(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2020年10月22日
【発行日】2021年5月6日
(54)【発明の名称】バーナ装置及び燃焼装置
(51)【国際特許分類】
F23D 1/02 20060101AFI20210409BHJP
F23G 5/033 20060101ALI20210409BHJP
F23G 5/44 20060101ALI20210409BHJP
【FI】
F23D1/02 AZAB
F23G5/033
F23G5/44 D
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】20
【出願番号】特願2020-543113(P2020-543113)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2019年4月17日
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】507078728
【氏名又は名称】バイオマスエナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105131
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 満
(74)【代理人】
【識別番号】100105795
【弁理士】
【氏名又は名称】名塚 聡
(72)【発明者】
【氏名】平本 光識
(72)【発明者】
【氏名】坂井 正康
(72)【発明者】
【氏名】渡部 淳
(72)【発明者】
【氏名】三谷 崇
【テーマコード(参考)】
3K065
【Fターム(参考)】
3K065AA16
3K065AB01
3K065AC17
3K065BA06
3K065CA02
3K065FA21
3K065FA22
3K065QB08
3K065QB11
3K065QC04
(57)【要約】
粗粉砕のバイオマス粉体であっても工業用燃料として使用できる粉体バーナ装置であって、当該バーナ装置を使用し、安定かつ高効率で運転制御が可能な粉体バーナ装置及び燃焼装置を開示する。本願バーナ装置(10)は、バーナ管(12)と、バーナ管(12)にバイオマス粉体(F)を供給する燃料供給装置(30)と、バーナ管(12)の側壁に接続された1次空気供給管(14)を有し、燃料供給装置(14)から供給されたバイオマス粉体(F)が、1次空気供給管からの1次空気によりバーナ管(12)内で旋回しながら落下し、バーナ管(12)の下端の燃料放出口(13)から放出される。バーナ装置(10)は、燃料放出口(13)の下方にコーン状内壁(17a)を有する断熱壁(17)をさらに有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バーナ管と、
前記バーナ管にバイオマス粉体を供給する燃料供給装置と、
前記バーナ管の側壁に接続された1次空気供給管を有し、
前記燃料供給装置から供給されたバイオマス粉体が、前記1次空気供給管からの1次空気により前記バーナ管内で旋回しながら落下し、前記バーナ管の下端の燃料放出口から放出されるバーナ装置であって、
前記燃料放出口の下方にコーン状内壁を有する断熱壁を設けたことを特徴とする粉体バーナ装置。
【請求項2】
前記コーン状内壁の広がり立体角が3.5ステラジアン以下であることを特徴とする請求項1に記載のバーナ装置。
【請求項3】
前記バイオマス粉体は、最大粒径が30mm以下であり、粒径0.5mm以下のバイオマス粉体を10重量%以上含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のバーナ装置。
【請求項4】
前記コーン状内壁の温度が900℃以上となるように前記1次空気の温度及び供給量を制御する1次空気制御手段を更に有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のバーナ装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかのバーナ装置と、
前記バーナ装置の下部に直結された燃焼炉を有する燃焼装置。
【請求項6】
前記燃焼炉は、
前記燃料供給口の後流側の1次燃焼ゾーンと、1次燃焼ゾーンの後流側に位置し、2次空気を吹き込んで主燃焼を行う2次燃焼ゾーンと、前記2次燃焼ゾーンの後流側の炉底に位置し、3次空気を吹き込んで未燃分を燃焼させる3次燃焼ゾーンと、
前記2次空気及び3次空気の供給量を制御する2次空気制御手段及び3次空気制御手段を更に有することを特徴とする請求項5に記載の燃焼装置。
【請求項7】
前記燃焼炉の炉底面を冷却するための冷却手段と、
前記炉底面に堆積した燃焼灰を系外に排出する灰出し装置をさらに有することを特徴とする請求項5又は6の燃焼装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、草本・木本・食品廃棄物等のバイオマス粉体を燃料とするバーナ装置及び燃焼装置に関する。本願は、粗粉砕のバイオマス粉体であっても工業用燃料として使用できる粉体バーナ装置を開示し、さらに、当該バーナ装置を使用した安定かつ高効率で運転制御が可能な燃焼炉を開示する。本願のバイオマス粉体燃焼装置は、稲わら・麦わら・籾殻・よし等の草本、及び、間伐材・木質廃棄物・建築廃材・バーク・剪定枝等の木本のほか、コーヒー滓・廃菌床・食品残渣等の固体バイオマスであれば、低発熱量・高灰分・低融点灰等の難燃性のバイオマスであっても、燃焼制御が可能な工業用燃料として使用できる。本願の燃焼装置は、熱源装置及び発電プラントのほか、既設の石油・ガス燃料燃焼器等の代替装置としても活用できる。
【背景技術】
【0002】
種々のバイオマスが広く存在しながらも利用が進んでいない理由として、工業用燃料としての纏まった量の利用がなされていないことが挙げられる。工業用燃料として利用できれば、有価エネルギーとなる。工業用の燃焼装置の燃料として利用するためには、ガス・石油燃料の場合と同様に、熱源として、燃焼量・燃焼排ガス温度・排ガス性状等を短時間(分単位)で制御できることが重要である。バイオマスを燃料とする燃焼装置において、この条件を満足できる方式は、バーナ方式以外にはない。バーナ方式であれば、燃料粉体の供給量で燃焼量を瞬時的に制御出来、燃焼排ガス温度・排ガス性状も燃焼用空気量で瞬時的に制御出来、工業用熱源の燃焼装置としての機能を果たす。しかし、現在では、バイオマス粉体を燃料とし、汎用的に利用できる粉体バーナ方式の燃焼装置は開発されていない。
【0003】
本願では、燃料放出口から燃料と空気を放出して、放出口近傍で着火・保炎する形式のものをバーナ装置と呼び、燃焼炉全体を使って燃焼を保持する焼却炉などのように、炉内で燃料を燃焼させるだけで、燃料放出口近傍から炎形成しない装置は、バーナ装置とは呼ばない。
【0004】
粉体燃料を工業用に利用する最良の方式の一つが粉体バーナ方式である。粉体バーナ方式は、事業用石炭焚き大型ボイラではほぼ100%が採用されている。粉体バーナ方式の最も重要な点は、燃料放出口で着火・保炎出来ることである。そのため、石炭を燃料とする粉体バーナ装置では、一般に、75μm以下の超微細粉の微粉炭が使用される。これに対し、バイオマスは、繊維質の物が多く、微粉砕するには多大な粉砕動力を要し、場合によっては原料熱量以上の動力を消費することもあり、コストが増加して、工業用燃料として利用出来ない。
【0005】
従来、チップ状・粉体状のバイオマスを燃料とする燃焼装置は、移動床又は固定床の火格子を使ったストーカ式の燃焼装置が主流である。これらの燃焼装置では、チップ状、ペレット状などに加工したバイオマスが使用される。ストーカ式は焼却炉に広く使われているが、工業用熱源として利用するには燃焼量・燃焼温度の制御が難しく、工業用の熱源装置としては利用されていない。さらに、火格子の場合、燃焼可能な燃料量は、火格子の面積に比例する。そのため、火格子の後流部のガス状燃焼領域を含めると、燃焼空間は焼却炉並みに過大な大きさになり、工業用熱源装置としては使用できない。他方、バイオマスを熱源として利用するための方法も種々提案されているが、汎用的に工業用の熱源として利用できるものは少なく、後述する諸考案もそれぞれ欠点を残している。
【0006】
いま、木質のバイオマスに汎用的に使われている火格子を使った従来型アップドラフト・ストーカ式バイオマス燃焼装置において、燃焼量100kg/hクラスの概略の寸法を簡単に試算してみると次の様になった。
燃焼量:100kg/h(含水分20%バイオマス基準)
燃焼発熱量:1.5×10
6kJ/h(低位発熱量基準)
火格子面積:1.2m
2、
燃焼炉内寸法:縦1.1m×横1.1m×高7.5m
燃焼ゾーン容積:9m
3 燃焼炉の性能を示す火炉負荷は、1.5×10
6kJ/h/9m
3=
167,000kJ/m
3h=40,000kcal/m
3hである。
この火炉負荷は、後述する本願の燃焼装置の約1/10であるから、装置容積は10倍の大きさであり、工業用の熱源装置としては非常に大きな装置となり、実用機としては利用が難しい。
【0007】
上記で火格子を使った従来型の木質100kg/hストーカ方式バイオマス燃焼装置の基本計画寸法について検討したが、この燃焼装置が大きいだけでなく、性能についても、次の様な欠点を持っている。
(1)ストーカ式燃焼では、火格子上面での着火燃焼によって、燃料の部分燃焼と熱分解ガスの発生が起こる。完全燃焼のために、後流部でOFA(オーバー・ファイア空気)の吹き込みが行われるが、燃焼ガスと空気のガス・ガス混合を均一に行うことは難しく、未燃ガスを残し易い。
(2)ストーカ式燃焼では、燃焼炉の容積が大きいことと、OFAを使うことで、燃焼ガス温度を高温にすることは難しい。一般には、燃焼炉出口での燃焼ガス温度は800〜900℃に止まり、1000℃を超える高温熱源には対応できない。
(3)OFAの空気量は、通常、燃焼装置に吹き込む全空気量の30〜40%であるが、燃焼ガスと十分混合させにはOFAを増やす必要があり、そのために燃焼温度が低下して燃焼が阻害される。
(4)火格子の燃焼は燃料チップの積層状況によって影響を受けるため、燃焼状況が時間的に変動し易く、工業的な熱源としては利用し難い。
(5)上記のことから、燃焼ガス中の未燃分を完全燃焼させることは難しく、炭素分・炭化水素を含む燃焼排ガスが熱利用後に排出され、浄化装置が必要になる。
(6)バイオマスは通常、塩分が含まれている。そのため、燃焼ガスが塩素(CL
2)を含み、強い毒性をもつダイオキシンを発生し易い。
(7)火格子表面で発生したダイオキシンは、燃焼炉出口部で燃焼ガスを800℃以上×2秒以上保持することで分解するとされているが、熱焼ガスの熱利用で温度が降下する際の600℃から250℃の低い温度域において、デノボ合成と呼ばれる反応によってダイオキシンが発生する。
(8)ダイオキシンは塩素ガスと炭化水素が化学結合したもので、毒性が強く、僅かな排出も許されない。排ガスのダイオキシン濃度規制値は0.1ng−TEQ/m
3と非常に厳しい。(注:1ng=10
−9g,TEQは、各種ダイオキシン類の換算値合計である。)
【0008】
通常汎用的に使われているストーカ式燃焼装置でバイオマスを工業用燃料として使用することは、上記の説明からも問題点が多いことが分かる。
【0009】
近年、バイオマスを燃料とし、工業用熱源として使用できる燃焼装置が開発されている。例えば、特許文献1は、固形のバイオマスを、平均粒径300μm以下に微粉砕し、一般燃料として利用する方式を開示している。微粉砕によって、バイオマスの取り扱い性が高くなり、また、着火・燃焼性が高くなり、燃焼装置用の燃料として使用可能となる。しかし、微粉砕に要する動力・エネルギーは、粉砕後の粉体の表面積に比例して増大すると言われており、平均粒径300μm以下の微粉砕に要する動力は、一般の中砕〜粗砕の場合の数十〜数百倍のコストとなり、場合によっては原料熱量を上回る動力となって、工業用燃料としては成り立ち難い。
【0010】
毎年膨大な農業副産物として発生する籾殻をバイオマス燃料として利用する技術開発が進められている。籾殻は国内だけでも年間170万トン産出しており、これは石油換算で50万トンに相当し、再生可能エネルギー源として貴重な資源である。しかし、籾殻は着火し難く、発煙し易い性質を持ち、難燃性に属する燃料であるため、利用が難しい。籾殻は約10mm大きさの粗砕に相当する大きさであるので、圧縮成形してペレットとして利用する方法又はオガ炭として利用方法等が実用化されているが、工業用熱源燃料としてみると製造コストが高すぎる難点がある。
【0011】
籾殻の利用については、工業的燃料としての利用も進められ、近年、東南アジアで籾殻発電事業が展開されている。発電システムとしては、ボイラ・蒸気タービンのランキンサイクル方式とガス化エンジン発電方式があるが、籾殻の難燃性から、燃焼方式もガス化方式も重装備となり、運転動力コストも高くなっている。燃焼方式としては、空気散布式トラベリングストーカ方式、空気吹込み式攪拌流動層燃焼炉、低温燃焼用流動層燃焼炉等が実用化又は開発中であり、ガス化方式としては、アップドラフト火格子部分燃焼ガス化方式、外熱キルンガス化方式等が実用化又は開発中である。これらの方式は何れも装置コストと同時に運転コストも高く、工業的な要求からは改善が求められるところである。
【0012】
特許文献1が、固体バイオマスを微粉砕することで燃焼性を改善させる技術であるのに対し、特許文献2は、低コストで製造可能な中砕〜粗砕(数百ミクロン〜数センチ)のバイオマス粉体を燃料として利用する燃焼装置を開示している。燃料のバイオマス粉体は、主としてオガ粉や籾殻の粉体が使用され、燃焼室をシステム底部に設け、燃焼室に粉体の燃料と燃焼空気を吹き込んで、空気の旋回流でサイクロン燃焼させて燃焼ガスを二次燃焼室に送り、二次燃焼室周壁を構成する水冷管を加熱して排ガスを系外に排出するシステムである。このシステムでは、装置に一体に組み込まれた熱交換器の温水又は水蒸気を加熱するに止まり、汎用的な燃焼器とはならない。また、燃料が持ち込む灰分を燃焼ガスで搬送・排出するために、燃焼炉内空筒速度(空間平均ガス流速)を灰分粒子の終末速度(粒子の落下が停止する速度)以上に保つことが必要であることから、高効率条件である高負荷燃焼は出来ない。また、計画運転条件以外での運転条件変更は不可能で、汎用的な利用は難しい。
【0013】
特許文献3は、粉体のバイオマスを燃料とする粉体燃料燃焼バーナを開示している。しかし、この装置の燃料供給管の先端部は、バーナとしての着火機能は持っておらず、横置き円筒管の燃焼炉に過ぎないものであり、本願で言うところのバーナ装置ではない。また、装置入口に設けられた点火手段にはガス・液体燃料・電気スパーク等のバイオマス以外のエネルギー源が運転時常時使われる点で、コスト的にも問題を有している。
【0014】
特許文献4は、バイオマス粉体バーナとしての機能を持っているものの、下記1)〜5)等の欠点を有している。1)籾殻等の難燃性粉体を燃料として使用した場合の保炎機能が十分でない。2)難燃性粉体の場合、着火安定のための1次空気量の調整が困難である。3)粉体の粒径は、中砕(3mm以下)を想定しており、数cmクラスの粗砕粉粒子が入ると安定な着火・保炎が困難である。4)5〜20%の高灰分を有する草本系のバイオマスを燃料とした場合、着火・保炎に問題がある。5)雑草をはじめ草本系は、低融点灰分の含有量が高く、クリンカー防止ができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2008−13738号公報
【特許文献2】特開2010−185631号公報
【特許文献3】特開2011−7478号公報
【特許文献4】特開2014−206346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
再生可能エネルギーとして、バイオマスの燃料利用が期待されながらも、利用は狭い範囲に限られている。工業用燃料として汎用的に利用されているのは、木質の白木チップのみと云ってよい。白木は、燃焼障害となる灰分、塩素、窒素等が非常に少ない良質燃料だからである。例えば、バーク・剪定枝・籾殻・食品廃棄物・よし・雑草等の難燃性や、高灰分・低発熱量等の問題を有するバイオマスは、大半が焼却処理されているのが現状である。
【0017】
前述の多種のバイオマスも貴重な再生可能エネルギー原料であり、工業用燃料として利用することが出来れば、低コストの熱源が得られるだけでなく、同時に焼却処理費用を削減することができる。
【0018】
燃焼ガスを熱源として利用する燃焼装置を工業用に使用するには、低公害であることに加え、石油・ガス燃料の燃焼装置と同程度の制御性を有することが必要である。例えば、燃焼量・燃焼排ガス温度・排ガス性状等の制御が短時間(分単位)で出来ることが求められる。
【0019】
固体燃料を工業用に利用する最良の方式が粉体バーナ方式であり、事業用石炭焚き大型ボイラではほぼ100%が粉体バーナ方式である。この方式では、粉体燃料が燃料放出口で着火・保炎出来ることが必要であるため、75μm以下の超微粒の微粉炭が使用されている。これに対し、バイオマス原料は一般に繊維質の物が多く超微粉砕すると、粉砕動力が製品粉体熱量を上回ってしまい、価格が工業用として成り立たない。
【0020】
本願の目標は、多種多様の固体バイオマスを、過剰な粉砕費用を掛けることなく、工業用燃料として使用できるバイオマス粉体燃焼装置を実用機として完成させることである。本願の燃焼装置は粉体バーナ装置と燃焼炉を連結した構成とし、下記の要求(1)〜(8)の全部又は一部を達成することである。
(1)粉体バーナ装置では、粗紛体バイオマスでも、ガス・液体燃料の助燃なしで、粗紛体燃料放出口近傍で、着火・保炎が安定して維持されること。
(2)負荷(燃焼量)を短時間(分単位)で変更(制御)できること。
(3)負荷変化に応じて燃焼炉出口の燃焼ガス温度が制御可能なこと。
(4)低融点灰の燃料を使用する場合でもクリンカー・トラブルを発生させないこと。
(5)高灰分の燃料であっても、燃焼灰を問題なく系外に排出できること。
(6)燃焼装置の大きさ(容量)がチップ燃焼装置に比べてコンパクトであること。
(7)燃焼排ガスは規制基準値以下に抑制できること。
(8)燃料に塩素分が含まれていても、ダイオキシンを規制基準値以下に抑制できること。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本願には下記発明が開示される。
<構成1>
バーナ管と、
前記バーナ管にバイオマス粉体を供給する燃料供給装置と、
前記バーナ管の側壁に接続された1次空気供給管を有し、
前記燃料供給装置から供給されたバイオマス粉体が、前記1次空気供給管からの1次空気により前記バーナ管内で旋回しながら落下し、前記バーナ管の下端の燃料放出口から放出されるバーナ装置であって、
前記燃料放出口の下方にコーン状内壁を有する断熱壁を設けたことを特徴とする粉体バーナ装置。
<構成2>
前記コーン状内壁の広がり立体角が3.5ステラジアン以下であることを特徴とする構成1に記載のバーナ装置。
<構成3>
前記バイオマス粉体は、最大粒径が30mm以下であり、粒径0.5mm以下のバイオマス粉体を10重量%以上含むことを特徴とする構成1又は2に記載のバーナ装置。
<構成4>
前記コーン状内壁の温度が900℃以上となるように前記1次空気の温度及び供給量を制御する1次空気制御手段を更に有することを特徴とする構成1〜3のいずれか一項に記載のバーナ装置。
<構成5>
構成1〜4のいずれかのバーナ装置と、
前記バーナ装置の下部に直結された燃焼炉を有する燃焼装置。
<構成6>
前記燃焼炉は、
前記燃料供給口の後流側の1次燃焼ゾーンと、1次燃焼ゾーンの後流側に位置し、2次空気を吹き込んで主燃焼を行う2次燃焼ゾーンと、前記2次燃焼ゾーンの後流側の炉底に位置し、3次空気を吹き込んで未燃分を燃焼させる3次燃焼ゾーンと、
前記2次空気及び3次空気の供給量を制御する2次空気制御手段及び3次空気制御手段を更に有することを特徴とする構成5に記載の燃焼装置。
<構成7>
前記燃焼炉の炉底面を冷却するための冷却手段と、
前記炉底面に堆積した燃焼灰を系外に排出する灰出し装置をさらに有することを特徴とする構成5又は6の燃焼装置。
【0022】
本願構成1の粉体バーナ装置では、バーナ管内でバイオマス粉体を燃料放出口に落下させて放出する方式と、バーナ管内でバイオマス粉体を旋回させる方式を併用し、かつ、燃料放出口の下方にコーン状内壁を有する断熱壁を設けたことにより、バイオマスの着火・保炎性が格段に向上させた。
【0023】
コーン状内壁の温度は、1次空気の供給量及び温度等により制御できる。断熱壁の内壁の形状をコーン状としたことにより、内壁の広い領域を高温(例えば、900℃以上)にすることができる。この効果により、バイオマス粉体の着火・保炎性が向上し、必要な内壁面積を減じ、内壁面から燃料放出口までの距離を短くすることができ、燃焼炉をコンパクトに低コストで製作できる。
【0024】
好ましい実施形態では、バーナ装置は、助燃(ガス、液体燃料)を使用することなしに、着火・保炎が可能である。また、工業用熱源として利用するには、バーナ方式が最良の燃焼法であるため、燃焼装置は、バーナ装置の下部に燃焼炉を直結した構成とした。
【0025】
粉体バーナ方式としたことで、燃焼量・燃焼炉出口温度(目的利用温度)・排ガス性状(無公害)の制御が容易に行うことが出来、制御時間は随時短時間(分単位)で可能である。
【0026】
上記粉体バーナ装置では、草本類・木本類・農業副産物・食品残渣等がバイオマス粉体燃料として使用可能である。特に、籾殻等の難燃性のバイオマス、雑草等の高灰分・低融点灰のバイオマスも使用可能であり、更に、高含水分(30%重量程度)のバイオマスも使用可能である。
【0027】
粉体粒度は、一般的には、粗砕(〜数cm)、中砕(数100μ〜数mm)、微粉砕(数10μ〜数100μ)、超微粉砕(〜数10μ)に区分けされている。本願での粒径は、篩目開き基準の値である。粒径の測定は、「JIS Z8815 ふるい分け試験方法通則」に従う。高含水分の粉体は、集塊が生じるので、10%程度に乾燥してサラサラ状態にして計測した。
【0028】
1次空気が過剰になると、着火・保炎が困難になる。そのため、1次空気の供給量は、バイオマス粉体の理論空気量(理論化学当量)以下にする必要がある。バイオマス粉体の理論空気量は、バイオマス燃料(乾燥基準)の重量比5〜6(空気kg/燃料kg)である。通常の燃焼では理論空気量の1.5〜2.5倍の燃焼用空気量が使われる。
【0029】
燃料供給装置は、バイオマス粉体の2〜4倍(理論空気量の40〜60%)の重量の搬送用空気を用いてバーナ管にバイオマス粉体を供給することが好ましく、この濃度であれば、バーナ管出口部での安定した着火が得られやすく、短時間(分単位)での燃焼量変更が可能になる。
【0030】
粉体バーナ装置は、バーナ管出口部の置ける安定着火が最も重要で、この為には、粉体燃料供給量と1次空気供給量による粉体濃度バランス制御が不可欠であるが、1次空気の温度を150℃以上にすることによって、高含水分の難燃性バイオマス燃料の着火も改善される。
【0031】
燃焼炉は、1次空気による1次燃焼ゾーンの後流側で、2次空気を吹き込んで主燃焼を行う2次燃焼ゾーンと、その後流側の炉底で3次空気を吹き込んで大きい粒度の粉体や高灰分燃料時に発生し易い落下未燃分を燃焼させる3次燃焼ゾーンと、2次空気及び3次空気の供給量を制御する2次空気制御手段及び3次空気制御手段を有することが好ましい。2次、3次空気の供給量を制御することで、燃焼排ガス温度・排ガス性状等を短時間(分単位)で制御し、及び/又は、排ガス規制基準をクリアする制御が可能となる。
【0032】
燃焼炉での燃焼温度を800〜1200℃とすることで、未燃ガス(特に炭化水素)を殆ど残すことなく、燃焼排ガスは規制基準値以下に抑制することができる。原料に塩素分が含まれていても、燃焼温度が800℃以上の滞留時間を2秒以上としているので、ダイオキシンはたとえ発生しても燃焼炉からの排出までに分解でき、燃焼排ガス中の炭化水素の未燃分がゼロ状態に近くなることから、デノボ反応も生じない。よって、ダイオキシンを排ガス規制基準値以下に抑制できる。
【0033】
工業用熱源温度としては800〜1200℃の高温度の要求が多く、燃焼炉出口温度をこの温度に制御すると、1000℃以下の低融点灰のバイオマス燃料では燃焼炉内で灰スラグが発生しクリンカー等によるトラブルを発生させていた。この為、灰融点上昇剤として、石灰石・消石灰・ドロマイト等を燃焼前の燃料に混入させて、灰のスラグ発生を防止していた。この場合は、灰融点上昇剤の混合コストと同時に、排出灰の処理コストが嵩み、運用上の難点となっていた。
【0034】
本願では低融点灰燃料の場合、炉底を冷却する冷却手段を設ける。これにより、燃焼炉の炉壁に燃焼灰を溶融又は軟化状態で付着させて炉底に降下させ、炉底で固化又は凝固させる。固化又は凝固した燃焼灰は、プッシャーで系外に排出する。このことによって、クリンカー(固化灰)の固着トラブルを防止できる。燃焼炉の炉壁は、軟化点温度(例えば、600℃)とし、炉底の温度は、軟化点温度以下とするとよい。1次、2次及び/又は3次空気で旋回流を発生させることで、溶融又は軟化状態の燃焼灰の炉壁への付着を促進するとよい。冷却炉底を設けることで、低融点灰燃料も工業用燃料として利用することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】本発明の1実施形態のバイオマス粉体燃焼装置40の全体図を示す。
【
図2】粉体バーナ装置10を示す。(A)は、側方から見た概要図であり、(B)は、上方から見た概要図である。
【
図4】コーン状内壁17a、燃料放出口13及び保炎板13aの配置の例を示す。
【
図6】実証実験装置での実験に用いた供試バイオマス粉体F1〜F3の粒度分布を示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1は、本発明の1実施形態の燃焼装置40の全体図を示す。燃焼装置40は、バーナ装置10と、バーナ装置10の下部に直結した燃焼炉20を有する。バーナ装置10へは燃料供給装置30からバイオマス粉体Fが供給される。
【0037】
図2は、バーナ装置10を示す。バーナ装置10は、燃料供給装置30に接続された燃料供給管11と、下端に燃料放出口13が形成されたバーナ管12と、バーナ管12の側壁に接続された1次空気供給管14と、バーナ管12の下方に位置する断熱壁(断熱材)17を有する。燃料放出口13の周囲を断熱壁17で覆い、バーナ管12の管内空間と断熱壁17の内部空間を直結することが好ましい。
【0038】
図3は、例示的な燃料供給装置30を示す。燃料供給装置30は、燃料輸送管31と、ホッパ32と、モーター33で駆動されるスクリューフイーダ34を有する。バイオマス粉体Fは、搬送用空気A
0によって燃料輸送管31からホッパ32に輸送され、ホッパ32に一旦蓄えられて、スクリューフイーダ34によって一定速度で燃料供給管11に送られる。
【0039】
バーナ管12の上部に位置する燃料供給管11から供給されたバイオマス粉体Fは、1次空気供給管14からの1次空気A
1によりバーナ管12内で旋回しながら燃料放出口13に向けて落下し、燃料放出口13から下方に放出される。バイオマス粉体Fを落下させる方式と、バイオマス粉体Fを旋回させる(固気混合流Mを形成する)方式を組み合わせたことで、燃料放出口13の外縁付近でのバイオマス粉体Fの濃度を上昇させることができる。
【0040】
粉体バーナ装置10は、1次空気の供給量A
1及び温度T
1を制御する1次空気制御手段14aを有するとよい。1次空気制御手段14aは、制御弁を含み得る。
【0041】
断熱壁17は、コーン状内壁17aを有する。コーン状内壁17aは、バーナ管12の下方に位置する。コーン状内壁17aは、コーン形状(下方に向かうに従って内径が拡大する形状)を有する。コーン形状は、例えば、円錐台形状である。多角錐台形状等他の形状でもよい。断面積の拡大は、直線的でも、曲線的でも、段階的でもよい。コーン形状の広がり立体角は、バイオマス粉体の着火・保炎に重要な役割を有する。コーン状内壁17aで囲われた粉体バーナの着火燃焼ゾーンZZ及び1次燃焼ゾーンZ
1は輻射熱を放熱して断熱壁を加熱する。従って、加熱昇温したコーン状断熱壁からは同時に輻射熱を放出して、着火・1次燃焼を安定に保持することができる。コーン形状の広がり立体角は、火炎の広がりと、コーン状内壁17aの輻射熱の受熱分布に影響する。広がり立体角を適切な値にすることで、コーン状内壁17aのより広い面積を適切な高温に保つことが可能になる。
【0042】
広がり立体角は、4.5sr(ステラジアン)以下がよく、4sr以下がさらによく、3.5sr以下が特によい。広がり立体角は、1.5sr以上がよく、2sr以上がさらによく、2.5sr以上が特によい。断熱壁17の内壁の全体を上記数値範囲の広がり立体角のコーン状内壁17aとしてもよく、
図4(a)、(b)のように、一部の高さ範囲H1,H2のみを上記数値範囲の広がり立体角のコーン状内壁17aとしてもよい(すなわち、広がり立体角が上記数値範囲外の内壁部分17bを含んでもよい。)本願における広がり立体角は、平均的な立体角を言う。平均的な立体角は、
図4(a)、(b)の破線で示すように、コーン状内壁17aの下端と上端を結ぶ直線で定義できる(上底と下底の面積及び上底から下底までの距離等により幾何学的に定義できる)。
【0043】
断熱壁の表面温度(コーン状内壁17aの温度)Twは、850℃以上とすることが好ましく、900℃以上とすることがより好ましく、950℃以上とすることが特に好ましい。温度Twは、1次空気の供給量A
1及び温度T
1によって制御できる。例えば、温度Twが規定温度より低い時には、1次空気供給量A
1の減少と1次空気温度T
1の上昇によって温度Twを上昇させる。クリンカー回避等のために温度Twを低下させる必要がある場合は、その逆操作(1次空気供給量A
1の増加と1次空気温度T
1の低下)を行う。
【0044】
これにより、粗粉砕及び/又は高含水分のバイオマス粉体を燃料として使用し、安定に保炎できるバーナ装置10を実現した。当社製造の粉体バーナ装置10において、コーン広がり立体角をπsr(πステラジアン)とすることで、コーン状内壁17aの広範な部分を適切な高温(例えば、900℃以上)に保持することが可能であることが確認された。これにより、着火ゾーンZZ、燃焼ゾーンZ
1付近の広い範囲に十分な輻射熱を供給することができ、バイオマス粉体の着火・保炎性が顕著に向上する。具体的には、上記粉体バーナ装置10では、
図5に示される様な粒度分布を持つバイオマス粉体(30mm以下に粗粉砕したバイオマス粉体であって、粒径0.5mm以下のバイオマス粉体を10重量%含むバイオマス粉体。20mm以下に粗粉砕するとより好ましく、10mm以下に粗粉砕するとさらに好ましい。)を安定に着火・保炎できる。粗粉砕のバイオマス粉体が使用可能であるため、粉砕に要するコストを大幅に低減できる。バーナ装置10では、30%程度までの高含水のバイオマス粉体でも使用可能である。
【0045】
燃料放出口13には、保炎板13aを配置することが好ましい。保炎板13aは、燃料放出口13の外縁近傍に配置するとよい。保炎板13aは、例えば、燃料放出口13と同心の円環形状である。
【0046】
燃料放出口13及び保炎板13aは、
図2のように、コーン状内壁17aの上端と同じ高さに配置してもよく、
図4(a)〜(c)のように、コーン状内壁17aの上端よりも上方又は下方に配置してもよい。保炎板13aは、燃料放出口13と同じ高さに配置するとよいが、
図4(d)、(e)のように異なる高さに配置しても構わない。ただし、燃料放出口13よりも下方に配置する(
図4(e))と高耐熱のバーナ管12が必要となるので好ましくない。
【0047】
燃料放出口13付近の着火ゾーンZZに着火するための点火トーチ15を配置するとよい。燃料放出口13から放出されたバイオマス粉体Fは、点火トーチ15で着火され、着火ゾーンZZ及び1次燃焼ゾーンZ
1で燃焼する。よって、バーナ装置10は、燃料放出口13から下方に向けて炎が放出されるバーナとして使用できる。点火トーチ15は点火時にのみ必要であり、着火・保炎が安定した定常運転時には使用する必要がない。一般に、点火トーチには、メタンガス、プロパンガス、灯油等の良質・高価燃料が使用されるため、低コスト運転が大きな目標となる燃焼装置40では、始動時にのみ点火トーチ15を使用するのがよい。(注:点火トーチ:主燃焼を安定に燃焼を継続させるための着火源で、主燃焼系とは独立したコンパクトな小型バーナ。)
【0048】
燃焼炉20は、2次燃焼ゾーンZ
2と3次燃焼ゾーンZ
3を有する。2次燃焼ゾーンZ
2は、1次燃焼ゾーンZ
1の後流側に位置し、2次空気ノズル22からの2次空気A
2でバイオマス粉体Fを主燃焼させるゾーンである。3次燃焼ゾーンZ
3は、2次燃焼ゾーンZ
2の後流側の炉底に位置し、3次空気ノズル23からの3次空気A
3で未燃焼残分を完全燃焼することを目的としたゾーンZ
3である。燃焼後の燃焼排ガスGは、燃焼炉出口24から排出される。
【0049】
工業用の燃焼装置では、燃焼量と燃焼排ガスGの温度Tgを短時間(分単位)で制御できることが求められる。本実施形態の燃焼装置40では、燃焼量はバイオマス粉体Fの供給量で制御され、燃焼炉20における燃焼ガスの滞留時間は数秒であるから、瞬時の応答が可能である。燃焼炉出口24の燃焼ガスの温度Tgは、[粉体燃料の供給量(kg/h)/総空気量(A
0+A
1+A
2+A
3)(kg/h)]で決まる。A
0及びA
1は、着火ゾーンZZでの着火・保炎の安定化を主眼として決定されるため、燃焼ガスの温度Tgは、A
2・A
3によって制御するのがよい。
【0050】
バイオマス粉体は粒径10mmクラスの粉体、30%の高含水分の粉体、20%の高灰分等の難燃性の粉体であり得ることから、1次・2次燃焼ゾーンZ
1・Z
2で未燃分を生じ得る。そのため、未燃分を炉底で完全燃焼させることを目的に、本願の燃焼装置40では、
図1、
図5に示す3次空気A
3によって3次燃焼ゾーンZ
3で3次燃焼を行う。残留する灰分Hは、堆積状況に応じ、駆動モーター27で動作する灰出し装置(灰出しプッシャー)25によって灰溜26に排出する。
【0051】
冷却材供給管28等の冷却手段によって、燃焼炉20の炉底面を冷却することが好ましい。バイオマス粉体Fの燃焼灰が低融点である場合、灰の溶融によるクリンカーの発生が考えられるが、低融点灰では空気供給量A
1・A
2・A
3の配分を制御することで、灰融点以上の高温度雰囲気を作り、燃焼灰が炉壁で固化堆積することを防ぐ。燃焼灰は、溶融又は軟化状態で炉底に降下し、冷却した炉底面で固化又は凝固する。炉底面に堆積した焼却灰・クリンカー等は、灰出し装置(プッシャー装置等)25で適時系外に排出する。
【実施例】
【0052】
燃焼量70kg/hで
図1の燃焼装置40と同構成の実証実験装置を製作し、燃焼実験を実施した。燃焼炉20の寸法は、高さ2.3m,炉断面上部直径0.56m×下部直径0.75m,容積0.81m
3、火炉負荷380,000kcal/m
3hである。これは、従来技術の項で述べたストーカ式燃焼装置(従来型アップドラフト・ストーカ式燃焼装置)における火炉負荷(40,000kcal/m
3h)の9.5倍である。ストーカ式では風箱が必要であることを考慮すると、本実施形態の燃焼装置40は、容積をストーカ方式の約10分の1にコンパクト化できることが示された。
【0053】
実証実験装置での実験に用いた供試バイオマス粉体は,木粉、籾殻、雑草の3種である。適切なミル出口スクリーンをセットしたハンマーミルでこれらの原料粉体を粗粉砕し、
図6に示した粒度分布の供試バイオマス粉体F1〜F3を準備した。
図6に示すように、供試バイオマス粉体F1〜F3は、最大粒径が8〜10mmであり、粒径0.5mm以下のバイオマス粉体を10%以上含んでいる。
【0054】
上記実証実験装置における着火・保炎の安定性試験結果を
図7〜9に示す。供試バイオマス粉体F1〜F3の含水分は、約10%,20%,30%の3種類とした。含水分は意図的な加湿によって調整した。各試験とも着火源となる断熱壁の温度Twに注目しながら、1次空気温度T
1と1次空気供給量A
1を変化させて着火安定度をテストした。
図7〜9の横軸は1次空気温度T
1を示し、縦軸は断熱壁温度Twを示す。1次空気供給量A
1は、粉体F1〜F3の供給量に対する空気比λ
1(A
1/化学当量空気量の重量比)として図中に数値で示した。断熱壁温度Twは、1次空気温度T
1と空気比λ
1により制御した。
【0055】
図7は、杉粉F1を使用したとき試験結果である。
図7のように、含水分約10%では1次空気温度T
1が100℃でも断熱壁温度Twが900℃となり、安定着火が達成されている。1次空気温度T
1が高温になるとTwが1000℃を超えるため、クリンカー対策のためλ1を大きくしてTwの低温化を図っている。含水分30%粉体ではTwが上がらず、1次空気温度T
1を300℃としてλ1を絞り組むことによってTwが900℃となり、安定着火が達成できた。これらの結果から、燃料放出口13付近での輻射熱による着火エネルギーの効果が大きいことが判り、本願規定の粗粉砕・高含水のバイオマス粉体でも、断熱壁17の温度Twを900℃以上とすることで安定着火が可能であることが示された。
【0056】
杉粉体F1の含水分20%の燃焼試験では、次の結果が得られている。
(1)杉粉体F1の供給量を調節することで、燃焼量を60〜100%の範囲で問題なく調整できることを確認した。
(2)2次空気供給量A
2と3次空気供給量A
3を調節することで、燃焼排ガスGの温度Tgを950〜1150℃の範囲で問題なく調整できることを確認した。
(3)杉粉でも比較的大粒子に対し未燃分が発生したが、炉底の3次燃焼ゾーンZ
3が役割を果たし、クリーン燃焼を達成出来た。
(4)一酸化炭素COも常時50ppm以下となるクリーン燃焼を達成した。これまでの経験から、ダイオキシン発生も排ガス規制値以下であると判断できる。
【0057】
図8は、籾殻粉F2を使用したときの試験結果である。着火安定性は杉粉よりやや劣るが、含水分30%でも断熱壁温度Tw900℃で安定着火が得られた。籾殻は、約15%の灰分を含んでいるが、大半が炉底に堆積し、この灰を問題なく系外に排出できることを確認した。
【0058】
図9は、雑草粉体F3を使用したときの試験結果である。
図7、
図8と同様に、10%,20%,30%の3種類の含水分で試験を行い、いずれも、Tw900℃以上で、安定に着火・保炎できた。杉粉体F1と籾殻粉体F2では見られなかったクリンカー発生があったが、1次空気温度T
1を下げ、1次空気供給量A
1を増加させて断熱壁温度を900〜1030℃に制御することで、クリンカー発生を抑制できた。
【0059】
上記実証実験装置を用いて得られた実験結果を纏めると次の様になる。
(1)本願の燃焼装置は、容積が従来のストーカ式燃焼装置の約1/10であり、装置の小型化が達成できる。
(2)草本系、木本系、食品残渣等大半のバイオマスを本願燃焼装置のバイオマス粉体として使用し得る。
(3)本願燃焼装置では、最大粒径が10mm以下で、粒径0.5mm以下のバイオマス粉体を10重量%以上を含むバイオマス粉体を燃料として使用できる。よって、バイオマス粉体の加工コスト(粉砕コスト)を大幅に削減できる。さらに、含水分は30%まで許容できるため、更なるコスト削減が可能である。
(4)工業用燃焼装置として要求される燃焼量制御及び燃焼炉出口の燃焼排気ガス温度も短時間(分単位)で制御することが可能である。
(5)本願燃焼装置は、燃焼排気ガスの排ガス規制値をクリア可能である。
(6)本願燃焼装置は、炉底を冷却構造とすることによって、低融点灰燃料でも、固着クリンカー・トラブルを発生させることは無い。
【0060】
本願の粉体バーナ装置及び燃焼装置は、0.5mm以下の粒体を10重量%以上含むバイオマスを燃料として安定に着火・保炎が可能であり、粉砕に多大なコストを掛けなくても、一般木材・木質廃棄物・建築廃材・バーク・剪定枝等の木質、稲わら・麦わら・籾殻・よし等の草本、コーヒー滓・廃菌床・食品残渣等、多種多様のバイオマスを工業用燃料として利用することが可能となる。さらに、燃焼装置の容積を火格子燃焼装置の約1/10まで減少させることができ、燃焼ガス量と燃焼温度を短時間(分単位)で制御可能であり、燃焼排気ガスは未燃分が極度に少なく、ダイオキシンなどの有害ガス含有量を排気ガス規制基準以下に押さえることができる。燃焼装置は、石油・ガス燃料並みの安定した運転制御が可能なことから、既存の化石燃料系燃焼器の代替も可能である。例えば、再生エネルギー事業者、製材工場、食品工場、廃棄物処理業者、廃棄物発生事業所等の新設及び既設代替用の燃焼装置として使用できる。
【符号の説明】
【0061】
10・・・バーナ装置
11・・・燃料供給管
12・・・バーナ管
13・・・燃料放出口
13a・・・保炎板
14・・・1次空気供給管
14a・・・1次空気制御手段
15・・・点火トーチ
16・・・熱電対
17・・・断熱壁
17a・・・コーン状内壁
20・・・燃焼炉
21・・・炉壁
22・・・2次空気ノズル
23・・・3次空気ノズル
24・・・燃焼炉出口
26・・・灰溜
25・・・灰出し装置
27・・・駆動モーター
28・・・冷却材供給管
30・・・燃料供給装置
31・・・燃料輸送管
32・・・ホッパ
33・・・モーター
34・・・スクリューフイーダ
40・・・燃焼装置
A
0・・・搬送用空気
A
1・・・1次空気又は1次空気量
A
2・・・2次空気又は2次空気量
A
3・・・3次空気又は3次空気量
C・・・冷却材
F・・・粉体燃料又は粉体燃料供給量
G・・・燃焼ガス
T
1・・・1次空気温度
T
g・・・燃焼ガス出口温度
T
w・・・バーナ出口周辺の断熱壁温度
H・・・堆積灰
M・・・粉体燃料と1次空気の固気混合流
Z
1・・・1次燃焼ゾーン
Z
2・・・2次燃焼ゾーン
Z
3・・・3次燃焼ゾーン
ZZ・・・着火燃焼ゾーン
【国際調査報告】