特表-20204013IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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再表2020-204013電力ケーブルの接続部被覆用絶縁テープ、電力ケーブルの接続部外面への絶縁被覆形成方法および電力ケーブル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2020年10月8日
【発行日】2021年4月30日
(54)【発明の名称】電力ケーブルの接続部被覆用絶縁テープ、電力ケーブルの接続部外面への絶縁被覆形成方法および電力ケーブル
(51)【国際特許分類】
   H01B 17/56 20060101AFI20210402BHJP
   C08L 23/06 20060101ALI20210402BHJP
   C08L 23/26 20060101ALI20210402BHJP
   H02G 15/10 20060101ALI20210402BHJP
   H02G 1/14 20060101ALI20210402BHJP
【FI】
   H01B17/56 A
   C08L23/06
   C08L23/26
   H02G15/10
   H02G1/14
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】28
【出願番号】特願2020-544681(P2020-544681)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2020年3月30日
(11)【特許番号】特許第6831948号(P6831948)
(45)【特許公報発行日】2021年2月17日
(31)【優先権主張番号】特願2019-69323(P2019-69323)
(32)【優先日】2019年3月29日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100114292
【弁理士】
【氏名又は名称】来間 清志
(72)【発明者】
【氏名】三枝 哲也
(72)【発明者】
【氏名】金谷 考洋
【テーマコード(参考)】
4J002
5G333
5G355
5G375
【Fターム(参考)】
4J002BB031
4J002BB092
4J002BB212
4J002FD070
4J002FD140
4J002GJ02
4J002GL00
4J002GM00
4J002GQ01
5G333AA03
5G333AB01
5G333CB15
5G333CC04
5G333DA14
5G355AA03
5G355BA01
5G355BA11
5G355CA15
5G355CA22
5G375AA02
5G375AA04
5G375BA26
5G375BB44
5G375CA02
5G375CA12
5G375CB03
5G375CB04
(57)【要約】
親水性の高いポリエチレンを用いた場合であっても、融着部分への局所的な割れが起こり難い電力ケーブルの接続部被覆用の絶縁テープと、これを用いた絶縁被覆形成方法および電力ケーブルを提供する。
絶縁テープは、親水性を付与する分子によって少なくとも一部が変性されたポリエチレンと、酸化防止剤と、架橋剤とを含む樹脂材料からなり、酸化防止剤の分子量が190以上1050未満であり、酸化防止剤の含有量が、ポリエチレン100質量部に対して0.05質量部以上0.8質量部以下であり、テープ厚みが50μm以上250μm以下である。また、電力ケーブル1は、複数の電力ケーブルの導体11a,11bを露出させた端部同士を導体接続した接続部171と、接続部171の外周に対して上述の絶縁テープを少なくとも巻回および架橋して、接続部171の外面に形成してなる絶縁被覆173とを有する接続構造部17を備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
親水性を付与する分子によって少なくとも一部が変性されたポリエチレンと、酸化防止剤と、架橋剤とを含む樹脂材料からなる、電力ケーブルの接続部被覆用絶縁テープであって、
前記酸化防止剤の分子量が、190以上1050未満の範囲であり、
前記酸化防止剤の含有量が、前記ポリエチレン100質量部に対して、0.05質量部以上0.8質量部以下の範囲であり、
テープ厚みが50μm以上250μm以下の範囲である、電力ケーブルの接続部被覆用絶縁テープ。
【請求項2】
前記親水性を付与する分子が、不飽和ジカルボン酸、不飽和ジカルボン酸無水物および不飽和ジカルボン酸の誘導体の群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の電力ケーブルの接続部被覆用絶縁テープ。
【請求項3】
複数の電力ケーブルの導体を露出させた端部同士を導体接続した接続部の外周に、請求項1または2に記載の絶縁テープを巻回して前記接続部の外面に絶縁被覆を形成するテープ巻回工程と、
前記絶縁被覆を形成した前記接続部に、300kPa以上1000kPa以下の圧力および140℃以上280℃以下の温度で加圧加熱処理を施して、前記絶縁被覆中のポリエチレンを架橋させる架橋工程と
を含む、電力ケーブルの接続部外面への絶縁被覆形成方法。
【請求項4】
前記テープ巻回工程は、前記絶縁テープを前記接続部外面の巻回位置に案内するテープガイドを備えた巻回装置を用い、前記絶縁テープを巻回する際の前記テープガイドの表面温度を30℃以下に制御して行う、請求項3に記載の電力ケーブルの接続部外面への絶縁被覆形成方法。
【請求項5】
前記テープ巻回工程後、前記架橋工程前に、前記絶縁被覆を形成した前記接続部を、40℃以上130℃以下で加熱する予備加熱工程をさらに有する、請求項3または4に記載の電力ケーブルの接続部外面への絶縁被覆形成方法。
【請求項6】
複数の電力ケーブルの導体を露出させた端部同士を導体接続した接続部と、
前記接続部の外周に対して、請求項1または2に記載の絶縁テープを、少なくとも巻回および架橋して、前記接続部の外面に形成してなる絶縁被覆と
を有する接続構造部を備える、電力ケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力ケーブルの接続部の被覆に用いられる絶縁テープと、前記絶縁テープを用いた電力ケーブルの接続部外面への絶縁被覆形成方法と、前記絶縁テープを用いて形成される絶縁被覆を有する電力ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
電力用の送配電ケーブルとしては、導体の周囲を覆う絶縁体として、架橋ポリエチレンを含む樹脂材料を導体上に押出成形することで導体を被覆する、CVケーブルが広く用いられている。これらCVケーブルの接続部は、導体を露出させた端部同士を溶接して接続した後、通常のケーブル部分と同様に、内部半導電層、絶縁層、外部半導電層などを導体上に形成することで構成されている。このうち、絶縁層を形成する方法としては、ケーブル部分の絶縁層と同様の樹脂からなる絶縁テープを巻回することで、絶縁被覆を形成する方法が挙げられる。
【0003】
このCVケーブルは、長期間にわたり運用されるものであるため、樹脂の劣化による絶縁破壊が起こらないことが求められる。ここで、絶縁破壊の原因としては、絶縁層内に生じる水トリーが挙げられる。水トリーは、CVケーブルの絶縁層内に存在するボイドや異物を起点として樹脂の劣化部位が樹状に広がる現象であり、この劣化部位が広がることで絶縁破壊が引き起こされる。
【0004】
水トリーは、CVケーブルへの通電によって架橋ポリエチレンに含まれる水分子が移動し、異物やボイドのような特異点に水分子が集まってコロナ放電が発生することで引き起こされるものであると考えられている。そこで、水トリーを抑制するため、(a)水分の侵入を防ぐ、(b)特異点となる異物の混入やボイドの発生を防ぐ、(c)特異点における水の凝集を防ぐ、(d)架橋ポリエチレンの強度を高める、等の観点で研究が進められている。
【0005】
このうち、特異点における水の凝集を防ぐ手法として、添加剤によってポリエチレン樹脂の親水性を高めることで、特異点における水の凝集を緩和して水トリーの成長を抑制する手法が提案されている。例えば、非特許文献1には、架橋性ポリエチレン樹脂(XLPE)に、XLPEと相溶性のよい直鎖をもち、かつ、水と結合できる親水基をもつ添加剤を加える手法が記載されている。
【0006】
他方で、水トリーを防ぐためにポリエチレンの親水性を高めようとすると、ポリエチレンに対する添加剤の親和性が低下することで、添加剤が時間とともにポリエチレンから染み出るブリードアウトが発生し易くなる。特に、電力ケーブル接続部に巻回する絶縁テープは、体積に対する表面積の割合が大きいため、樹脂表面へのブリードアウトが顕著となる。
【0007】
このようなブリードアウトによって染み出す添加剤には、酸化防止剤が含まれていることが多い。そこで、酸化防止剤のポリエチレンからのブリードアウトを低減させるために、分子体積が大きく樹脂内部の移動度が低い酸化防止剤を用いることが検討されている。その一例として、特許文献1には、耐熱性に優れ、かつ耐ブリード性にも優れた酸化防止剤として、多環式化合物であるp−フェニルフェノール類環状体を含有してなる耐ブリード性酸化防止剤が記載されている。また、特許文献2には、成形品の長期使用時における表面へのブリードアウトを低減させることが可能な酸化防止剤として、ポリカーボネート分子の末端にヒンダードフェノールを有する高分子型酸化防止剤が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭62−227988号公報
【特許文献2】特開平09−040948号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】福田暉夫、「CVケーブル絶縁体の水トリー防止材料」電気学会誌、第108巻第5号、昭和63年、p.389−396
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ポリエチレンを加熱によって架橋させる際に、ブリードアウトによってポリエチレンの表面に添加剤が染み出ていると、樹脂の表面に残った添加剤がポリエチレンの融着および架橋を阻害するため、ポリエチレンの融着部分に局所的な割れが生じる。このような局所的な割れは、酸化防止剤が染み出たときに、特に生じ易いものであった。
【0011】
特に、電力ケーブルの接続部に、テープ化された樹脂からなる絶縁テープを巻回して絶縁被覆を形成する場合では、架橋後に得られる絶縁被覆に、このような局所的な割れが生じ易かった。例えば、図2に示す巻回装置2は、導体11の周囲に取り付けた巻回装置2のテープガイド22に、リール21から引き出した絶縁テープ20を通した後、巻回装置2を導体11の周囲で回転させることで、絶縁テープ20を導体上に巻回するものである。この巻回装置2では、絶縁テープ20の表面にブリードアウトした添加剤が、テープガイド22に掻き取られて蓄積された後、纏まって絶縁テープ20の表面に移ることで、局所的に添加剤が多く付着した箇所が生じるため、得られる絶縁被覆に局所的な割れを引き起こしていた。
【0012】
ここで、ポリエチレンの表面にブリードアウトした添加剤(酸化防止剤)は、架橋時の加熱によってポリエチレンに再吸収される場合があるが、特許文献1および2に記載されるような高分子型の酸化防止剤を用いた場合は、架橋時の加熱によってポリエチレンに再吸収されにくいため、表面に残留している酸化防止剤によって、局所的な割れが生じていた。
【0013】
本発明の目的は、電力ケーブルの絶縁被覆を、親水性の高いポリエチレンを含む樹脂材料を用いて形成した場合であっても、未融着部分の発生を抑制して、絶縁被覆の内部に局所的な樹脂割れを起こり難くした絶縁テープ、電力ケーブルの接続部外面への絶縁被覆形成方法および電力ケーブルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、絶縁層における未融着による割れを抑えるには、樹脂材料内に、移動が容易ではない高分子量の添加剤(酸化防止剤)を含ませるよりも、樹脂材料内の移動が容易でブリードアウトしやすいものの、樹脂材料内に再吸収されやすい低分子量の添加剤を含ませることが効果的であることを見出した。特に、酸化防止剤として190以上1050未満の分子量を有するものを用いるとともに、酸化防止剤の含有量を所定の範囲内にすることで、絶縁テープの表面にブリードアウトした酸化防止剤が、ポリエチレンを架橋させる際の加熱や、その前に行われる予備加熱によって、ポリエチレンに再吸収されることを見出し、かかる知見に基づき本発明を完成させるに至った。
【0015】
すなわち、本発明の要旨構成は、以下のとおりである。
(1)親水性を付与する分子によって少なくとも一部が変性されたポリエチレンと、酸化防止剤と、架橋剤とを含む樹脂材料からなる、電力ケーブルの接続部被覆用絶縁テープであって、前記酸化防止剤の分子量が、190以上1050未満の範囲であり、前記酸化防止剤の含有量が、前記ポリエチレン100質量部に対して、0.05質量部以上0.8質量部以下の範囲であり、テープ厚みが50μm以上250μm以下の範囲である、電力ケーブルの接続部被覆用絶縁テープ。
(2)前記親水性を付与する分子が、不飽和ジカルボン酸、不飽和ジカルボン酸無水物および不飽和ジカルボン酸の誘導体の群から選択される少なくとも1種である、上記(1)に記載の電力ケーブルの接続部被覆用絶縁テープ。
(3)複数の電力ケーブルの導体を露出させた端部同士を導体接続した接続部の外周に、上記(1)または(2)に記載の絶縁テープを巻回して前記接続部の外面に絶縁被覆を形成するテープ巻回工程と、前記絶縁被覆を形成した前記接続部に、300kPa以上1000kPa以下の圧力および140℃以上280℃以下の温度で加圧加熱処理を施して、前記絶縁被覆中のポリエチレンを架橋させる架橋工程とを含む、電力ケーブルの接続部外面への絶縁被覆形成方法。
(4)前記テープ巻回工程は、前記絶縁テープを前記接続部外面の巻回位置に案内するテープガイドを備えた巻回装置を用い、前記絶縁テープを巻回する際の前記テープガイドの表面温度を30℃以下に制御して行う、上記(3)に記載の電力ケーブルの接続部外面への絶縁被覆形成方法。
(5)前記テープ巻回工程後、前記架橋工程前に、前記絶縁被覆を形成した前記接続部を40℃以上130℃以下で加熱する予備加熱工程をさらに有する、上記(3)または(4)に記載の電力ケーブルの接続部外面への絶縁被覆形成方法。
(6)複数の電力ケーブルの導体を露出させた端部同士を導体接続した接続部と、前記接続部の外周に対して、上記(1)または(2)に記載の絶縁テープを、少なくとも巻回および架橋して、前記接続部の外面に形成してなる絶縁被覆とを有する接続構造部を備える、電力ケーブル。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、水トリーの発生を抑えるために親水性の高いポリエチレンを用い、かつ酸化防止剤が樹脂材料の表面にブリードアウトするような場合であっても、架橋時には酸化防止剤が再び樹脂材料中に溶け込んで絶縁テープ間に残留しないため、絶縁テープの巻回により形成された絶縁被覆の融着や架橋の妨げにならない。それにより、融着部分への局所的な割れが起こり難く、また、CVケーブルへの長期使用に耐える耐久性を有する、電力ケーブルの接続部被覆用絶縁テープと、それを用いた絶縁被覆形成方法および電力ケーブルが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る電力ケーブルの接続部外面への絶縁被覆形成方法について説明する図である。このうち、図1(a)は、端部の導体を露出させた2本の電力ケーブルの端部同士を向かい合わせた分離状態で示す断面図である。また、図1(b)は、導体を露出させた端部同士を導体接続させた状態を示す断面図である。また、図1(c)は、接続部の外周に内部半導電層を形成させた状態を示す断面図である。また、図1(d)は、接続部の内部半導電層の外周に、絶縁テープを巻回して絶縁被覆を形成した状態を示す断面図である。また、図1(e)は、絶縁テープの外周に外部半導電層を形成した状態を示す断面図である。
図2】電力ケーブルの接続部に絶縁テープを巻回する巻回装置を説明する図である。このうち、図2(a)は、電力ケーブルおよび巻回装置を模式的に示す斜視図である。また、図2(b)は、電力ケーブルおよび巻回装置を模式的に示す断面図である。
図3】本発明に係る電力ケーブルとその接続部を説明する図である。このうち、図3(a)は、電力ケーブルおよびその接続部の構造を模式的に示す断面図である。また、図3(b)は、図3(a)のA−A´線上の断面図である。また、図3(c)は、図3(a)のB−B´線上の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更が可能である。
【0019】
<電力ケーブルの接続部被覆用絶縁テープ>
本発明の電力ケーブルの接続部被覆用絶縁テープは、親水性を付与する分子によって少なくとも一部が変性されたポリエチレン(A)と、酸化防止剤(B)と、架橋剤(C)とを含む樹脂材料からなる、電力ケーブルの接続部被覆用絶縁テープであって、酸化防止剤(B)の分子量が、190以上1050未満の範囲であり、酸化防止剤(B)の含有量が、ポリエチレン(A)100質量部に対して、0.05質量部以上0.8質量部以下の範囲であり、かつテープ厚みが50μm以上250μm以下の範囲である。
【0020】
本実施形態に係る電力ケーブルの接続部被覆用絶縁テープ(以下、「絶縁テープ」という場合がある。)によれば、水トリーの発生を抑えるために親水性の高いポリエチレンを用いた場合であっても、絶縁テープの表面にブリードアウトした酸化防止剤が、ポリエチレンを架橋させる際の加熱によってポリエチレンに再吸収されるため、融着部分への局所的な割れを起こり難くすることができる。また、必要に応じて架橋前に予備加熱を行うことで、酸化防止剤のポリエチレンへの再吸収を促進して、融着部分への局所的な割れをより起こり難くすることができる。
【0021】
[樹脂材料]
絶縁テープを構成する樹脂材料は、ポリエチレン(A)と、酸化防止剤(B)と、架橋剤(C)とを含む。
【0022】
(ポリエチレン(A))
ポリエチレン(A)としては、親水性を付与する分子によって少なくとも一部が変性されたものを用い、より具体的には、親水性を付与する分子によって変性された変性ポリエチレン(A1)だけでもよく、あるいは、この変性ポリエチレン(A1)と未変性のポリエチレン(A2)を併用してもよい。これにより、樹脂材料に高い親水性を持たせることができるため、絶縁テープによって形成される絶縁層への水トリーの発生を抑えることができる。
【0023】
このうち、変性ポリエチレン(A1)は、親水性基を含む分子を結合させることで変性されたポリエチレンである。このような変性ポリエチレン(A1)を用いることで、直流電流の空間電荷の蓄積を抑えることができるため、絶縁テープによって形成される絶縁被覆における絶縁破壊を低減することができる。
【0024】
ここで、親水性基を含む分子としては、エーテル類、アルコール類、エステル類、カルボン酸類などが挙げられる。その中でも、不飽和ジカルボン酸、不飽和ジカルボン酸無水物および不飽和ジカルボン酸の誘導体の群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0025】
親水性基を含む分子のうち、不飽和ジカルボン酸の一例としては、マレイン酸、フマル酸、およびイタコン酸などが挙げられる。また、不飽和ジカルボン酸無水物の一例としては、無水マレイン酸、および無水イタコン酸などが挙げられる。また、不飽和ジカルボン酸の誘導体の一例としては、不飽和ジカルボン酸のモノメチルエステル、モノエチルエステル、ジエチルエステル、アミド、およびイミドなどが挙げられる。これらの中でも、少量の添加によってポリエチレンに親水性を付与することができるため、分子量当たりのカルボニル基の比率が最も高い無水マレイン酸を用いることが最も好ましい。
【0026】
他方で、親水性基を含む分子によって変性される前のポリエチレンとしては、比重が0.900以上0.940以下であり、分岐構造を有する低密度ポリエチレン、または直鎖状低密度ポリエチレンとアルケンとのコポリマーを含むことが好ましい。このような低密度ポリエチレンを用いることで、絶縁テープの柔軟性が高められるため、電力ケーブルへの巻回を行い易くすることができる。また、低密度ポリエチレンの融点は、90℃以上130℃以下が好ましく、100℃以上120℃以下がより好ましい。
【0027】
なお、本明細書における「融点」は、JIS K7121−1987の示差走査熱量測定法によって測定される融点である。
【0028】
変性ポリエチレン(A1)としては、上述のようにポリエチレンを変性させることで得られるもののほか、市販の樹脂を用いることもできる。例えば、ハイミラン(エチレン−メタクリル酸共重合体、三井・デュポン ポリケミカル株式会社製)、ニュクレル(エチレン−メタクリル酸共重合体、デュポン株式会社製)、SCONA TSPE(無水マレイン酸変性低密度ポリエチレン、BYK株式会社製)、オレヴァックG(無水マレイン酸変性低密度ポリエチレン、アルケマ株式会社製)、モディック(無水マレイン酸変性低密度ポリエチレン、三菱化学株式会社製)などを好適に用いることができる。
【0029】
変性ポリエチレン(A1)の比重は、0.890以上0.950以下が好ましく、0.900以上0.940以下がより好ましく、0.910以上0.930以下がより好ましい。また、変性ポリエチレン(A1)の融点は、90℃以上135℃未満が好ましく、100℃以上120℃以下がより好ましい。
【0030】
他方で、未変性のポリエチレン(A2)としては、比重が0.900以上0.940以下の分岐構造を有するポリエチレンである、低密度ポリエチレン、または直鎖状低密度ポリエチレンとアルケンとのコポリマーを含むことが好ましい。未変性のポリエチレン(A2)として低密度ポリエチレンを含むことで、絶縁テープの柔軟性が高められるため、電力ケーブルへの巻回を行い易くすることができる。
【0031】
未変性のポリエチレン(A2)の比重は、0.900以上0.940以下が好ましく、0.910以上0.930以下がより好ましい。また、未変性のポリエチレン(A2)の融点は、90℃以上130℃以下が好ましく、100℃以上120℃以下がより好ましい。
【0032】
ポリエチレン(A)を構成する変性ポリエチレン(A1)と未変性のポリエチレン(A2)の割合について、ポリエチレン(A)の全量が変性ポリエチレン(A1)であってもよい。しかしながら、添加剤との混錬などの作業を行い易くし、且つ親水性基の濃度を適度に調整する観点では、変性ポリエチレン(A1)1質量部に対し、未変性ポリエチレン(A2)を2質量部以上20質量部以下の割合で配合することが好ましい。
【0033】
(酸化防止剤(B))
酸化防止剤(B)は、老化防止剤とも呼ばれ、絶縁テープや、絶縁テープによって形成される絶縁被覆が、熱や空気中の酸素によって劣化するのを防ぐ作用を有するものであり、分子量が190以上1050未満のものを用いる。
【0034】
ここで、酸化防止剤(B)として、分子量が190以上のものを用いることで、樹脂材料を溶融混錬する際に、酸化防止剤の大気中への揮発が抑えられるため、絶縁テープに含まれる酸化防止剤の量を適切にコントロールすることができる。したがって、ケーブル通電時の発熱による樹脂の酸化劣化を抑えることで耐熱老化性を高め、それによりケーブル寿命を延ばすことができる。 よって、酸化防止剤(B)の分子量は、190以上が好ましく、300以上がより好ましく、350以上がさらに好ましい。
【0035】
他方で、酸化防止剤(B)として、分子量が1050未満のものを用いる場合、酸化防止剤(B)の樹脂材料内での移動度が高まるため、酸化防止剤(B)が樹脂材料からブリードアウトし易くなる。しかしながら、分子量が1050未満の酸化防止剤は、ブリードアウトしても、ポリエチレンを架橋させる際の加熱や、架橋前に、必要に応じて行う予備加熱によってポリエチレン内に容易に再吸収されるため、ケーブルに巻回された絶縁テープを架橋する際に、絶縁テープの層間に残留する酸化防止剤を少なくすることができる。したがって、絶縁層の融着部分への局所的な割れを起こり難くすることができる。よって、酸化防止剤(B)の分子量は、1050未満が好ましく、800以下がより好ましく、700以下がさらに好ましい。
【0036】
酸化防止剤(B)としては、フェノール系、リン系、硫黄系、アミン系、ヒドラジン系およびアミド系のうち1種以上に属する酸化防止剤、ならびにその誘導体が含まれる。ここで、酸化防止剤の誘導体には、上述の酸化防止剤が酸化された後の化学種が含まれる。特に、酸化防止剤(B)としては、フェノール系酸化防止剤またはアミン系酸化防止剤と、リン酸系酸化防止剤または硫黄系酸化防止剤とを含有することが好ましい。
【0037】
特に、フェノール系酸化防止剤としては、分子量が190以上のものを含むことが好ましく、300以上のものを含むことがより好ましい。他方で、フェノール系酸化防止剤としては、分子量が800以下のものを含むことが好ましく、600以下のものを含むことがより好ましい。
【0038】
フェノール系酸化防止剤の具体例としては、イルガノックス245(Ethylene bis(oxyethylene) bis-(3-(5-tert-butyl-4-hydroxy-m-tolyl)propionate)、分子量587)、イルガノックス259(Hexamethylene bis(3-(3,5-di-tert.-butyl-4-hydroxyphenyl)propionate)、分子量639)、イルガノックス565(2,6-Di-tert-butyl-4-(4,6-bis(octylthio)-1,3,5-triazin-2-ylamino)phenol、分子量589)、イルガノックス1035(Thiodiethylene bis[3-(3,5-di-tert.-butyl-4-hydroxy-phenyl)propionate]、分子量643)、イルガノックス1076(Octadecyl-3-(3,5 -di-tert.-butyl-4-hydroxyphenyl)-propionate、分子量531)、イルガノックス1098(N,N'-hexane-1,6-diylbis(3-(3,5-di-tert.-butyl-4-hydroxyphenylpropionamide))、分子量637)、イルガノックス1222(Hexamethylene bis(3-(3,5-di-tert.-butyl-4-hydroxyphenyl)propionate)、分子量356)、イルガノックス1330(3,3´,3´´,5,5´,5´´-Hexa-tert-butyl-.alpha,.alpha´,.alpha´´-(mesitylene-2,4,6-triyl)tri-p-cresol、分子量775)、イルガノックス1425(Calcium bis[3,5-di(tert-butyl)-4-hydroxybenzyl(ethoxy) phosphinate]、分子量693)、イルガノックス3114(1,3,5-Tris(3,5-di-tert.-butyl-4-hydroxybenzyl)-1,3,5-triazine-2,4,6(1H,3H,5H)-trione、分子量784)、イルガノックス1520(4,6-Bis(octylthiomethyl)-o-cresol、分子量425)、イルガノックス1135(Benzenepropanoic acid, 3,5-bis (1,1-dimethyl-ethyl)-4-hydroxy-C7-C9 branched alkyl esters、分子量390)、イルガノックス1141(Pentaerythritol tetrakis(3-(3,5-di-tert-butyl-4-hydroxyphenyl)propionate)、分子量346)、(以上いずれもBASF社製)、スミライザーBHT(Butylated Hydroxytoluene、分子量220)、スミライザー MDP−S(2,2'-Methylenebis(4-methyl-6-tert-butylphenol)、分子量341)、スミライザーGA−80(3,9-Bis{2-[3-(3-tert-butyl-4-hydroxy-5-methylphenyl)-propionyloxy]-1,1-dimethylethyl}-2,4,8,10-tetraoxaspiro[5.5]undecane、分子量741)、スミライザーBBM−S(4,4'-Butylidenebis(6-tert-butyl-3-methylphenol)、分子量383)、スミライザーWX−R(4,4'-Thiobis(2-tert-butyl-5-methylphenol)、分子量358)、スミライザーGM((2-tert-Butyl-6-(3-tert-butyl-2-hydroxy-5-methylbenzyl)-4- methylphenyl acrylate)、分子量395)、 (以上いずれも住友化学社製)、アデカスタブAO−20(1,3,5-tris(3,5-di-tert-butyl-4-hydroxybenzyl)-1,3,5-triazine-2,4,6(1H,3H,5H)-trione、分子量784)、アデカスタブAO−30(4,4',4''-(1-methylpropanyl-3-ylidene)tris(6-tert-butyl-m-cresol)、分子量545)、アデカスタブAO−40(6,6'-di-tert-butyl-4,4'-butylidenedi-m-cresol、分子量383)、アデカスタブAO−50(Octadecyl 3-(3,5-di-tert-butyl-4-hydroxyphenyl)propionate、分子量531)、アデカスタブAO−80(3,9-Bis{2-[3-(3-tert-butyl-4-hydroxy-5-methylphenyl)propionyloxy]-1,1-dimethylethyl}-2,4,8,10-tetraoxaspiro[5.5]undecane、分子量741)、アデカスタブAO−330(1,3,5-tris(3,5-di-tert-butyl-4-hydroxyphenylmethyl)-2,4,6-trimethylbenzene、分子量775)、(以上ADEKA社製)、ノクラック300(4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、分子量359、大内新興化学工業社製)等が挙げられる。
【0039】
また、リン酸系酸化防止剤としては、分子量が300以上のものを含むことが好ましく、500以上のものを含むことがより好ましい。他方で、リン酸系の酸化防止剤としては、分子量が1050未満のものを含むことが好ましい。
【0040】
リン系酸化防止剤の具体例としては、イルガフォス168(Tris(2,4-di-tert.-butylphenyl)phosphite、分子量647)、イルガフォスP−EPQ(1,1'-Biphenyl-4,4'-diylbis(phosphonous acid)tetrakis(2,4-ditert-butylphenyl) ester、分子量1035)、イルガフォス126(3,9-Bis(2,4-di-tert-butylphenyl)-2,4,8,10-tetraoxa-3,9-diphosphaspiro[5.5]undecane、分子量604)、(以上いずれもBASF社製)、スミライザーBBM−S(4,4'-Butylidenebis(6-tert-butyl-3-methylphenol)、分子量383)、(住友化学社製)、アデカスタブPEP−4C(Bis (nonylphenyl) pentaerythritol diphosphite、分子量633)、アデカスタブPEP−8(3,9-Bis(octadecyloxy)-2,4,8,10-tetraoxa-3,9-diphosphaspiro[5.5]undecane、分子量733)、アデカスタブPEP−36(3,9-Bis(2,6-di-tert-butyl-4-methylphenoxy)-2,4,8,10-tetraoxa-3,9-diphosphaspiro[5.5]undecane、分子量633)、アデカスタブHP−10(2,2'-Methylenebis(4,6-di-tert-butylphenyl) 2-ethylhexyl phosphite、分子量583)、アデカスタブ1178(Tris(nonylphenyl) phosphite、分子量689)、アデカスタブ2112(Tris(2,4-ditert-butylphenyl) phosphite、分子量647)、アデカスタブC(2-Ethylhexyl diphenyl phosphite、分子量346)、アデカスタブ135 A(Isodecyl diphenyl phosphite、分子量374)、アデカスタブ3010(Triisodecyl phosphite、分子量503)、(以上いずれもADEKA社製)等が挙げられる。
【0041】
また、硫黄系酸化防止剤としては、分子量が300以上のものを含むことが好ましく、400以上のものを含むことがより好ましい。他方で、硫黄系酸化防止剤としては、分子量が1000以下のものを含むことが好ましく、800以下のものを含むことがより好ましい。
【0042】
硫黄系酸化防止剤の具体例としては、イルガノックスPS800FL(Didodecyl-3,3′-thiodipropionate、分子量515)、イルガノックスPS802FL(3,3′-Thiodipropionic acid dioctadecylester、分子量683)、(以上BASF社製)、スミライザーWX(4,4'-Thiobis(2-tert-butyl-5-methylphenol)、分子量359)(住友化学社製)、アデカスタブAO−503(Di(tridecyl) 3,3'-thiodipropionate、分子量543)、アデカスタブAO−23 (ビス〔2-メチル-4-{3-n-アルキル(C12又はC14)チオプロピオニルオキシ}-5tert-ブチルフェニル〕スルフィド、分子量約900、ADEKA社製)等が挙げられる。
【0043】
酸化防止剤(B)としては、これらの化合物のうち2種以上を併用してもよい。また、酸化防止剤(B)に、分子量が190未満である他の酸化防止剤や、分子量が1050以上である他の酸化防止剤を併用してもよい。
【0044】
これらの酸化防止剤(B)の中では、芳香族化合物が好ましく、ベンゼン環に1個以上の分枝アルキル基が結合した構造を分子内に有する化合物がより好ましく、ベンゼン環に1個以上のt−ブチル基が結合した構造を分子内に有する化合物がさらに好ましい。酸化防止剤(B)がこのような構造を有することで、酸化防止剤の分子による立体障害が適度に大きくなるため、酸化防止剤(B)の酸化反応速度を適度に保つことができる。
【0045】
樹脂材料における酸化防止剤(B)の合計含有量の下限は、ポリエチレン(A)100質量部に対して0.05質量部であり、好ましくは0.2質量部であり、さらに好ましくは0.3質量部である。これにより、樹脂材料の原料を混練するときにスコーチの発生を低減することができ、また、絶縁テープを架橋して得られる絶縁層の耐熱老化性を高めることができる。他方で、樹脂材料における酸化防止剤(B)の合計含有量の上限は、ポリエチレン(A)100質量部に対して0.8質量部であり、好ましくは0.6質量部である。これにより、樹脂架橋時に発生する水分量を減少させることができ、また、樹脂架橋体からのブリードも減少させることができる。
【0046】
加えて、架橋剤(C)100質量部に対する酸化防止剤(B)の合計含有量が、5質量部以上50質量部以下であることがより好ましい。
【0047】
なお、酸化防止剤(B)は、分子量が190以上1050未満の範囲である酸化防止剤のみであるのが好ましいが、酸化防止剤に占める質量割合が50%以内であれば、分子量が上記適正範囲外である酸化防止剤を含んでいてもよい。また、分子量が190以上1050未満の範囲である酸化防止剤のうち、多環式化合物からなる酸化防止剤は、含有量が少ないことが好ましい。多環式化合物は、分子量が小さくても立体障害が大きいため、樹脂材料からブリードアウトすると、ポリエチレンを架橋させる際の加熱や、その前に行われる予備加熱によっても、ポリエチレン内に再吸収させることが困難になる。したがって、多環式化合物の含有量は、酸化防止剤に占める質量割合が50%以内であることがより好ましい。
【0048】
(架橋剤(C))
架橋剤(C)は、ポリエチレン(A)を架橋することで、樹脂材料の機械特性および耐熱性を高めるとともに、隣接する絶縁テープを結合する作用を有する。
【0049】
架橋剤(C)としては、加熱したときに熱分解によってラジカルを生成する有機過酸化物を含有することが好ましい。
【0050】
架橋剤(C)の具体例としては、ジクミルパーオキサイド(DCP)、ベンゾイルパーオキサイド、ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、ブチルパーアセテート、tert−ブチルパーベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサンなどが挙げられる。その中でも、DCPを含有することが好ましい。また、架橋剤(C)として、これらの化合物のうち2種以上を組み合わせて含有してもよい。
【0051】
架橋剤(C)の配合量の下限は、ポリエチレン(A)100質量部に対して、0.1質量部以上であることが好ましく、0.5質量部以上であることがより好ましい。これにより、ポリエチレン(A)の架橋によって、樹脂材料の機械特性および耐熱性を高めることができる。他方で、架橋剤(C)の配合量の上限は、ポリエチレン(A)100質量部に対して、5質量部であることが好ましく、3質量部であることがより好ましい。これにより、得られる樹脂材料を混練する際や押出成形する際における、異常架橋による電気特性の低下を抑えることができる。
【0052】
(その他の成分(D))
本実施形態に係る絶縁テープを構成する樹脂材料には、必要に応じて、他の成分を含んでもよい。例えば、水分吸収剤、熱安定剤、光安定剤、難燃剤、軟化剤、充填剤、着色剤、溶剤、顔料、染料、蛍光体等の各種の添加剤を加えてもよい。
【0053】
[絶縁テープの性状]
本実施形態に係る絶縁テープは、電力ケーブルの接続部の被覆に用いられるものである。より具体的には、複数の電力ケーブルの導体を露出させた端部同士を導体接続した接続部の外周に巻回して絶縁被覆を形成するのに用いられる。
【0054】
本実施形態に係る絶縁テープのテープ厚みは、接続部に巻回する際の巻回数を少なくするとともに、絶縁テープを架橋して得られる絶縁層の耐熱老化性を高めるため、50μm以上が好ましく、70μm以上がより好ましく、100μm以上がさらに好ましい。他方で、絶縁テープのテープ厚みの上限は、接続部に巻回し易くするため、250μm以下が好ましく、150μm以下がより好ましい。特に、本実施形態に係る絶縁テープは、樹脂材料の表面へのブリードアウトが起こり易い、テープ厚みが250μm以下の場合において、再吸収性を高めていないテープとの樹脂割れ発生数の差が顕著となる。
【0055】
また、本実施形態に係る絶縁テープのテープ幅は、滑らかな巻回表面を形成するため、5mm以上30mm以下が好ましい。
【0056】
[絶縁テープの製法]
本実施形態に係る絶縁テープの製造方法は、特に限定されないが、例えば、上述のポリエチレン(A)、酸化防止剤(B)および架橋剤(C)を所定の割合で含有する原料を混練する混練工程と、混練工程で混練された樹脂を押出成形してテープを形成する成形工程と、を有する方法により絶縁テープを作製することができる。
【0057】
(混練工程)
ここで、絶縁テープの原料について行う混練工程としては、上述したポリエチレン(A)に、酸化防止剤(B)および架橋剤(C)を添加した後に溶融させて混練する工程が挙げられる。混練工程における混練温度は、ポリエチレン(A)の融点より高く135℃以下の温度で行うことが好ましい。より具体的には、均一なペースト状の樹脂材料を得るため、混練温度は、ポリエチレン(A)の融点より高いことが好ましい。また、架橋剤(C)の熱分解によるポリエチレン(A)の架橋を避けるため、混練工程における混練温度は、135℃以下にすることが好ましく、130℃未満にすることがより好ましい。
【0058】
本実施形態における混練工程では、巨視的に見て均質な樹脂材料を得られればよく、混練工程によって得られる樹脂材料では、ポリエチレン(A)の一部が溶融せずにペースト内に分散していてもよい。
【0059】
また、本実施形態における混練工程では、混練する際の発熱によって架橋剤(C)が熱分解することを防ぐため、先にポリエチレン(A)および酸化防止剤(B)を混練した後で成形してペレットを作製し、得られるペレットに架橋剤(C)を添加し、ペレットと架橋剤(C)を撹拌しながら架橋剤(C)を融解させることで、ペレット中のポリエチレン(A)に架橋剤(C)を吸収させてもよい。
【0060】
(成形工程)
混練により得られる樹脂材料について行う成形工程としては、例えば所定の厚さのフィルムを形成した後、所定のテープ幅になるようにスリット加工を行うことが挙げられる。混練により得られる樹脂材料からフィルムを形成する手段としては、押出成形の手段を用いることができる。より具体的には、インフレーション法、Tダイ法、キャスト法、カレンダー法などを用いることができ、その中でもインフレーション法を用いることが好ましい。
【0061】
また、成形工程における成形温度は、ポリエチレン(A)の融点より高く、かつ135℃以下の成形温度で行うことが好ましい。より具体的には、樹脂材料の成形を可能にする観点から、成形温度は、ポリエチレン(A)の融点より高いことが好ましい。また、架橋剤(C)の熱分解によるポリエチレン(A)の架橋を避けるため、成形温度は、135℃以下にすることが好ましい。
【0062】
なお、混練工程および成形工程は、別個の工程として行わなくてもよく、例えば同一の装置を用いて、絶縁テープの原料を溶融混練押出しすることにより、または絶縁テープの原料を溶融させて押出すことにより行ってもよい。
【0063】
<電力ケーブルの接続部外面への絶縁被覆形成方法>
本実施形態に係る電力ケーブルの接続部外面への絶縁被覆形成方法は、複数の電力ケーブルの導体を露出させた端部同士を導体接続した接続部の外周に、上述の絶縁テープを巻回して前記接続部の外面に絶縁被覆を形成するテープ巻回工程と、前記絶縁被覆を形成した前記接続部に、300kPa以上1000kPa以下の圧力および140℃以上280℃以下の温度で加圧加熱処理を施して、前記絶縁被覆中のポリエチレンを架橋させる架橋工程とを含む。
【0064】
本実施形態に係る絶縁被覆形成方法によることで、絶縁テープの表面にブリードアウトした酸化防止剤がポリエチレンに再吸収されるため、形成される絶縁被覆の内部での割れの発生を起こり難くすることができる。
【0065】
図1は、本発明に係る絶縁被覆形成方法について説明する図である。図1では、銅やアルミニウムなどの金属または合金からなる導体11aの周囲に、内部半導電層12a、絶縁層13a、外部半導電層14a、金属遮蔽層15aおよびシース16aが順に積層された電力ケーブル10aと、導体11aと同様の金属または合金からなる導体11bの周囲に、内部半導電層12b、絶縁層13b、外部半導電層14b、金属遮蔽層15bおよびシース16bが順に積層された電力ケーブル10bとを接続する場合を例として示す。
【0066】
(接続部の形成)
接続させる複数の電力ケーブル10a、10bは、図1(a)に示すように、各々端部の導体11a、11bを露出させる。ここで、導体11a、11bを露出させる長さの合計寸法(E1+E2)は、絶縁テープを巻回し易くするため、絶縁テープの幅よりも広くすることが好ましい。
【0067】
ここで、絶縁層13a、13bが親水性の高い樹脂からなる場合、特に、絶縁層13a、13bが親水性の高い分子によって少なくとも一部が変性された変性ポリエチレン樹脂からなる場合には、導体11a、11bとともに絶縁層13a、13bも露出させることが好ましい。露出させた絶縁層13a、13bにも絶縁テープを巻回積層することで、絶縁層13a、13bと絶縁テープとの密着性が高められるため、これらの界面部分における樹脂割れを生じ難くすることができる。
【0068】
次いで、図1(b)に示すように、導体11a、11bの端部同士を導体接続する。導体接続の方法としては、例えば溶接を用いることができ、導体接続によって接続部(溶接部)171が形成される。
【0069】
(内部半導電層の形成)
形成された接続部171の外周には、図1(c)に示すように、内部半導電層172を形成してもよい。内部半導電層172は、例えば、架橋性樹脂、導電性カーボンブラック、酸化防止剤、および架橋剤を含む半導電性の樹脂組成物から形成される。このうち、架橋性樹脂としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メチルアクリレート共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体およびエチレン−ブチルアクリレート共重合体から選択される一種以上の樹脂が挙げられる。
【0070】
内部半導電層172は、例えば樹脂を成形することで得ることができ、より具体的には、導体11a、11bの表面に樹脂を押し出し成形することで行ってもよく、導体11a、11bを金型に差し込んで金型に樹脂を注入することで行ってもよく、また、樹脂をテープ状に成型して導体11a、11bの表面に巻回してもよい。さらには、接続部171を形成する前の導体11a、11bのいずれかに、加熱により収縮するチューブを予め差し込んでおき、接続部171を形成した後で加熱してチューブを収縮させることによって内部半導電層172を形成することもできる。
【0071】
(テープ巻回工程)
次いで、図1(d)に示すように、複数の電力ケーブル10a、10bの導体11a、11bを露出させた端部同士を導体接続して形成される接続部171の外周に形成した内部半導電層172の外周に、さらに上述の絶縁テープを巻回することで、接続部171および内部半導電層172の外周全体を覆う範囲にわたって絶縁被覆173を形成する。
【0072】
この絶縁テープを巻回する際は、テープの層間に空気が入らないように、十分な張力をかけて巻き付けることが望ましい。絶縁テープに十分な張力をかけて巻き付けるため、図2に示すような、絶縁テープ20を接続部171の外面の巻回位置(図示せず)に案内するテープガイド22を備えた巻回装置2を用いることができる。この巻回装置2では、リール21から引き出される絶縁テープ20を、テープガイド22を通して、接続部171の外面に形成された内部半導電層172、および電力ケーブル10aおよび10bの露出させた内部半導電層12a、12bの外周に巻回積層するため、巻回装置2を導体11の周囲を回転させることで、絶縁テープに張力をかけながら巻回することができる。しかし、このタイプの巻回装置2では、絶縁テープ20とテープガイド22との接触により、絶縁テープ20の内部から表面上にブリードアウトすることによって付着していた酸化防止剤などの添加物が、テープガイド22に掻き取られて付着・蓄積し、テープガイド22に蓄積した添加物は、ある一定量を超えると、絶縁テープ20の表面上に付着して絶縁被覆173に巻き込まれる傾向がある。ここで、添加物の付着・蓄積は、テープガイド22の表面温度が摩擦などにより上昇するときに起こり易くなる。
【0073】
本発明によれば、テープガイド22に付着した添加物が、テープガイド22を通過する絶縁テープ20の表面に付着し、この添加物が付着した状態の絶縁テープ20を巻回することによって形成される絶縁被覆173に巻き込まれても、その後の加熱によってポリエチレンに再吸収させることは可能である。しかしながら、テープガイド22の表面温度を30℃以下に調整し、より好ましくは25℃以下に調整することが、ポリエチレンへのブリードの低減によって絶縁テープ20の融着部分への割れをより低減できる点で、より好ましい。
【0074】
ここで、テープガイド22の表面温度を調整する手段としては、特に限定されないが、例えば冷風をテープガイド22に当てることによる空冷や、ヒートシンクを設置するなどの手段を用いることができる。
【0075】
(外部半導電層の形成)
絶縁テープ20の巻回によって形成された絶縁被覆173の周囲には、図1(e)に示すように、外部半導電層174を形成してもよい。外部半導電層174は、内部半導電層172と同様に、半導電性の樹脂組成物から形成される。
【0076】
外部半導電層174は、内部半導電層172と同様に、例えば樹脂を成形することで得ることができる。また、外部半導電層174は、接続部171を形成する前の電力ケーブル10a、10bのいずれかに、加熱により収縮する外部半導電層形成用チューブを予め差し込んでおき、接続部171の外周上に、内部半導電層172および絶縁被覆173を順次形成した後に、前記チューブを接続部171の外周位置まで移動させ、その後、加熱して前記チューブを収縮させて形成してもよい。
【0077】
(予備加熱工程)
絶縁被覆173を形成し、さらに必要に応じて外部半導電層174を形成した接続部171に対して、40℃以上130℃以下の温度に加熱する予備加熱工程を行うことが好ましい。これにより、架橋前の絶縁テープ20が加熱されることで、絶縁テープ20の表面にブリードしている酸化防止剤などの添加物がポリエチレンにより再吸収され易くなるため、絶縁テープ20の融着部分への割れをより低減することができる。
【0078】
予備加熱工程における加熱温度は、添加物のポリエチレンへの再吸収を促進させるため、40℃以上が好ましく、50℃以上がより好ましい。他方で、予備加熱工程における加熱温度は、ブリードした添加剤が再吸収される前にポリエチレンが架橋するのを防ぐ観点から、130℃以下が好ましく、120℃以下がより好ましい。
【0079】
予備加熱工程における加熱時間は、添加物がポリエチレンに再吸収されるのに要する時間を考慮して、1分以上が好ましく、3分以上がより好ましい。他方で、予備加熱工程における加熱時間の上限は、特に限定されないが、生産性の観点から、例えば10分以下としてもよい。
【0080】
(架橋工程)
次いで、絶縁被覆173を形成した接続部171に、300kPa以上1000kPa以下の圧力および140℃以上280℃以下の温度で加圧加熱処理を施して、絶縁被覆173に含まれるポリエチレンを架橋させる架橋工程を行う。これにより、絶縁テープ20の表面にブリードしている酸化防止剤などの添加物がポリエチレンに再吸収されるとともに、隣接する絶縁テープ20に含まれるポリエチレンが架橋剤の作用によって架橋されるため、絶縁被覆173のうち、特に絶縁テープ20が融着している部分への割れを低減することができる。また、ポリエチレンの架橋により、絶縁被覆173を構成している樹脂材料の機械特性および耐熱性を高めることができる。
【0081】
架橋工程では、絶縁テープ20を巻回した部分を圧力容器で密閉し、ガスを充填して加圧した状態で加圧加熱処理を行うことで、加熱によってガス化する揮発性の低分子化合物を樹脂材料に吸収させる。このとき、加圧加熱処理を行う際の圧力は、300kPa以上が好ましく、400kPa以上がより好ましい。また、圧力容器の密閉部シールの破壊を防ぐ観点から、加圧加熱処理を行う際の圧力は、1000kPa以下が好ましい。
【0082】
架橋工程で加圧加熱処理を行う際の加熱温度は、架橋剤の作用による架橋反応を促進させるため、140℃以上が好ましく、160℃以上がより好ましい。他方で、架橋工程で加圧加熱処理を行う際の加熱温度は、ポリエチレンの熱分解を防ぐ観点から、280℃以下が好ましく、260℃以下がより好ましい。
【0083】
(金属遮蔽層および防食シースの形成)
架橋後の絶縁被覆173の周囲には、金属遮蔽層および防食シース(ともに図示せず)を設けてもよい。金属遮蔽層としては、例えば鉛や銅、アルミニウムからなるものを用いることができる。また、防食シースとしては、例えば塩化ビニルやポリエチレン、ナイロンからなるものを用いることができる。
【0084】
<電力ケーブル>
本実施形態に係る電力ケーブル1は、例えば上述の方法によって得られるものであり、図3(a)に示されるように、複数の電力ケーブルの導体11a,11bを露出させた端部同士を導体接続した接続部171と、接続部171の外周上に対して直接または内部半導電層172を介して間接的に、上述の絶縁テープを少なくとも巻回および架橋して、接続部171の外面(側)に形成してなる絶縁被覆173とを有する接続構造部17を備えるものである。
【0085】
この電力ケーブル1は、図3(b)に示すように、導体11aの外周に、内部半導電層12a、絶縁層13a、外部半導電層14a、金属遮蔽層15a、シース16aが順に積層されてなる複数の電力ケーブル10a,10bを接続してなるものである。そして、その接続部171の外周には、例えば図3(c)に示すように、内部半導電層172と絶縁被覆173、外部半導電層174が順に積層されてなり、これらが接続構造部17を構成していることが好ましい。
【0086】
本実施形態に係る電力ケーブル1によれば、絶縁被覆173の耐熱老化性を高められるとともに、絶縁テープの融着部分において局所的な割れを起こり難くすることができるため、CVケーブルとしての長期使用に耐える耐久性と、絶縁の安定性を両立させることができる。
【実施例】
【0087】
次に、本発明の効果をさらに明確にするために、実施例および比較例について説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0088】
[実施例1]
(材料の準備および混練工程)
ポリエチレン(A)として、変性ポリエチレン(A1)である無水マレイン酸変性ポリエチレン「SCONA TSPE 1112 GALL」(ビックケミー・ジャパン株式会社製、融点115〜132℃、比重0.89〜0.94)5質量部と、未変性のポリエチレン(A2)である低密度ポリエチレン「ZF30R」(日本ポリエチレン株式会社製、融点110℃、比重0.92)95質量部をそれぞれ用いて、これらの含有量の合計を100質量部とした。
【0089】
ポリエチレン(A)100質量部に、酸化防止剤(B)として、リン系酸化防止剤である「イルガフォスP−EPQ」(テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−ビフェニレンジホスホナイト、分子量1035、BASF株式会社製)0.2質量部と、フェノール系酸化防止剤である「イルガノックス1330」(2,4,6−トリス(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシベンジル)メシチレン、分子量775、BASF株式会社製)0.2質量部を乾燥状態で混合した後、混練温度120℃で10分間にわたり溶融混練してペレット化した。
【0090】
得られたペレットに、架橋剤(C)である「パークミルD」(ジクミルパーオキサイド(DCP)、日本油脂株式会社製)1.7質量部を常温で混合した後、混合装置の温度を90℃にして10分間混合することでDCPをペレットに吸収させ、樹脂材料(融点110℃)を得た。
【0091】
(成形工程)
得られた樹脂材料について、インフレーション法を用いて成形工程を行った。より具体的には、樹脂材料をダイから130℃で押し出し、フィルム厚さが100μmとなるようにしてフィルムを形成した。その後、得られるフィルムをテープ幅20mmになるようにスリット加工を行い、絶縁テープを得た。
【0092】
(電力ケーブルへの絶縁被覆形成)
絶縁テープと同じ組成を有する絶縁層を有する2本の電力ケーブル10a、10b(導体断面積2000mm、内外半導電層厚み各1mm、絶縁被覆厚み15mm)の一端部を略円錐状に切削加工した後、図1(a)に示すように、端部の導体11a、11bを露出させた。露出した導体11a、11bを互いに対向させ、導体11a、11bの端部同士を溶接により導体接続させ、図1(b)に示すように接続部171を形成した。
【0093】
次いで、図1(c)に示すように、導体が露出している部分の周囲に半導電性の樹脂からなるテープを巻回して厚さ1mmの内部半導電層172を形成し、その周囲に、図1(d)に示すように上述の絶縁テープを巻回して厚さ20mmの絶縁被覆173を形成した。絶縁テープを巻回する際は、図2に示すような、テープガイド22を備えた巻回装置2を用い、テープガイド22に冷風を当てることで、テープガイド22の表面温度が25℃以下になるようにした。
【0094】
ここで、導体11a、11bを導体接続させて接続部171を形成する際には、厚さ1mmの半導電性の樹脂からなり、加熱によって収縮するチューブを電力ケーブル10a、10bのいずれかに、加熱により収縮する外部半導電層形成用チューブを予め差し込んでおき、接続部171の外周上に、内部半導電層172および絶縁被覆173を順次形成した後に、前記チューブを接続部171の外周位置まで移動させ、その後、加熱して前記チューブを収縮させることによって、外部半導電層174を形成した。
【0095】
絶縁被覆173および外部半導電層174を形成した接続部171に対して、空気中で80℃以上100℃以下の温度で10分にわたり予備加熱を行った。その後、窒素雰囲気下で800kPaの圧力および220℃の温度で3時間にわたり加圧加熱処理を行ってポリエチレンを架橋させて、接合された電力ケーブルを得た。
【0096】
[実施例2]
ポリエチレン(A)として、変性ポリエチレン(A1)である無水マレイン酸変性ポリエチレン「SCONA TSPE 1112 GALL」(ビックケミー・ジャパン株式会社製、融点115〜132℃、比重0.89〜0.94)30質量部と、未変性のポリエチレン(A2)である低密度ポリエチレン「ZF30R」(日本ポリエチレン株式会社製、融点110℃、比重0.92)70質量部をそれぞれ用いて合計を100質量部とした以外は、実施例1と同様にして絶縁テープを作製し、電力ケーブルを接合する際の絶縁被覆に用いた。
【0097】
[実施例3]
ポリエチレン(A)として、変性ポリエチレン(A1)であるエチレン−メタクリル酸共重合体「ハイミラン1705Zn」(三井・デュポン ポリケミカル株式会社製、メタクリル酸含有量15質量%、融点91℃、比重0.95)5質量部と、未変性のポリエチレン(A2)である低密度ポリエチレン「ZF30R」(日本ポリエチレン株式会社製、融点110℃、比重0.92)95質量部をそれぞれ用いて合計を100質量部とした以外は、実施例1と同様にして絶縁テープを作製し、電力ケーブルを接合する際の絶縁被覆に用いた。
【0098】
[実施例4〜13、比較例1〜6]
酸化防止剤(B)の種類および含有量、架橋剤(C)の含有量、絶縁テープのテープ厚み、絶縁テープの巻回装置におけるテープガイド表面の最高温度、予備加熱の有無について表1、2のように変更した以外は、実施例1と同様にして絶縁テープを作製し、電力ケーブルを接続(接合)する際の絶縁被覆に用いた。
【0099】
[評価]
上記の実施例および比較例に係る絶縁テープおよび電力ケーブルを用いて、下記に示す特性評価を行った。各特性の評価条件は下記のとおりである。結果を表1および表2に示す。
【0100】
[1]樹脂割れ
絶縁テープからなる絶縁被覆の樹脂割れについては、電力ケーブルの接続構造部を10mm幅の輪切りにし、導体を取り除いて観察試料とした。この試料を130℃で1時間加熱すると、絶縁体ポリエチレンの結晶化している部分が非晶化するので透明度が高まるため、観察試料内部の樹脂割れを白い筋として目視で観察することができる。実施例および比較例の電力ケーブルについて、5個の観察試料における樹脂割れの合計個数を求めた。樹脂割れの合計個数は、5個の観察試料に対して5個以下であることが好ましい。
【0101】
[2]老化残率
絶縁テープからなる絶縁被覆の長期使用に対する耐久性について調べるため、老化残率について測定を行った。ここで、老化残率は、絶縁テープを重ね合わせた後、成形機を用いて980kPaの圧力でプレスしながら、220℃の温度で30分にわたり加圧加熱処理を行ってポリエチレンを架橋させて厚さ1mmのシートを得て、得られるシートからダンベル3号に打ち抜いた5個の試験片について、引張り速度200mm/分で引張試験を行い、5個の試験片の平均値を老化前の引張り強さ(N/mm)とした。また、同様にシートから成形した5個の試験片について、空気中において160℃で48時間にわたり加熱することで老化させた後に上記と同様に引張試験を行い、5個の試験片の平均値を老化後の引張り強さ(N/mm)とした。そして、「老化前の引張り強さ」に対する「老化後の引張り強さ」の割合を百分率(%)にして算出し、この割合を加熱による樹脂老化の度合いを示す「老化残率」とした。この「老化残率」は、樹脂の老化によっても引張り強さは低下しないことが好ましいので、数値が大きいことが好ましく、80%以上であるとより好ましい。
【0102】
【表1】
【0103】
【表2】
【0104】
表1および表2に記載される樹脂材料の調製に用いた各成分の詳細は、以下のとおりである。
【0105】
[ポリエチレン(A)]
・無水マレイン酸変性ポリエチレン「SCONA TSPE 1112 GALL」(ビックケミー・ジャパン株式会社製、融点115〜132℃、比重0.89〜0.94)
・変性ポリエチレンであるエチレン−メタクリル酸共重合体「ハイミラン1705Zn」(三井・デュポン ポリケミカル株式会社製、融点91℃、比重0.95)
・未変性のポリエチレンである低密度ポリエチレン「ZF30R」(日本ポリエチレン株式会社製、融点110℃、比重0.92)
[酸化防止剤(B)]
・リン系酸化防止剤「イルガフォスP−EPQ」(テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−ビフェニレンジホスホナイト、分子量1035、BASF株式会社製)
・フェノール系酸化防止剤「イルガノックス1330」(2,4,6−トリス(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシベンジル)メシチレン、分子量775、BASF株式会社製)
・フェノール系酸化防止剤「ノクラック300」 (4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、分子量359、大内新興化学工業株式会社製)
・フェノール系酸化防止剤「スミライザーBHT」(ブチルヒドロキシトルエン、分子量220、住友化学株式会社製)
・フェノール系酸化防止剤「イルガノックス1010」(ペンタエリトリトール=テトラキス[3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオナート]、分子量1178、BASF株式会社製)
・フェノール系酸化防止剤(ブチルヒドロキシアニソール、分子量180)
[架橋剤(C)]
・架橋剤「パークミルD」(ジクミルパーオキサイド(DCP)、日本油脂株式会社製)
【0106】
表1および表2の評価結果から、変性ポリエチレン(A1)、酸化防止剤(B)および架橋剤(C)を含有し、かつ、酸化防止剤(B)の分子量および含有量、ならびにテープ厚みが本発明の適正範囲内である実施例1〜13の絶縁テープは、樹脂割れの合計個数が5個以下であり、老化残率が80%以上であることが確認された。
【0107】
上記結果より、実施例1〜13の絶縁テープは、長期使用に対する耐久性が高く、また、絶縁被覆を形成したときに樹脂割れが起こり難いことが確認された。
【0108】
これに対し、比較例1の絶縁テープでは、酸化防止剤(B)の分子量が1050以上の大きな値であったため、絶縁テープから形成される絶縁被覆に樹脂割れが多く生じている点で合格レベルを満たさなかった。
【0109】
また、比較例2の絶縁テープでは、酸化防止剤(B)の分子量が190未満の小さな値であり、また、架橋剤(C)を含まなかったため、老化残率が低く、長期使用に対する耐久性の面で合格レベルを満たさなかった。
【0110】
また、比較例3の絶縁テープでは、酸化防止剤(B)の含有量が0.05質量部未満の少ない量であったため、老化残率が低く、長期使用に対する耐久性の面で合格レベルを満たさなかった。
【0111】
また、比較例4の絶縁テープでは、酸化防止剤(B)の含有量が0.8質量部を超える多い量であったため、絶縁テープから形成される絶縁被覆に割れが多く生じている点で合格レベルを満たさなかった。
【0112】
また、比較例5、6の絶縁テープでは、テープ厚みが50μm以上250μm以下の範囲外であったため、絶縁テープから形成される絶縁被覆に割れが多く生じている点で合格レベルを満たさなかった。
【符号の説明】
【0113】
1、10a、10b 電力ケーブル
11、11a、11b 導体
12、12a、12b 内部導電体層
13a、13b 絶縁層
14a、14b 外部半導電層
15a、15b 金属遮蔽層
16a、16b シース
17 接続構造部
171 接続部
172 内部半導電層
173 絶縁被覆
174 外部半導電層
2 巻回装置
20 絶縁テープ
21 リール
22 テープガイド
図1
図2
図3

【手続補正書】
【提出日】2020年11月30日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
親水性を付与する分子によって少なくとも一部が変性されたポリエチレンと、酸化防止剤と、架橋剤とを含む樹脂材料からなり、前記酸化防止剤の分子量が、190以上1050未満の範囲であり、前記酸化防止剤の含有量が、前記ポリエチレン100質量部に対して、0.05質量部以上0.8質量部以下の範囲であり、かつ、テープ厚みが50μm以上250μm以下の範囲である、電力ケーブルの接続部被覆用絶縁テープを、複数の電力ケーブルの導体を露出させた端部同士を導体接続した接続部の外周に巻回して前記接続部の外面に絶縁被覆を形成するテープ巻回工程と、
前記絶縁被覆を形成した前記接続部に、300kPa以上1000kPa以下の圧力および140℃以上280℃以下の温度で加圧加熱処理を施して、前記絶縁被覆中のポリエチレンを架橋させる架橋工程と
を含み、
前記テープ巻回工程は、前記絶縁テープを前記接続部外面の巻回位置に案内するテープガイドを備えた巻回装置を用い、前記絶縁テープを巻回する際の前記テープガイドの表面温度を30℃以下に制御して行う、電力ケーブルの接続部外面への絶縁被覆形成方法。
【請求項2】
親水性を付与する分子によって少なくとも一部が変性されたポリエチレンと、酸化防止剤と、架橋剤とを含む樹脂材料からなり、前記酸化防止剤の分子量が、190以上1050未満の範囲であり、前記酸化防止剤の含有量が、前記ポリエチレン100質量部に対して、0.05質量部以上0.8質量部以下の範囲であり、かつ、テープ厚みが50μm以上250μm以下の範囲である、電力ケーブルの接続部被覆用絶縁テープを、複数の電力ケーブルの導体を露出させた端部同士を導体接続した接続部の外周に巻回して前記接続部の外面に絶縁被覆を形成するテープ巻回工程と、
前記絶縁被覆を形成した前記接続部に、300kPa以上1000kPa以下の圧力および140℃以上280℃以下の温度で加圧加熱処理を施して、前記絶縁被覆中のポリエチレンを架橋させる架橋工程と
を含み、
前記テープ巻回工程後、前記架橋工程前に、前記絶縁被覆を形成した前記接続部を、40℃以上130℃以下で加熱する予備加熱工程をさらに有する、電力ケーブルの接続部外面への絶縁被覆形成方法。
【国際調査報告】