えばSUSで構成されている。なお、筒状導体60Aのフロントキャップ12Aの筒状部12Abに対する固定方法は、圧入嵌合に限られる訳ではなく、接着などでもよいことは言うまでもない。
【0103】
この筒状導体60Aの軸心方向の長さは、芯体20の芯体本体部22の軸心方向の長さよりも短い長さに選定されている。そして、この例では、筒状導体60Aの芯体20の先端部21側とは反対側の部分には、フロントキャップ12Aに覆われることなく、外部に露出する部分が形成されている。この外部に露出されている筒状導体60Aの部分には、信号発信回路の出力端との電気的接続を行うための接続用部材としての接続用線材61Aの一端61Aaが、例えば半田付けされるなどして接続される。
【0104】
この接続用線材61Aは、後述する筆圧検出部50Aを収納する基板ホルダー40Aの筒状部402Aの外側面に形成される凹溝に沿って這わせられて、その他端61Abがプリント基板41側に導出されるようにされる。そして、接続用線材61Aの他端61Abは、この例ではプリント基板41の裏面側において、信号発信回路の出力端が接続されている導体パターンに、例えば半田付け等されて接続される。
【0105】
そして、この第2の実施形態の電子ペン1Aにおいては、筒状結合部材13の第2の嵌合筒状部13b内に、筆圧検出部50Aが設けられる。そして、電子ペン1Aの筐体10Aの軸心方向において、筆圧検出部50Aの後端側には、プリント基板41を基板載置台部401Aに載置している基板ホルダー40Aが配設される。前述の第1の実施形態と同様に、基板ホルダー40Aは、筐体10A内において軸心方向に移動不可の状態となるように配設されている。
【0106】
筆圧検出部50Aは、第1の実施形態における筆圧検出部50と同一の構成を備え、誘電体51と、スペーサ部材52と、導電性弾性部材53と、係止用部材54との複数個の部品からなる感圧用部品で構成される。この第2の実施形態においては、第1の実施形態と同様に、基板ホルダー40Aは、軸心方向において基板載置台部401Aよりも芯体20側には筒状部402Aを備える。第2の実施形態では、この筒状部402Aは、図6(B)に示すように、筒状結合部材13の中空部内に位置するように構成される。
【0107】
そして、この第2の実施形態においては、筒状部402Aは、第1の実施形態の感圧用部品保持部403と同様に筆圧検出部50Aの感圧用部品を収納することができるように構成される。そして、この筒状部402A内に、ペン先側から順に、導電性弾性部材53、スペーサ部材52、誘電体51、係止用部材54というように、軸心方向に一列に並べられて、筆圧検出部50Aを構成する感圧用部品が収納される。
【0108】
以上のように、この第2の実施形態の電子ペン1Aでは、第1の実施形態とは異なり、感圧用部品保持部403は省略されて、基板ホルダー40Aの筒状部402A内に、直接的に、感圧用部品が収納されて、電子ペン1Aのより細型化を図る構成とされている。すなわち、この第2の実施形態では、筒状結合部材13が存在しているので、この筒状結合部材13を、筆圧検出部50Aの外筐の役割も果たすように構成する。そして、この第2の実施形態では、基板ホルダー40Aの筒状部402Aを感圧用部品保持部とするように構成する。
【0109】
以上のように構成されている電子ペン1Aにおいて、図6(B)に示すように、芯体20の芯体本体部22が、フロントキャップ12Aの開口12aから挿入されて、フロントキャップ12Aに固定されている筒状導体60Aを貫通するようにされて、芯体20の芯体本体部22の端部22bが、筆圧検出部50Aの導電性弾性部材53の嵌合凹部53aに嵌合される。この例においても、芯体20は、導電性弾性部材53に対して抜き差し可能の状態で嵌合される。
【0110】
そして、第2の実施形態の電子ペン1Aの第2の筐体部11A2の中空部内には、図6(B)に示すように、基板載置台部401にプリント基板41が載置された基板ホルダー40と、電源としての電池42が収納されている。第2の筐体部11A2の後端側は、図6(A)に示すように、バックキャップ30により閉塞されている。なお、この実施形態では、導電性材料からなる第2の筐体部11A2は、電気的に、プリント基板41のアースラインの銅箔パターンと接続されている。
【0111】
この第2の実施形態の電子ペン1Aにおいても、プリント基板41上には、芯体20から送出する信号を発生する信号発生回路および当該信号発生回路からの信号の芯体20への送信を制御する制御回路を構成するIC(Integrate Circuit)及びその周辺回路部品からなる回路部が設けられている。周辺回路部には、図示を省略するが、プッシュスイッチ(サイドスイッチ)や、電池42の充電回路が含まれる。そして、信号処理回路は、この第2の実施形態の電子ペン1Aにおいても、図3を用いて説明したものと同様の構成とされる。
【0112】
第2の実施形態の電子ペン1Aは、以上のように構成されているので、第1の実施形態と同様に、信号発信回路502からの信号を芯体20に供給するためには、筒状導体60A及び接続用線材61Aを設けるだけで良いため、接続用部材に弾性部材を用いる必要がなく、電子ペン1Aの細型化が容易となると共に、筆圧検出部50Aの特性のバラツキを少なくすることができるという効果がある。
【0113】
そして、第2の実施形態の電子ペン1Aにおいては、筐体10Aは、第1の筐体部11A1と第2の筐体部11A2とに分離され、筒状結合部材13の軸心方向の一方側及び他方側に対して、これら第1の筐体部11A1及び第2の筐体部11A2がそれぞれ嵌合されることで形成される。そして、筒状結合部材13は、この実施形態では、筆圧検出部50Aを構成する感圧用部品を内部に収納する基板ホルダー40Aの筒状部402Aを内部に収納する構成とされている。
【0114】
したがって、この第2の実施形態の電子ペン1Aでは、筒状結合部材13が第1の実施形態の電子ペン1における筒状部402の役割をし、筒状部402Aが第1の実施形態の電子ペン1における感圧用部品保持部の役割をするようにした構成であり、第1の実施形態の電子ペン1よりも細型化が可能となる。
【0115】
また、図9に示した従来の電子ペン100及び上述の第1の実施形態の電子ペン1においては、筐体101と周辺電極114、又は、筐体10と周辺電極62とは、絶縁材料であるフロントキャップ102又は12を介在させる構成であるのに対して、この第2の実施形態の電子ペン1Aでは、周辺電極を構成する第1の筐体部11A1と、第2の筐体部11A2との電気的な分離(絶縁)は、筒状結合部材13のリング状鍔部13Fを、軸心方向に介在されることで実現する構成であって、第1の筐体部11A1と第2の筐体部11A2とを軸心方向に並べることができる構成であるので、細型化が可能となる。
【0116】
そして、周辺電極としての第1の筐体部11A1と芯体20との電気的な分離(絶縁)は、筒状形状のフロントキャップ12Aを第1の筐体部11A1の開口側に設けるだけで実現することができる。
【0117】
そして、この第2の実施形態では、筒状導体60Aは、フロントキャップ12Aに固定することで取り付けることができ、筒状導体60Aを芯体20の芯体本体部22の先端部21の近傍位置まで覆うように配設することが容易である。
【0118】
なお、上述の第2の実施形態では、筒状結合部材13の第1の嵌合筒状部13aと第1の筐体部11A1、また、筒状結合部材13の第2の嵌合筒状部13bと第2の筐体部11A2とは、圧入嵌合することで結合させて筐体10Aを構成するようにした。しかし、圧入嵌合ではなく、互いに螺合するようにしてもよい。また、筒状結合部材13の第1の嵌合筒状部13aと第1の筐体部11A1との一方に、あるいは、筒状結合部材13の第2の嵌合筒状部13bと第2の筐体部11A2との一方に、リング状突部を設けると共に、他方に対応するリング状凹部を設けて、当該リング状突部とリング状凹部でクリック的に係止するように嵌合させるように構成してもよい。
【0119】
また、上述の第2の実施形態では、筒状結合部材13のリング状鍔部13Fの端面の外径と、第1の筐体部11A1の外径と、第2の筐体部11A2の外径とは、全て同一として、筐体10Aとしては、軸心方向に凹凸の無い形状とした。しかし、筒状結合部材13のリング状鍔部13Fの端面の外径と、第1の筐体部11A1の外径と、第2の筐体部11A2の外径とは、全て同一とする必要はない。
【0120】
上述の第2の実施形態では、基板ホルダー40Aの筒状部402Aを筒状結合部材13の中空部内に収納する構成としたが、筒状結合部材13の第2の嵌合筒状部13bの軸心方向の端部と、基板ホルダー40Aの筒状部402Aの軸心方向の端部とが単に衝合するような状態で結合される構成としてもよい。
【0121】
また、筆圧検出部50Aの感圧用部品の保持部は、基板ホルダー40Aと一体的に設けるのではなく、筒状結合部材13の中空部を当該保持部とするように構成してもよい。
【0122】
また、筒状結合部材13と、基板ホルダー40Aとを一体的に構成するようにするようにしてもよい。その場合には、基板ホルダー40Aの部分の外径は、筒状結合部材13の第2の嵌合筒状部13bの外径よりも小さくして、第2の筐体部11A2内に収納し易くする構成とすることができる。
【0123】
なお、上述の第2の実施形態では、第1の筐体部11A1だけではなく、第2の筐体部11A2も導電性材料で構成するようにしたが、第2の筐体部11A2を導電性材料で構成することは必須ではなく、第2の筐体部11A2は、例えば樹脂などの絶縁性材料で構成してもよい。
【0124】
[その他の実施形態または変形例]
上述した第1の実施形態の電子ペン1及び第2の実施形態の電子ペン1Aにおいては、筒状導体60及び60Aは、フロントキャップ12及び12Aの開口から外部に突出しないように配設したが、図8(A)及び(B)に示すように、筒状導体60及び60Aの芯体20の先端部21側の端部が、フロントキャップ12及び12Aの開口12a及び12Acから外部に突出するように構成してもよい。
【0125】
図8(A)は、第1の実施形態の電子ペン1の改良例の電子ペン1Bのペン先側の構成例を示す図であり、この図8(A)において、第1の実施形態の電子ペン1と同一部分には、同一の参照符号を付して、その説明は省略する。
【0126】
この例の電子ペン1Bにおいては、図8(A)に示すように、感圧用部品保持部403のペン先側に嵌合されて取り付けられている筒状導体60Bの軸心方向の長さを長くして、当該筒状導体60Bの芯体20の先端部21側の端部が、フロントキャップ12の開口12aから外部に突出するように構成する。この例の場合、フロントキャップ12の開口12aの内径は、筒状導体60Bの外径よりも大きく選定されている。この例の電子ペン1Bにおいて、その他の構成は、上述した第1の実施形態の電子ペン1と同様とされる。
【0127】
また、図8(B)は、第2の実施形態の電子ペン1Aの改良例の電子ペン1Cのペン先側の構成例を示す図であり、この図8(B)において、第2の実施形態の電子ペン1Aと同一部分には、同一の参照符号を付して、その説明は省略する。
【0128】
この例の電子ペン1Cにおいては、図8(B)に示すように、フロントキャップ12Aに取り付けられている筒状導体60Cの軸心方向の長さを長くして、当該筒状導体60Cの芯体20の先端部21側の端部が、フロントキャップ12Aの開口12Acから外部に突出するように構成している。この例の場合、フロントキャップ12Aに筒状導体60Cが固定されるのは上述の第2の実施形態と同様である。この例の電子ペン1Cにおいて、その他の構成は、上述した第1の実施形態の電子ペン1と同様とされる。
【0129】
上述の変形例の電子ペン1B及び1Cによれば、上述した第1の実施形態の電子ペン1の効果及び第2の実施形態の電子ペン1Aの効果に加えて、それぞれ、信号発信回路からの信号を芯体20に伝達する筒状導体60B及び60Cと芯体20との結合位置を、当該芯体20の先端部21の近傍にまで亘らせることが容易にできると共に、その芯体20の先端部21の近傍と筒状導体60B及び60Cの結合部を位置検出センサの入力面に、より近づけることも可能であるという顕著な効果を奏する。この場合には、筒状導体60B及び60Cと、位置検出センサとの間での信号授受の結合により、電子ペン1B及び1Cと位置検出センサとの間での信号授受の結合をより強くすることができる。また、筒状導体は、金属で強度があるため、ペン先を細く長く伸ばすことも可能である。これにより、シャープペンシルのようにペン先の視認性を高めるような使用が可能となる。
【0130】
なお、上述の第1及び第2の実施形態では、芯体20の芯体本体部22の端部22bを筆圧検出部50及び50Aの導電性弾性部材53に設けられた嵌合凹部53aに直接に嵌合させるように構成したが、芯体20の芯体本体部22の端部22bと、筆圧検出部50及び50Aの導電性弾性部材53との間に圧力伝達部材を介在させるようにしてもよい。
【0131】
また、上述の実施形態では、周辺電極は、電子ペンの位置検出センサの入力面に対する傾き角を検出するために用いるようにしたが、周辺電極は、他の用途として用いてもよい。例えば、周辺電極を、位置検出センサを通じた位置検出装置からの信号の受信用として用いてもよい。また、電子ペンから位置検出センサを通じて位置検出装置に伝達する情報の送信電極として、周辺電極を用いるようにしてもよい。
【0132】
また、上述の実施形態の電子ペン1,1A,1B,1Cでは、芯体20は、位置検出センサに対して信号送信のみをするように構成したが、芯体20を、位置検出センサに対する信号送信と、位置検出センサからの信号受信とを、時分割で行えるように構成した電子ペンの構成とすることもできる。
【0133】
また、上述の実施形態の電子ペンでは、芯体20や周辺電極と位置検出装置の位置検出センサとの間でのみ信号の送受信を行うように説明したが、例えばブルートゥース(登録商標)規格の無線通信手段を用いることで、位置検出装置との間で無線通信により信号の送受信を行うように、電子ペンを構成してもよい。
【0134】
なお、上述の実施形態では、筆圧検出部は、誘電体の一方の端面(一方の電極面)に対して、リング状スペーサ部材を介して導電性弾性部材を、筆圧に応じて押圧して、誘電体と導電性弾性部材との接触面積を、筆圧に応じて可変するように構成して、誘電体の一方の端面と他方の端面(他方の電極面)との間で筆圧に応じた静電容量を呈する可変容量コンデンサを構成するようにした。しかし、筆圧検出部の構成は、これに限られるものではなく、例えば、誘電体を端子部材と導電性弾性部材とで挟持することで可変容量コンデンサを構成するようにしてもよいし、また、例えば特開2013−161307号公報に開示されているような筆圧に応じて静電容量を可変とする、MEMS(Micro Elector Mechanical Systems)素子からなる可変容量コンデンサとして構成され半導体素子を用いて構成することもできる。
【0135】
さらには、筆圧検出部は、可変容量コンデンサではなく、筆圧に応じてインダクタンス値を変更するように構成したものを用いるようにしてもよい。
【0136】
また、上述の実施形態では、周辺電極を、1個の導電性部材としたが、この周辺電極を、周方向に分割した2個や3個などの複数個の導電性部材を備えるものとし、それらの複数個の導電性部材のそれぞれに独立に信号を供給して、位置検出センサに対し送信することができるように構成してもよい。その場合には、位置検出装置では、電子ペンの回転角も検出することができる。
【0137】
また、上述の実施形態では、筒状導体60,60Aは、導電性金属で構成するようにしたが、金属ではなく、例えば導電性金属粉が混合されるなどして導電性を有するように形成された硬質の樹脂で構成するようにしてもよい。
【0138】
また、上述の第2の実施形態及び図8(B)の実施形態の例では、筒状導体60A,60Cをフロントキャップ12Aに固定するようにしたが、筒状導体60A,60Cの電子ペン1A,1Cの筐体内での固定位置への取付方法は、これに限られるものではない。例えば、第1の実施形態と同様に、筆圧検出部50Aを保持する筒状部に、筒状導体60A,60Cを固定するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0139】
1,1A,1B,1C…電子ペン、10,10A…筐体、11…筐体本体部、11A1…第1の筐体部(周辺電極)、11A2…第2の筐体部、12,12A…フロントキャップ、13…筒状結合部材、20…芯体、40,40A…基板ホルダー、50,50A…筆圧検出部、60,60A…筒状導体60,61A…接続用線材、62…周辺電極
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9

【手続補正書】
【提出日】2021年4月28日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0015】
芯体103は、その先端部103aとは反対側の端部103bが、導電性材料からなる芯体ホルダー111に収納されている導電性の芯体保持部材112に嵌合されることにより、芯体ホルダー111に対して抜き差し可能の状態で結合保持されている。芯体103の先端部103aに印加される圧力に応じて芯体103及び芯体ホルダー111が一体的に軸心方向に変位することにより、芯体103の先端部103aに印加される圧力(筆圧)が筆圧検出部106に伝達されるように構成されている。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0032
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0032】
以上のように、上述の構成の電子ペンは、筐体内の所定位置に固定配置された筒状導体を通じて、信号発信回路の信号を芯体に供給する構成である。このため、冒頭で説明した電子ペンの場合のように、信号発信回路からの信号を芯体に供給するために、芯体ホルダーや導電性材料からなるコイルばねを設ける必要はなく、芯体を挿通させる筒状導体を筐体内の固定位置に配置すればよい。したがって、電子ペンの細型化が可能になるという効果がある。また、導電性のコイルばねが不要になるので、筆圧検出部を電子ペンに設けた場合にも、調整後の筆圧検出部の荷重に対する伝達特性にばらつきが生じることを防止することできる。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0069
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0069】
図5(A)の模式図に示すように、位置検出センサ201の入力面に対して、電子ペン1の芯体20が垂直の状態にあるときには、位置検出期間Taでは、芯体20と位置検出センサ201との間で静電結合し、その静電結合する領域OBaは、図(B)に示すように、真円の領域となる。一方、傾き検出期間Tbでは、周辺電極62と位置検出センサ201との間で静電結合し、その静電結合する領域OBbは、図(C)に示すように、リング状の領域となる。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0070
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0070】
また、図(D)の模式図に示すように、位置検出センサ201の入力面に対して、電子ペン1の芯体20が傾いている状態にあるときには、位置検出期間Taにおいて芯体20と位置検出センサ201との間で静電結合する領域OBaは、図(E)に示すように、ほぼ真円の領域のままとなる。一方、傾き検出期間Tbにおいて周辺電極62と位置検出センサ201との間で静電結合する領域OBbは、図(F)に示すように、傾き角に応じると共に傾きの方向に長く伸びた楕円形状の領域となる。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0071
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0071】
したがって、位置検出装置では、図(F)に示した領域OBbの楕円形状の長円方向の長さから電子ペン1の傾き角の大きさを検出することができ、また、図(E)に示した電子ペン1の指示位置を起点とした領域OBbの楕円形状の長円方向を検出することにより、電子ペン1の傾きの方向を検出することができる。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0072
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0072】
なお、図3の例では、傾き角を検出する用途に用いられる周辺電極62には、芯体20に供給する周波数f1の信号を用いるようにしたが、芯体20に供給する信号の周波数と、周辺電極62に供給する信号の周波数とを異ならせてもよい。その場合には、位置検出装置では、芯体20からの信号と、周辺電極62からの信号とを区別することができるので、上述のように、位置検出期間と傾き検出期間とを時分割で繰り返すのではなく、芯体20からの信号と、周辺電極62からの信号とを同時に位置検出センサに送出するようにしてもよい。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0134
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0134】
なお、上述の実施形態では、筆圧検出部は、誘電体の一方の端面(一方の電極面)に対して、リング状スペーサ部材を介して導電性弾性部材を、筆圧に応じて押圧して、誘電体と導電性弾性部材との接触面積を、筆圧に応じて可変するように構成して、誘電体の一方の端面と他方の端面(他方の電極面)との間で筆圧に応じた静電容量を呈する可変容量コンデンサを構成するようにした。しかし、筆圧検出部の構成は、これに限られるものではなく、例えば、誘電体を端子部材と導電性弾性部材とで挟持することで可変容量コンデンサを構成するようにしてもよいし、また、例えば特開2013−161307号公報に開示されているような筆圧に応じて静電容量を可変とする、MEMS(micro electro mechanical systems)素子からなる可変容量コンデンサとして構成され半導体素子を用いて構成することもできる。

【国際調査報告】