(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2020年8月27日
【発行日】2021年12月2日
(54)【発明の名称】タンパク質含有経口組成物及びタンパク質含有経口組成物の風味改善方法
(51)【国際特許分類】
A23L 5/00 20160101AFI20211105BHJP
A23L 27/00 20160101ALI20211105BHJP
A23C 21/08 20060101ALI20211105BHJP
A23L 33/185 20160101ALN20211105BHJP
A23L 33/19 20160101ALN20211105BHJP
【FI】
A23L5/00 M
A23L27/00 Z
A23C21/08
A23L33/185
A23L33/19
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】24
【出願番号】特願2021-502030(P2021-502030)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2020年2月18日
(31)【優先権主張番号】特願2019-28604(P2019-28604)
(32)【優先日】2019年2月20日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ
(71)【出願人】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長谷部 杏子
(72)【発明者】
【氏名】松井 紀子
【テーマコード(参考)】
4B001
4B018
4B035
4B047
【Fターム(参考)】
4B001AC03
4B001AC05
4B001AC08
4B001AC99
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4B047LG29
4B047LP02
(57)【要約】
本発明は、タンパク質に由来する不快な風味が低減された、タンパク質を含有する経口組成物、及び、タンパク質に由来する不快な風味を低減することができる、タンパク質含有経口組成物の風味を改善する方法を提供することを目的とする。
本発明は、タンパク質及びヒドロキシプロピルセルロースを含有し、タンパク質に対するヒドロキシプロピルセルロースの重量比(ヒドロキシプロピルセルロース/タンパク質)が0.020〜0.50であるタンパク質含有経口組成物等に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンパク質及びヒドロキシプロピルセルロースを含有し、タンパク質に対するヒドロキシプロピルセルロースの重量比(ヒドロキシプロピルセルロース/タンパク質)が0.020〜0.50であるタンパク質含有経口組成物。
【請求項2】
前記タンパク質に対するヒドロキシプロピルセルロースの重量比(ヒドロキシプロピルセルロース/タンパク質)が0.025〜0.20である請求項1に記載のタンパク質含有経口組成物。
【請求項3】
前記タンパク質が、乳由来タンパク質及び/又は大豆由来タンパク質である請求項1又は2に記載のタンパク質含有経口組成物。
【請求項4】
さらに、ケルセチン及び/又はケルセチン配糖体を含有する請求項1〜3のいずれか一項に記載のタンパク質含有経口組成物。
【請求項5】
さらに、ロイシン、イソロイシン及びバリンからなる群より選択される少なくとも1種のアミノ酸を含有する請求項1〜4のいずれか一項に記載のタンパク質含有経口組成物。
【請求項6】
タンパク質を含有する経口組成物にヒドロキシプロピルセルロースを配合することを含む、タンパク質含有経口組成物の風味改善方法。
【請求項7】
タンパク質に対するヒドロキシプロピルセルロースの重量比(ヒドロキシプロピルセルロース/タンパク質)が0.020〜0.50となるように前記ヒドロキシプロピルセルロースを配合する請求項6に記載の風味改善方法。
【請求項8】
前記タンパク質に対するヒドロキシプロピルセルロースの重量比(ヒドロキシプロピルセルロース/タンパク質)が0.025〜0.20となるように前記ヒドロキシプロピルセルロースを配合する請求項6又は7に記載の風味改善方法。
【請求項9】
前記タンパク質が、乳由来タンパク質及び/又は大豆由来タンパク質である請求項6〜8のいずれか一項に記載の風味改善方法。
【請求項10】
前記タンパク質を含有する経口組成物が、さらにケルセチン及び/又はケルセチン配糖体を含有する請求項6〜9のいずれか一項に記載の風味改善方法。
【請求項11】
前記タンパク質を含有する経口組成物が、さらにロイシン、イソロイシン及びバリンからなる群より選択される少なくとも1種のアミノ酸を含有する請求項6〜10のいずれか一項に記載の風味改善方法。
【請求項12】
タンパク質を含有する経口組成物の風味を改善するための、ヒドロキシプロピルセルロースの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンパク質を含有する経口組成物に関する。本発明はまた、タンパク質含有経口組成物の風味改善方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
タンパク質は、健康を維持するために必要な栄養素の一つであり、乳由来タンパク質、大豆由来タンパク質等のタンパク質がタンパク質強化等の目的で飲食品等に使用されている。しかしながら、タンパク質には独特の味や臭いがあり、飲食品に使用した場合にはその風味が損なわれる。
【0003】
タンパク質の不快な風味を改善する方法として、マスキング剤として甘味料や香料を添加することが行われている。特許文献1には、コラーゲン、大豆タンパク、乳タンパク等を含有する飲食品にエチルデカノエートを添加する飲食品の風味改善方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−197857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、タンパク質に由来する不快な風味が低減された、タンパク質を含有する経口組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、タンパク質に由来する不快な風味を低減することができる、タンパク質含有経口組成物の風味を改善する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究したところ、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)を使用すると、タンパク質に由来する不快な風味、特に不快な後口を低減(緩和)することができ、タンパク質を含有する経口組成物の風味を改善することができることを見出した。甘味料等によってタンパク質の不快な風味をマスキングする際には、甘味料等をある程度の量添加する必要があり、甘味等が強くなりすぎて風味が損なわれる場合がある。また特許文献1に記載のエチルデカノエートは香料成分であるが、香料成分をマスキングに使用すると、香料由来の風味が付与される場合がある。ヒドロキシプロピルセルロースを使用すると、甘味や香料由来の風味を付与せずにタンパク質に由来する不快な風味を改善することができる。
【0007】
本発明は、以下に限定されるものではないが、以下のタンパク質含有経口組成物及びタンパク質含有経口組成物の風味改善方法等を包含する。
〔1〕タンパク質及びヒドロキシプロピルセルロースを含有し、タンパク質に対するヒドロキシプロピルセルロースの重量比(ヒドロキシプロピルセルロース/タンパク質)が0.020〜0.50であるタンパク質含有経口組成物。
〔2〕上記タンパク質に対するヒドロキシプロピルセルロースの重量比(ヒドロキシプロピルセルロース/タンパク質)が0.025〜0.20である上記〔1〕に記載のタンパク質含有経口組成物。
〔3〕上記タンパク質が、乳由来タンパク質及び/又は大豆由来タンパク質である上記〔1〕又は〔2〕に記載のタンパク質含有経口組成物。
〔4〕さらに、ケルセチン及び/又はケルセチン配糖体を含有する上記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のタンパク質含有経口組成物。
〔5〕さらに、ロイシン、イソロイシン及びバリンからなる群より選択される少なくとも1種のアミノ酸を含有する上記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載のタンパク質含有経口組成物。
〔6〕タンパク質を含有する経口組成物にヒドロキシプロピルセルロースを配合することを含む、タンパク質含有経口組成物の風味改善方法。
〔7〕タンパク質に対するヒドロキシプロピルセルロースの重量比(ヒドロキシプロピルセルロース/タンパク質)が0.020〜0.50となるように上記ヒドロキシプロピルセルロースを配合する上記〔6〕に記載の風味改善方法。
〔8〕上記タンパク質に対するヒドロキシプロピルセルロースの重量比(ヒドロキシプロピルセルロース/タンパク質)が0.025〜0.20となるように上記ヒドロキシプロピルセルロースを配合する上記〔6〕又は〔7〕に記載の風味改善方法。
〔9〕上記タンパク質が、乳由来タンパク質及び/又は大豆由来タンパク質である上記〔6〕〜〔8〕のいずれかに記載の風味改善方法。
〔10〕上記タンパク質を含有する経口組成物が、さらにケルセチン及び/又はケルセチン配糖体を含有する上記〔6〕〜〔9〕のいずれかに記載の風味改善方法。
〔11〕上記タンパク質を含有する経口組成物が、さらにロイシン、イソロイシン及びバリンからなる群より選択される少なくとも1種のアミノ酸を含有する上記〔6〕〜〔10〕のいずれかに記載の風味改善方法。
〔12〕タンパク質を含有する経口組成物の風味を改善するための、ヒドロキシプロピルセルロースの使用。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、タンパク質に由来する不快な風味が低減された、タンパク質を含有する経口組成物を提供することができる。また、本発明によれば、タンパク質に由来する不快な風味を低減することができる、タンパク質含有経口組成物の風味を改善する方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のタンパク質含有経口組成物(以下、経口組成物ともいう)は、タンパク質及びヒドロキシプロピルセルロースを含有し、タンパク質に対するヒドロキシプロピルセルロースの重量比(ヒドロキシプロピルセルロース/タンパク質)が0.020〜0.50である。本発明の経口組成物は、ヒドロキシプロピルセルロースを上記の割合で含有することにより、タンパク質由来の不快な風味が低減され、風味が改善されている。タンパク質由来の風味が改善されることにより、タンパク質含有経口組成物がより摂取しやすいものとなる。またヒドロキシプロピルセルロースは甘味等を付与しないことから、ヒドロキシプロピルセルロースを使用すると、タンパク質含有経口組成物の風味の自由度を広げることができるという利点もある。
【0010】
本発明で使用されるタンパク質として、乳由来タンパク質、大豆由来タンパク質、卵由来タンパク質、小麦由来タンパク質等が挙げられる。タンパク質は、1種使用してもよく、2種以上を使用してもよい。中でも、タンパク質として、乳由来タンパク質及び/又は大豆由来タンパク質が好ましく、乳由来タンパク質がより好ましい。
【0011】
乳由来タンパク質として、ホエイタンパク質、カゼイン等が挙げられ、好ましくはホエイタンパク質である。本発明におけるタンパク質として、ホエイタンパク質がより好ましい。一態様において、乳由来タンパク質として、牛乳由来タンパク質が好ましい。
【0012】
ホエイタンパク質は、牛乳等の乳からカゼインと乳脂肪分を除いた乳清(ホエイ)に含まれるタンパク質を指す。ホエイタンパク質を含有する経口組成物は、ホエイタンパク質を含む原料を用いて調製することができる。ホエイタンパク質を含む原料として、ホエイタンパク質濃縮物(WPC)(タンパク質含有量が80重量%程度)、ホエイタンパク質分離物(WPI)(タンパク質含有量が90重量%以上)等が挙げられる。
【0013】
大豆由来タンパク質は、大豆に含まれるタンパク質である。大豆由来タンパク質を含む原料として、分離大豆タンパク質、濃縮大豆タンパク質等が挙げられる。
【0014】
タンパク質は、市販品を使用することができる。例えば、ホエイタンパク質を含む原料の市販品の一例として、ラクトクリスタルplus(商品名、日本新薬(株))、Wheyco W80(商品名、日本新薬(株))が挙げられる。大豆由来タンパク質を含む原料の市販品の一例として、プロリーナ800R(商品名、不二製油(株)製)等が挙げられる。
【0015】
タンパク質由来の風味を改善する観点から、経口組成物中のタンパク質に対するヒドロキシプロピルセルロースの重量比(ヒドロキシプロピルセルロース/タンパク質)は、0.025以上が好ましく、0.027以上がより好ましく、また、0.20以下が好ましく、0.16以下がより好ましく、0.10以下がさらに好ましく、0.065以下が特に好ましい。一態様において、経口組成物中のタンパク質に対するヒドロキシプロピルセルロースの重量比(ヒドロキシプロピルセルロース/タンパク質)は、好ましくは0.025〜0.20、より好ましくは0.027〜0.16、さらに好ましくは0.027〜0.10、特に好ましくは0.027〜0.065である。
【0016】
本発明の経口組成物中のタンパク質の含有量は、10重量%以上が好ましく、36重量%以上が好ましく、40重量%以上がより好ましく、50重量%以上がさらに好ましく、60重量%以上が特に好ましく、また、80重量%以下が好ましく、75重量%以下がより好ましい。一態様において、経口組成物中のタンパク質の含有量は、10〜80重量%が好ましく、36〜80重量%が好ましく、36〜75重量%であることがより好ましく、40〜75重量%がさらに好ましく、50〜75重量%がさらにより好ましく、60〜75重量%が特に好ましい。タンパク質含有量は、2種以上のタンパク質を含有する場合は、これらの合計である。一態様においては、経口組成物の固形分中のタンパク質の含有量が、10〜80重量%であることが好ましく、36〜80重量%であることが好ましく、36〜75重量%がより好ましく、40〜75重量%がさらに好ましく、50〜75重量%がさらにより好ましく、60〜75重量%が特に好ましい。タンパク質の含有量が上記範囲にある経口組成物がヒドロキシプロピルセルロースを上記の割合で含有することにより、タンパク質由来の風味を特に改善することができる。経口組成物中のタンパク質の含有量は、例えば、燃焼法で測定することができる。
【0017】
ヒドロキシプロピルセルロースは、セルロースの水酸基に酸化プロピレンを反応させて得られるセルロース誘導体である。ヒドロキシプロピルセルロースは、食品添加物として広く利用されている。本発明で使用されるヒドロキシプロピルセルロースは、水溶性である。ヒドロキシプロピルセルロースは、重量平均分子量が20000〜150000であることが好ましく、30000〜140000であることがより好ましく、35000〜100000であることがさらに好ましい。ヒドロキシプロピルセルロースは、低分子量のものほど末端水酸基が多く、親水性が高くなる。ヒドロキシプロピルセルロースの重量平均分子量が上記範囲であると、例えば経口組成物の水への分散性が良好になる。ヒドロキシプロピルセルロースの分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー法(GPC法)で容易に測定することができる。
ヒドロキシプロピルセルロースは、市販品を使用することができ、食品添加物として市販されているものを好ましく使用することができる。食品添加物として市販されているヒドロキシプロピルセルロースとしては、例えば日本曹達株式会社のセルニーSSL(商品名、分子量40000)、セルニーSL(商品名、分子量100000)、セルニーL(商品名、分子量140000)等が挙げられる。本発明においては、セルニーSSLが好ましい。
【0018】
本発明の経口組成物中のヒドロキシプロピルセルロースの含有量は、0.1重量%以上が好ましく、1重量%以上がより好ましく、2重量%以上がさらに好ましく、また、14重量%以下が好ましく、13重量%以下がより好ましく、10重量%以下がさらに好ましく、5重量%以下が特に好ましい。一態様において、経口組成物中のヒドロキシプロピルセルロースの含有量は、0.1〜14重量%が好ましく、1〜13重量%がより好ましく、1〜10重量%がさらに好ましく、1〜5重量%がさらにより好ましく、2〜5重量%が特に好ましい。一態様においては、経口組成物の固形分中のヒドロキシプロピルセルロースの含有量が、0.1〜14重量%であることが好ましく、1〜13重量%がより好ましく、1〜10重量%がさらに好ましく、1〜5重量%がさらにより好ましく、2〜5重量%が特に好ましい。
【0019】
本発明のタンパク質含有経口組成物は、上記タンパク質及びヒドロキシプロピルセルロース以外の成分を含んでいてもよい。
一態様において、本発明のタンパク質含有経口組成物は、ケルセチン及び/又はケルセチン配糖体を含有してもよい。ケルセチンは、ポリフェノールの一種であるフラボノールに属する化合物であるケルセチンを意味する。ケルセチン配糖体として、例えば、ルチン、酵素処理ルチン、クエルシトリン、イソクエルシトリンが挙げられる。本発明において、ケルセチン配糖体として、酵素処理ルチンを使用することが好ましい。酵素処理ルチンは、酵素処理イソクエルシトリン又は糖転移ルチンと称されることもある。ケルセチン及び/又はケルセチン配糖体は、1種のみ用いてもよく、2種以上の化合物を用いてもよい。ケルセチン及びその配糖体は市販されており、市販品を使用することができる。例えばケルセチン配糖体の一例である酵素処理ルチンの市販品として、サンエミックP30(商品名、三栄源エフ・エフ・アイ(株)製)等が挙げられる。
【0020】
ケルセチン及びケルセチン配糖体は、独特の渋味を有する。ヒドロキシプロピルセルロースは、ケルセチン及びケルセチン配糖体の渋味の低減にも有効である。本発明のタンパク質含有経口組成物がケルセチン及び/又はケルセチン配糖体を含有する場合は、タンパク質由来の不快な風味に加えて、ケルセチン及び/又はケルセチン配糖体の渋味、例えば後口の渋味を低減して風味を改善することができる。
【0021】
本発明の経口組成物がケルセチン及び/又はケルセチン配糖体を含有する場合、組成物中のタンパク質に対するケルセチン及びケルセチン配糖体の総含有量の重量比((ケルセチン及びケルセチン配糖体)/タンパク質)は、0.001以上であってよく、0.005以上であってよく、また、0.10が好ましく、0.05以下がより好ましく、0.02以下がさらに好ましい。一態様において、経口組成物中のタンパク質に対するケルセチン及びケルセチン配糖体の総含有量の重量比((ケルセチン及びケルセチン配糖体)/タンパク質)は、0.001〜0.10が好ましく、0.005〜0.05がより好ましく、0.005〜0.02がさらに好ましい。組成物中のタンパク質含有量に対するケルセチン及びケルセチン配糖体の総含有量の重量比が上記範囲であると、タンパク質由来の不快な風味に加えて、ケルセチン及び/又はケルセチン配糖体の渋味をより低減することができる。
本発明の経口組成物がケルセチン及び/又はケルセチン配糖体を含有する場合、その渋味をより低減する観点から、ケルセチン及びケルセチン配糖体の総含有量は、経口組成物中に0.1〜2重量%であることが好ましく、0.1〜1重量%がより好ましい。一態様において、本発明の経口組成物は、ケルセチン配糖体を含有することが好ましく、上記量のケルセチン配糖体を含有することが好ましい。一態様においては、経口組成物の固形分中のケルセチン及びケルセチン配糖体の総含有量が0.1〜2重量%であることが好ましく、0.1〜1重量%がより好ましい。
【0022】
一態様において、本発明のタンパク質含有経口組成物は、遊離のアミノ酸、例えば、ロイシン、イソロイシン及びバリンからなる群より選択される少なくとも1種のアミノ酸を含有していてもよい。中でも、ロイシンを含有することが好ましい。ロイシン、イソロイシン及びバリンは、L体又はD体であってよいが、好ましくはL体である。分岐アミノ酸であるロイシン、イソロイシン、バリンには、特有の苦味がある。ヒドロキシプロピルセルロースは、ロイシン等の分岐アミノ酸の苦味の低減にも有効である。本発明のタンパク質含有経口組成物がロイシン、イソロイシン及びバリンからなる群より選択される少なくとも1種のアミノ酸を含有する場合、タンパク質由来の不快な風味に加えて、ロイシン等のアミノ酸の苦味、例えば後味の苦味を低減して風味を改善することができる。
【0023】
本発明の経口組成物がロイシン、イソロイシン及びバリンからなる群より選択される少なくとも1種のアミノ酸を含有する場合、組成物中のタンパク質に対するロイシン、イソロイシン及びバリンの総含有量の重量比((ロイシン、イソロイシン及びバリン)/タンパク質)は、0.01以上であってよく、また、0.15以下が好ましく、0.05以下がより好ましく、0.03以下がさらに好ましい。一態様において、タンパク質に対するロイシン、イソロイシン及びバリンの総含有量の重量比((ロイシン、イソロイシン及びバリン)/タンパク質)は、0.01〜0.15が好ましく、0.01〜0.05がより好ましく、0.01〜0.03がさらに好ましい。また、経口組成物の一態様において、タンパク質に対するロイシンの重量比(ロイシン/タンパク質)は、0.01〜0.15が好ましく、0.01〜0.05がより好ましく、0.01〜0.03がさらに好ましい。タンパク質含有量に対するロイシンなどのアミノ酸の含有量の重量比が上記範囲であると、タンパク質由来の不快な風味に加えて、アミノ酸の苦味をより低減することができる。
本発明の経口組成物が上記アミノ酸を含有する場合、その苦味をより低減する観点から、ロイシン、イソロイシン及びバリンの総含有量は、経口組成物中に5重量%以下が好ましく、0.5〜3重量%であることがより好ましい。また、経口組成物の一態様において、ロイシンの含有量は、5重量%以下が好ましく、0.5〜3重量%であることがより好ましく、0.5〜1重量%がさらに好ましい。一態様においては、経口組成物の固形分中のロイシン、イソロイシン及びバリンの総含有量が、5重量%以下が好ましく、0.5〜3重量%であることがより好ましい。一態様においては、経口組成物の固形分中のロイシンの含有量が、5重量%以下が好ましく、0.5〜3重量%であることがより好ましく、0.5〜1重量%がさらに好ましい。
【0024】
本発明の一態様において、経口組成物は、ケルセチン、ケルセチン配糖体、ロイシン、イソロイシン及びバリンからなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよく、ケルセチン、ケルセチン配糖体及びロイシンからなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0025】
本発明の経口組成物には、上記以外にも、ミネラル(カルシウム等)、ビタミン類(ビタミンD、ビタミンC等)等を含有させてもよい。
本発明の経口組成物には、上記以外に、飲食品又は医薬品に使用される添加剤を含有させてもよい。このような添加剤として、賦形剤(デキストリン、デンプン等)、増粘剤(キサンタンガム、グアーガム等)、乳化剤(グリセリン脂肪酸エステル等)、甘味料(スクラロース、アセスルファムカリウム、アスパルテーム、ステビア等)、香料等が挙げられる。
【0026】
本発明の経口組成物は、飲食品等に用いることができる。一態様において、本発明の組成物をそのまま飲食品として摂取することができる。また、本発明の経口組成物を配合して飲食品を調製することもできる。本発明の経口組成物が使用される飲食品は特に限定されない。本発明の経口組成物の形態は、好ましくは固体(粉末、顆粒等を含む)である。本発明の経口組成物は、例えば、粉末、顆粒、錠剤、グミ状食品等の形態であってよい。
本発明の一態様において、タンパク質含有経口組成物は、固体飲料(固体飲料組成物)として好適に使用され得る。固体飲料は、水、牛乳等の飲用溶媒と混合して飲料とする固体の組成物である。固体飲料は、粉末、顆粒、錠剤等の任意の形態とすることができる。一態様において、本発明の経口組成物は、粉末飲料、顆粒飲料等の固体飲料であることが好ましい。タンパク質を含有する固体飲料がヒドロキシプロピルセルロースを上記割合で含有すると、該固体飲料を水等と混合して飲料とした場合に、タンパク質に由来する不快な風味を改善することができる。一態様において、固体飲料は、例えば、タンパク質濃度が6重量%以下(例えば0.3〜6重量%)となるように水等の飲用溶媒に混合して飲用に供されるものであってよい。
【0027】
本発明の経口組成物の製造方法は特に限定されず、例えば、タンパク質を含有する組成物にヒドロキシプロピルセルロースを配合することにより製造することができる。タンパク質に対するヒドロキシプロピルセルロースの重量比(ヒドロキシプロピルセルロース/タンパク質)が0.020〜0.50となるように、タンパク質を含有する組成物にヒドロキシプロピルセルロースを配合することを含む、タンパク質含有経口組成物の製造方法も本発明に包含される。経口組成物に上記のケルセチン及び/又はケルセチン配糖体、遊離のアミノ酸等の成分を配合する場合等に、各成分を配合する順番等は特に限定されない。経口組成物の製造において、タンパク質に対するヒドロキシプロピルセルロースの重量比、タンパク質及びヒドロキシプロピルセルロースの含有量等が上述した好ましい範囲となるように、各成分を配合することが好ましい。タンパク質を含有する組成物にヒドロキシプロピルセルロースを配合する方法は特に限定されず、タンパク質を含有する組成物が、最終的にヒドロキシプロピルセルロースを含むものとなればよく、組成物の形態等に応じて適宜選択することができる。例えば、顆粒の形態であれば、タンパク質を含有する粉末原料及びヒドロキシプロピルセルロース並びに任意で賦形剤等を使用して造粒等の方法で製造すればよい。錠剤の形態であれば、タンパク質にヒドロキシプロピルセルロース、任意で賦形剤等を加えた粉末や、上記の顆粒を用いて圧縮成形等を行って製造すればよい。
【0028】
本発明は、タンパク質を含有する経口組成物にヒドロキシプロピルセルロースを配合することを含む、タンパク質含有経口組成物の風味改善方法も包含する。
タンパク質を含有する経口組成物にヒドロキシプロピルセルロースを配合することにより、タンパク質由来の不快な風味を低減することができ、該組成物の風味を改善することができる。風味の改善は、後口の改善であってよい。ヒドロキシプロピルセルロースは、タンパク質由来の不快な後口の改善に有用である。
【0029】
上記タンパク質及びその好ましい態様は、上述した本発明の経口組成物に使用されるタンパク質及びその好ましい態様と同じである。タンパク質として、乳由来タンパク質及び/又は大豆由来タンパク質が好ましく、乳由来タンパク質がより好ましく、ホエイタンパク質がさらに好ましい。ヒドロキシプロピルセルロース及びその好ましい態様は、上述した本発明の経口組成物に使用されるヒドロキシプロピルセルロース及びその好ましい態様と同じである。
本発明の一態様として、ホエイタンパク質を含有する経口組成物にヒドロキシプロピルセルロースを配合することにより、ホエイタンパク質由来の風味、例えば収斂味等を低減して風味を改善することができる。また、一態様において、大豆由来タンパク質を含有する経口組成物にヒドロキシプロピルセルロースを含有させることにより、大豆由来タンパク質由来の風味、例えば大豆油臭及び苦味等を低減して風味を改善することができる。
【0030】
タンパク質に対するヒドロキシプロピルセルロースの使用量の好ましい比率は、上述した本発明のタンパク質含有経口組成物における比率と同じである。タンパク質に対するヒドロキシプロピルセルロースの重量比(ヒドロキシプロピルセルロース/タンパク質)は、好ましくは0.020以上、より好ましくは0.025以上、さらに好ましくは0.027以上であり、また、好ましくは0.50以下、より好ましくは0.20以下、さらに好ましくは0.16以下、さらにより好ましくは0.10以下、特に好ましくは0.065以下である。タンパク質含有経口組成物において、タンパク質に対するヒドロキシプロピルセルロースの重量比が上記範囲となるように、ヒドロキシプロピルセルロースを使用することが好ましい。一態様において、タンパク質に対するヒドロキシプロピルセルロースの重量比(ヒドロキシプロピルセルロース/タンパク質)が、好ましくは0.020〜0.50、より好ましくは0.025〜0.20、さらに好ましくは0.027〜0.16、さらにより好ましくは0.027〜0.10、特に好ましくは0.027〜0.065となるように、タンパク質含有経口組成物にヒドロキシプロピルセルロースを配合することができる。タンパク質に対するヒドロキシプロピルセルロースの重量比(ヒドロキシプロピルセルロース/タンパク質)が上記範囲であると、タンパク質由来の不快な風味を低減することができる。
【0031】
上記タンパク質含有経口組成物のタンパク質含有量は特に限定されず、例えば、4重量%以上であってよく、5重量%以上が好ましく、10重量%以上が好ましく、30重量%以上がより好ましく、36重量%以上がさらに好ましく、40重量%以上さらにより好ましく、50重量%以上が特に好ましく、60重量%以上が最も好ましく、また、80重量%以下が好ましく、75重量%以下がより好ましい。一態様において、本発明の効果をより充分に発揮できる観点から、タンパク質含有経口組成物は、タンパク質の含有量が10〜80重量%であることが好ましく、36〜80重量%であることが好ましく、36〜75重量%であることがより好ましく、40〜75重量%がさらに好ましく、50〜75重量%がさらにより好ましく、60〜75重量%が特に好ましい。一態様においては、タンパク質含有経口組成物は、固形分中のタンパク質の含有量が、10〜80重量%であることが好ましく、36〜80重量%であることが好ましく、36〜75重量%がより好ましく、40〜75重量%がさらに好ましく、50〜75重量%がさらにより好ましく、60〜75重量%が特に好ましい。一態様において、本発明の風味改善方法は、上記量のタンパク質を含有するタンパク質含有経口組成物の風味を改善するために好ましく使用することができる。一態様において、ヒドロキシプロピルセルロースを配合した、ヒドロキシプロピルセルロースを含有するタンパク質含有経口組成物のタンパク質含有量が上記の範囲であることが好ましい。
【0032】
本発明の風味改善方法においては、ヒドロキシプロピルセルロースの含有量が、タンパク質含有経口組成物中に好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは1重量%以上、さらに好ましくは2重量%以上、また、好ましくは14重量%以下、より好ましくは13重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下、特に好ましくは5重量%以下となるようにヒドロキシプロピルセルロースを配合することが好ましい。タンパク質由来の風味を改善する観点から、ヒドロキシプロピルセルロースを上記量配合することが好ましい。一態様において、ヒドロキシプロピルセルロースの含有量が、タンパク質含有経口組成物中に好ましくは0.1〜14重量%、より好ましくは1〜13重量%、さらに好ましくは1〜10重量%、さらにより好ましくは1〜5重量、特に好ましくは2〜5重量%となるようにヒドロキシプロピルセルロースを配合することが好ましい。一態様においては、タンパク質含有経口組成物の固形分中のヒドロキシプロピルセルロースの含有量が、好ましくは0.1〜14重量%、より好ましくは1〜13重量%、さらに好ましくは1〜10重量%、さらにより好ましくは1〜5重量、特に好ましくは2〜5重量%となるようにヒドロキシプロピルセルロースを配合する。
【0033】
本発明の風味改善方法において、タンパク質を含有する経口組成物は、ケルセチン及び/又はケルセチン配糖体を含有してもよい。タンパク質含有経口組成物がケルセチン及び/又はケルセチン配糖体を含有する場合、タンパク質に由来する不快な風味に加えて、ケルセチン及び/又はケルセチン配糖体の渋味も低減することができる。タンパク質を含有する経口組成物は、ロイシン、イソロイシン及びバリンからなる群より選択される少なくとも1種のアミノ酸、好ましくはロイシンを含有するものであってもよい。タンパク質含有経口組成物が上記のアミノ酸を含有する場合、タンパク質に由来する不快な風味に加えて、該アミノ酸の苦味も低減することができる。ケルセチン及びケルセチン配糖体並びにその含有量の好ましい態様、上記のアミノ酸及びその含有量の好ましい態様は、上述した経口組成物の場合と同じである。タンパク質に対するケルセチン及び/又はケルセチン配糖体の重量比の好ましい範囲、タンパク質に対するアミノ酸の重量比の好ましい範囲等も、上述した経口組成物の場合と同じである。
【0034】
本発明の風味改善方法におけるタンパク質含有組成物の好ましい態様等は、上述した本発明の経口組成物と同じである。一態様において、タンパク質含有組成物は、好ましくは固体であり、固体飲料であってよい。一態様において、本発明の風味改善方法は、タンパク質を含有する固体飲料にヒドロキシプロピルセルロースを配合することを含む、タンパク質含有固体飲料の風味改善方法であることが好ましい。
タンパク質を含有する経口組成物にヒドロキシプロピルセルロースを配合する方法は、タンパク質を含有する組成物が、最終的にヒドロキシプロピルセルロースを含むものとなればよく、特に限定されない。
【0035】
ヒドロキシプロピルセルロースは、タンパク質に由来する不快な味や臭いの低減に有用である。本発明は、タンパク質を含有する経口組成物の風味を改善するための、ヒドロキシプロピルセルロースの使用も包含する。タンパク質及びヒドロキシプロピルセルロース並びにこれらの好ましい態様等は上述した本発明の経口組成物の場合と同じである。風味の改善は、タンパク質の後口の改善であってよい。
【実施例】
【0036】
以下、本発明をより具体的に説明する実施例を示す。なお、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0037】
実施例及び比較例で使用した原料を以下に示す。
ホエイタンパク質粉末:日本新薬(株)製、ラクトクリスタルplus(商品名)、タンパク質91重量%含有
ヒドロキシプロピルセルロース(HPC):日本曹達(株)製、セルニーSSL(商品名)、分子量(重量)40000
デキストリン:三和澱粉工業(株)製、サンデック#150(商品名)
ケルセチン配糖体含有製剤:三栄源エフ・エフ・アイ(株)製、サンエミックP30(商品名)、ケルセチン配糖体30重量%含有
ロイシン:プロテインケミカル(株)製、L−ロイシンパウダー(商品名)
大豆タンパク質粉末:不二製油(株)製、プロリーナ800R(商品名)、タンパク質90重量%含有
【0038】
<実施例1〜6>
タンパク質含有経口組成物の不快な風味の改善効果を評価する目的で、表1に示す配合で実施例1〜6のタンパク質含有組成物を調製した。具体的には、表1に示す割合でホエイタンパク質粉末、HPC及びデキストリンを混合し、タンパク質含有組成物を得た。
【0039】
<比較例1〜5>
実施例1と同様の方法により、表1に示す配合で比較例1〜5のタンパク質含有組成物を調製した。
【0040】
<実施例7〜12>
実施例1と同様の方法により、表2に示す配合で実施例7〜12のタンパク質含有組成物を調製した。
【0041】
<タンパク質含有組成物溶液の調製>
タンパク質含有組成物5.8gを、200mLビーカー中の常温水80mLに加え、人手により薬さじで攪拌し完全に溶解させた後、溶液の風味を下記方法で官能にて評価した。
【0042】
<風味の評価>
専門のパネラー2名が、タンパク質含有組成物溶液(常温)の風味を、不快な風味(具体的には後口に残る収斂味)の観点で、下記の基準(1〜5点)で官能評価した。評価点の平均を表1及び2に示す(風味(評価点))。また、評価点の平均が1〜3.9点を○、4〜4.9点を△、5点を×として示した。
風味の評価基準
5:強い収斂味を感じる
4:収斂味を感じる
3:弱い収斂味を感じる
2:収斂味をほとんど感じない
1:収斂味をまったく感じない
【0043】
タンパク質含有組成物の配合及び評価結果を、表1及び2に示す。表中の「組成物中のタンパク質含有量(重量%)」は、タンパク質含有組成物のタンパク質含有量である。表中の「HPC/タンパク質」は、タンパク質含有組成物中のタンパク質に対するHPCの重量比である。
【0044】
【表1】
【0045】
【表2】
【0046】
比較例5のタンパク質含有組成物溶液は、タンパク質由来の後口の収斂味が非常に強く感じられた。HPCを加えた実施例のタンパク質含有組成物溶液では、タンパク質由来の後口の収斂味が低減(抑制)された。実施例5〜12のタンパク質含有組成物溶液においても、その風味改善効果は認められた。実施例10〜12では、比較例5と比較してタンパク質由来の後口の収斂味は低減されたが、実施例6〜9の方がタンパク質由来の後口の収斂味が低減されていた。
【0047】
<実施例13〜16>
表3に示す配合で、ホエイタンパク質粉末、HPC、デキストリン及びケルセチン配糖体を混合して実施例13〜16のタンパク質含有組成物を調製した。
実施例13〜16のタンパク質含有組成物中のケルセチン配糖体含有量は0.5重量%であった。タンパク質含有組成物中のタンパク質に対するケルセチン配糖体の重量比(ケルセチン配糖体/タンパク質)は、実施例13が0.044、実施例14が0.037、実施例15が0.014、実施例16が0.008であった。
【0048】
<比較例6〜9>
実施例13と同様の方法により、表3に示す配合で比較例6〜9のタンパク質含有組成物を調製した。
【0049】
実施例13〜16及び比較例6〜9で得られたタンパク質含有組成物を実施例1と同じ方法で水に溶解し、タンパク質含有組成物溶液の風味を常温にて下記の方法で評価した。
<風味の評価>
専門のパネラー2名が、タンパク質含有組成物溶液(常温)の風味を、不快な風味(具体的には後口に残る収斂味及び渋味)の観点で、下記の基準(1〜5点)で官能評価した。
評価点の平均を表3に示す(風味(評価点))。また、評価点の平均が1〜3.9点を○、4〜4.9点を△、5点を×として示した。
風味の評価基準
5:強い収斂味及び渋味を感じる
4:収斂味及び渋味を感じる
3:弱い収斂味及び渋味を感じる
2:収斂味及び渋味をほとんど感じない
1:収斂味及び渋味をまったく感じない
【0050】
【表3】
【0051】
ケルセチン配糖体は、特徴的な渋味が後口にある。比較例7〜9では、後口にタンパク質由来の収斂味に加えて、ケルセチン配糖体由来の渋味が感じられた。HPCを加えた実施例13〜16のタンパク質含有組成物溶液では、タンパク質由来の後口の収斂味と、ケルセチン配糖体由来の後口の渋味がどちらも低減され、HPCを添加しない場合と比較してまろやかな味わいとなった。実施例15〜16のタンパク質含有組成物溶液においても、その効果は認められた。
【0052】
<実施例17〜20>
表4に示す配合で、ホエイタンパク質粉末、HPC、デキストリン及びロイシンを混合して実施例17〜20のタンパク質含有組成物を調製した。
タンパク質含有組成物中のタンパク質に対するロイシンの重量比(ロイシン/タンパク質)は、実施例17が0.025、実施例18が0.124、実施例19が0.012、実施例20が0.062であった。
【0053】
<比較例10〜13>
実施例17と同様の方法により、表4に示す配合で比較例10〜13のタンパク質含有組成物を調製した。
【0054】
実施例17〜20及び比較例10〜13で得られたタンパク質含有組成物を実施例1と同じ方法で水に溶解し、タンパク質含有組成物溶液の風味を下記の方法で常温にて評価した。
<風味の評価>
専門のパネラー2名が、タンパク質含有組成物溶液(常温)の風味を、不快な風味(具体的には後口に残る収斂味及び苦味)の観点で、下記の基準(1〜5点)で官能評価した。
評価点の平均を表4に示す(風味(評価点))。また、評価点の平均が1〜3.9点を○、4〜4.9点を△、5点を×として示した。
風味の評価基準
5:強い収斂味及び苦味を感じる
4:収斂味及び苦味を感じる
3:弱い収斂味及び苦味を感じる
2:収斂味及び苦味をほとんど感じない
1:収斂味及び苦味をまったく感じない
【0055】
【表4】
【0056】
ロイシンは、特徴的な苦味が後口にある。比較例10〜13のタンパク質含有組成物溶液では、後口にタンパク質由来の収斂味に加えて、ロイシン由来の鋭い苦味が感じられた。
HPCを加えた実施例17〜20のタンパク質含有組成物溶液では、タンパク質由来の後口の収斂味と、ロイシン由来の苦味がどちらも低減された。
【0057】
<実施例21〜22>
タンパク質として、ホエイタンパク質とは種類が異なる大豆タンパク質を使用した。表5に示す配合で、大豆タンパク質粉末、HPC、デキストリン及びケルセチン配糖体を混合して、実施例21〜22のタンパク質含有組成物を調製した。実施例22のタンパク質含有組成物中のケルセチン配糖体含有量は0.5重量%であった。タンパク質含有組成物中のタンパク質に対するケルセチン配糖体の重量比(ケルセチン配糖体/タンパク質)は、実施例22では0.008であった。
【0058】
<比較例14〜15>
実施例21と同様の方法により、表5に示す配合で比較例14〜15のタンパク質含有組成物を調製した。
【0059】
実施例21〜22及び比較例14〜15で得られたタンパク質含有組成物を実施例1と同じ方法で水に溶解し、溶液の風味を常温にて下記の方法で評価した。
<風味の評価>
専門のパネラー2名が、タンパク質含有組成物溶液(常温)の風味を、不快な風味(具体的には後口に残る大豆油臭及び苦味)の観点で、下記の基準(1〜5点)で官能評価した。結果は評価点の平均が1〜3.9点を○、4〜4.9点を△、5点を×として示した。
風味の評価基準
5:強い大豆油臭及び苦味を感じる
4:大豆油臭及び苦味を感じる
3:弱い大豆油臭及び苦味を感じる
2:大豆油臭及び苦味をほとんど感じない
1:大豆油臭及び苦味をまったく感じない
【0060】
実施例21と比較例14とを比較すると、実施例21では後口の油っぽさやもったりした感じ及び苦味が低減され、すっきりとした味わいに感じられた。またケルセチン配糖体を加えた実施例22と比較例15とを比較すると、実施例22でも同様の効果が感じられ、後口がすっきり軽く感じられた。
【0061】
【表5】
【0062】
以上の結果より、HPCを配合することにより、タンパク質の不快な後口を効果的に低減することができた。タンパク質の不快な風味が、HPCを配合することにより低減されることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、飲食品分野等において有用である。
【国際調査報告】