(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、未来社会創造事業、探索加速型(探索研究)、「革新的な知や製品を創出する共通基盤システム・装置の実現」、「機能性ペプチドの超高効率フロー合成手法開発」、「マイクロフローペプチド合成法の開発とマイクロフローアミド化の解析」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
カルボン酸又はカルボン酸活性種、及び有機溶媒を含む、第1の組成物と、少なくとも1つのカルボキシル基を有するアミン、及び水を含む第2の組成物と、を混合することにより、前記カルボン酸又は前記カルボン酸活性種と前記アミンと反応させてアミドを得ることを含む、アミドの製造方法。
前記第1の組成物が前記カルボン酸活性種を含み、前記カルボン酸活性種が、混合酸無水物、混合炭酸無水物、酸アジド、酸ハロゲン化物、ベンゾトリアゾールアミド、ペンタフルオロフェノールエステル、パラニトロフェノールエステル、及びスクシンイミドエステルからなる群から選択されるいずれか一種以上である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のアミドの製造方法。
前記混合酸無水物が、クロロギ酸イソプロピル、クロロギ酸イソブチル、クロロギ酸エチル、クロロギ酸2,4−ジメチル−3−ペンチル、ブロモギ酸イソプロピル、ブロモギ酸イソブチル、ブロモギ酸エチル、及びブロモギ酸2,4−ジメチル−3−ペンチルからなる群から選択されるいずれか一種以上により合成される、請求項5に記載のアミドの製造方法。
前記ハロゲン化ギ酸エステルを活性化する第2の塩基が、第三級アミン、4−メチルモルホリン、ピリジン、ピリジン誘導体、イミダゾール、イミダゾール誘導体及び1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタンからなる群から選択されるいずれか一種以上である、請求項7に記載のアミドの製造方法。
前記第1の組成物が、前記第一のカルボン酸、前記第二のカルボン酸、及びホスゲン又は反応系内で分解してホスゲンを生成するホスゲン等価体を混合して、前記カルボン酸同士を脱水縮合させた生成物、並びに前記有機溶媒を含む、請求項10に記載のアミドの製造方法。
前記アミンが、側鎖の官能基が保護されていてもよく、アミノ基及びカルボキシル基が保護修飾されていない無保護アミノ酸である、請求項1〜13のいずれか一項に記載のアミドの製造方法。
前記アミノ酸又はアミノ酸誘導体が、タンパク質を構成し遺伝情報としてコードされている20種類のアミノ酸又はその誘導体である、請求項12〜14のいずれか一項に記載のアミドの製造方法。
前記流通系反応装置における、前記第1の組成物の送液速度が2mL/min以上であり、前記第2の組成物の送液速度が2mL/min以上である、請求項16に記載のアミドの製造方法。
前記第2の組成物において、溶媒に該当する成分100体積%に対する、水の含有量の割合が、10〜100体積%である、請求項1〜18のいずれか一項に記載のアミドの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明のアミドの製造方法の実施形態を説明する。
【0013】
≪アミドの製造方法≫
実施形態のアミドの製造方法は、
カルボン酸又はカルボン酸活性種、及び有機溶媒を含む、第1の組成物と、
少なくとも1つのカルボキシル基を有するアミン、及び水を含む第2の組成物と、
を混合することにより、前記カルボン酸又は前記カルボン酸活性種と前記アミンと反応させてアミドを得ることを含む、方法である。
【0014】
上記の実施形態のアミドの製造方法は、前記混合の前に、カルボン酸を活性化させ、前記カルボン酸活性種を得ることを含んでいてもよい。
【0015】
また、実施形態のアミドの製造方法は、
第一のカルボン酸及び第二のカルボン酸を混合して得られた混合物を反応させた生成物、又は、カルボン酸及び活性化剤を混合して得られた混合物を反応させた生成物、並びに有機溶媒を含む、第1の組成物と、
少なくとも1つのカルボキシル基を有するアミン、及び水を含む第2の組成物と、
を混合することにより、前記生成物と前記アミンとを反応させてアミドを得ることを含む、方法であってよい。
【0016】
上記の実施形態のアミドの製造方法は、前記混合の前に、第一のカルボン酸及び第二のカルボン酸を混合して得られた混合物を反応させること、又は、カルボン酸及び活性化剤を混合して得られた混合物を反応させることを含んでいてもよい。
【0017】
なお、ここでいう混合とは、反応系に原料等の物質を添加する動作を指すものであり、反応系内でこれらが混合されたときには、原料等が添加前とは別の物質に変化していてもよい。
【0018】
第一のカルボン酸及び第二のカルボン酸を混合して得られた混合物、又は、カルボン酸及び活性化剤を混合して得られた混合物は、予め前記有機溶媒を含んでいてもよい。
【0019】
<第1実施形態>
本実施形態のアミドの製造方法は、以下の工程1−1〜2−1を含む。
なお、以下、工程1−1や、後述の工程1−2、工程1−2−1を「工程1」と省略することがある。)また、以下、工程2−1や、後述の工程2−2、工程2−2−1を「工程2」と省略することがある。
本実施形態のアミドの製造方法は、前記生成物として、カルボン酸活性種である酸無水物を用いる方法である。
【0020】
工程1−1:カルボン酸同士を脱水縮合させ、酸無水物及び有機溶媒を含む第1の組成物を得る工程。
工程2−1:前記工程1−1で得られた第1の組成物と、少なくとも1つのカルボキシル基を有するアミン、及び水を含む第2の組成物とを混合することにより、前記酸無水物と前記アミンと反応させてアミドを製造する工程。
【0021】
以下、上記の各工程について説明する。なお、本発明に係るアミドの製造方法の反応は、下記の各工程に例示される反応に限定されるものではない。
【0022】
<工程1−1>
工程1−1は、カルボン酸同士を脱水縮合させ、酸無水物及び有機溶媒を含む第1の組成物を得る工程である。
【0023】
第1の組成物は、カルボン酸、及びホスゲン又は反応系内で分解してホスゲンを生成するホスゲン等価体を混合して得られた混合物を反応させた生成物、並びに有機溶媒を含むものであってよい。
【0024】
前記カルボン酸同士は、ホスゲン、又は反応系内で分解してホスゲンを生成するホスゲン等価体を反応させて、前記カルボン酸同士を脱水縮合させ、酸無水物を得ることができる。
【0025】
カルボン酸は、分子の末端にカルボキシル基を有するものであればよく、下記一般式(1)で表すことができる。
【0026】
【化1】
(式中、R
1は水素原子又は一価の有機基である。)
【0027】
カルボン酸は、脱プロトン化されてカルボキシラートイオンとなってもよく、下記一般式(1i)で表すことができる。
【0028】
【化2】
(式中、R
1は水素原子又は一価の有機基である。)
【0029】
カルボン酸の脱プロトン化は、例えば、反応系内のN,N−ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)等の求核性の低い塩基の存在下に、カルボン酸を置くことで達成できる。
塩基の存在下とは、例えば、塩基を添加した溶媒中のことを意味し、第1の組成物は、前記第一のカルボン酸、前記第二のカルボン酸、DIEA等の求核性の低い塩基、及びホスゲン又は反応系内で分解してホスゲンを生成するホスゲン等価体を混合して得られた混合物を反応させた生成物、並びに有機溶媒を含むものであってよい。当該混合物は、予め前記有機溶媒を含んでいてもよい。当該塩基の種類は、反応系内でカルボン酸の脱プロトン化を可能とするものであれば、特に限定されない。
【0030】
実施形態に係るアミドの製造方法の工程1−1は、下記一般式(1)で表されるカルボン酸及び下記一般式(1)’で表されるカルボン酸同士を脱水縮合させて、下記一般式(2)で表される酸無水物を得るものである。前記酸無水物は、例えば、カルボン酸にホスゲン又は反応系内で分解してホスゲンを生成するホスゲン等価体を反応させて得ることができる。
【0031】
【化3】
(式中、R
1及びR
2は、それぞれ独立に水素原子又は一価の有機基である。)
【0032】
ホスゲン等価体は、反応系内で分解してホスゲンを生成するものであり、合成反応上、ホスゲンと実質的に同等なものとして使用できる。ホスゲン等価体としては、ジホスゲン、トリホスゲン等が挙げられる。
【0033】
前記脱水縮合は、異なる種類のカルボン酸同士を脱水縮合させてもよく、同じ種類のカルボン酸同士を脱水縮合させてもよい。即ち、前記式(1)及び(1)’におけるR
1とR
2とは同一でもよく、互いに異なっていてもよい。
【0034】
R
1とR
2とが同一である場合は、一般式(2)で表される酸無水物は、対称酸無水物である。R
1とR
2とが同一である場合は、後述の工程2−1で生成するアミドのカウンターアニオンが活性化前のカルボキシラートイオンと同一となる。カウンターアニオンはアミドと自己反応してしまう場合があるが、カウンターアニオンが酸無水物となる前のカルボキシラートイオンと同一であれば、自己反応しても生成物は対称酸無水物と同一となる。
したがって、R
1とR
2とが同一である場合には、反応系中に得られるアミドの種類が均一化され、目的とする種類の生成物の計画的な取得が容易であるという利点がある。
【0035】
前記カルボン酸は、アミノ酸又はアミノ酸誘導体であることが好ましい。ここでのカルボン酸とは、カルボン酸活性種の前駆体であるカルボン酸を包含する。前記アミノ酸は、α−アミノ酸が好ましい。また、通常、生体内でのペプチド又はタンパク質を構成するアミノ酸がL型であることから、前記アミノ酸はL型であってよい。前記α−アミノ酸は、下記一般式(1−1)で表される化合物であってよい。
【0036】
【化4】
(式中、R
0はアミノ酸の側鎖を表わす。)
【0037】
前記アミノ酸は、生体内でペプチド又はタンパク質を構成し遺伝情報としてコードされている20種類のアミノ酸であってよい。これらのアミノ酸としては、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、バリンが挙げられる。また、前記アミノ酸は、シスチン等の遺伝情報としてコードされていない種類のアミノ酸であってもよい。
例えば、前記式(1−1)中のR
0は、前記アミノ酸がアラニンの場合には「−CH
3」であり、グリシンの場合には「−H」であり、バリンの場合には「−CH(CH
3)
2」であり、イソロイシンの場合には「−CH(CH
3)CH
2CH
3」である。他のアミノ酸についても同様である。
前記式(1)及び(1)’がアミノ酸である場合、−R
1及び−R
2は、それぞれ、−CH(R
0)NH
2であってよい。
【0038】
前記アミノ酸はα−アミノ酸でなくともよい。例えば、β−アラニン等のβ−アミノ酸であってもよい。
【0039】
前記カルボン酸は、アミノ酸誘導体であってもよい。アミノ酸誘導体とはアミノ酸と実質的に同等の性質を有する化合物であってよく、天然に存在する天然型のものであってもよく、天然型とは異なる修飾、付加、官能基の置換等の改変等を有するものであってもよい。
アミノ酸と実質的に同等の性質を有する場合の一例として、アミノ酸を基質とする酵素に取り込まれ得る、又はアミノ酸と結合する分子と結合し得る場合が挙げられる。
アミノ酸誘導体としては、アミノ酸において、1個以上の水素原子又は基が、それ以外の基(置換基)で置換されたものが挙げられる。アミノ酸誘導体の一例として、官能基が保護基で保護された、保護アミノ酸が挙げられる。保護基は、反応性の官能基を不活性化する作用を有する。保護基を脱保護して、保護された官能基を保護される前の状態に戻すことも可能である。ここで官能基が保護されたとは、前記官能基を構成する原子が、保護基で置換されていることをいう。保護基で保護される部位としては、アミノ基、カルボキシル基、及び側鎖からなる群から選択されるいずれか一種以上の部位が挙げられる。側鎖に含まれる官能基は1箇所又は2箇所以上が保護基で保護されていてもよい。当該工程1においては、カルボキシル基以外の反応性の官能基の反応を防止するよう、アミノ基及び/又は側鎖の官能基が保護されていることが好ましい。
【0040】
保護基の種類としては、特に制限されず、保護される官能基の種類に応じて適宜選択することができる。例えば、アミノ基の保護基としては、カルバメート系やスルホンアミド系、アシル系、アルキル系等の保護基が挙げられ、これらに制限されない。
カルバメート系の保護基としては、2−ベンジルオキシカルボニル基(−Z又は−Cbzと略されることがある。)、tert−ブトキシカルボニル基(−Bocと略されることがある。)、アリルオキシカルボニル基(−Allocと略されることがある。)、2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル基(−Trocと略されることがある。)、2−(トリメチルシリル)エトキシカルボニル基(−Teocと略されることがある。)、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル基(−Fmocと略されることがある。)、p−ニトロベンジルオキシカルボニル基(−Z(NO
2)と略されることがある。)、p−ビフェニルイソプロピルオキシカルボニル基(−Bpocと略されることがある。)等が挙げられる。
スルホンアミド系の保護基としては、p−トルエンスルホニル基(−Ts又は−Tosと略されることがある。)や、2−ニトロベンゼンスルホニル基(−Nsと略されることがある。)、2,2,4,6,7−ペンタメチルジヒドロベンゾフラン−5−スルホニル(−Pbfと略されることがある。)、2,2,5,7,8−ペンタメチルクロマン−6−スルホニル(−Pmcと略されることがある。)、1,2−ジメチルインドール−3−スルホニル(−MISと略されることがある。)等が挙げられる。
【0041】
第1の組成物は、有機溶媒を含むものである。有機溶媒は、カルボン酸又はカルボン酸活性種を溶解できる有機化合物であり、1気圧25℃において液体であることが好ましい。第1の組成物が有機溶媒を含むことで、カルボン酸又はカルボン酸活性種を良好に溶解できる。特に、保護基を有するアミノ酸誘導体やペプチド、それらの活性種であっても、良好に溶解することができる。有機溶媒は、水と相溶可能な溶媒であることが好ましく、極性溶媒であることが好ましく、反応性の観点から非プロトン性極性溶媒であることがより好ましい。水との相溶性を有する溶媒を用いることで、第2の組成物に含まれる水との混合状態が良好なものとなり、反応効率を向上させることができる。
【0042】
第1の組成物における有機溶媒としては、例えば、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、テトラヒドロフラン(THF)、1,4−ジオキサン等が挙げられる。
【0043】
第1の組成物100質量%に対する、有機溶媒の含有量の割合は、10質量%以上であることが好ましく、10〜99質量%であることが好ましく、40〜95質量%であることがより好ましく、60〜90質量%であることがさらに好ましい。第1の組成物が、上記割合にて有機溶媒を含むことにより、反応を良好に進めることができる。特に、流通系反応装置を用いる場合、上記割合にて有機溶媒を含むことにより、装置の流路内を通る組成物の流通が良好となることで、反応を良好に進めることができる。
【0044】
流通系反応装置での使用に適するとの観点から、有機溶媒は、1気圧25℃において液体であるものが好ましい。
【0045】
第1の組成物において、溶媒に該当する成分100体積%に対する、前記有機溶媒の含有量の割合は、50体積%以上であることが好ましく、50〜100体積%であることが好ましく、80〜100体積%であることがより好ましい。
【0046】
<工程2−1>
工程2−1は、前記工程1−1で得られた第1の組成物と、少なくとも1つのカルボキシル基を有するアミン、及び水を含む第2の組成物とを混合することにより、酸無水物と前記アミンと反応させてアミドを製造する工程である。
実施形態に係るアミドの製造方法の工程2−1は、下記一般式(2)で表される酸無水物と、下記一般式(6)で表されるアミンと、を反応させて下記一般式(7)で表されるアミドを得るものである。
【0047】
係る工程においては、塩基性条件下で、前記カルボン酸又は前記カルボン酸活性種と前記アミンとを反応させることが好ましい。塩基性条件下とは、例えば、塩基(B)(ただし当該アミンを除く)を添加した溶媒中のことを意味する。例えば、第1の組成物と第2の組成物との混合物が塩基(B)を含んでいてよく、例えば、前記第2の組成物が、塩基(B)を含んでいてよい。反応系内に塩基(B)が含まれることで、アミンの求核剤としての反応性が高められると考えられる。
【0048】
【化5】
(式中、R
1、R
2、R
3及びR
4は、それぞれ独立に水素原子又は一価の有機基である。)
【0049】
塩基(B)としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム等のアルカリ金属の水酸化物;水酸化カルシウム、水酸化バリウム等のアルカリ土類金属の水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸セシウム等のアルカリ金属の炭酸塩又は炭酸水素塩;水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム等の第四級アンモニウム水酸化物等が挙げられる。
塩基(B)としては、水酸化カリウム、水酸化セシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸セシウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、及び水酸化テトラブチルアンモニウムからなる群より選択されるいずれか一種以上であることが好ましい。
【0050】
前記アミンは、アミノ酸又はアミノ酸誘導体であることが好ましい。
アミノ酸及びアミノ酸誘導体としては、前記カルボン酸において例示したものが挙げられる。
前記式(6)がアミノ酸である場合、−R
3と−R
4は、例えば、−Hと−CH(R
0)COOHであってよい。
アミノ酸誘導体の一例として、官能基が保護基で保護された、保護アミノ酸が挙げられる。保護基で保護される部位としては、保護アミノ酸が少なくとも1つのカルボキシル基を有する限りにおいて、アミノ基、カルボキシル基、及び側鎖からなる群から選択されるいずれか一種以上の部位が挙げられる。側鎖に含まれる官能基は1箇所又は2箇所以上が保護基で保護されていてもよい。
【0051】
前記アミンは、少なくとも1つのカルボキシル基を有する。
前記アミンがアミノ酸である場合、アミノ酸のカルボキシル基(アミノ酸の側鎖に含まれ得るカルボキシル基を含む)のうち、少なくとも1つのカルボキシル基は保護されず、フリーのカルボキシル基である。
前記アミンがアミノ酸である場合、アミノ酸のカルボキシル基(ただし、アミノ酸の側鎖に含まれ得るカルボキシル基を含まない)が、保護されていないものであることが好ましい。すなわち、ペプチドの主鎖部分を形成するカルボキシル基は、保護されていないものであることが好ましい。
【0052】
前記アミンは、アミノ基以外の反応性の官能基の反応を防止するよう、側鎖の官能基のみが保護されていてもよい。
前記アミンは、側鎖の官能基が保護されていてもよく、ペプチドの主鎖部分を形成するアミノ基及びカルボキシル基が保護されていない無保護アミノ酸であってもよい。
前記アミンは、アミノ基、カルボキシル基、及び側鎖の全ての部位で保護修飾がなされていない無保護アミノ酸であってもよい。
【0053】
前記アミノ酸としては、タンパク質を構成し遺伝情報としてコードされている20種類のアミノ酸、又は少なくとも1つのカルボキシル基を有するその誘導体が挙げられる。
前記アミンは、タンパク質を構成し遺伝情報としてコードされている20種類のアミノ酸であって、側鎖の官能基が保護されていてもよく、ペプチドの主鎖部分を形成するアミノ基及びカルボキシル基が保護されていない無保護アミノ酸であってもよく、アミノ基、カルボキシル基、及び側鎖の全ての部位で保護修飾がなされていない無保護アミノ酸であってもよい。
【0054】
保護基の種類としては、特に制限されず、保護される官能基の種類に応じて適宜選択することができる。カルボキシル基の保護は、中和して塩の形にするだけでよい場合もあるが、通常はエステルの形にして保護する。エステルとしては、メチル、エチル等のアルキルエステルのほか、ベンジルエステル(Bn又はBZlと略されることがある。)等が挙げられ、これらに制限されない。
【0055】
第2の組成物は、水を含むものである。第2の組成物が水を含むことで、アミノ酸のカルボキシル基が保護されていないアミノ酸等の、少なくとも1つのカルボキシル基を有するアミンであっても、良好に溶解することができる。
第2の組成物は、水以外の他の溶媒をさらに含んでいてもよく、有機溶媒をさらに含んでいてもよい。有機溶媒としては、上記の第1の組成物において例示したものが挙げられる。また、第2の組成物は、第1の組成物が含む有機溶媒と、同一の種類の有機溶媒を含んでいてもよい。
【0056】
第2の組成物100質量%に対する、水の含有量の割合は、20質量%以上でであってもよく、20〜99質量%であってもよく、30〜99質量%であってもよく、30〜60質量%であってもよい。かかる割合にて水を含むことにより、反応を良好に進めることができる。特に、第2の組成物、又は、前記第1の組成物と前記第2の組成物との混合物が、塩基を含む場合には、水を上記の下限値以上の割合で含むことで、塩基の溶解が進み、反応効率がより良好となる。また、流通系反応装置を用いる場合には、水を上記の下限値以上の割合で含むことで、装置内での組成物の流通性が高まることで、反応効率がより良好となる。
【0057】
第2の組成物において、溶媒に該当する成分100体積%に対する、水の含有量の割合は、10体積%以上であってもよく、10〜100体積%であってもよく、15〜80体積量%であってもよく、20〜60体積%であってもよい。かかる割合にて水を含むことにより、反応をより良好に進めることができる。
同様の観点から、第2の組成物において、溶媒に該当する成分100体積%に対する、有機溶媒の含有量の割合は、0〜90体積%であってもよく、20〜85体積量%であってもよく、40〜80体積%であってもよい。
【0058】
第1の組成物及び第2の組成物の混合物において、溶媒に該当する成分100体積%に対する、水の含有量の割合は、5体積%以上であってもよく、5〜60体積%であってもよく、10〜50体積%であってもよく、20〜40体積%であってもよい。かかる割合にて水を含むことにより、少なくとも1つのカルボキシル基を有するアミンであっても良好に溶解することができ、反応を良好に進めることができる。また、水を上記の上限値以下の割合で含むことで、カルボン酸活性種の加水分解が抑制され得るため好ましい。
第1の組成物及び第2の組成物の混合物において、溶媒に該当する成分100体積%に対する、有機溶媒の含有量の割合は、10体積%以上であってもよく、40〜95体積%であってもよく、50〜90体積%であってもよく、60〜80体積%であってもよい。かかる割合にて有機溶媒を含む場合であっても、実施形態のアミドの製造方法によれば、反応を良好に進めることができる。
第1の組成物及び第2の組成物の混合物は、水及び有機溶媒を含み、溶媒に該当する成分100体積%に対する、水の含有量の割合が5〜60体積%で有機溶媒の含有量の割合が40〜95体積%であってもよく、水の含有量の割合が10〜50体積%で有機溶媒の含有量の割合が50〜90体積%であってもよく、水の含有量の割合が20〜40体積%で有機溶媒の含有量の割合が60〜80体積%であってもよい。
【0059】
実施形態のアミドの製造方法によれば、反応効率が良好で、アミドのエピマー生成が生じ難い、アミドの製造方法を提供できる。
従来のアミドの製造方法では、カルボン酸活性種を生成させた後、これを溶媒から分離した後に、水または有機溶媒、もしくは水と有機溶媒の混合溶媒中で無保護アミノ酸と反応させる操作を行っていた。この方法では、分離の工程を余分に必要とし、さらにその工程中でエピマーが生成する恐れがある。
一方、実施形態のアミドの製造方法によれば、カルボン酸活性種及び有機溶媒を含む第1の組成物と、前記アミン及び水を含む第2の組成物とを、混合することにより、生じた反応性の高いカルボン酸活性種を、すぐさま目的のアミンと反応させることが容易となり、カルボン酸活性種が活性化状態でいる時間を短くでき、反応効率を向上させ、望まない副反応物の生成を効果的に抑制できる。
【0060】
<第2実施形態>
本実施形態のアミドの製造方法は、以下の工程1−2〜2−2を含む。
【0061】
工程1−2:カルボン酸、及び活性化剤を混合して得られた混合物を反応させ、カルボン酸活性種及び有機溶媒を含む第1の組成物を得る工程。
工程2−2:前記工程1−2で得られた第1の組成物と、少なくとも1つのカルボキシル基を有するアミン、及び水を含む第2の組成物とを混合することにより、前記カルボン酸活性種と前記アミンと反応させてアミドを製造する工程。
【0062】
上記<第1実施形態>と同様の構成を有する部分については詳細な説明を省略する。
【0063】
前記カルボン酸としては、上記<第1実施形態>において例示したものが挙げられ、前記アミンとしては、上記<第1実施形態>において例示したものが挙げられ、塩基(B)としては、上記<第1実施形態>において例示したものが挙げられる。
【0064】
第1の組成物における有機溶媒としては、上記<第1実施形態>において例示したものが挙げられる。
【0065】
第2の組成物における水、有機溶媒等の溶媒としては、上記<第1実施形態>において例示したものが挙げられる。
【0066】
なお、工程2−2においても、上記の第1実施形態と同様に、塩基性条件下で、前記カルボン酸又は前記カルボン酸活性種と前記アミンとを反応させることが好ましい。塩基性条件下とは、例えば、塩基(B)を添加した溶媒中のことを意味する。例えば、第1の組成物と第2の組成物との混合物が塩基(B)を含んでいてよく、例えば、前記第2の組成物が、塩基(B)を含んでいてよい。
【0067】
(活性化剤・カルボン酸活性種)
本実施形態のアミドの製造方法では、活性化剤として、カルボキシル基を活性化させる活性化剤を用いることができる。
活性化剤としては、ハロゲン化ギ酸エステル、アジド化剤、ハロゲン化剤、炭酸ビス(ペンタフルオロフェニル)、クロロギ酸p−ニトロフェニル等を例示できる。ベンゾトリアゾール、ペンタフルオロフェノール、N−ヒドロキシスクシンイミド等は、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)などの縮合剤とともに使用することで活性化剤として使用できる。
【0068】
本実施形態のアミドの製造方法では、前記生成物として、カルボン酸活性種である混合酸無水物、酸アジド、カルボン酸ハロゲン化物、ベンゾトリアゾールアミド、ペンタフルオロフェノールエステル、パラニトロフェノールエステル、スクシンイミドエステル等の活性種を生成させることができる。
【0069】
カルボン酸活性種として、混合酸無水物を生成させる場合としては、カルボン酸と、ハロゲン化ギ酸エステルとを混合して得られた混合物を反応させて、下記一般式(II)で表される混合酸無水物を得ることを例示できる。
【0070】
【化6】
(式中、R
11は水素原子又は一価の有機基を表し、R
12は水素原子又は炭化水素基を表す。)
【0071】
カルボン酸活性種として、混合酸無水物を生成させる実施形態については、後に詳述する。
【0072】
カルボン酸活性種として、酸アジドを生成させる場合としては、カルボン酸又は混合酸無水物と、アジド化剤とを混合して得られた混合物を反応させて、下記一般式(II−b)で表される酸アジドを得ることを例示できる。
【0073】
【化7】
(式中、R
11bは水素原子又は一価の有機基である。)
【0074】
アジド化剤としては、アジ化ナトリウム、トリメチルシリルアジド、ジフェニルリン酸アジド、トリブチルスズアジド、及びテトラブチルアンモニウムアジドからなる群から選択されるいずれか一種以上を例示できる。
【0075】
カルボン酸活性種として、カルボン酸ハロゲン化物を生成させる場合としては、有機溶媒と、カルボン酸と、ハロゲン化剤とを混合して得られた混合物を反応させて、下記一般式(II−c)で表されるカルボン酸ハロゲン化物を得ることを例示できる。
【0076】
【化8】
(式中、R
11cは水素原子又は一価の有機基を表し、Y
1はハロゲン原子を表す。)
【0077】
Y
1の前記ハロゲン原子は、F,Cl,Br,I等の周期表において第17族に属する元素であり、Cl又はBrが好ましい。
【0078】
前記カルボン酸ハロゲン化物としてはカルボン酸フッ化物、カルボン酸塩化物、カルボン酸臭化物等を例示できる。
【0079】
ハロゲン化剤としては、種々のものを例示できる。
カルボン酸フッ化物を得るために用いることのできるハロゲン化剤としては、例えば、三フッ化N,N−ジエチルアミノ硫黄、ビス(2−メトキシエチル)アミノ硫黄トリフルオリド等を例示できる。
カルボン酸塩化物を得るために用いることのできるハロゲン化剤としては、例えば、塩化チオニル、三塩化リン、五塩化リン、塩化スルフリル、塩化オキサリル等を例示できる。
カルボン酸臭化物を得るために用いることのできるハロゲン化剤としては、例えば、三臭化リン等を例示できる。
これらは、1種を単独で用いてもよく、2種類以上を組合せて用いてもよい。
【0080】
カルボン酸活性種として、ベンゾトリアゾールアミドを生成させる場合としては、カルボン酸と、ベンゾトリアゾールと、縮合剤と、を混合して得られた混合物を反応させて、下記一般式(II−d)で表されるベンゾトリアゾールアミドを得ることを例示できる。
【0081】
【化9】
(式中、R
11dは水素原子又は一価の有機基を表す。)
【0082】
カルボン酸活性種として、ペンタフルオロフェノールエステルを生成させる場合としては、カルボン酸と、ペンタフルオロフェノール及び縮合剤、又は炭酸ビス(ペンタフルオロフェニル)とを混合して得られた混合物を反応させて、下記一般式(II−e)で表されるペンタフルオロフェノールエステルを得ることを例示できる。
【0083】
【化10】
(式中、R
11eは水素原子又は一価の有機基を表す。)
【0084】
カルボン酸活性種として、パラニトロフェノールエステルを生成させる場合としては、カルボン酸と、クロロギ酸p−ニトロフェニルとを混合して得られた混合物を反応させて、下記一般式(II−f)で表されるパラニトロフェノールエステルを得ることを例示できる。当該反応には、さらに、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン(DMAP)を加えることができ、さらにトリエチルアミン等を加えてもよい。
【0085】
【化11】
(式中、R
11fは水素原子又は一価の有機基を表す。)
【0086】
カルボン酸活性種として、スクシンイミドエステルを生成させる場合としては、カルボン酸と、N−ヒドロキシスクシンイミドと、縮合剤と、を混合して得られた混合物を反応させて、下記一般式(II−g)で表されるスクシンイミドエステルを得ることを例示できる。
【0087】
【化12】
(式中、R
11gは水素原子又は一価の有機基を表す。)
【0088】
このようにして、上記に例示したカルボキシル基を活性化させる活性化剤を用い、カルボン酸、及び活性化剤を混合して得られた混合物を反応させ、カルボン酸活性種及び有機溶媒を含む第1の組成物を得ることができる。
【0089】
・混合酸無水物
以下、カルボン酸活性種として、上記一般式(II)で表される混合酸無水物を用いる方法について説明する。
本実施形態のアミドの製造方法は、上記のアミドの製造方法として、以下の工程1−2−1〜2−2−1を含む。
【0090】
工程1−2−1:カルボン酸、及びハロゲン化ギ酸エステルを混合して得られた混合物を反応させ、混合酸無水物及び有機溶媒を含む第1の組成物を得る工程。
工程2−2−1:前記工程1−2−1で得られた第1の組成物と、少なくとも1つのカルボキシル基を有するアミン、及び水を含む第2の組成物とを混合することにより、前記混合酸無水物と前記アミンと反応させてアミドを製造する工程。
以下、上記の各工程について説明する。なお、本発明に係るアミドの製造方法の反応は、下記の各工程に例示される反応に限定されるものではない。
【0091】
<工程1−2−1>
工程1−2−1は、カルボン酸、及びハロゲン化ギ酸エステルを混合して得られた混合物を反応させ、混合酸無水物及び有機溶媒を含む第1の組成物を得る工程である。
【0092】
実施形態に係るアミドの製造方法の工程1−2−1は、下記一般式(I)で表されるカルボン酸と、下記一般式(I)’で表されるハロゲン化ギ酸エステルとを反応させて、下記一般式(II)で表される混合酸無水物を得るものである。
【0093】
【化13】
(式中、R
11は水素原子又は一価の有機基を表し、R
12は水素原子又は炭化水素基を表し、Yはハロゲン原子を表す。)
【0094】
前記カルボン酸としては、上記<第1実施形態>において例示したものが挙げられる。
【0095】
ハロゲン化ギ酸エステルにおけるハロゲン化とは、ハロゲン原子がカルボニル基に結合していることを指す。
【0096】
R
12の炭化水素基としては、脂肪族炭化水素基であってもよく芳香族炭化水素基(アリール基)であってもよい。前記脂肪族炭化水素基は、飽和脂肪族炭化水素基(アルキル基)であってもよく、不飽和脂肪族炭化水素基であってもよく、アルキル基が好ましい。
前記脂肪族炭化水素基は、炭素数が1〜20であってもよく、1〜15であってもよい。
前記アルキル基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれでもよい。環状である場合、前記アルキル基は、単環状又は多環状のいずれでもよい。前記アルキル基は、炭素数が1〜20であってもよく、1〜10であってもよく、1〜5であってもよい。
【0097】
直鎖状又は分岐鎖状の前記アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、1−メチルブチル基、n−ヘキシル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、2,2−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、n−ヘプチル基、2−メチルヘキシル基、3−メチルヘキシル基、2,2−ジメチルペンチル基、2,3−ジメチルペンチル基、2,4−ジメチルペンチル基、3,3−ジメチルペンチル基、3−エチルペンチル基、2,2,3−トリメチルブチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基等が例示できる。
【0098】
Yの前記ハロゲン原子は、F,Cl,Br,I等の周期表において第17族に属する元素であり、Cl又はBrが好ましい。
【0099】
副反応をより効果的に抑制するという観点からは、前記一般式(I)’で表されるハロゲン化ギ酸エステルは、Yの前記ハロゲン原子がCl又はBrであり、R
12の炭化水素基が分岐鎖状の炭素数1〜5のアルキル基であることが好ましく、クロロギ酸イソプロピル、クロロギ酸イソブチル、クロロギ酸エチル、クロロギ酸2,4−ジメチル−3−ペンチル、ブロモギ酸イソプロピル、ブロモギ酸イソブチル、ブロモギ酸エチル、及びブロモギ酸2,4−ジメチル−3−ペンチルからなる群から選択されるいずれか一種以上であることがより好ましい。
【0100】
なお工程1−2の反応は、前記ハロゲン化ギ酸エステルを活性化する第2の塩基と、前記ハロゲン化ギ酸エステルとを反応させ、反応をより進めやすくすることもできる。ここでは、活性化されたハロゲン化ギ酸エステルも、ハロゲン化ギ酸エステルの概念に包含されるものとする。
【0101】
第1の組成物は、カルボン酸と、前記ハロゲン化ギ酸エステルと、前記ハロゲン化ギ酸エステルを活性化する第2の塩基と、を混合して得られた混合物を反応させた生成物、並びに有機溶媒を含むものであってよい。
【0102】
前記第2の塩基は、前記ハロゲン化ギ酸エステルと反応してカチオン性活性種を生成させるものであり、工程1−2−1の生成物である前記混合酸無水物よりも前記ハロゲン化ギ酸エステルと優先的に反応するものが好ましく、第三級アミン、4−メチルモルホリン、ピリジン、ピリジン誘導体、イミダゾール、イミダゾール誘導体及び1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタンからなる群より選択されるいずれか一種以上であることがより好ましい。
【0103】
ピリジン誘導体は、ピリジンの一個以上の水素原子が、他の基で置換されたものであってよく、塩基の性質を有しているものであれば特に限定されないが、ピリジン及びピリジン誘導体は、下記一般式(3−1)で表される化合物であることが好ましい。
【0104】
【化14】
(式中、X
1は水素原子、又は下記式(a)〜(c)で示される群から選択されるいずれかの基を表す。)
【0105】
【化15】
(式中、R
31、R
32、R
33及びR
34は、それぞれ独立にアルキル基を表す。R
33及びR
34は相互に結合して環を形成していてもよく、前記アルキル基中の、R
33又はR
34に直接結合していない1個のメチレン基は、酸素原子で置換されていてもよい。)
【0106】
R
31、R
32、R
33及びR
34における前記アルキル基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれでもよい。環状である場合、前記アルキル基は、単環状又は多環状のいずれでもよい。前記アルキル基は、炭素数が1〜20であってもよく、1〜15であってもよく、1〜10であってもよい。
【0107】
直鎖状又は分岐鎖状の前記アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、1−メチルブチル基、n−ヘキシル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、2,2−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、n−ヘプチル基、2−メチルヘキシル基、3−メチルヘキシル基、2,2−ジメチルペンチル基、2,3−ジメチルペンチル基、2,4−ジメチルペンチル基、3,3−ジメチルペンチル基、3−エチルペンチル基、2,2,3−トリメチルブチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基等が例示できる。
【0108】
一般式(3−1)で表される化合物は、下記一般式(3−1−1)で表される化合物であることが好ましい。X
1が水素原子以外の前記式(a)〜(c)で示される群から選択されるいずれかの基である場合、係る位置に結合していることでX
1は電子供与性基として効果的に作用し、ピリジン環のN原子の求核性がより良好なものとなる傾向がある。
【0109】
【化16】
(式(3−1−1)中、X
1は、上記式(3−1)におけるX
1と同一の意味を表す。)
【0110】
一般式(3−1)で表される化合物は、X
1が前記式(c)で示される基であり、R
33及びR
34は相互に結合して環を形成しており、前記アルキル基中の、R
33又はR
34に直接結合していない1個のメチレン基が酸素原子で置換されている場合として、下記式(3−1−2)で表される4−モルホリノピリジンを含む。
【0112】
イミダゾール誘導体は、イミダゾールの一個以上の水素原子が、他の基で置換されたものであってよく、塩基の性質を有しているものであれば特に限定されないが、イミダゾール及びイミダゾール誘導体は、下記一般式(3−2)で表される化合物であることが好ましい。
【0113】
【化18】
(式中、R
35及びR
36は、それぞれ独立に水素原子又はアルキル基である。)
【0114】
R
35及びR
36におけるアルキル基としては、R
31、R
32、R
33及びR
34における前記アルキル基で例示したものが挙げられる。
【0115】
前記イミダゾール及びイミダゾール誘導体としては、イミダゾール及びN−メチルイミダゾールを好ましいものとして例示できる。
【0116】
一般式(3−2)で表される化合物は、R
36が水素原子であり、R
35がメチル基である場合、下記式(3−2−1)で表されるN−メチルイミダゾールを含む。
【0118】
第三級アミンについてはアミンのN原子に結合する基の少なくとも一つがメチル基であることが好ましい。アミンのN原子に結合する基の二つがメチル基であるものはより好ましい。第三級アミンのN原子に結合する基の少なくとも一つをメチル基とすることで、N原子周囲の立体障害が小さくなり、前記ハロゲン化ギ酸エステルとの反応効率を向上させることができる。
【0119】
上記の観点により、第2の塩基として好ましいものとしては、4−メチルモルホリン、N−メチルイミダゾール、N,N−ジメチルベンジルアミン、N,N−ジメチルブチルアミン、N,N−ジメチルアリルアミン、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン(DMAP)、N−メチルピペリジンが挙げられるが、これらに限られない。
【0120】
<工程2−2−1>
工程2−2−1は、前記工程1−2−1で得られた第1の組成物と、少なくとも1つのカルボキシル基を有するアミン、及び水を含む第2の組成物とを混合することにより、前記混合酸無水物と前記アミンと反応させてアミドを製造する工程である。
実施形態に係るアミドの製造方法の工程2−2−1は、下記一般式(II)で表される混合酸無水物と、下記一般式(VI)で表されるアミンと、を反応させて下記一般式(VII)で表されるアミドを得るものである。
【0121】
【化20】
(式(VI)及び式(VII)中のR
11は、上記式(II)におけるR
11と同一の意味を表す。式(V)’中のR
12は、上記式(II)におけるR
11と同一の意味を表す。式(VI)及び式(VII)中のR
13及びR
14は、それぞれ独立に水素原子または一価の有機基を表す。)
【0122】
実施形態のアミドの製造方法によれば、反応効率が良好で、アミドのエピマー生成が生じ難い、アミドの製造方法を提供できる。
【0123】
<反応条件等>
本実施形態において、工程1〜工程2の反応時の各化合物の使用量は、これらの化合物の種類を考慮し、目的とする反応に応じて適宜調節すればよい。
活性化したカルボン酸とアミンとの、反応系内のモル当量比(活性化したカルボン酸:アミン)は、10:1〜1/10:1であってよく、5:1〜1/5:1であってよく、3:1〜1/3:1であってよい。実施形態のアミドの製造方法によれば、カルボン酸に対して、等当量に近い比較的少量のアミンを反応させた場合であっても、高効率でアミドを製造可能である。
【0124】
本実施形態において、各工程の反応時間は、反応温度等、その他の条件に応じて適宜調節すればよい。一例として、工程1の反応時間は0.5秒〜30分であってもよく、1秒〜5分であってもよく、3秒〜1分であってもよい。工程2の反応時間は、1秒〜60分であってもよく、3秒〜30分であってもよく、5秒〜1分であってもよい。
【0125】
第1の組成物と第2の組成物との混合物、又は前記第2の組成物が、塩基(B)を含む場合、アミンと塩基(B)との、反応系内のモル当量比(アミン:塩基)は、10:1〜1/10:1であってよく、5:1〜1/5:1であってよく、3:1〜1/3:1であってよい。
【0126】
本実施形態において、工程1〜工程2の反応時の温度(反応温度)は、工程1〜2で使用する化合物の種類に応じて適宜調節すればよい。一例として、反応温度は0〜100℃の範囲であることが好ましく、10〜50℃の範囲であることがより好ましい。
【0127】
本実施形態において、工程1〜工程2の反応は、アミドの生成を達成可能な範囲において、上記に例示した化合物に該当しないその他の化合物を、反応系内にさらに含んでもよい。
【0128】
本実施形態において、工程1〜工程2の反応は、それぞれを別々に行ってもよく、同時に行ってもよい。
【0129】
本実施形態において、カルボン酸とアミンとのカップリング収率は、70%以上であることが好ましく、75%以上であることがより好ましく、80%以上であることがさらに好ましく、85%以上であることが特に好ましい。
【0130】
本実施形態において、目的物のアミドのエピマー生成率は、8%未満であることが好ましく、5%未満であることがより好ましく、1%未満であることがさらに好ましく、0.5%未満であることがさらに好ましく、0.2%未満であることが特に好ましい。
【0131】
以上で説明した実施形態のアミドの製造方法において、生成物の存在及び構造は、NMR、IR、マス等の解析により得られたスペクトルの測定や、元素分析等によって確認可能である。また、必要に応じて、生成物を精製してもよく、精製方法としては、蒸留、抽出、再結晶、カラムクロマトグラフィー等によって精製可能である。
【0132】
≪ペプチドの製造方法≫
実施形態のアミドの製造方法は、前記カルボン酸が、アミノ酸又はアミノ酸誘導体であり、且つ、前記アミンが、アミノ酸又はアミノ酸誘導体である場合、ペプチド又はタンパク質を合成できる。ペプチド又はタンパク質の製造方法は、アミドの製造方法に包含される。
例えば、上記工程2で得られたアミドを、工程1におけるカルボン酸として用い、工程1〜2の後に、さらに工程1〜2を繰り返すことで、ポリペプチド鎖を伸長させることができる。
即ち、前記カルボン酸としてはポリペプチド又はその誘導体も含まれ、前記アミンとしてポリペプチド又はその誘導体も含まれる。実施形態に係るアミノ酸又はアミノ酸誘導体(カルボン酸)として、ポリペプチドの構成単位としてC末端に位置するアミノ酸又はアミノ酸誘導体(カルボン酸)も含まれる。実施形態に係るアミノ酸又はアミノ酸誘導体(アミン)として、ポリペプチドの構成単位としてN末端に位置するアミノ酸又はアミノ酸誘導体(アミン)も含まれる。このように、実施形態のアミドの製造方法は、ペプチド又はタンパク質の製造方法として好適である。
【0133】
≪流通系反応装置≫
実施形態のアミドの製造方法は、流通系反応装置を使用して実施することができる。流通系反応装置は、実施形態のアミドの製造方法における反応に用いられる原料又は中間体を含む流体を輸送する流路と、該流体を混合するための混合機と、を備えるものを例示できる。流通系反応装置の使用について、例えば、第1の組成物と第2の組成物とを混合することを、流通系反応装置で行うのであってもよい。当該混合として、工程2における混合を例示できる。
【0134】
更には、第1の組成物を得るための混合を流通系反応装置で行ってもよい。つまり、カルボン酸活性種を得るための混合を流通系反応装置で行ってもよい。当該混合として、工程1における混合を例示できる。
例えば、上記の工程1−1における、有機溶媒、第一のカルボン酸、第二のカルボン酸、及びホスゲン又は反応系内で分解してホスゲンを生成するホスゲン等価体を混合することを流通系反応装置で行ってもよい。
また、例えば、上記の工程1−2における、有機溶媒、カルボン酸、及び活性化剤を混合することを流通系反応装置で行ってもよい。
また、例えば、上記の工程1−2−1における、有機溶媒、カルボン酸、及びハロゲン化ギ酸エステルを混合することを流通系反応装置で行ってもよい。
また、例えば、上記の工程1−2−1における、有機溶媒、カルボン酸、ハロゲン化ギ酸エステル、及び第2の塩基を混合することを流通系反応装置で行ってもよい。
【0135】
なお、実施形態のアミドの製造方法は、流通系反応装置を使用して実施するものに限定されない。例えば、容積が小さく高速な攪拌速度が得られるバッチ容器を用いてもよい。
バッチ容器の混合部の体積は、1〜100mLであってもよく、5〜50mLであってもよい。
【0136】
以下、実施形態に係る流通系反応装置の形態と、それを用いた上記第2実施形態のアミドの製造方法の一例を、
図1を参照して説明する。
図1は、流通系反応装置1の概略的な構成を示す模式図である。流通系反応装置1は、第1の液を収容するタンク11と、第2の液を収容するタンク12と、第3の液を収容するタンク13とを備える。
一例として、第1の液は有機溶媒及びカルボン酸を含み、第2の液は有機溶媒及びハロゲン化ギ酸エステルを含み、第3の液は水及びアミンを含むことができる。他の一例として、第1の液は有機溶媒、カルボン酸及びハロゲン化ギ酸エステルを活性化する第2の塩基を含み、第2の液は有機溶媒及びハロゲン化ギ酸エステルを含み、第3の液は塩基、水及びアミンを含むことができる。より具体的な一例としては、
図1に示すように、第1の液は、アセトニトリル(有機溶媒)、カルボン酸、Nメチルモルホリン(第2の塩基)及びDIEAを含み、第2の液は、アセトニトリル(有機溶媒)、及びクロロギ酸イソブチル(活性化剤)を含み、第3の液は、NaOH水溶液(NaOHと水)、及びアミンを含む。
ここで用いられるアミンは、側鎖の官能基が保護されていてもよい、ペプチドの主鎖部分を形成するアミノ基及びカルボキシル基が保護修飾されていない無保護アミノ酸であってもよく、アミノ基、カルボキシル基、及び側鎖の全ての部位で保護修飾がなされていない無保護アミノ酸であってもよい。
流通系反応装置の使用について、例えば、少なくとも第1の液と第2の液との混合物と、第3の液との混合を流通系反応装置で行うのであってもよく、更には、第1の液と第2の液との混合を流通系反応装置で行うのであってもよい。
【0137】
流通系反応装置1は流体を輸送するための流路f1,f2,f3,f4,f5を備える。流路の内径は、一例として0.1〜10mmであってもよく、0.3〜8mmであってもよい。
流通系反応装置1は流体を混合するための混合機31,32を備える。混合機内部の流路の内径は、一例として0.1〜10mmであってもよく、0.3〜8mmであってもよい。混合機としては、駆動部を有さないスタティックミキサーが挙げられる。駆動部とは、動力が与えられて動く部分のことを指す。スタティックミキサーとしては、T字型ミキサー、V字型ミキサー等が挙げられ、混合効率の観点から、V字型ミキサーが好ましい。
特に、第1の組成物と第2の組成物との混合に、V字型ミキサーを用いることが好ましい。
上記の流路の内径とは、流路の長さ方向と直角に交わる方向での流路断面における、流路内部分(流体が通る部分)の直径とすることができる。流路内部分の形状が真円形でない場合には、上記の流路の内径とは、上記流路内部分の形状を面積基準で真円換算したときの直径とすることができる。
【0138】
タンク11,12,13,14、混合機31,32及び流路f1,f2,f3,f4,f5は、一例として、プラスチックやエラストマー等の樹脂や、ガラス材、金属、セラミックなどで形成されている。
【0139】
タンク11はポンプ21に接続し、ポンプ21の作動により、タンク11に収容された第1の液は、流路f1内を移動して混合機31に流入する。タンク12はポンプ22に接続し、ポンプ22の作動により、タンク12に収容された第2の液は、流路f2内を移動して混合機31に流入する。そして、第1の液及び第2の液は、混合機31により混合されて第1の混合液(第1の組成物)となり、流路f4へと送られる。この混合後の過程で、第1の液に含まれるカルボン酸と第2の液に含まれるクロロギ酸イソプロピルとで脱水縮合が生じ、混合酸無水物が得られる(アミドの製造方法の工程1−2−1)。得られた酸無水物を含む第1の混合液(第1の組成物)は、混合機32へと流入する。
【0140】
一方、タンク13はポンプ23に接続し、ポンプ23の作動により、タンク13に収容された液(第2の組成物)は、流路f3内を移動して混合機32へと流入し、第1の混合液(第1の組成物)と混合されて第2の混合液となり、流路f5へと送られる。この混合後の過程で、工程1−2−1で得られた混合酸無水物と、と第3の液に含まれるアミンとが反応してアミドが得られる(アミドの製造方法の工程2−2−1)。製造されたアミドを含む第2の混合液は、タンク14に貯留される。
【0141】
本実施形態において、第1の組成物と第2の組成物とを混合する混合速度は、収率向上の観点から、それぞれの組成物の送液速度で、2mL/min以上であることが好ましく、3mL/min以上20mL/min以下であることがより好ましい。
ここに示す流通系反応装置の例では、第1の液の送液速度は、1.2mL/min以上であることが好ましく、2mL/min以上であることがより好ましい。第2の液の送液速度は、2mL/min以上であることが好ましく、3mL/min以上であることがより好ましい。第3の液の送液速度は、2mL/min以上であることが好ましく、3mL/min以上であることがより好ましい。
流通系反応装置における、第1の組成物、第2の組成物、第1の液、第2の液、及び第3の液の送液速度の上限値は、特に制限されるものではないが、一例として20mL/min以下であってもよく、10mL/min以下であってもよい。
【0142】
実施形態に係る流通系反応装置1によれば、第1の組成物と第2の組成物との混合効率が高く、有機溶媒を含む第1の組成物と、水を含む第2の組成物との混合後の反応が良好であり、目的物の収率を向上させることができる。
【0143】
実施形態に係る流通系反応装置1によれば、反応溶液の体積あたりの熱交換を行う面積を大きくすることができる。加えて、流量や流路の長さによって反応時間を制御することができる。このため、反応溶液の厳密な制御を可能とし、結果、望まない副反応の進行を最小化でき、目的物の収率を向上させることができる。
【0144】
前記工程1で得られるカルボン酸活性種は、活性度が高く、反応のコントロールが重要となる。
実施形態に係る流通系反応装置1によれば、流路を通じて液を連続的に流通させることで化合物の衝突の機会が向上し、より高効率に反応を進めることができ、副反応の抑制も容易となる。例えば、工程1で生じたカルボン酸活性種を、すぐさま目的のアミンと反応させることが可能となるので、カルボン酸活性種が活性化状態でいる時間を短くでき、異性化等の副反応が生じる確率を低減できる。
【0145】
なお、本実施形態に係る流通系反応装置では、混合機により液が混合される形態を例示したが、液の混合は流路同士が連通することのみで達成され得るため、実施形態の流通系反応装置は、必ずしも混合機を備えていなくともよい。
【0146】
なお、上記に例示した流通系反応装置では、第2実施形態のアミドの製造方法を例に説明したが、アミドの製造方法の第1実施形態も、同様に実施することができる。
一例として、第1の液は有機溶媒、第一のカルボン酸及び第二のカルボン酸を含み、第2の液は有機溶媒、ホスゲン又は反応系内で分解してホスゲンを生成するホスゲン等価体を含み、第3の液は塩基、水及び及びアミンを含むことができる。より具体的な一例としては、第1の液はアセトニトリル(有機溶媒)、カルボン酸及びDIEAを含み、第2の液はアセトニトリル(有機溶媒)及びトリホスゲン(ホスゲン等価体)を含み、第3の液はNaOH水溶液(NaOHと水)、及びアミンを含むことができる。
ここで用いられるアミンは、側鎖の官能基が保護されていてもよい、ペプチドの主鎖部分を形成するアミノ基及びカルボキシル基が保護修飾されていない無保護アミノ酸であってもよく、アミノ基、カルボキシル基、及び側鎖の全ての部位で保護修飾がなされていない無保護アミノ酸であってもよい。
【0147】
ここで示したように、実施形態のアミドの製造方法は、液相法により実施できる。例えば、現在主流となっているペプチド(アミド)の製造方法は固相法であり、固相上でペプチドを合成していく。一方、液相法は、ラージスケールの合成に適しており、分子の自由度が高まるために反応性も良好である。液相法は、反応性の低いアミンとの反応にも効果を発揮する。
【0148】
なお、本実施形態に係る流通系反応装置では、反応させる5種類の化合物を3つのタンクに分けて収容したが、例えば、それぞれを計5つの別々のタンクに収容しておき、順次混合させてもよい。
【0149】
上記で説明した物質は、本発明の効果を奏することのできる範囲内において、それらのイオン、塩又は複合体の状態であってもよい。
【実施例】
【0150】
次に実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0151】
<実施例1>
[原料]
カルボン酸として用いたアミノ酸には、アミノ基がFmoc基によって保護され、チオール基がTrt基によって保護されたシステインである、Fmoc−Cys(Trt)−OH(市販品)を用いた。アミンとして用いたアミノ酸には、フェニルアラニン(カルボシキル基に保護修飾を有さない無保護アミノ酸)である、H−Phe−OHを用いた。
【0152】
[酸アミドのフロー合成]
カルボン酸として用いたアミノ酸と、アミンとして用いたアミノ酸とのカップリング反応を行った。カップリング反応は、PTFE製チューブ(内径0.8mm、外径1.59mm)とSUS製チューブ(内径0.8mm、外径1.59mm)とSUS製継手とT字型ミキサーとV字型ミキサーで構成された流通系反応装置を用いた。反応前の溶液は3つに分けて調製した。第1の溶液は、カルボン酸として用いたFmoc−Cys(Trt)−OHと、DIEAと、N−メチルモルホリンとを、アセトニトリル2.06mLに溶解(濃度0.333mol/dm
3)して得た。第2の溶液は、クロロギ酸イソブチルを、アセトニトリル4.36mLに溶解(濃度0.240mol/dm
3)して得た。第3の溶液は、アミンとして用いたH−Phe−OHを、NaOH水溶液(1M NaOH水溶液1.53mLと水2.72mLとの混合物)4.25mLに溶解(アミノ酸の濃度0.340mol/dm
3)して得た。流通系反応装置中でのそれぞれのモル濃度の比は、Fmoc−Cys(Trt)−OH(カルボン酸)1.0に対して、H−Phe−OH(アミン)が1.7、DIEAが1.0、N−メチルモルホリンが1.0、クロロギ酸イソブチルが1.2、NaOHが1.7とした。
【0153】
流通系反応装置中でカップリングを行うために、初めに、第1の溶液と第2の溶液とをT字型ミキサーにて混合し、流通系反応装置中で5秒間反応させることで混合酸無水物を得た。その後すぐさま混合酸無水物を含む反応溶液と第3の溶液とを新たなV字型ミキサーを用いて混合し、流通系反応装置中で10秒間反応させた。これらの反応は全て20℃で実施し、それぞれの反応前の溶液がミキサーへ到達する前に熱交換を行うための時間として10秒を設定した。各種溶液はシリンジポンプを用いて流出した。各ポンプの流量はそれぞれ、第1の溶液が1.2mL/min、第2の溶液が2.0mL/min、第3の溶液が2.0mL/minとした。
【0154】
実施例1における、アミドの製造方法の工程1の反応を以下に示す。
【0155】
【化21】
(式中、R
cはシステイン側鎖を表す。)
【0156】
実施例1における、アミドの製造方法の工程2の反応を以下に示す。
【0157】
【化22】
(式中、R
cはシステイン側鎖を表し、R
pはフェニルアラニン側鎖を表す。)
【0158】
〔分析法〕
反応後の生成物をGPCにより単離後、NMR解析にて同定した。
【0159】
目的物の収率は、単離精製した目的物の重量から算出した。即ち、カルボン酸のモル当量比を1.0とし、単離されたジペプチドの重量から、カルボン酸がカップリングした割合を算出した。
【0160】
エピマー生成率は、単離精製したアミドの異性体をHPLCによって分離し、目的物のアミドとエピマーのUV吸収強度の面積比からエピマー生成率を算出した。
【0161】
〔結果〕
得られたジペプチドのNMRデータを以下に示す。
1H NMR (400 MHz, CDCl
3): δ 8.55 (bs, 1 H) 7.71 (dd, J = 9.7, 6.0 Hz, 2 H) 7.52(t, J = 6.2 Hz, 2 H) 7.34 (m, 8 H) 7.20 (m, 12 H) 7.05 (m, 4 H) 6.51 (d, J = 6.1 Hz, 1 H) 5.20 (d, J = 6.0 Hz, 1 H) 4.74 (dd, J = 5.3 Hz, 5.0 Hz, 1 H) 4.36 (t,J = 5.4 Hz, 1 H) 4.26 (t, J = 5.6 Hz, 1 H) 4.13 (t, J = 5.5 Hz, 1 H) 3.72 (d, J= 4.8 Hz, 1 H) 3.11 (dd, J = 7.0 Hz, 4.0 Hz, 1 H) 2.96 (dd, J = 6.1 Hz, 5.1 Hz,1 H) 2.59 (d, J = 6.3 Hz, 2 H)
【0162】
反応後の生成物を分析の結果、目的物であるジペプチドは、カップリング収率が82%であった。また、HPLCにより取得されたUV吸収強度の面積比は、目的物:99.9%以上、エピマー:検出限界以下であり、エピマー生成率はHPLCによる検出限界以下であった。
【0163】
<実施例2>
[原料]
カルボン酸として用いたアミノ酸には、アミノ基がZ基によって保護されたフェニルグリシンであるZ−Phg−OH(市販品)を用いた。アミンとして用いたアミノ酸には、フェニルアラニン(カルボシキル基に保護修飾を有さない無保護アミノ酸)である、H−Phe−OHを用いた。
【0164】
[酸アミドのフロー合成]
カルボン酸として用いたアミノ酸と、アミンとして用いたアミノ酸とのカップリング反応を行った。カップリング反応は、PTFE製チューブ(内径0.8mm,外径1.59mm)とSUS製チューブ(内径0.8mm,外径1.59mm)とSUS製継手とT字型ミキサーとV字型ミキサーで構成された流通系反応装置を用いた。反応前の溶液は3つに分けて調製した。第1の溶液は、カルボン酸として用いたZ−Phg−OHと、DIEAとN−メチルモルホリンとを、アセトニトリル3.2mLに溶解(濃度0.333M)して得た。第2の溶液は、クロロギ酸イソブチルを、アセトニトリル6.0mLに溶解(濃度0.240mol/dm
3)して得た。第3の溶液は、アミンとして用いたH−Phe−OHをNaOH水溶液(1mol/dm
3 NaOH水溶液2.1mLと水3.72mLとの混合物)5.82mLに溶解(アミノ酸の濃度0.340mol/dm
3)して得た。流通系反応装置中でのそれぞれのモル濃度の比は、Z−Phg−OH(カルボン酸)1.0に対して、H−Phe−OH(アミン)が1.7、DIEAが1.0、N−メチルモルホリンが1.0、クロロギ酸イソブチルが1.2、NaOHが1.7とした。
【0165】
流通系反応装置中でカップリングを行うために、初めに、第1の溶液と第2の溶液とをT字型ミキサーにて混合し、流通系反応装置中で5秒間反応させることで混合酸無水物を得た。その後すぐさま混合酸無水物を含む反応溶液と第3の溶液とを新たなV字型ミキサーを用いて混合し、流通系反応装置中で10秒間反応させた。これらの反応は全て20℃で実施し、それぞれの反応前の溶液がミキサーへ到達する前に熱交換を行うための時間として10秒を設定した。各種溶液はシリンジポンプを用いて流出した。各ポンプの流量はそれぞれ、第1の溶液が1.2mL/min、第2の溶液が2.0mL/min、第3の溶液が2.0mL/minとした。
【0166】
〔分析法〕
反応後の生成物をカラムクロマトグラフィーにより単離後、NMR解析にて同定した。
【0167】
目的物の収率は、単離精製した目的物の重量から算出した。即ち、カルボン酸のモル当量比を1.0とし、単離されたジペプチドの重量から、カルボン酸がカップリングした割合を算出した。
【0168】
エピマー生成率は、単離精製したアミドの異性体をHPLCによって分離し、目的物のアミドとエピマーのUV吸収強度の面積比からエピマー生成率を算出した。
【0169】
〔結果〕
得られたジペプチドのNMRデータを以下に示す。
1H NMR (400 MHz, MeOD+CDCl
3): δ 7.30-7.11 (m, 15 H) 5.31 (s, 1 H) 5.06 (dd, J = 12.3 Hz, 5.4 Hz, 2 H) 4.71 (t, J = 6.9 Hz, 1 H) 3.19 (dd, J = 8.2 Hz, 5.3 Hz, 1 H) 3.01 (dd, J = 7.3 Hz, 6.4 Hz, 1 H)
【0170】
反応後の生成物を分析した結果、目的物であるジペプチドは、カップリング収率が88%であった。また、HPLCにより取得されたUV吸収強度の面積比は、目的物:99.9%以上、エピマー:検出限界以下であり、エピマー生成率はHPLCによる検出限界以下であった。
【0171】
<実施例3>
[原料]
カルボン酸として用いたペプチドには、アミノ基がBoc基によって保護されたアラニンと、ヒドロキシ基がBzl基によって保護されたセリンのジペプチドである、Boc−Ala−Ser(Bzl)−OH(市販品より流通系反応装置にて合成)を用いた。アミンとして用いるアミノ酸には、フェニルアラニン(カルボシキル基に保護修飾を有さない無保護アミノ酸)である、H−Phe−OHを用いた。
【0172】
[酸アミドのフロー合成]
カルボン酸として用いたジペプチドと、アミンとして用いたアミノ酸とのカップリング反応を行った。カップリング反応は、PTFE製チューブ(内径0.8mm,外径1.59mm)とSUS製チューブ(内径0.8mm,外径1.59mm)とSUS製継手とT字型ミキサーとV字型ミキサーで構成された流通系反応装置を用いた。反応前の溶液は3つに分けて調製した。第1の溶液は、カルボン酸として用いたBoc−Ala−Ser(Bzl)−OHと、DIEAとN−メチルモルホリンとを、アセトニトリル3.1mLに溶解(濃度0.333mol/dm
3)して得た。第2の溶液は、クロロギ酸イソブチルをアセトニトリル6.0mLに溶解(濃度0.240mol/dm
3)した。第3の溶液は、アミンとして用いたH−Phe−OH、アセトニトリル/NaOH水溶液(1M NaOH水溶液2.10mLとアセトニトリル3.72mLとの混合物)を体積比(アセトニトリル:NaOH水溶液)2:1で混合した混合溶媒5.82mLに溶解(アミノ酸の濃度0.340mol/dm
3)した。フロー反応系中でのそれぞれのモル濃度の比は、Boc−Ala−Ser(Bzl)−OH1.0に対して、H−Phe−OHが1.7、DIEAが1.0、N−メチルモルホリンが1.0、クロロギ酸イソブチルが1.2、NaOHが1.7とした。
【0173】
流通系反応装置中でカップリングを行うために、初めに、第1の溶液と第2の溶液とをT字型ミキサーにて混合し、流通系反応装置中で5秒間反応させることで混合酸無水物を得た。その後すぐさま混合酸無水物を含む反応溶液と第3の溶液とを新たなV字型ミキサーを用いて混合し、流通系反応装置中で10秒間反応させた。これらの反応は全て20℃で実施し、それぞれの反応前の溶液がミキサーへ到達する前に熱交換を行うための時間として10秒を設定した。各種溶液はシリンジポンプを用いて流出した。各ポンプの流量はそれぞれ、第1の溶液が1.2mL/min、第2の溶液が2.0mL/min、第3の溶液が2.0mL/minとした。
【0174】
〔分析法〕
・反応後の生成物を再結晶による単離後、NMR解析にて同定した。
【0175】
目的物の収率は、単離精製した目的物の重量から算出した。即ち、カルボン酸のモル当量比を1.0とし、単離されたトリペプチドの重量から、カルボン酸がカップリングした割合を算出した。
【0176】
エピマー生成率は、単離精製したアミドの異性体をHPLCによって分離し、目的物のアミドとエピマーのUV吸収強度の面積比からエピマー生成率を算出した。
【0177】
〔結果〕
得られたジペプチドのNMRデータを以下に示す。
1H NMR (400 MHz, MeOD+CDCl
3): δ 7.97 (s, 1 H) 7.35-7.14 (m, 9 H) 4.71-4.64 (m,1 H) 4.55 (bs, 1 H) 4.52 (d, J = 2.8 Hz, 2 H) 4.09 (bd, J = 6.7 Hz, 1 H) 3.75 (dd, J = 5.1 Hz, 4.5 Hz, 1 H) 3.67 (dd, J = 5.1 Hz, 4.6 Hz, 1 H) 3.18 (dd, J = 8.5 Hz, 5.4 Hz, 1 H) 3.03 (dd, J = 7.4 Hz, 6.5 Hz, 1 H) 1.42 (s, 9 H) 1.27 (d, J =7.2 Hz, 3 H)
【0178】
反応後の生成物を分析した結果、目的物であるトリペプチドは、カップリング収率が77%であった。また、crudeのHPLC分析により取得されたUV吸収強度の面積比は、目的物:99.9%、エピマー:0.1%であり、エピマー生成率は0.1%程度であった。
【0179】
実施例1〜3に示す方法によれば、無保護アミノ酸(少なくとも1つのカルボキシル基を有するアミン)を原料に用い、カルボン酸に対するアミンのモル当量比が1.7:1であり、反応時間が10秒という短い時間であるにもかからわず、高いカップリング収率を達成でき、且つエピマー生成率も非常に低く抑えることができた。
【0180】
以上、この発明の実施形態について化学式及び図面を参照して詳述してきたが、実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。また、本発明は各実施形態によって限定されることはなく、請求項(クレーム)の範囲によってのみ限定される。