(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2020年10月8日
【発行日】2021年4月30日
(54)【発明の名称】伝動装置及びこれを用いた車両用ステアリング装置
(51)【国際特許分類】
F16H 25/24 20060101AFI20210402BHJP
F16H 25/22 20060101ALI20210402BHJP
B62D 5/04 20060101ALI20210402BHJP
【FI】
F16H25/24 B
F16H25/22 C
B62D5/04
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】32
【出願番号】特願2019-517464(P2019-517464)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2019年3月29日
(11)【特許番号】特許第6621965号(P6621965)
(45)【特許公報発行日】2019年12月18日
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】000146010
【氏名又は名称】株式会社ショーワ
(74)【代理人】
【識別番号】100067356
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 容一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100160004
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 憲雅
(74)【代理人】
【識別番号】100120558
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 勝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100148909
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧澤 匡則
(74)【代理人】
【識別番号】100192533
【弁理士】
【氏名又は名称】奈良 如紘
(72)【発明者】
【氏名】榎本 聡司
(72)【発明者】
【氏名】森 裕秋
【テーマコード(参考)】
3D333
3J062
【Fターム(参考)】
3D333CB02
3D333CB19
3D333CC15
3D333CC18
3D333CD05
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3D333CD23
3D333CD28
3D333CE04
3J062AA07
3J062AB22
3J062AC07
3J062BA12
3J062CD07
3J062CD23
3J062CD54
3J062CG83
(57)【要約】
伝動装置(1)は、筒状のハウジング(2)に収納されているねじ軸(20)と、前記ねじ軸(20)のねじ部(22)に転動することが可能に位置している複数のボール(30)と、前記複数のボール(30)により前記ねじ部(22)に連結されているナット(40)と、前記ナット(40)を前記ハウジング(2)の内部に回転可能に支持している軸受(50)と、を含む。前記ナット(40)は、大径部(44)と、前記大径部(44)に対して前記ねじ軸(20)の軸方向に連なる小径部(45)と、を有している。前記大径部(44)は、外周面(44a)に循環部(70)を有している。前記循環部(70)は、前記ねじ部(22)を転動している前記複数のボール(30)を、循環する。前記小径部(45)は、前記大径部(44)よりも小径である。前記軸受(50)は、前記ナット(40)のなかの前記小径部(45)を支持する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のハウジングと、
前記ハウジングに沿いつつ移動可能に前記ハウジングに収納されており、外周面にねじ部を有しているねじ軸と、
前記ねじ部に転動することが可能に位置している複数のボールと、
前記複数のボールにより前記ねじ部に連結される円筒状の部材であって、前記ねじ部を転動している前記複数のボールを循環する循環部を外周面に有している大径部と、前記大径部に対し前記ねじ軸の軸方向に連なり且つ前記大径部よりも小径の小径部と、を有しているナットと、
前記小径部を前記ハウジングの内部に回転可能に支持している軸受と、
を含むことを特徴とする伝動装置。
【請求項2】
前記ナットの前記小径部に嵌合され、且つ、前記小径部に対して互いに回転力の伝達が可能に連結されたハブを有している、伝動部材を更に含み、
前記ナットは、前記大径部と前記小径部との境界に位置して前記ナットの中心線に直交した段差面を有しており、
前記ハブと前記軸受とは、前記段差面に対して軸方向にこの順に位置するとともに、前記小径部に設けられた止め部材と前記段差面とによって、前記ナットの軸方向への移動を規制されている、
請求項1に記載の伝動装置。
【請求項3】
前記軸受は、転がり軸受によって構成され、
前記止め部材は、前記小径部にねじ込み可能な転がり軸受用ロックナットによって構成されている、請求項2に記載の伝動装置。
【請求項4】
前記ハブは、前記小径部に嵌合され且つ連結される第1ハブ部と、前記大径部に嵌合される第2ハブ部と、を有し、
前記第1ハブ部と前記第2ハブ部とは、前記ハブの軸方向に連続し且つ一体化されている、
請求項2又は請求項3に記載の伝動装置。
【請求項5】
前記大径部は、前記大径部の前記外周面から前記ナットの中心へ向かって窪む凹部を構成する、一対の側面と底面とを有し、
前記循環部は、前記一対の側面と前記底面と前記第2ハブ部の内周面とによって規定された循環通路である、
請求項4に記載の伝動装置。
【請求項6】
前記大径部は外周面に、一対の凹部を有しており、
前記一対の凹部に対して、径外方から個別に嵌め込み可能な一対のエンドディフレクタを、更に備え、
前記一対のエンドディフレクタは、前記ねじ軸と前記ナットとが相対する部分のねじ溝と、前記循環通路の両端と、の間を連通しており、
前記一対のエンドディフレクタは、前記ねじ軸の前記ねじ部の幅中心を挟んで設けられる各々一対のボール持ち上げ部を備え、
前記各々一対のボール持ち上げ部は、前記ねじ部の幅中心を挟んで幅方向に離間する2か所で前記ボールを支持することで、前記ボールを前記ねじ部から持ち上げる、
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の伝動装置。
【請求項7】
筒状のハウジングと、
前記ハウジングに沿いつつ移動可能に前記ハウジングに収納されており、外周面にねじ部を有しているねじ軸と、
前記ねじ部に転動することが可能に位置している複数のボールと、
前記複数のボールにより前記ねじ部に連結される円筒状の部材であって、前記ねじ部を転動している前記複数のボールを循環する循環部を外周面に有している大径部と、前記大径部に対し前記ねじ軸の軸方向に連なり且つ前記大径部よりも小径の小径部と、を有しているナットと、
前記小径部を前記ハウジングの内部に回転可能に支持している転がり軸受と、
前記ナットの前記小径部にセレーション結合されたハブを有しているプーリによって構成された伝動部材と、
を含み、
前記ナットは、前記大径部と前記小径部との境界に位置して前記ナットの中心線に直交した段差面を有しており、
前記ハブと前記転がり軸受とは、前記段差面に対して軸方向にこの順に位置するとともに、前記小径部にねじ込まれた軸受用ロックナットと、前記段差面と、によって前記ナットの軸方向への移動を規制されており、
前記ハブは、前記小径部にセレーション結合される第1ハブ部と、前記大径部に嵌合される第2ハブ部と、を有し、
前記第1ハブ部と前記第2ハブ部とは、前記ハブの軸方向に連続し且つ一体化されており、
前記大径部は、前記大径部の前記外周面から前記ナットの中心へ向かって窪む凹部を構成する、一対の側面と底面とを有し、
前記循環部は、前記一対の側面と前記底面と前記第2ハブ部の内周面とによって規定された循環通路である、
ことを特徴とする伝動装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の伝動装置と、
前記伝動部材から前記ナットへ伝達する転舵用駆動力を、発生する電動モータと、
前記ねじ軸により構成されて、転舵用車輪を転舵する転舵軸と、
を有している、車両用ステアリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転運動を直進運動に変換、及び/又は、直進運動を回転運動に変換するボールねじを含む伝動装置、及びこの伝動装置を用いた車両用ステアリング装置の改良技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ボールねじは、ねじ軸と、複数のボールと、複数のボールによってねじ部に連結されるナットと、により構成されている。ねじ部を転動している複数のボールは、ナットに設けられている循環通路(循環部)を通って循環する。このようなボールねじを含む伝動装置を用いた車両用ステアリング装置は、例えば許文献1によって知られている。
【0003】
特許文献1で知られている車両用ステアリング装置の伝動装置では、ボールねじのねじ軸は、車幅方向へ延びている筒状のハウジングに収納されており、このハウジングに沿って移動可能である。電動モータが発生した転舵用駆動力は、プーリによってナットに伝達され、更に、このナットから複数のボールを介して、ねじ軸に伝えられる。ねじ軸は、ハウジング内をスライドして、車両の転舵用車輪を転舵する。
【0004】
ボールねじのナットの一端は、外周面に位置決め用のフランジを有している。ナットの外周面には、前記プーリと軸受が嵌合している。この軸受は、ナットをハウジングの内部に回転可能に支持している。プーリと軸受とは、フランジに対してこの順に位置しており、ナットの他端にねじ込まれた軸受用ロックナットによって、ナットに対する位置決めが、なされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015−168371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ナットは、内周面にねじ部を有するとともに、複数のボールを循環するための循環通路を有しているので、比較的大径である。このため、ナットを支持する軸受とハウジングも大径にならざるを得ない。ハウジングを含む伝動装置全体の、小型化を図るには、改良の余地がある。
【0007】
本発明は、伝動装置の小型化を図ることができる技術を、提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、伝動装置は、
筒状のハウジングと、
前記ハウジングに沿いつつ移動可能に前記ハウジングに収納されており、外周面にねじ部を有しているねじ軸と、
前記ねじ部に転動することが可能に位置している複数のボールと、
前記複数のボールにより前記ねじ部に連結される円筒状の部材であって、前記ねじ部を転動している前記複数のボールを循環する循環部を外周面に有している大径部と、前記大径部に対し前記ねじ軸の軸方向に連なり且つ前記大径部よりも小径の小径部と、を有しているナットと、
前記小径部を前記ハウジングの内部に回転可能に支持している軸受と、を含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、ボールねじのナットは、循環部を外周面に有している大径部の他に、この大径部よりも小径である小径部を有している。軸受は、ナットのなかの小径部を、ハウジングの内部に支持している。このため、軸受を小径にすることができる。軸受が小径になるので、ハウジングの径も小径にできる。
【0010】
大径部に対し、小径部がねじ軸の軸方向に連なっている分、ナットの長さは長い。しかし、ナットを収納している筒状のハウジングは、このハウジングに沿いつつ移動可能なねじ軸をも収納するので、必然的に長い。このため、ハウジングの長さの範囲に、伝動装置を配置することができる。ハウジングを、更に長くする必要はない。つまり、筒状のハウジングの長さを巧みに活用して、このハウジングを小径にしている。
【0011】
このように、ハウジングの長さを維持しつつ、軸受及びこのハウジングを小径にすることによって、ハウジングを含む伝動装置全体の、小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】
図1に示されるナットと伝動部材とガイド部材とエンドディフレクタとが組み合わされた構成の断面図である。
【
図3】
図1に示されるナットと伝動部材と転がり軸受と転がり軸受用ロックナットの分解図である。
【
図5】
図3に示されるナットとガイド部材とエンドディフレクタの分解図である。
【
図6】
図2に示されるナットとガイド部材とエンドディフレクタとが組み合わされたサブアッセンブリと伝動部材との分解図である。
【
図7】
図4に示される循環部の概念を説明する説明図である。
【
図8】
図1に示される伝動装置を用いた車両用ステアリング装置の模式図である。
【
図9】本発明の実施例2によるボールねじ装置のガイド部材周りの断面図である。
【
図10】本発明の実施例3によるボールねじ装置のガイド部材周りの断面図である。
【
図11】本発明の実施例4によるボールねじ装置のナットのねじ部とねじ軸のねじ部とを示す断面図である。
【
図12】本発明の実施例4によるボールねじ装置の外観図であり、エンドディフレクタをナットに組み付けた状態を示す(ねじ軸は不図示)。
【
図13】本発明の実施例4によるボールねじ装置の外観図であり、エンドディフレクタをナットに組み付ける前の状態を示す(ねじ軸は不図示)。
【
図14】本発明の実施例4によるボールねじ装置のエンドディフレクタの構成図である。
【
図15】本発明の実施例4によるボールねじ装置のねじ軸の軸方向から見たナットとエンドディフレクタの平面説明図である。
【
図16】本発明の実施例4によるボールねじ装置のねじ軸のねじ部及びエンドディフレクタの断面図である。
【
図17】本発明の実施例4によるボールねじ装置のボール持ち上げ部によりボールが持ち上げられる様子を示す作用断面図である。
【
図18】本発明の実施例4によるボールねじ装置のねじ軸のねじ部を径外方向から見て平面展開した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明を実施するための形態を添付図に基づいて以下に説明する。
<実施例1>
【0014】
図1乃至
図7を参照しつつ、実施例1の伝動装置1について説明する。
図1に示されるように、伝動装置1は、ハウジング2とボールねじ10と軸受50と伝動部材60とを含む。ハウジング2は、例えば車両の車幅方向へ延びている筒状の構成であって、一直線状に連結された、第1ハウジング3と第2ハウジング4とからなる。
【0015】
前記ボールねじ10は、回転運動を直進運動に変換、及び/又は、直進運動を回転運動に変換することが可能な変換機構である。このボールねじ10は、ねじ軸20と複数のボール30とナット40とを含む。
【0016】
前記ねじ軸20は、ハウジング2に収納されており、このハウジング2の長手方向に沿って移動可能である。なお、このねじ軸20は、両端部をハウジング2から露出した構成を含む。このねじ軸20は、外周面21にねじ部22を有している。
【0017】
前記複数のボール30は、ねじ部22に転動することが可能に位置している。
【0018】
前記ナット40は、ねじ軸20のねじ部22に、複数のボール30によって連結されている、円筒状の部材である。つまり、このナット40の内周面41に有しているねじ部42と、ねじ軸20に有しているねじ部22とが、相対する部分によって、複数のボール30が転動するねじ状の空間43、つまり、ねじ溝43が形成されて成る。このねじ溝43を転動する複数のボール30によって、ナット40は、ねじ部22に連結されている。
【0019】
図1及び
図2に示されるように、このナット40は、互いに同心に位置している、大径部44と小径部45と段差面46とを有している。大径部44は、この大径部44の外周面44aに循環部70を有しているので、比較的大径である。つまり、大径部44の外径D1は、小径部45の外径D2よりも大径である。この循環部70は、ねじ部22,42を転動している複数のボール30を循環する。この循環部70の詳しい構成については、後述する。
【0020】
図1及び
図3に示されるように、小径部45は、大径部44に対しねじ軸20の軸方向、つまり、ねじ軸20の中心線CLに沿う方向に連なり(一体に連続しており)、且つ、大径部44よりも小径の部分である。ねじ軸20の中心線CLは、ナット40の中心線と合致している。以下、ねじ軸20の中心線CLのことを、適宜「ナット40の中心線CL」と言い換える。大径部44の外周面44aと小径部45の外周面45aとは、ナット40の中心線CLを基準とした真円状の同心円から成る面である。段差面46は、大径部44と小径部45との境界に位置して、ナット40の中心線CLに直交した、平坦な面である。
【0021】
ここで、小径部45について詳しく説明する。小径部45の外周面45aには、段差面46から、大径部44とは反対方向の一端40a(ナット40の一端40a)にかけて、雄セレーション45bと軸受嵌合部45cと雄ねじ45dとが、この順に設けられている。
【0022】
図1に示されるように、前記軸受50は、ナット40のなかの、小径部45をハウジング2の内部(ハウジング2の内周面2a)に回転可能、且つ、ハウジング2に対する軸方向への移動を規制して支持している。この軸受50は、転がり軸受によって構成されている。
【0023】
図1及び
図2に示されるように、前記伝動部材60は、ナット40の小径部45との間で互いに回転力を伝達し合うことが可能であって、例えばプーリ、ギヤ、スプロケット、軸継手、回転軸等の各種の回転体によって、構成することが可能である。本実施例では、プーリを例示して説明する。
【0024】
図2及び
図3に示されるように、この伝動部材60は中心部分にハブ61を有している。このハブ61は、ナット40の小径部45に嵌合され、且つ、小径部45に対して互いに回転力の伝達が可能に連結される。このハブ61は、第1ハブ部62と第2ハブ部63とから成る。第1ハブ部62と第2ハブ部63とは、互いに同心に位置しており、ハブ61の軸方向に連続し且つ一体化されている。第1ハブ部62の内周面62aの径は、第2ハブ部63の内周面63aの径よりも小径である。第1ハブ部62の内周面62aと、第2ハブ部63の内周面63aと、の境界は、ハブ段差面64によって繋がっている。このハブ段差面64は、ナット40の中心線CLに直交した平坦な面である。
【0025】
第1ハブ部62は、小径部45の外周面45aに嵌合し且つ連結することが可能な、円筒状の嵌合部分である。例えば、ナット40の小径部45に対して、第1ハブ部62をセレーション、スプライン、キー、ボルト又はピンによって、互いに相対的な回転を規制しつつ連結することができる。一例を挙げると、第1ハブ部62は小径部45にセレーション結合される。より具体的に述べると、第1ハブ部62の内周面62aには、ナット40の雄セレーション45bに連結可能な、雌セレーション62bが構成されている。
【0026】
第2ハブ部63は、大径部44の外周面44aに嵌合することが可能な、円筒状の嵌合部分である。つまり、この第2ハブ部63の内周面63aは、大径部44の外周面44aに対して、抜き取り可能に嵌合している。この第2ハブ部63の外周面に、外部との伝動機能を有している伝動部分65(プーリのベルト掛け部分65)が設けられている。
【0027】
図1も参照すると、伝動部材60の第1ハブ部62と軸受50とは、ナット40の段差面46に対して軸方向にこの順に位置するとともに、小径部45に設けられた止め部材51と段差面46とによって、ナット40の軸方向への移動を規制されている。この止め部材51は、小径部45の雄ねじ45dにねじ込み可能な、転がり軸受用ロックナットによって構成されている。
【0028】
図3に示されるように、ナット40に対する伝動部材60及び軸受50の、組み付け手順は次の通りである。
先ず、伝動部材60のハブ61を、ナット40の一端40aから挿入する(伝動部材組み付け工程)。そして、第2ハブ部63の内周面63aを大径部44の外周面44aに嵌め込みつつ、第1ハブ部62の内周面62aを小径部45の外周面45aに嵌め込んでいく。第1ハブ部62の内周面62aを小径部45の外周面45aに嵌め込む途中で、第1ハブ部62の雌セレーション62bをナット40の雄セレーション45bに嵌め込んで連結する。この結果、ナット40に対する伝動部材60の相対回転が規制される。その後、ハブ段差面64がナット40の段差面46に接することによって、ナット40に対する伝動部材60の軸方向の位置が決まる。
【0029】
次に、ナット40の一端40aから軸受嵌合部45cへ軸受50を挿入する(軸受組み付け工程)。
次に、止め部材51(転がり軸受用ロックナット51)をナット40の一端40aから雄ねじ45dにねじ込む(止め部材組み付け工程)。そして、ナット40の段差面46と止め部材51とによって、第1ハブ部62と軸受50とを、ナット40の軸方向に挟み込む。この結果、ナット40に対して、伝動部材60及び軸受50の、軸方向の位置が決まり且つ取り付けられる。
これで、ナット40に対する伝動部材60及び軸受50の、組み付け作業を完了する。
【0030】
以上の説明から明らかなように、ナット40に対して、伝動部材60と軸受50と止め部材51とを、一方向からこの順に組み付けるだけなので、組み付け作業性が良く、組み付け工数が少なくてすむ。
【0031】
次に
図2、
図4及び
図5を参照しつつ、前記循環部70について説明する。この循環部70は、ナット40の大径部44と、第2ハブ部63と、一対のガイド部材80,80と、一対のエンドディフレクタ90,90とを含む。
【0032】
ナット40の大径部44は、軸方向(ナット40の中心線CLに沿う方向)の中央部に、大径部44の外周面44aから全周にわたって窪んでいる環状の凹部47を有する。以下、この環状の凹部47のことを、適宜「環状凹部47」と言い換える。この環状凹部47は、大径部44に対して同心に位置している。環状凹部47の底面47aは、ナット40の中心線CLを中心とした、真円状の面である。環状凹部47の底面47aの径D3は、大径部44の外径D1よりも小径である。このように、ナット40のなかの、環状凹部47が位置している部位は、大径部44に対して小径になっている分だけ、薄肉である。この結果、ナット40は軽量になる。
【0033】
前記一対のガイド部材80,80は、環状凹部47の底面47aに対し径方向に着脱可能であって、樹脂の成形品であることが好ましい。一対のガイド部材80,80を、ナット40とは別個に樹脂によって生産することができるとともに、軽量化することができる。この結果、ボールねじ10を一層軽量にすることができる。この一対のガイド部材80,80は、環状凹部47の周方向に一定の間隔Le(
図4参照)を有して位置し、環状凹部47の軸方向の両端面47b,47b間に延びている。
【0034】
さらに、この一対のガイド部材80,80は、ナット40の中心線CLに沿う方向から見て、断面四角形を呈しているバー状の構成である。より詳しく述べると、一対のガイド部材80,80が、環状凹部47の周方向に間隔Leを有して位置した構成において、断面四角形を呈する各4面81乃至84の内訳は、環状凹部47の底面47aに全面にわたって接することが可能な第1面81,81と、第2ハブ部63の内周面63aに全面にわたって接することが可能な第2面82,82と、互いに間隔Leを有して向かい合う第3面83,83と、この第3面83,83に対して反対側の第4面84,84と、である。第1面81,81は、環状凹部47の底面47aと同じ曲面に構成されてなる。第2面82,82は、第2ハブ部63の内周面63aと同じ曲面に構成されてなる。第3面83,83及び第4面84,84は、互いに平行である。
【0035】
大径部44の外周面44aから環状凹部47の底面47aまでの深さ、つまり大径部44に対する環状凹部47の深さはDpである。ガイド部材80が環状凹部47に嵌め込まれた構成では、第1面81は大径部44の外周面44aに対して段差無く、大径部44の外周面44a上に極めて滑らかに連なる(面一となる)。一対のガイド部材80,80間の間隔Leと、大径部44に対する環状凹部47の深さはDpは、
図1に示されるボール30が転動可能な大きさ(例えばボール30の径よりも若干大きい値)に設定される。
【0036】
一対のガイド部材80,80は、ナット40の軸方向に沿う方向の両端85,85(両端面85,85)に、一対ずつの第1位置決め部86,86を有している。これらの第1位置決め部86は、第1面81側から見て円弧状の突起の構成である。
【0037】
これに対し、大径部44の外周面44aには、複数(例えば4つ)の第2位置決め部44bが形成されて成る。この複数の第2位置決め部44bは、それぞれの第1位置決め部86を大径部44の径外方から嵌め込み可能な凹状の構成であって、大径部44の外周面44aから窪んでいる。この第2位置決め部44bの形状は、大径部44の径外方から見て、第1位置決め部86,86と同じ円弧状である。
【0038】
図5に示されるように、それぞれの第1位置決め部86と、それぞれの第2位置決め部44bとの嵌合関係によって、一対のガイド部材80,80はナット40に位置決めされている。
【0039】
このように、一対のガイド部材80,80は、ナット40の軸方向に沿う方向の両端55,55に、一対ずつの第1位置決め部86,86を有している。大径部44は、外周面44aに、一対ずつの第1位置決め部86,86を径外方から嵌め込み可能な、複数の第2位置決め部44bを有している。このため、複数の第2位置決め部44bに対して、各々の第1位置決め部86を径外方から嵌め込むだけで、ナット40に一対のガイド部材80,80を正確に且つ容易に位置決めすることができる。しかも、ナット40に対する一対のガイド部材80,80の位置を、確実に保持することができる。
【0040】
第2ハブ部63は、大径部44に嵌合された構成において、一対のガイド部材80,80を径外方への変位を規制しつつ覆っている。このように、伝動部材60は、ナット40に対して、一対のガイド部材80,80を径外方への変位を規制しつつ覆うことが可能な、いわゆるカバーの役割を果たす。
【0041】
図2及び
図4に示されるように、前記循環部70は、環状凹部47の底面47aと、ナット40に組み付けられている一対のガイド部材80,80と、第2ハブ部63の内周面63aと、によって規定された(囲まれた)循環通路、つまり空間である。
【0042】
この循環部70の概念について、
図7(a)乃至
図7(c)を参考しつつ説明する。
図7(a)は、
図4に示される環状凹部47の底面47aと一対のガイド部材80,80との関係を再掲している。
図7(b)は、
図7(a)に示される空間71を模式的に表している。
図7(c)は、
図7(b)に示される空間71を第2ハブ部63により囲うことによって、環状凹部47を構成した概念を、模式的に表している。
【0043】
図7(a)に示されるように、環状凹部47の底面47aと、一対のガイド部材80,80の第3面83,83と、によって囲まれた空間71のことを、「凹部71」という。この凹部71は、大径部44の外周面44aからナット40の中心へ向かって窪んでおり、ナット40の中心線CL(
図3参照)に沿っている。凹部71の一対の側面72,72は、一対のガイド部材80,80の第3面83,83によって構成される。凹部71の底面73は、環状凹部47の底面47aの一部によって構成される。つまり、大径部44は、
図7(b)に示されるように、この大径部44の外周面44aからナット40の中心へ向かって窪む凹部71を構成していると、いうことができる。
【0044】
図7(c)に示されるように、この大径部44の外周面44aに第2ハブ部63の内周面63aを嵌合することによって、内周面63aは凹部71(
図7(b)参照)を囲うことになる。凹部71を内周面63aにより囲うことによって構成された、閉鎖した空間70のことを、循環部70という。この循環部70は、一対の側面72,72と底面73と第2ハブ部63の内周面63aとによって規定された循環通路である。以下、この循環部70のことを、適宜「循環通路62」と言い換える。ねじ溝43を転動している複数のボール30は、循環通路70を通って循環することが可能である。
【0045】
図1及び
図2に示されるように、前記一対のエンドディフレクタ90,90は、ねじ溝43と循環通路70の両端との間を連通する部材であって、例えば樹脂の成形品によって構成される。各エンドディフレクタ90,90は、ねじ溝43と循環通路70との間を連通する連通孔91,91を有する。ねじ溝43を転動している複数のボール30は、連通孔91,91を通り循環通路70によって循環をすることができる。
【0046】
図5に示されるように、大径部44は、外周面44aに、一対の凹部48,48を有している。これらの一対の凹部48,48は、大径部44の外周面44aから窪んでいる。一対のエンドディフレクタ90,90は、各凹部48,48に対して、大径部44の径外方から個別に嵌め込み可能である。
【0047】
図2及び
図5に示されるように、一対のエンドディフレクタ90,90が各凹部48,48に嵌め込まれた構成では、各エンドディフレクタ90,90の外面は大径部44の外周面44aに対して段差無く、大径部44の外周面44a上に極めて滑らかに連なる(面一となる)。伝動部材60の第2ハブ部63は、一対のガイド部材80,80と共に、一対のエンドディフレクタ90,90の、径外方への変位を規制しつつ覆っている。
【0048】
このため、一対のエンドディフレクタ90,90は、大径部44の外周面44aに有している各凹部48,48に対して、径外方から個別に嵌め込み可能である。しかも、一対のエンドディフレクタ90,90を、一対のガイド部材80,80と共に、伝動部材60を有効活用して覆うことができる。このため、一対のエンドディフレクタ90,90を覆うための、「別個の部材」は必要ない。さらには、一対のガイド部材80,80は、一対のエンドディフレクタ90,90と別体なので、簡易な形状とすることができる。
【0049】
以上の説明から明らかなように、伝動部材60は次の4つの構成を全て有している。
第1に、
図1に示されるように、伝動部材60は、ナット40に対して、互いに回転力を伝達し合うことが可能な構成である。
【0050】
第2に、
図4及び
図7に示されるように、伝動部材60は、環状凹部47及び一対のガイド部材80,80と協働して循環通路70を規定することが可能な構成である。
【0051】
第3に、
図2及び
図4に示されるように、伝動部材60は、ナット40に対して、一対のガイド部材80,80を径外方への変位を規制しつつ覆うことが可能な構成である(
図4参照)。
【0052】
第4に、
図2及び
図4に示されるように、伝動部材60は、ナット40に対して、一対のガイド部材80,80と共に、一対のエンドディフレクタ90,90の、径外方への変位を規制しつつ覆うことが可能な構成である。
【0053】
第3の構成と第4の構成とから明らかなように、ナット40に組み付けられる伝動部材60を、有効活用している。この伝動部材60の第2ハブ部63により、一対のガイド部材80,80及び一対のエンドディフレクタ90,90を、ナット40に対する径外方への変位を規制しつつ覆っている。このため、一対のガイド部材80,80及び一対のエンドディフレクタ90,90が、ナット40から外れることはない。
【0054】
次に、
図8を参照しつつ、上記伝動装置1を用いた車両用ステアリング装置100を例示して、説明する。
【0055】
車両用ステアリング装置100は、ステアリング系110と転舵動力伝達機構130の両方、または、転舵動力伝達機構130のみによって構成される。ステアリング系110は、車両のステアリングホイール111から車輪121,121(転舵用車輪121,121)に至る系統である。転舵動力伝達機構130は、車輪121,121に転舵用動力を付加する構成である。
【0056】
本実施例では、転舵動力伝達機構130のことを、ステアリング系110に補助トルクを付加する補助トルク機構を例示して説明する。以下、転舵動力伝達機構130のことを、適宜「補助トルク機構130」と言い換える。
【0057】
ステアリング系110は、ステアリングホイール111と、このステアリングホイール111に連結されたステアリング軸112と、このステアリング軸112に自在軸継手113によって連結された入力軸114と、この入力軸114に第1伝動機構115によって連結された転舵軸116と、この転舵軸116の両端にボールジョイント117,117とタイロッド118,118とナックル119,119とを介して連結された左右(車幅方向両側)の車輪121,121と、から成る。第1伝動機構115は、例えばラックアンドピニオン機構によって構成される。
【0058】
ステアリング系110によれば、運転者がステアリングホイール111を操舵することによって、操舵トルクにより第1伝動機構115と転舵軸116と左右のタイロッド118,118とを介して、左右の車輪121,121を操舵することができる。
【0059】
補助トルク機構130(転舵動力伝達機構130)は、操舵トルクセンサ131と制御部132と電動モータ133と第2伝動機構134とから成る。操舵トルクセンサ131は、ステアリングホイール111に加えられたステアリング系110の操舵トルクを検出する。制御部132は、操舵トルクセンサ131のトルク検出信号に基づいて制御信号を発生する。電動モータ133は、制御部132の制御信号に基づき、前記操舵トルクに応じたモータトルク(補助トルク)、つまり転舵用駆動力を発生する。第2伝動機構134は、電動モータ133が発生した補助トルクを前記転舵軸116に伝達する。
【0060】
この車両用ステアリング装置100によれば、運転者の操舵トルクに電動モータ133の補助トルクを加えた複合トルクにより、転舵軸116によって車輪121,121を転舵することができる。
【0061】
転舵軸116は、上記ねじ軸20によって構成されており、車幅方向(軸方向)へ移動可能にハウジング2に収納されている。第1伝動機構115及び第2伝動機構134も、ハウジング2に収納されている。
【0062】
図1及び
図7に示されるように、第2伝動機構134は、例えばベルト伝動機構150と上記ボールねじ10とから成る。
【0063】
ベルト伝動機構150は、電動モータ133の出力軸133aに設けられた駆動プーリ151と、ボールねじ10のナット40に設けられた従動プーリ152と、駆動プーリ151と従動プーリ152とに掛けられたベルト153とから成る。従動プーリ152は、ボールねじ10の伝動部材60の一種である。以下、従動プーリ152のことを、適宜「伝動部材60」と言い換えることにする。
【0064】
ボールねじ10は、電動モータ133(
図7参照)が発生した転舵用駆動力、つまり補助トルクを前記転舵軸116に伝達する。
【0065】
以上の説明をまとめると、次の通りである。
図1乃至
図3に示されるように、伝動装置1は、
筒状のハウジング2と、
前記ハウジング2に沿いつつ移動可能に前記ハウジング2に収納されており、外周面21にねじ部22を有しているねじ軸20と、
前記ねじ部22に転動することが可能に位置している複数のボール30と、
前記複数のボール30により前記ねじ部22に連結される円筒状の部材であって、前記ねじ部22を転動している前記複数のボール30を循環する循環部70を外周面44aに有している大径部44と、前記大径部44に対し前記ねじ軸20の軸方向に連なり且つ前記大径部44よりも小径の小径部45と、を有しているナット40と、
前記小径部45を前記ハウジング2の内部に回転可能に支持している軸受50と、を含む。
【0066】
このように、ボールねじ10のナット40は、循環部70を外周面44aに有している大径部44の他に、この大径部44よりも小径である小径部45を有している。軸受50は、ナット40のなかの小径部45を、ハウジング2の内部に支持している。このため、軸受50を小径にすることができる。軸受50が小径になるので、ハウジング2の径も小径にできる。
【0067】
大径部44に対し、小径部45がねじ軸20の軸方向に連なっている分、ナット40の長さは長い。しかし、ナット40を収納している筒状のハウジング2は、このハウジング2に沿いつつ移動可能なねじ軸20をも収納するので、必然的に長い。このため、ハウジング2の長さの範囲に、伝動装置1を配置することができる。ハウジング2を、更に長くする必要はない。つまり、筒状のハウジング2の長さを巧みに活用して、このハウジング2を小径にしている。
【0068】
このように、ハウジング2の長さを維持しつつ、軸受50及びこのハウジング2を小径にすることによって、ハウジング2を含む伝動装置1全体の、小型化を図ることができる。
【0069】
さらには、
図1乃至
図3に示されるように、前記ナット40の前記小径部45に嵌合され、且つ、前記小径部45に対して互いに回転力の伝達が可能に連結されたハブ61を有している、伝動部材60を更に含み、
前記ナット40は、前記大径部44と前記小径部45との境界に位置して前記ナット40の中心線CLに直交した段差面46を有しており、
前記ハブ61と前記軸受50とは、前記段差面46に対して軸方向にこの順に位置するとともに、前記小径部45に設けられた止め部材51と前記段差面46とによって、前記ナット40の軸方向への移動を規制されている。
【0070】
このように、ハブ61と軸受50と止め部材51とを、ナット40に一方向から組み付けるだけの簡単な作業によって、ナット40に対する軸方向への移動を容易に規制することができる。
【0071】
さらには、
図1及び
図3に示されるように、前記軸受50は、転がり軸受50によって構成され、
前記止め部材51は、前記小径部45にねじ込み可能な転がり軸受用ロックナット51によって構成されている。
【0072】
このため、小径部45に転がり軸受用ロックナット51をねじ込むだけによって、製造公差に関係なく、ナット40に対する、ハブ61と転がり軸受50の軸方向への位置を、精度良く設定することができる。
【0073】
さらには、
図3に示されるように、前記ハブ61は、前記小径部45に嵌合され且つ連結される第1ハブ部62と、前記大径部44に嵌合される第2ハブ部63と、を有し、
前記第1ハブ部62と前記第2ハブ部63とは、前記ハブ61の軸方向に連続し且つ一体化されている。
【0074】
第1ハブ部62と第2ハブ部63とを、ハブ61の軸方向に連続し且つ一体化することによって、第1ハブ部62の内周面62aと、第2ハブ部63の内周面63aと、の境界に段差面64(ハブ段差面64)を設けることができる。単一のハブ61であるにもかかわらず、ハブ段差面64を設けることができる。部品数が少なくてすむ。
【0075】
さらには、
図2、
図4及び
図7に示されるように、前記大径部44は、前記大径部44の前記外周面44aから前記ナット40の中心へ向かって窪む凹部71を構成する、一対の側面72,72と底面73とを有し、
前記循環部70は、前記一対の側面72,72と前記底面73と前記第2ハブ部63の内周面63aとによって規定された循環通路70である。
このため、簡単な構成によって、循環通路70を設けることができる。
【0076】
より詳しく述べると、
図1乃至
図7に示されるように、伝動装置1は、
筒状のハウジング2と、
前記ハウジング2に沿いつつ移動可能に前記ハウジング2に収納されており、外周面21にねじ部22を有しているねじ軸20と、
前記ねじ部22に転動することが可能に位置している複数のボール30と、
前記複数のボール30により前記ねじ部22に連結される円筒状の部材であって、前記ねじ部22を転動している前記複数のボール30を循環する循環部70を外周面44aに有している大径部44と、前記大径部44に対し前記ねじ軸20の軸方向に連なり且つ前記大径部44よりも小径の小径部45と、を有しているナット40と、
前記小径部45を前記ハウジング2の内部に回転可能に支持している転がり軸受50と、
前記ナット40の前記小径部45にセレーション結合されたハブ61を有しているプーリ152(従動プーリ152)によって構成された伝動部材伝動部材60と、を含み、
前記ナット40は、前記大径部44と前記小径部45との境界に位置して前記ナット40の中心線CLに直交した段差面46を有しており、
前記ハブ61と前記転がり軸受50とは、前記段差面46に対して軸方向にこの順に位置するとともに、前記小径部45にねじ込まれた軸受用ロックナット51と、前記段差面46と(つまり、段差面46にハブ段差面64が当たることによる規制と)、によって前記ナット40の軸方向への移動を規制されており、
前記ハブ61は、前記小径部45にセレーション結合される(雄セレーション45bに雌セレーション62bが連結される)第1ハブ部62と、前記大径部44に嵌合される第2ハブ部63と、を有し、
前記第1ハブ部62と前記第2ハブ部63とは、前記ハブ61の軸方向に連続し且つ一体化されており、
前記大径部44は、前記大径部44の前記外周面44aから前記ナット40の中心へ向かって窪む凹部71を構成する、一対の側面72,72と底面73とを有し、
前記循環部70は、前記一対の側面72,72と前記底面73と前記第2ハブ部63の内周面63aとによって規定された循環通路である。
【0077】
図1及び
図8に示されるように、車両用ステアリング装置100は、
前記伝動装置1と、
前記伝動部材60から前記ナット40へ伝達する転舵用駆動力を、発生する電動モータ133と、
前記ねじ軸20により構成されて、転舵用車輪121,121を転舵する転舵軸116と、を有している。
【0078】
このため、電動モータ133が発生する転舵用駆動力を、伝動部材60からナット40へ伝達することによって、ナット40の回転運動を転舵軸116の直進運動に変換し、転舵用車輪121,121を効率よく転舵することができる。
【0079】
<実施例2>
図9を参照しつつ、実施例2のボールねじ装置200について説明する。
図9は、上記
図4に対応して表してある。実施例2のボールねじ装置200は、
図1〜
図8に示される上記実施例1のボールねじ装置10の一対のガイド部材80,80を、
図9に示される一対のガイド部材280,280に変更したことを特徴とし、他の構成は実施例1と同じなので、説明を省略する。
【0080】
実施例2の一対のガイド部材280,280の第1面81,81は、小径部45の外周面45aに対して接することなく離間している。つまり、第1面81,81と外周面45aとの間に隙間を有している。このため、第1面81,81から第2面82,82までの寸法を厳密に管理する必要がない。ボールねじ装置200の管理工数を低減することができる。その他の作用、効果は、実施例1と同様である。
【0081】
<実施例3>
図10を参照しつつ、実施例3のボールねじ装置300について説明する。
図10は、上記
図4に対応して表してある。実施例3のボールねじ装置300は、
図1〜
図8に示される上記実施例1のボールねじ装置10の一対のガイド部材80,80を、
図10に示される一対のガイド部材380,380に変更したことを特徴とし、他の構成は実施例1と同じなので、説明を省略する。
【0082】
実施例3の一対のガイド部材380,380の第1面81,81及び第2面82,82は、外方へ凸となる曲面の構成である。詳しく述べると、第1面81,81は、小径部45の外周面45aに向かって凸となる曲面状断面の構成である。このため、実施例3では、曲面状の第1面81,81の凸の先端だけが、小径部45の外周面45aに接することが可能である。また、第2面82,82は、嵌合部分61の内周面61aに向かって凸となる曲面状断面の構成である。このため、実施例3では、曲面状の第2面82,82の凸の先端だけが、嵌合部分61の内周面61aに接することが可能である。従って、第1面81,81及び第2面82,82の形状と寸法とを、厳密に管理する必要がない。ボールねじ装置300の管理工数を低減することができる。その他の作用、効果は、実施例1と同様である。
【0083】
<実施例4>
図11〜
図18を参照しつつ、実施例4のボールねじ装置400について説明する。実施例4のボールねじ装置400は、
図1〜
図8に示される上記実施例1のボールねじ装置10の一対のエンドディフレクタ90,90を、
図11〜
図18に示される一対のエンドディフレクタ470,470に変更したことを特徴とし、他の構成は実施例1と同じなので、説明を省略する。
【0084】
以下、ボールねじ装置400について詳細に説明する。
図1、
図11〜
図13に示されるように、ボールねじ装置400は、内周面41に螺旋溝42(ねじ部42)が形成されたナット40と、ナット40を挿通し、外周面21に螺旋溝22(ねじ部22)が形成されたねじ軸20と、螺旋溝22に沿って転動する複数のボール30と、ナット40に取り付けられる一対のエンドディフレクタ470、470(一方のみを図示)と、を備えて構成されている。なお、以降の説明において、ボール30の進行方向とは、ボール30が螺旋溝22,42からエンドディフレクタ470に入って行く方向をいう。
【0085】
「ナット40」
ナット40は、円筒状の部材であり、
図11に示されるように、ねじ軸20の螺旋溝22との間でボール30を収容する螺旋溝42を備えている。螺旋溝22,42の断面形状は、例えばそれぞれ尖端の溝底部22a,42aを有したゴシックアーク形状を呈している。螺旋溝22の溝山部22bと、螺旋溝42の溝山部42bとは、距離sを空けて離間している。
【0086】
図13(a)は、エンドディフレクタ470をナット40に組み付ける前の状態を示している。
図13(b)は、
図13(a)に示されるエンドディフレクタ470を径外方から見た構成を示している。
【0087】
図13(a)、(b)に示されるように、軸線CL方向(軸CL方向)外側Ouとは、ナット40の軸線CL方向中央部から軸線CL方向に沿って遠ざかる方向をいい、軸線CL方向内側Inとは、ナット40の軸線CL方向中央に近づく方向をいう。
【0088】
エンドディフレクタ470を収容する収容部48(つまり、凹部48)は、ナット40の内周面41から外周面44a側に向けて延設され互いに対向する第1側壁面628、第2側壁面629と、第1側壁面628におけるナット40の外周面44a寄り縁部と第2側壁面629におけるナット40の外周面44a寄り縁部とにわたって形成される底壁面630(つまり、嵌合部分61の内周面61aに相当する)と、第1側壁面628、第2側壁面629、底壁面630の各軸線CL方向内側寄りの縁部にかけて形成される第1突当て面631と、第1側壁面628、第2側壁面629、底壁面630の各軸線CL方向外側寄りの縁部にかけて形成される第2突当て面632とによって画成されている。
【0089】
第1側壁面628、第2側壁面629、底壁面630は軸線CL方向に沿って形成され、第1突当て面631は軸線CL方向と直交する面に沿って形成されている。第1側壁面628、第2側壁面629は互いに対向しているが、互いに平行である必要はない。第2側壁面629は、螺旋溝22の端部22cに滑らかに連なるように形成されている。第1突当て面631には循環路62(循環通路62)の開口部が臨む。循環路62はナット40において軸線CL方向に沿って形成され、ナット40の反対側の端部にも同様の開口部が形成されている。
【0090】
「エンドディフレクタ470」
図11も参照すると、エンドディフレクタ470は、ボール30の螺旋溝22,42内での螺旋移動と循環通路62内での軸線CL方向移動とを整流させる機能、すなわち螺旋溝22,42と循環通路62との間でボール30の向きを変える機能を有する部材である。
【0091】
図14(a)はエンドディフレクタ470を構成する第1部材473と第2部材474とを組み付けた状態の斜視図、
図14(b)は第1部材473と第2部材474とを組み付ける前の状態の斜視図、
図14(c)は第1部材473と第2部材474とを組み付けた状態の平面図である。
【0092】
主に
図13及び
図14を参照して説明すると、エンドディフレクタ470の内部にはボール30を通す通路518(連通孔518)が形成されている。実施例4では、主にこの通路518の成型性の点から、エンドディフレクタ470は、ねじ軸20の螺旋溝22に連なる断面半円形通路(第1半通路511という)が形成された第1部材473と、ナット40の螺旋溝22に連なる断面半円形通路(第2半通路517という)が形成された第2部材474とに分割構成されている。エンドディフレクタ470の材質は特に限定されず、金属材料や合成樹脂材料等である。エンドディフレクタ470を例えば亜鉛材料から構成した場合、ダイキャスト法により部品を形成できる。
【0093】
第1部材473は、軸線CL方向に概ね沿う外郭面として、第1側壁面628に倣って形成された第1側面476と、底壁面630に倣って形成された外側面513Aと、ねじ軸20に対向する内面477と、第2部材474と接面される面である分割面478とを有している。第1部材473の軸線CL方向内側寄りの端面は、第1突当て面631に突き当たる被突当て面479として形成されている。第1部材473の軸線CL方向外側寄りの端面は、第2突当て面632に突き当たる被突当て面510として形成されている。分割面478には、ボール30の通路518の半分を構成する第1半通路511が形成されている。内面477の一部には、軸線CLの径内方向に膨出してねじ軸20の螺旋溝22内に位置する爪部475が形成されている。爪部475は、螺旋溝22と干渉しない程度の大きさの略半円形状を呈している。
【0094】
第2部材474は、軸線CL方向に概ね沿う外郭面として、第2側壁面629に倣って形成された第2側面512と、底壁面630に倣って形成された外側面513Bと、第1部材473と接面される面である分割面514とを有している。第2部材474の軸線CL方向内側寄りの端面は、第1突当て面631に突き当たる被突当て面515として形成されている。第2部材474の軸線CL方向外側寄りの端面は、第2突当て面632に突き当たる被突当て面516として形成されている。分割面514には、ボール30の通路71の半分を構成する第2半通路517が形成されている。第2半通路517の先端には、螺旋溝22の端部22cからボール30を滑らかに導くように切欠き540が形成されている。
【0095】
第2部材474の分割面514には係合突起部519が形成されているとともに、第1部材473の分割面478には係合凹部520が形成されている。第1部材473と第2部材474とは、係合突起部519が係合凹部520にたとえばスナップ係合することで分割面478,514同士が接面し、両者が一体となってエンドディフレクタ470を構成する。端面510,516同士は面一状に連なり、被突当て面479,515同士も面一状に連なる。そして、エンドディフレクタ470の内部には、第1半通路511と第2半通路517とが合わさることで、螺旋溝22,42に連通する第1通路518Aと、この第1通路518Aから滑らかに略90度方向転換して軸線CL方向に沿って形成され循環路62の開口部に連通する第2通路518Bと、からなる通路518が形成される。なお、第1部材473と第2部材474とを一体化させる構造は係合突起部519,係合凹部520の係合方法に特に限定されるものではない。また、第1部材473と第2部材474とを一体化させる構造はなくてもよい。
【0096】
以上の構成において、
図15に示されるようにボール30がエンドディフレクタ470内に入る際、ボール30は、
(1)螺旋溝42と螺旋溝22とによる挟持状態、
(2)螺旋溝42と第2部材474の第2半通路517とによる挟持状態、
(3)第1部材473の第1半通路511と第2部材474の第2半通路517とによる挟持状態、の順を経る。
(1)から(2)への移行については、第2部材474の第2半通路517をナット40の螺旋溝22の端部22cに対して隙間や段差を生じることなく切り欠き540(
図14参照)により滑らかに連通させることで、ボール30をスムーズに移動させることができる。しかしながら、(2)から(3)への移行については、ねじ軸20はエンドディフレクタ470に対して可動体であることから、エンドディフレクタ470の第1部材473とねじ軸20の螺旋溝22との間に接触回避の隙間tを設定せざるを得ない。従って、この隙間tの存在により、ボール30が爪部475に衝突して衝突音が発生しやすいことは既述した通りである。
【0097】
「ボール持ち上げ部571,572」
この問題に対し、本発明のエンドディフレクタ470は、ねじ軸20の螺旋溝22の幅中心を挟んで設けられる一対のボール持ち上げ部571,572(
図16〜
図18参照)を備えている。この一対のボール持ち上げ部571,572は、螺旋溝22の幅中心を挟んで螺旋溝22の幅方向に離間する2ヶ所でボール30を支持することで、ボール30を螺旋溝22から持ち上げる。
【0098】
実施例4では、ボール持ち上げ部571,572は第1部材473に形成されている。
図14〜
図16において、第1部材473は、第2部材474とねじ軸20の溝山部22bとの間でボール進行方向に沿って延び、ねじ軸20の螺旋溝22の幅中心を挟んで螺旋溝22の幅方向に離間して設けられる一対の薄板部573,574を備えている。薄板部574に対向する薄板部573の側面には傾斜面575が形成され、薄板部573に対向する薄板部574の側面には傾斜面576が形成されている。この傾斜面575,576は、それぞれがねじ軸20の径内方向に向かうに従い螺旋溝22の幅中心側に変位するように傾斜し、かつ
図17(a)〜(c)や
図18から判るように、ボール進行方向に向かうに従い互いの離間距離Lが狭くなるように形成されている。この傾斜面575,576が前記ボール持ち上げ部571,572を構成する。以上から判るように、ボール持ち上げ部571,572は螺旋溝22の溝山部22bよりも軸線CLの径外方向に位置することとなる。
【0099】
図17(a)、(b)及び(c)は、ボール持ち上げ部571,572によりボール30が持ち上げられる様子を示す作用断面図である。
図17(a)〜(c)の各断面図は、概ね
図15、
図18の各A−A断面、B−B断面、C−C断面を示している。なお、
図17(a)〜(c)及び
図16では、傾斜面575,576の離間距離Lが漸次狭くなるように変位している様子を判り易くするため、傾斜面575,576を点描にて図示してある。
【0100】
傾斜面575,576は、ボール30の球面に倣った曲面状であってもよいし、平面状であってもよい。
図16に示されるように、ねじ軸20の溝山部22bと薄板部573,574との距離wは、ねじ軸20の溝山部22bとボール中心pとの距離uよりも小さく設定されており、傾斜面575,576の径内方向寄りの縁がボール中心pよりも径内方向に位置している。従って、ボール30が傾斜面575,576にさしかかると、傾斜面575,576がボール30の中心pよりも下側の球面に接することによりボール30を両側から持ち上げ、進行方向に向かって離間距離Lが狭くなるに連れてボール30が次第にせり上げられていくこととなる。
【0101】
「作用」
ボール30が螺旋溝22,42からエンドディフレクタ470内に進入する際には、
図17(a)〜(c)示されるように、傾斜面575,576がボール30を両側から持ち上げ、進行方向に向かって傾斜面575,576の離間距離Lが狭くなるに連れてボール30が次第にせり上げられていく。これにより、ボール30は爪部475の先端に衝突することなくエンドディフレクタ470内の通路518に進入する。
【0102】
実施例4のように、一対のボール持ち上げ部571,572を備える構成とすれば、持ち上げ部571,572に当接した際の衝撃が2ヶ所に分散される。従って、持ち上げ部571,572に当接した際に衝突音が生じたとしても、従来の爪部475に当接した際の衝突音よりも小さなものとなる。持ち上げ部571,572は、ボール30の中心pを挟んでほぼ180度反対に位置しているので、持ち上げ部571,572に当接した際のボール30の跳ねの挙動も抑制される。
【0103】
加えて、実施例4のボール持ち上げ部571,572は、螺旋溝22の溝山部22bよりも軸線CLの径外方向に位置している。従来の爪部475によりボール30を掬う構造では、爪部475と螺旋溝22との間に接触回避の隙間tを設定せざるを得えず、そのためボール30に対する衝突角度(ボール30の進行方向とボール30の衝突部における接線方向との交差角度)が大きくなって衝突音が大きくなりやすい。これに対し、ボール持ち上げ部571,572を螺旋溝22の溝山部22bよりも軸線CLの径外方向に位置させれば、ボール30を持ち上げるに当たり、ねじ軸20との接触を何ら考慮することなく、ボール30に対するボール持ち上げ部571,572の衝突角度を極めて浅く設定できる。つまり、ボール持ち上げ部571,572の先端周りを、ボール30の球面の接線方向にほぼ沿って位置させることが可能となる。これにより、衝突音の発生をほぼ無くすことができる。
【0104】
また、ボール持ち上げ部571,572を、それぞれがねじ軸20の径内方向に向かうに従い螺旋溝22の幅中心側に変位するように傾斜し、かつボール進行方向に向かうに従い互いの離間距離Lが狭くなる一対の傾斜面575,576から構成すれば、ボール持ち上げ部571,572を簡単な構造にでき、ボール30を円滑に持ち上げることができる。
【0105】
また、実施例4のように、第1部材473に一対の薄板部573,574を備える形状とし、この薄板部573,574に傾斜面575,576を形成すれば、第1部材473と第2部材474とに分割構成されている場合のエンドディフレクタ470の形状設計が容易なものとなる。
【0106】
なお、本発明によるボールねじ10と車両用ステアリング装置100は、本発明の作用及び効果を奏する限りにおいて、実施例に限定されるものではない。
【0107】
例えば、伝動装置1は、車両用ステアリング装置100に用いる構成に限定されるものではなく、工作機械等の各種の産業機械や、輸送機器など、種々の装置に用いることができる。
【0108】
また、例えば、
図8に示される車両用ステアリング装置100は、ステアバイワイヤ(steer-by-wire)式ステアリング装置や、自動運転車両用ステアリング装置の構成であってもよい。
【0109】
ステアバイワイヤ式ステアリング装置は、ステアリングホイール111と転舵軸116との間を機械的に分離し、ステアリングホイール111の操舵量に従って、電動モータ133が転舵用動力を発生し、この転舵用動力をベルト伝動機構150によって転舵軸116に伝える方式の構成である。
【0110】
自動運転車両用ステアリング装置は、ステアリング系110のなかの、ステアリングホイール111とステアリング軸112と自在軸継手113と入力軸114と第1伝動機構115とを、完全に排除するとともに、電動モータ133と第2伝動機構134とを備えた構成である。運転者が操舵をすることなく、電動モータ133が発生した転舵用動力を、ベルト伝動機構150によって転舵軸116に伝えることにより、車輪121,121を自動的に転舵することができる。
【0111】
また、
図1に示される軸受50は、転がり軸受に限定されるものではなく、例えば滑り軸受の構成であってもよい。止め部材51は、ナット40の軸方向への軸受50の移動を規制する構成であればよく、例えば止め輪の構成であってもよい。
【0112】
また、
図1に示される伝動部材60は、ナット40との間で互いに回転力を伝達し合う構成であればよい。例えば、電動モータやエンジン等の各種の駆動源に有している、中空状の入力軸や出力軸を、伝動部材60とすることが可能である。
【0113】
また、
図7に示される循環部70の一部を構成するための、凹部71は、大径部44の環状凹部47の底面47aの一部と、一対のガイド部材80,80の第3面83,83と、によって囲まれた空間に限定されるものではなく、例えば、大径部44の外周面44aからナット40の中心へ向かって窪んだ構成であればよい。
【0114】
また、実施例4では、ボール持ち上げ部571,572を第1部材473側に形成したが、第2部材474側に形成してもよい。
また、エンドディフレクタ470は、第1部材473と第2部材474とに分割構成されたものではなく、全体が一体に成形されたものであってもよい。
さらに、ボール持ち上げ部571,572でボール30をエンドディフレクタ470内の通路518に円滑に導くことができれば、螺旋溝22内に突設する爪部475は無くともよい。
【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明の伝動装置10と車両用ステアリング装置100は、自動車に搭載するのに好適である。
【符号の説明】
【0116】
1 伝動装置
2 ハウジング
10 ボールねじ
20 ねじ軸
21 ねじ軸の外周面
22 ねじ部
30 ボール
40 ナット
41 ナットの内周面
42 ねじ部
44 大径部
44a 大径部の外周面
45 小径部
45a 小径部の外周面
45b 雄セレーション
45d 雄ねじ
46 段差面
50 軸受(転がり軸受)
51 止め部材(転がり軸受用ロックナット)
60 伝動部材
61 ハブ
62 第1ハブ部
62b 雌セレーション62b
63 第2ハブ部
63a 第2ハブ部の内周面
70 循環部(循環通路)
71 凹部
72 凹部の一対の側面
73 凹部の底面
100 車両用ステアリング装置
111 ステアリングホイール
116 転舵軸
121 転舵用車輪
133 電動モータ
150 ベルト伝動機構
151 駆動プーリ
152 従動プーリ
153 ベルト
CL ねじ軸の中心線(ナットの中心線)
D1 大径部の外径
D2 小径部の外径
D3 環状凹部の底面の径
【手続補正書】
【提出日】2019年8月20日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のハウジングと、
前記ハウジングに沿いつつ移動可能に前記ハウジングに収納されており、外周面にねじ部を有しているねじ軸と、
前記ねじ部に転動することが可能に位置している複数のボールと、
前記複数のボールにより前記ねじ部に連結される円筒状の部材であって、前記ねじ部を転動している前記複数のボールを循環する循環部を外周面に有している大径部と、前記大径部に対し前記ねじ軸の軸方向に連なり且つ前記大径部よりも小径の小径部と、を有しているナットと、
前記小径部を前記ハウジングの内部に回転可能に支持している軸受と、
前記ナットの前記小径部に嵌合され、且つ、前記小径部に対して互いに回転力の伝達が可能に連結されたハブを有している、伝動部材と、
を含み、
前記ナットは、前記大径部と前記小径部との境界に位置して前記ナットの中心線に直交した段差面を有しており、
前記ハブは、円筒状の第1ハブ部と、円筒状の第2ハブ部と、を有し、
前記第1ハブ部と前記第2ハブ部とは、前記ハブの軸方向に連続し且つ一体化され、
前記第1ハブ部の内周面は、前記小径部に嵌合され且つ前記小径部に対してセレーション結合され、
前記第1ハブと前記軸受とは、前記段差面に対して軸方向にこの順に位置するとともに、前記小径部に設けられた止め部材と前記段差面とによって、前記ナットの軸方向への移動を規制されており、
前記第2ハブ部の外周面には、前記伝動部材の伝動部分が設けられ、
前記第2ハブ部の内周面は、前記大径部に嵌合され、
前記大径部は、前記大径部の前記外周面から前記ナットの中心へ向かって窪む凹部を構成する、一対の互いに平行な側面と底面と、を有し、
前記循環部は、前記一対の側面と前記底面と前記第2ハブ部の前記内周面とによって規定された循環通路である、
ことを特徴とする伝動装置。
【請求項2】
前記軸受は、転がり軸受によって構成され、
前記止め部材は、前記小径部にねじ込み可能な転がり軸受用ロックナットによって構成されている、請求項1に記載の伝動装置。
【請求項3】
筒状のハウジングと、
前記ハウジングに沿いつつ移動可能に前記ハウジングに収納されており、外周面にねじ部を有しているねじ軸と、
前記ねじ部に転動することが可能に位置している複数のボールと、
前記複数のボールにより前記ねじ部に連結される円筒状の部材であって、前記ねじ部を転動している前記複数のボールを循環する循環部を外周面に有している大径部と、前記大径部に対し前記ねじ軸の軸方向に連なり且つ前記大径部よりも小径の小径部と、を有しているナットと、
前記小径部を前記ハウジングの内部に回転可能に支持している転がり軸受と、
前記ナットの前記小径部にセレーション結合されたハブを有しているプーリによって構成された伝動部材と、
を含み、
前記ナットは、前記大径部と前記小径部との境界に位置して前記ナットの中心線に直交した段差面を有しており、
前記ハブは、円筒状の第1ハブ部と、円筒状の第2ハブ部と、を有し、
前記第1ハブ部と前記第2ハブ部とは、前記ハブの軸方向に連続し且つ一体化され、
前記第1ハブ部の内周面は、前記小径部に嵌合され且つ前記小径部に対して前記セレーション結合され、
前記第1ハブと前記転がり軸受とは、前記段差面に対して軸方向にこの順に位置するとともに、前記小径部にねじ込まれた軸受用ロックナットと、前記段差面と、によって前記ナットの軸方向への移動を規制されており、
前記第2ハブ部の外周面には、前記伝動部材の伝動部分が設けられ、
前記第2ハブ部の内周面は、前記大径部に嵌合され、
前記大径部は、前記大径部の前記外周面から前記ナットの中心へ向かって窪む凹部を構成する、一対の互いに平行な側面と底面とを有し、
前記循環部は、前記一対の側面と前記底面と前記第2ハブ部の内周面とによって規定された循環通路である、
ことを特徴とする伝動装置。
【請求項4】
前記大径部は外周面に、一対の凹部を有しており、
前記一対の凹部に対して、径外方から個別に嵌め込み可能な一対のエンドディフレクタを、更に備え、
前記一対のエンドディフレクタは、前記ねじ軸と前記ナットとが相対する部分のねじ溝と、前記循環通路の両端と、の間を連通しており、
前記一対のエンドディフレクタは、前記ねじ軸の前記ねじ部の幅中心を挟んで設けられる各々一対のボール持ち上げ部を備え、
前記各々一対のボール持ち上げ部は、前記ねじ部の幅中心を挟んで幅方向に離間する2か所で前記ボールを支持することで、前記ボールを前記ねじ部から持ち上げる、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の伝動装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の伝動装置と、
前記伝動部材から前記ナットへ伝達する転舵用駆動力を、発生する電動モータと、
前記ねじ軸により構成されて、転舵用車輪を転舵する転舵軸と、
を有している、車両用ステアリング装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
本発明によれば、伝動装置は、
筒状のハウジングと、
前記ハウジングに沿いつつ移動可能に前記ハウジングに収納されており、外周面にねじ部を有しているねじ軸と、
前記ねじ部に転動することが可能に位置している複数のボールと、
前記複数のボールにより前記ねじ部に連結される円筒状の部材であって、前記ねじ部を転動している前記複数のボールを循環する循環部を外周面に有している大径部と、前記大径部に対し前記ねじ軸の軸方向に連なり且つ前記大径部よりも小径の小径部と、を有しているナットと、
前記小径部を前記ハウジングの内部に回転可能に支持している軸受と、
前記ナットの前記小径部に嵌合され、且つ、前記小径部に対して互いに回転力の伝達が可能に連結されたハブを有している、伝動部材と、
を含
み、
前記ナットは、前記大径部と前記小径部との境界に位置して前記ナットの中心線に直交した段差面を有しており、
前記ハブは、円筒状の第1ハブ部と、円筒状の第2ハブ部と、を有し、
前記第1ハブ部と前記第2ハブ部とは、前記ハブの軸方向に連続し且つ一体化され、
前記第1ハブ部の内周面は、前記小径部に嵌合され且つ前記小径部に対してセレーション結合され、
前記第1ハブと前記軸受とは、前記段差面に対して軸方向にこの順に位置するとともに、前記小径部に設けられた止め部材と前記段差面とによって、前記小径部の軸方向への移動を規制されており、
前記第2ハブ部の外周面には、前記伝動部材の伝動部分が設けられ、
前記第2ハブ部の内周面は、前記大径部に嵌合され、
前記大径部は、前記大径部の前記外周面から前記ナットの中心へ向かって窪む凹部を構成する、一対の互いに平行な側面と底面と、を有し、
前記循環部は、前記一対の側面と前記底面と前記第2ハブ部の前記内周面とによって規定された循環通路である。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0076
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0076】
より詳しく述べると、
図1乃至
図7に示されるように、伝動装置1は、
筒状のハウジング2と、
前記ハウジング2に沿いつつ移動可能に前記ハウジング2に収納されており、外周面21にねじ部22を有しているねじ軸20と、
前記ねじ部22に転動することが可能に位置している複数のボール30と、
前記複数のボール30により前記ねじ部22に連結される円筒状の部材であって、前記ねじ部22を転動している前記複数のボール30を循環する循環部70を外周面44aに有している大径部44と、前記大径部44に対し前記ねじ軸20の軸方向に連なり且つ前記大径部44よりも小径の小径部45と、を有しているナット40と、
前記小径部45を前記ハウジング2の内部に回転可能に支持している転がり軸受50と、
前記ナット40の前記小径部45にセレーション結合されたハブ61を有しているプーリ152(従動プーリ152)によって構成
された伝動部材60と、を含み、
前記ナット40は、前記大径部44と前記小径部45との境界に位置して前記ナット40の中心線CLに直交した段差面46を有しており、
前記ハブ61と前記転がり軸受50とは、前記段差面46に対して軸方向にこの順に位置するとともに、前記小径部45にねじ込まれた軸受用ロックナット51と、前記段差面46と(つまり、段差面46にハブ段差面64が当たることによる規制と)、によって前記ナット40の軸方向への移動を規制されており、
前記ハブ61は、前記小径部45にセレーション結合される(雄セレーション45bに雌セレーション62bが連結される)第1ハブ部62と、前記大径部44に嵌合される第2ハブ部63と、を有し、
前記第1ハブ部62と前記第2ハブ部63とは、前記ハブ61の軸方向に連続し且つ一体化されており、
前記大径部44は、前記大径部44の前記外周面44aから前記ナット40の中心へ向かって窪む凹部71を構成する、一対の側面72,72と底面73とを有し、
前記循環部70は、前記一対の側面72,72と前記底面73と前記第2ハブ部63の内周面63aとによって規定された循環通路である。
【国際調査報告】