(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2020年8月6日
【発行日】2021年12月23日
(54)【発明の名称】生物学的試料中の遊離AIMの免疫学的分析方法及び測定キット
(51)【国際特許分類】
G01N 33/53 20060101AFI20211126BHJP
【FI】
G01N33/53 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】20
【出願番号】特願2020-569718(P2020-569718)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2020年1月30日
(31)【優先権主張番号】特願2019-15220(P2019-15220)
(32)【優先日】2019年1月31日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】390037327
【氏名又は名称】積水メディカル株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】511288304
【氏名又は名称】宮崎 徹
(71)【出願人】
【識別番号】515099241
【氏名又は名称】社会福祉法人恩賜財団済生会
(74)【代理人】
【識別番号】110000774
【氏名又は名称】特許業務法人 もえぎ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 徹
(72)【発明者】
【氏名】岡上 武
(72)【発明者】
【氏名】浅井 智英
(72)【発明者】
【氏名】鐘築 由香
(72)【発明者】
【氏名】廣田 次郎
(57)【要約】
複合体AIM及び遊離AIMを含む生物学的試料において、抗AIM抗体の遊離AIMに対する特異性を向上させることを課題とする。
複合体AIM及び遊離AIMを含む生物学的試料中の遊離AIM量の免疫学的分析方法であって、抗IgM抗体の存在下で、前記生物学的試料と抗AIM抗体とを接触させることを含む、前記方法により、前記課題を解決することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合体AIM及び遊離AIMを含む生物学的試料中の遊離AIM量の免疫学的分析方法であって、抗IgM抗体の存在下で、前記生物学的試料と抗AIM抗体とを接触させることを含む、前記方法。
【請求項2】
前記生物学的試料が、体液試料である、請求項1に記載の生物学的試料中の遊離AIM量の免疫学的分析方法。
【請求項3】
前記生物学的試料が、血液、血清、血漿又は尿である、請求項1又は2に記載の生物学的試料中の遊離AIM量の免疫学的分析方法。
【請求項4】
抗AIM抗体が、ポリクローナル抗体である、請求項1〜3のいずれかに記載の生物学的試料中の遊離AIM量の免疫学的分析方法。
【請求項5】
抗IgM抗体と、抗AIM抗体と、を含む、複合体AIM及び遊離AIMを含む生物学的試料中の遊離AIM量の測定キット。
【請求項6】
前記生物学的試料が、体液試料である、請求項5に記載の生物学的試料中の遊離AIM量の測定キット。
【請求項7】
前記生物学的試料が、血液、血清、血漿又は尿である、請求項5又は6に記載の生物学的試料中の遊離AIM量の測定キット。
【請求項8】
抗AIM抗体が、ポリクローナル抗体である、請求項5〜7のいずれかに記載の生物学的試料中の遊離AIM量の測定キット。
【請求項9】
複合体AIM及び遊離AIMを含む生物学的試料中の遊離AIM量の免疫学的分析における非特異反応抑制方法であって、抗IgM抗体の存在下で、前記生物学的試料と抗AIM抗体とを接触させることを含む、前記方法。
【請求項10】
前記生物学的試料が、体液試料である、請求項9に記載の非特異反応抑制方法。
【請求項11】
前記非特異反応が、生物学的試料中のIgMに由来する非特異反応である、請求項9又は10に記載の非特異反応抑制方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物学的試料中の遊離AIMの免疫学的分析方法に関する。また、本発明は、生物学的試料中の遊離AIM量を測定するためのキットに関する。本発明は、生物学的試料中の遊離AIM量の免疫学的分析における非特異反応抑制方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
AIM(apoptosis inhibitor of macrophage)は組織マクロファージにより産生される、分子量約50kDa分泌型の血中タンパク質である。AIMは、システイン残基を多く含む特異的な配列であるscavenger receptor cysteine−rich(SRCR)ドメインをタンデムに3つつなげた構造をしている。それぞれのシステイン残基は各ドメイン内で互いにジスルフィド結合することで、コンパクトな球状の立体構造をしていると考えられている。
【0003】
AIMは、リポ多糖、IgM、補体制御因子、及び脂肪酸合成酵素など,さまざまな分子と結合するという特徴を持つことが知られている。中でも、AIMは、血中においてIgMとの複合体の形態で存在することが知られている。IgMは500kDaをこえる巨大なタンパク質複合体であるため、IgMに結合しているかぎりAIMも糸球体を通過して尿へと移行することはなく、AIMの高い血中濃度が保たれる。IgMから解離するとAIMはすみやかに尿へと排泄される。したがって、大部分のAIMは血液中においてIgMと複合体を形成しており、結合体ではなく遊離状態で血中に存在することはほとんどない。
【0004】
近年、AIMが、インスリン抵抗性又は動脈硬化などのさまざまな疾患における病態の進行に関与することが明らかにされている。例えば、他の結合パートナーと結合していない遊離の形態で存在する遊離AIMと肝疾患との関係について報告されている(特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2017/043617号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
遊離AIM量の測定結果に基づき特定の疾患を診断する場合、複合体を形成しているAIMの量を排除し、遊離AIM量のみを測定する必要がある。しかしながら、遊離AIMを検出する際に、他の結合パートナーと結合している複合体AIMも検出してしまう場合があった。したがって、複雑な操作を伴うことなく、複合体を形成しているAIMの非特異反応を排除することが可能な技術が望まれていた。
本発明の目的は、優れた特異性を有する、複合体AIM及び遊離AIMを含む生物学的試料中の遊離AIM量の測定方法、並びに優れた特異性を有する、複合体AIM及び遊離AIMを含む生物学的試料中の遊離AIM量の測定キットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
遊離AIMのみに特異的に結合する抗体よりも、遊離AIM及び複合体AIMのいずれにも結合する抗体の方が、取得が容易である。本発明者らは、取得が容易な遊離AIM及び複合体AIMのいずれにも結合する抗体を使用して上記課題を解決するために鋭意検討した結果、抗IgM抗体の存在下で、生物学的試料と抗AIM抗体とを接触させることにより、抗AIM抗体の遊離AIMに対する特異性を向上させることが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
具体的に、本発明は以下のとおりである。
<1>複合体AIM及び遊離AIMを含む生物学的試料中の遊離AIM量の免疫学的分析方法であって、抗IgM抗体の存在下で、前記生物学的試料と抗AIM抗体とを接触させることを含む、前記方法、
<2>前記生物学的試料が、体液試料である、<1>に記載の生物学的試料中の遊離AIM量の免疫学的分析方法、
<3>前記生物学的試料が、血液、血清、血漿又は尿である、<1>又は<2>に記載の生物学的試料中の遊離AIM量の免疫学的分析方法、
<4>抗AIM抗体が、ポリクローナル抗体である、<1>〜<3>のいずれかに記載の生物学的試料中の遊離AIM量の免疫学的分析方法、
<5>抗IgM抗体と抗AIM抗体とを含む、複合体AIM及び遊離AIMを含む生物学的試料中の遊離AIM量の測定キット、
<6>前記生物学的試料が、体液試料である、<5>に記載の生物学的試料中の遊離AIM量の測定キット、
<7>前記生物学的試料が、血液、血清、血漿又は尿である、<5>又は<6>に記載の生物学的試料中の遊離AIM量の測定キット、
<8>抗AIM抗体が、ポリクローナル抗体である、<5>〜<7>のいずれかに記載の生物学的試料中の遊離AIM量の測定キット、
<9>複合体AIM及び遊離AIMを含む生物学的試料中の遊離AIM量の免疫学的分析における非特異反応抑制方法であって、抗IgM抗体の存在下で、前記生物学的試料と抗AIM抗体とを接触させることを含む、前記方法、
<10>前記生物学的試料が、体液試料である、<9>に記載の非特異反応抑制方法、並びに
<11>前記非特異反応が、生物学的試料中のIgMに由来する非特異反応である、<9>又は<10>に記載の非特異反応抑制方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、複合体AIM及び遊離AIMを含む生物学的試料中の遊離AIM量の免疫学的分析方法において、抗AIM抗体の遊離AIMに対する特異性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】種々の抗ヒトIgM抗体を測定系に添加した場合の非特異反応抑制効果を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[1]生物学的試料中の遊離AIM量の免疫学的分析方法
(生物学的試料)
本発明において分析可能な生物学的試料としては、主に生体(生物)由来の固形組織及び体液試料を挙げることができ、体液試料を用いることが好ましい。本発明において分析可能な生物学的試料は、より好ましくは、血液、血清、血漿、尿、唾液、喀痰、涙液、耳漏、又は前立腺液等の体液試料であり、さらに好ましくは血液、血清、血漿又は尿である。生体又は対象は、ヒト又は動物(例えば、マウス、モルモット、ラット、サル、イヌ、ネコ、ハムスター、ウマ、ウシ、及びブタ)を含み、好ましくはヒトである。対象からの生物学的試料は、本発明の実施時に採取または調製されたものでもよく、予め採取または調製され保存されたものであってもよい。試料を測定する者と試料中の遊離AIM量を測定する者とは別の者であってもよい。生物学的試料は、インビボの試料であることができる。本発明において、生物学的試料は、遊離AIMと複合体AIMの両方を含む。
【0011】
(AIM)
AIM(apoptosis inhibitor of macrophage)は組織マクロファージにより産生される、分子量約50kDa分泌型の血中タンパク質である。AIMは、システイン残基を多く含む特異的な配列であるscavenger receptor cysteine−rich(SRCR)ドメインをタンデムに3つつなげた構造をしており、それぞれのシステイン残基は各ドメイン内で互いにジスルフィド結合することで、コンパクトな球状の立体構造をしていると考えられている。
ヒトAIMは、配列番号1で表される347アミノ酸から成り、システインを多く含む3つのSRCRドメインを含んでいる。SRCR1ドメインは、配列番号1で表されるアミノ酸配列のうち、アミノ酸番号24〜125に該当する。SRCR2ドメインは、配列番号1で表されるアミノ酸配列のうち、アミノ酸番号138〜239に該当する。SRCR3ドメインは、配列番号1で表されるアミノ酸配列のうち、アミノ酸番号244〜346に該当する。
ヒトAIMのアミノ酸配列は以下のとおりである。
MALLFSLILAICTRPGFLASPSGVRLVGGLHRCEGRVEVEQKGQWGTVCDDGWDIKDVAVLCRELGCGAASGTPSGILYEPPAEKEQKVLIQSVSCTGTEDTLAQCEQEEVYDCSHDEDAGASCENPESSFSPVPEGVRLADGPGHCKGRVEVKHQNQWYTVCQTGWSLRAAKVVCRQLGCGRAVLTQKRCNKHAYGRKPIWLSQMSCSGREATLQDCPSGPWGKNTCNHDEDTWVECEDPFDLRLVGGDNLCSGRLEVLHKGVWGSVCDDNWGEKEDQVVCKQLGCGKSLSPSFRDRKCYGPGVGRIWLDNVRCSGEEQSLEQCQHRFWGFHDCTHQEDVAVICSG(配列番号1)
すなわち、ヒトAIM中の、SRCR1ドメイン、SRCR2ドメイン、及びSRCR3ドメインのアミノ酸配列は、それぞれ以下の通りである。
SRCR1ドメイン:
VRLVGGLHRCEGRVEVEQKGQWGTVCDDGWDIKDVAVLCRELGCGAASGTPSGILYEPPAEKEQKVLIQSVSCTGTEDTLAQCEQEEVYDCSHDEDAGASCE(配列番号2)
SRCR2ドメイン:
VRLADGPGHCKGRVEVKHQNQWYTVCQTGWSLRAAKVVCRQLGCGRAVLTQKRCNKHAYGRKPIWLSQMSCSGREATLQDCPSGPWGKNTCNHDEDTWVECE(配列番号3)
SRCR3ドメイン:
LRLVGGDNLCSGRLEVLHKGVWGSVCDDNWGEKEDQVVCKQLGCGKSLSPSFRDRKCYGPGVGRIWLDNVRCSGEEQSLEQCQHRFWGFHDCTHQEDVAVICS(配列番号4)
【0012】
(遊離AIM)
本明細書において、「遊離AIM」とは、リポ多糖又はIgM等の他の物質と結合していない、遊離状態で存在するAIMを意味する。これに対し、本明細書において、リポ多糖又はIgM等の他の物質と結合しており、他の物質との複合体の状態で存在するAIMを複合体AIMと称する。遊離AIMとは、好ましくは、ヒトの遊離AIMであり、複合体AIMとは、好ましくは、ヒトの複合体AIMである。
【0013】
(抗IgM抗体)
本明細書において使用される用語「抗IgM抗体」は、IgMに結合する性質を有する抗体を意味する。換言すれば、「抗IgM抗体」は、オクタローニー法によりヒトIgMと沈降線を生ずる物質を意味する。IgMに結合性を有し且つ本発明の効果を損なわない範囲内で、他の抗原に対して結合性を有してもよい。本発明において使用される抗IgM抗体は、好ましくは抗ヒトIgM抗体である。本発明において使用される抗IgM抗体としては、ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体のいずれも使用可能である。抗IgM抗体は、IgMと結合することができる機能性断片であってもよい。
本発明の免疫学的分析方法においては、抗IgM抗体の使用により、抗IgM抗体非添加の場合と比較して、複合体AIMに由来する非特異反応を50%以下、好ましくは60%以下、さらに好ましくは70%以下、最も好ましくは90%以下に減少させることができる。
本発明において効果が得られる理由は、まだ十分に解明されているわけではないが、複合体AIMにおけるIgM部分と抗IgM抗体とが結合することにより、複合体AIMのAIM部分と抗AIM抗体との結合が阻害されると考えられる。結合パートナーの一方への抗体の結合が、結合パートナーの他方への抗体の結合性へ影響を及ぼすことは驚きである。
本発明において使用される抗IgM抗体として、市販の抗IgM抗体を使用することもできる。市販の抗IgM抗体としては、HBR−1、HBR−3、HBR−6、HBR−Plus、HBR−9、HBR−11、HBR20、HBR21、HBR22、HBR23、HBR24、HBR25、HBR26(SCANTIBODIES社)、P0911(Trina Bioreactives AG)及びTRU Block(登録商標)ULTRA(Meridian Bioscience社)等が使用できるが、HBR−6、HBR−20、及び/又は市販の抗ヒトIgMポリクローナル抗体を使用することが好ましく、HBR−6、HBR−20、及び/又はP0911(Trina Bioreactives AG)を使用することがより好ましい。
抗IgM抗体の添加濃度は十分な非特異反応抑制効果を示し、かつ免疫学的測定の本反応に影響を及ぼさない濃度であれば特に制限はないが、モノクローナル抗体である場合、1〜1000μg/mLの濃度範囲での利用が望ましく、10〜1000μg/mLがより望ましく、10〜300μg/mLがさらに望ましい。ポリクローナル抗体である場合、0.01〜2重量%の濃度範囲での利用が望ましく、0.03〜2重量%の濃度範囲での利用が望ましく、0.05〜1重量%がさらに望ましい。
本発明において、抗IgM抗体のIgMへの結合親和性は、本発明の効果が得られる限りにおいて特に限定されることはないが、例えば、IgMに対して少なくとも約10
−4M、少なくとも約10
−5M、少なくとも約10
−6M、少なくとも約10
−7M、少なくとも約10
−8M、少なくとも約10
−9M、少なくとも約10
−10M、少なくとも約10
−11M、少なくとも約10
−12M、またはそれ以上のKdであることができる。
【0014】
抗IgM抗体は、モノクローナル抗体およびポリクローナル抗体のいずれも公知の方法に従って作製することができる。モノクローナル抗体は、例えば、IgM又はIgMフラグメントで免疫した非ヒト哺乳動物から抗体産生細胞である脾臓細胞あるいはリンパ節細胞を単離し、これを高い増殖能を有する骨髄腫由来の細胞株等と融合させてハイブリドーマを作製し、このハイブリドーマが産生した抗体を精製することによって得ることができる。また、ポリクローナル抗体は、IgM又はIgMフラグメントで免疫した動物の血清から得ることができる。また、免疫原としては、例えば、ヒトやサルなどの霊長類、ラットやマウスなどのげっ歯類、イヌ、ネコ、ウマ、ヒツジ、ブタなどの、IgM又はIgMフラグメントが挙げられるが、これらに限定されない。
【0015】
抗IgM抗体としては、抗体分子全体のほかに抗原抗体反応活性を有する抗体のフラグメントを使用することも可能であり、前記のように動物への免疫工程を経て得られたもののほか、遺伝子組み換え技術を使用して得られるものやキメラ抗体を用いることも可能である。抗体の断片としては機能性の断片であることが好ましく、例えば、F(ab’)
2、Fab’、scFvなどが挙げられ、これらのフラグメントは前記のようにして得られる抗体をタンパク質分解酵素(例えば、ペプシンやパパインなど)で処理すること、あるいは該抗体のDNAをクローニングして大腸菌や酵母を用いた培養系で発現させることにより製造できる。
【0016】
本明細書において「非特異反応」とは、本発明において使用される抗AIM抗体に、遊離AIM以外の物質が結合することを意味する。本発明では、抗IgM抗体を用いることで、複合体AIM、特にIgMが結合パートナーとして結合している複合体AIMによる非特異反応を抑制することができる。換言すれば、本発明では、抗IgM抗体を用いることで、抗AIM抗体の遊離AIMへの特異性を向上させることができる。
本発明の複合体AIM及び遊離AIMを含む生物学的試料中の遊離AIM量の免疫学的分析における非特異反応抑制方法は、抗IgM抗体の存在下で、複合体AIM及び遊離AIMを含む生物学的試料と抗AIM抗体とを接触させることを含む、遊離AIM量の免疫学的分析における、複合体AIMと抗AIM抗体との結合阻害方法であることができる。
【0017】
(抗AIM抗体)
本明細書では、抗IgM抗体の非存在下において複合体AIMと遊離AIMのいずれにも反応する抗体を抗AIM抗体と呼ぶ。本明細書における用語「抗AIM抗体」には、遊離AIMには反応して複合体AIMには実質的に反応しない、遊離AIMに特異的な抗体は含まれない。本明細書において「遊離AIMには反応して複合体AIMには実質的に反応しない」とは、当業者に公知の手法により抗体の反応性を測定した場合に、遊離AIMに対する結合力を100とした場合の、複合体AIMに対する結合力が10%未満である場合を意味する。
本発明の「抗AIM抗体」としては、当業者に公知の手法により抗体の反応性を測定した場合に、複合体AIMへの反応性と遊離AIMへの反応性とが同じ程度である抗AIM抗体、複合体AIMへの反応性よりも遊離AIMへの反応性が強い抗AIM抗体、及び遊離AIMへの反応性よりも複合体AIMへの反応性が強い抗AIM抗体のいずれを使用してもよいが、複合体AIMへの反応性よりも遊離AIMへの反応性が強い抗AIM抗体を使用することが好ましい。より具体的には、当業者に公知の手法により抗体の反応性を測定した場合に、遊離AIMに対する結合力を100とした場合の、複合体AIMに対する反応性が50%以下である抗AIM抗体を使用することが好ましい。
本発明の免疫学的分析方法において用いられる抗AIM抗体は、ヒトAIMのSRCR3ドメイン内のエピトープに結合するものであることができる。本発明の免疫学的分析方法において用いられる抗AIM抗体は、好ましくは、SRCR3ドメイン内のエピトープに結合し、SRCR1ドメインには結合しない。本発明の免疫学的分析方法において用いられる抗AIM抗体は、さらに好ましくは、SRCR3ドメイン内のエピトープに結合し、SRCR1ドメイン及びSRCR2ドメインのいずれにも結合しない。
【0018】
本発明に使用される抗AIM抗体は、抗IgM抗体の非存在下では複合体AIMと遊離AIMのいずれにも反応する。抗IgM抗体を反応系に存在させることにより、複合体AIMとの反応性を低下させることができる。抗IgM抗体を測定系に添加するタイミングについては、本発明の効果が得られる限りにおいて特に限定されることはないが、抗AIM抗体の添加より前に又は添加と同時に添加することが好ましい。
【0019】
抗AIM抗体は、モノクローナル抗体およびポリクローナル抗体のいずれも公知の方法に従って作製することができる。モノクローナル抗体は、例えば、遊離AIM若しくは遊離AIMフラグメント及び/又は複合体AIM若しくは複合体AIMフラグメントで免疫した非ヒト哺乳動物から抗体産生細胞である脾臓細胞あるいはリンパ節細胞を単離し、これを高い増殖能を有する骨髄腫由来の細胞株等と融合させてハイブリドーマを作製し、このハイブリドーマが産生した抗体を精製することによって得ることができる。また、ポリクローナル抗体は、遊離AIM若しくは遊離AIMフラグメント及び/又は複合体AIM若しくは複合体AIMフラグメントで免疫した動物の血清から得ることができる。また、免疫原としては、例えば、ヒトやサルなどの霊長類、ラットやマウスなどのげっ歯類、イヌ、ネコ、ウマ、ヒツジ、ブタなどの、遊離AIM若しくは遊離AIMフラグメント又は複合体AIM若しくは複合体AIMフラグメントが挙げられるが、これらに限定されない。 例えば、抗AIMモノクローナル抗体は、特許文献1の実施例と同様、以下の手順で作製することが可能である。
<動物感作>
抗原として全長ヒトrAIM(2mg/ml)を等量のTiterMaxGold(G−1フナコシ)と混合しエマルジョンを作製する。免疫動物にはBalb/cマウス(チャールズリバー(株)8週齢のメス2匹を用い、後ろ足底部へ抗原溶液50μLを投与する。2週間後に同様の投与を行い、更に2週間以上をおいて抗原溶液50μgを後ろ足底部へ投与し3日後の細胞融合に備える。
<ミエローマ細胞>
ミエローマ細胞にはマウスP3U1を用い、増殖培養には、RPMI1640(11875−119 GIBCO)に、グルタミンとピルビン酸を加え、FBS(S1560 BWT社)を10%になるように添加した培地を用いる。抗生物質としてはペニシリン、ストレプトマイシンを適量加える。
<細胞融合>
麻酔下にて心臓採血を行ったマウスから、無菌的に膝窩リンパ節を摘出し、#200メッシュ付ビーカーにのせ、シリコン棒で押しながら、細胞浮遊液を調製する。細胞はRPMI1640にて2回の遠心洗浄を行った後、細胞数をカウントする。対数増殖期の状態のミエローマ細胞を遠心により集め、洗浄後、リンパ細胞とミエローマ細胞の比率が5対1となるように調製し、混合遠心を行う。細胞融合はPEG1500(783641 ロシュ)を用いて行う。すなわち、細胞ペレットへ1mLのPEG液を3分間かけて反応させ、その後段階的に希釈を行い、遠心にて洗浄した後、培地を加え96ウェルプレート15枚へ200μLずつ入れ、1週間の培養を行う。培地にはミエローマ細胞用培地にHATサプリメント(21060−017 GIBCO)を加え、FBS濃度を15%にしたものを用いる。
<マウス腹水採取>
凍結保存された細胞を解凍し、増殖培養を行った後、1週間以上前に0.5mlのプリスタン(42−002 コスモバイオ)を腹腔内投与したヌードマウス(BALB/cAJcl−nu/nu 日本クレア)の腹腔へ、1×10
7個を投与し、およそ2週間後に4〜12mlの腹水を得る。遠心処理にて固形物を除去した後、凍結保存を行う。
【0020】
抗AIM抗体としては、抗体分子全体のほかに抗原抗体反応活性を有する抗体のフラグメントを使用することも可能である。前記のように動物への免疫工程を経て得られたもののほか、遺伝子組み換え技術を使用して得られるものやキメラ抗体を用いることも可能である。抗体の断片としては機能性の断片であることが好ましく、例えば、F(ab’)
2、Fab’、scFvなどが挙げられる。これらのフラグメントは前記のようにして得られる抗体をタンパク質分解酵素(例えば、ペプシンやパパインなど)で処理すること、あるいは該抗体のDNAをクローニングして大腸菌や酵母を用いた培養系で発現させることにより製造できる。
【0021】
本明細書において、AIMと「反応する」、AIMを「認識する」、AIMと「結合する」は、同義で用いられるが、これらの例示に限定されることはなく、最も広義に解釈する必要がある。抗体がAIMなどの抗原(化合物)と「反応する」か否かの確認は、抗原固相化ELISA法、競合ELISA法、サンドイッチELISA法などにより行うことができるほか、表面プラズモン共鳴(surface plasmon resonance)の原理を利用した方法(SPR法)などにより行うことができる。SPR法は、Biacore(登録商標)の名称で市販されている、装置、センサー、試薬類を使用して行うことができる。
【0022】
本明細書において、「不溶性担体」を「固相」、抗原や抗体を不溶性担体に物理的あるいは化学的に担持させることあるいは担持させた状態を「固定」、「固定化」、又は「固相化」と表現することがある。また、「分析」、「検出」、又は「測定」という用語は、遊離AIMの存在の証明及び/又は定量などを含めて最も広義に解釈する必要があり、いかなる意味においても限定的に解釈してはならない。
【0023】
(免疫学的分析方法)
本発明において使用される免疫学的分析方法としては、当業者に公知の手法である、電気化学発光免疫測定法(ECL法)、ELISA、酵素免疫測定法、免疫組織染色法、表面プラズモン共鳴法、ラテックス凝集免疫測定法、化学発光免疫測定法、蛍光抗体法、放射免疫測定法、免疫沈降法、ウエスタンブロット法、イムノクロマトグラフ法、EATA法(Electrokinetic Analyte Transport Assay)及び高速液体クロマトグラフィー法(HPLC法)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0024】
使用される抗体と結合可能な標識抗体(二次抗体)を用いることにより、遊離AIMに結合した抗体の量を測定することができ、それにより生物学的試料中の遊離AIM量を測定することができる。標識抗体を製造するための標識物質としては、例えば酵素、蛍光物質、化学発光物質、ビオチン、アビジン、放射性同位体、金コロイド粒子、又は着色ラテックスなどが挙げられる。当業者であれば、使用される抗体と標識物質に応じて、免疫学的分析方法を適宜選択することができるが、実験系構築が簡便であることから、電気化学発光免疫測定法(ECL法)を用いることが好ましい。
【0025】
電気化学発光免疫測定法(ECL法)とは、標識物質を電気化学的刺激により発光させ、その発光量を検出することで被検出物質量を算出する方法を意味する。電気化学発光免疫測定法(ECL法)では、標識物質として、ルテニウム錯体を用いることができる。固相(マイクロプレート又はビーズ等)に電極を設置してこの電極上で電気化学的刺激を起こすことにより、このルテニウム錯体の発光量を検出することができる。
抗IgM抗体の存在下において、抗AIM抗体を固相抗体として用い、別の抗AIM抗体(すなわち、固相抗体とは別のエピトープを認識する抗体)を検出抗体(標識抗体)として用いて電気化学発光免疫測定法(ECL法)を行うことができる。固相抗体及び標識抗体を用い、そして、固相としてビーズ、標識としてルテニウム錯体をそれぞれ用いた際の測定原理は、以下のとおりである。下記は本発明の一実施形態における測定原理を示すものであり、本発明の範囲を何ら限定するものではない。
1.抗IgM抗体の存在下において、抗AIM抗体が結合したビーズと試料とを反応させると、試料中の遊離AIMがビーズに結合した抗体と結合する。
2.ビーズを洗浄後、ビーズに結合した遊離AIMに、ルテニウム標識抗体(ビーズに結合した抗体とは認識エピトープが異なる抗体)を反応させると、サンドイッチ状に結合する。
3.ビーズを洗浄後、電極上にて電気エネルギーを加えると、遊離AIMを介してビーズに結合したルテニウム標識抗体量に応じて、ルテニウム錯体が発光する。この発光量を計測することにより、検体中の遊離AIMを測定することができる。
【0026】
免疫学的分析方法の中で、酵素標識を用いるELISA法も、簡便且つ迅速に標的を測定することができて好ましい。サンドイッチELISAの場合、抗AIM抗体を固定化した不溶性担体と、標識物質で標識された、固定抗体とはエピトープが異なる抗AIM抗体とを使用することができる。この場合、不溶性担体はプレート(イムノプレート)が好ましく、標識物質は、適宜選択して使用できる。
不溶性担体に固定化された抗体は、抗IgM抗体の存在下において、試料中の遊離AIMを捕捉し、不溶性担体上で抗体−遊離AIM複合体を形成する。標識物質で標識された抗体は、前記捕捉された遊離AIMに結合して前述の抗体−遊離AIM複合体とサンドイッチを形成する。標識物質に応じた方法により標識物質の量を測定することにより、試料中の遊離AIMを測定することができる。抗体の不溶性担体への固定化の方法、抗体と標識物質との結合方法等、具体的な方法は、当業者に周知の方法を特に制限なく使用することができる。
また、高速液体クロマトグラフィー法(HPLC法)を用いることも可能である。すなわち、蛍光標識した抗AIM抗体と生物学的試料とを接触させることにより、抗AIM抗体と遊離AIM及び複合体AIMとを結合させる。その後、HPLCにより遊離AIMと結合している抗AIM抗体のみを分離することもできる。
【0027】
免疫学的分析方法としては、代表的な粒子凝集免疫測定法であるラテックス免疫凝集法(以下、LTIA法ということがある)も好ましい。LTIA法では、目的成分に対する抗体を担持させたラテックス粒子を用い、目的成分である抗原と抗体担持ラテックス粒子とが抗原抗体複合物を形成して結合することによって生じるラテックス粒子の凝集(濁り)の程度を光学的手段(例えば、透過光を測定する比濁法、散乱光を測定する比朧法など)などにより検出し、目的成分を分析することができる。本発明の免疫学的分析方法では、抗AIM抗体を担持させたラテックス粒子を用い、抗IgM抗体の存在下において、目的成分である遊離AIMと抗体担持ラテックス粒子とが抗原抗体複合物を形成して結合することによって生じるラテックス粒子の凝集の程度を光学的手段により検出することができる。
また、免疫学的分析方法として、高速液体クロマトグラフィー法(HPLC法)あるいはEATA法(Electrokinetic Analyte Transport Assay)を用いることも可能である。EATA法は、富士フィルム和光純薬株式会社製のミュータスワコーi30を使用して実施することができる。
【0028】
[2]遊離AIM量の測定キット
本発明の遊離AIM量の測定キットは、抗IgM抗体と抗AIM抗体とを含む。本発明の測定キットには、ほかに、他の検査試薬、検体希釈液、及び/又は使用説明書などを含むこともできる。
【0029】
本発明の遊離AIM量の測定キットは、好ましくは、以下の(1)〜(3)を含む。
(1)第一抗AIM抗体を固定化した固相、
(2)電気化学発光物質で標識した、第一抗AIM抗体とは異なるエピトープを有する第二抗AIM抗体、並びに
(3)抗IgM抗体。
ECL法を使用する場合、本発明の測定キットは、第一抗AIM抗体を固定化した固相とルテニウム錯体等の電気化学発光物質で標識した、第二抗AIM抗体とを含むことができる。例えば、固相としてマイクロビーズを用いたキットでは、第一抗AIM抗体を固相化したマイクロビーズに、抗IgM抗体の存在下で生物学的試料を添加して反応させた後、試料を除去して洗浄する。続いて、電気化学発光物質を標識した、第一抗AIM抗体とは異なるエピトープを認識する第二抗AIM抗体を添加して反応させる。マイクロビーズを洗浄後、電気エネルギーを加えて発光させ標識物質の発光量を測定することにより、遊離AIM濃度を求めることができる。
【0030】
サンドイッチELISA法を使用する場合、測定キットは少なくとも、以下の(1)〜(3)を含む。
(1)第一抗AIM抗体(固相抗体)を固定化した不溶性担体、
(2)標識物質で標識された、第一抗AIM抗体とは異なるエピトープを認識する第二抗AIM抗体(標識抗体)、及び
(3)抗IgM抗体。
このようなキットでは、まず、第一抗AIM抗体を固定化した不溶性担体に、抗IgM抗体の存在下で生物学的試料を添加した後インキュベートし、試料を除去して洗浄する。次に、標識抗体を添加した後インキュベートし、基質を加えて発色させる。プレートリーダー等を用いて発色を測定することにより、生物学的試料中における遊離AIM濃度を求めることができる。
【0031】
LTIA法を使用する場合、測定キットは少なくとも、以下の(1)〜(3)を含む。
(1)第一抗AIM抗体を固定化したラテックス粒子、
(2)第一抗AIM抗体とは異なるエピトープを認識する第二抗AIM抗体を固定化したラテックス粒子、及び
(3)抗IgM抗体。
このようなキットでは、抗IgM抗体存在下において、遊離AIMを介して第一抗AIM抗体と第二抗AIM抗体とが凝集する。凝集の程度を光学的手段を用いて検出することにより、生物学的試料中における遊離AIM濃度を求めることができる。
【0032】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。なお、特に説明のない限りは、%は重量%を示す。
【実施例】
【0033】
〔実施例1:総AIM測定系による複合体AIM及び遊離AIM量の測定〕
1.ヒト検体のカラムクロマトグラフィーでの分離
ヒト検体10μLをサイズ排除クロマトグラフィー(TSKgel G3000 SWXL ,東ソー)にてサイズ分画し、複合体AIMと遊離AIMの各フラクションを得た(複合体AIM:フラクションNo.6, 7、遊離AIM:フラクションNo.14,15)。またHPLCはリン酸バッファーを用いて流速1mL/分で実施し各フラクションを500μLずつ分取した。
【0034】
2.抗AIMモノクローナル抗体結合磁気ビーズの作製
1)150mM リン酸カリウム緩衝液(pH7.8)で透析した抗AIMモノクローナル抗体の吸光度を測定し、同緩衝液を用いてAbs 0.5に調製した。
2)Dynal Biotech 社製 Dynabeads M−450 Epoxy 1mL(30 mg/mL)を上記緩衝液で3回洗浄し、1)の抗体液を1mL添加した。25℃にて回転攪拌を18時間以上実施した。
3)ビーズブロッキングバッファー[50mM Tris,150mM NaCl,0.1%BSA,0.09% NaN
3,pH7.8]でビーズを2回洗浄した。洗浄により緩衝液を取り除くことで溶液中に残存していたビーズ未結合の抗AIMモノクローナル抗体を除去した。その後ビーズブロッキングバッファーを1mL加え攪拌し25℃にて回転攪拌を18時間以上実施した。
4)ビーズブロッキングバッファーでビーズを2回洗浄後、ビーズブロッキングバッファーを1mL加え攪拌した。これを抗AIMモノクローナル抗体結合磁気ビーズとし、使用時まで4℃で保存した。
【0035】
3.ルテニウム標識抗AIMモノクローナル抗体の作製
1)150mM リン酸カリウム緩衝液(pH7.8)で透析済みの、抗AIMモノクローナル抗体液(磁気ビーズに結合させた抗AIMモノクローナル抗体とはエピトープが異なる抗体)312.5μLに10mg/mLのルテニウム錯体(IGEN社製 Origin Tag−NHS ESTER)を14.1μL加え、30分間攪拌した。その後、2M グリシンを50μL添加し、20分間攪拌した。
2)直径1cm、高さ30cmのガラス管に充填したゲルろ過カラムクロマトグラフィー(GEヘルスケア バイオサイエンス社製 Sephadex G−25)にルテニウム錯体標識抗AIMモノクローナル抗体をアプライし、未標識のルテニウム錯体とルテニウム錯体標識抗AIMモノクローナル抗体を単離精製した。溶出は、10mM リン酸カリウム緩衝液(pH6.0)にて行った。
【0036】
4.各フラクションの測定
1)複合体AIMフラクション(No. 6, 7)を10μLずつ取り、合計20μL分を200μLの反応用溶液[50mM HEPES,50mM NaCl,0.05% Tween20,1mM EDT−4Na,0.5% BSA,0.09% NaN
3,100μg/mL マウスIgG,pH7.8]又は抗IgM抗体含有反応用溶液へ添加した。同様に、遊離AIMフラクション(No.14,15)を10μLずつ取り、合計20μL分を200μLの反応用溶液又は抗IgM抗体含有反応用溶液へ添加した。抗IgM抗体としては、モノクローナル抗体(HBR−6、HBR−20、50μg/mLとなるように調整)又はポリクローナル抗体(P0911(Trina Bioreactives AG)、0.125%となるように調整)を用いた。
2)そこにビーズ希釈液[50mM HEPES,100mM NaCl,0.1% Tween20,1mM EDT−4Na,0.5% BSA,0.09% NaN
3,pH7.8]で0.5mg/mL濃度に希釈したNo.12抗体結合磁気ビーズを25μLずつ添加し、30℃で9分間反応させた(第一反応)。
その後、磁気ビーズを磁石でトラップし、反応管内の液体を抜き取り、洗浄液[50mmol/L Tris HCl,0.01%(W/V)Tween20,0.15mol/L NaCl,pH7,5]350μLで2回磁気ビーズを洗浄し、抗原抗体反応以外の非特異結合物質を除去した(BF分離)。
3)次にルテニウム用希釈溶液[50mM HEPES,50mM NaCl,0.05% Tween20,1mM EDT−4Na,0.5% BSA,0.09% NaN
3,100μg/mL マウスIgG,pH7.8]で0.6μg/mL濃度に希釈したルテニウム標識No.11抗体を200μL加えて30℃で9分間反応させた(第二反応)。
反応後の磁気ビーズを磁石でトラップし反応管内の液体を抜き取り、洗浄液350μLで2回磁気ビーズを洗浄し、抗原抗体反応以外の非特異結合物質を除去した(BF分離)。
4)その後、反応管に300μLのトリプロピルアミンを入れ、磁気ビーズと混合した。この状態で電気エネルギーを与えることでルテニウム錯体が発光し、その発光強度を検出機で検出した。
なお、上記反応管への磁気ビーズ添加操作以降は、ルテニウム錯体発光自動測定機であるピコルミIII上で実施した。
【0037】
結果を
図1に示す。F6+F7のカウント比率が基準よりも低くなるほど、抗体の複合体AIMへの非特異的反応が抑制されたと考えられる。また、F14+F15のカウント比率が基準よりも低くなるほど、抗体の遊離AIMへの感度が低下したと考えられる。抗IgM抗体を添加した測定系では、添加していない測定系に対して、F6+F7のカウント比率が、37.4%(HBR−6)、55.8%(HBR−20)、及び4.4%(P0911)となり、いずれの測定系においても抗AIM抗体の複合体AIMへの非特異的反応が抑制された。すなわち、HBR−6を添加した系では、添加していない系と比較して非特異反応が約63%減少し、HBR−20を添加した系では、添加していない系と比較して非特異反応が約44%減少し、P0911を添加した系では、添加していない系と比較して非特異反応が約96%減少した。したがって、抗IgM抗体の存在下で、生物学的試料と抗AIM抗体とを反応させることにより、複合体AIM由来の非特異反応を抑制できることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明によれば、複合体AIM及び遊離AIMを含む生物学的試料において、抗AIM抗体の遊離AIMに対する特異性を向上させることができる。
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]
【国際調査報告】